(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】流量を測定するフロー・センサー及び方法
(51)【国際特許分類】
G01F 1/688 20060101AFI20220203BHJP
A61B 5/026 20060101ALI20220203BHJP
A61B 5/0215 20060101ALI20220203BHJP
G01F 1/00 20220101ALI20220203BHJP
【FI】
G01F1/688
A61B5/026 110
A61B5/0215 C
G01F1/00 Q
(21)【出願番号】P 2019527829
(86)(22)【出願日】2017-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2017080643
(87)【国際公開番号】W WO2018096168
(87)【国際公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-11-26
(32)【優先日】2016-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリクス,コルネリス ペトリュス
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン エンデ,ダーン アントン
(72)【発明者】
【氏名】ヒルゲルス,アヒム
(72)【発明者】
【氏名】ホーフェンカンプ,ロナルト アントニー
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,マーク トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル ホルスト,アルイェン
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/135293(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/68-1/699
G01P 5/10-5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロー・センサーであって:
電気活性材料デバイス配列;
流れる媒体へ局所的に熱を運ぶように前記電気活性材料デバイス配列を制御するドライバであって、前記媒体の流れがセンシングされる、ドライバ;及び
前記電気活性材料デバイスにおける温度に関連するセンシング信号を、前記電気活性材料デバイス配列から読み取り、前記センシング信号を利用してフロー測定値を導出するように構成されるコントローラ;
を含み、前記コントローラは:
第1周波数及び前記第1周波数とは異なる第2周波数における前記電気活性材料デバイスのインピーダンス又はインピーダンス位相角を含む電気特性の測定を実行するためにセンサーの読み取り値を提供することにより前記センシング信号を読み取り、及び
前記電気活性材料デバイスにおける温度を前記測定から導出する
ように更に構成される、フロー・センサー。
【請求項2】
前記ドライバは、前記電気活性材料デバイスの共振周波数を上回る周波数で駆動信号を提供するように構成される、請求項1に記載のフロー・センサー。
【請求項3】
前記電気活性材料は、例えばPVDFター・ポリマーのような強誘電体リラクサー・ポリマーを含む、請求項1又は2に記載のフロー・センサー。
【請求項4】
前記ドライバは所定の時間期間中に熱を運ぶように構成され、前記コントローラは以後の温度減衰関数を監視するために前記センシング信号を読み取り、それにより前記センシング信号の時間経過の進展をフロー測定に変換するように構成される、請求項1-3のうち何れか一項に記載のフロー・センサー。
【請求項5】
前記コントローラは、前記温度が基準温度に達するまで時間期間を測定し、それにより前記センシング信号の時間経過の進展をフロー測定に変換するように構成される、請求項4に記載のフロー・センサー。
【請求項6】
前記ドライバは、フロー・センシング時間期間中に連続的に熱を運ぶように構成され、前記コントローラは定常状態の温度を監視するために前記センシング信号を読み取るように構成される、請求項1-3のうちの何れか一項に記載のフロー・センサー。
【請求項7】
前記ドライバは、フロー・センシング時間期間中に熱を運ぶように構成され、前記コントローラは、所定の定常状態の温度に達するように熱搬送速度を制御するように構成される、請求項1-3のうちの何れか一項に記載のフロー・センサー。
【請求項8】
前記コントローラは、熱搬送パルスのデューティ・サイクル又は周波数を制御するように構成される、請求項7に記載のフロー・センサー。
【請求項9】
前記電気活性材料デバイス配列は、ヒーターとして機能する第1電気活性材料デバイスと、センサーとして機能する第2及び第3電気活性材料デバイスとを含む、請求項1-8のうち何れか一項に記載のフロー・センサー。
【請求項10】
前記電気活性材料デバイス配列は:
圧力センサー、及び/又は
アクチュエーター
として更に機能する、請求項1-9のうち何れか一項に記載のフロー・センサー。
【請求項11】
前記コントローラは、前記電気活性材料デバイス配列に適用される外圧又は力を導出するように構成される、請求項1-10のうち何れか一項に記載のフロー・センサー。
【請求項12】
前記第1周波数は、前記電気特性が最大値又は最小値を有する、反共振周波数等の共振周波数であり、及び前記第2周波数は、前記電気特性が負荷に関して一定である周波数である、請求項1-11のうち何れか一項に記載のフロー・センサー。
【請求項13】
請求項1-12のうちの何れか一項に記載のフロー・センサーを含むカテーテル又はガイドワイヤ。
【請求項14】
流量を測定する方法であって:
流量が測定される流れる媒体へ局所的に熱を運ぶように電気活性材料デバイス配列を制御するステップ;
前記電気活性材料デバイスにおける温度に関連するセンシング信号を、前記電気活性材料デバイス配列から読み取るステップ;及び
前記センシング信号を利用してフロー測定値を導出するステップ;
を含み、センシング信号を読み取るステップは:
第1周波数及び前記第1周波数とは異なる第2周波数における前記電気活性材料デバイスのインピーダンス又はインピーダンス位相角を含む電気特性の測定を実行するためにセンサーの読み取り値を提供するステップ、及び
前記電気活性材料デバイスにおける温度を前記測定から導出するステップ
を含む、方法。
【請求項15】
熱を運ぶために前記電気活性材料デバイスの共振周波数を上回る周波数で駆動信号を提供するステップを含む請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフロー・センサーに関連し、特に血流を測定するためのフロー・センサーに関連する。
【背景技術】
【0002】
血流測定は多くの異なる診断上の理由から興味深い。
【0003】
一例は動脈疾患の一種である狭窄の診断に関するものであり、その場合、血管の局所的な狭窄に起因して、例えば血管壁に形成されたプラークに起因して、血流が制限される。
【0004】
狭窄の評価と治療は、局所的な血流又は局所的な血圧を測定するガイドワイヤ・センサー(CMUT、圧電結晶、抵抗器)でサポートできる。しかし、狭窄の複雑な血行動態は、圧力又は血流のみでは十分に説明されない。そのため、複数のセンサーを有するワイヤが開発されているが、これは複雑な装置を招いてしまう。
【0005】
さらに、フロー・センサーは複雑なデバイスであり、よりシンプルなセンシング・アプローチは関心を集めるであろう。
【0006】
センシング機能に加えて、ガイドワイヤは、好ましくは、小さな曲がりくねった血管において良好な操作性を有する。操作性を実現するために、チップ・ステアリング用の機械的アクチュエーターを組み込むことが利用され得るが、他方、それは装置の複雑さを増加させる。
【0007】
WO2006/135293は、加熱とフローによって引き起こされるその後の冷却の分析とに基づく移植可能なフロー・センサーを開示している。US4726225は、温度低下に基づいて流量を測定する流量計を開示している。
【0008】
従って、フローを測定することができる、好ましくは、圧力センシング及び/又はアクチュエーション(又は作動)に加えてフロー・センシングのためのシンプルな多機能コンポーネントの一部を形成することもできるシンプルなセンサー設計を手に入れることが望ましい。
【発明の概要】
【0009】
本発明の態様による実施例によれば、フロー・センサーが提供され、フロー・センサーは:
電気活性材料デバイス配列;
フローがセンシングされるべき流れる媒体へ局所的に熱を運ぶように電気活性材料デバイス配列を制御するドライバ;及び
電気活性材料デバイスにおける温度に関連するセンシング信号を、電気活性材料デバイス配列から読み取り;及びセンシング信号を利用してフロー測定を導出するように構成されるコントローラ;
を含み、コントローラは、少なくとも第1周波数及び第1周波数とは異なる第2周波数における電気活性材料デバイスのインピーダンス又はインピーダンス位相角を含む電気特性の測定を実行するためにセンサーの読み取り値を提供することにより、センシング信号を読み取ルように構成され、コントローラは電気活性材料センサーにおける温度を測定から導出するように構成される。
【0010】
この構成は、媒体に熱を運び、次いで、(熱を取り去る)フロー条件が決定され得るように結果的に生じる温度を監視又は制御するために、電気活性材料デバイス配列を使用する(ここで、「配列」は、1つ以上の個々の電気活性材料デバイスを有してもよい)。冷却速度が監視されてもよいし、特定の温度を維持するために必要な電気的な加熱が監視されてもよい。
【0011】
デバイスは作動中でさえ圧力(又は力)及び温度を測定することが可能であってもよい。これは、駆動信号と測定信号との重ね合わせを利用することによって達成されることが可能である。2つの異なる周波数で交互に測定される小振幅で高周波の電気信号を使用することは、温度及び圧力の影響が分離されることを可能にする。このようにして、温度は任意の圧力で測定されることが可能である。更に、必要に応じて圧力レベルもまた取得されてよい。
【0012】
ドライバは、電気活性材料デバイスの共振周波数よりも高い周波数で駆動信号を提供するように構成されてもよい。これは、駆動信号が故意に(deliberately)局所的な加熱をもたらすことを意味し、従って、電気活性材料の作動のために最も効率的な信号ではない。
【0013】
1つの構成において、ドライバは、所定の時間期間中に熱を運ぶように構成され、コントローラは、その後の温度減衰関数を監視するようにセンシング信号を読み取り、それによって、センシング信号の経時変化を流量測定値に変換するように構成される。
【0014】
センシングされる領域から熱が取り出される仕方が監視される。
【0015】
コントローラは、例えば、温度が基準温度に達するまで時間周期を測定し、それによって、時間の経過と共にセンシング信号の進展をフロー測定値に変換するように構成されてもよい。
【0016】
別の構成において、ドライバは、フロー・センシング時間期間中に連続的に熱を運ぶように構成され、コントローラは、定常状態温度を監視するためにセンシング信号を読み取るように構成される。このように定常状態の温度が既知の熱供給に応じて監視される。
【0017】
さらに別の構成において、ドライバは、フロー・センシング時間期間中に熱を運ぶように構成され、コントローラは、所定の定常状態温度を達成するために熱供給速度を制御するように構成される。このように熱供給量は既知の温度を達成するために監視される。この目的のために、コントローラは、熱供給パルスのデューティ・サイクル又は周波数を制御してもよい。
【0018】
上記のすべての実施例において、電気活性材料デバイス配列は、ヒーター及び温度センサー両方として機能する単一の電気活性材料デバイスを含んでもよい。
【0019】
その代わりに、電気活性材料デバイス配列は、ヒーターとして機能する第1電気活性材料デバイスと、センサーとして機能する第2及び第3の電気活性材料デバイスとの配列を含んでもよい。それらは、ヒーターの両側にあってもよく、それにより、ヒーターの各側における熱勾配が監視されることが可能である。
【0020】
電気活性材料デバイス配列は、圧力センサー及び/又はアクチュエーターとしてさらに機能し得る。従って、フロー測定のため、作動(例えば、プローブの操縦)のため及び/又は圧力センシングのために、同じデバイスが使用されてもよい。例えば圧力センシングは、例えば皮膚に対する負荷圧力センシングに使用されてもよい。
【0021】
圧力センサーは、外力又は圧力を測定するために使用されてよい(EAPの外側表面にある外的な手段)。外力又は圧力は、身体上の皮膚接触から、体内血管壁接触から、又は動脈内の体内血圧から生じ得る。
【0022】
製品開発の一環として、血圧と特定のEAPアクチュエーター構成の応答との間の定量的な関係が較正されるであろう。
【0023】
本発明は2つの周波数における測定値を利用する。
【0024】
第1周波数は、例えば、インピーダンス又はインピーダンス位相角が反共振周波数等のように最大値又は最小値をもたらす共振周波数である。この周波数における測定は、外力又は圧力を決定するために使用されてもよい。
【0025】
(非減衰)反共振周波数に一致する周波数で信号が印加される場合、印加された負荷によって誘起される突然の不整合は、例えばセンサーにより測定されるインピーダンスの結果的な低下として検出される。
【0026】
あるいは、(非減衰)共振周波数に一致する駆動信号を使用することも可能である。この場合、不整合は、センサーにわたって測定されるインピーダンスの結果的なジャンプとして検出され得る。いずれの場合も、こうして高周波信号は作動と同時にデバイスに加わる外部圧力又は力のセンシングを可能にする。
【0027】
第2周波数は、電気的特性が負荷に対して一定である周波数であってもよい。その代わりに、これは温度による変動を有し、したがって温度測定に使用されることが可能である。
【0028】
制御システムは、第1及び第2周波数の測定信号が重ね合わされる駆動信号を印加するように構成されてもよく、駆動信号は、第1及び第2周波数より低い周波数を有するAC駆動信号又はDC駆動レベルを有する。
【0029】
高振幅の一次アクチュエーション信号の上に低振幅の高周波センシング信号を重ね合わせることによって、センシング及びアクチュエーションの機能は同時に達成され得る。
【0030】
2つの異なる周波数の測定信号は順に印加されてもよい。あるいは、オフ共振周波数のサイズは自由に選択され得るので、異なる周波数測定が重ね合わせられてもよい。
【0031】
本発明は一般に電気活性材料とともに働く。しかしながら、特に有用な材料は、有機電気活性材料及び/又はポリマー電気活性材料である。これらは、電気活性特性、及び適切な温度依存性を有し、また、身体の内腔(例えば、カテーテル)におけるようなデバイスに統合されるためにそれらの処理を容易にする。電気活性材料(ポリマー)は、リラクサー強誘電体を含んでもよい。そのようなポリマー材料の非限定的な例として、ター・ポリマー(すなわち、PVDF-TrFE-CFE又はPVDF-TrFE-CTFE)リラクサー強誘電体が使用されてもよい。それらは、印加電界がないときは非強誘電性であり、駆動信号が印加されないときは電気機械結合がないことを意味する。例えば、DCバイアス信号が印加されると、電磁結合は非ゼロになる。リラクサー強誘電体は、他の既知のEAP材料と比較して、より大きな作動変形の大きさ、及びより大きなセンシング感度を提供する。
【0032】
しかしながら、デバイスは、リラクサー強誘電体の使用に限定されず、例えば圧電EAP材料(例えば、単なる一例として、PVDF又はPVDF-TrFE)もまた、実施形態で使用されてもよい。
【0033】
センサーは、カテーテル又はガイドワイヤの一部を形成してもよい。
【0034】
本発明の第2態様による実施例は、流量を測定する方法を提供し、本方法は:
流量がセンシングされるべき流れる媒体へ局所的に熱を運ぶように電気活性材料デバイス配列を制御するステップ;
電気活性材料デバイスにおける温度に関連するセンシング信号を、電気活性材料デバイス配列から読み取るステップ;及び
センシング信号を利用してフロー測定値を導出するステップ;
を含み、センシング信号を読み取るステップは:
少なくとも第1周波数及び第1周波数とは異なる第2周波数における電気活性材料デバイスのインピーダンス又はインピーダンス位相角を含む電気特性の測定を実行するためにセンサーの読み取り値を提供するステップ、及び
電気活性材料デバイスにおける温度を測定値から導出するステップを含む。
【0035】
本方法は、電気活性材料デバイスの共振周波数よりも高い周波数で駆動信号を提供するステップを含んでもよい。
【0036】
1つのアプローチにおいて、方法は、所定の時間期間中に熱を運び、その後の温度減衰関数を監視するためにセンシング信号を読み取り、それによって、時間経過に伴うセンシング信号の進展をフロー測定に変換することを含む。時間期間は、例えば、温度が基準温度に達するまで測定され、それによって、時間の経過に伴うセンシング信号の進展をフロー測定に変換してもよい。
【0037】
別のアプローチにおいて、方法は、フロー・センシング時間期間中に連続的に熱を運ぶステップ、及び定常状態温度を監視するためにセンシング信号を読み取るステップを含む。
【0038】
別のアプローチにおいて、方法は、フロー・センシング時間期間中に熱を運ぶステップ、及び所定の定常状態温度を達成するように熱伝達速度を制御するステップを含む。
【0039】
方法は追加的に圧力センシング及び/又は作動を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
本発明の具体例は添付図面を参照しながら詳細に説明される。
【
図1】
図1はクランプされていない既知の電気活性ポリマー・デバイスを示す。
【
図2】
図2は背面層により拘束される既知の電気活性ポリマー・デバイスを示す。
【
図4】
図4は温度関数に依存して流量を測定する第1方法を示す。
【
図5】
図5は温度関数に基づいて流量を測定する第2方法を示す。
【
図6】
図6は温度関数に基づいて流量を測定する第3方法を示す。
【
図7】
図7は温度関数に基づいて流量を測定する第4方法を示す。
【
図8】
図8はカテーテルの先端に取り付けられたフロー・センサー・デバイスを示す。
【
図9】
図9は温度測定方法を説明するための電気活性ポリマー・デバイスの第1具体例を示す。
【
図11】
図11はセンサーのみの機能がどのように使用され得るかを示すグラフである。
【
図15】
図15はレジスタンス及びキャパシタンスの周波数による変化を示す。
【
図16】
図16は2つの異なる作動電圧に対する周波数の変化を示す。
【
図17】
図17は
図10のプロット間の差が共鳴周波数を識別するためにどのように使用され得るかを示す。
【
図18】
図18は共振時の異なる温度に対する負荷のインピーダンス依存性を示す。
【
図19】
図19は非共振時の異なる温度に対する負荷のインピーダンス依存性を示している。
【
図21】
図21は負荷センシングを改善するために温度補償がどのように使用され得るかを示す。
【
図22】
図22は位相測定がどのように使用され得るかを説明するために使用される。
【
図23】
図23は所定の組成を有する例示的材料の温度に対する感度を示す。
【
図25】
図25は加熱機能の実現可能性を実証するための第1測定結果を示す。
【
図26】
図26は加熱機能の実現可能性を実証するための第2測定結果を示す。
【
図27】
図27は加熱機能の実現可能性を実証するための第3測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は電気活性材料デバイスを含むフロー・センサーを提供する。ドライバは、流れる媒体に局所的に熱を運ぶように電気活性材料デバイスを制御し、その媒体についてフローが感知される。温度センシング信号が得られ、これらは流れの尺度を導出するために使用される。熱の散逸の仕方は流れに関連し、温度センシング信号に基づいて測定可能である。
【0042】
温度センシングは電気特性を測定することを含み、電気特性は、少なくとも第1の周波数及び第1の周波数とは異なる第2の周波数における電気活性材料デバイスのインピーダンス又はインピーダンス位相角を含む。こうして、温度と圧力の影響は、温度が任意の圧力で測定され得るように分離されることが可能である。
【0043】
本発明は電気的に活性な材料(an electroactive material:EAM)を使用するアクチュエーターを利用する。これは、電気的に応答する材料の分野のうちの或るクラスの材料である。作動デバイスに実装される場合、EAMを電気駆動信号にさらすと、それらをサイズ及び/又は形状に関して変化させることができる。この効果は、アクチュエーション及びセンシングの目的に使用されることが可能である。
【0044】
無機及び有機EAMsが存在する。
【0045】
特定の種類の有機EAMsは、電気活性ポリマー(EAPs)である。電気活性ポリマー(EAP)は、新たなクラスの電気応答材料である。EAMs等のEAPは、センサーやアクチュエーターとして機能し得るが、より容易に様々な形状に製造されることが可能であり、多種多様なシステムへの統合を許容する。EAPの他の利点は、低電力、小さな形状因子、柔軟性、ノイズレス動作、及び精度を含み、高解像度、高速応答時間、及び周期的作動の可能性を含む。EAPデバイスは、電気的作動に基づいて、コンポーネント又はフィーチャの僅かな移動が望まれる任意の用途に使用されることが可能である。同様に、本技術は小さな動きをセンシングするために使用できる。EAPsの使用は、以前には不可能であった機能を可能にし、又は一般的なアクチュエーターと比較して、小さな容積又は薄い形状因子における比較的大きな変形及び力の組み合わせにより、一般的なセンサー/アクチュエーター・ソリューションを上回る多大な恩恵を提供する。EAPはまた、ノイズレス動作、正確な電子制御、高速応答、及び0-20kHz等の広範囲の可能な動作周波数をもたらす。
【0046】
EAMデバイスがどのように構築され、どのように動作することが可能であるかについての例として、
図1及び
図2は、電気活性ポリマー層14の両側の電極10、12の間に挟まれた電気活性ポリマー層14を含むEAPデバイスに関する2つの可能な動作モードを示す。
【0047】
図1はキャリア層にクランプされないデバイスを示す。電圧は、図示のように、電気活性ポリマー層を全方向に拡張させるために使用される。
【0048】
図2は、拡張が一方向のみで生じるように設計されたデバイスを示す。この目的のために、
図1の構造は、キャリア層16にクランプ又は取り付けられる。電圧は、電気活性ポリマー層を湾曲又は屈曲させるために使用される。この動きの性質は、作動時に膨張する活性層と、そのように作動しない受動キャリア層との間の相互作用から生じる。
【0049】
本発明は、フロー・センシングを行うだけでなく、他の機能も実行するセンサーにおいて使用することに特に関心がある。
【0050】
特に、上述したような電気活性ポリマー構造は、アクチュエーション及びセンシングの両方に使用され得る。最も有名なセンシング機構は、力測定及び歪み検出に基づく。例えば、誘電性エラストマーは、外力によって容易に伸縮し得る。センサーに低電圧を印加することにより、歪みは、電圧の関数として測定されることが可能である(電圧は面積の関数である)。
【0051】
電界駆動システムによるセンシングの別の方法は、キャパシタンス変化を直接的に測定するか、又は電極抵抗の変化を歪みの関数として測定することである。
【0052】
圧電性及び電歪性ポリマー・センサーは、印加された機械的応力に応答して電荷を発生させることができる(結晶化度の値が、検出可能な電荷を発生させる程度に十分に大きいことを仮定している)。共役高分子は、圧電イオン効果(機械的応力がイオンの働きを招く)を利用することができる。CNTsは応力にさらされるとCNT表面に電荷の変化を経験し、その変化は測定可能である。また、気体分子(例えば、O2、NO2)と接触するとCNTの抵抗が変化し、CNTをガス検出体として使用可能にすることも分かっている。
【0053】
EAPデバイスのセンシング及びアクチュエーションの能力を組み合わせて、例えば圧力センシング及びアクチュエーションの機能を典型的には別々の時間に提供することが提案されている。一例はUS2014/0139239で説明されている。
【0054】
一時的な同時センシング及びアクチュエーションは、別々のセットの電気的接続とともに、別々の専用センシング及びアクチュエーション領域を組み込むために、デバイスの寸法を増加させることによって可能である。しかしながら、これは、小さな形状因子が必須である用途においては不利である。
【0055】
その代わりに、異なるタイプのセンシング及びアクチュエーション信号を提供することによって、センシング及びアクチュエーションのために、単独のデバイスが使用されてもよい。以下、このアプローチを更に説明する。
【0056】
図3は電気活性材料デバイス配列30を含むフロー・センサーを示す。図示の例では、電極34の間に挟まれる単一の電気活性材料層32が存在する。流体とフロー・センサーの残りの部分との間に熱伝達層35が設けられてもよい。
【0057】
ドライバ36は、流れる媒体38に局所的に熱を供給するように、電気活性材料デバイス配列30を制御し、その媒体について流れがセンシングされる。
【0058】
信号はまたコントローラ40によって電極34からセンシングされ、コントローラ40は、電気活性材料素子配列30からセンシング信号を読み取る。センシング信号は、電気活性材料デバイスにおける温度に関連する。温度が電気活性材料デバイス配列30によって測定され得る方法が、以下でさらに説明される。
【0059】
信号処理ユニット42(コントローラ40の一部と考えられてもよい)は、フロー測定値を導出するためにセンシング信号を処理する。温度に依存する配列30の電気状態の変化は、流量(又は流速)に対して較正される。そして、センサーは、流量はセンサーから離れる熱の輸送に影響するという原理に基づいている。
【0060】
電気活性材料層32による最適な熱発生は、比較的「損失のある(lossy)」電気活性ポリマー、例えばPVDFター・ポリマー(a PVDF ter-polymer)を利用し、電気入力エネルギーの大部分が熱に変換されるように、それをその共振周波数以上で駆動することによって達成される。EAPの共鳴は、幾何形状及びフィクスチャ設計を含む機械的及び電気的設計により最適化されることが可能である。
【0061】
センサーから媒体への最適な熱流は、2つの異なる方法で実施することができる。第1に、媒体の冷却力が非常に高い場合、例えば、EAPが、測定可能な温度を達成するのに十分な熱を保持できるように、断熱層を適用することによって、電気活性材料層から媒体への熱伝導係数を低下させ、異なる冷却速度を区別するために冷却速度を遅らせることが有益であろう。第2に、媒体の冷却能力が非常に低い場合、測定感度と精度を最適化するために逆の方法を採用することが有益であろう。従って、熱伝達層35の設計は、媒体の性質及び予想される流量を考慮する。
【0062】
熱伝達層35はまた、流体中でのオペレーションを可能にする封(a seal)として機能し得る。
【0063】
加熱を制御し、温度を測定して流量を導出するための様々な方法がある。
【0064】
第1アプローチは、有限の電力入力の後に冷却速度を決定することに基づいている。これは、例えば、静的に又はゆっくりと変化する流量に適したオープン・ループ・システムとして動作する。
【0065】
図4は、この制御アプローチに対するインピーダンスR-対-時間のプロットを示す。
【0066】
測定を開始する前に、例えば1つ又は複数のリセット・パルスを印加することによって、電気活性材料層は電気基準状態に持ち込まれてもよい。
【0067】
リファレンス測定は、ベースライン温度に対応する電気活性材料層の電気状態R0を定量化するために行われる。
【0068】
短い時間間隔(例えば、10秒)の間、アクチュエーターは、熱を生成するために、その共振周波数以上で駆動される。これは加熱サイクル44を生み出し、その間に電力PEAPが伝達される。この時間間隔は、システム又はその環境を過剰に加熱しないように予め定められている。例えば、血管中のセンシング動作に関し、45度の最大温度が相応しい。代替例として、電気活性材料層は、フィードバック制御を用いて高々所定の温度まで加熱されることが可能である。
【0069】
この時間間隔44直後の冷却サイクル46中の温度減衰が、温度の関数である電気パラメータを介して監視される。
【0070】
元の温度に対応する基準状態R0に再び到達するのに要する時間は、媒体の流量と相関関係を有する熱伝達率と相関関係を有する。この時間は冷却サイクル46の期間である。
【0071】
次いで、較正された式又はルック・アップ・テーブルが、冷却時間を流量に変換するために使用され得る。
【0072】
第2アプローチは、一定の電力入力の間の定常状態温度を決定することに基づいている。再び、これは静的に又はゆっくりと変化する流量に適したオープン・ループ・システムである。
【0073】
図5はこの制御アプローチに対するインピーダンスR-対-時間のプロットを示す。
【0074】
測定を開始する前に、再び、例えば1つ以上のリセット・パルスを印加することによって、電気活性材料層は電気基準状態に持ち込まれてもよい。
【0075】
リファレンス測定は、ベースライン温度に対応する電気活性材料層の電気状態R0を定量化するために行われる。
【0076】
次いで、一定の電力入力PEAPが印加される。対応する定常状態電気パラメータRSSを有する定常状態温度は、流量に依存する。次いで、較正された式又はルック・アップ・テーブルが、定常状態電気パラメータを流量に変換するために使用され得る。
【0077】
第3アプローチは、一定の温度を維持するために必要な電力入力を決定することに基づいている。これは、変動する流量に特に適したクローズド・ループ制御システムである。
【0078】
図6は、この制御アプローチに対するインピーダンスR-対-時間のプロットを示す。
【0079】
上記の実施例と同様に、測定を開始する前に、例えば、1つ以上のリセット・パルスを印加することによって、電気活性材料層が電気基準状態に持ち込まれてもよい。
【0080】
リファレンス測定は、ベースライン温度に対応する電気活性材料層の電気状態R0を定量化するために行われる。
【0081】
電気加熱電力PEAPは一定ではないが、電気パラメータの一定値RSETを維持するように、クローズド・ループ・フィードバック・アプローチを用いて変化させられている。これは、クローズド・ループ・システムの応答時間が十分に速い場合における変動する流量に適している。
【0082】
図6の例では、電力は一連の定電圧パルスとして提供され、その周波数fは、パラメータRを一定に保つために変化させられる。
【0083】
図7は、電力P
EAPがパラメータRを一定に保つために連続的に適応される代替アプローチを示す。
【0084】
上記の例は1つのセンサーを有する。別の方法は、3つのセンサーが使用される(ゆっくりと変化する流量のための)熱量測定フロー・センサーを提供することである。1つのデバイスは一定の電力で加熱し、温度を測定するためにセンサーが何れの側にも存在する。中央加熱デバイスは、そうではなく正弦波又はブロック波の加熱プロファイルを印加してもよい。ヒーターの温度とセンサー素子との間の位相遅延が、局所的な流量によって決定するために導出される。
【0085】
上記の例は、電気活性材料デバイスを用いて、どのように流量センシングが可能であるかを示している。デバイスは、電気活性材料アクチュエーター又はセンサーの典型的な圧力センシング又は作動機能などの他の機能をなお実行してよい。
【0086】
機能の完全な組み合わせは、流量測定、圧力センシング及びアクチュエーションを提供する。
【0087】
図8は、カテーテル82の先端に形成された、キャビティ84上に懸架された電気活性材料デバイス80を示す。このデバイスは、同様に、カテーテル・ガイドワイヤ又はステント・デリバリー・ガイドワイヤ等のガイドワイヤに沿って、又はガイドワイヤの先端に設けられてもよい。中央の図に示されるように流量及び圧力を測定するために、デバイスは、ドライバ36によって駆動され、熱を送出し、次いで、以下に説明するように複数の周波数で動作し、抵抗又はインピーダンスがコントローラ40によって測定される。下の図に示されるような作用のために、DC(又は低周波数)信号がドライバ36によって印加される。
【0088】
フロー圧力センシングのために、デバイス80に誘発されるたるみ(sag)は、圧力に依存する。デバイスの作動は、例えば、ステアリング、走査、又は動き補償のような曲げを誘導するために行われてもよい。次いで、圧力センシングは血圧センシングを含んでもよい。
【0089】
アクチュエーターは、同時センシング(温度及び選択的に圧力)及びアクチュエーションのために、DC信号に重畳されたAC信号で駆動されてもよい。このデバイスは、血管内デバイス及びアプリケーションに使用されてもよい。
【0090】
流れは血管のような管を横切って変化することがよく知られており、流れは、管の壁で最も低く、中央で最も高い。このため、血流の代表的な尺度を得るためには、管の中のフロー・センサーの位置を知ることが非常に有益である。管を横切るセンサーの位置を横方向に変えることを含む、測定値を改善する幾つかのアプローチが採用され得る。
【0091】
図8の構成におけるような作用を利用することは、DC電圧信号を電気活性材料デバイスに印加することによって横方向の動きを制御することを可能にする。次いで、流量測定が管を横切るいくつかの位置で反復され、記録された最高の冷却速度が、管内の血流速度として解釈される。センサーは、測定の間に、管を横切って(例えば、約1Hzの周波数で)連続的に走査されてもよい。このように、管を横切って平均化された流速が得られ、これは管を代表する。特に、管に沿った流量の変化のみが必要とされる場合(絶対速度の代わりに)、連続走査アプローチを適用することが特に有利であり得る。
【0092】
ここで、センシング信号が温度測定を提供し得る方法を説明する。
【0093】
感知されるパラメータは、電気活性材料センサーのインピーダンスであり、特に、インピーダンスは、少なくとも第1及び第2の異なる周波数で測定されてもよい。これらの測定から、センサーにおける温度、ならびに(所望により)センサーに印加される外部圧力又は力が決定され得る。したがって、センサーは、圧力センサー及び温度センサーとして使用されることが可能である。
【0094】
図9はアクチュエーター及び温度センサー・デバイスのための簡易な第1構成の概略図を示す。
【0095】
電気活性材料アクチュエーターは、再び下側キャリア層90に配置される電気活性材料層32を含み、信号処理要素42を介して第1(DC)駆動信号入力92及び第2(AC)駆動信号入力94に電気的に接続される。第1の駆動信号入力92は、(相対的な)ハイ・パワー作動駆動信号の印加のためのものである。第2信号入力34は、(相対的な)ロー・パワー交流センシング信号、特に、以下で説明するように、2つの異なる周波数での印加のためのものである。
【0096】
信号処理要素42は、第1及び第2駆動信号を重ね合わせて、結合された第3駆動信号を形成し、次いで、この信号は、デバイスにわたって印加される。
【0097】
信号処理要素は、例えば、信号分析機能、信号カップリング及びデカップリング機能、及び/又は信号生成機能を実行するための多数のコンポーネントを含んでもよい。後者の場合、第1駆動信号入力92及び第2駆動信号入力94は、処理ユニット42自体内に含まれてもよく、処理ユニットは、AC信号及び/又はDC信号を生成するための要素と、場合によっては、一方又は双方の信号の電気パラメータを分析するための要素とを含む。
【0098】
図9の構成の電気接続は、電気活性材料層の上部及び下部の平坦な表面における電極に接続されるように示されている。この目的のために、フレキシブルな電極配列が使用されてもよい。電極にDC電圧及び/又はAC電圧を印加することは、対応する変形を刺激する電気活性材料層を横切る電場の生成を可能にする。
【0099】
図9の構成における第1の駆動信号入力92はDC入力を含むが、代替構成では、この入力はAC駆動信号入力を含んでもよい。いずれの場合も、作動駆動信号の相対電力は、印加されるセンシング信号の電力を著しく超える。両方の信号がAC信号を含む場合、センシング信号(94で印加される)の最大振幅は、作動駆動信号(92で印加される)の最大振幅の10%未満であってもよく、例えば、作動駆動信号の最大振幅の1%未満であってもよい。センシング信号がAC信号を含み、アクチュエーション信号が固定振幅のDCバイアス信号を含む場合、AC信号の最大振幅は、DCバイアス信号の固定振幅の10%未満、例えばDCバイアス信号の固定振幅の1%未満であってもよい。
【0100】
図9の例に関し、信号処理素子42によって生成される第3結合信号は、高振幅DCバイアス信号の上に重畳された高周波数低振幅AC信号を含む。
【0101】
前節で説明したように、電気活性ポリマーの層を横切る十分な振幅のDCバイアスの印加は、ポリマー層の膨張を刺激する。層が受動キャリア層90に結合されている場合、ポリマーの膨張は、作動力を与えるために使用され得る構造全体の変形、例えば屈曲又は反りという結果をもたらす。
図9において、アクチュエーター構造は、「アクティブ」状態又は「作動」状態で示され、ここで、DCバイアスは、構造の変形を引き起こすのに十分な大きさで印加される。周知のように、膨張の程度は、デバイスにわたって印加される電界/電流の大きさに関連して変化する。従って、DCバイアスの振幅を変えることによって、異なる程度/広がりの変形が誘導され、加えられる作動力の大きさを異ならせる(又は例えば、行われる作用の仕事量を相違させる)。
【0102】
DCバイアス上に重畳された高周波AC信号はまた、材料内の機械的変形応答を刺激するが、固定ではなく周期的な変形応答を刺激する(すなわち振動)。しかしながら、高周波信号の最大振幅は、DCバイアス信号の振幅よりもかなり低いので(例えば、DCバイアス信号の振幅よりも2桁低い、例えば、DC信号の振幅の1%)、刺激された変形の対応する変位振幅は、主要な作動変位と比較して事実上無視できる。従って、アクチュエーションの精度及び安定性は、センシング信号の重ね合わせによって影響を受けない。
【0103】
DCバイアスの上に低振幅の振動信号をオーバーレイすることは、電気フィードバック機構が一次アクチュエーター駆動機構自体に組み込まれることを許容する。特定の周波数、特にアクチュエーター構造の機械的共振周波数に一致するか又は調和する(高調波の)周波数において、小さな機械的な定在波がアクチュエーターの材料内に確立される。今度はこれが材料の電気的特性に影響を及ぼす。センシング信号が材料の共振周波数で駆動される場合、機械的振動が電気駆動信号と同相であることに起因して、材料の対応するインピーダンスは(非共振で駆動される場合と比較して)低い。
【0104】
構造体の機械的共振周波数は、その平衡位置から変位されると、構造体が自然に振動する傾向のある周波数であり、構造体の固有の構造特性(例えば、幾何学、サイズ、形状、厚さ等)によって決定される。EAP構造の機械的振動は、それに印加される電気信号の駆動周波数に必ずしも従うわけではないが、駆動周波数が固有振動周波数(共振周波数)の位相からずれているか、又は同位相にあるかの程度に応じて、建設的又は破壊的にその振動と干渉する駆動周波数とともに、その固有共振周波数に戻る傾向がある。
【0105】
高周波信号が電気活性材料構造の反共振周波数(すなわち、共振周波数の第1高調波)で駆動される場合、材料の機械的振動が駆動信号の振動と位相がずれる(電気的に誘起される機械的な歪みは電気的な励振と位相がずれている)ことに起因して、電気活性材料のインピーダンスはより高い。換言すれば、例えば、駆動信号によって正の電流が電気活性材料に印加される時は常に、位相がずれた機械的歪みは、同じ時点で反対方向に電流を誘導する(すなわち、位相ずれ挙動)。理想的な(モデル)ケースでは、これらの対向する電流は相互に打ち消し合い、電流は全く流れないが(すなわち、インピーダンスは無限大であるが)、現実のシナリオでは、完全な打ち消しは起こらず、この効果は、電流の(有効な)高い抵抗(すなわち、より高いインピーダンス)として測定される。特に、信号がアクチュエーター材料の反共振周波数で駆動される場合、電気活性材料のインピーダンスは最大である。
【0106】
この関係は、下記数式(1)を考慮することにより、さらに理解され得る。共鳴及び反共鳴における理想的な電気活性材料のインピーダンスは、変形の特定のタイプ又はモードに依存する。電気活性材料をラテラル共振(すなわち、長さ又は幅)にすることが最も一般的である。インピーダンスは、材料の誘電特性と電気機械的結合と電気的及び機械的損失とによって支配される。簡明化のため、電気的及び機械的損失を無視する場合、長さl、幅w、及び厚さtを有する電気活性材料層について、横方向伸張で変形する場合、インピーダンスは、次式で与えられる:
【0107】
【数1】
ここで、ε
T
33は誘電定数であり、k
31は横方向電気機械結合係数であり、pはEAPの密度であり、s
E
11は横方向におけるコンプライアンスである。反共振周波数ω
aにおいて、
【0108】
【0109】
実際の電気活性材料は、損失を有するので、直列に抵抗器を有するキャパシタによりモデル化又は表現されることが可能であり、その抵抗値は反共振周波数で最大である。従って、以下の説明において、「インピーダンス」及び「直列抵抗」(Rs)は、デバイスに関して置換可能に使用されてもよい。しかしながら、直列抵抗は、アクチュエーター/センサーが抵抗Rsを有する抵抗器と直列のキャパシタによって電子的に表されるモデルを単に指すものとしてこの文脈で理解されるべきである。
【0110】
インピーダンスと共振の間の上述の関係の結果として、駆動信号が反共振周波数で駆動される場合、反共振からずれた周波数で離れて生じる小さな変位は、EAP構造の測定可能なインピーダンスの対応する急激な低下で検出可能である。機械的センシングが達成されることを可能にするのは、この物理的効果である。
【0111】
構造体への負荷(すなわち、圧力又は力)の印加は、材料内で発生する任意の共振効果の減衰をもたらす結果となる。駆動信号が材料の反共振周波数又は共振周波数で振動している場合に、負荷が印加されると、共振の突然の停止がインピーダンスの以後の急激な低下をもたらすので、減衰効果は、EAPインピーダンスのリアルタイム測定(即ち、直列抵抗Rs)の中で識別可能である。従って、アクチュエーターが動作している間(例えば、高周波信号の電圧及び電流を時間的にモニタすることにより)、構造物に加えられる圧力及び負荷がセンシングされ、場合によっては定量的に測定されることが可能である(後述)。
【0112】
一方のインピーダンスと、他方の信号の電気駆動周波数及び他方の材料の機械的振動周波数の間の位相差との間のリンクは、駆動信号の電気的特性のモニタリングのみによって、EAPに印加される機械的力の高感度測定が達成されることを可能にする。従って、これは、単一のEAPデバイスを用いて同時にアクチュエーション及びセンシングを達成するための、非常にシンプルで率直な効率的な手段を提供する。さらに、実施形態は、EAP構造の同じ領域にわたる同時センシング及びアクチュエーション(すなわち、空間的な同時センシング及びアクチュエーション)を許容する。これは、例えば、センシングの感度又は分解能を犠牲にすることなく、両方の機能を実行するデバイスが、はるかに小さな形状因子で作成されることが可能であることを意味する。更に、単一の接続セットしかデバイスに提供される必要がなく(各専用センシング又はアクチュエーション領域に対して1つである、2つ以上の接続セットとは対照的である)、このことはコスト及び複雑さの低減という点で有利であり、(例えば、シェービング/カテーテル/口腔ヘルスケアにおける)水密な接続が必要とされる場合、及び/又はアクチュエーター/センサーのアレイが構成される場合に有利である。
【0113】
センシング信号の適切な選択及び適切な信号処理により、センシングは負荷センシングだけでなく温度も提供し、次いで、上記の方法で流量情報を導出するために使用される。
【0114】
特に、少なくとも第1及び第2の異なる周波数の測定信号が生成され、信号処理要素42は、2つの測定周波数におけるアクチュエーター30の1つ以上の電気的特性を測定するために使用される。このようにして、アクチュエーターの温度及びアクチュエーターに加えられる外部圧力又は力が両方とも決定され得る。
【0115】
温度情報のみが必要とされる場合(その後、流量情報を導出するために使用される)、当然に、力の計算は必要とされない。しかしながら、2つの測定周波数の使用は、温度の影響が外力の影響から分離されることを可能にする。
【0116】
高周波センシング信号の周波数は、典型的には、アクチュエーターの特定の幾何形状に依存して、各々1kHzから1MHzの範囲内にあってもよい。アクチュエーター駆動信号がAC駆動信号を含む場合、この信号の周波数は、交番するセンシング信号の周波数よりもかなり低いことに留意されたい。この場合、(低周波数)作動電圧は、例えば、アクチュエーター信号と測定信号との干渉を避けるために、高周波数信号電圧よりも少なくとも2桁低くてもよい。
【0117】
上述のように、反共振周波数では、位相がずれた機械的振動に起因して、測定されるインピーダンスはより高い。特に、アクチュエーターの直列抵抗(Rs)は、この周波数で最大となる。一実施形態では、この周波数は、測定周波数のうちの最初のものとして使用される。他の測定周波数は、電気機械カップリング周波数範囲外で定められ、これが第2測定周波数として使用される。
【0118】
較正プロセスを使用して、使用される周波数を決定し、測定された抵抗と決定された共振周波数で印加される負荷との間の関係を決定してもよい。
図10は一例を示す。
【0119】
第1周波数掃引100が、0Vである印加されたDCバイアスで実行され、抵抗応答が測定される。それにより、アクチュエーターの等価直列抵抗は、異なる周波数で測定され、アクチュエーション信号が存在しない状況でインピーダンス-対-周波数の関数を得る。
【0120】
次いで、ステップ102において、好ましくはデバイスの所望の作動状態に対応する固定DCバイアスが印加される。このとき、デバイスに印加される負荷は無くてよい。
【0121】
次に、ステップ104において、固定の非ゼロDCバイアスで第2周波数掃引が実行され、対応する抵抗値が記録される。アクチュエーターの等価直列抵抗は、再び異なる周波数で測定され、アクチュエーション信号が存在する状況でインピーダンス-対-周波数の関数を得る。
【0122】
次に、ステップ106において、2つの掃引の結果が比較され、周波数範囲にわたって夫々取得された抵抗値の差を決定する。
【0123】
ステップ108において、測定された抵抗値が最大量の分だけ異なる第1周波数が決定され、それによって、反共振周波数が直接的に識別される。
【0124】
ステップ110において、第2測定周波数が定められる。これは差が無視できる周波数である。したがって、電気的特性が負荷に対して一定である周波数である。
【0125】
ステップ100-110は、場合によっては所望の多数のDC電圧に対して反復されてもよく、例えば、デバイスの操作に可変作動範囲が使用される場合に、複数の異なる作動位置に関するデータを収集してもよい。
【0126】
センサーのみのデバイスの場合、センシングを実行する準備が整った作動状態にセンサーを導く単一の作用が存在するであろう。従って、唯1つの駆動キャリブレーションしか必要ない。
【0127】
センサーは、例えば、ある位置に設定され、それからセンサーとしてのみ使用される。これは、多重センシング測定を行うために使用される単一の作動レベルに対応すると考えられてよい。センシング機能は、ある範囲内のDCバイアスと共に使用されてもよい。しかしながら、この範囲は、物理的な作動は存在しないが、それにもかかわらず、印加された負荷に対する感度が存在する直流バイアス電圧を含み得る。特に、作動曲線(作動-対-印加電圧)は或る閾値とともに非線形であり、物理的な作動は閾値未満では始まらない。この場合、センシング機能は、物理的変形が無くても有効であるが、感知される信号は、より大きなDCバイアスに対するものよりも小さい。
【0128】
図11は、異なる作動電圧において固定負荷をセンシングするための信号強度のプロットをプロット113として示す。プロット114は、これらの作動電圧(任意のスケールで)の作動レベルを示す。初期ゼロ・レベルから増加する電圧に関し、感度は作動よりも速く増加することが分かる。
【0129】
センシング専用の典型的なDCバイアス範囲は例えば40V-50V、又は40-75Vの範囲にあってもよく、その場合において、感度はゼロを上回るが、作動は依然としてゼロ又はゼロに近い(それぞれ)。
【0130】
図10のステップ112において、インピーダンス値の較正データは、デバイスにわたる直列抵抗-対-印加される負荷の形式で、固定されたDCバイアス電圧及び固定されたAC信号周波数(反共振第1周波数に等しい)に対して導出される。
【0131】
さらに、インピーダンス値は、対象範囲内の各温度及び可能な各アクチュエーション信号について取得される。第2周波数において、インピーダンス値は、対象範囲内の温度それぞれ、可能なアクチュエーション信号それぞれ、及び可能な負荷それぞれについて取得される。
【0132】
従って、ステップ112において、様々な温度で、様々な負荷がかけられた複数の測定値が存在する。この較正プロセスは工場で行われ、可変の印加される負荷及び温度に対して周波数1及び周波数2におけるRsに関して、ルック・アップ・テーブルが生成される。各温度で、負荷の全範囲が測定される。このルック・アップ・テーブルは、使用中にリファレンスとして使用される。
【0133】
このようにして、アクチュエーターは、各印加電圧(複数の印加電圧がある場合)及び温度範囲内の各温度ポイントについてインピーダンス-対-負荷に関して較正される。
【0134】
作動中に、印加電圧と組み合わされる第1周波数において測定されたインピーダンス値は、アクチュエーターに関する力の尺度を与え、第2周波数におけるインピーダンス値は、電気活性材料アクチュエーターの温度の尺度を与える。高周波(センサー)信号の変位振幅は、作動変位に比べて無視することができ、精度や安定性の点で作動を妨げないであろう。
【0135】
上記の議論から明らかなように、作動は任意的である。
【0136】
図12は、アクチュエーターの使用中に使用される方法を示す。較正データは矢印120で表現されるように受信される。ステップ122は、第1較正周波数におけるインピーダンスを測定することを含む。これは負荷(即ち、圧力又は力)のセンシングに使用される。ステップ124は、第2較正周波数におけるインピーダンスを測定することを含む。これは温度センシングに使用される。
【0137】
これらの測定の間に、ステップ126において、より高い振幅のアクチュエーション信号が印加される。それは、センサーのみの実装に対して定数であるか、又はセンサー及びアクチュエーターに対して可変である。ステップ128は、アクチュエーターの負荷及び温度を導出することを含む。
【0138】
これら2つのパラメータはシステムからの個々の出力として提供されてもよい。あるいは、温度情報は、センシングされた負荷の温度補償を提供するために、システムによって内的に使用されてもよい。
【0139】
図13に示されるようにDCアクチュエーション信号に基づいて第1具体例が詳細に説明される。
【0140】
上述したように、EAPアクチュエーターは、電気活性材料(例えば、EAP)層32と受動キャリア層90とを有し、ハウジング132内に保持され、信号駆動機構134に電気的に結合される。
図13の例における駆動機構は、信号発生素子(駆動素子)と信号処理及び分析素子(センサー素子)との両方を含む。
【0141】
アクチュエーター制御素子135は、信号増幅器デバイス136に送信される高振幅アクチュエーター駆動信号(例えば、固定DCバイアス電圧)を生成する。センサー制御素子138は、センサー信号を生成する駆動素子140と、アクチュエーターを横切って通過した後のセンサー信号の電気的特性を分析する処理素子142との両方を含む。この目的のために、駆動機構134は、EAPアクチュエーターを横切って接続される電圧計144と、アクチュエーターの出口電気端子148とセンサー制御素子138との間に直列に接続された電流計146とをさらに含む。電圧計134及び電流計136は両方とも、センサー制御素子138に信号によって接続され、それにより、それらによって生成されるデータが、アクチュエーターのインピーダンス(即ち、デバイスが直列の抵抗を有する理想的なキャパシタとして、即ち、複素インピーダンスの実部としてモデル化される等価直列抵抗Rs)を決定するために、プロセッサ142によって利用され得る。
【0142】
アクチュエーター制御素子135及びセンサー制御素子138によって生成される駆動信号は、それらの組み合わせた増幅に先立って、又はそれらの独立した増幅の後に、増幅素子136によって重ね合わせられる。いくつかの例では、増幅器素子136は単にコンバイナによって置き換えられてもよい。この場合、アクチュエーター制御素子135及びセンサー制御素子138は、それらをコンバイナへ出力する前に、それらの生成されたアクチュエーション信号及びセンシング信号をローカルに増幅するように構成されてもよい。
【0143】
結合された駆動信号は、次いで、EAPアクチュエーターの入口端子149へ送信される。結合された駆動信号の高振幅DC成分は、アクチュエーターにおける変形応答を刺激する。
【0144】
最も再現性のある(即ち、信頼できる/正確な)結果のために、EAPは適所にクランプされてもよい。例えば、アクチュエーターは、ハウジング132内にクランプされてもよく、そしてハウジングはデバイスをターゲット作動領域に整合させるように配置されてもよい。
【0145】
駆動信号の低振幅AC成分は、EAP層32における低振幅の周期的な応答を刺激し、例えば、その共振周波数又は反共振周波数で構造を振動させる。
【0146】
結合された駆動信号の電圧と結果として生じる電流は、センサー制御素子138に供給される。典型的にAC電流は0.1mA-1mAの範囲内にあるかもしれないが、10mAに及んでもよい。より高い電流は過剰な加熱を引き起こすかもしれない。
【0147】
場合によっては、駆動機構134は、センサー制御素子138の処理素子142による分析のために高周波成分を分離する目的で、1つ以上の信号デカップリング素子、例えばハイ・パス・フィルタをさらに含んでもよい。
【0148】
センサー制御素子138の処理素子142は、電圧計144及び電流計146によって提供される測定値を使用して、印加される駆動信号が体験する、アクチュエーターにわたる直列抵抗を決定し得る。直列抵抗は、リアルタイムで決定されてもよく、例えば、上述のように、アクチュエーターに加わる荷重及び圧力の存在及び大きさを示すために使用される抵抗の突然の変化について監視されてもよい。
【0149】
EAPアクチュエーターは、
図14に示されるように、直列キャパシタCs及び抵抗Rsの近似的な等価回路を有する。
【0150】
上述の掃引は、反共振周波数(最も感度の高い地点)を決定するために使用され、
図15に示されている。
【0151】
測定された直列抵抗(単位はオーム)が1つのy軸に、測定されたキャパシタンス(単位はファラッド)が別のy軸に、そしてセンサー信号周波数(単位はHz)がx軸に示される。
【0152】
プロット152は抵抗であり、プロット154はキャパシタンスである。このサンプルに関し、約29.8kHzの周波数が、155で示される局所抵抗ピークの結果として反共振周波数として決定される。その点から離れた周波数は、例えば20kHzの点156等のような第2周波数として選択される。プロットは200Vのバイアス電圧に関するものである。
【0153】
上述のように、ピークはプロットを比較することによって最も容易に決定される。
図16は、AC周波数が変化する場合に、0V掃引に対する抵抗測定をプロット160として示している(これは、単に容量複素インピーダンス関数を反映する一次曲線に関して変動が無いことを示す)。0Vバイアスでは、結合がほとんど又は全く無く、従って、AC信号に対する材料の変形応答はゼロである(又は測定できないほど小さい)。従って、0Vバイアス掃引は、より高い(作動誘起)DC電圧でのAC周波数掃引と比較するための便利なベースラインを提供する。プロット160は印加されるDCバイアスを伴う掃引である。
【0154】
デバイスの反共振周波数は、2つのDC電圧について測定された抵抗値の間の差が最大であるAC周波数を見出すことによって識別されてもよい。
【0155】
図17では、測定された抵抗の差分をy軸に、対応するセンサー信号周波数をx軸にとった場合に、2つの信号トレース間の差がより明確に示されている。このグラフでは、2つの大きな抵抗のジャンプが明確に見えており、2つのジャンプのうち大きい方が、反共振で生じるジャンプである。
【0156】
この例では、最初の掃引に0VのDCバイアスが使用されているが、代替例では異なる(ゼロでない)第1バイアスが使用されてもよい。この場合、第1の電圧の大きさに依存して、第1掃引は、中心的なカーブに対する変動又はピークを示し得る。しかしながら、反共振周波数は、2つのDC電圧の測定された抵抗値の差が最大である周波数を識別することによって、依然として発見され得る。
【0157】
また、負荷は共振-反共振の挙動を減衰させることにより、アクチュエーターの直列抵抗に及ぶ影響を有する。これは
図18に示されており、この図は負荷に対して200Vのバイアスを有するアクチュエーターで測定された反共振での抵抗Rsをプロットしている。各プロットは異なる様々な温度に対するものであり、温度オフセット・ドリフトが見える。
【0158】
第2周波数(外部共振カップリング範囲)では、電気機械結合の影響はない。この周波数では、抵抗は
図19に示されるように温度のみの関数にすぎず、この図は負荷に対する抵抗をプロットしている。抵抗は、200Vバイアスを有するアクチュエーターに対して再度測定されたオフ共振周波数(20KHz)についてプロットされている。
【0159】
温度オフセット・ドリフトは目に見えるが、印加される負荷による影響はない。
図20に示されるように、
図20は2つのグラフ(run)に関してゼロ負荷の場合の抵抗-対-温度をプロットしているので、温度信号は再現可能である。
【0160】
上述のように、信号の温度依存性は、流量情報を導出するために使用される。
【0161】
温度信号は、負荷センサーの精度を向上させるために、アクチュエーター信号の補償に使用されることも可能である。
図21では、負荷の関数としての補償される抵抗値が、23度から45度までの8つの異なる温度に対して与えられる。23度及び45度の間の平均差分は、非補償測定では29%であったのに対し、今や3.8%である。
【0162】
上記の例はDCアクチュエーション信号に基づいている。第2具体例では、低周波ACアクチュエーター信号が存在する。低周波AC作動のために、アクチュエーターは、低周波AC電圧及び小信号、高周波AC電圧によって電気的に負荷がかけられる。小振幅、高周波電圧が、測定に使用され、且つ低周波ACアクチュエーター信号に重畳される。低周波ACアクチュエーター電圧は、EAPの変形を引き起こし、作動の目的に使用されることが可能である。
【0163】
低周波作動電圧は、好ましくは、アクチュエーター信号と測定信号との干渉を避けるために、高周波信号より少なくとも2桁低い周波数(すなわち、<1%)を有する。
【0164】
第3具体例では、周波数スキャンは、システムを較正するために必要とされない。これは、システムの複雑さ及びコストが低減されることを可能にする。しかしながら、堅牢性及び感度は依然として補償されることが可能である。製造において、アクチュエーターの(反)共振周波数(fr)は、厳密に制御され、温度範囲内の温度ポイント当たり2周波数の所定セットが事前に知られており、従って、これら2つの所定周波数での測定は、常に、アクチュエーターの負荷(周波数1)及び温度(周波数2)を示す。
【0165】
第4具体例では、センシング・デバイス又はアクチュエーション及びセンシング・デバイスが提供されてもよく、アレイ、又は他の望ましいレイアウト/形状に配置された上記の具体例による複数のデバイスを含む。具体例では、各々が固有の機械共振周波数frを有するように、複数のデバイスが提供されてもよい。このように、デバイスのアレイに高周波センシング信号を適用する場合、アレイ内のどのアクチュエーターがセンサーとして刺激されているかを決定するために、即ち、アレイ内のセンサー/アクチュエーターの位置を与えるために、各デバイスの特徴的な(固有の)共振周波数が使用されてもよい。
【0166】
例えば、共通の駆動信号が、アレイ内のすべてのデバイスにわたって印加されてもよく、その共通の信号は、異なる周波数(すなわち、デバイスの既知の異なる共振-又は反共振-周波数)の連続した信号系列を含む。周波数の時間掃引がセンサー入力よりも速い場合、対応するインピーダンスの低下(又は上昇)は、刺激される特定のデバイスに対応する周波数についてのみデバイスにわたって検出可能であり、即ち、測定されるインピーダンスは、周波数掃引が、刺激されたデバイスに対応するfrの方へ移動するにつれて低下し、その後、掃引がfrを後にして移動するにつれて再び上昇する(又はその逆も起こり得る)。このようなシステムでは、fr(又はRs)を使用して、どのアクチュエーターがセンサーとして使用されているかを識別する、即ちアレイ内のセンサー/アクチュエーターの位置を与えることができる。
【0167】
上記の具体例は、適用される負荷を決定するためにインピーダンス測定を利用する。直列抵抗(の変化)を検出する代わりに、反共振周波数の変化が、対応するフィードバック信号を導出するために検出されてもよい。
【0168】
あるいは、直列抵抗(の変化)(又は反共振周波数の変化)を検出する代わりに、位相の変化、特に複素インピーダンスの位相角が決定されてもよい。直列抵抗Rsの変化は比較的小さい。感度を改善するために、別の従属変数と組み合わせられてもよい。
【0169】
図22では、Rsの変化が左側に示され、Cs及びRsの変化が右側に示されている。
【0170】
右の図は、実インピーダンス部分の減少と虚インピーダンス部分の増加に応じて、複素インピーダンスの位相角が、どのようにして増分量(Δρ)だけ変化するかを示す。位相は、電流及び電圧間の位相の変化を測定することにより検出されることが可能である。特に、EAPが薄い層を有する場合、インピーダンスの虚部(jXcs)の変化の影響が支配的になるかもしれない。実際、複素インピーダンスに相関する任意の測定値が、アクチュエーターの負荷を表すために使用されることが可能である。
【0171】
温度センシング機能の感度は、使用されるポリマー(EAPアクチュエーター/センサー)の組成の適切な選択によって調整されてもよい。組成は、所望の動作温度に対するセンサーの最高感度を得るように調整されてもよい。
【0172】
例えば、(PVDF-TrFE-CTFE)ポリマー材料では、これはCTFE含有量を変えることにより達成されることが可能である。
【0173】
図23は、ある組成の例示的な材料(PVDF-TrFE-CTFE)の温度に対する感度を示し、摂氏26度で最大感度を示している。材料例は10%のCTFE含有量を有する。
【0174】
図24は、(PVDF-TrFE-CTFE)ポリマーの適切な使用温度とCTFE含有量との関係を示し、温度感度が最も高い温度-対-CTFE含有量のパーセンテージを示す。図示のように、より高いCTFE含有量は、感度が最高である温度の低下をもたらす。例えば、7%のCTFEを有するポリマーは、室温での室内センサーよりも温度が高い体内用途に使用され得る。
【0175】
電気活性材料(例えば、EAP)は、上述のデバイスにおいてヒーターとして使用される。ここで、十分な加熱が得られることを示す。静的な空気条件(弱い冷却能力)と循環する血液条件(強い冷却能力)の2つの条件が考慮される。所望の温度上昇は例えば5℃である。
【0176】
EAPアクチュエーターは静的な空気中で容易に加熱されることが知られている。比較的低い周波数(1-50Hz)及び高い電圧(150-200V)で駆動される場合、アクチュエーターの温度上昇は、
図25に示されるように、数秒以内に10℃より高くなる可能性がある。
図25は、赤外線カメラで測定した駆動周波数(x軸)の関数として、静的な空気中における最大EAP表面温度(y軸)をプロットしている。最大温度は10秒以内に達成される。
【0177】
熱発生及び対流熱伝達に対する基本方程式は、上記の測定値を用いて空気中の熱伝達係数を推定するために使用されることが可能である。ボディから媒体への対流熱伝達は、以下のように記述される:
Q=h・A・(Teap-Tflow) (1)
ここで、Qは熱流(J/s)であり、hは系の熱伝達係数(J/m2sK)であり、Aは面積(m2)であり、Teap及びTflowはEAP及び媒体の温度(摂氏又はケルビン)である。EAP材料における誘電損失に起因して発生する熱は、以下のように推定されることが可能である:
P=tanδ・f・C・Upp
2 (2)
ここで、Pは発生した熱(J/s)であり、tanδは誘電正接(無次元)であり、fは動作周波数(Hz)であり、Cはキャパシタンス(ファラッド)であり、Uppはピーク・ツー・ピーク駆動電圧(V)である。(初期加熱期間後の)定常状態では、生成された熱Pは、伝達された熱Qに等しい。
【0178】
P=Q (3)
(1)及び(2)を(3)に代入すると、EAP温度についての以下の数式が導出される:
【0179】
【数3】
数式(4)から、温度増加(T
eap-T
flow)は駆動周波数に線形に対応することが表れている。数式(4)を
図25の測定値に適合させることにより、静的な空気中の熱伝達係数は、我々の特定の実験では、tanδ=0.1、A=1.5cm
2及びC=1μFを用いると、h=53W/m
2Kとして推定されている。推定値h=53W/m
2Kは、静的な空気中の熱伝達係数の典型的な値の範囲である10-100W/m
2K内に該当する。
【0180】
h=53及び式(4)は、高周波及び低電圧でのEAP加熱を推定するために使用される。
図26は、計算されたEAP温度上昇T
eap-T
flowを、h=53の値に基づいて、低電圧での周波数の関数として示す。
図25及び
図26は、(好ましい)低い及び高い周波数で動作点を見出すことが可能であるべきことを示す。
【0181】
文献で報告されているアブレーション処置の対流熱伝達係数は、例えば80-3500W/m2K等の広い範囲をカバーしている。これらの値は組織から循環する血液への熱の伝達を表す。
【0182】
図27は、h=1000W/m
2K(血液中での動作を表す)の仮定値に基づくアクチュエーターの計算された温度上昇(T
eap-T
flow)を示す。ピーク・ツー・ピーク駆動電圧はそれぞれ100V及び10Vである。ダメージを与えずにアクチュエーターを駆動する限界は例えば乾燥状態で200Vにおいて1kHzである。この限度を超えると、アクチュエーターは急速に劣化し始める。当初の計算から、血液中の動作点を見出すことが実際に可能であることがわかる。
【0183】
(多層)電気活性材料デバイスの場合、キャパシタンスは面積に比例するので、(4)式によれば、アクチュエーターは、Teap-Tflow(第1の近似として)に影響を与えることなく、縮小することができる。
【0184】
EAP層に適した材料は知られている。電気的に活性なポリマーは、サブクラス:圧電ポリマー、電気機械ポリマー、リラクサー強誘電体ポリマー、電歪ポリマー、誘電体エラストマー、液晶エラストマー、共役ポリマー、イオン性ポリマー金属複合材料、イオン性ゲル及びポリマーゲルを含むが、これらに限定されない。
【0185】
サブクラス電歪ポリマーは、以下を含むが、これらに限定されない:
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン(PVDF-TrFE)、ポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン-トリフルオロエチレン(PVDF-TrFE-CFE)、ポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン-クロロトリフルオロエチレン(PVDF-TrFE-CTFE)、ポリフッ化ビニリデン-フッ化ヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HFP)、ポリウレタン又はこれらの混合物。
【0186】
サブクラスの誘電体エラストマーは、以下を含むが、これらに限定されない:
アクリレート、ポリウレタン、シリコーン。
【0187】
サブクラス共役ポリマーは、以下を含むが、これらに限定されない:
ポリピロール、ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン、ポリ(p-フェニレンスルフィド)、ポリアニリン。
【0188】
イオン・デバイスは、イオン性ポリマー-金属複合材料(IPMCs)又は共役ポリマーに基づいてもよい。イオン性ポリマー-金属複合材料(IPMC)は、印加電圧又は電場の下で人工筋肉挙動を示す合成複合ナノ材料である。
【0189】
より詳細には、IPMCsは、ナフィオン(Nafion)又はフレミオン(Flemion)等のイオン性ポリマーにより較正され、その表面は、化学的にめっきされるか、又はプラチナ又は金、又は炭素ベースの電極のような導体で物理的にコーティングされる。印加電圧下では、IPMCのストリップを横切る印加電圧に起因するイオン・マイグレーション及び再分布は、曲げ変形を生じさせる。ポリマーは溶媒で膨潤したイオン交換ポリマー膜である。この電界はカチオンを水と共にカソード側に移動させる。これは、親水性クラスタの再編成及びポリマー膨張をもたらす。カソード領域の歪みは、ポリマー・マトリクスの残りの部分にストレスをもたらし、その結果、アノードの方に曲がる。印加電圧の反転は、曲げ方を反転する。
【0190】
めっき電極が非対称構成で配置される場合、印加電圧は、ツイスト、ローリング、ねじり、旋回、及び非対称曲げ変形のようなあらゆる種類の変形を誘発することができる。
【0191】
これらの例の全てにおいて、印加された電場に応答してEAP層の電気的及び/又は機械的な挙動に影響を与えるために、追加の受動層が提供されてもよい。
【0192】
各ユニットのEAP層は、電極間でサンドイッチされてもよい。電極は、EAP材料層の変形に追従するように伸張可能であってもよい。電極に適した材料も公知であり、例えば、金、銅、又はアルミニウム等の金属薄膜、又はカーボン・ブラック、カーボン・ナノチューブ、グラフェン、ポリアニリン(PANI)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、例えばポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)等の有機導体からなる群から選択されてもよい。メタライズされたポリエチレン・テレフタレート(PET)のようなメタライズされたポリエステル・フィルムが、例えばアルミニウム・コーティングを用いて使用されてもよい。
【0193】
本発明は、アクチュエーター又はセンサーの受動マトリックス・アレイ、又はセンサーとアクチュエーターの組み合わせが関心の対象となる例を含む、多くのEAP及び光活性ポリマー用途に適用されることが可能である。
【0194】
本発明は、一般的に流量センシングのために、及び選択的に、流量決定以外の目的のために負荷センシング、作動、及び温度センシングと組み合わされることに関心が有する。
【0195】
多くの用途において、製品の主な機能は、(局所的な)センシング及び選択的に、ヒト組織の操作、又は組織接触インターフェースの作動に依存する。このような用途では、例えば、EAPアクチュエーターは、主に、小さな形状因子、柔軟性及び高エネルギー密度に起因して、固有の利点を提供する。従って、EAP及び光応答性ポリマーは、軟質、3D形状及び/又は小型製品並びにインターフェースに容易に組み込まれることが可能である。そのような具体例は以下の通りである。
【0196】
本発明は、医学的及び非医学的分野、例えば、統合された圧力及びフロー・センシングを行う流体又は機体制御コンポーネント(バルブ、チューブ、ポンプ)に適用されてもよい。医療分野では、血管内カテーテル及びガイドワイヤ、並びに呼吸器系にも関心が持たれている。
【0197】
上述したように、実施形態はコントローラを利用する。コントローラは、必要とされる種々の機能を実行するために、ソフトウェア及び/又はハードウェアと共に、種々の方法で実装されることが可能である。プロセッサは、要求された機能を実行するためにソフトウェア(例えば、マイクロコード)を利用してプログラムされ得る1つ以上のマイクロプロセッサを使用するコントローラの一例である。しかしながら、コントローラは、プロセッサとともに又はプロセッサを使用せずに実装されてもよく、また、ある機能を実行するための専用ハードウェアと、他の機能を実行するためのプロセッサ(例えば、1つ以上のプログラムされたマイクロプロセッサ及び関連回路)との組み合わせとして実装されてもよい。
【0198】
本開示の種々の実施形態で使用され得るコントローラ・コンポーネントの例は、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASICs)、及びフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGAs)を含むが、これらに限定されない。
【0199】
種々の実装において、プロセッサ又はコントローラは、RAM、PROM、EPROM、及びEEPROM等の揮発性及び不揮発性のコンピュータ・メモリ等の1つ以上の記憶媒体に関連付けられてもよい。記憶媒体は、1つ以上のプロセッサ及び/又はコントローラで実行される場合に、必要な機能を実行する1つ以上のプログラムでエンコードされてもよい。種々の記憶媒体は、プロセッサ又はコントローラ内に固定されてもよいし、又はそこに記憶されている1つ以上のプログラムがプロセッサ又はコントローラ内にロードされ得るように、転送可能であってもよい。
【0200】
開示される実施形態に対する他の変形例は、図面、本開示、及び添付の特許請求の範囲を学ぶことにより、請求項に係る発明を実施する当業者によって理解されて実施されることが可能である。特許請求の範囲において、「含む(comprising)」という語は、他の要素又はステップを排除せず、また、「ある(“a” or “an”)」という不定冠詞的な語は、複数個を排除しない。特定の複数の事項が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なるそれだけの事実は、これらの事項の組み合わせが有利に利用され得ないことを示してはいない。特許請求の範囲における如何なる参照符号も範囲を限定するように解釈されるべきではない。