(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】マンデル酸メテナミンの製造プロセス
(51)【国際特許分類】
C07D 487/18 20060101AFI20220203BHJP
C07C 59/50 20060101ALI20220203BHJP
C07C 51/41 20060101ALI20220203BHJP
A61K 31/53 20060101ALI20220203BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
C07D487/18
C07C59/50
C07C51/41
A61K31/53
A61P13/02 105
(21)【出願番号】P 2018563481
(86)(22)【出願日】2017-05-26
(86)【国際出願番号】 US2017034742
(87)【国際公開番号】W WO2017210122
(87)【国際公開日】2017-12-07
【審査請求日】2020-03-09
(32)【優先日】2016-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594066006
【氏名又は名称】アルベマール コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アシンク,ブライス・ケリー
(72)【発明者】
【氏名】カビジョラ,ザサード,ティノ・ジョン
【審査官】東 裕子
(56)【参考文献】
【文献】独国特許発明第00824056(DE,C2)
【文献】特許第128970(JP,B2)
【文献】米国特許第02124321(US,A)
【文献】英国特許出願公開第00512583(GB,A)
【文献】米国特許第04001231(US,A)
【文献】独国特許発明第00824055(DE,C2)
【文献】独国特許出願公開第10103770(DE,A1)
【文献】特公昭29-004280(JP,B1)
【文献】ALONSO,F.,Revista Cubana de Farmacia,1978年,12,125-132
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
20℃~
90℃に維持しながら、少なくともパラホルムアルデヒド、第一のC
2-C
6アルコール、及び水を含む第一の配合物を介してアンモニアをバブリングし、それによってメテナミンを含有する第一の反応生成物を生成し;
少なくとも前記第一の反応生成物、マンデル酸、及び第二のC
2-C
6アルコールを加熱下で配合し、それによって第二の反応生成物を生成し;
前記第二の反応生成物
を20℃
~100℃の温度に加熱し;及び
前記第二の反応生成物の温度が70℃よりも大きい場合には、前記第二の反応生成物を少なくと
も70℃に冷却し、
それによってマンデル酸メテナミンを含む組成物を製造することを含んでなる、プロセス。
【請求項2】
前記第一のC
2-C
6アルコールが、n-ブタノール、シクロヘキサノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、イソブタノール、s-ブタノール、またはt-ブタノールを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記第二のC
2~C
6アルコールが、イソプロパノール、n-ブタノール、シクロヘキサノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、イソブタノール、s-ブタノール、またはt-ブタノールとして含む、請求項1に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
マンデル酸メテナミンは、尿路感染症の治療に有用である。マンデル酸メテナミンを製造するための公知のプロセスでは、生成し、単離したメテナミンをマンデル酸と混合する。例えば、US4,001,231参照。
【0002】
マンデル酸メテナミンをより効率的かつ経済的に製造するためには、マンデル酸メテナミンの製造前に、生成したメテナミンを単離する必要のないプロセスが必要である。
【0003】
発明
本発明は、以下を含むプロセスを提供することによって、上記の必要性を満たす:少なくともパラホルムアルデヒド、第一のC2-C6アルコール、及び水を含有する第一の配合物を介して、第一の配合物を約20℃~約90℃に維持しながら、アンモニアをバブリングし、それによってメテナミンを含有する第一の反応生成物を生成し;少なくとも第一の反応生成物、マンデル酸、及び第二のC2-C6アルコールを加熱下で混合し、それにより第二の反応生成物を生成し;第二の反応生成物を約20℃~約100℃の温度へ加熱し;第二の反応生成物を少なくとも約70℃に冷却し、それによってマンデル酸メテナミンを含有する組成物を製造する。
【0004】
図面
本発明のプロセスは、本発明に従ったスキームが図示されている、
図1を参照することにより、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【発明を実施するための形態】
【0006】
詳細な説明
本発明のプロセスは、少なくともパラホルムアルデヒド、第一のC2-C6アルコール、及び水を含有する第一の配合物を介して、第一の配合物を約20℃~約90℃、または約20℃~約60℃、または約20℃~約40℃に維持しながら、アンモニアをバブリングし、それによってメテナミンを含有する第一の反応生成物を生成することを含む。第一のC2-C6アルコールには、例えば、n-ブタノール、シクロヘキサノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、イソブタノール、s-ブタノール、またはt-ブタノールなどのアルコールが含まれ得る。少なくとも第一の配合物が実質的にアンモニアを吸収しなくなるまで、第一の配合物を介してアンモニアをバブリングすることができる。第一の反応生成物はまた、水を含有することができ、含水率を有し得る。
【0007】
本発明のプロセスはまた、当業者に公知の技術を用いて、第一の反応生成物の含水率を減少させることを含み得る。例えば、共沸蒸留によって水分を除去することができる。一実施例では、第一の反応生成物を還流させ、第一のC2-C6アルコールと水蒸気を凝縮させ、凝縮した第一のC2-C6アルコールが第一の反応生成物に戻る間に底部水層を除去する。共沸蒸留による水の除去がもはや行えなくなった後、残りの第一のC2-C6アルコールの一部を蒸留により除去することができ、これにより追加の水分を除去することができる。さらに、含水率が所望の量より多い場合、例えば0.2重量%を上回る場合、追加の第一のC2-C6アルコールを第一の反応生成物にチャージし、次に水分を低下させるために再度蒸留することができる。いったん減少した第一の反応生成物の含水率は、
約0重量%~約2重量%、または約0重量%~約0.2重量%、または0重量%超~約2重量%、または0重量%超~約0.2重量%である。
【0008】
本発明のプロセスはまた、少なくとも第一の反応生成物、マンデル酸、及び第二のC2-C6アルコールを加熱下で混合し、それによって第二の反応生成物を生成することを含む。第二のC2-C6アルコールには、例えば、イソプロパノール、n-ブタノール、シクロヘキサノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、イソブタノール、s-ブタノール、またはt-ブタノールなどのアルコールが含まれ得る。マンデル酸は、第二のC2-C6アルコールに溶解することができる。この配合は、第二の反応生成物を生成するのに十分な加熱下で行うことができる。
【0009】
本発明のプロセスはまた、第二の反応生成物を約20℃~約100℃、または約20℃~約90℃、または約50℃~約90℃、または約80℃~約90℃の温度に加熱することを含む。
【0010】
本発明のプロセスはまた、第二の反応生成物を少なくとも約70℃まで、または少なくとも約50℃まで、または少なくとも約30℃まで冷却し、それによってマンデル酸メテナミンを含む組成物を製造することを含む。冷却は、約90~約140分間かけて行うことができる。
【実施例】
【0011】
以下の実施例は、本発明の原理を例示するものである。本発明は、本特許出願の実施例または残りのいずれにおいても、本明細書において例示するいずれかの特定の一実施形態に限定されないことを理解されたい。
【0012】
実施例1.
2Lの丸底フラスコに、ディーン・スターク・トラップ、凝縮器、及び熱電対を備え付けた。パラホルムアルデヒド(203.7g、6.78mol、6当量)、n-ブタノール(610mL、3.00mL/g)、及び水(68mL、0.33mL/g)を入れ、0~25℃で撹拌した。約0.6ml/分の速度でアンモニアガス(77g、77mL)を表面下でバブリングし、バブラーによるアンモニア損失を最小限に抑えた。アンモニア添加に伴う発熱を、水浴を用いて20~60℃に制御した。反応混合物が51℃でこれ以上アンモニアを吸収しなかった時点で、反応が完了したものとみなした。次いで、反応混合物を加熱還流し、水(186.4g)をディーン・スターク・トラップで共沸的に除去した。濃縮した混合物の含水率を、<0.2%を目標としてカールフィッシャー滴定によって測定した。マンデル酸(172.0g、1.13mol)を別のフラスコ中のイソプロパノール(520mL)に溶解した。マンデル酸溶液を濾過し、イソプロパノールすすぎ液(50mL)を用いて反応混合物にチャージした。反応混合物を90℃に加熱してすべての固体を溶解し、ゆっくりと冷却して生成物の沈殿を生じさせた。反応スラリーを70~30℃からおよそ120分間かけて冷却させた。およそ25℃で、固体を真空濾過によって回収し、イソプロパノール(97mL)で洗浄した。湿ったケーキを、わずかな窒素抽気を用いて、60℃、真空下で一晩乾燥して、マンデル酸メテナミン酸塩250.7gを白色固体として得た。
【0013】
実施例2.
500mLの4つ口丸底フラスコに、パラホルムアルデヒド(60g)、n-ブタノール(120mL)、及び水(20mL)をチャージした。温度を40℃未満に維持しながら、スラリーにアンモニアをチャージした。アンモニアを添加する際、反応溶液を65~85℃に加温し、≧30分保持した。得られた溶液を加温還流し、水分を共沸蒸留により除去した。次いでブタノールを蒸留により除去した。反応混合物の含水量をカールフィッ
シャー滴定によって測定したところ、0.08重量%のH2Oであることが分かった。次いで、イソプロピルアルコール(145mL)中のマンデル酸(48.4g)の溶液を反応スラリーに添加し、得られた混合物を80~90℃に加温し、固体の溶解が生じるまで保持した。次いで、溶液を22~30℃に冷却し、得られた固体を真空濾過によって単離し、イソプロピルアルコール(93mL)で洗浄した。この固体を真空下、60~65℃で一晩、僅かなN2パージで乾燥させて、メタンアミンマンデル酸塩81.87gを白色固体として生成し、88.0%の未補正収率を得た。
【0014】
本発明のプロセスは、そのようなプロセスが、メテナミン反応物の単離を必要とせずにマンデル酸メテナミンの直接形成を可能にする点で有利である。また、そのようなプロセスは、単一の反応器内で実施することができ、1つの単離工程のみを必要とする。本発明のプロセスは、固体パラホルムアルデヒドを使用するという追加の利点を有し、それにより公知の発癌物質であるガス状ホルムアルデヒドの使用を回避する。
【0015】
単数または複数で言及されているかに関わらず、明細書または特許請求の範囲の化学名または化学式によって参照される反応物及び構成要素は、それらが、化学名または化学式によって参照される別の物質(例えば、別の反応物、溶媒など)との配合または接触の前に存在するものとして同定される。得られる配合物または溶液または反応媒体中において、もしあるならば、どのような化学変化、変換及び/または反応が生じるかは、本開示に従って要求される条件下で、そのような化学変化、変換及び/または反応が、特定の反応物及び/または構成要素を一緒にすることに対する自然な結果であるため、重要ではない。したがって、反応物及び構成要素は、所望の化学反応の実施、または所望の反応の実施において使用する配合物の形成に関連して、一緒にすべき成分として識別される。したがって、以下の特許請求の範囲が物質、構成要素及び/または成分を現在時制で指す(「含む」、「である」など)場合であっても、その参照は、本開示による1つ以上の他の物質、構成要素及び/または成分と最初に接触、配合、ブレンドまたは混合する直前の時点で存在していた物質、構成要素または成分である。もしあるならば、その場での反応として起こる何らかの変換はいずれも、カバーすることを意図する請求内容である。したがって、本開示に従って、ならびに常識及び化学者の通常の技術を適用して実施した場合に、物質、構成要素または成分が、接触、配合、ブレンドまたは混合操作の過程で、化学反応または変換を介して本来の同一性を失った可能性があるという事実は、本開示及びその請求の真の意味及び内容の正確な理解及び認識のためにはまったく重要ではない。当業者によく知られているように、本明細書中で使用する用語「配合した(combined)」、「配合すること(combining)」などは、「配合した(combined)」または「配合している(combining)」構成要素を、互いに容器に入れることを意味する。同様に、構成要素の「配合物(combination)」は、構成要素が容器内にまとめられていることを意味する。
【0016】
本発明を1つ以上の好ましい実施形態に関して説明してきたが、以下の特許請求の範囲に記載する本発明の範囲から逸脱することなく、他の変更を行い得ることを理解されたい。