(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】蓄電素子、蓄電素子の製造方法および蓄電素子の設計方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/131 20210101AFI20220112BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20220112BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20220112BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20220112BHJP
H01M 50/124 20210101ALI20220112BHJP
【FI】
H01M50/131
H01M10/04 Z
H01M10/058
H01M50/105
H01M50/124
(21)【出願番号】P 2020560845
(86)(22)【出願日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2020034304
(87)【国際公開番号】W WO2021049572
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2020-10-30
(31)【優先権主張番号】P 2019166442
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202304
【氏名又は名称】塙 和也
(72)【発明者】
【氏名】飯野 準也
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-007267(JP,A)
【文献】特開2004-071302(JP,A)
【文献】特公平04-051938(JP,B2)
【文献】国際公開第2015/141772(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/098545(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10
H01M 10/04
H01M 10/058
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電素子であって、
互いに対向して配置されるとともに、線状の溶着部において互いに溶着された第1外装材および第2外装材を含む外装体と、
前記溶着部によって区画された前記外装体の収容空間内に収容された電極体および電解液と、を備え、
前記第1外装材は、前記第2外装材の側に設けられた第1シーラント層を有し、
前記第2外装材は、前記第1外装材の側に設けられ、前記溶着部において第1シーラント層に溶着した第2シーラント層を有し、
前記溶着部の幅Wは、1mm以上10mm以下であり、
前記溶着部における前記第1シーラント層および前記第2シーラント層の合計厚みTA〔mm〕、前記溶着部以外における前記第1シーラント層および前記第2シーラント層の合計厚みTB〔mm〕、前記電解液の液量M〔g〕、並びに前記溶着部の長さL〔mm〕は、
2.94×L/M≦100×(TB-TA)/TB≦
10.29×L/M
という関係を満たす、蓄電素子。
【請求項2】
定置用の蓄電素子であって、
互いに対向して配置されるとともに、線状の溶着部において互いに溶着された第1外装材および第2外装材を含む外装体と、
前記溶着部によって区画された前記外装体の収容空間内に収容された電極体および電解液と、を備え、
前記第1外装材は、前記第2外装材の側に設けられた第1シーラント層を有し、
前記第2外装材は、前記第1外装材の側に設けられ、前記溶着部において第1シーラント層に溶着した第2シーラント層を有し、
前記溶着部の幅Wは、1mm以上10mm以下であり、
前記溶着部における前記第1シーラント層および前記第2シーラント層の合計厚みTA〔mm〕、前記溶着部以外における前記第1シーラント層および前記第2シーラント層の合計厚みTB〔mm〕、前記電解液の液量M〔g〕、並びに前記溶着部の長さL〔mm〕は、
2.88×L/M≦100×(TB-TA)/TB≦
10.07×L/M
という関係を満たす、蓄電素子。
【請求項3】
前記溶着部における前記第1シーラント層および前記第2シーラント層の合計厚みTA並びに前記溶着部以外における前記第1シーラント層および前記第2シーラント層の合計厚みTBは、
20≦100×(TB-TA)/TB≦70
という関係を満たす、請求項1または2に記載の蓄電素子。
【請求項4】
互いに対向して配置されるとともに、線状の溶着部において互いに溶着された第1外装材および第2外装材を含む外装体と、
前記溶着部によって区画された前記外装体の収容空間内に収容された電極体および電解液と、を備え、
前記第1外装材は、前記第2外装材の側に設けられた第1シーラント層を有し、
前記第2外装材は、前記第1外装材の側に設けられ、前記溶着部において前記第1シーラント層に溶着した第2シーラント層を有する、蓄電素子の設計方法であって、
前記電解液の液量M〔g〕および前記溶着部の長さL〔mm〕を決定する工程と、
前記第1シーラント層および前記第2シーラント層を前記溶着部で溶着する際における前記第1シーラント層および前記第2シーラント層の圧縮率α〔%〕を、前記電解液の液量M〔g〕および前記溶着部の長さL〔mm〕に基づいて決定する工程と、を備え、
前記溶着部の幅Wは、1mm以上10mm以下であり、
前記圧縮率α〔%〕は、溶着後における前記第1シーラント層および前記第2シーラント層の合計厚みTA〔mm〕と、溶着前における前記第1シーラント層および前記第2シーラント層の合計厚みTB〔mm〕と、を用いて以下の式で表され
、
α=100×(TB-TA)/TB
前記蓄電素子が車載用の場合、
前記圧縮率αは、
2.94×L/M≦α≦10.29×L/M
という関係を満たすように決定される、蓄電素子の設計方法。
【請求項5】
互いに対向して配置されるとともに、線状の溶着部において互いに溶着された第1外装材および第2外装材を含む外装体と、
前記溶着部によって区画された前記外装体の収容空間内に収容された電極体および電解液と、を備え、
前記第1外装材は、前記第2外装材の側に設けられた第1シーラント層を有し、
前記第2外装材は、前記第1外装材の側に設けられ、前記溶着部において前記第1シーラント層に溶着した第2シーラント層を有する、蓄電素子の設計方法であって、
前記電解液の液量M〔g〕および前記溶着部の長さL〔mm〕を決定する工程と、
前記第1シーラント層および前記第2シーラント層を前記溶着部で溶着する際における前記第1シーラント層および前記第2シーラント層の圧縮率α〔%〕を、前記電解液の液量M〔g〕および前記溶着部の長さL〔mm〕に基づいて決定する工程と、を備え、
前記溶着部の幅Wは、1mm以上10mm以下であり、
前記圧縮率α〔%〕は、溶着後における前記第1シーラント層および前記第2シーラント層の合計厚みTA〔mm〕と、溶着前における前記第1シーラント層および前記第2シーラント層の合計厚みTB〔mm〕と、を用いて以下の式で表され、
α=100×(TB-TA)/TB
前記蓄電素子が定置用の場合、
前記圧縮率αは、
2.88×L/M≦α≦10.07×L/M
という関係を満たすように決定される、蓄電素子の設計方法。
【請求項6】
前記圧縮率αは、前記電解液の液量Mの増加にともなって小さくなるように決定される、請求項4または5に記載の蓄電素子の設計方法。
【請求項7】
前記圧縮率αは、前記電解液の液量Mに反比例するように決定される、請求項4乃至6のいずれか一項に記載の蓄電素子の設計方法。
【請求項8】
互いに対向して配置されるとともに、線状の溶着部において互いに溶着された第1外装材および第2外装材を含む外装体と、
前記溶着部によって区画された前記外装体の収容空間内に収容された電極体および電解液と、を備え、
前記第1外装材は、前記第2外装材の側に設けられた第1シーラント層を有し、
前記第2外装材は、前記第1外装材の側に設けられ、前記溶着部において前記第1シーラント層に溶着した第2シーラント層を有する、蓄電素子の設計方法であって、
前記電解液の液量M〔g〕および前記溶着部の長さL〔mm〕を決定する工程と、
前記第1シーラント層および前記第2シーラント層を前記溶着部で溶着する際における前記第1シーラント層および前記第2シーラント層の圧縮率α〔%〕を、前記電解液の液量M〔g〕および前記溶着部の長さL〔mm〕に基づいて決定する工程と、を備え、
前記溶着部の幅Wは、1mm以上10mm以下であり、
前記圧縮率α〔%〕は、溶着後における前記第1シーラント層および前記第2シーラント層の合計厚みTA〔mm〕と、溶着前における前記第1シーラント層および前記第2シーラント層の合計厚みTB〔mm〕と、を用いて以下の式で表され、
α=100×(TB-TA)/TB
前記圧縮率αは、前記電解液の液量Mの増加にともなって小さくなるように決定される、蓄電素子の設計方法。
【請求項9】
互いに対向して配置されるとともに、線状の溶着部において互いに溶着された第1外装材および第2外装材を含む外装体と、
前記溶着部によって区画された前記外装体の収容空間内に収容された電極体および電解液と、を備え、
前記第1外装材は、前記第2外装材の側に設けられた第1シーラント層を有し、
前記第2外装材は、前記第1外装材の側に設けられ、前記溶着部において前記第1シーラント層に溶着した第2シーラント層を有する、蓄電素子の設計方法であって、
前記電解液の液量M〔g〕および前記溶着部の長さL〔mm〕を決定する工程と、
前記第1シーラント層および前記第2シーラント層を前記溶着部で溶着する際における前記第1シーラント層および前記第2シーラント層の圧縮率α〔%〕を、前記電解液の液量M〔g〕および前記溶着部の長さL〔mm〕に基づいて決定する工程と、を備え、
前記溶着部の幅Wは、1mm以上10mm以下であり、
前記圧縮率α〔%〕は、溶着後における前記第1シーラント層および前記第2シーラント層の合計厚みTA〔mm〕と、溶着前における前記第1シーラント層および前記第2シーラント層の合計厚みTB〔mm〕と、を用いて以下の式で表され、
α=100×(TB-TA)/TB
前記圧縮率αは、前記電解液の液量Mに反比例するように決定される、蓄電素子の設計方法。
【請求項10】
前記圧縮率αは、
20≦α≦70
という関係を満たすように決定される、請求項4乃至9のいずれか一項に記載の蓄電素子の設計方法。
【請求項11】
前記圧縮率αは、前記溶着部の長さLの増加にともなって大きくなるように決定される、請求項4
乃至10のいずれか一項に記載の蓄電素子の設計方法。
【請求項12】
前記圧縮率αは、前記溶着部の長さLに比例するように決定される、請求項4
乃至11のいずれか一項に記載の蓄電素子の設計方法。
【請求項13】
蓄電素子の製造方法であって、
第1外装材の第1シーラント層と第2外装材の第2シーラント層とが互いに向かい合うようにして前記第1外装材および前記第2外装材を対向して配置する工程と、
前記第1シーラント層および前記第2シーラント層を線状の溶着部で互いに溶着することによって、前記第1外装材および前記第2外装材の間の収容空間内に電極体および電解液を密封する工程と、を備え、
前記第1シーラント層および前記第2シーラント層を前記溶着部で溶着する際における前記第1シーラント層および前記第2シーラント層の圧縮率α〔%〕は、請求項4乃至
12のいずれか一項に記載の蓄電素子の設計方法によって決定される、蓄電素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子、蓄電素子の製造方法および蓄電素子の設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電素子として、例えば特許文献1で提案されているように、正極と負極とを交互に積層してなる積層型電池や巻回型電池が広く普及している。このような積層型電池の一例として、リチウムイオン二次電池が挙げられる。リチウムイオン二次電池は、他の形式の積層型電池と比較して大容量であることを特徴の一つとしている。このような特徴を有するリチウムイオン二次電池は、今般、車載用途や定置住宅用途等の種々の用途での更なる普及を期待されている。
【0003】
リチウムイオン二次電池に代表される積層型電池では、正極と負極とが積層方向に交互に積層された電極体とともに、電解液が外装体内に収容されている。また、積層型電池では、正極および負極を有する電極体から電力を取り出すため、正極および負極のうち電極活物質層が設けられていない領域において正極および負極がそれぞれ別個に集電しており、集電されたそれぞれの電極の電極集電体にタブが取り付けられている。電極体は、それぞれの電極に取り付けられたタブが外部に延び出た状態で、外装体に収容される。このような外装体は、それぞれシーラント層を有する2つの外装材のシーラント層同士を接合することで形成される。
【0004】
ところで、積層型電池では、2つの外装体を互いに接合した接合部から、内部に水が侵入してしまう場合がある。この場合、侵入した水が電気分解され、水素ガスやフッ化水素を発生させてしまう可能性がある。また、積層型電池の内部でフッ化水素が発生した場合、タブが腐食されてしまうおそれがある。タブが腐食された場合、タブとシーラント層との間から、電解液が漏れ出してしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【0006】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、性能および信頼性に優れた蓄電素子、蓄電素子の製造方法および蓄電素子の設計方法を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【0007】
本発明の蓄電素子は、
蓄電素子であって、
互いに対向して配置されるとともに、線状の溶着部において互いに溶着された第1外装材および第2外装材を含む外装体と、
前記溶着部によって区画された前記外装体の収容空間内に収容された電極体および電解液と、を備え、
前記第1外装材は、前記第2外装材の側に設けられた第1シーラント層を有し、
前記第2外装材は、前記第1外装材の側に設けられ、前記溶着部において第1シーラント層に溶着した第2シーラント層を有し、
前記溶着部の幅Wは、1mm以上10mm以下であり、
前記溶着部における前記第1シーラント層および前記第2シーラント層の合計厚みTA〔mm〕、前記溶着部以外における前記第1シーラント層および前記第2シーラント層の合計厚みTB〔mm〕、前記電解液の液量M〔g〕、並びに前記溶着部の長さL〔mm〕は、
2.94×L/M≦100×(TB-TA)/TB≦10.29×L/M
という関係を満たす、蓄電素子である。
【0008】
本発明の蓄電素子は、
定置用の蓄電素子であって、
互いに対向して配置されるとともに、線状の溶着部において互いに溶着された第1外装材および第2外装材を含む外装体と、
前記溶着部によって区画された前記外装体の収容空間内に収容された電極体および電解液と、を備え、
前記第1外装材は、前記第2外装材の側に設けられた第1シーラント層を有し、
前記第2外装材は、前記第1外装材の側に設けられ、前記溶着部において第1シーラント層に溶着した第2シーラント層を有し、
前記溶着部の幅Wは、1mm以上10mm以下であり、
前記溶着部における前記第1シーラント層および前記第2シーラント層の合計厚みTA〔mm〕、前記溶着部以外における前記第1シーラント層および前記第2シーラント層の合計厚みTB〔mm〕、前記電解液の液量M〔g〕、並びに前記溶着部の長さL〔mm〕は、
2.88×L/M≦100×(TB-TA)/TB≦10.07×L/M
という関係を満たす、蓄電素子である。
【0009】
本発明の蓄電素子において、
前記溶着部における前記第1シーラント層および前記第2シーラント層の合計厚みTA並びに前記溶着部以外における前記第1シーラント層および前記第2シーラント層の合計厚みTBは、
20≦100×(TB-TA)/TB≦70
という関係を満たしていてもよい。
【0010】
本発明の蓄電素子の設計方法は、
互いに対向して配置されるとともに、線状の溶着部において互いに溶着された第1外装材および第2外装材を含む外装体と、
前記溶着部によって区画された前記外装体の収容空間内に収容された電極体および電解液と、を備え、
前記第1外装材は、前記第2外装材の側に設けられた第1シーラント層を有し、
前記第2外装材は、前記第1外装材の側に設けられ、前記溶着部において前記第1シーラント層に溶着した第2シーラント層を有する、蓄電素子の設計方法であって、
前記電解液の液量M〔g〕および前記溶着部の長さL〔mm〕を決定する工程と、
前記第1シーラント層および前記第2シーラント層を前記溶着部で溶着する際における前記第1シーラント層および前記第2シーラント層の圧縮率α〔%〕を、前記電解液の液量M〔g〕および前記溶着部の長さL〔mm〕に基づいて決定する工程と、を備え、
前記溶着部の幅Wは、1mm以上10mm以下であり、
前記圧縮率α〔%〕は、溶着後における前記第1シーラント層および前記第2シーラント層の合計厚みTA〔mm〕と、溶着前における前記第1シーラント層および前記第2シーラント層の合計厚みTB〔mm〕と、を用いて以下の式で表される、蓄電素子の設計方法である。
α=100×(TB-TA)/TB
【0011】
本発明の蓄電素子の設計方法において、
前記圧縮率αは、前記溶着部の長さLの増加にともなって大きくなるように決定されてもよい。
【0012】
本発明の蓄電素子の設計方法において、
前記圧縮率αは、前記溶着部の長さLに比例するように決定されてもよい。
【0013】
本発明の蓄電素子の設計方法において、
前記圧縮率αは、前記電解液の液量Mの増加にともなって小さくなるように決定されてもよい。
【0014】
本発明の蓄電素子の設計方法において、
前記圧縮率αは、前記電解液の液量Mに反比例するように決定されてもよい。
【0015】
本発明の蓄電素子の設計方法において、
前記電解液の液量M、前記溶着部の長さLおよび前記圧縮率αは、
2.94×L/M≦α≦10.29×L/M
という関係を満たすように決定されてもよい。
【0016】
本発明の蓄電素子の設計方法において、
前記蓄電素子の用途を決定する工程を更に備え、
前記蓄電素子が定置用の場合、
前記電解液の液量M、前記溶着部の長さLおよび前記圧縮率αは、
2.88×L/M≦α≦10.07×L/M
という関係を満たすように決定されてもよい。
【0017】
本発明の蓄電素子の設計方法において、
前記圧縮率αは、
20≦α≦70
という関係を満たすように決定されてもよい。
【0018】
本発明の蓄電素子の製造方法は、
第1外装材の第1シーラント層と第2外装材の第2シーラント層とが互いに向かい合うようにして前記第1外装材および前記第2外装材を対向して配置する工程と、
前記第1シーラント層および前記第2シーラント層を線状の溶着部で互いに溶着することによって、前記第1外装材および前記第2外装材の間の収容空間内に電極体および電解液を密封する工程と、を備え、
前記第1シーラント層および前記第2シーラント層を前記溶着部で溶着する際における前記第1シーラント層および前記第2シーラント層の圧縮率α〔%〕は、本発明による蓄電素子の設計方法によって決定される、蓄電素子の製造方法である。
【0019】
本発明によれば、性能および信頼性に優れた蓄電素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態を説明するための図であって、蓄電素子を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の蓄電素子の内部を外装体や絶縁シート等を除去して示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3のIV-IV線に沿った断面を示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図3のV-V線に沿った断面を示す断面図である。
【
図6】
図6は、蓄電素子の一変形例を示す平面図である。
【
図7】
図7は、蓄電素子の設計方法を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、
図4に対応する図であって、蓄電素子の製造方法の一具体例を説明するための断面図である。
【
図9】
図9は、
図4に対応する図であって、蓄電素子の製造方法の一具体例を説明するための断面図である。
【
図10】
図10は、
図5に対応する図であって、蓄電素子の製造方法の一具体例を説明するための断面図である。
【
図11】
図11は、
図5に対応する図であって、蓄電素子の製造方法の一具体例を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0022】
なお、本明細書において、「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。
【0023】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0024】
図1乃至
図11は、本発明による蓄電素子、蓄電素子の製造方法および蓄電素子の設計方法の一実施の形態を説明するための図である。なお、本明細書中「定置用」とは、定置住宅等に設置されるものを意味する。また、本明細書中「車載用」とは、自動車等に搭載されるものを意味する。さらに、特に断りがない限り、本明細書中「蓄電素子」とは、「定置用の蓄電素子」または「車載用の蓄電素子」に限定されないものとする。
【0025】
以下に説明する一実施の形態において、蓄電素子1は、外装体7と、後述する溶着部80によって区画された外装体7の収容空間7a内に収容された電極体5および電解液と、電極体5に接続されて外装体7の内部から外部へと延び出したタブ6と、を備えている。このうち電極体5は、第1電極10と、第1電極10と第1方向d1に交互に積層された第2電極20とを備えている。電極体5は、第1電極10および第2電極20を、それぞれ複数備えている。
図1に示された例において、蓄電素子1は、全体的に厚さ方向である第1方向d1が薄い偏平形状を有しており、長手方向となる第2方向d2と短手方向(幅方向)となる第3方向d3とに広がっている。第1方向d1、第2方向d2および第3方向d3は、互いに非平行であり、図示された例では、第1方向d1、第2方向d2および第3方向d3は、互いに直交している。
【0026】
以下において、蓄電素子1が積層型電池、具体的にはリチウムイオン二次電池である例について説明する。この例において、第1電極10は正極10Xを構成し、第2電極20は負極20Yを構成するものとする。ただし、以下に説明する作用効果の記載からも理解され得るように、ここで説明する一実施の形態は、リチウムイオン二次電池に限定されることなく、第1電極10および第2電極20を第1方向d1に交互に積層してなる蓄電素子1に広く適用され得る。また、蓄電素子1は積層型電池に限らず、例えば巻回型電池であってもよい。蓄電素子1が巻回型電池である場合でも、第1電極10および第2電極20が第1方向d1に積層される。
【0027】
(蓄電素子)
以下、蓄電素子1の各構成要素について説明する。
【0028】
まず、電極体5について説明する。
図2乃至
図4に示すように、電極体5は、正極10X(第1電極10)と、負極20Y(第2電極20)と、第1方向d1に隣り合う正極10Xおよび負極20Yの間に配置された絶縁シート30(
図3および
図4参照)と、を備えている。
図2に示すように、正極10Xおよび負極20Yは、第1方向d1に沿って交互に積層されている。電極体5は、電極を20以上含んでいてもよい。すなわち、電極体5は、正極10Xおよび負極20Yを、それぞれ10以上含んでいてもよい。電極体5の厚さ、すなわち第1方向d1に沿った長さは、例えば4mm以上20mm以下である。
【0029】
図2および
図3に示す非限定的な例において、正極10Xおよび負極20Yは、略長方形形状の外輪郭を有している板状の電極である。第1方向d1に非平行な第2方向d2が、正極10Xおよび負極20Yの長手方向であり、第1方向d1および第2方向d2の両方向に非平行な第3方向d3が、正極10Xおよび負極20Yの短手方向(幅方向)である。正極10Xおよび負極20Yは、第2方向d2にずらして配置されている。より具体的には、複数の正極10Xは、第2方向d2における一側に寄って配置され、複数の負極20Yは、第2方向d2における他側に寄って配置されている。正極10Xおよび負極20Yは、第2方向d2における中央において、第1方向d1に重なり合っている。
【0030】
図2および
図3に示すように、負極20Y(第2電極20)の第3方向d3に沿った長さは、正極10X(第1電極10)の第3方向d3に沿った長さよりも長くなっている。図示された例では、負極20Yは、正極10Xより、第3方向d3の一側および他側に延び出ている。正極10Xおよび負極20Yの厚さ、すなわち第1方向d1の長さは、例えば80μm以上200μm以下であり、長手方向、すなわち第2方向d2に沿った長さは、例えば200mm以上950mm以下であり、短手方向、すなわち第3方向d3に沿った長さ(幅)は、例えば70mm以上350mm以下である。
【0031】
図4に示すように、正極10X(第1電極10)は、正極集電体11X(第1電極集電体11)と、正極集電体11X上に設けられた正極活物質層12X(第1電極活物質層12)と、を有している。リチウムイオン二次電池において、正極10Xは、放電時にリチウムイオンを放出し、充電時にリチウムイオンを吸蔵する。
【0032】
正極集電体11Xは、互いに対向する第1面11aおよび第2面11bを主面として有している。正極活物質層12Xは、正極集電体11Xの第1面11aおよび第2面11bの少なくとも一方の面に積層されている。具体的には、正極集電体11Xの第1面11aまたは第2面11bが、電極体5のうちの第1方向d1における最外面を形成する場合、正極集電体11Xの当該面には正極活物質層12Xが設けられない。この正極集電体11Xの配置に関連した構成を除き、電極体5の複数の正極10Xは、正極集電体11Xの両側に設けられた一対の正極活物質層12Xを有し、互いに同一に構成され得る。
【0033】
正極集電体11Xおよび正極活物質層12Xは、蓄電素子1(リチウムイオン二次電池)に適用され得る種々の材料を用いて種々の製法により、作製され得る。一例として、正極集電体11Xは、アルミニウム箔によって形成され得る。正極活物質層12Xは、例えば、正極活物質、導電助剤、バインダーとなる結着剤を含んでいる。正極活物質層12Xは、正極活物質、導電助剤および結着剤を溶媒に分散させてなる正極用スラリーを、正極集電体11Xをなす材料上に塗工して固化させることで、作製され得る。正極活物質として、例えば、一般式LiMxOy(ただし、Mは金属であり、xおよびyは金属Mと酸素Oの組成比である)で表される金属酸リチウム化合物が用いられる。金属酸リチウム化合物の具体例として、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム等が例示され得る。導電助剤としては、アセチレンブラック等が用いられ得る。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン等が用いられ得る。
【0034】
図2乃至
図4に示すように、正極集電体11X(第1電極集電体11)は、第1端部領域a1(接続領域)および第1電極領域b1(有効領域)を有している。
図4に示すように、正極活物質層12X(第1電極活物質層12)は、正極集電体11Xの第1電極領域b1のみに積層されている。第1端部領域a1および第1電極領域b1は、第2方向d2に沿って互いに隣接するように配列されている。第1端部領域a1は、第1電極領域b1よりも第2方向d2における一側に位置している。複数の正極集電体11Xは、第1端部領域a1において、抵抗溶接や超音波溶接、テープによる貼着、融着等によって一つのタブ6に接合されている。図示された例では、複数の正極10Xの第1端部領域a1が、タブ6上に重ねられて、互いに電気的に接続している。一方、第1電極領域b1は、負極20Yの後述する負極活物質層22Yに対面する領域内に広がっている。このような第1電極領域b1の配置により、正極活物質層12Xからのリチウムの析出を防止することができる。
【0035】
次に、負極20Y(第2電極20)について説明する。負極20Y(第2電極20)は、負極集電体21Y(第2電極集電体21)と、負極集電体21Y上に設けられた負極活物質層22Y(第2電極活物質層22)と、を有している。リチウムイオン二次電池において、負極20Yは、放電時にリチウムイオンを吸蔵し、充電時にリチウムイオンを放出する。
【0036】
負極集電体21Yは、互いに対向する第1面21aおよび第2面21bを主面として有している。負極活物質層22Yは、負極集電体21Yの第1面21aおよび第2面21bの少なくとも一方の面に積層されている。電極体5の複数の負極20Yは、負極集電体21Yの両側に設けられた一対の負極活物質層22Yを有し、互いに同一に構成され得る。
【0037】
負極集電体21Yおよび負極活物質層22Yは、蓄電素子1(リチウムイオン二次電池)に適用され得る種々の材料を用いて種々の製法により、作製され得る。一例として、負極集電体21Yは、例えば銅箔によって形成される。負極活物質層22Yは、例えば、炭素材料からなる負極活物質、および、バインダーとして機能する結着剤を含んでいる。負極活物質層22Yは、例えば、炭素粉末や黒鉛粉末等からなる負極活物質とポリフッ化ビニリデンのような結着剤とを溶媒に分散させてなる負極用スラリーを、負極集電体21Yをなす材料上に塗工して固化することで、作製され得る。
【0038】
図2乃至
図4に示すように、負極集電体21Y(第2電極集電体21)は、第2端部領域a2(接続領域)および第2電極領域b2(有効領域)を有している。
図4に示すように、負極活物質層22Y(第2電極活物質層22)は、負極集電体21Yの第2電極領域b2のみに積層されている。第2端部領域a2および第2電極領域b2は、第2方向d2に沿って互いに隣接するように配列されている。第2端部領域a2は、第2電極領域b2よりも第2方向d2における他側に位置している。複数の負極集電体21Yは、第2端部領域a2において、抵抗溶接や超音波溶接、テープによる貼着、融着等によって一つのタブ6に接合されている。図示された例では、複数の負極20Yの第2端部領域a2が、正極集電体11Xが接合されたタブ6とは別のタブ6上に重ねられて、互いに電気的に接続している。一方、第2電極領域b2は、正極10Xの正極活物質層12Xに対面する領域に広がっている。
【0039】
次に、絶縁シート30について説明する。
図4に示すように、絶縁シート30は、正極10X(第1電極10)および負極20Y(第2電極20)の間に位置し、正極10Xおよび負極20Yが接触しないように、正極10Xおよび負極20Yを互いに離間させている。本実施の形態では、蓄電素子1は、絶縁シート30を複数備えている。絶縁シート30は、絶縁性を有しており、正極10Xおよび負極20Yの接触による短絡を防止する。また、絶縁シート30は、電極体5の上面5aおよび下面5bを画定している。
【0040】
また、絶縁シート30は、大きなイオン透過度(透気度)、所定の機械的強度、および、電解液、正極活物質、負極活物質等に対する耐久性を有していることが好ましい。このような絶縁シート30として、例えば、絶縁性の材料によって形成された多孔質体や不織布等を用いることができる。より具体的には、絶縁シート30として、融点が80~140℃程度の熱可塑性樹脂からなる多孔フィルムを用いることができる。熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系ポリマーを採用することができる。外装体7の収容空間7a内には、電極体5とともに電解液が封入される。電解液が、多孔質体や不織布からなる絶縁シート30に含浸することで、電極10,20の電極活物質層12,22に電解液が接触した状態に維持される。
【0041】
また、絶縁シート30は、活物質層22Y,12X上に塗工した電解液を活物質層22Y,12X上で固化又はゲル化させて形成されてもよい。電解液として、例えば、高分子マトリックスおよび非水電解質液(すなわち、非水溶媒および電解質塩)からなり、ゲル化されて表面に粘着性を生じるもの、或いは、高分子マトリックスおよび非水溶媒からなり、固体電解質となるものを用いることができる。この場合、絶縁シート30を作製するための具体的な材料は、特に制限はなく、これらを構成するために用いられている種々の材料(例えば、特開2012-190567号公報に開示された材料)を用いることができる。
【0042】
絶縁シート30は、例えば第1方向d1に隣り合う任意の二つの電極10,20の間に位置している。また、絶縁シート30は、平面視において、正極10Xの正極活物質層12Xの全領域を覆うように広がっている(
図3参照)。同様に、絶縁シート30は、平面視において、負極20Yの負極活物質層22Yの全領域を覆うように広がっている。さらに、
図3に示すように、絶縁シート30は、第3方向d3に沿った幅が、正極10Xおよび負極20Yの第3方向d3に沿った幅よりも広くなっている。
【0043】
次に、タブ6について説明する。タブ6は、蓄電素子1における端子として機能する。
図2乃至
図4に示すように、電極体5の正極10Xに一方のタブ6(第2方向d2の一側に位置するタブ6)が電気的に接続されている。同様に、電極体5の負極20Yに他方のタブ6(第2方向d2の他側に位置するタブ6)が電気的に接続されている。
図4に示すように、一対のタブ6は、外装体7の内部である収容空間7aから、外装体7の外部へと延び出している。タブ6の外装体7の外部に延びている長さは、例えば10mm以上25mm以下である。なお、外装体7とタブ6との間は、タブ6が延び出す領域において、図示しないシール部材を介して封止されている。
【0044】
タブ6は、アルミニウム、銅、ニッケル、ニッケルメッキ銅等を用いて形成され得る。タブ6の厚みは、例えば0.1mm以上1mm以下である。
【0045】
次に、外装体7について説明する。外装体7は、電極体5および電解液を収容して封止するための包装材である。ここで、蓄電素子1において、外装体7に収容される電解液の液量Mは、80g以上200g以下であってもよく、100g以上150g以下であることがより好ましい。また、蓄電素子1が定置用である場合、電解液の液量Mは、150g以上300g以下であってもよく、170g以上210g以下であることがより好ましい。電解液の液量Mが、80g以上または150g以上であることにより、収容空間7a内に水が侵入してフッ化水素が発生した場合であっても、電解液の液量Mに対する、発生したフッ化水素量の比(以下、フッ化水素比とも記す)を低減することができる。このため、フッ化水素による悪影響を低減することができる。また、電解液の液量Mが、80g以上または150g以上であることにより、蓄電素子1の長寿命化を図ることができる。また、電解液の液量Mが200g以下または300g以下であることにより、蓄電素子1の小型化を図ることができる。
【0046】
図4に示すように、外装体7は、互いに対向して配置されるとともに、線状の溶着部80において互いに溶着された第1外装材71および第2外装材72を含んでいる。また、各外装材71,72は、それぞれ金属層71a,72aと、金属層71a,72aに積層されたシーラント層(第1シーラント層、第2シーラント層)71b,72bと、を有している。金属層71a,72aは、高いガスバリア性と成形加工性を有することが好ましい。
【0047】
金属層71a,72aをなす材料としては、外部からの水分の侵入を防ぎつつ蓄電素子1の強度を向上させるものであれば特に限定されないが、水分遮断性と重量ならびにコストの面から公知の金属、金属酸化物、金属窒化物およびこれらの合金を用いることができ、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス等が好ましく、アルミニウムを特に好ましく用いることができる。蓄電素子1全体の強度が確保できるのであれば、金属箔の代わりに蒸着やスパッタリングなどにより金属層を設けても良い。金属層71a,72aの厚みは、それぞれ5μm以上200μm以下であってもよく、一例として、40μmであってもよい。なお、図示はしないが、金属層71a,72aの外面712,722側には、保護層が設けられていてもよい。この場合、保護層の材料としては、ポリエステルやポリアミド等を用いることができる。
【0048】
第1外装材71のシーラント層(第1シーラント層)71bは、金属層71aよりも第2外装材72の側に設けられている。また、第2外装材72のシーラント層(第2シーラント層)72bは、金属層72aよりも第1外装材71の側に設けられ、溶着部80においてシーラント層71bに溶着している。シーラント層71b,72bは、絶縁性を有しており、外装体7内に収容する電極体5と金属層71a,72aとの短絡を防止する。また、シーラント層71b,72bは、絶縁性に加えて、熱可塑性(接着性)を有している。第1外装材71および第2外装材72は、シーラント層71b,72bが互いに対面するようにして積層され、その周縁を互いに溶着されている。このようにして、線状の溶着部80が画定されている(
図3参照)。さらに、第1外装材71および第2外装材72の間に、電極体5の収容空間7aが形成される。
【0049】
外装体7は、電極体5および電解液をその内部に密閉する。シーラント層71b,72bは、電解液にも接触することから、耐薬品性を有していることが好ましい。このようなシーラント層71b,72bの材料として、ポリオレフィン系樹脂、具体的には、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、低密度ポリプロピレン、アイオノマー、エチレン・酢酸ビニルを用いることができる。溶着部80以外の領域におけるシーラント層71b,72bの厚みT1、T2(
図5参照)は、それぞれ10μm以上200μm以下であってもよく、一例として、80μmであってもよい。シーラント層71b,72bの厚みT1、T2が、それぞれ10μm以上であることにより、シーラント層71b、72b間の接合強度を向上させることができる。また、シーラント層71b,72bの厚みT1、T2が、それぞれ200μm以下であることにより、溶着部80において、水分の侵入経路の断面積のうち水分の侵入方向に直交する方向に沿った断面積を小さくすることができる。
【0050】
図示された例において、第1外装材71は、板状の部材として形成されている。一方、第2外装材72は、カップ状に形成されている。第2外装材72は、カップ状の膨出部73と、膨出部73に接続した鍔部74と、を有している。鍔部74は、膨出部73を周状に取り囲み、膨出部73の周縁と接続している。鍔部74は、第1外装材71と第2外装材72との間の収容空間7aを密閉するように、第1外装材71と接着している。膨出部73は、例えば絞り加工によって製造される。
【0051】
ただし、以上の例に限られず、
図6に示すように、外装体7は、一枚の外装材を折り返すことによって、形成されるようにしてもよい。この例において、外装体7は、折り返し部以外7bの縁部において、互いに対向する外装材を接着してなる溶着部80を有することになる。
【0052】
次に、
図3、
図5および
図6により、溶着部80について詳細に説明する。
【0053】
図3および
図6に示すように、溶着部80は、タブ6が収容空間7aから外装体7の外部へと延び出す一対の第1辺81と、一対の第1辺81間に延びる第2辺82とを有している。
図3に示す例においては、溶着部80は、2つの第2辺82を有しており、
図6に示す例においては、溶着部80は、1つの第2辺82を有している。一対の第1辺81は、それぞれ第3方向d3に沿って延びており、第2辺82は、第2方向d2に沿って延びている。
【0054】
蓄電素子1において、溶着部80の長さLは、700mm以上1000mm以下であってもよく、800mm以上900mm以下であることがより好ましい。また、蓄電素子1が定置用である場合、溶着部80の長さLは、1200mm以上1610mm以下であってもよく、1350mm以上1500mm以下であることがより好ましい。ここで、溶着部80の長さLは、外装体7が、線状の溶着部80において互いに溶着された第1外装材71および第2外装材72を含んでいる場合、
図3に示すように、蓄電素子1の長手方向となる第2方向d2に沿った溶着部80の長さL1と、蓄電素子1の短手方向(幅方向)となる第3方向d3に沿った溶着部80の長さL2とを用いて、次式で表される。
L=(L1+L2)×2 ・・・式(1)
一方、外装体7が、一枚の外装材を折り返すことによって形成されている場合、
図6に示すように、溶着部80の長さLは、蓄電素子1の長手方向となる第2方向d2に沿った溶着部80の長さL1と、蓄電素子1の短手方向(幅方向)となる第3方向d3に沿った溶着部80の長さL2とを用いて、次式で表される。
L=L1+L2×2 ・・・式(2)
このような溶着部80の長さLが、700mm以上または1200mm以上であることにより、蓄電素子1の大型化を図ることができる。また、溶着部80の長さLが1000mm以下または1610mm以下であることにより、溶着部80において、水分の侵入経路の断面積のうち水分の侵入方向に直交する方向に沿った断面積を小さくすることができ、外装体7内に水分が侵入することをより効果的に抑制することができる。
【0055】
また、
図5に示すように、溶着部80の幅(溶着部80の長手方向に直行する方向の長さ)Wは、1mm以上10mm以下となっている。また、蓄電素子1において、溶着部80の幅Wは、2mm以上9mm以下であってもよく、4mm以上8mm以下であることがより好ましい。また、蓄電素子1が定置用である場合においても、溶着部80の幅Wは、2mm以上9mm以下であってもよく、4mm以上8mm以下であることがより好ましい。溶着部80の幅Wが、2mm以上であることにより、外部から水分が侵入する場合の水分の侵入経路を長くすることができ、外装体7内に水分が侵入することを抑制することができる。また、溶着部80の幅Wが9mm以下であることにより、蓄電素子1の体積エネルギー密度を高くすることができる。ここで、体積エネルギー密度とは、蓄電素子1が占める体積あたりの当該蓄電素子1が供給可能な電力量のことを意味する。
【0056】
溶着部80におけるシーラント層(第1シーラント層)71bおよびシーラント層(第2シーラント層)72bの合計厚みTAは、溶着部80以外の領域におけるシーラント層(第1シーラント層)71bおよびシーラント層(第2シーラント層)72bの合計厚み(すなわち、溶着前におけるシーラント層(第1シーラント層)71bおよびシーラント層(第2シーラント層)72bの合計厚み)TBよりも薄くなっている。この場合、溶着部80におけるシーラント層71b、72bの合計厚みTAは、6μm以上320μm以下であってもよい。また、溶着部80以外の領域におけるシーラント層71b、72bの合計厚みTBは、20μm以上400μm以下であってもよい。
【0057】
この場合、溶着部80におけるシーラント層(第1シーラント層)71bおよびシーラント層(第2シーラント層)72bの圧縮率(以下、単に圧縮率とも記す)αは、20%以上70%以下であることが好ましい。ここで、圧縮率αは、合計厚みTAおよびTBを用いて、次式で表される。
α=100×(TB-TA)/TB ・・・式(3)
このため、圧縮率αが、20%以上70%以下である場合、溶着部80におけるシーラント層71b、72bの合計厚みTA、溶着部80以外におけるシーラント層71b、72bの合計厚みTB、電解液の液量M、および溶着部80の長さLが、
20≦100×(TB-TA)/TB≦70 ・・・式(4)
という関係を満たしている。
圧縮率αが20%以上であることにより、溶着部80において、水分の侵入経路の断面積のうち水分の侵入方向に直交する方向に沿った断面積を小さくすることができ、外装体7内に水分が侵入することをより効果的に抑制することができる。とりわけ、蓄電素子1が車載用である場合、振動等により、外装体7内に水分が侵入しやすくなる可能性がある。これに対して、圧縮率αが20%以上であることにより、外装体7内に水分が侵入することを効果的に抑制することができる。また、圧縮率αが70%以下であることにより、シーラント層71b、72b間の接合強度が低下してしまうことを抑制することができる。
【0058】
また、溶着部80のうち第1辺81および第2辺82における圧縮率αは、互いに異なっていてもよい。この場合、第1辺81における圧縮率αは、第2辺82における圧縮率αよりも大きいことが好ましい。上述したように、外装体7とタブ6との間は、タブ6が延び出す領域において、図示しないシール部材を介して封止されている。このため、第1辺81においては、第2辺82よりも水分の侵入経路の断面積が大きくなる傾向がある。このため、第1辺81における圧縮率αを、第2辺82における圧縮率αよりも大きくすることにより、外装体7内に水分が侵入することを更に効果的に抑制することができる。この場合、第1辺81における圧縮率αは、40%以上60%以下であることが好ましい。第1辺81における圧縮率αが40%以上であることにより、溶着部80の第1辺81において、水分の侵入経路の断面積のうち水分の侵入方向に直交する方向に沿った断面積を小さくすることができ、外装体7内に水分が侵入することをより効果的に抑制することができる。また、第1辺81における圧縮率αが60%以下であることにより、図示しないシール部材を介したシーラント層71b、72b間の接合強度が低下してしまうことを抑制することができる。
【0059】
また、蓄電素子1において、溶着部80におけるシーラント層71b、72bの合計厚みTA、溶着部80以外におけるシーラント層71b、72bの合計厚みTB、電解液の液量M、および溶着部80の長さLは、
2.94×L/M≦100×(TB-TA)/TB≦10.29×L/M
・・・式(5)
という関係を満たすことが好ましい。これにより、後述するように、外装体7内に侵入する水分量を少なくするとともに、フッ化水素比が増加することを抑制し、かつ、シーラント層71b、72b間の接合強度を向上させることができる。とりわけ、蓄電素子1が上述した式(5)を満たしていることにより、振動等により外装体7内に水分が侵入しやすくなり得る車載用の蓄電素子1において、外装体7内に侵入する水分量を少なくするとともに、フッ化水素比が増加することを抑制し、かつ、シーラント層71b、72b間の接合強度を向上させることができる。
【0060】
また、蓄電素子1が定置用である場合、溶着部80におけるシーラント層71b、72bの合計厚みTA、溶着部80以外におけるシーラント層71b、72bの合計厚みTB、電解液の液量M、および溶着部80の長さLは、
2.88×L/M≦100×(TB-TA)/TB≦10.07×L/M
・・・式(6)
という関係を満たすことが好ましい。これにより、後述するように、定置用の蓄電素子1において、外装体7内に侵入する水分量を少なくするとともに、フッ化水素比が増加することを抑制し、かつ、シーラント層71b、72b間の接合強度を向上させることができる。
【0061】
ところで、電解液の液量Mが少ないほど、収容空間7a内に水が侵入してフッ化水素が発生した場合に、フッ化水素比が増加する。言い換えれば、電解液の液量Mが多いほど、フッ化水素比が低下する。このため、電解液の液量Mが多いほど、フッ化水素による悪影響を低減することができる。本件発明者らが鋭意研究を重ねたところ、フッ化水素比は、電解液の液量Mにほぼ反比例し得ることを突き止めた。
【0062】
また、溶着部80の長さLが長いほど、溶着部80において、水分の侵入経路の断面積のうち水分の侵入方向に直交する方向に沿った断面積が大きくなり、外装体7内に侵入する水分量が多くなる。言い換えれば、溶着部80の長さLが短いほど、溶着部80において、水分の侵入経路の断面積のうち水分の侵入方向に直交する方向に沿った断面積が小さくなり、外装体7内に水分が侵入することを抑制できる。本件発明者らが鋭意研究を重ねたところ、外装体7内に侵入する水分量は、溶着部80の長さLにほぼ比例することが知見された。
【0063】
さらに、圧縮率αが小さいほど、溶着部80において、水分の侵入経路の断面積のうち水分の侵入方向に直交する方向に沿った断面積が大きくなり、外装体7内に侵入する水分量が多くなる。言い換えれば、圧縮率αが大きいほど、溶着部80において、水分の侵入経路の断面積のうち水分の侵入方向に直交する方向に沿った断面積が小さくなり、外装体7内に水分が侵入することを抑制できる。本件発明者らが鋭意研究を重ねたところ、外装体7内に侵入する水分量は、圧縮率αにほぼ反比例することが知見された。
【0064】
上述したように、フッ化水素比は、電解液の液量Mにほぼ反比例し得る。また、外装体7内に侵入する水分量は、溶着部80の長さLにほぼ比例する。さらに、外装体7内に侵入する水分量は、圧縮率αにほぼ反比例する。このため、例えば、電解液の液量Mを少なくした場合、フッ化水素比が増加し得るが、溶着部80の長さLを短くするとともに、圧縮率αを大きくすることにより、外装体7内に侵入する水分量を少なくすることができ、発生するフッ化水素量を低減することができる。この結果、フッ化水素による悪影響を低減することができる。一方、電解液の液量Mを多くした場合、フッ化水素比が低下するため、溶着部80の長さLを長くしてもよく、圧縮率αを小さくしてもよい。これにより、蓄電素子1の大型化を図ることができるとともに、シーラント層71b、72b間の接合強度が低下してしまうことを抑制することができる。
【0065】
また、例えば、溶着部80の長さLを長くした場合、外装体7内に侵入する水分量が多くなり得るが、圧縮率αを大きくすることにより、外装体7内に侵入する水分量を少なくすることができ、かつ、電解液の液量Mを多くすることにより、フッ化水素比が低下する。このため、フッ化水素による悪影響を低減することができる。一方、溶着部80の長さLを短くした場合、外装体7内に侵入する水分量を少なくすることができるため、圧縮率αを小さくしてもよく、電解液の液量Mを少なくしてもよい。これにより、シーラント層71b、72b間の接合強度が低下してしまうことを抑制することができるとともに、蓄電素子1の小型化を図ることができる。
【0066】
このように、本件発明者らは、電解液の液量Mおよび溶着部80の長さLに基づいて圧縮率αを決定することにより、所望の信頼性を有する蓄電素子1を得ることができることを見いだした。以下、本件発明者らの知見に基づいた蓄電素子1の設計方法について説明する。
【0067】
(蓄電素子の設計方法)
ここで説明する蓄電素子1の設計方法は、
・電解液の液量Mおよび溶着部80の長さLを決定する工程と、
・シーラント層(第1シーラント層)71bおよびシーラント層(第2シーラント層)72bを溶着部80で溶着する際におけるシーラント層71b、72bの圧縮率αを、電解液の液量Mおよび溶着部80の長さLに基づいて決定する工程とを備えている。
また、蓄電素子1の設計方法は、
・蓄電素子1の用途を決定する工程を更に備えていてもよい。
【0068】
蓄電素子1を設計する際、まず、
図7に示すように、蓄電素子1の用途を決定する(
図7の符号S1)。この際、例えば、蓄電素子1の用途を車載用と決定してもよく、あるいは定置用と決定してもよい。
【0069】
次に、電解液の液量Mおよび溶着部80の長さLを決定する(
図7の符号S2)。この際、例えば、蓄電素子1において、電解液の液量Mは、80g以上200g以下としてもよく、一例として、125gとしてもよい。また、蓄電素子1が定置用である場合、電解液の液量Mは、150g以上300g以下としてもよく、一例として、210gとしてもよい。
【0070】
また、蓄電素子1において、溶着部80の長さLは、700mm以上1000mm以下としてもよく、一例として、850mmとしてもよい。この場合、
図3に示すL1を300mmとし、L2を125mmとしてもよい。また、蓄電素子1が定置用である場合、溶着部80の長さLは、1200mm以上1610mm以下としてもよく、一例として、1460mmとしてもよい。この場合、
図3に示すL1を520mmとし、L2を210mmとしてもよい。
【0071】
次いで、シーラント層(第1シーラント層)71bおよびシーラント層(第2シーラント層)72bを溶着部80で溶着する際におけるシーラント層71b、72bの圧縮率αを、電解液の液量Mおよび溶着部80の長さLに基づいて決定する(
図7の符号S3)。このように、圧縮率αを、電解液の液量Mおよび溶着部80の長さLに基づいて決定することにより、電解液の液量Mを少なくして蓄電素子1の小型化を図った場合や、電解液の液量Mを多くして、蓄電素子1の長寿命化を図った場合、あるいは溶着部80の長さLを長くして蓄電素子1の大型化を図った場合や、溶着部80の長さLを短くして蓄電素子1の小型化を図った場合においても、外装体7内に侵入する水分量を少なくするとともに、シーラント層71b、72b間の接合強度を向上させることができる蓄電素子1を容易に得ることができる。
【0072】
この際、圧縮率αは、溶着部80の長さLの増加にともなって大きくなるように決定されてもよい。上述したように、溶着部80の長さLが長いほど、外装体7内に侵入する水分量が多くなる。一方、このように溶着部80の長さLを長くした場合であっても、溶着部80の長さLの増加にともなって圧縮率αを大きくすることにより、外装体7内に侵入する水分量を少なくすることができる。
【0073】
また、圧縮率αは、溶着部80の長さLに比例するように決定されることが好ましい。上述したように、外装体7内に侵入する水分量は、溶着部80の長さLにほぼ比例する。このため、圧縮率αを溶着部80の長さLに比例するように決定することで、外装体7内に侵入する水分量を少なくすることができる。言い換えれば、外装体7内に侵入する水分量のうち、溶着部80の長さLの増加にともなって増加する水分量を、圧縮率αを溶着部80の長さLに比例するように決定することで相殺することができる。
【0074】
また、圧縮率αは、電解液の液量Mの増加にともなって小さくなるように決定されてもよい。上述したように、電解液の液量Mが多いほど、フッ化水素比が低下する。これにより、電解液の液量Mが増加した場合には、圧縮率αを小さくした場合であっても、フッ化水素による悪影響を低減することができる。また、この場合、圧縮率αを小さくすることにより、シーラント層71b、72b間の接合強度を向上させることができる。
【0075】
また、圧縮率αは、電解液の液量Mに反比例するように決定されてもよい。上述したように、フッ化水素比は、電解液の液量Mにほぼ反比例し得る。このため、圧縮率αを電解液の液量Mに反比例するように決定することで、フッ化水素比が増加することを抑制することができるとともに、シーラント層71b、72b間の接合強度を向上させることができる。すなわち、電解液の液量Mを少なくした場合、フッ化水素比が増加し得るが、圧縮率αを大きくすることにより、外装体7内に侵入する水分量を少なくすることができ、発生するフッ化水素量を低減することができる。このため、フッ化水素比が増加することを抑制することができる。この結果、フッ化水素による悪影響を低減することができる。一方、電解液の液量Mを多くした場合、フッ化水素比が低下するため、圧縮率αを小さくした場合であっても、フッ化水素による悪影響を低減することができる。また、この場合、圧縮率αを小さくすることにより、シーラント層71b、72b間の接合強度を向上させることができる。
【0076】
また、圧縮率αは、
2.94×L/M≦α≦10.29×L/M ・・・式(7)
という関係を満たすように決定されることが好ましい。これにより、後述するように、外装体7内に侵入する水分量を少なくするとともに、フッ化水素比が増加することを抑制し、かつ、シーラント層71b、72b間の接合強度を向上させることができる。このため、所望の信頼性を有する蓄電素子1を設計することができる。とりわけ、蓄電素子1が上述した式(7)を満たしていることにより、振動等により外装体7内に水分が侵入しやすくなり得る車載用の蓄電素子1において、外装体7内に侵入する水分量を少なくするとともに、フッ化水素比が増加することを抑制し、かつ、シーラント層71b、72b間の接合強度を向上させることができる。このため、所望の信頼性を有する蓄電素子1を設計することができる。さらに、この場合、圧縮率αは、
20≦α≦70 ・・・式(8)
という関係を満たすように決定されることがより好ましい。
【0077】
また、蓄電素子1が定置用の場合、圧縮率αは、
2.88×L/M≦α≦10.07×L/M ・・・式(9)
という関係を満たすように決定されることが好ましい。これにより、後述するように、定置用の蓄電素子1において、外装体7内に侵入する水分量を少なくするとともに、フッ化水素比が増加することを抑制し、かつ、シーラント層71b、72b間の接合強度を向上させることができる。このため、所望の信頼性を有する蓄電素子1を設計することができる。さらに、この場合、圧縮率αは、上述した式(8)に示す関係を満たすように決定されることがより好ましい。
【0078】
ここで、上記式(7)および式(9)を導出する方法について説明する。
【0079】
上述したように、フッ化水素比は、電解液の液量Mにほぼ反比例し得る。また、外装体7内に侵入する水分量は、溶着部80の長さLにほぼ比例し、圧縮率αにほぼ反比例する。このため、本件発明者らは、外装体7内に侵入する水分量を少なくするとともに、フッ化水素比が増加することを抑制するためには、電解液の液量Mを多くするとともに圧縮率αを大きくし、溶着部80の長さLを短くすることが好ましいことを見いだした。具体的には、電解液の液量M、溶着部80の長さLおよび圧縮率αは、
K1≦(M×α)/L≦K2 ・・・式(10)
という関係を満たすことが好ましいことを見いだした。
ここで、K1、K2は定数である。
【0080】
また、本件発明者らが鋭意研究を重ねたところ、蓄電素子1において、電解液の液量Mが125g、溶着部80の長さLが850mm(L1=300mm、L2=125mm)、溶着部80の幅Wが1mm以上10mm以下である場合、20年後の水分侵入量を65ppm以下とするには、圧縮率αが20%以上であることが好ましいことが知見された。また、シーラント層71b、72b間の接合強度を向上させるためには、圧縮率αが70%以下であることが好ましいことが知見された。
【0081】
ここで、圧縮率αを20%として各数値を式(10)に代入した場合、定数K1は2.94となる。また、圧縮率αを70%として各数値を式(10)に代入した場合、定数K1は10.29となる。このようにして、上記式(7)が導き出される。このため、上記式(7)という関係を満たすように蓄電素子1を設計することにより、外装体7内に侵入する水分量を少なくするとともに、フッ化水素比が増加することを抑制し、かつ、シーラント層71b、72b間の接合強度を向上させることができる。
【0082】
また、本件発明者らが鋭意研究を重ねたところ、定置用の蓄電素子1では、電解液の液量Mが210g、溶着部80の長さLが1460mm(L1=520mm、L2=210mm)、溶着部80の幅Wが1mm以上10mm以下である場合、20年後の水分侵入量を65ppm以下とするには、圧縮率αが20%以上であることが好ましいことが知見された。また、シーラント層71b、72b間の接合強度を向上させるためには、圧縮率αが70%以下であることが好ましいことが知見された。
【0083】
ここで、圧縮率αを20%として各数値を式(10)に代入した場合、定置用の蓄電素子1における定数K1は2.88となる。また、圧縮率αを70%として各数値を式(10)に代入した場合、定置用の蓄電素子1における定数K1は10.07となる。このようにして、上記式(9)が導き出される。このため、上記式(9)という関係を満たすように定置用の蓄電素子1を設計することにより、外装体7内に侵入する水分量を少なくするとともに、フッ化水素比が増加することを抑制し、かつ、シーラント層71b、72b間の接合強度を向上させることができる。
【0084】
以上のようにして、電解液の液量Mおよび溶着部80の長さLに基づいて圧縮率αを決定することにより、所望の信頼性を有する蓄電素子1を設計することができる。
【0085】
(蓄電素子の製造方法)
次に、本実施の形態の蓄電素子1の製造方法の一例について、説明する。
【0086】
まず、電極体5を準備する。この際、まず、正極10X、負極20Yおよび絶縁シート30を作製する。正極10X、負極20Yおよび絶縁シート30は、上述した材料および製造方法により作製することができる。次に、
図8に示すように、作製された正極10Xと、負極20Yと、絶縁シート30とを、絶縁シート30が、第1方向d1に隣り合う正極10Xおよび負極20Yの間に配置されるように積層する。この場合、複数の絶縁シート30の各々が第1方向d1に隣り合う正極10Xおよび負極20Yの間に配置されるように積層される。このようにして、電極体5が得られる。
【0087】
次いで、
図9に示すように、複数の正極10Xの正極集電体11Xを互いに電気的に接続するとともに、さらにタブ6とも電気的に接続する。同様に、複数の負極20Yの負極集電体21Yを互いに電気的に接続するとともに、さらにタブ6とも電気的に接続する。
【0088】
また、電極体5を準備することと並行して、第1外装材71および第2外装材72を作製する。外装材71、72は、例えばアルミニウム箔からなる金属層71a、72aに、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレートからなるシーラント層71b、72bをラミネートすることで作製される。第1外装材71および第2外装材72は、平板状に形成される。第2外装材72には、例えば絞り加工によって、膨出部73が形成される。次に、第2外装材72の膨出部73内に電極体5を収容する。
【0089】
次に、
図10に示すように、第1外装材71のシーラント層(第1シーラント層)71bと第2外装材72のシーラント層(第2シーラント層)72bとが互いに向かい合うようにして第1外装材71および第2外装材72を対向して配置する。また、図示はしないが、各タブ6が第1外装材71と第2外装材72との間から延び出すようにする。
【0090】
次に、
図11に示すように、シーラント層(第1シーラント層)71bおよびシーラント層(第2シーラント層)72bを線状の溶着部80で互いに溶着することによって、第1外装材71および第2外装材72の間の収容空間7a内に電極体5および電解液を密封する。この際、まず、1方向において開口するように第1外装材71および第2外装材72を互いに接合する。具体的には、矩形となっている第1外装材71および第2外装材72の3辺を溶着する。その後、開口した方向から外装体7の内部に電解液を注入して、第1外装材71および第2外装材72の溶着されていない1辺を溶着する。第1外装材71と第2外装材72との接合は、例えば第1外装材71および第2外装材72を加熱・加圧することで溶着により接合する。この加熱・加圧は、例えば第1外装材71および第2外装材72を120℃以上200℃以下に加熱しながら、0.2MPa以上0.8MPa以下に加圧した状態を、1秒以上8秒以下維持することで行われる。例えば、第1外装材71および第2外装材72を180℃に加熱しながら、0.4MPaに加圧した状態を、4秒維持することで行われてもよい。
【0091】
この際、溶着部80の幅Wが1mm以上10mm以下となるように、シーラント層71b、72bを互いに溶着する。また、シーラント層(第1シーラント層)71bおよびシーラント層(第2シーラント層)72bを溶着部80で溶着する際におけるシーラント層71b、72bの圧縮率αは、上述した設計方法(
図7参照)によって決定される。具体的には、蓄電素子1において、圧縮率αは、
2.94×L/M≦α≦
10.29×L/M
という関係を満たすことが好ましい。
また、蓄電素子1が定置用である場合、圧縮率αは、
2.88×L/M≦α/TB≦
10.07×L/M
という関係を満たすことが好ましい。
【0092】
以上の工程により、蓄電素子1が製造される。
【0093】
以上のように、本実施の形態によれば、蓄電素子1において、溶着部80の幅Wが、1mm以上10mm以下であり、シーラント層71b、72bを溶着部80で溶着する際におけるシーラント層71b、72bの圧縮率αが、
2.94×L/M≦α≦10.29×L/M
という関係を満たしている。これにより、蓄電素子1において、外装体7内に侵入する水分量を少なくするとともに、フッ化水素比が増加することを抑制し、かつ、シーラント層71b、72b間の接合強度を向上させることができる。このため、所望の信頼性を有する蓄電素子1を得ることができる。
【0094】
また、本実施の形態によれば、定置用の蓄電素子1において、溶着部80の幅Wが、1mm以上10mm以下であり、シーラント層71b、72bを溶着部80で溶着する際におけるシーラント層71b、72bの圧縮率αが、
2.88×L/M≦α≦10.07×L/M
という関係を満たしている。これにより、定置用の蓄電素子1において、外装体7内に侵入する水分量を少なくするとともに、フッ化水素比が増加することを抑制し、かつ、シーラント層71b、72b間の接合強度を向上させることができる。このため、所望の信頼性を有する蓄電素子1を得ることができる。
【0095】
また、本実施の形態によれば、蓄電素子1の設計方法が、電解液の液量Mおよび溶着部80の長さLを決定する工程と、シーラント層71b、72bの圧縮率αを、電解液の液量Mおよび溶着部80の長さLに基づいて決定する工程と、を備えている。また、溶着部80の幅Wが、1mm以上10mm以下である。これにより、電解液の液量Mを少なくして蓄電素子1の小型化を図った場合や、電解液の液量Mを多くして、蓄電素子1の長寿命化を図った場合、あるいは溶着部80の長さLを長くして蓄電素子1の大型化を図った場合や、溶着部80の長さLを短くして蓄電素子1の小型化を図った場合においても、外装体7内に侵入する水分量を少なくするとともに、シーラント層71b、72b間の接合強度を向上させることができる蓄電素子1を容易に得ることができる。
【0096】
また、本実施の形態によれば、蓄電素子1の設計方法において、圧縮率αが、溶着部80の長さLの増加にともなって大きくなるように決定される。これにより、溶着部80の長さLを長くした場合であっても、溶着部80の長さLの増加にともなって圧縮率αを大きくすることにより、外装体7内に侵入する水分量を少なくすることができる。
【0097】
また、本実施の形態によれば、蓄電素子1の設計方法において、圧縮率αが、溶着部80の長さLに比例するように決定される。これにより、外装体7内に侵入する水分量のうち、溶着部80の長さLの増加にともなって増加する水分量を、圧縮率αを溶着部80の長さLに比例するように決定することで相殺することができる。
【0098】
また、本実施の形態によれば、蓄電素子1の設計方法において、圧縮率αが、電解液の液量Mの増加にともなって小さくなるように決定される。電解液の液量Mが増加した場合には、圧縮率αを小さくした場合であっても、フッ化水素による悪影響を低減することができるため、圧縮率αを小さくすることにより、シーラント層71b、72b間の接合強度を向上させることができる。
【0099】
また、本実施の形態によれば、蓄電素子1の設計方法において、圧縮率αが、電解液の液量Mに反比例するように決定される。これにより、圧縮率αを電解液の液量Mに反比例するように決定することで、フッ化水素比が増加することを抑制することができるとともに、シーラント層71b、72b間の接合強度を向上させることができる。すなわち、電解液の液量Mを少なくした場合、フッ化水素比が増加し得るが、圧縮率αを大きくすることにより、外装体7内に侵入する水分量を少なくすることができ、発生するフッ化水素量を低減することができる。このため、フッ化水素比が増加することを抑制することができる。この結果、フッ化水素による悪影響を低減することができる。一方、電解液の液量Mを多くした場合、フッ化水素比が低下するため、圧縮率αを小さくした場合であっても、フッ化水素による悪影響を低減することができる。また、この場合、圧縮率αを小さくすることにより、シーラント層71b、72b間の接合強度を向上させることができる。
【0100】
本発明の態様は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【0101】
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。