(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】免疫療法における使用のためのポリエピトープ構築物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/63 20060101AFI20220203BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20220203BHJP
C12N 15/33 20060101ALI20220203BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20220203BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220203BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20220203BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220203BHJP
C07K 7/08 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
C12N15/63 Z ZNA
C12N15/12
C12N15/33
C12N15/31
A61K48/00
A61P31/00
A61P35/00
C07K7/08
(21)【出願番号】P 2018517799
(86)(22)【出願日】2016-10-06
(86)【国際出願番号】 EP2016073893
(87)【国際公開番号】W WO2017060360
(87)【国際公開日】2017-04-13
【審査請求日】2019-09-05
(32)【優先日】2015-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515267851
【氏名又は名称】アンヴェクティ
【氏名又は名称原語表記】INVECTYS
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ラングラード・ドゥモワイヤン,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ユエ,ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】ワン-オブソン,シモン
(72)【発明者】
【氏名】コストルザク,アンナ
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/063117(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/135553(WO,A1)
【文献】特開2015-163067(JP,A)
【文献】国際公開第2015/002134(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0238592(US,A1)
【文献】国際公開第2014/144885(WO,A2)
【文献】特開2013-230164(JP,A)
【文献】国際公開第2013/031882(WO,A1)
【文献】Adotevi, O. et al.,Immunogenic HLA-B*0702-restricted epitopes derived from human telomerase reverse transcriptase that elicit antitumor cytotoxic T-cell responses,Clin. Cancer Res.,Vol. 12(10),2006年,pp. 3158-3167
【文献】Dosset, M. et al.,Universal cancer peptide-based therapeutic vaccine breaks tolerance against telomerase and eradicates established tumor,Clin. Cancer Res.,2012年,Vol. 18(22),pp. 6284-95
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)のCD4エピトープ及び少なくとも1つの腫瘍、ウイルス、細菌、又は寄生虫のCD8エピトープをコードするDNA発現ベクター又はDNA発現ベクターの混合物であって、前記少なくとも2つのTERTのCD4エピトープが、同一であり、かつ、反復して
おり、前記TERTのCD4エピトープの少なくとも1つが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4からなる群より選択される、前記DNA発現ベクター又はDNA発現ベクターの混合物。
【請求項2】
前記ベクター又はベクターの混合物が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4の全てを含むポリエピトープ配列をコードする、請求項
1記載のDNA発現ベクター又はDNA発現ベクターの混合物。
【請求項3】
少なくとも2つの、配列番号2のエピトープの反復をコードする、請求項
1又は2記載のDNA発現ベクター又はDNA発現ベクターの混合物。
【請求項4】
少なくとも4つの、配列番号2のエピトープの反復をコードする、請求項
3記載のDNA発現ベクター又はDNA発現ベクターの混合物。
【請求項5】
前記CD8エピトープとして、MHCクラスIエピトープを含むウイルス、細菌、もしくは寄生虫の抗原の全部又は一部をコードする、請求項1~
4のいずれか一項記載のDNA発現ベクター又はDNA発現ベクターの混合物。
【請求項6】
前記CD8エピトープとして、ヒトパピローマウイルス(HPV) E7抗原の非発癌性変異体の全部又は一部をコードする、請求項
5記載のDNA発現ベクター又はDNA発現ベクターの混合物。
【請求項7】
a.前記少なくとも2つのTERTのCD4エピトープをコードする少なくとも1つのDNA発現ベクターを含む第1の容器、ここで、前記少なくとも2つのTERTのCD4エピトープが、同一であり、かつ、反復して
おり、前記TERTのCD4エピトープの少なくとも1つが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4からなる群より選択される、及び
b.腫瘍、ウイルス、細菌、又は寄生虫のCD8エピトープをコードする少なくとも1つのDNA発現ベクターを含む第2の容器
を含むキット。
【請求項8】
さらなる異なる腫瘍、ウイルス、細菌、又は寄生虫のCD8エピトープをコードする少なくとも1つのDNA発現ベクターを含む少なくとも1つの追加の容器をさらに含む、請求項
7記載のキット。
【請求項9】
患者における腫瘍又は感染を処置する際での使用のための、請求項1~
6のいずれか一項記載のDNA発現ベクター又はDNA発現ベクターの混合物、或いは請求項
8記載のキット。
【請求項10】
腫瘍が、癌、例えば慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、悪性骨髄腫、ホジキン病、黒色腫、脳腫瘍、神経膠芽細胞腫、神経芽細胞腫、及び星細胞腫など、膀胱、乳房、子宮頸部、結腸、肺、膵臓、前立腺、頭頸部、又は胃の癌腫からなる群より選択される癌である、請求項1~
6のいずれか一項記載のDNA発現ベクター又はDNA発現ベクターの混合物、或いは請求項
9記載の使用のためのキット。
【請求項11】
皮内注射により投与される、請求項1~
6のいずれか一項記載のDNA発現ベクター又はDNA発現ベクターの混合物、又は請求項
9又は10記載の使用のためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫療法及びワクチン接種の分野に関する。
【0002】
発明の背景
抗癌効率の良いT細胞ベースの免疫療法は、腫瘍特異的抗原を認識するCD8及びCD4の両方の腫瘍反応性T細胞応答を含まなければならない。CD8細胞傷害性Tリンパ球(CTL)は、腫瘍関連抗原(TAA)を発現する腫瘍細胞に対して細胞傷害活性を示すため、細胞媒介性免疫応答の主要な役者であると考えられている。しかし、この免疫応答は、CD4 Tヘルパー1(Th1)細胞が同時に刺激される場合にだけ効率的である。これらのCD4細胞は、複数の相互作用を通じた助けを提供し、全体的な抗腫瘍応答を調整することにより、腫瘍に対するCD8 T細胞の誘導及び維持のために決定的である(Shedlock and Shen, 2003)。結果的に、複数のTAAからのMHCクラスI及びIIエピトープの同定に集中してきた(Cheever MA, et al., 2009)。過去数年の間に、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)が最初の一般的な腫瘍抗原として現れ、癌免疫療法のための普遍的な標的として積極的に研究されている。ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)は、染色体末端でテロメアDNAを合成するテロメラーゼ酵素の触媒サブユニットである。hTERTは、多様な癌表現型からのヒト腫瘍の85%超で過剰発現し、正常な体細胞ではほとんど又は全く発現しない(Shay and Bacchetti, 1997)。
【0003】
CD8エピトープを主に標的とするhTERTペプチドワクチン製剤での臨床試験では、hTERT特異的免疫応答が癌患者において安全に誘発され、短期間の臨床転帰に対して顕著な影響を有することが例証されている(Bernhardt et al., 2006; Bolonaki et al, 2007)。しかし、この治療的アプローチでは、持続的な免疫応答の非存在のため、長期的な臨床的利益を誘導することに失敗した。CD8エピトープ、特に短いペプチドを標的とすることを目的としたhTERTペプチドワクチンで得られた記憶応答は非常に低く持続的ではなかった。これらの最適以下の結果は、CD4 T細胞の低レベル又は非存在により部分的に説明することができる。
【0004】
感染因子又は腫瘍、特に弱い免疫原性抗原を発現するものに対する効果的な治療用ワクチンについての必要性が依然としてある。
【0005】
発明の概要
本発明者らは、テロメラーゼ逆転写酵素(TERT)の特定のエピトープに制限されたペプチド(長いペプチドさえも)ワクチン接種の欠点を示さないDNAワクチン戦略を開発した。特に、DNAワクチン接種により、タンパク質産生及び精製のための高価で複雑な手順が回避される。本発明の構築物により、安全であり、より良好な定量的及び定性的免疫応答を誘導しながら、患者のHLA制限に非依存的にCTL及びCD4ヘルパーT細胞の両方が誘導される。
【0006】
本発明の主題は、少なくとも2つのテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)のCD4エピトープ及び少なくとも1つの腫瘍、ウイルス、細菌、又は寄生虫のCD8エピトープをコードするDNA発現ベクター又はDNA発現ベクターの混合物である。
【0007】
第1の実施形態によれば、i)前記少なくとも2つのTERTのCD4エピトープをコードするDNA発現ベクター、及びii)前記少なくとも1つの腫瘍、ウイルス、細菌、又は寄生虫のCD8エピトープをコードする少なくとも1つのDNA発現ベクターを含むDNA発現ベクターの混合物を提供する。
【0008】
別の実施形態によれば、前記少なくとも2つのTERTのCD4エピトープ及び前記少なくとも1つの腫瘍、ウイルス、細菌、又は寄生虫のCD8エピトープをコードするDNA発現ベクターを提供する。
【0009】
本発明の別の主題は、
a.前記少なくとも2つのTERTのCD4エピトープをコードする少なくとも1つのDNA発現ベクターを含む第1の容器、及び
b.前記腫瘍、ウイルス、細菌、又は寄生虫のCD8エピトープをコードする少なくとも1つのDNA発現ベクターを含む第2の容器を含むキットである。
【0010】
前記DNA発現ベクター、DNA発現ベクターの混合物、又はキットは、患者における腫瘍又は感染を処置する際に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1:pUCPbasicプラスミドマップ 以下の表1は詳細な凡例を示す。
【表1】
【
図2】
図2:pUCP2(4×)プラスミドマップ 以下の表2は詳細な凡例を示す。
【表2】
【
図3】
図3:pDE7プラスミドマップ 以下の表3は詳細な凡例を示す。
【表3】
【
図4】
図4:制限マッピングによるDNA構築物の検証 発現ベクターを制限マッピングにより検証した。それらのパターンは予測される制限マップに対応する。 レーンM:1kbラダー(Eurogentec);レーン1:pUCPbasic(369,5348bp);レーン2:pUCP2(4×)(363,5354bp);レーン3:pDE7(354,5345bp)
【
図5】
図5:ウエスタンブロッティングにより評価したHEK293T細胞株におけるインビトロでのUCPbasic、UCP2(4×)及びDE7ポリペプチド/タンパク質の発現 タンパク質発現をHEK293T細胞におけるトランスフェクションの48時間後にモニターした。(a)直接ウェスタンブロッティングアッセイ:取得の20秒後に検出されたpUCPbasic、pUCP2(4×)、pDE7及びpcDNA3.1ポリペプチド/タンパク質;βアクチンをローディング対照として使用した。(b)E7タンパク質の免疫沈降後でのウェスタンブロッティングアッセイ:pDE7及びpcDNA3.1でトランスフェクトした細胞から調製した全細胞抽出物を抗V5アガロースビーズで免疫沈降させた。E7タンパク質を取得の4分後に検出した。分子量(MW)マーカーを示す(kDa)。
【
図6】
図6:hTERTヘルパーエピトープにより、HPV16 E7抗原に対するCD8 T細胞応答が増加する マウスを、0日目及び21日目に非発癌性E7抗原をコードするDNA及び空の対照プラスミド(pcDNA3.1)、pUCP2(4×)、又はpUCPbasicで同時免疫した。2回目の免疫化の10日後(D31)、脾臓を収集し、ELISpot IFN-γアッセイにより分析した。 脾臓におけるhTERT及びE7 HLA-DR1(a、b)並びにE7 HLA-A2(c)制限IFN-γ+T細胞の頻度の中央値。5-13:マウス番号。(d)凝集したHLA-DR1及びHLA-A2 ELISpot IFN-γの結果。バーはIFN-γスポットの範囲の中央値を示す。 黒色水平破線はELISpot陽性閾値を示す。p値<0.05を有意とみなした(不対t検定)。 Pearsonの相関係数検定により決定したpUCP2(4×)+pDE7(e)及びpUCPbasic+pDE7構築物(f)についてのhTERT HLA-DR1 T細胞応答及びE7 HLA-A2 T細胞応答の間の相関。p値<0.05を有意とみなした。 この実験的試験を同じ条件で反復し、同様の結果を得た。
【
図7】
図7:プール1の4つのhTERT HLA-DR1ペプチドの存在における24時間培養後の脾細胞培養上清中でのサイトカイン結合アッセイ(CBA)によるTh1、Th2、及びTh17サイトカイン産生の検出。pg/mLでのサイトカイン濃度は、平均値±標準偏差として表した。統計分析:pDE7+pcDNA3.1対照群に対するマンホイットニーノンパラメトリック検定。p値<0.05を有意(*)とみなした。
【
図8】
図8:pUCPbasic挿入配列を示す。 UCPbasicポリペプチドをコードする導入遺伝子。5つのAA天然隣接配列を伴う4つのCD4+ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT;受入番号NM_198253)エピトープ、即ちUCP1、UCP2、UCP3、及びUCP4を一緒に連結する。C末端配列の14個のアミノ酸は、V5エピトープタグをコードする。第1のラインはヌクレオチド配列である;第2のラインは対応するアミノ酸配列である。注釈を配列の上又は下のいずれかに与える。□:停止コドン。 配列をSHOWORF翻訳プログラム(EMBOSS Explorer)により翻訳した。 1-6 サブクローニング用のHindIII制限部位;13-315 UCPbasic-UCP1、UCP2、UCP3、及びUCP4(太字);316-357 V5エピトープタグ;358-363の2つの停止コドン;364-369サブクローニング用のXhoI制限部位;ヌクレオチド配列を配列番号21として示し、対応するアミノ酸配列を配列番号22として示す。
【
図9】
図9はpUCP2(4×)挿入配列を示す。 pUCP2(4×)導入遺伝子配列は、各々の側に5つのAA隣接配列を伴う4回反復UCP2優性エピトープKSVWSKLQSIGIRQH(配列番号2、TERT 578-592、受入番号NM_198253)を含む。C末端配列の14個のアミノ酸は、V5エピトープタグをコードする。第1のラインはヌクレオチド配列である;第2のラインは対応するアミノ酸配列である。注釈を配列の上又は下のいずれかに与える。□:停止コドン。 配列をSHOWORF翻訳プログラム(EMBOSS Explorer)により翻訳した。 1-6 サブクローニング用のHindIII制限部位;13-315 UCP2(4×)-UCP2ユニット(太字);316-357 V5エピトープタグ;358~363 2つの停止コドン;364-369 サブクローニング用のXhoI制限部位;ヌクレオチド配列を配列番号23として示し、対応するアミノ酸配列を配列番号24として示す。
【
図10】
図10はpDE7挿入配列を示す。 DE7タンパク質をコードする導入遺伝子。4つの変異をヒトパピローマウイルス16型(受入番号EU869317)の野生型E7遺伝子中に導入した。C末端配列の14個のアミノ酸は、V5エピトープタグをコードする。第1のラインはヌクレオチド配列である;第2のラインは対応するアミノ酸配列である。注釈を配列の上又は下のいずれかに与える。□:停止コドン。変化/変異塩基を太字で強調表示する。 配列をSHOWORF翻訳プログラム(EMBOSS Explorer)により翻訳した。 1-6 サブクローニング用のHindIII制限部位;13-306 DE7;307-348 V5エピトープタグ;349-354 2つの停止コドン;355-360 サブクローニング用のXhoI制限部位;ヌクレオチド配列を配列番号25として示し、対応するアミノ酸配列を配列番号26として示す。
【0012】
発明の詳細な説明
本発明者らは、免疫原性が不良な抗原に対する持続的な免疫応答を誘導するために、普遍的なブースターとして複数のTERT CD4無差別性TヘルパーエピトープをコードするDNA構築物を使用することを提案する。
【0013】
本発明者らは、改善されたE7 CD8 T細胞応答のための助けを提供することができるか否かを研究するために、4つの異なるCD4エピトープ(UCP1、UCP2、UCP3、及びUCP4、それぞれ配列番号1~4)及びUCP2免疫優性無差別エピトープのいずれかをそれぞれ4回反復してコードする2つの合成DNA hTERT由来CD4ポリエピトープ構築物pUCPbasic及びpUCP2(4×)を設計した。HLA-A2/DR1トランスジェニックマウスにおけるこれらの2つのDNA構築物のエレクトロポレーション後での皮内(ID)投与により、優先的にTh1分極された強いhTERT特異的CD4 T細胞応答がもたらされた。免疫原性が不良なE7抗原をコードするプラスミドDNAを同時注入した場合、E7特異的なCD8 T細胞応答の大きさが劇的に増加した。
【0014】
これらの結果に基づき、本発明者らは、(i)hTERT由来の合成DNA構築物によりコードされるCD4 Tヘルパーエピトープが効率的にプロセッシングされ、HLA-A2/DR1トランスジェニックマウスモデルにおけるHLA-DR1の状況で提示され、(ii)hTERT CD4 Th1分極応答が、多様な不良な免疫原性の癌/オンコウイルス抗原又は抗癌クラスIポリエピトープに対するCTL応答を大きく増強することができると結論付けた。
【0015】
定義
テロメラーゼ複合体は、RNA鋳型及び、テロメラーゼ活性の主要な決定因子である「テロメラーゼ逆転写酵素」(TERT)と命名される逆転写酵素を含むタンパク質成分からなる。野生型ヒトテロメラーゼ(又はhTERT)が公知である(GeneBank受入番号NM_198253)。
【0016】
1つ又は複数のアミノ酸残基が生物学的に類似の残基により置換されている場合、又はアミノ酸の80%以上が同一である場合、又は約90%以上、好ましくは約95%以上が類似(機能的に同一)である場合、2つのアミノ酸配列は「相同」、「実質的に相同」、又は「実質的に類似」である。好ましくは、類似配列又は相同配列を、アラインメントにより、例えば、GCG(Genetics Computer Group, Program Manual for the GCG Package, Version 7、ウィスコンシン州マディソン)パイルアッププログラム、又は当技術分野において公知のプログラムのいずれか(BLAST、FASTAなど)を使用して同定する。
【0017】
「置換された」又は「改変された」により、天然に生じるアミノ酸から変化又は改変されたアミノ酸を含む。
【0018】
本明細書で使用する用語「保存的置換」は、ペプチドの全体的な立体構造及び機能を変化させることなく、アミノ酸残基の、別のアミノ酸残基による置換(類似の特性、例えば極性、水素結合能、酸性、塩基性、形状、疎水性、芳香族などを有するアミノ酸によるアミノ酸の置換を含むが、これに限定しない)を意味する。類似の特性を伴うアミノ酸は、当技術分野において周知である。例えば、アルギニン、ヒスチジン、及びリシンは親水性塩基性アミノ酸であり、互換性がありうる。同様に、疎水性アミノ酸であるイソロイシンは、ロイシン、メチオニン、又はバリンで置換してもよい。互いに置換することができる中性親水性アミノ酸には、アスパラギン、グルタミン、セリン、及びスレオニンが含まれる。
【0019】
用語「単離されたポリヌクレオチド」は、天然に生じる、環境から除去されたポリヌクレオチドとして定義する。例えば、生きた細菌のゲノム又は遺伝子バンクの一部として存在する天然に生じるDNA分子は単離されないが、例えば、クローニング事象(増幅)の結果として、細菌ゲノムの残りの部分から分離された同じ分子は単離される。典型的には、単離されたDNA分子には、それが、天然に生じるゲノムにおいて5’又は3’末端で直に連続するDNA領域(例、コード領域)は含まれない。そのような単離されたポリヌクレオチドは、ベクター又は組成物の一部であってもよく、そのようなベクター又は組成物は、そのようなポリヌクレオチドの天然環境の一部ではないという点において、依然として単離されたとして定義する。
【0020】
用語「免疫原性」は、それが参照する組成物又は構築物が投与時に免疫応答を誘導することが可能であることを意味する。被験体における「免疫応答」は、先天的で適応性の免疫応答(抗原に対する体液性免疫応答、細胞性免疫応答、又は体液性及び細胞性免疫応答を含む)の発生を指す。「体液性免疫応答」は、抗体により媒介されるものを指す。「細胞性免疫応答」は、Tリンパ球により媒介されるものである。それには、活性化T細胞、白血球、又はその両方により産生されるサイトカイン、ケモカイン、及び類似分子の産生が含まれる。免疫応答は、標準的なイムノアッセイ及び当技術分野において公知の体液性免疫応答の検出のための中和アッセイを使用して決定することができる。
【0021】
本発明の文脈において、免疫応答は、好ましくは、細胞傷害性CD8 T細胞及び/又はCD4 T細胞の刺激又は増殖を包含し、イムノアッセイ(例えばELIspotアッセイ、インビボ細胞毒性アッセイ、又はサイトカイン分泌結合アッセイなど)を使用して決定することができる。
【0022】
本明細書中で使用するように、用語「処置」又は「治療」又は「免疫療法」は、症状の緩和、寛解及び/又は排除、低下及び/又は安定化(例、より進んだ段階への進行の失敗)、ならびに疾患又はその症状の進行における遅延が含まれる。この用語は、このように、癌患者で観察される効率的な抗腫瘍性免疫応答の達成を含む。
【0023】
本明細書で使用するように、用語「予防」又は「予防する」は、前駆症状の緩和、寛解及び/又は排除、低下及び/又は安定化(例、より進んだ段階への進行の失敗)、即ち、特定の症状が生じる前に疾患の開始を示しうる任意の変化又は初期症状(又は一連の症状)を指す。
【0024】
「テロメラーゼを過剰発現する」細胞とは、(例、変異又は感染、特にオンコウイルスによる感染時に)テロメラーゼを発現するのに対し、正常な状態では通常発現しない被験体中の細胞を、又は、正常な状態と比較した場合、(例えば、変異又は感染時に)より高いレベルのテロメラーゼを発現する被験体中の細胞を指す。好ましくは、テロメラーゼを過剰発現する細胞は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又はそれ以上の発現の増加を示す。
【0025】
「患者」又は「被験体」は、典型的には、任意の年齢、性別、又は状態の重症度の哺乳動物被験体、好ましくはヒト被験体である。非ヒト哺乳動物(ネコ、イヌ、ウマなどを含む)が包含される。
【0026】
核酸構築物
本明細書では、患者においてワクチン接種を可能にするように設計された核酸構築物を提供する。
【0027】
第1の実施形態では、DNA発現ベクターの混合物は、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つのテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)のCD4エピトープ及び少なくとも1つの腫瘍、ウイルス、細菌、又は寄生虫のCD8エピトープをコードする。したがって、混合物は、少なくとも1つの腫瘍、ウイルス、細菌、又は寄生虫のCD8エピトープをコードする少なくとも1つのDNA発現ベクターとともに、少なくとも2つのTERT CD4エピトープ(「ポリエピトープ構築物」とも命名される)をコードする少なくとも1つのDNA発現ベクターを含みうる。
【0028】
別の実施形態では、単一のDNA発現ベクターは、少なくとも2つのTERTのCD4エピトープ及び少なくとも1つの腫瘍、ウイルス、細菌、又は寄生虫のCD8エピトープをコードする。
【0029】
本発明のDNA構築物は、好ましくは二本鎖DNAであり、単離された形態である。核酸構築物は天然に生じるゲノム核酸ではなく、特にそれはイントロンを含まない。
【0030】
CD4エピトープ
DNA発現ベクター又はDNA発現ベクターの混合物は、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、さらに好ましくは少なくとも4つのTERTのCD4エピトープをコードする。
【0031】
TERTは、好ましくは、ヒトTERT、又は、処置される被験体がネコもしくはイヌである場合、別の種からのTERT(例えばネコTERTもしくはイヌTERTなど)である。
【0032】
しかし、本発明のポリエピトープ構築物のいずれも、全長TERTのコード配列や、国際特許出願WO2015/063117に記載されている「シャッフル」構築物と一致しない。TERTのCD4エピトープ及び構築物は、テロメラーゼ触媒活性を欠く。本発明の構築物は、TERTのCD4エピトープの70%未満、さらに好ましくは60%未満、50%未満、40%未満をコードする。
【0033】
特定の実施形態では、ポリエピトープ構築物は、その配列が少なくとも2つ、好ましくは3つ、さらに好ましくは少なくとも4つの異なるCD4 TERTエピトープを含む160未満、好ましくは120未満のアミノ酸のポリペプチドをコードし、前記エピトープは、場合により、アミノ酸スペーサーにより分離される。
【0034】
DNA発現ベクター又はDNA発現ベクターの混合物は、2~30のTERTのCD4エピトープ、好ましくは2~20、3~18、3~15、3~12、4~10、又はさらに好ましくは4~8のTERTのCD4エピトープをコードする。
【0035】
用語「TERTのエピトープ」は、抗原決定基であるTERTの任意のアミノ酸フラグメントを指し、即ち、それは、免疫系の細胞により認識され、免疫原性であり、即ち、それは免疫応答を誘発することができる。
【0036】
用語「TERTのCD4エピトープ」は、HLAクラスII分子に結合し、CD4 T細胞に提示されることが可能であるTERTフラグメントを指す。TERTの最も有用なCD4エピトープを「UCP」又は「ユニバーサル癌ペプチド」としても言及し、大部分の腫瘍で発現されることを意味する。本発明の構築物によりコードされるUCPは、広範囲のHLAクラスII対立遺伝子、特にHLA-DR対立遺伝子に、しかし、またHLA-DQ及びHLA-DP対立遺伝子にも結合することができる。このペプチドを「HLAクラスIIペプチド」としても言及する。好ましくは、それは、抗TERT T細胞により特異的に認識されることができる。TERTのいくつかの免疫原性エピトープ配列が記載されている。例えば、国際特許出願WO2013/135553を参照のこと。
【0037】
本発明の構築物によりコードされるCD4エピトープ配列は、TERTに由来する15~20アミノ酸のペプチド配列である。好ましくは、ペプチドは、TERTに由来する15~17アミノ酸のペプチドである。
【0038】
本明細書で定義するペプチドは、腫瘍細胞又は抗原提示細胞の表面上の多数のHLAクラスII分子との複合体として提示されることが可能であり、それにより大部分の患者において有用である。
【0039】
このペプチドは、テロメラーゼタンパク質に対するCD4 Th細胞応答、好ましくはTh1細胞応答を生成することが可能であり、CD8 T細胞の細胞傷害活性に対してヘルパー効果を有する。
【0040】
4つのCD4エピトープが特に興味深い:UCP1、UCP2、UCP3、及びUCP4。アミノ酸配列を以下の表に示す。
【0041】
【0042】
他のCD4エピトープには、1つ又は複数の置換による配列番号1、2、3、又は4に由来する実質的に相同なペプチドが含まれる。好ましくは、置換は保存的であり、及び/又はペプチド免疫原性を改善する。
【0043】
有利には、TERTの前記CD4エピトープの少なくとも1つは、UCP1、UCP2、UCP3、及びUCP4からなる群より選択する。
【0044】
特定の実施形態では、DNA発現ベクター又はDNA発現ベクターの混合物によりコードされる少なくとも2つのCD4エピトープは、互いに異なる。例えば、ベクター又はベクターの混合物は、UCP1、UCP2、UCP3、及びUCP4を含むポリエピトープ配列をコードしうる。
【0045】
別の特定の実施形態では、DNA発現ベクター又はDNA発現ベクターの混合物によりコードされるTERTの少なくとも2つのCD4エピトープは同一であり、反復する。
【0046】
例えば、DNA発現ベクター又はDNA発現ベクターの混合物は、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つのUCP2エピトープの反復をコードしうる。
【0047】
複数のエピトープをコードするポリヌクレオチド単位は、任意の順序で連続して配列することができ、即ち、第1のポリヌクレオチド単位の3’末端は、第2のポリヌクレオチド単位の5’末端に直接連結され(以下同様)、連続エピトープのみで構成されるペプチド配列をコードするポリヌクレオチドがもたらされる。複数のエピトープは、代わりに、1アミノ酸スペーサー又はペプチドスペーサーにより分離することができ、即ち、異なるポリヌクレオチド単位が、1又は複数のアミノ酸をそれぞれコードする1又は複数のコドンにより分離されることを意味する。典型的には、CD4 TERTエピトープは、約4~6個のGlyアミノ酸により分離することができる。
【0048】
エピトープが配置される順序は、以下の基準に従って、当業者により決定されうる:一部の順序は、ポリヌクレオチドの転写及び/又は翻訳のいずれかを促進しうる、特に三次立体構造が特性に影響する場合、小胞体(ER)において結果として得られる発現ポリエピトープの輸送を促進しうる、及びいくつかのエピトープ又は類似体におけるポリエピトープのプロセッシングを促進し、重複エピトープのプロセッシングを回避しうる。
【0049】
実験のセクションでは、UCP1、UCP2、UCP3、及びUCP4(pUCPbasic)並びにUCP2を4回反復した[pUCP2(4×)]ポリエピトープをブースターとして用いた本発明を例証する。しかし、インシリコ予測によりhTERTタンパク質配列に沿って同定された他のいくつかのhTERT HLA-DR(クラスII)エピトープも、CTL応答を増強するための優れた候補である(表5)。
【0050】
【0051】
本発明によれば、用語「TERTのCD4エピトープ」は、上記配列のいずれかを包含する。
【0052】
CD8エピトープ:
本発明のベクターによりコードされるCD8エピトープは、抗原に対するCD8 T細胞応答を活性化することができるペプチドである。好ましくは、前記CD8エピトープは、CD8抗腫瘍応答又はウイルス、細菌、又は寄生虫の抗原に対するCD8応答を活性化することができる。特定の実施形態では、ベクターはMHCクラスIエピトープを含むウイルス、細菌、又は寄生虫の抗原の全部又は一部をコードする。
【0053】
前記の腫瘍、ウイルス、細菌、又は寄生虫のCD8エピトープを含むベクターは、このように、好ましくは、全長又は実質的に完全な腫瘍、ウイルス、細菌、又は寄生虫のCD8抗原或いはそのCD8エピトープフラグメントをコードする。最も有利には、本発明は前記CD8抗原の非発癌性変異体を利用する。CD8エピトープペプチドの例は、以下の抗原に由来する:チロシナーゼ、アルファフェトプロテイン、癌胎児性抗原(CEA)、CA-125、MUC-1、上皮腫瘍抗原、黒色腫関連抗原、P1A、MART-1/Melan-A及びgp100/pMell7ならびにチロシナーゼ関連タンパク質pg75及びMUM-1、HER2/neu、ヒトパピローマウイルスタンパク質E6及びE7、サバイビン、GnT-V、ベータカテニン、CDK4、p15、MAGE1、MAGE3、BAGE、GAGE、PSMA、TARP、STEAP、HTLV-1 Tax及びWT1。
【0054】
CD8エピトープペプチドの例として、gp100.154、NA17-A.nt38、及びMelan-A/MART-1.27、CEA.571、チロシナーゼ3368-N、p53.65、Her2/neu、369-377、gp100.209、gp100.280、gp100.476、チロシナーゼ368-D、MAGE-3.271、及びHer2/neu.654、gp100.457、Melan-A/MART-1.32、p53.149、p53.264、Sur1M2及びHPV E7.86が含まれるが、これらに限定しない。
【0055】
特定の実施形態では、前記CD8エピトープは、HPV E7抗原の非発癌性変異体である。
【0056】
この抗原はいくつかのクラスIエピトープを示し、HLA MHCクラスII決定基に対する高親和性エピトープを欠く。故に、E7だけを標的とするDNAワクチンアプローチは、常に失望した結果をもたらしている(Chen et al, 2000)。本発明により、この抗原に対する免疫応答が増強され、子宮頸癌を処置する際に特に有用である。
【0057】
ベクター及び投与
本発明で使用する発現ベクターは、インビトロ及び/又はインビボで(例、適切な宿主細胞、宿主生物、及び/又は発現系において)発現を提供することができる。それらは、典型的には、上で定義したポリヌクレオチド配列、及び宿主細胞又は宿主生物においてタンパク質産物の発現(例、転写及び翻訳)を可能にする調節配列(適切なプロモーター、エンハンサー、ターミネーターなど)を含む。
【0058】
本発明のベクターは、ベクター、例えば、プラスミド、コスミド、YAC、ウイルスベクター、又はトランスポゾンなどの形態でありうる。
【0059】
好ましいが非限定的な態様では、本発明のベクターは、i)上記の少なくとも1つの核酸;ii)1つ又は複数の調節エレメント(例えばプロモーター及び場合により適切なターミネーターなど);並びに、場合により、iii)遺伝子構築物の1つ又は複数のさらなるエレメント(例えば3’又は5’UTR配列、リーダー配列、選択マーカー、発現マーカー/レポーター遺伝子、及び/又は形質転換或いは組込み(の効率)を促進、或いは増加しうるエレメントなど)を含む。
【0060】
特定の実施形態では、本発明で使用するベクターは、分子アジュバント(サイトカイン、ケモカイン、又は共刺激分子)をコードする追加のインサート、MHC抗原提示を促す小さなDNA配列(例、IMX313)、IMAXIO技術(抗原のオリゴマー化)、抗原が特定の細胞区画に入るのを補助する(例、LAMP-1)、或いは免疫応答の刺激又は指向においてアジュバントとして作用しうる補助剤を含みうる。
【0061】
特定の実施形態では、核酸構築物を制限エンドヌクレアーゼで消化し、プロモーター(例えばSV40プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、又はラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターなど)を含むプラスミド中にクローニングすることにより遺伝子構築物を調製することができる。
【0062】
他のベクターには、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、麻疹ウイルスベクター、及びアデノウイルス関連ベクターが含まれる。
【0063】
特定の実施形態では、以下を含むキットを提供する:
a.前記少なくとも2つのTERTのCD4エピトープをコードする少なくとも1つのDNA発現ベクターを含む第1の容器、及び
b.少なくとも1つの腫瘍、ウイルス、細菌、又は寄生虫のCD8エピトープをコードする少なくとも1つのDNA発現ベクターを含む第2の容器。
【0064】
キットは、少なくともさらなる腫瘍、ウイルス、細菌、又は寄生虫のCD8エピトープをコードする少なくとも別の1つのDNA発現ベクターを含む少なくとも1つの追加の容器をさらに提供しうる。そのようなキットは、複数の異なる腫瘍抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、又は寄生虫の抗原に対するワクチン接種の状況において特に有用でありうる。そのような抗原は、同一のタンパク質又は異なるタンパク質に由来しうるが、それらは、同じ又は異なるタイプの腫瘍、或いは同じ又は異なるウイルス、細菌、又は寄生虫用の薬剤により発現させてもよい。
【0065】
前記少なくとも2つのTERTのCD4エピトープをコードするDNA発現ベクター及び少なくとも1つの腫瘍、ウイルス、細菌、又は寄生虫のCD8エピトープをコードするDNA発現ベクターを、別々の容器中で提供する場合、好ましくは同時に又は実質的に同時に投与する。特定の実施形態では、それらは、近接して局所的に注射する。
【0066】
特定の実施形態では、容器又は種は、被験体に投与する前に、即座に、又は事前に混合することができる。
【0067】
前記ベクターを含む組成物を調製することができる。組成物は免疫原性である。それらは、ヒト又は哺乳動物(即ち、非毒性、及び必要な場合、無菌)での投与のための適切な担体又は賦形剤を含むことができる。そのような賦形剤には、医薬溶媒、等張剤、安定化剤、又は任意のアジュバントとしての役割を果たす液体、半固体、又は固体の希釈剤が含まれる。希釈剤は、水、生理食塩水、デキストロース、エタノール、グリセロールなどを含むことができる。等張剤は、とりわけ、塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、及びラクトースを含むことができる。安定剤には、とりわけ、アルブミンが含まれる。当技術分野で公知の任意のアジュバントをワクチン組成物(油性アジュバント、例えばフロイント完全アジュバント及びフロイント不完全アジュバントなど、マイコレートアジュバント、細菌リポポリサッカライド(LPS)、ペプチドグリカン、プロテオグリカン、水酸化アルミニウム、サポニン、DEAE-デキストラン、中性油(例えばミグリオールなど)、植物油(例えば落花生油など)、Pluronic(登録商標)ポリオールを含む)中で使用してもよい。
【0068】
ベクター又は組成物は直接投与することができる、又はそれらを投与前にリポソーム中にパッケージングするか、又は金コロイド粒子上にコーティングすることができる。DNAワクチンをリポソーム中にパッケージングする技術は、例えばMurray, 1991から公知である。同様に、金粒子上にネイキッドDNAをコーティングする技術が、Yang, 1992において教示されており、ウイルスベクターを使用したタンパク質の発現のための技術がAdolph, 1996において見出される。
【0069】
ワクチン組成物は、好ましくは、皮内、皮下、筋肉内、腫瘍中又は任意のタイプのリンパ器官中に投与され、宿主生物における免疫応答を刺激するのに効果的な量で送達される。種々の技術、例えばエレクトロポレーション(例、Cliniporator, IGEA, BTX, Harvard Apparatusを使用)、無針アプローチ、例えば粒子衝撃(例、PifizerのPMEDデバイス)など、及び高圧送達(例、Biojectorデバイス、Bioject Medical Technologies)、真皮パッチ(例、DermaVir, Genetic Immunity)、微小粒子又はリポソーム中でのDNAワクチンの製剤化(例、脂質化合物Vaxfectin、Vical中での製剤化)を含むが、これらに限定しない。
【0070】
本発明の好ましい実施形態では、投与は、注射工程(Mir 2008、Sardesai and Weiner 2011に記載)に加えて、エレクトロポレーション工程(本明細書では用語「エレクトロトランスファー」とも命名する)を含む。最も有利な実施形態では、エレクトロトランスファーのプロトコールは、国際特許出願WO2015/063112に記載されている通りである。
【0071】
必要とされる材料の量は、各々の個々の構築物の免疫原性に依存し、先験的に予測することはできないと理解されるが、任意の所与の構築物についての適当な投与量を決定するプロセスは直接的である。具体的には、約5~30μg、又は好ましくは20~25μg、約500μg~約5mgまで、好ましくは500~1500μg、500~1200μg、又は500~1000μgまでで開始する、増加サイズの一連の投与量を、例えば、対応する種に投与し、結果として得られた免疫応答を、IFNγElispotアッセイ(実験セクションに記載)により細胞性免疫応答を検出することにより、インビボ溶解アッセイを使用してCTL応答を検出すること、又はサイトカイン放出アッセイを使用してTh(ヘルパーT細胞)応答を検出することにより観察することができる。
【0072】
好ましい実施形態では、ワクチン接種計画は1~3回の注射を含み、好ましくは3~4週間後に反復する。
【0073】
特定の実施形態では、ワクチン接種スケジュールは、1回又は2回の注射、それに続く、3~4週間後での3~5回の注射の少なくとも1サイクルで構成することができる。
【0074】
別の実施形態では、開始用量は1~3回の注射、それに続く少なくとも、毎年、又は2年もしくは数年毎の追加免疫用量からなる。
これらは単なる例であり、任意の他のワクチン接種計画が本明細書で包含される。
【0075】
治療的使用
本明細書に記載するベクター又はベクターの混合物を前記患者に投与することを含む、それを必要とする患者において腫瘍又は感染を処置するための方法を記載する。
【0076】
本発明で使用するベクターにより、弱免疫原性抗原に対するCTL応答を有意に増強する高い結合力のTh1分極CD4 T細胞が特に誘導される。
上記のベクター又はベクターの混合物は、患者において腫瘍を予防又は処置するための方法において有用である。
【0077】
患者において腫瘍を予防又は処置するための方法を記載し、この方法には、有効量の前記核酸又は免疫原性組成物を、それを必要とする患者において投与することが含まれる。前記核酸又は免疫原性組成物は、患者において免疫応答を誘導するのに十分な量で投与する。
【0078】
腫瘍は、細胞、特に良性腫瘍又は悪性腫瘍、特に癌の任意の望ましくない増殖でありうる。
【0079】
癌は、発生の任意の段階(転移段階を含む)でありうる。癌は慢性又は非慢性(急性)でありうる。
【0080】
別の実施形態では、本発明はまた、腫瘍を予防する際に有用なワクチンに関する。
【0081】
特定の実施形態では、腫瘍は固形癌又は癌腫である。例として、黒色腫、脳腫瘍(例えば神経膠芽細胞腫、神経芽細胞腫、及び星細胞腫膀胱癌など)、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、肺癌、特に非小細胞肺癌(NSCLC)、膵臓癌、前立腺癌、頭頸部癌、又は胃癌が含まれる。
【0082】
別の実施形態では、腫瘍は液性腫瘍、例えば、造血性腫瘍又は白血病、例えば慢性又は急性リンパ球性白血病、慢性又は急性骨髄性白血病、リンパ腫(ホジキン病を含む)、多発性骨髄腫、悪性骨髄腫などを含む。
【0083】
好ましくは、処置される患者は、従来の治療、最も好ましくは、第一選択の従来の治療を受けてきた、又は受けようとしている。
【0084】
特定の実施形態では、本発明による処置は、従来の治療(化学療法、放射線療法、又は外科手術を含む)と組み合わせてもよい。アジュバント免疫調節分子、例えばGM-CSF又はサイトカイン(IL-2もしくはIL-12など)などとの組み合わせも有用でありうる。
【0085】
別の実施形態では、患者はウイルス、寄生虫、又は細菌に感染しているであろう。ウイルスの例には、パピローマウイルス、単純ヘルペスウイルス、肝炎ウイルス、アデノウイルス、ミクソウイルス(例えばインフルエンザ、パラミクソウイルスなど)、ポックスウイルス(例えばワクシニアなど)、レンチウイルス(例えばHIVなど)が含まれる。
【実施例】
【0086】
実施例及び図により、その範囲を限定することなく本発明を例証する。
【0087】
実施例1:DNAプラスミドの同時送達後でのHPV16のE7抗原に対する応答の誘導
【0088】
種々のDNA構築物によりコードされるユニバーサルhTERT CD4エピトープが、エレクトロポレーションと組み合わせた皮内注射によるDNAプラスミドの同時送達後でのHPV16のE7抗原に対するCTL応答の誘導においてヘルパー的な役割を果たすことが示された。
【0089】
HLA-A2/DR1トランスジェニックマウスを、HPV16 E7抗原の非発癌性変異体をコードするプラスミドの存在下で、hTERT由来のCD4エピトープ(すなわち、ユニバーサル癌ペプチドのUCP)をコードするDNA構築物を用いて免疫化した。プラスミドによる2回目の免疫化(追加免疫)の10日後、CD4及びCD8 T細胞免疫応答の頻度を、IFN-γELISpotアッセイにより動物の脾臓において評価した。機能的に分極したT細胞サブセットを、CBAアッセイを使用したサイトカイン分泌のそれらの異なるパターンに基づいて同定した。
【0090】
略語
HLA-A2/DR1:HLA-A*0201/HLA-DRB1*0101トランスジェニック、H2クラスI/クラスII KOマウス、CBA:サイトメトリービーズアレイ、CTL:細胞傷害性Tリンパ球、DNA:デオキシリボ核酸、EP:エレクトロポレーション、HLA:ヒト白血球抗原、HPV16:ヒトパピローマウイルス16型、hTERT:ヒトTERT、ID:皮内、IL:インターロイキン、IFN-γ:インターフェロンγ、MHC:主要組織適合性複合体、TAA:腫瘍関連抗原、TERT:テロメラーゼ逆転写酵素、TNF-α:腫瘍壊死因子α、RT:室温、wt:野生型、UCP:ユニバーサル癌ペプチド
【0091】
材料及び方法
プラスミドDNAベクター
pUCPbasic
pUCPbasicは、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)由来クラスIIエピトープ、すなわち、UCP1、UCP2、UCP3、及びUCP4(101AA)をコードする5717bpのプラスミド発現ベクターであり、14AA V5タグが連結されており(
図1、
図8)、約12.7kDaの分子量のポリペプチドに対応する。hTERT挿入配列は、野生型hTERT(受入番号NM_198253)にそれぞれ対応するAA 2-26、AA 27-51、AA 52-76、AA 77-101の4つのフラグメントで構成される:AA 39-63 hTERT、AA 573-597 hTERT、AA911-935 hTERT、及びAA1036-1060 hTERT(UCP1-4クラスIIエピトープ及びそれらの5AA隣接配列を含む)。これらのフラグメントは、4つの十分に特徴付けられた15-mer CD4+hTERTエピトープ(TERT 44-58 PAAFRALVAQCLVCV(配列番号1)、TERT 578-592 KSVWSKLQSIGIRQH(配列番号2)、TERT 916-930 GTAFVQMPAHGLFPW(配列番号3))、TERT 1041-1055 SLCYSILKAKNAGMS(配列番号4)、及び2つの9-mer内部CD8 +テロメラーゼエピトープ(Godet et al. 2012;Suso et al. 2011)を含む。
【0092】
pUCP2(4×)
pUCP2(4×)は、各々の側に5AA隣接配列を伴うヒトテロメラーゼ逆転写酵素CD4+578-592(KSVWSKLQSIGIRQH、(配列番号2)、受入番号NM_198253)エピトープをコードする5717bpのプラスミド発現ベクターである。このUCP2エピトープユニットは、4回反復し、14A V5エピトープタグ(
図2、
図9)と連結しており、約12.7kDaの分子量のポリペプチドに一緒に対応する。
【0093】
pDE7
pDE7は、14AV V5エピトープタグ(
図3、
図10)と連結した非発癌性HPV16 E7変異体(98AA)(Wieking et al., 2012)をコードする5708bpのプラスミド発現ベクターであり、約14~15kDaの分子量のタンパク質に相当する。発癌性HPV E7の送達に関連付けられるリスクを減少させるために、E7内の4つの公知の発癌領域を変異させた(Munger et al., 2004)。E7に導入された変異は、pRbに結合/不活性化し、細胞成長を増強するMi2βと会合するその能力を防止する(Brehm et al., 1999)。
【0094】
遺伝子合成及びクローニング
重複40merオリゴヌクレオチドアセンブリプロセス(GeneCust、ルクセンブルク)を通じて遺伝子を合成し、固有の隣接制限部位HindIII/XhoIを含んだ。合成遺伝子を、pcDNA3.1(+)発現ベクター(Life Technologies、米国カールスバーグ)のHindIIIとXhoI制限部位の間にクローニングした。pcDNA3.1(+)は、哺乳類細胞における高レベルの安定な一過性発現のために設計したpcDNA3.0に由来する5.4kbのベクターである。このベクターは、ヒトサイトメガロウイルス前初期(CMV-IE)プロモーター及び終結配列としてのウシ成長ホルモンポリアデニル化(BHG-polyA)シグナルを含む。
【0095】
エンドトキシン不含プラスミドの産生
プラスミドを、RD Biotech(フランス、ブザンソン)によるE. coli 5α細胞(fhuA2Δ(argF-lacZ)U169 phoA glnV44Φ80Δ(lacZ)M15 gyrA96 recA1 relA1 endA1 thi-1 hsdR17)(Lucigen Corporation、米国ミドルトン、ref.60602-2)中に形質転換し、産生した。エンドトキシン不含のプラスミドを1×滅菌PBSに4mg/mLで再懸濁した。構築物を制限酵素消化により検証した。
【0096】
細胞培養及び一過性トランスフェクション
HEK293T細胞を、10%熱不活性化ウシ胎児血清(PAA、フランス、ヴェリジー=ヴィラクブレー)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Life technologies SAS、フランス、サン・トーバン)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で培養した。
【0097】
細胞を75cm2のフラスコ中で、37℃で、5%CO2を含む加湿雰囲気中で単層として成長させた。8×105個の細胞を6ウェル組織培養プレートに播種し、24時間にわたりインキュベートした。細胞を、トランスフェクションの日に70~80%コンフルエントまで成長させた。
【0098】
pUCPbasic、pUCP2(4×)、pDE7構築物をjetPrimeカチオン性ポリマートランスフェクション試薬(Polyplus-transfection Inc.、フランス、イルキルシュ)を使用して標的細胞にトランスフェクトした。pcDNA3.1プラスミドをトランスフェクトした細胞を陰性対照として使用した。トランスフェクションの48時間後、細胞を収集し、発現について分析した。
【0099】
ウエスタンブロット
pUCPbasic、pUCP2(4×)、pDE7、及びpcDNA3.1をトランスフェクトしたHEK293T細胞を、20分間にわたり氷上で、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche Diagnostic、米国インディアナポリス)を添加したRIPA緩衝液(Sigma Aldrich SARL、フランス、サン=カンタン=ファラヴィエ)中に溶解した。溶解物を、14,000rpmで、15分間にわたる4℃での遠心により清澄化した。上清を収集し、タンパク質濃度を、Bradford比色アッセイを使用して測定した。
【0100】
pDE7タンパク質を、抗V5コンジュゲートアガロースビーズ(Abcam、英国ケンブリッジ)を使用して免疫沈降させた。細胞を、125mM NaCl、50mM Tris pH8、25mM EDTA pH8、及び0.5%NP40を含む細胞溶解緩衝液で15分間にわたり溶解し、1600rpmで5分間にわたり遠心し、次に20μlの抗V5アガロース(Abcam)を加えた。サンプルを4℃で一晩回転させ、冷細胞溶解緩衝液で3回洗浄した。
【0101】
全てのタンパク質サンプルを1×サンプル緩衝液(Life technologies SAS、フランス、サン・トーバン)中に再懸濁し、90℃で5分間にわたり変性させ、Nu-PAGE(登録商標)Novex 4-12%Bis-Trisゲル(Life Technologies)で分離し、iBlot(登録商標)デバイス(Life Technologies)を使用してPVDF膜(iBlot(登録商標)トランスファースタック、Life Technologies)上にエレクトロブロッティングした。ProSieve(商標)QuadColor(商標)タンパク質マーカー(Lonza、フランス、ルヴァロワ=ペレ)を使用して分子量を決定した。膜を約40kDaで切断し、PBS 1×、0.05%Tween(登録商標)20、3%ミルクでブロッキングした。膜の下部を、1/5000希釈した抗V5マウスモノクローナル抗体(Life Technologies)でプローブし、上部を抗βアクチンマウスモノクローナル抗体(Sigma Aldrich SARL、フランス、サン=カンタン=ファラヴィエ)でプローブした。膜を次に1/5000に希釈した抗マウスHRP結合抗体(GE Healthcare、フランス、ヴェリジー)とインキュベートし、タンパク質を、ECL HRP化学発光基質試薬キットを使用した増強化学発光アッセイにより検出した。膜をChemiDoc XRSシステム(Bio-Rad、フランス、マルヌ=ラ=コケット)で可視化し、Image Lab 5.2.1(Bio-Rad)ソフトウェアを使用して分析した。
【0102】
マウス
トランスジェニックHLA-A*0201/DRB1*0101(HLA-A2/DR1)マウス(13~16週齢)は、Institut Pasteur(フランス、パリ)又はCDTA-TAAM(フランス、オルレアン)から供給された。これらのマウスは、ヒトHLA-A*0201α1α2ドメイン及びH2-D分子のマウスα3ドメイン、ヒトβ2-ミクログロブリン、並びにHLA-DRB1*0101分子及びHLA-DRA*0101分子を発現する。それらは、マウスのH2-Db、H2-Kb、及びIAb遺伝子についてノックアウトされている(Pajot et al., 2004)。
【0103】
動物は、Institut Pasteurの病原体のいない動物施設に収容した。全ての動物は、良好な動物慣習に厳密に従って取り扱い、地域の動物実験法(指令2010/63/UE)を遵守した。
【0104】
免疫化
処置に先立ち、マウスを、個々の動物の体重及び麻酔の持続時間に従って腹腔内経路(IP)を通じてPBS(Life technologies SAS、フランス、サン・トーバン)中のキシラジン2%(Rompun, Bayer Sante、フランス、ロス)及びケタミン8%(Imalgen 1000, Merial、フランス、リヨン)の混合溶液で麻酔した。プラスミドを次に、0日目(初回)及び21日目(追加免疫)に腰部の皮内(ID)に注射し、エレクトロポレーションした。簡単に説明すると、ID注射の直後に、皮膚の折り目を注射部位に作り、導電性ゲルで全体を覆い、エレクトロポレーション装置(CLIPIATOR(登録商標)2、IGEA、イタリア、カルピ)の電極プレート間に置いた。異なる電圧の2つのパルスを、以下に記載するように適用した(HV-LV)。実験群は、表6にまとめたように定義した。
【0105】
【0106】
ペプチド
免疫応答分析のために、HLA-DRに限定されたhTERTペプチド及びHLA-A*0201に制限されたE7ペプチドは以前に記載されているか、又はオンラインで利用可能なSYFPEITHI(www.syfpeithi.de)Rammensee et al, 1999)又はNetMHCII 2.2(Nielsen and Lund, 2009)アルゴリズムを使用したインシリコエピトープ予測により決定した。全ての合成ペプチドを、Proimmune(英国オックスフォード)から凍結乾燥(>90%純度)で購入した。凍結乾燥ペプチドを滅菌水中に2mg/mLで溶解し、使用に先立ち-80℃で保存した。ペプチド配列及びMHC制限の詳細を表7に示す。
【0107】
【0108】
IFN-γELISpotアッセイ
追加免疫ワクチン接種の10日後、マウスをCO2麻酔により安楽死させ、脾臓を収取した。脾臓を次に破砕し、脾細胞懸濁液を70μmのナイロンメッシュ(Cell Strainer、BD Biosciences、フランス、ル・ポン=ド=クレ)で濾過し、ficoll(リンパ球分離培地、Eurobio、Les、フランス、レ・ジュリス)で精製し、Cellometer(登録商標)Auto T4 Plusカウンター(Ozyme、フランス、モンティニー=ル=ブルトンヌー)で計数した。精製した脾細胞を次に、抗マウスIFN-γ抗体で被覆したELISpot PVDFマイクロプレート(IFN-γELISpotキット、Diaclone、フランス、ブザンソン)に2×105個細胞/ウェルで3通りに加え、5μg/mLのペプチド(表7を参照のこと)、10μg/mLのPMA-イオノマイシン(Sigma-Aldrich)で刺激し、又は無血清培地で偽刺激した。hTERT及びE7抗原特異的IFN-ρ分泌細胞の数をスコア化するために、3つの異なるペプチドプールを使用した:CD4+hTERT(プール1)、CD4 E7(プール2)、又はCD8 E7(プール3)(表7)。19時間後、スポットを、ビオチンコンジュゲート抗IFNγ検出抗体、それに続くストレプトアビジン-HRP及びBCIP/NBT基質溶液で明らかにした。スポットをカウントし、ImmunoSpot(登録商標)ELISpotカウンター及びソフトウェア(Cellular Technology Limited、ドイツ、ボン)を使用して分析した。
【0109】
サイトカイン結合アッセイ(CBA)
ワクチン接種したHLA-A2/DR1マウス由来の脾細胞(6×105個細胞)を、最終濃度5μg/mLのプール1からのHLA-DR制限hTERT由来ペプチドと37℃で24時間にわたり培養した。サイトカイン培養上清を回収し、試験まで-20℃で凍結させた。マウスTh1/Th2/Th17サイトメトリービーズアレイ(CBA、BD Biosciences)キットを使用し、IL-2、IFN-γ、TNF-α、IL-4、IL-6、IL-10、及びIL-17aの濃度をそれぞれ定量した。CBAイムノアッセイを製造者の指示に従って行った。フローサイトメトリーは、FACScan LSRIIフローサイトメーター(BD Biosciences)を使用して実施した。定量結果を、FCAP Array(商標)ソフトウェアバージョン3.0(Becton Dickinson、フランス、ル・ポン=ド=クレ)を使用して生成した。
【0110】
統計分析
2群間の差を、不対t検定又は非パラメトリックマンアンドホイットニーU検定により評価した。ピアソンの相関係数検定を使用し、免疫化マウスにおけるhTERTクラスII応答とE7クラスI応答の間での相関を評価した。全てのコンピュータ分析を、GraphPad Prism 6(GraphPad Software Inc.、米国カリフォルニア州ラホーヤ)を使用して実施した。p値<0.05は統計的に有意であると考えられた。
【0111】
結果
構築物の特徴付け及び配列分析
UCPbasic、UCP2(4×)及びDE7タンパク質を発現するDNA導入遺伝子を合成し、制限酵素消化及び電気泳動により示されるように、pcDNA3.1(+)Life Technologies発現ベクター中にクローニングした(
図4)。インサート及び接合部を、DNAインサートに隣接するベクター配列と一致するT7(フォワード5’ATATACGACTCACTATAGGG3’(配列番号36))及び/又はBGH(リバース5’TAGAAGGCACAGTCGAGG3’(配列番号37))プライマーを使用して配列決定した(表8を参照のこと)。配列決定の結果により、導入遺伝子が正しく合成され、クローニングされていることが確認された。
【0112】
【0113】
インビトロでの導入遺伝子発現
pUCPbasic及びpUCP2(4×)ポリペプチド並びにpDE7タンパク質の発現をウエスタンブロットアッセイにより評価した。構築物をHEK293T細胞株中に一過性にトランスフェクションし、次に48時間にわたり培養した。pUCPbasic及びpUCP2(4×)ポリペプチドは、それぞれ約12.6及び12.8kDaの分子量で同定された。2つのさらなるバンドがUCP2(4×)について観察され(約11及び9kDa)、これらはタンパク質分解で説明されうる(
図5a)。未知の理由のため、DE7タンパク質をウエスタンブロットにより直接的に検出することは困難であった(
図5a)。抗V5コンジュゲートアガロースビーズを使用した免疫沈降工程が、この目的を達成するために必要であった(
図5b)。pDE7タンパク質が約14.5kDaの予想分子量で検出された。pcDNA3.1トランスフェクト細胞を陰性対照として使用した。これらの結果により、インビトロ発現パターン及びpUCPbasic、pUCP2(4×)、及びpDE7DNA構築物の同一性が立証される。
【0114】
hTERTヘルパーエピトープにより、HLAトランスジェニックマウスでのE7特異的免疫応答が増加する
pUCPbasic、pUCP2(4×)及びpDE7で免疫化したHLA-A2/DR1トランスジェニックマウスにおけるhTERT CD4+及びE7 CD8+/CD4+特異的T細胞の頻度を決定するために、ELISpot IFN-γ分析を実施した。
【0115】
図6aに示すように、pUCPbasic又はpUCP2(4×)による免疫化により、強力なhTERT CD4+特異的細胞性免疫応答が誘導された。予想通り、E7タンパク質は高親和性クラスIIエピトープを提示しないため、E7 CD4+特異的免疫応答は検出されなかった(
図6b)。pUCPbasic又はpUCP2(4×)とpDE7の同時免疫により、有意なE7 CD8+特異的免疫応答が示された(
図6c)。pDE7+pcDNA3.1 DNAワクチンと比較した場合、pUCPbasic又はpUCP2(4×)で同時免疫したpDE7は、E7特異的免疫応答を駆動する際に強力であり、pUCPbasic及びpUCP2(4×)構築物により、E7抗原に対するCD8+細胞性免疫応答の大きさを有意に増加させることができることを示唆する。
【0116】
hTERT CD4+クラスII及びE7 CD8+クラスI特異的免疫応答の強度間での正の相関が、個別に(
図6a、c、動物識別番号に対応する番号付きポイントを参照のこと)、及び凝集した場合(
図6d)の両方で観察された。
【0117】
このように、増加レベルのCD4 T細胞応答は、各々の動物のCD8 T細胞増殖の大きさに正比例した。Pearsonの相関係数検定を使用したデータ分析では、CD4 +及びCD8+応答間の相関の強さが非常に高く(R
2=0.95)、少なくともpUCP2(4×)について統計的に有意である(p=0.005)ことが示された(
図6e)。この分析は、恐らくは、本試験に含まれる動物の数が少ないために、pUCPbasicについての信頼性が低い(R
2=0.42、p=0.35)(
図6f)。
【0118】
最後に、Th1/Th2免疫応答の役割を評価するために、hTERT特異的CD4 T細胞により分泌される異なるサイトカインを調べた。この目的のために、第2の独立した実験からのワクチン接種トランスジェニックマウスの脾細胞を、hTERTペプチドのプールで24時間にわたりインビトロで刺激したか、又は刺激しないままにした。上清を回収し、サイトカイン結合アッセイ(CBA)でアッセイした。IFN-γ、TNF-α、IL-2、及びTh2 IL-6(しかし、IL-4、IL-10、及びIL-17ではない)の濃度上昇を、対照マウス(pDE7+pcDNA3.1及びpcDNA3.1)のものとの比較において、pUCPbasic及びpUCP2(4×)でワクチン接種したマウスから回収した脾細胞の培養上清中で検出した(
図7)。この結果では、UCP免疫化によりインビボでTh1分極化免疫応答が優先的に誘導されたことが示される。
【0119】
このように、pUCPbasic又はpUCP2(4×)でのワクチン接種により特異的Th1分極CD4 T細胞応答が誘導され、E7特異的CD8 T細胞の増殖をインビボで促すことができる。
【0120】
結論
結果は、hTERT CD4ポリエピトープDNA構築物が正しくプロセッシングされ、HLAクラスII制限の状況においてHLA-A2/DR1トランスジェニックマウスにおいてCD4 T細胞に提示され、主にIFN-γ、TNFα、及びIL-2を産生する効率的なCD4 Th1細胞を生成しうることが示された。さらに、hTERT CD4 Th1細胞応答は、E7抗原に対するCD8 T細胞応答と高度に相関しており、E7クラスI制限エピトープに対するCD8 T細胞免疫応答及び、このように、E7抗原ワクチン接種の有効性を強く改善する。
【0121】
これらの結果により、DNA送達アプローチを通じてCD4 Th1エピトープによるワクチン製剤を補うことにより、不良な免疫原性の抗原に対する免疫応答の強度及び質を増加させることが可能であることが確認される。
【0122】
【配列表】