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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】給液機構を備えるスクリュー圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/16 20060101AFI20220112BHJP
   F04C 29/02 20060101ALI20220112BHJP
   F04C 29/04 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
F04C18/16 Q
F04C29/02 311K
F04C29/04 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020155373
(22)【出願日】2020-09-16
(62)【分割の表示】P 2017243447の分割
【原出願日】2017-12-20
(65)【公開番号】P2020200837
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2020-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】千葉 紘太郎
(72)【発明者】
【氏名】高野 正彦
(72)【発明者】
【氏名】頼金 茂幸
(72)【発明者】
【氏名】森田 謙次
(72)【発明者】
【氏名】竹内 善平
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-123613(JP,U)
【文献】特開昭51-050010(JP,A)
【文献】特開2003-184768(JP,A)
【文献】特開平11-336683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/16
F04C 29/02
F04C 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリューロータと、
前記スクリューロータを収納するケーシングと、
前記ケーシング内に形成される圧縮室内に液体を供給する給液機構と、
気体が吸い込まれる吸込部と、
圧縮した気体を吐出する吐出部と、を備え、
前記給液機構は、液体を薄膜化または微粒化して前記圧縮室内に供給する複数の給液部と、上流側の供給孔から供給された液体を複数の前記給液部に供給する供給流路と、を有しており、
前記供給孔は、前記ケーシングの前記吐出部側において、前記スクリューロータの径方向外側から内側に延びて形成されており、
前記供給流路は、前記供給孔の径方向内側の端部から、前記スクリューロータの軸方向に沿って前記吸込部側の一方向に延びて前記ケーシングに形成されており、
複数の前記給液部が前記供給流路の側面にそれぞれ直接接続されており、
複数の前記給液部は、第1給液部と、該第1給液部に対して前記供給流路における下流側に位置する第2給液部とを有し、
前記第1給液部が前記圧縮室内の第1の領域に連通し、
前記第2給液部が前記圧縮室内の第2の領域に連通し、
前記第1の領域における気体の圧力が、前記第2の領域における気体の圧力よりも高いことを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項2】
スクリューロータと、
前記スクリューロータを収納するケーシングと、
前記ケーシング内に形成される圧縮室内に液体を供給する給液機構と、
気体が吸い込まれる吸込部と、
圧縮した気体を吐出する吐出部と、を備え、
前記給液機構は、液体を薄膜化または微粒化して前記圧縮室内に供給する複数の給液部と、上流側の供給孔から供給された液体を複数の前記給液部に供給する供給流路と、を有しており、
前記供給孔は、前記ケーシングの前記吐出部側において、前記スクリューロータの径方向外側から内側に延びて形成されており、
前記供給流路は、前記供給孔の径方向内側の端部から、前記スクリューロータの軸方向に沿って前記吸込部側の一方向に延びて前記ケーシングに形成されており、
複数の前記給液部が前記供給流路の側面にそれぞれ直接接続されており、
複数の前記給液部は、第1給液部と、該第1給液部に対して前記供給流路における下流側に位置する第2給液部とを有し、
前記スクリューロータの軸方向において、前記第1給液部が前記第2給液部よりも前記吐出部に近い位置にあることを特徴とするスクリュー圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給液機構を備えるスクリュー圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
液体の噴流同士を衝突させることで液体を薄膜化または微粒化して供給する機能を有する給液機構がある。
【0003】
液体を微粒化して供給する従来技術として、圧縮機内部の圧縮作動室に対応するケーシングの壁面部に給水部を形成し、該給水部から水を圧縮作動室に噴射する技術が知られている。この従来技術では、中央部に先止まり穴が形成された給水部材の底部に角度θだけ傾斜させて外部と連通する複数の小孔が形成されており、先止まり穴に導かれた水は、小孔から圧縮作動室に広範囲にわたって噴射される。上記従来技術の一例として特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-184768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術を利用した特許文献1に記載のスクリュー圧縮機では、給水部(給液部)の数が増えると、先止まり穴の数が増える。したがって、給液部の数が増えるほど加工工数が増え、製造コストが増大する。また、先止まり穴の数だけ流路の数が増え、流路上の継ぎ手や封止部が増えるため、液体が圧縮機外部に漏洩するおそれが増大する。
【0006】
本発明は、給液部を複数有する場合においても、製造コストを抑えるとともに、継ぎ手や封止部の増加を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るスクリュー圧縮機は、スクリューロータと、前記スクリューロータを収納するケーシングと、前記ケーシング内に形成される圧縮室内に液体を供給する給液機構と、気体が吸い込まれる吸込部と、圧縮した気体を吐出する吐出部と、を備えている。前記給液機構は、液体を薄膜化または微粒化して前記圧縮室内に供給する複数の給液部と、上流側の供給孔から供給された液体を複数の前記給液部に供給する供給流路と、を有する。前記供給孔は、前記ケーシングの前記吐出部側において、前記スクリューロータの径方向外側から内側に延びて形成されている。前記供給流路は、前記供給孔の径方向内側の端部から、前記スクリューロータの軸方向に沿って前記吸込部側の一方向に延びて前記ケーシングに形成されている。前記供給流路の側面に、複数の前記給液部がそれぞれ直接接続されている。複数の前記給液部は、第1給液部と、該第1給液部に対して前記供給流路における下流側に位置する第2給液部とを有している。
そして、前記第1給液部が前記圧縮室内の第1の領域に連通し、前記第2給液部が前記圧縮室内の第2の領域に連通し、前記第1の領域における気体の圧力が、前記第2の領域における気体の圧力よりも高い。
あるいは、前記スクリューロータの軸方向において、前記第1給液部が前記第2給液部よりも前記吐出部に近い位置にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、給液部を複数有する場合においても、製造コストを抑えるとともに、継ぎ手や封止部の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る給液機構の断面図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る給液機構の断面図である。
図4図3のIV-IV線に沿う断面図である。
図5】本発明の第3実施形態に係る給液機構の断面図である。
図6】本発明の第4実施形態に係る給液機構の断面図である。
図7】スクリュー圧縮機に備えられた給液機構に供給される潤滑油の供給経路を示す模式図である。
図8図7に示されるスクリュー圧縮機の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を適宜省略する。
【0011】
(第1実施形態)
まず、図1および図2を参照しながら、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る給液機構10の断面図である。図2は、図1のII-II線に沿う断面図である。なお、図2では、背景の図示を省略している。
本実施形態に係る給液機構10は、液体としての潤滑油の噴流同士を衝突させることで潤滑油を薄膜化または微粒化して供給する機能を有している。
【0012】
図1に示すように、給液機構10は、複数(ここでは2つ)の給液部1を備えている。複数の給液部1は、第1給液部3と、該第1給液部3に対して供給流路5における下流側に位置する第2給液部4とを有している。すなわち、給液部1は、第1給液部3および第2給液部4の総称として用いる。
【0013】
第1給液部3は、中心軸がθの角度で交差する複数(ここでは一対)の分岐流路3a,3bを備えている。第2給液部4は、中心軸がΨの角度で交差する複数(ここでは一対)の分岐流路4a,4bを備えている。分岐流路3aと分岐流路3bとは、複数の分岐流路3a,3bの中心軸の交差点を通り且つ供給流路5の中心軸9に直交する平面3cに対して、対称の位置にある。また、分岐流路4aと分岐流路4bとは、複数の分岐流路4a,4bの中心軸の交差点を通り且つ供給流路5の中心軸9に直交する平面4cに対して、対称の位置にある。図1図2に示すように、分岐流路3a,3b、および分岐流路4a,4bは、いずれも供給流路5の側面に直接接続されて連通している。
【0014】
図1に示すように、供給流路5、および分岐流路3a,3b,4a,4bは、ケーシング2に形成されている。供給流路5の上流側端部6は、ポンプ(図示せず)に接続されており、下流側端部7は突当たり面である端面を構成している。
【0015】
このように構成された給液機構10において、ポンプが作動されると、上流側端部6を経て供給流路5に流入した潤滑油は、分岐流路3a,3b,4a,4bにそれぞれ流入する。分岐流路3a,3bからそれぞれ噴流となって流出した潤滑油は、θの角度で互いに衝突して膜状になった後、微粒化して給液先の空間8に拡散する。分岐流路4a,4bからそれぞれ流出した潤滑油についても同様である。
【0016】
前記したように、本実施形態に係る給液機構10は、中心軸が交差する複数の分岐流路3a,3bまたは4a,4bをそれぞれ備える複数の給液部1と、上流側から供給された潤滑油を分岐流路3a,3b,4a,4bに供給する供給流路5とを有する。そして、供給流路5の側面に、複数の給液部1における複数の分岐流路3a,3b,4a,4bがそれぞれ直接接続されている。
【0017】
したがって、本実施形態では、給液部1の数が増えた場合においても、各分岐流路3a,3b,4a,4bに液体を導入する流路として供給流路5を共用できる。このため、加工工数の削減に繋がり、製造コストを抑えることができる。また、分岐流路3a,3b,4a,4bの数が増えても、各分岐流路3a,3b,4a,4bと給液先の空間8との連通部を除いて、外部への開口部の数は増えない。このため、開口部に繋がる流路の数が増えることはなく、流路上の継ぎ手や封止部の増加を抑制できる。これにより、給液機構10が設けられる装置における外部への潤滑油の漏洩のおそれを低減でき、信頼性の向上を図りつつ、給液部1の数を増やすことが可能となる。
【0018】
このように、本実施形態によれば、給液部1を複数有する場合においても、製造コストを抑えるとともに、継ぎ手や封止部の増加を抑制することができる。
【0019】
(第2実施形態)
次に、図3および図4を参照しながら、本発明の第2実施形態について、前記した第1実施形態と相違する点を中心に説明し、共通する点の説明を省略する。
図3は、本発明の第2実施形態に係る給液機構10の断面図である。図4は、図3のIV-IV線に沿う断面図である。なお、図4では、背景の図示を省略している。
【0020】
図3図4に示すように、各分岐流路3a,3b,4a,4bの内径はいずれも同一でdとし、供給流路5の内径はDとする。
本実施形態は、供給流路5と分岐流路3a,3b,4a,4bとの接続部Cにおける供給流路5の内径Dが、分岐流路3a,3b,4a,4bの内径dよりも大きい点で、第1実施形態と異なっている。
【0021】
本実施形態では、供給流路5の内径Dと、分岐流路3a,3b,4a,4bの内径dとは、例えば次式の関係を有している。
D=6.3d ……(1)
【0022】
一般的に、主管から分岐管が分岐している場合の分岐部(接続部)における流動抵抗は、主流上流側と分岐流路との成す角度が鈍角である方が、鋭角である場合に比べて小さくなることが分かっている。
【0023】
本実施形態の第1給液部3においては、分岐流路3aが供給流路5の中心軸9と成す角度は(π+θ)/2と鈍角であり、分岐流路3bが供給流路5の中心軸9と成す角度は(π-θ)/2と鋭角である。したがって、第1給液部3において、供給流路5と分岐流路3aとの接続部Cにおける流動抵抗よりも、供給流路5と分岐流路3bとの接続部Cにおける流動抵抗の方が大きい。このため、分岐流路3aを流れる潤滑油の流量は、分岐流路3bを流れる潤滑油の流量よりも大きくなる懸念がある。この場合、第1給液部3において、複数の分岐流路3a,3bの各々における流量の偏りは、薄膜化または微粒化された潤滑油の均一な拡散や、薄膜化および微粒化の特性そのものに、悪影響を及ぼす懸念がある。
【0024】
本実施形態の場合、前記したように、供給流路5の内径Dと分岐流路3a,3b,4a,4bの内径dとは(1)式の関係に設定されている。これにより、供給流路5における潤滑油の平均流速Vと、分岐流路3a,3b,4a,4bにおける潤滑油の平均流速vとの間には、非圧縮性流体の連続の式(断面積×流速=一定)に基づいて、次式の関係が成立する。
v=10V ……(2)
【0025】
このとき、供給流路5における動圧PD、および各分岐流路3a,3b,4a,4bにおける平均動圧Pdは、(2)式から次式のように導出される。
PD=(1/2)×(潤滑油の密度)×V ……(3)
Pd=(1/2)×(潤滑油の密度)×v
=(1/2)×(潤滑油の密度)×100V ……(4)
【0026】
本実施形態の第1給液部3において、供給流路5の上流側端部6から給液先の空間8に至るまでの総流動抵抗をRとする。また、供給流路5における流動抵抗をR1、供給流路5と分岐流路3a,3bとの接続部Cにおける流動抵抗をR2、分岐流路3a,3bにおける流動抵抗をR3、分岐流路3a,3bから空間8への拡大部の流動抵抗をR4とする。この場合、総流動抵抗R=R1+R2+R3+R4となる。ここで、流動抵抗R2は、供給流路5における潤滑油の平均流速Vを用いて定義される。また、流動抵抗R4は、分岐流路3a,3bにおける潤滑油の平均流速vを用いて定義される。
【0027】
流動抵抗は動圧に比例するため、(3)式および(4)式から、総流動抵抗Rのうち、供給流路5と分岐流路3a,3bの接続部Cにおける流動抵抗R2の占める割合は、概ね1%程度となる。結果的に、総流動抵抗Rの中では、圧倒的に分岐流路3a,3bにおける流動抵抗R3が支配的ということになる。このため、接続部Cにおける供給流路5と各分岐流路3a,3bの成す角度による流動抵抗が、各分岐流路3a,3bにおける潤滑油の流量に対して与える影響は、極めて小さいものになる。これにより、各分岐流路3a,3bにおける潤滑油の流量の偏りを抑制することに繋がる。第2給液部4についても効果は同様である。
したがって、第2実施形態によれば、前記した第1実施形態による効果に加えて、噴流衝突後の潤滑油の拡散範囲の均一化、並びに、薄膜化および微粒化の特性悪化の防止が可能となる。
【0028】
(第3実施形態)
次に、図5を参照しながら、本発明の第3実施形態について、前記した第1実施形態と相違する点を中心に説明し、共通する点の説明を省略する。
図5は、本発明の第3実施形態に係る給液機構10の断面図である。
【0029】
図5に示すように、分岐流路3aおよび分岐流路4aの内径をda、分岐流路3bおよび分岐流路4bの内径をdbとする。また、複数の分岐流路3a,3bの中心軸の交差点を通り、供給流路5の中心軸9に直交する平面を3cとし、複数の分岐流路4a,4bの中心軸の交差点を通り、供給流路5の中心軸9に直交する平面を4cする。
【0030】
本実施形態は、平面3cに対して供給流路5における下流側に位置する分岐流路3bの内径dbが、平面3cに対して供給流路5における上流側に位置する分岐流路3aの内径daよりも大きい点で、第1実施形態と異なっている。分岐流路4a,4bについても同様である。つまり、複数の給液部1の各々において、下流側に位置する分岐流路3b,4bほど、内径が大きく設定されている。
【0031】
すなわち、分岐流路3aおよび分岐流路4aの内径daと、分岐流路3bおよび分岐流路4bの内径dbとは、次式の関係を有している。
db>da ……(5)
【0032】
第2実施形態において説明した通り、供給流路5と分岐流路3aとの接続部Cにおける流動抵抗は、供給流路5と分岐流路3bとの接続部Cにおける流動抵抗よりも小さくなる。このため、分岐流路3bよりも分岐流路3aの方が潤滑油の流量が大きくなる可能性がある。そこで、本実施形態においては、分岐流路3aの内径daよりも分岐流路3bの内径dbを大きくすることで、分岐流路3aにおける潤滑油の流速よりも分岐流路3bにおける潤滑油の流速を低くしている。したがって、(4)式に示したように、分岐流路3aにおける動圧よりも分岐流路3bにおける動圧が低くなる。分岐流路3a,3bにおける流動抵抗は動圧に比例することから、(5)式の関係によって結果的に、分岐流路3aにおける流動抵抗よりも分岐流路3bにおける流動抵抗が低くなる。このため、供給流路5と分岐流路3aとの接続部における流動抵抗と、供給流路5と分岐流路3bとの接続部における流動抵抗との違いを緩和することが可能となる。これにより、分岐流路3a,3bにおける潤滑油の流量の偏りが抑制される。第2給液部4についても効果は同様である。
したがって、第3実施形態によれば、前記した第1実施形態による効果に加えて、噴流衝突後の潤滑油の拡散範囲の均一化、並びに、薄膜化および微粒化の特性悪化の防止が可能となる。
【0033】
(第4実施形態)
次に、図6を参照しながら、本発明の第4実施形態について、前記した第1実施形態と相違する点を中心に説明し、共通する点の説明を省略する。
図6は、本発明の第4実施形態に係る給液機構10の断面図である。
【0034】
図6に示すように、複数の分岐流路3a,3bの中心軸の交差点を通り、供給流路5の中心軸9に直交する平面を3cとし、複数の分岐流路4a,4bの中心軸の交差点を通り、供給流路5の中心軸9に直交する平面を4cする。平面3cに対して供給流路5における上流側に位置する分岐流路3aの中心軸が平面3cに対して成す角度をθa、平面3cに対して供給流路5における下流側に位置する分岐流路3bの中心軸が平面3cに対して成す角度をθbとする。平面4cに対して供給流路5における上流側に位置する分岐流路4aの中心軸が平面4cに対して成す角度をΨa、平面4cに対して供給流路5における下流側に位置する分岐流路4bの中心軸が平面4cに対して成す角度をΨbとする。角度θa,θb,Ψa,Ψbは、それぞれ供給流路5に近い側に形成される交角であり、鋭角となる。
【0035】
本実施形態は、角度θbは角度θaよりも大きく、角度Ψbは角度Ψaよりも大きい点で、第1実施形態と異なっている。つまり、複数の給液部1の各々において、下流側に位置する分岐流路3b,4bほど、その中心軸が平面3c,4cに対して成す角度が大きく設定されている。
【0036】
すなわち、角度θa,θb,Ψa,Ψbは、次式の関係を有している。
θa<θb ……(6)
Ψa<Ψb ……(7)
【0037】
第2実施形態において説明した通り、供給流路5と分岐流路3aとの接続部Cにおける流動抵抗は、供給流路5と分岐流路3bとの接続部Cにおける流動抵抗よりも小さくなる。このため、分岐流路3bよりも分岐流路3aの方が潤滑油の流量が大きくなる可能性がある。分岐流路3aおよび分岐流路3bの各々から噴射された潤滑油は、互いに衝突した後、通常、平面3c上で膜状に広がる。油膜は、進行に伴い幅方向に広がることで徐々に薄くなり、その後破断、分裂して微粒化する。しかし、分岐流路3aにおける潤滑油の流量の方が分岐流路3bにおける潤滑油の流量よりも大きい場合、噴流の衝突により形成される油膜は、分岐流路3bの方向に傾く。そこで、本実施形態においては、分岐流路3aの中心軸が平面3cに対して成す角度θaよりも分岐流路3bの中心軸が平面3cに対して成す角度θbを大きくすることで、油膜が分岐流路3bの方向に傾くことを抑制する。これにより、分岐流路3a,3bにおける潤滑油の流量の偏りによる影響が抑制される。第2給液部4についても効果は同様である。
したがって、第4実施形態によれば、前記した第1実施形態による効果に加えて、噴流衝突後の潤滑油の拡散範囲の均一化、並びに、薄膜化および微粒化の特性悪化の防止が可能となる。
【0038】
次に、図7および図8を参照しながら、前記した実施形態の給液機構10が備えられたスクリュー圧縮機100について説明する。
図7および図8に示すスクリュー圧縮機100は、いわゆる給油式空気圧縮機である。スクリュー圧縮機100が備える給液機構10の構成は、ここでは図1に示される構成と同一であることから、同一の符号を付して適宜説明を省略する。なお、スクリュー圧縮機100は、図3図5または図6に示される給液機構10を備えるように構成されていてもよい。
【0039】
図7は、スクリュー圧縮機100に備えられた給液機構10に供給される潤滑油の供給経路を示す模式図である。
図7に示すように、潤滑油の供給経路は、スクリュー圧縮機100、遠心分離機11、冷却器12、フィルタや逆止弁などの補機13、およびそれらを接続する配管14によって構成されている。スクリュー圧縮機100から吐出された圧縮空気中には、スクリュー圧縮機100の内部に外部から注入された潤滑油が混入している。圧縮空気中に混入した潤滑油は、遠心分離機11によって圧縮空気から分離され、冷却器12によって冷却された後、補機13を通って、再度、給液孔15からスクリュー圧縮機100の内部へ供給される。なお、スクリュー圧縮機100による圧縮対象は空気に限定されるものではなく、例えば窒素等の他の気体であってもよい。
【0040】
図8は、図7に示されるスクリュー圧縮機100の構成を示す図である。
図8に示すように、スクリュー圧縮機100は、スクリューロータ16と、スクリューロータ16を収納するケーシング18とを備えている。スクリューロータ16は、ねじれた歯(ローブ)を持ち互いに噛み合って回転する雄ロータと雌ロータとを有している。
【0041】
スクリュー圧縮機100は、スクリューロータ16の雄ロータおよび雌ロータをそれぞれ回転自在に支持する吸込側軸受19と吐出側軸受20、およびオイルシール、メカニカルシール等の軸封部品21を備えている。ここで、「吸込側」とは、スクリューロータ16の軸方向における空気の吸込側をいい、「吐出側」とは、スクリューロータ16の軸方向における空気の吐出側を指す。
【0042】
一般的には、スクリューロータ16の雄ロータは、その吸込側端部がロータ軸を介して回転駆動源であるモータ22に接続される。スクリューロータ16の雄ロータおよび雌ロータは、それぞれケーシング18の内壁面に対して数10~数100μmのすき間を保って、ケーシング18に収容される。
【0043】
モータ22によって回転駆動されたスクリューロータ16の雄ロータは、雌ロータを回転駆動し、雄ロータおよび雌ロータの歯溝とそれを囲むケーシング18の内壁面とで形成される圧縮室23が膨張および収縮する。これにより、空気が吸込口24から吸入され、所定の圧力まで圧縮された後、吐出ポート25から吐出される。
また、圧縮室23に対して、スクリュー圧縮機100の外部から給液孔15を介して潤滑油が注入される。
【0044】
圧縮室23内部に対して給油する目的の一つとして、圧縮過程にある空気の冷却がある。本実施形態においては、圧縮空気の冷却効果を促進すべく圧縮空気と潤滑油の伝熱面積を拡大するために、2つの給液部1に噴流衝突型ノズルを備えている。第1給液部3は、中心軸が互いに交差する分岐流路3aと分岐流路3bとを有し、第2給液部4は中心軸が互いに交差する分岐流路4aと分岐流路4bとを有する。
【0045】
複数の分岐流路3a,3b,4a,4bは、いずれも給液孔15と連通する供給流路5と繋がることで、給液孔15から流入した潤滑油を圧縮室23に供給する。供給流路5を流動する潤滑油を各分岐流路3a,3b,4a,4bに導入する流路をケーシング18にそれぞれ設けた場合、その加工孔がスクリュー圧縮機100の外部に連通するため、継手やプラグ等の封止部が必要になる。そして、分岐流路の数が増えるほどその加工孔の数も増えるため、加工工数や、潤滑油の漏洩のおそれが増大する。
【0046】
これに対して、本実施形態では、複数の分岐流路3a,3b,4a,4bが、いずれも供給流路5の側面に直接接続して連通している。このようにして、給液孔15の他には、給油経路とスクリュー圧縮機100の外部とが連通する部分を無くしている。これにより、加工工数を削減して製造コストを抑えることができるばかりか、潤滑油のスクリュー圧縮機100外部への漏洩のおそれを排除している。
【0047】
また、本実施形態では、第1給液部3の分岐流路3a,3bが連通する給液先の空間8(図1参照)の圧力は、第2給液部4の分岐流路4a,4bが連通する給液先の空間8(図1参照)の圧力よりも高い。すなわち、給油経路において、より吐出ポート25に近く空気の圧力が高い領域に、上流側の第1給液部3が設けられ、より吸込口24に近く空気の圧力が低い領域に下流側の第2給液部4が設けられる。このように、供給流路5内の潤滑油の圧力がより高い状態で、供給流路5を高圧側の第1給液部3と連通させることで、圧縮室23内の空気が、第1給液部3を介して供給流路5内に逆流することを防ぐことが可能となる。
【0048】
以上、本発明について実施形態に基づいて説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。前記した実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0049】
例えば、前記した実施形態では、給液機構10によって供給される液体として潤滑油が用いられているが、これに限定されるものではなく、例えば水、クーラント、燃料等の他の液体が用いられてもよい。
【0050】
また、前記した実施形態では、給液機構10は2つの給液部1を備えているが、これに限定されるものではなく、3つ以上の給液部1を備えていてもよい。
【0051】
また、前記した実施形態では、一つの給液部1に一対の分岐流路が備えられている場合について説明したが、これに限定されるものではなく、一つの給液部1に例えば3つ以上の複数の分岐流路が備えられていてもよい。
【0052】
また、前記した実施形態では、給液機構10は、スクリュー圧縮機100に搭載される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば燃料噴射装置等の他の装置に搭載されてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 給液機構
1 給液部
3 第1給液部
3a 分岐流路
3b 分岐流路
3c 平面
4 第2給液部
4a 分岐流路
4b 分岐流路
4c 平面
5 供給流路
9 供給流路の中心軸
8 給液先の空間
C 接続部
16 スクリューロータ
18 ケーシング
23 圧縮室
100 スクリュー圧縮機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8