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特許7000368ロボットキャリブレーション方法及びロボットキャリブレーション装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】ロボットキャリブレーション方法及びロボットキャリブレーション装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/10 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
B25J9/10 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019021650
(22)【出願日】2019-02-08
(65)【公開番号】P2020127988
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2020-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169856
【弁理士】
【氏名又は名称】尾山 栄啓
(72)【発明者】
【氏名】江 航杰
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-134683(JP,A)
【文献】特開平06-000790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリンク及び複数の関節軸を有するアームと該アームを別の関節軸を介して支持するベースとを備えた多関節ロボットの、アーム先端の位置を較正するロボットキャリブレーション方法であって、
前記ベースから離隔して互いに連結される3つ以上のリンクの両端の第1リンクと第2リンクとの相対位置関係を測定することにより、それら3つ以上のリンクの間の2つ以上の関節軸に対し一括キャリブレーションを実行し、
前記ベースと前記ベースに連結される1つのリンクとの相対位置関係を測定することにより、それらベースとリンクとの間の関節軸に対し単独キャリブレーションを実行するか、又は、前記第1リンクと前記3つ以上のリンクに連結される他の1つのリンクとの相対位置関係を測定することにより、それら第1リンクと他のリンクとの間の関節軸に対し単独キャリブレーションを実行し、
前記一括キャリブレーションと前記単独キャリブレーションとに基づいて、前記アーム先端の位置を較正すること、を含み、
前記一括キャリブレーションを実行する前記2つ以上の関節軸は直動軸を含む、
ロボットキャリブレーション方法。
【請求項2】
前記第1リンクに定めた第1基準面と前記第2リンクに定めた第2基準面との相対位置及び相対姿勢をゲージで接触式に測定することにより前記一括キャリブレーションを実行する、請求項に記載のロボットキャリブレーション方法。
【請求項3】
複数のリンク及び複数の関節軸を有するアームと該アームを別の関節軸を介して支持するベースとを備えた多関節ロボットの、アーム先端の位置を較正するロボットキャリブレーション装置であって、
前記ベースから離隔して互いに連結される3つ以上のリンクの両端の第1リンク及び第2リンクにそれぞれ設けられる第1基準面及び第2基準面と、
前記第1基準面と前記第2基準面との相対位置及び相対姿勢を接触式に測定するゲージと、
前記ベースと前記ベースに連結される1つのリンクとの相対位置関係を測定する測定器、又は、前記第1リンクと前記3つ以上のリンクに連結される他の1つのリンクとの相対位置関係を測定する測定器と、
前記ゲージの測定結果と前記測定器の測定結果とに基づいて、前記アーム先端の位置を較正するプロセッサと、を備え、
前記3つ以上のリンクの間の2つ以上の関節軸は直動軸を含む、
ロボットキャリブレーション装置。
【請求項4】
前記第1基準面に取り付けられる第1部材と、前記第2基準面に取り付けられる第2部材とをさらに備え、前記ゲージは、前記第1部材に取り付けられて前記第1部材に対する前記第2部材の位置及び姿勢を測定する、請求項に記載のロボットキャリブレーション装置。
【請求項5】
前記第1部材は互いに直交する一対のゲージ取付面を有し、前記第2部材は、互いに直交してそれぞれが前記一対のゲージ取付面に対向する一対のゲージ計測面を有する、請求項に記載のロボットキャリブレーション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットキャリブレーション方法及びロボットキャリブレーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のリンク及び関節軸からなるアームを備えるロボットでは、出荷時等に、各関節軸のキャリブレーションが行われる。特許文献1は、ロボットの手首先端部に治具を取り付け、この治具の姿勢を、固定ベースに設置されたダイヤルゲージ付きの支持体を用いて検出することで、ロボットの全関節軸を一括してキャリブレーションする構成について記載する。特許文献2は、カメラで視覚マークを撮像する方式により単軸のキャリブレーションを実行する構成について記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特公平04-046714号公報
【文献】特許第4819957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロボットの構造によっては特許文献1のような全関節軸についての一括キャリブレーションを行うことが困難な場合もある。このような場合、各関節軸について単軸用の治具を用いて1軸ずつキャリブレーションを行うのが一般的である。しかし、1軸ずつのキャリブレーションでは治具の数量とキャリブレーションの工数が増加するデメリットが生じる。ロボットが全関節軸を一括キャリブレーションすることが困難な構造を有する場合であっても、効率的に関節軸のキャリブレーションを行うことが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、複数のリンク及び複数の関節軸を有するアームと該アームを別の関節軸を介して支持するベースとを備えた多関節ロボットの、アーム先端の位置を較正するロボットキャリブレーション方法であって、前記ベースから離隔して互いに連結される3つ以上のリンクの両端の第1リンクと第2リンクとの相対位置関係を測定することにより、それら3つ以上のリンクの間の2つ以上の関節軸に対し一括キャリブレーションを実行し、前記ベースと前記ベースに連結される1つのリンクとの相対位置関係を測定することにより、それらベースとリンクとの間の関節軸に対し単独キャリブレーションを実行するか、又は、前記第1リンクと前記3つ以上のリンクに連結される他の1つのリンクとの相対位置関係を測定することにより、それら第1リンクと他のリンクとの間の関節軸に対し単独キャリブレーションを実行し、前記一括キャリブレーションと前記単独キャリブレーションとに基づいて、前記アーム先端の位置を較正すること、を含み、前記一括キャリブレーションを実行する前記2つ以上の関節軸は直動軸を含む、ロボットキャリブレーション方法である。
【0006】
本開示の別の態様は、複数のリンク及び複数の関節軸を有するアームと該アームを別の関節軸を介して支持するベースとを備えた多関節ロボットの、アーム先端の位置を較正するロボットキャリブレーション装置であって、前記ベースから離隔して互いに連結される3つ以上のリンクの両端の第1リンク及び第2リンクにそれぞれ設けられる第1基準面及び第2基準面と、前記第1基準面と前記第2基準面との相対位置及び相対姿勢を接触式に測定するゲージと、前記ベースと前記ベースに連結される1つのリンクとの相対位置関係を測定する測定器、又は、前記第1リンクと前記3つ以上のリンクに連結される他の1つのリンクとの相対位置関係を測定する測定器と、前記ゲージの測定結果と前記測定器の測定結果とに基づいて、前記アーム先端の位置を較正するプロセッサと、を備え、前記3つ以上のリンクの間の2つ以上の関節軸は直動軸を含む、ロボットキャリブレーション装置である。
【発明の効果】
【0007】
上記構成によれば、ロボットが全関節軸を一括キャリブレーションすることが困難な構造を有する場合であっても、効率的に関節軸のキャリブレーションを行うことができる。
【0008】
添付図面に示される本発明の典型的な実施形態の詳細な説明から、本発明のこれらの目的、特徴および利点ならびに他の目的、特徴および利点がさらに明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係るロボットキャリブレーション装置の全体構成を表す図である。
図2】ロボットの斜視図である。
図3】本実施形態に係るキャリブレーションの手順を表すフローチャートである。
図4】第1部材にダイヤルゲージを装着した状態を表す斜視図である。
図5】較正ブロックを用いたダイヤルゲージの較正を示す図である。
図6A】第1部材が第2番目のリンクの第1基準面に固定された状態を示す。
図6B】第2番目のリンクの第1基準面を表す図である。
図7A】第2部材が第6番目のリンク(手首部)の第2基準面に固定された状態を示す。
図7B】第6番目のリンク(手首部)の第2基準面を表す図である。
図8】ダイヤルゲージの読みが所定の範囲に入る程度まで第2部材が第1部材に対して位置付けられている状態を表す。
図9】第2部材の斜視図である。
図10】第2部材を図9における下方から見た斜視図である。
図11】第1部材を後方側から見た斜視図である。
図12】第1部材を図11における下方から見た斜視図である。
図13】ロボットの第1番目の関節軸近辺の斜視図である。
図14図13における測定部材近辺の拡大図である。
図15】測定部材の斜視図である。
図16】測定部材を図15における底面側から見た斜視図である。
図17】測定部材の斜視図である。
図18】測定部材を図17における底面側から見た斜視図である。
図19】ロボットの第2番目の関節軸近辺の斜視図である。
図20図19における測定部材近辺の拡大図である。
図21】測定部材の斜視図である。
図22】測定部材を図21における背面側から見た斜視図である。
図23】本実施形態にかかるキャリブレーション手順が好適に適用され得るロボットの他の構成例を示している。
図24】第3から第6番目の関節軸について一括キャリブレーションを行う状態を示す図である。
図25A】本実施形態に係るキャリブレーション手順が好適に適用されるロボットの構成のさらに別の例を示している。
図25B】本実施形態に係るキャリブレーション手順が好適に適用されるロボットの構成のさらに別の例を示している。
図26】第2から第7番目の関節軸について一括キャリブレーションを行う状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。参照する図面において、同様の構成部分または機能部分には同様の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。また、図面に示される形態は本発明を実施するための一つの例であり、本発明は図示された形態に限定されるものではない。
【0011】
図1は一実施形態に係るロボットキャリブレーション装置100の全体構成を表す図である。図1に示すように、ロボットキャリブレーション装置100は、ロボット10と、ロボット10を制御するコントローラ50と、コントローラ50に接続された教示操作盤30とを具備する。図1では、ロボット10の側面図を示している。図2は、ロボット10の斜視図である。ロボット10は、複数のリンクL1-L6及び複数の関節軸(J2-J6)を有するアーム12と、アーム12を別の関節軸(J1)を介して支持するベース1とを備える多関節ロボットである。コントローラ50は、ロボット10の各関節軸の位置制御を行うことでロボット10を制御する。コントローラは、CPU、ROM、RAM、操作部等を有する一般的なコンピュータとしての構成を有していても良い。
【0012】
図1及び図2に示されるように、ロボット10は第3番目の関節軸J3として直動軸を有する。ロボット10のように直動軸を有する多関節ロボットの場合、ロボット10の先端のリンクL6(手首部)とベース1にそれぞれキャリブレーション部材を装着してリンクL6(手首部)をベース1に対して位置決めするやり方で6軸全てについて一括キャリブレーションを行おうとすると、リンクL6(手首部)とベース1間の距離が大きいためキャリブレーション部材が大きくなり過ぎるという不都合を生じる。そこで、ロボットキャリブレーション装置100では、以下で説明するようにキャリブレーションを行うことでキャリブレーションを効率化する。ロボットキャリブレーション装置100において、ベース1から離隔して互いに連結される3つ以上のリンク(例えばL2~L6)の両端の第1リンク(例えばリンクL2)と第2リンク(例えばリンクL6)との相対位置関係を測定することにより、それら3つ以上のリンクの間の2つ以上の関節軸(例えばJ3-J6)に対し一括キャリブレーションを実行する。次に、ベース1とベース1に連結される1つのリンク(例えばリンクL1)との相対位置関係を測定することにより、それらベースとリンクとの間の関節軸に対し単独キャリブレーションを実行するか、又は、第1リンク(例えばリンクL2)と上記3つ以上のリンクに連結される他の1つのリンク(例えばリンクL1)との相対位置関係を測定することにより、それら第1リンクと他のリンクとの間の関節軸(例えばJ2)に対し単独キャリブレーションを実行する。そして、一括キャリブレーションと単独キャリブレーションとに基づいて、アーム先端の位置を較正する。
【0013】
本実施形態では、上記第1リンクに相当するリンクL2に形成された第1基準面R1(図6B参照)と、上記第2リンクに相当するリンクL6に形成された第2基準面R2(図7B参照)との相対位置及び相対姿勢をダイヤルゲージを用いて接触式で測定し、測定結果に基づいてリンクL2とリンクL6との間の関節軸J3-J6について一括キャリブレーションを実行する。
【0014】
図3は、本実施形態に係るキャリブレーションの手順を表すフローチャートである。図3を参照してキャリブレーションの手順を説明する。はじめに、ダイヤルゲージ装着用のキャリブレーション部材(治具)である第1部材301に、ダイヤルゲージ340を装着する(ステップS1)。図11及び図12に、第1部材301を後方側の斜め上方から見た斜視図、前方の下側から見た斜視図をそれぞれ示す。なお、説明の便宜上、第1部材301単体についての説明では図11に示す通り取付壁305がある側を後方側として説明する。第1部材301は、ロボット10のリンクL2(アーム部材)に形成された第1基準面R1に取り付けられる取付壁305と、取付壁305から前方に伸びる板状の底壁306と、底壁306の先端部から上方に伸びる第1ゲージ取付壁311と、第1ゲージ取付壁311の上端に接続され、第1ゲージ取付壁311に対し垂直に前方へ伸びるように形成された第2ゲージ取付壁312とを備える。第1ゲージ取付壁311には、水平方向の両端部付近にダイヤルゲージ340を挿入するための2つのダイヤルゲージ挿入孔320が設けられている。第2ゲージ取付壁312には、前後方向中央部における左右両端付近に2つ、前端部の左右方向中央部に1つ、合計3つのダイヤルゲージ挿入孔320が設けられている。第1ゲージ取付壁311の前方側の面、第2ゲージ取付壁312の底面が、互いに直交する第1ゲージ取付面311a、第2ゲージ取付面312aをそれぞれ構成する。
【0015】
ステップS1では、第1部材301の合計5つのダイヤルゲージ挿入孔320に5つのダイヤルゲージ340を装着する。図4は、第1部材301にダイヤルゲージ340が装着された状態を斜視図で表している。次に、ステップS2では、較正ブロック345を用いてダイヤルゲージ340の基準位置を較正する。図5は、較正ブロック345を用いたダイヤルゲージ340の較正の様子を示す図である。較正ブロック345は、2つの端面345aと底面345bとの間に所定の基準寸法を持つ。この較正ブロック345の端面345aを、例えば、第2ゲージ取付面312aに押し付け、ダイヤルゲージ340の接触子が底面345bに突き当たるようにする。このときのダイヤルゲージ340の読みが、較正ブロック345の基準寸法と一致するように、ダイヤルゲージ340を較正する。
【0016】
次に、ステップS3では、第1部材301及び第2部材201をロボット10に取り付ける。図6Bに示すように、リンクL2(アーム部材)の第1基準面R1が形成された部分には部材取付用のネジ穴350と位置決めピン穴351が形成されている。第1部材301の取付壁305を第1基準面R1と密着させた状態で、ネジ穴350と位置決めピン穴351を利用して取付壁305を第1基準面R1に正確に位置決めをした後、ネジ止め固定する。図6Aは、第1部材301が第1基準面R1に固定された状態を示している。
【0017】
次にリンクL6(手首部)に取り付ける第2部材201について説明する。図9及び図10はそれぞれ第2部材201を斜め上方からみた斜視図、斜め下方から見た斜視図である。なお、説明の便宜上、第2部材201単体についての説明では図9に示す通り取付壁205がある側を後方側として説明する。図9及び図10に示すように、第2部材201は、第2基準面R2に取り付けられる取付壁205、取付壁205から前方に伸びる支持壁206、及び支持壁206の先端に設けられた、互いに直交する第1及び第2ゲージ計測壁211及び212を有する。第1ゲージ計測壁211の前方側の面、第2ゲージ計測壁212の上面が、互いに直交する第1ゲージ計測面211a、第2ゲージ計測面212aをそれぞれ構成する。
【0018】
図7Bに示すように、リンクL6(手首部)の第2基準面R2が形成された部分には、部材取付用のネジ穴220と位置決めピン穴221が形成されている。第2部材201の取付壁205を第2基準面R2と密着させた状態で、ネジ穴220と位置決めピン穴221を利用して取付壁205を第2基準面R2に正確に位置決めをした後、ネジ止め固定する。図7Aは、第2部材201が、第2基準面R2に固定された状態を示している。
【0019】
次に、ステップS4では、オペレータOPは、教示操作盤30を操作してロボット10を動かし、第2部材201を第1部材301に接近させる。そして、オペレータOPは、第1ゲージ計測面211aを第1ゲージ取付面311aに取り付けられている2つのダイヤルゲージ340に接触させ、第2ゲージ計測面212aを第2ゲージ取付面312aに取り付けられている3つのダイヤルゲージ340に接触させる。さらに、オペレータOPは、これらのダイヤルゲージ340の読みが所定の範囲になるまでロボット10の移動操作を行う。全てのダイヤルゲージ340の読みが所定の範囲になると、第1ゲージ計測面211aと第1ゲージ取付面311a、及び、第2ゲージ計測面212aと第2ゲージ取付面312aが所定の位置及び姿勢の関係となるように位置付けられたことになる。図8は、ダイヤルゲージ340の読みが所定の範囲に入る程度まで、第2部材201が第1部材301に対して位置付けられた状態を表している。コントローラ50は、このときの関節軸J3-J6の位置を記憶する。コントローラ50は、これらの記憶された値を用いて、関節軸J3-J6の原点位置の一括キャリブレーションを行うことができる。
【0020】
本実施形態に係るキャリブレーション部材としての第1部材301は、互いに直交する一対のゲージ取付面である第1ゲージ取付面311a及び第2ゲージ取付面312aを有する2面構造であり、第2部材201は、互いに直交する一対のゲージ計測面である第1ゲージ計測面211a及び第2ゲージ計測面212aを有する2面構造である。このような2面構造のキャリブレーション部材を用いることで、4つの関節軸J3-J6の同時の位置決めが達成されている。具体的には、第1ゲージ計測面211aを第1ゲージ取付面311aに取り付けられた2つのゲージで測定することにより、直動軸J3と関節軸J6の位置を規定することができる、第2ゲージ計測面212aを第2ゲージ取付面312aに取り付けられた3つのゲージで測定することにより、関節軸J4、J5の位置を規定することができる。
【0021】
以上のように関節軸J3-J6について一括キャリブレーションが完了すると、残りの2つの関節軸J1、J2については、個別に単独キャリブレーションを実行する(ステップS6)。
【0022】
次に、図13から図18を参照して関節軸J1の単独キャリブレーションについて説明する。図13は、ロボット10の関節軸J1近辺の斜視図である。図14は、図13における測定部材401、501近辺の拡大図である。ここでは、ベース1とリンクL1の相対位置関係を測定するための治具として、ベース1の基準面R3に測定部材401を固定し、リンクL1の基準面R4に測定部材501を取り付ける。測定部材401のゲージ取付面401aにはダイヤルゲージ340を取り付ける。オペレータOPは教示操作盤30を操作して、リンクL1を関節軸J1周りに回転させ、ダイヤルゲージ340の読みが所定の範囲に入るまで、測定部材501のゲージ測定面501aを測定部材401のゲージ取付面401aに接近させる。これにより、ゲージ取付面401aとゲージ測定面501aとの相対位置関係が測定されることになる。ダイヤルゲージ340の読みが所定の範囲内に入ったところで、関節軸J1の位置を記憶する。これにより、関節軸J1の原点位置のキャリブレーションを行うことができる。
【0023】
図15は測定部材501の斜視図であり、図16は測定部材501を図15における底面側から見た斜視図である。図15及び図16に示すように、測定部材501は、リンクL1の基準面に取り付けられる取付壁505と、取付壁505に立設するゲージ測定壁506と、ゲージ測定壁506を支持する支持壁507とを有する。取付壁505には、ネジ止め孔520と位置決めピン穴521が形成されており、測定部材501はこれらネジ止め孔520と位置決めピン穴521を介してリンクL1の基準面R4に正確に位置決めをした後、ネジ止め固定される。ゲージ測定壁506の図15中手前側の面がゲージ測定面501aを構成する。
【0024】
図17は測定部材401の斜視図であり、図18は測定部材401を図17における底面側から見た斜視図である。図17及び図18に示すように、測定部材401は、ベース1の基準面R3に取り付けられる取付壁405と、取付壁405に立設するゲージ取付壁406と、ゲージ取付壁406を支持する支持壁407とを有する。取付壁405には、ネジ止め孔420と位置決めピン穴421が形成されており、測定部材401はこれらネジ止め孔420と位置決めピン穴421を介してベース1の基準面R3に正確に位置決めをした後、ネジ止め固定される。ゲージ取付壁406の図17中手前側の面がゲージ取付面401aを構成する。ゲージ取付壁406には、ダイヤルゲージ340を取り付けるための取付穴450が形成されている。
【0025】
続いて、図19図22を参照して関節軸J2の単独キャリブレーションについて説明する。図19は、ロボット10の関節軸J2近辺の斜視図である。図20は、図19における測定部材601近辺の拡大図である。ここでは、リンクL1とリンクL2の相対位置関係を測定するための治具として、リンクL2(アーム部材)の基準面R5に測定部材601を取り付ける。リンクL1には、基準面621が形成されている。測定部材601のゲージ取付面601aにはダイヤルゲージ340を取り付ける。オペレータOPは教示操作盤30を操作して、リンクL2を関節軸J2周りに回転させ、ダイヤルゲージ340の読みが所定の範囲に入るまで、リンクL1の基準面621を測定部材601のゲージ取付面601aに対して接近させる。これにより、基準面621とゲージ取付面601aとの相対位置関係が測定されることになる。ダイヤルゲージ340の読みが所定の範囲内に入ったところで、関節軸J2の位置を記憶する。これにより、関節軸J2の原点位置のキャリブレーションを行うことができる。
【0026】
図21は測定部材601の斜視図であり、図22は測定部材601を図21における背面側から見た斜視図である。図21及び図22に示すように、測定部材601は、リンクL2の基準面R5に取り付けられる取付壁605と、取付壁605から直角に延びるように形成されたゲージ取付壁606と、ゲージ取付壁606を支持する支持壁607とを有する。取付壁605には、ネジ止め孔620と位置決めピン穴621が形成されており、測定部材601はこれらネジ止め孔620と位置決めピン穴621を介してリンクL2の基準面R5に正確に位置決めをした後、ネジ止め固定される。ゲージ取付壁606の図15中手前側の面がゲージ取付面601aを構成する。
【0027】
以上説明したように本実施形態によれば、ロボットが直動軸を有し全関節軸の一括キャリブレーションが困難な構成の場合であっても、ロボットの全関節軸のうち直動軸を含む一部の関節軸について一括キャリブレーションを行い、他の関節軸については個別に単独キャリブレーションを行う構成とした。これにより、キャリブレーション部材が大型化する等の不都合の発生を回避しつつ効率的にキャリブレーションを行うことができる。
【0028】
なお、上述した実施形態では、ロボット10が直動軸を含む場合について説明したが、本実施形態に係るキャリブレーション方法が効果的に適用され得るロボットの構成(すなわち、全関節軸の一括キャリブレーションが困難なロボットの構成)は上記実施形態の場合以外にも様々な例があり得る。
【0029】
図23は、本実施形態に係るキャリブレーション手順が好適に適用され得るロボットの他の構成例を示している。図23に示すロボット10Aは、第2番目のリンクL2が長く形成されており、手首部とベース1Aとにキャリブレーション用の部材(711A、71A)を取り付けて全関節軸について一括キャリブレーションを行おうとすると部材(711A、71A)が大きくなるという問題を生じ得る。このような場合にも、上述の実施形態で説明した構成と同様に、第2リンクL2と手首部とにキャリブレーション用の治具701、751を取り付け、関節軸J3-J6について一括キャリブレーションを行う手法をとる(図24)。そして、関節軸J1、J2については個別に単独キャリブレーションを行う。これにより、上述の実施形態と同様にキャリブレーションを効率化することができる。
【0030】
図25A-25Bは、本実施形態に係るキャリブレーション手順が好適に適用されるロボットの構成のさらに別の例を示している。図25A-25Bに示すロボット10Bは7軸ロボットである。そのため、ベース1BとリンクL7(手首部)にそれぞれキャリブレーション用の部材801、851を取り付けてリンクL7(手首部)をベース1Bに対して位置決めしたとしても、図25A及び図25Bに示す通りロボット10Bの姿勢が一意に定まらない。この場合、全関節軸の一括キャリブレーションを行うことはできない。
【0031】
そこで、図26に示す通り、リンクL1とリンクL7(手首部)にそれぞれキャリブレーション用の部材801A及び851Aを取り付け、関節軸J2-J7の6軸について一括キャリブレーションを行う。関節軸J1については個別に単独キャリブレーションを行う。これにより、上述の実施形態と同様にキャリブレーションを効率化することができる。
【0032】
以上、典型的な実施形態を用いて本発明を説明したが、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなしに、上述の各実施形態に変更及び種々の他の変更、省略、追加を行うことができるのを理解できるであろう。
【0033】
上述の実施形態は、ロボットの全関節軸のうち一部について一括キャリブレーションを行い、残りの関節軸については単独キャリブレーションを行う構成であった。しかしながら、ロボットの関節軸が多い場合には、全関節軸を複数のグループに分け各グループ毎に一括キャリブレーションを行うような手順をとっても良い。
【0034】
上述の実施形態では、一括又は単独のキャリブレーションを行う際に、治具を用いて二つのリンク間の相対位置関係を測定する測定器を構成したが、二つのリンク間の相対位置関係を測定する測定器としては視覚マークをカメラで撮像して計測するようなビジョン方式による構成も有り得る。
【符号の説明】
【0035】
1 ベース
10 ロボット
30 教示操作盤
50 コントローラ
100 ロボットキャリブレーション装置
201 第2部材
211a 第1ゲージ計測面
212a 第2ゲージ計測面
301 第1部材
311a 第1ゲージ取付面
312a 第2ゲージ取付面
340 ダイヤルゲージ
621 基準面
J1-J6 関節軸
L1-L6 リンク
R1-R5 基準面
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
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図14
図15
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図25A
図25B
図26