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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】結晶性金属有機構造体
(51)【国際特許分類】
   C07F 1/08 20060101AFI20220203BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20220203BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20220203BHJP
   B01J 31/22 20060101ALI20220203BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20220203BHJP
   C07B 53/00 20060101ALI20220203BHJP
   C07B 57/00 20060101ALI20220203BHJP
   C07C 51/00 20060101ALI20220203BHJP
   C07C 53/02 20060101ALI20220203BHJP
   C07C 213/04 20060101ALI20220203BHJP
   C07C 215/68 20060101ALI20220203BHJP
   C07D 403/06 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 31/192 20060101ALN20220203BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
C07F1/08 C CSP
B01J20/22 A
B01J20/22 C
B01J20/30
B01J31/22 Z
B01J37/04 102
C07B53/00 B
C07B57/00 365
C07C51/00
C07C53/02
C07C213/04
C07C215/68
C07D403/06
A61K31/192
C07B61/00 300
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2019520678
(86)(22)【出願日】2017-10-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-09
(86)【国際出願番号】 EP2017076816
(87)【国際公開番号】W WO2018073400
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-09-23
(31)【優先権主張番号】16382480.8
(32)【優先日】2016-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518290560
【氏名又は名称】フンダシオ インスティトゥ カタラ デ インベスティガシオ キミカ(アイシーアイキュー)
(73)【特許権者】
【識別番号】516374820
【氏名又は名称】インスティテュシオ カタラナ デ レセルカ イ エステュディス アバンキャッツ
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コレーラ オチョア,マリア デ ラス ニエベス
(72)【発明者】
【氏名】リージョ ガルシア,バネサ
(72)【発明者】
【氏名】ガラン マスカロス,ホセ ラモン
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】Pan, Congjie; Wang, Weifeng; Chen, Xingguo,In situ rapid preparation of homochiral metal-organic framework coated column for open tubular capillary electrochromatography,Journal of Chromatography A,2016年,1427,125-133
【文献】Du, Miao 他,Molecular tectonics of metal-organic frameworks (MOFs): a rational design strategy for unusual mixed-connected network topologies,Chemistry - A European Journal ,2007年,13(9),2578-2586
【文献】Huebner, Eike 他,N,N,O Ligands Based on Triazoles and Transition Metal Complexes Thereof,European Journal of Inorganic Chemistry ,2010年,(26),,4100-4109
【文献】Yu, Tiantian 他,Roles of temperature, solvent, M/L ratios and anion in preparing complexes containing a Himta ligand,CrystEngComm,2016年,18(8),,1350-1362
【文献】Luz, I.; Llabres i Xamena, F. X.; Corma, A.,Bridging homogeneous and heterogeneous catalysis with MOFs: "Click" reactions with Cu-MOF catalysts,Journal of Catalysis,2010年,276(1),,134-140
【文献】Lysenko, Andrey B. 他,Triazolyl, Imidazolyl, and Carboxylic Acid Moieties in the Design of Molybdenum Trioxide Hybrids: Photophysical and Catalytic Behavior,Inorganic Chemistry,2017年,56(8),,4380-4394
【文献】REGISTRY(STN)[online],2010.10.28[検索日 2021.7.9]CAS登録番号 1248217-86-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
C07B
C07C
C07D
B01J
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(IA)の繰り返し単位を含む結晶性金属有機構造体又は式(IB)の繰り返し単位を含む結晶性金属有機構造体であって、金属M2+及び2つのリガンドL を含み、
【化1】

式中、
前記2つのリガンドL は、同一又は異なっていてもよく、
2+は、二価金属カチオンであり、
各L は、式(R)-(II)の(R)-(イミダゾール-5-イルメチル)-(1,2,4-トリアゾール-4-イル)アセテート及び式(S)-(II)の(S)-(イミダゾール-5-イルメチル)-(1,2,4-トリアゾール-4-イル)アセテートからなる群から独立して選択されるアニオンであり、
【化2】

式(IB)の前記繰り返し単位において、前記金属Mは、2つの溶媒分子Sに配位しており、両方のSは等しく、且つ水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert-ブタノール、ジエチルエーテル、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、1,2-エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、及びピリジンからなる群から選択される溶媒分子であり、
【化3】

は、前記金属M2+と各リガンドL の窒素原子との間の配位結合を表し、前記配位結合のうちの1つは、前記金属M2+と1つのL の窒素原子Nとの間であり、前記別の配位結合は、前記金属M2+と前記別のL の窒素原子Nとの間及び前記金属M2+と前記溶媒分子Sとの間であり、それにより、前記繰り返し単位は、式(RR)-(IA)若しくは式(SS)-(IA)、式(RS)-(IA)若しくは式(SR)-(IA)、式(RR)-(IB)若しくは式(SS)-(IB)、又は式(RS)-(IB)若しくは式(SR)-(IB)を有し、
【化4】

前記第1の繰り返し単位の前記金属M2+と前記追加の繰り返し単位の前記リガンドL
【化5】

の前記窒素原子との間に表される配位結合によって、ある繰り返し単位の前記金属M2+が式(IA)又は式(IB)の2つの追加の繰り返し単位に接続されるように、前記金属有機構造体内の各繰り返し単位は、他の繰り返し単位に接続され、
前記追加の配位結合のうちの1つは、前記第1の繰り返し単位の前記金属M2+と追加の繰り返し単位のL の前記窒素原子Nとの間であり、前記他の追加の配位結合は、前記第1の繰り返し単位の前記金属M2+と別の追加の繰り返し単位のL の前記窒素原子Nとの間である、結晶性金属有機構造体。
【請求項2】
エナンチオ濃縮金属有機構造体であり、両方のL は等しく、且つ式(R)-(II)の(R)-(イミダゾール-5-イルメチル)-(1,2,4-トリアゾール-4-イル)アセテート及び式(S)-(II)の(S)-(イミダゾール-5-イルメチル)-(1,2,4-トリアゾール-4-イル)アセテートからなる群から選択されるアニオンであり、それにより、前記繰り返し単位は、前記式(RR)-(IA)若しくは前記式(SS)-(IA)、又は前記式(RR)-(IB)若しくは前記式(SS)-(IB)を有する、請求項1に記載の結晶性濃縮金属有機構造体。
【化6】

(M2+、S、
【化7】

は、請求項1で定義されたものである。)
【請求項3】
2+は、Cu2+、Zn2+、V2+、Pd2+、Pt2+、Ni2+、Ru2+、Hg2+、Sn2+、Co2+、Fe2+、Mn2+、Cr2+、Cd2+、Be2+、Mg2+、Ca2+、Ba2+、Zr2+、Gd2+、Eu2+、Tb2+、及びこれらの混合物からなる群から選択される二価金属である、請求項1又は2に記載の金属有機構造体。
【請求項4】
2+は、Cu2+であり、それにより、前記繰り返し単位は、式(RR)-(IA1)、又は式(SS)-(IA1)、又は式(RR)-(IB1)、又は式(SS)-(IB1)を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の金属有機構造体。
【化8】

【化9】

及びSは、請求項1~3のいずれか1項で定義されたものである。)
【請求項5】
エナンチオ濃縮金属有機構造体であり、両方のL は等しく、且つ式(R)-(II)の(R)-(イミダゾール-5-イルメチル)-(1,2,4-トリアゾール-4-イル)アセテート及び式(S)-(II)の(S)-(イミダゾール-5-イルメチル)-(1,2,4-トリアゾール-4-イル)アセテートからなる群から選択されるアニオンであり、M2+は、Cu2+であり、両方のSは水分子であり、それにより、前記繰り返し単位は、式(RR)-(IB1’)又は式(SS)-(IB1’)を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の金属有機構造体。
【化10】

【化11】

は、請求項1~4のいずれか1項で定義されたものである。)
【請求項6】
前記繰り返し単位は、前記式(SS)-(IB1’)を有し、前記金属有機構造体は、CuKα放射線(1.5406×10-10m(Å))のX線回折計を用いて測定された、6.2、7.6、9.8、10.7、14.5、15.2、17.6、18.1、19.2、19.7、20.2、20.6、22.5、22.9、23.7、24.2、26.1、27.2、28.3、30.0、32.6、33.2、33.5、34.1、35.0、及び37.0±0.2度の2θに特徴的なピークを含むX線回析図を有する、請求項5に記載の金属有機構造体。
【請求項7】
前記繰り返し単位は、前記式(SS)-(IB1’)を有し、前記金属有機構造体は、単一X線回折によって測定された以下の結晶パラメータを有する、請求項5又は6に記載の金属有機構造体。
結晶系:立方;
空間群:P4(3)/32;
単位セル寸法:
a=20.172(2)×10-10m(Å)α=90°、
b=20.172(2)×10-10m(Å)β=90°、
c=20.172(2)×10-10m(Å)γ=90°;
体積:8208(2)×10-10(Å);及び
密度:1.359Mg/m
【請求項8】
前記繰り返し単位が前記式(SS)-(IA1)を有し、前記金属有機構造体は、250~1800m/gのBET表面積を有する、請求項4に記載の金属有機構造体。
【請求項9】
前記繰り返し単位は、前記式(SS)-(IA1)を有し、前記金属有機構造体は、0.10~0.70cm/gの気孔体積を有する、請求項4及び8のいずれか1項に記載の金属有機構造体。
【請求項10】
前記繰り返し単位は、前記式(SS)-(IA1)を有し、前記金属有機構造体は、850~1050m/gのBET表面積及び0.30~0.40cm/gの気孔体積を有する、請求項4、8、及び9のいずれか1項に記載の金属有機構造体。
【請求項11】
式(RR)-(IB)若しくは式(SS)-(IB)、又は式(RS)-(IB)若しくは式(SR)-(IB)の繰り返し単位を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の金属有機構造体の調製方法であって、
(a)溶媒S及び式MAの塩の溶液を、溶媒S及び式(R)-(III)の化合物(R)-(イミダゾール-5-イルメチル)-(1,2,4-トリアゾール-4-イル)酢酸の溶液又は式(S)-(III)の化合物(S)-(イミダゾール-5-イルメチル)-(1,2,4-トリアゾール-4-イル)酢酸の溶液、
【化12】

又は式(R)-(III)の前記化合物(R)-(イミダゾール-5-イルメチル)-(1,2,4-トリアゾール-4-イル)酢酸と式(S)-(III)の(S)-(イミダゾール-5-イルメチル)-(1,2,4-トリアゾール-4-イル)酢酸との混合物の溶液へ添加することであって、Sは、請求項1に定義されたとおりであり、前記式(R)-(III)の化合物又は前記式(S)-(III)の化合物又は前記式(R)-(III)の化合物と式(S)-(III)の化合物との混合物の水溶液のpHは、4~7であり;
(b)工程(a)で得られた前記溶液を20℃~35℃の温度に必要な期間維持して、前記金属有機構造体を結晶化することと、
(c)このようにして得られた前記金属有機構造体を単離することと、を含み、
式中:
Mは、請求項1~11のいずれか1項で定義された前記二価金属カチオンM2+であり、
Aは、有機アニオン及び無機アニオンからなる群から選択される一価アニオンAである、調製方法。
【請求項12】
(d)少なくとも両方の溶媒分子Sを除去するような反応条件で、式(RR)-(IB)若しくは式(SS)-(IB)、又は式(RS)-(IB)若しくは式(SR)-(IB)の繰り返し単位を有する前記金属有機構造体を提供することを含む、式(RR)-(IA)若しくは式(SS)-(IA)、又は式(RS)-(IA)若しくは式(SR)-(IA)の繰り返し単位を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の金属有機構造体の調製方法。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか1項に記載の金属有機構造体と、1つ以上のキャリアと、を含む、組成物。
【請求項14】
前記キャリアは、多孔質有機固体キャリア及び多孔質無機固体キャリアからなる群から選択される多孔質固体キャリアである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記キャリアは、多孔質ポリマー有機キャリアである、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記多孔質ポリマー有機キャリアは、ポリ(ビニルエステル)、ポリ(エチレンイミン)、ポリイミド、ポリスルホン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ピロール)、ポリ(アセチレン)、ポリ(チオフェン)からなる群から選択される、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記多孔質ポリマー有機キャリアは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、5(6)-アミノ-1-(4’アミノフェニル)-1,3,-トリメチルインダン、ポリ(エチレンイミン)(PEI)、及びポリビニルアセテート(PVAc)からなる群から選択される、請求項15又は16に記載の組成物。
【請求項18】
請求項1~10のいずれか1項に記載の金属有機構造体を含み、前記キャリアがポリフッ化ビニリデン(PVDF)である、請求項1317のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物の総重量に対して20重量%~90重量%の前記金属有機構造体を含む、請求項1318のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物の総重量に対して60重量%~70重量%の前記金属有機構造体を含む、請求項1318のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
請求項1~10のいずれか1項に記載の金属有機構造体又は請求項1320のいずれか1項に記載の組成物のいずれかの、分離剤として使用。
【請求項22】
気相中の物質の混合物の分離剤としての、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
前記気相中の物質の混合物は二酸化炭素を含む、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記気相中の物質の混合物は、二酸化炭素及びメタンを含む、請求項22又は23に記載の使用。
【請求項25】
キラル化合物のエナンチオマー混合物のエナンチオ選択的分離における分離剤としての、請求項21に記載の使用。
【請求項26】
前記エナンチオ選択的分離は、溶媒の存在下において行われる、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記キラル化合物は、薬学的活性成分である、請求項25又は26に記載の使用。
【請求項28】
前記薬学的活性成分は、イブプロフェンである、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
請求項1~10のいずれか1項に記載の金属有機構造体又は請求項13~20のいずれか1項に記載の組成物のいずれかの、触媒としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属有機構造体の分野に関する。特に、結晶性金属有機構造体、それらを含む組成物、及びそれらの調製方法に関する。また、分離剤として及びまた触媒としてのそれらの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
MOFとも呼ばれる金属有機構造体は、一次元、二次元、又は三次元で(配位)単位(又はエンティティ)を繰り返し、多孔質ネットワークを形成することによって形成される配位化合物である。特に、繰り返し(配位)単位は、金属イオン及びリガンドとして使用される有機化合物の2つの主成分によって形成される。
【0003】
MOFの潜在的な用途は、それらの三次元構造、並びに特に、気孔のトポロジ及び寸法の直接の結果である。MOFの構造に影響を与え得るいくつかの変数があり、これは、これらの材料の高い比表面積をもたらす。金属及び有機リガンドの選択は、MOFの結晶パラメータを妨害し得る。これらの可変チャネル構造及びトポロジにより低い機械的安定度を示す非晶形多孔質物質と比較して、金属イオン及び有機化合物によって形成される繰り返し結晶性単位を有する規則的多孔質MOFは、一般に、高い機械的及び熱的安定度を有する。
【0004】
MOFは、高度に多孔質の材料である。まさにこの特性により、これらは、多くの用途にとって理想的なものとなる。過去数年にわたり、結晶性MOFは、多くの技術分野で使用されてきた。例えば、水素及び二酸化炭素等の気体の貯蔵、分離/精製、又は放出制御において使用されてきた。また、MOFは、活性成分の放出制御のため、並びにまた、有機化合物の触媒作用及び不斉合成のためにも開示されてきた。
【0005】
MOFの特性及び用途は、通常、その組成及び構造に依存するため、独自の特徴を備えた新しいMOFは、前例のない特性及び用途を見出すことができ、非常に興味深い。
【0006】
例えば、Yuらは、N-複素環式カルボン酸リガンド(そのリガンドは、(2-[4-(1H-イミダゾール-1-イルメチル)-1H-1,2,3-トリアゾールy-1-イル]酢酸である)に配位された銅、鉛、マンガン、亜鉛、コバルト、及びカドミウム等の金属に基づくMOFの調製を開示している。更に、そのようなMOFは、特定の蛍光特性を示し、この特性は、それらを光学材料としてのみ好適にすることもまた開示されている。しかしながら、著者らは、他の用途でのこれら材料の使用について何ら言及していない(Yu、Tiantian et al.“Roles of temperature,solvent,M/L ratios and anion in preparing complexes containing a Himta ligand”CrystEngComm,2016,18,pp1350~1362参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】CrystEngComm, 2016, 18, pp1350-1362
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、適切な安定性及び活性を有するMOFの調製における当該技術分野においてかなりの改善が行われたとしても、より活性があり多目的なMOFを開発する必要が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、2つのリガンドL を有する繰り返し単位を含む結晶性MOFを見出し、これは、同一又は異なっていてもよく、リガンドL の各々は、二価金属カチオン(M2+)に配位された、式(R)-(II)の(R)-(イミダゾール-5-イルメチル)-(1,2,4-トリアゾール-4-イル)アセテート及び式(S)-(II)の(S)-(イミダゾール-5-イルメチル)-(1,2,4-トリアゾール-4-イル)アセテートからなる群から選択されるアニオンであり、アニオンL のカルボン酸基は、脱プロトン化されているが、二価金属カチオンに配位されておらず、安定及び結晶性であるだけでなく、複数の固定部位並びに気孔及びチャネルの適切な構造を有し、これにより、高く選択的な分離能力及び触媒活性を提供する。特に、本発明者らは、二価金属カチオン(M2+)に配位された2つのリガンドL を有する繰り返し単位を含むエナンチオ濃縮MOFを見出し、両方のL は同一であり、式(R)-(II)の(R)-(イミダゾール-5-イルメチル)-(1,2,4-トリアゾール-4-イル)アセテート及び式(S)-(II)の(S)-(イミダゾール-5-イルメチル)-(1,2,4-トリアゾール-4-イル)アセテートからなる群から選択されるアニオンを表す。
【0010】
この点に関して、下記に定義された式(IA)又は式(IB)の繰り返し単位を含む本発明のMOFの特定の三次元構造は、例えば、いくつかの気体の混合物、又はいくつかの液体の混合物、又はいくつかの気体及び液体の混合物等の、気体及び液体の両方の高度及び選択的な分離を可能にするので、分離剤として有用である。特に、二酸化炭素等の気体を分離し、一定温度で高い浸透性を維持することができ(これらの条件下では、有意量の気体が捕捉されることはないため、浸透性の差によって分離が起こる)、これは、有利には、選択的吸着/脱着プロセスによる連続的分離プロセスを行うことを可能にする。二酸化炭素の取り込みに対するこの選択性はまた、例えば、二酸化炭素等の特定の分析物の検出のためのデバイス(即ち、センサ)の開発においても有利であり得る。
【0011】
下記に定義された式(IA)又は式(IB)の繰り返し単位を含む本発明のMOFの特定の三次元構造は、特に、両方のL が本発明のMOFの繰り返し単位において同一である場合、キラル化合物のエナンチオマーの混合物のエナンチオ選択的分離を可能にするので、分離剤として有用である。
【0012】
一方、本発明のエナンチオ濃縮MOFはまた、水素化及び不斉反応を含む広範囲の化学反応のための不均一系触媒としても有用である。特に、それらは、穏やかな反応条件下で追加の処理なしで不斉反応の実施を可能にするので有利である。更に、本発明のMOFはまた、これらの容易な反応後分離、触媒再利用性(リサイクル)及び高安定性、並びに高効率及び選択性により有利である。
【0013】
従って、本発明の一態様は、式(IA)の繰り返し単位を含む結晶性金属有機構造体又は式(IB)の繰り返し単位を含む結晶性金属有機構造体であって、金属M2+及び2つのリガンドL を含み、
【化1】

式中、
2つのリガンドL は、同一又は異なっていてもよく、
2+は、二価金属カチオンであり、
各L は、式(R)-(II)の(R)-(イミダゾール-5-イルメチル)-(1,2,4-トリアゾール-4-イル)アセテート及び式(S)-(II)の(S)-(イミダゾール-5-イルメチル)-(1,2,4-トリアゾール-4-イル)アセテートからなる群から独立して選択されるアニオンであり、
【化2】

式(IB)の繰り返し単位において、金属Mは、2つの溶媒分子Sに配位しており、両方のSは等しく、且つ水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert-ブタノール、ジエチルエーテル、1-4ジオキサン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、1,2-エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、及びピリジンからなる群から選択される溶媒分子であり、
【化3】

は、金属M2+と各リガンドL の窒素原子との間の配位結合を表し、配位結合のうちの1つは、金属M2+と1つのL の窒素原子Nとの間であり、別の配位結合は、金属M2+と別のL の窒素原子Nとの間、及び金属M2+と溶媒分子Sとの間であり、それにより、繰り返し単位は、式(RR)-(IA)若しくは式(SS)-(IA)、式(RS)-(IA)若しくは式(SR)-(IA)、式(RR)-(IB)若しくは式(SS)-(IB)、又は式(RS)-(IB)若しくは式(SR)-(IB)を有し、
【化4】

第1の繰り返し単位の金属M2+と追加の繰り返し単位のリガンドL の窒素原子との間に表される配位結合によって、ある繰り返し単位の金属M2+が式(IA)又は式(IB)の2つの追加の繰り返し単位に接続されるように、金属有機構造体内の各繰り返し単位は、他の繰り返し単位に接続され、
追加の配位結合のうちの1つは、第1の繰り返し単位の金属M2+
【化5】

追加の繰り返し単位のL の窒素原子Nとの間であり、他の追加の配位結合は、第1の繰り返し単位の金属M2+と別の追加の繰り返し単位のL の窒素原子Nとの間である、結晶性金属有機構造体に関する。
【0014】
この点において、本発明のMOFは、4分子のエナンチオ濃縮リガンドL から4つの窒素原子へ、及び最終的には、2つの溶媒分子へ配位結合によって配位された、平面四角形、角錐、又は八面体二価金属中心から構築される。更に、アニオンL のカルボン酸基は、脱プロトン化されているが、二価金属カチオンに配位されていない。具体的には、各リガンドL は、上記のように、式(RR)-(IA)若しくは式(RR)-(IB)の繰り返し単位、又は式(SS)-(IA)若しくは式(SS)-(IB)の繰り返し単位、又は式(RS)-(IA)若しくは式(RS)-(IB)の繰り返し単位、又は式(SR)-(IA)若しくは式(SR)-(IB)の繰り返し単位で示されるように、イミダゾール部分の1位の窒素原子(窒素Nと呼ばれる)によって、及びイミダゾール部分の2位の窒素原子(窒素Nと呼ばれる)によって、2つの二価金属カチオンに接続される。
【0015】
本発明の第2の態様は、式(RR)-(IB)若しくは式(SS)-(IB)、又は式(RS)-(IB)若しくは式(SR)-(IB)の繰り返し単位を有する、本発明の第1の態様で定義された金属有機構造体の調製方法であって、(a)本発明の第1の態様で定義された溶媒S及び式MAの塩の溶液を、本発明の第1の態様で定義された溶媒Sの溶液、及び式(R)-(III)の化合物(R)-(イミダゾール-5-イルメチル)-(1,2,4-トリアゾール-4-イル)酢酸の溶液又は式(S)-(III)の化合物(S)-(イミダゾール-5-イルメチル)-(1,2,4-トリアゾール-4-イル)酢酸の溶液、
【化6】

又は式(R)-(III)の化合物(R)-(イミダゾール-5-イルメチル)-(1,2,4-トリアゾール-4-イル)酢酸と式(S)-(III)の(S)-(イミダゾール-5-イルメチル)-(1,2,4-トリアゾール-4-イル)酢酸との混合物の溶液へ添加することであって、式(R)-(III)の化合物、式(S)-(III)の化合物、又は式(R)-(III)及び式(S)-(III)の混合物の水溶液のpHは、4~7であり、(b)工程(a)で得られた溶液を20℃~35℃の温度に必要な期間維持して、金属有機構造体を結晶化することと、(c)このようにして得られた金属有機構造体を単離することと、を含み、式中、Mは、本発明の第1の態様で定義された二価金属カチオンM2+であり、Aは、有機アニオン及び無機アニオンからなる群から選択される一価アニオンAである、調製方法に関する。
【0016】
本発明の第3の態様は、式(RR)-(IA)又は式(SS)-(IA)又は式(RS)-(IA)又は式(SR)-(IA)の繰り返し単位を有する、本発明の第1の態様で定義された金属有機構造体の調製プロセスであって、(d)式(RR)-(IB)又は式(SS)-(IB)又は式(RS)-(IB)又は式(SR)-(IB)の繰り返し単位を有する金属有機構造体をそのような反応条件で提供して、本発明の第1の態様で定義された、少なくとも両方の溶媒分子Sを除去することを含む、調製方法に関する。
【0017】
本発明の第4の態様は、式(RR)-(IB)又は式(SS)-(IB)又は式(RS)-(IB)又は式(SR)-(IB)の繰り返し単位を有する、本発明の第1の態様で定義された金属有機構造体の調製方法であって、(f)式(RR)-(IA)又は式(SS)-(IA)又は式(RS)-(IA)又は式(SR)-(IA)の繰り返し単位を有する金属有機構造体を、適切な量の本発明の第1の態様で定義されたSとそのような反応条件下で接触させて、2つの溶媒分子Sを配位させることを含む調製方法に関する。
【0018】
本発明の第5の態様は、本発明の第1の態様で定義された金属有機構造体と、1以上のキャリアとを含む、組成物に関する。
【0019】
本発明の第6の態様は、本発明の第1の態様で定義された金属有機構造体又は本発明の第5の態様で定義された組成物の、分離剤として又は触媒としての使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】式(SS)-(IB1’)の繰り返し単位の三次元図を示す。白丸は水素を表し、黒丸は炭素を表し、十字の丸は窒素を表し、左半分が黒の丸は酸素を表し、左上の四分円が黒及び右下の四分円が黒の丸は銅を表す。
図2】式(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有する本発明のMOFの結晶構造図を示す。明確にするために、水分子及び水素原子は、省略されている。
図3】式(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有する本発明のMOFの粉末X線回折パターンを示す。本パターンは、強度(数)対2θ角(°)を表す。
図4】式(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有する本発明の結晶性MOFの熱重量分析(Thermal Gravimetric Analysis:TGA)曲線を示す。曲線は、重量(%)対温度(℃)を表す。
図5】式(SS)-(IA1)の繰り返し単位の三次元図を示す。白丸は水素を表し、黒丸は炭素を表し、十字の丸は窒素を表し、左半分が黒の丸は酸素を表し、左上の四分円が黒及び右下の四分円が黒の丸は銅を表す。
図6】式(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有する本発明のMOFによる、CH(1)、CO(2)、H(3)、N(4)、及びCO(5)の高圧吸着等温線を示す。曲線は、体積(cc/g)対圧力(トール)を表す。
図7】式(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有する本発明のMOFの走査型電子顕微鏡(scanning electron microscopy:SEM)画像を示す。
図8】式(SS)-(IB1’)及び式(RR)-(IB1’)の繰り返し単位を有する本発明のMOFの円二色性スペクトル(Circular Dichroism:CD)を示す。曲線は、円二色性(度・cm/dmol)対波長(nm)を表す。
図9】以下のpH値、pH2.10、pH3.17、pH10.55、pH11.65、及びpH5~5.5で実施例2に記載の安定性試験条件に供した後、式(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有する本発明のMOFのN収着等温線を示す。黒塗りの記号は、Nの吸着を表し、白塗りの記号は、Nの脱着を表す。曲線は、体積(cc/g)対比率(P/P)を表し、Pは、パスカル単位で表される、77.4K(液体窒素の沸点)で表面と平衡状態にある吸着質気体の分圧であり、Pは、パスカル単位で表される、吸着質気体の飽和圧力である。
図10】280K~500Kの温度にて実施例2に記載の熱安定性試験に供した後、式(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有する本発明のMOFの粉末X線回折パターンを示す。パターンは、温度(K)対2θスケール(°)を表し、Piは、1秒当たりのピーク強度カウントを指す。
図11】周囲圧力で異なる温度にて式(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有するMOFの床(0.8g)を通過する、二酸化炭素及びメタンの等モル混合物(0.34mL)の分離を示す。流出気体を質量分析法で時間の関数として分析した。曲線は、強度(a.u)対時間(分)を表す。
図12】5%Hを含むN流を使用して、式(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有するMOFの床を通って1回のCO(0.34mL)パルスを通過させる、70℃での水素化反応からの生成物の分析を示す。パルスは、CO(未反応、上図)、(下図)HO及びHCOOH(水素化反応の主生成物)を生じる。曲線は、強度(任意単位)対時間(分)を表す。
図13】式(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有する本発明のMOFの粉末X線回折パターン及び式(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有する本発明のMOFを含む「インク」1から調製されたメンブレン1の粉末X線回折パターンを示す。パターンは、強度(数)対2θ角(°)を表す。
図14】周囲圧力で30℃にて式(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有するMOFを含む「インク」1から調製された本発明のメンブレン1の床を通過する、二酸化炭素及びメタンの等モル混合物の分離を示し、キャリアは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)である。流出気体を質量分析法で時間の関数として分析した。曲線は、強度(a.u)対時間(分)を表す。
図15】周囲圧力で30℃にて実施例7.2.2で得られた本発明のメンブレン2の床を通過する、二酸化炭素及びメタンの等モル混合物の分離を示す。流出気体を質量分析法で時間の関数として分析した。曲線は、初期濃度に対する気体濃度の比率対時間(分)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書で使用する全ての用語は、特に指示しない限り、当該技術分野で既知の通常の意味で理解されるべきである。本出願で使用される特定の用語の他のより具体的な定義は、以下に記述されたとおりであり、他に明示的に述べられる定義がより広い定義を提供しない限り、本明細書及び特許請求の範囲にわたり均一に適用されることを意図する。
【0022】
本発明の目的のために、所与の任意の範囲は、範囲の下端点及び上端点の両方を含む。温度、時間等の所与の範囲は、具体的に指示しない限り、おおよそと考えるべきである。
【0023】
結晶化は、化学固液分離技術を含む均質溶液からの固体結晶の形成のプロセスであり、ここでは、溶液から純粋な結晶性固相への溶質の物質移動が起こる。用語「結晶」又は「結晶性」又は「結晶性固体」又は「結晶固体形態」は、固体材料であり、その構成原子が非常に規則的な微細構造で配置され、全方向に延びる結晶格子を形成する。加えて、巨視的単結晶は、通常、特定の特徴的な配向を備えた平面からなる幾何学的形状によって識別可能である。
【0024】
用語「エナンチオ濃縮」又は「キラル」又は「非ラセミ」は、同一の意味を有し、相互交換可能に使用される。これらは、50:50よりも大きい比率でエナンチオマーを含有するキラル化合物の組成物を指す。用語「エナンチオマー比」は、混合物中のあるエナンチオマーのパーセンテージと他のエナンチオマーのパーセンテージの比率を指す。キラル化合物の純度は、「エナンチオマー過剰率」(eeと略記)によって測定される。用語「エナンチオマー過剰率」は、パーセンテージ(×100%)で表される、混合物中の化合物の総量に対する、混合物中に存在する各々のエナンチオマーの量の間の差を指す。本発明との関係において、「結晶性エナンチオ濃縮金属有機構造体」は、両方のリガンドL が同一である金属有機構造体を指す。
【0025】
用語「組成物の総重量の重量パーセント(%)」は、組成物の総重量に対する各化合物のパーセンテージを指す。
【0026】
表現「得ることができる」、「得られた」、及び同等の表現は、同じ意味で用いられ、いずれの場合も、表現「得ることができる」は、表現「得られた」を包含する。
【0027】
用語「アルコール」は、1以上の水素原子が1以上の-OH基で置換されている炭化水素誘導体を指す。アルコールという用語はまた、グリコール化合物も含む。本発明の適切なアルコールの例としては、メタノール、エタノール、2-プロパノール(即ち、イソプロパノール)、又はn-プロパノールが含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
用語「アルキル」は、本明細書又は特許請求の範囲において特定される炭素原子の数を含む、直鎖又は分枝の飽和炭化水素基を指す。
【0029】
用語「アルカン」は、本明細書又は特許請求の範囲において特定される炭素原子の数を含む、飽和、分枝、又は直鎖の飽和炭化水素を指す。例としては、メタン、エタン、プロパン、イソプロパン、ブタン、イソブタン、sec-ブタン、及びtert-ブタンが挙げられる。
【0030】
用語「アルケン」又は「オレフィン」は、同一の意味を有し、相互交換可能に使用される。これらは、本明細書又は特許請求の範囲において特定される炭素原子の数を含み、また、少なくとも1つの二重結合も含む、分枝又は直鎖の炭化水素を指す。例としては、とりわけ、エテニル、1-プロペン-1-イル、1-プロペン-2-イル、3-プロペン-1-イル、1-ブテン-1-イル、1-ブテン-2-イル、3-ブテン-1-イル、3-ブテン-2-イル、2-ブテン-1-イル、2-ブテン-2-イル、2-メチル-1-プロペン-1-イル、2-メチル-2-プロペン-1-イル、1,3-ブタジエン-1-イル、及び1,3-ブタジエン-2-イルが挙げられる。
【0031】
用語「室温」は、20℃~25℃の温度を指す。
【0032】
X線回析図の特徴的なピークの値が与えられる場合、これらは、「近似」値であると言われる。値は、対応するリスト又は表に示されている値±0.3度の2θであることを理解されたい。2θは、Cu-Kα放射線(λ=1.5406×10-10m(Å))のX線回折計を用いて測定された。
【0033】
本発明の目的のために、用語「配位結合」又は「供与共有結合」は、同一の意味を有し、相互交換可能に使用される。
【0034】
本発明との関係において、配位結合は、リガンドの原子と金属原子との間に形成された結合であり、この2つの原子は、1つの電子対を共有し、両方の電子は、リガンド中に含まれた原子の孤立電子対からである。
【0035】
前述のように、本発明の第1の態様は、式(R)-(II)若しくは式(S)-(II)の金属M2+及び2つのリガンドL を含む、式(IA)又は式(IB)の繰り返し単位を含むMOFに関する。
【0036】
上記に開示したとおり、本発明のMOFは、結晶性化合物である。本発明の目的のために、これは、MOFが少量の非結晶性画分を含有できることを意味する。特に、上記のようなMOFは、1%以下の非結晶性画分、より詳細には、0.5%以下の非結晶性画分、更により詳細には、0.25%以下の非結晶性画分、更により詳細には、0.1%以下の非結晶性画分を含有し得る。
【0037】
一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、本発明のMOFは、他の結晶形を本質的に含まない。これは、MOFの他の結晶形が、Cu-Kα放射線(1.5406×10-10m(Å))のX線回折計を使用するとき、X線粉末回折測定によって検出可能ではないことを意味する。
【0038】
図8に示されるように、特定の本発明のMOFはまた、エナンチオ濃縮化合物である。一実施形態では、本発明のMOFは、50%超、好ましくは、70%以上、より好ましくは、80%以上、更により好ましくは、90%以上、最も好ましくは、95%以上のエナンチオマー過剰率を有する。特定の実施形態では、本発明のMOFは、95%以上、好ましくは、98%以上、より好ましくは、99%以上、更により好ましくは、99.5%以上のエナンチオマー過剰率を有する「エナンチオピュア」である。MOFのエナンチオマー過剰率は、本明細書で使用する場合、繰り返し単位におけるLのエナンチオマー過剰率に直接関係する。
【0039】
一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、MOFは、Mが通常MOFの調製に用いられる二価金属であるものである。非限定的な金属は、例えば、アルカリ度類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)、遷移金属(Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg)、及びポスト遷移金属(Al、Ga、In、Tl、Sn、Pb、Bi)等の二価金属カチオンである化学元素からのものである。酸化状態(II)及びテトラ-、ペンタ-、又はヘキサ-配位モードを有する、前述されていない、又は新たに発見された異常な金属がまた、本発明で使用され得る。一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、MOFは、金属がCu2+、Zn2+、V2+、Pd2+、Pt2+、Ni2+、Ru2+、Hg2+、Sn2+、Co2+、Fe2+、Mn2+、Cr2+、Cd2+、Be2+、Mg2+、Ca2+、Ba2+、Zr2+、Gd2+、Eu2+、Tb2+、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものである。一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、MOFは、金属がCu2+、Zn2+、V2+、Pd2+、Pt2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Mn2+、Cr2+、及びCd2+からなる群から選択されるものである。一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、MOFは、金属がCu2+、V2+、Pd2+、Pt2+、Ni2+、Mn2+、及びCr2+からなる群から選択されるものである。一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、MOFは、金属がCu2+、Ni2+、Mn2+、及びCr2+からなる群から選択されるものである。一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、MOFは、金属がCu2+であるものである。
【0040】
一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、結晶性金属有機構造体は、エナンチオ濃縮金属有機構造体であり、両方のL は等しく、且つ式(R)-(II)の(R)-(イミダゾール-5-イルメチル)-(1,2,4-トリアゾール-4-イル)アセテート及び式(S)-(II)の(S)-(イミダゾール-5-イルメチル)-(1,2,4-トリアゾール-4-イル)アセテートからなる群から選択されるアニオンであり、それにより、繰り返し単位は、式(RR)-(IA)又は式(SS)-(IA)又は式(RR)-(IB)又は式(SS)-(IB)を有する。
【化7】

(M2+、S、
【化8】

は、上記のとおりである。)
【0041】
本発明の第1の態様の代替では、結晶性エナンチオ濃縮金属有機構造体は、式(RR)-(IB)又は式(SS)-(IB)の繰り返し単位を有するものであり、これは、2つの溶媒分子S及び2つのリガンドL に配位された金属M2+を含む。式(RR)-(IB)又は式(SS)-(IB)の繰り返し単位を有する、前述の本発明のMOFでは、2つ溶媒分子が軸位置を占め、N及びN原子は、4つのエカトリアル位置を占める。これは、更なる構造修飾なしでMOF構造の空の空間が溶媒分子Sによって充填されることを意味する。これらのMOFは、これらが、貯蔵及び輸送条件下で安定であり、また、分離剤として及び触媒としてのそれらの活性を維持するので、特に有利である。
【0042】
本発明の目的のために、用語「式(RR)-(IB)又は式(SS)-(IB)又は式(RS)-(IB)又は式(SR)-(IB)の繰り返し単位を有するMOF」、「作られたままのMOF」、及び「合成されたままのMOF」は、同一の意味を有し、相互交換可能に使用される。これらは、2つの溶媒分子S及び2つのリガンドL に配位された金属M2+を含む、式(IB)の繰り返し単位を有するMOFを指す。
【0043】
一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、MOFは、式(SS)-(IB)又は式(RR)-(IB)の繰り返し単位を有するものであり、両方のSは、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert-ブタノール、ジエチルエーテル、1,4ジオキサン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、1,2-エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、及びピリジンからなる群から選択される溶媒であり、好ましくは、両方のSは、水である。
【0044】
一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、MOFは、式(SS)-(IB)又は式(RR)-(IB)の繰り返し単位を有するものであり、金属は、Cu2+、V2+、Pd2+、Pt2+、Ni2+、Mn2+、及びCr2+からなる群から選択される。一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、MOFは、式(SS)-(IB)又は式(RR)-(IB)の繰り返し単位を有するものであり、金属は、Cu2+、Ni2+、Mn2+、及びCr2+からなる群から選択される。一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、MOFは、式(SS)-(IB)又は式(RR)-(IB)の繰り返し単位を有するものであり、金属は、Cu2+である。
【0045】
一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、MOFは、M2+がCu2+であり、それにより、繰り返し単位が式(RR)-(IB1)を有するものであり、あるいは、MOFは、M2+がCu2+であり、それにより、繰り返し単位が式(SS)-(IB1)を有するものである。
【化9】

【化10】

は、上記のとおりである。)
【0046】
実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、MOFは、M2+がCu2+であり、両方のSが水であり、それにより、繰り返し単位が式(RR)-(IB1’)を有するものであり、あるいは、MOFは、M2+がCu2+であり、両方のSが水であり、それにより、繰り返し単位が式(SS)-(IB1’)を有するものである。
【化11】

【化12】

は、上記のとおりである。)
【0047】
一実施形態では、金属有機構造体は、繰り返し単位が式(SS)-(IB1’)を有するものであり、金属有機構造体は、CuKα放射線(1.5406×10-10m(Å))のX線回折計を用いて測定された、6.2、7.6、9.8、10.7、14.5、15.2、17.6、18.1、19.2、19.7、20.2、20.6、22.5、22.9、23.7、24.2、26.1、27.2、28.3、30.0、32.6、33.2、33.5、34.1、35.0、及び37.0±0.2度の2θに特徴的なピークを含むX線回析図を有する。一実施形態では、式(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有する本発明のMOFは、CuKα放射線(1.5406×10-10m(Å))のX線回折計を用いて測定された、12.4、13.2、13.9、15.8、16.4、18.6、24.9、25.3、26.5、28.6、29.0、29.4、30.7、31.0、31.3、31.7、32.3、34.7、35.6、35.9、36.1、36.7、37.3、38.1、38.6、39.1、及び39.4±0.2度の2θに特徴的なピークを更に含むX線回析図を有することを特徴とする。
【0048】
より具体的には、式(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有する本発明のMOFは、粉末X線回析図において、2θ(単位は度、2θ(°))で表されるピークのパターンを示すことを特徴とし、これは、表1に示される。
【0049】
表1:(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有する本発明のMOFのX線回析図によって得られた特徴的なピークの一覧(最大回折ピークに対して相対強度0.1%以上):
【表1】
【0050】
一実施形態では、(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有する本発明のMOFは、図3に示されたX線回析図を有することを更に特徴とすることができる。
【0051】
具体的には、式(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有する本発明のMOFは、単一X線回折によって測定された以下の結晶パラメータ、結晶系:立方;空間群:P4(3)/32;単位セル寸法:a=20.172(2)×10-10m(Å)α=90°、b=20.172(2)×10-10m(Å)β=90°、c=20.172(2)×10-10m(Å)γ=90°;体積:8208(2)×10-10(Å);及び密度:1.359Mg/m、を有することを更に特徴とする。
【0052】
より具体的には、式(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有する本発明のMOFは、表2に示された単一X線回折によって測定された結晶パラメータを示すことを更に特徴とする。
【0053】
表2:式(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有するMOFの結晶データ及び構造
【表2】
【0054】
本発明で示された結晶学的データは、式(RR)-(IB)又は式(SS)-(IB)の繰り返し単位を有する本発明のMOFが、4分子のリガンドL からの4つの窒素原子による同一平面に配位され、且つ金属原子の軸位置上の2つの溶媒分子が更に配位された、八面体金属中心から作られることを示す。
【0055】
一実施形態では、金属有機構造体は、繰り返し単位が式(SS)-(IB1’)であり、且つ熱重量分析において室温~200℃の間で22±10重量%の損失重量を有するものである。
【0056】
一実施形態では、金属有機構造体は、式(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有するものであり、次のピーク、3289、1615、1532、1495、1395、1355、1263、1242、1211、1180、1116、1087、1015、979、891、845、752、701、660、647、549、511、及び472±5cm-1を示す赤外(infrared:IR)スペクトルを有することを更に特徴とする。
【0057】
本発明の第1の態様の代替では、結晶性エナンチオ濃縮金属有機構造体は、式(RR)-(IA)又は式(SS)-(IA)の繰り返し単位を有するものであり、これは、同一の2つのリガンドL に配位された金属M2+を含む。
【0058】
本発明の目的のために、用語「式(RR)-(IA)若しくは式(SS)-(IA)、又は式(RS)-(IA)若しくは式(SR)-(IA)の繰り返し単位を有するMOF」及び「活性化MOF」は、同一の意味を有し、相互交換可能に使用できる。これらは、MOFの二価金属カチオンM2+は、2つのリガンドL のみに配位されるが、これらは、本発明で定義されたような溶媒分子Sには配位しておらず、更に、更なる構造修飾なしで、MOF構造の空の空間は、溶媒分子Sを含まないことを意味する。
【0059】
一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、MOFは、式(SS)-(IA)又は式(RR)-(IA)の繰り返し単位を有するものであり、金属は、式(SS)-(IB)又は式(RR)-(IB)の繰り返し単位を有するMOFについて上記で定義したとおりである。一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、MOFは、金属がCu2+であり、それにより、繰り返し単位が式(RR)-(IA1)を有するものであり、あるいは、MOFは、M2+がCu2+であり、それにより、繰り返し単位が式(SS)-(IA1)を有するものである。
【化13】

【化14】

は、上記のとおりである。)
【0060】
一実施形態では、金属有機構造体は、式(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有するものであり、金属有機構造体は、CuKα放射線(1.5418×10-10m(Å))のX線回折計を用いて測定された、6.2、10.7、12.3、13.1、13.8、14.5、15.1、15.7、17.5、18.0、19.0、19.5、20.0、24.0、及び27.0±0.2度の2θに特徴的なピークを含むX線回析図を有することを更に特徴とする。一実施形態では、本発明のMOFは、式(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有するものであり、CuKα放射線(1.5418×10-10m(Å))のX線回折計を用いて測定された、7.6、9.8、20.5、21.4、22.3、22.7、23.6、25.1、25.9、28.0、28.4、29.1、29.8、31.1、32.3、33.2、33.8、34.7、35.4、36.7、37.9、38.3、及び29.1±0.2度の2θに特徴的なピークを更に含むX線回析図を有することを特徴とする。
【0061】
より具体的には、本発明のMOFは、式(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有するものであり、粉末X線回析図において、2θ(単位は度、2θ(°))で表されるピークのパターンを示すことを特徴とし、これは、表3に示される。
【0062】
表3:(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有する本発明のMOFのX線回析図によって得られた特徴的なピークの一覧(最大回折ピークに対して相対強度5%以上):
【表3】
【0063】
具体的には、式(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有する本発明のMOFは、単一X線回折によって測定された以下の結晶パラメータ、結晶系:立方;空間群:P4(3)/32;単位セル寸法:a=20.262(2)×10-10m(Å)α=90°、b=20.262(2)×10-10m(Å)β=90°、c=20.262(2)×10-10m(Å)γ=90°;体積:8319(3)×10-10(Å);及び密度:1.140Mg/m、を有することを更に特徴とする。
【0064】
より具体的には、式(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有する本発明のMOFは、表4に示された単一X線回折によって測定された結晶パラメータを示すことを更に特徴とする。
【0065】
表4:式(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有するMOFの結晶データ及び構造精密化:
【表4】
【0066】
本発明で示された結晶学的データは、式(RR)-(IA)又は式(SS)-(IA)の繰り返し単位を有する本発明のMOFが、4分子のリガンドL からの4つの窒素原子による同一平面に配位された平面四角形金属中心から作られることを示す。
【0067】
一実施形態では、金属有機構造体は、繰り返し単位が式(SS)-(IA1)、及び250m/g~1800m/g、好ましくは、800m/g~1550m/gのBET表面積を有するものである。特定の実施形態では、本発明のMOFは、式(SS)-(IA1)の繰り返し単位、970m/gのBET表面積を有するものである。実施例に示されるように、式(SS)-(IA)又は式(RR)-(IA)の繰り返し単位を有する本発明のMOFは、それらを、触媒として及びまた分離剤としての使用に好適なようにする適切な値のBET表面積を示す。
【0068】
一実施形態では、金属有機構造体は、繰り返し単位が式(SS)-(IA1)、及び0.10cm/g~0.70cm/gの気孔体積を有するものであり、好ましくは、気孔体積は、0.20cm/g~0.45cm/g、より好ましくは、0.30cm/g~0.38cm/gである。特定の実施形態では、式(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有する本発明のMOFは、0.35cm/gの気孔体積を有するものである。実施例に示されるように、式(SS)-(IA)又は式(RR)-(IA)の繰り返し単位を有する本発明のMOFは、それらを、分子、触媒、及びまた分離剤のリザーバとしての使用に好適なようにする適切な値の気孔体積を示す。
【0069】
一実施形態では、本発明のMOFは、式(SS)-(IA1)の繰り返し単位、850m/g~1050m/gのBET表面積、及び0.30m/g~0.40cm/gの気孔体積を有するものである。特定の実施形態では、本発明のMOFは、式(SS)-(IA1)の繰り返し単位、970m/gのBET表面積、0.35cm/gの気孔体積を有するものである。実施例に示されるように、式(SS)-(IA)又は式(RR)-(IA)の繰り返し単位を有する本発明のMOFは、前述のBET表面積値及び気孔体積値の適切な組み合わせが物質のリザーバとして、化学反応の触媒として、及びまた分離剤として使用されることを示す。
【0070】
前述のように、本発明の第2の態様は、式(RR)-(IB)若しくは式(SS)-(IB)、又は式(RS)-(IB)若しくは式(SR)-(IB)の繰り返し単位を有するMOFの調製方法に関し、本調製方法は、(a)上記のような溶媒S及び式MAの塩の溶液を、本発明の第1の態様で定義された溶媒S及び上記のような式(R)-(III)の化合物(R)-(イミダゾール-5-イルメチル)-(1,2,4-トリアゾール-4-イル)酢酸の溶液、又は式(S)-(III)の化合物(S)-(イミダゾール-5-イルメチル)-(1,2,4-トリアゾール-4-イル)酢酸の溶液、又は式(S)-(III)の化合物と式(R)-(III)の化合物との混合物の溶液へ添加することであって、式(R)-(III)の化合物、又は式(S)-(III)の化合物、又は化合物(S)-(III)及び式(R)-(III)の混合物の水溶液のpHは、4~7であり、(b)工程(a)で得られた溶液を20℃~35℃の温度に必要な期間維持して、金属有機構造体を結晶化することと、(c)このようにして得られた有機金属構造体を単離することと、を含み、式中、Mは、上記のような二価金属カチオンM2+であり、Aは、有機アニオン又は無機アニオンからなる群から選択される一価アニオンAである。この方法は、高い拡張選択性CO分離性能及び高い触媒活性を有する、本発明の結晶安定MOFの調製を可能にするので有利である。
【0071】
好ましい実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、本方法の工程(a)において、アニオンAは、臭化物、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、及び過塩素酸塩からなる群から選択される無機アニオンであり、好ましくは、塩化物である。代替的実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、本方法の工程(a)おいて、アニオンAは、タータラート、アセテート、カーボネート、及びアセチルアセトネートからなる群から選択される有機アニオンであり、好ましくはアセテートである。一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、本方法の工程(a)おいて、式MAの塩のアニオンAは、F、Cl、Br、I、(C-Cアルキル)COO、ClO 、NO 、及びBF からなる群から選択されるアニオンであり、好ましくは、塩化物又は(CH)COO、より好ましくはアセテートである。
【0072】
一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、本方法の工程(a)は、式MAの塩の溶液を用いて行われ、溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソプロポアノール(isopropoanol)、tert-ブタノール、ジエチルエーテル、1,4ジオキサン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、アセトン、1,2-エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、及びピリジンからなる群から選択される。好ましい実施形態では、溶媒は、水、メタノール、エタノール、及びDMFからなる群から選択される。より好ましい実施形態では、溶媒は、水である。
【0073】
一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、本方法の工程(a)は、得られるMOFが安定であるようなpH値で行われる。一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、本方法の工程(a)は、4~7のpH、好ましくは、5~6のpH、特に、5.5のpHで行われる。
【0074】
一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、本方法の工程(a)は、式MAの金属塩と式(R)-(III)の化合物との間のモル比で、又は式MAの金属塩と式(S)-(III)の化合物との間のモル比で、又は式MAの金属塩と化合物(S)-(III)及び式(R)-(III)の混合物との間のモル比で行われ、このモル比は、1:3~3:1、好ましくは、2:3~2:1のモル比、より好ましくは、1:2のモル比である。用語「モル比」は、出発材料(式MAの金属塩である)と反応の実施に必要な試薬(式(R)-(III)又は式(S)-(III)の化合物である)との間のモルの関係を指す。
【0075】
方法の工程(b)は、必要な期間で行い、式(SS)-(IB)若しくは式(RR)-(IB)、又は式(RS)-(IB)若しくは式(SR)-(IB)の繰り返し単位を有する本発明のMOFを結晶化する。一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、工程(b)は、24時間~72時間、好ましくは、36時間~60時間、より好ましくは、40時間~50時間の期間で行われる。
【0076】
方法の工程(c)は、当該技術分野で既知の任意の好適な他の固液分離技術と同様、濾過又は遠心分離のいずれかにより行うことができる。
【0077】
本発明の第1の態様の式(SS)-(IB)若しくは式(RR)-(IB)、又は式(RS)-(IB)若しくは式(SR)-(IB)の繰り返し単位を有する本発明のMOFについて上記に開示した全ての実施形態はまた、本発明の第2の態様のその調製方法にも適用される。
【0078】
上記のように、式(SS)-(IB)若しくは式(RR)-(IB)、又は式(RS)-(IB)若しくは式(SR)-(IB)の繰り返し単位を有する本発明のMOFは、その調製方法によって定義することができ、従って、上記のような第2の態様の方法によって得ることができる、式(SS)-(IB)若しくは式(RR)-(IB)、又は式(RS)-(IB)若しくは式(SR)-(IB)の繰り返し単位を有するMOFは、本発明の一部と見なされる。従って、式(SS)-(IB)若しくは式(RR)-(IB)、又は式(RS)-(IB)若しくは式(SR)-(IB)の繰り返し単位を有し、本方法によって得ることができるMOFもまた、本発明の一部であり、本プロセスは、(a)式MAの塩の水溶液又は有機溶液を、上記のような式(R)-(III)の化合物(R)-(イミダゾール-5-イルメチル)-(1,2,4-トリアゾール-4-イル)酢酸の水溶液、又は上記のような式(S)-(III)の化合物(S)-(イミダゾール-5-イルメチル)-(1,2,4-トリアゾール-4-イル)酢酸の水溶液、又は式(R)-(III)の化合物及び式(S)-(III)の化合物の混合物へ添加することであって、式(R)-(III)の化合物、又は式(S)-(III)の化合物、又は式(R)-(III)及び式(S)-(III)の化合物の混合物の水溶液のpHは、4~7である、添加することと、(b)工程(a)で得られた溶液を20℃~35℃の温度に必要な期間維持して、金属有機構造体を結晶化することと、(c)このようにして得られた有機金属構造体を単離することと、を含み、式中、Mは、上記のような二価金属カチオンM2+であり、Aは、有機アニオン又は無機アニオンからなる群から選択される一価アニオンAである。
【0079】
本発明の第1の態様のMOFについて上記に開示した全ての実施形態及び本発明の第2の態様のそれらの調製方法について上記に開示した全ての実施形態はまた、この方法によって得ることができるMOFにも適用される。
【0080】
前述のように、本発明の第3の態様は、本発明の式(RR)-(IA)若しくは式(SS)-(IA)、又は式(RS)-(IA)若しくは式(SR)-(IA)の繰り返し単位を有するMOFの調製方法であって、(d)式(RR)-(IB)若しくは式(SS)-(IB)、又は式(RS)-(IB)若しくは式(SR)-(IB)の繰り返し単位を有する金属有機構造体をそのような反応条件で提供して、少なくとも両方の溶媒分子Sを除去することを含む、調製方法に関する。
【0081】
一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、式(RR)-(IB)若しくは式(SS)-(IB)、又は式(RS)-(IB)若しくは式(SR)-(IB)の繰り返し単位を有する金属有機構造体を得るために、本発明の第2の態様で定義された工程(a)~(c)を行うことを含む事前の工程(e)を更に含む。
【0082】
本発明の第1の態様のMOFについて上記に開示した全ての実施形態及び本発明の第2の態様のそれらの調製方法について上記に開示した全ての実施形態はまた、この方法によって得ることができるMOFにも適用される。
【0083】
一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、方法の工程(d)は、少なくとも両方の溶媒分子Sを除去するために、乾燥状態下で100℃~180℃の温度にて、好ましくは、120℃~170℃の温度にて、必要な期間行われる。本明細書で使用する場合、用語「乾燥状態」は、水分を実質的に含まず、好ましくは、水分は、最大25%、より好ましくは、最大22%である環境を指す。一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、方法の工程(d)は、少なくとも両方の溶媒分子Sを除去するために、窒素又はアルゴン等の不活性気体の流れの下で100℃~180℃の温度にて、好ましくは、窒素又はアルゴン等の不活性気体の流れの下で120℃~170℃の温度にて、必要な期間行われる。
【0084】
前述のように、本発明の第4の態様は、本発明の式(RR)-(IB)若しくは式(SS)-(IB)、又は式(RS)-(IB)若しくは式(SR)-(IB)の繰り返し単位を有するMOFの調製方法であって、(f)式(RR)-(IA)若しくは式(SS)-(IA)、又は式(RS)-(IA)若しくは式(SS)-(IA)の繰り返し単位を有する金属有機構造体を、適切な量の溶媒Sとそのような反応条件下で接触させて、2つの溶媒分子Sを配位させることを含む、調製方法に関する。
【0085】
一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、本発明の式(RR)-(IB)若しくは式(SS)-(IB)、又は式(RS)-(IB)若しくは式(SR)-(IB)の繰り返し単位を有するMOFの調製方法は、最初に工程(a)~(e)を行うこと、及び更に上記のように、工程(f)を行うことを更に含む。
【0086】
上記のように、式(SS)-(IB)若しくは式(RR)-(IB)、又は式(RS)-(IB)若しくは式(SR)-(IB)の繰り返し単位を有する本発明のMOFは、その調製方法によって定義することができ、従って、上記のような第4の態様の方法によって得ることができる、式(SS)-(IB)若しくは式(RR)-(IB)、又は式(RS)-(IB)若しくは式(SR)-(IB)の繰り返し単位を有するMOFは、本発明の一部と見なされる。従って、式(SS)-(IB)若しくは式(RR)-(IB)又は式(RS)-(IB)若しくは式(SR)-(IB)の繰り返し単位を有し、本方法によって得ることができる本発明のMOFもまた、本発明の一部であり、本方法は、(f)式(RR)-(IA)若しくは式(SS)-(IA)、又は式(RS)-(IA)若しくは式(SR)-(IA)の繰り返し単位を有する金属有機構造体を、適切な量の溶媒Sとそのような反応条件下で接触させて、2つの溶媒分子Sを配位させることを含む。
【0087】
本発明の第1の態様のMOFについて上記に開示した全ての実施形態及びそれらの調製方法(工程(a)~(f))について上記に開示した全ての実施形態はまた、この方法によって得ることができるMOFにも適用される。
【0088】
前述のように、本発明の第5の態様は、本発明のMOFと、1以上のキャリアと、を含む組成物に関する。用語「キャリア」は、MOFが特定の用途、例えば、分離剤として又は触媒としての使用に好適なように組み合わされる賦形剤又は媒体を指す。
【0089】
一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、キャリアは、液体キャリア及び多孔質固体キャリアからなる群から選択される。特に、組成物が本発明のMOF及び少なくとも液体キャリアを含む場合、組成物はまた、「インク」とも呼ばれ、あるいは、組成物が本発明のMOF及び少なくとも多孔質固体キャリアを含む場合、組成物はまた、「メンブレン」とも呼ばれる。
【0090】
一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、組成物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレングリコール、2-プロパノール、エタノール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、水、アセトン、及びこれらの混合物からなる群から選択される液体キャリアを含むものである。
【0091】
一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、組成物は、多孔質有機固体キャリア及び多孔質無機固体キャリアからなる群から選択される多孔質固体キャリアを含むものである。
【0092】
一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、組成物は、本発明のMOF及び多孔質ポリマー有機キャリアを含むものである。本発明に適した多孔質ポリマー有機キャリアの例としては、非限定的に、ポリ(ビニルエステル)、ポリ(エチレンイミン)、ポリイミド、ポリスルホン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ピロール)、ポリ(アセチレン)、ポリ(チオフェン)、好ましくは、ポリ(フッ化ビニリデン及びポリピロール)が挙げられる。好ましい多孔質ポリマー有機キャリアは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、独自のジアミンに基づく熱可塑性ポリイミド、5(6)-アミノ-1-(4’アミノフェニル)-1,3,-トリメチルインダン(Matrimid(登録商標)9725)、ポリ(エチレンイミン)(PEI)、及びポリビニルアセテート(PVAc)からなる群から選択される。好ましい実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、組成物は、本発明のMOF及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含むものである。これらは、これらの組成物が有機ポリマーの可塑性とMOFの化学特性とを組み合わせるため有利である。更に、これらの組成物は、本発明のMOFの化学特性及び触媒特性が多孔質固体支持体の強健性、機械的強度、加工性、及び磁気特性と組み合わされるため、有利である。
【0093】
一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、組成物は、本発明のMOF及び上記の実施形態のいずれかで定義された多孔質ポリマー有機キャリアを含むものであり、組成物は、組成物の総重量に対して、10重量%~99重量%の本発明のMOFを含む。更なる特定の実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、組成物は、本発明のMOF及び上記の実施形態のいずれかで定義された多孔質ポリマー有機キャリアを含むものであり、組成物は、組成物の総重量に対して、20重量%~90重量%の本発明のMOFを含む。更なる特定の実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、組成物は、本発明のMOF及び上記の実施形態のいずれかで定義された多孔質ポリマー有機キャリアを含むものであり、組成物は、組成物の総重量に対して、30重量%~80重量%の本発明のMOFを含む。更なる特定の実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、組成物は、本発明のMOF及び上記の実施形態のいずれかで定義された多孔質ポリマー有機キャリアを含むものであり、組成物は、組成物の総重量に対して、40重量%~70重量%の本発明のMOFを含む。更により詳細には、組成物は、本発明のMOF及び上記の実施形態のいずれかで定義された多孔質ポリマー有機キャリアを含むものであり、組成物は、組成物の総重量に対して、60重量%~70重量%の本発明のMOFを含む。
【0094】
特定の実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、組成物は、本発明のMOFを含むものであり、キャリアは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)であり、組成物は、組成物の総重量に対して、30重量%~80重量%の本発明のMOFを含む。より好ましくは、組成物は、本発明のMOFを含むものであり、キャリアは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)であり、組成物は、組成物の総重量に対して、40重量%~70重量%の本発明のMOFを含む。更により好ましくは、組成物は、本発明のMOFを含むものであり、キャリアは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)であり、組成物は、組成物の総重量に対して、60重量%~70重量%の本発明のMOFを含む。
【0095】
組成物が多孔質ポリマー有機キャリアを含むものである場合、この組成物は、典型的には、「混合マトリックスメンブレン」と呼ばれる。この「混合マトリックスメンブレン」の調製プロセス及び調製方法は、当該技術分野において既知であり、典型的には、フィルムキャスティング、ロールツーロール、及び押出し等の技術を使用してポリマー中にMOFを分散させることを含む。
【0096】
一実施形態では、本発明のMOFを含む混合マトリックスメンブレンの調製は、フィルムキャスティングで行われる。このプロセスは、(i)本発明のMOFを1以上の有機溶媒中に懸濁又は溶解することと、(ii)1以上の溶媒中に多孔質ポリマー有機キャリード(carried)を溶解することと、(iii)工程(i)及び(ii)で得られた溶液を混合することと、(iv)工程(iii)から得られた混合物をキャストすることと、を含み、あるいは、このプロセスは、(v)1以上の溶媒中に本発明のMOF及び上記のような多孔質ポリマー有機キャリアを含むフィルムドープを調製することと、(vi)工程(v)で得られたフィルムドープをドクターブレードに供給することと、(vii)工程(v)で得られたキャストフィルムを乾燥することと、を含む。
【0097】
特定の実施形態では、混合マトリックスメンブレンが本発明のMOFを含み、キャリアがポリフッ化ビニリデン(PVDF)である場合、この方法は、本発明のMOFをN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中に懸濁することにより、本発明のMOF及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含むフィルムドープを調製することと、PVDFの濃度がDMF1ミリリットル当たり0.15グラムとなるように、PVDFを添加することと、事前のステップで得られたフィルムドープをドクターブレードに供給することと、このようにして得られたキャストフィルムを乾燥することと、を含む。
【0098】
一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、組成物は、多孔質金属酸化物、二酸化ケイ素、金属水酸化物、層状複水酸化物、粘度、及びゼオライトからなる群から選択される多孔質無機固体キャリアを含むものである。
【0099】
上記に開示したようなMOFを含む固体組成物は、例えば、とりわけ、吸着剤、結合剤、及び潤滑剤等の追加の成分を更に含むことができる。これらの成分は、典型的には、固体支持体MOFの生成プロセス中に添加される。
【0100】
本発明の第5の態様の組成物の調製方法もまた、本発明の一部である。これらの組成物は、とりわけ、均一な本体、フィルム、フリット、プレート、ワイヤ、シリンダ、及び/又はスポンジを得るために、機械的、化学的、又は熱的混合等による現況技術で開示された方法を使用して調製することができる。その調製のための適切な方法、並びに量及び実験条件は、調製される組成物の種類に従って、当業者によって容易に決定され得る。
【0101】
特に、1以上の固体キャリア(「メンブレン」とも呼ばれる)を含む本発明の第5の態様の組成物は、現況技術で既知の任意の方法によって得ることができる。これらのメンブレンの調製に好適な方法の例としては、種晶を多孔質固体支持体上に配置して(又は付着させて)、任意で続いて、それらを連続MOFメンブレンに成長させるためのソルボサーマル処理による、二次成長による連続MOFメンブレンの製作が挙げられるが、これに限定されない。他の方法としては、MOF結晶の混合マトリックス気体分離メンブレン中への組み込み、又は中空繊維中への組み込み、又はフィルムキャスティング法、更に、多孔質固体支持体上へのインクのフィルムキャスティングが挙げられる。上記のようなMOFを含む固体組成物の調製方法もまた、本発明の一部である。
【0102】
前述のように、本発明の第6の態様は、本発明の第1の態様で定義された金属有機構造体、又は本発明の第5の態様で定義された組成物の分離剤として又は触媒としてのいずれかの使用に関する。
【0103】
従って、本発明の第1の態様で定義された金属有機構造体、又は本発明の第5の態様で定義された組成物は、気相又は液相の物質の混合物のための分離剤として使用できる。本発明のMOFは、MOF上に吸着された気体の脱着が材料の更なる加熱を必要とする(気体放出フェーズ)現況技術のほとんどのMOFとは異なるため特に有利であり、本発明のMOFは、MOFの気孔内に捕捉された気体の放出を促進するように温度を上昇させる必要なしに、気体又は液体の選択的分離を行うことを可能にする。この方法は、連続して実施でき、高い生産性を可能にするため有利である。特に、実施例に示されるように、本発明のMOFは、温度を80℃超に上昇させる必要なしに、メタン及び二酸化炭素の選択的分離を可能にする(実施例3参照)。
【0104】
一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、本発明は、本発明の第1の態様で定義された金属有機構造体又は本発明の第5の態様で定義された組成物の、気相の物質の混合物のための分離剤としての使用に関する。一実施形態では、任意で任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、本発明は、本発明の第1の態様で定義された金属有機構造体又は本発明の第5の態様で定義された組成物の、気相の物質の混合物のための分離剤としての使用に関し、この混合物は、二酸化炭素を含む。一実施形態では、任意で任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、本発明は、本発明の第1の態様で定義された金属有機構造体又は本発明の第5の態様で定義された組成物の、気相の物質の混合物のための分離剤としての使用に関し、この混合物は、二酸化炭素及びメタンを含む。一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、本発明は、本発明の第5の態様で定義された組成物の、二酸化炭素、好ましくは、二酸化炭素及びメタンを含む気相の物質の混合物のための分離剤としての使用に関し、この組成物は、本発明のMOF及び上記の実施形態のいずれかで定義された多孔質ポリマー有機キャリアを含む。特に、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、本発明は、本発明の第5の態様で定義された組成物の、二酸化炭素、好ましくは、二酸化炭素及びメタンを含む気相の物質の混合物のための分離剤としての使用に関し、この組成物は、本発明のMOFを含み、キャリアは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)である。
【0105】
気体の混合物を、本発明のMOFの層又は本発明のMOFを含む本発明の組成物に通過させることを含む、気相の物質の混合物の分離方法もまた、本発明の一部である。
【0106】
気液分離法もまた、本発明の一部であり、本方法は、(i)気体又は液体混合物の分離を可能にするような条件下で、気体又は液体流を、本発明のMOFの床、又は本発明のMOF及び上記のようなキャリアを含む組成物の床に通過させることを含む。この工程は、適切な分離純度に達するまで、必要な回数繰り返すことができる。典型的には、このような気体又は液体分離は、MOFを含む組成物の床が安定で特定の気体又は液体に対して選択性を示すような温度、圧力、及び流速の範囲下で実施できる。適切な温度、圧力、及び流速は、床の組成物の種類に従って当業者によって容易に決定することができる。
【0107】
一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、本発明のMOFが式(RR)-(IB)若しくは式(SS)-(IB)、又は式(RS)-(IB)若しくは式(SR)-(IB)の繰り返し単位を有するMOFである場合、気液分離法は、(RR)-(IA)若しくは(SS)-(IA)、又は(RS)-(IA)若しくは(SR)-(IA)の繰り返し単位を有する本発明のMOFを得るために本発明の第3の態様の工程(d)を行うことを含む、工程(i)の前の事前の工程(i’)を更に含む。一実施形態では、本発明のMOFが固体キャリア(「メンブレン」)を含む組成物の一部を形成している場合、工程(i’)は、不活性雰囲気下、特に、窒素雰囲気下で130℃~150℃の温度にて行われる。
【0108】
本発明の第1の態様のMOFについて上記に開示した全ての実施形態、本発明の第5の態様の組成物、及び上記のような方法の工程(d)について上記に開示した全ての実施形態はまた、気液分離法にも適用される。
【0109】
前述のように、本発明の第1の態様で定義された金属有機構造体又は本発明の第5の態様で定義された組成物は、溶媒中にあるキラル化合物のエナンチオマーの混合物のエナンチオ選択的分離における分離剤として使用できる。実施例に示されるように、本発明のMOF、好ましくは、式(RR)-(IA)又は式(SS)-(IA)の繰り返し単位を有するMOFは、ラセミ体イブプロフェンのキラル分離を可能にする(実施例4参照)。
【0110】
一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、本発明は、本発明の第5の態様で定義された組成物の、溶媒中のキラル化合物のエナンチオマーの混合物の分離剤としての使用に関し、このキラル化合物は、薬学的活性成分である。適切な薬学的活性成分としては、抗感染薬、防腐剤、抗炎症剤、抗がん剤、抗嘔吐薬、局所麻酔薬、抗ニキビ剤、創傷治癒剤、及び血管新生抑制剤が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、薬学的活性成分は、イブプロフェン等の抗炎症剤である。一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、本発明は、本発明の第5の態様で定義された組成物の、溶媒中のキラル化合物のエナンチオマーの混合物の分離剤としての使用に関し、このキラル化合物は、イブプロフェンである。
【0111】
溶媒中にあるキラル化合物のエナンチオマーの混合物のエナンチオ選択的分離法もまた、本発明の一部であり、本方法は、(j)キラル化合物のエナンチオマーの分離を可能にするような条件下で、キラル化合物のエナンチオマーの混合物の溶液を、本発明のMOFの床、又は本発明のMOF及び上記のようなキャリアを含む組成物の床に通過させることを含む。この工程は、適切なエナンチオ分離純度に達するまで、必要な回数繰り返すことができる。
【0112】
一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、本発明のMOFが式(RR)-(IB)又は式(SS)-(IB)の繰り返し単位を有するMOFである場合、キラル化合物のエナンチオマーの混合物のエナンチオ選択的分離法は、(RR)-(IA)又は(SS)-(IA)の繰り返し単位を有する本発明のMOFを得るために本発明の第3の態様の工程e)を行うことを含む、工程(j)の前の事前の工程(j’)を更に含む。一実施形態では、本発明のMOFが固体キャリア(「メンブレン」)を含む組成物の一部を形成している場合、工程(j’)は、不活性雰囲気下、特に、窒素雰囲気下で130℃~150℃の温度にて行われる。
【0113】
本発明の第1の態様のMOFについて上記に開示した全ての実施形態、本発明の第5の態様の組成物及びこれらの調製方法の工程(d)について上記に開示した全ての実施形態はまた、上記に開示したキラル化合物のエナンチオマーの混合物のエナンチオ選択的分離法にも適用される。
【0114】
最後に、本発明の第5の態様はまた、本発明の第1の態様における金属有機構造体又は本発明の第5の態様で定義された組成物の、例えば、不斉反応又は水素化反応のための触媒としての使用にも関する。この点に関して、本発明のMOFは、これらの容易な反応後分離、触媒再利用性、高安定性、高効率、及び選択性のための不均一系触媒として有用であり、並びに穏やかな反応条件下で追加の処理なしで使用することができるという利点がある。実施例5に示され得るように、本発明のMOF、式(RR)-(IA)若しくは式(SS)-(IA)、又は式(RS)-(IA)若しくは式(SR)-(IA)の繰り返し単位を有するMOF、あるいは式(RR)-(IB)若しくは式(SS)-(IB)、又は式(RS)-(IB)若しくは式(SR)-(IB)の繰り返し単位を有するMOFのいずれか、好ましくは、式(RR)-(IA)又は式(SS)-(IA)の繰り返し単位を有するMOFは、二酸化炭素の水素化、並びに表8~9に示されるように、エポキシドの不斉開環又は酸化スチレンの不斉アミノ分解による、エナンチオ濃縮2-フェニル-2-(フェニルアミノ)エタン-1-オル及びまた1-フェニル-2-(フェニルアミノ)エタン-1-オルの立体選択的調製に有用である。
【0115】
エナンチオ選択的濃縮化合物の調製法もまた、本発明の一部であり、本方法は、(k)本発明のMOFをラセミ化合物と適切な反応条件下で接触させて、好ましくは、例えば、溶液中若しくはニート状態等の液相中、又は気相中で、エナンチオ選択的濃縮化合物を得ることを含む。
【0116】
一実施形態では、任意で上記又は下記の様々な実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、本発明のMOFが式(RR)-(IB)又は式(SS)-(IB)の繰り返し単位を有するMOFである場合、キラル化合物のエナンチオマーの混合物のエナンチオ選択的分離法は、(RR)-(IA)又は(SS)-(IA)の繰り返し単位を有する本発明のMOFを得るために本発明の第3の態様の工程(d)を行うことを含む、工程(k)の前の事前の工程(k’)を更に含む。一実施形態では、本発明のMOFが固体キャリア(「メンブレン」)を含む組成物の一部を形成している場合、工程(k’)は、不活性雰囲気下、特に、窒素雰囲気下で130℃~150℃の温度にて行われる。
【0117】
本発明の第1の態様のMOFの方法について上記に開示した全ての実施形態、本発明の第5の態様の組成物、及びこれらの調製方法の工程(d)について上記に開示した全ての実施形態はまた、上記に開示したキラル化合物のエナンチオマーの混合物のエナンチオ選択的分離法にも適用される。
【0118】
明細書及び特許請求の範囲を通して、語「含む(comprise)」及びその語の変化形は、他の技術的特徴、添加物、構成成分、又はステップを除外することを意図するものではない。本発明の更なる目的、利点、及び特徴は、本明細書を検討することによって当業者には明白となるか、又は本発明の実施によって知ることができよう。下記の実施例及び図面が実例として提供され、これらは本発明の限定であることを意図しない。更に、本発明は、本明細書に記載された特定の及び好ましい実施形態の全ての可能性のある組み合わせを含む。
【実施例
【0119】
略称
RBF:丸底フラスコ
DMF:ジメチルホルムアミド
EtOH:エタノール
DMSO:ジメチルスルホキシド
IPA:イソプロピル
ACN:アセトニトリル
THF:テトラヒドロフラン
TFA:トリフルオロ酢酸
EtOAC:エチルアセテート
EtO:ジエチルエーテル
【0120】
一般的注意点
NMRスペクトルは、次の分光計で記録した:Bruker Avance 400 Ultrashield(Hは400MHz及び13Cは101MHz)並びにBruker Avance 500 Ultrashield(Hは500MHz及び13Cは126MHz)。化学シフト(H及び13Cのδは、溶媒の残留シグナルに対してppmで与えられる(それぞれ、DO4.8ppm、DMSO2.5ppm、CDCl7.2ppm H NMR、並びに39.5ppm及び77.0ppm 13C NMR)。結合定数はヘルツで与えられる。次の略称を、多重度を表すために使用する:s、一重線;d、二重線;t、三重線;m、多重線;bs、幅広線信号。元素分析は、LECO CHNS-932で記録した。
【0121】
フーリエ変換赤外減衰全反射(FT-IR-ATR)スペクトルは、DTGS検出器、ダイヤモンド窓付き1バウンスATRアクセサリを使用した4cm-1の分解能のKBrビーム分割器を装備した、Bruker Optics FT-IRアルファ分光計で記録した。試料をATRプレート上に配置し、4000~400cm-1の範囲で測定を実施した。用語「IR又はIRスペクトル」は、本文脈で使用される場合、前述の条件で登録されたスペクトルを指す。
【0122】
化合物(SS)-(IA1)の粉末X線回折(Powder X-Ray diffraction:PXRD)分析は、Kappa4軸ゴニオメータを装備したApex DUO回折計、APEX II 4K CCD領域検出器、CuKα放射線(λ=1.5418×10-10m(Å))を使用するMicrofocus Source E025 IuS、モノクロメータとしてのQuazar MX多層光学装置、及びOxford Cryosystems低温デバイスCryostream 700 plus(T=-173℃)を使用して行った。
【0123】
回折X線単結晶(Diffraction X ray single crystal:SCXRD)分析は、Kappa4軸ゴニオメータを装備したApex DUO回折計、APEX II 4K CCD領域検出器、MoKα放射線(λ=0.71073×10-10m(Å))を使用するMicrofocus Source E025 IuS、モノクロメータとしてのQuazar MX多層光学装置、及びOxford Cryosystems低温デバイスCryostream 700 plus(T=-173℃)を使用して得られた。
【0124】
熱重量分析(Thermal Gravimetric analysis:TGA)は、乾燥窒素雰囲気で20mL/分の流速及び10℃/分の加熱速度で40μLの体積のアルミナるつぼを用いて、Mettler-Toledo TGA thermobalance-851e装置を使用して得た。図は、加熱時の試料の質量(TGA)、並びにミリグラム(mg)対分及び℃(温度)で表される、信号SDTAを同時に変化させて示す。
【0125】
BET表面積及び空隙率は、Quantachrome Autosorb iQ分析器を使用して、77KでN吸着により行った。異なる化学吸着実験(CO、CH、H、N、及びCO)は、Quantachrome Autosorb iQ chemistationを使用して行った。最初に、新しい試料を化学吸着セル中に充填し、室温から150℃(加熱速度2℃分-1)でN雰囲気にて12時間活性化した。活性化したら、気体をNからCO(又はCH、CO、若しくはH)に切り換え、等温実験を異なる温度にて行った。77KでのN吸着-脱着等温線をQuantachrome Autosorb iQ分析器で測定した。分析前に、試料を150℃にて12時間真空中で脱気した。J.Am.Chem.Soc.1938年、第60巻、309頁に開示されたBET法を用いて総表面積を計算し、J.Catal.1965年、第4巻、319頁に開示されたt-plot法を使用して、ミクロ空隙率とメソ空隙率とを区別した。
【0126】
円二色性(CD)による図は、光電子増倍管検出器、二重偏光プリズム設計モノクロメータ、光弾性モジュレータ(photo-elastic modulator:PEM)、及び150Wキセノン光源を装備したApplied Photophysics Chirascan円二色性分光計を使用して得た。
【0127】
実施例1.本発明のMOFの調製方法
【0128】
工程1:式(IV)のN’-((ジメチルアミノ)メチレン)-N,N-ジメチルホルムヒドラゾンアミドの調製
【化15】
【0129】
3つ首の250mLのRBF中に、150mLのDMFを添加し、アイスバッチで冷却した。その後、28.6mLのSOClをシリンジで撹拌しながらゆっくりと添加した。得られた反応混合物を24時間撹拌した。この後、RBFを氷浴中に入れ、混合物が冷却されたら、15mLのDMFに溶解した5mLのNHNH・HOをシリンジで撹拌しながらゆっくりと添加した。反応混合物を48時間撹拌し、(IV)・2HCl(1)の沈殿物を形成した。次いで、沈殿物を濾過し、DMF及びEtOで洗浄した。次いで、沈殿物(1、MW=215.13g/mol)を100mLのHOに溶解した。異なるビーカで、NaCOを100mLのHO中に溶解した(比率1:NaCO=1:1)。次いで、両方の水溶液を混合し、所望の生成物を液-液抽出で750mLのEtOで抽出し、反応物を50℃にて2日間加熱して、式(IV)の化合物を得た(13.5g、収率95%収率)。
【0130】
化合物1:
16l2(215.12)の元素分析計算値(%):C,33.45;H,7.45;Cl,33.0;N,26.0 実測値:33.45;H,7.7;Cl,33.0;N,25.9
H NMR(500MHz,DO)δ8.44(s,2H),3.29(bs,12H)。
【0131】
化合物IV:
14(142.1219)の元素分析計算値(%):C,50.65;H,9.85;N,39.4
実測値:C,50.35;H,10.25;N,39.6%
H NMR(400MHz,DMSO)δ7.69(s,2H),2.72(s,12H)。
【0132】
工程2.式(III)の化合物(イミダゾール-5-イルメチル)-(1,2,4-トリアゾール-4-イル)酢酸の(R)-及び(S)-エナンチオマーの調製
【化16】
【0133】
2.1.(S)-(イミダゾール-5-イルメチル)-(1,2,4-トリアゾール-4-イル)酢酸(S)-(III)
【化17】
【0134】
工程1で得られた式(IV)の化合物(6.3g、0.04mmol)及びL-ヒスチジン(L-V、3.1g、0.02mmol)を150mLのEtOH中に一緒に混合した。混合物を80℃にて2日間撹拌しながら還流した。最終溶液を未反応ヒスチジンから濾別して、回転蒸発させてオレンジゲルを得、これを洗浄して、EtOHで沈殿させた。得られた白色沈殿物を濾過により収集して、EtOHで洗浄し風乾して、式(S)-(III)の化合物を得た(3.5g、85%)。
【0135】
(207.08)の元素分析計算値(%):C:46.38,H:4.38,N:33.80。実測値:C:46.36,H:4.52,N:33.78。
IR(ATR,cm-1):1637(s),1601(m),1535(s),1463(s),1440(s),1397(s),1359(s),1294(s),1261(s),1209(s),1080(s),1031(s),1009(s),971(s),921(s),872(s),838(s),796(s),731(s),710(s),681(s),647(s),630(s),483(s),424(s)。
H NMR(500MHz,DO):δ8.51(d,J=10.6Hz,3H),7.10(s,1H),5.23(m,J=9.3,5.4,1.2Hz,1H),3.57(m,2H)。
【0136】
2.2.(R)-(イミダゾール-5-イルメチル)-(1,2,4-トリアゾール-4-イル)酢酸(R)-(III)
【化18】
【0137】
セクション2.1に定義したプロセスに従って、L-ヒスチジン(L-V)の代わりにD-ヒスチジン(D-V)を使用して、式(R)-(III)の化合物の調製を実施した。この方法に従って、3.5gの式(R)-(III)の化合物を得た(収率85%)。
【0138】
(207.08)の元素分析計算値(%):C:46.38,H:4.38,N:33.80。実測値:C:46.36,H:4.52,N:33.78。
IR(ATR,cm-1):1637(s),1601(m),1535(s),1463(s),1440(s),1397(s),1359(s),1294(s),1261(s),1209(s),1080(s),1031(s),1009(s),971(s),921(s),872(s),838(s),796(s),731(s),710(s),681(s),647(s),630(s),483(s),424(s)。
H NMR(500MHz,DO):δ8.51(d,J=10.6Hz,3H),7.10(s,1H),5.23(m,J=9.3,5.4,1.2Hz,1H),3.57(m,2H)。
【0139】
工程3.MOFの調製
【0140】
3.1.(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有するMOF
式(VI)のCuII(CHCOO)・HO(0.48g、2.4mmol)を50mLの水に溶解して、得られた溶液を、セクション2.1で得られた(S)-(イミダゾール-5-イルメチル)-(1,2,4-トリアゾール-4-イル)酢酸(S)-(III)(1.0g、4.8mmol)を含有する水溶液にゆっくりと添加した。最終溶液を濾過して、室温にて保管し、(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有するMOFの結晶を2日間以内に得た(1.1g、70%)。
【0141】
1632CuN1012(620.04)の元素分析計算値(%):C:30.99,H:5.2,N:22.59。実測値:C:30.79,H:4.83,N:22.30。
IR(ATR,cm-1):3289(br),1615(s),1532(s),1495(s),1395(s),1355(s),1263(s),1242(s),1211(s),1180(s),1116(s),1087(s),1015(s),979(s),891(s),845(s),752(s),701(s),660(s),647(s),549(s),511(s),472(s)。
【0142】
3.2.(RR)-(IB1’)の繰り返し単位を有するMOF
セクション3.1に定義したプロセスに従って、式(S)-(III)の代わりに式(R)-(III)の(R)-(イミダゾール-5-イルメチル)-(1,2,4-トリアゾール-4-イル)酢酸を使用して、(RR)-(IB1’)の繰り返し単位を有するMOFの調製を実施した。この方法に従って、(RR)-(IB1’)の繰り返し単位を有するMOFの結晶を2日以内に得た(1.1g、70%)。
【0143】
1632CuN1012(620.04)の元素分析計算値(%):C:30.99,H:5.2,N:22.59。実測値:C:30.79,H:4.83,N:22.30。
IR(ATR,cm-1):3289(br),1615(s),1532(s),1495(s),1395(s),1355(s),1263(s),1242(s),1211(s),1180(s),1116(s),1087(s),1015(s),979(s),891(s),845(s),752(s),701(s),660(s),647(s),549(s),511(s),472(s)。
【0144】
3.3.(SS)-(IA1)又は(RR)-(IA1)の繰り返し単位を有するMOF
【0145】
(SS)-(IA1)又は(RR)-(IA1))の繰り返し単位を有するMOFの調製は、150℃の温度にて12時間真空条件下で、それぞれセクション3.1又は3.2で得られた(SS)-(IB1’)又は(RR)-(IB1’)の繰り返し単位を有する合成されたままの材料MOFを提供することにより実施した。この方法に従って、(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有するMOFの結晶を得た(定量)。
【0146】
比表(BET)面積:970m/g
気孔体積:0.35cm/g。
【0147】
実施例2.安定性試験
【0148】
2.1.方法
試料:
試験試料:(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有するMOF
pH=2.10、pH=3.17、pH=10.55、及びpH11.65の水溶液
【0149】
2.1.1 温度及びpH安定性試験方法論:
熱安定性試験について、(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有するMOFの新しい粉末試料をin-situで280K~500Kの温度範囲にて、Bruker D8アドバンス粉末回折計を使用して測定した。全ての10K実験用PXRDを得た。
【0150】
同一の実験を、本発明で定義された(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有するMOFの単結晶を用いて、Pilatus 200K単結晶回折計を備えたRigaku MicroMax-007HFを使用して、100~500Kの温度範囲にて行った。
【0151】
窒素雰囲気下で試料を加熱すると、水分子を失うことにより、(SS)-(IB1’)は、徐々に(SS)-(IA1)に変換される。
【0152】
pH安定性試験のために、20mgの(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有するMOFの多結晶性試料を、上記のような各水溶液(pH=2.10、pH=3.17、pH=10.55、及びpH11.65の水溶液)中に24時間浸漬させた。その後、各試料を濾過し、濾液を保持した。次いで、収集した濾液を150℃(423K)で15時間排除して、その後にBET表面測定した。
【0153】
2.1.2.N収着試験方法論:
(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有するMOFの新しい多結晶性試料を化学吸着セル中に充填し、室温から150℃(加熱速度2℃分-1)でN雰囲気にて12時間活性化して、(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有するMOFを得る。S.Brunauerらによる「Adsorption of Gases in Multimolecular Layers」、J.Am.Chem.Soc.1938年、第60巻、309頁~319頁に開示されたBET法を用いて、総表面積を計算し、B.C.Lippensらによる「Studies on pore systems in catalysts:V.The t method」、J.Catal.1965年、第4巻、319頁~323頁のt-plot法を使用して、(IA1)の微孔特徴を決定した。
【0154】
2.2.結果
2.2.1.pH安定性試験の結果(気孔体積/BET表面積)
表5は、(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有するMOFを表5に示すpHの溶液に浸漬する、上記のような方法に従って得た気孔体積値(cm・g-1で表される)及びNBET表面積値(m・g-1で表される)についてまとめている。
【表5】
【0155】
2.2.2.N吸着-脱着試験方法論の結果
図9は、安定性試験で開示された条件(以前のセクションで開示された温度及びpH)で提供された(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有するMOFのN収着等温線を示す。
【0156】
結論
表5の気孔体積及びNBET表面積の値は、本発明のMOFが例えばpH2及びpH9等の極端なpH値でも安定であることを示す。更に、図9のN吸着-脱着等温線は、本発明のMOFが上述の極端な条件であっても、その吸着/脱着能力を維持することを示す。
【0157】
従って、上記の結果は、本発明のMOFが吸着/脱着能力を維持しながら安定であることを示す。
【0158】
実施例3.気体分離活性
【0159】
3.1.温度吸着試験
気体キャリアとしてN流を使用して、異なる温度にて本発明の(SS)-(IA)の繰り返し単位を有するMOFを含むカラムを通るCOパルスの保持時間を測定した。
【0160】
気体混合物の分離を、較正された質量分析計(Pffeifer Omnistar GSD 301 C)に連結されたTPDRO 1100シリーズ(Thermo Electron Corporation)でパルス化学吸着質量分析法によって調べた。
【0161】
分析前に、本発明の(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有するMOFを(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有するMOFから、150℃にて12時間真空中での活性化により調製した。
【0162】
次に、試料をTPDRO石英固定床リアクタ(10mm内径)に移動して窒素下で2時間乾燥させ(20cmSTP分-1)、温度を室温から150℃まで10℃分-1で上昇させた。次いで、既知量のCO/CH(0.34mL)を、30℃~150℃の温度範囲にて窒素流中で6ポートバルブを使用することによってパルス注入した。30℃~70℃の温度にて行われた実験の後に、80℃にて窒素流下での昇温脱離法(TPD)を行った。質量m/z;15(CH)、18(HO)、28(N)、32(O)、44(CO)を質量分析法によって連続的に監視した。
【0163】
結果
表6は、二酸化炭素の保持強度(a.u.で表される)及び保持時間(分で表される)についてまとめている。
【表6】
【0164】
COの強度及び保持時間の値は、本発明のMOFが室温~140℃の間でCOを選択的に吸着することができることを示す。
【0165】
3.2.選択性吸着試験
【0166】
3.2.1.高圧吸着
方法
本発明の(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有するMOFのCO、CH、H、N、及びCOの高圧吸着等温線は、Autosorb iQで313Kにて収集した。
【0167】
分析前に、本発明の(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有するMOFを(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有するMOFから、活性化により調製した。特に、本方法は、(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有するMOFの新しい試料を化学吸着セル中に予備で充填することと、室温から150℃(加熱速度2℃分-1)でN雰囲気にて12時間活性化することと、を含む。活性化したら、気体をNからCO(又はCH、又はCO、又はH)に切り換え、等温実験を行った。
【0168】
結果
図6に示されるように、(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有するMOFのCO、CH、H、N、及びCOの高圧吸着等温線で示されるように、本発明のMOFは、800トールでそれぞれ79、16.3、0.7、5.79、及び12.68cc/gの最大取り込み量を示す。
【0169】
これは、本発明のMOFが、異なる圧力で他の気体の存在下であっても、COの高い吸着能力を有することを意味する。これは、本発明で定義されたようなMOFが高圧であっても二酸化炭素の高い選択的吸着を可能にするため有利である。
【0170】
3.2.2.温度吸着試験
気体キャリアとしてN流を使用して、異なる温度にて本発明の(SS)-(IA)の繰り返し単位を有するMOFを含むカラムを通るCH及びCO(1:1)のパルスの保持時間を測定した。分析前に、本発明の(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有するMOFを(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有するMOFから、上記のセクション3.2.1のような活性化により調製した。
【0171】
CO捕捉中の気体の発生を、較正された質量分析計(Pffeifer Omnistar GSD 301 C)に連結されたTPDRO 1100シリーズ(Thermo Electron Corporation)でパルス化学吸着質量分析法によって調べた。分析前に、(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有するMOFを、Quantachrome Autosorb iQ分析器で、150℃にて12時間真空中で活性化して、(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有するMOFを得た。次に、試料をTPDRO石英固定床リアクタ(10mm内径)に移動して窒素下で2時間乾燥させ(20cmSTP分-1)、温度を室温から150℃まで10℃分-1で上昇させた。次いで、既知量のCO/CH(0.34mL)を、30℃~150℃の温度範囲にて窒素流中で6ポートバルブを使用することによってパルス注入した。30℃~70℃の温度にて行われた実験の後に、80℃にて窒素流下での昇温脱離法(TPD)を行った。質量m/z;15(CH)、18(HO)、28(N)、32(O)、44(CO)を質量分析法によって連続的に監視した。
【0172】
結果
表7は、(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有するMOFによるCOの保持時間、特に、各々の気体の保持強度(a.u.で表される)及び保持時間(分で表される)についてまとめている。
【表7】
【0173】
CO及びCHの強度及び保持時間の値は、気体流の温度に応じて、本発明のMOFがCO又はCHを選択的に吸着することができることを示す。
【0174】
3.3.水素化反応
水素化反応中の気体の発生を、較正された質量分析計(Pffeifer Omnistar GSD 301 C)に連結されたTPDRO 1100シリーズ(Thermo Electron Corporation)でパルス化学吸着質量分析法によって調べた。
【0175】
分析前に、本発明の(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有するMOFを(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有するMOFから、活性化により調製した。特に、(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有するMOFを、Quantachrome Autosorb iQ分析器で、150℃にて12時間真空中で活性化した。次に、試料をTPDRO石英固定床リアクタ(10mm内径)に移動して窒素下で2時間乾燥させ(20cmSTP分-1)、温度を室温から150℃まで10℃分-1で上昇させた。
【0176】
次いで、既知量のCO(0.34mL)を、30℃~150℃の温度範囲にてN流中の5%H中で6ポートバルブを使用することによってパルス注入した。30℃~70℃の温度にて行われた実験の後に、80℃にて窒素流下での昇温脱離法(TPD)を行った。質量m/z;15(CH)、16(CH、O)、18(HO)、28(N、CO、HCO、C)、30(HCO)、31(CHOH、CHCHOH)、32(O、CHOH)、44(CO、CHCOH)、46(HCOOH、CHCHOH)を質量分析法によって連続的に監視した。
【0177】
結果
図12に示されるように、(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有するMOFは、30℃~150℃の温度にて主にHCOOHの形成をもたらす水素化反応を触媒する。
【0178】
実施例4.エナンチオ選択的分離
【0179】
4.1.方法
分析前に、本発明の(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有するMOFを(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有するMOFから、活性化により調製した。特に、(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有するMOFを、シュレンク管で、150℃にて12時間真空中で活性化した。
【0180】
30mgの(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有する活性化MOFを、表8で定義された溶媒中に表8に示された適切な温度にて、(SS)-(IA1):イブプロフェンのモル比が1:3でラセミ体イブプロフェン(50%S/R)と共に配置した。反応物を、表8に示す温度にて一晩撹拌した。反応物を濾過して固体を除去し、これを少量の新しいアセトニトリルで洗浄して、構造体の表面上に吸着されたあらゆるイブプロフェンを除去した。用語「母液」は、濾液及び最初の洗浄液の混合物を指す。
【0181】
活性化MOFによって吸着されたイブプロフェンの量及びキラリティーを、室温で1時間、CHCl(2mL)で懸濁することによって固体から抽出した。この後、固体を濾過により除去し、濾液をH NMRによって分析した。
【0182】
エナンチオマー過剰率は、超高性能コンバージェンスクロマトグラフィー(UPPC)、ダイオードアレイ検出器を備えたACQUITY UPC2 Watersシステム、カラム(ChiralPak IA 4.6mm×100mm、3μm)を使用して、次の条件(CO/ACN/TFA88:12:0.5、3mL/分、1500psi)下で、市販の純粋エナンチオマーと、(S)-(+)-イブプロフェン若しくは(S)-(+)-4-イソブチル-α-メチルフェニル酢酸、又は(S)-(+)-2-(4-イソブチルフェニル)プロピオン酸(CAS:51146-56-6、Sigma-Aldrich)と、(R)-(+)-イブプロフェン若しくは(R)-(+)-4-イソブチル-α-メチルフェニル酢酸又は(R)-(+)-2-(4-イソブチルフェニル)プロピオン酸(CAS:51146-57-7、Santa Cruz Bio Biotech)とを比較して決定した。
【0183】
4.2.結果
表8は、母液中のイブプロフェン及びまた本発明の(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有するMOFから抽出されたイブプロフェン中の各々のエナンチオマーの量についてまとめている。更に、表8はまた、各々の独立した実験の溶媒及び温度を明記している。
【表8】
【0184】
条件:活性化により(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有するMOFから調製した30mgの(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有する活性化MOF、0.14mmolイブプロフェン(28.9mg)、モル比は1/3(MOF/イブプロフェン)、3mL溶媒、一晩。
CHClは、(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有する活性化MOFによって吸着されたイブプロフェンを除去するための溶媒として使用した。
母液及び添加された(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有する活性化MOFの最初の洗浄液を含む。両アリコートは、別々に同一の分析をもたらす。
イブプロフェン溶液をpH11に調整して、(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有する活性化MOFに添加して、イブプロフェンが水に可溶となった。
(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有する活性化MOFのモル比MOF/イブプロフェンが3:1を超える。
RTは、室温の略称である。
【0185】
実施例5.エポキシドの不斉開環
【0186】
5.1.方法
分析前に、本発明の(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有するMOFを(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有するMOFから、活性化により調製した。特に、(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有するMOFを、シュレンク管で、150℃にて12時間真空中で活性化した。
【0187】
(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有する活性化MOF(0.05mmol)、酸化スチレン(0.5mmol)、及び表9~表11に定義されたアミン(0.5mmol)を溶媒中で、表9~表11に指定された温度にて一晩撹拌した。次いで、反応混合物を濾過し、反応生成物4及び5の構造をCDCl中でH NMRにより決定した。
【0188】
5.2.結果
セクションA.
表9は、化合物4及び5の形成の転化率及び位置選択性、並びに(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有する本発明の活性化MOFの存在下で、次の反応条件(エポキシド(0.5mmol)、式(3)のアミン(0.5mmol)、(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有する活性化MOF(10mol%)、2mL溶媒、一晩)下で、不斉開環反応が酸化スチレンと式(3)のアミンとの反応により行われる場合の化合物4及び5の各々のエナンチオマーの特定量についてまとめている。
【0189】
【化19】
【0190】
表9はまた、開環反応の溶媒及び温度を明記している。
【表9】
【0191】
転化率及び位置選択性は、H NMRによって決定し、参考文献に開示された化合物と比較した(C.E.Harrisらによる「Boranes in Synthesis.6.A New Synthesis of.beta.-Amino Alcohols from Epoxides.Use of Lithium Amides and Aminoborane Catalysts To Synthesize.beta.-Amino Alcohols from Terminal and Internal Epoxides in High Yield」、J.Org.Chem.、1994年、第59(25)巻、7746頁~7751頁)。
超高速クロマトグラフィ(UPPC)-(IAカラム)、CO/IPA勾配(0~40%のIPA)、3mL/分1500psiにより決定。
反応時間:3日
【0192】
セクションB.
表10は、化合物4及び5の形成の転化率及び位置選択性、並びに(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有する本発明の活性化MOFの存在下で、次の反応条件(エポキシド(0.5mmol)、式(3)のアミン(0.5mmol)、(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有する活性化MOF(20mol%)、2mL ACN、一晩)下で、不斉開環反応が酸化スチレンと式(3)のアミンとの反応によりアセトニトリル中で行われる場合の化合物4及び5の各々のエナンチオマーの特定量についてまとめている。
【0193】
表10はまた、開環反応の温度を明記している。
【表10】
【0194】
反応条件:エポキシド(0.5mmol)、式(3)のアミン(0.5mmol)、(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有する活性化MOF(20mol%)、2mL ACN、一晩。
反応条件:エポキシド(0.5mmol)、式(3)のアミン(0.5mmol)、(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有する活性化MOF(3mol%)、2mL ACN、一晩。
反応条件:エポキシド(0.75mmol)、式(3)のアミン(0.5mmol)、(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有する活性化MOF(10mol%)、2mL ACN、一晩。
c’反応条件:エポキシド(0.5mmol)、式(3)のアミン(0.75mmol)、(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有する活性化MOF(10mol%)、2mL ACN、一晩。
転化率及び位置選択性は、H NMRによって決定し、参考文献と比較した(C.E.Harrisらによる「Boranes in Synthesis.6.A New Synthesis of.beta.-Amino Alcohols from Epoxides.Use of Lithium Amides and Aminoborane Catalysts To Synthesize.beta.-Amino Alcohols from Terminal and Internal Epoxides in High Yield」、J.Org.Chem.、1994年、第59(25)巻、7746頁~7751頁)。
超高速クロマトグラフィ(UPPC)-(IAカラム)、CO/IPA勾配(0~40%のIPA)、3mL/分1500psiにより決定
【0195】
5.3.結論
表9~10に示されるように、本発明のMOFは、触媒として有用である。特に、(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有する本発明の活性化MOFは、エポキシドの不斉開環の触媒として有用である。
【0196】
実施例6.MOFのリサイクル
【0197】
6.1.方法
分析前に、本発明の(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有するMOFを(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有するMOFから、活性化により調製した。特に、(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有するMOFを、シュレンク管で、150℃にて12時間真空中で活性化した。
【0198】
(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有する活性化MOF、酸化スチレン、及びアミン(3)をアセトニトリル中で40℃にて一晩撹拌した。次いで、反応混合物を濾過し、ACNで洗浄して、微量の生成物、反応物、及び不純物を除去した。MOFを50℃にて30分間真空乾燥して、次のサイクルで再利用した。反応生成物4及び5の構造をCDCl中でH NMRにより明らかにした。
【0199】
6.2.結果
表11及び表12は、(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有するリサイクルされたMOFを酸化スチレンの不斉開環の触媒として使用する場合の式4及び式5の化合物の転化率及び位置選択性を示す。表11は、(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有する活性化MOFの再利用性に関し、表12は、(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有するMOFの再利用性に関する。
【0200】
【表11】
【0201】
反応条件:エポキシド(0.5mmol)、式(3)のアミン(0.5mmol)、(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有する活性化MOF(10mol%)、2mL ACN、一晩。
反応条件:エポキシド(0.25mmol)、式(3)のアミン(0.25mmol)、(SS)-(IA1)の繰り返し単位を有する活性化MOF(10mol%)、1mL ACN、一晩。
転化率及び位置選択性は、H NMRによって決定し、参考文献と比較した(C.E.Harrisらによる「Boranes in Synthesis.6.A New Synthesis of.beta.-Amino Alcohols from Epoxides.Use of Lithium Amides and Aminoborane Catalysts To Synthesize.beta.-Amino Alcohols from Terminal and Internal Epoxides in High Yield」、J.Org.Chem.、1994年、第59(25)巻、7746頁~7751頁)。
超高速クロマトグラフィ(UPPC)-(IAカラム)、CO/IPA勾配(0~40%のIPA)、3mL/分1500psiにより決定。
【0202】
【表12】
【0203】
反応条件:エポキシド(0.5mmol)、式(3)のアミン(0.5mmol)、(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有するMOF(10mol%)、2mL ACN、一晩。
反応条件:エポキシド(0.25mmol)、式(3)のアミン(0.25mmol)、(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有するMOF(10mol%)、1mL ACN、一晩。
転化率及び位置選択性は、H NMRによって決定し、参考文献と比較した(C.E.Harrisらによる「Boranes in Synthesis.6.A New Synthesis of.beta.-Amino Alcohols from Epoxides.Use of Lithium Amides and Aminoborane Catalysts To Synthesize.beta.-Amino Alcohols from Terminal and Internal Epoxides in High Yield」、J.Org.Chem.、1994年、第59(25)巻、7746頁~7751頁)。
超高速クロマトグラフィ(UPPC)-(IAカラム)、CO/IPA勾配(0~40%のIPA)、3mL/分1500psiにより決定
【0204】
6.3.結論
表11及び表12の結果に示されるように、本発明のMOF、特に、式(RR)-(IA)若しくは式(SS)-(IA)若しくは式(RS)-(IA)若しくは式(SR)-(IA)、又は式(RR)-(IB)若しくは式(SS)-(IB)若しくは式(RS)-(IB)若しくは式(SR)-(IB)の繰り返し単位を有するMOF、好ましくは、式(SS)-(IA1)及び式(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有するものは、位置選択性及びエナンチオ選択性の値に観察され得るように、触媒効率を損失することなく少なくとも5回連続した実験でリサイクルすることができる。触媒としての(SS)-(IB1’)の使用は、更なる触媒反応でのその再利用の前に触媒を(真空下での加熱により)再活性化する必要がないため特に有利である。
【0205】
実施例7.本発明のMOFを含む組成物
【0206】
7.1.「インク」:本発明のMOF及び少なくとも液体キャリアを含む組成物
【0207】
7.1.1.有機ポリマー液体キャリアとしてポリ(フッ化ビニリデン)を含むインク1
方法
Denny Jr M.S.らによるAngew.Chem.Int.Ed.2015年、第54(31)巻、9029頁に報告されている合成手順に従い、150mgの(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有するMOFを30分間の浴超音波処理により5mLのアセトン中に分散させた。次いで、1.0gのポリフッ化ビニリデン(PVDF)溶液(DMF中で7.5重量%)を、最終MOF:PVDF比率が2:1(w/w)となるように、以前のMOF懸濁液に添加した。
【0208】
組み合わされたMOF/PVDF懸濁液を30分超音波処理した。その後、アセトンを回転蒸発によって除去し、本発明の(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有するMOF及びDMF中のPVDFを含む「インク」を得た。
【0209】
7.1.2.有機ポリマー液体キャリアとしてポリ(フッ化ビニリデン)を含むインク2
方法
【0210】
6mLのDMF中に1.46gの(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有するMOFの懸濁液をBandelin Sonopuls装置にてマイクロチップMS73(50%エネルギ)を使用して10分間超音波処理し、次いで、785mgのPVDFペレットを懸濁液に添加し、得られた混合物を、この場合は70℃にて1時間40分間撹拌して、最終濃度がDMF1mL当たり0.15gのPVDF及びMOFの65重量%の組成物を有するインク(インク2)を得た。
【0211】
7.2.「メンブレン」:本発明のMOF及び少なくとも固体キャリアを含む組成物
【0212】
7.2.1.有機ポリマー液体キャリアとしてポリ(フッ化ビニリデン)を含むメンブレン1
セクション7.1.1で得られたインク1をガラス基板上にパスツールピペットを使って手でキャストした。次いで、フィルムを等温オーブン中で70℃にて1時間加熱し、溶媒を除去した。フィルムの層間剥離は手で容易に行われた。
【0213】
式(SS)-(IB1’)の繰り返し単位を有する本発明のMOF及びキャリアとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含むメンブレン1の粉末X線回折パターンが、図13に示される。
【0214】
7.2.2.有機ポリマー液体キャリアとしてポリ(フッ化ビニリデン)を含むメンブレン2
セクション7.1.2で得られたインク2を平ガラス板上に125mmの長さにわたり、2mmのブレード高さ(フィルム厚さ)及び毎秒3cmの速度を使用して、Dr.Bladeでキャストした。得られた混合マトリックスメンブレン(mixed matrix membrane:MMM)を、室温で45分間、次いで、65℃にて4時間乾燥した。次いで、MMMは水を用いて層間剥離した。
【0215】
7.3.メンブレンの気体分離活性
【0216】
7.3.1 メンブレン1の気体分離活性
セクション3.1で定義された方法に従い、メンブレン1の気体分離能力を分析した。
【0217】
二酸化炭素及びメタンの等モル混合物を大気圧で30℃にてメンブレン1の床を通過させた。流出気体を質量分析法で時間の関数として分析した。二酸化炭素及びメタンの保持時間を分析した(図14参照)。
【0218】
CO及びメタンの強度及び保持時間の値は、本発明のMOFを有するメンブレンの形態の組成物が室温であってもCOを選択的に分離することができることを示す。
【0219】
7.3.2.メンブレン2の気体分離活性
セクション3.1で定義された方法に従い、メンブレン2の気体分離能力を分析した。二酸化炭素及びメタンの等モル混合物を大気圧で30℃にてメンブレン2の床を通過させた。流出気体を質量分析法で時間の関数として分析した。二酸化炭素及びメタンについての各気体の濃度を時間の関数として分析した(図15参照)。
【0220】
メンブレン2は、二酸化炭素を含む気相での物質の分離、特に、メタン及び二酸化炭素の分離に使用するように好適である。実際、図15は、二酸化炭素がメンブレン2の床を通過するのに必要な時間が、メタンがそれを通過するのに必要な時間よりも長いことを示す。
【0221】
本願で開示された先行技術文献
1.S.Brunauerらによる「Adsorption of Gases in Multimolecular Layers」、J.Am.Chem.Soc.1938年、第60巻、309頁~319頁。
2.B.C.Lippensらによる「Studies on pore systems in catalysts:V.The t method」、J.Catal.1965年、第4巻、319頁~323頁。
3.G.M.Sheldrickによる「A short history of SHELX」、Acta Cryst.2008年、第A64巻、112頁~122頁。
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5.R.K.Bartlettらによる「Transaminations of NN-dimethylformamide azine」、J.Chem.Soc.(C)、1967年、1664頁~1666頁。
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8.A.Mukherjeeらによる「Gold-Catalyzed 1,2-Difunctionalizations of Aminoalkynes Using Only N- and O-Containing Oxidants」、J.Am.Chem.Soc、2011年、第33(39)巻、15372頁~15375頁。
9.M.S.Denny Jrらによる「In Situ Modification of Metal-Organic Frameworks in Mixed-Matrix Membranes」Angew.Chem.Int.Ed.、2015年、第54(31)巻、9029頁~9032頁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15