(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】直接接触式復水装置
(51)【国際特許分類】
F28B 9/10 20060101AFI20220112BHJP
F28B 3/04 20060101ALI20220112BHJP
F01K 9/00 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
F28B9/10
F28B3/04
F01K9/00 A
(21)【出願番号】P 2018171595
(22)【出願日】2018-09-13
【審査請求日】2021-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角 悠輝
(72)【発明者】
【氏名】津田 将太
(72)【発明者】
【氏名】真下 景
(72)【発明者】
【氏名】高畑 和夫
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-193417(JP,A)
【文献】特開2012-193883(JP,A)
【文献】特開2016-191323(JP,A)
【文献】特開2012-196816(JP,A)
【文献】実開昭54-049409(JP,U)
【文献】実開昭57-030571(JP,U)
【文献】米国特許第03423078(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28B 9/10
F28B 3/04
F01K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービンからのタービン排気を受け入れて冷却水を噴射して前記タービン排気中の蒸気を凝縮させ器内を負圧に維持する復水器と、
前記復水器で凝縮した復水を受け入れて冷却し前記冷却水として保持する冷却塔と、
前記復水を前記復水器から前記冷却塔に移送するための復水戻り管および前記復水戻り管に設けられた少なくとも1台の循環水ポンプと、
前記冷却塔から前記冷却水を前記復水器に移送するための冷却水供給管と、
を備えた直接接触式復水装置であって、
前記復水器は、
前記タービン排気が流入するタービン排気入口部と、
前記タービン排気入口部を介して前記タービン排気を受け入れる復水器本体胴と、
前記復水器本体胴の内部空間に、前記冷却水を供給し散布する冷却水散布部と、
前記復水器本体胴の外側に取り付けられた容器状の水室胴と、前記水室胴の内部にその底部から上方に延びて内部の流路を形成する仕切り板と、を有し、前記冷却水を受け入れて前記冷却水が前記冷却水散布部に移動するまで前記冷却水を保持する復水器水室と、
前記復水器水室内の上部に接続され、前記復水器水室内の空気を排出する排気管と、
を具備し、
前記水室胴および前記仕切り板とは、前記復水器水室内の前記冷却水の圧力を、前記冷却水に溶解する空気が析出する圧力に調整する圧力調整部を構成する、
ことを特徴とする直接接触式復水装置。
【請求項2】
前記仕切り板の上端を越える際の前記冷却水の圧力は、前記復水器本体胴内の圧力と同程度になるように前記復水器水室の上端の高さ位置が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の直接接触式復水装置。
【請求項3】
前記圧力調整部は、
前記復水器水室内の前記冷却水の液位を検出する液位検出器と、
前記排気管に設けられて、前記液位を調節する液位調節弁と、
前記液位を所定の値とするために、前記液位検出器の出力を受け入れて前記液位調節弁に開度指令を出力する水室液位制御装置と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直接接触式復水装置。
【請求項4】
前記少なくとも1台の循環水ポンプは、2台以上であり、
前記水室液位制御装置は、前記循環水ポンプの1台が運転中に停止した場合に、当該情報に基づく先行制御信号を生成し、これにより補正された値を出力する、
ことを特徴とする請求項3に記載の直接接触式復水装置。
【請求項5】
前記圧力調整部において、前記水室胴は、その上端の高さ位置が、前記冷却水のサイフォン限界よりも高い位置となるように設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直接接触式復水装置。
【請求項6】
前記仕切り板には、前記復水器水室の底部の近傍の部分に連通孔が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の直接接触式復水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蒸気タービンからの排ガスを受け入れる直接接触式復水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地熱発電プラントとは、地熱により発生した蒸気を利用し蒸気タービンを回転させ、仕事を終えた蒸気は、蒸気タービンに接続された復水器において凝縮するシステムである。一般に、地熱発電では、蒸気が凝縮した復水を蒸気タービン側で再利用する必要がないため、熱交換率のよい直接接触式復水器が用いられ、復水はこの復水器での冷却水として利用される。冷却水の冷却には、冷却塔に直接接触式空気冷却方式が採用されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
直接接触式空気冷却方式による冷却塔における冷却水の冷却の際には、冷却塔において空気と冷却水が直接接触するため、冷却水に空気が溶解する。冷却水が、復水器に設けられた冷却水噴射ノズル付近に来ると圧力が真空に近づく。このため、溶存空気が析出し、冷却水体積が急増し、重量流量の低下を招く。設計値通りの冷却水流量を確保するためには、このような析出空気の影響を考慮する必要がある。
【0005】
このような条件下で設計値通りの冷却水流量を確保しようとするには、例えばスプレーノズルの個数を増加させことが考えられる。この場合、スプレーノズルのコスト増加、および復水器サイズの増加に伴う本体コストやこれに付帯するコストの増加が問題となる。また、空気の析出によりスプレーノズルの必要差圧、すなわちスプレーノズル入口と復水器の機内圧との差が大きくなるため、復水器の高さ位置を下げるために掘り込みを増加すること、あるいは、冷却塔側の高さ位置を上げることにより静水頭を増加させることが考えられるが、この場合でも工事費等の増加が問題となる。
【0006】
これとは別の対策として、水室の上端に空気抜き系統を設置し、空気抜きポンプを起動することで水室上部に滞留した析出空気を除去する方法が知られているが、これは積極的な溶存空気の析出・分離を目的とするものではない。復水器内圧に比べて水室内部は圧力が高いため、スプレーノズル部で析出する溶存空気を全て除去できるわけではなく、問題の解決方法を提供しているとは言えない。
【0007】
そこで、本発明の実施形態は、復水器の冷却用の冷却水に溶存する空気の影響を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本実施形態は、蒸気タービンからのタービン排気を受け入れて冷却水を噴射して前記タービン排気中の蒸気を凝縮させ器内を負圧に維持する復水器と、前記復水器で凝縮した復水を受け入れて冷却し前記冷却水として保持する冷却塔と、前記復水を前記復水器から前記冷却塔に移送するための復水戻り管および前記復水戻り管に設けられた少なくとも1台の循環水ポンプと、前記冷却塔から前記冷却水を前記復水器に移送するための冷却水供給管と、を備えた直接接触式復水装置であって、前記復水器は、前記タービン排気が流入するタービン排気入口部と、前記タービン排気入口部を介して前記タービン排気を受け入れる復水器本体胴と、前記復水器本体胴の内部空間に、前記冷却水を供給し散布する冷却水散布部と、前記復水器本体胴の外側に取り付けられた容器状の水室胴と、前記水室胴の内部にその底部から上方に延びて内部の流路を形成する仕切り板と、を有し、前記冷却水を受け入れて前記冷却水が前記冷却水散布部に移動するまで前記冷却水を保持する復水器水室と、前記復水器水室内の上部に接続され、前記復水器水室内の空気を排出する排気管と、を具備し、前記水室胴および前記仕切り板とは、前記復水器水室内の前記冷却水の圧力を、前記冷却水に溶解する空気が析出する圧力に調整する圧力調整部を構成する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、復水器の冷却用の冷却水に溶存する空気の影響を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係る直接接触式復水装置の構成を示す系統図である。
【
図2】第1の実施形態に係る直接接触式復水装置における復水器の構成を示す
図3のII-II線矢視立断面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る直接接触式復水装置における復水器の構成を示す
図2のIII-III線矢視立断面図である。
【
図4】第1の実施形態に係る直接接触式復水装置内の概念的な圧力分布図である。
【
図5】第2の実施形態に係る直接接触式復水装置における復水器の構成を示す
図6のV-V線矢視立断面図である。
【
図6】第2の実施形態に係る直接接触式復水装置における復水器の構成を示す
図5のVI-VI線矢視立断面図である。
【
図7】第2の実施形態に係る直接接触式復水装置における復水器の水室液位制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図8】第3の実施形態に係る直接接触式復水装置における復水器の構成を示す
図9のVIII-VIII線矢視立断面図である。
【
図9】第3の実施形態に係る直接接触式復水装置における復水器の構成を示す
図8のIX-IX線矢視立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る直接接触式復水装置について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重畳する説明は省略する。
【0012】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る直接接触式復水装置の構成を示す系統図である。また、
図2は、第1の実施形態に係る直接接触式復水装置における復水器の構成を示す
図3のII-II線矢視立断面図である。また、
図3は、
図2のIII-III線矢視立断面図である。
【0013】
直接接触式復水装置100は、タービン排気入口部111と、復水器101と、冷却塔140と、2台の循環水ポンプ152とを有する。なお、循環水ポンプ152は、2台に限定せず、1台あるいは3台以上の場合であってもよい。
【0014】
復水器101は、タービン排気入口部111を介して蒸気タービン10からのタービン排気を受け入れて、受け入れたタービン排気を冷却水と直接に接触させることによりタービン排気中の蒸気を凝縮させて復水とし、タービン排気圧力を所定の負圧に維持する。
【0015】
冷却塔140は、復水器101で生じた復水を受け入れて冷却し、復水器101に冷却水として供給する。冷却水が送水される駆動力は、基本的には、冷却塔140内の圧力(大気圧)と復水器101内の圧力(負圧)との差圧と、冷却塔140および復水器101のそれぞれの高さ位置の差による静水頭である。
【0016】
循環水ポンプ152は、負圧状態にある復水器101から大気圧状態の冷却塔140に、復水を圧送する。
【0017】
復水器101は、タービン排気を受け入れる内部空間112sを形成する復水器本体胴112、内部空間112s内に冷却水を散布する冷却水散布部120、および復水器水室130を有する。復水器水室130は、圧力調整部200を有する。
【0018】
復水器本体胴112は、冷却水散布部120を内蔵し、タービン排気入口部111を介して蒸気タービン10からのタービン排気を受け入れる。復水器本体胴112は、タービン排気の流れに沿って延びてかつ上下に拡がり互いに対向するように設けられた2枚の側板112a(
図3)、2枚の側板112aの上端と接続する上板112b(
図3)、冷却水と接触して冷却された蒸気が凝縮した復水を保持するホットウェル112d、および、タービン排気の流れの下流側に配された端板112cを有する。2枚の側板112a、上板112b、端板112c、およびホットウェル112dは、互いに相俟って内部空間112sを形成する。内部空間112sは、タービン排気入口部111と接続している。ホットウェル112dから復水器本体胴112の外側に流出する復水は、循環水ポンプ152の吸い込み圧力を確保するためにさらに深い位置まで掘り下げられた吸い込み側ピット113に流入する。
【0019】
冷却水散布部120は、内部空間112s内に配された複数の噴射ヘッダ121と、それぞれの噴射ヘッダ121に取り付けられた複数の噴射部122(
図3)を有する。噴射部122は、たとえば、スプレーノズルである。
【0020】
復水器水室130は、冷却塔140から受け入れて冷却水散布部120に移送される冷却水を保持する。また、冷却水には、直接接触式空気冷却方式である冷却塔140において空気が混入しているので、復水器水室130の上端には、空気抽出機20と接続され、復水器水室130内からの空気を、導く排気管134が取り付けられている。
【0021】
なお、空気抽出機20は、駆動蒸気管21により供給される駆動蒸気により、排気管134側の気体を吸引し、流出配管22により、たとえば、図示しないインターコンデンサに排出する。なお、排気管134側の気体を吸引する空気抽出装置としては、空気抽出機20に限らず、たとえば、冷却水の混入に対する処置能力を有する真空ポンプを用いた装置などであってもよい。
【0022】
冷却塔140は、上部開口141aにより外気と連通し内部が大気圧である開放容器141、復水を開放容器141の内部に散布する散水管142、散布されている復水に外気を送風する送風機143を有する。開放容器141の径方向の外側には、堰144が設けられている。堰144の内部は、開放容器141の下部開口141bを介して開放容器141の底部と連通している。散水管142により開放容器141内に散布された復水は、送風機143から送られる外気により蒸発潜熱を奪われ冷却され、開放容器141の底部および堰144内に保持される。
【0023】
吸い込み側ピット113と、冷却塔140内の散水管142とは、復水戻り管151で接続されている。復水戻り管151には、循環水ポンプ152と、循環水ポンプ152の出口側に復水流量調節弁153とが設けられている。循環水ポンプ152は、吸い込み側ピット113内の復水を昇圧し、散水管142に移送する。復水流量調節弁153は、循環水ポンプ152により移送される復水の流量を調節可能である。
【0024】
堰144内と復水器水室130とは、冷却水供給管161により接続されている。冷却水供給管161には、冷却水供給弁162が設けられている。冷却水は、前述のように、主に、冷却塔140内の圧力(大気圧)と復水器101内の圧力(負圧)の差圧により、堰144内から復水器水室130内に送水される。冷却水供給弁162は、冷却水供給管161を経て移送される冷却水の流量を調節可能である。
【0025】
以下、
図2および
図3を参照しながら、直接接触式復水装置100の詳細を説明する。
【0026】
復水器本体胴112内の内部空間112s(
図3)には、冷却水散布部120の複数の噴射ヘッダ121が、互いに間隔をおいて、水平方向に延びている。それぞれの噴射ヘッダ121には、長手方向に互いに間隔をおいて、複数の噴射部122が取り付けられている。この結果、複数の噴射部122は、復水器本体胴112の内部空間112s内に、3次元的に分布するように配されている。
【0027】
復水器水室130は、直方体の外形を有する容器状の水室胴131と、その内部に設けられた仕切り板132を有する。水室胴131は、外形が直方体形状で、下端の底板131a、上端の上板131b、およびこれらを結合する互いに対向する側板131c、131dを有する。なお、
図2および
図3では、底板131a、上板131b、および側板131c、131dが平板の場合を例にとって示しているが、これに限定されない。冷却水を一時保有可能に形成されているならば、これらのいずれかあるいはすべてが、曲面状であってもよい。
【0028】
復水器水室130の水室胴131と仕切り板132は、後述するように、復水器水室130において、冷却水が復水器水室130内の仕切り板132の上端を越える際の冷却水の圧力を、冷却水に溶解する空気が析出する圧力に調整する圧力調整部200を構成する。
【0029】
ここで、冷却水に溶解する空気が析出する圧力は、実質的に溶解していた空気のほとんどが冷却水中に溶解しなくなり、空気抽出機20側に流出することを言うものとする。ここで、「空気のほとんど」とは、たとえば、90%以上、あるいは95%以上程度、あるいはそれ以上でもよい。この値は、噴射部122付近での溶存空気の析出影響を許容範囲に抑えるという観点から設定される。
【0030】
空気の冷却水への溶解度は、ヘンリの法則により、空気の分圧あるいは冷却水の圧力に比例すると考えられる。空気が混入する圧力は、冷却塔140における圧力すなわち、ほぼ大気圧である。したがって、たとえば、95%程度が析出する圧力は、0.05気圧、すなわち、0.5MPa程度の圧力となる。
【0031】
復水器水室130は、復水器本体胴112の外側に取り付けられている。すなわち、復水器水室130は、一方の側部131dを復水器本体胴112の一方の側板112aの外側表面に密着するように取り付けられている。
【0032】
圧力調整部200を構成する仕切り板132は、平板であり、側部131dおよびこれと対向する側部131cの間に、これらと平行に配されている。仕切り板132は、下端が底板131aの位置にあり、上方に延びて、水室胴131内の空間の上部を除く部分を第1領域V1と第3領域V3の2つの領域に区分する。また、仕切り板132の上端よりも高い領域を第2領域V2と呼ぶこととする。なお、
図3では、仕切り板132が平板の場合を例にとって示しているが、これに限定されない。水室胴131内の空間の上部を除く部分を第1領域V1と第3領域V3の2つの領域に区分可能に形成されているならば、曲面状であってもよい。
【0033】
仕切り板132には、第1領域V1と第3領域V3を連通し、復水器101を使用状態にする際に、復水器水室130内に所定のレベルまで冷却水を満たすための、すなわち水張り用の連通孔132aが形成されている。水張り用の連通孔132aの高さ位置は、仕切り板132において低い側に設けられる。水張り用の連通孔132aの高さ位置は、たとえば、仕切り板132の下半部分に形成する。あるいは、仕切り板132の下端部に切り欠きを設けてもよい。
【0034】
連通孔132aは、初期の復水器水室130内の水張り用であるが、通常運転時には、復水器水室130内の冷却水の第1領域V1から第3領域V3へのバイパス流れを生ずる部分となる。したがって、連通孔132aの大きさは、仕切り板132の効果を阻害しないように、復水器水室130内の冷却水の大部分が、第1領域V1から第2領域V2を経て第3領域V3に至るように、この主たる流れを乱さないような大きさに制限する。
【0035】
底板131aの第1領域V1側の部分には、冷却水供給管161と接続される冷却水入口138が形成されている。また、第2領域の上部の上板131bには、空気抽出機20に接続する排気管134が貫通する開口が形成されている。排気管134は、水室胴131内の空間と連通している。また、複数の噴射ヘッダ121は、復水器本体胴112の側板112aおよび復水器本体胴112の側部131dを貫通し、水室胴131内の空間の第3領域V3の部分と連通している。
【0036】
本第1の実施形態においては、第2領域V2における冷却水の圧力が、復水器101の器内圧すなわち復水器本体胴112内の内部空間112s内の圧力と同程度となるように、復水器水室130の上端の高さ位置が設定されている。
【0037】
このように、復水器101の復水器水室130の圧力調整部200は、その底部から上方に延びて内部の流路を形成する仕切り板132を有し、冷却材を受け入れて冷却材が冷却水散布部120に移動するまで、冷却材を保持する。この第2領域V2を含む内部の流路において、第2領域V2における冷却水の圧力を低く抑えることにより、冷却材に混入する空気を析出させようとするものである。
【0038】
図4は、第1の実施形態に係る直接接触式復水装置内の概念的な圧力分布図である。横軸は、
図1に示されている復水器101のホットウェル112dを始点に、順次、復水および冷却水が移動し、冷却水が噴射される復水器101の内部空間112s内に至るまでの経路を示す。縦軸は、それぞれの位置における復水および冷却水における概略の圧力を示す。なお、ここで、流体の名称については、タービン排気中の蒸気が復水器101で凝縮した時点から冷却塔140に至るまでの流体を復水と呼び、冷却塔140で散布された時点から復水器101の冷却水散布部120により内部空間112s内に噴射されるまでの流体を冷却水と呼び分けるものとする。以下、基本的に
図1および
図4を参照しながら、圧力分布と、本実施形態に係る直接接触式復水装置100の作用を説明する。
【0039】
まず、復水器本体胴112内の内部空間112sで、噴射される冷却水との直接接触によりタービン排気中の蒸気が凝縮してホットウェル112dに貯留された復水における圧力は、ほぼ復水器101の器内圧Psと同程度である。
【0040】
ホットウェル112dから吸い込み側ピット113に移行した復水は、より低い位置となることにより静水頭分から圧力損失を減じた値だけ圧力が上昇し、循環水ポンプ152の必要吸い込み圧力(NPSH)以上の圧力P1となる。
【0041】
循環水ポンプ152に吸い込まれた復水は、昇圧され、出口圧力P2の圧力で吐出される。吐出された復水は、復水戻り管151および復水流量調節弁153を経由して冷却塔140に送られるが、この間の圧力損失、および循環水ポンプ152と冷却塔140の散水管142とのヘッド差により、圧力P3まで圧力が低下する。
【0042】
冷却塔140に到達した復水は、散水管142により大気圧Pa状態の開放容器141内に散布される。散布された復水は、冷却されて、開放容器141の底部および堰144内に冷却水として保持される。
【0043】
これ以降、冷却水は、堰144から復水器本体胴112の内部空間112sに噴射されるまで、大気圧Paと器内圧Psとの差圧ΔPから、堰144の高さ位置を基準とした復水器本体胴112の噴射部122の高さ位置ΔHに基づくヘッドγgHを減じた値を駆動力として圧送され、その経路での圧力は、以下のように変化する。ただし、γは冷却水の密度、gは重力加速度である。
【0044】
まず、堰144から、冷却水供給管161および冷却水供給弁162を経由して、復水器水室130の水室胴131の冷却水入口138(
図3)に至るので、この間の圧力損失、および堰144と水室胴131の冷却水入口138とのヘッド差により、圧力P4まで圧力が低下する。
【0045】
次に、水室胴131内の第1領域V1から第2領域V2まで高さ位置が上昇するため、この水頭差および水室胴131内の圧力損失により、冷却水の圧力は、圧力Pv1まで低下する。ここで、圧力Pv1は、器内圧Psと同程度の圧力である。
【0046】
このように、冷却水は、圧力調整部200を構成する水室胴131内を、圧力調整部200を構成する仕切り板132に沿って上昇することにより減圧されるため、冷却塔140において冷却水に溶融した空気が析出する。析出した空気は、第2領域V2の空間の上部に溜まり、排気管134を経由して、空気抽出機20により連続的に吸い出される。
【0047】
次に、冷却水は、水室胴131内の第2領域V2から第3領域V3に移動する。この結果、高さ位置が低下するため、水室胴131内の圧力損失はあるものの、冷却水の圧力は、圧力P5まで上昇する。この結果、圧力P5と器内圧Psとの差圧により、第3領域V3に一端が開口している各噴射ヘッダ121を経て、噴射部122から内部空間112sに冷却水が散布される。
【0048】
従来の直接接触式復水器では、冷却塔において冷却水中に溶融した空気が噴射部で析出して噴射される水の体積流量が急増することを考慮する必要があった。すなわち、噴射部の個数を増加させることや、噴射部の有効差圧を増加させるために、復水器掘り込みを増加もしくは冷却塔レベルをかさ上げする必要があった。
【0049】
一方、本実施形態によれば、圧力調整部200の水室胴131と仕切り板132により、冷却水が、水室胴131内に設けられた仕切り板132に沿って上昇し復水器水室130内の上部を回りこむ際に、冷却水が、器内圧Psと同程度まで減圧されるため、冷却塔にて溶融した空気が析出される。この結果、噴射部122での溶存空気の析出を抑制することができる。
【0050】
このように、本実施形態によれば、析出空気の影響を低減あるいは排除することができるため、復水器101における冷却性能が確保される。また、噴射部個数の低減、復水器設置のための基礎の掘り込み量の低減、冷却塔のかさ上げ量の低減が可能となり、建設コストを低減することができる。
【0051】
[第2の実施形態]
図5は、第2の実施形態に係る直接接触式復水装置における復水器の構成を示す
図6のV-V線矢視立断面図である。また、
図6は、
図5のVI-VI線矢視立断面図である。
【0052】
本第2の実施形態は、第1の実施形態の変形である。本第2の実施形態においては、復水器水室130は、液位検出器133、液位調節弁135、および水室液位制御装置137をさらに有する。その他の点では、第1の実施形態と同様である。
【0053】
液位検出器133は、復水器水室130の水室胴131内の液位を検出し出力する。液位調節弁135は、排気管134に設けられており、水室胴131内から空気抽出機20側に流出する空気などの不凝結ガスの流量を調節可能である。水室液位制御装置137は、液位検出器133からの信号を受け入れて、制御演算等を行い、液位調節弁135に開度指令信号を出力する。
【0054】
図7は、第2の実施形態に係る直接接触式復水装置における復水器の水室液位制御装置の構成を示すブロック図である。
【0055】
水室液位制御装置137は、水室胴131および仕切り板132と相俟って、冷却水が復水器水室130内の仕切り板132の上端を越える際の冷却水の圧力を、前記冷却水に溶解する空気が析出する圧力に調整する圧力調整部200を構成する。水室液位制御装置137は、液位設定器137a、減算器137b、比例・積分要素137c、ANDロジック137d、先行信号設定器137e、および加算器137fを有する。水室液位制御装置137のこれらの要素は、たとえば、ANDロジック137dではプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)、その他の要素にあっては、回路基板を有する演算器を用いてもよい。あるいは、計算機を用いてソフトウェアーによりこれらの機能を実現してもよい。
【0056】
液位設定器137aは、水室胴131内の液位を所定の設定値とする設定信号を出力する。なお、液位設定器137aは、外部からの設定値入力を受け入れて、受け入れた値を設定値として出力することでもよい。
【0057】
減算器137bは、液位設定器137aの出力および液位検出器133の出力を受け入れて、液位設定器137aの出力から液位検出器133の出力を減じた値を出力する。
【0058】
比例・積分要素137cは、減算器137bからの出力を入力として受け入れて、この入力に比例する値と、この入力を時間的に積分した値に比例する値の合計値を、定常時の弁開度指令信号として出力する。
【0059】
ANDロジック137dは、「SJAE駆動蒸気弁開」信号と、「循環水ポンプトリップ」信号との両者が成立した場合に、先行指令信号を出力する。ここで、SJAE駆動蒸気弁とは、空気抽出機20の駆動蒸気管21に設けられた弁(図示しない)であり、この弁が開状態であることは、空気抽出機20が作動し、水室胴131内からの排出機能が生きていることを示す。また、「循環水ポンプトリップ」信号は、複数台の循環水ポンプ152のうちの1台が停止した場合に出力される。したがって、ANDロジック137dは、空気抽出機20が作動している状態で、複数台のうち1台の循環水ポンプ152が停止するという大きな変化が発生した場合に、先行出力指令を発する。
【0060】
先行信号設定器137eは、ANDロジック137dが先行出力指令を出力した場合に、比例・積分要素137cからの定常時の弁開度指令信号を補正する開度指令補正信号を出力する。なお、ANDロジック137dが開度指令補正信号の値は、通常運転時に、循環水ポンプ152の1台がトリップした場合の復水器101まわりの挙動解析あるいは実機試験等により適切な値を求めた上で設定する。また、開度指令補正信号の値は、一定値ではなく、時間的に変化するものを用いてもよい。
【0061】
加算器137fは、比例・積分要素137cからの定常時の弁開度指令信号と、先行信号設定器137eからの出力を受け入れて、両者の合計値を、弁開度指令信号として液位調節弁135に出力する。
【0062】
このような構成により、復水器水室130の上部で冷却水から析出した空気が、復水器水室130の上部に一定量残留して、一定の高さ位置に気液界面が形成されるように、液位調節弁135により排出量が制御されている。
【0063】
この復水器水室130の上部に残留する空気により形成される気液自由界面の液位は、液位検出器133により監視され、通常時はフィードバック制御により、液位調節弁135が動作する。すなわち、液位が上昇する場合は、液位検出器133の出力が増大する。このため、減算器137bの出力は減少し、これに伴い比例・積分要素137cからの定常時の弁開度指令信号が減少し、この信号は加算器137fから、液位調節弁135に出力される。
【0064】
液位調節弁135のサーボ機構であるポジショナ135aは、開度指令信号の増大を受けて弁本体135bの開度を開度指令信号に見合った開度まで減少させる。液位調節弁135の開度が減少したことにより、空気抽出機20側に排出される析出空気流量が減少する。この結果、復水器水室130の上部に残留する析出空気の量が増大し、気液自由界面の液位は、所定の値に向けて低下する。
【0065】
一方、通常運転中に循環水ポンプ152の複数台中の1台がトリップし循環水ポンプ1台運転となった場合には、ホットウェル112dから冷却塔140に移送する復水の流量が低下するため、蒸気タービン10から復水器101に流入するタービン排気を減少させる。また、冷却水供給弁162の開度を下げ復水器101に供給する冷却水も減少させる。
【0066】
このように、蒸気タービン10および復水器101等を含めたタービン設備は、ランバックにより循環水ポンプが1台少ない運転状態に見合った低い出力状態に移行する。すなわち、低い出力状態で運転を維持することになる。しかしながら、循環水ポンプ152の複数台中の1台がトリップすると、復水器101まわりの状態が大きく変動するため、通常のフィードバック制御では対応できない可能性がある。
【0067】
この場合、ANDロジック137dからの先行出力指令により先行信号設定器137eがフィードフォワード信号として開度指令補正信号を出力し、直接、液位調節弁135の開度を、事象発生後、直接接触式復水装置等の特性により生ずる過渡状態に応じて適切な開度となるよう先行的に開度指令を補正する。
【0068】
なお、フィードバック制御のみでは対応しきれないような事象の発生時に、その情報に基づいて先行制御信号すなわちフィードフォワード信号を生成し出力するケースは、循環水ポンプ1台トリップに限定せずに、たとえば、電力系統側の部分負荷喪失など他の事象発生の場合を加えてもよい。その場合、先行信号設定器137eが出力する開度指令補正信号は、それぞれの事象に応じた値とする。
【0069】
以上のように、本第2の実施形態においては、圧力調整部200の要素である水室胴131、仕切り板132に加え、液位検出器133、液位調節弁135、および水室液位制御装置137による上述のような構成により、復水器水室130の上部の所定の高さ位置に気液自由界面が形成される。このため、気液自由界面の面積が定常的に確保され、析出した空気が冷却水から分離しやすくなり、脱気効率が向上する。これにより、噴射部122での溶存空気の析出を、さらに抑制することができる。
【0070】
[第3の実施形態]
図8は、第3の実施形態に係る直接接触式復水装置における復水器の構成を示す
図9のVIII-VIII線矢視立断面図である。また、
図9は、
図8のIX-IX線矢視立断面図である。
【0071】
本第3の実施形態は、第1の実施形態の変形である。本第3の実施形態においては、復水器水室130の上端部の高さ位置が、冷却水のサイフォン限界高さよりも高くなるように設定されている。その他の点では、第1の実施形態と同様である。
【0072】
ここで用いる、サイフォン限界高さとは、復水器水室130内で、気液自由界面が、上昇する高さの限界(限界高さ)を言うものとする。このサイフォン限界高さは、基本的には、冷却水の温度に対応する飽和圧力に基づくが、大気圧、冷却塔140内の水位、および空気抽出機20による吸い込み圧力等により影響される。したがって、これらを考慮して、復水器水室130の上端部の高さ位置を決定する。
【0073】
復水器水室130の上端部がサイフォン限界高さよりも高いため、復水器水室130の上部には、自然に、気液自由界面が形成される。空気抽出機20への排出量が、空気の析出量を上回る場合でも、気液自由界面は冷却水のサイフォン限界高さよりも上昇することはない。
【0074】
なお、空気の析出量が、空気抽出機20への排出量を上回ると、析出した空気が排出されきれずに気液自由界面が徐々に低下する。この結果、気液界面近傍の冷却水の圧力が上昇し、空気の析出量が低下することになる。
【0075】
このような場合でも、気液界面が一定の高さ位置になるように、空気抽出機20への排出量を調節する。具体的には、空気抽出機20の駆動蒸気管21を流れる蒸気量を増加させる、あるいは、空気抽出機20の駆動蒸気の圧力設定を上げる等を行うことにより、調整することができる。
【0076】
以上のように、本第3の実施形態においては、圧力調整部200の要素である水室胴131、仕切り板132は、基本的に第1の実施形態と同様の構成で、復水器水室130の上端部の高さ位置が、冷却水のサイフォン限界高さよりも高くなるように設定することにより、特別の設備を追加することなく、安定した状態で、冷却水中に溶解する空気の除去が可能となる。
【0077】
[その他の実施形態]
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。さらに、これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0078】
10…蒸気タービン、20…空気抽出機、21…駆動蒸気管、22…流出配管、100…直接接触式復水装置、101…復水器、111…タービン排気入口部、112…復水器本体胴、112a…側板、112b…上板、112c…端板、112d…ホットウェル、112s…内部空間、113…吸い込み側ピット、120…冷却水散布部、121…噴射ヘッダ、122…噴射部、130…復水器水室、131…水室胴、131a…底板、131b…上板、131c、131d…側板、132…仕切り板、132a…連通孔、133…液位検出器、134…排気管、135…液位調節弁、135a…ポジショナ、135b…弁本体、137…水室液位制御装置、137a…液位設定器、137b…減算器、137c…比例・積分要素、137d…ANDロジック、137e…先行信号設定器、137f…加算器、138…冷却水入口、140…冷却塔、141…開放容器、141a…上部開口、141b…下部開口、142…散水管、143…送風機、144…堰、151…復水戻り管、152…循環水ポンプ、153…復水流量調節弁、161…冷却水供給管、162…冷却水供給弁、200…圧力調整部、V1…第1領域、V2…第2領域、V3…第3領域