(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】樹脂ビーズおよび水溶液の処理における使用
(51)【国際特許分類】
B01J 20/281 20060101AFI20220112BHJP
C08F 8/42 20060101ALI20220112BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20220112BHJP
B01D 15/08 20060101ALI20220112BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20220112BHJP
C08J 7/12 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
B01J20/26 L
C08F8/42
B01J20/28 Z
B01D15/08
B01D15/00 M
C08J7/12 CET
(21)【出願番号】P 2019532139
(86)(22)【出願日】2016-12-30
(86)【国際出願番号】 KR2016015589
(87)【国際公開番号】W WO2018124349
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2019-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】チャン-スー・リー
(72)【発明者】
【氏名】コリン・エイチ・マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ダリル・ジェイ・ギッシュ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・アール・アイシャー
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-209596(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104098734(CN,A)
【文献】特表平11-503726(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103864858(CN,A)
【文献】特開昭63-012282(JP,A)
【文献】特開平03-152455(JP,A)
【文献】Sorption and Separation of Sugars with Adsorbents Based on Reversible Chemical Interaction,Adsorption Science & Technology,2006年,Vol.24, No.9,P.771-780
【文献】STUDY OF THE INTERACTION OF POLYOLS WITH POLYMERS CONTAINING N-SUBSTITUTED [(4-BORONOPHENYL)METHYL]-AMMONIO GROUPS,Carbohydrate Research,1975年,Vol.43,P.215-224
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00 - 20/28
B01J 20/30 - 20/34
C08J 8/42
B01D 15/00 - 15/42
C08J 7/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液を処理する方法であって、
前記水溶液は、1つもしくは複数の溶解された糖、1つもしくは複数の溶解された糖アルコールまたはそれらの混合物を含み、
前記方法は、前記水溶液を樹脂ビーズの集合体と接触させることを含み、前記樹脂ビーズは、構造(S1)
【化1】
(式中、-X-は、二価の結合基であり、-Yは、構造(S2)
【化2】
(式中、構造(S2)中の環状構造は、4つ以上の原子を有する)
を有する一価の基である)
の官能基を含み、
-X-は、1つの構造(S14)と2
~10の構造(S13):
【化3】
(式中、-R
5はヒドロキシルであり、-R
6は水素であり、-R
7、-R
8、-R
9、-R
10または-R
11のそれぞれは、相互に独立して、水素、ヒドロキシル、アミノ、N置換されたアミノ、非置換のアルキルまたは置換されたアルキルであるが、ただし、-R
7、-R
8、-R
9、-R
10または-R
11の1つは、構造(S14)と構造(S13)または樹脂の主鎖との間の接続結合である)
を含む、方法。
【請求項2】
前記水溶液は、6未満のpHを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶解された糖は、前記水溶液の重量を基準にして重量で5%~60%の量において存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記樹脂ビーズの集合体は、200μm以上の調和平均直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記樹脂ビーズの集合体は、1.02以上の均等係数を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
構造(S14)中の-R
7、-R
8、-R
9、-R
10および-R
11の1以上は、水素、ヒドロキシルまたは非置換のアルキルであるが、ただし、その1つは、構造(S13)または樹脂の主鎖との間の接続結合である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
-X-は構造(S15)を有する、請求項1に記載の方法。
【化4】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般的な産業上の目標は、水溶液の処理である。関心の対象となっている水溶液のカテゴリーは、1つもしくは複数の糖および/または1つもしくは複数の糖アルコールを含有する水溶液である。糖類および/または糖アルコール類のいくつかまたはすべてをそれぞれから分離する方法において、そのような水溶液を処理することが望ましい。水溶液中に存在し得る他の成分から糖類および/または糖アルコール類のいくつかまたはすべてを分離できる方法において、そのような水溶液を処理することも望ましい。6未満のpHを有する水溶液を処理できることも望ましい。
【背景技術】
【0002】
過去において、カルシウム形態のスルホン酸基を有する樹脂ビーズを使用することにより、糖類の水溶液を処理して糖類を分離していた。糖類を効率的に分離するには、そのような樹脂ビーズは、比較的小さい平均直径および比較的小さい均等係数(uniformity coefficient)の両方を有する樹脂ビーズの集合体中に存在する必要があることが見出されている。そのような小さい樹脂ビーズの均質な集合体を作成することは、困難であり、かつ費用がかかる。樹脂ビーズの集合体が比較的大きい平均直径および比較的大きい均等係数を有する場合でも、糖類を分離することが可能な樹脂ビーズを提供することが望まれている。
【0003】
J.A.Venteらは、“Sorption and Separation of Sugars with Adsorbents Based on Reversible Chemical Interaction”,Adsorption Science and Technology,vol.24,p.171,2006において、グルコースとフルクトースとを分離するのに使用される、pH6またはpH9で使用されたボロン酸官能化ポリ(アクリルアミド)樹脂を記載している。各種の糖類および糖アルコール類を分離することが可能である、異なる組成の樹脂ビーズを提供することが望まれている。6未満のpHで水溶液を処理することが可能な樹脂ビーズを提供することも望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下は、本発明の記載である。
【0005】
本発明の第一の態様は、構造(S1)
【0006】
【0007】
(式中、-X-は、二価の結合基であり、-Yは、構造(S2)
【0008】
【0009】
(式中、構造(S2)中の環状構造は、4つ以上の原子を有する)
を有する一価の基である)
の官能基を含む樹脂ビーズであり、ここで、多価原子カチオンの-X-基に対するモル比は、0:1または0.01:1以下のいずれかである。
【0010】
本発明の第二の態様は、水溶液を処理する方法であって、水溶液は、1つもしくは複数の溶解された糖、1つもしくは複数の溶解された糖アルコールまたはそれらの混合物を含み、方法は、水溶液を樹脂ビーズの集合体と接触させる工程を含み、樹脂ビーズは、構造(S1)
【0011】
【0012】
(式中、-X-は、二価の結合基であり、-Yは、構造(S2)
【0013】
【0014】
(式中、構造(S2)中の環状構造は、4つ以上の原子を有する)
を有する一価の基である)
の官能基を含む、方法である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下は、本発明の詳細な説明である。
【0016】
本明細書で使用するとき、以下の用語は、文脈によって明確に指示されない限り、指定された定義を有する。
【0017】
「ポリマー」という用語は、本明細書で使用するとき、より小さい化学的繰り返し単位の反応生成物で構成された比較的大きい分子である。本明細書で使用するとき、「樹脂」という用語は、「ポリマー」と同義語である。ポリマーは、直鎖状、分岐状、星形、ループ状、超分岐状、架橋またはそれらを組み合わせた構造を有し得、ポリマーは、単一のタイプの繰り返し単位を有し得(「ホモポリマー」)、または2つ以上のタイプの繰り返し単位を有し得る(「コポリマー」)。コポリマーは、ランダム、逐次的、ブロック状、他の配列またはそれらの任意の混合もしくは組合せで配列された各種のタイプの繰り返し単位を有し得る。
【0018】
ビニルモノマーは、構造(M1)
【0019】
【0020】
(式中、R1、R2、R3およびR4のそれぞれは、独立して、水素、ハロゲン、脂肪族基(例えば、アルキル基)、置換された脂肪族基、アリール基、置換されたアリール基、他の置換もしくは非置換の有機基またはそれらの任意の組合せである)
を有する。ビニルモノマーは、フリーラジカル重合してポリマーを形成することが可能である。ビニルポリマーは、ビニルモノマーの集合体の二重結合を重合させた反応生成物である。
【0021】
スチレン系モノマーは、ビニルモノマーであって、R1、R2およびR3のそれぞれは、水素であり、-R4は、構造
【0022】
【0023】
(式中、それぞれのR15、R16、R17、R18およびR19は、独立して、水素、ハロゲン、脂肪族基(例えば、アルキル基またはビニル基)、置換された脂肪族基、アリール基、置換されたアリール基、他の置換もしくは非置換の有機基またはそれらの任意の組合せである)
を有する、ビニルモノマーである。
【0024】
アクリル系モノマーは、ビニルモノマーであって、-R1および-R2のそれぞれは、水素であり;-R3は、水素またはメチルのいずれかであり;および-R4は、以下の構造:
【0025】
【0026】
(式中、それぞれのR11、R12およびR14は、独立して、水素、C1~C14アルキル基または置換されたC1~C14アルキル基である)
の1つを有する、ビニルモノマーである。
【0027】
1つまたは複数のポリマーを形成するためのモノマー間の反応は、本明細書では重合プロセスと呼ばれる。重合プロセス後のポリマーの一部としてのモノマーの残基は、本明細書では、そのモノマーの重合された単位と呼ばれる。
【0028】
本明細書で使用するとき、ポリマーは、「主鎖」を有する。主鎖を同定するために、ポリマーの1つの末端から開始して1つの原子から次の原子へと進み、経路に沿って重複して戻ることなく、ポリマーの他の末端に到達するまで共有結合に沿って進むことにより経路を同定する。本明細書で使用するとき、ポリマーの「末端」は、ポリマーを形成した重合反応の鎖の終点の場所である。ポリマーが分岐状であるかまたは架橋されている場合、ポリマーのそれぞれの末端からポリマーの他のそれぞれの末端までを接続する複数のそのような経路が同定される。これらの経路の1つまたは複数の上にあるいかなる原子もポリマー骨格の一部である。任意のそのような経路の一部ではない個々の原子と、原子が任意のそのような経路の一部ではない化学基とは、本明細書では「ペンダント」と呼ばれる。いくつかの例を以下に挙げる。線状ポリエチレンでは、炭素原子がすべて主鎖中にある。ωアミノウンデカン酸を重合させることによって形成される直鎖状のポリアミドでは、すべての炭素原子および窒素原子が主鎖中にある。ビニルポリマーでは、それぞれの重合単位が構造(M1)のモノマーの残基である。構造(M1)中に示されている炭素原子がビニルポリマーの主鎖を形成する一方、-R1、-R2、-R3および-R4がペンダントである。直鎖状のポリスチレンホモポリマーでは、スチレンモノマーのビニル基からの炭素原子が主鎖を形成する一方、芳香族環がペンダントである。
【0029】
本明細書で示す化学構造では、化学基(すなわち完全な分子ではない結合された原子の構造物)を示す場合、その基が他の原子に結合されている点を記号
【0030】
【0031】
で示す。例えば、ヒドロキシル基は、本明細書では、
【0032】
【0033】
として表され、メチル基は、本明細書では、
【0034】
【0035】
として表されるであろう。ヒドロキシル基とメチル基とが結合された場合、結果は、メタノールであり、HO-CH3として、またはHOCH3として、またはCH3OHとして表されるであろう。
【0036】
樹脂ビーズは、それぞれ重量で50%以上のポリマーを含有する個別の粒子である。ビーズは、23℃で固体状態にある。粒子が球形でない場合、粒子の直径は、本明細書では、その粒子と同じ体積を有する仮想の球の直径とする。
【0037】
樹脂ビーズの集合体は、粒子直径によって特性付けられ得る。その集合体は、調和平均直径または体積平均直径で特徴付けられ得る。樹脂ビーズの集合体のパラメーターD60は、集合体中のビーズの体積で正確に60%がD60以下の直径を有するような直径である。樹脂ビーズの集合体のパラメーターD10は、集合体中のビーズの体積で正確に10%がD10以下の直径を有するような直径である。均等係数(UC)は、UC=D60/D10の商の値である。UCがより低いことは、直径の分布がより均等に近いことを意味する(すなわち、ビーズがすべて同じ直径により近い)。
【0038】
樹脂ビーズは、その多孔度によって特徴付けられ得る。樹脂ビーズ中の細孔のサイズは、窒素ガスを使用してブルナウアー-エメット-テラー(BET)法によって測定される。本明細書では、細孔中央直径が20nm以上である場合、樹脂ビーズは、「マクロポーラス」と呼ばれる。20nm未満の細孔中央直径を有する樹脂ビーズは、その細孔が小さすぎてBET法で確実に検出できないものを含め、本明細書では「ゲル」樹脂ビーズと呼ばれる。
【0039】
本明細書で使用するとき、置換基(すなわち原子または化学基)が結合されている場合、本明細書では、化学基が「置換されている」と呼ばれる。好適な置換基としては、例えば、以下のものが挙げられる:アルキル基、アルキニル基、アリール基、ハロゲン原子、窒素含有基(アミン基を含む)、酸素含有基(カルボキシル基を含む)、硫黄含有基(スルホン酸基を含む)、ニトリル基およびそれらの組合せ。
【0040】
本明細書で使用するとき、水溶液は、23℃で液状であり、水性溶媒中に溶解された1つまたは複数の溶質化合物を含有する組成物である。溶媒は、室温で液状であり、溶媒の重量を基準にして重量で50%以上の水を含有する場合に水性である。溶解された化合物は、その化合物が純粋な状態において(i)23℃で液状であり、110℃以上の沸点を有するか、またはそうでなければ(2)23℃で固体であるかのいずれかである場合に「固体」と考えられる。
【0041】
本明細書で使用するとき、化合物は、1つまたは複数の炭素原子を含有するが、以下の化合物の種類のいずれにも属さない場合に「有機」である:炭素の二元化合物、例えば炭素酸化物、炭素スルフィド、二硫化炭素および同様の化合物;三元化合物、例えば金属シアニド、金属カルボニル、ホスゲン、カルボニルスルフィドおよび同様の化合物;ならびに金属の炭酸塩および重炭酸塩、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムおよび同様の化合物。化合物は、有機でない場合に「無機」である。
【0042】
本明細書で使用するとき、単糖は、2つ以上のヒドロキシル基を有するアルデヒドまたはケトンである。二糖は、2つの単糖を結合させることにより形成され得る化合物である。オリゴ糖は、3つ~5つの単糖を結合させることにより形成され得る化合物である。糖は、単糖、二糖またはオリゴ糖である。糖アルコールは、化合物であって、すべての原子が炭素、水素および酸素から選択され;それぞれの酸素原子がヒドロキシル基の一部としてまたは2つの炭素原子間のエーテル結合の一部としてのいずれかで存在し;すべての結合が単結合の共有結合であり;3つ以上の炭素原子が存在し;および2つ以上のヒドロキシル基が存在する、化合物である。
【0043】
原子カチオンは、1つまたは複数の電子が除去された原子である。多価原子カチオンは、2以上のプラスの電荷を有する原子カチオンである。
【0044】
比率は、本明細書では、以下のように特徴付けられる。例えば、比率が3:1以上と言うとき、比率は、3:1、または5:1、または100:1であり得るが、2:1ではあり得ない。これを一般的に記載すると、本明細書で比率がX:1以上と言うとき、比率は、Y:1であり、ここで、Yは、X以上であることを意味する。同様に、例えば、比率が15:1以下と言うとき、比率は、15:1、または10:1、または0.1:1であり得るが、20:1ではあり得ない。これを一般的に記載すると、本明細書で比率がW:1以下と言うとき、比率は、Z:1であり、ここで、Zは、W以下であることを意味する。
【0045】
本発明の第一の態様は、構造(S1)
【0046】
【0047】
(式中、-X-は、二価の結合基であり、-Yは、構造(S2)
【化12】
【0048】
(式中、構造(S2)中の環状構造は、4つ以上の原子を有する)
を有する一価の基である)
を有する樹脂ビーズである。
【0049】
構造(S2)において、基-X-は、好ましくは、樹脂ビーズ中のポリマーの主鎖の一部である炭素原子に結合されている。好ましくは、-X-は、構造(S10)
【0050】
【0051】
(式中、Gは、化学基であり、およびnは、1以上である)
を有する。nは、好ましくは、2以上;より好ましくは4以上;より好ましくは6以上である。nは、好ましくは、14以下;より好ましくは12以下;より好ましくは10以下;より好ましくは8以下である。構造(S10)は、1つまたは複数の-G-基が直線状に結合されていることを示す。nが1より大きい場合、すべての-G-基が相互に同じものであり得、または-G-基のいくつかが相互に異なり、かつ-G-基のいくつかが相互に同じであり得、またはn個の異なる-G-基が存在し得る。好ましい-G-基は、(S11)、(S12)、(S13)および(S14):
【0052】
【0053】
から選択される。
【0054】
-R4、-R5および-R6のそれぞれは、相互に独立して、水素、ヒドロキシル、アミノ、N置換されたアミノ、非置換のアルキルまたは置換されたアルキルである。-R7、-R8、-R9、-R10または-R11のそれぞれは、相互に独立して、水素、ヒドロキシル、アミノ、N置換されたアミノ、非置換のアルキルまたは置換されたアルキルであるが、ただし、-R7、-R8、-R9、-R10または-R11の1つは、(S14)と、隣接する基または樹脂の主鎖との間の接続結合である。
【0055】
本明細書において先に定義されたような構造(S10)を有し、ポリマーの主鎖に結合されているいずれの化学基も、本明細書では、それが-Y基に結合されているかどうかとは関係なく-X-基であると考えられる。
【0056】
好ましくは、-R4は、非置換のアルキルである。-R4は、好ましくは、1~8つの炭素原子;より好ましくは1~4つの炭素原子;より好ましくは1または2つの炭素原子;より好ましくは1つの炭素原子である。2つ以上の(S12)が存在する場合、複数の-R4基を相互に独立して選択することができる。-R5は、好ましくは、水素、ヒドロキシルまたは非置換のアルキル;より好ましくはヒドロキシルである。-R6は、好ましくは、水素、ヒドロキシルまたは非置換のアルキル;より好ましくは水素またはヒドロキシルである。2つ以上の(S13)が存在する場合、複数の-R5基を相互に独立して選択することができる。2つ以上の(S13)が存在する場合、複数の-R6基を相互に独立して選択することができる。
【0057】
-R7、-R8、-R9、-R10および-R11の1つまたは複数は、水素、ヒドロキシルまたは非置換のアルキルであることが好ましい。隣接する基または樹脂の主鎖への接続結合である1つを除いて、-R7、-R8、-R9、-R10および-R11のすべては、水素、ヒドロキシルまたは非置換のアルキルであることがより好ましい。隣接する基または樹脂の主鎖への接続結合である1つを除いて、-R7、-R8、-R9、-R10および-R11のすべては、水素であることがより好ましい。
【0058】
-X-は、(S11)基を有しないことが好ましい。-X-中の(S12)基の数は、好ましくは、3以下;より好ましくは2以下;より好ましくは1である。-X-中の(S13)基の数は、好ましくは、1以上;より好ましくは2以上;より好ましくは3以上;より好ましくは4以上;より好ましくは5以上である。-X-中の(S13)基の数は、好ましくは、10以下;より好ましくは8以下;より好ましくは7以下;より好ましくは6以下;より好ましくは5以下である。-X-中において、1つまたは複数の(S13)基が存在し、ここで、-R5は、ヒドロキシルであり、および-R6は、水素であることが好ましい。-X-中において、1つまたは複数の(S13)基が存在し、ここで、-R5は、水素であり、および-R6も水素であることが好ましい。
【0059】
好ましい-X-基は、構造(S15)
【0060】
【0061】
を有する。
【0062】
-Yは、構造(S16)
【0063】
【0064】
(式中、mは、1以上であり、およびpは、0以上である)
を有することが好ましい。それぞれの-Z-基およびそれぞれの-J-基は、相互に独立して選択される二価の化学基である。好ましくは、それぞれの-Z-基およびそれぞれの-J-基は、先に定義されたような(S11)、(S12)および(S13)から選択されることが好ましく、ここで、それぞれの-Z-基およびそれぞれの-J-基中において、-R4、-R5および-R6のそれぞれは、相互に独立して、水素、ヒドロキシル、アミノ、N置換されたアミノ、非置換のアルキルまたは置換されたアルキルである。
【0065】
pは、好ましくは、3以下;より好ましくは2以下;より好ましくは1以下;より好ましくは0である。好ましくは、mは、1以上である。mは、好ましくは、5以下;より好ましくは4以下;より好ましくは2以下;より好ましくは1である。
【0066】
-Yは、構造(S3)、(S4)および(S5):
【0067】
【0068】
(式中、-A
1-、-A
2-、-A
3-、-A
4-および-A
5-のそれぞれは、独立して、構造(S6)、(S7)および(S8):
【化18】
【0069】
(式中、-R1および-R2のそれぞれは、独立して、水素、ヒドロキシル、アミン、非置換のアルキルおよび置換されたアルキルから選択され、-R3は、独立して、水素、非置換のアルキルおよび置換されたアルキルから選択される)
から選択される)
から選択されることが好ましい。-R1および-R2の1つまたは複数は、水素であることが好ましく、-R1および-R2の両方は、水素であることがより好ましい。
【0070】
-A1-および-A2-の1つまたは複数は、(S8)であることが好ましく、-A1-および-A2-の両方は、(S8)であることがより好ましい。-A3-および-A4-の1つまたは複数は、(S8)であることが好ましく、-A3-および-A4-の両方は、(S8)であることがより好ましい。-A5-は、(S8)であることが好ましい。
【0071】
-Yは、(S5)であることが好ましい。
【0072】
本発明の樹脂ビーズは、1つまたは複数の「Y置換」不純物を含有し得る。Y置換不純物(本明細書では-YRで表す)が存在する場合、樹脂ビーズは、構造(S17)
【0073】
【0074】
(式中、-YRは、原子、分子、イオンまたは先に挙げた-Yの定義外の化学基である)
を含有する。-X-と-YRとの間の結合は、共有結合、イオン結合または配位結合であり得る。いくつかのY置換不純物としては、以下のものが挙げられる:塩化鉄分子;遷移金属の原子カチオン;亜鉛、カドミウムおよび水銀の原子カチオン;ならびにすべてのタイプの多価原子カチオン。好ましくは、それぞれのタイプのY置換不純物は、存在しないか、または存在する場合には比較的少ない量で存在するかのいずれかであることが好ましい。
【0075】
本発明の樹脂ビーズは、1つまたは複数の多価原子カチオンを含有し得る。多価原子カチオンは、存在しないか、または0.01:1以下、より好ましくは0.001:1以下である多価原子カチオン対-X-基のモル比で存在するかのいずれかであることが好ましい。本発明の樹脂ビーズは、1つまたは複数の任意の原子価の遷移元素の原子カチオンを含有し得る。遷移元素の原子カチオンが存在しないか、または0.01:1以下、より好ましくは0.001:1以下である遷移元素の原子カチオン対-X-基のモル比で存在するかのいずれかであることが好ましい。
【0076】
本発明の樹脂ビーズは、塩化鉄を含有し得る。塩化鉄が、存在しないか、または0.01:1以下;より好ましくは0.001:1以下の塩化鉄対-X-基のモル比で存在するかのいずれかであることが好ましい。本発明の樹脂ビーズは、亜鉛、カドミウム、水銀またはそれらの混合物から選択される元素の、任意の原子価の1つまたは複数の原子カチオンを含有し得る。亜鉛、カドミウム、水銀またはそれらの混合物から選択される元素の原子カチオンは、存在しないか、または0.01:1以下、より好ましくは0.001:1以下の亜鉛、カドミウム、水銀またはそれらの混合物から選択される元素の原子カチオン対-X-基のモル比で存在するかのいずれかであることが好ましい。
【0077】
-Y基対-X-基のモル比は、好ましくは、0.9:1以上;より好ましくは0.95:1以上;より好ましくは0.98:1以上;より好ましくは0.99:1以上;より好ましくは0.995:1以上である。-Y基対-X-基のモル比は、1.001:1以下であることが好ましい。
【0078】
本発明の樹脂ビーズ中のポリマーは、いかなるタイプのポリマーでもあり得、例えば段階反応ポリマーおよびビニルポリマーが挙げられる。段階反応ポリマーとしては、例えば、以下のものが挙げられる:ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、セルロース、フェノール-アルデヒド、尿素-アルデヒド、ポリスルフィドおよびポリシロキサン。ビニルポリマーとしては、アクリル系モノマー、またはオレフィンモノマー、またはスチレン系モノマー、またはそれらの混合物の重合単位を有するポリマーが挙げられる。好ましいのは、ビニルポリマーであり;より好ましいのは、スチレン系モノマー、またはアクリル系モノマー、またはそれらの混合物の重合単位を含有するビニルポリマーであり;より好ましいのは、スチレン系モノマーの重合単位を含有するビニルポリマーである。ビニルポリマーの中でも、好ましいのは、スチレン系モノマーの重合単位の量がビニルポリマーの重量を基準にして重量で50%以上;より好ましくは75%以上;より好ましくは90%以上;より好ましくは95%以上であるものである。
【0079】
1つまたは複数の硫黄原子と、1つまたは複数の酸素原子との両方を含有するペンダント基の量は、ポリマーの重量を基準にして重量で好ましくは0~0.01%;より好ましくは0~0.003%;より好ましくは0~0.001%;より好ましくは0%である。両方の1つまたは複数の硫黄原子を含有するペンダント基の量は、ポリマーの重量を基準にして重量で好ましくは0~0.01%;より好ましくは0~0.003%;より好ましくは0~0.001%;より好ましくは0%である。1つまたは複数のカルボキシル基(水素化された形態またはアニオンの形態のいずれか)を含有するペンダント基の量は、ポリマーの重量を基準にして重量で好ましくは0~0.01%;より好ましくは0~0.003%;より好ましくは0~0.001%;より好ましくは0%である。先に定義された-X-および-Y以外のペンダント基の量は、ポリマーの重量を基準にして重量で好ましくは0~0.01%;より好ましくは0~0.003%;より好ましくは0~0.001%;より好ましくは0%である。
【0080】
樹脂ビーズは、樹脂ビーズの重量を基準にして重量で好ましくは50%以上;より好ましくは60%以上;より好ましくは70%以上;より好ましくは80%以上;より好ましくは90%以上;より好ましくは95%以上;より好ましくは98%以上の量でポリマーを含有する。
【0081】
本発明の樹脂ビーズは、好ましくは、100μm以上;より好ましくは200μm以上;より好ましくは300μm以上;より好ましくは400μm以上;より好ましくは500μm以上の調和平均粒子直径を有するビーズの集合体中にある。本発明の樹脂ビーズは、好ましくは、2000μm以下;より好ましくは1000μm以下の調和平均粒子直径を有するビーズの集合体中にある。
【0082】
本発明の樹脂ビーズは、好ましくは、1.02以上;より好ましくは1.09以上;より好ましくは1.16以上;より好ましくは1.2以上;より好ましくは1.3以上の均等係数を有するビーズの集合体中にある。本発明の樹脂ビーズは、好ましくは、2以下;より好ましくは1.8以下の均等係数を有するビーズの集合体中にある。
【0083】
本発明の樹脂ビーズは、好ましくは、マクロポーラスである。
【0084】
本発明の樹脂ビーズは、任意の方法で作成することができる。1つの好ましい方法では、樹脂は、ペンダント基を有して供給され、ペンダント基は、下位の基であって、2つの炭素原子が相互に結合され、およびそれらの2つの炭素原子のそれぞれがさらにヒドロキシル基に結合されている下位の基を有し、および下位の基は、cis-ジオール配位にある。次いで、樹脂は、好ましくは、H3BO3と接触され、および下位の基は、H3BO3と反応して好ましい-Y基を形成する。
【0085】
本発明の第二の態様は、水溶液の処理である。本発明の第二の態様の実施では、樹脂ビーズは、多価原子カチオンを含有してもしなくてもよく、および多価原子カチオンが存在する場合、多価原子カチオン対-X-基のモル比は、0.01:1以下であってもなくてもよい。しかしながら、多価原子カチオンの量は、上述の本発明の第一の態様における場合の好ましい量と同じであることが好ましい。
【0086】
Y置換不純物のレベルを含め、上述の本発明の第一の態様で適切とされた樹脂特性のすべては、本発明の第二の態様において使用される樹脂ビーズでも適切である。
【0087】
水溶液は、水溶液中に溶解された1つまたは複数の糖類を含有することが好ましい。水溶液は、スクロースを含有することが好ましい。水溶液は、グルコースを含有することが好ましい。フルクトース対グルコースの重量比は、好ましくは、0.1:1以上;より好ましくは0.2:1以上;より好ましくは0.5:1以上である。フルクトース対グルコースの重量比は、好ましくは、10:1以下;より好ましくは5:1以下;より好ましくは2:1以下である。
【0088】
水溶液は、好ましくは、マンノース、アラビノース、マルトース、スクロース、ガラクトース、ラフィノース、スタキオース、ラクトース、キシロース、トレハロース、イソマルツロース、それらの異性体、各種の水和レベルを有するそれらの変種およびそれらの混合物;より好ましくはマルトース、スクロース、ラフィノース、スタキオース、ラクトース、トレハロース、イソマルツロース、それらの異性体、各種の水和レベルを有するそれらの変種およびそれらの混合物;より好ましくはマルトース、スクロース、D-ラフィノース、スタキオース、D-ラクトース、トレハロース、イソマルツロースおよびそれらの混合物から選択される1つまたは複数の糖類を含有する。
【0089】
水溶液は、水溶液中に溶解された1つまたは複数の糖アルコール類を含有することが好ましい。好ましい糖アルコール類は、イノシトール、キシリトール、マルチトール、meso-エリスリトール、D-マンニトール、ソルビトール、それらの異性体およびそれらの混合物であり;より好ましいのは、イノシトール、キシリトール、D-マンニトール、ソルビトールおよびそれらの混合物である。
【0090】
水溶液中のすべての糖類を合計した量は、水溶液の重量を基準にして重量で好ましくは0.1%以上;より好ましくは0.5%以上;より好ましくは1%以上;より好ましくは5%以上;より好ましくは10%以上である。水溶液中のすべての糖類を合計した量は、水溶液の重量を基準にして重量で好ましくは70%以下;より好ましくは60%以下である。
【0091】
水溶液は、好ましくは、6未満;より好ましくは5.5以下;より好ましくは5以下;より好ましくは4.5以下のpHを有する。水溶液は、好ましくは、2以上;より好ましくは2.5以上のpHを有する。
【0092】
水溶液中のすべての糖アルコール類を合計した量は、水溶液の重量を基準にして重量で好ましくは0.05%以上;より好ましくは0.1%以上である。水溶液中のすべての糖アルコール類を合計した量は、水溶液の重量を基準にして重量で好ましくは15%以下;より好ましくは10%以下である。
【0093】
いくつかの実施形態では、水溶液は、エタノールを含有する。
【0094】
いくつかの実施形態では、水溶液は、1つまたは複数の溶解された無機塩を含有する。溶解された無機塩の中でも、好ましいカチオンは、ナトリウム、カリウムおよびそれらの混合物であり;より好ましくはカリウムである。溶解された無機塩の中でも、好ましいアニオンは、クロリドである。溶解された無機塩のすべてを合計した量は、水溶液の重量を基準にして重量で好ましくは0~10%;より好ましくは0~5%である。
【0095】
水溶液を樹脂ビーズと接触させることは、溶解されている成分のいくつかを相互に分離するのに役立つプロセスの一部として実施されるであろうと考えられる。複数の成分を分離する任意のそのようなプロセスが考えられる。そのようなプロセスの2つの例は、パルスプロセスおよび連続プロセスである。
【0096】
パルスプロセスでは、所定量の樹脂ビーズと所定量の水溶液とを接触させる。例えば、樹脂ビーズが容器中に存在し得、その容器は、樹脂ビーズを容器中に留めている間、容器中に液体を入れることを可能にする入口と、容器から液体を出すことを可能にする出口とを有する。そのような容器の一例は、クロマトグラフィーカラムである。例えば、クロマトグラフィーカラムを採用したパルスプロセスでは、所定量の樹脂ビーズをカラム中に入れ、次いで所定量の水溶液をカラムの上に置いて樹脂ビーズと接触させる。次いで、「溶離液」と呼ばれる液体を、カラムの頂部にある入口を通して通過させ、カラム中を移動させて樹脂ビーズと接触させてから、出口から排出する。所望の成分がすべて除去されるまで十分な量の溶離液をカラムに通す。異なる複数の成分は、樹脂ビーズに対する親和性が異なるため、溶離液に溶解されてカラム中を異なる速度で通過して出口から出る。
【0097】
パルスプロセスにおいて、好ましい溶離液は、水溶液であり、それは、カラムに入る前にいかなる糖類または糖アルコール類も含有しない。好ましい溶離液は、任意選択的に、1つまたは複数の溶解された無機塩を含有するpH3~11の水溶液であり;より好ましいのは、所望のpHを達成するのに必要なもの以外にいかなる溶質も顕著な量で含有しないpH3~11の水である。最も好ましい溶離液は、pH6~8の水である。
【0098】
連続プロセスでは、フレッシュな水溶液を樹脂ビーズと連続的に接触させ、樹脂ビーズから1つまたは複数の製品ストリームを抜き出す。好ましい連続プロセスは、疑似移動床(SMB)プロセスである。SMBプロセスについては、例えば、以下の文献に説明されている:Juza et al.,Trends in Biotechnology(TIBTECH),volume 18,March 2000,pp 108-118およびRajendran et al.,Journal of Chromatography A,volume 1216,2009,pp 709-738。SMBプロセスにおいて使用するのに好ましい溶離液(SMBプロセスでは「脱着剤」とも呼ばれる)は、上でパルスプロセスについて述べたものと同じである。
【0099】
いくつかの実施形態では、連続プロセスの実行可能性を判断する目的の試験としてパルスプロセスが実施される。例えば、化合物「A」の水溶液を、パルスプロセスで水を溶離液として使用して処理して、保持時間(すなわち「A」がカラムから出るのに必要な時間)を記録する。次いで、やはり水を溶離液として、化合物「B」の水溶液について別のパルスプロセスを同一条件で実施して、「B」の保持時間を記録する。「A」および「B」での保持時間が十分に異なる場合、「A」と「B」との両方を含有した溶液は、SMBプロセスを使用することにより、一方は「A」を含有する溶液、他方は「B」を含有する溶液へと分離され得る。
【0100】
「A」および「B」で保持時間が十分に異なると判断されたら、分離度を検討する。分離度は、例えば、Fornstedt et al.,Analytical Separation Sciences(Anderson,et al.,editor)(Wiley-VCH,2015),Chapter 1で定義されている。「A」についてのパルスプロセスにおいて、カラムからの出口ストリーム中の「A」の濃度を、溶離液を流し始めた瞬間を時間ゼロとして、時間の関数として検討する。濃度対時間のグラフは、ピークを示し、それを三角形にモデル化する。三角形の頂点での時間の値が保持時間(tA)であり、およびピークの幅(WA)がベースラインでの三角形の幅である。「B」についてのパルスプロセスから「B」についての保持時間(tB)およびピーク幅(WB)の特性が決められる。「B」が、保持時間がより長い化合物である場合、分離度RABは、したがって、
RAB=2(tB-tA)/(WA+WB)
である。
【0101】
分離度が高いことは、「A」と「B」とのペアをより容易に分離できることを意味する。
【0102】
以下は、本発明の実施例である。
【実施例】
【0103】
実施例1:樹脂ビーズの調製
樹脂ビーズDOWEX(商標)BSR-1を使用した。これらのビーズは、マクロポーラスであり、スチレン/ジビニルベンゼンコポリマーを含有し、構造(S18):
【0104】
【0105】
【0106】
のペンダント基を含有する。(S18)の右端にある2つの炭素原子と、それらに結合されているヒドロキシル基とは、cis-ジオール配位となっている。本発明の樹脂ビーズを作成するために、1.5LのDOWEX(商標)BSR-1ビーズを脱イオン水中H3BO3の2.0N溶液の2Lと混合した。混合物を室温(約23℃)で2時間撹拌した。次いで、過剰の液体をデカントし、脱イオン水を用いて、洗浄水のpHがほぼ7になるまで樹脂を洗浄した。上に示したペンダント基は、すべて下記の構造(S19)に転換されたものと考えられる。
【0107】
【0108】
実施例1で製造された樹脂ビーズの集合体は、611μmの調和平均直径と、1.39の均等係数とを有した。
【0109】
実施例2:各種の溶質についてのパルス試験
下記の溶質についてパルス試験を実施した。
【0110】
【0111】
パルス試験は、以下のようにして実施した。単一の溶質の溶液を水中20重量%溶質になるように調製した。高さ91cm、直径2.7cmのカラムを使用した。カラムに充填された樹脂の体積は、526mLであった。カラム中の樹脂の上に26.3mLの溶液をのせた。水を用い、60℃で2.0カラム体積/時間(17.47mL/分)の速度において溶離を実施した。「比較例(「Com」)」試験は、DOWEX(商標)BSR-1樹脂を使用して実施し、「実施例(「Ex」)」試験は、実施例1の方法によって作成された樹脂を使用して実施した。
【0112】
それぞれのパルス試験において、保持時間および幅を求めた。次いで、所定の樹脂タイプおよび所定の溶質のペアについて、Fornstedtらによって定義された先に挙げた分離度の計算を使用して分離度を求めた。分離度の値は、以下のとおりである。
【0113】
【0114】
上で示されたデータの表示方法については、以下を参照されたい。溶質JおよびBの場合、比較例樹脂の場合の分離度は、0.004であるのに対して、実施例樹脂の場合の分離度は、0.184であった。
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
実施例樹脂を使用すると、一般的に分離度の値に改良がもたらされる。例えば、特定の溶質のペアについて分離度の値のRQ=(実施例樹脂を使用した分離度)/(比較例樹脂を使用した分離度)の商で考えることができる。
【0124】
比較例樹脂と実施例樹脂との両方で分離度が低いペアについて、結果を無視すると、一般的な改良の1つの態様が明らかになる。例えば、1つの分析において、溶質の特定のペアで比較例樹脂を使用した分離度と実施例樹脂を使用した分離度との両方が0.16よりも低い場合、それらのデータは無視される。この分析の場合、特定の溶質のペアでは両方の樹脂で分離度が低いため、いずれが優れているかを論じるのは不適切である。残りのデータでは(すなわち、すべての溶質のペアで一方の分離度もしくは他方の分離度または両方の分離度が0.16以上であると考えられる場合)、商のRQは、0.81(溶質ペアCL)から659(溶質ペアCQ)まで変化する。したがって、少なくとも一方の樹脂が0.16以上の分離度を有する場合には常に、両方の樹脂が類似しているか、またはそうでなければ実施例樹脂がより良好であり、場合によりはるかにより良好である。
【0125】
別の分析では、比較例樹脂を使用した分離度および実施例樹脂を使用した分離度の両方が0.22未満である溶質のペアでは、結果が無視されるペアも考えられる。その場合、商RQは、1.19(溶質ペアLO)から659(溶質ペアCQ)まで変化する。したがって、少なくとも一方の樹脂が相対的に良好な分離度(すなわち0.22以上)である溶質ペアのいずれにおいても、実施例樹脂が常により良好である。このデータの組合せから代表的なRQ値を以下に示す。
【0126】
【0127】
【0128】
実施例3:混合した糖の溶液の分離
以下の比較例樹脂を試験した。
【0129】
CR-2=マクロポーラス樹脂、実施例1の樹脂に類似、同じ調和平均直径(611μm)および同じ均等係数(1.39)を有する。しかしながら、ペンダント基は、(S19)の代わりに(S20)であった。
【0130】
【0131】
CR-3=マクロポーラス樹脂、CR-2に類似しているが、調和平均直径=640μm、均等係数=1.1未満。
【0132】
CR-4=CR-2に類似の樹脂、ただし、ゲル樹脂であり、調和平均直径=320μm、均等係数=1.1未満。
【0133】
CR-5=DOWEX(商標)BSR-1。この樹脂は、実施例1に類似しているが、ただし、ペンダント基(S19)の代わりにペンダント基(S18)を有する。
【0134】
42重量%のフルクトースを含有し、グルコースも含有し、および重量で50.05%の溶解固形分を有する糖の水溶液を調製した。糖濃度は、50Brixであった。
【0135】
実施例2と同様に、カラムに樹脂を充填した。糖水溶液のサンプルをカラムの頂上に配置した。糖の水溶液の体積は、カラム体積の11.2%であった。次いで、水を用い、60℃で1.2ベッド体/時間の速度においてカラムを溶離させた。カラムは、25mmの直径および1219mmの長さを有する。ベッドの全体積は、525mLであった。溶離液の個々のフラクションは、オートサンプラーを用いて捕集した。それぞれのフラクションについて、AMINEX(商標)HPX-87Cカラム(Bio-Rad Laboratories,Inc.)を85℃、0.6mL/分、注入体積20μLで用いて、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して糖の存在およびタイプを分析した。それらのフラクションからのグルコースおよびフルクトースについての濃度結果を、溶離体積(ベッド体積)に対してプロットし、上述の方法を使用して分離度を計算した。実施例2におけるのと同様に、グルコースおよびフルクトースについての分離度の値が得られた。4つの樹脂を用いて4回の実験を実施し、結果は、以下のとおりである。
【0136】
【0137】
表からわかるように、スルホネートペンダント基(すなわちS20)を使用した場合、0.3よりも高い分離度の値を有する唯一の樹脂がCR-4であったが、それは、小さい直径および均質な分布の両方を有した。実施例1の樹脂(ホウ素含有ペンダント基S19を使用)は、それが比較的大きいサイズおよび比較的大きい均等係数を有するにもかかわらず、最良の分離度の値を達成した。さらに、実施例1とCR-5との比較から、ホウ素含有基の存在が分離度を大きく改良することがわかる。