(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】プラズマ装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/26 20060101AFI20220112BHJP
A61N 1/44 20060101ALI20220112BHJP
A61N 1/04 20060101ALI20220112BHJP
A61C 19/06 20060101ALI20220112BHJP
A61C 17/00 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
H05H1/26
A61N1/44
A61N1/04
A61C19/06 Z
A61C17/00 E
(21)【出願番号】P 2020155474
(22)【出願日】2020-09-16
【審査請求日】2020-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】長原 悠
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 喜重
(72)【発明者】
【氏名】中村 元城
【審査官】小河 了一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0301412(US,A1)
【文献】特開2017-050267(JP,A)
【文献】特開2015-084290(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0142722(KR,A)
【文献】特開2007-188823(JP,A)
【文献】特開2020-149953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/26
A61C 19/06
A61C 17/00
A61M 25/00
A61N 1/04
A61N 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ発生部を備える照射器具と、
前記プラズマ発生部にプラズマ発生用ガスを供給する供給源と、を備え、
前記プラズマ発生部にて発生したプラズマ及び前記プラズマによって生じる活性ガスの少なくとも一方が前記照射器具から照射され、
前記プラズマ発生部は、
前記プラズマ発生用ガスの流路である内空部を有する管状誘電体と、
前記内空部に配置され、前記管状誘電体の軸線方向に延びる内部電極と、
前記管状誘電体の外周面に沿って前記内部電極に対向する位置に配置される外部電極と、
前記管状誘電体に対して前記外部電極を固定させる固定部材と、を備え
、
前記固定部材は、前記管状誘電体の外周面に密着して配置される弾性部材を有し、
前記弾性部材を前記外部電極の軸線方向の少なくとも一方の端部に面接触させることにより、前記外部電極の軸線方向の両端部にて、前記管状誘電体に対して前記外部電極を固定させる、プラズマ装置。
【請求項2】
前記固定部材は、前記管状誘電体の外周面に前記外部電極を接触させた状態で、前記管状誘電体に対して前記外部電極を固定させる、請求項1に記載のプラズマ装置。
【請求項3】
前記固定部材は、前記管状誘電体の外周面から前記外部電極を離隔させた状態で、前記管状誘電体に対して前記外部電極を固定させる、請求項1に記載のプラズマ装置。
【請求項4】
前記固定部材は、前記管状誘電体の外周面、前記外部電極の外周面、及び前記外部電極の軸線方向の両端部を覆う薄膜部材を備える、請求項1乃至
3のいずれか一項に記載のプラズマ装置。
【請求項5】
前記薄膜部材は、前記管状誘電体の外周面、前記外部電極の外周面、及び前記外部電極の軸線方向の両端部に接着する接着層を備える、請求項
4に記載のプラズマ装置。
【請求項6】
前記管状誘電体は、ガラス管であり、
前記外部電極は、前記ガラス管の外径よりも大きい内径を有する、中空の円筒状の金属管である、請求項1乃至
5のいずれか一項に記載のプラズマ装置。
【請求項7】
前記外部電極の外周面には、接地線が接合されており、
前記薄膜部材は、前記接地線と前記外部電極との接合箇所を含めて、前記管状誘電体の外周面、前記外部電極の外周面、及び前記外部電極の軸線方向の両端部を覆う、請求項
4又は
5に記載のプラズマ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科治療等を目的としてプラズマを利用する技術が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に開示されたプラズマジェット照射装置は、先端ノズルからプラズマジェットを歯牙に照射して減菌や殺菌を行うものである。歯科治療用のプラズマジェット照射装置は、主に歯科医師により操作されるため、操作性重視のために、照射器具の把持部を把持した状態で、先端ノズルの位置や角度を自由に変更できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プラズマを発生させるには、2つの電極間に10kV程度の高圧電圧を印加しなければならないため、2つの電極間に管状誘電体を配置して絶縁を図る必要がある。管状誘電体としては、絶縁破壊が生じにくい観点で、ガラスやセラミックなどが用いられる。
【0005】
しかしながら、ガラスやセラミックなどは割れやすいという問題がある。照射器具には、プラズマ発生用ガスのタンクから延びるチューブや高圧電圧を供給する配線などを束ねたケーブルが接続されており、ケーブルを引き回す際に照射器具が床や壁等に衝突して、その衝撃で管状誘電体が割れてしまうことがある。
【0006】
照射器具は、高圧電圧を取り扱うことから、簡単には分解できない構造になっていることが多く、管状誘電体が割れてしまうと、その保守交換作業に手間がかかる。
【0007】
本発明は、上述した問題点を解決するためのものであり、管状誘電体が壊れにくい構造にしたプラズマ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様では、プラズマ発生部を備える照射器具と、
前記プラズマ発生部にプラズマ発生用ガスを供給する供給源と、を備え、
前記プラズマ発生部にて発生したプラズマ及び前記プラズマによって生じる活性ガスの少なくとも一方が前記照射器具から照射され、
前記プラズマ発生部は、
前記プラズマ発生用ガスの流路である内空部を有する管状誘電体と、
前記内空部に配置され、前記管状誘電体の軸線方向に延びる内部電極と、
前記管状誘電体の外周面に沿って前記内部電極に対向する位置に配置される外部電極と、
前記管状誘電体に対して前記外部電極を固定させる固定部材と、を備える、プラズマ装置が提供される。
【0009】
前記固定部材は、前記管状誘電体の外周面に前記外部電極を接触させた状態で、前記管状誘電体に対して前記外部電極を固定させてもよい。
【0010】
前記固定部材は、前記管状誘電体の外周面から前記外部電極を離隔させた状態で、前記管状誘電体に対して前記外部電極を固定させてもよい。
【0011】
前記固定部材は、前記外部電極の軸線方向の両端部にて、前記管状誘電体に対して前記外部電極を固定させてもよい。
【0012】
前記固定部材は、前記管状誘電体の外周面に密着して配置される弾性部材を有し、
前記弾性部材を前記外部電極の軸線方向の少なくとも一方の端部に面接触させることにより、前記管状誘電体に対して前記外部電極を固定させてもよい。
【0013】
前記固定部材は、前記管状誘電体の外周面、前記外部電極の外周面、及び前記外部電極の軸線方向の両端部を覆う薄膜部材を備えてもよい。
【0014】
前記薄膜部材は、前記管状誘電体の外周面、前記外部電極の外周面、及び前記外部電極の軸線方向の両端部に接着する接着層を備えてもよい。
【0015】
前記管状誘電体は、ガラス管であり、
前記外部電極は、前記ガラス管の外径よりも大きい内径を有する、中空の円筒状の金属管であってもよい。
【0016】
前記金属管の外周面には、接地線が接合されており、
前記薄膜部材は、前記接地線と前記金属管との接合箇所を含めて、前記管状誘電体の外周面、前記外部電極の外周面、及び前記外部電極の軸線方向の両端部を覆ってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、プラズマ発生部内の管状誘電体を壊れにくい構造にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係るプラズマ装置を示す模式図。
【
図2】本発明の一実施形態に係るプラズマ装置を構成する照射器具の部分断面図。
【
図5】本発明の一実施形態に係るプラズマ装置の概略構成を示すブロック図。
【
図6】胴体部から第2胴体部を取り外した状態を示す図。
【
図8】外部電極を管状誘電体に固定させる第1方策を示す図。
【
図9】外部電極を管状誘電体に固定させる第2方策を示す図。
【
図10】管状誘電体を軸線方向から僅かに傾けて配置した状態で固定させた図。
【
図11】管状誘電体と外部電極の表面を薄膜部材で覆った図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0020】
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0021】
本発明のプラズマ装置は、プラズマジェット照射装置又は活性ガス照射装置である。プラズマジェット照射装置と活性ガス照射装置はいずれも、プラズマを発生させる。プラズマジェット照射装置は、発生したプラズマと活性種とを被照射物に直接照射する。活性種は、プラズマ中の気体又はプラズマ周辺の気体とプラズマとが反応して生成される。活性種は、例えば、活性酸素種や活性窒素種等である。活性酸素種は、例えば、ヒドロキシルラジカル、一重項酸素、オゾン、過酸化水素、スーパーオキシドアニオンラジカル等である。活性窒素種は、例えば、一酸化窒素、二酸化窒素、ペルオキシナイトライト、過酸化亜硝酸、三酸化二窒素等である。活性ガス照射装置は、活性種を含む活性ガスを被照射物に照射する。活性種は、プラズマ中の気体又はプラズマ周辺の気体とプラズマとが反応して生成される。
【0022】
以下、プラズマ装置の一実施形態について説明する。本実施形態のプラズマ装置は、例えば活性ガス照射装置である。
図1から
図5に示すように、本実施形態の活性ガス照射装置100は、照射器具10と、検出部15と、供給ユニット20と、ガス管路30と、電気配線40と、供給源70と、報知部80と、制御部90(演算部)と、を備える。
【0023】
照射器具10は、照射器具10内で発生した活性ガスを吐出する。照射器具10は、医師等により操作されるものであり、人間の手で操作しやすい形状、大きさ及び重量を有する。照射器具10は、ガス管路30、接地線31及び電気配線40にて、供給ユニット20と接続されている。ガス管路30と電気配線40は、一本のケーブル32内に収納されている。供給ユニット20は、照射器具10に電力及びプラズマ発生用ガスを供給する。供給ユニット20は、供給源70を収容している。供給源70は、プラズマ発生用ガスを収容している。供給ユニット20は、例えば、100Vの家庭用電源等から電源供給を受ける。また、供給ユニット20内に充電可能なバッテリを搭載してもよい。
【0024】
図2は、照射器具10における軸線に沿う面の断面(縦断面)図である。
図2に示すように、照射器具10は、長尺状のカウリング2と、カウリング2の先端から突出するノズル1と、カウリング2内に位置するプラズマ発生部12とを備える。
カウリング2は、円筒形で中空の胴体部2bと、胴体部2bの先端を塞ぐヘッド部2aとを備える。なお、胴体部2bは、円筒形に限らず、四角筒、六角筒、八角筒等の多角筒形でもよい。
【0025】
ヘッド部2aは、先端に向かって漸次窄んでいる。即ち、本実施形態におけるヘッド部2aは、円錐形である。なお、ヘッド部2aは、円錐形に限らず、四角錘、六角錘、八角錘等の多角錘形でもよい。
【0026】
ヘッド部2aは、先端に嵌合孔2cを有している。嵌合孔2cは、ノズル1を受け入れる孔である。ノズル1は、ヘッド部2aの嵌合孔2cに着脱可能になっている。ヘッド部2aは、管軸O1方向に延びる第1の活性ガス流路7を内部に有している。管軸O1は、胴体部2bの管軸である。ノズル1は、管軸O1から傾斜した方向に延びる管軸O2に沿って第2の活性ガス流路8を有する。胴体部2bは、外周面に操作スイッチ9(操作部)を備えている。
【0027】
図2及び
図3に示すように、プラズマ発生部12は、管状誘電体3(誘電体)と、内部電極4と、外部電極5とを備える。
【0028】
管状誘電体3は、管軸O1方向に延びる円筒状の中空部材である。管状誘電体3は、管軸O1方向に延びるガス流路6を内部に有している。第1の活性ガス流路7とガス流路6とは連通している。なお、管軸O1は、管状誘電体3の管軸と同じである。
【0029】
管状誘電体3の内部の中空部分には、内部電極4が配置されている。内部電極4は、管軸O1方向に延びる略円柱状の部材である。内部電極4は、管状誘電体3の内面と離間して配置されている。
【0030】
管状誘電体3の外周面の一部には、内部電極4に対向して配置される外部電極5を備えている。外部電極5は、管状誘電体3の外周面に沿って周回する環状の電極である。外部電極5は、胴体部2bの内周面の凹部に配置されている。
【0031】
このように、カウリング2の胴体部2bの内周面に沿って外部電極5が配置され、外部電極5の内周面に沿って管状誘電体3が配置され、管状誘電体3の中空部分に内部電極4が配置されている。すなわち、
図3に示すように、管状誘電体3と内部電極4と外部電極5とは、管軸O1を中心として同心円状に位置している。また、本実施形態において、内部電極4の外周面と外部電極5の内周面とは、管状誘電体3を挟んで互いに対向している。なお、
図2や
図3では、管状誘電体3と外部電極5が面接触しているように描かれているが、両者の間に若干の隙間がある場合もありえる。本実施形態では、保守性を向上させるために、管状誘電体3を胴体部2bの先端側から挿脱できるようにしており、管状誘電体3と外部電極5との間に若干の隙間を設けることで、管状誘電体3の挿脱が容易になる。
【0032】
ノズル1は、嵌合孔2cに嵌合する台座部1bと、台座部1bから突出する照射管1cとを備える。台座部1bと照射管1cとは一体になっている。ノズル1は、その内部に、第2の活性ガス流路8を有している。ノズル1は、先端に照射口1aを有している。第2の活性ガス流路8と第1の活性ガス流路7とは、連通している。
【0033】
胴体部2bの材料は、特に制限はないが、絶縁性を有する材料が好ましい。絶縁性の材料は、例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等である。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)等である。熱硬化性樹脂は、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコン樹脂等である。胴体部2bの大きさは、特に制限はなく、手指で把持しやすい大きさとすることができる。
【0034】
ヘッド部2aの材料は、特に制限はなく、絶縁性を有してもよいし、絶縁性を有しなくてもよい。ヘッド部2aの材料は、耐摩耗性、耐腐食性に優れる材料が好ましい。耐摩耗性、耐腐食性に優れる材料としては、ステンレス等の金属を例示できる。ヘッド部2aと胴体部2bとの材料は、同じでもよく、異なってもよい。
【0035】
ヘッド部2aの大きさは、活性ガス照射装置100の用途等を勘案して決定できる。例えば、活性ガス照射装置100が口腔内用治療器具である場合、ヘッド部2aの大きさは、口腔内に挿入できる大きさが好ましい。
【0036】
管状誘電体3の材料としては、公知のプラズマ装置に使用する誘電体材料を適用できる。管状誘電体3の材料は、例えば、ガラス、セラミックス、合成樹脂等である。管状誘電体3の誘電率は低いほど好ましい。
【0037】
管状誘電体3の内径Rは、内部電極4の外径dを勘案して適宜決定できる。内径Rは、後述する距離sを所望の範囲とするように決定する。
【0038】
内部電極4は、管軸O1方向に延びる軸部と、軸部の外周面のねじ山とを備える。軸部は、中実でもよいし、中空でもよい。中でも、軸部は中実が好ましい。軸部が中実であれば、加工が容易であり、かつ機械的な耐久性を高められる。内部電極4のねじ山は、軸部の周方向に周回する螺旋状のねじ山である。内部電極4の形態は、雄ねじと同様の形態である。内部電極4は、外周面にねじ山を有することで、ねじ山先端部の電界が局所的に強くなり、放電開始電圧が低くなる。このため、低電力でプラズマを生成し、維持できる。
【0039】
内部電極4の外径dは、活性ガス照射装置100の用途(即ち、照射器具10の大きさ)等を勘案して、適宜決定できる。活性ガス照射装置100が口腔内用治療器具である場合、外径dは、0.5mm~20mmが好ましく、1mm~10mmがより好ましい。外径dが上記下限値以上であれば、内部電極4を容易に製造できる。加えて、外径dが上記下限値以上であれば、内部電極4の表面積が大きくなり、プラズマをより効率的に発生して、治癒等をより促進できる。外径dが上記上限値以下であれば、照射器具10を過度に大きくすることなく、プラズマをより効率的に発生し、治癒等をより促進できる。
【0040】
内部電極4のねじ山の高さhは、内部電極4の外径dを勘案して適宜決定できる。内部電極4のねじ山のピッチpは、内部電極4の長さや外径d等を勘案して適宜決定できる。
【0041】
内部電極4の材料は、導電材であれば特に制限はなく、公知のプラズマ装置の電極に使用できる金属を適用できる。内部電極4の材料としては、ステンレス、銅、タングステン等の金属、カーボン等を例示できる。
【0042】
内部電極4としては、JIS B 0205:2001のメートルねじの規格品(M2、M2.2、M2.5、M3、M3.5等)、JIS B 2016:1987のメートル台形ねじの規格品(Tr8×1.5、Tr9×2、Tr9×1.5等)、JIS B 0206:1973のユニファイ並目ねじの規格品(No.1-64UNC、No.2-56UNC、No.3-48UNC等)等と同等の仕様が好ましい。これらの規格品と同等の仕様であれば、コスト面で優位である。
【0043】
内部電極4の外面と管状誘電体3の内面との距離sは、0.05mm~5mmが好ましく、0.1mm~1mmがより好ましい。距離sが上記下限値以上であれば、所望量のプラズマ発生用ガスを容易に通流できる。距離sが上記上限値以下であれば、プラズマがさらに効率的に発生し、活性ガスの温度を低くできる。
【0044】
外部電極5の材料は、導電材であれば特に制限はなく、公知のプラズマ装置の電極に使用する金属を適用できる。外部電極5の材料としては、ステンレス、銅、タングステン等の金属、カーボン等を例示できる。
管状誘電体3と外部電極5の組み合わせとしては、例えば、管状誘電体3をガラス管とし、外部電極5をガラス管の外径よりも大きい内径を有する、中空の円筒状の金属管とすることができる。
【0045】
ノズル1の材料は、特に制限はなく、絶縁性を有してもよいし、導電性を有してもよい。ノズル1の材料としては、耐摩耗性、耐腐食性に優れる材料が好ましい。耐摩耗性、耐腐食性に優れる材料としては、ステンレス等の金属を例示できる。
【0046】
ノズル1における照射管1c内の流路の長さ(即ち、距離L2)は、活性ガス照射装置100の用途等を勘案して、適宜決定できる。照射口1aの開口径は、例えば、0.5mm~5mmが好ましい。開口径が上記下限値以上であれば、活性ガスの圧力損失を抑制できる。開口径が上記上限値以下であれば、照射する活性ガスの流速を高めて、患部の治癒等を促進できる。照射管1cは、管軸O1に対して屈曲している。照射管1cの管軸O2と管軸O1とのなす角度θは、活性ガス照射装置100の用途等を勘案して決定できる。
【0047】
内部電極4の先端Q1からヘッド部2aの先端Q2までの距離L1と、先端Q2から照射口1aまでの距離L2との合計(即ち、内部電極4から照射口1aまでの道のり)は、活性ガス照射装置100に求める大きさや、照射した活性ガスが当たる面(被照射面)における温度等を勘案して適宜決定する。距離L1と距離L2の合計が長ければ、被照射面の温度を低くできる。距離L1と距離L2の合計が短ければ、活性ガスのラジカル密度をさらに高めて、被照射面における清浄化、賦活化、治癒等の効果をさらに高められる。なお、先端Q2は、管軸O1と管軸O2との交点である。
【0048】
図2、
図4及び
図5に示すように、検出部15は、照射器具10に設けられている。
図2及び
図4に示すように、検出部15は、照射器具10に加えられた外力(衝撃力)を検出する。検出部15は、ノズル1よりもプラズマ発生部12に近い位置に配置されている。照射器具10に外力が加えられると、プラズマ発生部12に備えられた管状誘電体3と、その内部に配置された内部電極4とが衝突し、あるいは管状誘電体3と、その外周面に沿って配置された外部電極5とが衝突し、管状誘電体3が破損することがある。そこで、検出部15を、ノズル1よりもプラズマ発生部12に近い位置に設けることにより、プラズマ発生部12が受けた外力を検知することが好ましい。これにより、管状誘電体3に衝撃が加わったか否かを判別することができる。
【0049】
ここで、「ノズル1よりもプラズマ発生部12に近い」とは、管軸O1に沿って離間して設けられているノズル1とプラズマ発生部12とに関して、検出部15の外部電極5側の端部から外部電極5の先端部までの距離Aが、検出部15のノズル1側の端部からノズル1の付け根(ノズル1とカウリング2との境界)までの距離Bよりも短い(即ち、距離B/距離Aの比が1未満である)ことを意味する。
【0050】
上記のことから明らかな通り、管状誘電体3の破損は、管状誘電体3と内部電極4とが対向している箇所、又は管状誘電体3と外部電極5とが対向している箇所で発生し易い。特に、衝撃等により、外部電極5の先端部が管状誘電体3の外周面に接触したときに管状誘電体3が最も破損しやすくなる。したがって、検出部15は、外部電極5の先端部の近傍に配置するのがより好ましい。
【0051】
検出部15は、胴体部2bの凹部16に配置されている。凹部16は、胴体部2bの内周面に形成されている。管軸O1に直交する方向を径方向とすると、検出部15は、管状誘電体3に対して径方向の外側に配置されている。検出部15は、管軸O1方向に所定の幅を持つ管状に形成されている。検出部15が管状であることにより、照射器具10内の狭いエリアに、検出部15を設置することができる。なお、検出部15は管状のものに限定されず、後述する機能を有するものであれば、如何なる形状であってもよい。
【0052】
なお、本明細書において、外力とは衝撃等により照射器具10が外部から受ける力をいい、より具体的には、照射器具が床などに落下した際の衝撃力や、照射器具に接続されている配線により、照射器具が振り子として動き、照射器具が壁などに衝突した際の衝撃力や、照射器具の上に重量物が落下した際の衝撃力等をいう。
【0053】
検出部15は、照射器具10に外力が加えられたときに変色する。本実施形態では、検出部15の色は、検出部15に所定の大きさ以上の外力が加えられる前後で異なる。検出部15の色は、検出部15に所定の大きさ以上の外力が加えられた後、元の色に戻らず変色したままである。検出部15を照射器具10の外部から視認できるように、カウリング2には、のぞき窓17が設けられている。のぞき窓17は、検出部15(凹部16)に対して径方向の外側に配置されている。検出部15は、のぞき窓17を通して照射器具10の外部から視認される。本プラズマ装置の使用者は、のぞき窓17を通して検出部15の色を確認したときに、変色していれば、管状誘電体3が破損した可能性があることを把握できる。
【0054】
図1に示すような供給ユニット20は、照射器具10に電気およびプラズマ発生用ガスを供給する。供給ユニット20は、内部電極4と外部電極5との間に印加する電圧及び周波数を調節できる。供給ユニット20は、供給源70を収容する筐体21を備えている。筐体21は、供給源70を離脱可能に収容する。これにより、筐体21に収容された供給源70内のガスがなくなったとき、プラズマ発生用ガスの供給源70を交換することができる。
【0055】
供給源70は、プラズマ発生部12にプラズマ発生用ガスを供給する。供給源70は、内部にプラズマ発生用ガスが収容された耐圧容器である。
図5に示すように、供給源70は、筐体21内に配置された配管75に対して着脱可能に装着されている。配管75は、供給源70とガス管路30とを接続している。配管75には、電磁弁71、圧力レギュレータ73、流量コントローラ74及び圧力センサ72(残量センサ)が取り付けられている。
【0056】
電磁弁71が開状態となると、供給源70から配管75及びガス管路30を介して照射器具10にプラズマ発生用ガスが供給される。図示の例では、電磁弁71は、弁開度が調節できる構成ではなく、開閉の切り替えのみができる構成である。なお電磁弁71は、弁開度が調節できる構成であってもよい。圧力レギュレータ73は、電磁弁71と供給源70との間に配置されている。圧力レギュレータ73は、供給源70から電磁弁71に向かうプラズマ発生用ガスの圧力を低下(プラズマ発生用ガスを減圧)させる。
【0057】
流量コントローラ74は、電磁弁71とガス管路30との間に配置されている。流量コントローラ74は、電磁弁71を通過したプラズマ発生用ガスの流量(単位時間当たりの供給量)を調整する。流量コントローラ74は、プラズマ発生用ガスの流量を、例えば3L/minに調整する。
【0058】
圧力センサ72は、供給源70におけるプラズマ発生用ガスの残量V1を検出する。圧力センサ72は、残量V1として、供給源70内の圧力(残圧)を測定する。圧力センサ72は、圧力レギュレータ73と供給源70との間(圧力レギュレータ73よりも一次側)を通過するプラズマ発生用ガスの圧力(一次圧)を、供給源70の圧力として測定する。圧力センサ72としては、例えば、キーエンス社のAP-V80シリーズ(具体的には、例えばAP-15S)等を採用することができる。
【0059】
なお、供給源70における実際の残量V1(体積)は、圧力センサ72が測定する残圧と、供給源70の容量(内部容積)と、から算出される。供給源70として、多様な容量の供給源70を使用する前提の場合、例えば、実際の供給源70の容量を、図示しない入力部のシステム画面上で選択することで、演算用の容量を設定してもよい。また、供給源70として、定用量の供給源70を使用する前提の場合、制御部90がその容量を予め記憶しておいてもよい。
【0060】
配管75の供給源70側の端部には、継手76が設けられている。継手76には、供給源70が着脱可能に装着されている。供給源70を継手76に着脱させることで、電磁弁71、圧力レギュレータ73、流量コントローラ74及び圧力センサ72(以下、「電磁弁71等」という。)を筐体21に固定したまま、プラズマ発生用ガスの供給源70を交換することができる。この場合、交換前の供給源70、交換後の供給源70のいずれについても共通の電磁弁71等を使用することができる。なお電磁弁71等は、供給源70に固定され、供給源70と一体的に筐体21から離脱可能であってもよい。
【0061】
図1に示すように、ガス管路30は、供給ユニット20から照射器具10にプラズマ発生用ガスを供給する経路である。ガス管路30は、照射器具10の管状誘電体3の後端部に接続している。ガス管路30の材料は特に制限はなく、公知のガス管に用いる材料を適用できる。ガス管路30の材料としては、例えば、樹脂製の配管、ゴム製のチューブ等を例示でき、可撓性を有する材料が好ましい。
【0062】
電気配線40は、供給ユニット20から照射器具10に電気を供給する配線である。電気配線40は、照射器具10の内部電極4、外部電極5及び操作スイッチ9に接続している。電気配線40の材料は特に制限はなく、公知の電気配線に用いる材料を適用できる。電気配線40の材料としては、絶縁材料で被覆した金属導線等を例示できる。
【0063】
図5に示すような制御部90は、情報処理装置を用いて構成される。すなわち、制御部90は、バスで接続されたCPU(Central Processor Unit)、メモリ及び補助記憶装置を備える。制御部90は、プログラムを実行することによって動作する。制御部90は、例えば、供給ユニット20に内蔵されていてもよい。制御部90は、照射器具10、供給ユニット20および報知部80を制御する。
【0064】
制御部90には、照射器具10の操作スイッチ9が電気的に接続されている。操作スイッチ9が操作されると、操作スイッチ9から制御部90に電気信号が送られる。制御部90が電気信号を受け付けると、制御部90は電磁弁71及び流量コントローラ74を作動させ、かつ内部電極4と外部電極5との間に電圧を印加する。
【0065】
本実施形態では、操作スイッチ9が押釦であり、使用者が操作スイッチ9を1回押した(使用者が操作スイッチ9を操作した)ときに、制御部90が電気信号を受け付ける。すると制御部90が、電磁弁71を所定の時間、開放して電磁弁71を通過したプラズマ発生用ガスの流量を流量コントローラ74に調整させ、かつ内部電極4と外部電極5との間に電圧を所定の時間、印加する。その結果、供給源70からプラズマ発生部12に一定量のプラズマ発生用ガスが供給され、ノズル1から活性ガスが一定時間(例えば、数秒から数十秒程度、本実施形態では30秒)、継続して吐出される。
【0066】
すなわち、本実施形態では、使用者による操作スイッチ9を1回押下するあたりの活性ガスの吐出量が定まっている。このような、所定の吐出量の活性ガスを吐出する操作を単位操作と呼ぶ。本実施形態では、単位操作が、使用者による操作スイッチ9の1回の押下である。単位操作1回あたりの活性ガスの吐出量(単位操作1回あたりの供給源70からプラズマ発生部12へのプラズマ発生用ガスの供給量)は、予め設定された固定値であってもよく、図示しない操作盤の操作等により設定可能な変動値であってもよい。
【0067】
制御部90は、プラズマ発生用ガスの残回数N及び残時間Tのうちの少なくとも一方を残存情報として演算する。本実施形態では、制御部90は、残回数N及び残時間Tのうちの残回数Nのみを残存情報として演算する。残回数Nは、供給源70に残存するプラズマ発生用ガスによって、供給源70からプラズマ発生部12にプラズマ発生用ガスを供給することができる残りの単位操作の回数である。残時間Tは、供給源70に残存するプラズマ発生用ガスによって、供給源70からプラズマ発生部12にプラズマ発生用ガスを供給することができる残りの時間である。
【0068】
残回数N及び残時間Tはいずれも、供給源70におけるプラズマ発生用ガスの残量V1から算出することができる。残回数Nは、残量V1と、操作スイッチ9の単位操作1回あたりのプラズマ発生用ガスの供給量V2と、に基づいて演算(N=V1/V2)することができる。また、直近数回のプラズマ発生用ガスの使用量(供給量)の平均値V2(平均値)を演算し、その平均値V2(平均値)をプラズマ発生用ガスの残量V1で除することにより、残回数Nを算出する。残時間Tは、残量V1と、供給源70からプラズマ発生部12に単位時間あたり供給されるプラズマ発生用ガスの供給量V3と、に基づいて演算(T=V1/V3)することができる。
【0069】
報知部80は、残回数Nおよび残時間Tのうちの少なくとも一方を報知する。本実施形態では、報知部80は、残回数Nを表示する。報知部80は、制御部90が演算した残回数Nを数字で表示する。報知部80として、例えば、任意の数字を表示可能なディスプレイ装置を採用してもよく、機械式のカウンタを採用してもよい。
【0070】
なお図示の例では、報知部80は、筐体21の外面に、筐体21と一体に設けられているが、供給ユニット20から独立して設けられていてもよい。また報知部80は、残回数Nを数字とは異なる形態により表示してもよい。例えば報知部80として、文字盤および針により形成されるアナログ表示をする構成を採用してもよい。さらに例えば、報知部80が、色の表示態様や、光の点灯の態様により残回数Nを報知してもよい。
【0071】
さらに報知部80は、音声によって残回数Nを報知してもよい。この場合、報知部80としては、例えばスピーカ等を採用することができる。
【0072】
本実施形態のように、使用者が操作スイッチ9を操作したときに、供給源70からプラズマ発生部12に一定量のプラズマ発生用ガスが供給される場合には、残時間Tを報知することよりも残回数Nを報知することの方が使用者の利便性を高めることができる。
【0073】
次に、活性ガス照射装置100の使用方法を説明する。例えば医師などの使用者は、照射器具10を持って移動させ、ノズル1を後述する被照射物に向ける。この状態で操作スイッチ9を押し、供給源70から照射器具10に電気及びプラズマ発生用ガスを供給する。照射器具10に供給したプラズマ発生用ガスは、管状誘電体3の後端部から管状誘電体3の内空部に流入する。プラズマ発生用ガスは、内部電極4と外部電極5とが対向する位置において電離し、プラズマになる。
【0074】
本実施形態においては、内部電極4と外部電極5とが、プラズマ発生用ガスの流れる方向と直交する向きに対向している。内部電極4の外周面と外部電極5の内周面とが対向する位置で発生したプラズマは、ガス流路6と、第1の活性ガス流路7と、第2の活性ガス流路8とをこの順に通流する。この間、プラズマは、ガス組成を変化しつつ通流し、ラジカル等の活性種を含む活性ガスとなる。
【0075】
生じた活性ガスは照射口1aから吐出される。吐出された活性ガスは、照射口1a近傍の気体の一部をさらに活性化して活性種を生成する。これらの活性種を含む活性ガスは被照射物に照射される。
【0076】
被照射物としては、例えば、細胞、生体組織、生物個体等を例示できる。生体組織としては、内蔵等の各器官、体表や体腔の内面を覆う上皮組織、歯肉、歯槽骨、歯根膜及びセメント質等の歯周組織、歯、骨等を例示できる。生物個体としては、ヒト、犬、猫、豚等の哺乳類;鳥類;魚類等のいずれでもよい。
【0077】
プラズマ発生用ガスとしては、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン等の希ガス;窒素;等である。これらのガスは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。プラズマ発生用ガスは、窒素を主成分とすることが好ましい。ここで、窒素を主成分とするとは、プラズマ発生用ガスにおける窒素の含有量が50体積%超であることをいう。即ち、プラズマ発生用ガスにおける窒素の含有量は、50体積%超が好ましく、70体積%以上がさらに好ましく、90体積%~100体積%が特に好ましい。プラズマ発生用ガス中、窒素以外のガス成分は、特に制限はなく、例えば、酸素、希ガス等を例示できる。
【0078】
活性ガス照射装置100が口腔内用治療器具である場合、管状誘電体3に導入するプラズマ発生用ガスの酸素濃度は、1体積%以下が好ましい。酸素濃度が上限値以下であれば、オゾンの発生を低減できる。
【0079】
管状誘電体3に導入するプラズマ発生用ガスの流量は、1L/min~10L/minが好ましい。管状誘電体3に導入するプラズマ発生用ガスの流量が下限値以上であると、被照射物における被照射面の温度の上昇を抑制しやすい。プラズマ発生用ガスの流量が上限値以下であると、被照射物の清浄化、賦活化又は治癒をさらに促進できる。
【0080】
内部電極4と外部電極5との間に印加する交流電圧は、5kVpp以上20kVpp以下が好ましい。ここで、交流電圧を表す単位「Vpp(Volt peak to peak)」は、交流電圧波形の最高値と最低値との電位差である。印加する交流電圧が上限値以下であれば、発生するプラズマの温度を低く抑えられる。印加する交流電圧が下限値以上であれば、さらに効率的にプラズマを発生できる。
【0081】
内部電極4と外部電極5との間に印加する交流の周波数は、0.5kHz以上20kHz未満が好ましく、1kHz以上15kHz未満がより好ましく、2kHz以上10kHz未満がさらに好ましく、3kHz以上9kHz未満が特に好ましく、4kHz以上8kHz未満が最も好ましい。交流の周波数が上限値未満であれば、発生するプラズマの温度を低く抑えられる。交流の周波数が下限値以上であれば、さらに効率的にプラズマを発生できる。
【0082】
ノズル1の照射口1aから照射する活性ガスの温度は、50℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましく、40℃以下がさらに好ましい。ノズル1の照射口1aから照射する活性ガスの温度が上限値以下であると、被照射面の温度を40℃以下にしやすい。被照射面の温度を40℃以下にすることで、被照射部分が患部である場合にも、患部への刺激を低減できる。ノズル1の照射口1aから照射する活性ガスの温度の下限値は、特に制限はなく、例えば、10℃以上である。活性ガスの温度は、照射口1aにおける活性ガスの温度を熱電対で測定した値である。
【0083】
照射口1aから被照射面までの距離(照射距離)は、例えば、0.01mm~10mmが好ましい。照射距離が上記下限値以上であれば、被照射面の温度を低くし、被照射面への刺激をさらに緩和できる。照射距離が上記上限値以下であれば、治癒等の効果をさらに高められる。
【0084】
照射口1aから1mm以上10mm以下の距離で離れた位置の被照射面の温度は、40℃以下が好ましい。被照射面の温度が40℃以下であれば、被照射面への刺激を低減できる。被照射面の温度の下限値は特に制限はないが、例えば10℃以上である。被照射面の温度は、内部電極4と外部電極5との間に印加する交流電圧、照射する活性ガスの吐出量、内部電極4の先端Q1から照射口1aまでの道のり等の組み合わせで調節できる。被照射面の温度は、熱電対を用いて測定できる。
【0085】
活性ガスに含まれる活性種(ラジカル等)としては、ヒドロキシルラジカル、一重項酸素、オゾン、過酸化水素、スーパーオキシドアニオンラジカル、一酸化窒素、二酸化窒素、ペルオキシナイトライト、過酸化亜硝酸、三酸化二窒素等を例示できる。活性ガスに含まれる活性種の種類は、例えば、プラズマ発生用ガスの種類等にさらに調節できる。
【0086】
活性ガス中におけるヒドロキシラジカルの密度(ラジカル密度)は、0.1μmol/L~300μmol/Lが好ましい。ラジカル密度が下限値以上であると、細胞、生体組織及び生物個体から選ばれる被照射物の清浄化、賦活化又は異常の治癒を促進しやすい。ラジカル密度が上限値以下であると、被照射面への刺激を低減できる。
【0087】
ラジカル密度は、例えば、以下の方法で測定できる。DMPO(5,5-ジメチル-1-ピロリン-N-オキシド)0.2mol/L溶液0.2mLに対して、活性ガスを30秒間照射する。この際、照射口1aから液面までの距離を5.0mmとする。活性ガスを照射した溶液について、電子スピン共鳴(ESR)法を利用してヒドロキシルラジカル濃度を測定し、これをラジカル密度とする。
【0088】
活性ガス中における一重項酸素の密度(一重項酸素密度)は、0.1μmol/L~300μmol/Lが好ましい。一重項酸素密度が下限値以上であると、細胞、生体組織及び生物個体等の被照射物の清浄化、賦活化又は異常の治癒を促進しやすい。一重項酸素密度が上限値以下であると、被照射面への刺激を低減できる。
【0089】
一重項酸素密度は、例えば、以下の方法で測定できる。TPC(2,2,5,5-テトラメチル-3-ピロリン-3-カルボキサミド)0.1mol/L溶液0.4mLに対して、活性ガスを30秒間照射する。この際、照射口1aから液面までの距離を5.0mmとする。活性ガスを照射した溶液について、電子スピン共鳴(ESR)法を利用して一重項酸素濃度を測定し、これを一重項酸素密度とする。
【0090】
照射口1aから照射する活性ガスの流量は、1L/min~10L/minが好ましい。照射口1aから照射する活性ガスの流量が下限値以上であると、活性ガスが被照射面に作用する効果を充分に高められる。照射口1aから照射する活性ガスの流量が上限値以下であると、活性ガスの被照射面の温度が過度に高まることを防止できる。加えて、被照射面が濡れている場合には、被照射面の急速な乾燥を防止できる。さらに、被照射面が患部である場合には、患者への刺激を抑制できる。なお、活性ガス照射装置100において、照射口1aから照射する活性ガスの流量は、管状誘電体3へのプラズマ発生用ガスの供給量で調節できる。
【0091】
活性ガス照射装置100によって生じる活性ガスは、外傷や異常の治癒を促進する効果を有する。活性ガスを細胞、生体組織又は生物個体に照射することによって、その被照射部分の清浄化、賦活化、又はその被照射部分の治癒を促進できる。
【0092】
外傷や異常の治癒を促進する目的で活性ガスを照射する場合、その照射頻度、照射回数及び照射期間は特に制限はない。例えば、1L/min~5.0L/minの照射量で活性ガスを患部に照射する場合、1日1回~5回、毎回10秒~10分、1日~30日間、等の照射条件が、治癒を促進する観点から好ましい。
【0093】
本実施形態の活性ガス照射装置100は、特に口腔内用治療器具、歯科用治療器具として有用である。また、本実施形態の活性ガス照射装置100は、動物治療用器具としても好適である。
【0094】
本実施形態における胴体部2bは、保守性を向上させるために二重構造になっており、分解できるようにしている。より具体的には、胴体部2bは、軸線方向に延びる中空の第1胴体部2dと、第1胴体部2dの周囲を覆う第2胴体部2eとを有する。第1胴体部2dと第2胴体部2eはいずれも例えば樹脂で形成されている。第2胴体部2eの外側を金属部材で覆ってもよい。
図6及び
図7は胴体部2bから第2胴体部2eを取り外した状態を示す図である。
図6に示すように、第1胴体部2dの先端部に外部電極5の後端部が当接されており、第1胴体部2dの内部には、軸線方向に沿って内部電極4が配置されている。内部電極4の先端部は、外部電極5の先端部よりも突き出ている。これにより、外部電極5の軸線方向の全長において、プラズマを安定して発生させることができる。また、外部電極5の外周面には、供給ユニット20からの接地線31が接合されている。接地線31の先端部は例えば半田35により外部電極5の外周面に接合されている。
【0095】
管状誘電体3は、外部電極5の先端側から挿脱可能とされている。
図6は管状誘電体3を取り外した状態を示し、
図7は管状誘電体3を外部電極5と内部電極4の間に挿入した状態を示している。このように、管状誘電体3を挿脱可能とすることにより、管状誘電体3が破損した場合に、その交換を容易に行うことができる。
【0096】
しかしながら、管状誘電体3が内部電極4と外部電極5に対して固定されていない状態では、管状誘電体3と外部電極5との間にわずかな隙間が存在することから、照射器具10が何らかの衝撃を受けたときに、外部電極5が管状誘電体3に衝突して、管状誘電体3が破損するおそれがある。上述したように、管状誘電体3と内部電極4の間にも隙間が存在するため、内部電極4が管状誘電体3に衝突して管状誘電体3が破損するおそれもあるが、本発明者が種々の検討を行ったところ、内部電極4よりも、外部電極5が管状誘電体3に接触して管状誘電体3が破損する頻度が高いことがわかった。そこで、外部電極5を管状誘電体3に固定させる方策を種々検討した。
【0097】
以下に具体的に説明するように、本実施形態では、固定部材を設けて、管状誘電体3に対して外部電極5を固定させた。固定部材は、管状誘電体3の外周面に外部電極5を接触させた状態で、管状誘電体3に対して外部電極5を固定させてもよい。あるいは、固定部材は、管状誘電体3の外周面から外部電極5を離隔させた状態で、管状誘電体3に対して外部電極5を固定させてもよい。また、固定部材は、外部電極5の軸線方向の両端部にて、管状誘電体3に対して外部電極5を固定させてもよい。また、固定部材は、管状誘電体3の外周面に密着して配置される弾性部材を有し、弾性部材を外部電極5の軸線方向の少なくとも一方の端部に面接触させることにより、管状誘電体3に対して外部電極5を固定させてもよい。また、固定部材は、管状誘電体3の外周面、外部電極5の外周面、及び外部電極5の軸線方向の両端部を覆う薄膜部材を有していてもよい。薄膜部材は、管状誘電体3の外周面、外部電極5の外周面、及び外部電極5の軸線方向の両端部に接着する接着層を有していてもよい。
【0098】
図8は外部電極5を管状誘電体3に固定させる第1方策を示す図である。
図8では、管状誘電体3の外周面に、弾力性のある樹脂部材からなるOリング(弾性部材)33を取り付けている。このOリング33は、管状誘電体3の外周面に密着するような内径を有する。管状誘電体3におけるOリング33の取付位置は、管状誘電体3を胴体部2bの先端側から挿入したときに、Oリングが外部電極5の先端部に当接されるように調整する必要がある。管状誘電体3を胴体部2bの先端側から挿入した後にOリング33の位置を調整するのは容易ではないため、挿入前に管状誘電体3でのOリング33の取付位置を調整し、位置決めされたOリング33が取り付けられた管状誘電体3を胴体部2bの先端側から挿入する。これにより、管状誘電体3を胴体部2bの先端側から挿入したときに、Oリング33を外部電極5の先端部に面接触させることができる。外部電極5の後端部側は胴体部2bの第1胴体部2dによって動きが規制され、先端部側はOリング33によって動きが規制されるため、外部電極5は、軸線方向の両端部で固定されることになり、照射器具10が衝撃を受けても、外部電極5が管状誘電体3の軸線方向および径方向に移動しなくなる。
【0099】
図8において、Oリング33の外部電極5に当接する側の面に接着材を付着させて、Oリング33を外部電極5の先端部に接着させてもよい。また、外部電極5の後端部と胴体部2bの第1胴体部2dとを接着材で接着してもよい。外部電極5の両端部を接着材にてOリング33と第1胴体部2dに接着させることで、照射器具10が衝撃を受けたときの外部電極5を移動や振動をより抑制できる。
【0100】
図9は外部電極5を管状誘電体3に固定させる第2方策を示す図である。
図9では、第1胴体部2dの先端部の軸線方向の長さを少し短く加工して、胴体部2bの第1胴体部2dの先端部と外部電極5の後端部との間に予めOリング33を配置している。これにより、Oリング33が取り付けられた管状誘電体3を胴体部2bの先端側から挿入したときに、外部電極5の両端部を2つのOリング33で固定することができる。Oリング33に接着材を付着して、Oリング33と外部電極5の両端部を接着させれば、より強固に外部電極5を固定できる。
【0101】
図8や
図9のようにOリング33にて外部電極5を管状誘電体3に固定させる方策は一例であり、外部電極5を管状誘電体3に固定させる固定部材はOリング33には限定されない。例えば、Oリング33の代わりに、熱硬化性の樹脂部材にて外部電極5を管状誘電体3に固定させてもよい。この場合、樹脂部材が外部電極5と内部電極4との対向領域内に入り込まないように留意する必要がある。
【0102】
外部電極5が管状誘電体3に衝突するのは、外部電極5と管状誘電体3の間に僅かな隙間があるためである。そこで、
図10に示すように、管状誘電体3を軸線方向から僅かに傾けて配置し、外部電極5の先端部を管状誘電体3の外周面に接触させた状態で、
図8や
図9のOリング33等の固定部材にて外部電極5を管状誘電体3に固定させてもよい。
図10では、外部電極5と管状誘電体3の接触箇所を黒丸で明示している。
【0103】
図8~
図10に示すOリング33等の固定部材に加えて、あるいは固定部材に代えて、
図11に示すように管状誘電体3と外部電極5の表面を絶縁性の薄膜部材34で覆ってもよい。薄膜部材34は、衝撃を吸収する作用はもたらさないが、管状誘電体3と外部電極5との位置関係を固定させる作用をもたらす。例えば、
図10の場合、予め、外部電極5の先端部を管状誘電体3に接触させた状態で薄膜部材34で覆うことにより、照射器具10が衝撃を受けたとしても、外部電極5は管状誘電体3に衝突しなくなり、外部電極5を起因として管状誘電体3が破損する可能性が格段に低くなる。
また、金属管である外部電極5の外周面に接地線31が接合されている場合、
図11に示すように、薄膜部材34は、接地線31と外部電極5との接合箇所を含めて、管状誘電体3の外周面、外部電極5の外周面、及び外部電極5の軸線方向の両端部を覆ってもよい。
【0104】
薄膜部材34としては、例えばポリイミドやポリエステルを基材とするフィルムを用いることができる。また、フィルムの一方の面にシリコーン等からなる接着材を付着させて接着層を形成し、フィルムに設けた接着層を管状誘電体3の外周面、外部電極5の外周面、及び外部電極5の軸線方向の両端部に接着させてもよい。接着層を有する薄膜部材は、フィルムの剥離を防止できる点でより好ましい。
【0105】
図11のように管状誘電体3と外部電極5の表面を薄膜部材34で覆う処理は、
図8や
図9のようにOリング33で外部電極5を管状誘電体3に固定させた場合にも行ってもよい。薄膜部材34で管状誘電体3と外部電極5を覆うと、外部電極5の軸線方向及び径方向への移動を規制でき、外部電極5が管状誘電体3に激しく衝突することを確実に防止できる。
【0106】
以上説明したような本実施形態に係る活性ガス照射装置100によれば、Oリング33等の固定部材を用いて管状誘電体3に外部電極5を固定させるため、照射器具10が衝撃を受けても、外部電極5が管状誘電体3に衝突しなくなる。また、管状誘電体3と外部電極5の表面を薄膜部材34で覆うことにより、外部電極5の軸線方向及び径方向への移動を規制でき、より堅固に外部電極5を管状誘電体3に固定できる。特に、
図10及び
図11に示すように、管状誘電体3を外部電極5の先端部等に接触させた状態で薄膜部材34で管状誘電体3と外部電極5の表面を覆うことで、外部電極5の動きをより確実に規制でき、外部電極5による管状誘電体3への衝突による衝撃力を抑制でき、管状誘電体3の破損を防止できる。
【0107】
上述の本実施形態の内部電極4の形状は、ねじ状である。しかしながら、内部電極は、外部電極との間にプラズマを発生できれば、内部電極の形状は限定されない。内部電極は、表面に凹凸を有してもよいし、表面に凹凸を有しなくてもよい。内部電極としては、外周面に凹凸を有する形状が好ましい。例えば、内部電極の形状は、コイル状でもよいし、外周面に突起、穴、貫通孔が複数形成された棒形状又は筒形状でもよい。内部電極の断面形状は、特に限定されず、例えば、真円形、楕円形等の円形、四角形、六角形等の多角形を例示できる。
また、照射器具は、ノズルを備えるものには限定されない。例えば、ヘッド部の先端、すなわちカウリングの先端に形成された照射口からプラズマ及び活性ガスの少なくとも一方を照射する照射器具であってもよい。
【実施例】
【0108】
本発明者は、
図11のように、管状誘電体3と外部電極5の表面を薄膜部材34で覆った照射器具10と薄膜部材34で覆わない照射器具10について、1mの高さから落下させる落下試験を行った。この落下試験では、管状誘電体3として、厚さ1mmで、外径5.3mmのガラス管を用いるとともに、内径5.5mmの銅からなる外部電極5と、外径0.8mmの銅からなる内部電極4を用いた。薄膜部材34として、ポリイミドフィルムにシリコーン系接着剤を塗布したカプトンテープを用いた。また、照射器具10の重量は135gである。
【0109】
図10と同様に、ガラス管からなる管状誘電体3を外部電極5の先端部に接触させた状態で、ガラス管と外部電極5の外周面をカプトンテープで覆った照射器具10を1mの高さから落下させる落下試験を3回行ったところ、3回ともガラス管は割れなかった。
【0110】
これに対して、カプトンテープでガラス管と外部電極5を固定させない一比較例の照射器具を1mの高さから落下させる落下試験を3回行ったところ、3回ともガラス管は割れた。
【0111】
これにより、カプトンテープからなる薄膜部材34で管状誘電体3と外部電極5の表面を覆うことが、ガラス管の破損を防止できる有効な手段であることが確かめられた。
【0112】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0113】
1 ノズル
9 操作スイッチ
10 照射器具
12 プラズマ発生部
15 検出部
70 供給源
80 報知部
90 制御部(演算部)
100 プラズマ装置(活性ガス照射装置)
【要約】
【課題】管状誘電体が壊れにくい構造にする。
【解決手段】プラズマ装置は、プラズマ発生部を備える照射器具と、プラズマ発生部にプラズマ発生用ガスを供給する供給源と、を備える。プラズマ発生部は、供給源から供給されたプラズマ発生用ガスの流路である内空部を有する管状誘電体3と、管状誘電体3の内空部に配置され、管状誘電体3の軸線方向に延びる内部電極4と、管状誘電体3の外周面に沿って内部電極4に対向する位置に配置される外部電極5と、管状誘電体3に対して外部電極5を固定させる固定部材であるOリング33と、を備える。
【選択図】
図8