(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】冷気・暖気発生システム
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20220128BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20220128BHJP
B60H 1/22 20060101ALI20220128BHJP
F25B 9/00 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
B60H1/00 102B
B60H1/00 ZAB
B60H1/32 621F
B60H1/22 671
F25B9/00 Z
(21)【出願番号】P 2018566754
(86)(22)【出願日】2017-10-31
(86)【国際出願番号】 JP2017039341
(87)【国際公開番号】W WO2018146873
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2020-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2017023516
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017049353
(32)【優先日】2017-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】宮入 由紀夫
(72)【発明者】
【氏名】三輪 真一
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-205677(JP,A)
【文献】特開2010-236744(JP,A)
【文献】特開2012-229892(JP,A)
【文献】特開2013-050087(JP,A)
【文献】特開2013-234820(JP,A)
【文献】特開2006-214406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
B60H 1/22
B60H 1/32
F25B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車の車内を冷暖房するための冷気・暖気発生システムにおいて、
交流電力の供給を受けて直線方向の振動力を生じるリニアモータを有し、圧力が35atm以下であって振動することで音波を伝播する作動流体を、前記リニアモータにより振動させることで、50Hz以上500Hz以下の範囲内の、前記交流電力に応じた周波数の音波を発生する音波発生部と、
前記作動流体によって内部が満たされ、前記音波発生部により発生した音波を該作動流体の振動により伝播する伝播管と、
前記電気自動車の外部から第1の外気および第2の外気を取得し、前記伝播管により伝播されて来た音波を介して前記第1の外気の熱を前記第2の外気に渡すことで、前記第1の外気を温度が低下した冷気に変えるとともに、前記第2の外気を温度が上昇した暖気に変える冷気・暖気発生部と、を備え、
前記冷気・暖気発生部が、
2つの端面の間に延びる複数のセルであって前記作動流体によって内部が満たされる複数のセルを区画形成する隔壁を有し、該隔壁と前記作動流体との間で授受される熱と、前記作動流体の振動による音波のエネルギーとを相互に変換する熱・音波変換部品
であって、前記2つの端面の間を音波が前記複数のセルを通って進行するとその進行する音波による熱音響効果により、前記2つの端面のうちの音波の進行方向上流側の端面から音波の進行方向下流側の端面に向かって熱が運ばれる熱・音波変換部品と、
前記熱・音波変換部品の前記2つの端面のうちの一方の端面に近接して設けられ、
該一方の端面から他方の端面に向かって音波が前記複数のセル内を進行する場合に、流入してきた前記第1の外気から熱を受け取って該熱を前記熱・音波変換部品の前記一方の端面に渡し、前記冷気を流出させる冷気用熱交換器と、
前記熱・音波変換部品の
前記他方の端面に近接して設けられ
、前記一方の端面から前記他方の端面に向かって音波が前記複数のセル内を進行する場合に、前記一方の端面から前記他方の端面に運ばれてきた熱を受け取って該熱を、流入してきた前記第2の外気に渡し、前記暖気を流出させる暖気用熱交換器と、を備え、
前記セルが延びる方向に垂直な前記熱・音波変換部品の断面のうちの、前記隔壁の断面および前記セルの断面で占められているセル構造領域におけるセル密度が620セル/cm
2以上3100セル/cm
2以下であり、
前記隔壁を構成する材料の熱伝導率が5.0W/mK以下である冷気・暖気発生システム。
【請求項2】
前記熱・音波変換部品は、前記2つの端面の外周部を繋いで前記隔壁全体を取り囲むことで前記熱・音波変換部品の側面部を形成する外周壁を有し、
前記熱・音波変換部品の前記断面の円相当直径に対する前記セル構造領域の円相当直径の比率が0.6以上0.94以下である請求項1に記載の冷気・暖気発生システム。
【請求項3】
前記比率が0.8以上0.9以下である請求項2に記載の冷気・暖気発生システム。
【請求項4】
前記外周壁は、前記隔壁と一体的に形成されたものである請求項2又は3に記載の冷気・暖気発生システム。
【請求項5】
前記熱・音波変換部品全体のうちの、前記隔壁および前記セルによりセル構造が形成されている部分であるセル構造体のヤング率が7GPa以上である請求項1~4のいずれかに記載の冷気・暖気発生システム。
【請求項6】
前記音波発生部は、貫通孔を形成する孔部を有し、該孔部を除いて前記伝播管を封止しつつ、前記リニアモータによって生じた振動力を受けて前記直線方向に振動する封止振動部材を備えたものであり、
前記孔部は、前記貫通孔として、前記封止振動部材が500Hzより高い高周波数あるいは50Hzより低い低周波数で振動する際には、前記作動流体を前記孔部に進入させること、あるいは、前記作動流体に前記孔部を通過させることにより、前記高周波数あるいは前記低周波数での前記作動流体の振動を抑制し、前記封止振動部材が50Hz以上500Hz以下の範囲内の周波数で振動する際には、該範囲内の前記周波数での前記作動流体の振動を許すという周波数フィルタリング機能が発揮される大きさの貫通孔を形成するものである請求項1~5のいずれかに記載の冷気・暖気発生システム。
【請求項7】
前記音波発生部は、前記熱・音波変換部品の前記一方の端面から前記熱・音波変換部品の前記他方の端面に向けて前記熱・音波変換部品の前記複数のセルの内部を進行する音波を発生する暖房モードと、前記熱・音波変換部品の前記他方の端面から前記熱・音波変換部品の前記一方の端面に向けて前記熱・音波変換部品の前記複数のセルの内部を進行する音波を発生する冷房モードとを、選択的に実行するものであり、
前記冷気・暖気発生部は、前記電気自動車の外部から前記第1の外気を取得するとともに、前記第2の外気に代えて第1の車内の空気を取得する駆動モードと、前記電気自動車の外部から前記第2の外気を取得するとともに、前記第1の外気に代えて第2の車内の空気を取得する換気モードとを、選択的に実行するものであり、
前記音波発生部が前記暖房モードを実行し、前記冷気・暖気発生部が前記駆動モードを実行する場合には、前記冷気用熱交換器は、前記第1の外気から熱を受け取って該熱を前記一方の端面に渡し、該熱を前記冷気用熱交換器に渡した後の前記第1の外気に相当する空気を前記電気自動車の外部に向けて流出させるものであり、前記暖気用熱交換器は、前記他方の端面から音波を介して前記第1の外気の前記熱を受け取って該熱を前記第1の車内の空気に渡して該熱が渡された後の前記第1の車内の空気に相当する空気を前記電気自動車の車内に向けて流出させるものであり、
前記音波発生部が前記暖房モードを実行し、前記冷気・暖気発生部が前記換気モードを実行する場合には、前記冷気用熱交換器は、前記第2の車内の空気から熱を受け取って該熱を前記一方の端面に渡し、該熱を前記冷気用熱交換器に渡した後の前記第2の車内の空気に相当する空気を前記電気自動車の外部に向けて流出させるものであり、前記暖気用熱交換器は、前記他方の端面から音波を介して前記第2の車内の空気の前記熱を受け取って該熱を前記第2の外気に渡して該熱が渡された後の前記第2の外気に相当する空気を前記電気自動車の車内に向けて流出させるものであり、
前記音波発生部が前記冷房モードを実行し、前記冷気・暖気発生部が前記駆動モードを実行する場合には、前記暖気用熱交換器は、前記第1の車内の空気から熱を受け取って該熱を前記他方の端面に渡し、該熱を前記暖気用熱交換器に渡した後の前記第1の車内の空気に相当する空気を前記電気自動車の車内に向けて流出させるものであり、前記冷気用熱交換器は、前記一方の端面から音波を介して前記第1の車内の空気の前記熱を受け取って該熱を前記第1の外気に渡して該熱が渡された後の前記第1の外気に相当する空気を前記電気自動車の外部に向けて流出させるものであり、
前記音波発生部が前記冷房モードを実行し、前記冷気・暖気発生部が前記換気モードを実行する場合には、前記暖気用熱交換器は、前記第2の外気から熱を受け取って該熱を前記他方の端面に渡し、該熱を前記暖気用熱交換器に渡した後の前記第2の外気に相当する空気を前記電気自動車の車内に向けて流出させるものであり、前記冷気用熱交換器は、前記一方の端面から音波を介して前記第2の外気の前記熱を受け取って該熱を前記第2の車内の空気に渡して該熱が渡された後の前記第2の車内の空気に相当する空気を前記電気自動車の外部に向けて流出させるものである請求項1~6のいずれかに記載の冷気・暖気発生システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車の車内を冷暖房するための冷気・暖気発生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、社会全体で二酸化炭素等の温暖化ガスの削減に対する要請が高まっており、この要請を受けて自動車の分野においても、エンジンの動力源として化石燃料を用いない電気自動車の技術開発が盛んに行われている。
【0003】
電気自動車では、化石燃料の燃焼を伴わないため二酸化炭素等の温暖化ガスの発生を抑えることができるが、その反面、エンジンの廃熱を熱源として利用することができない。たとえば、化石燃料の燃焼を伴う自動車とは異なり電気自動車では、エンジンの廃熱を車内の暖房の熱源として利用することができず、車内の暖房用に別の熱源を得ることが必要となる。単純には、電気自動車の動力源である電気を用いて電熱線等に通電して発熱させることで暖房用の熱を得る方式が考えられるが、この方式では、暖房のためにかなりの電力が必要となるためエネルギー効率が著しく悪く、この方式を採用するのは好ましくない。
【0004】
このため電気自動車の分野では、ヒートポンプにより外気から熱を汲み上げることで、外気よりも温度が高い暖気を発生させ、この暖気を車内の暖房に利用する方式が一般に採用されている(たとえば特許文献1参照)。実際、このように外気から熱を汲み上げる方式の方が、通電により電熱線等の発熱で直接に熱を発生させる方式に比べ、より少ない電力で暖房用の暖気を得ることができる。なお、このようなヒートポンプでは、暖気の発生と共に、外気よりも温度が低い冷気も発生するため、暖気の代わりに冷気を利用すれば冷房にも利用できる。
【0005】
こうしたヒートポンプでは、作動流体を圧縮および膨張させることで、熱の放出および吸収を作動流体に起こさせる方式が、通常、採用される。しかしながら、一般に、作動流体を圧縮および膨張させるための機構は複雑なため、ヒートポンプの装置全体が大型化しやすいという問題がある。また、こうしたヒートポンプでは、エネルギー効率向上の観点から好適な作動流体の多くは、地球温暖化係数が高い気体であって地球温暖化への悪影響が大きく、こうした気体を用いるのは、社会全体における温暖化ガス削減の要請に反するものである。このため、温暖化ガス削減の要請に応えつつエネルギー効率を向上させるように作動流体を選択するのが難しいという問題もある。
【0006】
ところで、このような電気自動車の暖房用のヒートポンプとは熱の汲み上げ方式が異なるヒートポンプとして、熱音響効果を利用するヒートポンプが知られている(たとえば特許文献2参照)。熱音響効果とは、細管の両端部間に温度勾配が形成されたときに細管中の音波伝播媒体(作動流体)が振動を起こして音波が伝播する現象、および、その逆現象として、細管内を音波が伝播することで細管の両端部間に温度勾配が形成される現象を指す。特に後者の、音波から温度勾配が形成される現象は、簡単に言えば、細管の一方の端部から他方の端部に熱を運ぶ現象であり、この現象を利用してヒートポンプを構成することができる。熱音響効果を利用したヒートポンプでは、作動流体を機械的な装置によって圧縮・膨張させる必要がないため、作動流体を圧縮および膨張させる方式のヒートポンプに比べるとヒートポンプ全体の小型化に適している。また、熱音響効果を利用したヒートポンプでは、作動流体として地球温暖化係数の高い気体を用いる必要はなく、むしろ、そうした地球温暖化係数の高い気体よりも反応性の低い作動流体(たとえば希ガス)の方が、より高いエネルギー効率を実現できる。このため、熱音響効果を利用したヒートポンプは、環境に悪影響を与えることなくエネルギー効率を向上させるのにも適している。熱音響効果を利用したヒートポンプのこれらの長所を考慮すると、電気自動車の暖房(および冷房)用のヒートポンプとしても、熱音響効果を利用したヒートポンプを用いることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-195021号公報
【文献】特開2000-088378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、熱音響効果を利用するヒートポンプでは、ヒートポンプ中の音波によるノイズがヒートポンプ外部に伝わり、不愉快に感じるほど耳障りなものとなりやすい。特に電気自動車では、化石燃料を燃焼させる自動車に比べてエンジン音が小さいので、このようなノイズが認識されやすく、この問題はとりわけ深刻である。ヒートポンプの内外に防音機構等を設けてノイズ低減を図ることも考えられるが、この場合、小型化が可能という上述の長所やエネルギー効率が向上するという上述の長所が失われかねない。このように、システム全体の小型化と高いエネルギー効率を実現しつつノイズを抑えた、電気自動車の冷暖房用の冷気・暖気発生システムの実現に当たっては、解決すべき問題がまだ残されている。
【0009】
上記の事情を鑑み、本発明は、システム全体の小型化と高いエネルギー効率を実現しつつノイズを抑えた、電気自動車の冷暖房用の冷気・暖気発生システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するため、本発明は、以下の冷気・暖気発生システムを提供する。
【0011】
[1] 電気自動車の車内を冷暖房するための冷気・暖気発生システムにおいて、交流電力の供給を受けて直線方向の振動力を生じるリニアモータを有し、圧力が35atm以下であって振動することで音波を伝播する作動流体を、前記リニアモータにより振動させることで、50Hz以上500Hz以下の範囲内の、前記交流電力に応じた周波数の音波を発生する音波発生部と、前記作動流体によって内部が満たされ、前記音波発生部により発生した音波を該作動流体の振動により伝播する伝播管と、前記電気自動車の外部から第1の外気および第2の外気を取得し、前記伝播管により伝播されて来た音波を介して前記第1の外気の熱を前記第2の外気に渡すことで、前記第1の外気を温度が低下した冷気に変えるとともに、前記第2の外気を温度が上昇した暖気に変える冷気・暖気発生部と、を備え、前記冷気・暖気発生部が、2つの端面の間に延びる複数のセルであって前記作動流体によって内部が満たされる複数のセルを区画形成する隔壁を有し、該隔壁と前記作動流体との間で授受される熱と、前記作動流体の振動による音波のエネルギーとを相互に変換する熱・音波変換部品と、前記熱・音波変換部品の前記2つの端面のうちの一方の端面に近接して設けられ、流入してきた前記第1の外気から熱を受け取って該熱を前記熱・音波変換部品の前記一方の端面に渡し、前記冷気を流出させる冷気用熱交換器と、前記熱・音波変換部品の他方の端面に近接して設けられ該他方の端面から熱を受け取って該熱を、流入してきた前記第2の外気に渡し、前記暖気を流出させる暖気用熱交換器と、を備え、
前記セルが延びる方向に垂直な前記熱・音波変換部品の断面のうちの、前記隔壁の断面および前記セルの断面で占められているセル構造領域におけるセル密度が620セル/cm2以上3100セル/cm2以下であり、前記隔壁を構成する材料の熱伝導率が5.0W/mK以下である冷気・暖気発生システム。
【0012】
[2] 前記熱・音波変換部品は、前記2つの端面の外周部を繋いで前記隔壁全体を取り囲むことで前記熱・音波変換部品の側面部を形成する外周壁を有し、前記熱・音波変換部品の前記断面の円相当直径に対する前記セル構造領域の円相当直径の比率が0.6以上0.94以下である[1]に記載の冷気・暖気発生システム。
【0013】
[3] 前記比率が0.8以上0.9以下である[2]に記載の冷気・暖気発生システム。
【0014】
[4] 前記外周壁は、前記隔壁と一体的に形成されたものである[2]又は[3]に記載の冷気・暖気発生システム。
【0015】
[5] 前記熱・音波変換部品全体のうちの、前記隔壁および前記セルによりセル構造が形成されている部分であるセル構造体のヤング率が7GPa以上である[1]~[4]のいずれかに記載の冷気・暖気発生システム。
【0016】
[6] 前記音波発生部は、貫通孔を形成する孔部を有し、該孔部を除いて前記伝播管を封止しつつ、前記リニアモータによって生じた振動力を受けて前記直線方向に振動する封止振動部材を備えたものであり、前記孔部は、前記貫通孔として、前記封止振動部材が500Hzより高い高周波数あるいは50Hzより低い低周波数で振動する際には、前記作動流体を前記孔部に進入させること、あるいは、前記作動流体に前記孔部を通過させることにより、前記高周波数あるいは前記低周波数での前記作動流体の振動を抑制し、前記封止振動部材が50Hz以上500Hz以下の範囲内の周波数で振動する際には、該範囲内の前記周波数での前記作動流体の振動を許すという周波数フィルタリング機能が発揮される大きさの貫通孔を形成するものである[1]~[5]のいずれかに記載の冷気・暖気発生システム。
【0017】
[7] 前記音波発生部は、前記熱・音波変換部品の前記一方の端面から前記熱・音波変換部品の前記他方の端面に向けて前記熱・音波変換部品の前記複数のセルの内部を進行する音波を発生する暖房モードと、前記熱・音波変換部品の前記他方の端面から前記熱・音波変換部品の前記一方の端面に向けて前記熱・音波変換部品の前記複数のセルの内部を進行する音波を発生する冷房モードとを、選択的に実行するものであり、前記冷気・暖気発生部は、前記電気自動車の外部から前記第1の外気を取得するとともに、前記第2の外気に代えて第1の車内の空気を取得する駆動モードと、前記電気自動車の外部から前記第2の外気を取得するとともに、前記第1の外気に代えて第2の車内の空気を取得する換気モードとを、選択的に実行するものであり、前記音波発生部が前記暖房モードを実行し、前記冷気・暖気発生部が前記駆動モードを実行する場合には、前記冷気用熱交換器は、前記第1の外気から熱を受け取って該熱を前記一方の端面に渡し、該熱を前記冷気用熱交換器に渡した後の前記第1の外気に相当する空気を前記電気自動車の外部に向けて流出させるものであり、前記暖気用熱交換器は、前記他方の端面から音波を介して前記第1の外気の前記熱を受け取って該熱を前記第1の車内の空気に渡して該熱が渡された後の前記第1の車内の空気に相当する空気を前記電気自動車の車内に向けて流出させるものであり、前記音波発生部が前記暖房モードを実行し、前記冷気・暖気発生部が前記換気モードを実行する場合には、前記冷気用熱交換器は、前記第2の車内の空気から熱を受け取って該熱を前記一方の端面に渡し、該熱を前記冷気用熱交換器に渡した後の前記第2の車内の空気に相当する空気を前記電気自動車の外部に向けて流出させるものであり、前記暖気用熱交換器は、前記他方の端面から音波を介して前記第2の車内の空気の前記熱を受け取って該熱を前記第2の外気に渡して該熱が渡された後の前記第2の外気に相当する空気を前記電気自動車の車内に向けて流出させるものであり、前記音波発生部が前記冷房モードを実行し、前記冷気・暖気発生部が前記駆動モードを実行する場合には、前記暖気用熱交換器は、前記第1の車内の空気から熱を受け取って該熱を前記他方の端面に渡し、該熱を前記暖気用熱交換器に渡した後の前記第1の車内の空気に相当する空気を前記電気自動車の車内に向けて流出させるものであり、前記冷気用熱交換器は、前記一方の端面から音波を介して前記第1の車内の空気の前記熱を受け取って該熱を前記第1の外気に渡して該熱が渡された後の前記第1の外気に相当する空気を前記電気自動車の外部に向けて流出させるものであり、前記音波発生部が前記冷房モードを実行し、前記冷気・暖気発生部が前記換気モードを実行する場合には、前記暖気用熱交換器は、前記第2の外気から熱を受け取って該熱を前記他方の端面に渡し、該熱を前記暖気用熱交換器に渡した後の前記第2の外気に相当する空気を前記電気自動車の車内に向けて流出させるものであり、前記冷気用熱交換器は、前記一方の端面から音波を介して前記第2の外気の前記熱を受け取って該熱を前記第2の車内の空気に渡して該熱が渡された後の前記第2の車内の空気に相当する空気を前記電気自動車の外部に向けて流出させるものである[1]~[6]のいずれかに記載の冷気・暖気発生システム。
【発明の効果】
【0018】
本発明の冷気・暖気発生システムでは、熱・音波変換部品が620セル/cm2~3100セル/cm2の高セル密度を有することで、小型の冷気・暖気発生システムであっても高いエネルギー効率が実現される。また、熱伝導率が5.0W/mK以下の材料で隔壁および外壁が構成されることで、各セル内の作動流体と隔壁との間で熱の授受が十分に行われて高いエネルギー効率が実現される。また、外気から熱を汲み上げて暖気および冷気を発生するように熱音響効果を生じさせる音波の周波数が50Hz以上であることで、必要最小限のエネルギー効率を確保できる。さらにこの音波の周波数が500Hz以下であることで、本発明の冷気・暖気発生システムを搭載した電気自動車に乗車している人にとって、音波によるノイズが、電気自動車に乗車している人にとって不愉快に感じられるほど耳障りなものになることが回避されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の冷気・暖気発生システムの一実施形態が適用された、電気自動車の冷暖房システムの概念的な模式構成図である。
【
図2】
図1の冷気・暖気発生システムの一例である冷気・暖気発生システムの構成を表した図である。
【
図3】
図2の冷気・暖気発生部の構成の一具体例を表した模式図である。
【
図4】
図3のAA’線に沿った熱・音波変換部品の断面図である。
【
図5】セグメント構造を有する熱・音波変換部品の構成を表した図である。
【
図6】
図5のCC’線に沿った熱・音波変換部品の断面図である。
【
図7】
図3のBB’線に沿った暖気用熱交換器の断面図である。
【
図8】
図3および
図7で説明した暖気用熱交換器2とは別の構成の暖気用熱交換器を表した図である。
【
図10】
図9の音波発生部の変形例である、周波数フィルタリング機能を持つ音波発生部の構成を表した図である。
【
図11】伝播管の形状に関する、
図2の冷気・暖気発生システムの1つのバリエーションである冷気・暖気発生システムを表した図である。
【
図12】
図11の冷気・暖気発生システムにおける音波発生部の構成を表した図である。
【
図13】
図12の音波発生部の変形例である、周波数フィルタリング機能を持つ音波発生部の構成を表した図である。
【
図14】伝播管の形状に関する、
図2の冷気・暖気発生システムの別のバリエーションである冷気・暖気発生システムを表した図である。
【
図15】空気の再循環機構と
図2の冷気・暖気発生システムとを用いて電気自動車の冷暖房を行う冷暖房システムの模式的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0021】
図1は、本発明の冷気・暖気発生システムの一実施形態が適用された、電気自動車1000の冷暖房システムの概念的な模式構成図である。
【0022】
図1に示す電気自動車1000の冷暖房システムは、電気自動車1000の車内の冷暖房を行うシステムであり、冷気・暖気発生システム100および制御部200を有している。
【0023】
冷気・暖気発生システム100は、
図1の2つの点線矢印で示すように2つの流路から外気を取得して、その外気から冷気および暖気を発生し、
図1の白抜きの太線矢印および斜線の太線矢印で示すようにその冷気および暖気を制御部200に送る。ここで、「外気」とは電気自動車1000の車外の空気を指す。また、「冷気」とは、外気が熱を吸収されて温度が低下した状態に変化したものを指し、「暖気」とは、外気が熱を吸収してその温度が上昇した状態に変化したものを指す。なお、電気自動車1000の冷暖房システムでは、冷気・暖気発生システム100が外気を効率よく取得するために、電気自動車1000の車外の空気を吸引して冷気・暖気発生システム100に送風する不図示の外気送風部が設けられていてもよい。外気送風部の具体例としては、たとえば換気用のファンを用いることができる。
【0024】
制御部200は、電気自動車1000のユーザ(運転手あるいは同乗者)による冷暖房システムの設定操作に応じて、冷気・暖気発生システム100から送られてきた冷気および暖気のうちの一方を電気自動車1000の車内に放出し(図の一点鎖線の矢印参照)、他方を電気自動車1000の車外に放出する(図の二点鎖線の矢印参照)。たとえば、ユーザにより、暖房が設定されていた場合には、制御部200は、暖気を電気自動車1000の車内に放出して冷気を電気自動車1000の車外に放出する。この結果、電気自動車1000の車内が暖房されることとなる。一方、ユーザにより、冷房が設定されていた場合には、制御部200は、冷気を電気自動車1000の車内に放出して暖気を電気自動車1000の車外に放出する。この結果、電気自動車1000の車内が冷房されることとなる。
【0025】
次に、冷気・暖気発生システム100の構成について説明する。
【0026】
図2は、
図1の冷気・暖気発生システム100の一例である冷気・暖気発生システム101の構成を表した図である。
【0027】
図2の冷気・暖気発生システム101は、冷気・暖気発生部100A、音波発生部100B、および第1の伝播管100Cを有している。
【0028】
音波発生部100Bは、不図示の交流電力供給部より交流電力の供給を受けて、後述する機構により音波発生部100B内の作動流体を振動させ、以下に説明するように50Hz以上500Hz以下の範囲内の、交流電力の周波数に応じた周波数の音波を発生する。このように音波発生部100Bでは、供給される交流電力の周波数を調整することで、音波発生部100Bに発生させる音波の周波数を調整できる。ここで、基本的に、音波の周波数が高いほど、得られる熱音響効果も大きく熱の運搬量(熱の汲み上げ量)が多くなる。また、基本的に、冷気・暖気発生システム全体のサイズが大きいほど、得られる熱音響効果も大きく熱の運搬量(熱の汲み上げ量)が多くなる。音波発生部100Bが発生する音波の周波数としては、冷気・暖気発生システム101の大型化を避けつつ電気自動車の冷暖房に十分な熱の運搬量(熱の汲み上げ量)を確保する観点から、50Hz以上の周波数が必要である。50Hz以上の周波数の中でも100Hz以上の周波数が好ましい。
【0029】
ただし、周波数が高くなるほど、冷気・暖気発生システム101の外部に伝わる音波のノイズが大きくなる。特に、特に電気自動車では、化石燃料を燃焼させる自動車に比べてエンジン音が小さいので、このようなノイズが認識されやすく、この問題は深刻である。音波によるノイズが、
図1の電気自動車1000に乗車している人にとって不愉快に感じられるほど耳障りになるのを回避する観点から500Hz以下の周波数であることが必要である。なお、200Hz以下の周波数が好ましい。
【0030】
まとめると、50Hz以上500Hz以下の周波数が必要である。特に、100Hz以上200Hz以下の周波数が好ましい。
【0031】
音波発生部100Bには、第1の伝播管100Cの一端が接続されており、第1の伝播管100Cの内部は、音波発生部100B内の作動流体と同じ種類の作動流体で満たされている。この第1の伝播管100C内の作動流体に音波発生部100B内の作動流体の振動が伝わることで、音波発生部100Bで発生した音波が、第1の伝播管100C内の矢印で示す向きに第1の伝播管100C内を伝播する。
【0032】
冷気・暖気発生部100Aには、第1の伝播管100Cの他端(上述の一端とは反対側の第1の伝播管100Cの端)が接続されており、第1の伝播管100C内を伝播してきた音波は冷気・暖気発生部100Aを通過する。ここで、冷気・暖気発生部100Aは、熱・音波変換部品1、暖気用熱交換器2、および冷気用熱交換器3を有している。
【0033】
熱・音波変換部品1は、熱・音波変換部品1の2つの端面の間で延びる複数のセル(後述の
図3および
図4で詳しく説明する)が形成されたハニカム構造体である。これら複数のセルは、2つの端面を貫通する細い管状の貫通孔である。これら複数のセルは、内部が上述の作動流体によって満たされ、冷気用熱交換器3を介して第1の伝播管100Cと連通している。第1の伝播管100C内を伝播してきた音波は、これら複数のセル内を進行し、この進行の際、この音波による熱音響効果により、熱・音波変換部品1の、音波の進行方向上流側の端面から、熱・音波変換部品1の、音波の進行方向下流側の端面に向かって熱が運ばれる。
【0034】
ここで、熱音響効果について簡単に説明する。細い管の両端部の間に温度差を与えることで、その細い管の延びる方向について細い管に温度勾配が形成されると、高温側では、細い管内部の流体(典型的には気体)は、細い管の内壁面から熱を吸収して高温側から低温側へ向けて膨張する。そして、流体は、その低温側で細い管の内壁面に対し熱を放出して収縮し元の高温側の方に戻る。このような流体と細い管の内壁面との間の熱の授受と、流体の膨張圧縮が繰り返されることで、結果的に、流体が、細い管が延びる方向に振動(自励振動)することとなる。この自励振動の逆現象として、細い管の内部を音波が伝播すると、細管の両端部間に温度勾配が形成されるという現象も起きる。この逆現象は、簡単に言えば、音波の進行により、細い管の一方の端部から他方の端部に熱が運ばれる現象だということができる。このように、温度勾配に起因して音波が発生する現象や、逆に、音波に起因して温度勾配が生じる現象は、熱音響効果と呼ばれている。特に、上述の熱・音波変換部品1における熱の運搬は、後者の、音波に起因して温度勾配が生じるという熱音響効果によるものである。
【0035】
再び
図2の冷気・暖気発生部100Aの説明を続ける。
【0036】
冷気・暖気発生部100Aには、熱・音波変換部品1を間に置いて、暖気用熱交換器2および冷気用熱交換器3の2つの熱交換器が設けられている。ここで、上述の第1の伝播管100Cの他端は、冷気用熱交換器3と接続されている。冷気用熱交換器3は、熱・音波変換部品1の、音波の進行方向上流側の端面に近接して設けられており、冷気用熱交換器3に流入する外気(冷気用熱交換器3に向かう点線矢印参照)から熱を受け取って、熱・音波変換部品1の、音波の進行方向上流側の端面にその熱を渡す。そして、冷気用熱交換器3は、熱を冷気用熱交換器3に渡した後の外気に相当する、外気よりも温度が低い空気である冷気(白抜きの太線矢印参照)を冷気用熱交換器3から流出させる。一方、暖気用熱交換器2は、熱・音波変換部品1の、音波の進行方向下流側の端面に近接して設けられており、音波の進行方向下流側の端面から熱を受け取って、暖気用熱交換器2に流入する外気(暖気用熱交換器2に向かう点線矢印参照)に渡す。そして、暖気用熱交換器2は、熱を暖気用熱交換器2から受け取った後の外気に相当する、外気よりも温度が高い空気である暖気(斜線の太線矢印参照)を暖気用熱交換器2から流出させる。
【0037】
すなわち、冷気・暖気発生部100Aは、熱・音波変換部品1の働きにより、冷気用熱交換器3に流入する外気から熱を受け取って、暖気用熱交換器2に流入する外気にその熱を渡すヒートポンプとして機能していることとなる。
【0038】
ここで、上述したように、第1の伝播管100Cは、音波発生部100Bと、冷気・暖気発生部100Aにおける冷気用熱交換器3との双方に接続され、音波発生部100Bで発生した音波を冷気・暖気発生部100Aに伝播する役割を果たしている。この第1の伝播管100Cが、本発明にいう伝播管の一例に相当する。
【0039】
ここで、
図2の冷気・暖気発生システム101は、この第1の伝播管100Cに加え、冷気・暖気発生部100Aにおける暖気用熱交換器2と、音波発生部100Bとの双方に接続された第2の伝播管100Dも有している。この第2の伝播管100D内も作動流体で満たされており、第2の伝播管100Dは、冷気・暖気発生部100Aを通過した音波を音波発生部100Bに戻す役割を果たしている。上述の、第1の伝播管100C、音波発生部100B、および冷気・暖気発生部100Aにこの第2の伝播管100Dが加わることで、
図2の冷気・暖気発生システム101では、全体としてループ状の音波の伝播経路が形成されている。作動流体は、このループ状の音波の伝播経路の中に閉じ込められて音波の伝播を担っており、音波は主に、このループ状の音波の伝播経路を、
図2の矢印で示す時計回りの向きに進行する。ここで、第1の伝播管100Cと第2の伝播管100Dの管径は異なっていてもよい。
【0040】
このループ状の音波の伝播経路の中に閉じ込められた作動流体の圧力は35atm以下である。35atm以上の場合、音波に起因するノイズが、
図1の電気自動車1000に乗車している人にとって不愉快に感じるほど耳障りなものになり得る。ここで、作動流体としては、たとえば、低粘性で反応性の低い希ガス等の気体を用いることができる。
【0041】
以下では、このループ状の音波の伝播経路に基づき説明を続けるが、本発明では、伝播管としては、必要最小限の要件として、音波発生部100Bで発生した音波を冷気・暖気発生部100Aに伝播する第1の伝播管100Cがあればよい。すなわち、本発明では、音波の伝播経路の形態は、
図2のようなループ状の形態以外に、上記の必要最小限の要件を満たす、熱音響効果の分野ではよく知られて様々な形態を採用することができる。これら採用可能な様々な形態については後述する。
【0042】
以下、
図2に示す冷気・暖気発生部100Aの構成の一具体例について説明する。
【0043】
図3は、
図2の冷気・暖気発生部100Aの構成の一具体例を表した模式図である。
【0044】
以下では、
図3を用いて、
図2の冷気・暖気発生部100Aの構成の一具体例について説明するが、
図2の構成要素と対応する構成要素については同一の符号を用いて説明する。特に、対応関係の明確化のため、一具体例である
図3の冷気・暖気発生部についても、
図2の冷気・暖気発生部100Aと同じ符号100Aを付して説明する。
【0045】
図3の冷気・暖気発生部100Aは、
図2の説明で上述したように、熱・音波変換部品1、暖気用熱交換器2、および冷気用熱交換器3を備えており、さらにこれらの構成要素に加えて、緩衝材12および筐体15も備えている。
【0046】
図3の熱・音波変換部品1は、熱・音波変換部品1の2つの端面の間で延びる複数のセル14を区画形成する隔壁11を備えている。複数のセル14はそれぞれが細い管状の貫通孔であり、本明細書では、「セル」という語を、隔壁を含まない貫通孔のみを指すものとして用いる。各セル14は、
図3の水平方向(左右方向)を貫通方向(各セル14が延びる方向)とし、冷気用熱交換器3側の端面および暖気用熱交換器2側の端面の両端面において開口する。また、
図3の熱・音波変換部品1は、これら2つの端面の外周部を繋いで隔壁11の全体を取り囲むことで熱・音波変換部品1の側面部を形成する外周壁13も備えている。
【0047】
筐体15は、熱・音波変換部品1と緩衝材12の全体を収容しており、緩衝材12は、熱・音波変換部品1の側面を取り巻くように、熱・音波変換部品1の外周壁13に圧接しながら筐体15と熱・音波変換部品1との間に配設されている。緩衝材12は、熱・音波変換部品1に対する外部からの衝撃や音波による振動の影響を吸収するとともに、筐体15内において、熱・音波変換部品1の位置を安定化する役割を果たしている。
【0048】
図4は、
図3のAA’線に沿った熱・音波変換部品1の断面図である。
【0049】
図4に示すように、熱・音波変換部品1は、複数のセル14が、隔壁11によって区画形成され、さらにそれら隔壁11の全体の外周を外周壁13で取り囲むことで形成されている。ここで、外周壁13の構成材料としては、隔壁11の構成材料と同じものを採用できる。
【0050】
上述の熱音響効果の説明から明らかなように、大きな熱音響効果を発揮して高いエネルギー効率を実現するには、開口面積が小さいセルが数多く存在している方が有利であり、従って、セル密度が高い方が有利である。
図4の熱・音波変換部品1は、セル14が延びる方向に垂直な熱・音波変換部品1の断面の中で、隔壁11の断面とセル14の断面とで占められている領域(以下、単にセル構造領域と呼ぶ・このセル構造領域には、たとえば外周壁の断面は含まれない)において、620セル/cm
2(4000 cells per square inch (cpsi))以上という高いセル密度を有している。この結果、熱・音波変換部品1が小型であっても高いエネルギー効率が実現されやすい。逆に、620セル/cm
2未満のセル密度では、熱音響効果に寄与する単位面積当たりのセルの数が少なすぎてあまり大きな熱音響効果は得られない。
【0051】
ただし、セル密度が高すぎると、熱・音波変換部品の端面におけるセルの開口の水力直径がきわめて小さいことで、作動流体が熱・音波変換部品の端面から受ける流動抵抗が大きくなってしまう。この場合、音波エネルギーが、熱音響効果ではなく熱・音波変換部品の振動に消費されやすくなり、この結果、熱・音波変換部品の振動に伴うノイズの発生や、エネルギー効率の低下といった事態が起こり得る。そこで、熱・音波変換部品1ではセル密度は3100セル/cm2(20000cpsi)以下に抑えられている。逆に、セル密度が3100セル/cm2より大きいと、作動流体が熱・音波変換部品の端面から受ける流動抵抗が大きいことにより、熱・音波変換部品1の振動によるノイズの発生やエネルギー効率の低下が無視できなくなる。
【0052】
まとめると、熱・音波変換部品1では、セル構造領域におけるセル密度が620セル/cm2以上3100セル/cm2以下となることで、熱・音波変換部品1の小型化、高いエネルギー効率、および、ノイズ抑制がバランス良く実現している。なお、620セル/cm2以上3100セル/cm2以下のセル密度の中でも700セル/cm2以上800セル/cm2以下のセル密度が好ましい。
【0053】
なお、上記セル密度は、セル14が延びる方向に垂直な断面を顕微鏡で撮影しその断面の撮影画像からセル構造領域の面積Sとセルの総数Nとを求めたときのN/Sの値として求められる。
【0054】
また、熱・音波変換部品1では、隔壁11の構成材料(外周壁13が隔壁11と同一の材料で構成されている場合には外周壁13の構成材料でもある)の熱伝導率が、5.0W/mK以下の低い熱伝導率となっている。仮に熱伝導率が5.0W/mKより大きい場合には、各セル14内の作動流体と隔壁11との間で熱の授受が不十分なまま隔壁11を熱が伝導しやすくなり、十分な熱音響効果が得られない。これに対し、熱伝導率が5.0W/mK以下の低い熱伝導率となることで、各セル14内の作動流体と隔壁11との間で熱の授受が十分に行われ、十分な熱音響効果が得られる。ここで、5.0W/mK以下の熱伝導率を実現する1つの方法としては、隔壁11の構成材料(外周壁13が隔壁11と同一の材料で構成されている場合には外周壁13の構成材料でもある)としてコージェライトを採用することが挙げられる。なお、5.0W/mK以下の熱伝導率の中でも、1.5W/mK以下の熱伝導率であることが好ましい。ただし、熱伝導率が小さすぎると、今度は、隔壁11の一部に熱が供給されても隔壁11の他の部分には熱が伝わらず結果的に熱音響効果が起きにくくなるので、少なくとも0.01W/mK以上の熱伝導率であることが好ましい。
【0055】
ここで、熱伝導率は、温度傾斜法(定常法)で求められる。具体的には、以下のようにして求められる。まず、熱伝導率の測定対象から板状のテストサンプルを切り出し、その板状のテストサンプルを熱伝導率が既知のスペーサ(たとえば銅やステンレス等の金属)で挟む。次に、その片面を30~200℃に加熱し、反対面を20~25℃に冷却することにより、テストサンプルの厚さ方向に一定の温度差を設ける。そして、伝播する熱流量をスペーサ内の温度勾配により求め、この熱流量を温度差で割り算して熱伝導率を算出する。
【0056】
また、熱・音波変換部品1全体において外周壁13が占める割合が十分に大きいことが好ましい。具体的には、セル14が延びる方向に垂直な熱・音波変換部品1の断面の円相当直径をDとし、この断面の中で隔壁11の断面とセル14の断面とで占められている領域すなわちセル構造領域の円相当直径をdとしたときに、比率d/Dが0.94以下であることが好ましい。ここで、円相当直径とは、円相当直径を求める対象となる領域の面積をSとしたときに2×(S/π)
1/2として定義される長さを指す。
図4では、一例として、熱・音波変換部品1の断面が円形であって、セル構造領域も円形である場合が図示されている。この場合、熱・音波変換部品1の断面の円相当直径Dはこの断面の円形の直径であり、セル構造領域の円相当直径dはこのセル構造領域の円形の直径である。
【0057】
比率d/Dが0.94以下であるとは、大雑把に言えば、外周壁13が、従来から用いられているハニカム構造体の外周壁と比べ、かなり分厚いことを意味する。実際、たとえば、自動車の排気ガス浄化用のフィルターとして用いられるハニカム構造体では、基本的に外周壁は、隔壁とセルとで構成されている部分を外側から保護するのに十分な厚さがあればよく、排気ガス浄化装置の大型化を避けるため、比率d/Dは0.96以上であることが一般的である。特に、近年のハニカム構造体は、隔壁の耐久性が向上しているため、外周壁が薄くなる傾向が強く、場合によっては不要なこともある。この点は、熱音響効果を利用する従来のヒートポンプにおいて熱・音波変換を担っているハニカム構造体も同様である。
【0058】
熱・音波変換部品1では、比率d/Dが0.94以下であることで、熱・音波変換部品1全体のうちの、隔壁11およびセル14からなるセル構造が形成されている部分(以下、単にセル構造体と呼ぶ)を音波が通過する際に、セル構造体の振動が外周壁13により十分に抑制される。この結果、熱・音波変換部品1およびその周辺が振動することに起因するノイズが抑えられる。なお、同時に、セル構造体の振動によるセル構造体の損傷も回避することができる。さらに、音波のエネルギーが、熱・音波変換部品1の振動ではなく熱音響効果の発現(温度勾配の形成)にもっぱら用いられることとなるため、エネルギー効率も向上する。逆に、比率d/Dが0.94より大きい場合、音波のエネルギーが熱音響効果の発現に十分に用いられず熱・音波変換部品1およびその周辺の振動に用いられてしまうため、高いエネルギー効率や高いノイズ抑制効果は得られない。
【0059】
ただし、比率d/Dが小さすぎると、外周壁13が熱・音波変換部品1全体に占める割合が大きすぎるため、熱・音波変換部品1の大きさに相当する十分な熱音響効果は得られず、熱・音波変換部品1の単位体積あたりの熱運搬量(外気の加熱エネルギーに相当)が減る。このため、十分な熱音響効果を得るためには熱・音波変換部品1の大型化が必要となり、冷気・暖気発生システムの小型化の要請に反する結果となる。また、外周壁13に熱が逃げやすくなって(外周壁13に熱がこもりやすくなって)、エネルギー効率が下がるようになる。このため、熱・音波変換部品1では、比率d/Dは0.6以上に押さえられている。比率d/Dが0.6未満の場合、熱・音波変換部品1の単位体積あたりの熱運搬量が少なすぎ、熱・音波変換部品1の大型化が必要となる。また、高いエネルギー効率が得られにくくなる。
【0060】
まとめると、熱・音波変換部品1では、エネルギー効率の向上、熱・音波変換部品1の大型化の抑制、およびノイズ抑制の観点から、比率d/Dが0.6以上0.94以下であることが好ましい。なお、0.6以上0.94以下の比率d/Dの数値範囲の中でも、0.8以上0.9以下の数値範囲がさらに好ましい。
【0061】
熱・音波変換部品1では、隔壁11と外周壁13との間の接合力が強く上述の比率d/Dの数値範囲の効果が十分に確保できることから、隔壁11と外周壁13とが一体的に形成されていることが好ましい。ここで、「一体的に形成」とは、同一材料を用いた押出成形で同時に形成されることを指す。なお、隔壁11の全体と外周壁13の全体とが一体的に形成されていることが、接合力が特に強いことからさらに好ましい。
図3および
図4には、このように隔壁11の全体と外周壁13の全体とが一体的に形成された一具体例が図示されている。ただし、本発明では、隔壁11の一部と外周壁13の一部とが一体的に形成されてなるセグメントを複数作製し、それら複数のセグメントを接合することで構成された、セグメント構造を有する熱・音波変換部品が採用されてもよい。
【0062】
図5は、セグメント構造を有する熱・音波変換部品1’の構成を表した図であり、
図6は、
図5のCC’線に沿った熱・音波変換部品1’の断面図である。
【0063】
図5および
図6では
図3および
図4と同じ構成要素については同じ符号を付しており、その重複説明は省略する。
図5および
図6に示すように、セグメント構造を有する熱・音波変換部品1’では、熱・音波変換部品1’全体のうちの、隔壁11およびセル14からなるセル構造が形成されている部分(セル構造体)および外周壁13は、複数の部分(以下、セグメント16と呼ぶ)に分かれている。ここで、各セグメント16は、熱・音波変換部品1’のセル構造体の一部を構成する部分と、熱・音波変換部品1’の外周壁13の一部を構成する部分とが、一体的に形成されることで作製されたものである。これら複数のセグメント16は、接合部17により互いに接合されている。熱・音波変換部品1’では、接合部17の存在により、外部の衝撃に対する耐久性が向上するという長所がある。その一方で、この接合部17が存在することで、接合部17が存在しない
図3および
図4の熱・音波変換部品1に比べ、相対的にセル14の数が減って作動流体が流れにくくなり、エネルギー効率向上の観点からは不利となる。なお、セグメント構造を有する熱・音波変換部品1’においては、セル14が延びる方向に垂直な熱・音波変換部品1’の断面の円相当直径をDとし、この断面の中で隔壁11の断面とセル14の断面とで占められている領域すなわちセル構造領域の円相当直径をdとしたときに(たとえば
図6参照)、比率d/Dが0.6以上0.94以下であることが好ましく、0.8以上0.9以下がさらに好ましい。なお、セル構造領域は複数の部分に分かれているが、その複数の部分の面積の総和を上述の円相当直径の定義における面積Sとしてその円相当直径dが求められる。これらの数値範囲は、
図3および
図4の熱・音波変換部品1の説明で上述したものと同じであり、数値範囲の意義も、
図3および
図4の熱・音波変換部品1の説明で上述した通りである。実際、接合部17の断面の面積はセル構造領域の面積や外周壁13の面積と比べて十分に小さいので、接合部17が存在していたとしても、
図3および
図4の熱・音波変換部品1の説明で上述したのと同じ数値範囲で同じような効果が発揮されることとなる。
【0064】
以下、
図3および
図4に戻って、
図3および
図4の熱・音波変換部品1の説明を続ける。
【0065】
熱・音波変換部品1は、
図2で上述した音波発生部100Bが発生する周波数の高い音波にさらされるため、音波の振動に対する高い耐久性を持つことが望まれる。このため、熱・音波変換部品1では、セル構造体のヤング率が7GPa以上であることが好ましい。熱・音波変換部品1は、このような高いヤング率を持つことで、音波の振動に合わせて柔軟に変形することができる。この柔軟な伸縮により振動が緩和され、音波の振動に対する耐久性が向上する。なお、セル構造体のヤング率は、11GPa以上であることが音波に対する特に高い耐久性を発揮するためにさらに好ましい。
【0066】
なお、ヤング率の上限値に関しては特に制限がないが、28GPa以下であることが好ましい。一般に、ハニカム構造体におけるセル構造体のヤング率が28GPaより大きい場合とは、隔壁材料自体がきわめて緻密で隔壁材料の密度がきわめて高い場合に相当する。セラミック材料で構成された大きな開口率を有する(たとえば開口率70%以上の開口率を有する)ハニカム構造体では、セル構造体がこのように高いヤング率を持つことは、通常あり得ない。
【0067】
ここで、ヤング率は、JIS R1602に準拠する曲げ共振法によって測定・算出する。具体的には、まず、熱・音波変換部品1から外周壁13を取り除いた、隔壁11とセル14とでセル構造が形成されている残りの部分(セル構造体)から2mm×6mm×50mmの大きさの試験片を切り出してその一次共振周波数を、上記曲げ共振法に基づく一次共振周波数測定方法により測定する。ここで、上記の50mmは、セル14が延びる方向に沿った試験片の長さであり、上記の6mmは、セル14が延びる方向に垂直な方向に沿った試験片の幅である。また、上記の2mmは、セル14が延びる方向および上記の試験片の幅の方向の双方に垂直な方向に沿った試験片の厚さである。なお、熱・音波変換部品1ではセル密度が十分に高いため、試験片を熱・音波変換部品1から切り出す際に、セル14が延びる方向に垂直な面内において幅の方向と厚さの方向の取り方を変えたとしても、ヤング率の算出結果にはほとんど影響しない。試験片の切り出し後、試験片の質量M(kg)を測定する。そして、JIS R1602の曲げ共振法で定められたヤング率の算出式に基づき、上記の一次共振周波数、上記の試験片の質量M(kg)、上記の試験片の大きさ(長さ、幅、および厚さ)からヤング率を求める。このようにして求められたヤング率がセル構造体のヤング率である。
【0068】
また、熱・音波変換部品1では、セル14が延びる方向に垂直な前記セルの断面形状は、角部が弯曲した多角形の形状であり、その形状の角部における曲率半径が0.02mm以上0.1mm以下であることが好ましい。
図4では、セル14の形状の例としては、角部が弯曲した正方形の形状が図の右上の拡大図に示されており、この角部の曲率半径は0.02mm以上0.1mm以下となっている。曲率半径が0.02mm以上であることでその緩やかに弯曲した形状により、セル14を押しつぶすように働く衝撃に対し十分に対抗できる。これは、トンネル等の穴の形状としては、丸みを帯びた形状の方が角ばった形状よりも、周囲からの外力に対抗しやすいのと同様の理由に基づくものである。ただし、弯曲部分が大きすぎると、今度は、各セルの角部付近で隔壁11が分厚くなって開口率が減少し、得られる熱音響効果が小さくなる。そこで、曲率半径が0.1mm以下となっていることで、同時に高い熱音響効果も維持されている。
【0069】
なお、セル14の角部における曲率半径については、セル14が延びる方向に垂直な熱・音波変換部品1の断面の拡大写真をとり、そのセル14の断面形状に基づき測定することができる。
【0070】
セル14が延びる方向に垂直な面内でのセル14の形状としては、三角形、四角形、五角形、六角形等の様々な多角形、および、楕円形(真円の形状含む)を採用できるが、三角形、四角形、六角形、およびこれらの組み合わせが好ましく、
図4の熱・音波変換部品1の右上のセル14の拡大図のような四角形、あるいは、三角形のセルが特に好ましい。四角形や三角形の形状が特に好ましいのは、様々な多角形および楕円形のセル形状のうち、隔壁の厚さをできるだけ薄くして数多くのセルを配列させるのに適しているからである。
【0071】
また、熱・音波変換部品1を構成する隔壁11や外周壁13は、コージェライト、ムライト、アルミニウムチタネート、アルミナ、窒化珪素、炭化珪素、珪素(金属珪素)、および耐熱性樹脂のうちの1つ、あるいは、2つ以上の組み合わせを主成分とするものであることが好ましい。ここで、本願では、「主成分とする」とは、全体の質量の50質量%以上を占めることを意味する。
【0072】
以上が、
図3および
図4の熱・音波変換部品1の構成の詳細な説明である。次に、
図3の暖気用熱交換器2および冷気用熱交換器3について説明する。
【0073】
冷気用熱交換器3は冷気用内周管33を有しており、冷気用内周管33の一端は第1の伝播管100Cと接続され、冷気用内周管33の他端は熱・音波変換部品1の筐体15と接続されている。冷気用内周管33は、熱・音波変換部品1の各セル14および第1の伝播管100Cと挿通しており、作動流体で満たされている。第1の伝播管100C内の実線矢印で示す向きに第1の伝播管100C内を進行してきた音波は、冷気用内周管33を通って熱・音波変換部品1の各セル14内に進行する。ここで、冷気用熱交換器3は、冷気用内周管33の内壁面から冷気用内周管33の内側に向かって突き出している複数の内側フィン31を有している。また、冷気用熱交換器3は、第1の外気管100E、および、冷気管100Gの双方と結合している。
図1に示す電気自動車1000の外部の空気(外気)は、第1の外気管100Eを通って冷気用熱交換器3に流入し、温度が低下した冷気となって冷気管100Gを通って流出する(以下の説明参照)。ここで、冷気用熱交換器3は、冷気用熱交換器3内のこの空気の流路上において複数の外側フィン32を有しており、外側フィン32は、冷気用内周管33の外壁面から冷気用内周管33の外側に向かって突き出している。
【0074】
図3の点線矢印で示すように第1の外気管100Eを通って冷気用熱交換器3に流入してきた空気、すなわち外気は、外側フィン32に熱を渡して冷気となり、
図3の白抜きの太線矢印で示すように冷気管100Gを通って流出する。ここで、第1の外気管100Eを通って冷気用熱交換器3に流入してきた外気が、本発明にいう第1の外気の一例に相当する。外側フィン32に渡された熱は、冷気用内周管33を介して内側フィン31に渡される。内側フィン31に渡された熱は、作動流体を介して熱・音波変換部品1の
冷気用熱交換器
3側の端部に渡され、熱・音波変換部品1による熱音響効果により、熱・音波変換部品1の暖気用熱交換器2側の端部に熱が送られる。
【0075】
暖気用熱交換器2は暖気用内周管23を有しており、暖気用内周管23の一端は熱・音波変換部品1の筐体15と接続され、暖気用内周管23の他端は第2の伝播管100Dと接続されている。暖気用内周管23は、熱・音波変換部品1の各セル14および第2の伝播管100Dと挿通しており、作動流体で満たされている。各セル14内を進行してきた音波は、暖気用内周管23を通って第2の伝播管100D内の実線矢印で示す向きに第2の伝播管100D内を進行する。ここで、暖気用熱交換器2は、暖気用内周管23の内壁面から暖気用内周管23の内側に向かって突き出している複数の内側フィン21を有している。また、暖気用熱交換器2は、第2の外気管100F、および、暖気管100Hの双方と結合している。
図1に示す電気自動車1000の外部の空気(外気)は、第2の外気管100Fを通って暖気用熱交換器2に流入し、温度が上昇した暖気となって暖気管100Hを通って流出する(以下の説明参照)。ここで、暖気用熱交換器2は、暖気用熱交換器2内のこの空気の流路上において複数の外側フィン22を有しており、外側フィン22は、暖気用内周管23の外壁面から暖気用内周管23の外側に向かって突き出している。
【0076】
熱・音波変換部品1の暖気用熱交換器2側の端部に送られてきた熱は、作動流体を介して内側フィン21に渡される。内側フィン21に渡された熱は、暖気用内周管23を介して外側フィン22に渡される。
図3の点線矢印で示すように第2の外気管100Fを通って暖気用熱交換器2に流入してきた空気、すなわち外気は、外側フィン22から熱を渡されて暖気となり、図の斜線の太線矢印で示すように暖気管100Hを通って流出する。ここで、第2の外気管100Fを通って暖気用熱交換器2に流入してきた外気が、本発明にいう第2の外気の一例に相当する。
【0077】
ここで、冷気用熱交換器3の構成は、暖気用熱交換器2の構成と同一であってもよい。以下、冷気用熱交換器3の構成は暖気用熱交換器2の構成と同一であるとして、暖気用熱交換器2に代表させて、これら2つの熱交換器の構成をさらに詳しく説明する。
【0078】
図7は、
図3のBB’線に沿った暖気用熱交換器2の断面図である。
【0079】
図7に示すように、暖気用熱交換器2は、暖気用内周管23の外側に暖気用外周管24を備えている。
図7の点線矢印で示すように第2の外気管100Fを通って暖気用熱交換器2に流入してきた外気は、暖気用内周管23および暖気用外周管24で囲まれた空間内を、図の実線矢印で示すように、暖気用内周管23を回り込むように二手に分かれて流れる。その際、外気が外側フィン22から熱を受け取ることで外気は暖気となり、図の斜線の太線矢印で示すように暖気管100Hを通って流出する。ここで、暖気用外周管24の周囲は断熱材25で覆われており、断熱材25は、熱が暖気用外周管24の外部に逃げるのを抑える働きをしている。以上では、暖気用熱交換器2の構成について説明したが、冷気用熱交換器3も同様の構成を備えている。
【0080】
なお、本発明では、
図3および
図7で説明した暖気用熱交換器2とは別の構成の暖気用熱交換器が採用されてもよい。
【0081】
図8は、
図3および
図7で説明した暖気用熱交換器2とは別の構成の暖気用熱交換器2’を表した図である。
【0082】
図8では、同一の構成要素については同一の符号を付し、その重複説明は省略する。暖気用熱交換器2’は、熱・音波変換部品1の筐体15と接続されているとともに第2の伝播管100Dと接続されており、
図3の熱・音波変換部品1の各セル14および第2の伝播管100Dと挿通している。暖気用熱交換器2’は、暖気用熱交換器2’を貫通する作動流体用スリット22’を有しており、各セル14内を進行してきた音波は、作動流体用スリット22’を通って第2の伝播管100D内の実線矢印で示す向きに第2の伝播管100D内を進行する。また、暖気用熱交換器2は、第2の外気管100F、および、暖気管100Hの双方と結合している。暖気用熱交換器2’は、暖気用熱交換器2’を貫通する外気用スリット21’を有しており、外気は、
図8の点線矢印で示すように第2の外気管100Fを通って暖気用熱交換器2’に流入し、外気用スリット21’を通って暖気となって暖気用熱交換器2’から流出する。作動流体用スリット22’および外気用スリット21’は暖気用熱交換器2’内で交差しないようになっており、このため、外気は、作動流体と混ざり合うことはないが、暖気用熱交換器2’の外気用スリット21’を通る際に暖気用熱交換器2’を介して作動流体から熱を受け取ることができる。この受け取った熱により外気は暖気となり、図の斜線の太線矢印で示すように暖気管100Hを通って流出する。以上では、暖気用熱交換器2’の構成について説明したが、冷気用熱交換器についても同様の構成を採用できる。
【0083】
以上が、
図3の冷気・暖気発生部100Aの構成のついての説明である。
【0084】
次に、図2の音波発生部100Bの構成について詳しく説明する。
【0085】
図9は、図
2の音波発生部100Bの構成を表した図である。
【0086】
音波発生部100Bは、交流電力の供給を受けると、磁界を直線方向について変動させることで直線方向の振動力を生じるリニアモータを有する音波発生デバイスである。音波発生部100Bは、金属製の薄板であるダイヤフラム46、ダイヤフラム46の2つの端部にそれぞれ固定され強磁性体の金属膜を積層してなる2つの可動金属部材44、および、音波発生部100Bの構成要素を収容する筐体40を有している。また、音波発生部100Bは4つの板バネ41を有しており、これら4つの板バネ41の一端は、2つの可動金属部材44それぞれの、互いに対向する2つの側面に固定されている。4つの板バネ41の他端は筐体40に固定されており、ダイヤフラム46および2つの可動金属部材44は、これら4つの板バネ41の弾性によって
図9の白抜きの太線矢印の方向に振動可能な状態で、これら4つの板バネ41を介して筐体40に支持されている。さらに、音波発生部100Bは、強磁性体の金属膜を積層してなる固定金属部材45、固定金属部材45を取り囲むコイル42、および、固定金属部材45の面上に固定された永久磁石43、からなる、変動磁界発生用の構成要素の組を2組有している。ここで、永久磁石43は、永久磁石43のN極側部分43aおよびS極側部分43bの双方が固定金属部材45の上記の面上に配置された状態で固定金属部材45に固定されている。これら2つの変動磁界発生用の構成要素の組は、永久磁石43と可動金属部材44が互いに近接した状態となるようにダイヤフラム46を間に置いて互いに対向した状態で配置されている。ここで、固定金属部材45およびコイル42は、不図示の機構により筐体40に固定されており、ダイヤフラム46および2つの可動金属部材44が振動しても、その振動に連動して動くことはない。
【0087】
筐体40は、第1の伝播管100Cおよび第2の伝播管100Dの双方と接続しており、筐体40の内部は、作動流体で満たされている。供給された交流電力によりコイル42に交流電流が流される前は、N極側部分43a付近の磁界、および、S極側部分43b付近の磁界は、磁界の向きが異なることを除けばその強さ自体は同程度である。このため、
図9で示すように、可動金属部材44は、
図9の水平方向(2つの白抜きの太線矢印の方向)についてN極側部分43aとS極側部分43bの間に位置することとなる。しかし、コイル42に交流電流が流されて、電磁石の原理により、たとえば、可動金属部材44に対向する固定金属部材45の端部がN極となった時には、N極側部分43a付近の磁界が強まり、S極側部分43b付近の磁界は弱まる。この結果、可動金属部材44は、N極側部分43aの方へ引き寄せられる。そして、コイル42を流れる交流電流の向きが切り替わると、上記の固定金属部材45の端部が今度はS極となってS極側部分43b付近の磁界が強まり、N極側部分43a付近の磁界は弱まる。この結果、可動金属部材44は、今度は、S極側部分43bの方へ引き寄せられる。このような交流電流の電流変化に伴い、2つの可動金属部材44に固定されているダイヤフラム46は、
図9の水平方向(2つの白抜きの太線矢印の方向)に振動し、このダイヤフラム46の振動により、作動流体が振動して、交流電流の周波数に応じた周波数を有する音波が発生する。ここで、2つのコイル42に流される交流電流の位相と振幅は、2つの可動金属部材44がそれぞれ変動磁界により受ける
図9の水平方向の力が同じ向きの同じ力であって、2つの可動金属部材44がそれぞれ変動磁界により受ける
図9の上下方向の力が互いに相殺するように調整されている。この結果、ダイヤフラム46の振動の方向は、ほぼ
図9の水平方向のみであり、上下方向にはダイヤフラム46があまり振動しないようになっている。このように音波発生部100Bは、交流電力の供給を受けると
図9の水平方向について磁界を直線的に変動させてダイヤフラム46をこの方向に振動させるというリニアモータ方式を採用している。
【0088】
ここで、2つの固定金属部材45、2つのコイル42、2つの永久磁石43、2つの可動金属部材44、および4つの板バネ41を合わせたものが本発明にいうリニアモータの一例に相当する。
【0089】
なお、音波発生部100Bで発生した音波は、原理的には、音波発生部100Bから第1の伝播管100C内および第2の伝播管100D内の2つの方向に進行し得るが、時間の経過とともに、一方の方向に進行する音波が優勢となる。
図3では、その優勢になった音波の方向を、実線矢印で表している。
【0090】
ここで、ノイズ抑制およびエネルギー効率の観点から、発生する音波の周波数が50Hz以上500Hz以下の範囲内の周波数となるように、音波発生部100Bに供給される交流電力の周波数が選択される。
【0091】
ただし、交流電力の周波数に多少の広がりがあるといった理由により、発生する音波の周波数成分に、500Hzより高い高周波数の成分や50Hzより低い低周波数の成分が混ざりやすい場合もある。このような場合、単に交流電力の周波数の選択のみによってこのような高周波数や低周波数の音波の発生を防止するのは十分でないこともある。このため、
図9の音波発生部100Bでは、4つの板バネ41、ダイヤフラム46、および、2つの可動金属部材44からなる振動系の固有振動数を調節することで、たとえ交流電力の周波数に多少の広がりがある状況であっても、発生する音波の周波数が上記の範囲内に収まるようにしている。この振動系の固有振動数の調節は、たとえば、この振動系の構成要素の質量や板バネ41のバネ定数を調整する(材料や大きさ等を選択する)ことにより行うことができる。
図9の音波発生部100Bでは、このような構成により、上述の高周波数の音波や低周波数の音波をかなり防止できる。ただし、音波発生部の音波発生機構自体に、上述の高周波数の音波や低周波数の音波の発生を積極的に防止する周波数フィルタリング機能が存在していると、上述の高周波数や低周波数の音波の発生が、より確実に防止されるため好ましい。以下では、この好ましい形態について説明する。
【0092】
図10は、
図9の音波発生部100Bの変形例である、周波数フィルタリング機能を持つ音波発生部101Bの構成を表した図である。
【0093】
図10では、
図9と同一の構成要素については同一の符号を付し、その重複説明は省略することがある。
図10の音波発生部101Bは、
図9の音波発生部100Bの各構成要素に加えて、
図10の水平方向に延び、ダイヤフラム46を貫通する態様でダイヤフラム46に固定されている接続部材47と、接続部材47の両端部にそれぞれ固定された2つの板状部材48とを有している。また、音波発生部101Bは、平面状の部材がジャバラ状(折りたたみ式のカーテン状)に折りたたまれた形状を持つ4つのジャバラ状部材49を有しており、これら4つのジャバラ状部材49の一端は、2つの板状部材48それぞれの、互いに対向する2つの側面に固定されている。4つの
ジャバラ状部材49の他端は、第1の伝播管100Cあるいは第2の伝播管100Dに固定されており、接続部材47および2つの板状部材48は、これら4つのジャバラ状部材49のジャバラ状の形状の起因する伸縮力によって図
10の白抜きの太線矢印の方向に振動可能な状態で、これら4つの板バネ41を介して筐体40に支持されている。このような構成により、
図10の音波発生部101Bでは、
図9で上述した機構により2つの可動金属部材44およびダイヤフラム46が
図10の水平方向に振動する際には、2つの可動金属部材44およびダイヤフラム46の振動とともに、接続部材47および2つの板状部材48も振動する。このときの2つの板状部材48の振動により作動流体が振動すると、この作動流体の振動により音波が発生する。
【0094】
ここで、2つの板状部材48には、貫通孔を形成する孔部50がそれぞれ設けられており、2つの板状部材48および4つのジャバラ状部材49は、2つの孔部50を除き、第1の伝播管100Cおよび第2の伝播管100Dを封止している。この結果、第1の伝播管100Cの筐体40との接続部付近、第2の伝播管100Dの筐体40との接続部付近、2つの板状部材48、4つのジャバラ状部材49、および筐体40は、2つの孔部50を除いて閉じた空間を形成することとなる。ただし、2つの板状部材48(およびダイヤフラム46、接続部材47、2つの板状部材48、4つのジャバラ状部材49)が静止しているときには、2つの孔部50の存在により、その閉じた空間内の圧力は、その閉じた空間の外側にある、第1の伝播管100Cおよび第2の伝播管100Dの内部の空間とほぼ同じ圧力に保たれている。
【0095】
ここで、2つの板状部材48の振動の周波数がきわめて高い場合、高い周波数の音波の振幅は通常それほど大きくないので2つの板状部材48の振動中に作動流体が孔部50に進入することによる振幅の実効的な減少が無視できず、実際上、音波の減衰が引き起こされることとなる。この結果、実質的に、作動流体を振動させる効果が起きず、音波が発生しない。逆に、2つの板状部材48の振動の周波数がきわめて低い場合、2つの板状部材48の振動の周期が長すぎるので、2つの板状部材48の振動中に作動流体が孔部50を通過する充分な時間があることになる。このため、2つの板状部材48が振動しても作動流体は孔部50をすり抜けてしまい、板状部材48の両側には圧力差が生じない。この結果、実質的に、2つの板状部材48付近の作動流体を振動させる効果が起きず、やはり音波が発生しない。一方、2つの板状部材48の振動の周波数が、このようなきわめて高い周波数ときわめて低い周波数との間の周波数である場合には、2つの板状部材48付近の作動流体は、2つの板状部材48の振動に追従して振動し音波が発生する。この結果、
図10の音波発生部101Bでは、音波発生部101Bに供給される交流電力に非常に高い周波数の成分や非常に低い周波数の成分が含まれていたとしても、その非常に高い周波数成分に応じた上述のきわめて高い周波数(高周波数)の音波やその非常に低い周波数成分に応じた上述のきわめて低い周波数(低周波数)の音波は発生せずに、それらの間の周波数の音波のみが発生することとなる。すなわち、
図10の音波発生部101Bでは、高周波数の成分や低周波数の成分がカットされた音波を発生することとなる。ここで、カットされる高周波数の閾値や低周波数の閾値は、孔部50の大きさ(貫通孔の深さおよび孔径)によって決まり、基本的には、孔部50が小さいほど、カットされずに残る音波の周波数の範囲が広く、孔部50が大きいほど、カットされずに残る音波の周波数の範囲が狭くなる。具体的には、
図10の音波発生部101Bでは、孔部50は、2つの板状部材48が500Hzより高い高周波数あるいは50Hzより低い低周波数で振動する際には、作動流体を孔部50に進入させること、あるいは、作動流体に孔部50を通過させることにより、この高周波数あるいはこの低周波数での前記作動流体の振動を抑制し、2つの板状部材48が50Hz以上500Hz以下の範囲内の周波数で振動する際には、この範囲内のこの周波数での作動流体の振動を許すという周波数フィルタリング機能が発揮される大きさの貫通孔を形成している。この結果、
図10の音波発生部101Bでは、音波発生部101Bに供給される交流電力の周波数にかかわらず、50Hz以上500Hz以下の範囲内の周波数の音波のみが発生することとなる。
【0096】
なお、
図10では、孔部50の数は、一例として、1つの板状部材48につき1つであるが、本発明では、孔部50の数はもっと多くてもよい。ここで、50Hz以上の周波数の音波を確保する観点から孔部50を通過する際に作動流体が受ける流動抵抗が、ある程度大きいことが必要であり、孔部50の孔径は1mm以下であることが好ましい。ただし、500Hzより大きい高周波数の音波を減衰させる効果を得るためには、ある程度の孔部50の総容積が必要であり、こうした孔径の孔部50を複数個設けることが好ましい。なお、以上の説明における「孔径」とは、孔部50の延びる方向(すなわち貫通孔の貫通方向)に垂直な面内における孔部50の断面形状の円相当直径(定義について上述)を指す。すなわち、孔部50の断面形状は円形に限定されず、たとえば、スリットの長方形の断面形状であってもよい。このようなスリット状の貫通孔を形成する孔部の場合、孔部の数を大きくする代わりに、ある程度の大きさの流動抵抗を得るための上述の条件を満たしつつ長方形の断面形状の長辺の長さを長くしてもよい。
【0097】
ここで、2つの固定金属部材45、2つのコイル42、2つの永久磁石43、2つの可動金属部材44、および4つの板バネ41を合わせたものが本発明にいうリニアモータの一例に相当する。また、ダイヤフラム46、接続部材47、2つの板状部材48、および4つのジャバラ状部材49を合わせたものが本発明にいう封止振動部材の一例に相当する。
【0098】
なお、厳密に言えば、上述の閉じた空間内では、ダイヤフラム46や2つの板状部材48の振動による音波が発生するが、この閉じた空間内における音波の反射・拡散により、ほとんどが互いに相殺してしまい、その音波の影響は、無視できるほど十分に小さい。
【0099】
以上説明した
図2の冷気・暖気発生システム101では、全体としてループ状の伝播管が採用されていた。しかしながら、本発明では、伝播管の形状としては、必要最小限の要件として、音波発生部100Bで発生した音波を冷気・暖気発生部100Aに伝播する経路があればよく、この要件を満たす他の形態も採用できる。たとえば、全体としてループ状の形態以外に、熱音響効果の分野ではよく知られて様々な形態を採用することができる。ここで、上記の要件を満たす冷気・暖気発生システムのバリエーションについて説明する。
【0100】
図11は、伝播管の形状に関する、
図2の冷気・暖気発生システム101の1つのバリエーションである冷気・暖気発生システム102を表した図である。
【0101】
図11では、
図2の冷気・暖気発生システム101と同一の構成要素については同一の符号を付し、その重複説明は省略する。
図11の冷気・暖気発生システム102は、上述の冷気・暖気発生部100Aに加え、冷気・暖気発生部100Aの両端の2つの熱交換器2,3に接続されたループ状伝播管100D’と、このループ状伝播管100D’の途中に一端が接続された直線状伝播管100C’とを有している。また、
図11の冷気・暖気発生システム102は、直線状伝播管100C’ の他端が接続された音波発生部100B’を有している。音波発生部100B’が音波を発生すると、十分な時間の経過後には、ループ状伝播管100D’中を
図11の実線矢印の向きに進む進行波の音波が発生し、直線状伝播管100C’には音波の定在波が発生する。
図11では、音波発生部100B’から冷気・暖気発生部100Aに至る音波の伝播経路を形成する、直線状伝播管100C’と、ループ状伝播管100D’の一部とを合わせたものが、本発明にいう伝播管の一例に相当する。
【0102】
図12は、
図11の冷気・暖気発生システム102における音波発生部100B’の構成を表した図である。
【0103】
図12では、
図9の音波発生部100Bと同一の構成要素については同一の符号を付し、その重複説明は省略することがある。
図12の音波発生部100B’は、電力の供給を受けると、磁界を直線方向について変動させることで直線的な動力を生じるリニアモータ方式の音波発生デバイスである。音波発生部100B’は、板状部材48’、板状部材48’の表面に一端が固定されこの表面から延びる2つの接続部材47’、2つの接続部材47’の先端に固定された2つの可動金属部材44、および、音波発生部100
B’の構成要素を収容する筐体40’を有している。また、音波発生部100B’は2つの板バネ41’を有しており、これら2つの板バネ41’の一端は板状部材48’に接続し、2つの板バネ41’の他端は筐体40’に接続している。板状部材48’、2つの接続部材47’、および2つの可動金属部材44は、2つの板バネ41’の弾性によって
図12の水平方向に振動可能な状態で、これら2つの板バネ41’を介して筐体40’に支持されている。さらに、音波発生部100B’は、強磁性体の金属膜を積層してなる固定金属部材45、固定金属部材45を取り囲むコイル42、および、固定金属部材45の面上に固定された永久磁石43、からなる、変動磁界発生用の構成要素の組を2組有している。ここで、永久磁石43は、永久磁石43のN極側部分43aおよびS極側部分43bの双方が固定金属部材45の上記の面上に配置された状態で固定金属部材45に固定されている。これら2つの変動磁界発生用の構成要素の組は互いに対向した状態で配置されており、この状態では、永久磁石43と可動金属部材44が互いに近接している。ここで、固定金属部材45およびコイル42は、不図示の機構により筐体40’に固定されており、板状部材48’、2つの接続部材47’、および2つの可動金属部材44が振動しても、その振動に連動して動くことはない。
【0104】
筐体40’は、直線状伝播管100C’と接続しており、筐体40’の内部は、作動流体で満たされている。供給された交流電力によりコイル42に交流電流が流される前は、N極側部分43a付近の磁界、および、S極側部分43b付近の磁界は、磁界の向きが異なることを除けばその強さ自体は同程度である。このため、
図12で示すように、可動金属部材44は、
図12の水平方向についてN極側部分43aとS極側部分43bの間に位置することとなる。しかし、コイル42に交流電流が流されて、電磁石の原理により、たとえば、可動金属部材44に対向する固定金属部材45の端部がN極となった時には、N極側部分43a付近の磁界が強まり、S極側部分43b付近の磁界は弱まる。この結果、可動金属部材44は、N極側部分43aの方へ引き寄せられる。そして、コイル42を流れる交流電流の向きが切り替わると、上記の固定金属部材45の端部が今度はS極となってS極側部分43b付近の磁界が強まり、N極側部分43a付近の磁界は弱まる。この結果、可動金属部材44は、今度は、S極側部分43bの方へ引き寄せられる。このような交流電流の電流変化に伴い、2つの可動金属部材44に固定されている2つの接続部材47’、および、2つの接続部材47’が固定されている板状部材48’は、
図12の水平方向に振動し、この板状部材48’の振動により、作動流体が振動して、交流電流の周波数に応じた周波数を有する音波が発生する。ここで、2つのコイル42に流される交流電流の位相と振幅は、2つの可動金属部材44がそれぞれ変動磁界により受ける
図12の水平方向の力が同じ向きの同じ力であって、2つの可動金属部材44がそれぞれ変動磁界により受ける
図12の上下方向の力が互いに相殺するように調整されている。この結果、板状部材48’の振動の方向は、ほぼ
図12の水平方向のみであり、上下方向には板状部材48’があまり振動しないようになっている。このように音波発生部100B’は、交流電力の供給を受けると
図12の水平方向について磁界を直線的に変動させて板状部材48’をこの方向に振動させるというリニアモータ方式を採用している。
【0105】
ここで、
図12において、2つの固定金属部材45、2つのコイル42、2つの永久磁石43、2つの可動金属部材44、および2つの板バネ41’を合わせたものが本発明にいうリニアモータの一例に相当する。
【0106】
なお、本発明では、
図9および
図10の説明で上述した理由により、周波数フィルタリング機能を持つ、
図12で説明した音波発生部100B’とは別の構成の音波発生部が好ましい。
【0107】
図13は、
図12の音波発生部100B’の変形例である、周波数フィルタリング機能を持つ音波発生部101B’の構成を表した図である。
【0108】
図13では、
図12と同一の構成要素については同一の符号を付し、その重複説明は省略する。
図13の音波発生部101B’は、
図12の音波発生部100B’の各構成要素に加えて、平面状の部材がジャバラ状(折りたたまれたカーテン状)に折りたたまれた形状を持つ2つのジャバラ状部材49’を有している。これら2つのジャバラ状部材49’の一端は、板状部材48’に固定され、他端は直線状伝播管100C’に固定されている。ただし、2つの可動金属部材44、2つの接続部材47’、および板状部材48’は、2つのジャバラ状部材49のジャバラ状の形状の起因する伸縮力によって水平方向に振動可能な状態に維持されている。このため、2つのジャバラ状部材49’が存在していても、
図12で上述した機構により2つの可動金属部材44、2つの接続部材47’、および板状部材48’は、
図12の水平方向に振動することができる。このとき、板状部材48’の振動により作動流体が振動すると、この作動流体の振動により音波が発生する。
【0109】
ここで、板状部材48’には、作動流体を通過させるための孔部50’が形成されており、板状部材48’および2つのジャバラ状部材49’は、孔部50'の箇所を除き、直線状伝播管100C’を封止している。この結果、直線状伝播管100C’の筐体40’との接続部付近、板状部材48’、2つのジャバラ状部材49’、および筐体40’は、孔部50’の箇所を除いて閉じた空間を形成することとなるが、孔部50’の存在により、その閉じた空間内の圧力は、その閉じた空間の外側にある直線状伝播管100C’の内部の空間とほぼ同じ圧力に保たれている。この孔部50’の周波数フィルタリング機能は、
図10で上述した孔部50の周波数フィルタリング機能と同じであり、ここではその重複説明は省略する。
【0110】
ここで、
図13において、2つの固定金属部材45、2つのコイル42、2つの永久磁石43、2つの可動金属部材44、および2つの板バネ41’を合わせたものが本発明にいうリニアモータの一例に相当する。また、2つの接続部材47’および板状部材48’、および2つのジャバラ状部材49’を合わせたものが本発明にいう封止振動部材の一例に相当する。
【0111】
なお、厳密に言えば、上述の閉じた空間内でも板状部材48’の振動による音波が発生するが、この閉じた空間内における音波の反射・拡散により、ほとんどが互いに相殺してしまい、その音波の影響は、無視できるほど十分に小さい。
【0112】
図14は、伝播管の形状に関する、
図2の冷気・暖気発生システム101の別のバリエーションである冷気・暖気発生システム103を表した図である。
【0113】
図14では、
図2の冷気・暖気発生システム101や
図11の冷気・暖気発生システム102と同一の構成要素については同一の符号を付し、その重複説明は省略する。
図14の冷気・暖気発生システム103は、上述の冷気・暖気発生部100Aに加え、冷気・暖気発生部100Aの冷気用熱交換器3に一端が接続された直線状伝播管100C’’、冷気・暖気発生部100Aの暖気用熱交換器2に接続された容積部100D’’、および、直線状伝播管100C’’の他端と接続された音波発生部100B’を有している。ここで、容積部100D’’は、直線状伝播管100C’’の管径に比して十分に大きく、実質的に直線状伝播管100C’’の端部(正確には直線状伝播管100C’’と冷気・暖気発生部100Aとからなる部分の端部)は開口端として扱うことができる。このため、音波発生部100B’が音波を発生すると、十分な時間の経過後には、直線状伝播管100C’’には音波の定在波が発生することとなる。この音波の定在波を用いて冷気・暖気発生部100Aは、冷気および暖気を発生する。進行波の代わりに定在波が用いられることを除けば、
図14の冷気・暖気発生システム103の構成や動作は、
図2の冷気・暖気発生システム101や
図11の冷気・暖気発生システム102と共通しており、ここではその重複説明は省略する。
図14では、直線状伝播管100C’’が、本発明にいう伝播管の一例に相当する。
【0114】
ここで、
図14の冷気・暖気発生システム103において音波発生部100B’を、
図13で上述した変形例の音波発生部101B’に置き代えた冷気・暖気発生システムも本発明の一実施形態である。この実施形態の構成や動作は、以上説明してきた実施形態と共通するので、この実施形態の説明については、以上説明してきた実施形態の説明を参照することとし、ここではその重複説明は省略する。
【0115】
以下では、
図3および
図4の冷気・暖気発生部100Aおよび
図10の音波発生部10
1Bを採用した
図2の冷気・暖気発生システム101の製造方法について説明する。
【0116】
まず、冷気・暖気発生部100Aの製造方法について説明する。最初に熱・音波変換部品1の製造方法について説明する。
【0117】
セラミック原料にバインダ、界面活性剤、水等を添加して成形用原料とする。セラミック原料としては、コージェライト化原料、炭化珪素-コージェライト系複合材料、アルミニウムチタネート、炭化珪素、珪素-炭化珪素系複合材料、アルミナ、ムライト、スピネル、リチウムアルミニウムシリケート、および、鉄-クロム-アルミニウム系合金のうちの1つ、あるいは、2つ以上の組み合わせであることが好ましい。これらの中でも、コージェライト化原料が好ましい。上述したように、コージェライト化原料とは、シリカが42~56質量%、アルミナが30~45質量%、マグネシアが12~16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミック原料であって、焼成されてコージェライトになるものである。なお、セラミック原料の含有量は、成形用原料全体に対して40~90質量%であることが好ましい。
【0118】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、成形用原料全体に対して2~20質量%であることが好ましい。
【0119】
水の含有量は、成形用原料全体に対して7~45質量%であることが好ましい。
【0120】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、単独で使用してもよいし、2つ以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、成形用原料全体に対して5質量%以下であることが好ましい。
【0121】
ここで、上述したような高いヤング率を有するセル構造体を実現する観点から、最終生成物の熱・音波変換部品1の隔壁11の構成材料中に、Sr等のアルカリ土類金属が、SrO等のアルカリ土類金属酸化物に換算したときに隔壁11の構成材料全体の0.2~3質量%となる範囲内で含まれていることが好ましい。このために、熱・音波変換部品1の製造段階において熱・音波変換部品1の成形用原料中に、上記の換算された成分量に対応した量の、SrCO3等のアルカリ土類金属炭酸塩を助剤として添加する。このようにSrCO3等のアルカリ土類金属炭酸塩を助剤として添加することで、焼成時における隔壁部分の緻密化が促進する。なお、上記アルカリ土類金属に代えて、あるいは、アルカリ土類金属とともに、アルカリ金属が、アルカリ金属酸化物に換算したときに隔壁11の構成材料全体の0.02~0.2質量%の範囲内で含まれているのも好ましい。
【0122】
次に、成形用原料を混練して坏土を形成する。成形用原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0123】
次に、坏土を押出成形することで、複数のセルを区画形成する隔壁と外周壁とが一体的に形成されているハニカム成形体を形成する。押出成形に際しては、上述した、セル密度や比率d/Dの特徴に対応した形状の口金を用いることができる。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。なお、ハニカム成形体におけるセル密度の値や比率d/Dの値については、後述の乾燥処理および焼成の処理で生じる収縮をも考慮して決定することが好ましい。
【0124】
ここで、上述した620セル/cm2以上3100セル/cm2以下という高いセル密度の熱・音波変換部品1を作製する際には、以下の2つの問題により、こうした制約がない従来の排気浄化触媒担持用のハニカム構造体で用いられている押出成形法をそのまま単純に流用する(口金を、高密度の細孔形成用の口金に取り換えただけで同様の製造方法をそのまま実行する)ことはできない。
【0125】
第1の問題は、押出成形の際に、高温で押し出された坏土が成形用口金の孔内に密着して目詰まりが起こりやすいことである。なお、この問題については、たとえば、特許文献・特開2012-237295号公報の段落[0021]でも言及されている。
【0126】
第2の問題は、上述の熱・音波変換部品1のようなセル密度が高いハニカム構造体に対応する口金には、必然的にきわめて細い微細部分(典型的には0.3mm程度の太さの部分)が存在することとなり、この微細部分が、坏土押出しの際の粘性摩擦により損傷(たとえば引きちぎれる等)を受けやすいことである。
【0127】
そこで、上述の熱・音波変換部品1の製造方法においては、これら2つの問題を解消するために、以下の工夫が凝らされている。
【0128】
第1の問題に関しては、セル密度が620セル/cm2以上3100セル/cm2以下というセル密度が高い上述の熱・音波変換部品1に対応した口金(以下、正規口金と呼ぶ)による押出成形の実行前に、リブの厚さが0.04mm以上0.09mm以下というリブの厚さがきわめて小さい口金(以下、ダミー口金と呼ぶ)での坏土の押出処理が行われる。なお、ここでいう「リブの厚さ」とは、ハニカム成形体の隔壁厚さのことで、口金におけるスリット幅を指しており、各スリットは、坏土の排出孔であって作製対象のハニカム構造体の形状を決定するものである。以下、「リブの厚さ」を、スリット幅を意味するものとして用いる。このダミー口金を用いた押出処理により、目詰まりの原因となりやすい坏土成分をあらかじめ取り除くことができる。この押出処理後の坏土を用いて正規口金による押出成形を実行することにより、上記の目詰まりの発生を抑えることが可能となる。
【0129】
第2の問題に関しては、押出成形による熱・音波変換部品1の成形体の保形性を維持できる(つまり、成形体の形が崩れない)範囲内で、押出成形に用いる坏土の粘性を、従来の排気浄化触媒担持用のハニカム構造体の製造で用いられる坏土の粘性に比べ大幅に低減して粘性摩擦を小さくすることで対処している。ここで、このように保形性維持の条件を満たしつつ坏土の粘性を低減するにあたっては、坏土中の水の比率を、従来の排気浄化触媒担持用のハニカム構造体の製造時に比べ、より厳格に制御する(すなわち、水の比率の制御目標値と実際の水の比率の値との間の誤差をきわめて狭い範囲内に抑える)ことも必要となる。より具体的には、従来の排気浄化触媒担持用のハニカム構造体の製造で用いられる坏土中の水の比率が、坏土固形成分100質量部に対し25~35質量部であるのに対し、上述の熱・音波変換部品1の製造で用いられる坏土中の水の比率は、坏土固形成分100質量部に対し40~42質量部となっている。なお、坏土中の水の比率を増加した場合には、坏土の粘性が低減して上述の熱・音波変換部品1の成形体の形状に適度なばらつきが生じるようになり、音波の自励振動が起こりやすくなるという効果も生じる。
【0130】
なお、上記の正規口金は、セル構造体と外周壁とを一体的に形成する口金であって、セル構造体を形成する部分と、外周壁を形成する部分との双方を有している。上述した熱・音波変換部品1の比率d/Dは、正規口金における上記の各部分の形態によってほぼ決まる。
【0131】
以下、押出成形によって得られたハニカム成形体のその後の処理について説を続ける。
【0132】
得られたハニカム成形体について、焼成前に乾燥を行う。乾燥の方法は特に限定されず、例えば、マイクロ波加熱乾燥および高周波誘電加熱乾燥等の電磁波加熱方式と、熱風乾燥および過熱水蒸気乾燥等の外部加熱方式とを挙げることができる。また、電磁波加熱方式で一定量の水分を乾燥させた後、残りの水分を外部加熱方式により乾燥させることも可能である。この場合、電磁波加熱方式にて、乾燥前の水分量に対して、30~90質量%の水分を除いた後、外部加熱方式にて、3質量%以下の水分にすることが好ましい。電磁波加熱方式としては誘電加熱乾燥が好ましく、外部加熱方式としては熱風乾燥が好ましい。
【0133】
各セルが延びる方向に沿ったハニカム成形体の長さが所望の長さではない場合は、両端面(両端部)を切断して所望の長さとすることが好ましい。切断方法は特に限定されないが、丸鋸切断機等を用いる方法を挙げることができる。
【0134】
次に、このハニカム成形体を焼成する。ここで、焼成の前には、バインダ等を除去するため、仮焼成を行うことが好ましい。また、仮焼成は大気雰囲気において、400~500℃で0.5~20時間行うことが好ましい。仮焼成および焼成(本焼成)の方法は特に限定されず、電気炉およびガス炉等を用いて焼成することができる。また、焼成(本焼成)の条件としては、たとえば、珪素-炭化珪素系複合材料を用いた場合には、窒素およびアルゴン等の不活性雰囲気において、1300~1500℃で、1~20時間加熱することが好ましい。一方、酸化物系材料を用いた場合には、酸素雰囲気において、1300~1500℃で1~20時間加熱することが好ましい。
【0135】
最後に、所望の熱・音波変換部品1の断面形状(たとえば、
図4のような円形)を実現するのに必要であれば、焼成後のハニカム成形体の外周部分を、適宜、切削加工して形状を整える。
【0136】
以上の工程を経て最終的に、熱・音波変換部品1が完成する。
【0137】
なお、
図3の筐体15については、鉄や銅やステンレス等の、金属管を形成する金属材料として従来から知られた金属材料を加工することによって作製できる。また、
図3の緩衝材12については、天然繊維あるいは合成繊維の繊維材料からなる、従来から緩衝材と知られているものを用いることができる。
【0138】
次に、
図2の2つの熱交換器2,3の製造方法について説明する。ここでは、2つの熱交換器2,3は同一の構成を有するものとし、2つの熱交換器2,3のうち暖気用熱交換器2について説明を行う。
【0139】
図7の暖気用熱交換器2の暖気用内周管23および暖気用外周管24については、作動流体の高い圧力に対する圧力耐久性が高く、外気から暖気への温度変化に対する温度耐久性が高く、熱伝導性の高い材料、たとえば金属材料やセラミック材料を用いて
図7のように管状に加工・成型することで作成される。内側フィン21および外側フィン22についても同様の材料を用いて
図7の形状に加工あるいは成型することで作製する。なお、内側フィン21および外側フィン22は、暖気用内周管23と一体的に作製されてもよい。金属材料としては、鉄や銅やステンレス等の、金属管を形成する金属材料として従来から知られた金属材料を用いることができる。セラミック材料の原料としては、熱・音波変換部品1の材料として上述した材料の原料を用いることができ、また、それ以外の従来から知られたセラミック材料の原料を用いることもできる。たとえば、SiC粉末に炭素粉末(黒鉛粉末等)を加えたものをセラミック材料の原料として用いることができる。この場合、熱伝導性の高いセラミック材料が実現する。SiC粉末に炭素粉末(黒鉛粉末等)を加えた原料を用いる際には、SiC粉末および炭素粉末を混合・混練して調整された坏土を成形し、乾燥処理および焼成処理を行った後に、溶融した珪素(Si)をこのハニカム成形体に含浸させる処理を行ったものが好ましい。この処理を行うことで、焼成処理後に、SiC粒子の表面を金属Si(金属珪素)の凝固物が取り囲むとともに、金属Siを介してSiC粒子同士が接合した構造が形成される。この構造により、気孔率が小さく緻密な構造であって高い熱耐久性および熱伝導性が実現する。
【0140】
なお、溶融した珪素(Si)だけでなく、Al、Ni、Cu、Ag、Be、Mg、Ti等といったその他の金属に含浸させてもよい。この場合、焼成処理後に、SiC粒子の表面を金属Si(金属珪素)、および含浸に用いたその他の金属の凝固物が取り囲むとともに、金属Si、および含浸に用いたその他の金属を介してSiC粒子同士が結合した構造が形成される。この構造によっても、気孔率が小さく緻密な構造であって高い熱耐久性および熱伝導性が実現する。
【0141】
以上のようにして、暖気用熱交換器2を作製することが完成する。
図2の冷気用熱交換器3についても同様の製造方法を用いることができる。
【0142】
以上が、冷気・暖気発生部100Aの製造方法についての説明である。
【0143】
次に、
図10の音波発生部10
1Bの製造方法について説明する。ダイヤフラム46は、たとえば金属製の薄板によって構成する。2つの可動金属部材44および2つの固定金属部材45についてはいずれも強磁性体の金属膜を積層したもの(いわゆる積層コア)で構成する。2つの永久磁石43は、磁化した強磁性体の材料を用いることでき、市場で流通しているものを採用できる。2つのコイル42は導電性の金属線を用いることでき、市場で流通しているものを採用できる。4つの板バネ41や4つのジャバラ状部材49は、たとえば金属製の板を折りたたんでジャバラ状(折りたたまれたカーテン状)にし、元の板状に戻ろうとする方向について弾性を持たせるようにしたものを用いることができる。接続部材47、2つの板状部材48、および筐体40については、たとえば鉄やステンレス等の金属材料を
図10の形状に加工したものを用いることができる。また、孔部50は、2つの板状部材48それぞれに、たとえばドリルを用いて孔をあけることで形成できる。孔部50の孔の大きさは、ドリルの大きさによって調整できる。
【0144】
以上が、
図10の音波発生部10
1Bの製造方法についての説明である。
【0145】
また、
図2の第1の伝播管100Cや第2の伝播管100Dについては、耐久性の高い材料を用いて
図2の形状に加工あるいは成形することで作製できる。耐久性の高い材料については特に限定されないが、具体的には、たとえば、鉄等の金属、硬質のプラスチック材、硬化ガラス、さらには、セラミック材料(たとえば、上述の熱・音波変換部品1や2つの熱交換器2,3の材料として挙げたもの)を採用できる。
【0146】
以上が、
図3および
図4の冷気・暖気発生部100Aおよび
図10の音波発生部10
1Bを採用した
図2の冷気・暖気発生システム101の製造方法についての説明である。
【0147】
以上の説明では、
図2の冷気・暖気発生システム101は、
図1で説明したように、電気自動車1000の車外の空気である外気から、その外気よりも温度が低下した冷気、および、その外気よりも温度が上昇した暖気を発生するものである。ただし、
図2の冷気・暖気発生システム101の機能の本質は、取り入れた2種類の空気(
図1の例ではいずれも外気)のうちの一方の空気から熱を吸収してその一方の空気を温度が低下した状態に変化させ、その吸収した熱を他方の空気に渡すことでその他方の空気を温度が上昇した状態に変化させる点にある。このことは、以上の冷気・暖気発生システム101の動作原理の説明から明らかである。従って、取り入れる2種類の空気が外気であることは
図2の冷気・暖気発生システム101の機能の本質ではない。たとえば、
図2の冷気・暖気発生システム101を用いて熱を吸収した後あるいは熱を渡した後の空気を再循環させて、再び冷気・暖気発生システム101を用いて熱を吸収あるいは熱を渡すこともできる。以下では、このような空気の再循環機構と冷気・暖気発生システム101とを用いて電気自動車の冷暖房を行う冷暖房システムについて説明する。
【0148】
図15は、空気の再循環機構と
図2の冷気・暖気発生システム101とを用いて電気自動車1000’の冷暖房を行う冷暖房システムの模式的な構成図である。
【0149】
図15の冷暖房システムには、
図2の冷気・暖気発生システム101が備えられている。冷気・暖気発生システム101の構成は、
図2~
図4、
図7、および
図9の説明で上述した通りである。
図15では、
図2~
図4、
図7、および
図9と同一の構成要素に対しては同一の符号が付されており、その重複説明は省略する。
【0150】
また、
図15の冷暖房システムには、冷気・暖気発生システム101の暖気用熱交換器2に端部がそれぞれ接続された第1流入管311および第1流出管309が備えられている。
図15の冷暖房システムには、さらに、冷気・暖気発生システム101の冷気用熱交換器3に端部がそれぞれ接続された第2流入管307および第2流出管310も備えられている。ここで、第1流出管309の途中および第2流入管307の途中には第1送風機304および第2送風機303がそれぞれ設けられている。
【0151】
第1送風機304は、第1送風機304内のファンを回転させて第1流出管309中の空気を
図15の第1流出管309中の実線矢印方向(暖気用熱交換器2から空気が流出する方向)に流す役割を果たす。第1流出管309の、暖気用熱交換器2に接続された端部とは反対側の端部は、電気自動車1000’の車内201に開口しており、第1流出管309を通って流れてきた空気はそのまま車内201に放出される。この第1送風機304の動作により暖気用熱交換器2から空気が流出するのに伴い、別の空気が、第1流入管311中を第1流入管311中の実線矢印で示す向きに流れて暖気用熱交換器2に引き込まれる。
【0152】
ここで、第1流入管311の、暖気用熱交換器2に接続された端部とは反対側の端部は、第1バルブ付き外気管312および第1連絡管313それぞれの一方の端部と接続されている。第1連絡管313の他方の端部は車内201に開口しており、第1バルブ付き外気管312の他方の端部は電気自動車1000’の外部に開口している。ここで、第1バルブ付き外気管312の途中には第1バルブ302が設けられている。第1バルブ302が開状態のときには、第1バルブ付き外気管312を介して、電気自動車1000’の外部への空気の流出や電気自動車1000’の外部からの空気の流入が可能であるが、第1バルブ302が閉状態のときにはこうした空気の流出入は禁止される。
【0153】
一方、第2送風機303は、第2送風機303内のファンを回転させて第2流入管307中の空気を
図15の第2流入管307中の実線矢印方向(冷気用熱交換器3へ空気が流入する方向)に空気を流す役割を果たす。この第2送風機303の動作により冷気用熱交換器3へ流入した空気は、冷気用熱交換器3を通過して冷気用熱交換器3から流出し、第2流出管310中を第2流出管310中の実線矢印で示す向きに流れる。第2流出管310の、冷気用熱交換器3に接続された端部とは反対側の端部は、電気自動車1000’の外部に開口しており、第2流出管310を通って流れてきた空気はそのまま電気自動車1000’の外部に放出される。
【0154】
ここで、第2流入管307の、冷気用熱交換器3に接続された端部とは反対側の端部は、第2バルブ付き外気管306および第2連絡管308それぞれの一方の端部と接続されている。第2連絡管308の他方の端部は車内201に開口しており、第2バルブ付き外気管306の他方の端部は電気自動車1000’の外部に開口している。ここで、第2バルブ付き外気管306の途中には第2バルブ301が設けられている。第2バルブ301が開状態のときには、第2バルブ付き外気管306を介して、電気自動車1000’の外部への空気の流出や電気自動車1000’の外部からの空気の流入が可能であるが、第2バルブ301が閉状態のときにはこうした空気の流出入は禁止される。
【0155】
以上の構成要素に加え、
図15の冷暖房システムには、冷気・暖気発生システム101の音波発生部100Bに交流電力を供給する電力供給部305が備えられている。さらに、この電力供給部305、上述の、第1送風機304、第2送風機303、第1バルブ302、および第2バルブ301を制御する制御部200’も備えられている。図中では、制御部200’により上記の5つの構成要素が制御されることが、制御部200’から各構成要素への点線矢印により表されている。なお、上記の「交流電力」には、単一周期を持つ単なる正弦波や余弦波を電力信号の波形とする電力だけでなく、位相が時間的に変化する波形(たとえば位相が周期的に変化する、正弦波や余弦波以外の波形)の電力信号を持つ電力全般が含まれる。ただし、このような交流電力の供給を受けて音波発生部100Bが発生する音波の周波数が50Hz以上500Hz以下の範囲内に属するようにする観点から、位相の時間変化が激しい電力信号を持つ交流電力の供給は避けられている。
【0156】
制御部200’は、電気自動車1000’のユーザ(運転手あるいは同乗者)により暖房の開始が指示された時には、電力供給部305を制御して、暖房に対応した交流電力を音波発生部100Bに向けて供給させる。音波発生部100Bは、この暖房に対応した交流電力の供給を受けて、第1の伝播管100C、音波発生部100B、第2の伝播管100D、および冷気・暖気発生部100Aからなるループ状の音波の伝播経路において時計回りの方向(
図2の実線矢印の方向)に進行する音波を発生する。
【0157】
なお、音波の進行方向をどのように制御するかについては後述するが、音波発生部100Bは、
図2の実線矢印の方向とは反対の反時計回りの方向に進行する音波を発生することもできる。制御部200’は、ユーザ(運転手あるいは同乗者)により冷房の開始が指示された時には、電力供給部305を制御して、冷房に対応した交流電力を音波発生部100Bに向けて供給させる。音波発生部100Bは、この冷房に対応した交流電力の供給を受けて、上記のループ状の音波の伝播経路において反時計回りの方向(
図2の実線矢印とは反対向きの方向)に進行する音波を発生する。
【0158】
ここで、音波発生部100Bが、
図2の実線矢印の方向に進行する音波、すなわち、熱・音波変換部品1の、冷気用熱交換器3側の端面から、熱・音波変換部品1の、暖気用熱交換器2側の端面に向けて熱・音波変換部品1のセル14(
図3参照)の内部を進行する音波を発生する動作モードを暖房モードと呼ぶ。一方、音波発生部100Bが、
図2の実線矢印とは反対方向に進行する音波、すなわち、熱・音波変換部品1の、暖気用熱交換器2側の端面から、熱・音波変換部品1の、冷気用熱交換器3側の端面に向けて熱・音波変換部品1のセル14(
図3参照)の内部を進行する音波を発生する動作モードを冷房モードと呼ぶ。音波発生部100Bは、暖房モードと冷房モードとを選択的に実行する。
【0159】
さらに制御部200’は、ユーザ(運転手あるいは同乗者)により、暖房あるいは冷房の開始が指示されると、第1送風機304を制御して、第1流出管309および第1流入管311の中の空気を、上述したように、
図15において第1流出管309および第1流入管311の中に記載された実線矢印方向に流させる。また、第2送風機303を制御して、第2流入管307および第2流出管310の中の空気を、上述したように、
図15において第2流入管307および第2流出管310の中に記載された実線矢印方向に流させる。
【0160】
ここで、
図15の冷暖房システムには、冷気・暖気発生部100Aの動作モードとして、車内201の温度の上昇あるいは低下に重点を置いた駆動モードと、車内201の換気に重点を置いた換気モードとの2種類の動作モードが存在する。駆動モードは、冷気・暖気発生部100Aが、第2バルブ付き外気管306および第2流入管307を介して電気自動車1000’の外部から外気を取得するとともに、第1連絡管313および第1流入管311を介して車内201から車内201の空気を取得する冷気・暖気発生部100Aの動作モードである。一方、換気モードは、冷気・暖気発生部100Aが、第1バルブ付き外気管312および第1流入管311を介して電気自動車1000’の外部から外気を取得するとともに、第2流入管307および第2連絡管308を介して車内201から車内201の空気を取得する冷気・暖気発生部100Aの動作モードである。ここで、駆動モードは、制御部200’が第1バルブ302および第2バルブ301を制御して、第1バルブ302を閉状態とし第2バルブ301を開状態とすることによって実現する冷気・暖気発生部100Aの動作モードである。一方、換気モードは、制御部200’が第1バルブ302および第2バルブ301を制御して、第1バルブ302を開状態とし第2バルブ301を閉状態とすることによって実現する冷気・暖気発生部100Aの動作モードである。冷気・暖気発生部100Aは、駆動モードと換気モードとを選択的に実行する。
【0161】
ここで、第2バルブ付き外気管306および第2流入管307を介して取得される外気が、本発明にいう第1の外気の一例に相当し、第1連絡管313および第1流入管311を介して車内201から取得される車内201の空気が、本発明にいう第1の車内の空気の一例に相当する。一方、第1バルブ付き外気管312および第1流入管311を介して取得される外気が、本発明にいう第2の外気の一例に相当し、第2流入管307および第2連絡管308を介して取得される車内201の空気が、本発明にいう第2の車内の空気の一例に相当する。
【0162】
以下では、説明の簡単化のために、音波発生部100Bが暖房モードを実行し、冷気・暖気発生部100Aが駆動モードを実行する場合を、暖房時駆動モードと呼ぶ。また、音波発生部100Bが暖房モードを実行し、冷気・暖気発生部100Aが換気モードを実行する場合を暖房時換気モードと呼ぶ。また、音波発生部100Bが冷房モードを実行し、冷気・暖気発生部100Aが駆動モードを実行する場合を、冷房時駆動モードと呼ぶ。また、音波発生部100Bが冷房モードを実行し、冷気・暖気発生部100Aが換気モードを実行する場合を、冷房時換気モードと呼ぶ。
【0163】
以下では、暖房時駆動モード、暖房時換気モード、冷房時駆動モード、および冷房時換気モードのそれぞれについて説明する。まず、暖房時の各モードについて説明する。
【0164】
暖房時駆動モードでは、第1バルブ302が閉状態となることで、第1バルブ付き外気管312を介した電気自動車1000’外部との間の空気の流出入は禁止される。このため、第1流出管309および第1流入管311の中の空気の流れ(
図15におけるそれぞれの管の中の実線矢印参照)は、車内201から引き出されて第1連絡管313を通って第1流入管311に流れ込む空気によって実現することとなる。すなわち、車内201、第1連絡管313、第1流入管311、暖気用熱交換器2、および第1流出管309をこの順番に通って車内201に戻る空気の循環路が形成されることとなる。このとき、暖気用熱交換器2に流入する空気は、
図2~
図4、および
図7で説明した機構により、暖気用熱交換器2から熱の供給を受けて流入前よりも温度が上昇した空気となって暖気用熱交換器2から流出する。上記の空気の循環路では、このように空気が暖気用熱交換器2を通るたびに熱の供給を受けて暖められることとなり、車内201の空気の温度は効率良く上昇していく。
【0165】
また、暖房時駆動モードでは、第2バルブ301が開状態となることで、電気自動車1000’外部から第2バルブ付き外気管306を介した外気の流入が可能となり、もっぱらこのような第2バルブ付き外気管306を通る外気により、上述した第2流入管307および第2流出管310の中の空気の流れ(
図15におけるそれぞれの管の中の実線矢印参照)が実現することとなる。なお、厳密に言えば、車内201の空気の温度上昇に伴う車内201の空気の圧力上昇を抑えるため、車内201から第2連絡管308を通って第2流入管307に流れ込む空気もいくらかは存在する。しかし、こうした空気の量はそれほど多くはなく、上述した空気の循環路による車内201の温度上昇には影響しない。
【0166】
第2流入管307を流れる外気は、冷気用熱交換器3を通過し、第2流出管310を通って電気自動車1000’外部に放出される。このとき、冷気用熱交換器3に流入する外気は、
図2~
図4、および
図7で説明した機構により、冷気用熱交換器3に熱を渡して流入前よりも温度が低下した空気となって冷気用熱交換器3から流出する。
図2~
図4、および
図7で説明したように、冷気用熱交換器3に渡された熱が、暖気用熱交換器2に流入する空気に対し暖気用熱交換器2から供給される熱に相当する。
【0167】
一方、暖房時換気モードでは、第1バルブ302が開状態となることで、電気自動車1000’外部から第1バルブ付き外気管312を介した外気の流入が可能となる。暖房時換気モードでは、このように電気自動車1000’外部から第1バルブ付き外気管312を通ってきた外気が第1流入管311に流れ込み、この外気により、上述した第1流出管309および第1流入管311の中の空気の流れ(
図15におけるそれぞれの管の中の実線矢印参照)が実現する。第1流入管311を通って暖気用熱交換器2に流入した外気は、暖気用熱交換器2から熱の供給を受け、流入前よりも温度が上昇した空気となって暖気用熱交換器2から流出し、第1流出管309を通って車内201に流入する。なお、厳密に言えば、車内201から引き出されて第1連絡管313を通って第1流入管311に流れ込む空気もいくらか存在するが、こうした空気の量はそれほど多くはなく、電気自動車1000’外部からの、第1バルブ付き外気管312を介した外気の流入には影響しない。
【0168】
暖房時換気モードでは、このように電気自動車1000’外部から外気が車内201に流れこむことに加え、第2バルブ301が閉状態となることで第2バルブ付き外気管306を介した電気自動車1000’外部との間の空気の流出入が禁止されているため、車内201から押し出されるようにして空気が車内201から第2連絡管308を通って流出していく。この結果、車内201の換気が実現することとなる。このように第2連絡管308を通って流出した空気は、第2流入管307を経て冷気用熱交換器3に流入し、熱を冷気用熱交換器3に渡して温度が流入前よりも低下した空気となり、第2流出管310を通って電気自動車1000’外部に放出される。この冷気用熱交換器3に渡される熱が、暖気用熱交換器2に流入した外気に対し暖気用熱交換器2から供給される熱に相当する。
【0169】
ここで、冷気用熱交換器3に流入する空気は、元々、車内201に存在していた暖かい空気である。このように暖かい空気が冷気用熱交換器3を通過する際にその熱(温熱)を冷気用熱交換器3に渡し、この熱(温熱)は、暖気用熱交換器2を通過する外気に対して供給されることとなる。すなわち暖房時換気モードでは、換気により車内201から放出された暖かい空気の熱(温熱)が回収されて車内201の暖房に再利用される。このように
図15の冷暖房システムでは、換気の際に熱(温熱)を無駄に捨てることが回避されている。
【0170】
以上説明した暖房時駆動モードと暖房時換気モードとの間のモード切替は、制御部200’によって行われる。モード切替のタイミングは特に限定されないが、たとえば、制御部200’が、暖房時駆動モードから暖房時換気モードへの切り替え、および、暖房時換気モードから暖房時駆動モードへの切り替えを所定の時間間隔を置いて行う(従ってモード切替が自動的に行われる)ものであってもよい。あるいは、ユーザ(運転手あるいは同乗者)からのモード切替の指示を受けるごとに制御部200’がそのモード切替を行うものであってもよい。
【0171】
次に、冷房時の各モードについて説明する。
【0172】
上述したように、ユーザ(運転手あるいは同乗者)により冷房の開始が指示された時には、音波発生部100Bは、電力供給部305から供給された、冷房に対応した交流電力の供給を受けて、暖房時とは反対向き(すなわち
図2の実線矢印とは反対向き)の方向に進行する音波を発生する。ここで、音波の進行方向は、電力供給部305から音波発生部100Bに供給される交流電力の信号の波形を調整することで制御できる。以下、音波の進行方向の制御について説明する。
【0173】
図9で説明したように、音波発生部100Bに供給される交流電力により、永久磁石43のN極側部分43a付近の磁界の強さと永久磁石43のS極側部分43b付近の磁界の強さの大小関係が時間的に切り換わることで音波が発生する。より詳しく言えば、コイル42に流れる電流の位相に応じて上記の磁界の強さの大小関係が切り換わることで、可動金属部材44が引き寄せられる方向がN極側部分43a側とS極側部分43b側との間で切り換わることで可動金属部材44が振動して音波が発生する。ここで、交流電力の信号の波形を調整することでコイル42に流れる電流を調整し、たとえば、N極側部分43a付近の磁界の強さの最大値がS極側部分43b付近の磁界の強さの最大値よりも相対的に大きくなるようにすれば、可動金属部材44がN極側部分43a側に引き寄せられる時に受ける力の大きさの方が、S極側部分43b側に引き寄せられる時に受ける力の大きさよりも大きくなる。この場合、N極側部分43a側の方向(すなわち図
9の左方向)に向かう作動流体の動きが相対的に優勢となり、図
9の左方向に進行する音波が主に発生することとなる。逆に、交流電力の信号の波形を調整してS極側部分43b付近の磁界の強さの最大値がN極側部分43a付近の磁界の強さの最大値よりも相対的に大きくなるようにすれば、図
9の右方向に進行する音波が主に発生することとなる。このように、電力供給部305から音波発生部100Bに供給される交流電力の信号の波形を調整することで、音波の進行方向を制御することができる。上述の、暖房に対応した交流電力は、
図2のループ状の音波の伝播経路において時計回りの方向(
図2の実線矢印の方向)に進行する音波が発生するような信号の波形を持つ交流電力である。また、上述の、冷房に対応した交流電力は、
図2のループ状の音波の伝播経路において反時計回りの方向(
図2の実線矢印とは反対の方向)に進行する音波が発生するような信号の波形を持つ交流電力である。
【0174】
なお、このように交流電力の信号の波形を調整するのが、音波の進行方向を制御する最も簡単な制御方法であるが、別の制御方法が採用されてもよい。たとえば、第1の伝播管100Cあるいは第2の伝播管100Dの途中に、形状や容積が可変な容積部を設け、その容積部の形状や容積を調整することで、ループ状の音波の伝播経路において音波が進行しやすい方向を制御する制御方法が採用されてもよい。
【0175】
冷房時の各モードの説明に戻ってその説明を続ける。
【0176】
冷房時駆動モードでは、第1バルブ302が閉状態となることで、第1バルブ付き外気管312を介した電気自動車1000’外部との間の空気の流出入は禁止される。このため、第1流出管309および第1流入管311の中の空気の流れ(
図15におけるそれぞれの管の中の実線矢印参照)は、車内201から引き出されて第1連絡管313を通って第1流入管311に流れ込む空気によって実現することとなる。すなわち、車内201、第1連絡管313、流入管311、暖気用熱交換器2、および第1流出管309をこの順番に通って車内201に戻る空気の循環路が形成されることとなる。
【0177】
ここで、上述したように冷房時における音波の進行方向は、暖房時における音波の進行方向(
図2の時計回りの矢印参照)とは反対向きの反時計回りとなる。冷気・暖気発生部100Aでは、暖気用熱交換器2および冷気用熱交換器3は、
図2の時計回りの矢印に音波が進行したときに各熱交換器が果たす役割に基づき「暖気用」熱交換器および「冷気用」熱交換器という名称がそれぞれ与えられているが、構成上は、同一の熱交換器である。従って、音波の進行方向が
図2の状況と反対向きになれば、その名称にかかわらず、果たす役割が入れ替わることとなる。すなわち、音波の進行方向が
図2の状況と反対向きの状況では、暖気用熱交換器2に流入した空気は、
図2~
図4、および
図7の冷気用熱交換器3の説明で上述したのと同じ機構により、暖気用熱交換器2に熱を渡して、暖気用熱交換器2への流入時よりは温度が低下した空気となって暖気用熱交換器2から流出する。一方、冷気用熱交換器3に流入した空気は、
図2~
図4、および
図7の暖気用熱交換器2の説明で上述したのと同じ機構により、冷気用熱交換器3から熱の供給を受けて流入前よりも温度が上昇した空気となって冷気用熱交換器3から流出する。
【0178】
従って、冷房時駆動モードにおける上述の空気の循環路においては、空気は、暖気用熱交換器2を通るたびにその熱を暖気用熱交換器2に渡して冷やされることとなり、車内201の空気の温度は効率良く低下していく。
【0179】
また、冷房時駆動モードでは、第2バルブ301が開状態となることで、電気自動車1000’外部から第2バルブ付き外気管306を介した外気の流入が可能となり、もっぱらこのような第2バルブ付き外気管306を通る外気により、上述した第2流入管307および第2流出管310の中の空気の流れ(
図15におけるそれぞれの管の中の実線矢印参照)が実現することとなる。なお、厳密に言えば、車内201の空気の温度低下に伴う車内201の空気の圧力低下を抑えるため、第2バルブ付き外気管306から第2連絡管308を通って車内201に流れ込む外気もいくらかは存在する。しかし、こうした外気の量はそれほど多くはなく、上述した空気の循環路による車内201の温度低下には影響しない。
【0180】
第2流入管307を流れる外気は、冷気用熱交換器3を通過し、第2流出管310を通って電気自動車1000’外部に放出される。このとき、冷気用熱交換器3に流入する外気は、冷気用熱交換器3から熱を供給されて流入前よりも温度が上昇した空気となって冷気用熱交換器3から流出する。ここで、この熱は、暖気用熱交換器2に流入する空気が暖気用熱交換器2に渡した熱に相当するものである。
【0181】
一方、冷房時換気モードでは、第1バルブ302が開状態となることで、電気自動車1000’外部から第1バルブ付き外気管312を介した外気の流入が可能となる。冷房時換気モードでは、このように電気自動車1000’外部から第1バルブ付き外気管312を通ってきた外気が第1流入管311に流れ込み、この外気により、上述した第1流出管309および第1流入管311の中の空気の流れ(
図15におけるそれぞれの管の中の実線矢印参照)が実現する。第1流入管311を通って暖気用熱交換器2に流入した外気は、暖気用熱交換器2に熱を渡して、流入前よりも温度が低下した空気となって暖気用熱交換器2から流出し、第1流出管309を通って車内201に流入する。ここで、暖気用熱交換器2に流入した外気が暖気用熱交換器2に熱を渡すということは、言い換えれば、暖気用熱交換器2に流入した外気が暖気用熱交換器2から冷熱の供給を受けることを意味する。なお、厳密に言えば、車内201から引き出されて第1連絡管313を通って第1流入管311に流れ込む空気もいくらか存在するが、こうした空気の量はそれほど多くはなく、電気自動車1000’外部からの、第1バルブ付き外気管312を介した外気の流入には影響しない。
【0182】
冷房時換気モードでは、このように電気自動車1000’外部から外気が車内201に流れこむことに加え、第2バルブ301が閉状態となることで第2バルブ付き外気管306を介した電気自動車1000’外部との間の空気の流出入が禁止されているため、車内201から押し出されるようにして空気が車内201から第2連絡管308を通って流出していく。この結果、車内201の換気が実現することとなる。このように第2連絡管308を通って流出した空気は、第2流入管307を経て冷気用熱交換器3に流入し、冷気用熱交換器3から熱の供給を受けて温度が流入前よりも上昇した空気となり、第2流出管310を通って電気自動車1000’外部に放出される。ここで、冷気用熱交換器3に流入した空気が冷気用熱交換器3から熱の供給を受けるということは、言い換えれば、冷気用熱交換器3に流入した空気が、冷気用熱交換器3に冷熱を供給することを意味する。この冷気用熱交換器3に供給された冷熱が、暖気用熱交換器2に流入した外気に対し暖気用熱交換器2から供給される冷熱に相当する。
【0183】
ここで、冷気用熱交換器3に流入する空気は、元々、車内201に存在していた冷たい空気である。このように冷たい空気が、冷気用熱交換器3を通過する際にその冷熱を冷気用熱交換器3に渡し、この冷熱は、暖気用熱交換器2を通過する外気に対して供給されることとなる。すなわち冷房時換気モードでは、換気により車内201から放出された冷たい空気の冷熱が回収されて車内201の冷房に再利用される。このように
図15の冷暖房システムでは、換気の際に冷熱を無駄に捨てることが回避されている。
【0184】
以上説明した冷房時駆動モードと冷房時換気モードとの間のモード切替は、制御部200’によって行われる。モード切替のタイミングは特に限定されない。たとえば、制御部200’が、冷房時駆動モードから冷房時換気モードへの切り替え、および、冷房時換気モードから冷房時駆動モードへの切り替えを所定の時間間隔を置いて行う(従ってモード切替が自動的に行われる)ものであってもよい。あるいは、ユーザ(運転手あるいは同乗者)からのモード切替の指示を受けるごとに制御部200’がそのモード切替を行うものであってもよい。
【0185】
以上が、
図2の冷気・暖気発生システム101を用いて熱を吸収あるいは熱を渡した空気を再循環させて、再び冷気・暖気発生システム101を用いて熱を吸収あるいは熱を渡す冷暖房システムについての説明である。
【0186】
なお、以上の
図15の冷暖房システムの説明では、
図3および
図4で上述した熱・音波変換部品1を有するとともに、
図3および
図7で上述した暖気用熱交換器2および冷気用熱交換器3を有する冷気・暖気発生部100Aが採用されていたが、熱・音波変換部品1の代わりに
図5および
図6で上述した熱・音波変換部品1’を有する冷気・暖気発生部が採用されてもよい。また、暖気用熱交換器2および冷気用熱交換器3の代わりに
図8で上述した暖気用熱交換器2’と同一構成の2つの熱交換器を有する冷気・暖気発生部が採用されてもよい。また、以上の
図15の説明では、
図9で上述した音波発生部100Bが採用されていたが、音波発生部100Bの代わりに
図10で上述した音波発生部101Bが採用されてもよい。また、以上の
図15の説明では、全体としてループ状の伝播管を有する冷気・暖気発生システム101が採用されていたが、冷気・暖気発生システム101の代わりに、伝播管の形状が異なる、
図11で上述した冷気・暖気発生システム102や
図14で上述した冷気・暖気発生システム103が採用されてもよい。
【0187】
このような
図15の冷暖房システムの様々な変形例は、以上の
図15の説明において、
図2の冷気・暖気発生システム101における対応する構成要素を置き代えただけであって、置き代わった各構成要素の詳細については、すでに説明した通りである。そこで、
図15の冷暖房システムの様々な変形例についての詳しい説明は省略する。
【実施例】
【0188】
以下では、本発明の効果を示すさらに具体的な実施例について説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0189】
(実施例1)
実施例1は、
図3および
図4の冷気・暖気発生部100Aおよび
図10の音波発生部100Bを採用した
図2の冷気・暖気発生システム101の一具体例である。
【0190】
まず、実施例1における冷気・暖気発生部について説明する。最初に冷気・暖気発生部の熱・音波変換部品について説明する。
【0191】
実施例1における冷気・暖気発生部の熱・音波変換部品としては、隔壁と外周壁の双方が熱伝導率1.0W/mKのコージェライト材料で形成され、各セルが延びる方向に垂直な熱・音波変換部品全体の断面の中で、隔壁の断面およびセルの断面で占められている領域(セル構造領域)のセル密度が775セル/cm2(5000cpsi)のハニカム構造体を用いた。この熱・音波変換部品は円柱形状を有しており、熱・音波変換部品全体から外周壁を除いた、隔壁およびセルによりセル構造が形成されている部分(セル構造体)は、熱・音波変換部品全体の円柱形状と同心の円柱形状を有していた。すなわち、上記の熱・音波変換部品全体の断面は円形であり、セル構造領域は熱・音波変換部品全体の断面の円形と同心の円形であった。具体的には、熱・音波変換部品全体の断面は直径50mmの円形であり、セル構造領域は直径45mmの円形であった。従って、熱・音波変換部品全体の断面の直径Dに対するセル構造領域の直径dの比率d/Dは、45mm/50mm=0.9であった。また、セル構造体のヤング率は13GPaであった。なお、セルが延びる方向に沿った熱・音波変換部品全体の長さLは50mmであった。
【0192】
なお、セル密度は、熱・音波変換部品の各セルが延びる方向に垂直な断面を顕微鏡で撮影しその断面の撮影画像からセル構造領域の面積Sとセルの総数Nとを求めたときのN/Sの値として求めた。
【0193】
また、熱伝導率については、以下のようにして測定した。まず、熱・音波変換部品の外周壁から板状のテストサンプルを切り出し、その板状のテストサンプルを熱伝導率が既知のスペーサ(たとえば銅やステンレス等の金属)で挟んだ。次に、その片面を30℃~200℃に加熱し、反対面を20~25℃に冷却することにより、テストサンプルの厚さ方向に一定の温度差を設けた。そして、伝播する熱流量をスペーサ内の温度勾配により求め、この熱流量を温度差で割り算して熱伝導率を算出した。
【0194】
また、熱・音波変換部品全体の断面の直径およびセル構造領域の直径については、上記の撮影画像における、熱・音波変換部品全体の断面およびセル構造領域の面積をそれぞれ求め、2×(面積/π)1/2で規定される円相当直径の定義式に従って算出した。なお、当然のことであるが、このように円相当直径の定義式に従って算出した直径は、熱・音波変換部品全体の断面およびセル構造領域の各外周上の2点間の最大距離の測定値とほぼ同じであった。
【0195】
また、ヤング率は、JIS R1602に準拠する曲げ共振法によって測定・算出した。具体的には、まず、セル構造体から2mm×6mm×50mmの大きさの試験片を切り出してその一次共振周波数を、上記曲げ共振法に基づく一次共振周波数測定方法により測定した。ここで、上記の50mmは、セルが延びる方向に沿った試験片の長さであり、上記の6mmは、セルが延びる方向に垂直な方向に沿った試験片の幅であった。また、上記の2mmは、セルが延びる方向および上記の試験片の幅の方向の双方に垂直な方向に沿った試験片の厚さであった。なお、実施例1の熱・音波変換部品ではセル密度が十分に高いため、試験片を熱・音波変換部品から切り出す際に、セルが延びる方向に垂直な面内において幅の方向と厚さの方向の取り方を変えたとしても、ヤング率の算出結果にはほとんど影響しないと期待された。試験片の切り出し後、試験片の質量M(kg)を測定した。そして、JIS R1602の曲げ共振法で定められたヤング率の算出式に基づき、上記の一次共振周波数、上記の試験片の質量M(kg)、上記の試験片の大きさ(長さ、幅、および厚さ)からヤング率(セル構造体のヤング率)を求めた。
【0196】
ここで、上記の熱・音波変換部品は、以下のようにして製造した。
【0197】
セラミック原料としてコージェライト化原料を用い、コージェライト化原料100質量部に対して、助剤としてSrCO3を1質量部、分散媒を35質量部、有機バインダを6質量部、分散剤を0.5質量部、それぞれ添加し、混合、混練して坏土を調製した。コージェライト化原料としては、平均粒子径が3μmのタルクを38.9質量部、平均粒子径が1μmのカオリンを40.7質量部、平均粒子径が0.3μmのアルミナを5.9質量部、及び平均粒子径が0.5μmのベーマイトを11.5質量部、用いた。ここで、平均粒子径とは、各原料の粒子の分布におけるメジアン径(d50)のことである。
【0198】
分散媒としては、水を用いた。有機バインダとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いた。分散剤としては、エチレングリコールを用いた。
【0199】
次に、得られた坏土を、口金を用いて押出成形し、セル形状が、角部を除きほぼ四角形で(
図4参照)、全体形状が円形のハニカム成形体を作製した。なお、このときの押出成形においては、上述したように、実施例1の熱・音波変換部品に対応した正規口金による押出成形の実行前に、リブの厚さが0.07mm程度のダミー口金での坏土の押出処理が行われた。そして、このダミー口金を用いた押出処理後の坏土を用いて正規口金による押出成形が実行された。さらに、このとき、正規口金による押出成形に用いる坏土における水の比率が、坏土固形成分100質量部に対し41質量部(誤差は±1質量部の範囲内)となるように坏土成分を厳格に制御した。
【0200】
なお、上記の正規口金は、セル構造体と外周壁とを一体的に形成する口金であって、セル構造体を形成する部分と、外周壁を形成する部分との双方を有している口金であった。上述した熱・音波変換部品の比率d/Dは、正規口金における上記の各部分の形態によってほぼ決まるものであった。なお、厳密に言えば、以下に説明する乾燥・焼成処理による収縮等も影響するが、その影響は、正規口金の形態の各部分の形態の影響に比して十分に小さいと期待された。
【0201】
このハニカム成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、さらに熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、ハニカム成形体の両端面を切断し、セルが延びる方向に沿ったハニカム成形体の長さを調整した。そのハニカム成形体を熱風乾燥機で乾燥し、さらに、1445℃で、5時間、焼成した。最後に、焼成後のハニカム成形体の外周部分を、適宜切削加工して円柱形状に整えた。
【0202】
以上の工程を経て、実施例1における冷気・暖気発生部の熱・音波変換部品が完成した。
【0203】
次に、実施例1における冷気・暖気発生部の2つの熱交換器について説明する。2つの熱交換器は同一の構成を有しており、ここでは、2つの熱交換器のうち暖気用熱交換器をついて説明を行う。暖気用熱交換器の暖気用内周管は、ステンレス製の管の内側および外側に同じステンレス製の内側フィンおよび外側フィンを形成して
図7の形状に加工することで作製した。一方、暖気用熱交換器の暖気用外周管は、ステンレス製の管を、上記の暖気用内周管を
図7のように取り巻く形状に加工することで作製した。冷気用熱交換器についても同様の製造方法で作製した。
【0204】
以上が、実施例1における冷気・暖気発生部についての説明である。
【0205】
なお、冷気・暖気発生部における筐体(
図3の筐体15参照)については、ステンレス材料を加工することによって作製した。また、冷気・暖気発生部における緩衝材(
図3の緩衝材12参照)についてはアルミナ繊維の繊維材料からなる緩衝材を用いた。
【0206】
次に、実施例1における音波発生部について説明する。ダイヤフラム46は、鉄製の薄板によって構成した。2つの可動金属部材44および2つの固定金属部材45についてはいずれも鉄製の膜を積層したもの(いわゆる積層コア)で構成した。2つの永久磁石や2つのコイルは、市場で流通している鉄製のものを採用した。4つの板バネ41や4つのジャバラ状部材49は、たとえば鉄製の板を折りたたんでジャバラ状(折りたたまれたカーテン状)にし、元の板状に戻ろうとする方向について弾性を持たせるようにしたものを用いた。接続部材、2つの板状部材、および筐体については、たとえばステンレス材料を
図10の形状に加工したものを用いた。また、孔部は、2つの板状部材48それぞれに、ドリルを用いて孔をあけることで形成した。孔部の孔の大きさは、500Hzより周波数の大きな音波をカットできる大きさに調整した。
【0207】
以上が、実施例1における音波発生部についての説明である。
【0208】
また、実施例1における第1の伝播管や第2の伝播管については、内径40mmのステンレス製の管を
図2の形状に加工したものを用いた。また、作動流体としては10atmのヘリウムガスを用いた。
【0209】
以上が、実施例1の冷気・暖気発生システムについての説明である。
【0210】
実施例1の冷気・暖気発生システムについて、音波発生部が周波数100Hzの音波を発生するように、音波発生部に供給される交流電力の周波数を調整した。そして、以下に説明する、エネルギー効率、コンパクト性の程度、および、ノイズ量、をそれぞれ求めて、以下のように評価した。
【0211】
(1)エネルギー効率
暖気用交換器に流入する外気の温度と流量、および、暖気用交換器から流出する暖気(その流量は外気の流量と同じ)の温度とを測定し、これらの測定値から外気の加熱エネルギーH (kw) を算出した。そして、音波発生部に供給される交流電力P (kW)を把握し、この交流電力P (kW)に対するこの加熱エネルギーH (kw)の比率H/Pを求めた。この比率H/Pがエネルギー効率であり、H/P<1.0 の場合を 評価「D」、1.0 ≦H/P < 1.5 の場合を評価「C」、1.5≦ H/P<2.0 の場合を評価「B」、および、2.0≦H/P の場合を評価「A」 として、求められたエネルギー効率を評価した。
【0212】
(2)コンパクト性の程度
上述の熱・音波変換部品の体積Vを、V=(熱・音波変換部品全体の断面の直径D)2×π×(熱・音波変換部品全体の断面の長さL)/4=(50mm)2×π×(50mm)/4=98125mm3により求めた。そして、この体積Vに対する上述の加熱エネルギーH (kw)の比率H/Vを求めた。この比率H/Vがコンパクト性の程度であり、H/V<0.3(kw/mm3) の場合を 評価「D」、0.3(kw/mm3) ≦H/V < 0.5 (kw/mm3)の場合を評価「C」、0.5(kw/mm3)≦ H/V<2.0 (kw/mm3)の場合を評価「B」、および、2.0(kw/mm3)≦H/V の場合を評価「A」 として、求められたコンパクト性の程度を評価した。
【0213】
(3)ノイズ量
熱・音波変換部品から距離1m の位置に置いた騒音計による測定により、冷気・暖気発生システムから発生するノイズ量(dB)を求めた。そして、ノイズ量が70dB以上の場合を評価「D」、ノイズ量が50dB以上70dB未満の場合を評価「C」、ノイズ量が45dB以上50dB未満の場合を評価「B」、ノイズ量が45dB未満の場合を評価「A」として、求められたノイズ量(dB)を評価した。
【0214】
ここで、上記のエネルギー効率、コンパクト性の程度、および、ノイズ量のそれぞれにおける評価「A」~評価「D」は、ユーザが認識する感覚的な指標である。評価「A」~評価「D」のうち、評価「D」は実際の使用には問題が大きく不適格である状態に対応し、評価「A」~評価「C」は、実際の使用が可能な状態に対応する。特に、評価「A」~評価「C」のうち、評価「C」は、使用上、多少の問題は認識されるが使用は可能な状態に対応し、評価「B」は使用上問題がほとんど認識されない状態に対応し、評価「A」は問題が全く認識されず良好と認識される状態に対応する。
【0215】
(実施例2~3および比較例1~2)
上述の実施例1とは、熱・音波変換部品の押出成形の際に用いる口金が異なる点を除き同じ方法を用いて、熱・音波変換部品のセル構造領域のセル密度の値のみが実施例1とは異なる実施例2~3および比較例1~2の冷気・暖気発生システムを作製した。そして、実施例1と同様の方法で、エネルギー効率、コンパクト性の程度、およびノイズ量を求めて評価した。
【0216】
実施例1~3および比較例1~2の評価結果を、これら実施例や比較例を特徴付ける上述の各パラメータの値とともに下記の表1に示す。
【0217】
【0218】
表1において、実施例1~3および比較例2を比較すればわかるように、実施例1~3は、比較例2に比べエネルギー効率やコンパクト性の程度がとても高い。このことより、セル密度が620セル/cm2以上であることが十分に高いエネルギー効率や十分に高いコンパクト性の程度を発揮するために必要であることがわかる。また、実施例1~3および比較例1を比較すればわかるように、実施例1~3は、比較例1に比べ、ノイズ量がとても低く、また、エネルギー効率やコンパクト性の程度が高い。このことから、このことより、セル密度が3100セル/cm2以下であることが、高いエネルギー効率、高いコンパクト性の程度、および高いノイズ抑制効果、を発揮するために必要であることがわかる。
【0219】
(実施例4~5および比較例3)
上述の実施例1とは、熱・音波変換部品の製造方法において、セラミック原料が異なる点を除き同じ方法を用いて、熱・音波変換部品の隔壁や外周壁の構成材料の熱伝導率のみが実施例1とは異なる実施例4~5および比較例3の冷気・暖気発生システムを作製した。具体的には、実施例4~5および比較例3では、実施例1のタルク、カオリン、アルミナ、ベーマイトの割合を変更することで、熱伝導率が実施例1とは異なるようになっている。
【0220】
実施例1,4~5および比較例3の評価結果を、これら実施例や比較例を特徴付ける上述の各パラメータの値とともに下記の表2に示す。
【0221】
【0222】
表2において実施例1,4~5および比較例3を比較すればわかるように、実施例1,4~5は、比較例3に比べエネルギー効率やコンパクト性の程度がとても高い。このことより、熱伝導率が5.0(W/mK)以下であることが十分に高いエネルギー効率や十分に高いコンパクト性の程度を発揮するために必要であることがわかる。
【0223】
(実施例6~11)
上述の実施例1とは、熱・音波変換部品の押出成形の際に用いる口金が異なる点を除き同じ方法を用いて、熱・音波変換部品のセル構造領域の直径d(=45mm)は実施例1と同一であるが熱・音波変換部品全体の断面の直径Dが異なり、従って比率d/Dが異なる実施例6~11の冷気・暖気発生システムを作製した。そして、実施例1と同様の方法で、エネルギー効率、コンパクト性の程度、およびノイズ量を求めて評価した。
【0224】
実施例1,6~11の評価結果を、これらの実施例を特徴付ける上述の各パラメータの値とともに下記の表3に示す。
【0225】
【0226】
表3において実施例1,7~11を互いに比較すればわかるように、実施例1,7~9は、実施例10~11と比べノイズ量が低い。このことより、比率d/Dが0.94以下であることが高いノイズ抑制効果を発揮するために好ましいことがわかる。また、表3において実施例1,6~9を互いに比較すればわかるように、実施例1,7~9は、実施例6と比べエネルギー効率やコンパクト性の程度が高い。このことより、比率d/Dが0.6以上であることが高いエネルギー効率や高いコンパクト性の程度を発揮するために好ましいことがわかる。まとめると、比率d/Dが0.6以上0.94以下であることが、高いエネルギー効率、高いコンパクト性の程度、および高いノイズ抑制効果、を発揮するために好ましいことがわかる。
【0227】
また、実施例1,7~9を互いに比較すればわかるように、実施例1,8は、エネルギー効率、コンパクト性の程度、ノイズ量のいずれについても評価「A」となっており、実施例7,9に比べ、総合的に良い結果を得ている。このことより、比率d/Dが0.8以上0.9以下であることが、高いエネルギー効率、高いコンパクト性の程度、および高いノイズ抑制効果、を発揮するためにさらに好ましいことがわかる。
【0228】
(実施例12~15)
上述の実施例1とは、音波発生部が発生する音波の周波数が異なる点を除き同じ方法を用いて実施例12の冷気・暖気発生システムを作製した。具体的には、実施例12における音波発生部が発生する音波の周波数を200Hzとした。さらに、この実施例12とは、熱・音波変換部品の製造方法におけるセラミック原料が異なる点を除き同じ方法を用いて、熱・音波変換部品のセル構造体のヤング率のみが実施例12と異なる実施例13~15の冷気・暖気発生システムを作製した。実施例13~15では、実施例12において助剤として添加されたSrCO3の量を、コージェライト化原料の各構成要素の粒子径を調整しつつ変更することで、熱伝導率はあまり変えることなく、ヤング率のみが実施例12とは異なるようになっている。
【0229】
実施例12~15の冷気・暖気発生システムにおいて、音波発生部に供給される交流電力P (kW)を1kWとして周波数200Hzの音波を200時間の間、発生させる実験を行い、その際の熱・音波変換部品の劣化の程度(劣化した部分の体積%)を評価した。この評価結果を、これらの実施例を特徴付ける上述の各パラメータの値とともに下記の表4に示す。
【0230】
【0231】
表4において実施例12~15を比較すればわかるように、実施例12,14~15は、実施例13に比べ、劣化の程度がきわめて低い。このことより、ヤング率が7GPa以上であることが音波に対する高い耐久性を発揮するために好ましいことがわかる。また、実施例12,14~15を比較すればわかるように、実施例12,15は、実施例14に比べ、劣化の程度がさらに低い。このことより、ヤング率が11GPa以上であることが音波に対する特に高い耐久性を発揮するためにさらに好ましいことがわかる。
【0232】
(参考比較例1~2)
上述の実施例1とは、ハニカム構造体である熱・音波変換部品の代わりに、このハニカム構造体と同じサイズの多孔質体を音波変換部品として用いている点を除き、同じ方法を用いて参考比較例1の冷気・暖気発生システムを作製した。この多孔質体の作製では、造孔材が添加されていることを除き上記ハニカム構造体の成形材料と同じ成形材料を用いた押出成形が行われた。ここで、この多孔質体の作製における造孔材の量は、この多孔質体の長さ方向に垂直な断面において開口する細孔の開口面積の総和が、実施例1におけるハニカム構造体の熱・音波変換部品のセル構造体におけるセルの開口面積の総和とほぼ一致するように調整された。また、上述の実施例1とは、ハニカム構造体である熱・音波変換部品の代わりに、このハニカム構造体と同じサイズのメッシュ体を音波変換部品として用いている点を除き、同じ方法を用いて参考比較例2の冷気・暖気発生システムを作製した。このメッシュ体は、ハニカム構造体の成形材料と同じ成形材料を用いて作製したメッシュ板を、メッシュの開口の位置を合わせて積層することで作製したものである。ここで、このメッシュ体におけるメッシュの開口の大きさは、その開口面積の総和が、実施例1におけるハニカム構造体の熱・音波変換部品のセル構造体におけるセルの開口面積の総和とほぼ一致するように調整された。そして、これら参考比較例1および参考比較例2について、実施例1と同様の方法で、エネルギー効率、コンパクト性の程度、およびノイズ量を求めて評価した。
【0233】
参考比較例1および参考比較例2の評価結果は、いずれも、エネルギー効率に関しては評価「D」、コンパクト性の程度に関しては評価「D」、および、ノイズ量に関しては評価「A」であった。このことから、このことより、ハニカム構造を有する熱・音波変換部品を用いることが十分に高いエネルギー効率や十分に高いコンパクト性の程度を発揮するために必要であることがわかる。
【0234】
(実施例16~18および比較例4)
上述の実施例1とは、作動流体の圧力が異なる点を除き同様の方法で実施例16~18および比較例4の冷気・暖気発生システムを作製した。そして、実施例1と同様の方法で、エネルギー効率、コンパクト性の程度、およびノイズ量を求めて評価した。
【0235】
(実施例19)
上述の実施例18とは、作動流体としてヘリウムの代わりに空気が用いられている点を除き、同様の方法で作製された実施例19の冷気・暖気発生システムを作製した。そして、実施例1と同様の方法で、エネルギー効率、コンパクト性の程度、およびノイズ量を求めて評価した。
【0236】
以上説明した実施例1,16~19および比較例4の評価結果を、これら実施例や比較例を特徴付ける上述の各パラメータの値とともに下記の表5に示す。
【0237】
【0238】
表5において実施例1,16~19および比較例4を比較すればわかるように、実施例1,16~19は、比較例4に比べノイズ量がとても低い。このことより、作動流体の圧力が35atm以下であることがノイズ抑制のために必要であることがわかる。また、表5において実施例18および実施例19を比較すればわかるように、実施例18は、実施例19に比べエネルギー効率やコンパクト性の程度が高い。このことより、作動流体の種類としては、空気に比べ反応性が相対的に低いヘリウムのような希ガスが、高いエネルギー効率や高いコンパクト性の程度を発揮する上で好ましいことがわかる。
【0239】
(参考実施例1~5および参考比較例3)
参考のため、実施例1において、ループ状をなす2つの伝播管100C,100D(
図2参照)の代わりに
図11のような直線状伝播管100C’およびループ状伝播管100D’を採用した冷気・暖気発生システムを作製し、実施例1,16~19および比較例4と同様の作動流体の圧力・種類の条件下で、エネルギー効率、コンパクト性の程度、およびノイズ量を求めて評価した。この
図11のタイプの冷気・暖気発生システムを、作動流体の圧力・種類に応じて、参考実施例1(圧力10atmのヘリウム)、参考実施例2(圧力25atmのヘリウム)、参考実施例3(圧力5atmのヘリウム)、参考実施例4(圧力1atmのヘリウム)、参考実施例5(圧力1atmの空気)および参考比較例3(圧力35atmのヘリウム)とする。参考実施例1~5および参考比較例3の冷気・暖気発生システムは、実施例1の冷気・暖気発生システムとは伝播管の形状が異なり
図11の形状を採用しているが、伝播管の内径や材質は同じである。また、参考実施例1~5および参考比較例3の冷気・暖気発生システムは、実施例1の冷気・暖気発生システムとは音波発生部の点でも異なり
図13の音波発生部を採用している。ただし、この音波発生部は、実質的には、実施例1における音波発生部(
図10参照)において、
図10の左側の2つの板バネ41、ダイヤフラム46、接続部材47、
図10の左側の1つの板状部材48、および、
図10の左側の2つのジャバラ状部材49を取り除いて、筐体40の、第1の伝播管100Cとの接続箇所を塞ぎ、音波発生部の右側部分の部品を少し取り換えたものにすぎないものである。具体的には、
図10の右側の1つの板状部材48を
図13の2つの接続部材47’で2つの可動金属部材44とつないで、
図10の右側の2つの板バネ41の接続先を上記の板状部材48に変更したにすぎないものである(
図13参照)。この結果、参考実施例1~5および参考比較例3は、伝播管の形状が異なることを除き、実質的には、実施例1,16~19および比較例4とほぼ同じような構成・機能を備えている。
【0240】
実際、参考実施例1~5および参考比較例3の評価結果は、表5における、実施例1,16~19および比較例4の評価結果と全く同じであった。このことからも、作動流体の圧力が35atm以下であることがノイズ抑制のために必要であることがわかる。また、作動流体の種類としては、空気に比べ反応性が相対的に低いヘリウムのような希ガスが、高いエネルギー効率や高いコンパクト性の程度を発揮する上で好ましいことがわかる。
【0241】
(参考実施例6)
参考のため、実施例1において、ループ状をなす2つの伝播管100C,100D(
図2参照)の代わりに
図14のような直線状伝播管100C’’を採用した参考実施例6の冷気・暖気発生システムを作製し、実施例1と同様の作動流体の圧力・種類の条件(圧力10atmのヘリウム)下で、エネルギー効率、コンパクト性の程度、およびノイズ量を求めて評価した。
【0242】
参考実施例6の評価結果は、エネルギー効率に関しては評価「B」、コンパクト性の程度に関しては評価「B」、および、ノイズ量に関しては評価「A」であった。エネルギー効率やコンパクト性の程度に関して、実施例1よりも少し低い評価となる理由は、参考実施例6では、実施例1のような進行波ではなく定在波を用いて熱音響効果を起こしており、一般に定在波では、熱・音波変換が進行波よりも進みにくいことによる。
【0243】
(実施例20~21および比較例5~6)
上述の実施例1とは、音波発生部が発生する音波の周波数が異なる点を除き同様の方法で、上述の実施例12の冷気・暖気発生システムと新たな実施例20~21の冷気・暖気発生システムとを作製した。また、上述の実施例1とは、音波発生部として、
図10の音波発生部101Bのような周波数フィルタリング機能を持たず、さらに、
図9において上述した振動系の固有振動数の調節も行っていない音波発生部を用いる点、および、その音波発生部が発生する音波の周波数が異なる点、を除き同様の方法で、比較例5~6の冷気・暖気発生システムを作製した。ここで、比較例5~6の音波発生部は、振動系の固有振動数の調節を行っていない点を除けば、
図9の音波発生部100Bと似た構成を有しているが、比較例5の音波発生部は550Hzの高い周波数の音波を発生し、比較例6の音波発生部は30Hzの低い周波数の音波を発生する。以上の実施例12,20~21および比較例5~6について、実施例1と同様の方法で、エネルギー効率、コンパクト性の程度、およびノイズ量を求めて評価した。
【0244】
以上説明した実施例1,12,20~21および比較例5~6の評価結果を、これら実施例や比較例を特徴付ける上述の各パラメータの値とともに下記の表6に示す。
【0245】
【0246】
表6において実施例1,12,20~21および比較例5を比較すればわかるように、実施例1,12,20~21は、比較例5に比べノイズ量がとても低い。このことより、音波発生部が発生する音波の周波数が500Hz以下であることがノイズ抑制のために必要であることがわかる。また、表6において実施例1,12,20~21および比較例6を比較すればわかるように、実施例1,12,20~21は、比較例6に比べエネルギー効率やコンパクト性の程度がとても高い。このことより、音波発生部が発生する音波の周波数が50Hz以上であることが高いエネルギー効率や高いコンパクト性の程度を発揮する上で必要であることがわかる。まとめると、音波発生部が発生する音波の周波数が50Hz以上500Hz以下であることが、十分に高いエネルギー効率や十分に高いコンパクト性の程度を発揮するとともにノイズ量を十分に抑えるためには必要であることがわかる。
【0247】
また、表6において実施例1,12,20~21を互いに比較すればわかるように、実施例1および実施例12は、実施例20に比べエネルギー効率やコンパクト性の程度が高く、また、実施例21に比べノイズ量が低い。このことより、音波発生部が発生する音波の周波数が100Hz以上200Hz以下であることが高いエネルギー効率や高いコンパクト性の程度を発揮するとともにノイズ量を抑えるためには好ましいことがわかる。
【0248】
ここで、周波数フィルタリング機能の効果を確認する参考実験として、以下の実験を行った。まず、上述の比較例5~6の冷気・暖気発生システムにおいて、音波発生部として、周波数フィルタリング機能を持つ
図10の音波発生部101Bを用いた新たな2つの冷気・暖気発生システムを用意した。そして、この新たな2つの冷気・暖気発生システムに対し、比較例5~6の冷気・暖気発生システムが表6の各周波数の音波を発生する際に供給された交流電力と同じ周波数を持つ交流電力をそれぞれ供給した。この新たな2つの冷気・暖気発生システムにおいて、音波の発生の有無を調べたところ、音波は、ほとんどは発生していなかった。このことから、周波数フィルタリング機能を持つ
図10の音波発生部101Bを用いることで、500Hzより高い高周波数や50Hzより低い低周波数はカットされることが確認された。
【0249】
(参考比較例4)
参考のため、実施例1においてリニアモータ方式の音波発生部(
図10参照)の代わりにスピーカを音波発生部として採用した参考比較例4の冷気・暖気発生システムを作製した。このスピーカは、実施例1におけるリニアモータ方式の音波発生部(
図10参照)と同じ大きさの交流電力の供給を受けて、実施例1におけるリニアモータ方式の音波発生部(
図10参照)と同じ大きさの音波エネルギーを有する100Hzの音波を発生するものである。
【0250】
実施例1におけるリニアモータ方式の音波発生部(
図10参照)と比べると、参考比較例4におけるスピーカは、音波の進行方向に垂直な面内で、より広い面積を占めてしまい、この結果、音波発生部が占める部分が大きく、冷気・暖気発生システムの大型化を招くこととなった。このことから、音波発生部としては、スピーカよりもリニアモータ方式の音波発生部を採用すべきことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0251】
本発明は、システム全体の小型化と高いエネルギー効率を実現しつつノイズを抑えた、電気自動車の冷暖房用の冷気・暖気発生システムの実現に有用である。
【符号の説明】
【0252】
1,1’:熱・音波変換部品、11:隔壁、12:緩衝材、13:外周壁、14:セル、15:筐体、16:セグメント、17:接合部、2,2’:暖気用熱交換器、21:内側フィン、21’:外気用スリット、22:外側フィン、22’:作動流体用スリット、23:暖気用内周管、24:暖気用外周管、25:断熱材、3:冷気用熱交換器、31:内側フィン、32:外側フィン、33:冷気用内周管、40,40’:筐体、41,41’:板バネ、42:コイル、43:永久磁石、43a:N極側部分、43b:S極側部分、44:可動金属部材、45:固定金属部材、46:ダイヤフラム、47,47’:接続部材、48,48’:板状部材、49,49’:ジャバラ状部材、50,50’:孔部、100:冷気・暖気発生システム、100A:冷気・暖気発生部、100B,100B’,101B,101B’:音波発生部、100C:第1の伝播管、100C’,100C’’:直線状伝播管、100D:第2の伝播管、100D’:ループ状伝播管、100D’’:容積部、100E:第1の外気管、100F:第2の外気管、100G:冷気管、100H:暖気管、101,102,103:冷気・暖気発生システム、200,200’:制御部、201:車内、301:第2バルブ、302:第1バルブ、303:第2送風機、304:第1送風機、305:電力供給部、306:第2バルブ付き外気管、307:第2流入管、308:第2連絡管、309:第1流出管、310:第2流出管、311:第1流入管、312:第1バルブ付き外気管、313:第1連絡管、1000,1000’:電気自動車。