(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】電気油圧式のブレーキ設備を動作させる方法及びブレーキ設備
(51)【国際特許分類】
B60T 8/17 20060101AFI20220203BHJP
B60T 8/88 20060101ALI20220203BHJP
B60T 17/18 20060101ALI20220203BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B60T8/17 B
B60T8/88
B60T17/18
B60T13/74 G
(21)【出願番号】P 2019540694
(86)(22)【出願日】2017-10-09
(86)【国際出願番号】 EP2017075632
(87)【国際公開番号】W WO2018069223
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2019-05-09
(31)【優先権主張番号】102016219699.5
(32)【優先日】2016-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102017216118.3
(32)【優先日】2017-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】399023800
【氏名又は名称】コンティネンタル・テーベス・アクチエンゲゼルシヤフト・ウント・コンパニー・オッフェネ・ハンデルスゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】パイヒル・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シュミット・ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】ウルリッヒ・トルステン
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-009700(JP,A)
【文献】国際公開第2016/096533(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0152085(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0225425(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0203626(US,A1)
【文献】国際公開第2012/067207(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/096538(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12-8/1769
8/32-8/96
13/00-13/74
15/00-17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-油圧的に操作可能な少なくとも1つの第1の、第2の、第3の及び第4のホイールブレーキ(8,9,10,11)と、
-電気的に操作可能な少なくとも1つの分離弁(23a,23b)を介して前記4つのホイールブレーキ(8,9,10,11)に油圧的に接続された、ブレーキペダル(1a)を用いて操作可能なマスターブレーキシリンダ(2)と、前記4つのホイールブレーキ(8,9,10,11)に油圧的に接続された、電気的に制御可能な第1の圧力供給装置(5)とを含む第1のブレーキシステム(300)と、
-前記第1及び第3のホイールブレーキ(8,10)に油圧的に接続された電気的に制御可能な第2の圧力供給装置(86)と、前記第1及び第3のホイールブレーキ(8,10)のためのそれぞれ1つの遮断弁(220,240)とを含む第2のブレーキシステム(70)であって、前記遮断弁が、それぞれ、前記第1のブレーキシステム(300)と対応する前記ホイールブレーキ(8,10)との間の油圧的な接続部(200,204)に配置されている、前記第2のブレーキシステムと
を有し、前記第2のブレーキシステム(70)が、前記第1のブレーキシステム(300)と前記4つのホイールブレーキ(8
,9,10,11)の内の第1及び第3のホイールブレーキ(8,10)だけとの間に油圧的に直列に接続されている、原動機付き車両用の電気油圧式のブレーキ設備(1)を動作させる方法において、
当該ブレーキ設備(1)のあらかじめ設定された状態において、前記遮断弁(220,240)が開放されているときに前記第2の圧力供給装置(86)が作動されることで、前記第2及び第4のホイールブレーキ(9,11)においてブレーキ圧増大が行われることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第2及び第4のホイールブレーキ(9,11)におけるブレーキ圧増大のために、圧力媒体が前記第2の圧力供給装置(86)から前記遮断弁(220,240)及び前記第1のブレーキシステム(300)を介して前記第2及び第4のホイールブレーキへ搬送されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の圧力供給装置(86)を用いた前記第2及び第4のホイールブレーキ(9,11)におけるブレーキ圧増大のために、前記第1のブレーキシステム(300)の前記分離弁(23a,23b)のうち少なくとも1つが操作されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の圧力供給装置(86)を用いた前記第2及び第4のホイールブレーキ(9,11)におけるブレーキ圧増大のために、前記第1のブレーキシステムの前記少なくとも1つの分離弁(23a,23b)が閉鎖されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のブレーキシステムは、前記マスターブレーキシリンダに油圧的に接続されたシミュレーション装置(3)を含んでおり、該シミュレーション装置には電気的に操作可能なシミュレータ弁(32)が割り当てられており、該シミュレータ弁を用いて、前記シミュレーション装置が接続可能及び遮断可能であること、及び前記ブレーキペダル(1a)の操作時には、前記シミュレーション装置(3)が、前記第2の圧力供給装置(86)を用いたブレーキ圧増大中に前記シミュレータ弁(32)を用いて接続されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の圧力供給装置(5)を用いた圧力増大が不可能であるときに、前記ブレーキ設備の前記あらかじめ設定された状態のうち1つが存在することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
更に、前記第1のブレーキシステム(300)の前記少なくとも1つの分離弁(23a,23b)の電気的な操作が可能であるときに、前記ブレーキ設備の前記あらかじめ設定された状態のうち1つが存在することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
更に、シミュレーション装置の接続又は遮断のために設けられた電気的に操作可能なシミュレータ弁(32)の電気的な操作が可能であるときに、前記ブレーキ設備の前記あらかじめ設定された状態のうち1つが存在することを特徴とする請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
更に、前記第1のブレーキシステム(300)のセンサ(20,25)を用いて前記ブレーキペダル(1a)の操作の検出が可能であるときに、前記ブレーキ設備の前記あらかじめ設定された状態のうち1つが存在することを特徴とする請求項6~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の圧力供給装置(5)に少なくとも部分的に欠陥があるか、又は前記第1の圧力供給装置(5)により提供される圧力増大を特定できないときに、前記ブレーキ設備の前記あらかじめ設定された状態のうち1つが存在することを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のブレーキシステム(300)に割り当てられた第1の圧力媒体貯留容器(4)内に、あらかじめ設定された圧力媒体閾値よりも低い圧力媒体レベルが存在するときに、前記ブレーキ設備の前記あらかじめ設定された状態のうち1つが存在することを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2のブレーキシステム(70)が、少なくとも1つの第2の圧力媒体貯留容器(120,130)と、無通電で閉鎖する少なくとも1つの減圧弁(176,186)とを含んでおり、前記第2の圧力供給装置(86)が、圧力側で、前記少なくとも1つの減圧弁を介して前記第2の圧力媒体貯留容器(120,130)に接続されていること、及び前記第2又は第4のホイールブレーキ(9,11)におけるブレーキ圧低減が、前記少なくとも1つの減圧弁(176,186)の開放によってなされることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の圧力供給装置(86)が、吸込み側で、無通電で閉鎖する少なくとも1つの吸込み弁(142,152)を介して前記少なくとも1つの第2の圧力媒体貯留容器(120,130)に接続されていること、及び前記第2の圧力供給装置(86)を用いた前記第2及び第4のホイールブレーキ(9,11)における圧力増大のために、前記少なくとも1つの吸込み弁(142,152)が開放されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のブレーキシステム(300)が、前記4つのホイールブレーキ(8~11)のそれぞれのために、電気的に操作可能な1つの入口弁(6a~6d)を含んでおり、該入口弁が、前記第1の圧力供給装置(5)と前記ホイールブレーキの間に配置されていること、及び前記ブレーキ設備の前記あらかじめ設定された状態においてブレーキ圧制御が行われ、対応するホイールブレーキに割り当てられた、前記第1のブレーキシステム(300)の前記入口弁を閉鎖することで、前記第2又は第4のホイールブレーキ(9,11)におけるホイールブレーキ圧の制限がなされることを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
-油圧的に操作可能な少なくとも1つの第1の、第2の、第3の及び第4のホイールブレーキ(8,9,10,11)と、
-電気的に操作可能な少なくとも1つの分離弁(23a,23b)を介して前記4つのホイールブレーキ(8,9,10,11)に油圧的に接続された、ブレーキペダルを用いて操作可能なマスターブレーキシリンダ(2)と、第1の電子的な開ループ及び閉ループ制御ユニット(12)と、前記4つのホイールブレーキに油圧的に接続された、電気的に制御可能な第1の圧力供給装置(5)とを含む第1のブレーキシステム(300)と、
-前記第1及び第3のホイールブレーキ(8,10)に油圧的に接続された電気的に制御可能な第2の圧力供給装置(86)と、第2の電子的な開ループ及び閉ループ制御ユニット(182)と、前記第1及び第3のホイールブレーキ(8,10)のためのそれぞれ1つの遮断弁(220,240)とを含む第2のブレーキシステム(70)であって、前記遮断弁が、それぞれ、前記第1のブレーキシステム(300)と対応する前記ホイールブレーキとの間の油圧的な接続部(200,204)に配置されている、前記第2のブレーキシステムと
を有し、前記第2のブレーキシステム(70)が、前記第1のブレーキシステム(300)と前記4つのホイールブレーキ(8
,9,10,11)の内の第1及び第3のホイールブレーキ(8,10)だけとの間に油圧的に直列に接続されている、原動機付き車両用の電気油圧式のブレーキ設備(1)において、
前記第2の電子的な開ループ及び閉ループ制御ユニット(182)が前記第2の圧力供給装置(86)を作動させ、前記遮断弁(220,240)が開放されていることで、当該ブレーキ設備(1)のあらかじめ設定された状態において、前記第2及び第4のホイールブレーキ(9,11)においてブレーキ圧増大が行われることを特徴とするブレーキ設備(1)。
【請求項16】
前記第1及び第3のホイールブレーキ(8,10)が前記原動機付き車両のフロントアクスルの車輪に割り当てられており、前記第2及び第4のホイールブレーキ(9,11)が前記原動機付き車両のリヤアクスルの車輪に割り当てられていることを特徴とする請求項15に記載のブレーキ設備(1)。
【請求項17】
前記第2の圧力供給装置(86)を用いた前記第2及び第4のホイールブレーキ(9,11)におけるブレーキ圧増大のために、前記第1のブレーキシステム(300)の前記分離弁(23a,23b)のうち少なくとも1つが前記第1の電子的な開ループ及び閉ループ制御ユニット(12)によって電気的に切り換えられ、その結果、圧力媒体が前記第2の圧力供給装置(86)から前記遮断弁(220,240)及び前記第1のブレーキシステム(300)を介して前記第2及び第4のホイールブレーキ(9,11)へ搬送されることを特徴とする請求項15又は16に記載のブレーキ設備(1)。
【請求項18】
当該ブレーキ設備において請求項2~14のいずれか1項に記載の方法が実行されることを特徴とする請求項15~17のいずれか1項に記載のブレーキ設備(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分による電気油圧式のブレーキ設備を動作させる方法と、このような方法を実行するブレーキ設備とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
原動機付き車両技術において、「ブレーキバイワイヤ」ブレーキ設備は、ますます普及している。このようなブレーキ設備は、車両運転者により操作可能なマスターブレーキシリンダのほかに、電気式に作動可能な圧力供給装置を含んでおり、この圧力供給装置を用いて、車両運転者がホイールブレーキへの直接的な介入から切り離されている「ブレーキバイワイヤ」の動作態様でホイールブレーキの操作が行われる。
【0003】
自動化されて走行する車両において用いられるべきブレーキ設備は、自動化された走行(オートパイロット)中に生じるブレーキ設備におけるエラーに対して、人間である運転者が走行タスクを再び引き継ぐまで車両の安全な制動を保証する、電気的に制御可能な予備レベルを提供する必要がある。
【0004】
これについて、ブレーキペダルを用いて操作可能なマスターブレーキシリンダと、ブレーキペダルフィーリングの必要に応じた生成のための接続可能及び遮断可能なシミュレーション装置と、4つのホイールブレーキの操作のための、電気的に制御可能な第1の圧力供給装置と、4つのホイールブレーキのための車輪個々のブレーキ圧を調整するための、電気的に制御可能な圧力変調装置とを含むプライマリブレーキシステムと、プライマリブレーキシステムと2つのフロントホイールブレーキの間へ直列に接続された、2つのフロントホイールブレーキのためのセカンダリブレーキシステムとを有するブレーキ設備を提供することが特許文献1から知られている。セカンダリブレーキシステムは、フロントホイールブレーキを操作する電気的に制御可能な第2の圧力供給装置と、フロントホイールブレーキごとに、電気的に制御可能な少なくとも1つの遮断弁とを含んでおり、この遮断弁は、第1のブレーキシステムと対応するフロントホイールブレーキの間の油圧的な接続部に配置されている。セカンダリブレーキシステムは、プライマリブレーキシステムの故障時に、自動化された動作における車両の制動のための、電気的に作動可能な予備レベルとなるものである。ここで、特許文献1には、ブレーキ設備の通常動作態様において、プライマリブレーキシステムの第1の圧力供給装置を用いて、4つのホイールブレーキにブレーキ圧を供給することが記載されている。第1の圧力供給装置又はプライマリブレーキシステムの故障時には、セカンダリブレーキシステムの第2の圧力供給装置を用いて、2つのフロントホイールブレーキにのみブレーキ圧が供給される。このことは、自動化された動作における車両の制動のための、電気的に作動可能な予備レベルとなるものである。特許文献1には、プライマリブレーキシステム又はセカンダリブレーキシステムがそれぞれ排他的に(独占的に)仮想的な運転者(オートパイロット)のブレーキ要求を実現する、ブレーキ設備のための動作コンセプトが記載されている。ここで、「排他的」とは、ブレーキシステムが圧力供給を引き受ける間には、他のブレーキシステムがパッシブ又は「無通電」であり、すなわち圧力供給装置も、また他のブレーキシステムの弁のうちいずれもが操作されないことを意味する。ただし、この種の動作コンセプトは一連の欠点を有している。すなわち、例えば人間である運転者の重畳的なブレーキ操作は、セカンダリブレーキシステム、すなわち運転者引継ぎによる圧力調整中にはシステムによってコントロールがなされ得ない。セカンダリブレーキシステムによる圧力調整時にも、4つのホイールブレーキのうち2つのホイールブレーキに対してのみ、可能な制動が約60%に制限されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国特許出願第102014225954号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の基礎となる課題は、第1のブレーキシステムと、第1のブレーキシステムと少なくとも4つのホイールブレーキのうち2つのホイールブレーキの間へ直列に油圧的に接続されている第2のブレーキシステムとを有するブレーキ設備を動作させる改善された方法及び対応するブレーキ設備を提供することにある。特に、上述の欠点が回避されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1による方法及び請求項15によるブレーキ設備によって解決される。
【0008】
本発明は、油圧的に操作可能な少なくとも1つの第1の、第2の、第3の及び第4のホイールブレーキと、電気的に操作可能な少なくとも1つの分離弁を介して前記4つのホイールブレーキに油圧的に接続された、ブレーキペダルを用いて操作可能なマスターブレーキシリンダと、前記4つのホイールブレーキに油圧的に接続された、電気的に制御可能な第1の圧力供給装置とを含む第1のブレーキシステムと、前記第1及び第3のホイールブレーキに油圧的に接続された電気的に制御可能な第2の圧力供給装置と、前記第1及び第3のホイールブレーキのためのそれぞれ1つの遮断弁とを含む第2のブレーキシステムであって、前記遮断弁が、それぞれ、前記第1のブレーキシステムと対応する前記ホイールブレーキとの間の油圧的な接続部に配置されている、前記第2のブレーキシステムとを有する、電気油圧式のブレーキ設備において、当該ブレーキ設備のあらかじめ設定された状態において、前記遮断弁が開放されているときに前記第2の圧力供給装置が作動されることで、前記第2及び第4のホイールブレーキにおいてブレーキ圧増大を行うという思想に基づくものである。
【0009】
まず、電気的に制御可能な第1の圧力供給装置は、4つのホイールブレーキのそれぞれにおいてブレーキ圧を増大させることができるように、4つのホイールブレーキに油圧的に接続されており、電気的に制御可能な第2の圧力供給装置は、第1及び第3のホイールブレーキにおいてブレーキ圧を増大させることができるように、第1及び第3のホイールブレーキに油圧的に接続されている。
【0010】
本発明は、第2の圧力供給装置の作動時に、ブレーキ圧増大のために第2の圧力供給装置に油圧的に接続された第1及び第3のホイールブレーキにおけるブレーキ圧増大のほか、第2及び第4のホイールブレーキにおけるブレーキ圧増大も行われる。なぜなら、圧力媒体が、第2の圧力供給装置から、開放された遮断弁を介して、その側で第2及び第4のホイールブレーキに接続されている第1のブレーキシステムへ至るためである。したがって、ブレーキ設備のあらかじめ設定された状態では、第2の圧力供給装置に直接接続された第1及び第3のホイールブレーキのみならず、第2のブレーキシステムの第2の圧力供給装置を用いて4つ全てのホイールブレーキにおけるブレーキ圧増大が行われる。
【0011】
ブレーキ要求が仮想的な運転者又はオートパイロットにより設定される場合には、方法は、好ましくは、高次に自動化された走行におけるブレーキ設備を動作させる方法である。
【0012】
第1及び第3のホイールブレーキは、第2のブレーキシステム(あるいは第2のブレーキシステムの各遮断弁)を介して第1のブレーキシステム(ひいてはマスターブレーキシリンダ及び第1の圧力供給装置)に油圧的に接続されており、すなわち、第1及び第3のホイールブレーキに対して、第2のブレーキシステムが第1のブレーキシステムと第1及び第3のホイールブレーキの間に油圧的に配置されている。
【0013】
好ましくは、(第1のホイールブレーキのための)第1のブレーキシステムの第1の出口圧力接続部は(第1のホイールブレーキのための)第2のブレーキシステムの入口圧力接続部に接続されており、(第3のホイールブレーキのための)第1のブレーキシステムの第3の出口圧力接続部は、(第3のホイールブレーキのための)第2のブレーキシステムの第2の入口圧力接続部に接続されている。
【0014】
好ましくは、第2のブレーキシステムは、第1のブレーキシステム(特に第1のブレーキシステムの第1の出口圧力接続部)を第1のホイールブレーキに接続する油圧的な第1の接続管路と、第1のブレーキシステム(特に第1のブレーキシステムの第3の出口圧力接続部)を第3のホイールブレーキに接続する油圧的な第2の接続管路とを含んでおり、第1及び第2の接続管路には、それぞれ対応する遮断弁が配置されている。
【0015】
第2及び第4のホイールブレーキは、好ましくは第1のブレーキシステムに直接接続されている。このことは、第2及び第4のホイールブレーキがそれぞれ1つのブレーキ管路を介して第1のブレーキシステムに油圧的に接続されていることを意味し、第2及び第4のホイールブレーキのためのブレーキ管路には、第1のブレーキシステムの出口圧力接続部の後には(あるいは下流へ向けて)電気的に作動可能な弁は配置されていない。ブレーキ管路には、ポンプ又はこれに類するものも配置されていない。特に好ましくは、ブレーキ管路には逆止弁も配置されていない。
【0016】
好ましくは、(第2のホイールブレーキのための)第2の出口圧力接続部は(第2の)ブレーキ管路を介して第2のホイールブレーキに直接接続されており、(第4のホイールブレーキのための)第1のブレーキシステムの第4の出口圧力接続部は、(第4の)ブレーキ管路を介して第4のホイールブレーキに直接接続されている。これらブレーキ管路は、第2のブレーキシステムの油圧ユニットの外部で、又は第2のブレーキシステムの油圧ユニットを通って延びている。しかし、両ケースにおいては、第2の圧力供給装置は、第2及び第4のホイールブレーキ又は第2の若しくは第4のブレーキ管路に直接接続されていない。
【0017】
好ましくは、第1及び第3のホイールブレーキは、原動機付き車両のフロントアクスルに割り当てられている。対応して、第2及び第4のホイールブレーキは、原動機付き車両のリヤアクスルに割り当てられている。
【0018】
好ましくは、第2の圧力供給装置は、それぞれ第1あるいは第3のホイールブレーキに油圧的に直接接続されており、すなわち、流れ抵抗となり得る電気的に操作可能な弁は第2の圧力供給装置とホイールブレーキの間には配置されていない。
【0019】
好ましくは、第2の圧力供給装置は、圧力側で、遮断弁とホイールブレーキの間の範囲で、すなわち各遮断弁の下流において第1のブレーキシステムと第1あるいは第3のホイールブレーキの間の油圧的な接続部に接続されている。
【0020】
好ましくは、第1のブレーキシステムは、4つのホイールブレーキのそれぞれについて(車輪個別の)出口圧力接続部を含んでいる。好ましくは、第2のブレーキシステムは、第1及び第3のホイールブレーキについて車輪個別の入口圧力接続部と、車輪個別の出口圧力接続部とを含んでいる。このとき、第2のブレーキシステムの入口圧力接続部は、それぞれホイールブレーキに割り当てられた第1のブレーキシステムの出口圧力接続部に接続されているとともに、第2のブレーキシステムの出口圧力接続部はホイールブレーキに接続されている。
【0021】
好ましくは、第2及び第4のホイールブレーキにおけるブレーキ圧増大のために、圧力媒体が第2の圧力供給装置から遮断弁及び第1のブレーキシステムを介して第2及び第4のホイールブレーキへ搬送される。
【0022】
好ましくは、電気的に制御可能な第1の圧力供給装置は、電気的に操作可能な少なくとも1つのシーケンス弁を介して4つのホイールブレーキに油圧的に接続されている。
【0023】
本発明の好ましい一実施形態によれば、第2の圧力供給装置を用いた第2及び第4のホイールブレーキにおけるブレーキ圧増大のために、第1のブレーキシステムの弁のうち少なくとも1つが操作される。第1及び第2のブレーキシステムの電気的に操作可能な構成要素が操作されるため、この動作方法は、第1及び第2のブレーキシステムの共同動作コンセプトとも呼ばれる。共同動作コンセプトは、改善された全体的なブレーキ作用を可能とし、制動時の車両のヨー外乱を防止又は低減するとともに、人間である運転者の重畳的なブレーキ操作時にブレーキ設備のコントロールを可能とする。
【0024】
好ましくは、第2の圧力供給装置を用いた第2及び第4のホイールブレーキにおけるブレーキ圧増大時には、第1のブレーキシステムの少なくとも1つの分離弁が閉鎖される。運転者によるブレーキペダル操作がなされず、仮想的な運転者(オートパイロット)の制動意志が存在する場合にも、分離弁は閉鎖される。したがって、マスターブレーキシリンダはホイールブレーキから遮断される。第2あるいは第4のホイールブレーキは、同様に第2の圧力供給装置に接続されているとともに、静的な場合には第1あるいは第3のホイールブレーキと同一のブレーキ圧に達する。
【0025】
第1のブレーキシステムが、マスターブレーキシリンダに油圧的に接続されたシミュレーション装置を含んでおり、該シミュレーション装置には電気的に操作可能なシミュレータ弁が割り当てられており、該シミュレータ弁を用いて、シミュレーション装置が接続可能及び遮断可能であれば、運転者によるブレーキペダルの操作時には、シミュレーション装置が、第2の圧力供給装置を用いたブレーキ圧増大中にシミュレータ弁を用いて接続される。したがって、圧力媒体は、マスターブレーキシリンダからシミュレーション装置へ流れることができる。
【0026】
好ましくは、ブレーキペダルの操作は、第1のブレーキシステムのセンサを用いて検出され、第2の圧力供給装置の作動時にセンサの信号が考慮される。
【0027】
第1の圧力供給装置を用いた圧力増大が不可能である場合に、第2の圧力供給装置を用いた第2及び第4のホイールブレーキにおけるブレーキ圧増大のためのブレーキ設備のあらかじめ設定された状態のうち1つが存在する。そして、仮想的な運転者又はオートパイロットによるブレーキ要求が第2の圧力供給装置を用いて行われる。
【0028】
更に、第1のブレーキシステムの少なくとも1つの分離弁の電気的な操作が可能であれば、すなわち、第1のブレーキシステムの1つ又は複数の分離弁の操作が動作可能であれば、ブレーキ設備のあらかじめ設定された状態のうち1つが存在する(すなわち第2の圧力供給装置を用いた第2及び第4のホイールブレーキにおけるブレーキ圧増大が実行される)。そうでない場合には、マスターブレーキシリンダはホイールブレーキから分離されることが可能である。
【0029】
更に、シミュレーション装置の接続又は遮断のために設けられた電気的に操作可能なシミュレータ弁の電気的な操作が可能であるときに、すなわち、第1のブレーキシステムのシミュレータ弁の操作が動作可能であるときに、ブレーキ設備のあらかじめ設定された状態のうち1つが存在する。そうでない場合には、シミュレーション装置は接続されることができず、圧力媒体は、マスターブレーキシリンダからシミュレーション装置へ移動することができない。
【0030】
更に、第1のブレーキシステムのセンサを用いてブレーキペダルの操作の検出が可能であるときに、ブレーキ設備のあらかじめ設定された状態のうち1つが存在する。
【0031】
第1の圧力供給装置を用いて不十分な、又は定量化不能な圧力増大のみが可能であるときに、ブレーキ設備のあらかじめ設定された状態のうち1つが存在する。このことは、例えば、(例えば第1の圧力供給装置に割り当てられた圧力センサを用いた)第1の圧力供給装置の圧力感知が不可能であるか、又は欠陥がある場合に設定されている。
【0032】
第1のブレーキシステムに割り当てられ、特に大気圧下にある第1の圧力媒体貯留容器内に、あらかじめ設定された圧力媒体閾値よりも低い圧力媒体レベルが存在するときに、ブレーキ設備の前記あらかじめ設定された状態のうち1つが存在する(すなわち、第2の圧力供給装置を用いた第2及び第4のホイールブレーキにおけるブレーキ圧増大が実行される)。そして、第2の圧力供給装置を用いたブレーキ圧増大が、1つの、又は第2のブレーキシステムに割り当てられた複数の第2の圧力媒体貯留容器からの圧力媒体によって行われる。
【0033】
第1のブレーキシステムはプライマリブレーキシステムとも呼ばれ、第2のブレーキシステムはセカンダリブレーキシステムとも呼ばれる。
【0034】
第1及び第2のブレーキシステムは、好ましくは別々のモジュール(ユニット)として、あるいは別々の電気油圧式の開ループ及び閉ループ制御ユニットとして形成されており、当該ブレーキシステムは、それぞれ、油圧ユニット(あるいは油圧式の開ループ及び閉ループ制御ユニット)及び電子ユニット(あるいは電子的な開ループ及び閉ループ制御ユニット)を含んでいる。しかし、第1及び第2のブレーキシステム、特にその油圧的な構成要素が1つのユニットあるいは1つのモジュール(例えばハウジング又は油圧ユニット/油圧式の開ループ及び閉ループ制御ユニット)に配置されていることも可能である。対応する圧力供給装置及び各ブレーキシステムの弁を作動させるために、ブレーキシステムのそれぞれに別々の電子ユニットあるいは電子的な開ループ及び閉ループ制御ユニットが割り当てられていても有利である。
【0035】
好ましくは、第1のブレーキシステムが、マスターブレーキシリンダに油圧的に接続されているシミュレーション装置を含んでおり、シミュレーション装置を接続可能及び遮断可能な、電気的に操作可能なシミュレータ弁がシミュレーション装置に割り当てられている。シミュレーション装置は、ホイールブレーキからのマスターブレーキシリンダの分離時に、例えば「ブレーキバイワイヤ」動作態様において、知られたブレーキペダルフィーリングが運転者に伝達されるべきである。
【0036】
好ましくは、第1のブレーキシステムは、4つのホイールブレーキのそれぞれのために、車輪個別のブレーキ圧を調整する、電気的に操作可能な少なくとも1つの入口弁を含んでいる。入口弁は、それぞれ第1の圧力供給装置とホイールブレーキの間に配置されている。
【0037】
特に好ましくは、第2のホイールブレーキに割り当てられた入口弁は第2のホイールブレーキに直接接続されており、特に好ましくは、第4のホイールブレーキに割り当てられた入口弁は第4のホイールブレーキに直接接続されている。第1のホイールブレーキに割り当てられた入口弁は、特に間接的に、第2のブレーキシステムの、第1のホイールブレーキに割り当てられた遮断弁に接続されており、第3のホイールブレーキに割り当てられた入口弁は、特に間接的に、第3のホイールブレーキに割り当てられた遮断弁に接続されている。したがって、第2のブレーキシステムの遮断弁は、それぞれ第1のブレーキシステムの入口弁と対応するホイールブレーキの間の油圧接続部に配置されている。
【0038】
好ましくは、ブレーキ設備のあらかじめ設定された状態では、あるいは共同動作コンセプト中には、ブレーキ圧制御、特にスリップ制御が行われ、第1のブレーキシステムの、対応するホイールブレーキに割り当てられた入口弁を閉鎖することで第2又は第4のホイールブレーキにおけるホイールブレーキ圧の制限がなされる。
【0039】
好ましくは、第1のホイールブレーキの入口弁及び第2のホイールブレーキの入口弁は、入口側で(すなわち、ホイールブレーキとは反対側のその接続部で)第1のブレーキ回路供給管路を介して互いに接続されている。好ましくは、第3のホイールブレーキの入口弁及び第4のホイールブレーキの入口弁は、入口側で(すなわち、ホイールブレーキとは反対側のその接続部で)第2のブレーキ回路供給管路を介して互いに接続されている。第1のブレーキ回路供給管路は、第1の分離弁を介してマスターブレーキシリンダに接続されているとともに、第1のシーケンス弁を介して第1の圧力供給装置に接続されている。第2のブレーキ回路供給管路は、第2の分離弁を介してマスターブレーキシリンダに接続されているとともに、第2のシーケンス弁を介して第1の圧力供給装置に接続されている。特に好ましくは、分離弁は無通電で開放し、シーケンス弁は無通電で閉鎖するように構成されている。
【0040】
第2のブレーキシステムは、好ましくは少なくとも1つの、特に大気圧下にある第2の圧力媒体貯留容器を含んでおり、この第2の圧力媒体貯留容器から第2の圧力供給装置が圧力媒体を吸引することが可能である。特に好ましくは、第2の圧力媒体貯留容器は、第2のブレーキシステムの油圧ユニットに統合されている。これにより、第1のブレーキシステムに割り当てられた圧力媒体貯留容器への、密閉されていないか、又は破損した油圧管路により、必要な場合に十分な圧力媒体が提供されないということを防止することが可能である。
【0041】
第2のブレーキシステムは、好ましくは無通電で閉鎖する少なくとも1つの減圧弁を含んでおり、第2の圧力供給装置は、圧力側で、少なくとも1つの減圧弁を介して第2の圧力媒体貯留容器に接続されている。
【0042】
共同動作コンセプト中の第2又は第4のホイールブレーキにおけるブレーキ圧低減は、好ましくは少なくとも1つの減圧弁の開放によってなされる。
【0043】
好ましくは、第2の圧力供給装置は、吸込み側で、無通電で閉鎖する少なくとも1つの吸込み弁を介して少なくとも1つの第2の圧力媒体貯留容器に接続されている。
【0044】
共同動作コンセプト中の第2の圧力供給装置を用いた第2及び第4のホイールブレーキにおけるブレーキ圧低減のために、好ましくは少なくとも1つの吸込み弁が開放される。
【0045】
好ましくは、第2の圧力供給装置は、第1のホイールブレーキのための第1の回路と、第3のホイールブレーキのための第2の回路とを有する二回路に構成されている。
【0046】
有利には、第2の圧力供給装置は、1つの電気モータで共通に駆動される2つのポンプを含んでいる。
【0047】
好ましくは、第2のブレーキシステムは、大気圧下にある2つの第2の圧力媒体貯留容器を含んでいる。特に好ましくは、第1のポンプの吸込み側は、第1の吸込み管路を介して1つの第2の圧力媒体貯留容器に油圧的に接続されており、第2のポンプの吸込み側は、第2の吸込み管路を介して他の第2の圧力媒体貯留容器に油圧的に接続されている。好ましくは、それぞれ1つの第2の圧力媒体貯留容器は、ホイールブレーキ(第1又は第3のホイールブレーキ)のうちちょうど1つのためのブレーキフルードを供給する。
【0048】
有利には、吸込み管路のそれぞれには、無通電で閉鎖する吸込み弁が接続されている。
【0049】
有利には、第1のポンプは、圧力側で、遮断弁とホイールブレーキの間の範囲で、すなわち対応する遮断弁の下流において第1のブレーキシステムと第3のホイールブレーキの間の油圧的な接続部に接続されている。有利には、第2のポンプは、圧力側で、遮断弁とホイールブレーキの間の範囲で、すなわち対応する遮断弁の下流において第1のブレーキシステムと第1のホイールブレーキの間の油圧的な接続部に接続されている。
【0050】
第1のブレーキシステムと第1のホイールブレーキの間の油圧的な接続部から、分離弁と第1のホイールブレーキの間の範囲において第1の油圧的な第1のリターン管路が分岐しており、この第1のリターン管路は、割り当てられた第2の圧力媒体貯留容器に油圧的に接続されている。対応して、第1のブレーキシステムと第3のホイールブレーキの間の油圧的な接続部から、対応する分離弁と第3のホイールブレーキの間の範囲において第2の油圧的なリターン管路が分岐しており、この第2のリターン管路は、他の第2の圧力媒体貯留容器に油圧的に接続されている。このようにして、圧力媒体が目的をもって適当なホイールブレーキから排出されることが可能である。これにより、第2のブレーキシステムに直接油圧的に接続された第1及び第3のホイールブレーキにおける様々なブレーキ圧の調整が可能となる。
【0051】
有利には、各リターン管路には、無通電で閉鎖する減圧弁が接続されている。好ましくは、減圧弁は、圧力増大中にその分離位置へ切り換えられ、必要に応じて、各ホイールブレーキにおける圧力増大のために流通位置へ切り換えられる。
【0052】
好ましくは、第2の圧力媒体貯留容器は、第1の圧力媒体貯留容器に接続された油圧的な補整管路によって互いに接続されている。
【0053】
好ましくは、第2のブレーキシステムは、第1のホイールブレーキにおける圧力を測定する第1の圧力センサと、第3のホイールブレーキにおける圧力を測定する第2の圧力センサとを含んでおり、その結果、第2のブレーキシステムにおいても圧力制御をおこなうことが可能である。
【0054】
本発明は、本発明による方法を実行するブレーキ設備に関するものでもある。
【0055】
好ましくは、第1のブレーキシステムは、第1及び第2の圧力室を有する、ブレーキペダルを用いて操作可能なマスターブレーキシリンダを含んでおり、第1の圧力室は、電気的に操作可能な第1の分離弁を介して第3及び第4のホイールブレーキに油圧的に接続されており、第2の圧力室は、電気的に操作可能な第2の分離弁を介して第1及び第2のホイールブレーキに油圧的に接続されており、第1のブレーキシステムは、更に電気的に制御可能な第1の圧力供給装置を含んでおり、この第1の圧力供給装置は、電気的に操作可能な第1のシーケンス弁を介して第3及び第4のホイールブレーキに油圧的に接続されているとともに、電気的に操作可能な第2のシーケンス弁を介して第1及び第2のホイールブレーキに油圧的に接続されている。
【0056】
好ましくは、電気的に制御可能な第2の圧力供給装置としての第2のブレーキシステムは第1及び第2のポンプを含んでおり、これらポンプは、1つの電気モータによって共通に駆動され、第1のポンプは圧力側で第3のホイールブレーキと油圧的に接続されており、第2のポンプは圧力側で第1のホイールブレーキと油圧的に接続されている。有利には、各ポンプは、圧力側で、遮断弁とホイールブレーキの間の範囲で、すなわち遮断弁の下流において第1のブレーキシステムと(対応する)ホイールブレーキの間の油圧的な接続部に接続されている。
【0057】
特に好ましくは、第2の圧力供給装置あるいは各ポンプは、圧力側で、第1のあるいは第3のホイールブレーキに直接、すなわち特に電気的に操作可能な弁を介装することなく、油圧的に接続されている。
【0058】
本発明の更なる好ましい実施形態は、各請求項及び図面に基づく以下の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】本発明による方法を実行するための例示的なブレーキ設備の油圧的な回路図を概略的に示す図である。
【
図2】第1の動作状態における
図1の例示的なブレーキ設備を概略的に示す図である。
【
図3】本発明による方法の実行中の第3の動作状態における
図1の例示的なブレーキ設備を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
全ての図において、同一の部材には同一の符号が付されている。
【0061】
図1には、本発明による方法を実行するための例示的なブレーキ設備1が図示されている。ブレーキ設備は、第1のブレーキシステム(プライマリブレーキシステム)300と、第2のブレーキシステム(セカンダリブレーキシステム)70と、油圧式に操作可能な4つのホイールブレーキ8-11とを含んでいる。4つより多くのホイールブレーキへの拡張も容易に可能である。
【0062】
例えば、第1のブレーキシステム300及び第2のブレーキシステム70は、それぞれ別々のモジュール(電気油圧式の開ループ及び閉ループ制御ユニットHECU)として形成されている。しかし、プライマリブレーキシステム300及びセカンダリブレーキシステム70が1つのユニット/モジュールにおいて(例えばハウジングにおいて)配置されることも可能である。例えば、第1のブレーキシステムの電気油圧式の開ループ及び閉ループ制御ユニットは、油圧ユニット(あるいは油圧式の開ループ及び閉ループ制御ユニット)21と、電子ユニット(あるいは電子的な開ループ及び閉ループ制御ユニット)12とを含んでおり、第2のブレーキシステムの電気油圧式の開ループ及び閉ループ制御ユニットは、油圧ユニット(あるいは油圧式の開ループ及び閉ループ制御ユニット)80と、電子ユニット(あるいは電子的な開ループ及び閉ループ制御ユニット)182とを含んでいる。
【0063】
第1のブレーキシステム300は、ブレーキペダル1aを用いて操作可能なマスターブレーキシリンダ2と、マスターブレーキシリンダ2と協働するシミュレーション装置3と、マスターブレーキシリンダ2に割り当てられ、大気圧下にある第1の圧力媒体貯留容器4と、電気的に制御可能な第1の圧力供給装置5と、車輪個別のブレーキ圧を調整するための電気的に制御可能な圧力変調装置と、電子的な開ループ及び閉ループ制御ユニット(ECU)12とを含んでいる。
【0064】
第1のブレーキシステム300は、ホイールブレーキ8~11のそれぞれについて車輪個別の出口圧力接続部320a~320dを含んでいる。
【0065】
第1のブレーキシステム300の第2の出口圧力接続部320bは、ブレーキ管路202を介して第2のホイールブレーキ9に直接接続されており、第1のブレーキシステム300の第4の出口圧力接続部320dは、ブレーキ管路206を介して第4のホイールブレーキ11に直接接続されている。
図1に図示されているように、ブレーキ管路202,206は、第2のブレーキシステム70の油圧ユニット80の外部で、あるいは油圧ユニット80を通って延びている。
【0066】
第1のブレーキシステム300の第1の出口圧力接続部320aは、ブレーキ管路200を介して第1のホイールブレーキ8に接続されており、第1のブレーキシステム300の第3の出口圧力接続部320cは、ブレーキ管路204を介して第3のホイールブレーキ10に接続されており、ブレーキ管路200,204は、少なくとも部分的に第2のブレーキシステム70の一部であるか、あるいは例えば部分的に油圧ユニット80において延びている。
【0067】
したがって、第2のブレーキシステム70は、第1のブレーキシステム300(特に第1のブレーキシステムの第1の出口圧力接続部320a)を第1のホイールブレーキ8に接続する、油圧的な第1の接続部あるいは接続管路(ブレーキ管路200又はブレーキ管路200の少なくとも一部)と、第1のブレーキシステム300(特に第1のブレーキシステムの第3の出口圧力接続部320c)を第3のホイールブレーキ10に接続する、油圧的な第2の接続部あるいは接続管路(ブレーキ管路204又はブレーキ管路204の少なくとも一部)とを含んでいる。
【0068】
換言すれば、ホイールブレーキ8,10について、第2のブレーキシステム70が油圧的に第1のブレーキシステム300に後続して配置されているか、あるいは第2のブレーキシステム70は、ホイールブレーキ8,10について、油圧的に第1のブレーキシステムとホイールブレーキ8,10の間で直列に接続されている。
【0069】
対応して、第2のブレーキシステム70は、第1のブレーキシステムの第1の出口圧力接続部320aに接続されている第1の入口圧力接続部810aと、第1のホイールブレーキ8に接続されている、第1の入口圧力接続部810aに割り当てられた第1の出口圧力接続部820aと、第1のブレーキシステムの第3の出口圧力接続部320cに接続されている第2の入口圧力接続部810bと、第3のホイールブレーキ10に接続されている、第2の入口圧力接続部810bに割り当てられた第2の出口圧力接続部820bとを含んでいる。
【0070】
第2のブレーキシステム70は、ホイールブレーキ8,10あるいはブレーキ管路200,204に油圧的に接続されている、電気的に制御可能な第2の圧力供給装置86と、第1のブレーキシステム300と対応するホイールブレーキ8,10の間の油圧的な接続部200,204において配置されている、ホイールブレーキ8,10それぞれのための遮断弁220,240とを含んでいる。さらに、第2のブレーキシステム70は、とりわけホイールブレーキ8,10における車輪個別のブレーキ圧を調整するための電気的に操作可能な別の弁176,186及び142,152と、大気圧下にある、少なくとも1つの(第2の)圧力媒体貯留容器120,130と、電子的な開ループ及び閉ループ制御ユニット(ECU)182とを含んでいる。
【0071】
遮断弁220には逆止弁226が並列に接続されており、この逆止弁は、遮断弁220が遮断されている場合に第1のホイールブレーキ8からの圧力媒体の逆流を防止する。対応して、遮断弁240には逆止弁246が並列に接続されており、この逆止弁は、遮断弁240が遮断されている場合に第3のホイールブレーキ10からの圧力媒体の逆流を防止する。
【0072】
圧力センサ194は、ブレーキ管路200における圧力を測定する。
【0073】
有利には、第2のブレーキシステム70に接続されたホイールブレーキ8,10は、車両の前輪FL,FR(FL:左前輪、FR:右前輪)に割り当てられている。第1のブレーキシステム300に接続されたホイールブレーキ9,11は、車両の後輪RL,RR(RL:左後輪、RR:右後輪)に割り当てられている。このことは、第1のブレーキシステム300における対角線状のブレーキ回路分配に対応している。
【0074】
第1のブレーキシステムの圧力変調装置は、例えば、ホイールブレーキ8~11ごとに電気的に操作可能な入口弁6a~6dと、対で、中央接続部を介して油圧的に相互に接続し、各ホイールブレーキ8~11についてホイールブレーキの対応する出口圧力接続部320a~320dに接続されている、電気的に操作可能な出口弁7a~7dとを含んでいる。入口弁6a,6bあるいは6c,6dは、それぞれブレーキ回路供給管路13aあるいは13bを介して接続されている。入口弁6a~6dには、それぞれ、ブレーキ回路供給管路13a,13bへ開口する逆止弁50a~50dが並列に接続されている。出口弁7a~7dの出口接続部は、戻し管路14bを介して圧力媒体リザーバ4に接続されている。
【0075】
ブレーキ回路供給管路13a,13bは、マスターブレーキシリンダ2にも、また第1の圧力供給装置5にも接続されている。
【0076】
このとき、ブレーキ8,9は第2のブレーキ回路IIに割り当てられており、ブレーキ10,11は第1のブレーキ回路Iに割り当てられている。
【0077】
第1のブレーキシステムのマスターブレーキシリンダ2は、ハウジングあるいは油圧ユニット21内に、相前後して配置され、油圧的な圧力室17,18を画定する2つのピストン15,16を備えている。圧力室17,18は、ピストン15,16に形成された径方向の孔と、対応する圧力補整管路41a,41bとを介して第1の圧力媒体リザーバ4に接続されており、この接続は、ピストン15,16の相対運動によって、油圧ユニット21において遮断可能である。圧力補整管路41aには、無通電で開放する診断弁28が並列に接続された逆止弁と共に配置されている。各圧力室17,18は、油圧管路22a,22b及び電気的に操作可能な、好ましくは無通電で開放するように構成された分離弁23a,23bを介して、対応するブレーキ回路供給管路13a,13bに油圧的に接続されている。圧力室18には第2のブレーキ回路IIが割り当てられており、圧力室17には第1のブレーキ回路Iが割り当てられている。
【0078】
分離弁23a,23bにより、マスターブレーキシリンダ2の圧力室17,18とブレーキ回路供給管路13a,13bの間の油圧的な接続を遮断することが可能である。管路部分22bに接続された圧力センサ20は、圧力室18において第2のピストン16の変位により上昇する圧力を検出する。
【0079】
ピストンロッド24は、ペダル操作によるブレーキペダル1aの旋回運動を第1のマスターブレーキシリンダピストン15の並進運動に関連させ、第1のマスターブレーキシリンダピストンの操作ストロークは、好ましくは冗長的に構成されたストロークセンサ25によって検出される。これにより、対応するピストンストローク信号が、ブレーキペダル操作角度の基準である。このピストンストローク信号は、車両運転者のブレーキ要求を表している。
【0080】
第1のブレーキシステム300の(シミュレータの)シミュレーション装置3は、マスターブレーキシリンダ2と油圧的に接続可能であるとともに、例えば、本質的にシミュレータチャンバ29、シミュレータバネチャンバ30及びこれら両チャンバ29,30を互いに分離するシミュレータピストン31で構成されている。シミュレータピストン31は、シミュレータバネチャンバ30に配置された、有利には付勢された弾性要素(例えばバネ)によって、油圧ユニット21において支持されている。シミュレータチャンバ29は、電気的に操作可能なシミュレータ弁32を用いてマスターブレーキシリンダ2の第1の圧力室17と接続可能である。ペダル踏力の設定時及びシミュレータ弁32の開放時には、圧力媒体がマスターブレーキシリンダ-圧力室17からシミュレータチャンバ29へ流れる。シミュレータ弁32に対して油圧的に逆平行に配置された逆止弁34によって、シミュレータ弁32の切換状態にかかわらず、シミュレータチャンバ29からマスターブレーキシリンダ-圧力室17への圧力媒体の実質的に阻害されない還流が可能となる。シミュレーション装置の他の構成及びマスターブレーキシリンダ2への接続も考えられる。
【0081】
電気的に制御可能な(第1の)圧力供給装置5は、油圧的なシリンダ-ピストン構造あるいは単一回路の電気油圧的なアクチュエータとして形成され、圧力室37を画定するその圧力ピストン36は、概略的に示唆された電気モータ35によって、同様に概略的に図示された回転-並進伝動装置を介在しつつ操作可能である。電気モータ35のロータ位置の検出に用いられる、単に概略的に示唆されたロータ位置センサが符号44を付して示されている。加えて、モータコイルの温度をセンシングするための温度センサも用いることが可能である。
【0082】
圧力供給装置5は、システム圧力管路38を用いて、電気的に操作可能な、好ましくは無通電で閉鎖するよう構成された2つのシーケンス弁26a,26bに接続されており、シーケンス弁26aはブレーキ回路供給管路13bに接続されており、シーケンス弁26bはブレーキ回路供給管路13aに接続されている。したがって、第1の圧力供給装置は、(シーケンス弁を用いて)分離可能に4つのホイールブレーキ8~11に接続されている。
【0083】
圧力室37に収容されている圧力媒体へのピストン36の力作用により生じるアクチュエータ圧力は、システム圧力管路38へ供給され、好ましくは冗長的に構成された圧力センサ19によって検出される。シーケンス弁26a,26bが解放されている場合には、圧力媒体は、ホイールブレーキの操作のために、ホイールブレーキ8~11へ至り、ホイールブレーキ9,11のための圧力媒体は、直接これらホイールブレーキへ至り、ホイールブレーキ8,10のための圧力媒体は第2のブレーキシステム70を介してこれらホイールブレーキへ至る。
【0084】
圧力室37への圧力媒体の再供給は、シーケンス弁26a,26bが閉鎖されている場合に、ピストン36の後退によって、逆止弁を有する再供給管路58を通して可能である。
【0085】
第2の圧力供給装置86は、例えば、必要であれば2つのポンプ96,98を動作させる電気モータ92を含んでいる。ポンプ96は、圧力側で油圧管路102を介してホイールブレーキ管路200ひいては第1のホイールブレーキ8に油圧的に接続されている。ポンプ98は、圧力側で管路108を介してブレーキ管路204ひいては第3のホイールブレーキ10に接続されている。
【0086】
好ましくは冗長的に形成された圧力センサ160は、管路102における圧力を測定し、好ましくは冗長的に形成された圧力センサ162は、管路108における圧力を測定する。開ループ制御及び閉ループ制御ユニット182は、信号入力側で、圧力センサ160,162に接続されている。
【0087】
必要な場合に第2のブレーキシステム70が信頼性をもってブレーキ圧増大を実行することができるように、例えば、圧力媒体のための2つの第2の圧力媒体貯留容器120,130が設けられており、これら第2の圧力媒体貯留容器は、油圧ユニット80に統合されている。圧力媒体貯留容器120は、電気的に操作可能な、好ましくは無通電で閉鎖される吸込み弁142が介装されている油圧管路136を介してポンプ96の吸込み側に油圧的に接続されている。圧力媒体貯留容器130は、電気的に操作可能な、好ましくは無通電で閉鎖される吸込み弁152が介装されている油圧管路148を介して、吸い込み側でポンプ98に油圧的に接続されている。
【0088】
遮断弁220の後方では第1のホイールブレーキ8のブレーキ管路200から油圧的なリターン管路170が分岐しており、このリターン管路は、ブレーキ管路200を第2の圧力媒体貯留容器120に油圧的に接続し、リターン管路170には、電気的に操作可能な、好ましくは無通電で閉鎖される減圧弁176が接続されている。遮断弁240の後方では第3のホイールブレーキ10のブレーキ管路204から油圧的なリターン管路180が分岐しており、このリターン管路は、ブレーキ管路204を第2の圧力媒体貯留容器130に油圧的に接続し、リターン管路180には、無通電で閉鎖される減圧弁186が接続されている。
【0089】
共通の油圧的な補整管路192は、第2の圧力媒体貯留容器120,130を第1の圧力媒体貯留容器4に接続している。
【0090】
図2には、障害のない(完全な)第1のブレーキシステム300の動作状態(第1の動作方法)における
図1の例示的なブレーキ設備1が示されている。ここでは、4つのホイールブレーキ8~11に対する圧力供給は、第1のブレーキシステム300の第1の圧力供給装置5によってなされる。場合によってはあり得る圧力変調(例えばスリップ制御)は、圧力変調装置、すなわち第1のブレーキシステム300の入口弁及び出口弁6a~6d,7a~7dによって行われる。圧力供給装置5の圧力供給は、開口されたシーケンス弁26a,26bを介してホイールブレーキ8~11へなされ、このことは、
図2において太い線で示唆されている。
【0091】
第2のブレーキシステムはパッシブ(例えば無通電)であり、特に遮断弁220,240が開放されている。
【0092】
人間である運転者によるブレーキペダル1aの重畳された操作は、いわゆる
バイワイヤ動作においてなされ、すなわち、第1のブレーキシステム300の分離弁23a,23bが閉鎖されており、圧力媒体は、マスターブレーキシリンダ2から、開放されたシミュレータ弁32を介してシミュレーション装置3へ移動する(
図2において矢印で示唆されている)。このとき、適用されたビストンロッドストロークの信号及びマスターブレーキシリンダの圧力(圧力センサ20)の信号に基づき、運転者制動意志信号が導出され、仲裁(優先順位付け)のために仮想的な運転者(オートパイロット)へ提供される。
【0093】
第1のブレーキシステム300が故障を有しているか、又は(完全に)機能不全となっている場合には、
図1の例示的なブレーキ設備1は、第2の動作方法において動作される。このとき、第1のブレーキシステムはパッシブ(無通電)であり、仮想定期な運転者(オートパイロット)の制動意志は、ブレーキ圧がフロントホイールブレーキ8,10においてのみ増大されることで、第2のブレーキシステム70によってのみ
実現される(いわゆる排他的な動作コンセプト)。このために、両遮断弁220,240がその遮断箇所に介装されており、その結果、ホイールブレーキ8,10は、第1のブレーキシステム300(ひいては第1の圧力供給装置5及びマスターブレーキシリンダ2)から油圧的に分離されている。電子的な開ループ制御及び閉ループ制御ユニット182は、ポンプ96,98を駆動する電気モータ92を作動させる。各ポンプ96,98は、開放された吸込み弁142,152において、各圧力媒体貯留容器120,130から圧力媒体を吸い込み、この圧力媒体を管路102,108及びブレーキ管路200,204を介してホイールブレーキ8,10へ搬送する。圧力増大中には、減圧弁176,186は閉鎖されている。ホイールブレーキ8,10における圧力低減は、圧力媒体を各圧力媒体貯留容器120,130へ排出することで、割り当てられた減圧弁176,186を用いて必要に応じて実行されることが可能である。
【0094】
したがって、ここでは、フロントホイールブレーキ8,10のみが第2のブレーキシステム70によってコントロールされる。これにより、最大限達成可能な減速度が(車両の軸荷重分配に依存して)約60%に制限されている。
【0095】
このとき、第1のブレーキシステム300の機能不全は、システム構成要素の電気的なエラーによって、あるいは、油圧的なエラーが第1の圧力媒体貯留容器4における危機的な低い圧力媒体レベルをもたらす限り、ブレーキ設備全体の油圧的なエラー(漏れ)によって引き起こされ得る。
【0096】
両前輪ブレーキ回路のうち1つにおいて漏れが存在し、危機的に低い圧力媒体レベルのために電気的に制御可能な予備レベル(すなわち第2の動作方法)への移行がなされると、後続の経過では、車両を制動するためにフロントホイールブレーキのみがまだ有効となる。
【0097】
第2のブレーキシステム70による圧力調整中の人間である運転者による重畳的なブレーキペダル1aの操作、すなわち運転者受け継ぎは、第2の動作方法中にはシステムによってコントロールされて行われることはできない。パッシブな第1のブレーキシステム300においては、無通電で閉鎖されるシミュレータ弁32によりシミュレーション装置3がオフされているため、ブレーキペダル装置によって、マスターブレーキシリンダ2から(無通電で開放する分離弁及び入口弁23a,23b,6a~6dを介して)直接(直接接続された)リヤホイールブレーキ9,11への体積移動/圧力媒体移動がなされる。このことは、場合によってはその過剰ブレーキをもたらすことがある。加えて、運転者によって加えられたマスターブレーキシリンダ圧が、仮想的な運転者により要求され、第2のブレーキシステム70によってフロントホイールブレーキ8,10において調整される圧力を上回る限り、フロントホイールブレーキ8,10における圧力上昇もなされる。これは、第2のブレーキシステム70の遮断弁220,240における逆止弁226,246の存在に基づくものである。
【0098】
図3には、本発明による方法の実行中の第3の動作状態(いわゆる第1及び第2のブレーキシステムの共同動作コンセプト)における
図1の例示的なブレーキ設備1が示されている。
【0099】
ブレーキ設備1のあらかじめ設定された状態では、第1のブレーキシステム300とセカンダリブレーキシステム70の共同動作コンセプトが実行される。このとき、第1及び第3のホイールブレーキ8,10のための遮断弁220,240が開放されているときに第2の圧力供給装置86が作動されることで、第2及び第4のホイールブレーキ9,11においてブレーキ圧増大が行われる。これにより、(第2のブレーキシステム70に接続されたホイールブレーキ8,10においてのみではなく)第2のブレーキシステム70の第2のブレーキ供給装置86を用いて4つ全てのホイールブレーキ8~11においてブレーキ圧が増大することとなる。
【0100】
第2の圧力供給装置86により供給される圧力は、一方では、第2のブレーキシステム70に直接接続されたホイールブレーキ8,10へ至り、他方では、解放された遮断弁220,240を介して第1のブレーキシステム300へ至り、そこから(第2のブレーキシステム70に直接接続されていない)他のホイールブレーキ9,11へ至る。このことが
図3において太い線で図示されている。
【0101】
例えば、仮想的な運転者の制動意志の実現は、開放された遮断弁220,240において、及び第2のブレーキシステム70の吸込み弁142,152が開放されているときに、第2の圧力供給装置86(例えば2-ピストンポンプ)による圧力増大を用いて、共同動作において第2のブレーキシステム70によってなされ、これにより、ポンプ96,98の吸込み側は、内部の圧力媒体貯留容器120,130に接続されている。
【0102】
例えば、第1のブレーキシステム300においては、マスターブレーキシリンダ2の遮断は、分離弁23a,23bの閉鎖によってなされる。これにより、(ブレーキ回路I,IIごとに)それぞれ割り当てられた(対角状に対向する)リヤホイールブレーキ9,11は、同様に(第1のブレーキシステム300を介して間接的に)第2のブレーキシステム70の第2の圧力供給装置86に接続されており、したがって、静的な場合には対角状のフロントホイールブレーキ8,10と同一のブレーキ圧に達する。
【0103】
さらに、第1のブレーキシステム300においては、例えば、シミュレーション装置3の接続がシミュレータ弁32の開放によってなされる。
【0104】
圧力低減は、減圧弁176,186を用いてなされ、第2のブレーキシステム70の内部の圧力媒体貯留容器へ再び戻る。
【0105】
このとき、回路分離(ブレーキ回路I,II)が常に保証されているため、この動作は、局所的でない漏れの場合にも行われることが可能である。第2のブレーキシステム70の内部の両圧力媒体貯留容器120,130のうち1つのこのような漏れにより使い果たされると、圧力増大のための能力は対角状の2つのホイールブレーキに維持され、これにより、明らかに増大された残留ブレーキ作用及び低減されたヨー外乱が生じる。
【0106】
ブレーキペダル1aにおける人間である運転者の重畳的なブレーキ操作は、例えばバイワイヤ動作におけるようになされ、すなわち、シミュレータ弁32が開放され(しかし、シーケンス弁26は無通電のままであるか、あるいは閉鎖されたまま)、ブレーキペダル操作により、接続されたシミュレーション装置3へのマスターブレーキシリンダ2からの体積移動につながる(
図3における矢印で示唆されている)。このとき、(例えばストロークセンサ25を用いた)適用されたビストンロッドストロークの信号及び(例えば圧力センサ20を用いた)マスターブレーキシリンダの圧力の信号に基づき、運転者制動意志信号が導出され、仲裁(優先順位付け)のために仮想的な運転者へ提供される。
【0107】
共同動作コンセプトにより、フロントホイールブレーキ及びリヤホイールブレーキ(8,9;10,11)において同一圧力となるため、好ましくは、以下に説明する、ホイール圧力変調(スリップ制御)のためのコンセプトが実行される。
【0108】
回路分離を放棄しないように(開いたシステム)、圧力増大は、第1のブレーキシステム300の出口弁7a~7dを介して行われない。
【0109】
しかし、第1のブレーキシステム300の入口弁6a~6dの閉鎖による圧力ストップ(圧力保持)は、可能であり、行われる。
【0110】
第2のブレーキシステム70の圧力調整は、例えば第2のブレーキシステム70に接続されたホイールブレーキ8,10(例えばフロントホイールブレーキ)についての目標圧力値に基づいて、スリップ制御介入においてなされる。プライマリブレーキシステム300の入口弁6a~6dが逆止弁50a~50dを備えているため、ホイールブレーキ8,10は、ブレーキ回路I又はIIの他のホイールブレーキ9,11(例えば対角状に対向するリヤホイールブレーキ)を「ガイド」する。すなわち、リヤホイールブレーキの圧力は、フロントホイールブレーキの圧力を上回らない。
【0111】
好ましくは、対応するホイールブレーキ8,10において所定の(あらかじめ設定された)圧力p_critに到達するときに、第2のブレーキシステム70が、各ホイールブレーキ9,11に割り当てられた入口弁6b,6dを閉鎖するための信号を第1のブレーキシステム300へ発出することで、ホイールブレーキ9,11(例えばリヤホイールブレーキ)における圧力制限がなされる。圧力値p_critは、好ましくは、車両の(あらかじめ設定された)臨界的な減速度z_critに対して調和するように選択される。
【0112】
これに代えて、又はこれに加えて、好ましくは、あらかじめ設定された車両減速度に到達するときに各ホイールブレーキ9,11に割り当てられた入口弁6b,6dを閉鎖するための信号が発出されることで、ホイールブレーキ9,11(例えばリヤホイールブレーキ)における圧力制限がなされる。この手法により、負荷に依存した機械的なブレーキ力制限の特性が再形成される。
【0113】
これに代えて、又はこれに加えて、好ましくは、いつ圧力ストップが実行されるべきか(動的なEBV)を、車輪回転数信号に基づき第1のブレーキシステム300が決定することで、ホイールブレーキ9,11(例えばリヤホイールブレーキ)における圧力制限がなされる。
【0114】
共同動作コンセプトは、好ましくは、第1のブレーキシステムが依然として少なくとも個々の弁、特に1つ又は分離弁23a,23b及びシミュレータ弁32を作動させることが可能であり、人間である運転者の重畳的なブレーキ操作を感知することが可能であるように、第1のブレーキシステム300の故障が発現されるという前提の下で行われる。
【0115】
このことは、第1の圧力供給装置5が圧力増大についての能力を失うこととなる、第1のブレーキシステム300の全てのエラーに該当する。
【0116】
さらに、共同動作は、好ましくは、第1のブレーキシステム300が第1の圧力媒体貯留容器4における危機的に低い圧力媒体レベルに基づき機能不全となる場合に行われる。
【0117】
さらに、第1のブレーキシステム300の上述のエラーモードとは異なるものにおいては、好ましくは、排他的な動作コンセプトが電気的に制御可能な予備レベルとして行われ、すなわち、制動意志が第2のブレーキシステムによってのみ実現され、すなわち遮断弁220,240が閉鎖されているときの第2の圧力供給装置の作動が行われる。
【0118】
本発明は、例えば排他的な動作コンセプトに関連した
図1のブレーキ設備の油圧式の構成の欠点を解消し、あるいはその発生可能性を少なくとも低減することで、ブレーキ設備の応用分野を大幅に拡張するものであるか、あるいはこのブレーキ設備を高次に自動化された走行の期待される要求に対して初めて有用なものとするものである。このとき、追加的なシステム構成要素は不要であり、すなわち、安価なシステム拡張が実現される。
【0119】
第1及び第2のブレーキシステムで構成されたブレーキ設備のための本発明による方法は、公知のブレーキ設備の電気的に作動可能な予備レベルにおけるシステム特性の、すなわち第2のブレーキシステムを使用する際の、以下の本質的な欠点を解消する:
-基本的にフロントホイールブレーキ8,10においてのみの圧力増大及びこれによる可能な制動の約60%への制限。
-特定の油圧的な漏れにおけるフロントホイールブレーキにおいてのみの圧力増大及びこれによる大きく制限されたブレーキ作用及び制動時の車両のヨー外乱。
-人間である運転者による重畳的なブレーキ操作の非コントロール可能性。