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特許7000556水素ガスの生成およびその低温処理に有用なアルミニウム基ナノガルバニック複合材料およびその製造方法
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  • 特許-水素ガスの生成およびその低温処理に有用なアルミニウム基ナノガルバニック複合材料およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】水素ガスの生成およびその低温処理に有用なアルミニウム基ナノガルバニック複合材料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/14 20220101AFI20220112BHJP
   C01B 3/08 20060101ALI20220112BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20220112BHJP
   B22F 3/02 20060101ALI20220112BHJP
   C22C 21/00 20060101ALI20220112BHJP
   C22C 21/02 20060101ALI20220112BHJP
   C22C 21/06 20060101ALI20220112BHJP
   C22C 21/10 20060101ALI20220112BHJP
   C22C 11/00 20060101ALI20220112BHJP
   C22C 13/00 20060101ALI20220112BHJP
   C22C 18/04 20060101ALI20220112BHJP
   C22C 28/00 20060101ALI20220112BHJP
   C22C 12/00 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
B22F1/14 400
C01B3/08
B22F1/00 N
B22F3/02 P
C22C21/00 N
C22C21/02
C22C21/06
C22C21/10
C22C11/00
C22C13/00
C22C18/04
C22C28/00 B
C22C12/00
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020504403
(86)(22)【出願日】2018-07-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-29
(86)【国際出願番号】 US2018043267
(87)【国際公開番号】W WO2019023123
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】62/536,143
(32)【優先日】2017-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520028726
【氏名又は名称】ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ レプリゼンテッド バイ ザ セクレタリー オブ ジ アーミー
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】特許業務法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アレン クリストファー ダーリン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン スコット グレンダール
(72)【発明者】
【氏名】クマー アニット ギリ
(72)【発明者】
【氏名】チャド ビリー ホーンバックル
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス アンソニー ロバーツ
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102009950(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101798061(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102408096(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0232837(US,A1)
【文献】Huihu Wang et al,Investigation on hydrogen production using multicomponent aluminum alloys at mild conditions and its mechanism,International Journal of Hydrogen Energy,ELSEVIER,2013年02月06日,Volume 38, Issue 3,Pages 1236-1243,https://doi.org/10.1016/j.ijhydene.2012.11.034
【文献】FAN ZHANG,HYDROGEN GENERATION FROM PURE WATER USING AL-SN POWDERS CONSOLIDATED THROUGH HIGH-PRESSURE TORSION,JOURNAL OF MATERIALS RESEARCH,2016年03月28日,VOL:31, NR:6,PAGE(S):775-782,https://www.researchgate.net/publication/299408339_Hydrogen_generation_from_pure_water_using_Al-Sn_powders_consolidated_through_high-pressure_torsion/link/59fbca32458515d07062646c/download
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水またはその他の水性成分との接触により水素ガスを生成するアルミニウム、アルミニウム合金、またはその他のアルミニウム基複合材料を形成する方法であって、
アルミニウム、アルミニウム合金、またはその他のアルミニウム基複合材料を準備することと、
スズ(Sn)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)及びこれらの混合物及び合金からなる群から選択される二次金属、二次合金、またはその他の二次金属基複合材料を準備することと、
前記アルミニウム、アルミニウム合金、またはその他のアルミニウム基複合材料前記二次金属、二次合金、またはその他の二次金属基複合材料と共に、粉砕加工して粉末を作製することとを備え、
前記粉末は、アルミニウムの結晶粒または亜結晶粒と、サイズが100nm以下で、分散する二次金属、二次合金、またはその他の二次金属基複合材料の微粒子とを有しており、
前記粉砕加工後の粉末は、水または液体もしくは他の電解質を含む水と反応して水素ガスを生成するように構成されており、この水素ガスの生成量は、25℃、1気圧および5分間の条件で、アルミニウムの1グラムあたり少なくとも1000mLである、方法。
【請求項2】
前記二次金属はスズ(Sn)を含み、
スズ(Sn)の延性・脆性遷移温度である13.2°C(286.2K)以下の温度で粉砕加工が行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記二次金属はスズ(Sn)を含み、
前記粉砕加工は、スズ(Sn)の延性・脆性遷移温度を少なくとも50°C下回る温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記粉砕加工は、+100°C~-270°Cの温度範囲で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記粉砕加工は、温度-75°C~-270℃の温度範囲で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ガルバニック金属マイクロ構造であって、
アルミニウム、アルミニウム合金、またはその他のアルミニウム基複合材料からなる陽極マトリクスと、
スズ(Sn)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)およびこれらの混合物および合金からなる群から選択される二次金属、二次合金、またはその他の二次金属基複合材料からなる陰極分散相とを備え、
前記陰極分散相は、100nm以下のサイズの二次金属の微粒子からなり、
前記陰極分散相は、前記陽極マトリクスのアルミニウム、アルミニウム合金またはその他のアルミニウム基複合材料と、前記陰極分散相の二次金属、二次合金またはその他の二次金属基複合材料との接触によって、前記陽極マトリクスとガルバニックカップルを形成し、
前記ガルバニック金属マイクロ構造は、水または液体もしくは他の電解質を含む水と接触して水素ガスを生成するように構成されており、この水素ガスの生成量は、25℃、1気圧および5分間の条件で、アルミニウムの1グラムあたり少なくとも1000mLである、ガルバニック金属マイクロ構造。
【請求項7】
前記陰極分散相の微粒子は、2nmから100nmの間の粒径を有している、請求項6に記載のガルバニック金属マイクロ構造。
【請求項8】
前記陰極分散相は、前記微粒子の凝集によって形成された二次金属、二次合金または二次金属基複合材料の大きな粒子を備え、前記大きな粒子のサイズは、100nm~1mmの範囲である請求項6に記載のガルバニック金属マイクロ構造。
【請求項9】
前記陰極分散相は、前記微粒子の凝集によって形成された二次金属、二次合金または二次金属基複合材料のすじ状組織(ストリンガ)を備え、前記すじ状組織の長さは10nm~10mm以下である、請求項6に記載のガルバニック金属マイクロ構造。
【請求項10】
前記陰極分散相の微粒子は、2nmから100nmの間の範囲の粒径を有しており、
前記陰極分散相は、前記微粒子の凝集によって形成された二次金属、二次合金または二次金属基複合材料の大きな粒子を備え、前記大きな粒子のサイズは、100nm~1mmの範囲であり、
前記微粒子は、アルミニウム結晶粒内に存在し、前記大きな粒子は、結晶粒界上に位置する請求項6に記載のガルバニック金属マイクロ構造。
【請求項11】
粉砕加工後の粉末粒子は、1μm~10000μmの範囲の直径を有する請求項6に記載のガルバニック金属マイクロ構造。
【請求項12】
前記陰極分散相は、1~7原子パーセントのスズ(Sn)を有するスズ合金を備える請求項6に記載のガルバニック金属マイクロ構造。
【請求項13】
前記陰極分散相は、スズ(Sn)またはスズ合金を備える、請求項6に記載のガルバニック金属マイクロ構造。
【請求項14】
ガルバニック金属マイクロ構造であって、
アルミニウム、アルミニウム合金、または他のアルミニウム基複合材料からなる陽極マトリクスと、
スズ(Sn)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)およびこれらの混合物および合金からなる群から選択された二次金属、二次合金または他の二次金属基複合材料からなる陰極分散相とを備え、
前記陰極分散相は、2nm~100nmの範囲のサイズを有する二次金属の小粒子と、10nm~1mmの範囲のサイズを有する二次金属の大粒子とを備え、
前記陰極分散相は、前記陽極マトリクスのアルミニウム、アルミニウム合金またはその他のアルミニウム基複合材料と、前記陰極分散相の二次金属、二次合金またはその他の二次金属基複合材料との接触によって、前記陽極マトリクスとガルバニックカップルを形成し、
前記ガルバニック金属マイクロ構造は、水または液体もしくは他の電解質を含む水と接触して水素ガスを生成するように構成されており、この水素ガスの生成量は、25℃(298K)、1気圧および5分間の条件で、アルミニウムの1グラムあたり少なくとも1000mLである、ガルバニック金属マイクロ構造。
【請求項15】
前記ガルバニック金属マイクロ構造は、水または液体もしくは他の電解質を含む水と接触して水素ガスを生成するように構成されており、この水素ガスの生成量は、25℃、1気圧および5分間の条件で、アルミニウムの1グラムあたり少なくとも1100mLである、請求項6に記載のガルバニック金属マイクロ構造。
【請求項16】
前記ガルバニック金属マイクロ構造は、水または液体もしくは他の電解質を含む水と接触して水素ガスを生成するように構成されており、この水素ガスの生成量は、25℃、1気圧および5分間の条件で、アルミニウムの1グラムあたり少なくとも1300mLである、請求項6に記載のガルバニック金属マイクロ構造。
【請求項17】
前記ガルバニック金属マイクロ構造は、水または液体もしくは他の電解質を含む水と接触して水素ガスを生成するように構成されており、この水素ガスの生成量は、25℃、1気圧および1分間の条件で、アルミニウムの1グラムあたり少なくとも1000mLである、請求項6に記載のガルバニック金属マイクロ構造。
【請求項18】
前記ガルバニック金属マイクロ構造は、水または液体もしくは他の電解質を含む水と接触して水素ガスを生成するように構成されており、この水素ガスの生成量は、25℃、1気圧および1分間の条件で、アルミニウムの1グラムあたり少なくとも1100mLである、請求項6に記載のガルバニック金属マイクロ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互参照]
本特許出願は、2017年7月24日に出願された米国仮特許出願番号62/536,143タイトル「水素生成のためのアルミニウム基ナノガルバニック合金」の仮出願の権利を主張するものである。すべての別紙および文書を含む上記仮特許出願の内容全体を参照により、本明細書に援用する。
【0002】
[政府の利益]
本文書で説明される実施形態は、その使用料を支払うことなく、米国政府により、または米国政府のために製造、使用および/またはライセンス付与される場合がある。
【0003】
[技術分野]
本実施形態は一般的に、水素ガス生成に有用なアルミニウム合金およびアルミニウム基マイクロ構造に関連する。
【背景技術】
【0004】
水素は単位質量あたりのエネルギー密度が最も高いものの1つで142MJ/kgであり、これは燃焼エネルギー39.4kWhに相当する。このように水素はエネルギー含量が高いため、動力生成に利用可能である。水素ガスは、自動車、家庭、携帯用動力源、および多くの軍事ならびに民間での用途に利用可能である。水素は以下のいずれかのプロセスで生成可能である: バイオマスガス化、バイオマス由来液体形成、天然ガス改質、石炭ガス化、熱化学水分解、電気分解、光生物学、微生物を用いるバイオマス変換(https://energy.gov/eere/fuelcells/hydrogen-production)。
【0005】
また、特定の化学化合物、金属および合金を特定の溶媒(メタノールや水など)と反応させて、水素を生成する方法もある。アルミニウムは以下の公式により、水と反応して水素ガスを発生させる。
【0006】
2Al+6H0=2Al(OH)+3H+熱
【0007】
2Al+4H0=2AlOOH+3H+熱
【0008】
2Al+3H0=Al+3H+熱
【0009】
ただし多くの場合、水素生成反応のためには溶媒が高温でなければならず、さらに水がアルカリ性(例:水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム)または酸性(例:塩酸および硝酸)であることが必要である。また、しばしば、触媒(例:高価なプラチナ、ガリウム金属および/または外部から印加される動力など)の利用が必要となる。さらには、毒性が高い化合物や溶媒が多く(メタノール、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムなど)、反応で副産物も生じる。
【0010】
特定の条件下でアルミニウムは、室温で水と反応して水素と無害な酸化/水酸化アルミニウム、またはそれらの複合体を生成することがよく知られている。この反応により、アルミニウム1kgあたり4.3kWhに相当する熱が放出される。アルミニウム1kgが水と反応して発生する水素は111gであり、これは燃焼エネルギー4.4kWhに相当する。したがって、アルミニウムと水の反応からはアルミニウム1kgあたり合計8.7kWhのエネルギーが放出され、複数の用途に利用可能である。水は大抵いずれの場所でも容易に入手可能であるため、多くの場合携帯不要であり、エネルギー密度に関するペナルティを回避できる。ただし携帯することが必要な場合は、アルミニウムと水1kgあたりの電位エネルギー総量は4.3kWhとなる。特定の用途(燃料電池用途など)では水の50%を回収可能であり、その場合に利用可能な電位エネルギー総量は5.8kWh/kgとなる。一般的に用いられる2大燃料であるガソリンおよびメタノールのエネルギー密度は、順に1kgあたり12.8kWhおよび5.5kWhである。アルミニウムの質量エネルギー密度(有水および/または無水)はメタノールと似ており、ガソリンの33%~66%である。特定の状況では、質量より容積エネルギー密度を検討することがより重要である。この点では、アルミニウムが非核燃料の中では容積エネルギー密度が最も高く、ガソリンの2倍以上およびメタノールの5倍以上である。水を利用可能な場合、アルミニウムは水素生成により動力を得る非常に好ましい選択肢である。必要な水の総量を検討する場合、アルミニウムの容積エネルギー密度はガソリンの65%である。ただし、燃料電池技術で水素を使用する場合は、水の50%を回収して利用可能である(すなわち半量の水が除去される)ため、エネルギー密度はガソリンのエネルギー密度とほぼ同等である。現在メタノールは、燃料電池の水素源の第一選択肢である。アルミニウムから生じる水素を、メタノールに置き換えることが可能である。すなわち本発明の目的は、アルミニウムと水または廃水、排水、尿などを含む水、ないしはその他の液体を利用して、水素ガスを生成することである。
【0011】
アルミニウムは水と反応して、加水分解反応により水素を生成する。ただしアルミニウム粉末の場合は、粒子が空気または水に接触して継続的に自由表面に不動態被膜が形成される際に、室温で即時酸化(この場合は不動態化と呼称)が起こる。この不動態被膜はさらなる水との反応を阻害し、さらなる加水分解が防止される。この酸化/不動態化を阻害できる機構が、溶媒、酸性および塩基性溶液、またはその他の上述の触媒を使用せずに、室温での水との反応を介して効果的に水素を生成させるための鍵である。
【0012】
米国特許番号9,011,572には、水素生成に利用可能なアルミニウムナノ粒子について記述されている。米国特許番号9,011,572は、アラン前駆体、AlHまたは(AlH、ないしは触媒がある場合のジメチルエチルアランなどのアラン複合体の分解から生成される、アルミニウムナノ粒子が記述されている。ナノ粒子は、アルミニウムナノ粒子の周りに有機被覆を形成する有機不動態剤が必要である。
【0013】
米国特許公開番号:US2008/0056986A1には、水中で酸化させて水素、酸化物成分の不動態表面被膜、および有効な量の水に対して実質的に不活性で酸化処理中に固体材料の不動態化を防止する不動態化防止剤を生成可能なアルミニウム-ガリウム混合ペレットの生成方法が記載されている。ガリウムは高価であり、アルミニウム-ガリウムのペレットは機械的に不安定であるため、従来の冶金および添加剤製造プロセスを利用する、機械的に安定した構造物(自爆ロボットおよびドローンなど)の大量生産には不向きである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】米国特許番号9,011,572
【文献】米国特許公開番号US2008/0056986A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、ガリウムを介在させる必要なく水素を生成可能なアルミニウム基複合材料を提供する。
【0016】
本発明の目的は、水と接触すると水素を生成可能、かつアラン前駆体または有機不動態剤を必要としないアルミニウム基複合材料の提供である。アルミニウム基複合材料は、価格が安めで作製が容易であることが望ましい。また、水素を発生させるが必ずしもナノ粒子サイズではないアルミニウム基複合材料を作製することが望ましい。ナノ粒子は取り扱いが困難であり、たとえば平均サイズが100nmを超える大きい粒子と比べて、安全ではないとみなされている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前述を考慮して、本発明の実施形態は、水またはその他の水性複合材料との接触により水素ガスを生成するアルミニウム、アルミニウム合金またはその他のアルミニウム基複合材料を形成する方法を提供するものであり、その方法は以下の工程を備える。アルミニウム、アルミニウム合金、その他のアルミニウム基複合材料の準備。二次金属、二次合金、その他の二次金属基複合材料の準備。アルミニウム、アルミニウム合金、その他のアルミニウム基複合材料および二次金属、合金、またはその他の金属基複合材料をミル加工による粉末作製。サイズが原子スケールからナノスケールまたはマイクロスケールの分散する二次金属、二次合金、その他の二次金属基複合材料の個別の粒子または亜粒子を持つアルミニウムの粒子または亜粒子からなるミル加工粉末複合材料の作製。
【0018】
特定の実施形態において、ミル加工はスズ(Sn)の延性・脆性遷移温度である13.2°C(286.2K)以下の温度で行われる。その他の実施形態において、ミル加工はスズ(Sn)の延性・脆性遷移温度を50°C下回る温度で行われる。特定のその他の実施形態において、ミル加工はスズ(Sn)の延性・脆性遷移温度を100°C下回る温度で行われる。その他の実施形態において、ミル加工はスズ(Sn)の延性・脆性遷移温度を150°C下回る温度で行われる。また、その他の実施形態において、ミル加工はスズ(Sn)の延性・脆性遷移温度を270°C下回る温度で行われる。その他の実施形態において、ミル加工はスズ(Sn)の延性・脆性遷移温度から25°C以内の温度で行われる。また、その他の実施形態において、ミル加工はスズ(Sn)の延性・脆性遷移温度を50°C下回る温度、またはスズ(Sn)の延性・脆性遷移温度から100°C以内で行われる、ないしはアルミニウム(Al)に脆化が生じる約+100°C~約-270°Cの温度範囲で行われる。特定の実施形態において、ミル加工は分散相または溶質がスズ(Sn)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、炭素(C)、またはこれらの混合物からなる、およびさらにその分散相または溶質に脆化が生じる、約+100°C~約-270°Cの温度範囲で行われる。一部の実施形態において、ミル加工は温度24°C未満の低温の液体か流体の下、または中、ないしは温度-75°C未満の極低温液体の下、または中で行われる。
【0019】
一部の実施形態において、ミル加工粉末複合材料は最低でも0.1原子パーセントのスズ(Sn)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、炭素(C)、またはこれらの混合物からなる。その他の実施形態において、ミル加工粉末複合材料は最低でも1原子パーセントのスズ(Sn)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、炭素(C)、またはこれらの混合物からなる。また、その他の実施形態において、ミル加工粉末複合材料は最低でも2.5原子パーセントのスズ(Sn)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、炭素(C)、またはこれらの混合物からなる。さらにまた、その他の実施形態において、ミル加工粉末複合材料は約0.1原子パーセントのスズと49.99原子パーセント以上のスズ(Sn)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、炭素(C)、またはこれらの混合物との間からなる。
【0020】
特定の実施形態において、ミル加工粉末複合材料は最低でも0.1原子パーセントのスズまたはビスマスないしはこれらの混合物からなる。特定のその他の実施形態において、ミル加工粉末複合材料は約1ミクロン~約10,000ミクロンの範囲の直径を持つ微細な微粉化粉末粒子からなる。その他の実施形態において、ミル加工粉末複合材料は約1ミクロン~約1000ミクロンの範囲の直径を持つ微細な微粉化粉末粒子からなる。またその他の実施形態においてミル加工粉末複合材料は、約10ナノメートル~約1000ナノメートルの範囲の直径を持つ微細な微粉化粉末粒子からなる。
【0021】
特定の実施形態において、同方法はさらに、ミル加工中に粉末がミリング容器に付着するのを防ぐための界面活性剤の添加を備える。特定の実施形態において、本発明は25°C(298K)および1atmのアルミニウムの理論的収量74%を超えて水素を生成する反応率を30秒以内に得られる、溶媒中またはマトリクス中の溶質の分散を提供する。特定の実施形態において、本発明は25°C(298K)および1atmのアルミニウムの理論的収量74%を超えて水素を生成する反応率を5分以内に得られる、溶媒中またはマトリクス中の溶質の分散も提供する。また、その他の実施形態において、本発明は25°C(298K)および1atmのアルミニウムの理論的収量74%を超えて水素を生成する反応率を50分以内に得られる、溶媒中またはマトリクス中の溶質の分散を提供する。さらにまた、その他の実施形態において、本発明は25°C(298K)および1atmのアルミニウムの理論的収量74%を超えて水素を生成する反応率を500分以内に得られる、溶媒中またはマトリクス中の溶質の分散を提供する。また、その他の実施形態において、本発明は25°C(298K)および1atmのアルミニウムの理論的収量74%を超えて水素を生成する反応率を5000分以内に得られる、溶媒中またはマトリクス中の溶質の分散を提供する。
【0022】
一部の実施形態において、同方法はさらに、ミル加工粉末複合材料の高密度構造への圧縮を含む。さらに、一部の実施形態において、同方法はタブレット、ロッド、ペレット、またはバルク部が水または水を含む液体に接触するとタブレット、ロッド、ペレット、またはバルク部が水素を発生させるタブレット、ロッド、ペレット、またはバルク部へのミル加工粉末複合材料の圧縮を含む。
【0023】
本発明はまた、以下を備えるガルバニック金属マイクロ構造も提供する。アルミニウム、アルミニウム合金、またはその他のアルミニウム基複合材料を備える陽極マトリクス。さらには、以下からなる群から選択される二次金属、二次合金、またはその他の二次金属基複合材料からなる陰極分散相。スズ(Sn)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、炭素(C)、およびこれらの混合物ならびに合金。その中で上述のガルバニック金属マイクロ構造が水、水溶液、またはその他の電解質に接触する場合に、上述の陰極分散相が陽極マトリクスとガルバニック結合を形成し、水素ガスを生成する。一部の実施形態において、陰極分散相は長さ1ミリメートル未満の離散粒子の集合体からなる。その他の実施形態において、陰極分散相は長さ1000ナノメートル未満の離散粒子の集合体からなる。また、その他の実施形態において、陰極分散相は長さ500ナノメートル未満、長さ200ナノメートル未満、100ナノメートル未満、または50ナノメートル未満の離散粒子の集合体からなる。
【0024】
特定の実施形態において、陰極分散相はスズ(Sn)を備える。特定のその他の実施形態において、陰極分散相は主にスズ(Sn)またはスズの合金からなる。一部の実施形態において、本発明のガルバニック金属マイクロ構造は、溶融紡糸、スプレー噴霧、不活性ガス凝縮、溶液析出、物理的気相成長法、または電着法により作製される。
【0025】
本発明は、水素生成の方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した、本発明のアルミニウム-スズ合金の反射電子(BSE)顕微鏡図である(暗い相は主にアルミニウムであり、明るい/鮮やかな相は主にスズである)
図2】本発明のアルミニウム-スズ合金内において異なるサイズおよび分散のスズの脈(細長いリボン状のスズ)が存在することを示す、もう1つのBSE顕微鏡図である。
図3】本発明のアルミニウム-スズ合金内で急速な水素生成をもたらす、ナノガルバニックマイクロ構造の図面である。
図4】本発明のアルミニウム-スズ合金内におけるマトリクスの結晶微粒子の分散図説である。
図5】本発明のアルミニウム-スズ合金内における結晶粒界に存在する大粒子の図説である。
図6】本発明のアルミニウム-スズ合金内におけるリボン状の脈の存在を示す図説である。
図7】本発明の3つの実施形態の水との反応率(アルミニウム1グラムにつき生成された水素の容積)を示すグラフである。
図8】本発明の別の実施形態における反応率を示すグラフである。
図9】本発明の別の2つの実施形態における反応率を示すグラフである。
図10】本発明の別の実施形態における反応率を示すグラフである。
図11】本発明のさらなる実施形態における反応率を示すグラフである。
図12】水の代わりに尿を使用する本発明の実施形態における反応率を示すグラフである。
図13】ある実施形態での水素の生成を説明するフローチャートである。
図14】ある実施形態でのナノガルバニックマイクロ構造の作製を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本文書の実施形態およびそれらのさまざまな特徴と有益な詳細を、付属図面で図説され、以下の説明で詳述されている非限定的実施形態を参照して、より完全に説明する。本文書の実施形態が不必要に曖昧になるのを避けるため、広く知られている成分および加工技術の説明は省略する。本文書で使用する実施例は、本文書の実施形態を実践する方法の理解を促し、さらには当業者が本書の実施形態を実践できるようにすることのみを意図している。したがって、実施例は本文書の実施形態の範囲を限定すると解釈されないものとする。
【0028】
本文書で使用される用語ナノスケールとは、粒子の直径が1000nm未満、また、好ましくは100nm未満、さらには10nm未満であることを意味する。マイクロスケールとは、粒子の直径が1000マイクロメートル未満、好ましくは100マイクロメートル未満、さらには10マイクロメートル未満であることを意味する。原子スケールとは、粒子の物理的寸法が特定元素の原子直径と同等の小ささで、かつ当該元素の個別の原子を数百含む粒子と同等の大きさであることを意味する。
【0029】
本文書で説明される実施形態は、水または排水、尿、池水などを含むがこれらに限定されない液体に接触すると水素ガスを生成する有用な複合材料を提供する。アルミニウム基合金は室温での水との反応によりガルバニックセルを形成し、水素を急速に生成できる。ガルバニック効果により継続的に新たな非酸化金属面が露出されるようになるため、さらなる加水分解が室温で可能となる。合金は主にアルミニウム、そしてスズ(Sn)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、炭素(C)、またはこれらの類縁体や混合物を含むがこれらに限定されないその他の金属からなる。
【0030】
特定の望ましい実施形態において、本発明は、たとえば粉末状の複合材料を水および/または水を含む液体と反応させて、外部から印加される動力なしで室温または高温で自発的、簡便かつ急速に水素を生成するための、ナノ構造のアルミニウム基合金を提供する。本発明の複合材料を燃料電池または水素内燃エンジンと組み合わせることで、同複合材料は電子機器、運搬用車両、および動力機構などを駆動させるための動力の容易な生成を可能とする。これは、軍事および民間用途のさまざまな製品およびサービスにとって有用である。急速な加圧を必要とする作動および推進システムにとっても有益である。したがって、本発明の複合材料と水または水をベースとする反応により得られる水素生成は、炭化水素燃料を置き換えるか、または補完することができる。
【0031】
本発明のナノガルバニック構造のアルミニウム基粒子材料作製方法は本文書で説明されており、アルミニウムおよびその他の任意金属の室温(好ましくは低温、およびより好ましくは極低温)での高エネルギーボールミル加工を含む。したがって、特定の実施形態において本発明の方法はアルミニウムのボールミル加工を次の温度で行う方法を含む:約30°C未満の温度、またさらに好ましくは約25°C未満の温度、またさらに好ましくは約20°C未満の温度、またさらに好ましくは約10°C未満の温度、またさらに好ましくは約5°C未満の温度、またさらに好ましくは約0°C未満の温度、またさらに好ましくは約-25°C未満の温度、またさらに好ましくは約-50°C未満の温度、またさらに好ましくは約-100°C未満の温度、またさらに好ましくは約-150°C未満の温度、またさらに好ましくは約-200°C未満の温度、またさらに好ましくは約-250°C未満の温度でのボールミル加工を含む。外部接続された動力供給なしの室温での水との加水分解反応により、低温でのアルミニウムおよびアルミニウム合金のミル加工は、水素を非常に急速に生成可能なナノガルバニック合金を作製できる。したがって、本発明の複合材料を作製する方法は、周囲温度から極低温への金属または金属粉末の冷却を粉末処理中に行うこと含む。これは、ミル加工装置またはミル加工装置チャンバーをクーラント液またはクーラント寒剤(液体窒素、液体酸素、液体アルゴン、液体ヘリウムなど)で冷却することで獲得可能である。
【0032】
アルミニウムは本質的に純アルミニウムであり(98原子パーセント以上のアルミニウム、好ましくは99原子パーセント以上のアルミニウム)、アルミニウム合金は好ましくは90原子パーセント以上のアルミニウム、より好ましくは70原子パーセント以上のアルミニウム、さらにより好ましくは50原子パーセント以上のアルミニウムを含むアルミニウムの合金であり、アルミニウム缶などのスクラップアルミニウムである。提唱されるアルミニウム合金の例はAl5056、および1000、2000、3000、5000、6000、7000シリーズのアルミニウム合金が含まれる。少なくとも99、98、95、90、および最低でも80原子パーセントのアルミニウムを含むアルミニウム合金が好ましい。スクラップアルミニウム粉末は、水と反応させると水素を生成するスクラップAl-Sn合金の作製に使用された。
【0033】
陽極としてアルミニウムを用いるナノガルバニックセルは、陰極として作用する別の金属、すなわちスズ(Sn)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、炭素(C)、またはこれらの類縁体ないしは混合物を含むがこれらに限定されない金属と結合させることが可能である。ガルバニック結合は、異なる腐食電位を持つ2つ異種金属の濃厚かつ密接な接触により起こる(1つは陽極として、もう1つは陰極として作用する)。ナノガルバニック効果により酸化被膜が分断され新たな金属面が急速に露出されるため、室温での加水分解反応がより進み水素生成が急速に加速する。
【0034】
ガルバニック腐食は、電解質が存在する状態で、2つの異種金属が互いに接触すると起き、ガルバニック結合を形成している。貴金属(ガルバニックシリーズではさらに陰極)は、還元反応が発生するために追加の表面積が提供される。これにより、卑金属(ガルバニックシリーズではさらに陽極)の酸化/腐食が進む。腐食の度合は2つの金属の接触面で最も高くなるが、実際の接触面から少し離れたところでも発生する。さらには、この場合のセル動態は、陰極の表面積が陽極と比較して狭い場合に高くなる。
【0035】
成分の一つとして50~99.9原子パーセント(at.%)のアルミニウム(Al)金属からなるナノ構造ナノガルバニック二元または高次合金が、非平衡プロセスによって処理された。その他の構成要素は、以下の元素のいずれまたは組み合わせであるが、それらに限定されない。スズ(Sn)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、炭素(C)、および当該構成要素が約0.1~約50原子パーセントであるこれらの混合物。
【0036】
ミル加工装置の例は、以下を含むがこれらに限定されない。ニュージャージー州エジソンSPEX Industriesのミルシリーズ、またはドイツZoz GmbHのミルシリーズ。比較的低エネルギーなタイプには、ドイツ・イダー-オーバーシュタインFritsch GmbHのPulverisette遊星型ボールミル、ドイツ・デュッセルドルフRetsch GmbHの遊星型ボールミルPMシリーズ、オハイオ州アクロンUnion Processの磨砕機タイプのミル、またはニュージャージー州クリフトンGlen Millsのジェットミル(Jet Mill)およびジャーミル(Jar Mill)などがある。比較的低エネルギーな提唱されるミル加工装置には、ドイツ・イダー-オーバーシュタインFritsch GmbHのPulverisette遊星型ボールミル、ドイツ・デュッセルドルフRetsch GmbHの遊星型ボールミルPMシリーズ、オハイオ州アクロンUnion Processの磨砕機タイプのミル、またはニュージャージー州クリフトンGlen Millsのジェットミル(Jet Mill)およびジャーミル(Jar Mill)などがある。バイアルやミル加工媒体への冷間圧接および付着を防止するため、ミル加工処理は液体窒素の温度で、および/または界面活性剤/添加剤を使用して行うことが可能である。提唱される添加剤および界面活性剤には、ステアリン酸、オレイン酸、オレイルアミン、バレリアン酸、オクタン酸、デカン酸、ウンデカン酸、パルミチン酸、エタノール、ヘキサン、ドデカン、およびその他の長鎖炭化水素化合物ならびにそれらの混合物が含まれるがこれらに限定されない。界面活性剤および添加剤は、金属粉末およびミル加工処理中のミル加工媒体やバイアルで使用可能である。特に周囲温度または室温でミル加工を行う場合は、界面活性剤は室温で固体または液体であることが好ましい。ミル加工ベイルおよび混合バイアルは、金属、セラミック、酸化物、およびそれらの複合体を含むがこれらに限定されない、硬質な耐水性素材で構成されていることが望ましい。
【0037】
本文書で説明する合金は、その独特な組成と合成法により、外部から印加される動力または文献で報告されているその他の触媒なしで、室温で水と反応させた場合の水素の生成率が最速であり、アルミニウム1グラムあたり約30秒で最大1000mlの水素を生成する。豊富に手に入り廉価である構成要素からなるこれらの安全な合金により、動力生成のため、およびその他のさまざまな軍事ならびに民間の用途のための簡便な水素の生産につながる。さらには反応が非常に広汎性であるため、加水分解反応が水を含むすべての液体およびOH(ヒドロキシル)基を含む化合物の多くで起こる。
【0038】
アルミニウムは空気または水と接触すると急速に酸化し、粒子の表面に酸化被膜が形成される。この酸化被膜は通常は水との反応を阻害する。反応を起こさせるには、酸化被膜を分断させることが必要である。アルミニウム合金とガリウムからなる不安定な酸化物を用いる現在の最新材料は、従来の溶融成形により生産される。これらの合金は非常に高価で、ガリウム金属の価格はアルミニウムの約100倍である。小さい結晶および/または小さい陽極または陰極分散により、効率的にナノガルバニック効果が起こり、酸化被膜が分断され新たな金属面が急速に露出されるため、前述の室温での加水分解反応がより速く進む。ただし、本発明は極低温でのボールミル加工によるナノ構造のアルミニウムをベースとするガルバニック合金の処理を通して、反応動態を獲得する。
【0039】
Al合金粉末は、純アルミニウムをスズ(Sn)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、炭素(C)を含むがこれらに限定されないその他の金属と共に、-100°Cおよび-196°Cなどの極低温で0.01~8時間ボールミル加工して生産される。純アルミニウムは、AA5056、AA5083などの市販アルミニウム合金で代替可能である。個別の粉末粒子サイズは、直径0.01μm~6mmの範囲にある。さらには、粉末を固めて成形体または機能部を形成することで水素生成率と産量を調節することが可能である。例えば、本発明の粉末を固めて、タブレット、ロッド、ペレット、バルク部を生産することが可能である。さらには、本発明の粉末をコンポーネントまたは部品の表面に被覆させることも可能である。提唱される工程には、金属射出成形、冷間および静水圧圧縮成形、レーザーおよび非レーザー技術を含む付加的製造技術、溶射およびコールドスプレーならびに積層摩擦かくはん溶接、粉末鍛造、高温圧縮、無加圧焼結、衝撃固化および通電焼結が含まれるがこれらに限定されない。
【0040】
ナノガルバニック構造のAl合金は室温で水と反応させた場合、アルミニウム1グラムあたり反応開始から30秒以内で最大1000mlの水素を生成し、3分以内に最大100%の理論的限界に達する。ただし、より高い、またはより低い反応率/水素収率が必要であるまたは有益である、その他の用途が存在する。添付のデータプロット(図7~12)を参照の上、反応時間に対応する一般的な水素生成量および率を確認のこと。いかなるアルミニウム基材料(例:スクラップアルミニウムなど)も、極低温での高エネルギーのボールミル加工によりスズ(Sn)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、炭素(C)、またはこれらの類縁体と合金にした場合、外部接続された動力なしで室温で水と反応すると水素を生成する。上述の元素の選定においては、アルミニウムと腐食性ガルバニック結合を形成する内在的な力を検討した。ボールミル加工中に炭素を合金に添加すると、界面活性剤とガルバニック結合の両方の点で水素生成率が高まる。さらには、本文書に記載のデータは開始点であり、組成および加工のパラメーターはある程度調整されているが、最適化はしておらず、特定の組成および加工(極低温ミル加工)の場合の水素生成率および量を最大化するため行われたものである。ただし、現在は1種類の合成法のみを進めている。界面活性剤および/または溶融紡糸やスプレー噴霧を活用する室温での大規模ボールミル加工など、その他の代替加工技術を利用して同種の特許可能な特性を持つナノガルバニック粉末を生産可能である。
【0041】
本発明をより理解しやすくするため、以下複数の実施例について言及を行う。これらは本発明の図説を意図するが、その範囲を制限するものではない。
【0042】
実施例1A-1K:極低温温度(-75℃~-270℃)での高エネルギーミル加工を用いるアルミニウム合金粉末金属の形成
アルミニウム合金AA5056およびスズ(Sn)からなる合金を、所望の原子パーセントの合金を作製するのに適した重量比の粉末をそれぞれ清浄な硬化鋼バイアルに投入することによって準備した。-140/+325メッシュのAA5056合金をValimet, Inc.(431 East Sperry Road, Stockton, CA 95206)から調達した。AA5056合金は、Al(バランス)、0.15%のCr、0.01%未満のCu、0.10%のFe、5.22%のMg、0.13%のMn、0.04%のSi、0.01%未満のZn、0.15%未満のその他の物質を含むと報告されている。SnはAlfa Aesarから調達し、純度98.5%、メッシュ-325(約45μm)であると報告されている。実施例1AにおけるAA5056:Snの質量比は7.5:1に維持された。このように、合成される合金はAA5056-2.97原子パーセントSnと同様の組成であろうと予測された。また、Al-x原子パーセントSn(x=1、2.97、3.7、4.5、5.7、7、20、順に実施例1Bから1Hまでに対応)の組成を持つ純アルミニウムとスズからなる合金を、所望の原子パーセントの合金を作製するのに適した重量比の粉末をそれぞれ清浄な硬化鋼バイアルに投入して準備した。AlはAlfa Aesarから調達し、純度99.5%、メッシュ-325(約45μm)であると報告されている。Al:Sn質量比は粉末の組成により、19:1~1:1とばらつきがあった。またΑΑ5056-ΒiおよびAl-Bi粉末を、所望の原子パーセントの合金を作製するのに適した重量比の粉末をそれぞれ清浄な硬化鋼バイアルに投入して準備した。Biは-325メッシュ(約45μm)であり、Alfa Aesarから調達し、純度99.5%であると報告されている。AA5056:BiおよびAl:Biの質量比は、両方とも4:1に維持された。このように、合成される合金はAA5056-3.1原子パーセントBiおよびAl-3.1原子パーセントBiと同様の組成であろうと予測された。さらには、AA5056-X原子パーセントSn-(3-x)原子パーセント)Bi(x=1.5、1.8、および2.25)合金も合成した(順に、実施例IIからIKまでに対応)。
【0043】
33個のステンレス鋼(440C)のボール(内17個は直径1/4インチ、残りの16個は直径5/16インチ)をミル加工媒体として8000D SPEXシェイカーミル内で使用した。特定の合金を成す構成元素(例:AA5056、Al、Sn、およびBi)の粉末塊10グラムを、5:1のボール-粉末質量(重量)比でミル加工した。提唱されるボール-粉末質量(重量)比の範囲は、5:1から約1:1以下であった。バイアルは主にアルゴン雰囲気(すなわち、O<1ppm)において密閉した。このミル加工手順により、ミクロン範囲(すなわち、直径1~10000ミクロン)の粒子からなる微細な微粉化粉末塊が得られた。ただし、粒子の内部構造、特に合金の作製を通してナノメートル(例:100ナノメートル未満)またはミクロン(例:100マイクロメートル未満)のサイズであるSn結晶または分散Sn粒子を伴うAlの結晶または亜結晶は、さらに微細な構造からなる。
【0044】
高エネルギーミル加工処理中は、金属粉末が極低温にされると構成要素が脆化する場合がある。一般的にすべての金属は、温度が下がると脆化する傾向がある。これは、金属の活動すべり系が原因である(転位およびそれらの力学的挙動を規律するその他の熱活性化プロセスに関連して、統計的に活性が低くなる)。脆化のタイプは、広く知られているフェライト鋼の延性脆性遷移(DTBT)で明確に実証される。低温加工、室温より少し低め(24°C)から-270°Cまでの温度範囲で行われる加工として定義される。本実施例で使用される低温ボールミル加工を利用して、粉末(AA5056、Al、Sn、およびBi)を低温に保ち、できる限り脆い状態にし続けて、粉末のミル加工媒体およびバイアル壁への付着を防止する、またはより正確には低減および最小限にする。低温ミル加工のもう1つ利点は、特定の金属または金属粉末が延性から脆性相へ、温度により誘発される結晶変態を経ることである。これは、同素変態としても知られている。たとえば、純スズは13.2°C(286.2K)以下に相当する温度で、銀色に光る延性金属同素体であるβ形態の白いスズから、ダイヤモンド立方晶構造を持つ脆性で非金属、かつa形態の灰色のスズに転移する。具体的には、この脆性変態により有用なミル加工動態が誘発され、AlにおけるSnの好ましい分散が生じる。これは他の方法では不可能である、および/または長さスケールを短くした分散ガルバニック結合(効果的な水素生成に必要なマイクロ構造ビルディングボックス)を生成するよう最適化すると思われる。
【0045】
本実施例において極低温は通常、約-150°C未満の温度と定義される。たとえば液体窒素の温度は最低-196°C(77K)であるため、そのような低温をもたらすのに用いられる可能性がある。液体窒素によるミル加工は、高エネルギーミル加工に設置できるよう、および液体窒素が流入/流出できるよう改良した厚手のナイロンスリーブ内に、密閉バイアルを配置することで可能となった。ミル加工開始前にバイアルは液体窒素の温度を冷却した。SPEXシェイカーミル内で約4時間、液体窒素の温度で機械的合金を行った。ボールミル加工完了後、合金したAA5056-Sn(またはAl-Sn)粉末をArグローブボックス内の鋼バイアルから取り出し、保管した。このミル加工により、ミクロン範囲(すなわち、直径1~10,000ミクロン)の粒子からなる微細な微粉化粉末塊が得られた。本実施例では4時間の極低温ミル加工を利用したが、水素を生成する粉末を合成できる時間範囲を定義するものではない。これは、ミル加工エネルギー、ボール-粉末比、および/またはその他のミル加工プロセスの一般的態様(複合材料を含む)についても同様である。
【0046】
実施例2:低温(24°C未満)で高エネルギーミル加工を用いるアルミニウム合金(AA5056)-SnおよびAl-Sn金属粉末の形成
本実施例では、アルミニウム合金AA5056とスズ(Sn)からなる合金を、AlおよびSnとともに、所望の原子パーセントの合金を作製するのに適した重量比の粉末をそれぞれ清浄な硬化鋼ミル加工ジャーに投入して準備した。AA5056とスズの粉末塊500gおよびAlとSnの粉末塊200gを、ステアリン酸1.25gおよび0.5gと共に10:1のボール-粉末質量(重量)比(すなわち、順にステンレス鋼(440C)ボールベアリング5000gおよび2000gを使用)でミル加工し、CM08およびCM02 Zozミル内でそれぞれミル加工媒体として使用した。実施例2でのAA5056:SnおよびAl:Sn質量比は、7.5:1に維持された。このように、合成される合金はAA 5056-2.97原子パーセントSnおよびAl-2.97原子パーセントSnと同様の組成であろうと予測された。
【0047】
本実施例における低温とは、室温より少し低め(24°C)からの温度範囲と定義される。冷温エチレングリコールを供給して、-20°Cまで冷却可能である。ミル加工ジャー(CM08ミルおよびCM02 Zozミルに対応する容量は順に8Lおよび2L)の周りのビルトイン冷却ジャケットを通してエチレングリコールを循環させて、低温ミル加工が可能であった。エチレングリコールは水冷器を使用して、継続的に冷却および循環させた。400RPMで最長11時間、ミル加工を行った。
【0048】
ステンレス鋼ミル加工ジャーは(主に)アルゴン雰囲気(すなわち、O<1ppm)において密閉した。ボールミル加工手順の完了後、合金した粉末を鋼容器からアルゴングローブボックスへと移し、粉末をその場所で保管した。このミル加工手順により、ミクロン範囲(すなわち、直径1~10,000ミクロン)の粒子からなる微細な微粉化粉末塊が得られた。ただし、粒子の内部構造はさらに微細な構造、具体的には個別のSn結晶、またはナノメートルまたはミクロンのサイズの分散したSn粒子を伴うAlの結晶または亜結晶からなる。
【0049】
実施例3室温(~24°C)で高エネルギーミル加工を用いるアルミニウム合金(AA5056)-SnおよびAl-Sn金属粉末の形成
本実施例では、AA5056-SnおよびAl-Sn粉末を、所望の原子パーセントの合金を作製するのに適した重量比の粉末をそれぞれ清浄な硬化鋼バイアルに投入して発明者が準備した。実施例3におけるAl:Sn質量比は7.5:1に維持された。また、0.15~0.5wt%のステアリン酸を添加した。このように、合成される合金はAl-2.97原子パーセントSnと同様の組成であろうと予測された。
【0050】
33個のステンレス鋼(440C)のボール(内17個は直径1/4インチ、残りの16個は直径5/16インチ)を、ミル加工媒体として8000D SPEXシェイカーミル内で使用した。AlおよびSnの粉末塊10グラムを、5:1のボール-粉末質量(重量)比でミル加工した。バイアルは主にアルゴン雰囲気(すなわち、O<1ppm)において密閉した。SPEX 8000シェイカーミルで最長6時間、機械的合金を行った。ボールミル加工手順の完了後、合金したAl-Sn粉末をアルゴングローブボックス内の鋼バイアルから取り出し、保管した。機械的ミル加工により、粒子サイズが1~10,000μmの粉末が得られた。
【0051】
結果:上述の実施例の一部で作製された複合材料の特性を、走査型電子顕微鏡を用いて明らかにした。後述の理論により拘束されることは望ましくないが、本発明の一部の複合材料の構造の水素生成に関する重要性を説明する。
【0052】
図1は、本発明(具体的には実施例2)に関連する、ナノガルバニック金属マイクロ構造の例の1つを走査型電子顕微鏡図を拡大したものである。図1および2の暗い相は主にAlであり、明るい/鮮やかな相は主にSnである。Snは主に個別の粒子および/または脈(細長いリボン状のSn)として存在し、サイズおよび分散にはばらつきがある。ガルバニック結合は、異なる腐食電位を持つ2つの異種金属(この場合はAlおよびSn)の濃厚かつ密接な接触により起こる(1つは陽極として、もう1つは陰極として作用する)。この場合は、Alが陽極でSnが陰極である。
【0053】
ガルバニック腐食は、電解質が存在する状態で、2つの異種金属が互いに接触すると起き、ガルバニック結合を形成している。貴金属(ガルバニックシリーズではさらに陰極)は、還元反応が発生するために追加の表面積が提供される。これにより、卑金属(ガルバニックシリーズではさらに陽極)の酸化/腐食が進む。腐食の度合は2つの金属の接触面で最も高くなるが、実際の接触面から少し離れたところでも発生する。さらには、セル動態は、陰極の表面積が陽極と比較して狭い場合に高くなる。
【0054】
図2は低倍率の走査型電子顕微鏡図で、図1のものよりナノガルバニックマイクロ構造をより肉眼的に見ることができる。本発明のナノガルバニックマイクロ構造は微結晶質と定義可能であり、そのマイクロ構造はナノサイズ(すなわち、約1、10、100nm)である。一部のマイクロ構造の態様は、超微粒な長さスケールである場合もある(100~1000nmの間の長さスケールとして定義)。また、一部のマイクロ構造の態様はさらに大きく、すなわち1000nmを超える長さスケールである可能性がある。マイクロ構造は相、すなわちマトリクス相と分散相からなり、これらは少なくとも上述の長さスケールの一部を有する。これらの相、すなわちマトリクス相と分散相は、溶媒および溶質種からなる。ここでの溶媒は主にAl、溶質種は主にSnである。ただし、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、炭素(C)、またはこれらの類縁体などのその他の元素は、その両方として作用可能である。この場合のマトリクス相は、主に溶媒Alを含む。ただし、マトリクス相はアルミニウムの固溶体およびその他の溶解した溶媒や溶質からなる場合がある。固溶体は、1つまたは複数の溶媒内に1つまたは複数の溶質がある固体相の溶液である。このような多成分系は、溶質または溶媒の添加により溶媒の結晶構造が変化せずに、無秩序分散原子(すなわち、単均一相の化学成分内に残っている無秩序固溶体)の形態で残っている場合は、化合物ではなく溶液とみなされる。逆に分散相は主に、マトリクス溶媒内で分散された溶質からなる。溶媒内の溶質原子の小集塊は核またはクラスタと呼ばれ、百から数百の原子を含み、通常は直径2~100nmである。より多くの原子が凝集して、集塊の直径が100nmを超えると粒子と呼ばれるようになる。これらの粒子のサイズは100nm~1mmである。本文書で記述される脈とは、主に上述の粒子より大きな溶質からなり、長さ10nmから最大10mmの、リボン状の粒子と定義される。このリボンはすべての三次元において有限次元を有す可能性があり、シートと呼ばれる場合もある。
【0055】
マトリクスは多結晶結晶構造からなり、同構造では結晶がナノ結晶(すなわち、約1、10、または100nm)または超微粒(100~1000nmの間の長さスケールとして定義)である可能性があり、またはさらに大きく、すなわち1000nmを超える長さスケールである可能性がある。結晶のセル構造は結晶粒界により分かれていることに注意されたい。また、より大きいリボンが多結晶結晶構造を含む場合もあり、同構造では結晶がナノ結晶(すなわち、約1、10、または100nm)または超微粒(100~1000nmの間の長さスケールとして定義)である可能性があり、またはさらに大きく、すなわち1000nmを超える長さスケールである可能性がある。
【0056】
結晶のサイズおよび分散相のサイズが小さくなるほど、ガルバニック反応度が高くなることに注意されたい。セル動態は、陰極の表面積が陽極と比較して狭い場合に高くなる。一般的に、マトリクス相と分散相の間の腐食電位差が大きいほど、ガルバニック反応度が高くなる。
【0057】
図3は、マトリクスを表す。これは、金属材料の媒質を形成する。これは例えば、AlまたはAl基合金の場合がある。完全な円形ではない(および実際のところ、よりランダムな多面形/セル構造の多角形)が、結晶は平均直径を有すると仮定される。直径約500nm以下のマトリクスの結晶は、通常は約10~200nmの範囲である。結晶粒界は、分かれている隣接結晶の接触面に生じる。
【0058】
分散金属粒子の集合体が、溶媒金属マトリクス内で溶質金属を形成した。分散溶質粒子は結晶内、および結晶粒界に沿って存在する。通常は平均直径は、20~500nmの範囲にある。ただし、上述の範囲より小さい、または大きい場合がある。さらには、少なくとも一部の分散粒子は、マトリクスの態様および/またはその他の効果的に含められた元素種などのさらなる元素を含む場合があり、具体的には酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、硫黄(S)、シリコン(Si)、ビスマス(Bi)、炭素(C)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、鉛(Pb)またはその他の元素(すなわち、周期表の残りの部分)などが挙げられる。さらに一部の例では、処理またはその他の原因により、粒子が溶質金属および少量の溶媒金属または合金(Alなど)を包含する場合がある。
【0059】
粒子はサイズを基に微粒子や大粒子、またはリボン状脈と特徴づけられる場合がある。微粒子の直径は、通常2~100nmである。微粒子は結晶および/または結晶粒界に存在し、図4および5にさらに示されている。大粒子はマトリクスの結晶の間に存在し、図5にさらに示されている。これらの粒子は化学的に、溶質金属が含まれる。これらの大粒子の直径は通常100nm以上で、最大1mmである。微粒子および大粒子の出現頻度は、溶質金属の濃度および処理の度合により異なる。リボン状脈溶質粒子は図6に示されており、サイズはあらゆる次元で10nm~10mmであり、上述の微溶質粒子および大溶質粒子と同様の組成を持つ。
【0060】
本発明の一部の実施例は、水素ガス生成のため水および尿と接触させて試験した。試験の結果は図7~12に記載されている。図13は、水素生成のためのメソッド100を説明するフローチャートであり、ステップ110にはマイクロ構造の提供が含まれ、ステップ120にはマイクロ構造と水、尿、その他の水溶液などの液体との接触が含まれ、ステップ130には複合材料に液体が接触する際に生成された水素ガスの取り込みおよび/または利用が含まれる。さらには、図14は、ナノガルバニックマイクロ構造作製のためのメソッド200を説明するフローチャートであり、ステップ210にはマトリクス相材料の提供が含まれ、ステップ220には分散相材料の提供が含まれ、ステップ230には、水、尿、またはその他の水溶液との接触時に水素を自発的に生成する材料を作製するための複合相のミル加工が含まれる。
【0061】
本発明の複合材料の作製に使用されうる処理技術には、ミル加工/機械加工(ボールミル加工、特に高エネルギーボールミル加工を含む)、溶融紡糸、スプレー噴霧、不活性ガス凝縮、溶液析出、物理的気相成長法、電着法が含まれるがこれらに限定されない。溶融紡糸は、リボン状材料を形成する。
【0062】
仕様において述べられる特許文献およびその他の出版物は、本発明に関連する当業者のレベルを示す。これらの文献および出版物は、各個別の文献または出版物が具体的かつ単独で参照されるかのように、同じ範囲への参照によりここに組み込まれる。
【0063】
前述の特定実施形態の説明は、本文書の実施形態の一般的性質をここに完全に明らかにしており、他者は現在の知識を適用し、一般的な概念から逸脱することなく、当該の特定実施形態をさまざまな用途向けに速やかに修正および/または適合させ、したがって当該の適合および修正は、開示された実施形態の同等の意味および範囲内で理解されるものとする、および理解されることが意図される。本文書で用いられる表現および用語は説明を目的とし、制限をかけるものではないと理解されるものとする。したがって、本文書の実施形態は推奨の実施形態の観点で説明されているが、当業者の認識では、本文書の実施形態は別記の請求項の精神と範囲内で修正しての実施が可能である。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
図14