(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】メタクロレインを調製するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 45/75 20060101AFI20220128BHJP
C07C 47/22 20060101ALI20220128BHJP
C07C 51/235 20060101ALI20220128BHJP
C07C 57/055 20060101ALI20220128BHJP
C07C 67/39 20060101ALI20220128BHJP
C07C 69/54 20060101ALI20220128BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
C07C45/75
C07C47/22 H
C07C51/235
C07C57/055 B
C07C67/39
C07C69/54 Z
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2019562563
(86)(22)【出願日】2018-05-24
(86)【国際出願番号】 US2018034271
(87)【国際公開番号】W WO2018217961
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-05-17
(32)【優先日】2017-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャクラバティ、リータム
(72)【発明者】
【氏名】クラプチェトフ、ドミトリー エイ.
(72)【発明者】
【氏名】シルバーノ、マーク エイ.
(72)【発明者】
【氏名】シウ、チンスオ
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/065610(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/043861(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/079044(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/042000(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクロレインを調製するためのプロセスであって、
(a)触媒ストリームを提供するために、水およびアミン酸触媒を混合することと、
(b)メタクロレイン、メタノール、および少なくとも8重量%の水を含む第1の中間ストリームを生成するために、前記触媒ストリーム、およびプロピオンアルデヒドと、ホルムアルデヒドと、メタノールと、を含む、反応ストリームを反応器に送ることと、
(c)(i)メタクロレイン、メタノール、アミン酸触媒、および少なくとも65重量%の水を含む第1の水相と、(ii)水、少なくとも85重量%のメタクロレイン、および5重量%未満のメタノール含む第1の有機相と、を生成するために、前記第1の中間ストリームを第1の相分離器に提供することと、
(d)(i)メタクロレイン、水、および60重量%未満のメタノールを含む第2の中間ストリームと、(ii)アミン酸触媒を含む底部ストリームと、(iii)メタノールおよび水を含むサイドドローストリームと、を生成するために、第1の蒸留塔で前記第1の水相を蒸留することと、
(e)(i)メタクロレイン、水、および55重量%未満のメタノールを含む第2の有機相と、(ii)第2の水相と、を生成するために、前記第2の中間ストリームおよび水を第2の相分離器に提供することと、
(f)(i)メタクロレインおよび2重量%未満のメタノールを含む第3の中間ストリームと、(ii)オーバーヘッドストリームと、を生成するために、第2の蒸留塔で前記第1の有機相および前記第2の有機相を蒸留することと、
(g)(i)少なくとも97重量%の合計量のメタクロレインおよび水と、2重量%未満のメタノールと、酢酸、プロピオン酸、メタクロレイン二量体、および2-メチル-2-ペンテナールのうちの1つ以上を含む1重量%未満の不純物と、を含む、生成物ストリーム、ならびに(ii)廃棄物ストリームを生成するために、第3の蒸留塔で前記第3の中間ストリームを蒸留することと、
(h)前記オーバーヘッドストリームの少なくとも一部を前記第1の相分離器に再循環させることと、
(i)前記底部ストリームの少なくとも一部を前記触媒ストリームに再循環させることと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記プロピオンアルデヒドが、ヒドロホルミル化触媒の存在下で、エチレンをCOおよびH
2と接触させることによって生成される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
メタクリル酸を生成するために、酸化触媒の存在下で、前記メタクロレインを酸素含有ガスと接触させることを含むプロセスに、前記生成物ストリームの少なくとも一部を提供することをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
メタクリル酸メチルを生成するために、エステル化触媒の存在下で、前記メタクリル酸をメタノールと接触させることを含むプロセスに、前記メタクリル酸を提供することをさらに含む、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
メタクリル酸を生成するために、酸化触媒の存在下で、前記メタクロレインを酸素含有ガスと接触させることを含むプロセスに、前記生成物ストリームの少なくとも一部を提供することをさらに含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項6】
メタクリル酸メチルを生成するために、エステル化触媒の存在下で、前記メタクリル酸をメタノールと接触させることを含むプロセスに、前記メタクリル酸を提供することをさらに含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記第1の相分離器が、15℃未満の温度で操作される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記第2の相分離器が、25℃未満の温度で操作される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記第2の相分離器に入る前記水の、前記第2の相分離器に入る前記第2の中間ストリームに対する比が、1:10~100:1である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記第2の蒸留塔を出る前記第3の中間ストリームの、前記第2の蒸留塔に入る第1の有機相および前記第2の有機相の合計量に対する比が、1:10~9:10である、請求項1に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥メタクロレインを調製するためのプロセス、ならびにメタクリル酸およびメタクリル酸メチルを作製するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
メタクロレイン(2-メチルプロプ-2-エナール、「MA」)は、メタクリル酸(「MAA」)生成における一般的な中間体である。MAは、US4,496,770に開示されているように、例えば液相プロピオンアルデヒド縮合を介して、エチレン(C2)供給原料から生成され得る。MA生成物ストリームは、プロピオンアルデヒド縮合で使用されるホルムアルデヒドが供給されるメタノールを含む。そのようなメタノールは、酸素の存在下でMAを単一ステップでMAAに変換するその後の酸化プロセスで有害となり得る。したがって、従来のプロセスからのMAストリームは、酸化プロセスの効率に悪影響を与え得る特定の不純物(例えば、プロピオンアルデヒド、ホルムアルデヒド、酢酸、ならびにプロピオン酸、メタクロレイン二量体、2-メチル-2-ペンテナール、および他のメタクロレインオリゴマーを含むが、これらに限定されない有機重質)を実質的に含まないことに加えて、下流の酸化プロセスの供給ストリームとして使用するために十分にメタノールを含まないことが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
乾燥MAを調製するための方法は、当該技術分野で説明されている。例えば、US2016/0229779は、(a)MA、メタノール、および少なくとも8重量%の水を含む湿潤MAストリームを相分離器に提供することと、(b)MAストリームを有機相と水相とに分離することと、(c)有機相を蒸留して、MAを含有する生成物ストリームおよび第1のオーバーヘッドストリームを生成することと、(d)第1のオーバーヘッドストリームを相分離器に送り返すことと、(e)水相を蒸留して、相分離器に再循環される第2のオーバーヘッドストリームを生成することと、を含む、プロセスを開示している。しかしながら、先行技術は、下流の酸化プロセスで使用するためのMA生成物中のメタノール含量をさらに最小化するか、または酸化プロセスの効率に悪影響を与え得る特定の不純物をさらに最小化する方法を開示していない。
【0004】
したがって、MAストリームが下流の酸化プロセスでの使用に好適な低メタノール含量を有する、エチレン(C2)供給原料から調製されるMAを調製しながら有害な不純物も除去するプロセスを開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、(a)水およびアミン酸触媒を混合して、触媒ストリームを提供することと、(b)触媒ストリーム、およびプロピオンアルデヒドと、ホルムアルデヒドと、メタノールと、を含む、反応ストリームを反応器に送って、メタクロレイン、メタノール、および少なくとも8重量%の水を含む第1の中間ストリームを生成することと、(c)第1の中間ストリームを第1の相分離器に提供して、(i)メタクロレイン、メタノール、アミン酸触媒、および少なくとも65重量%の水を含む第1の水相と、(ii)水、少なくとも85重量%のメタクロレイン、および5重量%未満のメタノール含む第1の有機相と、を生成することと、(d)第1の蒸留塔で第1の水相を蒸留して、(i)メタクロレイン、水、および60重量%未満のメタノールを含む第2の中間ストリームと、(ii)アミン酸触媒を含む底部ストリームと、(iii)メタノールおよび水を含むサイドドローストリームと、を生成することと、(e)第2の中間ストリームおよび水を第2の相分離器に提供して、(i)メタクロレイン、水、および55重量%未満のメタノールを含む第2の有機相と、(ii)第2の水相と、を生成することと、(f)第2の蒸留塔で第1の有機相および第2の有機相を蒸留して、(i)メタクロレインおよび2重量%未満のメタノールを含む第3の中間ストリームと、(ii)オーバーヘッドストリームと、を生成することと、(g)第3の蒸留塔で第3の中間ストリームを蒸留して、(i)少なくとも97重量%の合計量のメタクロレインおよび水と、2重量%未満のメタノールと、酢酸、プロピオン酸、メタクロレイン二量体、および2-メチル-2-ペンテナールのうちの1つ以上を含む1重量%未満の不純物と、を含む、生成物ストリーム、ならびに(ii)廃棄物ストリームを生成することと、(h)オーバーヘッドストリームの少なくとも一部を前記第1の相分離器に再循環させることと、(i)底部ストリームの少なくとも一部を前記触媒ストリームに再循環させることと、を含む、メタクロレインを調製するプロセスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明者らは、驚くべきことに、MAストリームが下流の酸化プロセスでの使用に好適な低メタノール含量を有する、エチレン(C2)供給原料から調製されるメタクロレイン(「MA」)を調製しながら有害な不純物も除去するプロセスを発見した。
【0008】
本発明の一実施形態が、
図1に示される。触媒ストリーム10は、水およびアミン酸触媒を混合することによって提供される。特定の実施形態において、水および触媒は、触媒タンク内で混合される。アミン酸触媒は、プロピオンアルデヒドおよびホルムアルデヒドのメタクロレインへのマンニッヒ縮合を触媒することができる。マンニッヒ縮合プロセスは、例えば、米国特許第4,496,770号および米国特許第7,141,702号に記載されているように、当該技術分野において既知である。好適なアミン酸触媒としては、例えば、ジメチルアミンなどの2級アミン、および酢酸などの酸を含むものが挙げられる。
【0009】
アミン酸触媒の好適な酸としては、例えば、無機酸および有機モノ、ジ、またはポリカルボン酸が挙げられる。好適なカルボン酸としては、例えば、脂肪族C1~C10モノカルボン酸、C2~C10ジカルボン酸、C2~C10ポリカルボン酸が挙げられる。特定の実施形態において、酸は、酢酸、プロピオン酸、メトキシ酢酸、n-酪酸、イソ酪酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、およびそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む。好適な無機酸としては、例えば、硫酸およびリン酸が挙げられる。
【0010】
アミン酸触媒の好適なアミンは、例えば、式NHR2R3のものを含み、式中、R2およびR3は、各々独立して、C1~C10アルキルであり、任意選択的に、エーテル、ヒドロキシル、第2級アミノ、もしくは第3級アミノ基で置換されるか、またはR2およびR3は、隣接する窒素と一緒になって、C5~C7複素環を形成し得、任意選択的に、さらなる窒素原子および/もしくは酸素原子を含み、任意選択的に、C1~C4アルキルもしくはC1~C4ヒドロキシアルキルによって置換される。特定の実施形態において、アミンは、ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、メチルイソプロピルアミン、メチルイソブチルアミン、メチル-sec.-ブチルアミン、メチル-(2-メチルペンチル)-アミン、メチル-(2-エチルヘキシル)-アミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、N-メチルピペラジン、N-ヒドロキシエチルピペラジン、ピペラジン、ヘキサメチレンイミン、ジエタノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルシクロヘキシルアミン、メチルシクロペンチルアミン、およびジシクロヘキシルアミンのうちの少なくとも1つ、ならびにそれらの組み合わせを含む。
【0011】
特定の実施形態において、アミン酸触媒は、ジメチルアミンおよび酢酸を含む。特定の実施形態において、アミン対酸のモル比は、得られるpHが2.5~7になるようなものである。例えば、特定の実施形態において、アミン酸触媒は、10:1~1:10、好ましくは5:1~1:5、およびより好ましくは1:1~1:1.2の量のジメチルアミン対酢酸のモル比を含む。
【0012】
マンニッヒ縮合反応は、触媒ストリーム10、およびプロピオンアルデヒドと、ホルムアルデヒドと、メタノールとを含む反応ストリーム20を反応器200に送って、マンニッヒ縮合反応を介して、メタクロレインと、メタノールと、水とを含む第1の中間ストリーム30を生成することによって行われる。反応は、反応が進行する任意の好適な条件下で行われ得る。例えば、反応は、少なくとも20℃の温度および少なくとも大気圧で実施され得る。特定の実施形態において、反応は、液相で、100℃超、例えば、150~220℃、および超大気圧、例えば、10~80バールで実施される。プロピオンアルデヒド対ホルムアルデヒドのモル比は、特に限定されない。例えば、特定の実施形態において、反応ストリーム20は、1.1:1~1:2、好ましくは1.1:1~1:1.5、より好ましくは1.05:1~1:1.05の量のプロピオンアルデヒド対ホルムアルデヒドの比を含む。第1の中間ストリーム30は、それが、第1の中間ストリーム30の総重量に基づいて、少なくとも8重量%、または少なくとも10重量%の水、または少なくとも20重量%の水、または少なくとも40重量%の水を含むという点において、「湿潤」メタクロレインストリームと見なされる。特定の実施形態において、反応ストリーム20中に存在するメタノールおよびホルムアルデヒドは、ホルマリンの形態で提供される。特定の実施形態において、本発明の方法で利用されるホルマリンは、ホルマリンの総重量に基づいて、約37重量%の量のホルムアルデヒドと、10~15重量%の量のメタノールとを含む飽和水溶液である。ホルマリン中に存在するメタノールは、酸素の存在下でメタクロレインをメタクリル酸に変換するその後の酸化プロセスで有害となり得る。本発明者らは、驚くべきことに、後に続く酸化プロセスのための原料として第1の中間供給ストリーム30を下流で使用する前の、第1の中間供給ストリーム30からのメタノールの効率的な除去が、本発明のプロセスによって有益に達成されることを見出した。
【0013】
したがって、第1の中間ストリーム30は、第1の相分離器300に送られて、有機相50および水相40を生成する。水相40は、メタクロレイン、メタノール、アミン酸触媒、および主に水を含む。特定の実施形態において、水は、水相40の総重量に基づいて、少なくとも65重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも80重量%の量で水相40中に存在する。
【0014】
次いで、水相40は、第1の蒸留塔400で蒸留されて、第2の中間ストリーム60、底部ストリーム41、およびサイドドローストリーム42を生成する。第2の中間ストリーム60は、水、メタノール、およびメタクロレインを含む。特定の実施形態において、水は、第2の中間ストリーム60の総重量に基づいて、60重量%未満、好ましくは40重量%未満、およびより好ましくは20重量%未満の量で第2の中間ストリーム60中に存在する。特定の実施形態において、メタクロレインおよび水は、第2の中間ストリーム60の総重量に基づいて、40重量%超、好ましくは60重量%超、およびより好ましくは80重量%超の量で第2の中間ストリーム60中に存在する。底部ストリーム41は、本発明の方法によって回収される触媒ストリーム10のアミン酸触媒を含む。特定の実施形態において、底部ストリーム41の少なくとも一部は、触媒ストリーム10に再循環され、好ましい実施形態において、これは、触媒タンク100内で混合される。サイドドローストリーム42は、主に水と、プロセスからの特定の有機化合物とを含む。
【0015】
次いで、第2の中間ストリーム60および水61は、第2の相分離器500に送られて、第2の有機相70および第2の水相62を生成する。第2の有機相70は、メタクロレイン、水、およびメタノールを含む。特定の実施形態において、メタノールは、第2の有機相70の総重量に基づいて、55重量%未満、好ましくは35重量%未満、およびより好ましくは15重量%未満の量で第2の有機相70中に存在する。特定の実施形態において、メタクロレインおよび水は、第2の有機相70の総重量に基づいて、45重量%超、好ましくは65重量%超、およびより好ましくは85重量%超の量で第2の有機相70中に存在する。理論に拘束されることを望まないが、低温で第2の相分離器500を操作すると、第2の有機相70がより少ない量のメタノールを含むことをもたらし、これは、第2の有機相70の下流の蒸留に有益であると考えられる。したがって、特定の実施形態において、第2の相分離器500は、25℃未満、好ましくは15℃未満、およびより好ましくは10℃未満の温度で操作される。特定の実施形態において、第2の相分離器500に入る水61の、第2の相分離器500に入る第2の中間ストリーム60との比は、1:10~100:1、好ましくは3:10~10:1、およびより好ましくは5:10~1:1である。
【0016】
有機相50は、水、メタノール、および主にメタクロレインを含む。特定の実施形態において、メタクロレインは、有機相50の総重量に基づいて、少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも88重量%、およびより好ましくは少なくとも92重量%の量で有機相50中に存在する。特定の実施形態において、メタノールは、有機相50の総重量に基づいて、5重量%未満、好ましくは4重量%未満、およびより好ましくは3重量%未満の量で有機相50中に存在する。理論に拘束されることを望まないが、低温で第1の相分離器300を操作すると、有機相50がより少ない量のメタノールを含むことをもたらし、これは、有機相50の下流の蒸留に有益であると考えられる。したがって、特定の実施形態において、第1の相分離器300は、15℃未満、好ましくは10℃未満、およびより好ましくは5℃未満の温度で操作される。
【0017】
次いで、第1の有機相50および第2の有機相70は、第2の蒸留塔600で蒸留されて、第3の中間ストリーム80およびオーバーヘッドストリーム51を生成する。特定の実施形態において、第2の蒸留塔600は、ストリッピングカラムとして操作され、液体が塔に還流されることなく、オーバーヘッド蒸気が凝縮される。特定の実施形態において、第2の蒸留塔600を出る第3の中間ストリーム80の、第2の蒸留塔600に入る第1の有機相50および第2の有機相70の合計量との比は、1:10~9:10、好ましくは2:10~8:10、およびより好ましくは3:10~7:10である。第3の中間ストリーム80は、水、メタノール、および主にメタクロレインを含む。特定の実施形態において、メタノールは、第3の中間ストリーム80の総重量に基づいて、2重量%未満、好ましくは1重量%未満、およびより好ましくは0.5重量%未満の量で第3の中間ストリーム80中に存在する。特定の実施形態において、メタクロレインは、第3の中間ストリーム80の総重量に基づいて、少なくとも90重量%、好ましくは92重量%、およびより好ましくは95重量%の量で第3の中間ストリーム80中に存在する。オーバーヘッドストリーム51は、水、メタノール、および主にメタクロレインを含む。特定の実施形態において、オーバーヘッドストリーム51の少なくとも一部は、相分離器300に再循環される。
【0018】
次いで、第3の中間ストリーム80は、第3の蒸留塔700で蒸留されて、生成物ストリーム90および廃棄物ストリーム81を生成する。生成物ストリーム90は、水、メタノール、および主にメタクロレインを含む。特定の実施形態において、メタクロレインおよび水は、生成物ストリーム90の総重量に基づいて、少なくとも97重量%、好ましくは少なくとも98重量%、およびより好ましくは少なくとも99重量%の量で生成物ストリーム90中に存在する。特定の実施形態において、メタノールは、生成物ストリーム90の総重量に基づいて、2重量%未満、好ましくは1重量%未満、およびより好ましくは0.5重量%未満の量で生成物ストリーム90中に存在する。廃棄物ストリーム81は、プロセスからの望ましくない有機化合物、例えば、メタクロレイン二量体、2-メチル-2-ペンテナール、阻害剤、およびプロセスからの他の重質有機化合物を含む。
【0019】
阻害剤は、1つ以上の場所、例えば、触媒タンク100、反応器200、第1の相分離器300、第2の相分離器500、第1の蒸留塔400、第2の蒸留塔600、第3の蒸留塔700、オーバーヘッドストリーム51、および生成物ストリーム90を通ってプロセスに導入され得る。好適な阻害剤としては、例えば、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(4-ヒドロキシ-TEMPO)が挙げられる。
【0020】
特定の実施形態において、反応ストリーム10中のプロピオンアルデヒドは、エチレンのヒドロホルミル化によって調製される。ヒドロホルミル化プロセスは、例えば、米国特許第4,427,486号、米国特許第5,087,763号、米国特許第4,716,250号、米国特許第4,731,486号、および米国特許第5,288,916号に記載されているように、当該技術分野において既知である。エチレンのプロピオンアルデヒドへのヒドロホルミル化は、ヒドロホルミル化触媒の存在下で、エチレンをCOおよび水素と接触させることを伴う。好適なヒドロホルミル化触媒としては、例えば、金属有機リン配位子錯体が挙げられる。好適な有機リン配位子としては、例えば、有機ホスフィン、有機ホスファイト、および有機ホスホルアミダイトが挙げられる。特定の実施形態において、CO対水素の比は、1:10~100:1、好ましくは1:10~10:1の範囲である。特定の実施形態において、ヒドロホルミル化反応は、-25℃~200℃、好ましくは50℃~120℃の反応温度で実施される。
【0021】
特定の実施形態において、生成物ストリーム90の少なくとも一部は、下流の酸化プロセスで利用される。酸化プロセスは、メタクリル酸を生成するのに十分な条件下で、酸化触媒の存在下でメタクロレインを酸素含有ガスと接触させることを含む。酸化プロセスは、例えば、米国特許第9,751,822号、米国特許第8,716,523号、米国特許公開第2016/0051970号、および米国特許第7,999,133号に記載されているように、当該技術分野において既知である。生成物ストリーム90中のメタノールの少ない量により、酸化プロセスの原料供給として特に有利になる。酸化プロセスで用いられる酸素対メタクロレインのモル比は特に限定されず、1:10~1,000:1、好ましくは1:1~10:1などの広範囲のモル比にわたって実施され得る。酸化プロセスに好適である酸素含有ガスとしては、例えば、酸素ガス、または酸素ガスと、反応に不活性な希釈剤(例えば、窒素、二酸化炭素など)と、を含む、混合ガスが挙げられる。特定の実施形態において、酸化プロセスに好適な酸素含有ガスとして空気が利用され得る。好適な酸化触媒には、例えば、V、Mo、Cs、およびBiが挙げられる。触媒元素は、担体、例えば、シリカまたはアルミナに支持され得る。特定の実施形態において、酸化プロセスは、200℃~450℃、好ましくは250℃~350℃の反応温度で実施される。
【0022】
特定の実施形態では、生成物ストリーム90を酸化プロセスに供することにより生成されるメタクリル酸の少なくとも一部は、下流のエステル化プロセスで利用される。エステル化プロセスは、メタクリル酸メチルを生成するのに十分な反応条件下で、エステル化触媒の存在下でメタクリル酸をメタノールと接触させることを含む。マンニッヒ縮合プロセスは、例えば、米国特許第3,821,286号に記載されているように、当該技術分野において既知である。酸化プロセスで用いられるメタノール対メタクリル酸のモル比は特に限定されず、1:10~1,000:1、好ましくは1:1~10:1などの広範囲のモル比にわたって実施され得る。好適なエステル化触媒には、例えば、硫酸、スルホン酸、イオン交換樹脂、ルイス酸、および混合金属ポリ酸が挙げられる。触媒元素は、担体、例えば、シリカまたはアルミナに支持され得る。特定の実施形態において、エステル化プロセスは、10℃~250℃、好ましくは50℃~150℃の反応温度で実施される。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態を、以下の実施例で詳細に説明する。
【実施例】
【0024】
実施例1
メタクリル酸の調製
長さ29インチ、内径0.1315インチのスタティックミキサーを反応器として使用する。ジメチルアミン、酢酸、および水を触媒混合容器内で混合し、そこからの出口流量は、550g/時間であり、4.5重量%のジメチルアミンと、ストリームのpHを5.5に維持するのに十分な量の酢酸とを含む。10~15%のメタノールも含む水中のプロピオンアルデヒドおよび37重量%のホルムアルデヒド溶液(1:1のプロピオンアルデヒド:ホルムアルデヒドのモル比)を含むストリームを、1575g/時間の総流量で、水性触媒溶液と混合し、反応器に添加し、それを、160℃に加熱し、900psigに維持する。水中に8重量%の4-ヒドロキシ-TEMPOを含む阻害剤溶液を、20g/時間の流量で反応器に添加する。反応器の出口を20℃まで冷却し、1気圧に減圧し、10℃の内部温度および1気圧の圧力である第1の相分離器に送る。相分離器からの水流量は、1471g/時間であり、81重量%の水を含む。相分離器からの有機流量は、1487g/時間であり、90重量%を超えるメタクロレインを含む。水相を、オーバーヘッド流量が255g/時間である30個のトレイを備えた蒸留塔に送り、51重量%のメタノール、38重量%のメタクロレイン、および11重量%の水からなる。メタノール中に8重量%の4-ヒドロキシ-TEMPOを含む阻害剤溶液を、10g/時間の流量で蒸留塔の凝縮器に添加する。蒸留塔からのサイドドロー流量は650g/時間であり、99重量%を超える水を含む。メタノール中に8重量%の4-ヒドロキシ-TEMPOを含む阻害剤溶液を、2g/時間の流量で蒸留塔のサイドドローレシーバに添加する。蒸留塔からの底部ストリームは、回収されたアミン酸触媒を含み、これは0.7の割合で触媒混合容器に再循環される。蒸留ストリームおよび77.5g/時間の水を、第2の相分離器に送る。第2の相分離器からの水相は、40重量%の水および49重量%のメタノールを含む。第2の相分離器からの有機相の流量は、81g/時間であり、89重量%のメタクロレインを含む。第1の相分離器からのこの有機相および第2の相分離器からの有機相を、合計流量1487g/時間で合計9個のトレイを備えたストリッピングカラムに送る。ストリッピングカラムからのオーバーヘッド蒸気を凝縮し、相分離器に再循環させる。メタノール中に8重量%の4-ヒドロキシ-TEMPOを含む阻害剤溶液を、6g/時間の流量でストリッピングカラムの凝縮器に添加する。ストリッピングカラムからの底部ストリームを、715g/時間の流量で22個のトレイを備えた蒸留塔に送り、オーバーヘッドストリームを酸化ステップに送って、メタクリル酸が生成され、底部ストリームを廃棄物に送る。オーバーヘッドストリームは、700g/時間の流量で、99.3重量%のメタクロレイン、0.4重量%の水、0.1重量%のメタノール、および0.1重量%未満の組み合わされた望ましくない不純物(例えば、酢酸、プロピオン酸、メタクロレイン二量体、および2-メチル-2-ペンテナール)からなる。メタノール中に8重量%の4-ヒドロキシ-TEMPOを含む阻害剤溶液を、10g/時間の流量で蒸留塔の凝縮器に添加する。
【0025】
この例は、本発明のプロセスが、メタクロレインストリームが当該技術分野の様々な方法によって以前に達成されていない低メタノール含量を有するように、マンニッヒ縮合プロセスによって調製されたメタクロレインを含むストリームからメタノールおよび他の有害な不純物を除去するのに効果的であることを示す。メタクロレインストリームの低いメタノールおよび不純物の含有量により、メタクロレインの下流の酸化プロセスでの使用に好適となる。