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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】車両用操作ペダル装置
(51)【国際特許分類】
   G05G 1/32 20080401AFI20220112BHJP
   B60T 7/06 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
G05G1/32
B60T7/06 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018231493
(22)【出願日】2018-12-11
(65)【公開番号】P2020095373
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2020-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】特許業務法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】安部 純也
(72)【発明者】
【氏名】片山 卓也
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/145640(WO,A1)
【文献】特開2015-72504(JP,A)
【文献】特開2005-285066(JP,A)
【文献】特開2008-204096(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第1512596(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 1/32
B60T 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1車両構成部材に固定されたサポート部材と、
前記サポート部材に設けられ、前記サポート部材に対して回動可能な踏部を有し、前記踏部が車両前方側へ踏み込まれる操作ペダル機構と、
曲折部と、前記曲折部から車両前方側へ延出する前端部と、前記曲折部から上方側へ延出する上端部とを有し、前記曲折部において回転軸部で前記操作ペダル機構に対して回動可能に支持される回転部材と、
前記回転部材の前記前端部において、前記第1車両構成部材から車両後方側へ突き出した車両用制御機構の入力部を前記回転部材に対して回動可能に保持する連結部と、
前記回転部材の前記曲折部において、前記回転部材と前記操作ペダル機構を固定すると共に、前記操作ペダル機構の前記踏部が車両前方側へ最大に踏み込まれたときに第1荷重が作用する固定部材とを備え、
前記踏部の踏み込みによる操作量を前記回転部材及び前記連結部を介して前記車両用制御機構に伝達すると共に、
前記第1車両構成部材が車両衝突時に車両後方側へ変位した場合に、前記第1車両構成部材よりも車両後方側に配置されている第2車両構成部材に前記回転部材の前記上端部が当接することによって、前記固定部材に第2荷重が作用し、
前記第2荷重が前記第1荷重よりも大きくなると、前記固定部材による前記回転部材と前記操作ペダル機構の固定が解除され、前記回転部材の前記上端部が前記回転軸部を中心にして車両前方側へ回転すると共に、前記回転部材の前記前端部及び前記車両用制御機構の前記入力部が前記連結部を介して下方側へ変位することによって、前記操作ペダル機構の前記踏部が前記第1車両構成部材に対して車両前方側へ変位し、
前記操作ペダル機構は、
上端部に設けられた操作軸部で前記サポート部材に対して回動可能に支持されると共に、下端部に前記踏部が設けられた操作ペダルと、
下端部に設けられた中間軸部で前記サポート部材に対して回動可能に支持されると共に、上端部に前記回転軸部及び前記固定部材が設けられ、中間部が前記操作ペダルの前記上端部と前記操作ペダルの下端部の間において前記操作ペダルにリンク部材で連結された中間レバーとを備えることを特徴とする車両用操作ペダル装置。
【請求項2】
前記車両用制御機構の前記入力部は、オペレーティングロッドの先端部であって、前記踏部への操作荷重で前記オペレーティングロッドの軸方向へ変位することによって、車両制御を行い、
前記回転軸部は、前記オペレーティングロッドの軸線上に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用操作ペダル装置。
【請求項3】
前記固定部材は、前記操作ペダル機構に設けられた取付穴及び前記回転部材に設けられた取付穴に通された状態でカシメ加工されることによって、前記操作ペダル機構に対する前記回転部材の回動を規制するカシメピンであることを特徴とする請求項1又は請求項に記載の車両用操作ペダル装置。
【請求項4】
前記固定部材は、
前記回転部材の前記曲折部において、前記回転軸部を中心とする円弧に沿って形成された長穴に挿入されるボルトと、
前記ボルトにねじ込まれるナットとで構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか一つに記載の車両用操作ペダル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両衝突に伴って車両構成部材が車両後方側へ変位した場合に、操作ペダル機構の踏部が車両後方側へ後退することを抑える(以下、「車両衝突時における操作ペダル機構の踏部の後退防止」という。)車両用操作ペダル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両衝突時における操作ペダルの踏部の後退防止が行われる車両用操作ペダル装置に関し、種々の技術が提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1に記載の車両用ブレーキペダル装置は車両に搭載されるものであり、ペダルブラケット、ブレーキアーム、連結アーム、回転アーム及び固定機構を含む。ペダルブラケットは、乗員室の車両前方側を区画する隔壁に固定される。この場合、隔壁は、典型的にはエンジンルーム若しくはエンジンルームに相当する車両前方側空間と乗員室とを区画する。ブレーキアームは、ペダルブラケットに回転可能に支持され、ブレーキ操作用のブレーキペダルパッドを備える。連結アームは、ペダルブラケットに回転可能に支持され、車輪に制動力を付与するブレーキブースタのプッシュロッドをブレーキアームの回転に連動して駆動するためにプッシュロッドとブレーキアームとを連結する機能を果たす。この場合、ブレーキペダルパッドに運転者の踏力が作用することによって、連結アームを介してプッシュロッドが駆動される。回転アームは、車両衝突時に隔壁と隔壁よりも車両後方に配置された車体構成部材との間の車両前後方向距離が変化して車体構成部材に当接したときに受ける所定荷重によってプッシュロッドをロッド軸線方向と交差する方向に押圧するように連結アームに回転可能に支持される。固定機構は、回転アームが受ける荷重が所定荷重を下回る場合に連結アームに対して回転アームを固定する一方で、回転アームが受ける荷重が所定荷重に達した場合に固定を解除する機能を果たす。
【0004】
上記構成のブレーキペダル装置によれば、車両衝突に至らない状態、典型的にはブレーキ操作時や製品運搬時のような通常時においては、固定機構が連結アームに対して回転アームを固定する。このため、連結アームと回転アームとの間のガタつきによって通常時に回転アームが連結アームに対して作動するのが固定機構によって阻止される。典型的には、回転アームがその連結シャフトの周方向及び軸方向の少なくとも一方向について僅かに変位する動作が阻止される。一方で、車両衝突時においては、連結アームに対する回転アームの固定が解除されることによって回転アームの回転が可能になり、車体構成部材に当接した回転アームがプッシュロッドをロッド軸線方向と交差する方向に押圧する。これにより、車両衝突時にブレーキペダルが連結アームから受ける荷重によって後退移動するのを抑制することができる。かくして、固定機構を利用することによってブレーキペダルが後退移動するのを抑制するための機構を車両衝突時においてのみ適正に作動させることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-72504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の車両用ブレーキペダル装置において、車両衝突時にブレーキペダルが後退移動するのを抑制するために必要な、回転アーム及び固定機構については、それらを構成する部品の点数が多かった。
【0007】
そこで、本発明は、上述した点を鑑みてなされたものであり、車両衝突時における操作ペダル機構の踏部の後退防止に関し、必要な部品の点数が少ない車両用操作ペダル装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するためになされた請求項1に係る発明は、車両用操作ペダル装置であって、第1車両構成部材に固定されたサポート部材と、サポート部材に設けられ、サポート部材に対して回動可能な踏部を有し、踏部が車両前方側へ踏み込まれる操作ペダル機構と、曲折部と、曲折部から車両前方側へ延出する前端部と、曲折部から上方側へ延出する上端部とを有し、曲折部において回転軸部で操作ペダル機構に対して回動可能に支持される回転部材と、回転部材の前端部において、第1車両構成部材から車両後方側へ突き出した車両用制御機構の入力部を回転部材に対して回動可能に保持する連結部と、回転部材の曲折部において、回転部材と操作ペダル機構を固定すると共に、操作ペダル機構の踏部が車両前方側へ最大に踏み込まれたときに第1荷重が作用する固定部材とを備え、踏部の踏み込みによる操作量を回転部材及び連結部を介して車両用制御機構に伝達すると共に、第1車両構成部材が車両衝突時に車両後方側へ変位した場合に、第1車両構成部材よりも車両後方側に配置されている第2車両構成部材に回転部材の上端部が当接することによって、固定部材に第2荷重が作用し、第2荷重が第1荷重よりも大きくなると、固定部材による回転部材と操作ペダル機構の固定が解除され、回転部材の上端部が回転軸部を中心にして車両前方側へ回転すると共に、回転部材の前端部及び車両用制御機構の入力部が連結部を介して下方側へ変位することによって、操作ペダル機構の踏部が第1車両構成部材に対して車両前方側へ変位し、操作ペダル機構は、上端部に設けられた操作軸部でサポート部材に対して回動可能に支持されると共に、下端部に踏部が設けられた操作ペダルと、下端部に設けられた中間軸部でサポート部材に対して回動可能に支持されると共に、上端部に回転軸部及び固定部材が設けられ、中間部が操作ペダルの上端部と操作ペダルの下端部の間において操作ペダルにリンク部材で連結された中間レバーとを備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の車両用操作ペダル装置であって、車両用制御機構の入力部は、オペレーティングロッドの先端部であって、踏部への操作荷重でオペレーティングロッドの軸方向へ変位することによって、車両制御を行い、回転軸部は、オペレーティングロッドの軸線上に配置されたことを特徴とする。
【0010】
本発明の車両用操作ペダル装置では、操作ペダル機構は、上端部に設けられた操作軸部でサポート部材に対して回動可能に支持されると共に、下端部に踏部が設けられた操作ペダルと、下端部に設けられた中間軸部でサポート部材に対して回動可能に支持されると共に、上端部に回転軸部及び固定部材が設けられ、中間部が操作ペダルの上端部と下端部の間において操作ペダルにリンク部材で連結された中間レバーとを備えている。
【0011】
車両用操作ペダル装置において、操作ペダル機構は、上端部に設けられた操作軸部でサポート部材に対して回動可能に支持されると共に、下端部に踏部が設けられ、上端部と下端部の間において回転軸部及び固定部材が設けられた操作ペダルを備えていてもよい。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両用操作ペダル装置であって、固定部材は、操作ペダル機構に設けられた取付穴及び回転部材に設けられた取付穴に通された状態でカシメ加工されることによって、操作ペダル機構に対する回転部材の回動を規制するカシメピンであることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の車両用操作ペダル装置であって、固定部材は、回転部材の曲折部において、回転軸部を中心とする円弧に沿って形成された長穴に挿入されるボルトと、ボルトにねじ込まれるナットとで構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の車両用操作ペダル装置は、車両衝突時における操作ペダル機構の踏部の後退防止に関し、必要な部品の点数が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態のブレーキペダル装置の概略構成が表された側面図である。
図2図1の線A-Aで切断された同ブレーキペダル装置の断面が表された図である。
図3】同ブレーキペダル装置の概略構成が表された側面図である。
図4】同ブレーキペダル装置の概略構成が表された側面図である。
図5】同ブレーキペダル装置の概略構成が表された側面図である。
図6】第2実施形態のブレーキペダル装置の概略構成が表された側面図である。
図7図6の線B-Bで切断された同ブレーキペダル装置の断面が表された図である。
図8】同ブレーキペダル装置の概略構成が表された側面図である。
図9】同ブレーキペダル装置の概略構成が表された側面図である。
図10】同ブレーキペダル装置の概略構成が表された側面図である。
図11】第3実施形態のブレーキペダル装置の概略構成が表された側面図である。
図12】同ブレーキペダル装置の概略構成が表された側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る車両用操作ペダル装置について、常用ブレーキ用のブレーキペダル装置で具体化した実施形態に基づき、図面を参照しつつ説明する。以下の説明に用いる各図面では、基本的構成の一部が省略されて描かれており、描かれた各部の寸法比等は必ずしも正確ではない。
【0017】
各図において、前後方向、上下方向、及び左右方向は、各図に記載された通りである。但し、図1図3乃至図6、及び図8乃至図12では、図の紙面の奥側が右方向であり、図の紙面の手前側が左方向である。図2では、図の紙面の奥側が下方向であり、図の紙面の手前側が上方向である。図7では、図の紙面の奥側が上方向であり、図の紙面の手前側が下方向である。
【0018】
尚、以下の説明では、前方向を「車両前方側」と記載し、後方向を「車両後方側」と記載し、上方向を「車両上方側」と記載し、下方向を「車両下方側」と記載する。また、左右方向を「車幅方向」と記載する。
【0019】
(1-1)第1実施形態の概略
先ず、第1実施形態を説明する。図1及び図2に表されたように、第1実施形態のブレーキペダル装置1は、金属製であって、ペダルブラケット10、操作ペダル機構20、回転部材50、及びカシメピン80等を備えている。
【0020】
ペダルブラケット10は、一対の側板12を有している。一対の側板12は、車幅方向で所定間隔を置いた状態で対向しており、ダッシュパネルPに対してボルト等で固定されている。ダッシュパネルPは、車両の一部を構成するものであって、操作ペダル機構20よりも車両前方側にある。一対の側板12の間には、操作ペダル機構20、回転部材50、及びカシメピン80等が配設されている。
【0021】
尚、図1では、一対の側板12のうち、車幅方向左側の側板12が表されており、車幅方向右側のものは表されていない。この点は、後述する図3乃至図6、及び図8乃至図1
2においても、同様である。
【0022】
操作ペダル機構20は、所謂リンク式の操作ペダル機構であって、操作ペダル22、リンク部材30、及び中間レバー40等を有している。操作ペダル22は、その上端部22Aに配設された操作軸部16によって、ペダルブラケット10に対して回動可能に支持されている。操作ペダル22の下端部22Bには、踏部24が設けられている。これにより、踏部24は、ペダルブラケット10に対して回動可能であり、車両の運転者によって車両前方側へ踏み込まれること(以下、「踏込み操作」という。)が可能である。車両は、踏込み操作による操作量(ペダルストローク及び踏力など)に応じて制御される。
【0023】
中間レバー40は、その下端部40Bに配設された中間軸部18によって、ペダルブラケット10に対して回動可能に支持されている。中間レバー40の上端部40Aには、回転軸部14及びカシメピン80が配設されている。中間レバー40の中間部40Cは、操作ペダル22の上端部22Aと下端部22Bの間において、操作ペダル22とリンク部材30で連結されている。
【0024】
リンク部材30は、第1リンクピン32及び第2リンクピン34を有している。第1リンクピン32は、リンク部材30の車両後方部分に配設され、リンク部材30と操作ペダル22を連結している。これに対して、第2リンクピン34は、リンク部材30の車両前方部分に配設され、リンク部材30と中間レバー40を連結している。
【0025】
回転部材50は、金属製の板材であって、車幅方向左側から視てL字の形状をなしている。回転部材50は、曲折部52、前端部54、及び上端部56を有している。
【0026】
回転部材50の曲折部52は、回転部材50の中央部分であって、回転部材50が折れ曲がった部分である。曲折部52には、上述した回転軸部14及びカシメピン80が配設されている。
【0027】
回転軸部14及びカシメピン80は、カシメ加工がなされることによって、回転部材50の曲折部52及び中間レバー40の上端部40Aから、抜けないようにされている。これにより、回転軸部14及びカシメピン80は、回転部材50を中間レバー40に対して固定している。カシメピン80の強度は、回転軸部14の強度よりも小さくされる。例えば、図2に表されたように、カシメピン80の軸径が回転軸部14の軸径よりも小さくされることによって、カシメピン80の剪断強度が回転軸部14の剪断強度よりも小さくされる。あるいは、回転軸部14の材料よりも引張強度が低い材料で、カシメピン80が作られてもよい。そのため、カシメピン80が断ち切られることによって、カシメピン80が回転部材50及び中間レバー40から抜けると、回転部材50は、回転軸部14を中心として、中間レバー40に対して回動することが可能となる。回転軸部14では、中間レバー40の板厚よりも若干大きな段が設けられることによって、中間レバー40が回動するときの摩擦抵抗が小さくされる。
【0028】
尚、回転部材50が車幅方向左側にあり、中間レバー40が車幅方向右側にあるが、第1実施形態とは異なり、回転部材50が車幅方向右側にあり、中間レバー40が車幅方向左側にあってもよい。
【0029】
回転部材50の前端部54は、曲折部52から車両前方側へ延出した、回転部材50の部分である。前端部54には、オペレーティングロッド60の先端部62が、連結ピン70及びクレビス72を介して、回動可能に保持されている。更に、オペレーティングロッド60の軸線64上には、回転軸部14及びカシメピン80が配設されている。但し、カシメピン80は、オペレーティングロッド60の軸線64上に配設されなくてもよい。
【0030】
オペレーティングロッド60は、ダッシュパネルPから車両後方側へ突き出ており、その突き出し方向を自由に変化させることが可能である。連結ピン70は、クリップ74(図2参照)によって、回転部材50の前端部54及びクレビス72から抜けないようにされている。
【0031】
回転部材50の上端部56は、曲折部52から車両上方側へ延出した、回転部材50の部分である。上端部56よりも車両後方側には、長手方向が車幅方向へ配設された長尺状のインパネリインフォースメントIがある。従って、インパネリインフォースメントIは、ダッシュパネルPよりも車両後方側にある。インパネリインフォースメントIは、車両の一部を構成するものであって、衝突用ブラケット200等を有している。衝突用ブラケット200は、インパネリインフォースメントIの前端部から下端部に亘って固設されている。衝突用ブラケット200は、車両衝突時において、回転部材50の上端部56に突き当たるように配設されている。衝突用ブラケット200の車両前方側には、回転部材50が車両前方側へ容易に変位できるように、回転部材50の上端部56と当接するための当接面部が設けられている。回転部材50において、上端部56は、オペレーティングロッド60の軸線64よりもインパネリインフォースメントIがある方向へ伸び、衝突用ブラケット200の当接面部と当接する部分が湾曲形状をなしている。
【0032】
尚、回転軸部14、操作軸部16、中間軸部18、第1リンクピン32、第2リンクピン34、連結ピン70、及びカシメピン80は、一対の側板12の間において、略水平で且つ車幅方向と略平行な状態で配設されている。
【0033】
(1-2)踏込み操作時における第1実施形態の動作
図3に表されたように、踏込み操作が行われると、踏部24が車両前方側へ踏み込まれることになるため、操作ペダル22は、操作軸部16を中心として回転する。このとき、操作ペダル22は、操作軸部16を中心として所定方向(図3における時計回り方向)へ回転するため、操作ペダル22の回転は、リンク部材30を介して、中間レバー40に対して伝達される。
【0034】
従って、中間レバー40は、操作ペダル22の回転に伴って、中間軸部18を中心として所定方向(図3における反時計回り方向)へ回転する。そのため、回転部材50及びオペレーティングロッド60は、車両前方側へ変位する。
【0035】
その際、カシメピン80は、オペレーティングロッド60の軸線64よりも車両上方側に変位する。そのため、カシメピン80には、荷重が作用する。例えば、踏部24が運転者に車両前方側へ最大に踏み込まれることによって、オペレーティングロッド60からの反力FAが連結ピン70に作用する場合には、カシメピン80に作用する第1荷重F1は、以下の式(I)で表される。
F1=FA×sinθ1×LA/LB ・・・式(I)
ここで、θ1は、連結ピン70において、連結ピン70とカシメピン80を結ぶ直線が反力FAの方向と交わる角度をいう。LAは、連結ピン70から回転軸部14までの距離をいう。LBは、回転軸部14からカシメピン80までの距離をいう。
【0036】
尚、踏部24が運転者に車両前方側へ最大に踏み込まれた場合において、更に、踏部24が運転者に車両前方側へ踏み込まれることによって、踏部24に作用する操作荷重が大きくなると、反力FAも大きくなり、第1荷重F1も大きくなる。そこで、本実施形態では、操作荷重が設計上最大である場合にカシメピン80に作用する荷重を、第1荷重F1とする。
【0037】
尚、オペレーティングロッド60は、踏込み操作に伴って車両前方側へ変位すると、その踏込み操作時の操作力を、油圧回路又は電子回路等を通して、車両の運転状態を制御する制動装置又は制御装置に伝達する。
【0038】
(1-3)車両衝突時における第1実施形態の動作
図4に表されたように、車両衝突時において、ダッシュパネルPが車両後方側へ変位すると、インパネリインフォースメントIの衝突用ブラケット200が、回転部材50に突き当たる。そのような場合にも、カシメピン80には、荷重が作用する。例えば、衝突用ブラケット200と回転部材50が突き当たった当接点Cにおいて、衝突力FBが回転部材50に作用する場合には、カシメピン80に作用する第2荷重F2は、以下の式(II)で表される。
F2=FB×cosθ2×LC/LB ・・・式(II)
ここで、θ2は、当接点Cにおいて、当接点Cと回転軸部14を結ぶ直線の垂線が衝突力FBの方向と交わる角度をいう。LCは、当接点Cから回転軸部14までの距離をいう。
【0039】
尚、各距離LA,LB,LCは、第2荷重F2が第1荷重F1よりも大きくなるように設定される。具体的には、図4に表されたように、距離LCが距離LBよりも長くされると、てこの作用により、第2荷重F2が第1荷重F1よりも大きくなる。
【0040】
そして、第2荷重F2が第1荷重F1よりも大きな基準荷重を超えると、第2荷重F2によってカシメピン80が断ち切られるため、カシメピン80が回転部材50及び中間レバー40から抜ける。これにより、カシメピン80による回転部材50と中間レバー40の固定が解除される。
【0041】
更に、図5に表されたように、回転部材50が衝突用ブラケット200で車両前方側へ押し出されることによって、回転部材50の上端部56が回転軸部14を中心にして車両前方側(図5における反時計回り方向)へ回転する。同時に、回転部材50の前端部54及びオペレーティングロッド60の先端部62が、連結ピン70及びクレビス72を介して、車両下方側へ変位する。その際、中間レバー40が車両前方側(図5における反時計回り方向)へ回転するので、操作ペダル22の踏部24が車両前方側へ変位する。
【0042】
尚、符号82,84は、カシメピン80を挿入するための取付穴を示している。また、二点鎖線で表された踏部24は、踏込み操作が解除されたときの踏部24の位置を示している。
【0043】
(1-4)第1実施形態のまとめ
以上詳細に説明したように、第1実施形態のブレーキペダル装置1では、所謂リンク式の操作ペダル機構20に対して、回転部材50及びカシメピン80が追加されることによって、車両衝突時における操作ペダル機構20の踏部24の後退防止を実現している。つまり、第1実施形態のブレーキペダル装置1は、車両衝突時における操作ペダル機構20の踏部24の後退防止に関し、必要な部品の点数が少ない。
【0044】
また、第1実施形態のブレーキペダル装置1では、回転軸部14がオペレーティングロッド60の軸線64上に配設されているため、回転軸部14がオペレーティングロッド60の軸線64上に配設されていない場合と比べて、カシメピン80へ作用する荷重が小さい。
【0045】
もっとも、回転軸部14は、オペレーティングロッド60の軸線64上に配設されなくてもよい。
【0046】
また、第1実施形態のブレーキペダル装置1では、車両衝突時における操作ペダル機構20の踏部24の後退防止が実現される際において、オペレーティングロッド60の先端部62、連結ピン70、及びクレビス72は、車両下方側へ変位するが、変形しない。そのため、第1実施形態のブレーキペダル装置1では、所謂リンク式の操作ペダル機構20において、オペレーティングロッド60等の変形抵抗を受けることなく、車両衝突時における操作ペダル機構20の踏部24の後退防止を安定的に実現することが可能である。
【0047】
また、第1実施形態のブレーキペダル装置1では、カシメピン80によって、回転部材50と中間レバー40の固定及びその固定の解除を実現し易くしている。
【0048】
(2-1)第2実施形態の概略
次に、図6乃至図10に表された、第2実施形態のブレーキペダル装置2を説明する。図6乃至図10は、上記第1実施形態の図1乃至図5に対応するものである。以下の説明では、上記第1実施形態と実質的に共通する部分には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0049】
第2実施形態のブレーキペダル装置2では、上記第1実施形態とは異なり、回転部材50が車幅方向右側にあり、中間レバー40が車幅方向左側にある。尚、上記第1実施形態と同様にして、回転部材50が車幅方向左側にあり、中間レバー40が車幅方向右側にあってもよい。
【0050】
また、第2実施形態のブレーキペダル装置2では、上記第1実施形態のカシメピン80に代えて、ボルト90及びナット94によって、回転部材50と中間レバー40の固定及びその固定の解除を実現している。そのために、ボルト90は、その強度が回転軸部14の強度と同程度のものが使用される。
【0051】
更に、中間レバー40の上端部40Aには、回転部材50の曲折部52と車幅方向で重なる位置において、ボルト90が挿入される長穴92が設けられる。長穴92は、回転軸部14の中心点96を中心とする円弧98に沿って形成される。但し、長穴92は、中間レバー40の上端部40Aではなく、回転部材50の曲折部52に設けられてもよい。
【0052】
ボルト90は、中間レバー40の長穴92及び回転部材50の曲折部52に突き通され、更に、長穴92の下端に当接させた状態にされる。そのような状態にあるボルト90に対して、その先端からナット94がねじ込まれる。これにより、回転部材50は、中間レバー40に対して、ボルト90及びナット94の締結力によって固定される。また、ボルト90には、第1荷重F1及び第2荷重F2が作用する。
【0053】
尚、ボルト90は、オペレーティングロッド60の軸線64よりも車両下方側に位置するが、オペレーティングロッド60の軸線64上に位置してもよいし、オペレーティングロッド60の軸線64よりも車両上方側に位置してもよい。
【0054】
更に、第2実施形態のブレーキペダル装置2では、回転軸部14が、オペレーティングロッド60の軸線64よりも車両下方側に配設されている。これにより、第1荷重F1は、上記第1実施形態とは反対方向(車両下方側)へ向かって作用する。
【0055】
ボルト90及びナット94の締結力は、上記の基準荷重及び回転軸部14の強度よりも小さくされる。そのため、第2荷重F2が上記の基準荷重を超えると、ボルト90は、ナット94がねじ込まれた状態のままで、回転部材50の長穴92内を、長穴92の下端から上端に向かって移動する。そのため、回転部材50の上端部56が回転軸部14を中心
にして車両前方側(図6、及び図8乃至図10における反時計回り方向)へ回転する。同時に、回転部材50の前端部54及びオペレーティングロッド60の先端部62が、連結ピン70及びクレビス72を介して、車両下方側へ変位する。
【0056】
更に、図10に表されたように、ボルト90が回転部材50の長穴92の上端に突き当たった以降は、回転部材50が衝突用ブラケット200で車両前方側へ押し出される。そのため、回転部材50の上端部56が回転軸部14を中心にして車両前方側(図6、及び図8乃至図10における反時計回り方向)へ回転する。同時に、回転部材50の前端部54及びオペレーティングロッド60の先端部62が、連結ピン70及びクレビス72を介して、車両下方側へ変位する。その際、ボルト90が中間レバー40の長穴92の上端に突き当たっており、中間レバー40が中間軸部18を中心にして車両前方側(図6、及び図8乃至図10における反時計回り方向)へ回転するので、操作ペダル22の踏部24が車両前方側へ変位する。
【0057】
(2-2)第2実施形態のまとめ
以上詳細に説明したように、第2実施形態のブレーキペダル装置2では、所謂リンク式の操作ペダル機構20に対して、回転部材50、ボルト90、及びナット94が追加されることによって、車両衝突時における操作ペダル機構20の踏部24の後退防止を実現している。つまり、第2実施形態のブレーキペダル装置2は、車両衝突時における操作ペダル機構20の踏部24の後退防止に関し、必要な部品の点数が少ない。
【0058】
また、第2実施形態のブレーキペダル装置2では、車両衝突時における操作ペダル機構20の踏部24の後退防止が実現される際において、オペレーティングロッド60の先端部62、連結ピン70、及びクレビス72は、車両下方側へ変位するが、変形しない。そのため、第2実施形態のブレーキペダル装置2では、所謂リンク式の操作ペダル機構20において、オペレーティングロッド60等の変形抵抗を受けることなく、車両衝突時における操作ペダル機構20の踏部24の後退防止を安定的に実現することが可能である。
【0059】
また、第2実施形態のブレーキペダル装置2では、ボルト90及びナット94の締結力によって、回転部材50と中間レバー40の固定及びその固定の解除を実現している。更に、踏込み操作時のボルト90には、車両下方側へ向かう第1荷重F1が作用することによって、ボルト90が長穴92の下端に当接する状態が維持される。そのため、回転部材50と中間レバー40の固定が解除された後であっても、踏込み操作を行えば、回転部材50及びオペレーティングロッド60が車両前方側へ変位するので、安全性が更に向上している。
【0060】
(3-1)第3実施形態の概略
次に、図11及び図12に表された、第3実施形態のブレーキペダル装置3を説明する。図11及び図12は、上記第1実施形態の図1及び図5に対応するものである。以下の説明では、上記第1実施形態と実質的に共通する部分には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0061】
第3実施形態のブレーキペダル装置3において、操作ペダル機構20は、上記第1実施形態のリンク部材30及び中間レバー40を備えていない。そのため、回転軸部14及びカシメピン80は、鈍角のV字形状の回転部材50を操作ペダル22に対して固定している。これにより、操作ペダル22の上端部22Aと下端部22Bの間において、回転軸部14及びカシメピン80が配設されている。
【0062】
(3-2)第3実施形態のまとめ
従って、第3実施形態のブレーキペダル装置3では、上記第1実施形態のリンク部材3
0及び中間レバー40を備えていない操作ペダル機構20に対して、回転部材50及びカシメピン80が追加されることによって、車両衝突時における操作ペダル機構20の踏部24の後退防止を実現している。つまり、第3実施形態のブレーキペダル装置3は、車両衝突時における操作ペダル機構20の踏部24の後退防止に関し、必要な部品の点数が少ない。
【0063】
また、第3実施形態のブレーキペダル装置3では、オペレーティングロッド60の軸線64上に回転軸部14が配設されているため、オペレーティングロッド60の軸線64上に回転軸部14が配設されていない場合と比べて、カシメピン80へ作用する荷重が小さい。
【0064】
また、第3実施形態のブレーキペダル装置3では、車両衝突時における操作ペダル機構20の踏部24の後退防止が実現される際において、オペレーティングロッド60の先端部62、連結ピン70、及びクレビス72は、車両下方側へ変位するが、変形しない。そのため、第3実施形態のブレーキペダル装置3では、所謂リンク式の操作ペダル機構20において、オペレーティングロッド60等の変形抵抗を受けることなく、車両衝突時における操作ペダル機構20の踏部24の後退防止を安定的に実現することが可能である。
【0065】
また、第3実施形態のブレーキペダル装置3では、カシメピン80によって、回転部材50と操作ペダル22の固定及びその固定の解除を実現し易くしている。
【0066】
(4)その他
ちなみに、各実施形態において、ブレーキペダル装置1,2,3は「車両用操作ペダル装置」の一例である。ペダルブラケット10は、「サポート部材」の一例である。オペレーティングロッド60は「車両用制御機構」の一例である。オペレーティングロッド60の先端部62は、「車両用制御機構の入力部」の一例である。連結ピン70及びクレビス72は、「連結部」の一例である。ダッシュパネルPは、「第1車両構成部材」の一例である。インパネリインフォースメントI及び衝突用ブラケット200は、「第2車両構成部材」の一例である。
【0067】
(5)変更例
尚、本発明は上記各実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、第3実施形態のブレーキペダル装置3において、カシメピン80に代えて、上記第2実施形態のボルト90及びナット94によって、回転部材50と操作ペダル22の固定及びその固定の解除を実現させてもよい。
【0068】
また、各実施形態では、踏込み操作が行われると、カシメピン80又はボルト90が上方側へ変位するが、下方側へ変位するようにしてもよい。
【0069】
また、各実施形態では、操作ペダル22をブレーキペダルとして本発明が適用されているが、車両で使用される各ペダル(例えば、アクセルペダル又はクラッチペダル等)として本発明が適用されてもよい。
【0070】
各実施形態のブレーキペダル装置1,2,3の各部品は、金属製に限定されず、樹脂製であってもよい。
【符号の説明】
【0071】
1,2,3 ブレーキペダル装置(車両用操作ペダル装置)
10 ペダルブラケット(サポート部材)
14 回転軸部
16 操作軸部
18 中間軸部
20 操作ペダル機構
22 操作ペダル
22A 操作ペダルの上端部
22B 操作ペダルの下端部
24 踏部
30 リンク部材
40 中間レバー
40A 中間レバーの上端部
40B 中間レバーの下端部
40C 中間レバーの中間部
50 回転部材
52 回転部材の曲折部
54 回転部材の前端部
56 回転部材の上端部
60 オペレーティングロッド(車両用制御機構)
62 オペレーティングロッドの先端部(車両用制御機構の入力部)
64 オペレーティングロッドの軸線
70 連結ピン(連結部)
72 クレビス(連結部)
80 カシメピン
82 取付穴
84 取付穴
90 ボルト
92 長穴
94 ナット
96 回転軸部の中心
98 円弧
200 衝突用ブラケット(第2車両構成部材)
F1 第1荷重
F2 第2荷重
I インパネリインフォースメント(第2車両構成部材)
P ダッシュパネル(第1車両構成部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12