(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】熱排出が改善された構成素子
(51)【国際特許分類】
H03H 9/25 20060101AFI20220112BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20220112BHJP
H01L 23/02 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
H03H9/25 A
H01L23/36 D
H01L23/36 Z
H01L23/02 C
(21)【出願番号】P 2018500891
(86)(22)【出願日】2016-06-15
(86)【国際出願番号】 EP2016063748
(87)【国際公開番号】W WO2017008981
(87)【国際公開日】2017-01-19
【審査請求日】2019-05-24
(31)【優先権主張番号】102015111307.4
(32)【優先日】2015-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500480274
【氏名又は名称】スナップトラック・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【氏名又は名称】岡田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】イェブワ、トマシュ
(72)【発明者】
【氏名】マイスター、ファイト
【審査官】▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-347488(JP,A)
【文献】特開2005-223580(JP,A)
【文献】特開2013-131711(JP,A)
【文献】特開2005-217670(JP,A)
【文献】特開2005-325348(JP,A)
【文献】特開2013-066042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H01L21/54-H01L23/26
H03H3/007-H03H3/10
H03H9/00-H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成素子であって、
第1の熱伝導率係数α
Sを有する基板と、
前記基板の動作側上に熱を発生するように構成された構成素子構造体と、
支持体と、
金属接続材料、ここにおいて、前記基板の前記動作側が、前記金属接続材料を介して前記支持体に取り付けられている、と、
前記動作側に対向する前記基板の裏面に施与された熱伝導材料、ここにおいて、前記熱伝導材料は、第2の熱伝導率係数α
LSを有する材料を含み、ここにおいて、α
LS>α
Sである、と、を備え、ここにおいて
、前記基板の層厚は、前記構成素子構造体から前記熱伝導材料、及び/又は前記熱伝導材料から前記金属接続材料において低減されており、ここにおいて、前記構成素子構造体上方の前記基板の層厚は、前記金属接続材料上方の前記基板の層厚よりも厚
くなるよう構成されており、
ここにおいて、前記基板は前記構成素子構造体上方の前記基板の領域を介して、前記構成素子構造体から発生した熱を前記熱伝導材料に輸送するように構成され、前記熱伝導材料は前記熱を前記基板の層厚が低減された領域を介して前記金属接続材料に輸送するように構成されている、
構成素子。
【請求項2】
前記基板の前記裏面上の前記熱伝導材料は、前記構成素子構造体上方の領域から前記金属接続材料上方の領域に亘って施与されている、請求項1に記載の構成素子。
【請求項3】
前記金属接続材料は、前記支持体内のヒートシンクと接続されている、請求項1又は2のいずれか一項に記載の構成素子。
【請求項4】
前記基板は、圧電材料を含み、前記構成素子は、表面弾性波構成素子である、請求項1~3のいずれか一項に記載の構成素子。
【請求項5】
前記熱伝導材料は、前記基板の前記裏面上に施与された電気伝導層を含み、ここにおいて、前記電気伝導層は、異なる構成素子構造体上方に配置されている互いに分離された2つの領域に構造化されている、請求項4に記載の構成素子。
【請求項6】
前記熱伝導材料は、前記基板の前記裏面上の全面に施与される層を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の構成素子。
【請求項7】
熱伝導材料として前記基板の前記裏面上に施与される層は、前記基板の少なくとも一方の側面において前記支持体まで下方に向かって達し、そこでヒートシンクと接続されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の構成素子。
【請求項8】
前記金属接続材料は、前記基板上の接触面を前記支持体の前記基板と対向する面側上の対応する接続個所と接続するために構成されたバンプ又ははんだ付け個所として形成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の構成素子。
【請求項9】
前記熱伝導材料は、Al、Ag、Cu、Au、AlN及びSiCから選択される一材料を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の構成素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
マイクロ電子構成素子において負荷時に発生する自己発熱は、機械的張力、過度に早期の材料疲労又は構成素子特性の許容されない変化もまたもたらす恐れがある。したがって、電子構成素子では、電子コンポーネントの特性を負荷時に改善するために、電子構成素子の自己発熱を低減する、特に損失熱を効率的に放熱する努力がなされている。表面弾性波構成素子(SAW構成素子)では、例えば、周波数安定性及び信号伝送の性能を向上させることができる。
【0002】
例えば、SAW構成素子のように低い熱伝導性を有する基板上に作製されているマイクロ電子構成素子における自己発熱の低減は、様々な措置によって行われる。現行の方法の1つは、構成素子内の動作領域の表面を拡大することであり、それによりエネルギー密度、つまり熱発生が低減される。
【0003】
熱放散は、多くの場合、例えば、T.Nishizawa,G.Endo,M.Tajima,S.Ono,O.Kawachi,「Realization of Small and Low Profile Duplexer Using A CSSD Packaging Technology」,IEEE Ultrasonics Symposium,pp.903~906,2009から公知であるように、追加のバンプによってもまた改善される。
【0004】
更に、構成素子内又は構成素子上に組み込まれた積層体を、構成素子の動作側の熱を十分に伝導できる層の周りに付加することによって熱放散を改善するアプローチもまた存在する。典型的にはそのために、誘電体層(SiN、AlN、Al2O3)が使用される。金属が構成素子の電気的及び/又は弾性的な動作領域から絶縁層によって分離されている場合、金属もまたこの目的に使用できる。
【0005】
米国特許第7,940,146(B2)号から、熱エネルギーをシステムからより効率的に排出するために、そのような追加の金属層をバンプと熱的に接続することが公知である。
【0006】
T.Suzuki,T.Nishizawa,O.Kawachi,「Analysis of Heat Dissipation Improvement using Bonded Wafer in Chip Size SAW Device Structure」,IEEE Joint UFFC,EFTF and PFM Symposium,pp.1961~1964,2013の文献から公知である自己発熱を低減するための更なる措置は、多層基板の使用に基づいている。その際、例えば、圧電材料製の、比較的薄い機能層が、より高い熱伝導性を有する支持材料上に接着される。不十分な熱伝導性で機能する圧電層の厚さを低減することによって、有効渦電流が構成素子内で増加され、それにより、自己発熱は低減される。
【0007】
本発明の課題は、構成素子構成素子損失熱の放散が改善されており、損失熱による構成素子の加熱が低減されている、損失熱を発生する構成素子構成素子を提供することである。
【0008】
この課題は、本発明により、特許請求の範囲第1項に記載の構成素子によって解決される。本発明の有利な態様は、従属請求項から明らかとなる。
【0009】
公知の構成素子では、動作中の構成素子構造体から発生する損失熱が、実質的に基板を介して、すなわち基板面において外側にパッケージ又は支持基板へと排出される。一方、本発明による構成素子は、構成素子基板の裏面上に施与された、基板よりも格段により高い熱伝導率係数を有する熱伝導材料を使用する。その場合、構成素子構造内で発生する損失熱は、最短経路で基板面を貫通して熱伝導材料に案内することができる。そこで損失熱は、基板面に対して平行に更に排出され、最終的に、基板の動作側を支持体上に取り付けている金属接続材料を介して支持体に排出される。
【0010】
その際、熱流の少なくとも一部は、基板を貫通して同様に案内される。基板によって案内された熱流の経路長は、基板の層厚が低減されている構造化領域を基板が備えることによって、上記の公知の解決法に対して格段に短縮されている。それにより、構造化されていない基板と比較して、基板の構造化領域においては構成素子構造体から熱伝導材料への、及び/又は熱伝導材料から接続材料への基板を貫通する垂直方向の熱輸送も改善される。熱伝導層の熱伝導係数がより良好であるので、熱排出は、熱伝導層がない場合に比べてより良好かつより効率的に行われる。
【0011】
特に、熱は、基板から構成素子構造体の上方あるいは下方にある領域に排出できる。排出は、基板の外側で行われ、その結果、基板の過剰な発熱は、回避される。それにより、構成素子の信頼性を高めることができ、構成素子特性の熱的ドリフトを緩和でき、構成素子の熱に起因する経年劣化過程を遅らせることができる。それにより、構成素子の耐用年数を格段に延長することができる。
【0012】
一実施形態では、熱伝導材料は、少なくとも、構成素子構造体上方の領域が金属接続材料上方の領域と熱伝導的に接続され、この区間において基板内の対応する経路を平行に橋渡しするように、裏面に施与される。このようにして、構成素子構造体から金属接続材料への熱のための排出経路は、確保されている。基板を横断している放熱経路の一部は最小化されており、構成素子構造体から金属接続材料への経路は、好適には最短経路で、ただし基板の裏面で導かれている。
【0013】
一実施形態では、金属接続材料は、支持体に配置されたヒートシンクと接続されている。支持体自体は、構成素子梱包体、すなわちパッケージの一部であってもよく、構成素子と共に1つのユニットを形成する。ただし、パッケージは、更なるコンポーネントを含んでもよい。
【0014】
通常、支持体は、下面に、すなわち構成素子から離れる向きにある表面に金属接続面を備え、その金属接続面を介して、支持体あるいはカプセル化された構成素子は、回路環境、例えば、導体路基板に取り付けることができる。ヒートシンクとして拡張された金属領域を用いることができ、その領域は、その高い熱容量に基づいて熱量が大きい場合でも、より低い熱容量を有する材料のようには大きな加熱を示さない。電気的に良好な導電材料の場合、したがってヒートシンクの場合でも、更なる熱除去は、より低い熱伝導性を有する材料と比較して格段に容易になっている。
【0015】
支持体は、セラミック材料の層を含んでもよい。支持体は、多層に構成されていてもよく、層は、異なる材料を含んでもよい。多層の支持体はまた、絶縁性プラスチック層及びその間に配置された構造化金属化部を備えてもよい。
【0016】
構造化領域は、構成素子構造体の領域に、及び/又は金属接続材料の領域に設けられている。構造化領域によって、熱輸送は、熱が発生する箇所あるいは熱が金属接続材料を介して再び排出されるべき箇所で所期のように容易になる。したがって、構造化領域は、基板を貫通する熱輸送を決定的かつ重要な箇所で所期のように容易にする。
【0017】
構造化領域での熱輸送を容易にするための手段は、基板の層厚を構造化領域において低減することである。そのために、切り欠き部を基板の裏面に設けることができる。切り欠き部では、基板の厚さを、構成素子の機能のために必要な厚さまで低減してもよい。層厚は、面積的に制限された領域でのみ低減されるため、層厚は、機械的理由から基板全体で許容されるよりも切り欠き部においてはより薄くしてもよい。それにより経路は、より低い第1の熱伝導率係数を有する材料によって最短化される。
【0018】
一実施形態では、基板は、圧電材料を含み、構成素子自体は、弾性波によって動作する構成素子、特に弾性表面波によって動作する構成素子である。
【0019】
この場合、通常利用される圧電材料が不十分なあるいは低い熱伝導率係数αSを有するため、本発明は特に有利に使用できる。更に、弾性波によって動作する構成素子は、発熱に敏感に応答し、TCF(中心周波数の温度係数)によって表される周波数の温度ドリフトを示す。
【0020】
弾性波によって動作する構成素子は、例えば、フィルタであり、そのフィルタは、フィルタ入力端及びフィルタ入力端に割り当てられた構成素子構造体並びにフィルタ出力端及びフィルタ出力端に割り当てられた更なる構成素子構造体を備える。入力端及び出力端に割り当てられた構成素子構造体間又はそれら給電線間又は接続面間で結合が行われる場合には、入力端に印加された電気信号は、直接出力端に、そして出力端と接続された構造体に入力結合され、そこで妨害信号の原因となる恐れがある。
【0021】
その場合、基板の裏面全面を覆う導電層は、熱伝導層のように、この導電層が容量性結合を入力構造体と出力構造体との間で形成することによって、状況によってはクロストークをもたらす恐れがある。
【0022】
一実施形態では、そのようなクロストークは、熱伝導材料として施与された導電層が2つ以上の電気的に互いに分離された領域に構造化されることによって回避され、それぞれ1つの領域が入力側の構成素子構造体上方に、1つの領域が出力側の構成素子構造体上方に配置されている。このようにして、熱伝導材料の電気伝導層によって余分な容量性結合は生じない。
【0023】
原理的に、熱伝導材料は、基板の裏面上全面に被覆された層を含んでもよく、その層は、クロストークの恐れがないとき、金属であってもよい。ただし好適には、その全面的な層は、上記の理由から電気的な絶縁材料又は半導体からなる。
【0024】
更なる実施形態では、熱伝導材料として基板の裏面上に被覆された層は、基板の少なくとも一方の側面で支持体まで下方に向かって延長されており、そこで、支持体上又は支持体中に配置されているヒートシンクと接続されている。このようにして、熱流は、熱伝導材料の層から基板を貫通して接続材料へと熱伝導性のブリッジによって低減でき、放熱は、より迅速かつより良好に行うことができる。
【0025】
金属接続材料は、バンプ又ははんだ付け個所として形成されていてもよく、基板上の接触面を、支持体の上面側上の対応する接続個所と接続できる。両方の場合で、接続材料は金属であり、したがって、高い熱伝導率係数αを有する。
【0026】
更なる変形形態では、構成素子構造体あるいは構成素子自体の電気的接続に必要な接続材料に追加して、放熱のみに用いられる更なる接続材料を設けることが可能である。このことは、構成素子内あるいは基板内に特に多くの熱が発生し、放熱のみに用いられるこの追加の接続材料のためにまだ十分な基板表面が利用できる場合に、特に有利となり得る。更なる接続材料は、構成素子構造体と電気的に接続されていてもよい。好適には、更なる接続材料は、構成素子構造体に対して電気的に絶縁されている。
【0027】
伝熱材料は、アルミニウム、銀、銅、金から又は窒化アルミニウム及び炭化ケイ素などの電気絶縁材料から選択される材料を含んでもよい。
【0028】
以下では、実施例及び添付の図面に基づき本発明を詳細に説明する。図面は、まったく模式的なものであり、縮尺通りに作成されていない。したがって、個々の部分をより良好に詳細に示すために拡大して図示している場合もあるため、図面を絶対的な寸法にも相対的な寸法にも解釈することはできない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】弾性表面波によって動作するそれ自体公知の構成素子を、発生した損失熱が流出する経路と共に示す断面図である。
【
図2】本発明の単純な実施形態を、構成素子を貫く概略断面図に基づいて示す図である。
【
図3】本発明の更なる実施形態を示す断面図である。
【
図4】第1の構造化領域を備える実施形態を示す概略断面図である。
【
図5】第1の構造化領域及び更なる構造化領域を備える実施形態を示す概略断面図である。
【
図7】公知の構成素子の測定点の温度を、印加された電気信号の周波数の関数として示す図である。
【
図8】本発明による構成素子の測定点の温度を、印加された電気信号の周波数の関数として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、弾性表面波によって動作するそれ自体公知の構成素子、すなわち、SAW構成素子(SAW=弾性表面波)を示す。この構成素子は、圧電基板SUを含み、その圧電基板は、フリップチップ実装法で接続材料VMとして用いられるバンプを介して、例えば、セラミック板を含む支持体TR上にボンディングされている。支持体TRに向いている基板SUの動作側上に、模式的な構成素子構造体BESが、金属化部の形式で概略的に示されている。構成素子構造体BESを基板SUの動作側上の接触面と接続する電気接続は、図示されていない。接触面は、ここではバンプとして構成されている接続材料VMを使用して電気的かつ機械的な連結に用いられる。構成素子は、更に保護層GTによって、例えば、エポキシ樹脂を含むグローブトップ被覆によって保護されていてもよい。この被覆によって、基板SUの動作側と支持体TRとの間の、内部に構成素子構造体BESが配置されている空間は、密に充填されていてもよい。
【0031】
図から明らかなように、構成素子は、電気的接続を介して支持体TRの下面側で導体路導体路基板PCBと電気的かつ機械的に接続されており、例えば、はんだ付けされている。
【0032】
基板SUの内部で、熱流は、湾曲した矢印によって模式的に示されており、その熱流によって、構成素子構造体BESによって発生した損失熱は、基板SUの層面の内部で基板にわたって広がり、最終的には接続材料VMを介して支持体TRへ、そして更に導体路基板PCBへと排出される。圧電基板SUの熱伝導率係数αSが不十分であるので、基板に大きな発熱が生じ得る。熱排出が遅延され、構成素子は、過熱する恐れがある。
【0033】
図2は、本発明による構成素子を貫く概略横断図に基づいて第1の実施形態を示す。この場合もまた、圧電基板SUは、接続材料VM(バンプ)を介して支持体TR上に取り付けられており、支持体は、同様に導体路基板PCB上に取り付けられている。しかし、基板SUの裏面は、熱伝導材料CL
Tの層によって、例えば、金属層によって被覆されている。この場合、熱伝導材料のこの層は、基板SUの側面を超えて下方へ支持体TRまで達する部分CL
Sにもわたって延在している。支持体では同様に、伝導性材料の層CLあるいはその側面部分CL
Sは、追加の貫通接点VI
ZあるいはビアVIと接続されており、貫通接点は、同様にその金属外装部又は充填に基づいて良好な熱伝導性であり、支持体TRを通した良好な熱輸送を可能にする。追加の貫通接点VI
Zは、熱輸送のためだけに用意してあってもよい。ただし、追加の貫通接点VI
Zをアース電位と接続することも可能である。
【0034】
この場合もまた、熱流は、矢印により模式的に図示されている。熱流がこのとき優先的に構成素子構造体から横断して基体基板SUを貫通して熱伝導材料CLTの層まで達することが明らかである。この層の内部では、迅速な熱輸送が行われ、その結果、構成素子の動作時に負荷が掛かっても、迅速な熱分配が行われ、それにより熱伝導材料CLが均等に加熱される。それに応じて、基板の加熱もまた均等である。
【0035】
基板SUの裏面上の熱伝導材料CLTの層から、熱は、2つの経路で支持体TRへ、そして更に導体路基板PCBへと基本的に異なる2つのパスで排出される。第1のパスは、熱伝導材料から横断して基体基板を貫通して接続材料へ、そして接続材料を介して支持体TRを貫通して導体路基板PCBへの貫通接点へと延びている。既に記載した更なる熱排出パスは、熱伝導材料の側面部分CLSを貫通して支持体内の対応する貫通接点へと生じる。
【0036】
図示された構成素子は、負荷時に効率的な熱排出及び小さな温度上昇を示す。したがって、構成素子の周波数精度において、耐経年劣化性及び信頼性は、
図1に図示された公知の構成素子よりも改善されている。
【0037】
図3は、基板の裏面上に施与された熱伝導材料CLの層が2つの領域CL
1とCL
2に分割されている、本発明の第2の実施形態を示す。2つの領域は、電気的分離部GSによって互いに電気的に分離されており、これにより、熱伝導材料にある連続した電気伝導層を介した、異なる構成素子構造体の容量性結合が回避される。図示していないがこの場合もまた、熱伝導材料の層CL1、CL2は、対応する側面部分を介して基板SUの側面を通って支持体へと延長してもよく、この経路でもまた追加の熱排出が可能となる。
【0038】
図4は、本発明の第3の実施形態を示す。
図3とは異なりこの場合は、熱伝導材料は、全面層として基板SUの裏面上に施与されている。不十分な第1の熱伝導率係数α
Sを有する基板を貫通するヒートパスを短縮するために、構造化領域SB
VMにおいて、基板SUの層厚は低減されている。この構造化領域SB
VMは、この実施形態では接続材料VMの上方のみに配置されており、音響的に動作する構成素子構造体BESの上方には配置されておらず、その結果、構成素子構造体の機能が、低減された層厚によって構造化領域SB
VMにおいて妨害されることはない。
【0039】
したがってこのとき、ヒートパスは、構成素子構造体BESでの熱発生点から横断して基板SUを貫通して熱伝導層CLTへと延び、そこで側方に構造化領域SBにまで、そしてそこで基板SUの低減された層厚を貫通して接続材料VMへ、そして接続材料を介して支持体TRに入る。基板を貫通する部分、すなわち、ヒートパスの部分は、上述の実施例に対してより低い熱伝導率係数αSを有する材料によって短縮されているため、この場合は、改善された熱放散は、構造化領域及びその下方に配置された接続材料VMを介して行われる。
【0040】
一実施例では、例えば、基板材料は、4.6W/mKの熱伝導率係数αSを有するLiNbO3である。ましてやエポキシ樹脂からなるカバー部GTの熱伝導率係数は、わずか0.5W/mKの値である。それに対して、例えば、アルミニウム製の熱伝導材料CLの層の熱伝導率係数αLSは、237W/mKの値であり、すなわち、約50倍の大きさである。
【0041】
図5は、基板の裏面において接続材料VMの上方に第1の構造化領域SB
VMが配置されているだけではなく、構成素子構造体BESの上方に第2の構造化領域SB
BESもまた配置されている、第4の実施形態による構成素子を概略断面図で示す。この2つの構造化領域は、切り欠き部の深さ及び基板の低減された層厚によって区別できる。更に、構成素子構造体の領域全体にわたって低減された層厚を可能にするために、切り欠き部は、構成素子構造体BESの上方でより広い面積であってもよい。基板の層厚は、構成素子構造体BESの上方で接続材料VMの上方よりも厚くてもよい。
【0042】
この場合、構成素子構造体から熱伝導材料へと入る経路及び熱伝導材料から基板を貫通して接続材料VMへの経路が短縮されているため、第4の実施例による構成素子の熱排出は、
図4に図示した第3の実施形態と比べて更に改善されている。基板を比較的少ない表面割合で構造化することによって、基板の安定性が切り欠き部によって許容されないほど低下されることはない。破損リスクは、排除されており、特に電気伝導層あるいは熱伝導材料の層も、基板の裏面の熱伝導材料上に形状的に結合して施与されており、したがって、その構造的剛性が強化されている。図示していないがこの場合もまた、熱伝導材料CLの層は、直接的な熱排出を可能にするために、基板の側面を通って支持体へと延在してよい。ただしこの熱排出は、基板を貫通することだけによって実現する必要はない。
【0043】
第2~第4の実施形態では、熱伝導材料CLの層は、好適には形状的に結合して基板SUの裏面上に施与されている。これは、適切な金属化部によって、すなわち例えば気相を介して作製されるベース金属化部及びその電気的補強又は無電流補強によって施与することができる。
【0044】
ただし、
図6に基づいて第5の実施例で示したように、熱伝導材料CL
Tは、コンパクトな層として基板SUの裏面上に接着することもまた可能である。その際、接着剤として好適には、熱伝導性の良い粒子で満たした接着剤が使用され、その接着剤は、それにより全体として良好な熱伝導性を有する。
【0045】
薄板又は箔の形状で熱伝導材料を接着することにより、金属析出の工程又は気相から分離する熱伝導材料の析出の工程は省略できる。同時に、熱伝導材料の接着された層は、構成素子の封止部あるいは保護層の部分又はパッケージの部分を形成してもよい。図には、保護層GTの周辺領域が図示されており、その周辺領域は、基板を側面で画定しており、支持体と基板との間の空間を気密に密閉する。この場合、熱伝導材料CLTは、この側面部分上で面一に、収まっており、接着剤あるいは接着層ALを用いて基板と密に接続されている。この実施形態はまた、第5の実施例の意図から逸脱することなく、第1、第2、第3又は第4の実施例と組み合わせてもよい。
【0046】
公知の構成素子に対して追加的である熱伝導材料の層は、構成素子の製造プロセスに問題なく統合できる工程で作製するか又は施与してもよい。したがって、構成素子の許容されない自己発熱のリスクは、本発明により費用効率高く低減でき、費用効率が高い方法で、改善された熱安定性を有する構成素子、より少ない自己発熱によるより少ない特性のドリフト並びに延長された耐用年数及び高められた信頼性をもたらす。
【0047】
図7は、公知の構成素子の基板上での測定点で測定された温度上昇を、構成素子構造体に印加された電気信号の周波数の関数としてK/W単位で示す図である。図では、異なる出力において決定された3本の曲線が重ね合わせて示されている。
【0048】
構成素子は、この場合はバンド3用のデュプレクサである。デュプレクサの共振周波数では、温度が約120℃まで上昇する可能性がある特に多い損失熱が発生することが示されている。使用される基板材料の中心周波数の温度係数が27.1ppm/Kである場合、約2700ppmの周波数シフトは、約5.8MHzの絶対的周波数シフトに相当する。損失熱及び加熱によって引き起こされる最大の発熱は、右の通過帯域エッジに相当する1785MHzの周波数において測定される。
【0049】
図8は、本発明による構成素子の基板上での測定点で測定された温度上昇を、構成素子構造体に印加された電気信号の周波数の関数としてK/W単位で示す図である。図では、異なる出力において決定された3本の曲線が重ね合わせて示されている。
【0050】
構成素子は、この場合も同様にバンド3用のデュプレクサである。ただしそのデュプレクサは、
図6に図示したように接着されたアルミニウム箔よって構成されている。最大の発熱あるいは温度上昇は、この場合もまた右の通過帯域エッジの領域で現れるが、それ以外の点で同じ測定条件では、格段により低く約75℃までにしか達していない。同じ温度係数を用いると、この場合は、温度に起因する約3.6MHzの周波数ドリフトが生じ、すなわち、38%だけ低減された。
【0051】
本発明は、弾性波によって動作する構成素子に関してのみ記載しているが、本発明は、フリップチップ配置で支持体上に取り付けられ、かつ不十分な熱伝導を有する、すなわち低い熱伝導率係数を有する基板を備えるすべての電子構成素子及びマイクロ電子構成素子に関して適している。したがって、本発明は、実施例に限定されていない。
【0052】
本発明は、様々な構成素子形式に利用可能であり、様々なハウジング技術に適合でき、図示とは異なる幾何学的形状に成形されてもよく、支持体、基板又は導体路基板にも関して種々異なる材料と組み合わせてもよい。更に、本発明による構成素子は、上記のカバー層の上方又は下方に配置されてもよい更なるカバー層を含んでもよい。
以下に本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
第1の熱伝導率係数αSを有する基板を備え、
損失熱を発生する構成素子構造体を前記基板の動作側上に備え、
支持体を備え、
前記基板の前記動作側を前記支持体に取り付けている金属接続材料を備え、
前記動作側に対向する側にある前記構成素子の裏面に施与された熱伝導材料を備え、
前記熱伝導材料は、第2の熱伝導率係数αLSを有する材料を含み、
αLS≫αSであり、
前記基板の構造化領域においては前記構成素子構造体から前記熱伝導材料への、及び/又は前記熱伝導材料から前記接続材料への前記基板を貫通する垂直方向の熱輸送が、前記基板のその他の領域と比較して容易となっており、
前記基板の前記層厚は、前記構造化領域で低減されている、構成素子。
[C2]
前記裏面上の前記熱伝導材料は、前記構成素子構造体上方の少なくとも1つ又は複数の前記領域を前記金属接続材料上方の前記領域と接続する、C1に記載の構成素子。
[C3]
前記金属接続材料は、前記支持体内のヒートシンクと接続されている、C1又は2に記載の構成素子。
[C4]
前記基板は、圧電材料を含み、前記構成素子は、弾性波によって動作する構成素子である、C1~3のいずれか一項に記載の構成素子。
[C5]
前記熱伝導材料は、前記裏面上に施与された電気伝導層を含み、前記電気伝導層は、(複数の)異なる構成素子構造体上方に配置されている互いに分離された2つの領域に構造化されており、これにより前記熱伝導材料の前記層による前記(複数の)異なる構成素子構造体の容量性結合が回避される、C4に記載の構成素子。
[C6]
前記熱伝導材料は、前記裏面上の全面に施与される層を含む、C1~4のいずれか一項に記載の構成素子。
[C7]
熱伝導材料として前記裏面上に施与される前記層は、前記基板の少なくとも一方の側面において前記支持体まで下方に向かって達し、そこでヒートシンクと接続されている、C1~6のいずれか一項に記載の構成素子。
[C8]
前記金属接続材料は、前記基板上の接触面を前記支持体の前記上面側上の対応する接続個所と接続するバンプ又ははんだ付け個所として構成されている、C1~7のいずれか一項に記載の構成素子。
[C9]
前記熱伝導材料は、Al、Ag、Cu、Au、AlN及びSiCから選択される一材料を含む、C1~8のいずれか一項に記載の構成素子。
【符号の説明】
【0053】
AL 接着層
BES 動作側の構成素子構造
CLS 基板の側面の熱伝導材料
CLT、CL1、CL2 裏面上の熱伝導材料
GS 電気的分離
GT カバー/保護層
PCB 導体路基板
SBBES 構成素子構造体上方の基板の構造化領域
SBVM 接続材料上方の基板の構造化領域
SU 基板
TR 支持体
VI ビア又は貫通接点
VIZ 追加のビア又は貫通接点
VM 金属接続材料、熱排出部
αLS 第2の熱伝導率係数(熱伝導材料)
αS 第1の熱伝導率係数(基板)