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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】蓄電システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/51 20210101AFI20220203BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20220203BHJP
   H01G 11/12 20130101ALI20220203BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20220203BHJP
   H01M 50/505 20210101ALI20220203BHJP
   H01M 50/588 20210101ALI20220203BHJP
   H01M 50/593 20210101ALI20220203BHJP
【FI】
H01M50/51
H01G11/06
H01G11/12
H01M50/209
H01M50/505
H01M50/588
H01M50/593
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018561912
(86)(22)【出願日】2017-12-26
(86)【国際出願番号】 JP2017046580
(87)【国際公開番号】W WO2018131461
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】P 2017002915
(32)【優先日】2017-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】西川 誠人
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-202066(JP,A)
【文献】特開2013-065445(JP,A)
【文献】特開2005-332627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50
H01M 50/20
H01G 11/06
H01G 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルが設置面に対して垂直方向に積層され、当該複数のセルが電気的に直列接続された蓄電モジュールを複数備え、
前記複数の蓄電モジュールは、設置面に対して水平方向に並べて、電気的に直列接続されて設置され、
本蓄電システムは、
隣接するセル間、及び隣接する蓄電モジュール間を電気的に接続する複数の接続部材と、
前記複数の蓄電モジュールが設置されるフレームと、
前記フレームと前記複数の蓄電モジュールの間に水平方向に並べて設置され、前記複数の蓄電モジュールを水平方向に複数のグループに仕切る複数の導電性トレイと、
を備えることを特徴とする蓄電システム。
【請求項2】
前記フレームは金属フレームであり、
本蓄電システムは、
前記金属フレームと、前記複数の導電性トレイの間に挿入される絶縁部材を
さらに備えることを特徴とする請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項3】
1つの導電性トレイに、2つ以上の蓄電モジュールが設置されることを特徴とする請求項1または2に記載の蓄電システム。
【請求項4】
前記複数の接続部材の少なくとも1つは、前記導電性トレイの方向に向かって延び出る突出部を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の蓄電システム。
【請求項5】
隣接する2つの蓄電モジュール間を接続する接続部材は、前記蓄電モジュールの設置面に最も近接しているセルの負極端子または正極端子と、当該蓄電モジュールの隣りの蓄電モジュールの設置面から最も離れたセルの正極端子または負極端子を接続し、
1つの導電性トレイに、2つの蓄電モジュールが設置されることを特徴とする請求項1または2に記載の蓄電システム。
【請求項6】
前記隣接する2つの蓄電モジュール間を接続する接続部材は、前記導電性トレイの方向に向かって延び出る突出部を有することを特徴とする請求項5に記載の蓄電システム。
【請求項7】
前記導電性トレイは、前記フレームより電気抵抗が小さい部材で形成されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の蓄電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の蓄電モジュールを備える蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)が普及してきている。これらの車にはキーデバイスとして二次電池が搭載される。車載用二次電池としては主に、ニッケル水素電池およびリチウムイオン電池が普及している。今後、エネルギー密度が高いリチウムイオン電池の普及が加速すると予想される。
【0003】
車載用のトラクションバッテリシステムは高電圧を出力する必要があるため、複数のセルを直列接続する必要がある。トラクションバッテリシステムは通常、角型電池を側面を下にして水平方向に複数並べ、ケースに収容することにより構成される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
近年、トラクションバッテリシステムの薄型が求められており、車種によっては100mm以下の高さに抑えることが求められている。上述した角型電池を水平方向に並べて構成する設計方法では、高さが120~150mmになり、その要求を満たすことが困難となる。
【0005】
そこで、角型電池を背面を下にして垂直方向に3~7個積み重ねて1つの蓄電モジュールを構成し、複数の蓄電モジュールを水平方向に並べて蓄電システムを構成することが考えられる。このシステム構成では、複数の蓄電モジュールが金属筐体の底板に固定され、垂直方向に隣接するセルの電極間と、水平方向に隣接する蓄電モジュールの電極間がバスバーで接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-192044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記システム構成において蓄電システムが浸水した場合、水平方向の両端の2つの蓄電モジュールにおける、2つの一番下のセルにそれぞれ接続された2つのバスバー間が、液と底板を経由して短絡する可能性がある。両端の蓄電モジュール間は高電圧であり、両端の蓄電モジュール間が液絡した場合、大電流が流れ、スパークが発生する可能性がある。
【0008】
本発明はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、複数のセルが設置面に対して垂直方向に積層された蓄電モジュールを、水平方向に複数並べて構成される蓄電システムにおいて、浸水時の安全性を高める技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の蓄電システムは、複数のセルが設置面に対して垂直方向に積層され、当該複数のセルが電気的に直列接続された蓄電モジュールを複数備える。前記複数の蓄電モジュールは、設置面に対して水平方向に並べて、電気的に直列接続されて設置される。本蓄電システムは、隣接するセル間、及び隣接する蓄電モジュール間を電気的に接続する複数の接続部材と、前記複数の蓄電モジュールが設置されるフレームと、前記フレームと前記複数の蓄電モジュールの間に水平方向に並べて設置され、前記複数の蓄電モジュールを水平方向に複数のグループに仕切る複数の導電性トレイと、を備える。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数のセルが設置面に対して垂直方向に積層された蓄電モジュールを、水平方向に複数並べて構成される蓄電システムにおいて、浸水時の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】比較例に係る蓄電システムの構成を示す模式図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る蓄電システムの構成を示す模式図である。
図3図3(a)、(b)は、図1の蓄電システムと図2の蓄電システムの浸水時の等価回路を示す図である。
図4】本発明の実施の形態2に係る蓄電システムの構成を示す模式図である。
図5】本発明の実施の形態3に係る蓄電システムの構成を示す模式図である。
図6図6(a)-(c)は、本発明の実施の形態4に係る蓄電システムの構成を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(比較例)
図1は、比較例に係る蓄電システム1の構成を示す模式図である。蓄電システム1はHV、PHV、EVに搭載され、走行用モータに給電するための電源装置として使用される。当該走行用モータは、自走可能な高出力なモータ(EV、ストロングハイブリッド)であってもよいし、エンジンによる走行を補助する低出力なモータ(マイルドハイブリッド)であってもよい。
【0014】
蓄電システム1は、直列接続された複数の蓄電モジュールM1-M4を備える。図1では、4つの蓄電モジュールM1-M4を備える。蓄電モジュールM1-M4はそれぞれ、直列接続された複数のセルS1-S5、S6-S10、S11-S15、S16-S20を含む。図1では各蓄電モジュールM1-M4が、直列接続された5つのセルを含む。従って蓄電システム1は、単位セル電圧×20の電圧を入出力することができる。
【0015】
セルには、リチウムイオン電池セル、ニッケル水素電池セル、鉛電池セル、電気二重層キャパシタセル、リチウムイオンキャパシタセル等を用いることができる。以下、本明細書では角型のリチウムイオン電池セル(公称電圧:3.6-3.7V)を使用する例を想定する。
【0016】
第1蓄電モジュールM1は具体的に次のように構成される。角型の5つのセルS1-S5が、最も面積が大きな面を接触面として、設置面に対して垂直方向に積層される。その際、電極が突出している面(以下、電極面という)が揃うように積層されるとともに、正極端子と負極端子の位置が互い違いになるように積層される。積層された5つのセルS1-S5は、垂直方向の両側から2枚のエンドプレートE11、E12で挟み込まれる。積層された5つのセルS1-S5と2枚のエンドプレートE11、E12は、電極面とその反対面以外の、水平方向の両側から2枚のバインドプレートBi11、Bi12で挟み込まれる。
【0017】
2枚のバインドプレートBi11、Bi12はそれぞれ、2枚のエンドプレートE11、E12を覆うように、両端が内側に折り曲げられている。2枚のバインドプレートBi11、Bi12の折り曲げ部分に、2枚のエンドプレートE11、E12の内部に到達する複数の溝孔が設けられる。当該複数の溝孔に、T字型の複数の固定部材F11-F14が嵌め込まれることにより、積層された5つのセルS1-S5と2枚のエンドプレートE11、E12と2枚のバインドプレートBi11、Bi12とが固定される。なお、設置面側は、2枚のバインドプレートBi11、Bi12の折り曲げ部分と、T字型の固定部材F13、F14との間に金属フレーム10が挿入され、金属フレーム10の対応する箇所に溝孔が設けられる。設置面側は、金属フレーム10の外側から複数の溝孔にT字型の固定部材F13、F14が嵌め込まれる。なお、T字型の固定部材の代わりに、ネジで固定してもよい。
【0018】
第2蓄電モジュールM2-第4蓄電モジュールM4の構成も、第1蓄電モジュールM1の構成と同様である。4つの蓄電モジュールM1-M4は電極面を揃えて、設置面に対して水平方向にそれぞれ所定の間隔を空けて、金属フレーム10上に並べて設置される。金属フレーム10は、箱型の金属筐体の底面部分であってもよいし、容器型の金属筐体の底面部分であってもよいし、独立した設置プレートであってもよい。金属フレーム10には蓄電システム1全体の強度確保のため、樹脂ではなく金属が用いられる。
【0019】
第1蓄電モジュールM1の第1セルS1の正極端子に第1バスバーB1の一端が接続され、第1バスバーB1の他端が蓄電システム1全体の正極端子となる。第1セルS1の負極端子と第2セルS2の正極端子が第2バスバーB2で接続され、第2セルS2の負極端子と第3セルS3の正極端子が第3バスバーB3で接続され、・・・、第4セルS4の負極端子と第5セルS5の正極端子が第5バスバーB5で接続される。
【0020】
第1蓄電モジュールM1の第5セルS5の負極端子と第2蓄電モジュールM2の第6セルS6の正極端子が、クランク型の第6バスバーB6で接続される。第6セルS6の負極端子と第7セルS7の正極端子が第7バスバーB7で接続され、・・・、第2蓄電モジュールM2の第10セルS10の負極端子と第3蓄電モジュールM3の第11セルS11の正極端子が、クランク型の第11バスバーB11で接続される。第11セルS11の負極端子と第12セルS12の正極端子が第12バスバーB12で接続され、・・・、第3蓄電モジュールM3の第15セルS15の負極端子と第4蓄電モジュールM4の第16セルS16の正極端子が、クランク型の第16バスバーB16で接続される。第4蓄電モジュールM4の第20セルS20の負極端子に第21バスバーB21の一端が接続され、第21バスバーB21の他端が蓄電システム1全体の負極端子となる。
【0021】
以上のシステム構成において、蓄電システム1が浸水した場合を考える。蓄電システム1の浸水は、蓄電システム1が搭載された車両が、海や湖沼に転落した場合、大きな水たまりに突入して抜け出せなくなった場合、液冷用のクーラントシステムが破損した場合などに発生する。
【0022】
図1では、蓄電システム1に塩水などの液体W1が浸水して、第6バスバーB6、第11バスバーB11、第16バスバーB16、及び第21バスバーB21の一部が浸かった状態を示している。この状態では、第6バスバーB6、第11バスバーB11、第16バスバーB16、及び第21バスバーB21の任意の2点間において、液体W1と金属フレーム10を介した短絡経路が発生する。短絡経路を流れる短絡電流Iは、下記式(1)で定義される。
【0023】
I=E×(S÷(l×ρ)) ・・・式(1)
E:短絡電圧、S:接触面積、l:距離、ρ:電気抵抗率
【0024】
図1において、第6バスバーB6と第21バスバーB21間に短絡電流Iが流れる場合、短絡電圧Eが15個分のセルS6-S20の両端電圧となり、短絡電流Iが大きくなる。短絡電流Iが大きくなるとスパークが発生する可能性があり、近隣に可燃物が存在する場合、発火に至る危険性がある。以下、このような浸水による発火を防止する仕組みを導入した蓄電システム1を説明する。
【0025】
(実施の形態1)
図2は、本発明の実施の形態1に係る蓄電システム1の構成を示す模式図である。以下、図1に示した比較例に係る蓄電システム1と、図2に示す実施の形態1に係る蓄電システム1の相違点を説明する。実施の形態1に係る蓄電システム1は、樹脂プレート20、複数の金属トレイ30(図2では、第1金属トレイ30a、第2金属トレイ30b)をさらに備える。
【0026】
複数の金属トレイ30は、複数の蓄電モジュールM1-M4を水平方向に複数のグループに仕切る導電性トレイであり、絶縁性の樹脂プレート20を挟んで、金属フレーム10上に並べて設置される。図2では、第1金属トレイ30aは第1蓄電モジュールM1と第2蓄電モジュールM2を収容し、第2金属トレイ30bは第3蓄電モジュールM3と第4蓄電モジュールM4を収容する。第1金属トレイ30aの側面と第2金属トレイ30bの側面との間にも樹脂プレート20が挿入され、両者が絶縁される。
【0027】
設置面側のT字型の固定部材F13、14、23、24、33、34、43、44は、金属フレーム10、樹脂プレート20、金属トレイ30a、30b、バインドプレートBi11-Bi42の折り曲げ部分を貫通してエンドプレートE12、22、32、34の内部に到達する各溝孔に嵌め込まれて固定される。
【0028】
図2では、第1金属トレイ30aに液体W1が浸水して、第6バスバーB6、第11バスバーB11の一部が浸かり、第2金属トレイ30bに液体W1が浸水して、第16バスバーB16、第21バスバーB21の一部が浸かった状態を示している。この状態では、第6バスバーB6と第11バスバーB11間に、液体W1と第1金属トレイ30aを介した短絡経路が発生する。この短絡経路を流れる短絡電流Iは、5個分のセルS6-S10の両端電圧で流れる電流となり、上述した15個分のセルS6-S20の両端電圧で流れる短絡電流Iと比較して大幅に小さくすることができる。
【0029】
同様に、第16バスバーB16と第21バスバーB21間に、液体W1と第2金属トレイ30bを介した短絡経路が発生する。この短絡経路を流れる短絡電流Iも、5個分のセルS16-S20の両端電圧で流れる電流となる。
【0030】
図2のシステム構成において、金属トレイ30の電気抵抗率ρが、金属フレーム10の電気抵抗率ρより低くなるように設計されることが好ましい。例えば、金属トレイ30を銅、銅合金、アルミ、またはアルミ合金で構成し、金属フレーム10を鉄または鉄合金で構成する。電流Iは電気抵抗率ρが小さい物質ほど流れやすい性質がある。上記の材料選択をすれば、樹脂プレート20を省略しても、金属フレーム10より金属トレイ30に多くの電流Iが流れるようになり、第6バスバーB6と第21バスバーB21間に流れる短絡電流Iを少なくすることができる。なお、金属フレーム10の表面をメッキ加工、絶縁皮膜加工、または絶縁塗装すれば、第6バスバーB6と第21バスバーB21間に流れる短絡電流Iをより少なく、またはゼロにすることができる。
【0031】
図3(a)、(b)は、図1の蓄電システム1と図2の蓄電システム1の浸水時の等価回路を示す図である。図3(a)は、図1の蓄電システム1の浸水時の、第6バスバーB6を基準とした等価回路を示す図である。第1抵抗R1は、第6バスバーB6と金属フレーム10間の液抵抗、金属フレーム10の抵抗、金属フレーム10と第11バスバーB11間の液抵抗の合成抵抗である。第2抵抗R2は、第6バスバーB6と金属フレーム10間の液抵抗、金属フレーム10の抵抗、金属フレーム10と第16バスバーB16間の液抵抗の合成抵抗である。第3抵抗R3は、第6バスバーB6と金属フレーム10間の液抵抗、金属フレーム10の抵抗、金属フレーム10と第21バスバーB21間の液抵抗の合成抵抗である。第3抵抗R3にかかる電圧Eは、第1抵抗R1にかかる電圧Eの3倍になるため、第6バスバーB6と第21バスバーB21間に最も大きな電流Iが流れる。なお、抵抗は距離lが長くなるほど大きくなるため、第1抵抗R1、第2抵抗R2、第3抵抗R3の関係は、第1抵抗R1<第2抵抗R2<第3抵抗R3となる。
【0032】
図3(b)は、図2の蓄電システム1の浸水時の等価回路を示す図である。第5抵抗R5は、第16バスバーB16と金属フレーム10間の液抵抗、金属フレーム10の抵抗、金属フレーム10と第21バスバーB21間の液抵抗の合成抵抗である。第6バスバーB6と、第16バスバーB16及び第21バスバーB21間は絶縁されているため電流Iが流れず、第6バスバーB6と第11バスバーB11間、及び第16バスバーB16と第21バスバーB21間に電流Iが流れる。
【0033】
以上説明したように実施の形態1では、角型のセルを垂直方向に5つ積み重ねて1つの蓄電モジュールを構成し、蓄電モジュールを水平方向に4つ並べて蓄電システムを構成している。これにより、蓄電システムの高さを60~70mmに抑えることができ、車両内において、高さが狭い空間にも設置することができる。このように実施の形態1によれば、設置の柔軟性が高い蓄電システムを構築できる。
【0034】
また直列接続された複数の蓄電モジュールを、複数の金属トレイを用いて複数のグループに電気的に仕切ることにより、浸水時の安全性を高めることができる。即ち、液絡時の短絡部分の電圧を、少ないセル数(図2の例では5セル)の電圧に抑えることができる。従って、液絡時の放電電流が過大になることを防止できる。
【0035】
図2では、1つの金属トレイに2つの蓄電モジュールを設置する例を示したが、3つ以上の蓄電モジュールを設置してもよい。例えば、10セル分の短絡電圧を許容できる場合、1つの金属トレイに3つの蓄電モジュールを設置してもよい。また1つの蓄電モジュールに積層させるセル数を少なくして、1つの金属トレイに設置される蓄電モジュールの数を増やしてもよい。
【0036】
なお、1つの蓄電モジュールごとに1つの金属トレイを設けることも考えられる。この場合、浸水時に短絡するセル数が1つになる。第1蓄電モジュールM1の場合、浸水時に第5バスバーB5と第6バスバーB6間(第5セルS5の正極端子と負極端子間)が液体W1を介して短絡する。このような低電圧で短絡すると放電電流が小さくなり、蓄電システム1からエネルギーを放出する時間が長くなる。
【0037】
蓄電システム1が浸水した場合、できるだけ早く蓄電システム1内のエネルギーを放出することが安全である。蓄電システム1がエネルギーを蓄えた状態で長時間浸水すると、腐食が始まり、過大な電流が流れる予期せぬ短絡経路が形成されるリスクが高くなる。そこで実施の形態1では浸水時に、過電流とならない範囲で比較的大きな電流で放電することにより、安全性を高めることができる。
【0038】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2に係る蓄電システム1の構成を示す模式図である。実施の形態2に係る蓄電システム1は、図2に示した蓄電システム1の構成において、クランク型のバスバーB6、B11、B16、B21に、第1金属トレイ30a及び第2金属トレイ30bの方向に向かって延び出る突出部B6a、B11a、B16a、B21aを設けている。
【0039】
上記式(1)に示したように短絡電流Iは、短絡経路の距離lを短縮することにより増加する。実施の形態2によれば、第6バスバーB6と第11バスバーB11間の距離、及び第16バスバーB16と第21バスバーB21間の距離を短縮することにより、浸水時の放電電流を、実施の形態1に係る構成と比較して増加させることができる。また蓄電システム1の浸水時に、放電を開始するタイミングを早めることができる。
【0040】
なお、第6バスバーB6と第11バスバーB11の一方のみ、及び第16バスバーB16と第21バスバーB21の一方のみに突出部を設けてもよい。この場合、図4に示した構成より放電電流の増加量は小さくなるが、実施の形態1に係る構成よりは放電電流が増加する。
【0041】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3に係る蓄電システム1の構成を示す模式図である。実施の形態3に係る蓄電システム1は、図1に示した蓄電システム1の構成において、第11バスバーB11と第16バスバーB16に突出部B11a、B16bを設けた構成である。
【0042】
図5に示した構成では、金属トレイ30及び樹脂プレート20が設けられないため、図3(a)に示したように浸水時に、第6バスバーB6は第11バスバーB11、第16バスバーB16及び第21バスバーB21のいずれとも導通する可能性がある。この三者の内、最も距離が短い第11バスバーB11と最も短絡経路が形成されやすい。実施の形態3では、第16バスバーB16に突出部B6aを設けることにより、第6バスバーB6と第11バスバーB11間の距離がさらに縮まり、第11バスバーB11にさらに短絡経路が形成されやすくなる。これにより、第6バスバーB6と第21バスバーB21間に、いきなり大電流が流れるリスクを軽減することができる。第16バスバーB16と第21バスバーB21の関係も、第6バスバーB6と第16バスバーB16の関係と同様である。
【0043】
図5では、第11バスバーB11の突出部B11aの先端が、金属フレーム10と平行に対向するように折り曲げられている。これにより、液体W1を介した第11バスバーB11と金属フレーム10の接触面積Sを増加させることができる。上記式(1)に示したように短絡電流Iは、接触面積Sが増加するほど増加する関係にある。第21バスバーB21の突出部B21aの先端も同様に折り曲げられる。これにより、第6バスバーB6から第11バスバーB11に電流がさらに流れやすくなる。なお上述した図4の突出部B6a、B11a、B16a、B21aの先端を同様に折り曲げてもよい。なお図5では、第11バスバーB11と第21バスバーB21に突出部を設けているが、第6バスバーB6と第16バスバーB16にも突出部を設けてもよい。
【0044】
(実施の形態4)
図6(a)-(c)は、本発明の実施の形態4に係る蓄電システム1の構成を説明するための模式図である。図6(a)は、実施の形態4の比較例に係る蓄電システム1の構成を示す模式図である。蓄電システム1は、直列接続された複数のセルS1-S20を含む。
【0045】
角型の20個のセルS1-S20は、最も面積が大きな面を接触面として、設置面に対して水平方向に重ね合わされる。その際、電極面が、設置面と反対側の面で揃うように重ね合わされるとともに、正極端子と負極端子の位置が互い違いになるように重ね合わされる。重ね合わされた20個のセルS1-S20は、水平方向の両側から2枚のエンドプレートE1、E2で挟み込まれる。重ね合わされた20個のセルS1-S20と2枚のエンドプレートE1、E2の長手方向の4辺のそれぞれに、L字状のバインドバーBi1、Bi2(反対面不図示)が取り付けられ、固定される。
【0046】
2枚のエンドプレートE1、E2は、金属フレーム10の方向に先端が延び出ており、その先端部分には複数の溝孔が設けられる。金属フレーム10の対応する箇所に複数の溝孔が設けられる。T字型の複数の固定部材F1、F2(反対面不図示)は、金属フレーム10の外側から複数の溝孔に嵌め込まれる。なお、T字型の固定部材の代わりに、ネジで固定されてもよい。
【0047】
第1セルS1の負極端子と第2セルS2の正極端子が第1バスバーB1で接続され、第2セルS2の負極端子と第3セルS3の正極端子が第2バスバー(不図示)で接続され、第3セルS3の負極端子と第4セルS4の正極端子が第3バスバーB3で接続され、・・・、第19セルS19の負極端子と第20セルS20の正極端子が第19バスバーB19で接続される。
【0048】
図6(a)に示す蓄電システム1が浸水した場合、電極面の高さまで水位が上昇してこないと、蓄電システム1内のエネルギーを放出するための放電が開始されない。図6(b)は、実施の形態4に係る蓄電システム1の構成を示す模式図である。実施の形態4に係る蓄電システム1では、複数のバスバーB1-B19の少なくとも2つに、はね部B7b、B13bが形成される。図6(a)に示す例では第7バスバーB7と第13バスバーB13に、はね部B7b、B13bが形成される。
【0049】
はね部B7bは、第7セルS7の負極端子と第8セルS8の正極端子を接続する導電性の板状部材の長手方向の側面から、バインドバーBi1と空間上で交差するように蓄電システム1の外側に延び出し、その位置から設置面に向かって鉛直に折り曲げられて構成される。はね部B13bも同様の構成である。
【0050】
図6(c)は、第7セルS7の水平方向から見た断面を示す模式図である。はね部B7bの先端は、金属フレーム10と平行に対向するように折り曲げられている。これにより、液体W1を介した第7バスバーB7と金属フレーム10の接触面積Sを増加させることができ、接触面積Sの増加により短絡電流Iを増加させることができる。これにより、第7バスバーB7から第13バスバーB13にさらに電流が流れやすくなる。
【0051】
はね部B7b、B13bのそれぞの先端と、金属フレーム10との距離lが短いほど、蓄電システム1の浸水時に第7バスバーB7と第13バスバーB13間に、より早く、より大きな短絡電流Iを流すことができる。浸水時に第7バスバーB7と第13バスバーB13間に流れる短絡電流Iは、6個分のセルS8-S13の両端電圧で流れる電流となる。短絡電圧Eの大きさは、はね部を有するバスバーの位置を変えることにより調節できる。なお図6(b)では、はね部を有するバスバーを2本設けているが、4本設けることにより、放電電流をさらに増加させてもよい。
【0052】
以上説明したように実施の形態4によれば、複数のセルが設置面に対して水平方向に重ね合わされた蓄電システムにおいて、浸水時の安全性を高めることができる。
【0053】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0054】
上記図2図4図5では、隣接する2つの蓄電モジュール間をクランク型のバスバーで接続した。この点、2つの蓄電モジュールの一方を上下反転させて設置することにより、2つの蓄電モジュール間を板状のバスバーで接続することができる。この場合、2つの蓄電モジュール間を接続するバスバーの位置が、下、上、下、・・・と交互に入れ替わる。この構成では、1つの金属トレイ30に設置される蓄電モジュールの最小個数は3つとなる。
【0055】
なお、実施の形態は、以下の項目によって特定されてもよい。
【0056】
[項目1]
複数のセル(S1-S5)が設置面に対して垂直方向に積層され、当該複数のセル(S1-S5)が電気的に直列接続された蓄電モジュール(M1)を複数備え、
前記複数の蓄電モジュール(M1-M4)は、設置面に対して水平方向に並べて、電気的に直列接続されて設置され、
本蓄電システム(1)は、
隣接するセル(S1-S20)間、及び隣接する蓄電モジュール(M1-M4)間を電気的に接続する複数の接続部材(B1-B21)と、
前記複数の蓄電モジュール(M1-M4)が設置されるフレーム(10)と、
前記フレーム(10)と前記複数の蓄電モジュール(M1-M4)の間に水平方向に並べて設置され、前記複数の蓄電モジュール(M1-M4)を水平方向に複数のグループに仕切る複数の導電性トレイ(30a、30b)と、
を備えることを特徴とする蓄電システム(1)。
これによれば、蓄電システム(1)の浸水時において、液とフレーム(10)を経由した複数のセル(S6-S20)間に発生する高電圧な短絡を防止することができる。
[項目2]
前記フレーム(10)は金属フレーム(10)であり、
本蓄電システム(1)は、
前記金属フレーム(10)と、前記複数の導電性トレイ(30a、30b)の間に挿入される絶縁部材(20)を
さらに備えることを特徴とする項目1に記載の蓄電システム(1)。
これによれば、導電性トレイ(30a、30b)による仕切りを超えた範囲の短絡を防止することができる。
[項目3]
1つの導電性トレイ(30a)に、2つ以上の蓄電モジュール(M1、M2)が設置されることを特徴とする項目1または2に記載の蓄電システム(1)。
これによれば、短絡する範囲を、導電性トレイ(30a)に収容された複数の蓄電モジュール(M1、M2)の範囲内に制限することができる。
[項目4]
前記複数の接続部材(B1-B21)の少なくとも1つ(B6、B11、B16、B21)は、前記導電性トレイ(30a、30b)の方向に向かって延び出る突出部(B6a、B11a、B16a、B21a)を有することを特徴とする項目1から3のいずれかに記載の蓄電システム(1)。
これによれば、浸水時の短絡により流れる放電電流を、過電流とならない範囲で増加させることができる。
[項目5]
隣接する2つの蓄電モジュール(M1、M2)間を接続する接続部材(B6)は、前記蓄電モジュール(M1)の設置面に最も近接しているセル(S5)の負極端子または正極端子と、当該蓄電モジュール(M1)の隣りの蓄電モジュール(M2)の設置面から最も離れたセル(S6)の正極端子または負極端子を接続し、
1つの導電性トレイ(30a)に、2つの蓄電モジュール(M1、M2)が設置されることを特徴とする項目1または2に記載の蓄電システム(1)。
これによれば、浸水時に、1つの蓄電モジュール(M2)の両端電圧で、放電させることができる。
[項目6]
前記隣接する2つの蓄電モジュール(M1、M2)間を接続する接続部材(B6)は、前記導電性トレイ(30a)の方向に向かって延び出る突出部(B6a)を有することを特徴とする項目5に記載の蓄電システム(1)。
これによれば、浸水時の短絡により流れる放電電流を、過電流とならない範囲で増加させることができる。
[項目7]
前記導電性トレイ(30a、30b)は、前記フレーム(10)より電気抵抗が小さい部材で形成されることを特徴とする項目1から6のいずれかに記載の蓄電システム(1)。
これによれば、浸水時の短絡電流を、導電性トレイ(30a、30b)に優先的に流すことができる。
【符号の説明】
【0057】
1 蓄電システム、 S1-S20 第1セル-第20セル、 B1-B21 第1バスバー-第21バスバー、 M1-M4 第1蓄電モジュール-第4蓄電モジュール、 E11,E12,E21,E22,E31,E32,E41,E42,E1,E2 エンドプレート、 Bi11,Bi12,Bi21,Bi22,Bi31,Bi32,Bi41,Bi42 バインドプレート、 Bi1,Bi2 バインドバー、 F11,F12,F13,F14,F21,F22,F23,F24,F31,F32,F33,F34,F41,F42,F43,F44,F1,F2 固定部材、 10 金属フレーム、 20 樹脂プレート、 30a 第1金属トレイ、 30b 第2金属トレイ、 W1 液体、 R1-R5 第1抵抗-第5抵抗、 B6a,B11a,B16a,B21a 突出部、 B7b,B13b はね部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6