(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】ILC3細胞に関連する疾患を処置する方法
(51)【国際特許分類】
C12P 21/00 20060101AFI20220128BHJP
A61K 31/47 20060101ALI20220128BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20220128BHJP
A61K 38/18 20060101ALI20220128BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220128BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20220128BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220128BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20220128BHJP
C07D 215/46 20060101ALI20220128BHJP
C07K 14/475 20060101ALI20220128BHJP
C07K 14/71 20060101ALI20220128BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220128BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20220128BHJP
【FI】
C12P21/00 K ZNA
A61K31/47
A61K38/17
A61K38/18
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P1/00
A61P29/00
A61P31/00
C07D215/46
C07K14/475
C07K14/71
C07K16/28
C12N5/078
(21)【出願番号】P 2018560036
(86)(22)【出願日】2017-05-11
(86)【国際出願番号】 IB2017000901
(87)【国際公開番号】W WO2017195042
(87)【国際公開日】2017-11-16
【審査請求日】2020-05-08
(31)【優先権主張番号】20161000032176
(32)【優先日】2016-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PT
(73)【特許権者】
【識別番号】511115734
【氏名又は名称】インスティテュート デ メディシナ モレキュラー ジョアオ ロボ アントゥネス
【氏名又は名称原語表記】Instituto de Medicina Molecular Joao Lobo Antunes
【住所又は居所原語表記】Faculdade de Medicina, Universidade de Lisboa, Avenida professor Egas Moniz,1649-028 Lisbon,Portuguese Republic
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】イビザ マルティネス,サレス
(72)【発明者】
【氏名】ヴェイガ フェルナンデス,ホセ,エンリケ
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア-カッサーニ,ベタニア
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-513588(JP,A)
【文献】Atanasova, M. et al.,Activation of the RET Receptor Tyrosine Kinase by Agonist Antibodies Results in Distinct Signaling Effects,FASEB J., [online],2015年,Vol. 29, Issue S1,https://faseb.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1096/fasebj.29.1_supplement.728.44,Internet, [retrieved on 2021.02.01]
【文献】Paratcha, G. et al.,Released GFRalpha1 potentiates downstream signaling, neuronal survival, and differentiation via a novel mechanism of recruitment of c-Ret to lipid rafts,Neuron,2001年,Vol. 29,pp. 171-184
【文献】Yang, G. et al.,The mouse soluble GFRalpha4 receptor activates RET independently of its ligand persephin,Oncogene,2007年,Vol. 26,pp. 3892-3898
【文献】Robinette, M. L. et al.,Transcriptional Programs Define Molecular Characteristics of Innate Lymphoid Cell Classes and Subsets,Nat. Immunol.,2015年,Vol. 16,pp. 306-317
【文献】Zhou, L. et al.,GDNF family ligand dependent STAT3 activation is mediated by specific alternatively spliced isoforms of GFRα2 and RET,Biochimica et Biophysica Acta,2013年,Vol. 1833,pp. 2789-2802
【文献】Backert, I. et al.,STAT3 Activation in Th17 and Th22 Cells Controls IL-22-Mediated Epithelial Host Defense during Infectious Colitis,Journal of Immunology,2014年,Vol. 193,pp. 3779-3791
【文献】Guo, X. et al.,Induction of Innate Lymphoid Cell-Derived Interleukin-22 by the Transcription Factor STAT3 Mediates Protection against Intestinal Infection,Immunity,2014年,Vol. 40,pp. 25-39
【文献】Singh, A. K. et al.,DOCK8 regulates protective immunity by controlling the function and survival of ROR gamma t(+) ILCs,Nature Communications,2014年,Vol. 5, No. 4603,pp. 1-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 1/00-41/00
C12N 15/00-15/90
C12N 1/00-7/08
C07K 1/00-19/00
A61K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グループ3自然リンパ球系細胞(ILC3)によるインターロイキン-22(IL-22)の産生を増加させる方法であって、
ILC3を、ILC3によるIL-22の産生を増加させるのに有効な量のトランスフェクション中の再編成(RET)のアゴニストとin vitroで接触させること、
を含み、ここで前記RETのアゴニストが、
(1)可溶性GDNFファミリー結合受容体アルファ(GFRα)およびGFRαリガンド(GFL)の組合わせ;または
(2)RETに特異的に結合してRETチロシンキナーゼ活性を増加させる抗体、またはその抗原結合断片、
を含む、前記方法。
【請求項2】
可溶性GDNFファミリー結合受容体アルファ(GFRα)およびGFRαリガンドの組合わせが、
(1)以下の組合わせ:(a)可溶性GDNFファミリー結合受容体アルファ1(GFRα1)およびグリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF);(b)可溶性GFRα2およびニュールツリン(NTRN);(c)可溶性GFRα3およびアルテミン(ARTN);(d)可溶性GFRα4およびパーセフィン(PSPN);(e)可溶性GFRαおよびN(4)-(7-クロロ-2-[(E)-2-(2-クロロ-フェニル)-ビニル]-キノリン-4-イル)-N(1),N(1)-ジエチル-ペンタン-1,4-ジアミン(XIB4035);(f)可溶性GFRαおよびBT化合物;(g)可溶性GFRαおよび、GFRαに特異的に結合して二量化する抗体;または
(2)(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)および(g)の2つ以上の組合わせ、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
トランスフェクション中の再編成(RET)のアゴニストを含む医薬組成物であって、
該医薬組成物は、グループ3自然リンパ球系細胞(ILC3)によるインターロイキン-22(IL-22)の産生を増加させる方法における使用のためのものであり、
該方法は、ILC3を、ILC3によるIL-22の産生を増加させるのに有効な量のRETのアゴニストと接触させることを含み、
該RETのアゴニストは、
(1)可溶性GDNFファミリー結合受容体アルファ(GFRα)およびGFRαリガンド(GFL)の組合わせ;または
(2)RETに特異的に結合してRETチロシンキナーゼ活性を増加させる抗体、またはその抗原結合断片、
を含む、前記医薬組成物。
【請求項4】
可溶性GDNFファミリー結合受容体アルファ(GFRα)およびGFRαリガンドの組合わせが、
(1)以下の組合わせ:(a)可溶性GDNFファミリー結合受容体アルファ1(GFRα1)およびグリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF);(b)可溶性GFRα2およびニュールツリン(NTRN);(c)可溶性GFRα3およびアルテミン(ARTN);(d)可溶性GFRα4およびパーセフィン(PSPN);(e)可溶性GFRαおよびN(4)-(7-クロロ-2-[(E)-2-(2-クロロ-フェニル)-ビニル]-キノリン-4-イル)-N(1),N(1)-ジエチル-ペンタン-1,4-ジアミン(XIB4035);(f)可溶性GFRαおよびBT化合物;(g)可溶性GFRαおよび、GFRαに特異的に結合して二量化する抗体;または
(2)(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)および(g)の2つ以上の組合わせ、
を含む、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
接触がin vitroである、請求項3または4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
接触がin vivoである、請求項3または4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
アゴニストが対象に投与される、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
対象がヒトである、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
対象が、それ以外ではRETのアゴニストによる処置を必要としない、請求項7または8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
RETのアゴニストが、静脈内、経口的、経鼻的、直腸内、または皮膚吸収を介して投与される、請求項8または9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
消化管の感染
または炎
症の処置方法における使用のための、請求項8~10のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、該方法は、かかる処置を必要とする対象に、
消化管の感染
または炎
症を処置するのに有効な量のRETのアゴニストを投与することを含む、前記医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
グループ3自然リンパ球系細胞(ILC3)は、粘膜バリアにおける炎症および感染の主要な調節因子である1。ILC3の発生はプログラムされていると考えられている1。しかしながら、ILC3がいかにして局所的な環境シグナルを認知し、統合し、応答するかは不明のままである。
【発明の概要】
【0002】
本明細書に示されるように、ILC3は、神経栄養因子によって調整される新規なグリアILC3上皮細胞ユニットの一部として、その環境を感知し消化管防御を制御する。本明細書にさらに示されるように、腸内のILC3は、神経調節受容体であるトランスフェクション中の再編成(RET)を発現する。ILC3自律的なRet消失は、先天性インターロイキン-22(IL-22)の減少、上皮反応性の障害、腸内毒素症(dysbiosis)、および腸の炎症と感染に対する感受性の増加をもたらした。神経栄養因子は、p38 MAPK/ERK-AKTカスケードおよびSTAT3活性化の下流における先天性Il22を直接制御した。驚くべきことにILC3は、ILC3凝集体中に星状突起を示した神経栄養因子発現グリア細胞に隣接していた。グリア細胞は、MYD88依存的様式で微小環境のキューを感知して、神経栄養因子および先天性IL-22を制御する。したがって、グリア内因性Myd88欠損は、ILC3由来IL-22の障害および、消化管の炎症および感染への顕著な傾向をもたらした。この研究は新規な多組織防御ユニットに光を当て、ニューロンの中心的なハブとしてのグリア細胞および、神経栄養因子シグナルを介する自然免疫調節を明らかにする。
【0003】
一態様によれば、グループ3自然リンパ球系細胞(ILC3)によるインターロイキン-22(IL-22)の産生を増加させる方法が提供される。方法は、ILC3を、ILC3によるIL-22の産生を増加させるのに有効な量のトランスフェクション中の再編成(RET)のアゴニストと接触させることを含む。
いくつかの態様において、RETのアゴニストは、(1)可溶性GDNFファミリー結合受容体アルファ(GFRα)およびGFRαリガンド(GFL)またはそれらの類似体もしくは模倣体の組合わせ;または(2)RETに特異的に結合してRETチロシンキナーゼ活性を増加させる抗体、またはその抗原結合断片、を含む。いくつかの態様において、可溶性GDNFファミリー結合受容体アルファ(GFRα)およびGFRαリガンドまたはそれらの類似体もしくは模倣体の組合わせは、(1)以下の組合わせ:(a)可溶性GDNFファミリー結合受容体アルファ1(GFRα1)およびグリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)またはそれらの類似体もしくは模倣体;(b)可溶性GFRα2およびニュールツリン(NTRN)またはその類似体もしくは模倣体;(c)可溶性GFRα3およびアルテミン(ARTN)またはその類似体もしくは模倣体;(d)可溶性GFRα4およびパーセフィン(PSPN)またはその類似体もしくは模倣体;(e)可溶性GFRαおよびN(4)-(7-クロロ-2-[(E)-2-(2-クロロ-フェニル)-ビニル]-キノリン-4-イル)-N(1),N(1)-ジエチル-ペンタン-1,4-ジアミン(XIB4035);(f)可溶性GFRαおよびBT化合物;(g)可溶性GFRαおよび、GFRαに特異的に結合して二量化する抗体;または(2)(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)および(g)の2つ以上の組合わせ、を含む。
【0004】
いくつかの態様において、接触はin vitroである。いくつかの態様において、接触はin vivoである。
いくつかの態様において、アゴニストは対象に投与される。いくつかの態様において、対象はヒトである。いくつかの態様において、対象は、それ以外ではアゴニストによる処置を必要としない。
別の側面によれば、グループ3自然リンパ球系細胞(ILC3)に関連する疾患を処置する方法が提供される。方法は、かかる処置を必要とする対象に、疾患を処置するのに有効な量のトランスフェクション中の再編成(RET)のアゴニストを投与することを含む。
【0005】
いくつかの態様において、RETのアゴニストは、(1)可溶性GDNFファミリー結合受容体アルファ(GFRα)およびGFRαリガンドまたはそれらの類似体もしくは模倣体の組合わせ;または(2)RETに特異的に結合してRETチロシンキナーゼ活性を増加させる抗体、またはその抗原結合断片、を含む。いくつかの態様において、可溶性GDNFファミリー結合受容体アルファ(GFRα)およびGFRαリガンドまたはそれらの類似体もしくは模倣体の組合わせは、(1)以下の組合わせ:(a)可溶性GDNFファミリー結合受容体アルファ1(GFRα1)およびグリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)またはそれらの類似体もしくは模倣体;(b)可溶性GFRα2およびニュールツリン(NTRN)またはその類似体もしくは模倣体;(c)可溶性GFRα3およびアルテミン(ARTN)またはその類似体もしくは模倣体;(d)可溶性GFRα4およびパーセフィン(PSPN)またはその類似体もしくは模倣体;(e)可溶性GFRαおよびN(4)-(7-クロロ-2-[(E)-2-(2-クロロ-フェニル)-ビニル]-キノリン-4-イル)-N(1),N(1)-ジエチル-ペンタン-1,4-ジアミン(XIB4035);(f)可溶性GFRαおよびBT化合物;(g)可溶性GFRαおよび、GFRαに特異的に結合して二量化する抗体;または(2)(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)および(g)の2つ以上の組合わせ、を含む。
いくつかの態様において、対象はヒトである。
【0006】
いくつかの態様において、疾患は、感染、炎症、新形成、または消化管生理変容(altered gut physiology)である。
いくつかの態様において、対象は、それ以外ではRETのアゴニストによる処置を必要としない。
いくつかの態様において、RETのアゴニストは、静脈内、経口的、経鼻的、直腸内、または皮膚吸収を介して投与される。
別の側面によれば、グループ3自然リンパ球系細胞(ILC3)に関連する疾患の処置における使用のための、トランスフェクション中の再編成(RET)のアゴニストが提供され、これは、かかる処置を必要とする対象に、疾患を処置するのに有効な量のRETのアゴニストを投与することを含む。
【0007】
いくつかの態様において、RETのアゴニストは、(1)可溶性GDNFファミリー結合受容体アルファ(GFRα)およびGFRαリガンド(GFL)またはそれらの類似体もしくは模倣体の組合わせ;または(2)RETに特異的に結合してRETチロシンキナーゼ活性を増加させる抗体、またはその抗原結合断片、を含む。いくつかの態様において、可溶性GDNFファミリー結合受容体アルファ(GFRα)およびGFRαリガンドまたはそれらの類似体もしくは模倣体の組合わせは、(1)以下の組合わせ:(a)可溶性GDNFファミリー結合受容体アルファ1(GFRα1)およびグリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)またはそれらの類似体もしくは模倣体;(b)可溶性GFRα2およびニュールツリン(NTRN)またはその類似体もしくは模倣体;(c)可溶性GFRα3およびアルテミン(ARTN)またはその類似体もしくは模倣体;(d)可溶性GFRα4およびパーセフィン(PSPN)またはその類似体もしくは模倣体;(e)可溶性GFRαおよびN(4)-(7-クロロ-2-[(E)-2-(2-クロロ-フェニル)-ビニル]-キノリン-4-イル)-N(1),N(1)-ジエチル-ペンタン-1,4-ジアミン(XIB4035);(f)可溶性GFRαおよびBT化合物;(g)可溶性GFRαおよび、GFRαに特異的に結合して二量化する抗体;または(2)(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)および(g)の2つ以上の組合わせ、を含む。
【0008】
いくつかの態様において、対象はヒトである。
いくつかの態様において、疾患は、感染、炎症、新形成、または消化管生理変容である。
いくつかの態様において、対象は、それ以外ではRETのアゴニストによる処置を必要としない。
いくつかの態様において、RETのアゴニストは、静脈内、経口的、経鼻的、直腸内、または皮膚吸収を介して投与される。
別の側面によれば、グループ3自然リンパ球系細胞(ILC3)に関連する疾患を処置する方法が提供される。方法は、かかる処置を必要とする対象に、疾患を処置するのに有効な量の、ILC3を含む組成物を投与することを含む。
【0009】
いくつかの態様において、組成物は、トランスフェクション中の再編成(RET)のアゴニストをさらに含む。いくつかの態様において、RETのアゴニストは、(1)可溶性GDNFファミリー結合受容体アルファ(GFRα)およびGFRαリガンド(GFL)またはそれらの類似体もしくは模倣体の組合わせ;または(2)RETに特異的に結合してRETチロシンキナーゼ活性を増加させる抗体、またはその抗原結合断片、を含む。いくつかの態様において、可溶性GDNFファミリー結合受容体アルファ(GFRα)およびGFRαリガンドまたはそれらの類似体もしくは模倣体の組合わせは、(1)以下の組合わせ:(a)可溶性GDNFファミリー結合受容体アルファ1(GFRα1)およびグリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)またはそれらの類似体もしくは模倣体;(b)可溶性GFRα2およびニュールツリン(NTRN)またはその類似体もしくは模倣体;(c)可溶性GFRα3およびアルテミン(ARTN)またはその類似体もしくは模倣体;(d)可溶性GFRα4およびパーセフィン(PSPN)またはその類似体もしくは模倣体;(e)可溶性GFRαおよびN(4)-(7-クロロ-2-[(E)-2-(2-クロロ-フェニル)-ビニル]-キノリン-4-イル)-N(1),N(1)-ジエチル-ペンタン-1,4-ジアミン(XIB4035);(f)可溶性GFRαおよびBT化合物;(g)可溶性GFRαおよび、GFRαに特異的に結合して二量化する抗体;または(2)(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)および(g)の2つ以上の組合わせ、を含む。
【0010】
いくつかの態様において、対象はヒトである。
いくつかの態様において、疾患は、感染、炎症、新形成、または消化管生理変容である。
いくつかの態様において、対象は、それ以外ではILC3またはRETのアゴニストによる処置を必要としない。
いくつかの態様において、ILC3またはRETのアゴニストは、静脈内、経口的、経鼻的、直腸内、または皮膚吸収を介して投与される。
別の側面によれば、活性化されたグループ3自然リンパ球系細胞(ILC3)を含む組成物が、ILC3に関連する疾患の処置に使用するために提供され、これは、かかる処置を必要とする対象に、疾患を処置するのに有効な量のILC3を含む組成物を投与することを含む。
【0011】
いくつかの態様において、組成物は、トランスフェクション中の再編成(RET)のアゴニストをさらに含む。いくつかの態様において、RETのアゴニストは、(1)可溶性GDNFファミリー結合受容体アルファ(GFRα)およびGFRαリガンド(GFL)またはそれらの類似体もしくは模倣体の組合わせ;または(2)RETに特異的に結合してRETチロシンキナーゼ活性を増加させる抗体、またはその抗原結合断片、を含む。いくつかの態様において、可溶性GDNFファミリー結合受容体アルファ(GFRα)およびGFRαリガンドまたはそれらの類似体もしくは模倣体の組合わせは、(1)以下の組合わせ:(a)可溶性GDNFファミリー結合受容体アルファ1(GFRα1)およびグリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)またはそれらの類似体もしくは模倣体;(b)可溶性GFRα2およびニュールツリン(NTRN)またはその類似体もしくは模倣体;(c)可溶性GFRα3およびアルテミン(ARTN)またはその類似体もしくは模倣体;(d)可溶性GFRα4およびパーセフィン(PSPN)またはその類似体もしくは模倣体;(e)可溶性GFRαおよびN(4)-(7-クロロ-2-[(E)-2-(2-クロロ-フェニル)-ビニル]-キノリン-4-イル)-N(1),N(1)-ジエチル-ペンタン-1,4-ジアミン(XIB4035);(f)可溶性GFRαおよびBT化合物;(g)可溶性GFRαおよび、GFRαに特異的に結合して二量化する抗体;または(2)(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)および(g)の2つ以上の組合わせ、を含む。
【0012】
いくつかの態様において、対象はヒトである。
いくつかの態様において、疾患は、感染、炎症、新形成、または消化管生理変容である。
いくつかの態様において、対象は、それ以外ではILC3またはRETのアゴニストによる処置を必要としない。
いくつかの態様において、ILC3またはILC3およびRETのアゴニストは、静脈内、経口的、経鼻的、直腸内、または皮膚吸収を介して投与される。
別の側面によれば、グループ3自然リンパ球系細胞(ILC3)によるインターロイキン-22(IL-22)の産生を減少させる方法が提供される。方法は、ILC3を、ILC3によるIL-22の産生を減少させるのに有効な量のトランスフェクション中の再編成(RET)のアンタゴニストと接触させること、を含む。
【0013】
いくつかの態様において、RETのアンタゴニストは、(1)(a)RETチロシンキナーゼ活性、(b)GDNFファミリー結合受容体アルファ(GFRα)、または(c)GFRαリガンドに、特異的に結合して阻害する抗体、またはその抗原結合断片;(2)RET、GFRα、またはGFRαリガンドの発現、転写または翻訳を減少させる、阻害性核酸分子;または(3)RETチロシンキナーゼ阻害剤、任意にAST487、モテサニブ、カボザンチニブ、バンデタニブ、ポナチニブ、スニチニブ、ソラフェニブまたはアレクチニブ、である。いくつかの態様において、GFRαは、GFRα1、GFRα2、GFRα3またはGFRα4であり;または、GFRαリガンドは、グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン(NTRN)、アルテミン(ARTN)、またはパーセフィン(PSPN)である。いくつかの態様において、阻害性核酸分子は、sRNA、shRNA、またはアンチセンス核酸分子である。
いくつかの態様において、接触はin vitroである。いくつかの態様において、接触はin vivoである。
【0014】
いくつかの態様において、RETのアンタゴニストは、対象に投与される。いくつかの態様において、対象はヒトである。いくつかの態様において、対象は、それ以外ではRETのアンタゴニストによる処置を必要としない。
別の側面によれば、グループ3自然リンパ球系細胞(ILC3)に関連する疾患を処置する方法が提供される。方法は、かかる処置を必要とする対象に、疾患を処置するのに有効な量のトランスフェクション中の再編成(RET)のアンタゴニストを投与することを含む。
いくつかの態様において、RETのアンタゴニストは、(1)(a)RETチロシンキナーゼ活性、(b)GDNFファミリー結合受容体アルファ(GFRα)、または(c)GFRαリガンドに、特異的に結合して阻害する抗体、またはその抗原結合断片;(2)RET、GFRα、またはGFRαリガンドの発現、転写または翻訳を減少させる、阻害性核酸分子;または(3)RETチロシンキナーゼ阻害剤、任意にAST487、モテサニブ、カボザンチニブ、バンデタニブ、ポナチニブ、スニチニブ、ソラフェニブまたはアレクチニブ、である。いくつかの態様において、GFRαは、GFRα1、GFRα2、GFRα3またはGFRα4であり;または、GFRαリガンドは、グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン(NTRN)、アルテミン(ARTN)、またはパーセフィン(PSPN)である。いくつかの態様において、阻害性核酸分子は、sRNA、shRNA、またはアンチセンス核酸分子である。
【0015】
いくつかの態様において、対象はヒトである。
いくつかの態様において、対象は、それ以外ではRETのアンタゴニストによる処置を必要としない。
いくつかの態様において、疾患は上皮性腸がんである。
いくつかの態様において、RETのアンタゴニストは、静脈内、経口的、経鼻的、直腸内、または皮膚吸収を介して投与される。
別の側面によれば、トランスフェクション中の再編成(RET)のアンタゴニストが、グループ3自然リンパ球系細胞(ILC3)に関連する疾患の処置に使用するために提供され、これは、かかる処置を必要とする対象に、疾患を処置するのに有効な量のRETのアンタゴニストを投与することを含む。
【0016】
いくつかの態様において、RETのアンタゴニストは、(1)(a)RETチロシンキナーゼ活性、(b)GDNFファミリー結合受容体アルファ(GFRα)、または(c)GFRαリガンドに、特異的に結合して阻害する抗体、またはその抗原結合断片;(2)RET、GFRα、またはGFRαリガンドの発現、転写または翻訳を減少させる、阻害性核酸分子;または(3)RETチロシンキナーゼ阻害剤、任意にAST487、モテサニブ、カボザンチニブ、バンデタニブ、ポナチニブ、スニチニブ、ソラフェニブまたはアレクチニブ、である。いくつかの態様において、GFRαは、GFRα1、GFRα2、GFRα3またはGFRα4であり;または、GFRαリガンドは、グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン(NTRN)、アルテミン(ARTN)、またはパーセフィン(PSPN)である。
いくつかの態様において、対象はヒトである。
いくつかの態様において、対象は、それ以外ではRETのアンタゴニストによる処置を必要としない。
【0017】
いくつかの態様において、疾患は上皮性腸がんである。
いくつかの態様において、RETのアンタゴニストは、静脈内、経口的、経鼻的、直腸内、または皮膚吸収を介して投与される。
本発明は、その適用において、以下の説明に記載されるかまたは図面に示される構成および構成要素の配置の詳細に限定されない。本発明は他の態様が可能であり、様々な方法で実施されるか実行されることが可能である。また、本明細書で使用される表現および用語は説明のためのものであり、限定するものと見なされるべきではない。「含む(including)」、「含む(comprising)」、「有する」、「含有する」、「関与する」、およびそれらの変形は、その後に列挙される項目およびその均等物ならびに追加の項目を包含することを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
添付の図面は一定の縮尺で描くことを意図していない。図面において、様々な図に示されている同一またはほぼ同一の各構成要素は、同様の番号で表されている。わかりやすくするために、すべての構成要素がすべての図面においてラベル付けされてはいない。図面においては、以下である:
【0019】
【
図1a-1h】神経栄養因子受容体RETは、腸のILC3由来IL-22を駆動する。
図1a、LTi、NCR
-、およびNCR
+ ILC3サブセット、T細胞(T)、B細胞(B)、樹状細胞(Dc)、マクロファージ(Mφ)、腸内ニューロン(N)および粘膜グリア細胞(G)。
図1b、Ret
GFPILC3。
図1c、左:Ret
GFP消化管。白:GFP。右:ILC3凝集体。
図1d、クリプトパッチ(CP)、未成熟(iILF)および成熟(mILF)の単離されたリンパ濾胞。緑:RET/GFP;青:RORγt;赤:B220。
図1e、Ret
GFPキメラ。n=15。
図1f、1g、Ret
GFPキメラ。Ret
WT/GFP n=25;Ret
GFP/GFP n=22。
図1h、Ret
MEN2Bマウス。n=7。スケールバー:1mm(cの左、e);50μm(cの右);30μm(d)。データは4回の独立した実験の代表値である。エラーバーはs.e.mを示す。
*P<0.05;
**P<0.01;ns:非有意。
【0020】
【
図2a-2n】ILC3内因性RETシグナルは消化管防御を調節する。
図2a、ILC3由来サイトカイン。n=11。
図2b、Ret
ΔおよびRet
MEN2BマウスをそれらのWT同腹仔対照と比較した。n=7。
図2c-2f、DSS処置。Ret
fl n=8;Ret
Δ n=8。c、組織病理。
図2d、炎症スコアおよび結腸の長さ。
図2e、先天性IL-22。
図2f、細菌の移行。
図2g-2j、DSS処置。Ret
WT n=8;Ret
MEN2B n=8。
図2g、組織病理。
図2h、炎症スコアおよび結腸の長さ。
図2i、先天性IL-22。
図2j、細菌の移行。
図2k-2n、C. rodentium感染。Rag1
-/-.Ret
fl n=15;Rag1
-/-.Ret
Δn=17。
図2k、組織病理。
図2l、炎症スコアおよび結腸の長さ。
図2m、先天性IL-22。
図2n、感染負荷。スケールバー:200μm。データは4回の独立した実験の代表値である。エラーバーはs.e.mを示す。
*P<0.05;
**P<0.01;ns:非有意。
【0021】
【
図3a-3j】ILC3自律的RETシグナルは、pSTAT3の下流のIl22を直接制御する。
図3a、3b、上皮/ILC3オルガノイド。n=9。
図3c、Ret
ΔILC3をそれらのWT対照と比較。n=4。
図3d、GFLによるILC3活性化。n=4。
図3e、Ret
ΔILC3.pERK n=8;pAKT n=12;リン酸化p38/MAPキナーゼ n=6;pSTAT3 n=14。
図3f、GFLによるILC3活性化。pERK n=10;pAKT n=16;リン酸化p38/MAPキナーゼ n=3;pSTAT3 n=15。
図3g、培地(n=7)、GFL(n=11)、またはGFLおよび以下に対する阻害剤で培養した、ILC3中のpSTAT3:p38 MAPK/ERK-AKT(LY)(n=7);ERK(PD)(n=7);AKT(VIII)(n=8);およびp38 MAPK(SB)(n=6)。
図3h、GFL(n=17)またはGFLおよび阻害剤LY(n=18);PD(n=16);VIII(n=15);SB(n=15);およびSTAT3阻害剤(S3I)(n=8)で培養したILC3中のIl22。
図3i、Il22遺伝子座。
図3j、GFLで刺激されたILC3のChIP分析。n=10。データは3回の独立した実験の代表値である。エラーバーはs.e.mを示す。
*P<0.05;
**P<0.01;ns:非有意。
【0022】
【
図4a-4m】グリア細胞は、微小環境のMYD88依存性の感知を介してGFL発現および先天性IL-22を設定する。
図4a、共飼育のRet
fl(白丸)およびRet
Δ(黒丸)同腹仔からの重み付きUnifrac PCoA分析および属レベル比較。n=5。属(下から上へ):紫:未分類S24-7;赤:Bacteroides;青:未分類のClostridiales;緑:Sutterella;灰色:その他。
図4b-4d、定着した無菌(GF)マウスのDSS処置。n=5。
図4b、組織病理。
図4c、炎症スコア。
図4d、先天性IL-22。
図4e、抗生物質処置後の先天性IL-22。n=8。
図4f、Ret
GFP.Gfap-Cre.Rosa26
RFPマウス。緑:RET/GFP;赤:GFAP/RFP。
図4g、4h、TLR2、TLR4、IL-1β受容体およびIL-33受容体リガンドによるグリア細胞活性化。n=6。
図4i、WT(白のバー)またはMyd88
-/-グリア細胞(黒のバー)と共培養したILC3の、TLRリガンド、IL-1βおよびIL-33活性化。n=6。
図4j-4m、Gfap-Cre.Myd88
ΔマウスのDSS処置。n=12。
図4j、組織病理。
図4k、炎症スコアおよび結腸の長さ。
図4l、先天性IL-22。
図4m、体重。スケールバー:200μm(b、j);10μm(f)。データは3~4回の独立した実験の代表値である。エラーバーはs.e.mを示す。
*P<0.05;
**P<0.01;ns:非有意。
【0023】
【
図5a-5j】ILC3は、神経栄養因子受容体RETを選択的に発現する。
図5a、消化管CD45
+Lin
-Thy1.2
hiIL7Rα
+RORγt
+ILC3における、RETタンパク質の発現。
図5b、Ret
GFPマウスからの消化管ILC3の分析。胎生14.5日目(E14.5)。
図5c、5d、Ret
GFPマウスからの腸内ILC3サブセットの分析。
図5e、Ret
GFPマウスからのサイトカイン産生ILC3の分析。
図5f、妊娠中のRet
GFPマウスに、生後から6週間における分析まで維持された、抗生物質カクテルを与えた。左:RET/GFP(白)。右:ILC3におけるRET/GFP発現のフローサイトメトリー分析。細線:Ab処置;太線:SPF。
図5g、無菌(GF)マウスおよび特異的病原体フリー(SPF)対照からの腸内ILC3におけるRet発現。n=4。
図5h、Ret
GFPマウスからの粘膜固有層集団の分析。
図5i、腸内ILC3クラスター。緑:RET/GFP;青:RORγt;赤:B220。下:RET/GFPおよびRORγt同時発現の定量分析(79,97±4,72%)。
図5j、腸管絨毛におけるILC3を発現する希少RET。緑:RET/GFP;青:RORγt;赤:CD3ε。スケールバー:10μm。データは4回の独立した実験の代表値である。エラーバーはs.e.mを示す。ns:非有意。
【0024】
【
図6a-6b】Ret
GFPキメラおよびRet
MEN2BマウスにおけるT細胞由来IL-22およびIL-17。
図6a、Ret
GFPキメラにおけるT細胞由来IL-17。Ret
WT/GFP n=25;Ret
GFP/GFP n=22。
図6b、Ret
MEN2BマウスおよびそれらのWT同腹仔対照の腸における、T細胞由来IL-22およびIL17。Ret
WT n=7;Ret
MEN2B n=7。データは4回の独立した実験の代表値である。エラーバーはs.e.mを示す。ns:非有意。
【
図7a-7i】定常状態Ret
Δマウスにおける腸内ホメオスタシス。
図7a、Rorgt-CreマウスをRosa26
YFPに交配させた。Rorgt-Cre.Rosa26
YFPマウスからの消化管ILC3におけるRosa26/YFP発現の分析。
図7b、パイエル板の数(PP)。Ret
fl n=10;Ret
Δ n=10。
図7c、Ret
ΔマウスおよびそれらのWT同腹仔対照におけるT細胞由来IL-22。Ret
fl n=11;Ret
Δ n=11。
図7d、Ret
ΔマウスおよびそれらのWT同腹仔対照におけるγδT細胞由来IL-22。Ret
fln=4;Ret
Δ n=4。
図7e、腸管の絨毛および陰窩の形態。Ret
fl n=6;Ret
Δ n=6。
図7f、上皮細胞増殖。Ret
fl n=5;Ret
Δ n=5。
図7g、血漿中のデキストランFitcによって測定された腸管傍細胞透過性。Ret
fl n=5;Ret
Δ n=5。
図7h、Ret
Δ腸管上皮における、それらのWT同腹仔対照と比較した組織修復遺伝子。n=8。
図7i、Ret
MEN2B腸管上皮と比較した、抗IL-22遮断抗体で処置したRet
MEN2Bマウスの反応性遺伝子。Ret
MEN2B n=4;Ret
MEN2B+抗IL-22 n=4。データは3回の独立した実験の代表値である。エラーバーはs.e.mを示す。ns:非有意。
【0025】
【
図8a-8g】変化したRETシグナルを有するマウスにおける腸内炎症。マウスを飲料水中DSSで処置した。
図8a、DSS処置Ret
Δマウスおよびそれらの同腹子対照の体重減少。Ret
fl n=8;Ret
Δ n=8。
図8b、DSS処置後のRet
ΔマウスおよびWT同腹仔対照における、T細胞由来IL-22。Ret
fl n=8;Ret
Δ n=8。
図8c、DSS処置Ret
MEN2BマウスおよびそれらのWT同腹仔対照の体重減少。Ret
WT n=8;Ret
MEN2B n=8。
図8d、Ret
MEN2BマウスおよびそれらのWT同腹仔対照におけるT細胞由来IL-22。Ret
WT n=8;Ret
MEN2B n=8。
図8e、腸管の絨毛および陰窩の形態。Ret
fl n=6;Ret
Δ n=6。
図8f、DSS処置Ret
Δマウスにおける、それらのWT同腹仔対照と比較した上皮反応性遺伝子発現。n=8。
図8g、DSS処置Ret
Δマウスにおける、それらのWT同腹仔対照と比較した組織修復遺伝子発現。n=4。データは3~4回の独立した実験の代表値である。エラーバーはs.e.mを示す。ns:非有意。エラーバーはs.e.mを示す。
*P<0.05;
**P<0.01;ns:非有意。
【0026】
【
図9a-9k】Ret
ΔマウスにおけるCitrobacter rodentium感染。
図9a、感染後6日目のRag1
-/-.Ret
ΔおよびそれらのRag1
-/-.Ret
fl同腹仔対照の肝臓への、C. rodentiumの移行。n=15。
図9b、C. rodentium感染後6日目のRag1
-/-.Ret
ΔおよびそれらのRag1
-/-.Ret
fl同腹仔対照からの肝臓細胞懸濁液の、マッコンキープレート。
図9c、ルシフェラーゼ発現C. rodentium感染後6日目のRag1
-/-.Ret
ΔおよびそれらのRag1
-/-.Ret
fl同腹仔対照の、全身イメージング。
図9d、C.rodentium感染Rag1
-/-.Ret
ΔマウスおよびそれらのRag1
-/-.Ret
fl同腹仔対照における、上皮反応性遺伝子発現。Rag1
-/-.Ret
fl n=15;Rag1
-/-.Ret
Δ n=17。
図9e、C.rodentium感染Rag1
-/-.Ret
ΔマウスおよびそれらのRag1
-/-.Ret
fl同腹子対照における体重減少。Rag1
-/-.Ret
fl n=8;Rag1
-/-.Ret
Δ n=8。
図9f、C.rodentium感染Rag1
-/-.Ret
ΔマウスおよびそれらのRag1
-/-.Ret
fl同腹子対照における、生存曲線。Rag1
-/-.Ret
fl n=8;Rag1
-/-.Ret
Δ n=8。
図9g、感染後6日目のRet
ΔおよびそれらのRet
fl同腹仔対照の肝臓への、C. rodentiumの移行。n=6。
図9h、C.rodentium感染後6日目のRet
ΔおよびそれらのRet
fl同腹仔対照からの肝臓細胞懸濁液の、マッコンキープレート。
図9i、ルシフェラーゼ発現C.rodentium感染後6日目のRet
ΔおよびそれらのRet
fl同腹子対照の、全身イメージング。
図9j、C.rodentium感染負荷。Ret
fl n=8;Ret
Δ n=8。
図9k、C.rodentium感染Ret
ΔマウスおよびそれらのRet
fl同腹仔対照における、先天性IL-22。Ret
fl n=8;Ret
Δ n=8。データは3~4回の独立した実験の代表値である。エラーバーはs.e.mを示す。ns:非有意。エラーバーはs.e.mを示す。
*P<0.05;
**P<0.01;ns:非有意。
【0027】
【
図10a-10f】ILC3におけるグリア由来神経栄養因子ファミリーリガンド(GFL)シグナル。
図10a、多組織腸管オルガノイド系。スケールバー:20μm。黒矢印:ILC3。
図10b、Ret
ΔマウスからのILC3における、同腹子対照と比較したILC関連遺伝子の発現。n=4。
図10c、ビヒクルBSAと比較した、全てのGFL/GFRα対(GFL);単一のGDNFファミリーリガンド(GDNF、ARTNまたはNRTN);または単一のGFL/GFRα対(GDNF/GFRα1、ARTN/GFRα3またはNRTN/GFRα2)を用いたILC3活性化。n=5。
図10d、Ret
Δマウス(白抜き黒色)およびそれらの同腹子対照(白抜き点線)からのILC3。アイソタイプ(塗りつぶし灰色)。
図10e、ビヒクルBSA(白抜き点線)と比較した、GFL(白抜き黒色)によるILC3の30分間の活性化。アイソタイプ(塗りつぶし灰色)。
図10f、GFLによるILC3の10分間の活性化。pERK n=8;pAKT n=8;リン酸化p38/MAPキナーゼ n=8;pSTAT3 n=8。同様の結果が少なくとも3~4回の独立した実験で得られた。エラーバーはs.e.mを示す。
*P<0.05;
**P<0.01;ns:非有意。
【0028】
【
図11a-11c】Ret
Δマウスの腸管共生細菌の多様性の変化。
図11a、定常状態の共飼育したRet
flおよびRet
Δ同腹仔からの糞便細菌における、門レベルでの定量的PCR分析。n=5。
図11b、定常状態(左)およびDSS処置後(右)の、共飼育したRet
flおよびRet
Δ同腹子からの糞便細菌における、メタゲノム門レベルでの比較。n=5。
図11c、定常状態(左)およびDSS処置後(右)の、共飼育したRet
flおよびRet
Δ同腹子からの糞便細菌における、属レベルでの比較。n=5。エラーバーはs.e.mを示す。
*P<0.05;
**P<0.01;ns:非有意。
【0029】
【
図12a-12g】GFL発現グリア細胞はILC3と解剖学的に共局在する。
図12a、Ret
GFPマウスの腸。緑:RET/GFP;赤:GFAP;青:RORγt。3回の独立した実験において同様の結果が得られた。
図12b、精製された粘膜固有層のLTi、NCR
-およびNCR
+ILC3サブセット、T細胞(T)、B細胞(B)、樹状細胞(Dc)、マクロファージ(Mφ)、腸内ニューロン(N)および粘膜グリア細胞(G)。
図12c、ニューロスフェア由来グリア細胞。
図12d、M:培地。TLR2(Pam3CSK4)、TLR3(Poli I:C)、TLR4(LPS)およびTLR9(DsDNA-EC)リガンド、ならびにIL-1β、IL-18およびIL-33による、ニューロスフェア由来グリア細胞の活性化。n=6。
図12e、グリアとILC3との共培養において、単一または組み合わせのGFLアンタゴニストを使用した場合のI22。n=6。
図12f、ILC3およびIl1b
-/-またはそれらのWT対照由来のグリア細胞の共培養における、Il22。n=3。
図12g、TLR2刺激時のグリア細胞およびILC3における、Gdnf、ArtnおよびNrtn発現。n=3。スケールバー:30μm。同様の結果が少なくとも4回の独立した実験で得られた。
【0030】
【
図13a-13h】MYD88シグナルを介したグリア細胞感知。a~c、腸管グリア細胞をフローサイトメトリーにより精製した。
図13a、無菌(GF)およびそれらのそれぞれの特異的病原体フリー(SPF)対照。n=3。
図13b、Myd88
-/-およびそれらのそれぞれのWT同腹仔対照。n=3。c、Gfap-Cre.Myd88
Δおよびそれらの同腹子対照(Myd88
f1)。n=3。
図13d、Gfap-Cre.Myd88
Δおよびそれらの同腹子対照(Myd88
f1)の、総粘膜固有層細胞。n=6。
図13e~13h、Gfap-Cre.Myd88
Δマウスおよびその同腹子対照(Myd88
f1)のCitrobacter rodentium感染。n=6。
図13e、先天性IL-22。
図13f、Citrobacter rodentiumの移行。
図13g、感染負荷。
図13h、体重減少。データは3回の独立した実験の代表値である。エラーバーはs.e.mを示す。
*P<0.05;
**P<0.01;ns:非有意。
【0031】
【
図14】神経栄養因子によって調整される新規のグリアILC3上皮細胞ユニット。粘膜固有層グリア細胞は、神経栄養因子発現を制御する微小環境生成物を感知する。グリア由来神経栄養因子は、p38MAPK/ERK-AKTカスケード下流の先天性IL-22およびSTAT3リン酸化を直接制御するチロシンキナーゼRETを活性化することにより、ILC3に内在する様式で作用する。GFL誘導性のIL-22は上皮細胞に作用して、反応性遺伝子発現(CBP:共生細菌産物;AMP:抗菌ペプチド;Muc:ムチン)を誘導する。したがって神経栄養因子は、グリア細胞感知、先天性IL-22産生および腸管上皮バリア防御の間の分子リンクである。
【0032】
詳細な説明
グループ3自然リンパ球系細胞(ILC3)は炎症促進性サイトカインを産生し、粘膜ホメオスタシスおよび抗菌性防御を調節する1。その発生的に制御されている確立されたプログラムに加えて、ILC3はまた微生物および食物のシグナルによっても制御されており1-6、ILC3が、予想できない別の環境感知戦略を有するとの仮説が立てられる。神経栄養因子は、ニューロンに対する細胞外環境のキューであり、神経系、腎臓および造血前駆細胞におけるチロシンキナーゼ受容体RETを活性化するグリア由来神経栄養因子(GDNF)ファミリーリガンド(GFL)を含む7-11。
本明細書に示されるデータが実証するように、ILC3は、樹状細胞由来サイトカインを組み込む十分に確立された能力に加えて1、特にグリア細胞由来神経調節因子の組み込みを介して異なる多組織調節シグナルを認知し、STAT3活性およびIL-22発現を導く。したがって、ILC3免疫のための配線されたシグナルを提供するのではなく、RETシグナルは先天性IL-22を決定的に微調整し、効率的な消化管ホメオスタシスおよび防御をもたらす。
【0033】
以前の研究では、ニューロンは間接的に胎児リンパ組織誘導細胞を形成し、グリア細胞の消失は消化管炎症を引き起こすことが実証された28,29。本明細書に記載されるように、グリア細胞は、ニューロンおよび先天性免疫調節の中心的なハブである。注目すべきことに、神経栄養因子は、グリア細胞感知、先天性IL-22および腸管上皮防御の間の分子リンクである。したがって、グリア細胞/免疫細胞ユニットは、他のバリアにおけるホメオスタシス、特に皮膚、肺および脳におけるホメオスタシスに重要となり得る30。進化の観点から、先天性免疫およびニューロン機能の調整は、効率的な粘膜ホメオスタシスおよび、生体異物、腸管感染、食餌性攻撃およびがんを含む様々な環境的チャレンジに対する同時調節された神経免疫応答を、確実にすることができる。
【0034】
ILC3の活性を増加させる
本明細書に開示される方法は、グループ3自然リンパ球系細胞(ILC3)によるインターロイキン-22(IL-22)の産生を増加させる方法であって、ILC3を、IL-22の産生を増加させるのに有効な量のRETのアゴニストと接触させることによる、前記方法を含む。
本明細書に開示される方法はまた、グループ3自然リンパ球系細胞(ILC3)に関連する疾患を処置する方法であって、かかる処置を必要とする対象に、疾患を処置するのに有効な量のRETのアゴニストを投与することによる、前記方法を含む。
疾患を処置するための他の方法は、かかる処置を必要とする対象に、疾患を処置するのに有効な量の活性化ILC3を含む組成物を投与することを含む。これらの方法のいくつかにおいて、活性化ILC3を含む組成物はまた、RETのアゴニストも含む。代替的に、RETのアゴニストは、活性化ILC3を含む組成物とは別に投与することができる。本明細書に記載されるように、ILC3は、ILC3を1つ以上のGDNFファミリーリガンド(GFL)/GDNFファミリー結合受容体アルファ(GFRα)対と接触させることによって、活性化することができる。GDNF/GFRα1、ARTN/GFRα3およびNRTN/GFRα2の1つまたは全てを用いた活性化を、
図10cに示す;これらの対の他の組み合わせ、およびPSPN/GFRα4単独または他のGFL/GFRα対と組み合わせたものもまた、使用することができる。
【0035】
本明細書にさらに提供されるのは、ILC3に関連する疾患を処置する際に使用するためのRETのアゴニスト、およびILC3に関連する疾患を処置する際に使用するための活性化ILC3(および任意にRETのアゴニスト)を含む組成物である。
本明細書で使用する場合、RET(トランスフェクション中の再編成)とは、細胞外シグナル伝達分子のグリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)ファミリーのメンバーに対する受容体チロシンキナーゼであり、Ret、PTC、RET51、RET9、c-Ret、CDHF12、CDHR16、HSCR1、MEN2A、MEN2B、MTC1、RET-ELE1およびret癌原遺伝子としても知られている。アミノ酸配列は、例えばUniProtKB P07949に見出すことができ;これはP07949-1(アイソフォーム1)およびP07949-2(アイソフォーム2)の2つのアイソフォームを有する。ヌクレオチド配列は、例えばX15262(mRNA/cDNA配列)に見出すことができる。
【0036】
本明細書の他の箇所に記載されているように、RETのアゴニストは以下を含む:(1)可溶性GDNFファミリー結合受容体アルファ(GFRα)およびGFRαリガンド(GFL)またはそれらの類似体もしくは模倣体の組合わせ;または(2)RETに特異的に結合してRETチロシンキナーゼ活性を増加させる抗体、またはその抗原結合断片。
ILC3とRETのアゴニストとの接触は、in vitroで行うことができ、またはin vivoで行うことができる。ILC3とRETのアゴニストとの接触がin vivoで行われる方法のいくつかの態様において、RETのアゴニストは、ヒトなどの対象に投与される。これらの方法のいくつかにおいて、対象は、それ以外ではRETのアゴニストによる処置を必要としない。
開示される方法において、対象はヒトであることができる。これらの方法のいくつかにおいて、対象は、それ以外ではRETのアゴニストおよび/またはILC3による処置を必要としない。
【0037】
開示された方法によって処置可能な疾患には、感染、炎症、結腸直腸がんを含む新形成、および消化管生理変容が含まれる。
RETのアゴニストおよび/または活性化ILC3は、任意の適切な投与経路または送達方法によって投与することができる。適切な投与経路には、静脈内、経口、経鼻、直腸内または皮膚吸収が含まれる。
RETのアゴニストおよび/または活性化ILC3は、任意の適切な間隔で、例えば毎日、1日2回、1日3回、1日4回、隔日、毎週、2週間ごと、4週間ごと、連続的に(例えば注入、パッチ、ポンプなどによって)等々で、投与することができる。
【0038】
ILC3の活性を低下させる
本明細書に開示されるさらなる方法は、グループ3自然リンパ球系細胞(ILC3)によるインターロイキン-22(IL-22)の産生を減少させる方法であって、ILC3を、ILC3によるIL-22の産生を減少させるのに有効な量でRETのアンタゴニストと接触させることによる、前記方法を含む。
本明細書に開示される方法はまた、グループ3自然リンパ球系細胞(ILC3)に関連する疾患を処置する方法であって、かかる処置を必要とする対象に、疾患を処置するのに有効な量のRETのアンタゴニストを投与することによる、前記方法を含む。
本明細書にさらに提供されるのは、ILC3に関連する疾患を処置する際に使用するための、RETのアンタゴニストである。
本明細書の他の箇所に記載されるように、RETのアンタゴニストは、RETの発現、転写または翻訳を減少させる阻害性核酸分子、例えばsRNA、shRNA、またはアンチセンス核酸分子など;RETに特異的に結合し阻害する抗体またはその抗原結合性断片、またはRETの小分子アンタゴニスト、などを含む。
【0039】
ILC3とRETのアンタゴニストの接触は、in vitroで行うことができ、またはin vivoで行うことができる。ILC3とRETのアンタゴニストとの接触がin vivoで行われる方法のいくつかの態様において、RETのアンタゴニストは、ヒトなどの対象に投与される。これらの方法のいくつかにおいて、対象は、それ以外ではRETのアンタゴニストによる処置を必要としない。
開示される方法において、対象はヒトであることができる。これらの方法のいくつかにおいて、対象は、それ以外ではRETのアンタゴニストによる処置を必要としない。
RETのアンタゴニストを投与することにより疾患を処置するための本明細書に開示される方法において、疾患は上皮性腸がんであることができる。
RETのアンタゴニストは、任意の適切な投与経路または送達方法によって投与することができる。適切な投与経路には、静脈内、経口、経鼻、直腸内または皮膚吸収が含まれる。
RETのアンタゴニストは、任意の適切な間隔で、例えば毎日、1日2回、1日3回、1日4回、隔日、毎週、2週間ごと、4週間ごと、連続的に(例えば注入、パッチ、ポンプにより)等々で、投与することができる。
【0040】
トランスフェクション中の再編成(RET)のアゴニスト
RETのアゴニストは、(1)可溶性GDNFファミリー結合受容体アルファ(GFRα)およびGFRαリガンド(GFL)またはそれらの類似体もしくは模倣体の組合わせ;または(2)RETに特異的に結合してRETチロシンキナーゼ活性を増加させる抗体またはその抗原結合断片、を含む。RETのアゴニストは、RETのチロシンキナーゼ活性に直接影響を与え得るか、またはRET二量体化を増加または誘導し得、結果としてRETチロシンキナーゼ活性が増加し得る。
RETアゴニストは、RETに完全に特異的であり得、RETに優先的に(他のチロシンキナーゼと比較して)作用し得るか、またはRETおよび他のチロシンキナーゼの両方に作用し得る。かかるアゴニストは、RETが他のチロシンキナーゼよりも少なくアゴナイズされるとしても有用であり得るが、本明細書に記載の方法で使用されるアゴニストが、他のチロシンキナーゼよりもRETをよりアゴナイズすることが好ましい。本明細書で使用する場合、RETを優先的に(他のチロシンキナーゼと比較して)アゴナイズするとは、アゴニストがRETを、少なくとも10%、25%、50%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、またはそれ以上、アゴナイズすることを意味する。
【0041】
可溶性GFRαおよびGFRαリガンド(GFL)またはそれらの類似体もしくは模倣体の組合わせは、(1)以下の組合わせ:(a)可溶性GDNFファミリー結合受容体アルファ1(GFRα1)およびグリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)またはそれらの類似体もしくは模倣体;(b)可溶性GFRα2およびニュールツリン(NTRN)またはその類似体もしくは模倣体;(c)可溶性GFRα3およびアルテミン(ARTN)またはその類似体もしくは模倣体;(d)可溶性GFRα4およびパーセフィン(PSPN)またはその類似体もしくは模倣体;(e)可溶性GFRαおよびN(4)-(7-クロロ-2-[(E)-2-(2-クロロ-フェニル)-ビニル]-キノリン-4-イル)-N(1),N(1)-ジエチル-ペンタン-1,4-ジアミン(XIB4035);(f)可溶性GFRαおよびBT化合物;(g)可溶性GFRαおよび、GFRαに特異的に結合して二量化する抗体;または(2)(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)および(g)の2つ以上の組合わせ、を含む
可溶性GFRα分子およびGFRαリガンド(GFL)としては、本明細書に記載のGFRαおよびGFL、例えばGFRα1、GFRα2、GFRα3およびGFRα4;およびそれぞれのリガンドGDNF、NTRN、ATRN、およびPSPNが含まれる。GFRαおよびGFLの類似体、模倣体、誘導体およびコンジュゲートとしては、天然GFRαおよびGFL配列と比較してアミノ酸配列に変化を有するが、RETを活性化する機能は保持する、GFRαおよびGFL類似体が含まれる。
【0042】
GFRα1はまた、GDNF受容体、GFRA1、GDNFR、GDNFRA、GFR-ALPHA-1、RET1L、RETL1、TRNR1、およびGDNFファミリー受容体アルファ1としても知られている。アミノ酸配列は、例えば、UniProtKB P56159に見出すことができ;これは2つのアイソフォーム、P56159-1(アイソフォーム1)およびP56159-2(アイソフォーム2)を有する。ヌクレオチド配列は、例えばAF042080.1(mRNA/cDNA配列)に見出すことができる。
GFRα2はまた、ニュールツリン受容体、GFRA2、GDNFRB、NRTNR-ALPHA、NTNRA、RETL2、TRNR2、およびGDNFファミリー受容体アルファ2としても知られている。アミノ酸配列は、例えば、UniProtKB-O00451に見出すことができ;これは3つのアイソフォーム、O00451-1(アイソフォーム1)、O00451-2(アイソフォーム2)およびO00451-3(アイソフォーム3)を有する。ヌクレオチド配列は、例えば、AY326396(mRNA/cDNA配列)に見出すことができる。
GFRα3はまた、アルテミン受容体、GFRA3、GDNFR3、およびGDNFファミリー受容体アルファとしても知られている。アミノ酸配列は、例えば、UniProtKB O60609に見出すことができ;これは2つのアイソフォーム、O60609-1(アイソフォーム1)およびO60609-2(アイソフォーム2)を有する。ヌクレオチド配列は、例えば、AK297693(mRNA/cDNA配列)に見出すことができる。
【0043】
GFRα4はまた、パーセフィン受容体およびGFRA4としても知られている。アミノ酸配列は、例えば、UniProtKB Q9GZZ7に見出すことができ;これは3つのアイソフォーム、Q9GZZ7-1(アイソフォームGFRα4b)、Q9GZZ7-2(アイソフォームGFRα4a)およびQ9GZZ7-3(アイソフォームGFRα4c)を有する。ヌクレオチド配列は、例えば、AF253318に見出すことができる。
グリア細胞由来の神経栄養因子はまた、GDNF、ATF1、ATF2、HFB1-HSCR3、およびグリア細胞由来の神経栄養因子としても知られている。アミノ酸配列は、例えばUniProtKB P39905に見出すことができ;これは3つのアイソフォーム、P39905-1(アイソフォーム1)、P39905-2(アイソフォーム2)およびP39905-3(アイソフォーム3)、P39905-2(アイソフォーム4)およびP39905-3(アイソフォーム5)を有する。ヌクレオチド配列は、例えばCR541923(mRNA/cDNA配列)に見出すことができる。
ニューツリンは、NTRNとしても知られている。アミノ酸配列は、例えば、UniProtKB Q99748に見出すことができる。ヌクレオチド配列は、例えばBC137399(mRNA/cDNA配列)に見出すことができる。
【0044】
アルテミンはまた、ATRN、エノビン、ニューブラスチン、EVNおよびNBNとしても知られている。アミノ酸配列は、例えば、UniProtKB Q5T4W7に見出すことができ;これは3つのアイソフォーム、Q5T4W7-1(アイソフォーム1)、Q5T4W7-2(アイソフォーム2)およびQ5T4W7-3(アイソフォーム3)を有する。ヌクレオチド配列は、例えばAF109401(mRNA/cDNA配列)に見出すことができる。
パーセフィンは、PSPNとしても知られている。アミノ酸配列は、例えば、UniProtKB O60542に見出すことができる。ヌクレオチド配列は、例えば、AF040962(mRNA/cDNA配列)に見出すことができる。
【0045】
GFLの類似体、誘導体およびコンジュゲートの例としては、以下を含む:GDNF受容体アゴニスト機能を保持するGDNFのバリアント、米国特許第9,133,441号に記載;GDNFのバリアント、米国特許第9,243,046号に記載;RETを効率的に活性化するがヘパリン結合部位を欠き、細胞外マトリックス中のHSPGと相互作用しないGFLバリアント(例えばΔN-GDNF)、米国特許第8,034,572号に記載;低減されたヘパリン、硫酸ヘパラン、およびヘパラン硫酸化プロテオグリカン結合能を有するが、RETタンパク質のリン酸化を誘導する能力を保持する、ニュールツリン分子、米国特許第8,445,432号、第9,127,083号および第9,469,679号に記載;GDNF由来ペプチド、米国特許第8,138,148号に記載;ニューブラスチン分子および二量体化タンパク質、米国特許第7,276,580号、第7,598,059号および第7,655,463号に記載;およびGFRα/RETを活性化するキメラGDNFファミリーリガンド、米国特許第6,866,851号に記載。
【0046】
GFLの類似体、誘導体およびコンジュゲートの他の例としては、以下を含む:WO 2012/151476、EP 2440581およびその中で参照される他の特許公報に記載のGDNF類似体、WO 2009/053536 US 2009/0069230、WO2008/069876、WO2007/019860、およびUS2006/0258576に記載の、GDNFのアイソフォーム、前駆体、断片およびスプライス変異体。
RETのさらに別のアゴニストには、米国特許第8,901,129号に記載のGDNFファミリーリガンド(GFL)および模倣物またはRETシグナル伝達経路アクチベーターおよび直接RETアクチベーターが含まれる。
RETの別のアゴニストは、可溶性GFRαおよびN(4)-(7-クロロ-2-[(E)-2-(2-クロロ-フェニル)-ビニル]-キノリン-4-イル)-N(1),N(1)-ジエチル-ペンタン-1,4-ジアミン(XIB4035)である。Tokugawa et al. (Neurochem Int. 2003 Jan;42(1):81-6)に示されるように、XIB4035は、GDNFと同様に、RET自己リン酸化を誘導した。XIB4035の化学構造を以下に示す:
【化1】
【0047】
RETの別のアゴニストは、可溶性GFRαおよびBT化合物である。BT化合物は、WO 2011/070177に記載されている。
RETの別のアゴニストは、可溶性GFRαおよび、GFRαに特異的に結合して二量体化する抗体である。GFRαに特異的に結合してGFRαを二量体化する抗体は、GFRα結合抗体のセットの中でこの活性についてスクリーニングすることにより、得ることができる。
RETのさらなるアゴニストは、RETに特異的に結合して、RETチロシンキナーゼ活性を増加させる抗体、またはかかる抗体の抗原結合断片である。RET結合抗体は当技術分野で知られており、例えば米国特許第6,861,509号に記載されているもの、および様々な市販の抗体である。RETに特異的に結合してRETチロシンキナーゼ活性を増加させる抗体は、RET結合抗体のセットの中でこの活性についてスクリーニングすることにより、得ることができる。
【0048】
RETのアンタゴニスト
RETのアンタゴニストには、ペプチドアンタゴニスト(修飾ペプチドおよびコンジュゲートを含む)、阻害性抗体分子、阻害性核酸分子、および小分子が含まれる。RETアンタゴニストのいくつかは、RETに完全に特異的であり得、RETに優先的に拮抗し得るか(他のチロシンキナーゼと比較して)、またはRETと他のチロシンキナーゼの両方に拮抗し得る(例えば、以下に記載される小分子RETチロシンキナーゼ阻害剤のいくつか)。かかるアンタゴニストは、RETが他のチロシンキナーゼよりも少なく拮抗されるとしても有用であり得るが、本明細書に記載の方法で使用されるアンタゴニストが、他のチロシンキナーゼよりもRETにより多く拮抗することが好ましい。本明細書で使用する場合、RETに優先的に拮抗する(他のチロシンキナーゼと比較して)とは、アンタゴニストがRETに、少なくとも10%、25%、50%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%またはそれ以上、他のチロシンキナーゼよりも多く拮抗することを意味する。
【0049】
RETのアンタゴニストには、(a)RETチロシンキナーゼ活性、(b)GDNFファミリー結合受容体アルファ(GFRα)、または(c)GFRαリガンドに特異的に結合し、これを阻害する抗体、またはその抗原結合断片が含まれる。例としては、ヒトGFRα3に結合する、米国特許第8,968,736号、米国特許第9,522,185号、およびUS 2017/0096488に記載の抗体が挙げられる。RET結合抗体は当技術分野で知られており、例えば米国特許第6,861,509号に記載のもの、および様々な市販の抗体である。(a)RETチロシンキナーゼ活性、(b)GDNFファミリー結合受容体アルファ(GFRα)、または(c)GFRαリガンドに特異的に結合し、これを阻害する抗体は、RET、GFRα、またはGFRαリガンドに結合する抗体のセットの中で、これらの活性の1つについてスクリーニングすることにより、得ることができる。
【0050】
RETのアンタゴニストは、RET、GFRα、またはGFRαリガンドの発現、転写または翻訳を減少させる阻害性核酸分子を含む。適切な阻害性核酸分子には、RET特異的、GFRα特異的、またはGFRαリガンド特異的阻害核酸、例えばRET、GFRαまたはGFRαリガンドに特異的に標的化されたsiRNA、アンチセンス、アプタマーまたはリボザイムが含まれる。
RETのアンタゴニストには、RETチロシンキナーゼ阻害剤が含まれる。例示的なRETチロシンキナーゼ阻害剤としては、AST487、モテサニブ、カボザンチニブ、バンデタニブ、ポナチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、およびアレクチニブが挙げられる。
【0051】
AST487(NVP-AST487;630124-46-8;UNII-W34UO2M4T6としても知られている);IUPAC名:1-[4-[(4-エチルピペラジン-1-イル)メチル]-3-(トリフルオロメチル)フェニル]-3-[4-(6-(メチルアミノ)ピリミジン-4-イル]オキシフェニル]尿素)は、RET、受容体型チロシンタンパク質キナーゼFLT3、キナーゼインサートドメイン受容体(KDR;VEGFR2)、エーベルソンネズミ白血病ウィルス癌遺伝子相同体1(c-ABL)、および幹細胞因子受容体(c-KIT)の、阻害剤であり、これは、RET自己リン酸化および下流エフェクターの活性化を阻害することも示されている(Akeno-Stuart et al., Cancer Res. 2007 Jul 15;67(14):6956-64)。AST487の化学構造を以下に示す:
【化2】
【0052】
モテサニブ(AMG-706としても知られている;IUPAC名:N-(3,3-ジメチル-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-6-イル)-2-[(ピリジン-4-イルメチル)アミノ]ピリジン-3-カルボキサミド)は、RET、VEGFR、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、およびc-KITの、阻害剤である。モテサニブの化学構造を以下に示す:
【化3】
【0053】
カボザンチニブ(CABOMETYX;COMETRIQ;XL-184;BMS-907351としても知られている;IUPAC名:N-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-N'-(4-フルオロフェニル)シクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド)は、RET、肝細胞増殖因子受容体(MET)、AXL受容体チロシンキナーゼ(AXL;チロシンタンパク質キナーゼ受容体UFO)およびVEGFR2を含む血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)の、阻害剤である。カボザンチニブの化学構造を以下に示す:
【化4】
【0054】
バンデタニブ(CAPRELSA;ZACTIMA;ZD-6474としても知られている;IUPAC名:N-(4-ブロモ-2-フルオロフェニル)-6-メトキシ-7-((1-メチルピペリジン-4-イル)メトキシ)キナゾリン-4-アミン)は、RET、VEGFR2を含むVEGFR、および上皮増殖因子受容体(EGFR)の、阻害剤である。バンデタニブの化学構造を以下に示す:
【化5】
【0055】
ポナチニブ(ICLUSIG;AP24534としても知られている;IUPAC名:3-(2-イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-イルエチニル)-4-メチル-N-[4-[(4-メチルピペラジン-1-イル)メチル]-3-(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミド)は、RETおよび線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)の阻害剤である。ポナチニブの化学構造を以下に示す:
【化6】
【0056】
スニチニブ(SUTENT;SU11248としても知られている;IUPAC名:N-(2-ジエチルアミノエチル)-5-[(Z)-(5-フルオロ-2-オキソ-1H-インドール-3-イリデン)メチル]-2,4-ジメチル-1H-ピロールー3-カルボキサミド)は、RET、PGFR、VEGFR、c-KIT、顆粒球コロニー刺激因子受容体(GCSFR)およびFLT3の、阻害剤である。スニチニブの化学構造を以下に示す:
【化7】
【0057】
ソラフェニブ(NEXAVARとしても知られている;IUPAC名:4-[4-[[4-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]カルバモイルアミノ]フェノキシ]-N-メチル-ピリジン-2-カルボキサミド)は、RET、VEGFR、PDGFRおよびRafファミリーキナーゼの、阻害剤である。ソラフェニブの化学構造を以下に示す:
【化8】
【0058】
アレクチニブ(ALECENSAとしても知られている;IUPAC名:9-エチル-6,6-ジメチル-8-[4-(モルホリン-4-イル)ピペリジン-1-イル]-11-オキソ-6,11-ジヒドロ-5H-ベンゾ[b]カルバゾール-3-カルボニトリル)は、RETおよび未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)の阻害剤である。アレクチニブの化学構造を以下に示す:
【化9】
【0059】
他の適切なRETアンタゴニストとしては、以下に記載の分子を含む:米国特許第6,235,769号、米国特許第7,504,509号、米国特許第8,067,434号、米国特許第8,426,437号、米国特許第8,629,135号、米国特許第8,937,071号、8,999,973号、米国特許第9,035,063号、米国特許第9,382,238号、米国特許第9,297,011号、US 2015/0238477、US 2015/0272958、US 2016/0271123、US 20160354377、US 2017/0096425、およびUS 2017/0121312、ならびに世界中の関連特許出願。
【0060】
対象とは、ヒトまたは脊椎哺乳動物を意味するものとし、限定はされないが、イヌ、ネコ、ウマ、ヤギおよび非ヒト霊長類(例えば、サル)を含む。好ましくは、対象はヒトである。いくつかの態様において、対象は、それ以外ではRETアゴニストまたはRETアンタゴニストによる処置を必要としていない対象である。したがって、具体的に同定された態様において、対象は、RETアゴニストまたはRETアンタゴニストが同定された処置の形態となっている障害であると、以前に診断されてはいないものであってよい。
対象は、処置を必要とする対象として最初に同定され得て、例えば、本明細書に開示の方法によって処置可能であり、次いでRETアゴニスト(および/またはILC3)またはRETアンタゴニストで処置される疾患を有するものなどである。当業者は、対象を、本明細書に開示の方法により処置可能な疾患を有するとして同定するための方法を認識している。
【0061】
本明細書で使用する「処置する」、「処置された」または「処置している」という用語は、疾患を改善し(疾患改変)、疾患の症状を緩和し、疾患が悪化するのを防ぎ、または治療が不在の場合と比較して、疾患の進行を遅延させる、疾患の処置を言う。
本明細書で使用される「グループ3自然リンパ球系細胞(ILC3)に関連する疾患」とは、ILC3が疾患または障害の発症、維持または悪化において何らかの役割を果たす疾患または障害である。
本明細書に開示される方法のいくつかにおいて、かかる疾患は、ILC3によるIL-22の産生を増加させることにより効率的に処置することができ、例えば、ILC3を、ILC3によるIL-22の産生を増加させるのに有効な量のRETのアゴニストと接触させることにより;かかる処置を必要とする対象に、疾患を処置するのに有効な量のRETアゴニストを投与することにより;または疾患を処置するのに有効な量のILC3(および任意にRETのアゴニスト)を投与することにより、処置することができる。
【0062】
かかる方法によって処置可能な疾患には、感染、炎症、結腸直腸がんを含む新形成、および消化管生理変容が含まれる。
本明細書に開示される他の方法において、疾患は、ILC3によるIL-22の産生を低減することにより、効率的に処置することができ、例えば、ILC3を、ILC3によるIL-22の産生を低減するのに有効な量のRETのアンタゴニストと接触させることにより;またはかかる処置を必要とする対象に、疾患を処置するのに有効な量のRETアンタゴニストを投与することにより、処置することができる。
【0063】
かかる方法によって処置可能な疾患としては、上皮性腸がんが挙げられる。
本発明の方法の毒性および有効性は、例えば、LD50(集団の50%に致死的な用量)またはTD50(集団の50%に毒性である用量)、およびED50(集団の50%に治療的に有効な用量)を決定するための、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順により決定できる。毒性効果と治療効果との間の用量比は治療指数であり、これは比LD50/ED50またはTD50/ED50として表すことができる。大きい治療指数を示す治療剤が好ましい。毒性副作用を示す治療剤を使用することができるが、その場合には、かかる薬剤を患部組織の部位に標的化する送達システムを使用して、他の細胞または組織への潜在的な損傷を最小限に抑え、その結果副作用を軽減することが好ましい。
【0064】
細胞培養アッセイおよび/または動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用のための治療剤の投与量の範囲を定式化する際に使用することができる。かかる薬剤の投与量は、毒性がほとんどまたは全くないED50を含む、循環濃度の範囲内にあることが好ましい。投与量は、この範囲内で、使用される投与形態および利用される投与経路に依存して変化し得る。本発明の方法で使用される任意の薬剤について、治療有効用量は、初めに細胞培養アッセイから推定することができる。用量を動物モデルで処方して、細胞培養で決定されるIC50(すなわち、症状の半分の阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成することができる。かかる情報は、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。
特定の態様において、医薬組成物は、例えば、少なくとも約0.1%の活性化合物を含み得る。他の態様において、活性化合物は、単位重量の約2%~約75%、または例えば約25%~約60%、およびその中で誘導可能な任意の範囲を含み得る。他のより高いパーセンテージの活性化合物も使用することができる。
【0065】
いくつかの態様において、医薬組成物は滅菌されていてもよく、好ましくは滅菌されている。他の態様において、化合物は単離されてもよい。本明細書で使用する場合、用語「単離された」とは、参照の物質がその天然の環境、例えば細胞から取り出されることを意味する。したがって、単離された生物学的物質は、いくつかまたはすべての細胞成分、すなわち天然物質が天然に存在しているところの細胞の成分(例えば、細胞質または膜成分)を含まないことが可能である。核酸分子の場合、単離された核酸は、PCR産物、単離されたRNA、合成的に(例えば化学的に)生成されたRNA例えばsiRNA、アンチセンス核酸、アプタマーなどを含む。単離された核酸分子は、プラスミド、コスミド、または他のベクターに挿入されてキメラ組換え核酸構築物の一部を形成するか、またはそれをコードする核酸の発現によって産生される、配列を含む。したがって、特定の態様において、組換え核酸は単離された核酸である。単離されたタンパク質は、それが細胞内で会合する他のタンパク質または核酸またはその両方と会合してもよく、または膜結合タンパク質であれば細胞膜と会合してもよく、または合成的に(例えば、化学的に)産生されてもよく、またはそれをコードする核酸の発現によって産生されてもよい。単離された細胞、例えばILC3細胞は、それが生物中に見出される解剖学的部位から除去され得るか、または単離された細胞もしくは細胞集団のin vitroでの増殖によって産生され得る。単離された物質は精製されていてもよいが、必ずしもその必要はない。
【0066】
タンパク質、核酸、または細胞または細胞集団に関して「精製された」という用語は、所望の目的のために医師が精製された物質を使用するのに十分な程度まで、所望の物質を汚染物質から分離することを指す。好ましくは、これは、出発物質または天然物質の精製の少なくとも1桁の大きさの精製が達成され、より好ましくは2または3桁の大きさ、最も好ましくは4または5桁の大きさの精製が達成されることを意味する。特定の態様において、精製されたRETのアゴニストまたはRETのアンタゴニストまたはILC3集団は、全タンパク質または核酸または細胞集団の、場合により重量で少なくとも60%、少なくとも80%、または少なくとも90%である。特定の態様において、精製されたRETのアゴニストまたはRETのアンタゴニストまたはILC3集団は、標準的な関連実験プロトコールによってアッセイされるように、均一に精製される。
いくつかの態様において、精製および/または単離された分子は、合成分子である。
【0067】
本明細書に記載の化合物の対象用量は、典型的には、約0.1μg~10,000mg、より典型的には約1μg/日~8000mg、最も典型的には約10μg~100μgの範囲である。対象の体重に関して言えば、典型的な投薬量の範囲は、投与あたり、約1μg/kg/体重、約5μg/kg/体重、約10μg/kg/体重、約50μg/kg/体重、約100μg/kg/体重、約200μg/kg/体重、約350μg/kg/体重、約500μg/kg/体重、約1mg/kg/体重、約5mg/kg/体重、約10mg/kg/体重、約50mg/kg/体重、約100mg/kg/体重、約200mg/kg/体重、約350mg/kg/体重、約500mg/kg体重から、約1000mg/kg体重またはそれ以上まで、およびその中で導き出せる任意の範囲である。本明細書に列挙した数からの誘導可能な範囲の非限定的な例において、上記の数値に基づき、約1mg/kg/体重~約100mg/kg/体重、約5μg/kg/体重~約500mg/kg/体重などを投与することができる。絶対量は、同時処置、用量の数、および年齢、身体状態、サイズおよび体重を含む個々の患者のパラメータを含む様々な要因に依存する。これらは当業者によく知られた要因であり、日常的な実験のみで対処することができる。一般に、最大用量、すなわち健常な医学的判断による最も高い安全な用量を使用することが好ましい。本発明の分子の複数用量も企図される。
【0068】
本明細書に記載の化合物および/または細胞は、本明細書に記載の疾患の処置のために、単独で他の活性治療薬なしで使用してもよく、または他の治療化合物と組み合わせてもよい。
本明細書に記載の化合物および細胞と組み合わせて使用する場合、副作用を回避するために、いくつかの例では既知の治療薬の投薬量を減らすことができる。いくつかの例において、本明細書に記載の化合物および/または細胞を別の治療薬とともに投与する場合、本明細書に記載の化合物および/もしくは細胞または既知の治療薬のいずれかの治療用量未満、または両者の治療用量未満を、対象の処置に使用することができる。本明細書で使用される「治療用量未満」とは、他の薬剤の不在下で投与された場合に、対象において治療結果を生じるであろう投薬量より少ない投薬量をいう。したがって、既知の治療薬の治療用量未満とは、本明細書に記載の化合物および細胞の投与の不在下では、対象において所望の治療結果を生じないであろうものである。本明細書に記載される疾患の既存の治療薬は医学の分野でよく知られており、参考文献、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences;ならびに医療の専門家が処置の指針として依存している多くの他の医学文献も含まれる。
【0069】
本明細書に記載の化合物および/または細胞を他の治療剤と組み合わせて投与する場合、かかる投与は、同時または逐次的であってよい。他の治療剤が同時に投与される場合、それらは同じかまたは別の製剤中で投与することができるが、同時に投与される。他の治療剤および本明細書に記載の化合物および/または細胞の投与はまた、時間的に分離することもでき、これは、他の治療剤が、本明細書に記載の化合物および細胞の投与の前後の異なる時間に投与されることを意味する。これらの化合物の投与間の時間間隔は数分であってもよく、またはそれより長くてもよい。
【0070】
本発明の活性剤(例えば、本明細書に記載の化合物および細胞)は、疾患を処置するのに有効な量で、対象に投与される。本発明のいくつかの側面によれば、有効量は、処置される疾患に依存して、RETアゴニスト(および/またはILC3)またはRETアンタゴニスト単独、または別の薬剤との組み合わせの量であり、これは、組み合わせまたは同時投与または単独投与されると、疾患に対する治療的応答が生じる。生物学的効果は、疾患または疾患に起因する症状の、改善および/または完全な除去であり得る。別の態様において、生物学的効果は、例えば、疾患の症状の不在によって証明されるように、疾患の完全な排除である。
【0071】
本明細書に記載の疾患の処置における本発明の方法において使用される化合物(すなわち、アゴニスト、アンタゴニスト、またはILC3のいずれか)の有効量は、使用される特定の化合物、化合物の送達様式、それが単独でまたは組み合わせて使用されるかどうかに依存して変化し得る。任意の特定の用途のための有効量はまた、処置される疾患、投与される特定の化合物、対象のサイズ、または疾患もしくは状態の重篤度などの要因に依存して変化し得る。当業者は、過度の実験を必要とすることなく、当技術分野で知られている日常的かつ受け入れられた方法を用いて、本発明の特定の分子の有効量を経験的に決定することができる。本明細書で提供される教示と組み合わせて、様々な活性化合物から選択し、効力、相対的バイオアベイラビリティ、患者の体重、有害な副作用の重篤度および好ましい投与様式などの因子を重みづけすることによって、実質的な毒性を引き起こさず、しかも特定の対象を処置するのに有効な、効果的な治療処置レジメンを計画することができる。
【0072】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容し得る担体中に溶解または分散された、有効量の1つ以上の薬剤を含む。「薬学的または薬理学的に許容し得る」という語句は、動物(例えば、ヒト)に適切に投与された場合に、有害な、アレルギー性のまたは他の不適当な反応を生じない、分子実体および組成物を指す。さらに、動物(例えば、ヒト)投与の場合、調製物は、関連する政府規制機関によって要求される、無菌性、発熱原性、一般的安全性および純度の基準を満たすべきであることが理解される。化合物は、一般にヒトへの投与に適している。この用語は、化合物または組成物が無毒性かつ十分に純粋であり、ヒトに投与する前に、化合物または組成物のさらなる操作を必要としないことが、求められる。
【0073】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容し得る担体」は、任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤(例えば抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、防腐剤、薬物、薬物安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味剤、香味剤、染料、類似の物質およびこれらの組合せであって、当業者に既知のものである(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1990)を参照)。任意の従来の担体が活性成分と不適合である場合を除いて、治療または医薬組成物におけるそれらの使用が意図される。
【0074】
本明細書に記載のように使用される治療用組成物は、それらが固体、液体またはエアロゾル形態で投与されるかどうか、および注入などの投与経路について滅菌である必要があるかどうかに応じて、異なる種類の担体を含むことができる。本明細書に記載の化合物および/または細胞の投与は、静脈内、皮内、動脈内、病巣内、頭蓋内、関節内、鼻腔内、硝子体内、膣内、直腸内、局所、筋肉内、腹腔内、皮下、膀胱内、粘膜、経口、局所、吸入により(例えば、エアロゾル吸入)、注射により、連続注入を含む注入により、局部的灌流により、カテーテルを介して、灌流を介して、クリームで、脂質組成物(例えば、リポソームによる)で、または当業者に知られている他の方法また前記の任意の組合せにより(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciencesを参照)、および処置される疾患に適切であるように、行うことができる。
【0075】
いずれの場合においても、組成物は、1つ以上の成分の酸化を遅らせるために様々な酸化防止剤を含むことができる。さらに、微生物の作用の防止は、パラベン(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールまたはそれらの組み合わせを含むがこれに限定されない様々な抗菌剤および抗真菌剤などの防腐剤によって、もたらすことができる。
本明細書に記載の化合物は、遊離塩基、中性または塩の形態の組成物中に製剤化することができる。薬学的に許容し得る塩には、酸付加塩、例えばタンパク質性組成物の遊離アミノ基で形成されたもの、または塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸またはマンデル酸などの有機酸で形成されたものを含む。遊離カルボキシル基で形成される塩はまた、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは水酸化第二鉄などの無機塩基;またはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジンまたはプロカインなどの有機塩基に由来することができる。
【0076】
本明細書に記載の化合物および/または細胞が液体形態である態様において、担体は、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、脂質(例えば、トリグリセリド、植物油、リポソーム)およびそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、溶媒または分散媒体であることができる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により;例えば液体ポリオールまたは脂質などの担体中での分散による必要な粒子サイズの維持により;例えばヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤の使用により;またはかかる方法の組み合わせにより、維持することができる。多くの場合、等張剤を、例えば糖、塩化ナトリウムまたはそれらの組み合わせを含むことが、好ましいであろう。
【0077】
本明細書に記載の化合物および/または細胞は、様々な方法で、および異なるクラスのレシピエントに投与することができる。いくつかの例において、投与は慢性的である。慢性投与とは、疾患を処置するための薬物の長期投与を指す。慢性的な投与は、必要に応じて行われてもよく、または定期的な間隔で行われてもよい。例えば、本明細書に記載の化合物および/または細胞は、1日2回、1日3回、1日4回、1日おき、毎週、2週間毎、4週間毎、連続的に(例えば、注入、パッチ、ポンプによる)等々で、投与され得る。
本明細書に記載の化合物および/または細胞は、組織に直接投与することができる。直接的な組織投与は、直接注射によって達成することができる。化合物は1回投与してもよく、または複数回投与で投与してもよい。複数回投与する場合、化合物は異なる経路で投与することができる。例えば、最初の(または最初の数回の)投与は、影響を受けた組織に直接行うことができ、後の投与は全身的であってよい。
【0078】
本明細書に記載の化合物および/または細胞は、薬学的に許容し得る濃度の塩、緩衝剤、防腐剤、適合性担体、アジュバントおよび任意に他の治療成分を日常的に含み得る、薬学的に許容し得る溶液で投与される。
本明細書に記載の方法によれば、本明細書に記載の化合物および/または細胞は、医薬組成物で投与することができる。一般に医薬組成物は、本発明の化合物および薬学的に許容し得る担体を含む。本明細書に記載の化合物および/または細胞で有用な薬学的に許容し得る担体は、当業者によく知られている。本明細書で使用する場合、薬学的に許容し得る担体とは、本明細書に記載の化合物および/または細胞の生物学的活性の有効性を妨害しない、非毒性物質を意味する。
【0079】
薬学的に許容し得る担体としては、希釈剤、充填剤、塩、緩衝剤、安定剤、可溶化剤および当分野で知られている他の物質が挙げられる。特にペプチドに対する薬学的に許容し得る担体の例は、米国特許第5,211,657号に記載されている。かかる調製物は通常、塩、緩衝剤、防腐剤、適合性担体、および任意に他の治療剤を含むことができる。医薬に使用される場合、塩は薬学的に許容し得るべきであるが、薬学的に許容し得ない塩は、その薬学的に許容し得る塩を調製するために便宜的に使用され得、本発明の範囲から排除されない。かかる薬理学的および薬学的に許容し得る塩としては、限定はされないが、以下の酸から調製されるものが含まれる:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸など。また、薬学的に許容し得る塩は、ナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩などの、アルカリ金属塩またはアルカリ土類塩として調製することができる。
【0080】
本明細書に記載の化合物および/または細胞は、例えば錠剤、カプセル、散剤、顆粒剤、軟膏、液剤、坐剤、吸入剤および注射剤などの固体、半固体、液体または気体形態の製剤として、および経口、非経口または外科的投与のための通常の方法で、製剤化することができる。本発明はまた、インプラントなどによる局所投与用に製剤化された医薬組成物も包含する。
経口投与に適した組成物は、カプセル、錠剤、ロゼンジなどの個別の単位として提供され得、それぞれが所定量の活性剤を含有する。他の組成物としては、シロップ、エリキシルまたはエマルジョンなどの、水性液体または非水性液体中の懸濁液を含む。
【0081】
経口投与の場合、化合物は、活性化合物を当分野で知られている薬学的に許容し得る担体と組み合わせることによって、容易に製剤化することができる。かかる担体は、本発明の化合物を、処置される対象による経口摂取のための錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして、製剤化することを可能にする。経口使用のための医薬調製物を、固体賦形剤として得ることができ、任意に、得られた混合物を粉砕し、所望により適切な助剤を加えた後に、顆粒混合物を加工して、錠剤または糖衣錠コアを得る。適切な賦形剤は、特に、糖などの充填剤、例えばラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトール;セルロース調製物、例えばトウモロコシデンプン、コムギデンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)である。所望により崩壊剤を添加してもよく、例えば架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムなどである。任意に、経口製剤はまた、生理食塩水または内部酸性条件を中和するための緩衝液中に製剤化してもよく、またはいかなる担体なしで投与してもよい。
【0082】
糖衣錠コアには適切なコーティングが施される。この目的のために、濃縮糖溶液を使用することができ、これは任意に、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒混合物を含み得る。識別のために、または活性化合物用量の異なる組合わせを特徴付けるために、染料または顔料を錠剤または糖衣錠コーティングに添加してもよい。
経口的に使用することができる医薬製剤は、ゼラチン製のプッシュフィットカプセル、ならびにゼラチンおよびグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤でできた軟質密封カプセルを含む。プッシュフィットカプセルは、活性成分を、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、および任意に安定剤と混合して含むことができる。軟質カプセルにおいて、活性化合物は、脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解または懸濁されてもよい。さらに、安定剤を添加してもよい。経口投与用に製剤化されたマイクロスフェアを使用することもできる。かかるマイクロスフェアは、当技術分野において十分に定義されている。経口投与のための全ての製剤は、かかる投与に適した投薬量でなければならない。
【0083】
口腔投与のために、組成物は、従来の方法で製剤化された錠剤またはロゼンジの形態をとり得る。
吸入による投与のために、本明細書に記載の化合物および/または細胞は、適切な推進剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の適切なガスの使用による、加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示の形態で、便利に送達することができる。加圧エアロゾルの場合、投薬量単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。例えば、吸入器または注入器での使用のためのゼラチンなどのカプセルおよびカートリッジは、化合物およびラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末基剤との粉末混合物を含有するように、製剤化することができる。エアロゾル送達システムを調製するための技術は、当業者に知られている。一般に、かかるシステムは、活性剤の生物学的特性を著しく損なわない成分を利用すべきである(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences参照)。当業者は、過度の実験に頼ることなく、エアロゾルを製造するための様々なパラメータおよび条件を、容易に決定することができる。
【0084】
化合物は、それらを全身に送達することが望ましい場合、例えば、ボーラス注射または連続注入などの、注入による非経口投与のために製剤化することができる。注射用製剤は、単位剤形、例えば、アンプルまたは複数用量容器中に、防腐剤を加えて提供することができる。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンなどの形態をとり、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤などの処方剤を含み得る。
【0085】
非経口投与のための製剤には、滅菌の水性または非水性溶液、懸濁液およびエマルジョンが含まれる。非水性溶媒の例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体には、水、アルコール/水溶液、エマルジョンまたは懸濁液(生理食塩水および緩衝媒体を含む)が含まれる。非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンガーまたは固定油が含まれる。静脈内ビヒクルには、流体および栄養補充剤、電解質補充剤(リンガーデキストロースに基づくものなど)などが含まれる。防腐剤および他の添加剤、例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなども存在してよい。より低い用量は、静脈内投与などの他の投与形態から生じる。対象における応答が最初の用量で不十分である場合、より高い用量(または異なるより局所的な投与経路による、効果的により高い用量)を、患者の耐容性が許す範囲で使用してもよい。1日に複数回の投与は、化合物の適切な全身レベルを達成するため企図される。
【0086】
さらに他の態様において、本明細書に記載の化合物および/または細胞用のビヒクルは、哺乳動物レシピエントへの移植に適した生体適合性のマイクロ粒子またはインプラントである。例示的な生体内分解性インプラントは、当技術分野において知られている。インプラントは、マイクロスフェア(薬剤は固体ポリマーマトリックス全体に分散されている)またはマイクロカプセル(薬剤はポリマーシェルのコアに貯蔵されている)などのマイクロ粒子の形態のポリマーマトリックスであってもよい。薬剤を含有するためのポリマーマトリックスの他の形態には、フィルム、コーティング、ゲル、インプラント、およびステントが含まれる。ポリマーマトリックスデバイスのサイズおよび組成は、マトリックスデバイスが移植される組織において好ましい放出動態をもたらすように選択される。ポリマーマトリックスデバイスのサイズはさらに、使用される送達方法、典型的には組織への注射、または鼻および/または肺領域へのエアロゾルによる懸濁液の投与に従って選択される。ポリマーマトリクス組成物は、良好な分解速度を有し、また生体接着性の材料で形成されるように選択することができて、デバイスが血管、肺、または他の表面に投与された場合の移動の有効性をさらに高める。マトリックス組成物はまた、分解せず、むしろ長期間にわたって拡散により放出するよう選択することもできる。
【0087】
本明細書に記載の化合物および/または細胞を対象に送達するために、非生分解性および生分解性の両方のポリマーマトリックスを使用することができる。生分解性マトリックスが好ましい。かかるポリマーは、天然または合成ポリマーであってもよい。ポリマーは、放出が所望される期間に基づいて、一般的には数時間から1年またはそれ以上のオーダーで選択される。典型的には、数時間から3~12ヶ月の範囲の放出が最も望ましい。ポリマーは任意に、水中で重量の約90%まで吸収することができるヒドロゲルの形態であり、これはさらに、任意に多価イオンまたは他のポリマーと架橋されている。
【0088】
一般に、本明細書に記載の化合物および/または細胞は、拡散による、またはより好ましくはポリマーマトリックスの分解による、生侵食性インプラントを用いて送達され得る。生分解性送達システムを形成するために使用できる例示の合成ポリマーとしては、以下を含む:ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルハライド、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびそのコポリマー、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、アクリルエステルおよびメタクリルエステルのポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、カルボキシエチルセルロース、セルローストリアセテート、セルロース硫酸ナトリウム塩、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリビニルアセテート、ポリビニルクロリド、ポリスチレンおよびポリビニルピロリドン。
【0089】
非生分解性ポリマーの例には、エチレンビニルアセテート、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアミド、それらのコポリマーおよび混合物が含まれる。
他の送達システムには、時間放出、遅延放出または持続放出送達システムが含まれ得る。かかるシステムは、化合物の反復投与を避けることができ、対象および医師の利便性を高める。多くの種類の放出送達システムが利用可能であり、当業者に知られている。それらには、ポリマーベースシステム、例えばポリ(ラクチド-グリコリド)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸、およびポリ無水物などが含まれる。かかる送達システムはまた、コレステロールなどのステロール、コレステロールエステルおよび脂肪酸またはモノ-、ジ-およびトリ-グリセリドなどの中性脂肪を含む脂質などの、非ポリマーシステム;ヒドロゲル放出システム;シラスティックシステム;ペプチドベースのシステム;ワックスコーティング;従来の結合剤および賦形剤を用いた圧縮錠剤;部分融合インプラント;等が挙げられる。さらに、ポンプベースのハードウェア送達システムを使用することができ、そのうちのいくつかは移植のために適合される。
【0090】
長期持続放出インプラントの使用は、慢性疾患の処置に特に適切であり得る。本明細書で使用される長期放出とは、インプラントが、治療レベルの活性成分を少なくとも30日間、好ましくは少なくとも60日間、送達するように構築され配置されることを意味する。長期持続放出インプラントは当業者に知られており、上記のシステムのいくつかを含む。
したがって、本明細書に記載される化合物および/または細胞は、いくつかの態様において、治療または研究用途におけるそれらの使用を容易にするために、製薬または研究キットに組み立てられてもよい。キットは、本発明の構成要素を収容する1つ以上の容器および使用説明書を含んでよい。具体的には、かかるキットは、本明細書に記載される1つ以上の化合物および/または細胞を、意図された治療用途およびこれらの薬剤の適切な投与について記載する説明書とともに含むことができる。特定の態様において、キット内の本明細書に記載の化合物および/または細胞は、特定の用途および薬剤の投与方法に適した医薬製剤および投薬量であることができる。
【0091】
キットは様々な形態をとることができ、例えば、ブリスターパウチ、シュリンク包装パウチ、真空密閉可能パウチ、密閉可能な熱成形トレイ、または類似のパウチまたはトレイ形態などであり、パウチ内にばらばらにパックされた付属品、1つ以上のチューブ、容器、ボックスまたはバッグを伴う。付属品を追加した後にキットを殺菌してもよく、容器内の個々の付属品をそれ以外で包装しないでよいようにする。キットは任意の適切な滅菌技術を使用して滅菌することができ、例えば、放射線滅菌、加熱滅菌、または当技術分野で知られている他の滅菌方法などである。キットはまた、特定の用途に応じて他の構成要素を、例えば、容器、細胞培地、塩、緩衝液、試薬、シリンジ、針、ガーゼなどの布地を消毒剤の適用または除去用に、使い捨て手袋、投与前の薬剤のサポートなどを含んでもよい。
【0092】
本発明はまた、完成し包装およびラベル付けされた医薬品を包含する。この製造物品は、適切な単位剤形を、適当な容器または入れ物、例えばガラスバイアルまたは密閉された他の容器中に含む。非経口投与に適した剤形の場合、活性成分は滅菌されており、粒子状物質非含有溶液として投与するのに適している。すなわち、本発明は非経口溶液および凍結乾燥粉末の両方を包含し、それぞれは滅菌されており、後者は注射前に再構成するのに適している。代替的に、単位剤形は、経口、経皮、局所または粘膜送達に適した固体であってもよい。
以下の実施例は、本発明の実施の具体例を説明するために提供され、本発明の範囲を限定することを意図しない。当業者には明らかであるように、本発明は、様々な組成物および方法において用途が見出されるであろう。
【実施例】
【0093】
材料および方法
マウス:C57BL/6JマウスはCharles Riverから購入した。RetGFP
13、Rag1-/-γc-/-
31,32、RetMEN2B
14、Rosa26YFP
33、Rosa26RFP
34、Retfl/fl
16、Rorgt-Cre 15、Il1b-/- 35およびMyd88-/-
36は、完全なC57BL/6Jバックグラウンドであった。Myd88f1/fl
27と交配させたGfap-Cre26は、F8-F9からC57Bl/6Jバックグラウンドであった。すべての系統をIMM Lisboa動物施設で交配、維持した。マウスは、共飼育の同腹子対照と系統的に比較した。雄と雌の両方をこの研究では使用した。他に明記されていない限り、ランダム化およびブラインドは使用しなかった。すべての動物実験は、国家および制度上の倫理委員会、それぞれDirecao Geral de VeterinariaおよびiMM Lisboa ethical committeeによって承認された。無菌マウスは、動物保護のための施設ガイドラインに従い、ポルトガルのGulbenkian de CienciaおよびフランスのInstitut Pasteurに収容された。パワー分析を行って、実験マウスの数を推定した。
【0094】
胎児肝臓キメラの生成:再構成実験のために、E14.5 RetWT/GFPまたはRetGFP/GFPマウスから5×106個の胎児肝細胞を単離し、非致死的に照射した(200rad)無リンパ球Rag1-/-γc-/-宿主に静脈内注射した。マウスは、移植の8週間後に分析した。
【0095】
デキストラン硫酸ナトリウム誘発性大腸炎:デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)(分子量36,000~50,000Da;MP Biomedicals)を、飲料水に3%(w/v)で5日間加え、続いて2日間通常の水を加えた。マウスを7日目に分析した。体重、血液の存在および糞便の粘稠度を毎日評価した。
【0096】
Citrobacter rodentium感染:Citrobacter rodentium ICC180(DBS100株由来)37による感染は、109コロニー形成単位の胃管接種によって行った37,38。ルシフェラーゼシグナルの獲得および定量は、IVISシステム(Caliper Life Sciences)で行った。感染の間、体重減少、下痢および血便を毎日モニターした。
【0097】
抗生物質処置:妊娠した雌または新生マウスを、3%スクロースを含む飲料水中のストレプトマイシン5g/L、アンピシリン1g/Lおよびコリスチン1g/L(Sigma-Aldrich)で処置した。対照マウスには、前の記載のように、飲料水中3%のスクロースを与えた22。
【0098】
顕微鏡検査:Ret
GFPおよびRet
GFPキメラからの腸を、GFPフィルターを用いたNeoLumar S 0.8x対物レンズを備えたZeiss Lumar V12蛍光ステレオ顕微鏡で画像化した。全マウント分析は、前に記載のように実施した
2,9。簡潔に述べると、成体の腸を冷PBS(Gibco)で洗い流し、長手方向に開放した。粘液および上皮を除去し、腸を4%PFA(Sigma-Aldrich)に室温で10分間固定し、ブロッキング/透過化緩衝液(2%BSA、2%ヤギ血清、0.6%Triton X-100を含有するPBS)中でインキュベートした。小腸の3次元構造を視覚化するために、試料をベンジルアルコール-安息香酸ベンジル(Sigma-Aldrich)を用いて清浄にした後、メタノール中で脱水した
2,9。厚い消化管切片の分析のために、腸を4%PFAで4℃で一晩固定し、次いで4%低融点温度アガロース(Invitrogen)に入れた。100μmの切片を、Leica VT1200/VT1200 Sビブラトームで取得し、Mowiol(Calbiochem)に包埋した
2。スライドまたは全マウント試料を、それぞれ4℃で一晩または1~2日間、次の抗体を用いてインキュベートした:ラットモノクローナル抗B220(RA3-6B2)(eBioscience)、マウスモノクローナル抗RORγt(Q31-378)(BD Pharmigen)、マウスモノクローナル抗GFAP(GA-5)(Sigma-Aldrich)、マウスモノクローナル抗GFAP Cy3(GA-5)(Abcam)、抗GDNF抗体(Abcam)、DAPI(4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール、二塩酸塩)(Invitrogen)。A647ヤギ抗ラット、A568ヤギ抗ラット、A647ヤギ抗マウス、A488ウサギ抗GFPおよびA488ヤギ抗ウサギ二次抗体はInvitrogenから購入した。ニューロスフェアおよび培養グリア細胞は、PFA4%中で室温で10分間固定し、PBS-Triton 0.1%で30秒間透過性にした。PBSで数回洗浄した後、細胞を抗体とともに室温で3時間インキュベートし、次いでMowiolにマウントした
39。試料は、Zeiss LSM710共焦点顕微鏡で、EC Plan-Neofluar 10x/0.30 M27、Plan Apochromat 20x/0.8 M27およびEC Plan-Neofluar 40x/1.30対物レンズを用いて取得した。画像の3次元再構成をImarisソフトウェアを使用して達成し、スナップショット画像を3次元画像から得た。共焦点画像の分析のために、細胞を、MATLAB(Mathworks、Natick、MA)で記述された社内ソフトウェアを用いて計数した。簡潔に述べると、単一細胞ILC3核は、RORγtを介して閾値処理および粒子分析により同定した。最小ピクセル数(通常20)が所与の閾値を上回った場合に染色が陽性とみなされるGFPチャネルにおける分析のために、各核から関心領域(ROI)(
図5i;下のパネル)を定義した。このソフトウェアは、複数の画像のバッチ処理を可能にし、細胞計数結果および同時発現分析のユーザ検証用に、個々のレポート画像を生成する。(https://imm.medicina.ulisboa.pt/en/servicos-e-recursos/technical-facilities/bioimaging)。
【0099】
組織病理分析:結腸試料を、10%中性緩衝ホルマリンで固定した。結腸は、複数の断面または「スイスロール」技術40で調製され、パラフィン包埋のためにルーチン処理して、3-4μm切片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。腸の病変は、実験群について盲検されている病理学者により、以前に公表された基準41-43に従ってスコアリングされた。簡潔に述べると、病変は、以下の基準で個々にスコアリングされた(重症度が0~4);1-粘膜喪失;2-粘膜上皮肥厚、3-炎症の度合い、4-いずれかの様式で影響を受けた切片の程度、および5-前に記載のように、最も重篤な様式で影響を受けた切片の程度43。最終スコアは、個々の病変および程度スコアを合計することによって得た。陰窩(crypt)の内径は、少なくとも5つの視野(10倍の倍率)で測定され、陰窩構造における最も重大な変化が見られるホットスポットに対応していた。測定は、近位から遠位結腸まで、試料/マウス当たり平均で35の陰窩で行った。腸管の絨毛の高さを測定した。測定は、NDPスキャンソフトウェアを実行するHamamatsu Nanozoomer SQデジタルスライドスキャナを用いてスキャンしたスライドで行った。
【0100】
腸グリア細胞の単離:腸グリア細胞の単離は、前に記載のプロトコール44,45から適合した。簡潔に述べると、筋層を粘膜下層から、外科用鉗子を用いて解剖顕微鏡(SteREO Lumar.V12、Zeiss)下で分離した。粘膜固有層を下にある粘膜下組織から、1.5mmのカバースリップ(Thermo Scientific)を用いて機械的に削り取った。単離した組織を回収し、1%hepes、ピルビン酸ナトリウム、グルタミン、ストレプトマイシンおよびペニシリンおよび0.1%β-メルカプトエタノール(Gibco)を補充したRPMI中の、Liberase TM(7,5μg/mL;Roche)およびDNase I(0.1mg/mL;Roche)で、37℃で約40分間消化した。単一細胞懸濁液を100μm細胞ストレーナー(BD Biosciences)に通して、凝集塊および破片を除去した。
【0101】
フローサイトメトリーおよび細胞選別:粘膜固有層細胞を、前に記載のように単離した46。簡潔に述べると、腸を、10%FBS、1%hepes、ピルビン酸ナトリウム、グルタミン、ストレプトマイシンおよびペニシリンおよび0.1%β-メルカプトエタノール(Gibco)を補充したRPMI中の、コラゲナーゼD(0.5mg/mL;Roche)およびDNaseI(0.1mg/mL;Roche)で、37℃で約30分間、穏やかに攪拌しながら消化した。サイトカイン分析のために、細胞懸濁液をPMA/イオノマイシン(Sigma-Aldrich)およびBrefeldin A(eBioscience)中で37℃で4時間インキュベートした。細胞内染色を、IC固定化/浸透化キット(eBioscience)を用いて行った。細胞を、PBS、1%FBS、1%hepesおよび0.6%EDTA(Gibco)を用いて染色した。フローサイトメトリー分析および細胞選別は、FORTESSAおよびFACSAriaフローサイトメーター(BD Biosciences)を用いて行った。データ分析は、FlowJoソフトウェア(Tristar)を用いて行った。選別集団は>95%純粋であった。細胞懸濁液を、以下を用いて染色した:抗CD45(30-F11)、抗TER119(TER-119)、TCRβ(H57-597)、抗CD3ε(eBio500A2)、抗CD19(eBio1D3)、抗NK1.1(PK136)、抗CD11c(N418)、抗Gr1(RB6-8C5)、抗CD11b(Mi/70)、抗CCR6(29-2L17)、抗CD127(IL-7Rα;A7R34)、抗Thy1.2(53-2.1)、抗CD49b(DX5)、抗TCRδ(GL3)、抗NKp46(29A1.4)、抗IL-17(eBio17B7)、抗IL-22(1H8PWSR)、ラットIgG1アイソタイプ対照(eBRG1)抗体、7AAD生存力色素、抗マウスCD16/CD32(Fcブロック)、抗RORγt(AFKJS-9);ラットIgG2aκアイソタイプ対照(eBR2a)およびストレプトアビジン蛍光色素コンジュゲート(すべてeBioscience製);抗CD4(GK1.5)、抗CD31(390)、抗CD8α(53-6.7)、抗CD24(M1/69)、抗Epcam(G8.8)抗体はBiolegendから購入した。抗RET(IC718A)抗体はR&D Systemsから購入した。LIVE/DEAD Fixable Atua Dead Cell Stain KitはInvitrogenから購入した。細胞集団を以下のように定義した:ILC3:CD45+Lin-Thy1.2hiIL7Rα+RORγt+;ILC3サブセットについては、さらなるマーカーを使用した:LTi:CCR6+Nkp46-;ILC3 NCR-:CCR6-Nkp46-;ILC3 NCR+:CCR6-Nkp46+;系統は、CD3ε、CD8α、TCRβ、TCRγδ、CD19、Gr1、CD11cおよびTER119によって構成された;グリア細胞:CD45-CD31-TER119-CD49b+ 47;T細胞:CD45+CD3ε+;γδT細胞:CD45+CD3ε+γδTCR+;B細胞:CD45+CD19+B220+;マクロファージ:CD45+CD11b+F4/80+;樹状細胞:CD45+CD19-CD3ε-MHCII+CD11c+;腸内ニューロン:CD45-RET/GFP+13、上皮細胞:CD45-CD24+Epcam+。
【0102】
定量的RT-PCR:全RNAを、RNeasyマイクロキット(Qiagen)またはTrizol(Invitrogen)を用い、製造者のプロトコールに従って抽出した。RNA濃度は、Nanodrop分光光度計(Nanodrop Technologies)を用いて測定した。定量的リアルタイムRT-PCRは、前に記載のように実施した
2、8、9。HprtおよびGapdhを、ハウスキーピング遺伝子として用いた。TaqManアッセイ(Applied Biosystems)では、RNAをHigh Capacity RNA-to-cDNAキット(Applied Biosystems)を使用して逆転写した後、前増幅PCRをTaqMan PreAmp Master Mix(Applied Biosystems)を用いて行った。TaqMan Gene Expression Master Mix(Applied Biosystems)をリアルタイムPCRに使用した。TaqMan Gene Expression Assays(Applied Biosystems)は、以下の通りであった:
【表1】
リアルタイムPCR分析は、ABI Prism 7900HT Sequence Detection SystemまたはStepOne Real-Time PCR system(Applied Biosystems)を用いて行った。
【0103】
ILC3活性化および細胞シグナル伝達:選別された腸管ILC3細胞を、RPMI中37℃で3時間飢餓状態にして、ILC3の生存力を確実にした。RetflまたはRetΔをex vivoで直接分析した。GFL刺激時のERK、AKT、p38-MAPK(Cell Signaling Technology)およびSTAT3(BD Pharmigen)を試験するために、WT ILC3を、500ng/mL(各GFL)および共受容体(R&D SystemsからのrrGFR-α1、rmGFR-α2、rrGFR-α3およびrrGNDF; PeproTechからのrhNRTNおよびrhARTN)で、10および30分間、活性化させた。「GFL」の使用に言及する場合、我々はGDNF、NRTN、ARTNおよびそれらの特異的共受容体を組み合わせて使用した。阻害実験のために、細胞をGFL刺激の前に37℃で1時間インキュベートし、ERK、AKT、p38/MAPKおよびSTAT3リン酸化を試験するか、またはGFLでの一晩の刺激の間に、IL22発現レベルを決定した。阻害剤はSigma-Aldrichから購入した:p38MAPK/ERK-AKT:LY294002(LY);ERK:PD98059(PD);AKT:AKT阻害剤VIII(VIII);p38 MAPK:SB202190(SB);およびpSTAT3:S3I-201(S3I)。
【0104】
クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイ:成体C57BL/6Jマウスからの腸のILC3をフローサイトメトリーにより単離した。細胞を、1%hepes、ピルビン酸ナトリウム、グルタミン、ストレプトマイシンおよびペニシリンおよび0.1%β-メルカプトエタノール(Gibco)を補充したRPMIで、37℃で3時間飢餓状態にした。細胞をGFL(各500ng/mL)
8で刺激し、溶解し、架橋し、染色体DNA-タンパク質複合体を超音波処理して、100~300塩基対の範囲のDNA断片を生成させた。DNA/タンパク質複合体を、LowCell#ChIPキット(Diagenode)
18を用いて、抗pSTAT3(Cell Signaling Technology)、ウサギ対照IgG(Abcam)またはH3K36me3(07-030;Millipore)に対する3μgのウサギポリクローナル抗体を用いて、免疫沈降させた。免疫沈降物を未架橋にし、定量的PCRにより、Il22上の推定部位に隣接するプライマー対(5'-3')を用いて分析した。ビヒクル(BSA)刺激ILC3を、対照として使用した。Il22プライマー配列は前に記載されており
48-50、簡潔には以下である:
a、F-TGCAATCAATCCCAGTATTTTG(配列番号:1)および
R-CTTGTGCAAGCATAAGTCTCAA(配列番号:2);
b、F-GAAGTTGGTGGGAAAATGAGTCCGTGA(配列番号:3)および
R-GCCATGGCTTTGCCGTAGTAGATTCTG(配列番号:4);
c、F-ACGGGAGATCAAAGGCTGCTCT(配列番号:5)および
R-GCCAACAAGGTGCTTTTGC(配列番号:6);
d、F-CTCACCGTGACGTTTTAGGG(配列番号:7)および
R-GTGAATGATATGACATCAGAC(配列番号:8);
e、F-CGACGAACATGCTCCCCTGATGTTTTT(配列番号:9)および
R-AAACTCATAGATTTCTGCAGGACAGCC(配列番号:10);
f、F-AGCTGCATCTCTTTCTCTCCA(配列番号:11)および
R-TATCCTGAAGGCCAAAATAGGA(配列番号:12);
g、F-ACGACCAGAACATCCAGAAGA(配列番号:13)および
R-GCAGAGAAAGAAATCCCCGC(配列番号:14);
h、F-AGGGGGACTTGCTTTGCCATTT(配列番号:15)および
R-AACACCCCTTCTTTCCTCCTCCAT(配列番号:16);
i、F-CTGCTCCTTCCTGCCTTCTA(配列番号:17)および
R-CTGAGCCAGGTTTCATGTGA(配列番号:18)。プライマー位置は、Il22の転写開始コドンに対して
図3iに示されている。
【0105】
コロニー形成単位および傍細胞透過性:器官を収穫し、計量し、懸濁させた。細菌コロニー形成単位(CFU)を、組織および全器官のグラム当たりで決定した。CFUを、Luria Broth(LB)寒天およびマッコンキー寒天(Sigma-Aldrich)で段階希釈して決定した。コロニーを、37℃で2日間の培養後に計数した。腸管傍細胞透過性を扱うために、一晩絶食した後、マウスあたり16mgのデキストランFitc(Sigma Aldrich)を胃管栄養により投与した。血漿を、デキストランFitc投与の4時間後に、Microplate Reader TECAN Infinity F500を用いて分析した。
【0106】
BrdU投与およびKi-67標識:BrdUをi.p.注射(1.25mg/マウス)で投与した。上皮細胞増殖のフローサイトメトリー分析のために、抗BrdU(StainingKit for flow Cytometry- eBioscience)および抗マウスKi-67抗体(BioLegend)を用いた。
【0107】
門レベルでの便中の細菌の定量的PCR分析:糞便ペレット試料からのDNAをZR Fecal DNA MicroPrep(登録商標)(Zymo Research)で単離した。細菌の定量は、qPCRによって確立された標準曲線から決定した。qPCRは、Power SYBR(登録商標)Green PCR Master Mix(Applied Biosystems)およびStepOne Plus(Applied Biosystems)サーモサイクラーを使用し異なるプライマーセットで行った。試料を16S rDNAに対して標準化し、2-ΔΔCT法に従って報告した。プライマー配列は、以下である:
16S rDNA、F-ACTCCTACGGGAGGCAGCAGT(配列番号19)および
R-ATTACCGCGGCTGCTGGC(配列番号20);Firmicutes、
F-ACTCCTACGGGAGGCAGC(配列番号21)および
R-GCTTCTTAGTCAGGTACCGTCAT(配列番号22);Bacteroidetes、
F-GGTTCTGAGAGGAGGTCCC(配列番号23)および
R-GCTGGCTCCCGTAGGAGT(配列番号24);Protebacteria、
F-GGTTCTGAGAGGAGGTCCC(配列番号25)および
R-GCTGGCTCCCGTAGGAGT(配列番号26)。
【0108】
16S rRNA定量および遺伝子配列決定:糞便を、共飼育するRetflまたはRetΔ同腹仔から単離した。16S rRNA遺伝子の配列決定を、以前に記載のようにして行った51。簡単に述べると、バーコードされたプライマーを使用して、16S rRNA遺伝子のV4領域を増幅し、アンプリコンを、MiSeq装置(Illumina、San Diego、USA)で、150bpの対の端部のケミストリーを用いて、University of Pennsylvania Next Generation Sequencing Coreにて配列決定した。対の端部を組み立て、品質をフィルタリングし、品質スコアが30以上の読み取りを選択した。>10bpのホモポリマーおよび248bpより短いかまたは255bpより長い読取りを、解析から除外した。16S rRNA配列データを、mothur v 1.25.052およびQIIME v 1.853を用いて処理した。キメラ配列をChimeraSlayer54で除去した。操作上の分類単位(OTU)は、CD-HIT55で97%の配列類似性をカットオフとして用いて定義した。2以上の配列を含むOTUのみが保持された;シアノバクテリアに割り当てられたOTUまたはいずれの門にも割り当てられなかったOTUを、分析から除外した。分類は、Ribosomal Database Project(RDP)分類器v2.2256を用いて割り当てられ、複数の配列割り当てはPyNAST(v1.2.2)57で実施され、FastTree58を系統発生の構築に用いた。試料を、アルファおよびベータ-ダイバーシティ分析のために、1試料あたり22,000個の配列に調製した。分類学的相対存在量は、中央値と標準偏差として報告される。Wilcoxon順位和検定を用いてP値を算出した。統計的試験は、R v.3.2.0で行った。どの要因が微生物群集の組成と関連しているかを調べるために、統計的試験を、ノンパラメトリック類似分析(ANOSIM)と加重UniFrac距離メトリクス59を用いて実施した。
【0109】
データアクセス:この研究で生成された配列決定データは、NCBI Sequence Read Archiveに、BioProject PRJNA314493(SRA: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sra/?term=PRJNA314493)として提出されている。
【0110】
腸管オルガノイド:IntestiCult(商標)Organoid Growth MediumおよびGentle Cell Dissociation Reagentは、StemCellから購入した。腸管陰窩をC57BL/6Jマウスから、製造者の説明書に従って単離し、予め解凍した氷冷マトリゲルに1:1の比で、最終濃度5,000~7,000陰窩/mLで加えた。この混合物15μLを、96ウェル丸底プレートのウェルごとに播種した。マトリゲル固化後、100μLの増殖培地(100U/mLペニシリン/ストレプトマイシン)を添加し、3日毎に交換した。オルガノイドは、37℃、5%CO2で増殖させ、製造者の指示に従って継代させた。新しく選別した腸管ILC3を、抗マウスIL-22抗体(R&D Systems)有りまたは無しで24時間播種した後、5~8日の上皮オルガノイドに添加した。
【0111】
IL-22アゴニストのin vivo投与:150μgの抗IL-22抗体(8E11;Genentech, South San Francisco, CAからの寄贈品)またはマウスIgG1アイソタイプ対照(MOPC-21;Bio X Cell)を、RetMEN2Bマウスに2日毎にi.p.投与した。動物を、最初の投与の2週間後に分析した。
【0112】
ニューロスフェア由来グリア細胞:ニューロスフェア由来グリア細胞は、前に記載のようにして得た60。簡潔に述べると、E14.5 C57BL/6JおよびMyd88-/-マウスからの全腸を、1%hepes、ストレプトマイシン/ペニシリンおよび0.1%β-メルカプトエタノール(Gibco)を補充したDMEM/F-12、GlutaMAX中の、コラゲナーゼD(0.5mg/mL;Roche)およびDNaseI(0.1mg/mL;Roche)で、37℃で約30分間、穏やかに攪拌しながら消化した。細胞を、B27(Gibco)、EGF(Gibco)およびFGF2(Gibco)20ng/mLを補充したDMEM/F-12、GlutaMAX(商標)、ストレプトマイシンおよびペニシリンおよび0.1%β-メルカプトエタノール(Gibco)中、37℃のCO2インキュベーター内で1週間培養した。1週間の培養後、細胞を0.05%トリプシン(Gibco)で処理し、PDL(Sigma-Aldrich)被覆プレートに移し、10%FBS、1%hepes、グルタミン、ストレプトマイシンおよびペニシリンおよび0.1%メルカプトエタノール(Gibco)を補充したDMEM中で、コンフルエントになるまで培養した。グリア細胞は、InvivogenからのTLR2(5μg/ml)(Pam3CSK4)、TLR3(100μg/ml)(PolyI:C)、TLR4(50ng/ml)(LPS)、TLR9(50μg/ml)(DsDNA-EC)リガンドおよびR&D SystemsからのIL-1β(10ng/mL)(401ML005)、IL-18(50ng/mL)(B002-5)、IL-33(0.1ng/mL)(3626ML)組換えタンパク質で活性化させた。細胞はまた、WTおよびIl1b欠損マウスからの精製ILC3と共培養した。TLR4活性化時のグリア-ILC3共培養におけるIL-22発現を、GDNF(2μg/mL)(AB-212-NA)、NRTN(2μg/mL)(AF-387sp)およびARTN(0.3μg/mL)(AF-1085-sp)遮断抗体を用いて実施した。細胞を、24時間の共培養後に分析した。
【0113】
統計:結果は、平均±SEMとして示される。統計的分析にはMicrosoft Excelを使用した。分散は、F検定を用いて分析した。スチューデントt検定を同胞集団で行い、ウェルチ補正を用いたスチューデントt検定を、異なる分散を有する試料に適用した。生存曲線の解析はMAntel-Cox試験を用いて行った。結果は、*p≦0.05;**p≦0.01で有意であると考えられた。メタゲノミクス分析の統計的処理は、方法のセクション:16S rRNA遺伝子配列決定および分析に記載されている。
【0114】
実施例1:神経栄養因子受容体RETは、腸内ILC3由来IL-22を駆動する
消化管粘膜固有層の分析により、ILC3が高レベルのRet(
図1a)を発現することが明らかとなり
7,12、これは、タンパク質レベルおよびRet
GFPノックインマウスにより確認された発見である(
図1b~1dおよび
図5a~5d)
13。ILC3サブセットはRet
GFPを発現し、クリプトパッチ(CP)および分離リンパ球(ILF)に凝集し、ILC3における神経調節物質の役割を示唆した(
図1b~1dおよび
図5b~5j)。この仮説を調べるために、胎仔性肝細胞を、Ret競合的(Ret
WT/GFP)または欠損(Ret
GFP/GFP)
13動物から、無リンパ球Rag1
-/-γc
-/-宿主に移植した。Ret欠損キメラは、摂動のないILC3およびCP発生を明らかにした(
図1e)。驚くべきことに、IL-22を発現するILC3は、正常なIL-22産生T細胞にもかかわらず、大幅に減少した(
図1f、1g)。対照的に、先天性IL-17は、Ret消失による影響を受けなかった(
図1fおよび
図6a)。これと一致して、機能獲得型Ret
MEN2Bマウス
14の分析は、IL-22を産生するILC3の選択的増加を明らかにし、一方そのIL-17対応物は影響を受けなかった(
図1hおよび
図6b)。ILC3におけるRETの効果をより具体的に評価するために、Retを、Rorgt-CreをRet
fl/flマウスに交配させることによって、RORγt発現細胞で欠失させた(
図7a、7b)。Rorgt-Cre.Ret
fl/fl(Ret
Δ)マウスの解析により、ILC3由来のIL-22の選択的かつ大幅な減少と、しかし正常なIL-22産生T細胞が明らかにされた(
図2aおよび
図7c、7d)。IL-22は、上皮細胞に作用して反応性および修復遺伝子を誘導する
1。Ret
Δ上皮は、野生型(WT)同腹仔対照と比較して、正常な形態、増殖および傍細胞透過性を示したが、上皮反応性および修復遺伝子の顕著な減少を示した(
図2bおよび
図7e~7h)。したがって、Ret
MEN2B上皮は、これら分子のレベルの増加をIL-22依存的に示した(
図2bおよび
図7i)。これらの結果は、RETシグナルが先天性IL-22を選択的に制御し、腸管上皮反応性を形成することを示す。
【0115】
実施例2:ILC3-内因性RETシグナルは、消化管の防御およびホメオスタシスを調節する
神経栄養因子が腸管防御を調節するかどうかを調べるために、RETシグナルの程度の変化がどのように腸内侵襲を制御するかを試験した。デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)で処置したRet
Δマウスは、体重減少の増加および炎症の増加、IL-22産生ILC3の減少、上皮反応性/修復遺伝子の減少および消化管からの顕著な細菌移行を示したが、Ret
MEN2B突然変異体は、それらのWT同腹仔対照よりも高度に保護されていた(
図2c~2jおよび
図8)。DSSは主に上皮傷害を引き起こすので、ILC3自律的RETシグナルが感染を制御するために必要であるかどうかを試験した。このために、Ret
ΔマウスをRag1
-/-マウスに交配させて、適応性T細胞効果を正式に排除した。Rag1
-/-.Ret
Δマウスに、付着して退行する細菌Citrobacter rodentiumを感染させた。それらの同腹子対照と比較して、Rag1
-/-.Ret
Δマウスは、顕著な消化管炎症、IL-22産生ILC3の減少、C. rodentium感染および移行の増加、上皮反応性遺伝子の減少、体重減少の増加および生存率の減少を示した(
図2k-2nおよび
図9)。まとめると、これらのデータは、ILC3内因性神経栄養因子のキューが、消化管の防御およびホメオスタシスを調節することを示している。
【0116】
実施例3:RETシグナルは、Il22の直接調節によりILC3機能および消化管防御を制御する
IL-22が、RET依存性ILC3活性化と上皮反応性との間の分子リンクであるという正式な定義は、多組織オルガノイド系によって提供された。GFLのILC3/上皮オルガノイドへの添加は、上皮反応性遺伝子を、IL-22およびRET依存的様式で強く誘導した(
図3a、3bおよび
図10a)。RETシグナルが先天性IL-22をどのように制御するかをさらに調べるために、ILCアイデンティティに関連する遺伝子シグネチャーを調べた
1。これらの遺伝子のほとんどが摂動を受けていないが、主なILC転写因子Runx1、Id2、Gata3、Rora、Rorgt、AhrおよびStat3、Il22が、Ret
ΔILC3では有意に低下していた(
図3cおよび
図10b)。これと一致して、in transでの全部または別個のGFL/GFRα対によるILC3の活性化は、他のILC3関連遺伝子の正常な発現にもかかわらず、効率的にIl22を増加させた(
図3dおよび
図10c)。GFLによるRETの活性化は、ニューロンにおけるp38 MAPK/ERK-AKTカスケード活性化を導くが、一方STAT3のリン酸化は、IL22発現を形成する
7,17。Ret
ΔILC3の分析は、低リン酸化ERK1/2、AKT、p38/MAPキナーゼおよびSTAT3を明らかにした(
図3eおよび
図10d)。したがって、ILC3におけるGFL誘発RET活性化は、急速なERK1/2、AKT、p38/MAPキナーゼおよびSTAT3リン酸化をもたらし、Il22移行を増加させた(
図3d、3fおよび
図10e、10f)。これと一致して、GFL活性化に際してのERK、AKTまたはp38/MAPキナーゼの阻害は、STAT3活性化およびIl22発現の障害をもたらした(
図3g、3h)。最後に、GFL誘導性RET活性化時のSTAT3の阻害は、IL22を減少させた(
図3h)。GFLが直接Il22を調節するかどうかを調べるために、クロマチン免疫沈降(ChIP)を行った(
図3i、3j)
18。ILC3のGFLによる刺激は、Il22プロモーター中のpSTAT3の結合の増加およびIl22の3'末端におけるトリメチル-H3K36の増加をもたらし、活性なIl22転写領域を示した(
図3d、3j)
19。したがって、細胞自律的RETシグナルは、STAT3活性化の下流のIl22の直接調節を介して、ILC3機能および消化管防御を制御する。
【0117】
実施例4:粘膜グリア細胞は神経栄養因子を介して先天性IL-22を調整する
炎症への傾向および腸管ホメオスタシスの調節不全は、腸内毒素症(dysbiosis)に関連する
20,21。Ret
Δマウスは、そのWT同腹子と比較して、定量分析、加重UniFrac分析によって実証されるように変化した微生物群、およびSutterella、未分類のClostridialesおよびBacteroidesの顕著に変化したレベルを有する(
図4aおよび
図11)。離散した微生物群は、伝播性の腸炎惹起性ポテンシャルを有し得る
20、21。それにもかかわらず、Ret
Δまたはそれらの対照同腹仔の微生物が定着した無菌マウスは、DSS誘導大腸炎に対する同様の感受性、および同一の先天性IL-22を示した(
図4b~4d)。これと一致して、共飼育したRet
ΔおよびWT同腹仔は、腸管炎症に対して異なる傾向を示した(
図2c、2d)。これらのデータはともに、腸内毒素症自体が、Ret
Δマウスで観察されるように、先天性IL-22および消化管炎症に対する感受性の変化を引き起こすには不十分であることを示している(
図2c~2f)。こうして、GFL産生細胞は、共生および環境シグナルを統合して、先天性IL-22を制御すると仮定された。したがって、Ret
ΔおよびそれらのWT同腹仔対照の抗生物質処置は、同様のILC3由来IL-22をもたらした(
図4e)
22。
【0118】
GDNFファミリーの神経栄養因子は、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)を発現するニューロンサテライトである腸内グリア細胞によって産生されることが示されている
7,23。驚くべきことに、ILC3(Ret
GFP)およびグリア細胞(Gfap-Cre.Rosa26
RFP)の二重レポーターマウスは、グリア細胞の星状突起が、CP内のRORγt
+ ILC3に隣接する(4.35μm±1.42)ことを明らかにした(
図4fおよび
図12a)。これらのデータは、神経栄養因子によって調整されたパラクリングリアILC3クロストークを示唆している。これに一致して、粘膜固有層のグリア細胞は、GFLの主な産生者であった(
図12b)。最近の研究は、グリア細胞がパターン認識受容体、特にToll様受容体(TLR)を発現することを示している
24,25。ニューロスフェア由来グリア細胞の活性化は、それらがTLR2、TLR4、およびアラルミンIL-1βおよびIL-33に特異的に応答することを明らかにし、これはGFL発現を効率的に制御し、強力な先天性IL22をMYD88依存性の様式で誘導した(
図4g~4i、12c~12g)。先天性IL-22に対するMYD88依存性グリア細胞感知の生理学的重要性を正式に実証するために、Gfap-CreをMyd88
fl/flマウスに交配させることにより、Myd88をGFAP発現グリア細胞で欠失させた
26,27。注目すべきことに、Myd88のグリア内因性欠失は、腸管GFLの減少、消化管炎症の増加、ILC3由来IL-22の障害、および体重減少の増加をもたらした(
図4j~4m;
図13a~13d)。これと一致して、Gfap-Cre.Myd88
Δマウスは、C. rodentium感染に対する感受性が高まった(
図13e~13h)。したがって粘膜グリア細胞は、共生産物およびアラルミンのMYD88依存性感知の下流で、神経栄養因子を介して先天性IL-22を調整する。
【0119】
ILC3が環境的キューを統合するメカニズムを定義することは、粘膜ホメオスタシスを理解する上で重要である。この研究は、ILC3とその微小環境との関係を、特に、神経栄養因子によって調整される新規なグリアILC3上皮細胞ユニットの解読により、明らかにしている(
図14)。グリア由来の神経栄養因子は、p38 MAPK/ERK-AKTの下流の先天性IL-22およびSTAT3リン酸化を直接制御するチロシンキナーゼRETを活性化することにより、ILC3に内在する様式で機能する(
図14)。
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本発明の少なくとも1つの態様のいくつかの側面をこのように説明したので、当業者が様々な変更、修正、および改良を容易に思い付くであろうことが理解されるべきである。かかる変更、修正、および改良は、この開示の一部であることが意図され、本発明の精神および範囲内にあることが意図される。したがって、前述の説明および図面は、単なる例である。
【配列表】