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▶ ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】自動車
(51)【国際特許分類】
   B60J 1/10 20060101AFI20220112BHJP
   B60J 10/77 20160101ALI20220112BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
B60J1/10 A
B60J10/77
B60J5/00 501Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020038023
(22)【出願日】2020-03-05
(65)【公開番号】P2020142791
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2020-03-06
(31)【優先権主張番号】10 2019 105 595.4
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D-70435 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100098914
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 伸行
(72)【発明者】
【氏名】トマス セイボールト
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-233644(JP,A)
【文献】実開平01-069023(JP,U)
【文献】特開平01-148670(JP,A)
【文献】特開平05-278473(JP,A)
【文献】実開平03-100514(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0061533(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 1/10
B60J 10/77
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(1)であって、
前記自動車(1)の第1の前後方向側面に互いに前後に配置される第1の前部ドア(2)及び第1の後部ドア(3)と、
前記自動車(1)の第2の前後方向側面に互いに前後に配置される第2の前部ドア及び第2の後部ドアであって、前記第2の前後方向側面は、前記第1の前後方向側面の反対側に位置する、第2の前部ドア及び第2の後部ドアと
を含み、前記2つの前部ドア(2)の各々は、下降可能窓ガラス(4)を有し、且つ前記2つの後部ドア(3)の各々は、固定窓ガラス(6)を有する、自動車(1)において、前記後部ドア(3)は、フレームレス構成のものであることと、前記固定窓ガラス(6)は、前記前部ドア(2)に直接隣接するまで延在することとを特徴とする自動車(1)。
【請求項2】
前記固定窓ガラス(6)は、前記関連する後部ドア(3)にねじ止めされることを特徴とする、請求項1に記載の自動車(1)。
【請求項3】
前記固定窓ガラス(6)は、前記関連する後部ドア(3)に接着接合されることを特徴とする、請求項1に記載の自動車(1)。
【請求項4】
前記2つの前部ドア(2)の各々は、フレーム及びフレームトリムパネル(5)を有し、前記フレームトリムパネル(5)は、車両垂直方向に延在し、且つ前記フレームトリムパネル(5)が、前記後部ドア(3)に隣接する領域において、前記関連する前部ドア(2)の前記フレームを覆うように構成されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の自動車(1)。
【請求項5】
側面図において、前記後部ドア(3)の前記固定窓ガラス(6)と前記前部ドア(2)の前記フレームトリムパネル(5)との間の第1の露出接合部(7)と、前記前部ドア(2)の前記フレームトリムパネル(5)と前記下降可能窓ガラス(4)との間の第2の露出接合部(8)とを窓ガラス領域に有することを特徴とする、請求項4に記載の自動車(1)。
【請求項6】
前記2つの前部ドア(2)の各々は、フレームレス構成のものであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の自動車(1)。
【請求項7】
前記後部ドア(3)の前記固定窓ガラス(6)は、前記固定窓ガラス(6)が、前記関連する後部ドア(3)に対して隣接する前記前部ドア(2)の前記下降可能窓ガラス(4)のためのウィンドウガイドを形成するように構成されることを特徴とする、請求項6に記載の自動車(1)。
【請求項8】
側面図において、前記後部ドア(3)の前記固定窓ガラス(6)と前記前部ドア(2)の前記下降可能窓ガラス(4)との間の単一の露出接合部(9)を窓ガラス領域に有することを特徴とする、請求項6又は7に記載の自動車(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車であって、自動車の第1の前後方向側面に互いに前後に配置される第1の前部ドア及び第1の後部ドアと、自動車の第2の前後方向側面に互いに前後に配置される第2の前部ドア及び第2の後部ドアであって、第2の前後方向側面は、第1の前後方向側面の反対側に位置する、第2の前部ドア及び第2の後部ドアとを含み、2つの前部ドアの各々は、下降可能窓ガラスを有し、且つ2つの後部ドアの各々は、固定窓ガラスを有する、自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
4つのドア又は5つのドア(追加のテールゲートを有する)で構成される自動車は、互いに反対側に位置する2つの前後方向側面にそれぞれ1つの前部ドアと、車両前後方向において前記前部ドアの後方に配置された1つの後部ドアとを有する。それらのドアが開いた状態では、自動車の室内へのアクセスが可能である。下降可能窓ガラスは、通常、前部ドア及び後部ドアの各々に配置される。下降可能窓ガラスは、手動で駆動される(具体的には窓ハンドルを用いて)か、又はパワーウインドウ昇降装置によって駆動され得る。その結果、下降可能窓ガラスは、ユーザによって選択的に昇降され得る。
【0003】
4ドア又は5ドア自動車の2つの前部ドア及び2つの後部ドアがフレームドアとして構成される場合、合計で3つの露出接合部が、自動車の側面図において、前部ドアと後部ドアとの間の窓ガラス領域に生じる。第1の露出接合部は、前部ドアと後部ドアとの間において、前部ドアのフレームトリムパネルと、後部ドアのフレームトリムパネルとの間に生じる。第2の露出接合部は、前部ドアの下降可能窓ガラスと、前部ドアのフレームトリムパネルとの間に構成される。第3の露出接合部は、後部ドアの下降可能窓ガラスと、後部ドアのフレームトリムパネルとの間に生じる。
【0004】
対照的に、フレームレス前部ドアが自動車に装備されている場合、先行技術から知られている自動車の事例では、単に2つの露出接合部が側面図において窓ガラス領域に生じる。第1の露出接合部は、前部ドアの下降可能窓ガラスと、後部ドアのドアフレームのフレームトリムパネルとの間に構成される。第2の露出接合部は、後部ドアの下降可能窓ガラスと、後部ドアのフレームトリムパネルとの間に生じる。
【0005】
自動車の後部ドアは、先行技術からすでに知られている。後部ドアは、関連する後部ドアに固着された固定窓ガラスを有する。(特許文献1)は、この後部ドアの一例を示している。
【0006】
先行技術から知られている自動車の事例で側面図において生じる上記の露出接合部により、前部ドア及び後部ドアが閉まった状態で自動車の外観に悪影響が生じることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-113025A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、側面図における改善された外観を有する、最初に言及したタイプの自動車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的は、請求項1の特徴付け部分の特徴を有する一般的なタイプの自動車によって達成される。下位請求項は、本発明の有利な発展形態に関する。
【0010】
本発明による自動車は、後部ドアがフレームレス構成のものであり、且つ固定窓ガラスが前部ドアまで延在するという事実によって区別される。具体的には、自動車の側面図における外観は、本発明による前記対策により、窓ガラス領域において改善され得る。下降可能窓ガラスと比べて、後部ドアの固定構成の窓ガラスからいくつかの利点が得られる。窓ガラスを昇降させるための窓昇降機構と、結果的にドアボディ内の下降窓ガラス自体のための設置スペースとを、関連する後部ドアのドアボディ内に提供する必要がない。そのため、設置スペース及びパッケージングにおける利点が得られる。その上、後部ドアのドアボディのドアウェルは、その室内側の面と室外側の面との間で固定窓ガラスを下降させる必要がないため、その上側において室内側の面と室外側の面との間に接合され得る。これにより、前記領域における機械的剛性が追加的に増大する。
【0011】
固定窓ガラスは、全く異なる方法で後部ドアに固着され得る。好ましい一実施形態では、固定窓ガラスは、関連する後部ドアにねじ止めされ得る。代替として、固定窓ガラスは、関連する後部ドアに接着接合され得る。根本的に、他の固着タイプも同様に想定することができる。
【0012】
有利な一実施形態では、2つの前部ドアの各々は、フレーム及びフレームトリムパネルを有し、フレームトリムパネルは、車両垂直方向に延在し、且つフレームトリムパネルが、後部ドアに隣接する領域において、関連する前部ドアのフレームを覆うように構成される可能性がある。
【0013】
特に好ましい一実施形態では、自動車は、側面図において、後部ドアの固定窓ガラスと前部ドアのフレームトリムパネルとの間の第1の露出接合部と、前部ドアのフレームトリムパネルと下降可能窓ガラスとの間の第2の露出接合部とを窓ガラス領域に有する可能性がある。従って、先行技術から知られている4ドア又は5ドア自動車(前部ドアはフレームドアとして構成される)と比べて、露出接合部の数は、3つの露出接合部から2つの露出接合部に有利に低減され得る。これにより、自動車の側面図における外観が改善される。その上、窓ガラス領域における露出接合部の数の低減により、自動車の抗力係数(抵抗係数)の低減がもたらされる。その上、前記対策により、破壊的な騒音(具体的には風騒音)が効果的に低減され得る。
【0014】
さらなる有利な実施形態では、2つの前部ドアの各々がフレームレス構成のものである可能性がある。結果として、前部ドアのフレームトリムパネルは、有利な方法で省略することができる。
【0015】
好ましい一実施形態では、後部ドアの固定窓ガラスが、関連する後部ドアに隣接する前部ドアの下降可能窓ガラスのためのウィンドウガイドを形成するように構成されることが提案される。前記実施形態により、前部ドアの下降可能窓ガラスを隣接する後部ドアの固定窓ガラスに直接隣接させることができる。
【0016】
特に有利な一実施形態では、自動車は、側面図において、後部ドアの固定窓ガラスと前部ドアの下降可能窓ガラスとの間の単一の露出接合部を窓ガラス領域に有することが提案される。従って、先行技術から知られている4ドア又は5ドア自動車(前部ドアはフレームレスドアとして構成される)と比べて、露出接合部の数は、2つの露出接合部から単に1つの露出接合部に有利に低減され得る。これにより、自動車の側面図における外観が大いに改善される。その上、窓ガラス領域における露出接合部の数の低減により、自動車の抗力係数(抵抗係数)の低減がもたらされる。その上、前記対策により、破壊的な騒音(具体的には風騒音)が効果的に低減され得る。
【0017】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付の図を参照して、例示的な好ましい実施形態の以下の説明に基づいて明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の例示的な実施形態に従って構成された自動車の一部の側面図を示す。
図2】本発明の第2の例示的な実施形態に従って構成された自動車の一部の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を参照すると、本発明の第1の例示的な実施形態に従って構成された自動車1は、第1の前後方向側面の第1の前部ドア2と、車両前後方向においてこの後方に見られる第1の後部ドア3とを有する。同様に、第1の前後方向側面の反対側に位置する第2の前後方向側面(ここでは明示的に図示せず)では、自動車は、第2の前部ドアと、車両前後方向においてこの後方に見られる第2の後部ドアとを有する。前記第1の例示的な実施形態では、自動車の前部ドア2は、フレームドアとして構成され、且つ下降可能な設計である窓ガラス4を有する。第1及び第2の前後方向側面の各々の前部ドア2のフレームは、フレームトリムパネル5を有する。フレームトリムパネル5は、車両垂直方向に延在し、且つ後部ドア3に隣接する領域においてフレームを覆う。後部ドア3に関する限り、それは、フレームレス構成のものであり、且つドアボディ30を有する。
【0020】
2つの後部ドア3の各々は、固定窓ガラス6を有する。固定窓ガラス6は、例えば、関連する後部ドア3のドアボディ30に部分的に埋め込まれ得、且つ前記ドアボディ30にねじ止めされるか又は接着接合され得る。また、固定窓ガラス6は、他の何らかの方法で後部ドア3にも接合され得、特にねじ止めされるか又は接着接合され得る。従って、先行技術から知られている大部分の4ドア又は5ドア自動車の事例と異なり、後部ドア3の窓ガラス6は、関連する後部ドア3(具体的にはドアボディ30)に固定接合されているため、下降させることができない。ここで、固定窓ガラス6は、隣接する前部ドア2まで延在するように構成される。
【0021】
自動車1の後部ドア3の固定構成の前記窓ガラス6から複数の利点が得られる。窓ガラスを昇降させるための窓昇降機構と、また後部ドア3のドアボディ30内の下降窓ガラス自体のための設置スペースとを、関連する後部ドア3のドアボディ30内に提供する必要がない。そのため、設置スペース及びパッケージングにおける利点が得られる。その上、関連する後部ドア3のドアボディ30のドアウェルは、その室内側の面と室外側の面との間で固定窓ガラス6を下降させる必要がないため、その上側において室内側の面と室外側の面とに接合され得る。これにより、前記領域における機械的剛性が増大する。
【0022】
固定窓ガラス6のさらなる利点には、自動車1の側面図において、前部ドア2と後部ドア3との間の窓ガラス領域での露出接合部7、8の数が、ここで、3つ(先行技術)から2つに低減されることが含まれる。第1の露出接合部7は、固定窓ガラス6と、前部ドア2のフレームトリムパネル5との間に生じる。第2の露出接合部8は、前部ドア2のフレームトリムパネル5と、下降可能窓ガラス4との間に構成される。後部ドア3は、フレームレス構成のものである。固定窓ガラス6は、後部ドア3が閉まった状態で前部ドア2のフレームトリムパネル5まで延在する。そのため、後部ドア3に追加のトリムパネルが不要である。その上、露出接合部7、8の数を低減することにより、自動車1の抗力係数(抵抗係数)が低減され得る。さらなる利点は、破壊的な騒音(具体的には風騒音)が効果的に低減され得るという事実から得られる。
【0023】
以下の本文では、図2を参照して、自動車1の第2の例示的な実施形態をさらに詳細に説明する。同一の又は機能的に同一のコンポーネントには、図1と同じ符号が提供されている。自動車1の根本的な構造は、第1の例示的な実施形態と多くの類似性を有する。その結果、繰り返しを避けるために、主に構造的な違いが説明される。
【0024】
第1の例示的な実施形態とは対照的に、本事例では、自動車1の2つの前部ドア2は、フレームレス構成のものである。その結果、2つの前部ドア2は、第1の例示的な実施形態と異なり、フレームトリムパネル5を有さない。次に、互いに反対側に位置する自動車1の前後方向側面の2つの後部ドア3は、フレームレス構成のものであり、第1の例示的な実施形態と同様に固定窓ガラス6を有する。前記固定窓ガラス6は、後部ドア3の閉位置において、前部ドア2まで延在するように形成される。ここで、固定窓ガラス6は、前部ドア2の下降可能窓ガラス4のためのウィンドウガイドを形成するように構成される。これにより、前部ドア2の窓ガラス4を後部ドア3の固定窓ガラス6に直接隣接させることができるという状況が達成される。加えて、前部ドア2も後部ドア3もフレームトリムパネル5を有さないため、窓ガラス領域における露出接合部9の数を2つの露出接合部(先行技術)から単一の露出接合部9に低減することができる。自動車1の側面図において、前部ドア2及び後部ドア3が閉まった状態では、前記1つの露出接合部9は、前部ドア2の下降可能窓ガラス4と後部ドア3の固定窓ガラス6との間に生じる。この露出接合部9の数の低減により、側面図における自動車1の外観がかなり改善される。その上、結果として自動車1の抗力係数(抵抗係数)を低減することができる。露出接合部9の数の低減のさらなる利点には、破壊的な騒音(具体的には風騒音)が効果的に低減され得ることが含まれる。
【符号の説明】
【0025】
1 自動車
2 第1の前部ドア
3 第1の後部ドア
4 下降可能窓ガラス
5 フレームトリムパネル
6 固定窓ガラス
7 第1の露出接合部
8 第2の露出接合部
9 単一の露出接合部
図1
図2