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特許7000614変性ポリビニルアセタール樹脂、蓄電池電極用組成物、顔料組成物、及び、変性ポリビニルアルコール樹脂
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】変性ポリビニルアセタール樹脂、蓄電池電極用組成物、顔料組成物、及び、変性ポリビニルアルコール樹脂
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/28 20060101AFI20220112BHJP
   C08F 16/38 20060101ALI20220112BHJP
   C08L 29/14 20060101ALI20220112BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20220112BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
C08F8/28
C08F16/38
C08L29/14
H01M4/139
H01M4/62 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021047650
(22)【出願日】2021-03-22
【審査請求日】2021-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2020120668
(32)【優先日】2020-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹中 啓祐
(72)【発明者】
【氏名】浅羽 祐太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 潤
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-244242(JP,A)
【文献】特開平03-162989(JP,A)
【文献】特開平05-045899(JP,A)
【文献】特開昭58-011046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素原子(イオン状態で存在する塩素原子を除く)を有する構成単位を含み、塩素原子を有する構成単位を0.1モル%以上、32.8モル%以下含有する、変性ポリビニルアセタール樹脂。
【請求項2】
塩素原子を有する構成単位は、塩素原子がアセタール結合を介して結合した構造である、請求項1記載の変性ポリビニルアセタール樹脂。
【請求項3】
塩素原子を有する構成単位は、下記式(3)で表される構造を有する、請求項1又は2記載の変性ポリビニルアセタール樹脂。
【化1】
式(3)中、Rは塩素原子含有炭化水素基を表す。
【請求項4】
塩素原子を有する構成単位は、下記式(1)で表される構造を有する、請求項2又は3記載の変性ポリビニルアセタール樹脂。
【化2】
式(1)中、Rは塩素原子又はクロロアルキル基を表し、R、Rはそれぞれ独立して水素原子又は塩素原子を表す。
【請求項5】
式(1)において、Rが塩素原子、-CHCl又は-CHCHClである、請求項4記載の変性ポリビニルアセタール樹脂。
【請求項6】
塩素原子を有する構成単位は、下記式(2)で表される構造を有する、請求項1記載の変性ポリビニルアセタール樹脂。
【化3】
式(2)中、Rは単結合又はアルキレン基を表し、Rは水素原子、塩素原子又はクロロアルキル基を表す。
【請求項7】
式(3)において、Rがクロロフェニル基又はクロロアルキルフェニル基である、請求項3記載の変性ポリビニルアセタール樹脂。
【請求項8】
重合度が200~4000である、請求項1~7の何れかに記載の変性ポリビニルアセタール樹脂。
【請求項9】
水酸基量が20~70モル%である、請求項1~8の何れかに記載の変性ポリビニルアセタール樹脂。
【請求項10】
アセタール化度(塩素原子がアセタール結合を介して結合した構造の含有量は含まれない)が20~75モル%である、請求項1~9の何れかに記載の変性ポリビニルアセタール樹脂。
【請求項11】
アセタール化度に対する塩素原子がアセタール結合を介して結合した構造の含有量[アセタール化度/塩素原子がアセタール結合を介して結合した構造の含有量]は15以下である、請求項2~10の何れかに記載の変性ポリビニルアセタール樹脂。
【請求項12】
燃焼イオンクロマトグラフィーによって測定される塩素原子含有量Aが0.1~10重量%である、請求項1~11の何れかに記載の変性ポリビニルアセタール樹脂。
【請求項13】
請求項1~12の何れかに記載の変性ポリビニルアセタール樹脂、有機溶剤、及び、活物質を含有する、蓄電池電極用組成物。
【請求項14】
請求項1~12の何れかに記載の変性ポリビニルアセタール樹脂、有機溶剤、及び、顔料を含有する、顔料組成物。
【請求項15】
請求項1~12の何れかに記載の変性ポリビニルアセタール樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、有機溶剤、及び、活物質を含有する、蓄電池電極用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散性、接着性、経時安定性に優れるとともに、蓄電池の電極に用いた場合に電解液による劣化を防ぐことができ、高出力の蓄電池を作製することが可能な変性ポリビニルアセタール樹脂、該変性ポリビニルアセタール樹脂を用いた蓄電池電極用組成物及び顔料組成物、並びに、変性ポリビニルアルコール樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールを原料として合成される樹脂であり、側鎖にアセチル基と水酸基、及び、アセタール基を有する。これにより、優れた強靭性や接着性などを発現することができる。また、側鎖基の比率を変化させることで樹脂物性を変化させることが可能となる。このような特性を利用して、例えば、蓄電池の電極や顔料組成物、セラミックグリーンシートなど、多くの用途でポリビニルアセタール樹脂は使用されている。
【0003】
また、近年、携帯型ビデオカメラや携帯型パソコン等の携帯型電子機器の普及に伴い、移動用電源としての蓄電池(二次電池)の需要が急増している。また、このような二次電池に対する小型化、軽量化、高エネルギー密度化の要求は非常に高い。
そこで、二次電池として、リチウム又はリチウム合金を負極電極に用いたリチウム二次電池の研究開発が盛んに行われている。このリチウム二次電池は、高エネルギー密度を有し、自己放電も少なく、軽量であるという優れた特徴を有している。
【0004】
現在、特に、リチウム二次電池の電極用のバインダーとして最も広範に用いられているのが、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)に代表されるフッ素系樹脂である。
しかしながら、フッ素系樹脂をバインダーとして用いた場合、可撓性を有する薄膜を作製可能な一方で、集電体と活物質の結着性に劣るため、電池製造工程時に活物質の一部又は全部が集電体から剥離、脱落する恐れがあった。また、電池の充放電が行われる際、活物質内ではリチウムイオンの挿入、放出が繰り返され、それに伴い、集電体から活物質の剥離、脱落の問題が起こり得るという問題もあった。
【0005】
上述の問題を解決するため、PVDF以外のバインダーを使用することも試みられており、例えば、特許文献1には、酸性官能基含有モノマー及びアミド基含有モノマーの共重合体からなる非水二次電池用バインダーが記載されている。
このようなバインダーを用いることで、電解液耐性に優れ、電極との密着性が良好であり、かつ、製造時の安全性を実現することが可能であるとしている。
【0006】
一方、インクや塗料には、バインダー樹脂に顔料及びその他の添加剤を配合し、これらを溶剤に分散させたものが使用されており、バインダー樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂が広く用いられている。
特許文献2には、25℃におけるエタノールに対する溶解度が7重量%より大きい樹脂を用いた油性ボールペン用インキにおいて、樹脂としてポリビニルアセタール樹脂を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5708872号公報
【文献】特開2001-172543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のバインダーを使用した場合、活物質の分散性が低くなり、塗工時に塗工むらが発生したり、得られる電池の容量不足が生じたりしている。
また、このような樹脂を用いた場合、電極の抵抗が高いものとなっている。
更に、電解液による溶解が発生するため、電池耐久性の低下を招くという問題がある。
加えて、特許文献2に記載のインクを用いた場合でも、顔料の分散性や経時での分散安定性が不充分であるという問題がある。
【0009】
本発明に係る変性ポリビニルアセタール樹脂は、分散性、接着性、及び、経時安定性に優れる。また、蓄電池の電極に用いた場合に電極抵抗を低下させ、電解液による劣化を防ぐことができ、高出力の蓄電池を作製することが可能となる。
即ち、本発明は、上述した特性に優れる変性ポリビニルアセタール樹脂、該変性ポリビニルアセタール樹脂を用いた蓄電池電極用組成物、及び、顔料組成物、並びに、変性ポリビニルアルコール樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、塩素原子を有する構成単位を含む、変性ポリビニルアセタール樹脂である。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、塩素原子を有する構成単位を含む変性ポリビニルアセタール樹脂は、分散性、接着性、経時安定性に優れることを見出した。さらに、蓄電池の電極に用いた場合に電極抵抗を低下させ、電解液による劣化を防ぐことができ、高出力の蓄電池を作製することが可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂は、塩素原子を有する構成単位を含む。上記塩素原子を有する構成単位を含むことで、接着性及び分散性に優れ、得られる組成物の経時安定性に優れる。また、蓄電池の電極に用いた場合に電極抵抗を低下させ、電解液による劣化を防ぐことができ、高出力の蓄電池を作製することが可能となる。なお、経時安定性とは、時間が経過した場合において、粘度等の物性の変化(特に増粘)が少ないことを意味する。
なお、上記塩素原子を有する構成単位は、塩素原子を1~3個有するものであることが好ましい。
【0013】
本発明において、塩素原子を有する構成単位は、塩素原子を有する構造であれば特に限定されないが、塩素原子がアセタール結合を介して結合した構造、塩素原子や塩素原子含有基を側鎖に有する構造等が好ましい。なお、塩素原子がアセタール結合を介して結合した構造には、アセタール結合以外の連結基を更に介して結合する場合も含む。
【0014】
上記塩素原子を有する構成単位が、塩素原子がアセタール結合を介して結合した構造(以下、このような構成単位を塩素化変性アセタール結合単位ともいう)である場合、下記式(3)で表される構成単位であることが好ましい。
【0015】
【化1】
式(3)中、Rは塩素原子含有炭化水素基を表す。
また、上記塩素化変性アセタール結合単位は、下記式(1)で表される構成単位であることが好ましい。
下記式(1)で表される構成単位を有することで、変性ポリビニルアセタール樹脂の主鎖と塩素原子とが適度な距離を保つことができる。その結果、変性ポリビニルアセタール樹脂は、接着性及び分散性に優れ、また、得られる組成物の経時安定性にもより一層優れたものとなる。また、蓄電池の電極に用いた場合に電極抵抗を低下させることができる。
【0016】
【化2】
式(1)中、Rは塩素原子又はクロロアルキル基を表し、R、Rはそれぞれ独立して水素原子又は塩素原子を表す。
なお、R、Rは、クロロアルキル基であってもよい。
【0017】
上記クロロアルキル基としては、クロロメチル基(-CHCl)、クロロエチル基(-CHCHCl)、ジクロロエチル基、クロルプロピル基、トリクロロメチル基等が挙げられる。式(1)において、Rは塩素原子、-CHCl又は-CHCHClであることが好ましい。
また、本発明では、Rが塩素原子、R、Rが水素原子の組み合わせで用いることが好ましい。
【0018】
また、上記Rは塩素原子含有芳香族基であることが好ましい。上記塩素原子含有芳香族基を有することで、芳香族化合物や、芳香族官能基を持つ化合物に対する接着性及び分散性をより優れたものとすることができる。
上記塩素原子含有芳香族基としては、クロロフェニル基又はクロロアルキルフェニル基等が挙げられる。上記クロロフェニル基としては、2-クロロフェニル基、3-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、2,4-ジクロロフェニル基、3,4―ジクロロフェニル基等が挙げられる。
また、上記クロロアルキルフェニル基としては、2-クロロメチルフェニル基、3-クロロメチルフェニル基、4-クロロメチルフェニル基等が挙げられる。
上記クロロフェニル基およびクロロアルキルフェニル基は、クロロ基に加えて他の置換基を有していても良い。
【0019】
上記塩素原子を有する構成単位が、塩素原子や塩素原子含有基を側鎖に有する構造(以下、このような構成単位を塩素化変性側鎖結合単位ともいう)である場合、下記式(2)で表される構成単位であることが好ましい。
下記式(2)で表される構成単位を有することで、変性ポリビニルアセタール樹脂は、接着性及び分散性に優れ、また、得られる組成物の経時安定性にもより一層優れたものとなる。また、蓄電池の電極に用いた場合に電極抵抗を低下させることができる。
【0020】
【化3】
式(2)中、Rは単結合又はアルキレン基を表し、Rは水素原子、塩素原子又はクロロアルキル基を表す。
なお、Rは、クロロアルキレン基であってもよい。
【0021】
上記Rに示すアルキレン基としては、炭素数が1~20であることが好ましく、例えば、直鎖状アルキレン基、分岐状アルキレン基、環状アルキレン基が好ましい。
上記直鎖状アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基等が挙げられる。
上記分岐状アルキレン基としては、メチルメチレン基、メチルエチレン基、1-メチルペンチレン基、1,4-ジメチルブチレン基等が挙げられる。
上記環状アルキレン基としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられる。なかでも、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基等の直鎖状アルキル基が好ましく、メチレン基、エチレン基がより好ましい。
上記Rに示すクロロアルキル基としては、Rと同様のものを使用することができる。
また、本発明では、Rが単結合、Rが水素原子の組み合わせで用いることが好ましい。
【0022】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂における上記塩素原子を有する構成単位の含有量(塩素化変性単位量)は、好ましい下限が0.1モル%である。上記塩素化変性単位量を0.1モル%以上とすることで接着性、分散性、得られる組成物の経時安定性を向上させることができる。上記塩素化変性単位量のより好ましい下限は1.0モル%、さらに好ましい下限は4.0モル%である。特に限定されないが、製造上の取り扱い性の観点から、上記塩素化変性単位量の上限は30モル%であるとよい。
なお、本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂が、塩素化変性アセタール結合単位と、塩素化変性側鎖結合単位の両方を含む場合、上記塩素化変性単位量は両者の合計を意味する。
【0023】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂が、塩素原子がアセタール結合を介して結合した構造(塩素化変性アセタール結合単位)を含む場合は、上記塩素化変性アセタール結合単位の含有量のより好ましい下限は0.1モル%である。上記塩素化変性アセタール結合単位の含有量を0.1モル%以上とすることで接着性、分散性、得られる組成物の経時安定性を向上させることができる。上記塩素化変性アセタール結合単位の含有量のより好ましい下限は1.0モル%、さらに好ましい下限は4.0モル%である。特に限定されないが、製造上の取り扱い性の観点から、上記塩素化変性アセタール結合単位の含有量の上限は30モル%であるとよい。
【0024】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂が、塩素原子や塩素原子含有基を側鎖に有する構造(塩素化変性側鎖結合単位)を含む場合は、上記塩素化変性側鎖結合単位の含有量のより好ましい下限は0.1モル%、より好ましい上限は15モル%である。また、更に好ましい下限は0.5モル%、更に好ましい上限は10モル%である。上記範囲内とすることで、接着性、分散性、得られる組成物の経時安定性を向上させることができる。
【0025】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂が、塩素化変性アセタール結合単位、及び、塩素化変性側鎖結合単位の両方を含む場合、両者の比率(塩素化変性アセタール結合単位/塩素化変性側鎖結合単位)は、0.5以上、3以下であることが好ましく、1以上、2以下であることがより好ましい。
【0026】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂は、水酸基を有する構成単位、アセチル基を有する構成単位、アセタール基を有する構成単位を有する。
【0027】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂は、上記水酸基を有する構成単位を有する。
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂における上記水酸基を有する構成単位の含有量(水酸基量)の好ましい下限は20モル%、好ましい上限は70モル%である。上記水酸基量を20モル%以上とすることで、有機溶媒への溶解性が向上し、組成物として好適に使用することができ、70モル%以下とすることで、樹脂の柔軟性を維持することができる。
上記水酸基量のより好ましい下限は25モル%であり、より好ましい上限は65モル%である。
【0028】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂は、上記アセチル基を有する構成単位を有する。
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂における上記アセチル基を有する構成単位の含有量(アセチル基量)の好ましい下限は0.1モル%、好ましい上限は20モル%である。上記アセチル基量を0.1モル%以上とすることで、樹脂の柔軟性を維持することができ、上記アセチル基量を20モル%以下とすることで、蓄電池の電極に使用した際に電解液への耐性が向上し、樹脂が電解液へ溶出して電池が劣化することを防ぐことができる。上記アセチル基量のより好ましい下限は0.3モル%、より好ましい上限は10モル%である。
【0029】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、上記アセタール基を有する構成単位を有する。
上記ポリビニルアセタール樹脂における上記アセタール基を有する構成単位の含有量(アセタール化度)は20モル%以上、75モル%以下であることが好ましい。上記アセタール化度を20モル%以上とすることで、有機溶媒への溶解性が向上し、組成物として好適に使用することができる。上記アセタール化度を75モル%以下とすることで、接着性、分散性を維持することができる。より好ましくは25モル%以上、70モル%以下である。
なお、本明細書において、アセタール化度とは、ポリビニルアルコールの水酸基数のうち、アルデヒド基を除いた部分の塩素原子を含まないアルデヒド(ブチルアルデヒド、アセトアルデヒド等)でアセタール化された水酸基数の割合のことである。従って、上述した「塩素原子がアセタール結合を介して結合した構造」の含有量はアセタール化度には含まれない。
また、アセタール化度の計算方法としては、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール基が2個の水酸基からアセタール化されて形成されていることから、アセタール化された2個の水酸基を数える方法を採用してアセタール化度のモル%を算出する。
【0030】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂におけるアセトアルデヒドでアセタール化されたアセトアセタール基の含有量(アセトアセタール基量)は10モル%以上、50モル%以下であることが好ましい。
また、本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂におけるブチルアルデヒドでアセタール化されたブチルアセタール基の含有量(ブチラール基量)は3モル%以上、75モル%以下であることが好ましい。上記範囲内とすることで、耐水性を維持、優れた粘度特性を得ることができる。
【0031】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂が、アセタール基を有する構成単位と、塩素化変性アセタール結合単位とを両方含む場合、上記アセタール化度と、上記塩素化変性アセタール結合単位量の合計量である全アセタール基量[アセタール化度+塩素化変性アセタール結合単位量]は25モル%以上、80モル%以下であることが好ましい。上記範囲内とすることで、有機溶媒への溶解性を維持しつつ、接着性、分散性に優れ、得られる組成物は高い経時安定性を実現することができる。上記全アセタール基量は、30モル%以上、75モル%以下であることがより好ましい。
また、上記アセタール基を有する構成単位に対する上記塩素化変性アセタール結合単位の含有量[アセタール基を有する構成単位量/塩素化変性アセタール結合単位量]は15以下であることが好ましい。また、上記割合は10以下であることがより好ましい。なお、下限については特に限定されないが1以上が好ましい。
【0032】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂における上記アセタール化度と、上記塩素化変性単位量の合計量[アセタール化度+塩素化変性単位量]は25モル%以上、80モル%以下であることが好ましい。上記範囲内であることで、接着性、分散性、及び、得られる組成物の経時安定性が向上する。上記アセタール化度+塩素化変性単位量は、30モル%以上、75モル%以下であることがより好ましい。
【0033】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂における上記塩素化変性単位量に対する上記アセタール化度の割合[アセタール化度/塩素化変性単位量]は5以上、30以下であることが好ましい。上記範囲内であることで、接着性、分散性、及び得られる組成物の経時安定性が向上する。
上記アセタール化度/塩素化変性単位量は、8以上、20以下であることがより好ましい。
【0034】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂の重合度の好ましい下限は200、好ましい上限は4000である。上記重合度が200以上であることで、工業的に生産が容易となる。上記重合度が4000以下であることで、溶液粘度が適度なものとなり、工業的に製造することが可能となる。上記重合度のより好ましい下限は500、より好ましい上限は2500である。
【0035】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂は、燃焼イオンクロマトグラフィーによって測定される塩素原子含有量Aが0.1重量%以上、10重量%以下であることが好ましい。このような範囲とすることで、好適に本発明の効果を得ることができる。上記塩素原子含有量Aのより好ましい下限は0.5重量%、より好ましい上限は9重量%である。なお、上記塩素原子含有量Aは、JIS K 0127(2013)に基づき、燃焼イオンクロマトグラフィーによって測定することができる。この測定法では樹脂と塩素原子との結合の有無に関係なく、ポリビニルアセタール樹脂粉末の塩素原子含有量が測定結果として得られる。よって塩素原子含有量Aは、樹脂に結合した塩素原子含有量と樹脂に結合していない塩素原子含有量の合計を表す値である。
【0036】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂は、NMRによって測定される塩素原子含有量B が0.1重量%以上、10重量%以下であることが好ましい。
上記塩素原子含有量Bとは、NMRを用いて得られる塩素化変性単位量から算出される塩素原子含有量を意味する。
よって塩素原子含有量Bは樹脂に結合した塩素原子含有量を表す値である。
また、上記塩素原子含有量A及び塩素原子含有量Bから、下記式(4)で得られる値(塩素原子含有量差C)は、0.5重量%以下であることが好ましい。
塩素原子含有量差C=塩素原子含有量A-塩素原子含有量B (4)
上記式(4)で得られる塩素原子含有量差Cによって、樹脂に結合していない塩素原子含有量が推定され、これにより例えばNaCl等の塩化物イオン量を推定することができ、上記上限以下であることにより、例えば、蓄電池の電極に用いた場合に電池の耐久性を向上させることができる。上記式(4)で得られる値(塩素原子含有量差C)は、0.1重量%以下であることがより好ましい。また、好ましい下限は特に限定されないが、0.001重量%以上であるとよい。
【0037】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂を製造する方法としては、塩素原子を有する構成単位を含むポリビニルアルコールを用意し、その後アセタール化する方法、塩素原子を有する構成単位を含まないポリビニルアルコールをアセタール化した後、塩素原子を付加する方法等が挙げられる。また、塩素原子を有する構成単位を含むポリビニルアルコール、塩素原子を有する構成単位を含まないポリビニルアルコールを用意し、その後アセタール化によって塩素原子を有する構成単位を導入する方法等が挙げられる。
より具体的には、上記式(2)で表される構成単位を予め有するポリビニルアルコールを用意し、その後アセタール化する方法、上記式(2)で表される構成単位を有しないポリビニルアルコールをアセタール化した後、上記式(2)で表される構成単位のR、Rに相当する部分を付加する方法等が挙げられる。また、上記式(2)で表される構成単位を予め有するポリビニルアルコール、上記式(2)で表される構成単位を有しないポリビニルアルコールを用意し、その後アセタール化によって上記式(1)で表される構成単位を導入する方法等が挙げられる。
【0038】
上記塩素原子を有する構成単位を含むポリビニルアルコールを作製する方法としては、例えば、塩化ビニルと酢酸ビニルとを共重合した後、得られた共重合体のアルコール溶液に酸またはアルカリを添加してケン化する方法等が挙げられる。また、塩素原子を付加する方法により、上記塩素原子を有する構成単位を含むポリビニルアルコールを作製してもよい。
また、上記塩素原子を付加する方法としては、例えば、ポリビニルアルコールと塩素ガスを反応させる方法等が挙げられる。
【0039】
上記塩素原子を有する構成単位を含まないポリビニルアルコール(以下、単にポリビニルアルコールともいう)は、例えば、ビニルエステルとエチレンの共重合体をケン化することにより得ることができる。上記ビニルエステルとしては、例えば、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等が挙げられる。なかでも、経済性の観点から酢酸ビニルが好適である。
【0040】
上記アセタール化によって塩素原子を有する構成単位を導入する方法としては、ポリビニルアルコールと、塩素原子を有するアルデヒドまたはアルデヒド等価体とを反応させる方法を用いることができる。
上記塩素原子を有するアルデヒドとしては、例えば、クロロアセトアルデヒド、ジクロロアセトアルデヒド、トリクロロアセトアルデヒド、3-クロロプロピオンアルデヒド、4-クロロブチルアルデヒド等が挙げられる。
上記アルデヒド等価体とは、アルデヒドに保護基を付けたもの、又は、一般に用いられる方法でアルデヒドに変換できる化合物であり、例えば、アセタール、ヘミアセタール、アルデヒド水和物等が挙げられる。なかでも、塩素原子を有するアルデヒド等価体が好ましい。
上記塩素原子を有するアルデヒド等価体としては、クロロアセトアルデヒドジメチルアセタール、クロロアセトアルデヒドジエチルアセタール、2-クロロメチル-1,3-ジオキソラン、ジクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール、ジクロロアセトアルデヒドジエチルアセタール、2,2-ジクロロメチル-1,3-ジオキソラン、トリクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール、トリクロロアセトアルデヒドジエチルアセタール、トリクロロアセトアルデヒドメチルヘミアセタール、トリクロロアセトアルデヒドエチルヘミアセタール、抱水クロラール、2,2,2-トリクロロメチル-1,3-ジオキソラン、3-クロロプロピオンアルデヒドジメチルアセタール、3-クロロプロピオンアルデヒドジエチルアセタール、2-(2-クロロエチル)-1,3-ジオキソラン、4-クロロブチルアルデヒドジメチルアセタール、4-クロロブチルアルデヒドジエチルアセタール、2-(3-クロロプロピル)-1,3-ジオキソラン等が挙げられる。
【0041】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、エチレン性不飽和単量体を共重合したものであってもよい。上記エチレン性不飽和単量体としては特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等が挙げられる。また、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、トリメチル-(3-アクリルアミド-3-ジメチルプロピル)-アンモニウムクロリド、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及びそのナトリウム塩等が挙げられる。更に、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。また、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸等のチオール化合物の存在下で、酢酸ビニル等のビニルエステル系単量体とエチレンを共重合し、それをケン化することによって得られる末端変性ポリビニルアルコールも用いることができる。
【0042】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂の用途としては、例えば、蓄電池電極、顔料等のバインダー及び分散剤、エポキシ樹脂やフェノール樹脂等をベースとした接着剤の改質剤、セラミックグリーンシート、導電ペースト等が挙げられる。
また、ゲルインク等のインク製品のバインダー、3Dプリンター用樹脂、アクチュエーター、気体分離膜、接着剤、塗料、フィルム等の原料にも使用することができる。
特に、本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂を蓄電池電極に用いるバインダーとして使用する場合は、電極抵抗を低下させ、電解液による劣化を防ぐことができ、高出力の蓄電池を作製することが可能となる。
また、本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂を顔料の分散剤として使用する場合は、例えば、ハロゲン化銅フタロシアニングリーン(ピグメントグリーン7、ピグメントグリーン36等)といったハロゲン置換された顔料に対する分散性、及び、分散後の経時安定性に優れたものとすることができる。
【0043】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂、有機溶剤、及び、活物質を含有する蓄電池電極用組成物もまた本発明の1つである。
このような蓄電池電極用組成物では、活物質の分散性、接着性に優れるとともに、電気抵抗を低下させ、さらに電解液による劣化を防ぐことができ、高出力の蓄電池を作製することができる。
【0044】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、有機溶剤、及び、活物質を含有する蓄電池電極用組成物もまた本発明の1つである。
このような蓄電池電極用組成物では、本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂とポリフッ化ビニリデン樹脂とを両方を含有することで、本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂単独、または、ポリフッ化ビニリデン樹脂単独で用いた場合より、さらに接着性に優れ、電気抵抗を低下させることができる場合がある。
本発明の蓄電池電極用組成物において、本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂の塩素原子を有する構成単位の含有量は相溶性の観点から0.5モル%以上であることが好ましく、1モル%以上であることがより好ましい。
上記ポリフッ化ビニリデン樹脂の重量平均分子量は、400000以上1200000以下が好ましく、600000以上1000000以下がより好ましい。なお、上記重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて絶対分子量測定法で測定することができる。
また、本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂とポリフッ化ビニリデン樹脂の重量比は0.5:9.5~8:2であることが好ましく、1:9~7:3であることがより好ましい。上記範囲内とすることで、接着性が向上し、さらに電気抵抗を低下させることができる。また、本発明の蓄電池電極用組成物中における樹脂量(本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂とポリフッ化ビニリデン樹脂の重量との合計量)は0.5~3重量部が好ましく、1~2.5重量部がより好ましい。上記樹脂量が0.5重量部以上であることで高い接着性を発現でき、3重量部以下であることで、電気抵抗の低い電極を作製することができる。
【0045】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂、有機溶剤、及び、顔料を含有する顔料組成物もまた本発明の1つである。
このような顔料組成物では、顔料の分散性に優れ、かつ、高い経時安定性を実現することができる。
【0046】
上記活物質としては、正極活物質、負極活物質が挙げられる。
上記正極活物質としては、例えば、リチウムニッケル酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムマンガン酸化物等のリチウム含有複合金属酸化物が挙げられる。具体的には例えば、LiNiO、LiCoO、LiMn等が挙げられる。
また、上記負極活物質としては、例えば、従来から蓄電池の負極活物質として用いられている材料を用いることができ、例えば、球状天然黒鉛、天然グラファイト、人造グラファイト、 アモルファス炭素、カーボンブラック、または、これらの成分に異種元素を添加したもの等が挙げられる。
なお、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
本発明に係る蓄電池電極用組成物は、さらに導電助剤(導電付与剤)を含むことが好ましい。導電助剤を含むことにより、得られる蓄電池電極用組成物の電気抵抗がより一層低下させることができる。上記導電助剤としては、例えば、黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維などの炭素材料が挙げられる
【0048】
上記顔料としては、例えば、フタロシアニン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、イソインドリン系、アントラキノン系、ジケトピロロピロール系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系等の顔料が挙げられる。
上記フタロシアニン系顔料としては、金属フタロシアニン系顔料、無金属フタロシアニン系顔料が挙げられる。上記金属フタロシアニン系顔料としては、ハロゲン化銅フタロシアニン顔料、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料、アルミニウムフタロシアニン顔料等が挙げられる。上記ハロゲン化銅フタロシアニン顔料としては、ピグメントグリーン7、36が好ましい。
【0049】
上記有機溶剤としては、例えば、アルコール類、多価アルコール類、グリコールエーテル類、エステル類、アミド系溶剤、アミン系溶剤等が挙げられる。
上記アルコール類としては、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブチルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール、n-ヘプタノール、2-ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、3,5,5-トリメチルヘキサノール、ノナノール、デカノール、シクロヘキサノール等のその他高級アルコール類、ベンジルアルコール、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール等が挙げられる。
上記多価アルコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、フェニルグリコール等が挙げられる。
上記グリコールエーテル類としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、ブチルカルビトール、ブチルトリグリコール、メチルジグリコール等が挙げられる。
上記エステル類としては、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、ブタン酸メチル、ブタン酸エチル、ブタン酸ブチル、ペンタン酸メチル、ペンタン酸エチル、ペンタン酸ブチル、ヘキサン酸メチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸ブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酪酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。
また、ブチルセルソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオールアセテート等を用いることもできる。
上記アミド系溶剤としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルテセトアミド、N-メチルピロリドン、アセトアニリド等が挙げられる。
上記アミン系溶剤としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、n-ブチルアミン、ジn-ブチルアミン、トリn-ブチルアミン、アニリン、N-メチルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、ピリジン等が挙げられる。
また、上記有機溶剤を2種類以上混合して用いてもよい。
【0050】
本発明の蓄電池電極用組成物、顔料組成物には、上述した物質以外にも、必要に応じて、難燃助剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤のような添加剤を添加してもよい。
【0051】
別の態様の本発明は、塩素原子を有する構成単位を含む、変性ポリビニルアルコール樹脂である。
上記塩素原子を有する構成単位は、本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂と同様であり、塩素原子や塩素原子含有基を側鎖に有する構造であることが好ましく、上記式(2)で表される構成単位であることが好ましい。
【0052】
別の態様の本発明である変性ポリビニルアルコール樹脂は、水酸基量と、塩素原子を有する構成単位の含有量との比(水酸基量:塩素原子を有する構成単位の含有量)が、70:30~99.9:0.1であることが好ましい。
なお、別の態様の本発明において、水酸基量は、70モル%以上、99.9モル%以下であることが好ましく、塩素原子を有する構成単位の含有量は、0.1モル%以上、30モル%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、分散性、接着性、及び、得られる組成物の経時安定性に優れるとともに、蓄電池の電極に用いた場合に電極抵抗を低下させ、さらに電解液による劣化を防ぐことができ、高出力の蓄電池を作製することが可能な変性ポリビニルアセタール樹脂を提供できる。また、該変性ポリビニルアセタール樹脂を用いた蓄電池電極用組成物及び顔料組成物、並びに、変性ポリビニルアルコール樹脂を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0055】
(製造例1)
(塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂の作製)
ケン化度98.6モル%、重合度300のポリビニルアルコール(a)120gを純水1400gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸100g、n-ブチルアルデヒド50g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール28g添加した後、液温を50℃に保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を50℃のまま6時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂の粉末を得た。得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=Cl、R=H、R=H)であった。
【0056】
(製造例2)
n-ブチルアルデヒド50g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール28gに代えて、n-ブチルアルデヒド45g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール57gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=Cl、R=H、R=H)であった。
【0057】
(製造例3)
n-ブチルアルデヒド50g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール28gに代えて、n-ブチルアルデヒド55g及び抱水クロラール30gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=Cl、R=Cl、R=Cl)であった。
【0058】
(製造例4)
n-ブチルアルデヒド50g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール28gに代えて、n-ブチルアルデヒド57g及び3-クロロプロピオンアルデヒドジメチルアセタール15gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=CHCl、R=H、R=H)であった。
【0059】
(製造例5)
n-ブチルアルデヒド50g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール28gに代えて、n-ブチルアルデヒド58g及び4-クロロブチルアルデヒドジメチルアセタール12gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=CHCHCl、R=H、R=H)であった。
【0060】
(製造例6)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、ケン化度98.6モル%、重合度が800のポリビニルアルコール(b)を用いた。更に、n-ブチルアルデヒド50g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール28gに代えて、n-ブチルアルデヒド51g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール33gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により、塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=Cl、R=H、R=H)であった。
【0061】
(製造例7)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、ケン化度88.8モル%、重合度が800のポリビニルアルコール(c)を用いた。更に、n-ブチルアルデヒド50g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール28gに代えて、n-ブチルアルデヒド35g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール25gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により、塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=Cl、R=H、R=H)であった。
【0062】
(製造例8)
n-ブチルアルデヒド51g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール33gに代えて、n-ブチルアルデヒド44g、アセトアルデヒド12g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール27gを添加した以外は、製造例6と同様の方法により、塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、アセトアセタール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=Cl、R=H、R=H)であった。
【0063】
(製造例9)
(変性ポリビニルアルコール(d)の合成)
攪拌機、温度計、滴下ロート及び還流冷却器を付したフラスコ中に、酢酸ビニル1000重量部、塩化ビニル90重量部及びメタノール300重量部を添加し、系内の窒素置換を行った後、温度を60℃まで昇温した。この系に2,2-アゾビスイソブチロニトリル1.1重量部を添加し、重合を開始した。重合開始から5時間で重合を停止した。重合停止時の系内の固形分濃度は53重量%であり、全モノマーに対する重合収率は65重量%であった。減圧下に未反応のモノマーを除去した後、共重合体の45重量%メタノール溶液を得た。得られた共重合体は酢酸ビニル単位92.4モル%、塩化ビニル単位7.6モル%を含有することが未反応のモノマーの定量より確認された。
【0064】
この共重合体のメタノール溶液100重量部を40℃で攪拌しながら、3%のNaOHメタノール溶液25重量部を添加して、よく混合した後に放置した。30分後、固化したポリマーを粉砕機で粉砕し、メタノールで洗浄後、乾燥してポリマー粉末を得た(以下、これを変性ポリビニルアルコール(d)と称する)。
変性ポリビニルアルコール(d)のケン化度は98.5モル%、塩素化変性側鎖結合単位量7.6モル%、重合度は800であった。
【0065】
ポリビニルアルコール(a)に代えて、変性ポリビニルアルコール(d)を用い、n-ブチルアルデヒド53gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により、塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(2)で表される構成単位(R=単結合、R=H)であった。
【0066】
(製造例10)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、ケン化度98.5モル%、塩素化変性側鎖結合単位量3.9モル%、重合度が800の塩素原子を有する構成単位を有する変性ポリビニルアルコール(e)を用いた。更に、n-ブチルアルデヒド64gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により、塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(2)で表される構成単位(R=CH、R=H)であった。
【0067】
(製造例11)
n-ブチルアルデヒド51g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール33gに代えて、n-ブチルアルデヒド5g、アセトアルデヒド18g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール52gを添加した以外は、製造例6と同様の方法により、塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、アセトアセタール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=Cl、R=H、R=H)であった。
【0068】
(製造例12)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、ケン化度98.6モル%、重合度が1800のポリビニルアルコール(f)を用いた。更に、n-ブチルアルデヒド50g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール28gに代えて、n-ブチルアルデヒド48g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール26gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により、塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=Cl、R=H、R=H)であった。
【0069】
(製造例13)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、ケン化度99.5モル%、重合度が1800のポリビニルアルコール(g)を用いた。更に、n-ブチルアルデヒド50g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール28gに代えて、n-ブチルアルデヒド24g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール20gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により、塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=Cl、R=H、R=H)であった。
【0070】
(製造例14)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、ケン化度98.6モル%、塩素化変性側鎖結合単位量5.4モル%、重合度が1800の塩素原子を有する構成単位を有する変性ポリビニルアルコール(h)を用いた。更に、n-ブチルアルデヒド50g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール28gに代えて、n-ブチルアルデヒド45g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール14gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により、塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=Cl、R=H、R=H)及び上記式(2)で表される構成単位(R=単結合、R=H)であった。
【0071】
(製造例15)
n-ブチルアルデヒド48g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール26gに代えて、n-ブチルアルデヒド80g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール5gを添加した以外は、製造例12と同様の方法により塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=Cl、R=H、R=H)であった。
【0072】
(製造例16)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、ケン化度98.2モル%、重合度が2700のポリビニルアルコール(i)を用いた。更に、n-ブチルアルデヒド50g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール28gに代えて、n-ブチルアルデヒド47g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール1gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により、塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=Cl、R=H、R=H)であった。
【0073】
(製造例17)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、ケン化度98.3モル%、塩素化変性側鎖結合単位量0.8モル%、重合度が2700の塩素原子を有する構成単位を有する変性ポリビニルアルコール(j)を用いた。更に、n-ブチルアルデヒド62gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により、塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(2)で表される構成単位(R=単結合、R=H)であった。
【0074】
(製造例18)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、ケン化度98.7モル%、重合度が4000のポリビニルアルコール(k)を用いた。更に、n-ブチルアルデヒド50g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール28gに代えて、n-ブチルアルデヒド60g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール6gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により、塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=Cl、R=H、R=H)であった。
【0075】
(製造例19)
n-ブチルアルデヒド51g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール33gに代えて、n-ブチルアルデヒド61g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール0.1gを添加した以外は、製造例6と同様の方法により塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=Cl、R=H、R=H)であった。
【0076】
(製造例20)
n-ブチルアルデヒド51g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール33gに代えて、n-ブチルアルデヒド31g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール60gを添加した以外は、製造例6と同様の方法により塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=Cl、R=H、R=H)であった。
【0077】
(製造例21)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、ケン化度98.5モル%、塩素化変性側鎖結合単位量0.06モル%、重合度が800の塩素原子を有する構成単位を有する変性ポリビニルアルコール(l)を用いた。更に、n-ブチルアルデヒド63gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により、塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(2)で表される構成単位(R=単結合、R=H)であった。
【0078】
(製造例22)
n-ブチルアルデヒド51g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール33gに代えて、n-ブチルアルデヒド53g及び4-クロロベンズアルデヒド15gを添加した以外は、製造例6と同様の方法により、塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(3)で表される構成単位(R=4-クロロフェニル)であった。
【0079】
(製造例23)
n-ブチルアルデヒド51g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール33gに代えて、n-ブチルアルデヒド53g及び3-クロロベンズアルデヒド10gを添加した以外は、製造例6と同様の方法により、塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(3)で表される構成単位(R=3-クロロフェニル)であった。
【0080】
(製造例24)
n-ブチルアルデヒド51g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール33gに代えて、n-ブチルアルデヒド66gを添加した以外は、製造例6と同様の方法によりポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量を測定した。結果を表1に示す。
【0081】
(製造例25)
n-ブチルアルデヒド48g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール26gに代えて、n-ブチルアルデヒド66gを添加した以外は、製造例12と同様の方法によりポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量を測定した。結果を表1に示す。
【0082】
(製造例26)
市販のポリビニルアセタール樹脂(水酸基量:32.9モル%、アセチル基量:1.8モル%、ブチラール基量:65.3モル%)に、NaClを5重量%となるように添加してポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
【0083】
(実施例1)
(蓄電池電極用組成物の作製)
製造例1の塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂を含有する樹脂溶液20重量部(ポリビニルアセタール樹脂:3重量部)に、活物質としてコバルト酸リチウム(日本化学工業社製、セルシードC-5H)55重量部、導電付与剤としてアセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック)を5重量部、N-メチルピロリドン25重量部を加えた。その後、シンキー社製泡取練太郎にて混合し、蓄電池電極用組成物を得た。
【0084】
(実施例2~23、比較例1~3)
(蓄電池電極用組成物の作製)
表2に示す種類、添加量の塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして、蓄電池電極用組成物を得た。
【0085】
(実施例24)
(蓄電池電極用組成物の作製)
製造例2で得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂15gをN-メチルピロリドン85gに溶解し、ポリビニルアセタール樹脂溶液を得た。
また、ポリフッ化ビニリデン樹脂(重量平均分子量600000)5gをN-メチルピロリドン95gに溶解し、ポリフッ化ビニリデン樹脂溶液を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂溶液10重量部(ポリビニルアセタール樹脂:1.5重量部)に、ポリフッ化ビニリデン樹脂溶液30重量部(ポリフッ化ビニリデン樹脂:1.5重量部)を加えた。更に、活物質としてコバルト酸リチウム(日本化学工業社製、セルシードC-5H)55重量部、導電付与剤としてアセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック)を5重量部、N-メチルピロリドン5重量部を加えた。その後、シンキー社製泡取練太郎にて混合し、蓄電池電極用組成物を得た。
【0086】
(実施例25)
製造例2で得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂に代えて、製造例13で得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂を使用した以外は、実施例24と同様にしてポリビニルアセタール樹脂溶液およびポリフッ化ビニリデン樹脂溶液を調製し、蓄電池電極用組成物を得た。
【0087】
(実施例26)
製造例2で得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂に代えて、製造例18で得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂を使用した以外は、実施例24と同様にしてポリビニルアセタール樹脂溶液およびポリフッ化ビニリデン樹脂溶液を調製し、蓄電池電極用組成物を得た。
【0088】
(実施例27)
ポリフッ化ビニリデン樹脂(重量平均分子量600000)に代えて、ポリフッ化ビニリデン樹脂(重量平均分子量1000000)を使用した以外は、実施例24と同様にしてポリビニルアセタール樹脂溶液およびポリフッ化ビニリデン樹脂溶液を調製し、蓄電池電極用組成物得た。
【0089】
(実施例28)
製造例12で得られた塩素化変性ポリビニルアセタールを用いて、蓄電池電極用組成物を作製する際、ポリビニルアセタール樹脂溶液20重量部(ポリビニルアセタール樹脂:3重量部)に代えて、ポリビニルアセタール樹脂溶液13.3重量部(ポリビニルアセタール樹脂:2重量部)を添加した以外は実施例1と同様にして蓄電池電極用組成物を得た。
【0090】
(実施例29)
製造例12で得られた塩素化変性ポリビニルアセタールを用いて、蓄電池電極用組成物を作製する際、ポリビニルアセタール樹脂溶液20重量部(ポリビニルアセタール樹脂:3重量部)に代えて、ポリビニルアセタール樹脂溶液26.7重量部(ポリビニルアセタール樹脂:4重量部)を添加した。更に、N-メチルピロリドン25重量部に代えて、N-メチルピロリドン10重量部を添加した以外は実施例1と同様にして蓄電池電極用組成物を得た。
【0091】
(比較例4)
ポリフッ化ビニリデン樹脂(重量平均分子量600000)10gをN-メチルピロリドン90gに溶解し、ポリフッ化ビニリデン樹脂溶液を得た。
得られたポリフッ化ビニリデン樹脂溶液30重量部(ポリフッ化ビニリデン樹脂:3重量部)に対して、活物質としてコバルト酸リチウム(日本化学工業社製、セルシードC-5H)55重量部、導電付与剤としてアセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック)を5重量部、N-メチルピロリドン5重量部を加えた。その後、シンキー社製泡取練太郎にて混合し、蓄電池電極用組成物を得た。
【0092】
(実施例30~45、比較例5~7)
(顔料組成物の調製)
表3に示す製造例1~11、19~26で得られた(変性)ポリビニルアセタール樹脂2.25g、顔料22.5g及び有機溶剤147.75gを混合し、撹拌機で1時間攪拌して顔料分散体を作製した。
なお、顔料としては、ピグメントグリーン7(レジノカラー工業社製、フタロシアニングリーン、平均粒子径80μm)、有機溶剤としてベンジルアルコールを用いた。
【0093】
<評価>
製造例で得られた(変性)ポリビニルアセタール樹脂、実施例、比較例で得られた蓄電池電極用組成物、顔料組成物について、以下の評価を行った。結果を表2~3に示した。
【0094】
(1)樹脂の塩素原子含有量測定(塩素原子含有量A、B)
得られたポリビニルアセタール樹脂について、JIS K 0127(2013)に基づき、燃焼イオンクロマトグラフィーによって塩素原子含有量Aを測定した。試料燃焼装置としてはAQF-100(三菱化学アナリテック社製)、イオンクロマトグラフとしてはICS-1500(ダイオネクス社製)、イオン交換カラムはDionex IonPac AS12A(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を使用した。
また、H-NMRを用いて得られる塩素化変性単位量から塩素原子含有量を算出し、塩素原子含有量Bとした。
更に、塩素原子含有量A及び塩素原子含有量Bから、下記式(4)を用いて、塩素原子含有量差Cを算出した。
塩素原子含有量差C=塩素原子含有量A-塩素原子含有量B (4)
【0095】
(2)蓄電池電極用組成物の評価
(2-1)接着性(剥離力)
得られた蓄電池電極用組成物について、アルミ箔に対する接着性を評価した。
アルミ箔(厚み20μm)の上に、乾燥後の膜厚が20μmとなるように電極用組成物を塗工、乾燥し、アルミ箔上に電極がシート状に形成された試験片を得た。
このサンプルを縦1cm、横2cmに切り出し、AUTOGRAPH(島津製作所社製、「AGS-J」)を用い、試験片を固定しながら電極シートを引き上げ、アルミ箔から完全に電極シートが剥離するまでに要する剥離力(N)を計測した後、以下の基準で判定した。
○:剥離力が8.0N以上
△:剥離力が8.0N未満、6.0N超え
×:剥離力が6.0N以下
【0096】
(2-2)分散性(表面粗さ)
上記「(2-1)接着性」で得られた試験片について、JIS B 0601(1994)に基づいて表面粗さRaを測定し、電極の表面粗さを以下の基準で評価した。なお、一般的には、活物質の分散性が高いほど、表面粗さは小さくなるとされている。
○:Raが3.0μm未満
△:Raが3.0μm以上、4.0μm未満
×:Raが4.0μm以上
【0097】
(2-3)電解液耐性(溶媒溶解性)
(電極シートの作製)
離型処理されたポリアルキレンテレフタレート(PET)フィルム上に、乾燥後の膜厚が20μmとなるように実施例及び比較例で得られた蓄電池電極用組成物を塗工、乾燥して電極シートを作製した。
その電極シートを2cm角に切り出し、電極シート試験片を作製した。
【0098】
(溶出評価)
得られた試験片の重量を正確に計量し、シートに含まれる成分重量比から試験片に含まれる樹脂の重量を算出した。その後、試験片を袋状のメッシュに入れ、メッシュ袋と試験片の合計重量を正確に計測した。
次いで、試験片の入っているメッシュ袋を電解液溶剤であるジエチルカーボネート:アルキレンカーボネート=1:1混合溶剤に浸し、60℃にて5Hr放置した。放置後メッシュ袋を取り出し、150℃、8時間の条件で乾燥させ、完全に溶剤を乾燥させた。
乾燥機から取り出した後、室温にて1時間放置し、重量を計測した。試験前後の重量変化から樹脂の溶出量を算出し、その溶出量とあらかじめ算出しておいた樹脂の重量の比から樹脂の溶出率を算出し、以下の基準で評価した。
○:溶出率が1.0%未満
△:溶出率が1.0%以上、2.0%未満
×:溶出率が2.0%以上
【0099】
(2-4)電極抵抗値測定
上記「(2-1)接着性」で得られた試験片について、電極抵抗測定器(日置電機株式会社製)を用いて電極抵抗値を測定し、以下の基準で評価した。
◎:電極抵抗値が400Ω/sq未満
○:電極抵抗値が400Ω/sq以上、700Ω/sq未満
△:電極抵抗値が700Ω/sq以上、1000Ω/sq未満
×:電極抵抗値が1000Ω/sq以上
【0100】
(3)電池性能評価
(コイン型電池の作製)
実施例2、3、9、11~13、16、18、22、23~29、比較例1~4で得られた蓄電池電極用組成物を、アルミ箔(厚み20μm)の上に塗工、乾燥し、乾燥後の厚さが80μmである正極シートを得た後、これをφ11mmに打ち抜き正極層を得た。また、厚さ100μmの金属リチウム箔をφ11mmに打ち抜くことで負極層を得た。電解液として1モル/LのLiPFを含有するEC:DEC:EMC=3:4:3の混合溶媒を用い、正極集電体、正極層、多孔質PP膜セパレータ(厚さ25μm)、負極層、負極集電体の順で重ね合わせた後、かしめ機により圧力を加えることで密閉型のコイン型電池を得た。
【0101】
(充放電サイクル評価)
得られたコイン電池について、充放電試験装置(北斗電工社製)を用い、電圧範囲3.0~4.2V、温度25℃で充放電サイクル評価を行った。初回の放電容量に対する、300サイクル目の容量を容量維持率(%)として算出した。
なお、比較例3は電池性能に悪影響を及ぼすNaイオンおよびClイオンを多量に含むものであり、評価開始後10サイクル未満で容量が大きく低下したため、測定不可とした。
【0102】
(4)顔料組成物の評価
(4-1)分散性
得られた顔料組成物を100倍に希釈し、粒子径分布測定装置(島津製作所製、SALD-7100)を用いて平均粒子径(D50)を測定し、以下の基準で評価した。
◎:平均粒子径が300μm未満
○:平均粒子径が300μm以上、350μm未満
△:平均粒子径が350μm以上、400μm未満
×:平均粒子径が400μm以上、又は、凝集
【0103】
(4-2)経時安定性(経時増粘性)
得られた顔料組成物について、コーンプレート型粘度計Gemini(Bohlin Instruments製)を用いて、25℃、せん断速度20s-1における初期粘度(Pa・s)を測定した。
【0104】
得られた顔料組成物について、初期粘度測定より30日後の粘度(Pa・s)を同様にして測定して粘度の変化率(%)を確認し、以下の基準で評価した。
〇:粘度変化率が10%未満
△:粘度変化率が10%以上、15%未満
×:粘度変化率が15%以上
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明によれば、分散性、接着性、経時安定性に優れるとともに、蓄電池の電極に用いた場合に電解液による劣化を防ぐことができ、高出力の蓄電池を作製することが可能な変性ポリビニルアセタール樹脂、該変性ポリビニルアセタール樹脂を用いた蓄電池電極用組成物及び顔料組成物、並びに、変性ポリビニルアルコール樹脂を提供できる。
【要約】
【課題】本発明は、分散性、接着性、経時安定性に優れるとともに、蓄電池の電極に用いた場合に電解液による劣化を防ぐことができ、高出力の蓄電池を作製することが可能な変性ポリビニルアセタール樹脂、並びに、該変性ポリビニルアセタール樹脂を用いた蓄電池電極用組成物及び顔料組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、塩素原子を有する構成単位を含む、変性ポリビニルアセタール樹脂である。
【選択図】なし