(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-27
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】車両座席用のリクライニング装置
(51)【国際特許分類】
A47C 1/025 20060101AFI20220112BHJP
B60N 2/225 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
A47C1/025
B60N2/225
(21)【出願番号】P 2021513865
(86)(22)【出願日】2019-09-24
(86)【国際出願番号】 IB2019058074
(87)【国際公開番号】W WO2020065515
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-04-28
(31)【優先権主張番号】102018000008904
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519234327
【氏名又は名称】マルトゥール・イタリー・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】ユステュンベルク,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ザンボン,ブルーノ
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1419700(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第10-1184190(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 1/025
B60N 2/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内歯車(5)を持つ第1のプレート(3)、および外歯車(11)を持つ第2のプレート(9)を備えるリクライニング装置(1)であって、
前記内歯車および前記外歯車が、互いと協働し、
前記外歯車(11)は、前記外歯車の外周の一部分の歯が前記内歯車の内周のそれぞれの部分の歯とかみ合うように前記内歯車(5)に対して偏心性に配置され、
前記リクライニング装置は、前記第1および第2のプレート(3、9)の相対回転を引き起こすための駆動機構(23)をさらに備え、
前記リクライニング装置は、係止ばね(21)をさらに備え、
前記係止ばね(21)は、前記係止ばね(21)が前記駆動機構と回転において一体であり、前記第1および第2のプレート(3、9)の相対回転を抑制する制動構成から、前記係止ばね(21)が前記駆動機構と回転においてもはや一体ではなく、前記第1および第2のプレート(3、9)の相対回転を可能にする非制動構成へ、またはその逆へ、切り替え可能であり、
前記係止ばね(21)は、前記プレートのうちの一方と一体である旋回大歯車(45)に係合することが意図される1つまたは複数の係止歯(41)、および前記係止歯(41)を前記旋回大歯車(45)の方へ弾性的に促す1つまたは複数のばねアーム(43)を備え、
前記ばねアーム(43)は、前記係止歯(41)を前記旋回大歯車(45)の方へ促すために前記プレートのうちの前記一方に当接し、
前記係止ばねは、略円形形状を有する薄板として作製される本体(31)を備え、
前記ばねアーム(43)は、前記係止ばねの前記本体(31)の外周囲から外向きに反対方向に延在し、
前記ばねアーム(43)の各々は、第1の外向きに突出する部分(43a)、および前記係止ばね(21)の前記本体(31)の外周に沿って延びる第2の部分(43b)を備え、
前記ばねアーム(43)の前記第2の部分(43b)は、各々、前記係止ばねの前記本
体の外周に沿って45°超の角度にわたって広がり、
前記ばねアーム(43)の前記第2の部分(43b)は、前記係止ばね(21)の前記本体(31)の外側リムから離れている、対応する前記ばねアームの前記第1の部分(43a)に近位の第1の区域(43b’)、および前記係止ばね(21)の前記本体(31)の前記外側リムに次第に接近する第2の区域(43b’’)を有し、
前記第2の区域(43b’’)は、前記係止ばね(21)の前記本体(31)の前記外側リムに実質的に接する、対応する前記ばねアームの前記第1の部分(43a)から遠位の自由端(43b’’’)で終了する、
ことを特徴とする、リクライニング装置(1)。
【請求項2】
前記ばねアーム(43)の前記第2の部分(43b)は各々、前記係止ばねの前記本体の外周に沿って約60°の角度にわたって広がる、
請求項1に記載のリクライニング装置(1)。
【請求項3】
前記係止ばね(21)の前記本体(31)は、略円形の全体的形状を有し、周囲の環状バンド(35)を規定する中央貫通孔(33)を備え、
前記ばねアーム(43)は、前記環状バンド(35)から外向きに延在する、
請求項1に記載のリクライニング装置(1)。
【請求項4】
前記係止ばねは、前記ばね係止の前記本体(31)の第1の直径(D1)に対して対称に配置される一対の係止歯(41)を備え、
前記係止ばねは、前記ばね係止の前記本体(31)の前記第1の直径(D1)に対して対称に配置される一対のばねアーム(43)を備える、
請求項3に記載のリクライニング装置(1)。
【請求項5】
前記ばねアーム(43)は、前記係止歯(41)に対して、前記係止ばねの前記本体(31)の前記第1の直径(D1)に垂直である第2の直径(D2)の反対側に配置される、
請求項4に記載のリクライニング装置(1)。
【請求項6】
前記係止ばね(21)の前記本体(31)は、前記係止ばね(21)の前記駆動機構(23)との係合のために、前記本体から前記駆動機構(23)の方へ突き出る1つまたは複数の屈曲タブ(37)を備える、
請求項1に記載のリクライニング装置(1)。
【請求項7】
第1および第2のくさび要素(17a、17b)が、前記内歯車および外歯車(5、11)の間の三日月形状の空間に配置され、
前記くさび要素は、それらの幅広部分が前記空間の中部近くで向かい合い、それらの幅狭部分が前記空間のそれぞれの反対端に向かって配向された状態で配置され、
くさびばね(19)が、前記くさび要素を互いから離して付勢するために提供される、
請求項1に記載のリクライニング装置(1)。
【請求項8】
前記係止ばね(21)は、前記第1または前記第2のくさび要素(17a、17b)に当接し、またそれに係合するようにされ得るくさび係合タブ(47)を備える、
請求項7に記載のリクライニング装置(1)。
【請求項9】
前記係止ばね(21)の前記本体(31)は、金属製である、
請求項1~8のいずれか一項に記載のリクライニング装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、車両座席用のリクライニング装置に関する。
[0002]より詳細には、本発明は、信頼性の向上した車両座席用のリクライニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[0003]車両座席は、一般的には、座席クッションを前方または後方に押すまたは引くためのスライド機能、座席クッションの高さを調節するための高さ調節機能、および座席クッションに対する座席背もたれの傾きを調節するためのリクライニング機能を有する。
【0003】
[0004]このリクライニング機能は、通常、座席クッションと座席背もたれとの間の接合部に配置されるリクライニング装置によって実施される。
[0005]座席クッションに装着され、内歯車を含む第1のプレート、および、座席背もたれに装着され、外歯車を含む第2のプレート、またはその逆のことが当てはまる第1のプレートおよび第2のプレート、を備えるリクライニング装置が、本技術分野で知られている。外歯車は、内歯車に対して偏心性に配置され、外歯車の外周の一部分の歯が、内歯車の内周のそれぞれの部分の歯とかみ合う。駆動機構は、座席クッションに対する座席背もたれの傾きを修正するために、外歯車および内歯車を互いに対して回転させるように配置される。
【0004】
[0006]外歯車および内歯車の互いに対する偶発的な望ましくない回転を防ぐために、一対のくさび要素が、内歯車のハブと外歯車の中央孔にはめ込まれた軸受との間の空間に配置される。外歯車が内歯車に対して偏心性に配置されるため、内歯車の上記ハブおよび外歯車と一体の上記軸受の間に規定される空間は、三日月形状である。したがって、互いに同じ構成を有しかつ互いに対称に配置されるくさび要素は、幅広部分および幅狭部分を有し、くさび要素は、それらの幅広の部分が、三日月形状の空間の中部近くで向かい合う一方、それらの幅狭部分が、上記三日月形状の空間のそれぞれの反対側に向かって配向されるように、三日月形状の空間に配置される。
【0005】
[0007]リクライニング装置は、2つの平行なアームで終わる円形部分を備えるオメガ形状を有するくさびばねをさらに備え、上記アームの各々が、それに応じてばねアームのための好適な座部を備えるそれぞれのくさび要素に係合する。くさびばねは、くさび要素を互いから離して付勢し、その結果として、くさび要素は、三日月形状の空間の反対端の方へ押され、内歯車のハブの表面および外歯車と一体の軸受の表面に圧接し、こうしてそれらのくさび効果をもたらし、外歯車および内歯車の互いに対する回転を防ぐ。
【0006】
[0008]上で説明される種類のリクライニング装置は、例えば、文書US2010/0308634、EP2 272 707、およびEP2 586 650に示される。
[0009]座席背もたれが最初に設定された位置とは異なる位置へ変わること、またはクリープすることを抑制するために、リクライニング装置は、係止ばねをさらに備える。そのようなものとして、係止ばねは、動的な動作状態の間所望の座席背もたれ位置を維持すること、ならびにリクライニング装置および関連付けられた座席背もたれの回転クリープを回避することを助けることができる。
【0007】
[0010]US9 167 898は、そのような係止ばねを備えるリクライニング装置を開示する。
[0011]前述の文書に開示される係止ばねは、駆動機構と内歯車および外歯車との間に配置され、また、金属の薄板として作製され、外歯車または外歯車と一体のほこりよけに係合するように構成される1つまたは複数の係止歯を備える本体を備える。より詳細には、上記係止歯は、内歯車および外歯車の相対回転を防ぐために、上記外歯車上または上記ほこりよけ内に提供される旋回大歯車の2つの連続した歯の間の空間に受容されるように構成され、通常は、係止ばねの本体に対称に配置される2つの係止歯が設けられる。
【0008】
[0012]係止ばねの本体は、係止ばねが駆動機構と一緒に回転することができるように、1つまたは複数の駆動機構係合要素も備える。
[0013]係止ばねは、通常、内歯車および外歯車の相対回転が抑制される制動構成にある。この目的のため、係止ばねの本体は、外歯車に設けられた隆起したリムに係合し、係止歯を上述した旋回大歯車の歯の方へ付勢することができる1つまたは複数のばねアームをさらに備える。
【0009】
[0014]係止ばねの本体は、くさびばねのアームが通過する1つまたは複数の窓をさらに備える。各窓の縁は、くさびばねの対応するアームに係合して駆動機構および係止ばねの回転時にくさびばねを作動させるように構成される。
【0010】
[0015]上で述べたように、係止ばねは、一般的には、制動構成へ付勢されており、制動構成から非制動構成への切り替えは、駆動機構および係止ばねを時計回りまたは反時計回りのいずれかの方向に回転させることによって発生し得る。
【0011】
[0016]制動構成において、係止ばねは、そのばねアームにより、係止歯が受容されて、外歯車または上記外歯車と一体のほこりよけに設けられた旋回大歯車の連続した歯の間の空間に係止される位置へ付勢される。
【0012】
[0017]ユーザが座席クッションに対する座席背もたれの傾きを修正することを望むとき、駆動機構は、時計回りまたは反時計回りのいずれかに回転される。
[0018]駆動機構の回転は、係止ばねが駆動機構と一緒に回転することを引き起こし、この係止ばねの回転は、係止歯が旋回大歯車の連続した歯の間の空間にもはや係止されない位置へ係止歯を動かす。
【0013】
[0019]駆動機構および係止ばねのさらなる回転時には、くさびばねのアームは、係止ばね本体の対応する窓の縁に係合し、くさびばねによってもたらされた付勢力が、上記くさびばねのアームを上記窓の上記縁と係合したままにし、こうして係止ばねの回転を制限する。
【0014】
[0020]その結果、係止ばねは、わずかに上方に動き、係止歯は、旋回大歯車の歯からさらに離れる方へ動く。結果として、係止歯は、撤退し、旋回大歯車の歯から離れたところに保持されるため、制動を防ぎ、それにより内歯車および外歯車の相対回転を許容する。
【0015】
[0021]係止ばねがわずかに上方に動いてから間もなくして、または直後に、駆動機構は、くさび要素のうちの1つに係合し、駆動機構のさらなる回転は、外歯車が内歯車に対して回転し始めることを可能にするため、座席背面が旋回することが可能になる。
【0016】
[0022]US9 167 898に開示される構成、すなわち、上記文書に開示される係止ばねの構成は、いくつかの関連欠点を有する。
[0023]より詳細には、制動構成にある係止ばねを付勢するために使用されるばねアームは、係止ばねの板状の本体の外周囲に対して内向きに延在する。
【0017】
[0024]その結果、リクライニング装置の動作中、これらのばねアームは、係止ばねの本体に接触して、それをこすることができ、こうして摩擦が生じる。
[0025]これは、係止ばねの摩耗およびリクライニング装置の故障を伴い得る。
【0018】
[0026]DE102011016656は、上に説明されるものと同じ構造を実質的に有し、係止歯を旋回大歯車の方へ弾性的に促すためにばねアームを備える係止ばねを開示し、この係止ばねにおいて、ばねアームは、係止ばねの本体の外周囲から外向きに延在する。
【0019】
[0027]その結果、動作中、ばねアームは、係止ばねの本体と接触せず、こすれは発生しない。
[0028]WO2012/065721もまた、同様の構造を有する係止ばねを開示する。
【0020】
[0029]しかしながら、これらの解決策は、関連欠点を有する。
[0030]より詳細には、DE102011016656に開示される係止ばねは、第1の外向きに突出している部分および係止ばねの本体の外周に平行に延びる第2の部分を有する2つのばねアームを備える。そのような第2の部分は、非常に短く、係止ばね本体の外周の小角にわたって広がる。結果として、上で列挙した文書に開示されるような係止ばねの正しくかつ信頼できる動作は、幾何形状、およびばねアームの剛性に大きく依存する。
【0021】
[0031]したがって、そのようなばねアーム、より一般的には係止ばね、を設計することにおいて許される許容誤差は非常に低く、このことは製造費用の増加を伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
[0032]本発明の主な目的は、リクライニング装置の信頼性を増大し、その製造費用を低減することを可能にする、新規の改善された設計を有する係止ばねを備えるリクライニング装置を提供することによって、そのような欠点を未然に防ぐことである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
[0033]この目的および他の目的は、添付の特許請求の範囲において特許請求されるようなリクライニング装置によって達成される。
[0034]本発明は、車両座席用のリクライニング装置であって、
- 内歯車を含む第1のプレートおよび外歯車を含む第2のプレートであって、上記外歯車が、上記内歯車に対して偏心性に配置され、上記外歯車の歯が、上記歯車の円周の一部分において上記内歯車の歯とかみ合う、内歯車を含む第1のプレートおよび外歯車を含む第2のプレートと、
- 上記外歯車および上記内歯車の互いに対する回転を防ぐためのくさび効果をもたらすように構成される第1および第2のくさび要素、ならびに、上記くさび要素を、それらが上記くさび効果をもたらす構成へ付勢するくさびばねと、
- 第1のプレートに対する第2のプレートの傾きを調節するために、外歯車および内歯車を互いに対して回転させるための駆動機構と、
- リクライニング装置の回転を選択的に防ぐまたは許容するために、制動構成から非制動構成へ切り替え可能である係止ばねであって、上記係止ばねは、その制動構成にあるとき駆動機構と回転において一体であり、その非制動構成にあるとき駆動機構と回転において一体ではない、係止ばねと、を備える、リクライニング装置に関する。
【0024】
[0035]上記係止ばねは、略円形形状を有し、好ましくは金属製である薄板として作製される本体を備え、また、係止ばねがその制動構成にあるとき上記第1および第2のプレートのうちの一方と一体の旋回大歯車に係合するように、および係止ばねがその非制動構成にあるとき上記旋回大歯車から撤退されるように構成される1つまたは複数の係止歯を備える。
【0025】
[0036]係止ばねの本体は、上記プレートのうちの上記一方に当接し、上記係止歯を上記旋回大歯車の方へ付勢することができる一対のばねアームをさらに備え、こうして係止ばねを制動構成の方へ付勢する。
【0026】
[0037]本発明によると、上記ばねアームは、係止ばねの本体の外周囲から外向きに、および反対方向に延在する。
[0038]そのような配置のおかげで、動作中の係止ばねの本体に対するばねアームのこすれは回避され得る。
【0027】
[0039]本発明によると、上記ばねアームの各々は、第1の外向きに突出する部分、および係止ばねの本体の外周に沿って延びる第2の部分を備え、上記第2の部分は、注目に値する延長を有し、係止ばね本体の外周に沿って45°超の角度にわたって広がる。
【0028】
[0040]したがって、ばねアームは、先行技術に従う係止ばねのばねアームよりもはるかに大きい、大きな接触面積をもたらす。
[0041]その結果、本発明に従う係止ばねの動作は、先行技術に従う係止ばねよりも、正確な幾何形状およびばねアームの剛性に対する依存が小さい。
【0029】
[0042]これは、係止ばね製造においてあまり厳しくない許容誤差を有することを可能にし、こうして上記係止ばねの製造費用を低減することを可能にする。
[0043]実際、ばねアームによってもたらされる大きな接触面積に起因して、高い許容誤差の場合にさえ、ばねアームは、係止歯を制動構成の方へ促すための反対表面に当接することになる。
【0030】
[0044]本発明の好ましい実施形態において、各ばねアームの第2の部分は、係止ばね本体の外周に平行に延びず、代わりに、そのような第2の部分は、高い許容誤差を補う能力が増大されるように不規則なプロファイルを有する。
【0031】
[0045]特に好ましい実施形態において、各ばねアームの第2の部分は、係止ばね本体の外側リムから離れている、ばねアームの第1の部分に近位の第1の区域、および係止ばね本体の外側リムに次第に接近する第2の区域を有する。上記第2の区域は、係止ばね本体の外側リムに実質的に接する、ばねアームの第1の部分から遠位の自由端で終了する。
【0032】
[0046]本発明の好ましい実施形態において、係止ばねの本体は、略円形形状を有し、ばねアームは、係止ばね本体の第1の直径に対して対称配置される。
[0047]この好ましい実施形態によると、係止ばねは、係止ばね本体の上記第1の直径に対して対称配置される2つの係止歯を備える。
【0033】
[0048]本発明のこの好ましい実施形態によると、係止歯は、ばねアームとは反対の上記係止ばね本体の第2の直径の側に係止ばね本体の円周に沿って配置され、上記第2の直径は、上記係止ばね本体の上記第1の直径に垂直である。
【0034】
[0049]本発明の好ましい実施形態によると、係止ばねは、第1または第2のくさび要素に当接し、またそれに係合するようにされ得るくさび係合要素をさらに備える。結果として、リクライニング装置の係止構成において、くさび要素の望ましくない自己回転は、上記くさび係合要素を通じて係止ばねによって直接的に制限される。
【0035】
[0050]係止ばねとくさび要素との直接的な相互作用は、有利には、運動学的な伝達の連鎖をより単純にし、係止ばねとくさび要素との間の力および機能のいかなる損失も回避し、こうしてリクライニング装置をより信頼性の高いものにする。
【0036】
[0051]本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照して、非限定的な例により提供される、本発明の好ましい実施形態の詳細な説明からより明白になるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】[0052]本発明に従うリクライニング装置の分解斜視図である。
【
図2】[0053]駆動機構が取り外された状態で示される、
図1のリクライニング装置の正面図である。
【
図3】[0054]
図1のリクライニング装置の係止ばねの正面図である。
【
図4a】[0055]制動構成にある
図1および
図2のリクライニング装置の係止ばねと第1のプレートとの係合を詳細に示す図である。
【
図4b】[0056]非制動構成にある
図1および
図2のリクライニング装置の係止ばねと第1のプレートとの係合を詳細に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
[0057]
図1および
図2を参照すると、本発明に従うリクライニング装置1が示される。
[0058]上記リクライニング装置1は、座席クッション(または座席背もたれ)に装着され得、内歯車5を含む第1のプレート3、および座席背もたれ(または座席クッション)に装着され得、外歯車11を含む第2のプレート9を備える。
【0039】
[0059]第1のプレート3は、第2のプレートの外歯車11および第1のプレートの内歯車5が協働できるように、第2のプレート9のハブ7が挿入され得る中央孔13を備える。
【0040】
[0060]本来知られている様式において、内歯車5および外歯車11は、互いに対して偏心性に配置され、外歯車11の外周の一部分の歯が、内歯車5の内周のそれぞれの部分の歯とかみ合う。
【0041】
[0061]第2のプレート9のハブ7および第1のプレート3の中央孔13にはめ込まれた軸受15は、それらの間に、第1および第2のくさび要素17a、17bを受容する三日月形状の空間を規定し、これら第1および第2のくさび要素17a、17bは、それらの幅広部分が上記三日月形状の空間の中部近くで向かい合い、それらの幅狭部分が上記三日月形状の空間のそれぞれの反対端に向かって配向された状態で配置される。
【0042】
[0062]2つの平行なアームで終わる円形部分を備えるオメガ形状を有するくさびばね19は、そのアームによりくさび要素17a、17bと係合し、上記くさび要素を互いから離して付勢し、その結果として、それらは、三日月形状の空間の反対端の方へ押され、上記ハブ7の表面および上記軸受15の表面に圧接する。
【0043】
[0063]リクライニング装置は、外歯車および内歯車が互いに対して回転することを可能にするためにくさび要素17a、17bに対して作用するように配置される駆動機構23を含む。駆動機構23は、リクライニング装置の構成要素をまとめて詰め込んで、リクライニング装置の横方向の動きを制限するためのブッシュ25に係合するスナップリング23aを備える。
【0044】
[0064]リクライニング装置1はまた、好ましくはプラスチック材料製である第1のカバー27、および好ましくは金属製である第2のカバー29を備える。
[0065]依然として
図1および
図2を参照すると、リクライニング装置1は、
図3により詳細に示される係止ばね21をさらに備える。
【0045】
[0066]係止ばね21は、薄板として作製され、好ましくは金属製であり、示される実施形態によると、略円形の全体的形状を有する本体31を備える。
[0067]係止ばねの本体31は、駆動機構23が貫通し、周囲の環状バンド35を規定する中央貫通孔33を備える。
【0046】
[0068]一対の屈曲タブ37が、上記駆動機構との係合のため、上記環状バンド35から駆動機構23の方へ突き出る。上記屈曲タブ37は、好ましくは、係止ばねの本体31の第1の直径D1に対して対称に配置される。
【0047】
[0069]一対の屈曲アーム39は、ばね係止の中央貫通孔33の中心の方へ環状バンド35から内向きに延在し、この屈曲アーム39は、くさび要素17a、17bに接触するように構成される。上記屈曲アーム39は、好ましくは、係止ばねの本体31の上記第1の直径D1に対して対称に配置される。
【0048】
[0070]一対の係止歯41は、環状バンド35から外向きに延在する。上記係止歯39は、好ましくは、ばね係止の本体31の上記第1の直径D1に対して対称に配置される。
[0071]係止歯41は、第1のプレート3と一体である旋回大歯車45(
図1および
図2参照)に係合することが意図される。より詳細には、各係止歯41は、旋回大歯車45の2つの連続した歯の間の空間内へ貫通することが意図され、こうして第1および第2のプレート3、9の相対回転を抑制する。
【0049】
[0072]代替の実施形態において、係止ばねの係止歯は、第2のプレート9と一体である旋回大歯車に係合することが意図され得、第1および第2のプレート3、9の相対回転を抑制するという同じ結果を伴うことは明白である。
【0050】
[0073]係止ばね21は、通常、係止歯41が旋回大歯車45に係合する制動構成に付勢される。
[0074]この目的のため、係止ばね21は、第1のプレート3(この目的のため、突出するリムを備え得る)に当接し、係止歯41を旋回大歯車45の方へ弾性的に促す、一対のばねアーム43を備える。
【0051】
[0075]本発明によると、ばねアーム43は、係止ばねの本体31の円周から、すなわち環状バンド35から、外向きに反対方向に延在する。
[0076]この配置のおかげで、ばねアーム43は、動作中係止ばね21の本体31をこすらず、その結果として、望ましくない摩擦のいかなるリスクも回避される。
【0052】
[0077]これは、係止ばねの故障ならびに上記係止ばねのばねアームの早期摩耗を回避することを可能にするため、いくつかの利点を伴う。
[0078]本発明によると、上記ばねアーム43の各々は、第1の外向きに突出する部分43a、および係止ばねの本体の外周に沿って延びる第2の部分43bを備える。
【0053】
[0079]各ばねアーム43のそのような第2の部分43bは、注目に値する延長を有し、係止ばね21の本体31の外周に沿って45°超の角度にわたって、好ましくは係止ばね21の本体31の外周に沿って約60°の角度にわたって広がる。
【0054】
[0080]したがって、係止ばね21の動作は、幾何形状、およびばねアーム43の剛性にあまり依存せず、その結果として、上記ばねアームを製造することにおけるより大きい許容誤差が、係止ばねの信頼性を脅かすことなく可能にされる。
【0055】
[0081]
図3に示される好ましい実施形態において、各ばねアームの第2の部分43bは、係止ばね本体の外周に平行に延びない。代わりに、そのような第2の部分43bは、高い許容誤差を補う能力が増大されるように、不規則なプロファイルを有する。
【0056】
[0082]詳細には、
図3に示される好ましい実施形態において、各ばねアーム43bの第2の部分43bは、係止ばね21の本体31の外側リムから離れている、ばねアームの第1の部分に近位の第1の区域43b’、および係止ばね21の本体31の外側リムに次第に接近する第2の区域43b’’を有する。
【0057】
[0083]上記第2の区域43b’’は、係止ばねの本体31の外側リムに実質的に接する、ばねアーム43の第1の部分43aから遠位の自由端43b’’’で終了する。
[0084]そのような構成に起因して、各ばねアームの第2の部分の少なくとも1つの区域は、係止歯41を旋回大歯車45の方へ効果的に促すための第1のプレート3に当接することになる。
【0058】
[0085]
図3に明確に示されるように、本発明によると、係止歯41は、ばねアーム43に対して、第1の直径D1に垂直の係止ばね本体の第2の直径D2の反対側で、環状バンド35に配置される。
【0059】
[0086]図に示される好ましい実施形態において、係止ばね21は、くさび要素17a、17bと直接的に協働するように構成される。
[0087]この目的のため、係止ばね21は、第1または第2のくさび要素に当接し、またそれに係合するようにされ得るくさび係合タブ47を備える。
【0060】
[0088]リクライニング装置の係止構成において、くさび要素17a、17bは、わずかな回転を受ける場合があるが、係止ばね21のくさび係合タブ47が第1または第2のくさび要素17a、17bに当接し、またそれに係合するとすぐに、くさび要素のさらなる回転は防がれる。
【0061】
[0089]係止ばね21とくさび要素17a、17bとの直接的な相互作用は、係止ばねとくさび要素との間の力および機能のいかなる損失も回避することを可能にする。
[0090]本発明に従うリクライニング装置1の動作、およびより詳細には係止ばね21の動作は、
図4a、4bを特に参照してここで以下に説明される。
【0062】
[0091]通常の状況下で、係止ばね21は制動構成にある(
図4a参照)。
[0092]この構成では、係止歯41は、ばねアーム43によって、第1のプレート3の旋回大歯車45の方へ(すなわち、図内では下方へ)付勢され、上記係止歯の各々は、上記旋回大歯車45の2つの連続した歯の間の空間に受容される。
【0063】
[0093]上記構成において、第1および第2のプレートの相対回転は抑制される。
[0094]ユーザが座席クッションに対する座席背もたれの傾きを調節することを望むとき、リクライニング装置は、駆動機構23を時計回りまたは反時計回りのいずれかの方向に回転させることによって、制動構成から非制動構成へと動かされ得る。
【0064】
[0095]駆動機構23が回転されるとき、係止ばね21は、上記係止ばね21の屈曲タブ37の上記駆動機構23との係合に起因して、駆動機構と一緒に回転する。
[0096]係止ばね21のこのような回転は、係止歯41が旋回大歯車45の隣接する歯の間にもはや係止されないように、係止歯41を動かす(ばねアーム43の弾性抵抗を克服することによって)。
【0065】
[0097]同時に、係止ばねの回転は、係止ばねのくさび係合タブ47に、くさび要素17a、17bのうちの一方との係合をもたらす。
[0098]駆動機構23のさらなる回転の際、くさび係合タブ47とくさび要素17a、17bとの係合は、係止ばね21の回転を制限し、その結果、係止ばね21の係止歯41は、旋回大歯車45からさらに離れる方へ(すなわち、図内では上方に)動き、結果として、それらは、上記旋回大歯車の歯から撤退して、そこから離れて保持される(
図4b参照)。
【0066】
[0099]リクライニング装置はこのとき非制動構成にあり、駆動機構23のさらなる回転は、第1および第2のプレート3、9の相対回転を引き起こし、結果として、座席クッションに対する座席背もたれの傾きの変動を引き起こす。
【0067】
[0100]本発明の好ましい実施形態のこの説明は、単に例として提供されており、当業者の届く範囲のいくつかの異形および変更形態は、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の範囲から逸脱することなく、予想され得る。