(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】ガス流中に含まれる硫黄の接触還元に使用するための高金属含有量の加水分解触媒、ならびにそのような組成物を製造及び使用する方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/882 20060101AFI20220112BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20220112BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20220112BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20220112BHJP
B01J 27/051 20060101ALI20220112BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
B01J23/882 M ZAB
B01J35/10 301B
B01J37/04 102
B01J37/08
B01J27/051 M
B01D53/86 210
B01D53/86 212
B01D53/86 245
(21)【出願番号】P 2018549818
(86)(22)【出願日】2017-03-21
(86)【国際出願番号】 US2017023318
(87)【国際公開番号】W WO2017165353
(87)【国際公開日】2017-09-28
【審査請求日】2020-03-13
(32)【優先日】2016-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002105
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クルーガー,カール・マービン
(72)【発明者】
【氏名】マルドナド,フェルナンド・ガブリエル
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-529405(JP,A)
【文献】特開昭61-138537(JP,A)
【文献】特開2012-066237(JP,A)
【文献】特表2010-538824(JP,A)
【文献】特開2000-351977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流中に含有される硫黄化合物の接触還元に有用な触媒組成物であって、
当該触媒組成物は、擬ベーマイト、コバルト化合物、及びモリブデン化合物を含む共混練(comulled)混合物の成形凝集体がか焼されたものであり、前記触媒組成物は、ガンマアルミナ、少なくとも7.5重量%のモリブデン、及び少なくとも2.75重量%のコバルト
を含み、各重量%が、前記触媒組成物及びその実際の形態にかかわらず酸化物としての金属の総重量を基準と
し、
前記触媒組成物が、前記触媒組成物の全細孔容積の6%未満が、10,000Åを超える細孔径を有する細孔内に含まれるような二峰性細孔構造を有し、
前記触媒組成物の前記二峰性細孔構造が、前記触媒組成物の全細孔容積の15%超えかつ60%未満が、50Å~150Åの範囲の細孔径を有する細孔内に含まれるようになっていることをさらに特徴とし、
前記触媒組成物の前記二峰性細孔構造が、前記触媒組成物の全細孔容積の10%超えかつ50%未満が、1000Å~10,000Åの範囲の細孔径を有する細孔内に含まれるようになっていることをさらに特徴とする、
触媒組成物。
【請求項2】
前記触媒組成物の前記二峰性細孔構造が、前記触媒組成物の全細孔容積の15%未満が、150Å~1000Åの範囲の細孔径を有する細孔内に含まれるようになっていることをさらに特徴とする、請求項
1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
前記触媒組成物が、1000Åを超える直径を有する細孔内に含まれる全細孔容積に対する10,000Åを超える直径を有する細孔内に含まれる全細孔容積の割合が、0.6未満であるようになっていることをさらに特徴とする、請求項
2に記載の触媒組成物。
【請求項4】
前記触媒組成物が、7.75~15重量%のモリブデン及び2.85重量%~6重量%のコバルトを含む、請求項
3に記載の触媒組成物。
【請求項5】
前記触媒組成物の前記二峰性細孔構造が、前記触媒組成物の全細孔容積の20%超えかつ50%未満が、50Å~150Åの範囲の細孔径を有する細孔内に含まれ、前記触媒組成物の全細孔容積の13%未満が、150Å~1000Åの範囲の細孔径を有する細孔内に含まれ、前記触媒組成物の全細孔容積の12%超えかつ45%未満が、1000Å~10,000Åの範囲の細孔径を有する細孔内に含まれ、前記触媒組成物の全細孔容積の6%未満が、10,000Åを超える細孔径を有する細孔内に含まれるようになっている、請求項
4に記載の触媒組成物。
【請求項6】
加水分解プロセスであって、硫黄化合物もしくは一酸化炭素、または両方を含むガス流を、
請求項1に記載の触媒組成物を含有する反応帯域を画定し、適切な反応条件で運転される反応器に導入することと、前記ガス流を前記触媒組成物と接触させることと、を含
む加水分解プロセス。
【請求項7】
前記硫黄化合物が、前記ガス流中に0.01容量%~2容量%の範囲の硫黄化合物の濃度で存在し、前記硫黄化合物が、硫化カルボニル(COS)、二硫化炭素(CS
2)、二酸化硫黄(SO
2)、及び元素状硫黄(S
x)からなる化合物群から選択される、請求項
6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記適切な還元反応条件が、115℃~300℃の範囲の、前記反応器への入口温度を含む、請求項
7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記処理されたガス中の前記低下した硫黄化合物濃度が、75ppmv未満である、請求項
8に記載のプロセス。
【請求項10】
ガス流中に含有される硫黄化合物もしくは一酸化炭素、または両方の接触還元に有用な
、請求項1に記載の触媒組成物を製造する方法であって、擬ベーマイト、コバルト成分及びモリブデン成分を混合して、共混練混合物を形成することと、前記共混練混合物を成形凝集体に成形することと、前記
共混練混合物を
20℃から125℃の範囲の乾燥温度で任意に乾燥
することと、及び
前記成形凝集体を酸素含有流体の存在下で、300
o
C~800
o
Cの範囲のか焼温度で、0.1時間~96時間の範囲のか焼時間でか焼して、前記触媒組成物を得ることと、を含
む、方法。
【請求項11】
前記混合ステップが、前記コバルト成分の第1の水溶液及び前記モリブデン成分の第2の水溶液を、前記擬ベーマイトと共混練することを含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記混合ステップにおいて、前記第1の水溶液及び前記第2の水溶液を前記擬ベーマイトと共混練する前に、粉末形態の前記擬ベーマイトを水及び硝酸と混合して、40%~80%の範囲の強熱減量を有するプラスチック混合物を形成し、その後に、前記プラスチック混合物、前記第1の水溶液及び前記第2の水溶液を共混練して、前記共混練混合物を形成する、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の水溶液が、水に溶解した硝酸コバルトを含み、前記第2の水溶液が、水に溶解した二モリブデン酸アンモニウムを含む、請求項
12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年3月23日出願の米国仮出願第62/312,010号に記載されている。
【0002】
本発明は、ガス流中に含まれる硫黄化合物の接触還元に有用な触媒組成物、そのような触媒組成物の製造方法、及びガス流中に含まれる硫黄化合物の還元的変換のための加水分解プロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
周知のClaus法では、H2Sの一部を二酸化硫黄(SO2)に酸化するために、硫化水素(H2S)をかなりの割合で含む酸性ガスが熱段階で燃焼される。この燃焼は、制御され、それによって、2モルのH2Sに対して1モルのSO2(2:1)というおよそのモル比でその中に存在するH2S及びSO2を含むプロセスガス流が得られる。このプロセスガス流は接触段階に送られ、それにより、H2S及びSO2が、Claus反応に従ってアルミナ触媒の存在下で反応して、元素状硫黄及び水が生成される。次いで、硫黄がClaus反応ガスから凝縮され、Clausテールガス流が生成される。Clausテールガス流は、典型的には、低濃度のH2S及び硫黄化合物、例えば、SO2、二硫化炭素(CS2)、硫化カルボニル(COS)、及び元素状硫黄(S)を含有する。このテールガス流を燃焼させるか、または他の方法で処分するためには、そこから硫黄の大部分を除去し、それによって、その燃焼または大気への放出を可能とする十分に低い硫黄含有量を有する処理されたガスを提供するために、それをさらに処理しなければならない。
【0004】
テールガスを処理する1つの方法は、それを還元反応器に通すことであり、これにより、テールガス流中の硫黄化合物(すなわち、SO2、CS2、COS、及びS)がH2Sに接触還元され、その結果、H2Sへの変換によって減少した濃度の硫黄化合物を有する処理されたガス流が提供される。次いで、この処理されたガス流は、例えば、処理されたガス流を吸収ユニットに通して、これにより、処理されたガス流からH2Sを除去するための吸収剤と接触させることにより、H2Sをそこから除去するためにさらに処理されてもよい。
【0005】
米国特許3,554,689号によって教示された1つの初期のプロセスは、H2Sへの接触加水分解によるガス流からのオキシ硫化炭素、すなわち、COSの除去を提供する。この特許では、酸素を変換するために、まず、ガスを活性水素化触媒と接触させた後、得られた実質的に無酸素のガスを、COSをH2Sに変換するためのCOS変換触媒と接触させることによって、酸素も含有する燃焼ガスからCOSを除去するプロセスが開示されている。次いで、H2Sを吸収によって除去することができる。COSの変換は、150oC未満の温度で行ってもよい。COS変換触媒は、アルミナを含み、50m2/gより大きい比表面積を有し、1つまたは複数の第VI族及び/または第VIII族金属酸化物を含むことができる。COS変換触媒のさらなる実施形態は、そこにある量のアルカリ金属リン酸塩の存在を含むものである。’689特許のプロセスの1つの要件は、接触加水分解によってCOSを除去するために処理されるガスが実質的に無酸素であるように、燃焼ガスに対して、まず接触酸素除去のステップを経ることである。
【0006】
米国特許4,668,491号は、一酸化炭素を含むプロセスガス中に存在する硫黄化合物のCOS及び/またはCS2の選択的接触加水分解のためのプロセス及び触媒を開示する。’491特許に開示されている加水分解触媒は、酸化アルミニウムの好ましい形態であるガンマアルミナを有する酸化アルミニウム担体上に担持された酸化クロム及びアルカリ金属化合物を含む、アルカリ化酸化クロム-酸化アルミニウム触媒である。プロセスガスの一酸化炭素含有量が重要であり、100oCから350oCの範囲の温度で加水分解触媒上を通過させる。アルカリ化酸化クロム-酸化アルミニウム触媒は、酸化アルミニウム担体をクロム塩溶液に浸漬し、次いで含浸された担体を乾燥及びか焼することによって製造される。次いで、得られたクロム含浸及びか焼された支持体をカリウム塩に浸漬し、乾燥させる。
【0007】
米国特許5,132,098号は、Clausユニット・テールガス(残留ガス)に含まれる、SO2、CS2、COS及び元素状硫黄の硫黄化合物を、水素化または加水分解のいずれかによって接触的にH2Sに変換するプロセスを開示する。この水素化または加水分解処理は、シリカまたはシリカ/アルミナ支持体上に堆積された、周期律表のVa、VIa及びVIII族の金属から選択される金属の化合物を含有する触媒を使用して、140oC~550oCの範囲の温度で行う。’098特許に開示されるより具体的な触媒は、アルミナ上に堆積された酸化コバルト及び酸化モリブデンを含む含浸ビーズである。’098特許は、1.75重量%のコバルト及び8重量%のモリブデンを含浸させたアルミナを含む触媒を開示するが、これらの成分の範囲または触媒のアルミナの形態に関する教示は存在しない。さらに、低温水素化及び加水分解反応を提供する際または硫黄化合物の硫化水素への高変換を提供する際の触媒の細孔構造の特性の重要性は認識されていない。
【0008】
米国特許6,080,379号は、Claus反応の実施または加水分解のいずれかによる硫黄含有ガスの処理に使用されるアルミナ触媒を開示する。この触媒は、最適化されたマクロ多孔性(macroporosity)を有し、この多孔性が、0.1μm(1,000Å)を上回る直径を有する細孔の容積が、12ml/触媒100gを上回り、0.1μm(1,000Å)を上回る直径を有する細孔の容積に対する1μm(10,000Å)を上回る直径を有する細孔の容積の割合が、0.65以上であるようなものである。アルミナは、ロー(ρ)、カイ(χ)、イータ(η)、ガンマ(γ)、カッパ(κ)、シータ(θ)、デルタ(δ)、及びアルファ(α)からなる群から選択される遷移アルミナであり得る。この触媒は、金属酸化物をさらに含有してもよい。CS2の加水分解におけるこの触媒の使用は、かなり高い反応器温度を必要とするように思われるが、依然として高いCS2変換を提供しないように思われる。
【0009】
米国特許第8,142,748号は、ガス流中に含まれる硫黄化合物の低温還元を提供する加水分解触媒を開示する。触媒は、含浸された触媒である。触媒の1つの重要な特徴は、全細孔容積の大部分、具体的には、30%超が、10,000Åを超える細孔径の細孔内に含まれるような細孔構造を提供するマクロ多孔性である。触媒は、アルミナ、ならびに比較的高付加の第VI族金属及び第VIII族金属を含む。触媒の好ましい実施形態は、イータアルミナの形態で少なくとも50%のアルミナを有する。
【0010】
Clausユニットから得られるテールガスなどのガス流中に含まれる硫黄化合物の低温反応条件下での高い変換率を提供する向上した触媒組成物を開発するための努力が進行中である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第3,554,689号明細書
【文献】米国特許第4,668,491号明細書
【文献】米国特許第5,132,098号明細書
【文献】米国特許第6,080,379号明細書
【文献】米国特許第8,142,748号明細書
【発明の概要】
【0012】
したがって、それに応じて、ガス流中に含まれる硫黄化合物の接触還元に有用な触媒組成物を提供する。触媒組成物は、か焼された、擬ベーマイト、コバルト化合物、及びモリブデン化合物の共混練(comulled)混合物の成形凝集体を含む。成形凝集体は、ガンマアルミナ、少なくとも7.5重量%のモリブデン、及び少なくとも2.75重量%のコバルトを含む触媒組成物を得るために、か焼されている。
【0013】
触媒組成物は、擬ベーマイト、コバルト成分及びモリブデン成分を混合して、共混練混合物を形成することと、前記共混練混合物を成形凝集体に成形することと、前記成形凝集体を乾燥及びか焼して、ガンマアルミナ、少なくとも7.5重量%のモリブデン、及び少なくとも2.75重量%のコバルトを含む前記触媒組成物を得ることと、を含み、各重量%が、前記触媒組成物及びその実際の形態にかかわらず酸化物としての金属の総重量を基準とする、方法によって製造される。
【0014】
触媒組成物は、ガス流中に含まれる硫黄化合物及び一酸化炭素の加水分解に適用される。このプロセスは、硫黄化合物または一酸化炭素、または両方を含むガス流を、触媒組成物を含有する反応帯域を画定し、適切な反応条件で運転される反応器に導入することと、適切な加水分解反応条件下でガス流を触媒組成物と接触させることと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】様々な反応器温度で運転される反応器の流出物の未変換COSを示すことによって、合成テールガス供給物中に含まれる硫化カルボニル(COS)の加水分解変換に使用された場合の本発明の触媒の性能と比較触媒の性能とを比較した棒グラフである。
【
図2】様々な反応器温度で運転される反応器の流出物の未変換COを示すことによって、合成テールガス供給物中に含まれる一酸化炭素(CO)の加水分解変換に使用された場合の本発明の触媒の性能と比較触媒の性能とを比較した棒グラフである。
【0016】
本発明の触媒は、Clausテールガスなどのガス流中または許容レベルまで除去または還元する必要がある硫化カルボニルの濃度を有する他のガス流中に含まれ得る硫化カルボニルの低温加水分解に特に有用となる特性を有する。この触媒はまた、水性ガスシフト反応の一酸化炭素の低温変換にも適用されている。
【0017】
加水分解反応という用語は、本明細書において、硫化水素及び二酸化炭素を生成するための硫化カルボニルと水との反応という意味で使用される。
【0018】
本明細書における水性ガスシフト反応への言及は、一酸化炭素及び水から二酸化炭素及び水素への平衡反応に関するものである。
【0019】
本発明の触媒組成物は、その向上した触媒特性を提供する特有の特徴の組み合わせを有する。最終触媒の高金属含有量に伴う触媒成分の共混練(co-mulling)の組み合わせは、その向上した特性に寄与すると考えられる。また、共混練混合物の成形凝集体の調製において擬ベーマイト形態のアルミナを使用し、その後、擬ベーマイトアルミナ形態をガンマアルミナ形態に変換して最終触媒を生成することは、本発明の触媒の向上した特性に寄与すると考えられる。触媒を調製する方法及びその成分は、触媒の他の特徴と組み合わせてその向上した特性にさらに寄与する特定の細孔構造を有する本発明の組成物を提供する。
【0020】
したがって、触媒は必然的に共混練された触媒である。「共混練」という用語の使用が意味することは、触媒の出発材料を一緒に組み合わせ、かつ混合して、好ましくはまたは実質的に、均一または均質な、個々の成分の混合物を形成するということである。この用語は、擬ベーマイト、コバルト化合物、及びモリブデン化合物を含む出発材料を混合して、凝集粒子に成形することができる共混練混合物を得ることを含むほど十分に広い範囲にあることを意図している。共混練混合物は、任意の既知の凝集方法によって凝集粒子に成形され得るか、または任意の既知の押出方法によって押出粒子に押し出され得るペーストまたはプラスチック混合物であり得る。
【0021】
共混練混合物を凝集させる好ましい方法は、0.5mm~10mmまたは0.75mm~8mmの範囲の全径、及び1:1~10:1またはさらに高い、長さと直径との比を有する押出粒子を形成するための押出によるものである。押出物は、円柱及びマルチローバル形状などの任意の典型的な形状であり得る。
【0022】
したがって、共混練混合物の形成は、当業者に既知の任意の方法または手段によって行われ、この方法または手段には、タンブラー、静止シェル(stationary shells)またはトラフ(troughs)、ミュラーミキサー(これらは、バッチタイプまたは連続タイプのいずれかである)、及び衝撃ミキサーなどの適切なタイプの固体混合機の使用、ならびに固体及び液体を混合するためのまたは押出可能なペースト様混合物を形成するためのバッチ式ミキサーまたは連続ミキサーなどの適切なタイプの使用が含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
適切なタイプのバッチミキサーには、チェンジキャンミキサー(change-can mixers)、静止タンクミキサー(stationary-tank mixers)、任意の適切なタイプの混合ブレードを備えたダブルアーム混練ミキサーが含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
適切なタイプの連続ミキサーには、単軸または2軸スクリュー押出機、トラフ及びスクリューミキサー、及びパグミルが含まれるが、これらに限定されない。
【0025】
共混練混合物の調製に使用される出発材料の混合には、標準試験法ASTM D7348により決定される40%~80%の範囲の強熱減量(LOI)を有する前述のペースト様混合物を提供するのに必要な水及び適切な量の鉱酸、例えば硝酸が含まれ得る。この範囲内のLOIを有する共混練混合物は、望ましい押出し特性を有するペーストを提供し、本明細書を通して詳細に記載される本発明の触媒の必要な細孔構造特性を有する最終触媒生成物に寄与することが見出された。
【0026】
共混練混合物の調製に使用される出発材料の混合は、共混練混合物を適切に均質化するのに必要な時間にわたって行われる。一般に、ブレンド時間は、12時間以上の上限の範囲内である。典型的には、ブレンド時間は、0.1時間~1時間の範囲内である。
【0027】
共混練混合物の形成に使用されるアルミナ粉末成分は、主に水含有量が約20重量%~30重量%の擬ベーマイト結晶形態(Al2O3・xH2O、ここでxは、x=1ベーマイトとx=3ギブサイトとの間の中間値である)であり、約60Å~約120Åの範囲の、水銀圧入法(140度の接触角)からの表面積による中央細孔直径を有することを特徴とするアルミナの粒子を含む。アルミナは、本発明の共混練混合物を構成する金属化合物、水、及び他の構成成分との共混練または混合を可能にする粉末(乾燥した場合)の形態であるように適度に分割された状態にある。
【0028】
アルミナ粉末成分は、シリカを含有してよく、シリカが存在する場合、アルミナが、2重量%未満のシリカを含有することが好ましく、1重量%未満のシリカを含有することが最も好ましい。アルミナ粉末は、材料量のシリカが存在していなくてもよい。共混練混合物の調製に使用されるアルミナ成分は、本発明の共混練混合物を構成する金属化合物、水、及び他の構成成分との共混練または混合を可能にする粉末(乾燥した場合)の形態であるように適度に分割された状態にある擬ベーマイトを含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。
【0029】
アルミナ粉末のアルミナ粒子は、メッシュサイズで記載されてもよく、粒子の大部分、すなわち、粒子の少なくとも90重量%は、35番シーブ(0.500mmの公称目開き)のメッシュを通過することができ、粒子の大部分、すなわち、粒子の少なくとも90重量%は、400番シーブ(0.037mmの公称目開き)のメッシュを通過することができない、またはこれによって保持される。
【0030】
本発明の触媒は、上述したようにその向上した特性に寄与する特定の細孔構造をさらに有する。触媒が二峰性細孔構造を有することは重要であるが、その全細孔容積の大部分が、10,000オングストローム(Å)未満の細孔径を有する細孔に含まれている。特に、触媒の全細孔容積の6パーセント(%)未満が、10,000Åを超える細孔径を有する細孔内に含まれる。好ましい触媒組成物は、その全細孔容積の5%未満、より好ましくは、4%未満が、10,000Åを超える細孔径の細孔に含まれる。
【0031】
触媒の細孔構造は、1,000Åを超える直径を有する細孔の全容積に対する10,000Åを超える直径を有する細孔の全容積の割合が、0.6未満であるようになっている。この割合は、0.5未満であることが好ましく、最も好ましくは、この割合は、0.4未満である。
【0032】
直径が10,000Åを超える細孔に全細孔容積の少しの部分を有する本発明の触媒の細孔構造の特徴に加えて、細孔構造は、本発明の触媒の全細孔容積の第1の大部分が、50Å~150Åの範囲の直径を有する細孔内に含まれ、全細孔容積の第2の大部分が、1,000Å~10,000Åの範囲の直径を有する細孔内に含まれるという二峰性になっている。触媒の全細孔容積のほんのわずかな部分が、150Å~1,000Åの範囲の直径を有する細孔内に含まれる。
【0033】
全細孔容積の第1の大部分は、触媒の全細孔容積の15%~60%の範囲であり、全細孔容積の第2の大部分は、触媒の全細孔容積の10%~50%の範囲である。
【0034】
全細孔容積のわずかな部分は、触媒の全細孔容積の15%未満である。好ましくは、わずかな部分は、触媒の全細孔容積の13%未満であり、それは10%未満でさえある。
【0035】
したがって、触媒の二峰性細孔構造は、触媒の全細孔容積の15%超、好ましくは20%超、より好ましくは25%超が、50Å~150Åの範囲の細孔径を有する細孔に含まれるようになっている。50Å~150Åの範囲の細孔径を有する細孔に含まれる細孔容積の範囲の上端は、触媒の全細孔容積の60%未満、好ましくは50%未満、最も好ましくは40%未満である。
【0036】
触媒の二峰性細孔構造の第2の大部分に関して、それは、触媒の全細孔容積の10%超、好ましくは12%超、より好ましくは15%超が、1,000Å~10,000Åの範囲の細孔径を有する細孔に含まれるということを含む。1,000Å~10,000Åの範囲の細孔径を有する細孔に含まれる細孔容積の範囲の上端は、触媒の全細孔容積の50 %未満、好ましくは45%未満、最も好ましくは40%未満である。
【0037】
本発明の触媒の本質的な特徴は、それが高レベルな濃度のコバルト金属及びモリブデン金属を有することである。
【0038】
共混練混合物のコバルト化合物は、酸素の存在下で、か焼すると酸化物に転化するコバルト化合物である。コバルト化合物は、適切なコバルト塩化合物から選択することができる。そのような化合物には、アンモニウムコバルト化合物、ならびにコバルトのリン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩、及びハロゲン化物から選択されるコバルト化合物が含まれてもよい。共混練混合物のための有用なコバルト化合物であることが分かっている特に好ましいコバルト塩は、硝酸コバルトである。コバルト化合物を、コバルトを含む第1の水溶液の形態で共混練混合物の他の成分と組み合わせることが好ましい。第1の水溶液は、コバルト塩を水に溶解することによって形成されてもよい。最も好ましいコバルト塩は、硝酸コバルトである。
【0039】
共混練混合物のモリブデン化合物は、酸素の存在下で、か焼すると酸化物に転化するモリブデン化合物である。モリブデン化合物は、適切なモリブデン塩化合物から選択することができる。そのような化合物には、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸ナトリウム、リンモリブデン酸、二硫化モリブデン、三酸化モリブデン、及びモリブデン酸などの化合物から選択されるモリブデン化合物が含まれてもよい。モリブデン化合物を、モリブデンを含む第2の水溶液の形態で共混練混合物の他の成分と組み合わせることが好ましい。第2の水溶液は、モリブデン塩を水に溶解することによって形成されてもよい。最も好ましいモリブデン塩は、七モリブデン酸アンモニウム及び二モリブデン酸アンモニウムなどのモリブデン酸アンモニウムである。
【0040】
本発明の最終触媒組成物を提供するために、共混練混合物の成形凝集体を乾燥し、次いでか焼する。共混練混合物の乾燥は、重要なステップではなく、一般に空気中で、20oC~125oCの範囲の乾燥温度で行われる。乾燥のための時間は、所望の乾燥量を提供することができる任意の適切な時間である。
【0041】
共混練混合物のか焼は、金属化合物の酸化物形態への変換、及び擬ベーマイトアルミナのガンマアルミナ形態への変換を提供する点で、本発明の触媒組成物の本質的かつ重要な特徴である。擬ベーマイトと金属成分との共混練、及びその後のこれらの成分のか焼による変換は、特に良好な触媒特性を有する触媒生成物の提供に寄与すると考えられる。
【0042】
共混練混合物の成形集合体または成形凝集体のか焼は、空気などの酸素含有流体の存在下で、本発明の最終触媒組成物を提供するための所望のか焼度合いを達成するのに適した、温度及び時間で行われる。か焼温度は、一般に、300oC~800oC、好ましくは、350oC~700oC、より好ましくは、400oC~600oCの範囲である。か焼時間は、0.1時間~96時間の範囲であり得る。
【0043】
か焼された共混練混合物の金属成分の濃度レベルは、本発明の触媒の重要な特徴である。金属の担持量は比較的高いと考えられ、それは、高濃度の金属と、上記の向上した触媒特性を有する触媒を提供する、触媒の他の重要な特徴との組み合わせである。
【0044】
か焼された共混練混合物のコバルト成分は、少なくとも2.75重量%(wt.%)である。コバルトが、か焼された共混練混合物中に2.85重量%~6重量%の範囲の量で存在するのがより望ましい。好ましくは、コバルト成分は、か焼された共混練混合物中に、3.0~5重量%の範囲の量で存在し、より好ましくは、3.1~4重量%の範囲の量で存在する。
【0045】
か焼された共混練混合物のモリブデン成分は、少なくとも7.5重量%(wt.%)である。モリブデンが、か焼された共混練混合物中に7.75重量%~15重量%の範囲の量で存在するのがより望ましい。好ましくは、モリブデン成分は、か焼された共混練混合物中に、8.0~12重量%の範囲の量で存在し、より好ましくは、8.5~10.5重量%の範囲の量で存在する。
【0046】
本明細書における、か焼された共混練混合物の金属成分の重量パーセントに対する言及は、触媒組成物の総重量を基準とし、金属成分の実際の形態にかかわらず酸化物としての金属成分に関するものである。
【0047】
したがって、本発明の触媒は、か焼された、ガンマアルミナ、コバルト成分、及びモリブデン成分を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる共混練混合物の成形凝集体である。触媒に含まれるガンマアルミナ成分の量は、最大で、金属を考慮した後の組成物の残りまで充填してもよい。したがって、触媒のガンマアルミナ成分は、最大で組成物の約89.75重量%までの範囲の量で存在する。典型的には、触媒は、約80重量%~約89重量%好ましくは、85重量%~89重量%の範囲の量のガンマアルミナを含む。
【0048】
本発明の触媒組成物は、ガス流中に含まれる硫黄化合物の加水分解に有用であり、より具体的には、触媒組成物は、Claus法ユニットによって生成されるテールガス流を処理して、テールガス流中に含まれる硫黄化合物をH2Sに変換するのに特に有用であり、続いて、このH2Sは、ガス流からH2Sを除去するための、当業者に既知の多くの適切な手段または方法のうちのいずれかによって除去されてもよい。
【0049】
触媒組成物は、Clausユニットテールガス流の処理に使用される場合に、ある特有の触媒特性を有し、従来の触媒を使用する加水分解反応器に必要とされるよりも低い温度条件での加水分解反応器の操作を可能にし、この触媒組成物は、より低い反応器温度条件でさえも硫黄化合物の高変換を提供する。
【0050】
触媒組成物はさらに、従来の触媒が充填された加水分解反応器に許容されるよりもはるかに高い流速で、したがってはるかに高い空間速度で加水分解反応器を通るガス流を通過させるが、それでもなお、低下した反応器温度条件で硫黄化合物の高変換を提供する。
【0051】
従来の加水分解触媒が充填された反応器を含む、典型的な従来の加水分解反応器システムの運転において、テールガスは、加水分解反応器に導入する前にかなり加熱する必要がある。これは、元素状硫黄の凝縮温度近くで運転される硫黄凝縮器を通過する、Clausユニットから排出されるテールガスに起因する。典型的なClausユニットテールガス流の温度は、110oC~125oCの範囲である。従来の加水分解ユニットに対して、テールガスは、典型的には、加水分解反応器に供給されるテールガスの導入温度、または反応器入口温度が、250oC~350oCの範囲となるように加熱しなければならない。この必要とされる加水分解反応器に供給されるテールガスの入口温度の低下は、その運転において、かなりのエネルギー節減を提供することになる。
【0052】
したがって、Clausテールガス流の処理における本発明の触媒組成物の使用により、Clausテールガス流を処理するのに必要な温度を低下させることで、かなりのエネルギー節減を提供することができる。
【0053】
本発明の触媒組成物を使用して処理することができるガス流は、1つまたは複数のガス状化合物を含み、さらに、このガス流は、少なくとも1つの硫黄化合物を含む。本明細書において使用される場合の用語、硫黄化合物は、硫化カルボニル(COS)、二硫化炭素(CS 2)、二酸化硫黄(SO2)、及び元素状硫黄(Sx)からなる化合物群から選択される、分子または元素化合物である。硫化水素は、硫黄化合物のこの定義から省かれているが、なぜなら、本発明の触媒組成物は、H2Sの変換を提供することを意図しておらず、むしろ、硫黄化合物を硫化水素への還元反応によって還元することを意図しているからである。
【0054】
その後、硫化水素は、処理されたガス流から除去されてもよい。したがって、ガス流は、加水分解反応器運転の温度及び圧力条件で、通常気体であるか、または気相にある化合物を含む。前述の硫黄化合物以外のガス状化合物の例としては、窒素、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、水、ならびにメタン、エタン、及びエチレンなどの低級炭化水素が挙げられる。
【0055】
本発明の触媒組成物を含有する加水分解反応器に充填されるか、または導入されるガス流中に含まれる硫黄化合物の全濃度は、全ガス流の0.01容量%(100ppmv)~5容量%の範囲であり得る。より典型的には、硫黄化合物の濃度は、0.02容量%(200ppmv)~3容量%の範囲である。
【0056】
先に述べたように、触媒組成物は、Clausテールガス流を処理して、その中に含まれる硫黄化合物を硫化水素に変換し、結果として、処理されるテールガス流中の硫黄化合物濃度未満の低下した硫黄化合物濃度を有する処理されたガス流を提供するのに特に適している。以下の表1は、Clausテールガス流を構成する、より一般的な成分の典型的な範囲を示す。
【表1】
【0057】
本発明の加水分解プロセスにおいて、硫黄化合物の濃度を有するガス流は、触媒組成物を含有し、かつ適切な加水分解または還元反応条件下で運転される加水分解反応器に導入される。加水分解反応器内で、ガス流をそこに含まれる触媒組成物と接触させる。低下した硫黄化合物濃度を有する処理されたガス流が加水分解反応器から得られる。処理されたガス流は、H2Sの濃度がガス流のものよりも増加する一方、処理されたガス流は、ガス流のものよりも低下した硫黄化合物濃度を有する。硫黄化合物の低下した濃度は、一般に、100ppmv未満、好ましくは50ppmv未満、最も好ましくは30ppmv未満であるべきである。
【0058】
先に述べたように、Clausテールガス流の加水分解における本発明の触媒組成物の使用の一つの利点は、それが例えば250oC未満の比較的低い入口温度での加水分解反応器の運転を可能にすることである。ガス流が加水分解反応器内に導入される最低温度があり、したがって、ガス流が加水分解反応器内に充填及び導入される入口温度は、一般に、140oC~250oCの範囲である。導入温度が、150oC~240oCの範囲であることが好ましく、より好ましくは、導入温度は、160oC~230oCの範囲である。加水分解反応器へのガス流の導入温度が、170oC~220oCの範囲であることが最も好ましい。
【0059】
加水分解反応器の運転圧力は、一般に、1バール(14.5psi)~100バール(1450.3psi)、好ましくは2バール(29.0psi)~70バール(1015.3psi)、より好ましくは、3バール(43.5psi)~50バール(725.2psi)の範囲である。
【0060】
ガス流、及びもしあれば、添加された還元性ガスが加水分解反応器に導入される流速は、一般に、10hr-1~10,000hr-1の範囲の気体空間速度(GHSV)提供するようなものである。「気体空間速度」という用語は、炭化水素供給原料が加水分解反応器に充填される速度(時間当たりの容量)を、ガス流が充填される加水分解反応器に含まれる触媒の容量で割った数値の比を指す。好ましいGHSVは、10hr-1~8,000hr-1、より好ましくは、500hr-1~5,000hr-1、最も好ましくは、1000hr-1~4,000hr-1の範囲である。
【0061】
Clausテールガス流の処理では、ほとんどの場合、それは、加水分解プロセスの加水分解反応に必要な還元ガスの供給源となりうる水と水素の濃度を含むであろう。しかし、ガス流が十分な濃度の還元ガス成分を含有しない場合、必要に応じて還元ガスをガス流中に添加してもよい。加水分解反応が完了に近づくことを可能にするために化学量論的に必要な量の還元ガスをガス流中に有することが一般に望ましい。
【0062】
以下の実施例は、本発明の特定の態様をさらに説明するために提示されるが、これらは本発明の範囲を不当に限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0063】
実施例I
この実施例Iは、本発明の触媒組成物及び比較触媒の調製を説明する。
【0064】
本発明の触媒組成物
本発明の触媒組成物の実施形態は、主に擬ベーマイトを含む広孔アルミナ粉末を、強熱減量が約61%であるような含水量を有するプラスチック混合物、例えば押出可能な混合物を提供するような割合で、硝酸、及び水と混練させることによって調製された。コバルトを含むコバルト水溶液は、硝酸コバルトを水に溶解することによって調製され、モリブデンを含むモリブデン水溶液は、二モリブデン酸アンモニウムを30%過酸化水素水に溶解することによって調製された。2つの金属溶液を混練混合物に添加し、一定時間混合した後、少量の水酸化アンモニウムを混練混合物と混合した。次いで、得られた混合物を3.2mm三葉押出ダイを通して押し出し、押出物を乾燥し、か焼した。最終触媒組成物は、主にガンマ形態であるアルミナ、9.4重量%のモリブデン、及び3.6重量%のコバルトを含む。金属の重量%は、最終触媒の総重量を基準とし、酸化物形態の金属に関してである。
【0065】
比較触媒組成物A
比較触媒組成物Aは、金属の濃度が本発明の触媒組成物のものよりも実質的に低いことを除いて、本発明の触媒であるように同様の方法で調製された。最終比較触媒組成物Aは、7.2重量%のモリブデン及び2.5重量%のコバルトを含有する。
【0066】
比較触媒組成物B
含浸溶液は、最終触媒中に8.5重量%のモリブデン(元素基準で)及び3.3重量%のコバルト(元素基準で)を目的とするような量で、水性アンモニア、二モリブデン酸アンモニウム、及びコバルト水酸化物を混合することによって調製された。この混合物を、45oCに加熱し、コバルト1モル当たり1.2~1.5モルのモノエタノールアミン(MEA)量を混合物に加えた。混合物を、金属塩が消化されるまで温度を維持しながら撹拌した。次いで、この溶液を水で約30oCに冷却し、溶液を含浸させるアルミナ球体の細孔容積に近似した溶液の総容量を提供するように水で仕上げをした。公称直径4mmのアルミナ球体またはビーズに溶液を含浸させ、時々混合しながら2時間熟成させて凝集を防止した。含浸させたアルミナ球体は、1時間、125oCの温度で対流式オーブンで乾燥させた。乾燥した球体は、1時間、538oCの温度でマッフル炉中でか焼した。
【0067】
実施例II
この実施例IIは、少なくとも一つの硫黄化合物の濃度を含むガス流の加水分解において実施例Iに記載の触媒の使用を示し、触媒の性能データを示す。
【0068】
実施例Iの触媒は、反応器温度を制御するために使用される管状炉を備えたテールガスパイロットユニット反応器を使用して性能試験を行った。活性試験の準備のために、H
2S及びH
2を含む供給物を、300
oCで3時間、かつ467GHSVで反応器に導入することによって、各それぞれの触媒を硫化した。次いで、H
2S、SO
2、COS、CS
2、S、H
2、CO、N
2、及びスチームを含み、表2に示されるような典型的な組成を有する合成テールガスを、テールガス反応器に充填し、様々な反応器温度、2052nGHSV(通常のガス時間当たり空間速度、3psiの単位圧力)を提供するような速度で運転される。
【表2】
【0069】
各反応器温度条件についての反応器流出物の組成をガスクロマトグラフィーを使用して分析した。試験の結果は、以下の表3~6に示されており、これらは、
図1及び
図2の棒グラフによってさらに示されている。
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0070】
上記の表に示されたデータは、本発明の触媒が、比較の低金属、共混練触媒組成物及び比較の含浸触媒組成物よりも向上した触媒性能を示すことを示している。
【0071】
触媒Aと比較してより低い温度での硫化カルボニル加水分解反応に対して本発明の触媒によって提供される反応速度定数が有意に高く、より高い反応温度でのこの速度定数は比較的変わらないということが示されている。触媒Bと比較して、本発明の触媒によって提供されるCOSの加水分解反応の速度定数は、2つの触媒によって提供される速度定数が実質的に同等である温度200oCという非常に低い温度を除いて、すべての反応温度で有意に高い。
【0072】
本発明の触媒によって提供されるより高いCOSの加水分解反応の速度定数の結果として、比較触媒で得られるものと比較して、未変換硫化カルボニルの濃度が十分に低下した処理されたガス流が得られる。この未変換硫化カルボニルの濃度の低下は、より低いまたは低下した反応温度での本発明の触媒の使用でも得られる。
【0073】
図1は、表3に示されたデータを棒グラフの形で示しており、低金属の共混練触媒組成物(触媒A)及び含浸された触媒(触媒B)と比較した場合の本発明の触媒の向上した性能特性を示すのに役立っている。
【0074】
本発明の触媒組成物はまた、比較触媒の性能と比較して、一酸化炭素の水性ガスシフト平衡反応の向上した反応性能を示す。本発明の触媒によって提供される反応速度定数は、触媒Aによって提供される反応速度定数と比較して、全ての温度において有意に向上する。速度定数が触媒Bと比較される場合、本発明の触媒は、速度定数がほぼ同等である非常に低い温度を除いて、全ての温度においてより大きな反応速度定数を提供する。
【0075】
より高い水性ガスシフト反応の速度定数は、比較触媒で得られるものと比較して、処理されたガス流で得られる、十分に低下した未変換一酸化炭素の濃度を提供する。より高い速度定数は、低い反応温度での反応器の運転を可能にする。
【0076】
図2は、表4に示されたデータを棒グラフの形で示しており、低金属の共混練触媒組成物、及び含浸された触媒と比較した場合の本発明の触媒の向上した性能特性を示すのに役立っている。