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特許7000452ドーパミン神経細胞の分離方法及びこれを用いて分離されたドーパミン神経細胞を含むパーキンソン病治療用薬剤学的組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】ドーパミン神経細胞の分離方法及びこれを用いて分離されたドーパミン神経細胞を含むパーキンソン病治療用薬剤学的組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0793 20100101AFI20220203BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 35/30 20150101ALI20220203BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220203BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20220203BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20220203BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
C12N5/0793 ZNA
C12N5/10
A61P25/16
A61K35/30
A61P43/00 107
A61L27/38 100
C12N15/09 100
C12N15/09 110
C12N15/12
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019552919
(86)(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 KR2019005058
(87)【国際公開番号】W WO2019212201
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2019-10-08
(31)【優先権主張番号】10-2018-0050918
(32)【優先日】2018-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0048784
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517119589
【氏名又は名称】エス-バイオメディックス
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】ドン-ウク・キム
(72)【発明者】
【氏名】チョン-ウン・ユ
(72)【発明者】
【氏名】ドンジン・リ
(72)【発明者】
【氏名】サンヒョン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ジョンワン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ミョンス・チョ
【審査官】山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0260591(US,A1)
【文献】Nature volume 480, pages547-551(2011),2011年,Vol.480,pages547-551
【文献】Experimental Cell Research ,2006年,Vol.312, No.10 ,p.1713-1726
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-90
C12N 5/00-28
C12Q 1/00-3/00
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/CAPLUS/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の段階を含むドーパミン神経細胞(dopaminergic neural cells)の製造方法:
(a)細胞集団(cell population)をTPBG(Trophoblast glycoprotein)抗体と接触させる段階;及び
(b)前記TPBG抗体に結合するTPBG-陽性ドーパミン神経細胞を分離する段階、
前記細胞集団は、ヒト胎児腹側中脳細胞(human fetal ventral mesencephalic cells);又は
胚性幹細胞(Embryonic stem cells)又は誘導多能性幹細胞(iPSCs)から分化されたドーパミン神経前駆細胞(dopaminergic neural progenitors)、成熟ドーパミンニューロン(dopaminergic neurons)、又はこれに由来する神経誘導体(neural derivatives)である。
【請求項2】
前記TPBG-陽性ドーパミン神経細胞は、パーキンソン病の症状を緩和させるものである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記TPBG-陽性ドーパミン神経細胞は、細胞移植治療法の安全性を向上させるものである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ドーパミン神経細胞は、ドーパミン神経前駆細胞(dopaminergic neural progenitors又はdopaminergic neural precursor cells)又は成熟ドーパミンニューロン(dopaminergic neurons)である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ドーパミン神経細胞は、中脳性(midbrain)ドーパミン神経細胞である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記中脳性ドーパミン神経細胞は、A9領域-特異的(A9 region-specific)中脳性ドーパミン神経細胞である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
次の段階を含むパーキンソン病(Parkinson’s disease)の細胞移植治療法のためのドーパミン神経細胞(dopaminergic neural cells)の効能を増進させ、移植安全性を向上させる方法:
(a)細胞集団(cell population)をTPBG(Trophoblast glycoprotein)-抗体と接触させる段階;及び
(b)前記TPBG抗体に結合するTPBG-陽性ドーパミン神経細胞を分離する段階、
前記細胞集団は、ヒト胎児腹側中脳細胞(human fetal ventral mesencephalic cells);又は
胚性幹細胞(Embryonic stem cells)又は誘導多能性幹細胞(iPSCs)から分化されたドーパミン神経前駆細胞(dopaminergic neural progenitors)、成熟ドーパミンニューロン(dopaminergic neurons)、又はこれに由来する神経誘導体(neural derivatives)である。
【請求項8】
前記ドーパミン神経細胞は、ドーパミン神経前駆体細胞(dopaminergic neural progenitors又はdopaminergic neural precursor cells)又は成熟ドーパミンニューロン(dopaminergic neurons)である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ドーパミン神経細胞は、中脳性(midbrain)ドーパミン神経細胞である請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記中脳性ドーパミン神経細胞は、A9領域-特異的(A9 region-specific)中脳性ドーパミン神経細胞である請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドーパミン神経細胞の分離方法及びこれを用いて分離されたドーパミン神経細胞を含むパーキンソン病治療用薬剤学的組成物に関するものである。
【0002】
本開示は、2018年4月30日から2021年12月31日まで、韓国保健産業振興院の管理下にある延世大学産業財団による「先進医療技術の開発」と題された研究プロジェクト内で、「多能性幹細胞の神経障害への応用のための移植細胞の最小数のインビボ分化モニタリング及び予測」という研究テーマの下で実施されたプロジェクト番号HI18C0829の下で、韓国の保健福祉部の支援を受けて行われた。
【0003】
本出願は、2018年5月2日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2018-0050918号及び2019年4月25日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2019-0048784号について優先権を主張し、上記特許出願の開示事項は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
パーキンソン病(Parkinson’s disease、PD)は細胞-基盤治療法(cell-based therapies)に最も適切な、中脳性ドーパミン(midbrain dopaminergic、mDA)神経細胞の局所的死滅(focal degeneration)による神経退行性障害の1つである。
【0005】
1980年代初期から、胎児腹側中脳(fetal ventral mesencephalon、VM)組織を患者の線条体(striatal)に移植することによって、パーキンソン病関連運動機能を回復させようとする試みがなされてきた。
【0006】
このような研究によって、移植片により運動機能の回復が誘導できることを確認したが、研究機関ごとに細胞移植の結果が一貫せず、一部の場合、副作用も表れて、以後、細胞-基盤治療法がさらに改善されなければならないという共感が形成された。
【0007】
特に、既存の研究で問題として指摘されていた、移植材料である細胞を生体に存在する細胞と近接した水準に発達させ、胎児組織の制限された可用性及び非一貫性(batch-to-batch inconsistency)などの短所を補完するための代案研究が続けられてきた。
【0008】
その結果、試験管内(in vitro)で無限増殖能を示し、多様な神経細胞への幅広い分化能を有する、胚性幹細胞(Embryonic stem cells、ESCs)及び誘導多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells、iPSCs)を含むヒト多能性幹細胞(human pluripotent stem cell、hPSCs)が注目を受けるようになった。
【0009】
これによって、最近まで多様なmDA神経細胞の分化技術が開発されて高い収率の細胞を生産することができる水準に進化したが、最近、開発された分化技術を通じてhPSCから分化誘導された結果物でもmDA神経細胞の以外の他の種類の細胞が多く混ざっている異質性(heterogeneity)が観察されて、現在の分化技術を土台に臨床適用を考慮することには困難な状況である。
【0010】
したがって、多様な細胞集団からのhPSC-由来mDA神経細胞の同定及び分離は、移植細胞の標準化だけでなく、成功的な移植治療研究に非常に重要である。
【0011】
一方、初期のhPSCから分化誘導されたmDA神経細胞を純粋分離(濃縮)させるための戦略は、多表面抗原(multiple surface antigens)を標的とする蛍光-活性化細胞選別法(fluorescence-activated cell sorting、FACS)を基盤とした。このような接近法はチロシンヒドロキシラーゼ(tyrosine hydroxylase、TH)を発現する神経細胞集団(neuronal population)を増加させたが、このような細胞集団がmDA神経細胞特性を保有したか否かは不明であった。
【0012】
最近、マウスfVM組織及びマウス胚性幹細胞(mESC)-由来mDA神経前駆細胞の転写体(transcriptome)を分析して、mDA神経細胞を区別して濃縮させることができる特異的表面マーカーを同定する研究が遂行された。
【0013】
このような研究は、いくつかの可能性ある細胞表面マーカーを提示しており、これを用いてドーパミン神経細胞の分離及び濃縮が可能であるということが分かったが、同時に、神経細胞発生過程のうち、正確にどの段階の神経細胞が発現する細胞表面マーカーを同定しなければならないかに対してはまだ明確に明らかにしていなかった。発生段階によって分離された神経細胞の移植後、生存率や分化程度が異なり、これは移植後、機能回復に影響を与えることができるということが本業界の共通な意見であるので、分化段階-特異的マーカーの同定はやはり重要な課題に間違いない。
【0014】
ここに、中脳性ドーパミン神経細胞及びその分化段階の表面マーカーに対する研究が至急な実状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明者らは中脳性ドーパミン神経細胞の分化過程を区別し、各段階の細胞表面マーカーを開発しようと努力した。その結果、LMX1A-eGFP及びPITX3-mCherryレポーターhESC細胞株を確立し、これを分化させてLMX1A mDA神経前駆細胞及びPITX3 mDA神経細胞を分離し、これから中脳性ドーパミン神経細胞と関連した細胞表面マーカー(TPBG)を同定することによって、本発明を完成するに至った。
【0016】
したがって、本発明の目的は、ドーパミン神経細胞(dopaminergic neural cells)の製造方法を提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、TPBG(Trophoblast glycoprotein)-陽性ドーパミン神経細胞を含むパーキンソン病(Parkinson’s disease)治療用薬学的組成物を提供することにある。
【0018】
本発明の更に他の目的は、パーキンソン病(Parkinson’s disease)の細胞移植治療法のためのドーパミン神経細胞の効能を増進させ、移植安全性を向上させる方法を提供することにある。
【0019】
本発明の更に他の目的は、TPBG(Trophoblast glycoprotein)-陽性ドーパミン神経細胞を含むドーパミン神経細胞移植用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは中脳性ドーパミン(mDA)神経細胞の分化過程を区別し、各段階の細胞表面マーカーを開発しようと努力した。その結果、LMX1A-eGFP及びPITX3-mCherryレポーターhESC細胞株を確立し、これを分化させてLMX1A mDA神経前駆細胞及びPITX3 mDA神経細胞を分離し、これから中脳性ドーパミン神経細胞と関連した細胞表面マーカー(TPBG)を同定した。
【0021】
より具体的に、本発明者らはmDA神経前駆細胞(progenitor)段階-特異的遺伝子であるLMX1Aが発現する時、同時に緑色蛍光蛋白質(eGFP)が発現されるように操作されたLMX1A-eGFPレポーターhESC細胞株、及び成熟したmDA神経細胞(neuronal)段階-特異的遺伝子であるPITX3が発現する時、同時に赤色蛍光蛋白質(mCherry)が発現されるように操作されたPITX3-mCherryレポーターhESC細胞株を各々樹立し、LMX1A mDA神経前駆細胞及びPITX mDA神経細胞の転写体比較分析を通じて、mDA神経細胞の前駆体(神経前駆細胞)に特異的に発現される細胞表面マーカー候補を選別した。そのうち、TPBGを新たな細胞表面マーカーとして発見しており、TPBGを標的とする細胞分離の結果、mDA神経前駆細胞が濃縮することを確認した。また、mDA神経前駆細胞段階で磁性-活性細胞選別法(magnetic-activated cell sorting、MACS)により選別されたTPBG-陽性細胞を6-OHDA-損傷パーキンソン病(PD)ラットモデルに移植した結果、PDラットで腫瘍形成無しに運動機能異常症状が回復することを確認した。
【0022】
したがって、TPBGは移植可能なmDA神経前駆細胞を分離するための新たな表面マーカー蛋白質であって、TPBGを用いて分離されたmDA細胞はパーキンソン病治療のための安全で、効果的な細胞代替治療法を提供できることと期待される。
【0023】
本発明は、ドーパミン神経細胞の分離方法、これを用いて分離されたドーパミン神経細胞を含むパーキンソン病治療用薬剤学的組成物、パーキンソン病の細胞移植治療法のためのドーパミン神経細胞の効能を増進させて移植安全性を向上させる方法、及びこれを用いて製造されたドーパミン神経細胞移植用組成物に関するものである。
【0024】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0025】
本発明の一態様は、次の段階を含むドーパミン神経細胞(dopaminergic neural cells)の製造方法に関するものである。
(a)細胞集団(population)をTPBG(Trophoblast glycoprotein)抗体と接触させる段階;及び
(b)TPBG抗体に結合するTPBG-陽性ドーパミン神経細胞を分離する段階。
【0026】
本発明で、“神経細胞(neural cells)”は神経系を構成する細胞で、ニューロン(neuron)と同一の意味として使われることができ、“ドーパミン神経細胞(dopaminergic neural cells)”は神経伝達物質であるドーパミン(dopamine)を分泌する神経細胞を意味する。
【0027】
前記ドーパミン神経細胞は、ドーパミン神経前駆細胞(dopaminergic neural progenitors又はdopaminergic neural precursor cells)又は成熟ドーパミンニューロン(dopaminergic neurons)でありうるが、これに制限されるものではない。
【0028】
本発明で、“神経前駆細胞”はまだ分化形質を発現していない未分化前駆細胞を意味し、“progenitors”、“precursors”及び“precursor cell”全て同一の意味で使われることができる。
【0029】
前記ドーパミン神経細胞は、中脳性(midbrain)ドーパミン神経細胞でありうる。
【0030】
本発明で、“中脳性ドーパミン神経細胞”とは、中脳(midbrain)領域で観察されるドーパミン神経細胞を意味し、例えば、中脳腹側(ventral)領域で観察されるドーパミン神経細胞を意味するものでありうるが、これに制限されるものではない。
【0031】
また、前記中脳性ドーパミン神経細胞はA9領域-特異的(A9 region-specific)に発現することができる。
【0032】
前記“A9領域”は、中脳腹外側(ventrolateral)領域で、中脳黒色質(substantia nigra)の緻密部(pars compacta)に該当する部分を意味するところ、本発明の製造方法により製造された細胞は中脳性細胞であることが分かる。
【0033】
また、前記A9領域は、ドーパミン神経細胞が密集した部位で、運動機能の調節と関連があり、特に、パーキンソン病患者の場合、この部位のドーパミン神経細胞が特異的に死滅されていることを特徴とするところ、本発明の製造方法により製造された細胞はパーキンソン病の予防及び/又は治療目的で使われることができる。
【0034】
以下、本発明のドーパミン神経細胞製造方法について詳細に説明する。
【0035】
(a)段階
前記“細胞集団”は、ヒト幹細胞(human stem cells);前駆細胞(progenitors又はprecursors);及び/又はヒト幹細胞又は前駆細胞から分化されたドーパミン神経前駆細胞(dopaminergic neural progenitors)、成熟ドーパミンニューロン(dopaminergic neurons)及びこれに由来する神経誘導体(neural derivatives)を含むものでありうるが、これに制限されるものではない。
【0036】
具体的に、前記ヒト幹細胞又は前記前駆細胞は、胚性幹細胞(Embryonic stem cells)、胚性生殖細胞(Embryonic germ cells)、胚性癌腫細胞(Embryonic carcinoma cells)、誘導多能性幹細胞(Induced pluripotent stem cells、iPSCs)、成体幹細胞(Adult stem cells)、又は胎児細胞(Fetal cells)でありうるが、これに制限されるものではない。
【0037】
前記胎児細胞は、胎児神経組織(Fetal neural tissue)又はその誘導体(derivatives)に由来するものでありえ、例えば、胎児腹側中脳細胞(fetal ventral mesencephalic cells;fVM cells)でありうるが、これに制限されるものではない。
【0038】
(b)段階
前記“TPBG”は、Wnt-活性化阻害因子1(Wnt-Activated Inhibitory Factor 1)又はWAIF1と同一の意味で使われることができ、Wnt/β-カテニン信号伝達経路の拮抗剤として知られているが、TPBGの発現を通じてのドーパミン神経細胞分離に対してはまだ報告されたことがない。
【0039】
前記遺伝子のヌクレオチド配列を配列番号53に示した。また、前記遺伝子はヌクレオチド配列が遺伝子バンクに登録されているので、当業者であれば、容易に入手可能である。
【0040】
本発明で、“TPBG-陽性ドーパミン神経細胞”とは、TPBG抗体に結合するドーパミン神経細胞を意味する。
【0041】
前記“TPBG抗体”は、TPBGに特異的に結合する抗体を意味する。
【0042】
本段階で、TPBG-陽性ドーパミン神経細胞を分離する方法は、標的を特定して細胞を分離する方法であれば、如何なる方法でも使われることができ、例えば、蛍光-活性化細胞選別法(FACS)及び/又は磁性-活性細胞選別法(MACS)を用いるものでありうるが、これに制限されるものではない。
【0043】
前記TPBG-陽性ドーパミン神経細胞は、パーキンソン病の症状を緩和させることができる。
【0044】
前記TPBG-陽性ドーパミン神経細胞は、細胞移植治療法の安全性を向上させることができる。
【0045】
本発明の他の態様は、TPBG(Trophoblast glycoprotein)-陽性ドーパミン神経細胞を含むパーキンソン病(Parkinson’s disease)治療用薬学的組成物に関するものである。
【0046】
本発明に従う薬学的組成物は、有効性分の以外に薬剤学的に許容される担体を含むことができる。この際、薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常的に用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギナート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシ安息香酸、プロピルヒドロキシ安息香酸、滑石、ステアル酸マグネシウム、及びミネラルオイルなどを含むが、これに限定されるものではない。また、前記成分の以外に潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。
【0047】
本発明の薬学的組成物は、目的とする方法によって経口投与するか、又は非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、又は局所に適用)することができ、投与量は患者の状態及び体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路、及び時間によって異なるが、当業者により適切に選択できる。
【0048】
本発明の薬学的組成物は薬学的に有効な量で投与する。本発明において、“薬学的に有効な量”は医学的治療に適用可能な合理的な利益/リスク比で疾患を治療することに十分な量を意味し、有効量は患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時に使われる薬物を含んだ要素及びその他の医学分野によく知られた要素によって決定できる。
【0049】
本発明に従う薬学的組成物は、個別の治療剤として投与するか、又は他の治療剤と併用して投与することができ、従来の治療剤とは順次又は同時に投与することができ、単一又は多重投与できる。前記要素を全て考慮して副作用無しに最小限の量で最大効果を得ることができる量を投与することが重要であり、これは当業者により容易に決定できる。
【0050】
具体的に、本発明の薬学的組成物の有効量は、患者の年齢、性別、状態、体重、体内での活性成分の吸収度、不活性率及び排泄速度、疾病の種類、併用される薬物によって変えることができる。
【0051】
本発明の更に他の態様は、前記TPBG-陽性ドーパミン神経細胞を個体に投与する段階を含むパーキンソン病治療方法に関するものである。
【0052】
前記“個体”とは、疾病の治療を必要とする対象を意味し、より具体的には、ヒト又は非-ヒトの霊長類、マウス(mouse)、犬、猫、馬、及び牛などの哺乳類を意味する。
【0053】
本発明の更に他の態様は、前記TPBG-陽性ドーパミン神経細胞のパーキンソン病治療用途に関するものである。
【0054】
前記TPBG-陽性ドーパミン神経細胞を含むパーキンソン病治療用薬学的組成物において、前記ドーパミン神経細胞の製造方法と重複する内容は本明細書の複雑性を考慮して省略する。
【0055】
本発明の更に他の態様は、次の段階を含むパーキンソン病(Parkinson’s disease)の細胞移植治療法のためのドーパミン神経細胞の効能を増進させ、移植安全性を向上させる方法に関するものである。
(a)細胞集団(cell population)をTPBG(Trophoblast glycoprotein)-抗体と接触させる段階;及び
(b)TPBG抗体に結合するTPBG-陽性ドーパミン神経細胞を分離する段階。
【0056】
前記ドーパミン神経細胞の効能を増進させ、移植安全性を向上させる方法において、前記ドーパミン神経細胞の製造方法と重複する内容は本明細書の複雑性を考慮して省略する。
【0057】
本発明の更に他の態様は、TPBG(Trophoblast glycoprotein)-陽性ドーパミン神経細胞を含むドーパミン神経細胞移植用組成物に関するものである。
【0058】
前記TPBG-陽性ドーパミン神経細胞はドーパミン神経細胞の製造方法により培養することができ、前記方法により培養されたTPBG-陽性ドーパミン神経細胞は細胞効能が増進され、移植安全性が向上したものでありうる。
【0059】
一方、前記ドーパミン神経細胞の移植は当業界に公知の適切な移植部位(例えば、脳の被殻[putamen]又は尾状核[caudate nucleus]、又はこれを全て包含する線条体[striatum]など)を選定し、移植部位に公知の方式(例えば、脳定位システム[stereotactic system]など)により遂行できる。
【0060】
本発明の組成物はパーキンソン病(Parkinson’s disease)の治療用途に使われることができる。
【0061】
本発明の組成物は移植細胞としてドーパミン神経細胞のみを単独で含むか、又は有効性分(移植細胞)以外に生体由来及び/又は生分解性安定化剤を含むことができる。前記安定化剤は前記ドーパミン神経細胞を安定に分散させるためのものであって、生体由来物質であるので、体内移植時、副作用がないか、又はそうでなければ、生分解性を有しなければならない。本発明で、生分解性ということは、体内で徐々に分解されて吸収される特性を意味し、分解される速度には特別に意味を置かない。
【0062】
前記安定化剤には、ヒアルロン酸、コラーゲン、トロンビン、エラスチン、硫酸コンドロイチン、アルブミン、及びその混合物を含むことができる。特に、前記ヒアルロン酸、コラーゲン、トロンビン、エラスチン、硫酸コンドロイチン、アルブミンなどは生体由来物質で、生体内で自然的に分解できる生分解性性質を有する。但し、生分解性と媒質で粘度を与える特性を満たす場合であれば、合成された化合物も生分解性物質であり、本発明の用途にも使用することができるので、必ず生体に由来する物質に制限するものではない。
【0063】
前記安定化剤をドーパミン神経細胞と共に製剤化する場合、ドーパミン神経細胞が媒質中に浮遊するか、又は沈降せず、均等に分散されて存在することができる。
【0064】
前記TPBG-陽性ドーパミン神経細胞を含むドーパミン神経細胞移植用組成物において、前記ドーパミン神経細胞の製造方法と重複する内容は本明細書の複雑性を考慮して省略する。
【発明の効果】
【0065】
本発明はドーパミン神経細胞の分離方法及びこれを用いて分離されたドーパミン神経細胞を含むパーキンソン病治療用薬剤学的組成物に関するものであって、前記ドーパミン神経細胞の分離方法はTPBG-陽性ドーパミン神経細胞を分離する段階を含むことによって、本方法により分離されたドーパミン神経細胞は移植時、細胞の効能が増進し、移植安全性が向上したことを特徴とするので、パーキンソン病治療のための細胞移植用途に有用に使われることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】本発明のドーパミン神経細胞の製造方法を模式化した図である。
図2】本発明の一製造例に従うLMX1A-eGFP hESレポーター細胞株の製造方法を模式化した図である。
図3】本発明の一製造例に従うPITX3-mCherry hESレポーター細胞株の製造方法を模式化した図である。
図4】本発明の一製造例に従って製造されたLMX1A-eGFP hESレポーター細胞株のmDA神経前駆細胞分化過程を確認した図である。
図5】本発明の一製造例に従って製造されたPITX3-mCherry hESレポーター細胞株のmDA神経細胞(ニューロン)分化過程を確認した図である。
図6a】本発明の一実施形態に従って分化されたLMX1A-発現mDA神経前駆細胞の特性を確認した図である。
図6b】本発明の一実施形態に従って分化されたLMX1A-発現mDA神経前駆細胞の特性を確認した図である。
図7a】本発明の一実施形態に従って分化されたLMX1A-発現mDA神経前駆細胞の特性を確認した図である。
図7b】本発明の一実施形態に従って分化されたLMX1A-発現mDA神経前駆細胞の特性を確認した図である。
図8a】本発明の一実施形態に従って分化されたLMX1A-発現細胞の最終分化(terminal differentiation)後の特性を確認した図である。
図8b】本発明の一実施形態に従って分化されたLMX1A-発現細胞の最終分化(terminal differentiation)後の特性を確認した図である。
図9a】本発明の一実施形態に従って分化されたPITX3-発現mDA神経細胞(ニューロン)の特性を確認した図である。
図9b】本発明の一実施形態に従って分化されたPITX3-発現mDA神経細胞(ニューロン)の特性を確認した図である。
図9c】本発明の一実施形態に従って分化されたPITX3-発現mDA神経細胞(ニューロン)の特性を確認した図である。
図10】本発明の一実施形態に従って分化されたPITX3-発現mDA神経細胞(ニューロン)の特性を確認した図である。
図11】本発明の一実施形態に従って分化されたLMX1A-発現mDA神経前駆細胞及びPITX3-発現mDA神経細胞(ニューロン)に対して、試験管内(in vitro)細胞死滅程度を比較した図である。
図12】本発明の一実施形態に従って分化されたLMX1A-発現mDA神経前駆細胞及びPITX3-発現mDA神経細胞(ニューロン)に対して、転写体分析を遂行した結果を示した図である。
図13】mDAマーカーの候補群を同定する過程を示した模式図である。
図14】mDAマーカーの候補群を同定するために、標的有効性を評価した結果である。
図15】mDAマーカーの候補群を同定するために、標的有効性を評価した結果である。
図16】mDAマーカーの候補群(CORIN、TPBG、CD47、ALCAM)を標的とするMACS結果を示した図である。
図17】mDAマーカーの候補群(CORIN、TPBG、CD47、ALCAM)を標的とするMACS結果を示した図である。
図18】本発明の一実施形態に従ってhESCから分離されたTPBG-陽性細胞が移植されたPD-動物モデルに対して、TPBG-陽性細胞移植後、行動回復を確認した図である。
図19】本発明の一実施形態に従ってhESCから分離されたTPBG-陽性細胞が移植されたPD-動物モデルに対して、TPBG-陽性細胞移植後、移植片の特性を確認した図である。
図20】本発明の一実施形態に従ってhESCから分離されたTPBG-陽性細胞が移植されたPD-動物モデルに対して、TPBG-陽性細胞移植後、TPBG-陽性細胞移植片(graft)と比較して分類されていない(Unsorted)細胞移植片で細胞増殖可能性を確認した図である。
図21】本発明の一実施形態に従ってヒトfVM細胞から分離されたTPBG-陽性細胞の特性を確認した図である。
図22】本発明の一実施形態に従ってヒトiPSCから分離されたTPBG-陽性細胞の特性を確認した図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。これら実施例は専ら本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨に従って本発明の範囲がこれら実施例により制限されないということは当業界で通常の知識を有する者において自明である。
【0068】
ヒト胚性幹細胞(human Embryonic stem cells、hESC)培養
未分化のhESCs(H9、WiCell Inc.,米国)をミトマイシン-C(mitomycin-C;Sigma-Aldrich、米国)処理マウスSTO線維芽細胞(ATCC、米国)層で20%KSR(Knockout-Serum Replacement;Invitrogen、米国)、1×非必須アミノ酸(Gibco-Thermo Fisher Scientific、米国)、0.1mM β-メルカプトエタノール(Sigma-Aldrich)及び4ng/mL bFGF(basic fibroblast growth factor;R&D System、米国)が添加されたDMEM(Dulbecco’s modified Eagle’s medium)/F12培地(Gibco-Thermo Fisher Scientific)で培養した。
【0069】
クローナル細胞の遺伝型分析(Genotyping)
ゲノムDNAはDNeasy Blood & Tissueキット(QIAGEN、ドイツ)を使用して製造会社の指示によって抽出した。ゲノムDNA PCRはGeneAmp PCR System 2720(Applied Biosystems-Thermo Fisher Scientific)でEmeraldAmp(登録商標) GT PCR Master Mix(TAKARA Bio Inc., Japan)を使用して遂行した。
【0070】
FACS
BD FACSAria IIIセルソーター及びFACSDivaソフトウェア(BD Bioscience)を使用して細胞選別を遂行した。eGFP-陽性分画は488nmレーザーを用いて蛍光強度によって決定しており、mCherry-陽性分画は561nmレーザーを用いて蛍光強度によって決定した。
【0071】
MACS
抗体の非特異的結合を抑制するために、細胞を1%FBS-PBS溶液で培養(4℃、30分間)後、30分間4℃で一次抗体(以下の表1参照)と結合させた。
【0072】
【表1-1】
【0073】
【表1-2】
【0074】
洗浄後、一次抗体-標識された細胞を1×10細胞当たり20μLのマイクロビーズ(Miltenyi Biotec)と共に培養した。洗浄後、細胞懸濁液を磁気(magnetic)スタンドに付着された分離カラム(LSカラム)(Miltenyi Biotec)にローディングした。カラム洗浄中に通過された陰性-標識細胞を別途のチューブに収集し、磁性スタンドからカラムを除去した後、カラム内に残存する陽性-標識細胞を培養培地と共に他のチューブに溶出させた。
【0075】
免疫細胞化学(Immunocytochemistry)分析
まず、細胞を4%パラホルムアルデヒド-PBS溶液に固定させた。
【0076】
次に、抗体の細胞質内への透過を円滑にするために、0.1% Triton X-100-PBS溶液で15分間処理後、2%ウシ血清アルブミン(BSA)(Bovogen、オーストラリア)-PBS溶液で室温で1時間の間反応させた後、一次抗体(前記表1参照)と4℃で一晩中結合させた。前記一次抗体が結合された蛋白質を視覚化するために、適切な蛍光-標識二次抗体(Molecular Probes-Thermo Fisher Scientific及びVector Laboratories、米国)を使用した。
【0077】
最後に、細胞核を確認するために、4’,6-ダイアミノ-2-フェニルインドールが含まれたマウンティング培地(Vector Laboratories)にマウントし、DP71デジタルカメラが取り付けられたOlympus IX71顕微鏡(Olympus Corp.、日本)、オリンパスFSX100システム又はLSM710共焦点顕微鏡(Carl Zeiss、ドイツ)を使用してイメージを獲得した。
【0078】
フローサイトメトリー分析法(Flow cytometry)
細胞をアキュターゼ(Accutase;Merck Millipore、ドイツ)を使用して単一細胞に解離後、4%パラホルムアルデヒド-PBS溶液を使用して固定させた。細胞内マーカーを検出するために、1×Perm/Washバッファ(BD Biosciences)で細胞膜を透過化させ、1時間の間適切な抗体と共に2%BSA-PBS溶液で培養した。前記抗体に適切な蛍光-標識二次抗体を使用した。LSRII(BD Biosciences)で流動細胞を計数してFlowJoソフトウェアを使用して分析した。
【0079】
遺伝子発現(Gene expression)分析
細胞内に存在する総RNA(total RNA)はEasy-Spin(登録商標) Total RNA抽出キット(iNtRON Biotechnology、韓国)を使用して分離した。cDNAはPrime ScriptTM RT Master Mix(TAKARA Bio Inc.)を使用して総RNA 1μgから合成された。mRNA水準はSYBR(登録商標) Premix Ex TaqTM(TAKARA Bio Inc.)及びCFX96 Real-Time System(Bio-Rad、米国)を使用してリアルタイムRT-PCR分析で定量化された。各標的遺伝子に対するCt値はGAPDHの値によって標準化しており、標的遺伝子の標準化された発現水準は比較Ct方法によって分類(sorted)/分類されていない(Unsorted)グループを対照群サンプルと比較した。データは3個の独立的な実験から得た平均相対偏差±平均の標準偏差(SEM)で表現された。遺伝子発現分析に使われたプライマーの配列は以下の表2に示した。
【0080】
【表2-1】
【0081】
【表2-2】
【0082】
【表2-3】
【0083】
【表2-4】
【0084】
マイクロアレイ(Microarray)分析:転写体プロファイリング
各試料の総RNA 10μgをマクロジェン(Macrogen Inc.,韓国)で処理/分析しており、試料をAffymetric Human U133 Plus 2.0アレイにハイブリッド化した。
【0085】
実施例.中脳性ドーパミン(mDA)神経細胞への分化プロトコル
具体的なプロトコルは、図1に示した。
【0086】
前記コロニー形態に培養中であるhESCに2mg/mLのタイプIVコラゲナーゼ(Worthington Biochemical Corp.,米国)を30分間処理して胚性体形成を誘導し、bFGF-free hES培養培地(EB培地)で培養した。この際、初めの24時間は1.5%ジメチルスルホキシド(DMSO;Calbiochem-Merck Millipore)を処理し、その後、4日間は5μmのドルソモルフィン(dorsomorphin、DM)(Calbiochem-Merck Millipore)及び5μmのSB431542(SB)(Sigma-Aldrich)を処理した。
【0087】
5日目(d5)から20ng/mL bFGF及び20μg/mLヒトインシュリン溶液(Sigma-Aldrich)が添加されたDMEM/F12 1×N2補充培地(bmN2培地)内マトリゲル-コーティング培養皿にEBを付着し、6日間パターニング因子(1μM CHIR99021(Miltenyi Biotec)及び0.5μM SAG(Calbiochem-Merck Millipore))を処理した。
【0088】
11日目(d11)に細く抜いた(pulled)ガラスピペットを使用してEBコロニー内で形成された神経ロゼットを機械的に単離し、単離された神経ロゼット塊はピペッティングにより細かく砕いてマトリゲル-コーティング培養皿に再付着した。再付着された細胞は20ng/mL bFGFが添加されたDMEM/F12 1×N2及び1×B27培地(bN2B27培地)で2日間1μ MCHEM99021及び0.5μM SAGを追加で補充して増幅(expanded)培養させ、中脳性ドーパミン神経細胞特異的(specified)分化を誘導した。
【0089】
13日目(d13)にアキュターゼを用いて中脳性ドーパミン神経前駆細胞クラスターを単一細胞に分離し、bFGFを含まないN2B27培地(N2B27培地)で3.12×10細胞/cmの密度でマトリゲル-コーティングプレートの上に再付着した。細胞がプレート総面積の90%近く占める程度に7日間増幅培養させた。
【0090】
20日目(d20)から中脳/腹側の特性を有するようになった中脳性ドーパミン神経前駆細胞を1×N2、0.5×B27及び0.5×G21補充剤(Gemini Bio-Products、米国)が含まれた培地(NBG培地)で培養した。この際、初めの7日間は1μMのDAPT(Sigma-Aldrich)を添加し、その後、10ng/mLのBDNF(brain-derived neurotrophic factor;ProSpec-Tany TechnoGene、イスラエル)、10ng/mLのGDNF(glial cell line-derived neurotrophic factor;ProSpec-Tany TechnoGene)、200μMのアスコルビン酸(AA)及び1μMのジブチリルサイクリック-AMP(db-cAMP)(Sigma-Aldrich)を添加して最終分化させた。
【0091】
製造例1.LMX1A-eGFPレポーター細胞株(reporter line)の製造
具体的なプロトコルは、図2に示した。
【0092】
1-1.ヌクレアーゼ及び供与(donor)DNAプラスミドの設計
TALEN-コーディングプラスミドはツールジェン(ToolGen Inc., 韓国)から購入した。
【0093】
TALENサイトはLMX1A遺伝子のエクソン9(exon 9)の終止コドンであるTGA近く(5’-TCC ATG CAG AAT TCT TAC TT-3’(左側)、5’-TCA CAG AAC TCT AGG GGA AG-3’(右側))で二本鎖切断(double-strand brsaks、DSB)を起こすように設計されており、潜在的オフ-標的(off-target)サイトはCas-Offinder(www.rgenome.net/)を使用して検索した。
【0094】
供与DNAプラスミドはプラスミドバックボーンにpUC19を使用してDH5αで次の通り製作された:5’ 相同性アーム-内因性LMX1Aゲノムフラグメント(左アーム)-T2A-eGFP-bGHポリ(A)-PGKプロモーター駆動ピューロマイシン耐性カセット-bGHポリ(A)-3’相同性アーム(右アーム)。
【0095】
1-2.LMX1A-eGFPレポーター細胞株の製造
不活性化された(inactivated)STO上のhESCコロニーをStemMACSTM iPS-Brew XF完全培地(Miltenyi Biotec、ドイツ)内hESC-適合マトリゲル(BD Biosciences、米国)でコーティングされたプレートの上に移した。次に、細胞がプレート総面積の80~90%近く占める程度に継代培養した(継代比率、1:5)。アキュターゼを使用して単一細胞(Single cell)に解離させた後、初めて24時間の間ROCK抑制剤(10μM、Y-27632)(Calbiochem-Merck Millipore)が添加された培地内マトリゲル-コーティングプレートに移して、毎日培地を新しく交替した。酵素的継代培養が10回未満になされたhESCのみ実験に使われた。
【0096】
アキュターゼを使用してhESCを収得し、単一細胞懸濁液を製造した。次に、Neonトランスフェクションキット(100μL、Invitrogen)のRバッファに1.0×10細胞/mLの最終密度で穏やかに再懸濁させた。再懸濁された細胞120μLを前記製造例1-1のTALEN-コーディングプラスミド1対(各6μg)及びLMX1A供与DNAプラスミド(6μg)と混合し、30msの間850mVの電圧でパルスを加えてエレクトロポレーション(electroporation)を遂行した(Neon transfection system)。
【0097】
次に、細胞をhESC培地内STO feederを予め接種した2~3個の35mmプレートに移して、初めの48時間ROCK抑制剤を添加し、2日間後に培地を交替した後、毎日培地を新しく交替した。
【0098】
エレクトロポレーション5日間後、前記hESC培地に0.5μg/mLピュロマイシン(Sigma-Aldrich)を処理した。10~14日間後、ピュロマイシン抵抗性を示すコロニーをレポーター細胞株候補に分類し、これを継代培養して細胞数を拡張した。
【0099】
最終的に、クローナル細胞の遺伝型分析を通じてLMX1A-eGFPレポーター細胞株を確定した。
【0100】
製造例2.PITX3-mCherryレポーター細胞株の製造
具体的なプロトコルは、図3に示した。
【0101】
2-1.ヌクレアーゼ及び供与DNAプラスミドの設計
Cas9-及びsgRNA(CRISPR/Cas9)-コーディングプラスミドはツールジェンから購入した。
【0102】
PITX3標的化を媒介するsgRNAを製造するための配列は終止コドンであるTGA近くで二本鎖切断(DSB)を起こすように、終止コドンTGA(5’-TAC GGG CGG GGC CGC TCA TAC GG-3’(アンダーライン:PAM))を横切って位置するように設計された。潜在的オフ-標的(off-target)サイトはCas-Offinder(www.rgenome.net/)を使用して検索した。
【0103】
供与DNAプラスミドはプラスミドバックボーンにpUC19を使用してDH5αで次の通り製作された:5’相同性アーム-内因性PITX3ゲノムフラグメント(左アーム)-T2A-mCherry-bGHポリ(A)-PGKプロモーター駆動ネオマイシン耐性カセット-bGHポリ(A)-3’相同性アーム(右アーム)。
【0104】
2-2.PITX3-mCherryレポーター細胞株の製造
TALEN-コーディングプラスミドの代わりにCas9-及びsgRNA-コーディングプラスミドを、LMX1A供与DNAプラスミドの代わりにPITX3供与DNAプラスミドを使用し、0.5μg/mLピュロマイシンの代わりに100μg/mL G418(Calbiochem-Merck Millipore)を処理することを除いて、前記製造例1-2と同一の方法によりPITX3レポーター細胞株を製造した。
【0105】
実験例1.前駆細胞(progenitor)段階の同定:LMX1A-eGFPレポーター細胞株確認
前記製造例1で製造されたLMX1A-eGFPレポーター細胞株を前記実施例の分化プロトコルを用いて分化させた後、分化過程を確認した(Immunocytochemistry及びCytometry)。
【0106】
図4で確認することができるように、分化過程全体で中脳位置(regional)マーカーであるEN1、中脳底板(floor plate)位置マーカーであるFOXA2、ドーパミン系統(lineage)マーカーであるLMX1A、及びeGFPの発現が観察された。特に、分化20日目(d20)には細胞集団の~41.1%がeGFP-陽性(eGFP)細胞で表れており、eGFP細胞はEN1及びFOXA2を同時に発現した。前記3個のマーカー(EN1及びFOXA2、及びLMX1A)全て陽性反応を示した前駆細胞(~46.6%EN1eGFP、~49.2% FOXA2eGFP)も検出された(図6参照)。
【0107】
このような結果は、eGFPを発現する細胞がLMX1Aを発現する細胞であることを示し(LMX1Aレポーター細胞株確立)、hESCが底板(FOXA2)及び中脳(EN1)特性を示すmDA神経前駆細胞に直接分化されたことを意味する。
【0108】
実験例2.神経細胞(neuronal)段階の同定:PITX3-mCherryレポーター細胞株確認
前記製造例2で製造されたPITX3-mCherryレポーター細胞株を前記実施例の分化プロトコルを用いて分化させた後、分化過程を確認した(免疫組織化学及び細胞化学)。
【0109】
図5で確認することができるように、分化30日目(d30)程度まではmCherryの発現が観察されなかったが、分化40日目(d40)程度にmCherry-陽性(mCherry)神経細胞(ニューロン)クラスターが観察された。一方、PITX3遺伝子の発現パターンは分化(成熟)過程全体でレポーターmCherryと同一に表れており、特に、最終分化されたmDA神経細胞(ニューロン)集団の~16%が発生位置及び系統マーカー(EN1及びFOXA2、及びLMX1A)を共に発現するmCherry細胞で表れた(図9参照)。
【0110】
このような結果は、mCherryを発現する細胞がPITX3を発現する細胞であることを示し(PITX3レポーター細胞株確立)、hESCが底板(FOXA2)及び中脳(EN1)、及び中脳性ドーパミン(LMX1A)特性を示すmDA神経細胞(ニューロン)に直接分化されたことを意味する。
【0111】
実験例3.LMX1A細胞の特性確認
前記実験例1のd20の細胞を1時間の間10μmのY27632に露出させ、アキュターゼを使用して解離させた後、セルストレーナー(Cell strainer、BD Science)を用いて40μm以下の細胞を収集した。解離された前駆細胞を3%ウシ胎児血清(FBS)(Gemini Bio-Products)及びHBSS(WELGENE Inc.,韓国)の中の1×ペニシリン-ストレプトマイシン(P/S)(Gibco-Thermo Fisher Scientific)が添加されたLMX1A-Sortingバッファ(LMX1A-SB)に2×10細胞/mLの最終密度で再懸濁させ、細胞選別(FACS)を遂行した。分類されていない(Unsorted)グループ、LMX1Aグループ、及びLMX1AグループのmRNA発現水準を比較した。
【0112】
図6aで確認することができるように、細胞分離後、生存可能な細胞の~41.1%がLMX1A-eGFP(LMX1A)分画で表れた。また、LMX1A及びLMX1A-eGFP(LMX1A)前駆細胞は分類されていない細胞と類似の形態(morphology)を維持しているように見えた。特に、分離されたLMX1Aの~99.4%はEN1及びFOXA2全て陽性と表れた。このような結果は、FACS細胞選別によりmDA神経前駆細胞が分離されたことを意味する。
【0113】
また、図6bで確認することができるように、LMX1AグループではmDA前駆細胞-特異的遺伝子(EN1、FOXA1、FOXA2、LMX1A、LMX1B)の発現が有意に上向き調節されたが、セロトニン性前駆細胞-特異的遺伝子(NKX2.2)及び赤核(Red nucleus、中脳の解剖学的一部位)前駆細胞-特異的遺伝子(SIM1、LHX1、NKX6.1)の発現は分類されていないグループ及びLMX1A-グループで上向き調節された。このような結果は、FACS細胞選別により選別されたLMX1A細胞がmDA神経前駆細胞の特性を示すことを意味する。
【0114】
追加的に、前記細胞選別(FACS)後、分類されていない(Unsorted)グループ、LMX1Aグループ及びLMX1Aグループを追加的に1日間体外(in vitro)培養した。
【0115】
前記培養された細胞に対して、神経系(neural)-特異的及び増殖(proliferative)細胞-特異的マーカーを観察し、BrdU分析を遂行して細胞周期を確認した。
【0116】
図7aで確認することができるように、3グループ全てでNESTIN-、SOX1-、SOX2-及びKI67-陽性細胞が類似するように表れた。このような結果は、分類されたLMX1A細胞が分類されていないグループ及びLMX1Aグループと同様に、神経前駆細胞の特性及び細胞増殖能力を維持することを意味する。
【0117】
また、図7bで確認することができるように、LMX1AグループはmDA神経前駆細胞段階で生存細胞の38.5±3.9%及び49.5±6.2%がG0/G1及びS段階におり、6±2.7%がG2/Mにいた。このような結果は、分類されたLMX1A細胞が実際に細胞周期(cell cycle)を回る増殖する細胞であることを意味する。
【0118】
最後に、前記細胞選別(FACS)後、分類されていない(Unsorted)グループ、LMX1A-グループ及びLMX1Aグループを追加的に最終分化(4週、d52)させた後、mDA神経細胞-関連マーカーの発現を比較した。
【0119】
図8aで確認することができるように、最終分化後、分類されていないグループ及びLMX1Aグループに比べてLMX1AグループでmDA神経細胞-関連マーカー(TH、NURR1、PITX3)を発現する細胞の比率が増加した。このような結果は、LMX1A細胞がmDA神経細胞に分化可能なmDA神経前駆細胞であることを意味する。
【0120】
延いては、前記最終分化により完全に成熟した細胞(8週、d75)に対して、ドーパミン分泌(release)程度を確認した。
【0121】
具体的に、細胞を低KCl溶液(2.5mM CaCl、11mMグルコース、20mM HEPES-NaOH、4.7mM KCl、1.2mM KHPO、1.2mM MgSO及び140mM NaCl)で洗浄し、低KCl溶液で2分間培養した。次に、高KCl溶液(2.5mM CaCl、11mMグルコース、20mM HEPES-NaOH、60mM KCl、1.2mM KHPO、1.2mM MgSO及び85mM NaCl)に置換し、15分間追加培養した。溶液を15mLチューブに収集し、2,000rpmで1分間遠心分離して残骸(debris)を除去し、上澄液を1.5mLチューブに収集して-80℃で保管した。ドーパミンの濃度はドーパミンELISAキット(Cat. No. KA3838;Abnova、台湾)により製造者の指示によって検出された。
【0122】
図8bで確認することができるように、最終分化後、分類されていないグループ及びLMX1Aグループに比べてLMX1Aグループでドーパミンの分泌が増加した。このような結果は、LMX1A細胞が最終分化して形成されたmDA神経細胞はドーパミンを分泌する機能的mDA神経細胞であることを意味する。
【0123】
実験例4.PITX3細胞の特性確認
前記実験例2のd40の細胞を5%トレハロースが添加されたパパイン(Papain;Worthington Biochemical Corp.)を使用して単一細胞に解離させた後、70μm及び40μmセルストレーナーを順次に用いて40μm以下の細胞を収集した。解離された細胞を5%FBS、1×Glutamax(Gibco-Thermo Fisher Scientific)、5%トレハロース及びHBSSのうちの1×P/Sが添加されたPITX3-Sortingバッファ(PITX3-SB)に1×10細胞/mLの濃度で再懸濁させ、細胞選別(FACS)を遂行した。また、細胞選別後、追加的に36時間の間体外(in vitro)培養した後、生き残った細胞の形態を観察した。
【0124】
図9aで確認することができるように、細胞選別後、生存可能な細胞の~16%がPITX3-mCherry(PITX3)分画で表れた。また、細胞選別過程で細胞の消失があったことにもかかわらず、追加体外培養後に生き残ったPITX3及びPITX3-mCherry(PITX3)細胞は分類されていない細胞と類似の神経細胞(neuronal)形態を維持することと表れた。このような結果は、FACS細胞選別によりPITX3細胞が選別されており、3グループ(分類されていないグループ、PITX3グループ及びPITX3グループ)全て神経細胞-特異的形態を示すことを意味する。
【0125】
次に、前記d40細胞の分類されていない(Unsorted)グループ、PITX3グループ及びPITX3グループでmDA神経細胞-関連マーカーの発現を比較した。
【0126】
図9bで確認することができるように、PITX3グループで神経細胞(ニューロン)-特異的遺伝子(NeuN及びMAP2)及びmDA神経細胞(ニューロン)-特異的遺伝子(PITX3、NURR1、TH、DAT、及びVMAT2)の発現が有意に上向き調節されたが、セロトニン性神経細胞(ニューロン)-特異的遺伝子(HTR2B)の発現は下向き調節された。また、図9cで確認することができるように、PITX3グループでmDA神経細胞マーカーであるTHを発現する細胞、及び神経細胞-特異的マーカーであるTUBB3(TUJ1)及びMAP2を同時に発現する細胞の比率が増加した。このような結果は、PITX3細胞がmDA神経細胞であることを意味する。
【0127】
最後に、前記細胞選別(FACS)後、分類されていない(Unsorted)グループを追加的に培養した後、分化44日目(d44)に二重-標識免疫染色を遂行した。
【0128】
図10で確認することができるように、PITX3細胞は成熟したmDA神経細胞マーカーであるNURR1、AADC、VMAT2、及びDATを発現することを確認した。また、A9地域マーカーであるKCNJ6(GIRK2)は発現したが、A10地域マーカーであるCALBを発現する細胞は観察されなかった。このような結果は、本発明の分化プロトコルを通じて分化されたPITX3細胞は成熟したmDA神経細胞であることを意味する。
【0129】
実験例5.移植適合性(suitability)確認
前記製造例1のLMX1A-eGFPレポーター細胞株及び製造例2のPITX3-mCherryレポーター細胞株を前記実施例の分化プロトコルを用いて分化させた後、分化20日目(d20)のmDA神経前駆細胞及び分化50日目(d50)の成熟したmDA神経細胞を各々前記実験例3及び4と同一の方法を用いて単一細胞に分離した。分離された単一細胞の試験管内(in vitro)細胞死滅程度を比較した。この際、細胞死滅はLIVE/DEADTM Fixable Violet Dead Cell Stainキット(Thermo Fisher)を用いて製造者の指示によって確認した。
【0130】
図11で確認することができるように、単一細胞分離後、細胞死滅を示す細胞はLMX1A細胞の中では約8%、PITX3細胞の中では約30%に表れた。即ち、単一細胞に分離時、LMX1AmDA神経前駆細胞がPITXmDA神経細胞に比べて高い生存力を維持しており、これを通じてLMX1A細胞及びPITX3細胞は移植のための単一細胞分離過程に対する感受性の差異が表れることが分かった。このような結果は、mDA神経前駆細胞であるLMX1A細胞を移植することが成熟した神経細胞であるPITX3細胞を移植することより細胞死滅の面で有利であることを意味する。
【0131】
実験例6.中脳性ドーパミン(mDA)マーカーの同定
6-1.転写体(Transcriptome)分析
前記製造例1のLMX1A-eGFPレポーター細胞株及び製造例2のPITX3-mCherryレポーター細胞株を前記実施例の分化プロトコルを用いて分化させた後、分化20日目(d20、mDA神経前駆細胞段階)のLMX1A及びLMX1A細胞、及び分化40日目(d40、mDA神経細胞段階)のPITX3及びPITX3細胞を分離し、これに対する転写体分析(Microarray)を遂行した(図12参照)。
【0132】
一方、前記mDA神経前駆細胞段階ではeGFP及び細胞周期マーカー(Ki67、PCNA及びPH3)を発現する細胞が観察されており、前記mDA神経細胞段階ではmCherry及びmDA神経細胞マーカー(TH)を発現する細胞、成熟した神経細胞マーカー(NeuN)を発現する細胞が観察されたが、未成熟神経細胞マーカー(NeuroD)及び増殖細胞マーカー(KI67)を発現する細胞は観察されなかった。
【0133】
6-2.mDAマーカーの候補群(candidates)確認
前記結果に基づいて、mDAマーカーの候補群を確保した。具体的な過程は、図13に示した。
【0134】
前記分離された4種類の細胞に対する比較マイクロアレイ分析結果、LMX1A細胞に比べてLMX1A細胞で上向き調節(>2-FC)されている遺伝子及びPITX3細胞に比べてPITX3細胞で上向き調節(>2-FC)されている遺伝子を確認し、遺伝子マイニング(genemining)を通じてこれらのうち、表面マーカーをコーディングしている53個の遺伝子を同定した。同定された53個の遺伝子にはマウスmDA神経前駆細胞-特異的に知られた多数の遺伝子(Corin、Clstn2、Kitlg、Plxdc2、Pcdh7、Ferd3l、Frem1、Alcam及びNotch2)が含まれていた。
【0135】
次に、前記遺伝子に対して、実際に分化中であるmDA細胞で発現有無を確認して標的有効性(target validation)を評価した。その結果、LMX1A細胞と比較してLMX1A細胞で上向き調節される遺伝子のうち、表面マーカー遺伝子(図14)、及びLMX1A細胞及びPITX3細胞全てで上向き又は下向き調節される表面マーカー遺伝子(図15)を同定した。前記図14の21個の遺伝子のうち、商業的に利用可能な抗体がある18個の遺伝子に対してスクリーニングを遂行した。
【0136】
その結果、前記18個の遺伝子のうち、4個の遺伝子(CORIN、TPBG、CD47、ALCAM)が最終表面マーカー候補群に選ばれた。
【0137】
6-3.mDA神経前駆細胞-特異的マーカー同定
前記結果に基づいて、前記4個の遺伝子(CORIN、TPBG、CD47、ALCAM)を標的とするMACSを遂行した。
【0138】
図16及び図17で確認することができるように、CORIN-及びTPBG(trophoblast glycoprotein)-標的MACSは統計的に有意にLMX1AFOXA2mDA神経前駆細胞の濃縮(enrichment)を示した。特に、TPBGはmDA神経前駆細胞で広範囲に発現された。
【0139】
一方、前記CORIN遺伝子はmDA神経前駆細胞濃縮のための用途に既に知られているが、TPBGはmDA発達過程で全く報告されたことがないところ、TPBGを最終mDA神経前駆細胞-特異的マーカーに選定した。
【0140】
実験例7.ヒト胚性幹細胞(hESC)から分離されたTPBG-陽性細胞の生体内(in vivo)移植効果確認
7-1.6-OHDA損傷パーキンソン病(PD)-モデル製造
200~250gの雌Sprague-Dawley系ラット(Orient Bio Inc.,韓国)を移植対象に使用した。30mg/kg Zoletil(登録商標)(Virbac、フランス)及び10mg/kg Rompun(登録商標)(Bayer、ドイツ)を混合して麻酔剤に使用した。
【0141】
座標(TB-0.45、AP-0.40、ML-0.13、DV-0.70)によって3μLの30mM 6-OHDAをラットの内側前脳(medial forebrain)バンドルに注入して半-パーキンソン病モデル(hemi-parkinsonian model)を誘導した。
【0142】
7-2.TPBG-陽性細胞移植後、PD-モデルの行動回復確認
前記のコロニー形態に培養中であるhESCを前記実施例の分化プロトコルを用いて分化させた後、分化20日目(d20)にTPBGを標的とするMACSを遂行した。
【0143】
分離したTPBG-陽性細胞を最終濃度が8.75×10細胞/μLになるように1×HBSSに懸濁させて細胞懸濁液を製造した。この際、対照群(Control)にはHBSSのみを移植したグループを使用した。
【0144】
前記実験例7-1の6-OHDA損傷4週後、製造された細胞懸濁液(総350,000細胞)を座標(TB -0.24、AP +0.08、ML -0.30、DV -0.40及び-0.50)によってラット当たり4μLずつ定位方法により移植した。
【0145】
移植2日前からラットが犧牲されるまで、実験期間の間毎日10mg/kgのシクロスポリンA(cyclosporine A;鐘根堂、韓国)を腹腔内注射して免疫抑制(Immunosuppressive)処理した。
【0146】
移植前、移植後、4、8、12、又は16週にアンフェタミン(2.5mg/kg、Sigmal-Aldrich)を腹腔内注射し、30分間ラットの回転有無を記録した。
【0147】
図18で確認することができるように、TPBG-陽性細胞は移植後16週の間対照群に比べて有意な運動機能向上を示した。このような結果は、hESC由来のTPBG-陽性mDA神経前駆細胞が生体内で生存可能であり、運動機能を改善させることを示す。
【0148】
7-3.TPBG-陽性細胞移植後、移植片の特性確認
対照群に分類されていない(Unsorted)細胞を移植したグループを使用したことを除いて、前記実施例7-2と同一の方法によりTPBG-陽性細胞及び分類されていない細胞を移植した。
【0149】
移植16週後、ラットを25%ウレタン溶液で麻酔させ、0.9%食塩水及び4%パラホルムアルデヒドを経心灌流で灌流させた。除去された脳を一晩中固定させ、30%スクロース-PBS溶液で凍結保護させた。凍結保護された(cryoprotected)脳はFSC 22(登録商標)化合物(Leica、Nuβ loch、Germamy)に固定されており、クライオスタット(Thermo Fisher Scientific)を使用して18μm厚さで冠状切片(coronal sections)を製作した。次に、hNCAM(human-specific neural cell adhesion molecule)を標的とする免疫組織化学染色を実施した。
【0150】
図19で確認することができるように、TPBG-陽性細胞グループは分類されていないグループに比べてより多い数のTHhNCAM及びPITX3hNCAM mDA神経細胞で構成された。このような結果は、生体内mDA神経細胞への分化において、分類されていないグループに比べてTPBG-陽性細胞がより適することを意味する。
【0151】
また、図20で確認することができるように、分類されていないグループのうち、1つの特定ラットで約20%以上のKI67hNCAM細胞を有する移植片(graft)が観察されたが、TPBG-陽性グループではKI67hNCAM細胞が観察されなかった。このような結果は、分類されていない場合、移植16週後にも増殖能を維持する可能性があるが、TPBGに細胞分類時、増殖細胞を排除することができることを意味する。これは、細胞治療の安全性の面で非常に重要な結果といえる。
【0152】
実験例8.ヒト胎児腹側中脳細胞(humanfetal ventral mesencephalic cells;fVM cells)から分離されたTPBG-陽性細胞の特性確認
神経幹細胞維持培養液(ReNcell NSC maintenance Medium、Merck)でラミニン-コーティングプレートの上に培養中のfVM細胞に対して、細胞がプレート総面積の80~90%近く占める程度に培養された時、TPBGを標的とするMACSを遂行した。次に、hESC(H9)を対照群(H9の発現=1)にして分離されたTPBG-陽性細胞及びTPBG-陰性細胞で相対的なEN1の発現をqRT-PCR方法により確認した。
【0153】
図21で確認することができるように、TPBG-陰性細胞に比べてTPBG-陽性細胞でmDA神経細胞の発生位置マーカーであるEN1の発現が増加した。このような結果は、TPBGを用いてfVM細胞のうち、中脳特性を示す細胞を濃縮することができることを意味する。
【0154】
実験例9.ヒト誘導多能性幹細胞(human induced pluripotent stem cells;iPSC)から分離されたTPBG-陽性細胞の特性確認
前記ヒト胚性幹細胞と同一の方法により培養中であるhuman iPSC(HDF-epi3)を前記実施例の分化プロトコルを用いて分化させた後、分化20日目(d20)にTPBGを標的とするMACSを遂行した。分離されたTPBG-陽性細胞でのEN1、FOXA2、LMX1Aの発現を確認した(免疫組織化学)。
【0155】
図22で確認することができるように、中脳発生位置マーカーであるEN1及びFOXA2の発現はMACS前と後で差異が表れなかったが、mDA発生系統マーカーであるLMX1Aを発現する細胞はTPBG-陽性細胞で濃縮されることが分かった。併せて、前記3個のマーカー(EN1及びFOXA2、及びLMX1A)全て陽性反応を示した細胞の比率もTPBG-陽性細胞で有意に濃縮された。
【0156】
本発明はドーパミン神経細胞の分離方法及びこれを用いて分離されたドーパミン神経細胞を含むパーキンソン病治療用薬剤学的組成物に関するものであって、前記ドーパミン神経細胞の分離方法はTPBG(Trophoblast glycoprotein)-陽性ドーパミン神経細胞を分離する段階を含むことによって、本方法によって分離されたドーパミン神経細胞は移植時、細胞の効能が増進し、移植安全性が向上したことを特徴とするので、パーキンソン病治療のための細胞移植用途に有用に使われることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
図9c
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【配列表】
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