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▶ ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】医療コネクタ用抗菌キャップ
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/20 20060101AFI20220112BHJP
   A61L 31/12 20060101ALI20220112BHJP
   A61L 31/16 20060101ALI20220112BHJP
   A61L 31/10 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
A61M39/20
A61L31/12 100
A61L31/16
A61L31/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019221469
(22)【出願日】2019-12-06
(62)【分割の表示】P 2016564218の分割
【原出願日】2015-04-14
(65)【公開番号】P2020049245
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2020-01-06
(31)【優先権主張番号】14/260,027
(32)【優先日】2014-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417-1880, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン カール バークホルツ
(72)【発明者】
【氏名】リウ フイビン
(72)【発明者】
【氏名】エス.レイ イサクソン
(72)【発明者】
【氏名】ウェストン エフ.ハーディング
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス ジェイ.トレーナー
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0078203(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0302997(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103055373(CN,A)
【文献】特表2012-510559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/16
A61M 39/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタを受容するのに十分な直径を有する開口部と、
前記コネクタを受容するのに十分なボリュームを画定する内面と、
前記内面に適用される一定量の抗菌材料と、を備え、前記一定量の抗菌材料が前記コネクタからの残留流体に溶解することで、0.005%w/wから25%w/wの濃度を有する抗菌溶液が前記ボリューム内に提供されるとともに、
外装に接続されるクリップを有する前記外装、を備え、
前記クリップは、抗菌キャップの所要の位置を維持するために、IVラインとIVポールの一部の外径を受け入れるのに十分な直径を有するアパーチャを形成する一対の対向するアームを備え、
前記抗菌材料は、乾燥コーティングであって、前記抗菌材料とポリマーマトリックスを備え、前記抗菌材料が前記ポリマーマトリックスと化学結合していない、乾燥コーティングとして薄い層を形成するように前記内面に適用されることを特徴とする抗菌キャップデバイス。
【請求項2】
前記残留流体は、血液、薬品、水および生理食塩水からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の抗菌キャップデバイス。
【請求項3】
前記抗菌材料は、クロルヘキシジンジアセテート、グルコン酸クロルヘキシジン、アレキシジン、スルファジアジン銀、酢酸銀、クエン酸銀塩水化物、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、オルトフタルアルデヒド、および銀元素から成る群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の抗菌キャップデバイス。
【請求項4】
前記抗菌キャップは単回使用のものであることを特徴とする請求項1に記載の抗菌キャップデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
注入治療は、一般に静脈内への医薬品の投与を含む。典型的な注入治療を行う場合、一つ以上の注入治療装置(例えば、チューブセット)が使用される。しばしば、注入治療の間に、チューブセットの端部は、注射器がチューブセットの雄ルアー端部から取り外されたときなどに、非殺菌表面が曝されたまま残される。例えば、チューブセットの端部が露出しているとき、患者または看護師がその端部に触れるかもしれないし、その端部が非殺菌の寝具、テーブル、または床面に接触するかもしれない。
【背景技術】
【0002】
チューブセットのニードルレスコネクタ端部またはハブを殺菌する必要があるが、一般に雄ルアーである他端部を殺菌する必要はないのである。消毒キャップは、ニードルレスコネクタ、IVセット、または短い拡張チューブのような注入治療装置の端部を消毒するのにますます使用されるようになってきている。このようなキャップは、一般に、キャップがポートに接続された際に、ポート表面に接続するアルコールに浸した発泡体を含む。これらのキャップを使用する際に、さまざまな問題が存在している。例えば、アルコールに浸した発泡体は、アクセスポートの外表面のみに接触する。また、一度キャップがポートに配置されると、そのキャップの中のアルコールはすばやく蒸発してしまう。さらに、アルコールを使用した結果、しばしば、IVラインの中にアルコールを押し込んでしまう。
【0003】
さらに、いくつかのタイプの雌ルアーコネクタは、従来の消毒キャップによっては効果的に処理することのできない液体を捕捉している。例えば、カテーテルアダプタの側面ポートは、特に緊急事態において迅速な効果を得るために、IV薬品すなわち流体のIVラインまたは患者の血流への迅速なアクセス手段として一般的に使用されている。そのポートは、カテーテルの全使用期間中に、複数回アクセスされ得る。時には7日を越える場合もある。シリンジなど汚染されたルアーアクセスデバイスがそのポートに接続されると、側面ポートの側壁および底部に微生物を移動させてしまい得る。これは、微生物の増殖とそのポートの側面内部のコロニ形成をもたらし、患者が感染症を起こす危険性がある。現在、入手可能な消毒キャップは、これらの表面を効果的に消毒することができない。
【0004】
よって、ニードルレスコネクタを消毒するための方法とシステムが現在するが、依然として課題が存在する。したがって、現行技術を本明細書で論じるシステムおよび方法で増強または置き換えることは、当該技術分野における改善となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2012/397,760号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/829,010号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/476,997号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/490,235号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/831,880号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0137472号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0135949号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、医療コネクタ用キャップに関する。より具体的には、本発明は、コネクタ上に配置するための抗菌キャップに関するものであり、抗菌キャップのさまざまな特徴がコネクタを消毒状態に維持している。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態は、乾燥した非結合(non‐bonded)抗菌材料が配された内面を有する抗菌キャップを提供する。残留流体に曝されると、乾燥した非結合抗菌材料が迅速に溶解し、それによって、キャップの閉鎖ボリューム内で抗菌性溶液を形成する。抗菌性溶液はキャップの内面とキャップの内部に挿入されるコネクタの外面とに接触する。
【0008】
本発明の他の実施形態は、さまざまなクリップの特徴を抗菌キャップの外面に提供し、クリップの特徴によって、キャップをIVチューブの一部に取り付けたり、またはIVポールが地面のような望まない表面へのキャップの接触を防いだりすることが可能になる。さまざまな構造が、貯蔵および臨床医への抗菌キャップの分配を行うために、さらに提供される。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態は、抗菌プラグを有する抗菌キャップをさらに備えている。抗菌プラグは、キャップの内側のベース面から外方へと延在し、コネクタの内部ボリューム内へと延在する。コネクタはプラグが延在し得る内部空間を有している。抗菌プラグは、キャップおよび/またはコネクタの機能を損なうことなく表面積を最大にするために、さまざまな形状や外形を含むことができる。
【0010】
ある場合には、取り外し/単回使用が可能な抗菌プラグを備える抗菌キャップが提供される。取り外し可能なプラグは、キャップの開口に対向するキャップの底部に設けられている穴を介してキャップに挿入される。プラグは、挿入され、使用された後、適切な抗菌効果を維持するために取り外すことができる。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態は、キャップの底部の内面に取り付けられた抗菌拡張(growth)材料を備えている。成長材料は、残留流体が接触したとき、材料から溶出するのである。成長材料は脱水されており、流体に曝されたときに膨張すなわち拡張する。
【0012】
さらに、本発明のいくつかの実施形態は、抗菌潤滑剤が配置されている内面を有するキャップを備えている。抗菌潤滑剤は、キャップがその上に配置されたとき、コネクタの外内面に転移される。キャップを除去すると、抗菌潤滑剤は、キャップおよびコネクタ表面に残り、それによって、抗菌効果が付与される。
【0013】
この概要は、以下の詳細な説明でさらに説明する概念の選択を簡略化した形態で紹介するために提供される。この要約は、特許請求の範囲の内容の重要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図しておらず、また、特許請求の範囲の内容を判定する助けとして使用されることも意図していない。
【0014】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下の説明に記載され、その一部が説明から明らかになるか、または、本発明の実施により習得され得る。本発明の特徴および利点は、添付の特許請求の範囲で特に指摘された機器および組合せによって、実現および取得することができる。本発明のこれらの特徴と他の特徴は、以下の説明および添付の特許請求の範囲から、より完全に明白になるか、または以下に示す本発明の実施により、習得され得る。
【0015】
本発明の上記および他の利点および特徴が得られる方法を説明するために、簡単に上述した本発明のより詳細な記述が、添付図面に示された具体的な実施形態を参照して提供される。これらの図面は、発明の代表的な実施形態のみを示すものであり、それゆえに、発明の範囲を制限するものとして考慮されるべきでないことを理解するべきであり、本発明は、添付の図面の使用を通じて、付加的な特異性や細部とともに記載され、説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の代表的な実施形態による抗菌キャップの断面図を示す。
図2】本発明の代表的な実施形態による抗菌キャップの断面図とその中に挿入されたコネクタの斜視図を示す。
図3A】本発明の代表的な実施形態によるクリップ特徴の斜視図を示す。
図3B】本発明の代表的な実施形態によるクリップ特徴の斜視図を示す。
図3C】本発明の代表的な実施形態によるクリップ特徴の斜視図を示す。
図4A】本発明の代表的な実施形態による保管・分配方法および装置の斜視図を示す。
図4B】本発明の代表的な実施形態による保管・分配方法および装置の斜視図を示す。
図4C】本発明の代表的な実施形態による保管・分配方法および装置の斜視図を示す。
図5A】本発明の代表的な実施形態による抗菌プラグを有する抗菌キャップの断面図を示す。
図5B】本発明の代表的な実施形態による抗菌プラグを有する抗菌キャップの断面図を示す。
図6A】本発明の代表的な実施形態による湾曲した抗菌プラグの断面図を示す。
図6B】本発明の代表的な実施形態による湾曲した抗菌プラグの断面図を示す。
図7A】本発明の代表的な実施形態による終端ディスクを有する抗菌プラグの断面図を示す。
図7B】本発明の代表的な実施形態による終端ディスクを有する抗菌プラグの断面図を示す。
図8】本発明の代表的な実施形態による、側面ポートの内部形状と同じ三次元終端形状を有する抗菌プラグの断面図を示す。
図9A】本発明の代表的な実施形態による取り外し可能な抗菌プラグの断面図を示す。
図9B】本発明の代表的な実施形態による取り外し可能な抗菌プラグの断面図を示す。
図9C】本発明の代表的な実施形態による取り外し可能な抗菌プラグの断面図を示す。
図9D】本発明の代表的な実施形態による取り外し可能な抗菌プラグの断面図を示す。
図10A】本発明の代表的な実施形態による抗菌拡張材料の断面図を示す。
図10B】本発明の代表的な実施形態による抗菌拡張材料の断面図を示す。
図11A】本発明の代表的な実施形態による、キャップの内面に適用された抗菌潤滑剤を有するキャップの断面図を示す。
図11B】本発明の代表的な実施形態による、キャップの内面に適用された抗菌潤滑剤を有するキャップの断面図を示す。
図11C】本発明の代表的な実施形態による、キャップの内面に適用された抗菌潤滑剤を有するキャップの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、医療コネクタ用キャップに関する。さらに詳細には、本発明はコネクタ上に配置するための抗菌キャップに関するものであり、抗菌キャップのさまざまな特徴がコネクタを消毒状態に維持している。
【0018】
本明細書で使用されている場合、用語“コネクタ”は、二次静脈注入デバイスと連結することを可能にする注入装置の一部である任意の構成を含むと理解される。本発明によるコネクタの非限定的な例は、ニードルレスコネクタ、雄ルアーコネクタ、雌ルアーコネクタ、側面ポート弁、yポート弁、ポート弁、および他の類似構造が含まれる。
【0019】
ここで、図1を参照すると、抗菌キャップ10が示されている。抗菌キャップ10は、概して、流体および化学物質と共に輸液処置に共通して使用して安全なポリマー材を含む。例えば、ある場合には、キャップ10は、ポリ塩化ビニル材を含む。キャップ10は、コネクタ30を受け入れるために十分な直径を有する開口部12を備える。ある場合には、コネクタ30が、キャップ10の開口部12を通過し挿入し得る凸の(positive)表面を備えている。例えば、ある場合には、コネクタ30は、雄ルアーコネクタを備えている。他の場合には、コネクタ30は、シリンジ先端を備えている。さらに、ある場合には、コネクタ30は、カテーテル補助器具の側面ポートすなわちy‐ポートを備えている。他の場合には、コネクタ30は、カテーテルアダプタ、IVチューブの一部、またはカテーテルを備えている。
【0020】
いくつかの実施形態では、キャップ10は、ねじ接続部を介してコネクタ30を受け入れる。例えば、ある場合には、キャップ10は、1組の雌ねじ山または雄ねじ山を備えており、それらはコネクタ上に配置された相補的な1組のねじ山と螺合する。他の場合には、キャップ10は、摩擦または締まりばめを介してコネクタ30を受け入れる。
【0021】
抗菌キャップ10は、さらに、コネクタ30を受け入れるための十分なボリュームを画成している内面14を備えている。内面14は、一般に管状であるが、ある場合には、内面14が開口部12からキャップベース16まで内部に向かって徐々に細くなる。内面14は、所望されるのであれば任意の幾何学形状または形状でも含むことができる。
【0022】
キャップ10のボリュームには、開口部12からベース16に延在するキャップ10の内部空間を構成している。そのボリュームは、概して、キャップ10を消毒状態に維持する目的のために、キャップ10内へのコネクタ30の配置を許容するべく選択されている。したがって、抗菌キャップ10は、内面14に適用されるある量の抗菌材料20をさらに備えている。抗菌材料20は、本発明の教示に従って使用するのに安全な任意の型または形状の抗菌材料を含むことができる。例えば、ある場合には、抗菌材料20は、クロルヘキシジンジアセテート、グルコン酸クロルヘキシジン、アレキシジン、スルファジアジン銀、酢酸銀、クエン酸銀塩水化物、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、オルトフタルアルデヒド、および銀元素からなる群から選択される。
【0023】
いくつかの実施形態では、抗菌材料20は、公知の方法で内面14に適用される乾燥した非結合のコーティングを含む。例えば、いくつかの実施形態では、抗菌材料20は、噴霧、浸漬またはブラシがけによって、内面14に適用される。他の実施形態では、抗菌材料20は、抗菌物質が均等に分散されたUV硬化ポリマーマトリックスを含む。抗菌物質は、ポリマーマトリックスと化学結合しておらず、したがって、マトリックスが残留流体に曝されるか、または湿らされると、マトリックスから溶出させることが可能である。
【0024】
キャップ10が、コネクタ30上に配置されると、コネクタ30は、キャップ10のボリュームを減少させる。
【0025】
互いに固定されると、コネクタ30および抗菌キャップ10は、相互接続された装置間に、閉じたボリュームを形成する。コネクタ30からの残留液体32に曝されると、乾燥した非結合の抗菌材料20は、残留流体32より迅速に溶解し、それによって、図2に示すように、閉ざされたボリューム内の残留流体32によって抗菌性溶液を形成する。抗菌性溶液は、閉ざされたボリューム内に収容され、閉ざされたボリューム内に配置されたニードルレスアダプタおよび内面14のすべての表面に曝される。
【0026】
上述したように、いくつかの実施形態では、抗菌材料20は、抗菌材料が均一に分散された複数の微細な隙間を含むマトリックスを形成するUV硬化親水ポリマー材料を含む(不図示)。残留流体32に曝されると、ポリマーマトリックスは軟化し、残留流体が浸透する。ポリマーマトリックス内の抗菌材料は、マトリックスから残留流体中に溶出し、閉ざされたボリューム内に所望の最終濃度を有する抗菌性溶液を形成する。適切なポリマー原料の例は、米国特許出願第12/397,760号明細書、同第11/829,010号、同第12/476,997号明細書、同第12/490,235号明細書および同第12/831,880号明細書に記載されており、それぞれは、それら全体としてここに取り入れられる。
【0027】
概して、ある量の抗菌材料20は、閉じたボリューム内で残留流体32に溶解されることで、閉じたボリューム内で十分な抗菌効果を有するのに必要な最小濃度を有する抗菌性溶液を提供する。ある場合には、およそ0.005%w/wからおよそ25%w/wまでの最終濃度を提供するために、所定量の抗菌材料20が内面14に適用される。よって、抗菌材料20の量は、抗菌キャップ10およびコネクタ30の計算された閉じたボリュームに基づいて決定される。
【0028】
例えば、抗菌キャップ10の容積が1cm3であり、キャップ10に挿入されるコネクタ30の一部の容積が0.75cm3である場合、計算された抗菌キャップ10の閉じたボリュームは、0.25cm3である。したがって、閉じたボリューム内の残留流体32の可能な最大容積は0.25cm3である。それに応じて、およそ0.005% w/wからおよそ25% w/w(閉じたボリューム内で)の抗菌溶液中の抗菌材料の最終的な所望濃度を達成するためには、およそ12.6μgからおよそ83.3mgの抗菌材料20を内面14に適用することが必要となる。
【0029】
残留流体32は、注入療法手順に共通するいかなる流体または複数流体の組み合わせを含むことが可能である。例えば、いくつかの実施形態では、残留流体32は、血液、薬剤、水、生理食塩水、尿、またはそれらの組み合わせを含む。ある場合では、コネクタ30がキャップ10に挿入された後、残留流体32が抗菌キャップ10に漏出する。他の場合では、残留流体32が、キャップ10に挿入される前にコネクタ30上に存在している。さらに、ある場合では、残留流体32は、コネクタ30が抗菌キャップ10の中に挿入される前に、その中に存在している。
【0030】
抗菌キャップ10の使用後、キャップ10は、コネクタ30から取り外され、処分される。ある場合では、抗菌キャップ10は、処分される前に複数回再利用される。例えば、ある場合では、キャップ10は、コネクタ30が別体のコネクタ(不図示)から取り外された後、コネクタ30に適用される。コネクタ30を別体のコネクタと再接続する前に、抗菌キャップ10をコネクタ30から再度取り外し、別体のコネクタからコネクタ30の取り外した後、再適用される。
【0031】
ある場合では、抗菌キャップ10の外面18は、図3A図3Cに示すように、抗菌キャップ10の所要の位置を維持するために、IVポールとIVラインとの少なくとも1つを受け入れるための表面42を有するクリップ40をさらに備えている。ある場合では、図3Bに示すように、クリップ40は、IVチューブ50の一部の外径を受け入れるのに十分な直径を有するアパーチャ44を形成する一対の対向するアームを備えている。他の場合では、クリップ40は、図3Cに示すように、IVポール52を互換的に受け入れるためのフック面を有する単一のフック60を備える。したがって、いくつかの実施形態では、抗菌キャップ10はコネクタ30と連結され、続いてクリップ40を介してIVポール52またはIVチューブ50の一部に結合されることで、床または他の望ましくない面との望ましくない接触が防止される。
【0032】
図4を参照すると、本発明は、抗菌キャップ10を保管および分配するためのさまざまな装置をさらに備える。例えば、いくつかの実施形態では、図4に示すように、単回使用ストリップ70が提供され、これは、複数のキャップ10のベース16表面が弱い接着剤で一時的に接着される細長い表面72を有している。抗菌材料20が乾燥状態で提供されるので、開口部12は、箔またはポリマーカバーを必要とせずに、表面72から外側に配向させることができる。ストリップ70は、さらにIVポールのフック部分を受け入れるように設計された穴74を備え、それによって、臨床医のために便利な位置にストリップ70を吊り下げる。
【0033】
他の場合では、図4Bに示されるように、抗菌キャップ10の外面18は開口部12からベース16まで内向きに先細となっており、ベース16の直径は開口部12の直径よりも小さい。このように、ベース16は、締まりばめにより、隣接するキャップ10の開口部12に嵌め込まれ、積み重ねられた構成を形成することができる。再度述べるが、乾燥状態の抗菌材料20は、開口部12のための箔またはポリマーカバーを必要とせず、それゆえ、保管および分配の目的で積み重ねられた構成を可能にする。
【0034】
さらに、ある場合では、図4Cに示されるように、キャディ80が備えられ、これは対向面82を有し、対向面上には、複数のキャップ10のベース面16が弱い接着剤で一時的に接着されている。抗菌材料20は乾燥状態で提供されているので、開口部12は、開口部12のためのカバーを必要とせずに表面82から外側に配向され得る。キャディ80はさらにIVポールのフック部54を受け入れるように設計された穴84を備えており、これにより臨床医にとって都合の良い位置に吊るすことが可能である。キャディ80は、さらにIVチューブの一部を受け入れるためのアパーチャ44および表面42を有するクリップ40を備えている。
【0035】
ここで、概して図5図11Cを参照すると、ある場合では、抗菌キャップ100は、カテーテルアダプタ120に蝶番式に結合され、側面ポート130を備えるコネクタのための物理的な障壁を提供するように構成されている。カテーテルアダプタ蝶番式に一体化したものとして示されているが、これらの実施形態に関連して説明した抗菌キャップ100の特徴は、任意のタイプまたはスタイルのコネクタを受容するために構成された任意のスタイルまたは形状の抗菌キャップに実装され得る。
【0036】
特に図5Aおよび図5Bを参照すると、ある場合では、抗菌キャップ100は、側面ポート130を受容するために十分な直径を有する開口部102を備えている。キャップ100は、側面ポート130を受容するために十分なボリュームを画成している内面104をさらに備えている。
【0037】
側面ポート130は、開口部すなわちアパーチャ132、内部ボリューム134、および底部136を備えている。ある場合では、以下に説明するように、内部ボリューム134は、さらに特有の内部形状を備え得る。側面ポート130は、側面ポート130とカテーテルアダプタ120の内部ルーメンとの間に無効化可能なシール(defeatable seal)を形成するポートバルブ138をさらに備えている。流体を側面ポート130に注入すると、ポートバルブ138は一時的に無効化されてシールを破壊し、注入された流体はポートバルブ138をバイパスして、カテーテルアダプタ120の内部ルーメンに入ることが可能となる。注入に続いて、少ない分量の残留流体は、一般に内部ボリューム134に残され、微生物汚染の影響を受けやすい。この残留流体は、典型的には、側面ポート130の底部136に溜まって集まり、ポートバルブ138の外面に接触する。しかしながら、より多量の残留流体は、追加の内部ボリューム134の表面に接触し、内部ボリューム134に充填されるか、または実質的に充填できる。
【0038】
抗菌キャップ100は、抗菌プラグ110をさらに備えている。抗菌プラグ110は、概して、プラグ110が内部ボリューム134内で残留流体に接触すると、直ちに溶解または溶出する抗菌材料またはコーティングを備えている。ある場合では、上述したように、抗菌プラグ110は、抗菌材料を均一に分散させたUV硬化親水性材料を備えている。他の実施形態では、プラグ110は、固体抗菌材料からなっている。他の場合では、プラグ110は、ポリマーコーティングを有するポリマーチューブを備えている。
【0039】
抗菌プラグ110は、本発明の教示に適合する任意の形態または形状を備えている。例えば、ある場合では、プラグ110は管形状を備えている。他の場合では、プラグ110はロッドを備えている。さらに、ある場合では、図8B図9に関連して示され、説明されるように、抗菌プラグ110は、非線形の形状またはデザインを備えている。
【0040】
抗菌プラグ110は、キャップ100のベース106に取り付けられている近位端112を備え、そしてさらに、ベース106から外方へ延在する遠位端114を備えている。プラグ110は、図5Bに示すように、アパーチャ132を通過し挿入され、内部ボリューム134内に配置されるのに十分な直径と長さを備えており、キャップ100が側面ポート130に結合されると、遠位端114が底部136に近接して配置されるようになっている。
【0041】
プラグ110の長さと直径は、側面ポート130の上で蝶番式に閉じられるキャップ100の機能を犠牲にせず、プラグ110の表面積を最大にするように選ばれている。いくつかの場合では、プラグ110は、約0.076インチの外径と約0.338インチの実質的な長さを備えている。
【0042】
ある場合には、ヒンジ接続の機能性を維持しながら、抗菌プラグ110の表面積を増加させることが望ましいことがある。したがって、図6Aおよび図6Bに示すように、いくつかの実施形態では、抗菌プラグ110は湾曲している。プラグ110の湾曲形態は、プラグ110の全長を増加させるが、キャップ100を側面ポート130に蝶番式に閉じる際の遠位端114とアパーチャ132との間の接触を防止する。したがって、プラグ110の全表面積は、ヒンジキャップの正常な動作を妨げることなく、増加する。
【0043】
他の場合では、図7Aおよび図7Bに示すように、遠位端114は、底部136の直径よりもわずかに小さい、増加した直径を有するディスク116をさらに備えている。ディスク116は、ヒンジキャップの正常な動作を妨げることなく、プラグ110の全表面積を増加させる。ある場合では、ディスク116は、キャップ100が側面ポート130に着座すると、底部136内に配置される。したがって、増加した表面積のディスク116は、残留流体を含む可能性が最も高い内部ボリューム134の位置内に配置される。ある場合では、ディスク116を底部136に前進させる工程は、底部136から残留流体を移動させ、それにより、底部136の空間の大部分が抗菌ディスク116により占められることになる。
【0044】
いくつかの実施形態では、図8に示すように、内部ボリューム134は、さまざまな表面を有する特有の内部形状140を備えている。よって最大の抗菌効果は、遠位端114を内部形状140と同じ形状を有するように成形することによって、実現され得る。したがって、遠位端114が内部形状140に接触する最大表面を実現することで、内部ボリューム134に最大の抗菌効果を付与する。
【0045】
本発明の実施形態は、図9Aおよび図9Bに示すように、キャップのベース216の中に穴220を有しているキャップ200をさらに備える。穴220は、取り外し可能および/または単回使用可能な抗菌プラグ210を受容するように構成された直径を備えている。プラグ210は、本明細書で前述した他の抗菌成分およびデバイスと同様の材料および特性を備えている。
【0046】
図9Bに示すように、キャップ200は、遠位端214を穴220内に挿入し、近位端212がベース216の凹部217内に完全に装着されるまで、さらに穴220を通って挿入することにより組み立てられる。ある場合では、抗菌プラグ210のシャフト部分は、穴220の直径よりもわずか大きい直径を備えており、それによって、2つの構成要素間の流体密の締まりばめが容易となる。次に、抗菌プラグ210は、最初のプラグ210の抗菌特性が消耗した時点で、キャップ200から取り外し、新しいプラグと交換することが可能である。他の場合では、抗菌プラグ210は、抗菌効果を維持させるために制御された頻度で交換される。
【0047】
いくつかの実施形態では、ユーザが選択して穴220へ挿入することが可能な複数の抗菌プラグが設けられる。例えば、ある場合では、複数のプラグが設けられており、各プラグは特有すなわち異なる抗菌剤を備える。図9Cおよび図9Dに示すように、抗菌プラグ210もまた、螺旋形状または波形状のようなさまざまな非線形の形状を備え得る。上述のように、これらの形状は、キャップ200の正常な動作を妨げることなくプラグ210の全表面積を増加させるものである。
【0048】
図10Aに示されるように、本発明の実施形態では、脱水抗菌材料380が備えられるベース表面316を含むキャップ300をさらに備えている。脱水抗菌材料380は、側面ポート130の内部ボリュームに位置する残留流体に曝露されたとき、膨張し拡張する原料を備えている。例えば、ある場合では、脱水抗菌材料380は、開放セルの不織スポンジを備えている。他の場合では、脱水抗菌材料380は、ヒドロゲルを含む。
【0049】
図10Bに示すように、材料380は、抗菌剤320、または抗菌剤を含む抗菌コーティングをさらに備えており、材料380が残留流体32に曝されたとき、抗菌剤が溶解または溶出することによって、膨張または膨張的拡張を遂げる。ある場合では、材料380は、残留流体32の除去時にその原形態を取り戻す。他の場合では、材料380の寸法の変化は、残留流体32の存在を指し示し、それによって、臨床医がキャップ300を新しいキャップに取り替えるように注意喚起をする。
【0050】
さらに、ある場合では、図11A図11Cに示すように、キャップ400の内面404は、抗菌潤滑剤450を備えている。抗菌潤滑剤450は、潤滑剤450に接触する微生物を殺す抗菌剤を有する粘性または半粘性の潤滑剤またはゲルを備えている。いくつかの場合では、抗菌潤滑剤450は、酢酸クロルヘキシジンまたはグルコン酸クロルヘキシジンとシリコンとの混合物を含む。
【0051】
図11Bに示すように、抗菌潤滑剤450の一部は、キャップ400が側面ポート130上に配置されるにつれて、側面ポート130の外面または内面に転写される。側面ポート130からキャップ400を取り外すと、図11Cに示すように、残留抗菌潤滑剤450が側面ポート130の内外面とキャップ400の内面にとどまる。
【0052】
当業者は、本発明のさまざまな他の実施形態が同様に抗菌潤滑剤を塗布され、それによってさらに、デバイスに接触殺菌(contact kill)効果を付加することができることを理解するであろう。したがって、本発明のさまざまな実施形態の特徴は、多種多様な抗菌キャップおよび他のデバイスを提供するために、互換的に実施され得る。
【0053】
本発明のさまざまな実施形態は、公知の方法および手順に従って製造することが可能である。ある場合には、抗菌成分は抗菌材料を含んでいる。他の場合には、抗菌成分は、ポリカーボネート、コポリエステル、ABS、PVCおよびポリウレタンのような、抗菌材料または抗菌剤と良好な結合強度を有するベースポリマー剤に押し出され、または形作られる。ベースポリマー構造は、溶出特性を有し得る接着剤ベースの抗菌材料で塗布することができる。ある場合には、ベースポリマー構造のトポロジおよび寸法は、微生物学的効能、永久溶出プロファイル、および組立形状制限のために最適化される。
【0054】
本発明のさまざまな抗菌成分は、そのまま抗菌材料に鋳込まれ(casted)または成形され(molded)得る。ある場合では、抗菌成分は、プラスチックに鋳込まれ、そのあと抗菌剤を塗布される。ある場合では、抗菌成分は、デバイスの別の成分上に直接拡張される。例えば、ある場合には、抗菌プラグは、キャップの内面またはベース表面から直接拡張される。これは、最初にキャップのベース表面上に剥離スリーブを配置することによって行われる。抗菌剤は、スリーブによって形成されたルーメン内に堆積される。硬化が完了したのち、スリーブは剥がされ、それによってキャップのベース表面にプラグが現れる。
【0055】
他の場合には、デバイスのさまざまなコンポーネントは、接着剤またはエポキシを介して共に接合される。例えば、ある場合には、抗菌プラグが最初に鋳込まれまたは成形され、それから、抗菌コーティングまたは抗菌剤でコーティングされる。コーティングされたプラグは、その後、エポシキによってキャップのベース表面に接着される。ディスク端のある抗菌プラグの場合には、ディスクおよびロッドすなわちチューブは、一体のピースとして鋳造されてもよく、または、別々に鋳込まれ、または成形された後に互いに結合されるものでもよい。
【0056】
本開示の抗菌コンポーネントおよび抗菌コーティングは、ポリマーマトリックスに1つ以上の抗菌剤を備えている。ポリマーマトリックスは、接着溶剤であってもよく、良好な接着強度および高い溶出速度のためにアクリレート溶剤またはシアノアクリレート溶剤の接着剤が優先される。溶剤は結合を増進するために添加され得る。適切な抗菌剤構成の非線形例は、米国特許出願公開第2010/0137472号明細書、および米国特許出願公開第2010/0135949号明細書に記載されており、そのそれぞれは、参照により全体が本明細書に包含されるものとする。
【0057】
本発明は、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく、他の具体的な形態にて実施され得る。記載された実施形態は、すべての点において、説明のためのものとして考慮されるべきであって、限定のためのものではない。それゆえに、本発明の範囲は、先の説明によってではなく、むしろ添付の特許請求の範囲によって示されるものである。特許請求の範囲と同等の意味および範囲内に入るすべての変更は、それらの範囲内に包含される。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C