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▶ ザ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ペンシルバニアの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】スイッチ共刺激受容体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20220128BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220128BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220128BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20220128BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220128BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220128BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220128BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20220128BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20220128BHJP
   C07K 14/725 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C07K19/00
C12N15/63 Z
C07K14/705
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K48/00
A61P35/00
A61K39/395 D
A61K35/12
A61K35/17 Z
C07K14/725
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018084610
(22)【出願日】2018-04-26
(62)【分割の表示】P 2014523064の分割
【原出願日】2012-07-27
(65)【公開番号】P2018148896
(43)【公開日】2018-09-27
【審査請求日】2018-05-22
(31)【優先権主張番号】61/513,259
(32)【優先日】2011-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500429103
【氏名又は名称】ザ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ペンシルバニア
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ジューン カール エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】チャオ ヤンビン
【審査官】上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-518984(JP,A)
【文献】国際公開第2011/090762(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/044996(WO,A2)
【文献】国際公開第2010/025177(WO,A1)
【文献】特許第6334398(JP,B2)
【文献】The Journal of Immunology,2006年,Vol.176,p.5725-5729
【文献】Molecular and Cellular Biology,2005年,Vol.25, No.21,p.9543-9553
【文献】Journal of Leukocyte Biology,2003年,Vol.73,p.178-182
【文献】Japanese Journal of Clinical Immunology,2005年,Vol.28, No.1,p.21-32
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 19/00
C07K 14/705
C07K 14/725
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌患者を処置するための医薬の製造における、第一のドメイン、膜貫通ドメイン、および第二のドメインを、N末端からC末端の方向に含む融合タンパク質を発現するよう操作された細胞の使用であって、
第一のドメインが、負のシグナルに関連しているポリペプチドの細胞外ドメインであり、かつ第二のドメインが、正のシグナルに関連しているポリペプチドの細胞内ドメインであり、かつ膜貫通ドメインが、負のシグナルに関連しているポリペプチドの膜貫通ドメインまたは正のシグナルに関連しているポリペプチドの膜貫通ドメインであり、負のシグナルに関連しているポリペプチドが、BTLAおよびPD-1からなる群より選択され、正のシグナルに関連しているポリペプチドがCD28およびICOSからなる群より選択される、
前記使用。
【請求項2】
細胞が、特異抗体の抗原認識ドメインおよびCD3ζ鎖の細胞内ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)を発現するようさらに遺伝学的に操作されている、請求項1記載の使用。
【請求項3】
細胞が自己T細胞である、請求項2記載の使用。
【請求項4】
以下の(a)および(b)を発現するよう操作された細胞
(a)第一のドメイン、膜貫通ドメイン、および第二のドメインを、N末端からC末端の方向に含む融合タンパク質であって、第一のドメインが、負のシグナルに関連しているポリペプチドの細胞外ドメインであり、かつ第二のドメインが、正のシグナルに関連しているポリペプチドの細胞内ドメインであり、かつ膜貫通ドメインが、負のシグナルに関連しているポリペプチドの膜貫通ドメインまたは正のシグナルに関連しているポリペプチドの膜貫通ドメインであり、負のシグナルに関連しているポリペプチドが、BTLAおよびPD-1からなる群より選択され、正のシグナルに関連しているポリペプチドがCD28およびICOSからなる群より選択される、融合タンパク質、
(b)特異抗体の抗原認識ドメインとCD3ζ鎖の細胞内ドメインとを含むキメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項5】
インビボで複製することができる、請求項4記載の細胞。
【請求項6】
対象における癌を処置または予防するための医薬の製造における、請求項5記載の細胞の使用。
【請求項7】
IL-17を分泌する、請求項4記載の細胞。
【請求項8】
増強されたIL-2およびIFN-γの産生を示す、請求項4記載の細胞。
【請求項9】
自己細胞である、請求項4記載の細胞。
【請求項10】
細胞が増幅される、請求項4記載の細胞。
【請求項11】
CD34+細胞である、請求項4記載の細胞。
【請求項12】
免疫不全患者における疾患の処置および防止のための医薬の製造における、請求項4記載の細胞の使用。
【請求項13】
(A)対象に投与され、(B)該対象から収集され、(C)再活性化され、かつ(D)該対象に再投与されるように使用される、請求項4記載の細胞。
【請求項14】
融合タンパク質をコードする核酸配列を含む、ウイルスベクターであって、
融合タンパク質が、第一のドメイン、膜貫通ドメイン、および第二のドメインを、N末端からC末端の方向に含み、第一のドメインが、負のシグナルに関連しているポリペプチドの細胞外ドメインであり、かつ第二のドメインが、正のシグナルに関連しているポリペプチドの細胞内ドメインであり、かつ膜貫通ドメインが、負のシグナルに関連しているポリペプチドの膜貫通ドメインまたは正のシグナルに関連しているポリペプチドの膜貫通ドメインであり、負のシグナルに関連しているポリペプチドが、BTLAおよびPD-1からなる群より選択され、正のシグナルに関連しているポリペプチドがCD28およびICOSからなる群より選択される、
前記ベクター。
【請求項15】
レンチウイルスベクターである、請求項14記載のベクター。
【請求項16】
第一のドメイン、膜貫通ドメイン、および第二のドメインを、N末端からC末端の方向に含む融合タンパク質をコードする核酸であって、
第一のドメインが、負のシグナルに関連しているポリペプチドの細胞外ドメインであり、かつ第二のドメインが、正のシグナルに関連しているポリペプチドの細胞内ドメインであり、かつ膜貫通ドメインが、負のシグナルに関連しているポリペプチドの膜貫通ドメインまたは正のシグナルに関連しているポリペプチドの膜貫通ドメインであり、負のシグナルに関連しているポリペプチドが、BTLAおよびPD-1からなる群より選択され、正のシグナルに関連しているポリペプチドがCD28およびICOSからなる群より選択される、
前記核酸
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2011年7月29日出願の米国特許出願第61/513,259号に基づく優先権を主張するものであり、その内容は、参照によってその全体が本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
免疫系の一般原理は、T細胞が微小環境を感知し、次いで、感知したシグナルに依って活性化されるかまたは阻害されるというものである。CD28遺伝子ファミリーは、正のシグナルを伝達する2種の遺伝子CD28およびICOS、ならびに負のシグナルを送達する3種の遺伝子:CTLA4、PD-1、およびBTLAから構成される(Riley et al.,2005,Blood 105:13-21(非特許文献1))。PD-1のためのリガンドはPDL1およびPDL2である。PD-1リガンドがしばしば腫瘍微小環境において発現され、T細胞上のPD-1へのPDL1またはPDL2の接触がT細胞不活化をもたらし得ることは、周知である。
【0003】
現時点で、PD-1またはBTLAのリガンドによって送達される負のシグナルを防止する唯一のアプローチは、PD-1またはBTLAに結合する拮抗性の抗体または融合タンパク質を与えることであり、このアプローチは、現在、初期相治験において試験されている(Cheever et al.,2008,Immunol Rev 222:357-68(非特許文献2))。もう一つのアプローチは、PD-1シグナル伝達またはBTLAシグナル伝達を阻害し得る低分子化合物を与えることであろう。PD-1によるT細胞不活化を防止するための現在のアプローチは、PD-1拮抗抗体による全身処置を患者に与えることである。
【0004】
上記のアプローチは、いずれも、全身処置によって、腫瘍微小環境にも免疫系全体にも存在するT細胞が、不活化から防止されるという限界を有しており、これは、一部の患者において、自己免疫または全身性炎症症候群をもたらすと予想される(Beck et al.,2006,J Clin Oncol 24:2283-9(非特許文献3);Blansfield et al.,2005,J Immunother 28:593-8(非特許文献4);Dougan et al.,2009,Annual Review of Immunology 27:83-117(非特許文献5))。
【0005】
従って、養子治療の有効な形態のための組成物および方法が、当技術分野において緊急に必要とされている。本発明は、この必要性に取り組むものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Riley et al.,2005,Blood 105:13-21
【文献】Cheever et al.,2008,Immunol Rev 222:357-68
【文献】Beck et al.,2006,J Clin Oncol 24:2283-9
【文献】Blansfield et al.,2005,J Immunother 28:593-8
【文献】Dougan et al.,2009,Annual Review of Immunology 27:83-117
【発明の概要】
【0007】
本発明は、負のシグナルに関連しているポリペプチドである第一のドメインと、正のシグナルに関連しているポリペプチドである第二のドメインとを含む融合タンパク質を提供する。
【0008】
一つの態様において、第一のドメインは、負のシグナルに関連しているポリペプチドの細胞外ドメインの少なくとも一部分であり、第二のドメインは、正のシグナルに関連しているポリペプチドの細胞内ドメインの少なくとも一部分である。
【0009】
一つの態様において、融合タンパク質は膜貫通ドメインをさらに含む。もう一つの態様において、膜貫通ドメインは、負のシグナルに関連しているポリペプチドの膜貫通ドメインまたは正のシグナルに関連しているポリペプチドの膜貫通ドメインである。
【0010】
一つの態様において、負のシグナルに関連しているポリペプチドは、CTLA4、PD-1、およびBTLAからなる群より選択される。
【0011】
一つの態様において、正のシグナルに関連しているポリペプチドは、CD28およびICOSからなる群より選択される。
【0012】
本発明は、負のシグナルに関連しているポリペプチドである第一のドメインと、正のシグナルに関連しているポリペプチドである第二のドメインとを含む融合タンパク質を発現するよう操作された細胞も提供する。
【0013】
一つの態様において、細胞は、特異抗体の抗原認識ドメインおよびCD3ζ鎖の細胞内ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)をさらに含む。
【0014】
本発明は、負のシグナルに関連しているポリペプチドである第一のドメインと、正のシグナルに関連しているポリペプチドである第二のドメインとを含むベクターも提供する。
【0015】
本発明は、癌患者を処置する方法を提供する。一つの態様において、方法は、負のシグナルに関連しているポリペプチドである第一のドメインと、正のシグナルに関連しているポリペプチドである第二のドメインとを含む融合タンパク質を発現するよう遺伝学的に操作されたT細胞を患者へ投与する工程を含む。
【0016】
一つの態様において、T細胞は、特異抗体の抗原認識ドメインおよびCD3ζ鎖の細胞内ドメインを含むCARを発現するようさらに遺伝学的に操作されている。
【0017】
一つの態様において、T細胞は自己T細胞である。
[本発明1001]
第一のドメインおよび第二のドメインを含む融合タンパク質であって、第一のドメインが負のシグナルに関連しているポリペプチドであり、第二のドメインが正のシグナルに関連しているポリペプチドである、融合タンパク質。
[本発明1002]
第一のドメインが、負のシグナルに関連しているポリペプチドの細胞外ドメインの少なくとも一部分であり、第二のドメインが、正のシグナルに関連しているポリペプチドの細胞内ドメインの少なくとも一部分である、本発明1001の融合タンパク質。
[本発明1003]
膜貫通ドメインをさらに含む、本発明1001の融合タンパク質。
[本発明1004]
膜貫通ドメインが、負のシグナルに関連しているポリペプチドの膜貫通ドメインまたは正のシグナルに関連しているポリペプチドの膜貫通ドメインである、本発明1003の融合タンパク質。
[本発明1005]
負のシグナルに関連しているポリペプチドが、CTLA4、PD-1、およびBTLAからなる群より選択される、本発明1001の融合タンパク質。
[本発明1006]
正のシグナルに関連しているポリペプチドが、CD28およびICOSからなる群より選択される、本発明1001の融合タンパク質。
[本発明1007]
第一のドメインおよび第二のドメインを含む融合タンパク質を発現するよう操作された細胞であって、第一のドメインが負のシグナルに関連しているポリペプチドであり、第二のドメインが正のシグナルに関連しているポリペプチドである、細胞。
[本発明1008]
特異抗体の抗原認識ドメインおよびCD3ζ鎖の細胞内ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)をさらに含む、本発明1007の細胞。
[本発明1009]
第一のドメインおよび第二のドメインを含むベクターであって、第一のドメインが負のシグナルに関連しているポリペプチドであり、第二のドメインが正のシグナルに関連しているポリペプチドである、ベクター。
[本発明1010]
第一のドメインおよび第二のドメインを含む融合タンパク質を発現するよう遺伝学的に操作されたT細胞を患者へ投与する工程を含む、癌患者を処置する方法であって、第一のドメインが負のシグナルに関連しているポリペプチドであり、第二のドメインが正のシグナルに関連しているポリペプチドである、方法。
[本発明1011]
T細胞が、特異抗体の抗原認識ドメインおよびCD3ζ鎖の細胞内ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)を発現するようさらに遺伝学的に操作されている、本発明1010の方法。
[本発明1012]
T細胞が自己T細胞である、本発明1011の方法。
【0018】
本発明の好ましい態様の以下の詳細な説明は、添付の図面と共に参照された時、よりよく理解されるであろう。本発明を例示する目的で、現在好ましい態様が図面に示される。しかしながら、本発明は、図面に示された態様の正確な配置および手段に限定されないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A図1A~1Cを含む図1は、スイッチ受容体とも呼ばれるキメラ共刺激受容体(CCR)の形態で、BTLAシグナルが他のシグナルへ変換され得ることを証明する一連の画像である。図1Aは、キメラスイッチ受容体の模式図を表す画像である。
図1B図1Bは、BTLAの表面発現が、示されるような異なる時点で、HVEM-Fc融合タンパク質によって検出されたことを証明する画像である。
図1C図1Cは、BTLAリガンド陰性細胞株(KTPloCD86A2)またはBTLAリガンドHVEM陽性細胞株(KTPloCD86A2 HVEM)のいずれかにより刺激された、電気穿孔されたT細胞によって産生されたIL-2を表す画像である。刺激の24時間後に、ELISAによってIL産生がアッセイされた。結果は、BTLA細胞外ドメインをICOSおよびCD3ζの両方の細胞内ドメインと融合させることによって、BTLAリガンドHVEM発現細胞株の刺激によって、T細胞が活性化され得ることを示した。これは、キメラ共刺激受容体の形態で、BTLAシグナルが他のシグナルへ変換され得ることを示している。
図2A図2A~2Cを含む図2は、BTLAシグナルが、BTLA-CD28 CCRを通して、CD28シグナルへ変換され得ることを証明する一連の画像である。
図2B図2Aの説明を参照のこと。
図2C図2Aの説明を参照のこと。
図3A図3Aおよび3Bを含む図3は、BTLAシグナルが、BTLA-ICOS CCRを通して、ICOSシグナルへ変換され得ることを証明する一連の画像である。結果は、BTLA-ICOSから変換されたICOSシグナルが、Th17細胞産生を増強することを示した。
図3B図3Aの説明を参照のこと。
図4A図4A~4Dを含む図4は、PD1シグナルがCD28シグナルへ変換され得ることを証明する一連の画像である。
図4B図4Aの説明を参照のこと。
図4C図4Aの説明を参照のこと。
図4D図4Aの説明を参照のこと。
図5A図5Aおよび5Cを含む図5は、PD1-CD28 CCR共導入によるPD1阻害の逆転を証明する一連の画像である。
図5B図5Aの説明を参照のこと。
図5C図5Aの説明を参照のこと。
図6A図6A~6Cを含む図6は、PD1シグナルのICOSシグナルへの変換を証明する一連の画像である。
図6B図6Aの説明を参照のこと。
図6C図6Aの説明を参照のこと。
図7図7は、サイトカイン産生に対するPD1wtの阻害効果が、PD1キメラ構築物によって救済されることを証明する画像である。
図8図8は、PD-1キメラ受容体がグランザイムB産生に影響しないことを証明する画像である。
図9図9は、PD1の存在下または非存在下で、CD8 T細胞の殺傷活性の最小の差が観察されたことを証明する画像である。
図10図10は、PD-1キメラ受容体のT細胞増殖に対する効果を示す画像である。
図11図11は、PD1-CD28キメラ受容体がCD8 T細胞の数を増加させることを示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
本発明は、細胞上にディスプレイされた時、負のシグナルを、細胞に対する正のシグナルへ変換することができる融合タンパク質受容体に一般に関する。融合タンパク質は、少なくとも2個ドメインを含むため、キメラタンパク質であって、第一のドメインは負のシグナルに関連しているポリペプチドであり、第二のドメインは正のシグナルに関連しているポリペプチドである。一つの態様において、第一のドメインが、阻害因子に結合し、融合タンパク質を活性化し、その際、シグナルが第二のドメインを通して送られ、細胞へ伝達される正のシグナルをもたらす。このように、融合タンパク質は、そうでなければ負のシグナルを、正の細胞内シグナルへ変換することができる。従って、本発明は、免疫応答の増強のため、負のシグナルを正のシグナルへ切り替えることができるスイッチ受容体を包含すると見なされ得る。免疫応答の増強は、不適切な免疫応答に関連した疾患を処置することができる。
【0021】
本発明は、T細胞が、微小環境を感知して、感知したシグナルに依って、活性化されるかまたは阻害されるという事実を利用するため、スイッチ受容体を発現するよう、T細胞を操作することができるという発見に基づく。例えば、本発明は、T細胞の活性を阻害するリガンドが腫瘍微小環境内に存在するという事実を利用する。第一のドメインが腫瘍微小環境内の阻害性リガンドによって活性化され、スイッチ受容体の第二のドメインを通したシグナリングによって、そうでなければ阻害性のシグナルを、T細胞に対する正のシグナルへ切り替えることができるスイッチ受容体を発現するよう、T細胞が操作される。従って、本発明は、より少ない毒性と共に、改善された治療指数を提供する治療を提供し、有効であり、かつ抗体の継続的な投与の必要性を回避する単回処置を提供する能力も提供する。
【0022】
いくつかの事例において、細胞は、その必要のある患者へ投与する前に、遺伝学的に修飾される。好ましくは、細胞は、本発明の所望のスイッチ受容体を安定的に発現するよう遺伝学的に修飾され得る。他の事例において、細胞は、MHC非依存性である新規の抗原特異性を付与する抗体結合ドメイン(例えば、キメラ抗原受容体(CAR))を表面上に発現するよう、さらに修飾されてもよい。CARは、特異抗体の抗原認識ドメインを、CD3ζ鎖またはFcγRIタンパク質の細胞内ドメインと、単一キメラタンパク質へと組み合わせたものである。これに関して、細胞は、スイッチ受容体およびCARの両方を発現するよう操作される。
【0023】
本発明の修飾型細胞は、インビボで複製することができるため、持続的な腫瘍コントロールをもたらし得る長期残留性がもたらされる。
【0024】
本発明は、本発明のスイッチ受容体を作成する方法、ならびに癌の研究および処置においてこれらのスイッチ受容体を使用する方法をさらに提供する。
【0025】
定義
他に定義されない限り、本明細書において使用される技術用語および科学用語は、全て、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同一の意味を有する。本明細書に記載されたものに類似しているかまたは等価である任意の方法および材料を、本発明の実施または試行において使用することができるが、好ましい材料および方法が本明細書に記載される。本発明の説明および特許請求の範囲の記載において、以下の用語法が使用されるであろう。
【0026】
本明細書において使用される用語法は、特定の態様を記載するためのものに過ぎず、限定的なものではないことも、理解されるべきである。
【0027】
冠詞「(a)」および「(an)」は、冠詞の文法上の目的語の一つまたは複数(即ち、少なくとも一つ)をさすために本明細書において使用される。例えば、「要素」とは、一つの要素または複数の要素を意味する。
【0028】
指定された値からの±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらに好ましくは±1%、さらに好ましくは±0.1%の変動は、開示された方法を実施するために適切であるため、「約」とは、本明細書において使用されるように、量、時間的期間等のような測定可能な値をさす時、そのような変動を包含することを意味する。
【0029】
「抗体」という用語は、本明細書において使用されるように、抗原に特異的に結合する免疫グロブリン分子をさす。抗体は、天然起源または組換え起源に由来する完全免疫グロブリンであってもよいし、完全免疫グロブリンの免疫反応性部分であってもよい。抗体は、典型的には、免疫グロブリン分子の四量体である。本発明における抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、Fab、およびF(ab)2、ならびに単鎖抗体およびヒト化抗体を含む、多様な形態で存在し得る(Harlow et al.,1999,In:Using Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY;Harlow et al.,1989,In:Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,New York;Houston et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883;Bird et al.,1988,Science 242:423-426)。
【0030】
「抗原」または「Ag」という用語は、本明細書において使用されるように、免疫応答を惹起する分子として定義される。この免疫応答は、抗体産生、または特異的な免疫適格細胞の活性化のいずれか、またはその両方を含み得る。当業者は、事実上全てのタンパク質またはペプチドを含む高分子が、抗原として機能し得ることを理解するであろう。さらに、抗原は組換えDNAまたはゲノムDNAに由来してもよい。従って、その用語が本明細書において使用されるように、免疫応答を誘発するタンパク質をコードするヌクレオチド配列または部分ヌクレオチド配列を含むDNAは、「抗原」をコードすることを、当業者は理解するであろう。さらに、当業者は、抗原が遺伝子の全長ヌクレオチド配列によってのみコードされる必要はないことを理解するであろう。本発明は、複数種の遺伝子の部分ヌクレオチド配列の使用を含むが、これらに限定されないこと、そしてこれらのヌクレオチド配列が、所望の免疫応答を誘発するために様々な組み合わせで配置されることは、容易に明白である。さらに、当業者は、抗原が全く「遺伝子」によってコードされなくてもよいことを理解するであろう。抗原は、合成によって生成されてもよいし、または生物学的試料に由来してもよいことが、容易に明白である。そのような生物学的試料には、組織試料、腫瘍試料、細胞、または生物学的液体が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0031】
「抗腫瘍効果」という用語は、本明細書において使用されるように、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞の数の減少、転移の数の減少、平均余命の増加、または癌状態に関連した様々な生理学的症候の寛解として顕在化され得る生物学的効果をさす。「抗腫瘍結果」は、第一に、本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、細胞、および抗体の、腫瘍の発生の防止における能力によっても顕在化され得る。
【0032】
本明細書において使用されるように、「自己」という用語は、後に個体へ再導入されるのと同じ個体に由来する材料をさすために使用され得る。
【0033】
「同種異系」とは、同一の種の異なる動物に由来する移植片をさす。
【0034】
「異種」とは、異なる種の動物に由来する移植片をさす。
【0035】
本明細書において使用されるように、「生物学的活性または免疫学的活性を有する」とは、本発明の融合タンパク質のビルディングブロックである個々の野生型タンパク質と類似した構造的機能(必ずしも同程度でなくてもよい)および/または類似した制御機能(必ずしも同程度でなくてもよい)および/または類似した生化学的機能(必ずしも同程度でなくてもよい)および/または免疫学的活性(必ずしも同程度でなくてもよい)を有する本発明に係る融合タンパク質をさす。
【0036】
「癌」という用語は、本明細書において使用されるように、異常細胞の急速な無調節の成長を特徴とする疾患として定義される。癌細胞は、局所的に、または血流およびリンパ系を通して他の身体部分へ蔓延することができる。様々な癌の例には、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、皮膚癌、膵臓癌、結腸直腸癌、腎臓癌、肝臓癌、脳癌、リンパ腫、白血病、肺癌等が含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
「キメラタンパク質」とは、同一のポリペプチド単位内に天然には存在しない2種の別個のポリペプチドドメインを含む単一ポリペプチド単位を意味する。典型的には、そのようなキメラタンパク質は、cDNA構築物の発現によって作成されるが、当技術分野において公知のタンパク質合成法によって作成されてもよい。
【0038】
アミノ酸配列に関して、「誘導体」という用語は、本明細書において使用されるように、本発明の融合タンパク質の化学的修飾を意味する。
【0039】
「をコードする」とは、ヌクレオチドの明確な配列(即ち、rRNA、tRNA、およびmRNA)、またはアミノ酸の明確な配列のいずれか、ならびにそれらに起因する生物学的特性を有する、生物学的過程において他の重合体および高分子の合成のための鋳型として機能する、遺伝子、cDNA、またはmRNAのようなポリヌクレオチドの特異的なヌクレオチド配列の固有の特性をさす。従って、遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が、細胞またはその他の生物学的系においてタンパク質を産生する場合、その遺伝子はそのタンパク質をコードする。ヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、一般的に配列表に提供されるコード鎖、および遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として使用される非コード鎖の両方が、その遺伝子またはcDNAのタンパク質またはその他の産物をコードすると呼ばれ得る。
【0040】
特記されない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」とは、相互の縮重バージョンであって、同一のアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列を含む。タンパク質およびRNAをコードするヌクレオチド配列は、イントロンを含む場合がある。
【0041】
「有効量」または「治療的に有効な量」とは、本明細書において交換可能に使用され、特定の生物学的結果を達成するために有効な、本明細書に記載される化合物、製剤、材料、または組成物の量をさす。そのような結果には、当技術分野における適当な手段によって決定されるようなウイルス感染の阻害が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0042】
本明細書において使用されるように、「内在性」とは、生物、細胞、組織、もしくは系に由来するか、または生物、細胞、組織、もしくは系の内部で産生された材料をさす。
【0043】
本明細書において使用されるように、「外来性」とは、生物、細胞、組織、もしくは系から導入されたか、または生物、細胞、組織、もしくは系の外部で産生された材料をさす。
【0044】
「発現」という用語は、本明細書において使用されるように、そのプロモーターによって駆動された特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳として定義される。
【0045】
「発現ベクター」とは、発現させられるヌクレオチド配列に機能的に連結された発現調節配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターをさす。発現ベクターは、発現のための十分なシス作用性要素を含み;発現のためのその他の要素が、宿主細胞によって、またはインビトロ発現系において供給されてもよい。発現ベクターには、組換えポリヌクレオチドが組み入れられる、コスミド、プラスミド(例えば、裸のもの、またはリポソームに含有されたもの)、ならびにウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)のような、当技術分野において公知の全てのものが含まれる。
【0046】
本明細書において使用されるように、「融合タンパク質」という用語は、2種以上の異なるタンパク質のアミノ酸配列を含むキメラタンパク質をさす。典型的には、融合タンパク質は、当技術分野において周知のインビトロ組換え技術に起因する。
【0047】
「相同」とは、本明細書において使用されるように、2種の重合体分子の間の、例えば、2種のDNA分子もしくは2種のRNA分子のような2種の核酸分子の間の、または2種のポリペプチド分子の間のサブユニット配列同一性をさす。2種の分子の両方において、あるサブユニット位置が、同一の単量体サブユニットによって占有されている時;例えば、2種のDNA分子の各々において、ある位置がアデニンによって占有されている場合、それらはその位置において相同である。2種の配列の間の相同性は、マッチするかまたは相同である位置の数の直接関数である;例えば、2種の配列における位置の半分(例えば、10サブユニット長の重合体において、5個の位置)が相同である場合、その2種の配列は50%相同であり;位置の90%(例えば、10個のうち9個)がマッチするかまたは相同である場合、その2種の配列は90%相同である。
【0048】
「免疫反応」という用語は、本明細書において使用されるように、免疫細胞の刺激および/または活性化の検出可能な結果を意味する。
【0049】
「免疫応答」とは、その用語が本明細書において使用されるように、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、および/または抗原提示細胞のいずれかにおけるエフェクター機能の活性化および/または呼び出しをもたらす過程を意味する。従って、免疫応答には、当業者によって理解されるように、ヘルパーT細胞応答または細胞傷害性T細胞応答の検出可能な抗原特異的なまたは同種異系の活性化、抗体の産生、アレルギー反応のT細胞によって媒介される活性化等が含まれるが、これらに限定されない。
【0050】
「免疫細胞」とは、その用語が本明細書において使用されるように、免疫応答の開始に関与する任意の細胞を意味する。そのような細胞には、T細胞、B細胞、NK細胞、抗原提示細胞等が含まれるが、これらに限定されない。
【0051】
本明細書において使用されるように、「説明材料」には、本発明の組成物および方法の有用性を知らせるために使用され得る、刊行物、記録、図形、またはその他の表現媒体が含まれる。本発明のキットの説明材料は、例えば、本発明の核酸、ペプチド、および/もしくは組成物を含有している容器に添付されてもよいし、または核酸、ペプチド、および/もしくは組成物を含有している容器と共に出荷されてもよい。あるいは、説明材料は、説明材料および化合物が受容者によって協力的に使用されることを意図して、容器とは別に出荷されてもよい。
【0052】
「単離された」とは、天然状態から改変されているかまたは除去されていることを意味する。例えば、生存している動物に天然に存在する核酸またはペプチドは、「単離されて」いないが、その天然状態の共存材料から部分的にまたは完全に分離された同一の核酸またはペプチドは、「単離されて」いる。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在してもよいし、または、例えば、宿主細胞のような非ネイティブ環境に存在してもよい。
【0053】
本発明に関して、一般的に存在する核酸塩基についての以下の略語が使用される。「A」はアデノシンをさし、「C」はシトシンをさし、「G」はグアノシンをさし、「T」はチミジンをさし、「U」はウリジンをさす。
【0054】
特記されない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、相互の縮重バージョンであって、同一のアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列が含まれる。タンパク質またはRNAをコードするヌクレオチド配列という語句には、タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、いくつかのバージョンにおいて、イントロンを含有している場合があるという点で、イントロンも含まれ得る。
【0055】
「レンチウイルス」とは、本明細書において使用されるように、レトロウイルス科の属をさす。レンチウイルスは、非分裂細胞を感染させることができる点でレトロウイルスの中でも独特であり;有意な量の遺伝情報を宿主細胞のDNAへ送達することができ、従って、遺伝子送達ベクターの最も効率的な方法のうちの一つである。HIV、SIV、およびFIVは、全て、レンチウイルスの例である。レンチウイルスに由来するベクターは、インビボで有意なレベルの遺伝子移入を達成する手段を提示する。
【0056】
免疫応答を「モジュレートする」という用語は、本明細書において使用されるように、処置もしくは化合物の非存在下での哺乳動物における免疫応答のレベルと比較して、かつ/または他の面では同一であるが未処置である哺乳動物における免疫応答のレベルと比較して、哺乳動物における免疫応答のレベルの検出可能な増加または減少を媒介することを意味する。その用語には、哺乳動物、好ましくは、ヒトにおいて、ネイティブのシグナルまたは応答を妨害しかつ/またはそれらに影響し、それにより、有益な治療的応答を媒介することが包含される。
【0057】
「負のシグナル」とは、本明細書において使用されるように、とりわけ、増殖の減少、活性化の減少、細胞処理の減少等に関連した細胞内イベントの典型的なカスケードを誘導するシグナルを意味する。
【0058】
「正のシグナル」とは、本明細書において使用されるように、とりわけ、増殖の増加、活性化の増加、細胞処理の増加等に関連した細胞内イベントの典型的なカスケードを誘導するシグナルを意味する。
【0059】
「機能的に連結された」という用語は、後者の発現をもたらす、制御配列と異種核酸配列との間の機能的な連結をさす。例えば、第一の核酸配列が、第二の核酸配列と機能的な関係に置かれている時、その第一の核酸配列はその第二の核酸配列と機能的に連結されている。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響する場合、そのプロモーターはそのコード配列に機能的に連結されている。一般に、機能的に連結されたDNA配列は、連続しており、2個のタンパク質コード領域を接合する必要がある場合、同一のリーディングフレーム内にある。
【0060】
免疫原性組成物の「非経口」投与には、例えば、皮下(s.c.)、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)、または胸骨内への注射または注入の技術が含まれる。
【0061】
「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書において使用されるように、ヌクレオチドの鎖として定義される。さらに、核酸はヌクレオチドの重合体である。従って、核酸およびポリヌクレオチドは、本明細書において使用されるように、交換可能である。当業者は、核酸が、単量体「ヌクレオチド」へ加水分解され得るポリヌクレオチドであるという一般知識を有している。単量体ヌクレオチドはヌクレオシドへ加水分解され得る。本明細書において使用されるように、ポリヌクレオチドには、非限定的に、組換え手段、即ち、通常のクローニング技術およびPCR(商標)等を使用した組換えライブラリーまたは細胞ゲノムからの核酸配列のクローニング、ならびに合成手段を含む、当技術分野において利用可能な任意の手段によって入手される全ての核酸配列が含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
本明細書において使用されるように、「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」という用語は、交換可能に使用され、ペプチド結合によって共有結合的に連結されたアミノ酸残基から構成された化合物をさす。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2個のアミノ酸を含有していなければならず、タンパク質またはペプチドの配列を構成し得るアミノ酸の最大数には制限がない。ポリペプチドには、ペプチド結合によって相互に接合された2個以上のアミノ酸を含むペプチドまたはタンパク質が含まれる。本明細書において使用されるように、その用語は、例えば、当技術分野においてペプチド、オリゴペプチド、およびオリゴマーとも一般的に呼ばれる短鎖、ならびに当技術分野においてタンパク質(多くの型が存在する)と一般に呼ばれるより長い鎖の両方をさす。「ポリペプチド」には、とりわけ、例えば、生物学的活性を有する断片、実質的に相同のポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドのバリアント、修飾型ポリペプチド、誘導体、アナログ、融合タンパク質が含まれる。ポリペプチドには、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0063】
「プロモーター」という用語は、本明細書において使用されるように、ポリヌクレオチド配列の特異的転写を開始させるために必要とされる、細胞の合成機構、または導入された合成機構によって認識されるDNA配列として定義される。
【0064】
本明細書において使用されるように、「プロモーター/制御配列」という用語は、プロモーター/制御配列に機能的に連結された遺伝子産物の発現のために必要とされる核酸配列を意味する。いくつかの事例において、この配列は、コアプロモーター配列であり得、他の事例において、この配列は、遺伝子産物の発現のために必要とされるエンハンサー配列およびその他の制御要素も含み得る。プロモーター/制御配列は、例えば、組織特異的に遺伝子産物を発現するものであり得る。
【0065】
「構成的」プロモーターとは、遺伝子産物をコードするかまたは特定するポリヌクレオチドと機能的に連結された時、細胞の大部分のまたは全ての生理学的条件の下で、細胞において遺伝子産物の産生を引き起こすヌクレオチド配列である。
【0066】
「誘導性」プロモーターとは、遺伝子産物をコードするかまたは特定するポリヌクレオチドと機能的に連結された時、プロモーターに対応する誘導剤が細胞に存在する時にのみ、実質的に、細胞において遺伝子産物の産生を引き起こすヌクレオチド配列である。
【0067】
「組織特異的」プロモーターとは、遺伝子をコードするかまたは特定するポリヌクレオチドと機能的に連結された時、細胞がプロモーターに対応する組織型の細胞である場合にのみ、実質的に、細胞において遺伝子産物の産生を引き起こすヌクレオチド配列である。
【0068】
「対象」という用語には、免疫応答が誘発され得る、生存している生物(例えば、哺乳動物)が含まれるものとする。
【0069】
本明細書において使用されるように、「実質的に精製された」細胞とは、他の細胞型を本質的に含まない細胞である。実質的に精製された細胞とは、それが天然に存在する状態において通常関連している他の細胞型から分離されている細胞もさす。いくつかの事例において、実質的に精製された細胞の集団とは、細胞の均質集団をさす。他の事例において、この用語は、それらが天然の状態において天然に関連している細胞から分離されている細胞を単にさす。いくつかの態様において、細胞はインビトロで培養される。他の態様において、細胞はインビトロで培養されない。
【0070】
「治療的」という用語は、本明細書において使用されるように、処置および/または予防を意味する。治療効果は、疾患状態の抑制、軽減、または根絶によって入手される。
【0071】
「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」という用語は、本明細書において使用されるように、外来性の核酸が宿主細胞へ移入されるかまたは導入される過程をさす。「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」細胞とは、外来性の核酸によりトランスフェクトされているか、形質転換されているか、または形質導入されているものである。細胞には、第一の主細胞およびその子孫が含まれる。
【0072】
「転写調節下」または「機能的に連結された」という語句は、本明細書において使用されるように、プロモーターが、ポリヌクレオチドのRNAポリメラーゼによる転写および発現の開始を調節するためにポリヌクレオチドに対して正確な位置および方向にあることを意味する。
【0073】
「ベクター」とは、単離された核酸を含み、単離された核酸を細胞の内部へ送達するために使用され得る組成物である。直鎖状ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性の化合物と会合したポリヌクレオチド、プラスミド、およびウイルスを含むが、これらに限定されない、多数のベクターが当技術分野において公知である。従って、「ベクター」という用語には、自律複製性のプラスミドまたはウイルスが含まれる。その用語には、例えば、ポリリジン化合物、リポソーム等のような、細胞への核酸の移入を容易にする非プラスミド化合物および非ウイルス化合物も含まれると解釈されるべきである。ウイルスベクターの例には、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター等が含まれるが、これらに限定されない。
【0074】
「刺激」という用語は、TCR/CD3複合体を介したシグナル伝達のような(これに限定されない)シグナル伝達イベントを媒介する、刺激分子(例えば、TCR/CD3複合体)の同族リガンドとの結合により誘導される一次応答を意味する。刺激は、TGFβのダウンレギュレーションおよび/または細胞骨格構造の再編成等のような、ある種の分子の改変された発現を媒介することができる。
【0075】
「活性化」とは、本明細書において使用されるように、検出可能な細胞増殖を誘導するために十分に刺激されたT細胞の状態をさす。活性化は、誘導されたサイトカイン産生および検出可能なエフェクター機能にも関連し得る。「活性化されたT細胞」という用語は、とりわけ、細胞分裂を行っているT細胞をさす。活性化は、免疫応答の生成にも関連している場合があり(例えば、ConAまたはPHAのようなマイトジェン)、CD25、即ち、IL2受容体のような表面マーカーを検出可能にアップレギュレートし、p56lckが関与するリン酸化カスケードを開始させ、サイトカインおよびインターロイキンの放出を引き起こし、とりわけ、新生DNA鎖への3H-チミジンの取り込みのレベルを査定することにより査定され得るDNA合成を増加させ、細胞の増殖を引き起こす。
【0076】
「特異的に結合する」という用語は、本明細書において使用されるように、試料中に存在する同族結合パートナー(例えば、T細胞上に存在する刺激分子および/または共刺激分子)タンパク質を認識し結合するが、試料中の他の分子は実質的に認識せず結合しない抗体またはリガンドを意味する。
【0077】
範囲:この開示の全体にわたって、本発明の様々な局面が、範囲フォーマットで提示され得る。範囲フォーマットでの記載は、便宜および簡潔のためのものに過ぎず、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことが理解されなければならない。従って、範囲の記載は、その範囲内の全ての可能性のある部分範囲および個々の数値を具体的に開示しているものと見なされるべきである。例えば、1~6のような範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等のような部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、および6を具体的に開示しているものと見なされるべきである。これは範囲の幅に関わらず当てはまる。
【0078】
説明
本発明は、負のシグナル伝達シグナルを正のシグナルへ切り替えるため、キメラスイッチ受容体を設計することが可能であるという発見に関する。一つの態様において、スイッチ受容体は、負のシグナルに関連した第一のタンパク質またはその断片と、正のシグナルに関連した第二のタンパク質またはその断片とを含むキメラタンパク質である。負のシグナルに関連したタンパク質の例には、CTLA-4、PD-1、BTLA等が含まれるが、これらに限定されない。正のシグナルに関連したタンパク質の例には、CD28、ICOS等が含まれるが、これらに限定されない。
【0079】
本発明は、キメラスイッチ受容体および関連融合タンパク質、ならびにこれらのタンパク質により癌を処置する方法に関する。
【0080】
一つの態様において、本発明は、抗腫瘍特性を示す、キメラスイッチ受容体を発現するよう操作された細胞(例えば、T細胞またはナチュラルキラー細胞)を提供する。いくつかの事例において、操作された細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)も発現するよう操作される。いくつかの事例において、本発明の操作された細胞は、増強されたIL-2およびIFN-γの産生を示す。いくつかの事例において、本発明の操作された細胞は、IL-17を分泌するよう偏向する。従って、本発明の操作された細胞は、患者へ注入された時、患者におけるインビボの腫瘍細胞を排除することができる。
【0081】
組成物
本発明は、一つの局面において、細胞において発現された時、負のシグナルを正の細胞内シグナルへ変換するスイッチ受容体を提供する。例えば、このスイッチ受容体は、負のシグナルを送達するポリペプチドを含む第一のドメインと;正のシグナルを送達するポリペプチドを含む第二のドメインとを有する。
【0082】
一つの態様において、負のシグナルを送達する能力を有するポリペプチドには、CTLA4、PD-1、BTLA等が含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
一つの態様において、正のシグナルを送達する能力を有するポリペプチドには、ICOS、CD28等が含まれるが、これらに限定されない。
【0084】
負のシグナルを送達するポリペプチドに関して適当な第一のドメインには、野生型CTLA4のバリアントまたは誘導体が含まれる。好ましくは、この態様のスイッチ受容体の第一のドメインは、CTLAタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも一部分、具体的には、CTLAの天然リガンドとの結合に必要な細胞外ドメインの部分である。野生型の細胞外ドメインまたはCTLAの天然リガンドとの結合を担う細胞外ドメインの部分のバリアントも、野生型タンパク質と類似したレベルの生物学的活性を提供する限り、本発明に含まれる。
【0085】
負のシグナルを送達するポリペプチドに関して適当な第一のドメインには、野生型PD-1のバリアントまたは誘導体が含まれる。好ましくは、この態様のスイッチ受容体の第一のドメインは、PD-1タンパク質の細胞外ドメインの少なくとも一部分、具体的には、PD-1の天然リガンドとの結合に必要な細胞外ドメインの部分である。野生型の細胞外ドメインまたはPD-1の天然リガンドとの結合を担う細胞外ドメインの部分のバリアントも、野生型タンパク質と類似したレベルの生物学的活性を提供する限り、本発明に含まれる。
【0086】
負のシグナルを送達するポリペプチドに関して適当な第一のドメインには、野生型BTLAのバリアントまたは誘導体が含まれる。好ましくは、この態様のスイッチ受容体の第一のドメインは、BTLAタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも一部分、具体的には、BTLAの天然リガンドとの結合に必要な細胞外ドメインの部分である。野生型の細胞外ドメインまたはBTLAの天然リガンドとの結合を担う細胞外ドメインの部分のバリアントも、野生型タンパク質と類似したレベルの生物学的活性を提供する限り、本発明に含まれる。
【0087】
正のシグナルを送達するポリペプチドに関して適当な第二のドメインには、ICOSタンパク質のバリアントまたは誘導体が含まれる。好ましくは、この態様におけるスイッチ受容体の第二のドメインは、ICOSタンパク質の(エンドドメインとも呼ばれる)細胞内ドメインの少なくとも一部分、具体的には、細胞の細胞内成分へシグナルを誘発するために必要な部分である。野生型のICOSタンパク質の細胞内ドメインまたはシグナリングを担う細胞内ドメインの部分のバリアントも、野生型タンパク質と類似したレベルの生物学的活性を提供する限り、本発明に含まれる。
【0088】
正のシグナルを送達するポリペプチドに関して適当な第二のドメインには、CD28タンパク質のバリアントまたは誘導体が含まれる。好ましくは、この態様におけるスイッチ受容体の第二のドメインは、CD28タンパク質の(エンドドメインまたは細胞質ドメインとも呼ばれる)細胞内ドメインの少なくとも一部分、具体的には、細胞の細胞内成分へシグナルを誘発するために必要な部分である。野生型のCD28タンパク質の細胞内ドメインまたはシグナリングを担う細胞内ドメインの部分のバリアントも、野生型タンパク質と類似したレベルの生物学的活性を提供する限り、本発明に含まれる。
【0089】
本発明のスイッチ受容体は、細胞質ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞外ドメインに相当するポリペプチド、ならびに細胞質ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞外ドメインのより小さな一部分に相当するポリペプチドを含む。一つの態様において、スイッチ受容体は、負のシグナルを送達する第一のポリペプチドの膜貫通ドメインを含む。もう一つの態様において、スイッチ受容体は、正のシグナルを送達する第二のポリペプチドの膜貫通ドメインを含む。
【0090】
本発明のさらなる付加的な局面において、本明細書に記載されたスイッチ受容体のいずれかの負のシグナル成分を送達する第一のポリペプチドは、もう一つの阻害性タンパク質、即ち、免疫応答の活性化を防止し、かつ/またはT細胞もしくはB細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、NKT細胞、リンパ球前駆細胞、樹状細胞、単球/マクロファージ、抗原提示能を有する組織に基づくマクロファージ系統細胞、および多数の非専門抗原提示細胞のいずれか、例えば、内皮細胞のようなその他の細胞型においてアポトーシスを誘導するタンパク質に置換されてもよい。阻害性タンパク質の例には、PD-1、CTLA-4、BTLA、CD160、CD161、およびCD94;LAG-3およびCD244のリガンドが含まれるが、これらに限定されない(2011,Wherry,Nat Immunol.131:492-9を参照のこと)。
【0091】
対応するリガンドに結合し、この結合イベントを通して、スイッチ受容体の活性化をもたらすのであれば、負のシグナルを送達する任意の適当な第一のポリペプチドが、本発明によって使用され得る。本発明の一つの態様によると、スイッチ受容体の負のシグナルを送達する第一のポリペプチドの、その対応するリガンドとの接触は、スイッチ受容体の正のシグナルを送達する第二のポリペプチドの活性化をもたらす。このようにして、負のシグナルが、正のシグナルへ変換され得る。即ち、本発明のスイッチ受容体の第一のポリペプチドは、本発明の第二のポリペプチドの活性化が、負のシグナルの正のシグナルへの変換をもたらすような、細胞内シグナリング経路を誘発することができる。従って、本発明のスイッチ受容体の第一のポリペプチドの独特の特性は、天然には細胞に負のシグナルをもたらすであろう天然トランスシグナルを、抗腫瘍特徴を示すよう細胞を誘導する正のシグナルへ変換するということである。
【0092】
同様に、正のシグナル、即ち、スイッチ受容体の第一のポリペプチド成分に関連したトランスシグナルとは別個のシグナルを細胞へ送ることができるのであれば、任意の適当な第二のポリペプチドが使用され得る。第二のポリペプチドは、正のシグナルまたは活性化シグナルを送るタンパク質であり得る。本発明の第二のポリペプチドの好ましい例には、CD28、CD27、ICOS、CD137(4-1BB)、およびTCRζが含まれるが、これらに限定されない。
【0093】
一つの態様において、本発明は、免疫系を阻害し、望ましくない疾患状態をもたらす多数のリガンドまたはタンパク質が存在する微小環境を利用する。即ち、スイッチ受容体は、微小環境内の免疫阻害性因子に結合し、免疫阻害性因子に通常関連しているシグナルを、増強された免疫応答を示すよう細胞を活性化する正のシグナルへ変換する、第一のドメインを含むよう操作され得る。
【0094】
本発明の好ましいキメラタンパク質は、BTLA:ICOSである。BTLA配列のICOS配列との遺伝学的キメラ化および組換え発現は、BTLAおよびICOSの両方に起因し得る構造的特徴および機能的特徴を示すキメラBTLA:ICOS「スイッチ受容体」をもたらす。BTLA:ICOSを発現するよう操作された細胞は、阻害性シグナリングを刺激性シグナルへと転向し、それにより、T細胞機能を増強することができる。いくつかの事例において、細胞は、CARと組み合わせて、BTLA:ICOSスイッチ受容体を発現するよう操作される。
【0095】
本発明のもう1種の好ましいキメラタンパク質は、PD1:CD28である。PD1配列のCD28配列との遺伝学的キメラ化および組換え発現は、PD1およびCD28の両方に起因し得る構造的特徴および機能的特徴を示すキメラPD1:CD28「スイッチ受容体」をもたらす。PD1:CD28を発現するよう操作された細胞は、阻害性シグナリングを刺激性シグナルへと転向し、それにより、T細胞機能を増強することができる。いくつかの事例において、細胞は、CARと組み合わせて、PD1:CD28スイッチ受容体を発現するよう操作される。
【0096】
本発明のもう1種の好ましいキメラタンパク質は、CTLA4:CD28である。CTLA4配列のCD28配列との遺伝学的キメラ化および組換え発現は、CTLA4およびCD28の両方に起因し得る構造的特徴および機能的特徴を示すキメラCTLA4:CD28「スイッチ受容体」をもたらす。CTLA4:CD28を発現するよう操作された細胞は、阻害性シグナリングを刺激性シグナルへと転向し、それにより、T細胞機能を増強することができる。いくつかの事例において、細胞は、CARと組み合わせて、CTLA4:CD28スイッチ受容体を発現するよう操作される。
【0097】
本発明のタンパク質は、多数の形態で存在することができる。例えば、本発明のタンパク質は、直鎖状または分岐状のポリペプチドの形態であり得る。直鎖状キメラタンパク質は、組換えDNA技術によって作製され得る。例えば、キメラ転写カセットは、制限エンドヌクレアーゼ部位オーバーラップまたはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づくスプライスバイオーバーラップ(splice-by-overlap)伸張を使用して、組み立てられ得る。
【0098】
分岐状ポリペプチドキメラタンパク質は、鋳型組み立て合成ペプチド(template-assembled synthetic peptide)(TASP)テクノロジーによって容易に作製され得る(Mutter,Trends Biochem.Sci.13:260-265(1988))。この方法によると、ペプチド単位を別々に合成し、化学的カップリング試薬を使用して、コアペプチドのような多官能性担体に共有結合的にカップリングする。例えば、2個の逆平行βシートセグメント(lys-ala-lys)が2個のβターンによって連結されているグラミシジンSの環状デカペプチドアナログを、コアペプチドとして使用することができる。4個のリジン側鎖のεアミノ基に第一のタンパク質および第二のタンパク質を付着させるため、セグメント縮合戦略を使用することができる。
【0099】
本発明のタンパク質は、化学結合のようなブリッジによって共に連結された2種以上の別々のタンパク質として存在してもよい。例えば、ジチオ-ビス(スクシンイミジルプロピオネート)(DSP)のような化学的架橋試薬を使用して、分岐構造において、2種以上のタンパク質成分を相互に直接、共有結合的に連結することができる。この方法論により、例えば、第一のタンパク質および第二のタンパク質を直接連結することができる。
【0100】
本発明のキメラスイッチ受容体の特定の第一のポリペプチドおよび第二のポリペプチドは、処置される疾病に依って変動し得る。典型的には、例えば、癌またはウイルス感染を処置する時には、免疫細胞応答を刺激する第二のポリペプチドが使用される。病原性の免疫応答が存在する免疫系障害を処置する時には、阻害性の第二のポリペプチドが使用される。従って、癌およびウイルス性疾患の場合、阻害性シグナルを活性化免疫活性化シグナルへ変換するスイッチ受容体が望まれる。対照的に、自己免疫疾患の場合には、活性化シグナルを阻害性免疫シグナルへ変換するキメラスイッチ受容体が望まれる。この状況において、免疫阻害性の第二のタンパク質成分は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、および抗原提示細胞を含む、種々の病原性免疫エフェクターへ差し向けられ得る。
【0101】
従って、本発明は、細胞において発現された時、正のシグナルを負の細胞内シグナルへ変換するスイッチ受容体を提供する。例えば、このスイッチ受容体は、正のシグナルを送達するポリペプチドを含む第一のドメインと;負の細胞内シグナルを送達するポリペプチドを含む第二のドメインとを含有している。
【0102】
遺伝学的修飾
本発明は、レンチウイルスベクター(LV)により形質導入された細胞(例えば、T細胞)を包含する。一つの態様において、LVは、負のシグナルを送達するポリペプチドを含む第一のドメインと、正のシグナルを送達するポリペプチドを含む第二のドメインとを含む本発明のスイッチ受容体をコードする。
【0103】
一つの態様において、細胞は、特異抗体の抗原認識ドメインを、CD3ζ鎖またはFcγRIタンパク質の細胞内ドメインと、単一キメラタンパク質へと組み合わせたものであるキメラ抗原受容体(CAR)をコードするLVによりさらに形質導入されてもよい。
【0104】
レンチウイルスのようなレトロウイルスに由来するベクターは、トランスジーンの長期的な安定的な組み込みおよび娘細胞への伝播を可能にするため、長期的な遺伝子移入を達成するための適当なツールである。レンチウイルスベクターは、肝細胞のような非増殖性細胞を形質導入することができるため、マウス白血病ウイルスのようなオンコレトロウイルスに由来するベクターと比べて付加的な利点を有する。それらは、低い免疫原性という付加的な利点も有する。
【0105】
簡単に要約すると、本発明の天然または合成の核酸の発現は、典型的には、所望のポリペプチドまたはその一部分をコードする核酸をプロモーターと機能的に連結し、構築物を発現ベクターへ組み入れることにより達成される。ベクターは、真核生物における複製および組み込みのために適当であり得る。典型的なクローニングベクターは、所望の核酸配列の発現の制御のために有用な、転写および翻訳のターミネーター、開始配列、およびプロモーターを含有している。
【0106】
多数の型のベクターへ核酸をクローニングすることができる。例えば、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス、およびコスミドを含むが、これらに限定されないベクターへ、核酸をクローニングすることができる。特に重要なベクターには、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、および配列決定ベクターが含まれる。
【0107】
さらに、発現ベクターは、ウイルスベクターの形態で細胞へ提供されてもよい。ウイルスベクターテクノロジーは、当技術分野において周知であり、例えば、Sambrook et al.,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,volumes 1-3(3rd ed.,Cold Spring Harbor Press,NY 2001)、ならびにその他のウイルス学および分子生物学のマニュアルに記載されている。ベクターとして有用であるウイルスには、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、およびレンチウイルスが含まれるが、これらに限定されない。一般に、適当なベクターは、少なくとも1種の生物において機能性の複製起点、プロモーター配列、便利な制限エンドヌクレアーゼ部位、および1種以上の選択マーカーを含有している(例えば、WO 01/96584;WO 01/29058;および米国特許第6,326,193号)。
【0108】
付加的なプロモーター要素、例えば、エンハンサーが、転写開始の頻度を制御する。典型的には、これらは開始部位の30~110bp上流の領域に位置しているが、多数のプロモーターが開始部位の下流にも機能性要素を含有することが最近示された。プロモーター要素間の間隔はしばしば柔軟であるため、要素が相互に反転するかまたは移動した時、プロモーター機能は保存される。チミジンキナーゼ(tk)プロモーターにおいては、活性が低下し始める前に、プロモーター要素間の間隔が50bpまで増加し得る。プロモーターに依って、個々の要素は、転写を活性化するため、協力的にまたは独立して機能し得るようである。
【0109】
プロモーターの例は、前初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列である。このプロモーター配列は、それに機能的に連結されたポリヌクレオチド配列の高レベルの発現を駆動することができる強い構成的プロモーター配列である。しかしながら、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)末端反復配列(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタインバーウイルス前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ならびにアクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、およびクレアチンキナーゼプロモーターのようなヒト遺伝子プロモーターを含むが、これらに限定されない、その他の構成的プロモーター配列が使用されてもよい。さらに、本発明は構成的プロモーターの使用に限定されるべきでない。誘導性プロモーターも、本発明の一部として企図される。誘導性プロモーターの使用は、そのような発現が望まれる時、それが機能的に連結されたポリヌクレオチド配列の発現をオンにし、または発現が望まれない時、発現をオフにすることができる分子スイッチを提供する。誘導性プロモーターの例には、メタロチオニン(metallothionine)プロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、およびテトラサイクリンプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。
【0110】
CARポリペプチドまたはその一部分の発現を査定するため、細胞へ導入される発現ベクターは、ウイルスベクターを通してトランスフェクトするかまたは感染させようとした細胞の集団からの発現細胞の同定および選択を容易にするため、選択マーカー遺伝子またはレポーター遺伝子のいずれかまたは両方も含有していてもよい。他の局面において、選択マーカーは、DNAの別の小片に保持され、コトランスフェクション手法において使用されてもよい。宿主細胞における発現を可能にするため、選択マーカーおよびレポーター遺伝子の両方に、適切な制御配列が隣接していてもよい。有用な選択マーカーには、例えば、neo等のような抗生物質耐性遺伝子が含まれる。
【0111】
レポーター遺伝子は、トランスフェクトされた可能性のある細胞を同定し、制御配列の機能性を評価するために使用される。一般に、レポーター遺伝子は、レシピエント生物または組織には存在しないかまたは発現されず、何らかの容易に検出可能な特性、例えば、酵素活性によってその発現が顕在化されるポリペプチドをコードする遺伝子である。DNAがレシピエント細胞へ導入された後、適当な時点で、レポーター遺伝子の発現がアッセイされる。適当なレポーター遺伝子には、ルシフェラーゼ、βガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌型アルカリホスファターゼ、または緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子が含まれ得る(例えば、Ui-Tei et al.,2000 FEBS Letters 479:79-82)。適当な発現系は周知であり、公知の技術を使用して調製されてもよいし、または商業的に入手されてもよい。一般に、レポーター遺伝子の最高発現レベルを示す最小5'隣接領域を有する構築物が、プロモーターとして同定される。そのようなプロモーター領域を、レポーター遺伝子と連結し、プロモーターによって駆動される転写をモジュレートする能力について薬剤を評価するために使用することができる。
【0112】
細胞へ遺伝子を導入し発現させる方法は、当技術分野において公知である。発現ベクターに関して、当技術分野における任意の方法によって、宿主細胞、例えば、哺乳動物、細菌、酵母、または昆虫の細胞へ、容易に、ベクターを導入することができる。例えば、物理学的手段、化学的手段、または生物学的手段によって、発現ベクターを宿主細胞へ移入することができる。
【0113】
ポリヌクレオチドを宿主細胞へ導入するための物理学的方法には、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、粒子銃、微量注入、電気穿孔等が含まれる。ベクターおよび/または外来性の核酸を含む細胞を作製する方法は、当技術分野において周知である。例えば、Sambrook et al.,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL volumes 1-3(3rd ed.,Cold Spring Harbor Press,NY 2001)を参照のこと。
【0114】
関心対象のポリヌクレオチドを宿主細胞へ導入するための生物学的方法には、DNAベクターおよびRNAベクターの使用が含まれる。ウイルスベクター、特に、レトロウイルスベクターは、哺乳動物、例えば、ヒトの細胞へ遺伝子を挿入するための最も広く使用されている方法となっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI型、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス等に由来し得る。例えば、米国特許第5,350,674号および第5,585,362号を参照のこと。
【0115】
ポリヌクレオチドを宿主細胞へ導入するための化学的手段には、高分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、ならびに水中油型エマルション、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む脂質に基づく系のようなコロイド分散系が含まれる。インビトロおよびインビボで送達媒体として使用するための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。
【0116】
非ウイルス送達系が利用される場合、例示的な送達媒体はリポソームである。脂質製剤の使用は、核酸の宿主細胞への導入(インビトロ、エクスビボ、またはインビボ)のために企図される。もう一つの局面において、核酸は脂質と会合していてもよい。脂質と会合した核酸は、リポソームの水性の内部に封入されていてもよいし、リポソームの脂質二重層内に散在していてもよいし、リポソームおよびオリゴヌクレオチドの両方と会合した連結分子を介してリポソームに付着していてもよいし、リポソーム内に捕捉されていてもよいし、リポソームと複合体化されていてもよいし、脂質を含有している溶液の中に分散していてもよいし、脂質と混合されていてもよいし、脂質と組み合わせられていてもよいし、脂質内に懸濁物として含有されていてもよいし、ミセルに含有されるかもしくはミセルと複合体化されていてもよいし、またはその他の方式で脂質と会合していてもよい。脂質、脂質/DNA、または脂質/発現ベクターに関連した組成物は、溶液中での特定の構造に限定されない。例えば、それらは、ミセルとして二重層構造で存在してもよいし、または「崩壊した(collapsed)」構造を有していてもよい。それらは、溶液中に単に散在していてもよく、サイズまたは形が不均一の凝集物を形成していてもよい。脂質とは、天然に存在する脂質であってもよいしまたは合成脂質であってもよい脂肪性の物質である。例えば、脂質には、細胞質に天然に存在する脂肪小滴、ならびに脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、およびアルデヒドのような、長鎖脂肪族炭化水素およびそれらの誘導体を含有している化合物のクラスが含まれる。
【0117】
使用するために適当な脂質は、商業的な供給元から入手され得る。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)は、Sigma(St.Louis,MO)から入手され得;ジセチルリン酸(「DCP」)は、K & K Laboratories(Plainview,NY)から入手され得;コレステロール(「Choi」)は、Calbiochem-Behringから入手され得;ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)およびその他の脂質は、Avanti Polar Lipids,Inc.(Birmingham,AL.)から入手され得る。クロロホルムまたはクロロホルム/メタノールにおける脂質のストック溶液は、約-20℃で保管され得る。クロロホルムは、メタノールより容易に蒸発するため、唯一の溶媒として使用される。「リポソーム」とは、包囲された脂質二重層または凝集物の生成により形成された多様な単層型および多層型の脂質媒体を包含する総称的な用語である。リポソームは、リン脂質二重層膜および内部の水性媒体を含む小胞構造を有していることを特徴とし得る。多層型リポソームは、水性媒体によって分離された複数の脂質層を有する。それらは、リン脂質を過剰の水性溶液に懸濁させた時、自然に形成される。脂質成分は、閉構造を形成する前に、自己再配置を起こし、脂質二重層の間に水および溶解した溶質を捕捉する(Ghosh et al.,1991 Glycobiology 5:505-10)。しかしながら、通常の小胞構造とは異なる構造を溶液中で有する組成物も包含される。例えば、脂質は、ミセル構造をとっていてもよいし、または、単に、脂質分子の不均一の凝集物として存在してもよい。リポフェクタミン-核酸複合体も企図される。
【0118】
治療的適用
本発明は、スイッチ受容体を発現するようT細胞を遺伝学的に修飾し、操作されたT細胞をその必要のあるレシピエントへ注入する型の細胞治療を含む。注入された細胞は、レシピエントにおいて腫瘍細胞を殺傷することができる。抗体治療とは異なり、本発明の操作されたT細胞は、インビボで複製することができるため、持続的な腫瘍コントロールをもたらし得る長期残留性がもたらされる。
【0119】
本発明は、本発明の操作されたスイッチ受容体を、有効量、患者へ投与する工程を含む、疾病のため患者を処置する方法にも関する。卵巣癌、乳癌、結腸癌、多形膠芽腫、前立腺癌、および白血病のような癌;HBV、HCV、HTLV-1、HTLV-II、EBV、HSV-I、HSV-II、およびKSHVによる慢性ウイルス感染のようなウイルス感染;ならびに関節炎、喘息、移植片対宿主病、臓器拒絶反応、乾癬、全身性エリテマトーデス、アトピー性アレルギー、炎症性腸疾患、多発性硬化症、アレルギー性皮膚炎、シェーグレン症候群、進行性全身性硬化症、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性糖尿病、自己免疫性肝疾患、および骨髄異形成症候群のような自己免疫疾患を含むが、これらに限定されない、様々な疾病を、本発明の方法によって処置することができる。
【0120】
癌の例には、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病またはリンパ系悪性疾患が含まれるが、これらに限定されない。そのような癌のより具体的な例には、腎臓癌または腎癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、および肺扁平上皮癌を含む肺癌、扁平上皮癌(squamous cell cancer)(例えば、扁平上皮癌(epithelial squamous cell cancer))、子宮頸癌、卵巣癌、前立腺癌、肝臓癌、膀胱癌、腹膜癌、肝細胞癌、胃腸癌を含む胃癌(gastric cancer)または胃癌(stomach cancer)、消化管間質腫瘍(GIST)、膵臓癌、頭頸部癌、膠芽腫、網膜芽細胞腫、星状細胞腫、莢膜細胞腫、男化腫瘍、肝細胞腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、多発性骨髄腫、および急性血液系悪性疾患を含む血液系悪性疾患、子宮内膜癌または子宮癌、子宮内膜症、繊維肉腫、絨毛膜癌腫、唾液腺癌、陰門癌、甲状腺癌(thyroid cancer)、食道癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、カポジ肉腫、黒色腫、皮膚癌、シュワン腫、乏突起神経膠腫、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、骨原性肉種、平滑筋肉腫、尿路癌、甲状腺癌(thyroid carcinomas)、ウィルムス腫瘍、およびB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL;巨大腫瘤病変NHL;マントル細胞リンパ腫;エイズ関連リンパ腫;およびワルデンシュトレームマクログロブリン血症を含む);慢性リンパ球性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);ヘアリーセル白血病、慢性骨髄芽球性白血病;および移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、ならびに母斑症に関連した異常血管増殖、(脳腫瘍に関連したもののような)浮腫、およびメイグス症候群が含まれる。「腫瘍」とは、本明細書において使用されるように、悪性であるかまたは良性であるかに関わらない全ての新生物細胞の成長および増殖、ならびに全ての前癌性および癌性の細胞および組織をさす。
【0121】
本発明に関して、「腫瘍抗原」または「過剰増殖性障害抗原」または「過剰増殖性障害に関連した抗原」とは、特定の過剰増殖性障害に共通の抗原をさす。ある種の局面において、本発明の過剰増殖性障害抗原は、原発性または転移性の黒色腫、胸腺腫、リンパ腫、肉腫、肺癌、肝臓癌、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、白血病、子宮癌、子宮頸癌、膀胱癌、腎臓癌、および乳癌、前立腺癌、卵巣癌、膵臓癌等のような腺癌を含むが、これらに限定されない、癌に由来する。
【0122】
一つの態様において、本発明の腫瘍抗原は、哺乳動物の癌腫瘍に由来する腫瘍浸潤リンパ球(TIL)によって免疫学的に認識される1種以上の抗原性癌エピトープを含む。
【0123】
悪性腫瘍は、免疫攻撃のための標的抗原として機能し得る多数のタンパク質を発現する。これらの分子には、黒色腫におけるMART-1、チロシナーゼ、およびGP100、ならびに前立腺癌における前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)および前立腺特異抗原(PSA)のような組織特異抗原が含まれるが、これらに限定されない。他の標的分子は、癌遺伝子HER-2/Neu/ErbB-2のような形質転換関連分子の群に属する。標的抗原のさらにもう一つの群は、癌胎児性(carcinoembryonic)抗原(CEA)のような癌胎児性(onco-fetal)抗原である。B細胞リンパ腫において、腫瘍に特異的なイディオタイプ免疫グロブリンは、個々の腫瘍に独特の真に腫瘍特異的な免疫グロブリン抗原を構成する。CD19、CD20、およびCD37のようなB細胞分化抗原は、B細胞リンパ腫における標的抗原のための他の候補である。これらの抗原のうちのいくつか(CEA、HER-2、CD19、CD20、イディオタイプ)は、モノクローナル抗体による受動免疫治療のための標的として使用され、限られた成功をおさめている。
【0124】
癌のための処置に関して、本発明のスイッチ受容体は、任意で、他の化学療法剤と組み合わせて患者へ投与されてもよい。適当な化学療法剤には、例えば、チオテパおよびシクロホスファミドのようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファン(piposulfan)のようなアルキルスルホン酸;ベンゾドパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドパ(meturedopa)、およびウレドパ(uredopa)のようなアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド、およびトリメチロロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミンおよびメチラメラミン(methylamelamines);クロラムブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、シクロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードのようなナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンのようなニトロソウレア;アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カリチアマイシン、カラビシン(carabicin)、カミノマイシン(caminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシンのような抗生物質;メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)のような代謝拮抗薬;デノプテリン(denopterin)、メトトレキサート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキサートのような葉酸アナログ;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニンのようなプリンアナログ;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FUのようなピリミジンアナログ;カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンのようなアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンのような抗副腎薬(anti-adrenal);フォリン酸のような葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミド(aldophosphamide)配糖体;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトレキサート;デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジコン(diaziquone);エルフォルミチン(elformithine);エリプチニウム(elliptinium)酢酸塩;エトグルシド;ガリウム硝酸塩;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ポドフィリン(podophyllinic)酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2',2"-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン、例えば、パクリタクセル(TAXOL(商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)およびドセタキセル(TAXOTERE(商標)、Rhone-Poulenc Rorer,Antony,France);クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチンおよびカルボプラチンのような白金アナログ;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン(novantrone);テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロン酸;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン、カペシタビン;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体が含まれる。
【0125】
例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害性4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストン(onapristone)、およびトレミフェン(Fareston)を含む抗エストロゲン薬;ならびにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、リュープロリド、およびゴセレリンのような抗アンドロゲン薬;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体のような、腫瘍に対するホルモン作用を制御するかまたは阻害するよう作用する抗ホルモン剤も、含まれる。
【0126】
プロテアソーム阻害剤およびヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤、シクロヘキシミド、イマチニブメシル酸塩およびその他のタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤、17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン、亜ヒ酸、およびX連鎖アポトーシス抑制タンパク質低分子アンタゴニスト;ならびにこれらのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体のような、TRAILに対して腫瘍細胞を感作し、TRAIL耐性を克服することができる化学療法剤も、含まれる。
【0127】
癌処置の方法に関する付加的な情報は、参照によってその全体が組み入れられる米国特許第7,285,522号に提供されている。
【0128】
従って、好ましい態様において、本発明のスイッチ受容体は、乳癌を処置するために使用され得る。もう一つの好ましい態様において、本発明のスイッチ受容体は、結腸癌を処置するために使用され得る。もう一つの態様において、本発明のスイッチ受容体は、肝臓癌を処置するために使用され得る。もう一つの好ましい態様において、本発明のスイッチ受容体は、卵巣癌を処置するために使用され得る。もう一つの態様において、本発明のスイッチ受容体は、白血病を処置するために使用され得る。もう一つの態様において、本発明のスイッチ受容体は、黒色腫を処置するために使用され得る。さらなる態様において、本発明のスイッチ受容体は、同種免疫疾患、例えば、移植片拒絶反応または移植片対宿主病または宿主対移植片病を処置するために使用され得る。
【0129】
典型的には、各疾患適用について、候補スイッチ受容体の小さな「ライブラリー」を生成し、相対的な効力および毒性を決定するため、適切なよく確立されたエクスビボおよびインビボのモデルにおいて比較評価することができる。
【0130】
方法において使用される具体的な第一のタンパク質および第二のタンパク質は、処置される疾病に依って変動するであろう。一般に、癌の場合には、阻害性シグナルを活性化免疫トランス活性化シグナルへ変換するスイッチ受容体が望まれる。特定の理論によって拘束されることは望まないが、本発明の操作された細胞によって誘発される抗腫瘍免疫応答は、能動または受動の免疫応答であり得る。応答は養子免疫治療アプローチの一部であり得る。
【0131】
エクスビボ免疫感作に関して、以下のうちの少なくとも一つが、哺乳動物へ細胞を投与する前にインビトロで行われる:(i)細胞の増幅、(ii)本発明のスイッチ受容体をコードする核酸の細胞への導入、または(iii)細胞の凍結保存。
【0132】
エクスビボ手法は、当技術分野において周知であり、より完全に以下に記述される。簡単に説明すると、細胞を、哺乳動物(好ましくは、ヒト)から単離し、本発明のスイッチ受容体を発現するベクターにより遺伝学的に修飾する(即ち、インビトロで形質導入するかまたはトランスフェクトする)。操作された細胞を、治療的利益を与えるため、哺乳動物レシピエントへ投与することができる。哺乳動物レシピエントは、ヒトであり得、操作された細胞は、レシピエントに対して自己であり得る。あるいは、細胞は、レシピエントに対して同種異系、同系、または異種であってもよい。
【0133】
造血系の幹細胞および前駆細胞のエクスビボ増幅のための手法は、参照によって本明細書に組み入れられる米国特許第5,199,942号に記載されており、本発明の細胞に適用され得る。その他の適当な方法は、当技術分野において公知であり、従って、本発明は、細胞のエクスビボ増幅の特定の方法に限定されない。簡単に説明すると、T細胞のエクスビボ培養および増幅は、以下の工程を含む:(1)末梢血採集物または骨髄外植片から哺乳動物由来のCD34+の造血系の幹細胞および前駆細胞を収集する工程;ならびに(2)そのような細胞をエクスビボで増幅する工程。米国特許第5,199,942号に記載された細胞増殖因子に加えて、flt3-L、IL-1、IL-3、およびc-kitリガンドのような他の因子を、細胞の培養および増幅のために使用することができる。
【0134】
エクスビボ免疫感作に関する細胞に基づくワクチンの使用に加えて、本発明は、患者において抗原に対する免疫応答を誘発するためのインビボ免疫感作のための組成物および方法も提供する。
【0135】
一般に、本明細書に記載されるようにして活性化され増幅された細胞は、免疫不全個体において発生する疾患の処置および防止において利用され得る。特に、本発明の操作された細胞は、癌の処置において使用される。ある種の態様において、本発明の細胞は、癌発症のリスクを有する患者の処置において使用される。従って、本発明は、本発明の操作されたT細胞を、治療的に有効な量、その必要のある対象へ投与する工程を含む、癌の処置または防止の方法を提供する。
【0136】
本発明の操作されたT細胞は、単独で投与されてもよいし、または希釈剤および/もしくはIL-2もしくはその他のサイトカインもしくは細胞集団のような他の成分と組み合わせられた薬学的組成物として投与されてもよい。簡単に説明すると、本発明の薬学的組成物は、1種以上の薬学的にまたは生理学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせて、本明細書に記載される標的細胞集団を含み得る。そのような組成物は、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水等のような緩衝液;グルコース、マンノース、ショ糖またはデキストラン、マンニトールのような炭水化物;タンパク質;ポリペプチドまたはグリシンのようなアミノ酸;酸化防止剤;EDTAまたはグルタチオンのようなキレート剤;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);および保存剤を含み得る。本発明の組成物は、好ましくは、静脈内投与のために製剤化される。
【0137】
本発明の薬学的組成物は、処置される(または防止される)疾患にとって適切な様式で投与され得る。適切な投薬量は臨床試験によって決定され得るが、投与の量および頻度は、患者の状態ならびに患者の疾患の型および重症度のような因子によって決定されるであろう。
【0138】
「免疫学的に有効な量」、「抗腫瘍有効量」、「腫瘍阻害有効量」、または「治療量」が示される時、投与される本発明の組成物の正確な量は、年齢、体重、腫瘍サイズ、感染または転移の程度、および患者(対象)の状態の個体差を考慮して、医師によって決定され得る。一般に、本明細書に記載されたT細胞を含む薬学的組成物は、104~109細胞/kg体重、好ましくは、105~106細胞/kg体重(これらの範囲内の全ての整数値を含む)の投薬量で投与され得ると言える。T細胞組成物は、これらの投薬量で複数回投与されてもよい。細胞は、免疫治療において一般的に公知である注入技術を使用することによって投与され得る(例えば、Rosenberg et al.,New Eng.J.of Med.319:1676,1988を参照のこと)。特定の患者のための最適の投薬量および処置計画は、疾患の兆候について患者をモニタリングし、それに応じて、処置を調整することにより、医学分野の当業者によって容易に決定され得る。
【0139】
ある種の態様において、活性化されたT細胞を対象へ投与し、次いで、再び採血し(またはアフェレーシスを実施し)、本発明によってT細胞を活性化し、活性化され増幅されたT細胞を患者へ再注入することが望ましいかもしれない。この過程を数週間毎に複数回実施することができる。ある種の態様において、T細胞は10cc~400ccの採血物から活性化され得る。ある種の態様において、T細胞は、20cc、30cc、40cc、50cc、60cc、70cc、80cc、90cc、または100ccの採血物から活性化される。理論によって拘束されないが、この複数回採血/複数回再注入プロトコルの使用は、T細胞のある種の集団を選択する可能性がある。
【0140】
本発明の組成物の投与は、エアロゾル吸入、注射、経口摂取、輸液、植え込み、または移植を含む、任意の便利な様式で実施され得る。本明細書に記載された組成物は、患者へ、皮下に、皮内に、腫瘍内に、リンパ節内に、延髄内に、筋肉内に、静脈内(i.v.)注射により、または腹腔内に投与され得る。一つの態様において、本発明のT細胞組成物は、皮内注射または皮下注射によって患者へ投与される。もう一つの態様において、本発明のT細胞組成物は、好ましくは、i.v.注射によって投与される。T細胞の組成物は、腫瘍、リンパ節、または感染部位に直接注射されてもよい。
【0141】
本発明のある種の態様において、T細胞が治療レベルにまで増幅される本明細書に記載された方法または当技術分野において公知のその他の方法を使用して、活性化され、増幅された細胞は、抗ウイルス治療、シドホビルおよびインターロイキン-2、シタラビン(ARA-Cとしても公知)のような薬剤による処置、またはMS患者のためのナタリズマブ処置、または乾癬患者のためのエファリズマブ処置、またはPML患者のためのその他の処置を含むが、これらに限定されない、多数の適切な処置モダリティと共に(例えば、前に、同時に、または後に)患者へ投与される。さらなる態様において、本発明のT細胞は、化学療法、放射線、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸、およびFK506のような免疫抑制剤、抗体、またはCAMPATH、抗CD3抗体もしくはその他の抗体治療、サイトキシン(cytoxin)、フルダリビン(fludaribine)、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、サイトカイン、および照射のようなその他の免疫除去(immunoablative)剤と組み合わせられて使用されてもよい。これらの薬物は、カルシウム依存性ホスファターゼカルシニューリンを阻害するか(シクロスポリンおよびFK506)、または増殖因子によって誘導されるシグナリングのために重要なp70S6キナーゼを阻害する(ラパマイシン)(Liu et al.,Cell 66:807-815,1991;Henderson et al.,Immun.73:316-321,1991;Bierer et al.,Curr.Opin.Immun.5:763-773,1993;Isoniemi(前記))。さらなる態様において、本発明の細胞組成物は、骨髄移植、フルダラビン、体外照射治療(XRT)、シクロホスファミドのような化学療法剤、またはOKT3もしくはCAMPATHのような抗体のいずれかを使用するT細胞除去治療と共に(例えば、前に、同時に、または後に)患者へ投与される。もう一つの態様において、本発明の細胞組成物は、CD20と反応する薬剤、例えば、リツキサンのようなB細胞除去治療の後に投与される。例えば、一つの態様において、対象は、高用量化学療法による標準的な処置を受けた後、末梢血幹細胞移植を受けることができる。ある種の態様において、移植の後、対象は、本発明の増幅された免疫細胞の注入を受ける。付加的な態様において、増幅された細胞は、手術の前または後に投与される。
【0142】
患者へ投与される上記の処置の投薬量は、処置される状態および処置のレシピエントの正確な性質によって変動するであろう。ヒトへの投与のための投薬量の概算は、当技術分野において認められている実務によって実施され得る。CAMPATHについての用量は、例えば、一般に、成人患者について1~約100mgの範囲であり、一般的には、1~30日間にわたり毎日投与されるであろう。好ましい1日用量は、1日当たり1~10mgであるが、いくつかの事例において、1日当たり40mgまでのより大きな用量が使用されてもよい(米国特許第6,120,766号に記載されている)。
【実施例
【0143】
実験実施例
以下の実験実施例を参照することにより、本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、例示のためにのみ提供され、特記されない限り、限定するためのものではない。従って、本発明は、決して、以下の実施例に限定されるものと解釈されるべきでなく、本明細書に提供された教示の結果として明白になる任意の全ての変動を包含するものと解釈されるべきである。
【0144】
さらなる説明なしに、当業者は、上記の説明および以下の例示的な実施例を使用して、本発明の化合物を作成し利用し、特許請求の範囲に記載された方法を実施することができる。従って、以下の作業実施例は、本発明の好ましい態様を具体的に指摘するものであって、決して、開示の残りの部分を限定するものと解釈されてはならない。
【0145】
実施例1:スイッチ受容体
本明細書に提示された結果は、T細胞において負のシグナルを正のシグナルへ変換するためにキメラ受容体を操作することが可能であることを証明する。全身的な、従って、免疫系全体における腫瘍阻害因子の阻害を回避する方法を開発するため、実験を設計した。簡単に説明すると、T細胞を、(阻害性PD-1ドメインを含まない)PD-1細胞外ドメインと、刺激性のCD28またはICOSのシグナリングドメインとをコードするキメラ受容体を発現するよう操作した。キメラ受容体の方向性は、PD-1細胞外ドメインを細胞外に置き、CD28またはICOSの刺激性ドメインをT細胞内に置いた。従って、細胞内シグナルが、ネイティブの阻害性PD-1エンドドメインではなく、CD28またはICOSのシグナリングエンドドメインによって送達されるため、腫瘍微小環境内の腫瘍抗原とのT細胞の相互作用は、PD-1リガンドの接触によって正の影響を受ける。
【0146】
これらの実験において利用された材料および方法を以下に記載する。
【0147】
材料および方法
スイッチ受容体作製
BTLAスイッチ受容体の試験のため、構築物を設計した。以下は、pGEM.64Aに基づくIVTベクターへクローニングされた各構築物の配列である。
【0148】
T細胞の形質導入
抗CD3モノクローナル抗体および抗CD28モノクローナル抗体によりコーティングされた常磁性ポリスチレンビーズを使用したT細胞調製の方法が、記載されている(Laport et al,2003,Blood 102:20042013)。レンチウイルス形質導入は、記載されたようにして実施された(Levine et al.,2006,Proc Natl Acad Sci U S A 103:17372-17377)。RNAによるT細胞の電気穿孔は、これらの受容体を発現させる方法として記載されている(2010,Zhao et al.,Cancer Res 70:9062)。アデノウイルスベクターの使用は記載されている(2004,Schroers et al.,Exp Hematol 32:536)。T細胞においてタンパク質を発現させる多数の他のアプローチが記載されている(2009,June et al.,Nat Rev Immunol 9:704)。
【0149】
サイトカイン分析
可溶性サイトカイン因子の定量化は、Life technologies(Invitrogen)から購入されたLuminexビーズアレイテクノロジーおよびキットを使用して実施された。3倍希釈系列を使用して生成された8点標準曲線により、製造業者のプロトコルに従って、アッセイを実施した。
【0150】
実験の結果を以下に記載する。
【0151】
本明細書に提示された結果は、T細胞において負のシグナルを正のシグナルへ変換するようキメラ受容体を操作し、T細胞上に発現させることが可能であることを証明する。従って、本発明は、T細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)を発現するよう遺伝学的に修飾された細胞を使用する型のT細胞またはNK細胞による養子治療を提供する。
【0152】
全身的な、従って、免疫系全体におけるPD-1の阻害を回避するための、標的特異的な方法を開発するため、実験を設計した。標的特異的な方法は、例えば、PD-1細胞外ドメインをコードし、T細胞の細胞内部分に、阻害性PD-1ドメインではなく、刺激性のCD28またはICOSのシグナリングドメインをコードするキメラ受容体を発現するT細胞を投与する工程を含む。従って、細胞内シグナルが、ネイティブPD-1エンドドメインではなく、CD28またはICOSのシグナリングエンドドメインによって送達されるため、腫瘍微小環境内の腫瘍抗原とのT細胞の相互作用は、PD-1リガンドの接触によって正の影響を受けるであろう。
【0153】
BTLAシグナルの変換
類似したアプローチにおいて、BTLAをコードするキメラ受容体を構築した。BTLAも、PD-1と共に、CD28ファミリーのメンバーである。BTLAは、しばしば、腫瘍微小環境内で、腫瘍細胞およびその他の細胞に発現される、HVEMを含む数種のリガンドを有している。細胞上の天然リガンドとのBTLAの相互作用は、T細胞免疫応答を負に制御することが周知である(Paulos et al.,2010,J Clin Invest 120:76-80;Derre et al.,2010,J Clin Invest 120:157-67;Chemnitz et al.,2006,J Immunol 176:6603-14)。迂回するため、BTLA細胞外ドメインと、CD28またはICOSのドメインを含む細胞間シグナリングエンドドメインとから構成されたキメラ受容体を構築した。
【0154】
簡単に説明すると、図1に表された例示的なキメラ受容体を構築するため、分子クローニングを使用した。T細胞表面上に発現されたBTLA CCRのライゲーションが、適切に発現され、ICOS細胞内ドメインを通してCD3ζへシグナルを伝達し得るか否かを試験するため、示されるようなBTLA CCRをコードするIVT mRNAを、刺激されたT細胞へ電気穿孔し、BTLAの表面発現を、示されるような異なる時点で、HVEM-Fc融合タンパク質によって検出した(図1B)。電気穿孔されたT細胞を、BTLAリガンド陰性細胞株(KTPolCD86A2)またはBTLAリガンドHVEM陽性細胞株(KTCD86FluHVEM)のいずれかによって刺激した。刺激の24時間後に、T細胞によって産生されたIL-2をELISAによってアッセイした(図1C)。結果は、BTLA細胞外ドメインを、ICOSおよびCD3ζの両方の細胞内ドメインと融合させることによって、BTLAリガンドHVEM発現細胞株の刺激によってT細胞を活性化することが可能であることを示した。このことは、BTLAシグナルが、キメラ共刺激受容体(CCR)の形態で、他のシグナルへ変換され得ることを示している。
【0155】
次の実験セットは、BTLAの阻害性シグナルが、BTLA-CD28 CCRを通して、CD28の共刺激シグナルへ変換され得るか否かを査定するため、設計された。CD28シグナリングを示すことができる適切なウィンドウを見出すため、異なる用量(ug/0.1ml T細胞)のRNAをT細胞へ電気穿孔し、CAR(CD19z、CD19-28Z)発現をFACSによって検出した。上パネルはトランスジーン発現のヒストグラムおよびパーセンテージを示し、下パネルはトランスジーン発現のMFIを示す(図2A)。図2Aに記載されるようなRNAにより電気穿孔されたT細胞のIL2産生を、CD19陽性細胞株K562-CD19によって刺激し、図2Bに示されるように、IL-2産生をELISAによってアッセイした。上パネルはIFNγを示し、下パネルはIL-2産生を示す。結果は、1.5ugのRNA用量で、300pg/mlを超えるIL-2産生を示したCD19-28z RNA電気穿孔T細胞と異なり、CD19z RNA電気穿孔T細胞については、検出可能なIL-2産生がなかったことを示す。IFNγ産生は、1.5ugのRNA用量で、CD19z電気穿孔T細胞およびCD19-28Z電気穿孔T細胞の両方について類似したレベルで検出され得た。従って、BTLA-CD28シグナル変換ポリペプチドを試験するためのRNA用量として、1.5ug RNAを使用した。
【0156】
T細胞を、示されるように1.5ug CD19zおよびBTLA CCRにより共電気穿孔し、CD19(K562CD19)またはCD19およびHVEMの両方(K562CD19/HVEM)を発現するK562により刺激した。(HVEMを有するかまたは有しない)メソテリンを発現するK562系統を、対照として使用した(図2C)。結果は、全長(野生型)BTLAが、IL2およびIFNγの両方の産生を抑制したことを示す。CD19/HVEM二重陽性細胞株により刺激された時、CD19zのみにより電気穿孔されたT細胞については検出可能なIL-2産生がなかったが、CD19-28zにより電気穿孔され、CD19/HVEM二重陽性細胞株により刺激されたT細胞は、400pg/mlを超えるIL-2を産生した。しかしながら、T細胞をCD19z RNAおよびBTLA-CD28 CCR RNAの両方により共電気穿孔した時、CD19/HVEM二重陽性細胞株により刺激された時のIL-2産生は、CD19-28z電気穿孔T細胞より4倍高かった。CD19z RNAおよびBTLA-CD28 CCR RNAの両方により共電気穿孔されたT細胞は、CD19/HVEM二重陽性細胞株または低レベルのHVEMを発現するCD19陽性K562により刺激された時、CD19z電気穿孔T細胞またはCD19-28z電気穿孔T細胞より高いIFNγを産生した(図2C)。本明細書に提示された結果は、BTLAの阻害性シグナルが、BTLA-CD28 CCRを通して、CD28シグナルへ変換され得ることを証明する。
【0157】
次の実験セットは、阻害性BTLAシグナルが、BTLA-ICOS CCRを通して、共刺激性ICOSシグナルへ変換され得るか否かを試験するため、設計された。簡単に説明すると、BTLAシグナルのICOSシグナルへの変換を、図3Aに示されるようなTh17偏向系において試験した。休止CD4 T細胞を、示されるようにCD19zおよびBTLA CCRにより共電気穿孔し(処理)、CD19/HVEM二重陽性細胞株により刺激するか(群1および2、デュプリケート)、またはT細胞をBTLA-ICOS単独により電気穿孔し、プレートに結合したHVEM-FcおよびOKT3により刺激した(群3)。記載されたように(2010,Paulos et al.,Science Translational Medicine)、CD3/ICOSビーズまたはCD3/CD28ビーズを、それぞれ、陽性対照および陰性対照として使用した。全ての培養をTh17サイトカインカクテルの存在下で実施した。刺激後の(示されるような)異なる日に、T細胞をPMA/イオノマイシンにより刺激し、IL-17AおよびIFNγを細胞内サイトカイン染色により検出した(図3B)。結果は、BTLA-ICOSから変換されたICOSシグナルが、HVEM阻害性シグナルの存在下で、Th17細胞産生を増強することを示した。
【0158】
PD-1シグナルのCD28シグナルへの変換
T細胞表面上に発現されたPD1 CCRのライゲーションが、CD28またはCD27またはICOSの細胞内ドメインを通して、シグナルを伝達するため、機能的に発現され得るか否かを試験するため、PD1 CCRをコードするIVT RNAを使用した(以下に示される配列)。
【0159】
示されるようなPD1 CCR RNAおよびCD19z RNAを、刺激されたT細胞へ共電気穿孔し、示されるような時点で、抗PD1 Abおよび抗CAR Abによりトランスジーンを検出した(図4A)。図4Aに記載されるような共電気穿孔されたT細胞を、PD-L1もしくは対照としてのGFPを発現するNalm6(ヒトB細胞白血病株)、またはPD-L1もしくは対照としてのICOSLを発現するK562-CD19と共培養した。共培養の24時間後にIFNγ産生をアッセイした。CD19/PD-L1二重陽性細胞株と共培養された時、CD19zおよびPD1-CD28(PD1-28)を共導入されたT細胞は、CD19z単独により電気穿孔されたT細胞、または細胞質ドメインが短縮されたPD1もしくはPD1-CD27(PD1-27)により共電気穿孔されたT細胞より有意に高いIFNγ産生を示した。T細胞を、CD19zおよび全長(野生型)PD1により共電気穿孔し、CD19/PD-L1二重陽性細胞株により刺激した時には、強力なT細胞阻害が見られた(図4B)。
【0160】
図4Aに記載されるような共電気穿孔されたT細胞を、PD-L1もしくは対照としてのGFPを発現するNalm6(ヒトB細胞白血病株)、またはPD-L1もしくは対照としてのICOSLを発現するK562-CD19と共培養した。共培養の24時間後にIL-2産生をアッセイした。CD19/PD-L1二重陽性細胞株と共培養された時、CD19zおよびPD1-CD28(PD1-28)を共導入されたT細胞は、CD19z単独により電気穿孔されたT細胞、または細胞質ドメインが短縮されたPD1もしくはPD1-CD27(PD1-27)により共電気穿孔されたT細胞より有意に高いIL-2産生を示した。T細胞を、CD19zおよび全長PD1により共電気穿孔し、CD19/PD-L1二重陽性細胞株により刺激した時には、強力なT細胞阻害が見られた(図4C)。
【0161】
図4Aに記載されたような共電気穿孔されたT細胞を、フローサイトメトリーに基づくCTLアッセイにおいて試験した。CD19zおよびPD1を共導入されたT細胞は、Nalm6-PD-L1標的に対する有意に低下した殺傷能を示したが、PD1 CCRにより共電気穿孔されたT細胞については、標的としてNalm6-PD1を使用した時、CD19Z単独により電気穿孔されたT細胞と比較して、有意な差は見られなかった。PD1リガンド陰性Nalm6を標的として使用した時には、CD19zおよびPD1により共電気穿孔されたT細胞を含め、全てのT細胞群について、有意な差が見出されなかった。
【0162】
次の実験セットは、PD1-CD28 CCR共導入によりPD1阻害を逆転させるため、設計された。T細胞がPD1陽性である腫瘍微小環境または慢性感染を模倣するため、T細胞を、CD3/CD28ビーズまたはOKT3/PBMC/IL2により刺激し、示されるような付加的なPD1 CCR(10ug)と共に、CD19z(10ug)およびPD1(5ug)により共電気穿孔した。電気穿孔の1日後に、CARおよびPD1および/またはPD1 CCRの発現をFACSによって検出した(図5A)。
【0163】
図5Aに示されたような電気穿孔されたT細胞を、PD-L1を発現するNalm6またはK562-CD19と共培養した。一夜の共培養の後、IL-2産生をアッセイした。結果は、CD19z単独により電気穿孔されたT細胞によって産生されるIL-2の量が、PD-L1を有しないCD19陽性細胞株と共培養された同一のT細胞と比較して、減少することを示した。しかしながら、CD19Z単独T細胞よりはるかに高いIL-2産生を示した、PD1-CD28(PD1-28)により共電気穿孔されたT細胞を除き、PD1の存在下では、PD-L1陽性細胞株と共培養された時、IL-2産生が完全に阻止され、T細胞がPD-L1陰性細胞株と共培養された時には、T細胞上のPD1発現はT細胞に対する最小の影響を有した(図5B)。
【0164】
図5Aに示されたような電気穿孔されたT細胞を、PD-L1を発現するNalm6またはK562-CD19と共培養した。一夜の共培養の後、IFNγ産生をアッセイした(図5C)。図5Bに示されたIL-2産生のものと類似したサイトカイン産生プロフィールが見られた。本明細書に提示された結果は、PD1-CD28 CCRが、PD1の阻害効果を逆転させ、T細胞エフェクター機能を促進することができることを証明する。
【0165】
PD1シグナルのICOSシグナルへの変換
CD4 T細胞を、PD1(またはPD1バリアント)mRNAおよびCD19-z CAR mRNA(各10ug)により電気穿孔した。電気穿孔の4時間後(0日目)、IL1(10ng/ml)、IL6(10ng/ml)、IL23(20ng/ml)、ならびにIL4およびIFNγに対する中和抗体(10μg/ml)の存在下で、R10培養培地中で、T細胞を、PD-L1およびCD19を発現するK562細胞と混合した(0.5:1=K562:T細胞)。示された日(電気穿孔の5日後、9日後、および12日後)に、細胞を、細胞内サイトカイン染色のため、PMA(3ug/ml)およびイオノマイシン(1ug/ml)およびGolgiStopと共に4時間インキュベートした。CD4についての表面染色を実施した後、IFNγ、IL17、およびIL2についての細胞内染色を実施した。抗CD28/CD3ビーズおよび抗ICOS/CD3ビーズにより刺激されたCD4 T細胞を、対照として使用した(図6A)。サイトカイン産生は、PD1野生型またはテールレスPD1と比較して、PD1-ICOSを発現する細胞において、特に、9日目に増強された。刺激されたT細胞の細胞増殖は、図6Cに示される。
【0166】
PD-1キメラ受容体
PD-1は、慢性ウイルス感染を有する患者において、疲弊したCD8 T細胞の表面においてアップレギュレートされる。PD-1:PD-L1シグナルの阻止により、PD-1を発現する疲弊したCD8 T細胞の機能が回復する。多くの腫瘍が、PD-L1を発現し、免疫抑制性の微小環境を提供している。
【0167】
以下の実験の目的は、PD-1キメラ受容体を腫瘍部位へ導入することにより、阻害性の腫瘍微小環境を克服するよう、養子移入されたT細胞に指図することである。
【0168】
サイトカイン産生に対するPD1wtの阻害効果が、PD1キメラ構築物によって救済されることが観察された(図7)。しかしながら、PD1キメラ受容体はグランザイムB産生には影響しない(図8)。同様に、PD1の存在下または非存在下で、CD8 T細胞の殺傷活性に、最小の差が観察された(図9)。
【0169】
次の実験セットは、T細胞増殖に対するPD-1キメラ受容体の効果を評価するために設計された(図10)。PD1-CD28キメラ受容体は、CD8 T細胞の数を増加させることが観察された(図11)。
【0170】
要約すると、本明細書に提示された結果は、PD-1キメラ構築物がPD-1wtによって示される阻害効果を示さないことを証明する。PD1-CD28は、CD4 T細胞において、TNFα、IL2、およびIFNγの産生を増大させるようである。PD-1キメラ受容体は、CD19CARzのみを発現するT細胞のものより増加した細胞傷害性を示さなかった。PD1-CD28は、CD19CARzのみを発現するT細胞のものよりCD8 T細胞数を増加させた。
【0171】
共阻害性シグナリングの正の共刺激への転向
本明細書に提示された結果は、スイッチ受容体が、電気穿孔によって、またはレンチウイルスベクターにより、T細胞において発現されたことを証明する。CARおよびスイッチ受容体を同一のT細胞において発現させることが可能であることが観察された。CARまたはTCRおよびスイッチ受容体を発現する細胞が、BTLAまたはPD-1のリガンドを有している腫瘍細胞に曝された時、T細胞は、通常の阻害性応答ではなく、正の免疫応答を有することが示される。
【0172】
これらのキメラ受容体がT細胞において発現された時、BTLAスイッチ受容体の場合には、腫瘍細胞上の天然リガンドHVEMとの相互作用により、T細胞が刺激され、次いで、IFNγの分泌を含む正の抗腫瘍効果に関連した機能を発現することが観察された。
【0173】
これらの研究からのもう一つの重要な結果は、HVEM:BTLAのキメラ受容体との相互作用が、増強されたIL-17分泌をもたらしたことである。これは、腫瘍免疫治療のために有用であることが公知である細胞、TH17細胞のマーカーである(Martin-Orozco et al.,2009,Immunity 31:787-98;Paulos et al.,2010,Science Translational Medicine 2:55-78;Garaude et al.,2010,Sci Transl Med 2(55):55ps2)。例えば、本明細書に提示された結果は、CARと、ICOSシグナリングドメインを有するBTLAスイッチ受容体とを発現するT細胞が、大量のIL-17を分泌するよう偏向したことを証明する。
【0174】
さらに、本明細書に提示された結果は、CARと、CD28を含み欠失したドメインを有するPD1スイッチ受容体とを発現するT細胞が、PD-1スイッチ受容体を発現した場合に、阻害から防止され、腫瘍細胞を殺傷し、サイトカイン(IL-2およびIFNγ)を分泌することを示す。
【0175】
特定の理論によって拘束されることは望まないが、PD-1またはBTLAのスイッチ受容体と共にキメラ抗原受容体(CAR)をT細胞上に発現させ、次いで、それを腫瘍微小環境へ導入することにより、T細胞は、増強された抗腫瘍効果を有し、TH17表現型を示すと考えられる。本発明の腫瘍免疫治療のための養子T細胞移入の型は、HIV、またはEBV、HCV、もしくはCMVのようなその他のウイルスを含む慢性ウイルス感染のためのようなワクチン治療の分野においても適用可能である。このテクノロジーは、TCRを有する遺伝学的に修飾されたT細胞を現在使用している他の治験にも、容易に組み入れられ得る。例えば、本発明のスイッチ受容体は、MAGE-A3およびNY-ESO-1のような癌抗原に特異的なTCRを有するT細胞に関して使用され得、これらのT細胞と共にスイッチ受容体を含めることにより、T細胞の効力が増加するであろうと考えられる。
【0176】
本明細書に引用された全ての各々の特許、特許出願、および刊行物の開示は、参照によってその全体が本明細書に組み入れられる。本発明は具体的な態様に関して開示されたが、本発明の本旨および範囲から逸脱することなく、本発明の他の態様および変動が、当業者によって考案され得ることは明白である。添付の特許請求の範囲は、全てのそのような態様および等価な変動を含むものと解釈されることが意図される。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
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