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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】ROR1抗体組成物及び関連の方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220128BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220128BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220128BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220128BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
C12N15/63 Z
C07K19/00
A61K39/395 T
A61K39/395 L
A61K47/68
A61P35/00
A61P35/02
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2018537754
(86)(22)【出願日】2017-01-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-04
(86)【国際出願番号】 US2017014311
(87)【国際公開番号】W WO2017127664
(87)【国際公開日】2017-07-27
【審査請求日】2020-01-09
(31)【優先権主張番号】62/280,843
(32)【優先日】2016-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501244222
【氏名又は名称】ザ スクリプス リサーチ インスティテュート
(73)【特許権者】
【識別番号】515255205
【氏名又は名称】エヌビーイー セラピューティクス アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】レイダー クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ペン ハイヨン
(72)【発明者】
【氏名】ベールリ ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルトマイアー ローレンツ
(72)【発明者】
【氏名】グラヴンダー ウルフ
【審査官】玉井 真人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/079902(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/124188(WO,A1)
【文献】特表2015-532644(JP,A)
【文献】国際公開第2012/075158(WO,A1)
【文献】Clinical Lymphoma, Myeloma & Leukemia, 2015, Vol.15, S167-S169
【文献】Bioconjugate Chem., 2014, Vol.25, pp.1402-1407
【文献】Leukemia, 2012, Vol.26, pp.1348-1355
【文献】Clin. Cancer. Res., 2013, Vol.19, pp.3153-3164
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号27に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号28に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2及び
配列番号29に記載のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、並びに
配列番号66に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号67に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2及び
配列番号68に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3
を含む、ヒト受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体、抗体ベースの結合タンパク質又は抗原結合性抗体フラグメント。
【請求項2】
重鎖可変領域配列と軽鎖可変領域配列とを含み、その一方又は両方が、配列番号1と配列番号14にそれぞれ示される重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列と少なくとも90%又は少なくとも95%同一であり、
但し、重鎖CDR1が配列番号27に記載のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2が配列番号28に記載のアミノ酸配列を含み、および重鎖CDR3が配列番号29に記載のアミノ酸配列を含み、並びに軽鎖CDR1が配列番号66に記載のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2が配列番号67に記載のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3が配列番号68に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体、抗体ベースの結合タンパク質又は抗原結合性抗体フラグメント。
【請求項3】
配列番号1と配列番号14にそれぞれ示される重鎖可変領域配列と軽鎖可変領域配列とを含む、請求項1又は2に記載の抗体、抗体ベースの結合タンパク質又は抗原結合性抗体フラグメント。
【請求項4】
キメラ抗体又はヒト化抗体を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体、抗体ベースの結合タンパク質又は抗原結合性抗体フラグメント。
【請求項5】
(1)配列番号130~135から選択される配列と同一の免疫グロブリン重鎖可変領域配列及び(2)配列番号136~141から選択される配列と同一の免疫グロブリン軽鎖可変領域配列を含む、請求項に記載の抗体、抗体ベースの結合タンパク質又は抗原結合性抗体フラグメント。
【請求項6】
(1)配列番号130と配列番号136;(2)配列番号131と配列番号137;(3)配列番号132と配列番号138;(4)配列番号133と配列番号139;(5)配列番号134と配列番号140;又は(6)配列番号135と配列番号141にそれぞれ示される重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列と同一の記載の重鎖可変領域配列と軽鎖可変領域配列とを含む、請求項に記載の抗体、抗体ベースの結合タンパク質又は抗原結合性抗体フラグメント。
【請求項7】
IgA1、IgA2、IgD、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、合成IgG、IgM、F(ab)2、Fv、scFv、IgGACH2、F(ab’)2、scFv2CH3、Fab、VL、VH、scFv4、scFv3、scFv2、dsFv、Fv、scFv-Fc、(scFv)2、非枯渇IgG、ダイアボディ、及び二価抗体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体、抗体ベースの結合タンパク質又は抗原結合性抗体フラグメント。
【請求項8】
合成分子に結合した、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体、抗体ベースの結合タンパク質又は抗原結合性抗体フラグメント。
【請求項9】
前記合成分子が、標識、細胞傷害剤、治療用放射性同位体、又はリポソームである、請求項8に記載の抗体、抗体ベースの結合タンパク質又は抗原結合性抗体フラグメント。
【請求項10】
前記細胞傷害剤が、低分子量毒素、又はペプチド毒素、若しくはタンパク質毒素である、請求項9に記載の抗体、抗体ベースの結合タンパク質又は抗原結合性抗体フラグメント。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性抗体フラグメントと、少なくとも1種の細胞傷害剤を含む、抗体薬物複合体(ADC)。
【請求項12】
前記細胞傷害剤が、低分子量毒素、ペプチド毒素、又はタンパク質毒素である、請求項11に記載の抗体薬物複合体。
【請求項13】
前記抗体又は抗原結合性抗体フラグメントが、ソルターゼ酵素媒介抗体結合(SMAC)を介して前記細胞傷害剤に結合される、請求項11に記載の抗体薬物複合体。
【請求項14】
前記細胞傷害剤が、アントラサイクリン(PNU)毒素誘導体Gly(n)-EDA-PNUであり、ここで、nは、1~21の任意の数である、請求項11に記載の抗体薬物複合体。
【請求項15】
前記抗体又は抗原結合性抗体フラグメントが、キメラ又はヒト化されている、請求項11に記載の抗体薬物複合体。
【請求項16】
1)配列番号130と配列番号136;(2)配列番号131と配列番号137;(3)配列番号132と配列番号138;(4)配列番号133と配列番号139;(5)配列番号134と配列番号140;又は(6)配列番号135と配列番号141にそれぞれ示される重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列と同一である重鎖可変領域配列と軽鎖可変領域配列とを含む抗体又は抗体フラグメント、および
アントラサイクリン(PNU)毒素誘導体Gly (n) -EDA-PNUであり、ここで、nは、1~21の任意の数である、細胞傷害剤
を含む、抗体薬物複合体(ADC)。
【請求項17】
膜貫通領域及び細胞内T細胞受容体(TCR)シグナル伝達ドメインと融合した、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性抗体フラグメントを含むキメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項18】
前記抗体又は抗原結合性抗体フラグメントが、キメラ又はヒト化されている、請求項17に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項19】
以下:(1)請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体、抗体ベースの結合タンパク質若しくは抗原結合性抗体フラグメント又は(2)請求項11~16のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体(ADC)を含むキット。
【請求項20】
請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体、抗体ベースの結合タンパク質若しくは抗原結合性抗体フラグメントの前記重鎖又は軽鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチド。
【請求項21】
請求項20に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項22】
以下:(1)治療有効量の(a)請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体、抗体ベースの結合タンパク質若しくは抗原結合性抗体フラグメント又は(b)請求項11~16のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体(ADC)と、(2)薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項23】
被験者においてROR1を発現する細胞を殺傷するか、又はその増殖を阻害するための、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記細胞が、腫瘍細胞である、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記医薬組成物が、細胞傷害剤と結合した請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体、抗体ベースの結合タンパク質又は抗原結合性抗体フラグメントを含む抗体薬物複合体(ADC)を含む、請求項2224のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記細胞傷害剤が、小分子量毒素、ペプチド毒素、又はタンパク質毒素である、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
ROR1の発現増大に関連する疾患又は障害を有する被験者のROR1の発現増大に関連する疾患又は障害を治療するための、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記疾患又は状態が、癌である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記疾患又は状態が、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、マントル細胞リンパ腫、神経芽細胞腫、肉腫、腎細胞癌、乳癌、肺癌、結腸癌、頭部及び頚部癌、及び黒色腫からなる群から選択される、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記医薬組成物が、細胞傷害剤と結合した請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体、抗体ベースの結合タンパク質又は抗原結合性抗体フラグメントを含む抗体薬物複合体(ADC)を含む、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記細胞傷害剤が、小分子量毒素、ペプチド毒素、又はタンパク質毒素である、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記抗体又は抗原結合性抗体フラグメントが、膜貫通領域及び細胞内T細胞受容体(TCR)シグナル伝達ドメインと融合して、キメラ抗原受容体(CAR)を形成する、請求項30又は31に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮特許出願第62/280,843号明細書(2016年1月20日出願)に対する優先権の利益を主張する。優先出願の全開示内容は、全体として、及びあらゆる目的のために、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
癌は、主な死亡原因の1つである。これは、細胞の不死化を招く遺伝子変化、例えば、染色体転位、腫瘍抑制遺伝子、転写因子若しくは増殖因子受容体の突然変異などに起因する、正常細胞の悪性形質転換によって引き起こされる疾患の1クラスである。不死化が、過剰増殖と組み合わされると、不死化細胞は、転移を伴う、若しくは伴わない(固形腫瘍の場合)腫瘍、又は白血病及びリンパ腫(血液の癌)を発生する。アポトーシス、又はプログラム細胞死の欠損は、癌を引き起こす細胞の悪性形質転換にさらに寄与し得る。
【0003】
受容体チロシンキナーゼオーファン受容体-1及び-2(ROR1及びROR2)から構成される膜結合性受容体チロシンキナーゼのファミリーは、特定の癌に特に関連するものとして記載されている(Rebagay et al.(2012)Front Oncol.2(34))が、ごくわずかな例外を除いて、正常組織上の発現にはほとんど存在しない(Balakrishnan et al.(2016)Clin Cancer Res. doi:10.1158/1078-0432)。ROR発現が、腫瘍発生と機能的に関連しているか否かは依然として不明のままである。しかし、RORファミリーメンバーの極めて腫瘍選択的な発現のために、これらは、標的癌療法にとって適切な標的を代表するものである。受容体チロシンキナーゼオーファン受容体-1(ROR1)は、慢性リンパ性白血病(CLL)とのそのほぼ100%の関連(Cui et al.(2016)Blood 128(25),p.2931)、並びに肺及び乳房などの特定の固形腫瘍にも発現されるという観察結果(Balakrishnan et al.(2016)Clin Cancer Res.doi:10.1158/1078-0432)によって、癌標的として特に関心を集めている。RORファミリーのメンバーは、3つの個別の細胞外ドメイン、Ig、クリングル(Kringle)及びフリズルド(Frizzled)ドメインと、それに続く膜貫通領域、並びに細胞内部分を含む1型膜貫通タンパク質である。細胞内部分内で、ROR1は、チロシンキナーゼドメイン、2つのセリン/トレオニンリッチドメイン及びプロリンリッチドメインを有する。RORは、様々なホモログによる胚のパターン形成及び神経発生に関して研究されている。これらの生理学的機能は、キナーゼドメインの要件に基づいて二分されている。ますます多くの文献が、例えば、ROR1発現がほぼ100%相関する慢性リンパ性白血病(CLL)、いくつかの急性リンパ芽球性リンパ腫(ALL)、マントル細胞リンパ腫、及びいくつか他の血液悪性疾患などの癌のマーカとしてROR1を立証している。さらに、ROR1は、いくつかの固形腫瘍、例えば、神経芽細胞腫、肉腫、腎細胞癌、乳癌、肺癌、結腸癌、頭部及び頚部癌、黒色腫、及びその他の癌などの進行に決定的に関与している。ROR1は、アポトーシスを阻害し、EGFRシグナル伝達を強化し、上皮間葉転換(EMT)を誘導して、カベオラ形成に寄与する。重要なことには、ROR1は、主に胚組織中で検出可能であり、概して、成体組織中に存在しないため、このタンパク質は癌療法にとって理想的な薬剤標的となる。従って、ROR1は、以前からROR1特異的抗体の開発のための標的として認識されている。しかし、様々な哺乳動物種間でのROR1の高い相同性(ヒトとカニクイザルとの間のアミノ酸レベルで100%保存され、ヒトとマウスの間で96.7%相同であり、またヒトとウサギの間で96.3%相同である)のために、動物の免疫のような標準的な技術ではこの標的に対する高親和性抗体を作製することは困難であった。
【0004】
少数のマウス及びウサギ抗体が文献で論じられている。例えば、国際公開第2007/051077号パンフレットは、CLL、小リンパ球性リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫及びバーキットリンパ腫などのリンパ腫に見いだされるネイティブROR1に対するヒト化抗体をはじめとする、モノクローナル抗体を論じている。薬剤(ROR1キナーゼ活性を阻害するROR1結合抗体であってもよい)を用いて腫瘍細胞の増殖を阻害する方法は、国際公開第2007/146957号パンフレットの主題である。国際公開第2011/054007号パンフレットでは、特異的ROR1ターゲティング抗体の投与による、ROR1の細胞外ドメインが発現される癌の治療又は予防方法が論じられた。
【0005】
さらに、国際公開第2010/124188号パンフレットは、抗ヒトROR1抗体、特に2A2の名称で呼ばれるモノクローナルマウス抗体について論じ、国際公開第2012/075158号パンフレットは、R11及びR12と呼ばれるモノクローナルウサギ抗体について述べる。特定のROR1ターゲティング抗体は、国際公開第2016/094873号パンフレットにも記載されている。国際公開第2011/079902号パンフレット及び同第2012/076066号パンフレットのいずれも、選択された細胞外ROR1ドメイン配列に結合する、細胞死を誘導することができるROR1の生物学的誘導体について論じた。国際公開第2014/031174号パンフレットは、99961と呼ばれる抗体と同じ結合特異性を有する抗ROR1抗体について述べている。抗ROR1抗体の結合エピトープについては、国際公開第2016/187220号パンフレットにさらに記述されている。国際公開第2011/159847号パンフレットは、ROR1に結合する特定のscFv抗体フラグメントについて論じた。国際公開第2014/167022号パンフレット、同第2016/055592号パンフレット及び同第2016/055593号パンフレットは、二重特異性ROR1ターゲティング抗体及びそれらの使用について論じ、国際公開第2015/184203号パンフレットは、三重特異性結合分子について論じた。ヒト化抗ROR1モノクローナル抗体を開示する特に新しい文献は、2A2、R11、R12若しくはD10などの独自に開示したマウス又はウサギ抗体に基づいている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
入手可能なROR1特異的モノクローナル抗体の数が少ないために、当技術分野には、より高い親和性、又は既知の抗体クローンにはない他の機能的特性を有する優れた抗ROR1抗体に対するニーズがある。さらに、例えば、ウエスタンブロッティング及び/又は免疫組織化学(IHC)によるROR1関連の疾患状態においてROR1発現を検出するための別の診断ツールに対するニーズも存在する。本発明は、これらの、及び他のニーズに取り組むことに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、本発明は、ヒト受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(hROR1)の細胞外ドメインに特異的に結合し、且つ、哺乳動物細胞に発現されるヒトROR1(hROR1)細胞外ドメインをベイトとして用いて、非免疫ウサギの高度に多様なファージディスプレイライブラリーから選択された、ウサギ抗体の新規の高親和性結合ドメインを提供する。ウサギ抗体の可変領域は、組換えタンパク質として、また、哺乳動物宿主細胞の表面に過剰発現されるhROR1の結合に基づいて、hROR1のECDに対する結合についてスクリーニングすることにより、選択されている。この戦略によって、これまでにない性質及び好都合な機能的特性の新規のhROR1抗体が同定されている。さらに、本発明は、ヒトIgC1抗体の定常領域ドメインに融合されたウサギ可変ドメインのキメラ完全長抗体を提供する。さらには、本発明は、可変イムノグロブリン重鎖及び軽鎖のフレームワークへの本明細書に開示するウサギ抗ROR1抗体のCDR移植によって作製された新規の高親和性ヒト化抗体も提供する。こうしたヒト化抗体は、内在性の、完全ヒト型に対して相同性が高いことから、ヒト疾患の治療法に使用することができる。本発明の第2の態様では、超強力アントラサイクリン毒素を含むキメラウサギ-ヒト及びヒト化抗ヒトROR1(hROR1)抗体をベースとする部位特異的結合抗体-薬物複合体(ADC)が本発明により提供される。部位特異的結合は、国際公開第2014140317号パンフレット(本明細書に参照により組み込まれる)実質的に開示されているように、ソルターゼ酵素を用いた酵素結合により達成される。様々なインビトロ及びインビボ腫瘍モデルにおいて前例のない効力を有する抗hROR1 ADCをもたらす超強力アントラサイクリン毒素は、国際公開第2016102679号パンフレット(本明細書に参照により組み込まれる)に開示されている。
【0008】
最後に、本発明は、インビトロで高い効果を示す前記抗hROR1結合ドメインを使用して、キメラ抗原受容体(CAR)及びこれらのCARで作製されたT細胞、すなわち、いわゆるCAR-T細胞を提供する。
【0009】
従って、本発明は、以下:(1)配列番号1と配列番号14;(2)配列番号2と配列番号15;(3)配列番号3と配列番号16;(4)配列番号4と配列番号17;(5)配列番号5と配列番号18;(6)配列番号6と配列番号19;(7)配列番号7と配列番号20;(8)配列番号8と配列番号21;(9)配列番号9と配列番号22;(10)配列番号10と配列番号23;(11)配列番号11と配列番号24;(12)配列番号12と配列番25;(13)配列番号13と配列番号26;(14)配列番号130と配列番号136;(15)配列番号131と配列番号137;(16)配列番号132と配列番号138;(17)配列番号133と配列番号139;(18)配列番号134と配列番号140;若しくは(19)配列番号135と配列番号141にそれぞれ示される、免疫グロブリン重鎖可変領域配列と免疫グロブリン軽鎖可変領域配列とを含むhROR1特異的抗体のものと同じhROR1に対する結合特異性を有する、抗hROR1抗体、抗体ベースの結合タンパク質、その抗体フラグメント、抗体薬物複合体(ADC)、又はCARに関する。
【0010】
本発明は、さらに、以下:(1)配列番号27~29と配列番号66~68、(2)配列番号30~32と配列番号69~71、(3)配列番号33~35と配列番号72~74、(4)配列番号36~38と配列番号75~77、(5)配列番号39~41と配列番号78~80、(6)配列番号42~44と配列番号81~83、(7)配列番号45~47と配列番号84~86、(8)配列番号48~50と配列番号87~89、(9)配列番号51~53と配列番号90~92、(10)配列番号54~56と配列番号93~95、(11)配列番号57~59と配列番号96~98、(12)配列番号60~62と配列番号99~101、若しくは(13)配列番号63~65と配列番号102~104に対して、それぞれ、少なくとも90%、若しくは少なくとも95%、又は95%超で、且つ100%未満同一である、免疫グロブリン重鎖CDR配列と免疫グロブリン軽鎖CDR配列とを含む、抗hROR1抗体、抗体ベースの結合タンパク質、その抗体フラグメント、抗体薬物複合体(ADC)、又はCARに関する。
【0011】
本発明は、さらに、以下:(1)配列番号27~29と配列番号66~68、(2)配列番号30~32と配列番号69~71、(3)配列番号33~35と配列番号72~74、(4)配列番号36~38と配列番号75~77、(5)配列番号39~41と配列番号78~80、(6)配列番号42~44と配列番号81~83、(7)配列番号45~47と配列番号84~86、(8)配列番号48~50と配列番号87~89、(9)配列番号51~53と配列番号90~92、(10)配列番号54~56と配列番号93~95、(11)配列番号57~59と配列番号96~98、(12)配列番号60~62と配列番号99~101、若しくは(13)配列番号63~65と配列番号102~104と、それぞれ同一である、免疫グロブリン重鎖CDR配列と免疫グロブリン軽鎖CDR配列とを含む、抗hROR1抗体、抗体ベースの結合タンパク質、その抗体フラグメント、抗体薬物複合体(ADC)、又はCARに関する。
【0012】
本発明は、さらに、以下:(1)配列番号1と配列番号14;(2)配列番号2と配列番号15;(3)配列番号3と配列番号16;(4)配列番号4と配列番号17;(5)配列番号5と配列番号18;(6)配列番号6と配列番号19;(7)配列番号7と配列番号20;(8)配列番号8と配列番号21;(9)配列番号9と配列番号22;(10)配列番号10と配列番号23;(11)配列番号11と配列番号24;(12)配列番号12と配列番25;若しくは(13)配列番号13と配列番号26にそれぞれ示される、免疫グロブリン重鎖可変領域配列と免疫グロブリン軽鎖可変領域配列に対して、アミノ酸レベルで、少なくとも90%、若しくは少なくとも95%、又は95%超で、且つ100%未満の同一性を有する免疫グロブリン重鎖可変領域配列又は免疫グロブリン軽鎖可変領域配列のいずれかを含む、抗hROR1抗体、抗体ベースの結合タンパク質、その抗体フラグメント、抗体薬物複合体(ADC)、又はCARに関する。
【0013】
本発明は、さらに、配列番号27~65からなる群から選択される免疫グロブリン重鎖CDR配列を含む、抗hROR1抗体、抗体ベースの結合タンパク質、その抗体フラグメント、抗体薬物複合体(ADC)、又はCARに関する。本発明は、さらに、配列番号66~104からなる群から選択される免疫グロブリン軽鎖CDR配列を含む、抗hROR1抗体、その抗体フラグメント、抗体薬物複合体(ADC)、又はCARに関する。一部の実施形態では、hROR1特異的抗体、抗体ベースの結合タンパク質、若しくはその抗体フラグメント、抗体薬物複合体(ADC)、又はCARは、以下:配列番号27~29、配列番号30~32、配列番号33~35、配列番号36~38、配列番号39~41、配列番号42~44、配列番号45~47、配列番号48~50、配列番号51~53、配列番号54~56、配列番号57~59、配列番号60~62、若しくは配列番号63~65とそれぞれ同一である、重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む。
【0014】
本発明は、さらに、以下:(1)配列番号1と配列番号14;(2)配列番号2と配列番号15;(3)配列番号3と配列番号16;(4)配列番号4と配列番号17;(5)配列番号5と配列番号18;(6)配列番号6と配列番号19;(7)配列番号7と配列番号20;(8)配列番号8と配列番号21;(9)配列番号9と配列番号22;(10)配列番号10と配列番号23;(11)配列番号11と配列番号24;(12)配列番号12と配列番25;(13)配列番号13と配列番号26;(14)配列番号130と配列番号136;(15)配列番号131と配列番号137;(16)配列番号132と配列番号138;(17)配列番号133と配列番号139;(18)配列番号134と配列番号140;若しくは(19)配列番号135と配列番号141と同一の免疫グロブリン重鎖可変領域配列又は免疫グロブリン軽鎖可変領域配列のいずれかを含む、抗hROR1抗体、抗体ベースの結合タンパク質、その抗体フラグメント、抗体薬物複合体(ADC)、又はCARに関する。
【0015】
本発明は、さらに、抗hROR1抗体、抗体ベースの結合タンパク質、その抗体フラグメント、抗体薬物複合体(ADC)、あるいは、以下:(1)配列番号1と配列番号14;(2)配列番号2と配列番号15;(3)配列番号3と配列番号16;(4)配列番号4と配列番号17;(5)配列番号5と配列番号18;(6)配列番号6と配列番号19;(7)配列番号7と配列番号20;(8)配列番号8と配列番号21;(9)配列番号9と配列番号22;(10)配列番号10と配列番号23;(11)配列番号11と配列番号24;(12)配列番号12と配列番25;(13)配列番号13と配列番号26;(14)配列番号130と配列番号136;(15)配列番号131と配列番号137;(16)配列番号132と配列番号138;(17)配列番号133と配列番号139;(18)配列番号134と配列番号140;若しくは(19)配列番号135と配列番号141とそれぞれ同一の、免疫グロブリン重鎖可変領域配列と免疫グロブリン軽鎖可変領域配列とを含有する、抗hROR1特異的抗体、抗体ベースの結合タンパク質又はその抗体フラグメントを含むCARに関する。
【0016】
一部の実施形態では、抗hROR1抗体、抗体ベースの結合タンパク質、その抗体フラグメント、抗体薬物複合体(ADC)、又はCARは、配列番号66~104からなる群から選択される免疫グロブリン軽鎖CDR配列を含む。これらの分子のいくつかは、配列番号27~65からなる群から選択される免疫グロブリン重鎖CDR配列をさらに含む。これらの分子のいくつかは、以下:配列番号66~68、配列番号69~71、配列番号72~74、配列番号75~77、配列番号78~80、配列番号81~83、配列番号84~86、配列番号87~89、配列番号90~92、配列番号93~95、配列番号96~98、配列番号99~101、又は配列番号102~104とそれぞれ同一である、免疫グロブリン軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む。一部の実施形態では、抗hROR1抗体、抗体ベースの結合タンパク質、その抗体フラグメント、抗体薬物複合体(ADC)、又はCARは、以下:(1)配列番号27~29と配列番号66~68、(2)配列番号30~32と配列番号69~71、(3)配列番号33~35と配列番号72~74、(4)配列番号36~38と配列番号75~77、(5)配列番号39~41と配列番号78~80、(6)配列番号42~44と配列番号81~83、(7)配列番号45~47と配列番号84~86、(8)配列番号48~50と配列番号87~89、(9)配列番号51~53と配列番号90~92、(10)配列番号54~56と配列番号93~95、(11)配列番号57~59と配列番号96~98、(12)配列番号60~62と配列番号99~101、若しくは(13)配列番号63~65と配列番号102~104にそれぞれ示される、免疫グロブリン重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列と、免疫グロブリン軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列とを含む。
【0017】
本発明は、さらに、以下:(14)配列番号130と配列番号136;(15)配列番号131と配列番号137;(16)配列番号132と配列番号138;(17)配列番号133と配列番号139;(18)配列番号134と配列番号140;又は(19)配列番号135と配列番号141に記載の免疫グロブリン重鎖と免疫グロブリン軽鎖に対して、アミノ酸レベルで、少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも95%で且つ100%未満の相同性を有する、hROR1特異的ヒト化抗体、抗体ベースの結合タンパク質、その抗体フラグメント、抗体薬物複合体(ADC)、又はCARに関する。
【0018】
また別の実施形態では、hROR1特異的抗体、抗体ベースの結合タンパク質又はその抗体フラグメントは、以下:IgA1、IgA2、IgD、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、若しくはIgMアイソタイプ、又はそれらのF(ab)2、Fv、scFv、IgGACH2、F(ab’)2、scFv2CH3、Fab、VL、VH、scFv4、scFv3、scFv2、dsFv、Fv、scFv-Fc、(scFv)2フラグメント、又は非枯渇IgG、ダイアボディ若しくは二価抗体のいずれかである。これらの分子のいくつかは、天然に存在するIgG1、IgG2、IgG3、IgG4アイソタイプ、又は合成IgGからなる群から選択されるIgGである。これらの分子のいくつかは、Fab、scFv、又はdsFvである。一部の実施形態では、本発明のhROR1特異的抗体、抗体ベースの結合タンパク質又はその抗体フラグメントは、合成分子と結合している。合成分子は、例えば、標識、細胞傷害剤、放射性同位体、又はリポソームであってよい。細胞傷害剤は、例えば、低分子量毒素、ペプチド毒素、又はタンパク質毒素であってよい。一部の実施形態では、hROR1特異的抗体、抗体ベースの結合タンパク質又はその抗体フラグメントは、膜貫通領域及び細胞内T細胞受容体(TCR)シグナル伝達ドメインと結合して、キメラ抗原受容体(CAR)を形成する。
【0019】
本発明は、さらに、hROR1特異的細胞の効率的な殺傷をもたらす毒素ペイロードと一緒に、hROR1特異的ヒト化若しくはキメラ抗体、抗体ベースの結合タンパク質又はその抗体フラグメントを含む抗体薬物複合体(ADC)に関する。前記ADCにおいて、毒素ペイロードは、マレイミド官能基を有する古典的な化学リンカー、又はリシン若しくはシステインアミノ酸側鎖との結合を媒介することができる当技術分野で公知の他の化学物質を使用し、リシン若しくはシステインアミノ酸側鎖を介して、抗体、抗体ベースの結合タンパク質又は抗体フラグメントと非部位特異的に結合することができる。前記ADCでは、低分子量ペイロードは、例えば、二官能価リンカー、ホルミル-グリシン形成酵素修飾抗体上でピクテ・スペングラー(Pictet-Spengler)化学を可能にするリンカー、グリカン-再モデル化抗体、又は細菌トランスグルタミナーゼ若しくはソルターゼ酵素のように、当技術分野で公知の化学、化学-酵素、若しくは酵素結合のいずれかによって、部位特異的に結合することもできる。
【0020】
一部の関連態様では、本発明は、治療に有効な量の本明細書に記載の抗hROR1抗体、抗体ベースの結合タンパク質、その抗体フラグメント、抗体薬物複合体(ADC)と、薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物又はキットを提供する。本発明のいくつかのキットは、1つ又は複数の免疫アッセイバッファーをさらに含み得る。さらに、本明細書に開示する抗hROR1抗体、抗体ベースの結合タンパク質、その抗体フラグメント、抗体薬物複合体(ADC)、又はCARの免疫グロブリン重鎖若しくは免疫グロブリン軽鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチド、並びにそのようなポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターも提供される。
【0021】
別の態様では、本発明は、hROR1を発現する細胞を殺傷するか、又はその増殖を阻害する方法を提供する。これらの方法は、治療有効量の本発明の抗hROR1抗体、抗体ベースの結合タンパク質、その抗体フラグメント、抗体薬物複合体(ADC)、又はCARを、それが必要な被験者に投与するステップを含み、これにより、被験者において、hROR1を発現する細胞を殺傷するか、又はその増殖を阻害することが可能になる。これらの方法の一部は、特に、腫瘍細胞を殺傷又は阻害することに関する。別の態様では、本発明は、被験者において、hROR1の発現増大に関連する疾患又は状態を治療する方法を提供する。これらの方法は、治療有効量の本発明の抗hROR1抗体、抗体ベースの結合タンパク質、その抗体フラグメント、ADC、又はCARを、hROR1の発現増大に関連する疾患又は状態に罹患した被験者に投与するステップを含み、これにより、被験者において、hROR1の発現増大に関連する疾患又は状態の治療が可能になる。これらの治療法の一部は、特に癌の治療に関する。例えば、これらの方法を用いて、例えば、CLL、ALL、マントル細胞リンパ腫、神経芽細胞腫、肉腫、腎細胞癌、乳癌、肺癌、結腸癌、頭部及び頚部癌、及び黒色腫を含む、多種多様な癌に罹患した被験者を治療することができる。
【0022】
さらに別の態様では、本発明は、被験者におけるROR1レベルの変化を検出する方法を提供する。こうした方法は、以下:(a)被験者から生体サンプルを取得するステップ;(b)サンプルを本発明の抗hROR1抗体、抗体ベースの結合タンパク質又はその抗体フラグメントと接触させるステップ;(c)生体サンプル中のROR1のレベルを決定するステップ;並びに(d)生体サンプル中のROR1レベルとROR1のコントロールレベルを比較することにより、生体サンプル中のROR1レベルが、ROR1のコントロールレベルに対して変化しているか否かを決定するステップを含む。これらの方法の一部では、コントロールレベルに対して、被験者のROR1レベルの増加は、被験者におけるROR1の発現増大に関連する疾患又は状態を示す。これらの方法に好適な具体的な疾患又は状態の例として、例えば、CLL、ALL、マントル細胞リンパ腫、神経芽細胞腫、肉腫、腎細胞癌、乳癌、肺癌、結腸癌、頭部及び頚部癌、又は黒色腫が挙げられる。
【0023】
別の関連態様では、本発明は、被験者においてROR1発現腫瘍を検出する方法を提供する。これらの方法は、(a)ROR1発現腫瘍を有する、有することが疑われる、若しくは、それを発生するリスクがある被験者に、本発明のhROR1抗体、抗体ベースの結合タンパク質又はその抗体フラグメントを投与するステップ;及び(b)変化した結合標識密度若しくは濃度の領域について被験者をイメージするステップを含み、ここで、密度若しくは濃度は、(i)近傍組織中のバックグラウンド又は(ii)被験者の同じ領域中で以前検出された密度若しくは濃度と比較され、その結果、変化した結合標識密度若しくは濃度の領域の存在は、被験者におけるROR1発現腫瘍の存在の指標である。
【0024】
本明細書の残りの部分及び請求項を参照にすることにより、本発明の性質及び利点はさらに理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】表示の通り、新規ウサギ抗hROR1mAbの可変免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を示す。ウサギ可変ドメイン(Vκ、Vλ、及びVH)のアミノ酸配列アラインメントは、Kabat番号付けを用いて、フレームワーク領域(FR)及び相補性決定領域(CDR)と一緒に示される。図には、XBR1-402、ERR1-301、ERR1-306、ERR1-316、ERR1-324、ERR1-403、ERR1-409、ERR1-TOP4、ERR1-TOP15、ERR1-TOP22、ERR1-TOP40、ERR1-TOP43、及びERR1-TOP54と称される13の抗体の重鎖可変ドメイン鎖配列(それぞれ、配列番号1~13)と軽鎖可変ドメイン配列(それぞれ、配列番号14~26)が示される。図に示すように、クローンXBR1-402、ERR1-301、ERR1-306、ERR1-316、ERR1-403、ERR1-409、ERR1-TOP4、ERR1-TOP15、ERR1-TOP22、ERR1-TOP43、及びERR1-TOP54は、免疫グロブリンλ軽鎖の可変ドメインであり、ERR1-324及びERR1-TOP40は、免疫グロブリンκ軽鎖の可変ドメインである。
図2】hROR1及びmROR1の細胞外ドメイン(ECD)とヒトIgG1抗体のヒトFcドメインとの融合タンパク質として発現される、ヒトROR1(hROR1)及びマウスROR1(mROR1)に対するキメラウサギ/ヒトFabの結合活性を示す。ヒトIgG1Fc(hFc-hROR1及びhFc-mROR1)と融合したhROR1及びmROR1に対する各キメラウサギ/ヒトFabの結合をELISAによって分析した。hFc-ROR1又はhFc-mROR1を、プレート上に固定化した抗ヒトIgG1Fc抗体によって捕捉した後、マウス抗Hisタグを用いた検出を介してHisタグを含むhROR1特異的Fabと一緒にインキュベートした。コントロールとして、hROR2の細胞外ドメイン(ECD)とヒトIgG1抗体(hFc-hROR2)のヒトFcドメインとの融合タンパク質を用いることにより、Fabの特異性を確認した。
図3】マウス前駆B細胞株63-12の細胞表面上に発現されたネイティブヒトROR1タンパク質に対するキメラウサギ/ヒトFabの結合活性を示す(実施例1を参照)。マウス前駆B細胞(63-12)表面上に異所的に発現されたヒトROR1に対する各キメラウサギ/ヒトFabの結合をフローサイトメトリーにより分析した。ERR2-TOP35は、アイソタイプ適合コントロールとして使用したhROR2に対するmAbである。
図4】ヒトROR1の細胞外ドメインの様々な部分を含む6つの異なる固定化IgG1-Fc融合タンパク質:hFc-hROR1-Ig(hROR1の免疫グロブリンドメインを含む)、hFc-hROR1-Fr(hROR1のフリズルド(Frizzled)ドメインを含む)、hFc-hROR1-Kr(hROR1のクリングル(Kringle)ドメインを含む)、hFc-hROR1-Ig-Fr(hROR1の免疫グロブリン及びフリズルド(Frizzled)ドメインを含む)、hFc-hROR1-Fr-Ki(hROR1のフリズルド(Frizzled)及びクリングル(Kringle)ドメインを含む)並びにhFc-hROR1(hROR1の全細胞外ドメイン(ECD)を含む)に対するキメラウサギ/ヒトFabのエピトープマッピング試験を示す。
図5】表面プラズモン共鳴により実施されるエピトープ結合試験を示す。CM5チップ上に固定化された抗ヒトFcγ抗体によって捕捉されたhFc-hROR1に対する様々なFabの結合について得られたSPRセンソグラムを示す。独立の、且つオーバーラップするエピトープを同定するために、様々な順序でFabを注射した。以前注射したFabについて観測された値を上回る共鳴ユニット(RU、y軸)の増大は、これらが同時結合を可能にすることから、独立のエピトープを示した。例えば、FabR11の結合について観測された増大は、XBR1-402単独で観測された値を上回ったが、これは、Fab R11とXBR1-402が、ヒトROR1に同時に結合することができることを示している。対照的に、Fab XBR1-402のエピトープは、ERR1-301、ERR1-403及びR12(左側グラフ)のエピトープとオーバーラップし;Fab ERR1-TOP43のエピトープは、ERR1-306、XBR1-402及びERR1-TOP40のエピトープとオーバーラップする。x軸は、秒単位(s)の時間を表す。
図6】表面プラズモン共鳴(SPR)による、hROR1 ECDに対する抗hROR1特異的Fabの親和性測定を示す。(A)即時バックグラウンド除去後のCM5チップに固定化された抗ヒトFcγ抗体によって捕捉されたhFc-hROR1に対する各Fabの結合について得られたBiacore X100センソグラムを示す。5つの様々な濃度でFabを注射したが、その最高濃度を表(B)に示し、5つの濃度の1つを2回反復して試験した。(B)表には、各Fabの一価親和性が示される。平衡解離定数(Kd)は、koff/kon(kon、会合速度定数;koff、解離速度定数)から算出した。
図7】実施例9に記載する通り、抗ヒトROR1抗体2A2を含む様々なヒト癌細胞株に対する、FACSによるhROR1の細胞染色を示す。分析した細胞株には、697(ヒト急性リンパ性白血病、ALL)、Kasumi-2(ヒト前駆B急性リンパ性白血病)、ヒトトリプルネガティブ乳癌細胞株MDA-MB-231、MDA-MB-468及びHS-578T、並びにヒト乳癌細胞株T47Dが含まれる。T47Dヒト乳癌細胞株を除いて、評価した細胞の全てが、hROR1発現に対して陽性であった。
図8】蛍光活性化セルソーティング(FACS)により測定した乳癌細胞に発現された内在性hROR1に対する、選択したキメラウサギ/ヒトIgG1の結合活性を示す。ヒト乳癌細胞株MDA-MB-231は、hROR1を発現することがわかっており、ヒト乳癌細胞株T47Dは、hROR1について陰性であることがわかっている。対照的に、T47Dは、ROR2陽性であることがわかっており、MDA-MB-231は、ROR2発現については陰性であることがわかっている。ERR1-Top54、ERR1-Top43、ERR1-324、XBR1-402は、選択された抗hROR1特異的mAbであり、XBR2-401は、特異性コントロールとして用いられるhROR2特異的mAbであった。(A)乳癌細胞上の内在性hROR及びhROR2の発現は、それぞれ、市販のヤギ抗ヒトROR1及びヤギ抗ヒトROR2ポリクローナル抗体(R&D Systems)、続いてAlexa Fluor 647結合AffiniPure F(ab’)2ロバ抗ヤギIgG(H+L)ポリクローナル抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories)を用いたフローサイトメトリーにより検出した。コントロール染色は、Alexa Fluor 647結合AffiniPure F(ab’)2ロバ抗ヤギIgG(H+L)ポリクローナル抗体単独で実施した。(B)ROR1発現ヒト乳癌細胞株MDA-MB-231及びROR2発現ヒト乳癌細胞株T47Dに対する、選択したクローンERR1-TOP54、ERR1-TOP43、ERR1-324、XBR1-402(全て、hROR1特異的)及びXBR2-401(hROR2特異的)のキメラウサギ/ヒトIgG1の結合を、一次抗体としてキメラウサギ/ヒトIgG1を、二次抗体としてAPC標識ヤギ抗ヒトFc特異的ポリクローナル抗体を用いたフローサイトメトリーによって分析した。
図9】ウエスタンブロット実験における変性hROR1に対するキメラウサギ/ヒトIgG1 XBR1-402及びERR1-TOP43(いずれもhROR1特異的)の結合活性を示す。細胞表面K562上に発現されるhROR1又は精製済タンパク質を変性させて、ウエスタンブロッティングにより検出した。ウエスタンブロットは、表示のように、下記のサンプルを含んだ:レーン1:完全長のhROR1を異所発現するK562細胞。レーン2:トランスフェクトされていないK62細胞。レーン3:hROR1の精製済細胞外ドメイン。レーン4:hROR2の精製済細胞外ドメイン。
図10】ELISAにより分析した、組換え、精製hROR1に対する(パネルA)及びネガティブコントロールとしての組換え、精製hROR2に対する(パネルB)、選択したクローンERR1-301、XBR1-402、ERR1-306、ERR1-324、ERR1-403及びERR1-Top43の選択したhROR1特異的ウサギ-ヒト-Fcキメラ抗体の結合を示す。
図11】本発明に開示する部位特異的結合ADCがどのようにして作製されるかを概略的に示す。(A)国際公開第2014140317号パンフレットに開示されているように、ソルターゼ酵素媒介抗体結合(SMAC-技術)の機構を概略的に示す。部位特異的結合ADCを作製するために、組換え抗体は、C末端ペンタペプチドモチーフLPXTG(配列番号144)と一緒に発現する必要があり、このモチーフは、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)由来のソルターゼ酵素A(SrtA)の認識部位として役立つ。グリシン修飾毒素基質を、抗体及びソルターゼA酵素を含有するペンタペプチドモチーフLPXTGと一緒にインキュベートすると、ソルターゼA酵素は、グリシン修飾毒素が、LPXTGモチーフのC末端グリシンに取って代わり、残るLPXT(配列番号147)のトレオニンと共有結合する。このようにして、C末端毒素結合ADCを高効率で作製することができる。(B)は、国際公開第2016102697号パンフレットに開示されているように、好ましい毒素の構造、すなわち、アントラサイクリン構造のC13におけるカルボニル基に5×グリシン区間をつなげるエチレン-ジアミノ(EDA)リンカーを含むPNU-159682誘導体を示す。
図12】既知のhROR1ターゲティングADC(2A2-G5-PNU、R12-G5-PNU)及び本発明で提供される新規のADC(ERR1-Top43-G5-PNU)を用いて、固定化ヒト乳癌細胞株MDA-MB-468に対して(パネルA)、並びに既知のhROR1ターゲティングADC(2A2-G5-PNU、R12-G5-PNU)及び本発明で提供される新規のADC(XBR1-402-G5-PNU及びERR1-Top43-G5-PNU)を用いて、固定化ヒト乳癌細胞株HS578Tに対して(パネルB)実施したインビトロ細胞殺傷アッセイについての効果を示す。ADC Ac10-G5-PNUをターゲティングするCD30は、いずれのパネルにおいてもアイソタイプ適合コントロールADCとして使用した。
図13】抗体クローン2A2、R11及びR12をベースとするADC、並びに本発明に開示される抗ROR1抗体クローンXBR1-402をベースとするADCを含む、4つの抗ROR1-PNU ADCを用いた、ROR1陽性急性リンパ性白血病細胞株697の細胞殺傷についてのインビトロ効力を示す。全ての抗体が、ウサギ-ヒト(R11、R12、XBR-402)又はマウス-ヒト(2A2)キメラIgG1として発現された。(A)ADCの各々を有する毒素ペイロードGly5-EDA-PNU(G5-PNUと略)に部位特異的に結合したADCの濃度範囲にわたって細胞殺傷を示す。(B)抗ROR1ADCの各々についての(A)の曲線から算出した細胞殺傷の数値IC50値を示す。
図14】Gly5-EDA-PNU毒素ペイロード(G5-PNUと略)に部位特異的に結合した、選択抗hROR1 ADCによる、ROR1陽性ALL細胞株Kasumi-2(A)及び697(B)のインビトロ細胞殺傷を示す。ADCは、表示の通り、抗ROR1抗体クローン2A2及びR12、並びに抗ROR1クローンXBR1-402をベースとする。Gly5-EDA-PNU毒素ペイロードに部位特異的に結合したHER-2特異的トラスツズマブは、アイソタイプ適合コントロールADCとして用いた。パネルC及びDは、アイソタイプ適合コントロール抗体に対し、一次抗体として抗体2A2を用いたFACSによって分析される通り、Kasumi-2及び697の細胞表面上で測定したROR1の発現レベルを示す。
図15】(A)EDA-Gly5-PNU ADCを用いたROR1陽性697の播種性マウスモデルにおけるADCのインビトロ効果を示す。マウス(8匹ずつのグループ)に、106個の697ヒトALL細胞を静脈内移植し、7日及び14日後に、各々1mg/kgの抗体2A2及び新規抗体XBR1-402をベースとするPNU-ADC、又はネガティブコントロールとして、HER-2特異的抗体トラスツズマブをベースとするPNU-ADCで処置した。マウスグループ内の生存率を時間に対してプロットした。(B)1mg/kgを受けたマウスにおいて測定されたADCの血漿濃度を示し、これは、12日及び19日後に、抗ヒトFcg試薬による捕捉、並びに抗体濃度については抗κ軽鎖検出抗体、及びADC濃度については抗PNU検出抗体のいずれかによる検出を用いた免疫をベースとするELISAアッセイにより測定された。
図16】パネル(A)は、いずれも、キメラヒトIgG1抗体として発現される、抗ROR1抗体R12及び新規の抗体XBR1-402をベースとする部位特異的結合PNU-ADCを用いたhROR1トランスフェクトマウス乳癌細胞株EMT6-クローン14(EMT6-c114と略)のインビトロ細胞殺傷を示す。HER-2特異的なトラスツズマブ-G5-PNU ADCは、アイソタイプ適合コントロールADCとして用いた。(B)別のコントロールとして、同じADCを用いた同じ細胞殺傷実験を、非トランスフェクト(及びROR1陰性)EMT6親細胞に対しても実施した。パネル(C)は、ROR1特異的抗体2A2を用いたFACSにより検出した、非トランスフェクトEMT6細胞に対する、hROR1トランスフェクトEMT6細胞におけるhROR1の相対発現を示す。
図17】抗ROR1抗体ms961及び新規の抗体XBR1-402及びERR1-324をベースとする部位特異的結合PNU-ADC(各々、キメラヒトIgG1抗体として発現される)を用いた、hROR1トランスフェクトマウス乳癌細胞株EMT6-クローン14(EMT6-cl.14と略)のインビトロ細胞殺傷を示す。HER-2に特異的なトラスツズマブ-G5-PNUは、アイソタイプ適合コントロールADCとして用いた。
図18】(A)は、Balb/c野生型マウスの乳房脂肪体に移植されたhROR1トランスフェクトEMT6マウス乳癌細胞株を用いた、同所性マウス乳癌モデルについてのインビボ効果試験の結果を示す。上のパネルは、コントロールADCトラスツズマブ-G5-PNUで2回処置したマウスの生存曲線を示す。中央のパネルは、抗ROR1抗体R12をベースとするPNU-ADCで処置したマウスの生存曲線を示し、下のパネルは、新規抗ROR1抗体XBR1-402をベースとするPNU-ADCで処置したマウスの生存曲線を示す。x軸下方の小さな三角は、腫瘍の移植後14日目及び21日目に1mg/kgの各ADCでそれぞれ実施した2回の処置を示す。(B)は、パネル(A)に示した3回の実験のカプラン・マイヤープロット(Kaplan-Meier Plot)を示す。
図19】全抗体(実線)又はインタクトなADC(点線)のいずれかを検出する免疫をベースとするELISAアッセイにより分析された、NOD SCIDマウス血清(パネルA)及びヒト血清(パネルB)におけるXBR1-402-G5-PNU ADCのインビトロ安定性を示す。
図20】雌CD-1マウスにおいて評価された新規のネイキッド抗ROR1抗体XBR1-402、並びにXBR1-402-G5-PNU ADCのインビボ血漿安定性を示す。ヒトFc検出試薬で検出された全IgG、並びにPNU特異的検出試薬で検出されたインタクトなADCの免疫をベースとするELISAアッセイにより測定した血漿安定性が示される。
図21】2つのコントロール細胞株Kasumi-2(ヒトALL細胞株)とA549(ヒト肺癌細胞株)からの溶解物を含むウエスタンブロット分析によるhROR1タンパク質発現についての様々な患者由来腫瘍溶解物の分析を示す。患者由来腫瘍溶解物は、下記の名称及び起源のものである:PXF1118:胸膜中皮腫、RXF486:副腎腫、PXF541、胸膜中皮腫、SXFS1407:神経線維肉腫、CXF533:腺癌。
図22】CXF533、RXF486、PXF1118、SXFS1407及びPXF541患者由来腫瘍材料を移植した雌NMR1ヌードマウスに樹立された様々な患者由来腫瘍モデル(PDXモデル)において、ビヒクルコントロールで処置したマウスと比較したXBR1-402抗ROR1 ADCの部位特異的結合PNU-ADCの効果を示す。
図23】新規の抗ROR1抗体XBR1-402に由来するヒト化抗体クローンのVH及びVLアミノ酸配列を示す。ヒト化可変ドメイン(Vλ及びVH)のアミノ酸配列アラインメントは、Kabat番号付けを用いて、フレームワーク領域(FR)及び相補性決定領域(CDR)と一緒に示される。図には、HuXBR1-402(3)、HuXBR1-402(8)、HuXBR1-402(15)、HuXBR1-402(17)、HuXBR1-402(19)、及びHuXBR1-402(26)と称される6つの抗体の重鎖可変ドメイン配列(それぞれ、配列番号130~135)及び軽鎖可変ドメイン配列(それぞれ、配列番号136~141)が示される。
図24】表示されるkon及びkoffデータをはじめとする、親mAbXBR1-402の新規のヒト化クローンについての親和性測定のデータを提供する。
図25】(パネルA)hROR1ターゲティング親XBR1-402-G5-PNU、並びにヒト化抗体をベースとするADC:huXBR1-402-3-G5-PNU、huXBR1-402-8-G5-PNU、huXBR1-402-15-G5-PNU、huXBR1-402-17-G5-PNU、huXBR1-402-19-G5-PNU及びhuXBR1-402-26-G5-PNUを用いて、ヒト697ALL癌細胞に対して実施したインビトロ細胞殺傷アッセイの用量-応答曲線を示す。HER2ターゲティング抗体トラスツズマブをベースとするPNU-ADCは、アイソタイプコントロールADC(Tras-G5-PNU)として使用した。パネルBは、インビトロ細胞殺傷効果の定量化(IC50)を示す。
図26】ROR1ターゲティングXBR1-402 CAR-T及びR12 CAR-Tのインビトロ活性の比較を示す。
図27】短いスペーサ及び長いスペーサを有するROR1ターゲティングXBR1-402 CAR-Tのインビトロ活性の比較を示す。
図28】Retrogenix Cell Microarray Platformを用いた、キメラウサギ/ヒト抗ヒトROR1 IgG1 XBR1-402及びコントロールとしてのキメラウサギ/ヒト抗ヒトROR2 IgG1 XBR2-401の特異性分析の概略を示す。
図29】Retrogenix Cell Microarray Platformを用いた、キメラウサギ/ヒト抗ヒトROR1 IgG1 XBR1-402及びコントロールとしてのキメラウサギ/ヒト抗ヒトROR2 IgG1 XBR2-401の特異性分析を示す。4,336のヒト血漿膜タンパク質を含む大型スクリーンからの一次結合ヒット(図28を参照)を単一スライド上で合わせ、キメラウサギ/ヒト抗ヒトROR1 IgG1 XBR1-402、並びにコントロールとしてのキメラウサギ/ヒト抗ヒトROR2 IgG1 XBR2-401及びリツキシマブバイオシミラーで染色した。左側のZsGreen1シグナルは、様々なヒト膜タンパク質の発現レベルを示す。それらのそれぞれの抗原(ROR1、ROR2、及びCD20)以外に、IgG1フォーマットの試験抗体は、予想された通り、Fcγ受容体FCGR3B(CD16B)、FCGR1A(CD64A)、及びFCGR2A(CD32A)にも結合する。二次抗体単独での染色では、予想された通り、ヒトIgG3重鎖(IGHG3)が検出される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
1.概説
本発明は、一部が、本発明者らによる大きなナイーブキメラウサギ/ヒトFabライブラリーの作製及びファージディスプレイを介したヒトROR1に対する結合物質の選択に基づく。受容体チロシンキナーゼオーファン受容体-1及び-2、ROR1及びROR2は、全体的な構造設計及びいくつかの機能的類似性に基づき、新たな受容体チロシンキナーゼファミリーを定義するただ2つのファミリーメンバーである。ROR1及びROR2タンパク質のいずれも、免疫グロブリンドメイン、システインリッチフリズルド(frizzled)ドメイン及びクリングル(Kringle)ドメインから構成される細胞外ドメイン(ECD)を有するI型1回膜貫通型受容体である。これらの3つの細胞外ドメインに、キナーゼドメインを含むタンパク質の細胞内部分にECDを結合する膜貫通ドメインが続く(Rabagay et al.(2012)Frontiers Oncol.2:1-8)。ヒトROR1及びROR2タンパク質は、互いに58%相同であるが、RORタンパク質の各々は、種の間で高度に保存されている。最も保存されているのは、実際に、937aa長タンパク質であるROR1タンパク質であり、これは、ヒトと全ての配列決定された非ヒト霊長類との間で98.5%超同一であり、ヒトとマウス及びウサギROR1との間でもそれぞれ96.7及び96.3%相同である(Borcherding et al.(2014)Protein Cell 5:496-502)。そのため、マウス又はウサギ免疫によって高品質の抗ROR1抗体を作製することは課題であり、許容可能な親和性を有する抗体はほんのわずかしか知られていない。例えば、国際公開第2010/124188号パンフレット(マウスモノクローナル抗体2A2)、国際公開第2012/075158号パンフレット(ウサギ抗体R11及びR12)、国際公開第2012/097313号パンフレット(マウスモノクローナル抗体D10)及び国際公開第2014/031174号パンフレット(マウスmAb99961のヒト化バージョンで、mAbD10が結合するのと同じエピトープに結合する)を参照されたい。
【0027】
マウス/ウサギROR1とヒトROR1との間に最大のダイバージャンスを有するエピトープに抗体を向かわせるマウス/ウサギの従来の免疫/スクリーニングによる抗ROR1抗体の作製(mAb2A2、R11、R12、D10及び99961の同定と同様に)を繰り返さないために、本発明者らは、ファージにより展示された極めて高複雑度のナイーブウサギ抗体Fabライブラリーを作製し、ROR1のネイティブ哺乳動物組換えECD、及び細胞表面発現ヒトROR1に対する結合についてこのライブラリーをスクリーニングすることにより、ネイティブヒトROR1タンパク質と反応性で、最も機能性且つ多様な抗体クローンを選択した。この戦略を選んだのは、得ようとする抗体レパトアが、依然として天然のウサギBリンパ球に由来し、従って、免疫系の予め選択された抗体重鎖及び軽鎖について選択されるためである。しかし、ネイティブ組換え及び細胞発現ヒトROR1を含む適用スクリーニング戦略によって、優れた発展性及び機能性品質を有し、しかも、特定のROR1陽性癌のように、ROR1発現と関連するヒトの疾患の治療法に特に有用なhROR1特異的抗体が同定されることが期待された。
【0028】
選んだ戦略の結果、多様なCDR1、2及び3クローン型(図1)を有し、且つヒトROR1に対しては高い結合選択性を有するが、その最も関連する「姉妹分子」であるヒトROR2については結合選択性を示さない(図2、3及び10)いくつかの新たなウサギ高親和性抗ヒトROR1抗体が同定された。hROR1特異的抗体の一部は、hROR1標的に対して高い親和性(一桁のnM親和性)を示した(図6)。本明細書に詳述するように、異なる重鎖及び軽鎖配列を有するキメラウサギ/ヒトFabフォーマットで13のモノクローナル抗体(mAb)が得られた。これらのmAbは、暫定的に「XBR1-402」、「ERR1-301」、「ERR1-306」、「ERR1-316」、「ERR1-324」、「ERR1-403」、「ERR1-409」、「ERR1-TOP4」、「ERR1-TOP15」、「ERR1-TOP22」、「ERR1-TOP40」、「ERR1-TOP43」、及び「ERR1-TOP54」と称される。13の抗体は全て、ELISAにより分析される通り、精製済ヒトROR1に、また、フローサイトメトリーにより分析される通り、細胞表面ヒトROR1に結合する。ROR1の最も近縁であり、ROR1と58%アミノ酸配列同一性を有するROR2に結合するものはなかった。2つのmAb(「ERR1-306」と「ERR1-TOP22」)は、ヒト及びマウスROR1の両方に結合するが、残る11のmAbは、ヒトROR1にしか結合しない。
【0029】
バイオレイヤー干渉法及び表面プラズモン共鳴によって、全13のmAbの親和性を決定した。さらに、7つのmAb(「ERR-301」、(「ERR-306」、「ERR-403」、「XBR1-402」、「ERR1-324」、「ERR1-TOP43」、及び「ERR1-TOP54」)は、哺乳動物細胞に発現されるキメラウサギ/ヒトIgG1フォーマットに変換した後、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーによって精製した。特に、更なる評価で最も高いアフィニティクローンXBR1-402及びERR1-TOP43は、ヒトROR1を過剰発現する哺乳動物細胞(図3)及び天然にhROR1を発現する哺乳動物細胞(図8)を用いたFACSによって最も高い染色活性を示した。2つの上位結合クローンXBR1-402及びERR1-TOP43は、ウエスタンブロッティングにより変性ROR1タンパク質を検出することもでき(図9)、これによって、ROR1発現癌のコンパニオン診断の開発のためにこれらのクローンの使用が可能になる。
【0030】
これに加えて、数個のmAbが、C末端ソルターゼ認識タグを有するキメラウサギ/ヒトIgG1として発現され、これによって、国際公開第2014140317号パンフレットに実質的に記載されているように、ソルターゼ酵素媒介抗体結合技術(SMAC-technology(商標))による抗体C末端へのペイロードの部位特異的結合が可能になる。これらの抗hROR1抗体は、国際公開第2016102679号パンフレット(本明細書に参照により組み込まれ、その本文は、本出願に付録として組み込まれる)に実質的に開示されているように、非常に強力な抗体薬物複合体(ADC)を作製するために、非常に強力なアントラサイクリンベースのPNU159682毒素誘導体、Gly5-EDA-PNUに部位特異的に結合された(図11B)。これらのADCは、既知の抗hROR1抗体に基づいて作製されたADCに対する様々なインビトロ及びインビボ腫瘍モデルにおいて機能的に評価されている。XBR1-402と呼ばれる1つの特定のリードクローンは、様々な既知抗体(例えば、2A2(国際公開第2010/124188号パンフレットから)、R11、R12(いずれも、国際公開第2012/075158号パンフレットから)、又はms96(国際公開第2014/031174号パンフレットから)と比較して、最も高い効力及び効果を示すことが観察され、これは、現在のところ、CLLの臨床試験において、ネイキッドIgG1 mAbとして、ヒト化抗hROR1 mAbシルムツズマブの基礎を形成する。
【0031】
ADCとして腫瘍細胞殺傷に対する機能性に関してベストインクラス(best-in-class)特性に基づいて、リードクローンXBR1-402がヒト化され、これは、hROR1に対してさらに増大した親和性を有する数個のヒト化クローンを生成し、これらは、「huXBR1-402-3」、「huXBR1-402-8」、「huXBR1-402-15」、「huXBR1-402-17」、「huXBR1-402-19」及び「huXBR1-402-26」と呼ばれる。これらのリードクローンXBR1-402のヒト化バージョンは、部位特異的に結合したPNU-ADCとしても評価され、これらの各々は、インビトロhROR1腫瘍モデルにおいてさらに向上した腫瘍殺傷を示した。
【0032】
ROR1ターゲティングmAbの治療有用性をさらに調べるために、既知のROR1ターゲティングmAb R11及びR12についてこれまでに記載されている方法(Hudecek,M.,Lupo-Stanghellini,M.T.,Kosasih,P.L.,Sommermeyer,D.,Jensen,M.C.,Rader,C.,and Riddell,S.R.(2013)Receptor affinity and extracellular domain modifications affect tumor recognition by ROR1-specific chimeric antigen receptor T cells.Clin.Cancer Res.19,3153-3164)を用いて、XBR1-402をベースとするCAR-T細胞を作製した。手短には、エクスビボで拡大した正常ドナーCD8+CD62L+T細胞に、レンチウイルスにより、scFvフォーマット中にXBR1-402を含有するEF1αプロモータ駆動の発現カセット、続いて短い若しくは長いスペーサ、ヒトCD28の膜貫通ドメイン、4-1BBのシグナル伝達ドメイン、CD3ζのシグナル伝達ドメイン、並びに切断型リガンド結合及びチロシンキナーゼドメインを含むT2A分断膜貫通EGFRフラグメントを形質導入した。EGFR+形質導入T細胞のFACS単離によって、>90%のCAR-T細胞における頑健な抗ROR1認識が明らかにされた。短いスペーサを有するROR1ターゲティングXBR1-402 CAR-Tの活性を乳癌細胞株MDA-MB-231(ROR1+ROR2-)及びT47D(ROR1-ROR2+)に対して試験した。ROR1-ROR2+標的細胞ではなく、ROR1+ROR2-の存在下で、XBR1-402 CAR-Tは、急速に増殖し、大量にIFN-γ及びIL-2を分泌し、標的細胞をインビトロで強力に殺傷した(図26)。特に、直接比較すると、XBR1-402 CAR-Tは、同じ短いスペーサ及びシグナル伝達ドメインを有する臨床試験されたR12 CAR-Tと同等又はそれよりも強力であることが判明した。
【0033】
さらに、本発明者らは、T細胞と標的細胞との間の最適距離が、膜から遠いエピトープをターゲティングするCAR-T細胞に、より短いスペーサを備え付ける、及びその逆によって達成されると仮定した。この仮定に基づき、R12を含むオーバーラップエピトープを有するXBR1-402 CAR-Tは、長いスペーサと比較して、短いスペーサを備えている場合、より活性となることが予測される。実際に、ROR1+ROR2-標的細胞の存在下で、短いリンカーを有するXBR1-402 CAR-Tは、長いスペーサを有するXBR1-402 CAR-Tよりも速く増殖し(図27)、また、有意に多量のIFN-γ及びIL-2を分泌することが判明した。しかしながら、インビトロ細胞傷害性は、同等に強力であることがわかった(図27)。
【0034】
これらの試験に従って、本発明は、ROR1を特異的に認識する新規のモノクローナルウサギ及びヒト化抗体、並びに関連抗体をベースとする結合タンパク質及びその抗体フラグメント、さらには、インビトロ及びインビボで腫瘍モデルを発現するhROR1中に特異的抗腫瘍活性を有する抗体薬物複合体及びCARを提供する。さらに、異常若しくは増大したROR1発現に関連する疾患及び状態、例えば、癌の治療及び診断用途において、これらの抗体薬剤を使用する方法も本発明に提供される。
【0035】
本発明の抗体及び関連組成物は、他の驚くほど有利な特性を明らかにしている。様々なインビトロ及びインビボモデルを使用した、高度に強力なPNUアントラサイクリンペイロードを有する部位特異的結合ADCとしての新規クローンの機能評価によって、特に、新規のクローンXBR1-402が、既知の抗体のいずれよりも優れた性能を示すことが判明した。例えば、R11ベースのADCは、インビトロ腫瘍モデルにおいて限定的な効力を有した(図13)。また、抗体クローン99961(ms961)、2A2及びR12と比較して、本明細書に記載される新規のXBR1-402は、インビトロでの腫瘍モデルにおいて一貫して優れた性能を示し(図13、14、17)、これは、インビボでの腫瘍モデルにおいてさらに明らかであった(図15及び18)。4,336のヒト血漿膜タンパク質に対して試験した際の、その高度に特異的な認識に関するXBR1-402クローンの好ましい特性(図29)と、マウス血漿及び他の血清中で評価されたADCの好ましい安定性(図15B、19及び20)とを組み合わせれば、XBR1-402ベースのADCは、ADC療法について高い潜在能力を備えたベストインクラス抗ROR1ターゲティング製剤の可能性を有すると思われる。
【0036】
さらに、多くの場合、非ヒト型抗体のヒト化の工程中に親和性が低下しているため、抗ROR1 mAb XBR1-402のヒト化バージョンは、意外にも、親ウサギクローンXBR1-402よりも高い親和性を示した(図24)(Margreitter et al.(2016)J.Mol.Recognit.29:266-275)。親和性の増大は、ADCとしての抗腫瘍活性について評価したとき、これらのヒト化mAbの効力の向上とも相関した(図25)。これらのデータは、ヒトの疾患の治療法のためのヒト化XBR1-402抗体に基づき、評価された抗ROR1 ADCの高い効力を証明するものである。XBR1-402及び/又はヒト化XBR1-402に基づくPNU-ADCの有効な腫瘍治療法についてのこのような高い潜在能力は、hROR1を発現する患者に由来する多様な異種移植片モデルにおけるXBR1-402ベースのADCの高い効果(図22)によって支持される。
【0037】
本明細書に記載される高度に機能性の抗hROR1抗体及び関連組成物は、ROR1発現に関連するヒト癌の治療法での治療薬として使用する上で極めて優れた機能性を呈示した。こうしたものとして、本明細書に例示した特定の抗体(例えば、XBR1-402)により示されるものと同じ若しくはほぼ同じ結合特性を有する、本明細書に記載の様々なhROR1抗体、抗体フラグメント、抗体ベースの結合タンパク質、ADC又はCARが挙げられる。このように、本明細書に例示した抗体によって示される好ましい特性及び高い治療有効性は、本明細書に開示する可変重鎖及び/又は軽鎖のCDR配列の一部若しくは全部、あるいは、本明細書に開示する可変重鎖及び/又は軽鎖のほぼ同様のCDR配列を含む、同種抗体、抗体フラグメント、抗体ベースの結合タンパク質、ADC、CARにまで広げることができる。さらに、好ましい特性及び/又は高い治療有効性は、開示される抗体の2つの免疫グロブリン鎖の一方(すなわち、重鎖若しくは軽鎖のいずれか)、又は例示した抗体と相同性である2つの免疫グロブリン鎖の一方(すなわち、重鎖若しくは軽鎖のいずれか)のみを含む、抗体、抗体フラグメント、抗体ベースの結合タンパク質、ADC、CARにまで広げることもできる。
【0038】
II.定義
別に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が関連する技術分野の通常の技術者により一般に理解されているものと同じ意味を有する。下記の参照文献は、本発明で使用される用語の多くの一般的な定義を当業者に提供する:Academic Press Dictionary of Science and Technology,Morris(Ed.),Academic Press(1st ed., 1992); Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology,Smith et al.(Eds.),Oxford University Press(revised ed.,2000);Encyclopaedic Dictionary of Chemistry,Kumar(Ed.),Anmol Publications Pvt.Ltd.(2002);Dictionary of Microbiology and Molecular Biology,Singleton et al.(Eds.),John Wiley & Sons (3rd ed.,2002);Dictionary of Chemistry,Hunt(Ed.),Routledge(1st ed.,1999);Dictionary of Pharmaceutical Medicine,Nahler (Ed.),Springer-Verlag Telos(1994);Dictionary of Organic Chemistry,Kumar and Anandand(Eds.),Anmol Publications Pvt.Ltd.(2002);及びa Dictionary of Biology(Oxford Paperback Reference),Martin and Hine(Eds.),Oxford University Press(4th ed.,2000)。これに加えて、本発明の実施に際して読者を補助するために、以下の定義が提供される。
【0039】
用語「抗体」は、同義語として「免疫グロブリン」(Ig)とも呼ばれ、又は「抗原結合フラグメント」は、所与の抗原、エピトープ若しくは複数のエピトープに対する強力な一価、二価若しくは多価結合を示すポリペプチド鎖を指す。別に注記されていない限り、本発明で使用される抗体又は抗原結合フラグメントは、任意の脊椎動物種に由来する配列を有することができる。これらは、例えば、ハイブリドーマ技術、リボソームディスプレイ、ファージディスプレイ、遺伝子シャッフリングライブラリー、半合成若しくは完全な合成ライブラリー又はこれらの組み合わせなどの任意の好適な技術を用いて作製することができる。別に注記されていない限り、本発明で使用される「抗原」という用語は、インタクトな抗体、抗原結合ポリペプチドフラグメント及び以下に記載されるか、又は当技術分野で公知の他のデザイナー抗体(例えば、Serafini,J Nucl.Med.34:533-6,1993を参照)を含む。
【0040】
インタクトな「抗体」は、典型的に、ジスルフィド結合により互いに結合された少なくとも2つの重(H)鎖(約50~70kD)と2つの軽(L)鎖(約25kD)とを含む。認識されている抗体鎖コード免疫グロブリン遺伝子としては、κ、λ、α、γ、Δ、ε、及びμ定常領域遺伝子、並びに多種多様な免疫グロブリン可変領域遺伝子がある。軽鎖は、κ又はλのいずれかとして分類される。重鎖は、γ、μ、α、Δ、又はεとして分類され、これらは、それぞれ、免疫グロブリンクラス、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEを定義する。
【0041】
抗体の各重鎖は、重鎖可変領域(VH)と重鎖定常領域から成る。大部分のIgGアイソタイプ(サブクラス)の重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3から成り、IgM又はIgEなどの一部のIgGアイソタイプは、第4の定常領域ドメイン、CH4を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)と軽鎖定常領域から成る。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLから成る。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫グロブリンと、免疫系の様々な細胞及び古典的補体系の第1成分(Clq)などの宿主組織又は因子との結合を媒介し得る。
【0042】
抗体のVH及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる超可変性の領域にさらに細分することができ、これらの領域の間には、より保存されたフレームワーク領域(FR)が点在している。各VH及びVLは、3つのCDRと4つのFRとから構成され、次の順:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で、アミノ末端からカルボキシ末端まで配置されている。CDRとFR領域の配置及び番号付け方法は、例えば、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,米国保健福祉省(U.S. Department of Health and Human Services)、米国政府印刷局(U.S.Government Printing Office)(1987及び1991)により定義されている。
【0043】
本明細書で使用される「抗体ベースの結合タンパク質」は、他の非免疫グロブリン、又は非抗体由来成分に関して、少なくとも1つの抗体由来VH、VL、又はCH免疫グロブリンドメインを含有する任意のタンパク質を表し得る。こうした抗体ベースのタンパク質として、限定されないが、(i)免疫グロブリンCHドメインの全部若しくは一部を有する受容体又は受容体成分を含む、結合タンパク質のFc-融合タンパク質、(ii)VH及び/若しくはVLドメインが、別の分子スカフォールドに連結されている結合タンパク質、又は(iii)免疫グロブリンVH、及び/若しくはVL、並びに/又はCHドメインが、天然に存在する抗体若しくは抗体フラグメントに通常見いだされない様式で組み合わされている、及び/又はアセンブルされている分子が挙げられる。
【0044】
「結合親和性」は、一般に、平衡会合又は解離定数(それぞれ、KA又はKD)に関して表現され、これらは、解離及び会合速度定数(それぞれ、koff及びkon)の反比となる。従って、速度定数の比が同じままである限り、同等の親和性は、異なる速度定数と一致し得る。抗体の結合親和性は、通常、抗体の一価フラグメント(例えば、Fabフラグメント)のKDとして表され、一桁のナノモル範囲以下の(サブナノモル又はピコモル)KD値は、非常に高く、治療及び診断的に重要であるとみなされる。
【0045】
本明細書で使用される用語「結合特異性」は、抗体と抗原(又はエピトープ若しくはその抗原決定基)、受容体とリガンド、酵素と基質の結合のような、ある分子の別の分子に対する選択的親和性を指す。従って、ある実体の特定の抗原決定基(例えば、ROR1又はROR2の特定のエピトープ)に結合する全てのモノクローナル抗体は、その実体に対する同じ結合特異性を有するとみなされる。
【0046】
用語「抗体薬物複合体」、又は「ADC」は、治療活性物質又は活性医薬成分(API)を抗体の結合標的にターゲティングして、薬理作用を発揮することができるように、治療活性物質又は活性医薬成分(API)が共有結合されている抗体を指す。治療活性物質又は活性医薬成分は、ADCによりターゲティングされる細胞、好ましくは悪性若しくは癌細胞の殺傷をもたらすことができる細胞毒素であってよい。治療活性物質、活性医薬成分又は細胞毒素の共有結合は、ペイロードをリシン若しくはシステイン残基に結合する標準的化学リンカーを用いて非部位特異的様式で実施してもよいし、あるいは、好ましくは、結合部位、並びに作製しようとするADCの薬物対抗体比(DAR)の十分な制御を可能にする部位特異的様式で実施する。
【0047】
用語「保存的に修飾された変異体」は、アミノ酸及び核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に修飾された変異体は、同一若しくはほぼ同一のアミノ酸配列をコードする核酸、又は、核酸が、アミノ酸配列をコードしない場合には、ほぼ同一の配列を指す。遺伝子コードの縮重のために、多数の機能的に同一の核酸が、いずれか所与のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG及びGCUは全て、アミノ酸アラニンをコードする。従って、コドンによりアラニンが指定される全ての位置で、コドンは、コードされたポリペプチドを改変することなく、対応する記載のコドンのいずれかに改変することができる。こうした核酸変異は、保存的修飾変異の1種である「サイレント変異」である。ポリペプチドをコードする本明細書に記載の全ての核酸配列も核酸のあらゆる可能なサイレント変異を表している。当業者は、機能的に同一の分子を取得するために、核酸中の各コドン(通常、メチオニンの唯一のコドンであるAUG、及び通常、トリプトファンの唯一のコドンであるTGGを除く)を修飾することができることは認識されよう。従って、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載される配列の各々に内在している。
【0048】
ポリペプチド配列の場合、「保存的修飾変異体」は、保存的アミノ酸置換、すなわち、電荷が類似した側鎖を有する他のアミノ酸残基で置換されたアミノ酸残基を有する変異体を指す。電荷が類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。
【0049】
用語「接触(させること)」は、その通常の意味を有し、2つ以上の物質(例えば、ポリペプチド若しくはファージ)を合わせる、物質と細胞を合わせる、又は異なる細胞の2つの集団を合わせることを指す。接触は、例えば、試験管若しくは増殖培地中で、抗体と細胞を混合する、又は抗体の集団を細胞の集団と混合するなど、インビトロで実施することができる。接触はまた、例えば、細胞における2つのポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドの同時発現により、細胞内で、又は細胞溶解物中で、2つのポリペプチドを接触させるなど、細胞内又はインサイチュで実施することもできる。さらに、接触は、例えば、薬剤を標的細胞に送達するために、被験者に薬剤を投与することにより、被験者においてインビボで実施することもできる。
【0050】
「ヒト化抗体」は、Gao et al.(2013)BMC Biotechnol.13,pp.55により定義されているように、80を超えるT20スコアを有するヒトVH若しくはVL抗体フレームワーク配列に対する相同性を有する抗体VH若しくはVLドメインを含む抗体若しくは抗体フラグメント、抗原結合フラグメント、又は抗体ベースの結合タンパク質である。
【0051】
用語「同一」又は「同一性」パーセントは、2つ以上の核酸又はポリペプチド配列に関して、同じである2つ以上の配列若しくはサブ配列を指す。2つの配列は、2つの配列が、比較窓にわたり、あるいは、下記の配列比較アルゴリズムの1つを用いて、又は手動アラインメント及び視覚検査により測定される指定領域にわたって、最大一致について比較したとき、明示されたパーセンテージの同じ(すなわち、明示された領域にわたって、又は明示されていない場合、配列全体にわたって、60%同一、任意選択で65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは99%同一の)アミノ酸残基若しくはヌクレオチドを有していれば、「実質的に同一である」。任意選択で、同一性は、長さが少なくとも約50ヌクレオチド(若しくは10アミノ酸)の領域にわたって、又は好ましくは長さが100~500又は1000ヌクレオチド以上(若しくは20、50、200以上のアミノ酸)の領域にわたって存在する。
【0052】
比較のための配列のアラインメント方法は、当技術分野で公知である。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、スミス-ウォーターマンの局所相同性アルゴリズム(Smith and Waterman,Adv.Appl.Math.2:482c,1970)により;ニードルマン-ウンシュの相同性アライメントアルゴリズム(Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443,1970)により;ピアーソン-リップマンの類似性検索方法(Pearson and Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA85:2444,1988)により;これらのアルゴリズムのコンピュータ化実装(GAP,BESTFIT,FASTA,and TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,Madison,WI)により;又は手動アラインメント及び視覚検査(例えば、Brent et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.(ringbou ed., 2003)を参照)によって実施することができる。配列同一性及び配列類似性の割合を決定するのに好適なアルゴリズムの2つの例は、BLAST及びBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらは、Altschul et al.,Nuc.Acids Res.25:3389-3402,1977;及びAltschul et al.,J Mol.Biol.215:403-410,1990にそれぞれ記載されている。
【0053】
用語「被験者」は、ヒト及び非ヒト動物(特に、非ヒト哺乳動物)を指す。本明細書で使用される用語「被験者」は、例えば、治療及び診断方法に関して、ヒト又は動物被験者を指す。動物被験者として、限定されないが、CLL、ALL、マントル細胞リンパ腫、神経芽細胞腫、肉腫、腎細胞癌、乳癌、肺癌、結腸癌、頭部及び頚部癌、黒色腫及びその他の癌などのROR1発現増大に関連する状態又は障害の哺乳動物モデルのような動物モデルが挙げられる。非ヒト被験者の他の具体的な例として、例えば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、サルが挙げられる。
【0054】
人工T細胞受容体(キメラT細胞受容体、キメラ免疫受容体、キメラ抗原受容体(CAR)若しくはTボディとしても知られる)は、免疫エフェクター細胞に任意の特異性をグラフトする、改変受容体である。典型的には、これらの受容体を用いて、モノクローナル抗体の特異性をT細胞にグラフトし;それらのコード配列の転移が、レトロウイルス若しくはレンチウイルスベクター又はトランスポゾンによって促進される。CAR操作T細胞(また、CAR-T細胞と略される)は、その細胞外認識単位が、抗体由来の認識ドメインから成り、その細胞内領域が、1つ又は複数のリンパ球刺激部分に由来するキメラ受容体を備える、遺伝子改変T細胞である。プロトタイプCARの構造は、モジュラー型であり、様々な機能性ドメインを収容し、これによって、T細胞の特異性の選択及び制御された活性化を可能にするように設計されている。好ましい抗体由来の認識単位は、モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖可変領域の特異性及び結合残基を兼ね備える単鎖可変フラグメント(scFv)である。最も一般的なリンパ球活性化部分は、T細胞トリガー(例えば、CD3ζ)部分とタンデムのT細胞共刺激(例えば、CD28)ドメインを含む。エフェクターリンパ球(例えば、T細胞及びナチュラルキラー細胞)にこうしたキメラ受容体を付与することによって、改変細胞は、非HLA限定様式で、予定された特異性により、任意の所望される標的抗原に向け直される。レトロウイルス若しくはレンチウイルスベクター又はトランスポゾンを用いて、所与の患者の末梢リンパ球からのT細胞に、CAR構築物をエクスビボで導入する。得られたCAR改変T細胞を注入により患者に戻した後、それらは、移動し、その標的部位に到達し、その標的細胞若しくは組織と相互作用した後、活性化を受けて、予定のエフェクター機能を実施する。CARアプローチの治療標的としては、癌及びHIV感染細胞、又は自己免疫エフェクター細胞が挙げられる。
【0055】
本明細書で使用される用語「治療する」、「治療する(こと)」、「治療」、及び「治療に有効な」は、必ずしも100%又は完全な治療を意味しない。そうではなく、当業者により、潜在的な利益又は治療効果を有するものとして認識される様々な程度の治療がある。これに関して、本発明の方法は、任意の量の任意のレベルの治療を提供し得る。さらには、本発明の方法により提供される治療は、治療対象の疾患の1つ又は複数の状態若しくは症状の治療を含むことができる。
【0056】
「ベクター」は、プラスミド、ファージ若しくはコスミドなどのレプリコンであり、それに、別のポリヌクレオチドセグメントが結合して、結合したセグメントの複製をもたらし得る。1つ又は複数のポリペプチドをコードする遺伝子の発現を指令することができるベクターは、「発現ベクター」と呼ばれる。
【0057】
III.ROR1及び関連誘導体化合物に特異的に結合する、抗体、抗体ベースの結合タンパク質、その抗体フラグメント、抗体薬物複合体(ADC)、又はCAR
一態様では、本発明は、本明細書に例示する抗ROR1抗体と同じ結合特異性で、ヒトROR1に特異的に結合する、新規の抗体、抗体ベースの結合タンパク質、その抗体フラグメント、ADC又はCARに関する(図1及び23)。本発明の抗体としては、同種抗原であるROR1に結合する能力を保持するインタクトな抗体の抗原結合部分を含有する、インタクトな抗体(例えば、本明細書に例示するIgG1抗体)、抗体フラグメント若しくは抗原結合フラグメント(例えば、本明細書に例示するFabフラグメント)、抗体ベースの結合タンパク質、ADC及びCARが挙げられる。こうした抗体フラグメントの例としては、以下のものが挙げられる:(i)Fabフラグメント、VL、VH、CL及びCH1ドメインから構成される一価フラグメント;(ii)F(ab’)2フラグメント、ヒンジ領域でのジスルフィド架橋により連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント;(iii)VH及びCH1ドメインから構成されるFdフラグメント;(iv)インタクトな抗体の単一アームのVL及びVHドメインから構成されるFvフラグメント;(v)構造的に保存されたフレームワーク領域の間で操作された鎖間ジスルフィド結合を有するジスルフィド安定化Fvs(dsFvs);(vi)VH又はVLドメインから構成される単一ドメイン抗体(dAb)(例えば、Ward et al. Nature 341:544-546,1989を参照);並びに(vii)直鎖ペプチド又は環状ペプチドなどの単離された相補性決定領域(CDR)。抗体ベースの結合タンパク質の例は、抗体の結合ドメインが、他のポリペプチド若しくはポリペプチドドメイン、例えば、別の分子スカフォールド、Fc-領域、他のポリペプチド若しくは抗体の他の機能若しくは結合ドメインと組み合わされて、追加結合特性を有する分子、例えば、二重若しくは多重特異性タンパク質又は抗体をもたらすポリペプチドである。こうしたポリペプチドは、天然に存在する抗体若しくは抗体フラグメントには通常見いだされない結合又は機能ドメインの配列を形成することができる。
【0058】
本発明の抗体は、単鎖抗体のような抗体フラグメント(又は「抗原結合フラグメント」)も包含する。用語「単鎖抗体」は、ポリペプチド結合中に、一般にスペーサペプチドを介して連結された、VH及びVLドメインを含むポリペプチドを指し、これは、アミノ末端及び/又はカルボキシル末端に追加ドメイン若しくはアミノ酸配列を含んでもよい。例えば、単鎖抗体は、コードポリヌクレオチドへの連結のためのテザーセグメントを含んでもよい。一例として、単鎖可変領域フラグメント(scFv)は、単鎖抗体である。個別の遺伝子によりコードされるFvフラグメントのVL及びVHドメインと比較して、scFvは、合成リンカーを介して(例えば、組換え方法により)連結された2つのドメインを有する。これにより、VL及びVH領域が対合して、一価分子を形成する単一タンパク質鎖としてこれらを作製することが可能になる。
【0059】
本発明の抗体はまた、ラクダ科(camelid)スカフォールドを有する、単一ドメイン抗原結合単位も包含する。ラクダ科の動物には、ラクダ、ラマ、及びアルパカが含まれる。ラクダ科は、軽鎖が欠失した機能抗体を産生する。重鎖可変(VH)ドメインは、自律的にフォールドし、抗原結合単位として独立に機能する。その結合表面は、古典的抗原結合分子(Fab)又は単鎖可変フラグメント(scFv)の6つのCDRと比較して、3つのCDRしか含まない。ラクダ科抗体は、一般的抗体の結合親和性と同等の結合親和性を獲得することができる。
【0060】
本明細書に記載される様々な抗体、抗体ベースの結合タンパク質、及びその抗体フラグメントは、インタクトな抗体の酵素若しくは化学的修飾により生成するか、又は組換えDNA方法を用いて新たに合成することもでき、あるいは、ファージディスプレイライブラリーを用いて同定することもできる。これらの抗体、抗体ベースの結合タンパク質、及びその抗体フラグメントを作製する方法は全て、当技術分野で公知である。例えば、単鎖抗体は、ファージディスプレイライブラリー又はリボソームディスプレイライブラリー、遺伝子シャッフルライブラリー(例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552-554,1990;及び米国特許第4,946,778号明細書)を用いて同定することができる。特に、scFv抗体は、例えば、以下:Bird et al.,Science 242:423-426,1988;及びHuston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883,1988に記載される方法を用いて取得することができる。Fv抗体フラグメントは、Skerra and Plueckthun,Science 240:1038-41,1988に記載されているように作製することができる。ジスルフィド安定化Fvフラグメント(dsFv)は、Reiter et al.,Int.J.Cancer 67:113-23,1996に記載されている方法を用いて作製することができる。同様に、単一ドメイン抗体(dAb)は、例えば、Ward et al.,Nature 341:544-546,1989;及びCai and Garen,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:6280-85,1996に記載されている多様な方法を用いて生成することができる。ラクダ科単一ドメイン抗体は、当技術分野で公知の方法、例えば、Dumoulin et al.,Nat.Struct.Biol.11:500-515,2002;Ghahroudi et al.,FEBS Letters 414:521-526,1997;及びBond et al.,J.Mol.Biol.332:643-55,2003に記載の方法を用いて生成することができる。他のタイプの抗原結合フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)2又はFdフラグメント)も、日常的に実施されている免疫学方法を用いて容易に生成することができる。例えば、Harlow & Lane,Using Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,1998を参照されたい。
【0061】
本発明の抗体は、好ましくは、Gao et al.(2013)BMC Biotechnol.13,pp.55によって定義されるように、80超のT20スコアで、げっ歯類VH若しくはVLドメインよりも、ヒト抗体VH若しくはVLドメインに対してアミノ酸レベルで高い相同性のヒト化抗体VH若しくはVLドメインを有するヒト化抗体をさらに含む。
【0062】
一部の実施形態では、本発明の抗体、抗体フラグメント、抗体ベースの結合タンパク質、ADC又はCARは、図1又は図23に示される抗体と実質的に同一の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列並びに軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列を有する。例示した抗体の軽鎖及び重鎖CDR配列を全て図面に表示する。これらの実施形態の一部では、抗体、抗体フラグメント、抗体ベースの結合タンパク質、ADC又はCARは、以下を有する:(1)配列番号27~29とそれぞれ実質的に同一の重鎖CDR1~3配列;及び配列番号66~68とそれぞれ実質的に同一の軽鎖CDR1~3配列;(2)配列番号30~32とそれぞれ実質的に同一の重鎖CDR1~3配列;及び配列番号69~71とそれぞれ実質的に同一の軽鎖CDR1~3配列;(3)配列番号33~35とそれぞれ実質的に同一の重鎖CDR1~3配列;及び配列番号72~74とそれぞれ実質的に同一の軽鎖CDR1~3配列;(4)配列番号36~38とそれぞれ実質的に同一の重鎖CDR1~3配列;及び配列番号75~77とそれぞれ実質的に同一の軽鎖CDR1~3配列;(5)配列番号39~41とそれぞれ実質的に同一の重鎖CDR1~3配列;及び配列番号78~80とそれぞれ実質的に同一の軽鎖CDR1~3配列;(6)配列番号42~44とそれぞれ実質的に同一の重鎖CDR1~3配列;及び配列番号81~83とそれぞれ実質的に同一の軽鎖CDR1~3配列;(7)配列番号45~47とそれぞれ実質的に同一の重鎖CDR1~3配列;及び配列番号84~86とそれぞれ実質的に同一の軽鎖CDR1~3配列;(8)配列番号48~50とそれぞれ実質的に同一の重鎖CDR1~3配列;及び配列番号87~89とそれぞれ実質的に同一の軽鎖CDR1~3配列;(9)配列番号51~53とそれぞれ実質的に同一の重鎖CDR1~3配列;及び配列番号90~92とそれぞれ実質的に同一の軽鎖CDR1~3配列;(10)配列番号54~56とそれぞれ実質的に同一の重鎖CDR1~3配列;及び配列番号93~95とそれぞれ実質的に同一の軽鎖CDR1~3配列;(11)配列番号57~59とそれぞれ実質的に同一の重鎖CDR1~3配列;及び配列番号96~98とそれぞれ実質的に同一の軽鎖CDR1~3配列;(12)配列番号60~62とそれぞれ実質的に同一の重鎖CDR1~3配列;及び配列番号99~101とそれぞれ実質的に同一の軽鎖CDR1~3配列;又は(13)配列番号63~65とそれぞれ実質的に同一の重鎖CDR1~3配列;及び配列番号102~104とそれぞれ実質的に同一の軽鎖CDR1~3配列。
【0063】
一部の実施形態では、本発明の抗体、抗体フラグメント、抗体ベースの結合タンパク質、ADC又はCARは、以下に示される配列と同一である重鎖CDR1~CDR3配列と軽鎖CDR1~CDR3配列とを含む:(1)配列番号27~29と配列番号66~68(抗体XBR1-402)、(2)配列番号30~32と配列番号69~71(抗体ERR1-301)、(3)配列番号33~35と配列番号72~74(抗体ERR1-306)、(4)配列番号36~38と配列番号75~77(抗体ERR1-316)、(5)配列番号39~41と配列番号78~80(抗体ERR1-324)、(6)配列番号42~44と配列番号81~83(抗体ERR1-403)、(7)配列番号45~47と配列番号84~86(抗体ERR1-409)、(8)配列番号48~50と配列番号87~89(抗体ERR1-TOP4)、(9)配列番号51~53と配列番号90~92(抗体ERR1-TOP15)、(10)配列番号54~56と配列番号93~95(抗体ERR1-TOP22)、(11)配列番号57~59と配列番号96~98(抗体ERR1-TOP40)、(12)配列番号60~62と配列番号99~101(抗体ERR1-TOP43)、若しくは(13)配列番号63~65と配列番号102~104(抗体ERR1-TOP54)。
【0064】
他の実施形態では、ヒトROR1と特異的に結合する本発明の抗体、抗体フラグメント、抗体ベースの結合タンパク質、ADC又はCARは、以下を含む:(a)配列番号14~26若しくは136~141のいずれか1つと実質的に同一の配列を有する軽鎖可変ドメイン、(b)配列番号1~13若しくは130~135のいずれか1つと実質的に同一の配列を有する重鎖可変ドメイン、又は(c)(a)の軽鎖と(b)の重鎖の両方。一部の実施形態では、抗体は、(a)の軽鎖と(b)の重鎖の両方を含む。一部の実施形態では、本発明の抗体、抗体フラグメント、抗体ベースの結合タンパク質、ADC又はCARは、以下を含む:(a)配列番号14~26若しくは136~141のいずれか1つに対して少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン、(b)配列番号1~13若しくは130~135のいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン、又は(c)(a)の軽鎖と(b)の重鎖の両方。一部の実施形態では、同一性の割合は、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%、あるいは100%であってよい。一部の実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号14~26又は136~141のいずれか1つに対して少なくとも95%の同一性を有する。一部の実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号14~26又は136~141のいずれか1つに対して100%の同一性を有する。一部の実施形態では、抗体、抗体フラグメント、抗体ベースの結合タンパク質、ADC又はCARは、配列番号1~13又は130~135のいずれか1つに対して少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメインを含む。他の実施形態では、同一性の割合は、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%、あるいは100%であってよい。一部の実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号1~13又は130~135のいずれか1つに対して少なくとも95%の同一性を有する。一部の実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号1~13又は130~135のいずれか1つに対して100%の同一性を有する。
【0065】
一部の実施形態では、本発明の抗体、抗体フラグメント、抗体ベースの結合タンパク質、ADC又はCARは、本明細書に例示するものなどのいずれか好適な軽鎖と組み合わせて、本明細書に記載するいずれかの重鎖(例えば、図1及び23に示す重鎖)を含み得る。同様に、抗体は、本明細書に例示するものなどのいずれか好適な重鎖と組み合わせて、前述した軽鎖(例えば、図1及び23に示す軽鎖)のいずれかを含み得る。例えば、好ましい実施形態では、抗体は、配列番号14に対して少なくとも90%の同一性を有する軽鎖と、配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有する重鎖(抗体XBR1-402)、配列番号18に対して少なくとも90%の同一性を有する軽鎖と、配列番号5に対して少なくとも90%の同一性を有する重鎖(抗体ERR1-324)、配列番号25に対して少なくとも90%の同一性を有する軽鎖と、配列番号12に対して少なくとも90%の同一性を有する重鎖(抗体ERR1-TOP43)、又は配列番号26に対して少なくとも90%の同一性を有する軽鎖と、配列番号13に対して少なくとも90%の同一性を有する重鎖(抗体ERR1-TOP54)を含む。一部の実施形態では、抗体は、以下にそれぞれ示す軽鎖と重鎖とを含み得る:(1)配列番号14と配列番号1、(2)配列番号18と配列番号5、(3)配列番号25と配列番号12、又は(4)配列番号26と配列番号13。様々な実施形態において、ペプチド配列の同一性(%)は、例えば、100×[(同一の位置)/min(TGA,TGB)](式中、TGA及びTGBは、TGA及びTGBを最小にするアラインメント中のペプチド配列A及びBにおける残基の数と、内部ギャップ位置の数の総和である。例えば、Russell et al,J.Mol.Biol.,244:332-350(1994)を参照されたい)で計算される。
【0066】
本発明の抗体は、ヒトROR1の細胞外ドメインを特異的に認識するか、又はこれと結合する完全長抗体、抗体フラグメント、抗体ベースの結合タンパク質をはじめとする、いずれの抗体であってもよい。例えば、抗体、抗体フラグメント又は抗体ベースの結合タンパク質は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え、キメラ、又はヒト化抗体であってよい。さらに、抗体は、限定されないが、IgA、IgD、IgE、IgG、又はIgMなどのいずれのアイソタイプのものであってもよい。このように、例えば、抗体は、IgA1若しくはIgA2などのいずれのIgA、又はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、若しくは合成IgGなどのいずれのIgAであってもよい。抗体は、ヒトROR1の細胞外ドメインに対する特異性を有するいずれかの抗体フラグメント又は抗体ベースの結合タンパク質、例えば、F(ab)2、Fv、scFv、IgGACH2、F(ab’)2、scFv2CH3、Fab、VL、VH、scFv4、scFv3、scFv2、dsFv、Fv、scFv-Fc、(scFv)2、ダイアボディ、二価、二重特異性、又は多重特異性抗体であってもよい。抗体は、限定されないが、非枯渇IgG抗体、CAR、又は抗体の他のFc若しくはFab変異体であってもよい。
【0067】
前述した重鎖に加えて、本発明の抗体、抗体ベースの結合タンパク質又はその抗体フラグメントは、連続的なナイーブ鎖シャッフリングを用いて、Fabライブラリーから選択した軽鎖をさらに含み得る。同様に、前述した軽鎖に加えて、本発明の抗体は、連続的なナイーブ鎖シャッフリングを用いて、Fabライブラリーから選択した重鎖をさらに含み得る。一部の実施形態では、本発明は、本明細書に例示する抗ROR1抗体の保存的修飾変異体である、抗体、抗体ベースの結合タンパク質又はその抗体フラグメントを提供する。典型的に、これらの変異体の可変領域は、1又は複数のアミノ酸残基における保存的置換を除いて、これらの例示した配列の1つと同一のアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、本発明の抗体、抗体フラグメント、抗体ベースの結合タンパク質、ADC又はCARは、ヒトROR1に特異的に結合し、且つ、配列番号27~104からなる群から選択される1配列を有する少なくとも1つのCDRを含む。本発明はまた、前述のCDR配列又は実質的に同一のCDR配列の1つ又は複数の変異体を含む、ROR1に対する特異性を有する単離された抗体も提供する。これらの抗体における変異型CDR配列は、配列番号27~104からなる群から選択される1配列に1、2、若しくは3つの置換、挿入、欠失、又はそれらの組み合わせを含み得る。例えば、組換えキメラ若しくはヒト化抗体(又はそのフラグメント)は、前述したCDR配列の1、2、3、4、5、若しくは6つを含み得る。しかしながら、一部の実施形態では、組換えキメラ若しくはヒト化抗体(又はそのフラグメント)は、同じ軽鎖若しくは重鎖、例えば、配列番号66~68、配列番号78~80、配列番号99~101、又は配列番号102~104に示される軽鎖CDR;及び配列番号27~29、配列番号39~41、配列番号60~62、又は配列番号63~65に示される重鎖CDRの3つCDR配列を含む。一部の実施形態では、組換えキメラ若しくはヒト化抗体(又はそのフラグメント)は、同じ抗体の6つのCDR配列、例えば、(a)配列番号66~68と配列番号27~29(抗体XBR1-402);(b)配列番号78~80と配列番号39~41(抗体ERR1-324);(c)配列番号99~101と配列番号60~62(抗体ERR1-TOP43)、又は(d)配列番号102~104と配列番号63~65(抗体ERR1-TOP54)を含む。
【0068】
一部の実施形態では、本発明は、約10μM以下、5μM以下、2μM以下、1μM以下、500nM以下、400nM以下、300nM以下、又は200nM以下のROR1に対する結合活性を有する抗体、抗体ベースの結合タンパク質又はその抗体フラグメントを提供する。一部の実施形態では、抗体、抗体フラグメント、抗体ベースの結合タンパク質、ADC又はCARは、約100nM以下、約75nM以下、約50nM以下、約25nM以下、約10nM以下、又は約5nM以下の結合活性で、ROR1に結合する。一部の実施形態では、抗体、抗体フラグメント、抗体ベースの結合タンパク質、ADC又はCARは、約1nM以下、約800pM以下、約700pM以下、約600pM以下、約500pM以下、約400pM以下、約300pM以下、約200pM以下、又は約100pM以下の結合活性で、ROR1に結合する。結合活性は、ELISA、バイオレイヤー干渉法、又は表面プラズモン共鳴などの当技術分野で公知の技術を用いて測定することができる。
【0069】
本発明の抗体、抗体ベースの結合タンパク質又はその抗体フラグメントは、いずれか好適な技術により、例えば、いずれか好適な真核又は非真核生物発現系を用いて、生成することができる。特定の実施形態では、哺乳動物発現系を用いて、抗体を生成する。本発明の抗体、抗体ベースの結合タンパク質又はその抗体フラグメントを生成するいくつかの具体的な技術を本明細書に例示する。一部の実施形態では、本発明の抗体、抗体ベースの結合タンパク質又はその抗体フラグメントは、細菌発現系などの好適な非真核生物発現系を用いて、生成することができる。細菌発現系を用いて、F(ab)2、Fv、scFv、IgGACH2、F(ab’)2、scFv2CH3、Fab、VL、VH、scFv4、scFv3、scFv2、dsFv、Fv、scFv-Fc、(scFv)2、及びダイアボディなどのフラグメントを生成することができる。こうしたフラグメントを生成するためにDNAコード配列を改変する技術は、当技術分野において公知である。
【0070】
本発明の抗体、抗体ベースの結合タンパク質又はその抗体フラグメントは、いずれか好適なタイプの結合を用いて、合成分子に結合させることができる。組換え操作及び組み込みセレノシステイン(例えば、2014年12月23日に発行された米国特許第8,916,159号明細書に記載されているような)を用いて、合成分子に結合させることができる。他の結合方法は、ネイティブ若しくは操作リシン側鎖アミン又はシステイン側鎖チオールとの共有結合を含み得る。例えば、Wu et al.,Nat.Biotechnol,23:1 137-1 146(2005)を参照されたい。
【0071】
好ましい実施形態では、合成分子と結合した本発明の抗体、抗体ベースの結合タンパク質又はその抗体フラグメント(毒素である合成分子との抗体薬物複合体の場合、「ADC」と呼ばれる)は、部位特異的ソルターゼ酵素媒介抗体結合を用いて取得される。国際公開第2014140317号パンフレットに開示されているように、ソルターゼ(ソルターゼトランスペプチダーゼとも呼ばれる)は、特定のペプチドモチーフ(「ソルターゼ認識タグ」又は「ソルターゼタグ」と呼ばれる)を認識して、切断することにより、表面タンパク質を修飾する一群の原核生物酵素を形成する。通常、所与のソルターゼ酵素は、1つ又は複数のソルターゼ認識タグを認識する。ソルターゼ酵素は、天然に存在するものであってもよいし、又は遺伝子操作に付したものであってもよい(Dorr et al.,PNAS 2014;111,13343-8)。
【0072】
好ましい実施形態では、複合体は、以下:(a)1つ又は複数のソルターゼ認識タグを担持する本明細書に記載の抗体、抗体ベースの結合タンパク質又はその抗体フラグメントと、(b)グリシン若しくはオリゴグリシンタグ、Gly(n)を担持する1つ又は複数の合成分子の部位特異的ソルターゼ酵素媒介結合によって得られる。
【0073】
好ましくは、ソルターゼ認識タグを抗体の少なくとも1つのサブドメインのC末端に融合又は結合させる。前記ソルターゼ認識タグは、以下:LPXSG(配列番号142)、LPXAG(配列番号143)、LPXTG(配列番号144)、LAXTG(配列番号145)、及びNPQTG(配列番号146)からなる群から選択するのが好ましい。
【0074】
好ましくは、オリゴグリシンタグ、Gly(n)は、長さ1~21グリシン残基を有し、ここで、nは、1~21の任意の数であり)、長さ3~5アミノ酸を有するのが好ましい(nは3~5、すなわち、Gly(3)、Gly(4)、又はGly(5))。
【0075】
合成分子は、腫瘍をターゲティングするものなどの任意の分子であってよい。一部の実施形態では、抗体と結合させる合成分子は、タンパク質(例えば、抗体)又はRNA若しくはDNAアプタマーである。
【0076】
一実施形態では、合成分子と結合した本発明の抗体、抗体ベースの結合タンパク質又はその抗体フラグメントは、一般式A-(L-P)nを有し、式中、Aは、本明細書に記載の抗体、抗体ベースの結合タンパク質又はその抗体フラグメントであり、Lは、1つ又は複数のリンカーであり、Pは、標識及び細胞傷害性若しくは細胞静止剤からなる群から選択される1つ又は複数のペイロードであり、ここで、nは、≧1~≦10の範囲の整数である。
【0077】
この実施形態では、リンカーは、好ましくは、以下:オリゴペプチドリンカー(開裂可能及び開裂不可能なオリゴペプチドリンカーを含む)、ヒドラジンリンカー、チオ尿素、自壊的(self-immolative)リンカー、スクシンイミジルトランス-4-(マレイミジルメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)リンカー、マレイミドリンカー、ジスルフィドリンカー、チオエーテルリンカー、及び/又はマレイミドリンカーからなる群から選択される少なくとも1つを含むか、又はそれから構成される。
【0078】
当業者は、別のリンカーも好適となり得ることを理解されよう。こうしたリンカーは、開裂不可能であってもよいし、又はpH、酸化還元電位若しくは特定の細胞内酵素により開裂可能であってもよい。開裂可能なオリゴペプチドリンカーとしては、プロテアーゼ-又はマトリックスメタロプロテアーゼ-開裂可能リンカーがある。リンカーが、上記の組み合わせを含んでもよいことは理解されよう。例えば、リンカーは、バリン-シトルリンPABリンカーであってもよい。
【0079】
好ましい実施形態では、リンカーは、ペンタペプチドモチーフ:LPXSG(配列番号142)、LPXAG(配列番号143)、LPXTG(配列番号144)、LAXTG(配列番号145)、及びNPQTG(配列番号146)を含む配列を有するオリゴペプチド(Xは、任意のアミノ酸である)、続いてオリゴ-グリシン区間、Gly(n)(nは、≧1~≦21の整数である)を含む。好ましい実施形態では、リンカーは、抗体、抗体ベースの結合タンパク質又はその抗体フラグメントの少なくとも1つのサブドメインのC末端に結合される。
【0080】
様々な実施形態では、抗体と結合させる好適な合成分子(「ペイロード」)としては、例えば、細胞傷害性薬剤、細胞静止剤、又は血管新生阻害剤、放射性同位体、及びリポソームが挙げられる。細胞傷害性薬剤は、植物、真菌、又は細菌分子であってよい。一部の実施形態では、本発明の抗体と結合させる細胞傷害性薬剤は、低分子量毒素(MW<2’000ダルトン、好ましくは、MW<1’000ダルトン)、ペプチド毒素、又はタンパク質毒素である。これらの毒素の多くの具体的な例が当技術分野で公知である。例えば、Dyba et al.,Curr.Pharm.Des.10:2311-34,2004;Kuyucak et al.,Future Med.Chem.6:1645-58,2014;Beraud et al.,Inflamm.Allergy Drug Targets.10:322-42,2011;及びMiddlebrook et al.,Microbiol.Rev.48:199-221,1984を参照されたい。一部の実施形態では、治療薬を抗体と結合させる。例えば、治療薬は、メイタンシノイド(例えば、メイタンシノール若しくはDM1メイタンシノイド)、タキサン、カリケアミシン、セマドチン、モノメチルラウリスタチン(例えば、モノメチルラウリスタチンE若しくはモノメチルラウリスタチンF)、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)又は、好ましくは、アントラサイクリン、より好ましくは極めて強力なアントラサイクリンPNU-159682の誘導体であってよい。極めて強力なアントラサイクリンPNU-159682の特に好ましい誘導体は、国際公開第2016102679号パンフレット(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。治療薬はまた、ビンクリスチン及びプレドニゾンを含んでもよい。様々な実施形態では、本発明で使用することができる治療薬は、抗代謝物質(例えば、メトトレキサートなどの抗葉酸剤、5-フルオロウラシルなどのフルオロピリミジン、システインアラビノシド、又はプリン若しくはアデノシンのアナログ);挿入剤(例えば、ドキソルビシン、ネモルビシン、又は好ましくはPNU-159682の誘導体などのアントラサイクリン)、ダウノマイシン、エピラビシン、イダルビシン、ミトマイシン-C、ダクチノマイシン、若しくはミトラマイシン、又はピロロベンゾジアゼピンなどの他の挿入剤;カリケアミシン、チアンシマイシン、及びその他のエンジインなどのDNA反応剤;白金誘導体(例えば、シスプラチン若しくはカルボプラチン);アルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、シクロホスファミド、イホスファミドニトロウレア若しくはチオテパ);α-アマニチンなどのRNAポリメラーゼ阻害剤;有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチンなどのビンカアルカロイド、又はパクリタキセル若しくはドセタキセルなどのタキソイド);トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エトポシド、テニポシド、アムサクリン、トポテカン);細胞周期阻害剤(例えば、フラボピリドール);又は微小管剤(例えば、エポチロン、チューブリシン、プレ-チューブリシン、ジスコデルモリドアナログ、若しくはエリュテロビンアナログ)であってよい。治療薬は、ボルテゾミブ、アムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド、テニポシド、若しくはドキソルビシンなどのプロテアソーム阻害剤又はトポイソメラーゼ阻害剤であってよい。治療用放射性同位体としては、ヨウ素(131I)、イットリウム(90Y)、ルテチウム(177Lu)、アクチニウム(225Ac)、プラセオジム、アスタチン(At)、レニウム(Re),ビスマス(Bi若しくはBi)、及びロジウム(Rh)が挙げられる。血管新生阻害剤としては、リモミド、ベバクジマブ、アンギオスタチン、及びラゾキサンが挙げられる。
【0081】
好ましい実施形態では、合成毒素分子は、Quintieri et al.(2005)に記載されているようなPNU-159682及びその誘導体(以下の式(i)を参照)、メイタンシン、モノメチルアウリスタチンMMAE、及びモノメチルアウリスタチンMMAFから選択される。好ましい実施形態では、リンカーと、その波線(wavy line)で連結する毒素は、国際公開第2016102679号パンフレット(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているような式(i)のものである:
【化1】
【0082】
合成分子が、式(i)のものである実施形態では、アミノ結合を形成するために、リンカーは、1つのアミノ基が、式(i)の波線に直接連結されるように、形態NH2-(CH2m-NH2(m≧1且つ≦11、好ましくはm=2)のアルキルジアミノ基を含むのが好ましい。第2のアミノ基がオリゴペプチドリンカーに連結しているのがさらに好ましい。第2アミノ基は、オリゴペプチドリンカーと連結されるのがさらに好ましく、このリンカーは、より好ましくは、オリゴグリシンGly(n)であり、ここで、nは、≧1且つ≦21である。最も好ましいペイロードを図11(B)に示す。
【0083】
一部の実施形態では、合成分子は、任意の抗体、抗体ベースの結合タンパク質、又は抗体フラグメントに結合させることができる。一部の実施形態では、合成分子は、標識である。標識は、診断用途で有用となり得、例えば、造影剤を含み得る。造影剤は、ヨウ素(131I若しくは125I)、インジウム(111In)、テクネチウム(99Tc)、リン(32P)、炭素(14C)、トリチウム(3H)などの放射性同位体標識、その他の放射性同位体標識(例えば、放射性イオン)、又は上に挙げた治療用放射性同位体の1つなどの治療用放射性同位体標識であってよい。加えて、造影剤は、X線不透過物質、磁気共鳴イメージング(MRI)剤、超音波イメージング剤、及び動物の身体をイメージングする装置による検出に好適ないずれか他の造影剤を含み得る。さらに、合成分子は、蛍光標識、生物活性酵素標識、発光性標識、又は発色団標識であってもよい。
【0084】
一部の実施形態では、合成分子は、Bendas,BioDrugs,15:215-224,2001に記載されているように、リポソームであってよい。こうした実施形態では、抗体は、コロイド粒子、例えば、リポソームに結合させて、疾患細胞への薬剤の制御送達に用いることができる。リポソーム、例えば、免疫リポソームと結合した抗体を作製する場合、化学療法薬などの薬剤又はその他の薬物を、標的細胞への送達のためにリポソームに封入することができる。一部の実施形態では、本発明の抗体、抗体ベースの結合タンパク質又はその抗体フラグメントは、ROR1以外に、1つ又は複数の抗原に対する特異性を有してもよい。例えば、本発明の抗体は、ROR1と別の腫瘍抗原、例えば、神経芽細胞腫、腎細胞癌、乳癌、胃癌、前立腺癌、結腸癌(例えば、結腸腺癌)、又は乳癌(例えば、乳腺癌)に関連する抗原に対する特異性を有するように、操作する(例えば、二価ダイアボディ、又は結合したFab二量体若しくは三量体として)ことができる。抗体は、ROR1と、細胞傷害性エフェクター細胞の活性化又はターゲティングを促進する抗原とを有するように、操作することができる。
【0085】
IV.ROR1抗体を生成するためのポリヌクレオチド、ベクター及び宿主細胞
本発明は、本明細書に記載の抗体、抗体ベースの結合タンパク質又はその抗体フラグメントのセグメント若しくはドメインを含むポリペプチドをコードする配列と同一又は相補的である、実質的に精製されたポリヌクレオチド(DNA若しくはRNA)を提供する。一部の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、図1及び23に示す重鎖又は軽鎖ドメイン配列をコードする。適切な発明ベクターから発現されると、これらのポリヌクレオチドによりコードされたポリペプチドは、ROR1抗原結合能力を呈示することができる。さらに、本発明には、本明細書に記載の抗体の重鎖若しくは軽鎖からの少なくとも1つのCDR領域、通常、3つのCDR領域全てをコードするポリヌクレオチドも提供される。いくつかの他のポリヌクレオチドは、例示した抗体の重鎖及び/又は軽鎖の可変領域配列の全部若しくは実質的に全部をコードする。例えば、これらのポリヌクレオチドの一部は、配列番号1~13又は130~135のいずれか1つに示される重鎖可変領域のアミノ酸配列、及び/又は配列番号14~26又は136~141のいずれか1つに示される軽鎖可変領域のアミノ酸配列をコードする。コードの縮重のために、様々な核酸配列が、免疫グロブリンアミノ酸配列の各々をコードすることになる。
【0086】
本発明のポリヌクレオチドは、例示した抗体の可変領域配列だけをコードすることができる。これらはまた、抗体の可変領域及び定常領域の両方をコードすることもできる。本発明のポリヌクレオチド配列の一部は、配列番号1~13又は130~135のいずれか1つに示される成熟重鎖可変領域配列と実質的に(例えば、少なくとも80%、90%、95%若しくは99%)同一の成熟重鎖可変領域配列をコードする。本発明のポリヌクレオチド配列の一部は、配列番号14~26又は136~141のいずれか1つに示される成熟軽鎖可変領域配列と実質的に(例えば、少なくとも80%、90%、95%若しくは99%)同一の成熟軽鎖可変領域配列をコードする。ポリヌクレオチド配列の一部は、例示した抗体のうちの1抗体の重鎖又は軽鎖の可変領域を含むポリペプチドをコードする。一部の他のポリヌクレオチドは、例示した抗体のうちの1抗体の重鎖又は軽鎖の可変領域とそれぞれ実質的に同一である2つのポリペプチドセグメントをコードする。
【0087】
ポリヌクレオチド配列は、デノボ固相DNA合成により、又は例示した機能抗体をコードする既存の配列(例えば、以下の実施例に記載する配列)のPCR突然変異によって、生成することができる。核酸の直接の化学合成は、Narang et al.,Meth.Enzymol.68:90,1979のホスホトリエステル法;Brown et al.,Meth.Enzymol.68:109,1979のホスホジエステル法;Beaucage et al.,Tetra.Lett.,22:1859,1981のジエチルホスホロアミダイト法;及び米国特許第4,458,066号明細書に記載の固体支持体法などの当技術分野で公知の方法によって達成することができる。PCRによるポリヌクレオチド配列への突然変異の導入は、例えば、下記の文献に記載されているように実施することができる:PCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification,H.A.Erlich(Ed.),Freeman Press,NY,NY,1992;PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Innis et al.(Ed.),Academic Press,San Diego,CA,1990;Mattila et al.,Nucleic Acids Res.19:967,1991;及びEckert et al.,PCR Methods and Applications 1:17,1991。
【0088】
さらに、本明細書に記載の機能抗体を生成するための発現ベクター及び宿主細胞も本発明に提供される。抗体を発現するためのプラスミド及びトランスポゾンベースのベクターの具体的な例は、以下の実施例に記載されている。機能抗体鎖又は結合フラグメントをコードするポリヌクレオチドを発現するために、様々な他の発現ベクターを使用することもできる。ウイルスベース及び非ウイルス発現ベクターを用いて、哺乳動物宿主細胞において抗体を生成することができる。非ウイルスベクター及び系としては、プラスミド、典型的にはタンパク質若しくはRNAを発現するための発現カセットを備えるエピソーマルベクター、ヒト人工染色体が挙げられる(例えば、Harrington et al.,Nat.Genet.15:345,1997を参照)が挙げられる。例えば、哺乳動物(例えば、ヒト)細胞における抗体ポリヌクレオチド及びポリペプチドの発現に有用な非ウイルスベクターには、pCEP4、pREP4、pThioHis A,B&C、pcDNA3.1/His、pEBVHis A,B&C(Invitrogen,San Diego,CA)、MPSVベクター、並びに他のタンパク質を発現するための当技術分野において知られている多数の他のベクターがある。他の有用な非ウイルスベクターには、Sleeping Beauty、PiggyBack及びその他のトランスポゾン系によって動員することができる発現カセットを含むベクターがある。有用なウイルスベクターとしては、レンチウイルス(lentiviruses)又はその他のレトロウイルス(retroviruses)、アデノウイルス(adenoviruses)、アデノ関連ウイルス(adeno-associated viruses)、ヘルペスウイルス(herpes viruses)をベースとするベクター、SV40、パピローマウイルス(papilloma virus)、HBP エプスタイン・バーウイルス(Epstein Barr virus)、ワクシニアウイルス(vaccinia virus)ベクター及びセムリキ森林熱ウイルス(Semliki Forest virus)(SFV)をベースとするベクターが挙げられる。Brent et al.,前掲;Smith,Annu.Rev.Microbiol.49:807,1995;及びRosenfeld et al.,Cell 68:143,1992を参照されたい。
【0089】
発現ベクターの選択は、ベクターを発現させることが意図される宿主細胞に左右される。典型的には、発現ベクターは、機能抗体鎖又はフラグメントをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されているプロモータ及び他の調節配列(例えば、エンハンサー)を含む。一部の実施形態では、誘導性プロモータを使用して、誘導条件下を除き、挿入配列の発現を阻止する。誘導性プロモータとしては、例えば、アラビノース、lacZ、メタロチオネインプロモータ又はヒートショックプロモータが挙げられる。その発現産物が宿主細胞による耐容性が優れたコード配列について集団を偏らせることなく、形質転換生物の培養物を非誘導条件下で拡大することができる。プロモータに加えて、機能抗体鎖又はフラグメントの効率的な発現のために他の調節エレメントが必要となる、又は望ましい場合もある。これらのエレメントは、典型的に、ATG開始コドン及び隣接リボソーム結合部位(コザック共通配列)又はその他の配列を含む。さらに、発現の効率は、使用する細胞系に適したエンハンサーの含有によって増強される(例えば、Scharf et al.,Results Probl.Cell Differ.20:125,1994;及びBittner et al.,Meth.Enzymol.,153:516,1987を参照)。例えば、哺乳動物宿主細胞での発現を増大するために、SV40エンハンサー又はCMVエンハンサーを使用することができる。
【0090】
発現ベクターはまた、挿入された機能抗体配列によってコードされるポリペプチドを含む融合タンパク質を形成するための分泌シグナル配列位置も賦与し得る。大抵の場合、挿入された機能抗体配列は、ベクターへの導入の前に、シグナル配列に連結される。また、機能抗体軽鎖及び重鎖可変ドメインをコードする配列を受けるために用いられるベクターも、それらの定常領域若しくは部分をコードすることがある。こうしたベクターは、定常領域を有する融合タンパク質と同様に、可変領域の発現を可能にし、これにより、インタクトな抗体又はそのフラグメントの生成をもたらす。典型的に、こうした定常領域は、ヒト型であり、好ましくはヒトIgG1抗体のものである。
【0091】
機能抗体鎖を含有し、これを発現させる宿主細胞は、原核又は真核細胞のいずれであってもよい。一部の好ましい実施形態では、哺乳動物宿主細胞を用いて、本発明の抗体ポリペプチドを発現すると共に、これを生成する。例えば、宿主細胞は、内在性免疫グロブリン遺伝子を発現するハイブリドーマ細胞株又は外性発現ベクターを含有する哺乳動物細胞株のいずれであってもよい。これらは、任意の正常な可死又は正常若しくは異常な不死動物細胞若しくはヒト細胞を含む。本明細書に例示する細胞株以外に、インタクトな免疫グロブリンを分泌することができるいくつかの他の好適な宿主細胞株も当技術分野で知られている。こうした細胞株として、例えば、CHO細胞株、各種HEK293細胞株、各種Cos細胞株、HeLa細胞、骨髄腫細胞株、形質転換B細胞及びハイブリドーマが挙げられる。ポリペプチドを発現するための哺乳動物組織細胞培養物の使用は、例えば、Winnacker,From Genes to Clones,VCH Publishers,N.Y.,N.Y.,1987に概要が論じられている。哺乳動物宿主細胞のための発現ベクターは、複製起点、プロモータ、及びエンハンサーなどの発現制御配列、並びにリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、及び転写終結配列などの必要なプロセシング情報部位を含み得る。これらの発現ベクターは、通常、哺乳動物遺伝子由来又は哺乳動物ウイルス由来のプロモータを含有する。好適なプロモータは、構成性、細胞型特異的、発生期特異的、及び/又はモジュレート可能若しくは調節可能なものであってよい。有用なプロモータとして、限定されないが、本明細書に例示するEF1α及びヒトUbCプロモータ、メタロチオネインプロモータ、構成性アデノウイルス後期プロモータ、デキサメタゾン誘導性MMTVプロモータ、SV40プロモータ、MRP pol IIIプロモータ、構成性MPSVプロモータ、テトラサイクリン誘導性CMVプロモータ(ヒト最初期CMVプロモータなど)、構成性CMVプロモータ、及び当技術分野で公知のプロモータ-エンハンサー複合体が挙げられる。
【0092】
目的のポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターを導入する方法は、細胞宿主の種類によって変わる。例えば、原核細胞の場合には、一般に塩化ナトリウム形質転換が使用されるが、他の細胞宿主の場合には、リン酸ナトリウム処理又はエレクトロポレーションが用いられ得る(概要については、Sambrook et al.,前掲を参照)。他の方法としては、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム処理、リポソーム媒介形質転換、注射及びマイクロインジェクション、弾道法、ビロソーム、イムノリポソーム、ポリカチオン:核酸複合体、ネイキッドDNA、人工ビリオン、ヘルペスウイルス構造タンパク質VP22との融合(Elliot and O’Hare,Cell 88:223,1997)、薬剤によるDNAの取り込み強化、並びにエクスビボ形質導入が挙げられる。組換えタンパク質の長期、高収率生成のためには、多くの場合、安定した発現が望ましい。例えば、ウイルス複製起点又は内在性発現エレメント及び選択マーカ遺伝子を含有する本発明の発現ベクターを用いて、抗体鎖又は結合断片を安定して発現する細胞株を調製することができる。ベクターの導入後、選択培地に移す前に、細胞を濃縮培地中で1~2日間増殖させてもよい。選択マーカの目的は、選択に対する耐性を付与することであり、その存在によって、選択培地中で導入配列を好適に発現する細胞の増殖が可能になる。耐性の、安定にトランスフェクトされた細胞は、細胞型に適した組織培養技術を用いて増殖することができる。
【0093】
本発明は、さらに、本発明の抗体、抗体ベースの結合タンパク質又はその抗体フラグメントを生成するように組換えにより操作された真核又は非真核細胞(例えば、Tリンパ球)も提供する。真核又は非真核細胞は、本発明の抗体を生成するための発現系として使用することができる。一部の実施形態では、本発明は、本発明のROR1特異的抗体を組換えにより発現するように操作されたROR1標的免疫細胞を提供する。例えば、本発明は、本発明の抗体(例えば、scFv、scFv-Fc、若しくは(scFv)2)を発現するように操作されたT細胞を提供し、これは、下記ドメイン:スペーサ又はヒンジ領域(例えば、CD28配列若しくはIgG4ヒンジ-Fc配列)、膜貫通領域(例えば、膜貫通規定ドメイン)、及び細胞内T細胞受容体(TCR)シグナル伝達ドメインの1つ又は複数を含む合成分子と連結しており、これによって、キメラ抗原受容体(CAR)又はTボディを形成する。CAR(又はTボディ)内に含有させることができる細胞内TCRシグナル伝達ドメインとして、限定されないが、CD3ζ、FcR-γ、及びSyk-PTシグナル伝達ドメイン並びにCD28、4-1BB、及びCD134同時シグナル伝達ドメインが挙げられる。CAR(又はTボディ)を発現するT細胞を構築するための方法は、当技術分野で公知である。例えば、Marcu-Malina et al.,Expert Opinion on Biological Therapy,Vol.9,No.5(2009年4月16日にインターネットで公開)を参照されたい。
【0094】
V.治療及び診断用途
本明細書に開示するROR1抗体、抗体ベースの結合タンパク質、その抗体フラグメント、ADC及びCARは、様々な治療及び診断用途に使用することができる。ROR1は、様々な腫瘍の発生時に発現され、それに関与している。例えば、Rebagay et al.,Front Oncol.2,34,2012;Shabani et al.,Expert Opin.Ther.Targets 19,941-955,2015を参照されたい。例えば、ROR1は、CLL、ALL、マントル細胞リンパ腫、神経芽細胞腫、肉腫、腎細胞癌、乳癌、肺癌、結腸癌、頭部及び頚部癌、黒色腫、及びその他の癌における腫瘍細胞表面上に発現される。重要なことには、ROR1は、胚形成に発現されるが、ほとんどが誕生後停止される。ごくわずかな成体正常組織及び細胞が、ROR1を発現する。これと一致して、抗ROR1 CAR操作T細胞は、非ヒト霊長類において安全且つ活性であることがわかっており、これによって、ROR1は、癌の治療標的として認められた(Berger (2015) Cancer Immunol Res.3(2),page 2016)。従って、ROR1に対するmAbは、癌において高い治療及び診断有用性を有する。
【0095】
一部の実施形態では、本発明は、本発明の抗体、抗体ベースの結合タンパク質、その抗体フラグメント、ADC又はCARと細胞を接触させることにより、ROR1を発現する細胞(ROR1細胞)を阻害する方法を提供する。抗体、抗体ベースの結合タンパク質又はその抗体フラグメントは、ネイキッド(非結合)分子、又は合成分子、例えば、細胞傷害剤、細胞静止剤、又は血管新生阻害剤、放射性同位体、あるいはリポソームに結合した抗体、抗体ベースの結合タンパク質、その抗体フラグメントであってよい。好ましくは、結合した細胞傷害性分子を含むADCと細胞を接触させる。この方法を用いて、インビトロで又は被験者において(すなわち、インビボで)ROR1細胞を阻害することができる。接触させるROR1細胞は、例えば、ROR1のレベル増大に関連する障害の細胞培養物又は動物モデルに存在するものであってよい。この方法は、例えば、特定のROR1細胞型の抗体の阻害活性を測定及び/又はランク付け(別の抗体に対して)する上で有用である。ROR1細胞の阻害は、ROR1細胞の活性若しくは増殖を阻止又は低減することを含む。阻害はまた、ROR1細胞の殺傷も含み得る。この方法は、特定の作用機構に何ら拘束又は制限されるものではないが、阻害活性は、ROR1媒介性シグナル伝達を阻止することにより、又はROR1関連受容体のシグナル伝達を阻止することによって、媒介することができる。阻害活性はまた、ROR1細胞を攻撃する免疫系エフェクターの動員により、例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)又は補体系の成分を活性化することによって、媒介することもできる。
【0096】
一部の関連実施形態では、本発明は、ROR1の発現に関連する障害を有する、有することが疑われる、又はそうした障害を発生するリスクがある被験者を治療する方法を提供する。一般に、本方法は、治療有効量の本発明の単離された抗体、抗体ベースの結合タンパク質、その抗体フラグメント、ADC又はCARを被験者に投与するステップを含む。抗体は、本明細書に記載する本発明の抗ROR1抗体、抗ROR1抗体フラグメント、抗ROR1抗体ベース結合タンパク質のいずれであってもよい。従って、抗体は、キメラ、ヒト化、合成、F(ab)2、Fv、scFv、IgGACH2、F(ab’)2、scFv2CH3、Fab、VL、VH、scFv4、scFv3、scFv2、dsFv、Fv、又は(scFv)2であってよい。一部の実施形態では、本方法は、IgG、scFv、dsFv、F(ab’)2、ダイアボディ、又は二価抗体を投与するステップを含む。投与される抗体、抗体ベースの結合タンパク質、その抗体フラグメントは、前述した合成分子、例えば、細胞傷害剤、細胞静止剤、若しくは血管新生阻害剤、治療用放射性同位体、又はリボソームと結合させることができる。例示的な細胞傷害剤は、緑膿菌外毒素(Pseudomonas exotoxin)A(PE38)である。治療することができる障害としては、CLL、ALL、マントル細胞リンパ腫、神経芽細胞腫、肉腫、腎細胞癌、乳癌、肺癌、結腸癌、頭部及び頚部癌、黒色腫、及びROR1のレベル増大に関連するその他の障害が挙げられる。
【0097】
一部の実施形態では、本発明は、遺伝子操作された本明細書に記載のT細胞の養子移入によって、ROR1のレベル増大に関連する障害を有する、有することが疑われる、又はそうした障害を発生するリスクがある被験者を治療する方法を提供し、ここで、T細胞は、ROR1と選択的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)として本発明の抗体又は抗原結合フラグメントを発現する。組換え技術を用いて、治療しようとする被験者からのいずれか好適なT細胞、例えば、セントラルメモリT細胞にCARコード遺伝子材料を導入することができる。遺伝子材料を担持するT細胞を拡大することができる(例えば、サイトカインの存在下で)。遺伝子操作されたT細胞は、典型的に、注入によって、患者に移入する。その後、移入された本発明のT細胞は、被験者においてROR1発現細胞に対する免疫応答を高めることができる。養子移入法を用いて、例えば、CLL、ALL、マントル細胞リンパ腫、神経芽細胞腫、肉腫、腎細胞癌、乳癌、肺癌、結腸癌、頭部及び頚部癌、黒色腫、及びその他の癌を含む、ROR1に関連する癌のいずれかを有するか、又は有することが疑われる被験者を治療することができる。一部の実施形態では、前述の治療方法は、さらに、ROR1のレベル増大に関連する障害を治療するための第2の治療薬を同時投与するステップも含み得る。例えば、治療しようとする障害が、ROR1を発現する癌を含むとき、本方法は、癌を治療するのに好適な、細胞傷害剤、細胞静止剤、若しくは血管新生阻害剤、又は免疫刺激剤(例えば、免疫チェックポイント阻害抗体、例えば、限定されないが、PD1、PDL1、CTLA4、OX40、TIM3、GITR、LAG3などに結合するもの)の同時投与をさらに含み得る。癌が、B細胞悪性疾患である場合、本方法は、例えば、リツキシマブ、アレムツズマブ、オファツムマブ、オクレリズマブ、又はCHOP化学療法薬レジメンの同時投与をさらに含み得る。
【0098】
一部の他の実施形態では、本発明は、FACS、免疫組織化学(IHC)又はウエスタンブロッティングのいずれかにより、例えばコントロールに比べて、変化したレベルのROR1(例えば、細胞表面ROR1)を生体サンプル中で検出する方法を提供する。一般に、本方法は、本発明の抗体、抗体ベースの結合タンパク質、その抗体フラグメントと生体サンプルを接触させるステップと、サンプル中で材料(例えば、細胞)に選択的に結合する抗体の量を決定することにより、生体サンプル中のROR1のレベルを決定するステップを含む。生体サンプルは、細胞培養物又は試験被験者由来のものでよく、例えば、ROR1のレベル増大に関連する疾患又は状態を有する、有することが疑われる、又はそうした疾患又は状態を発生するリスクがある被験者からの血漿若しくは組織サンプルであってよい。コントロールレベルは、1つ又は複数のコントロール培養物若しくは疾患のない被験者からの対応するサンプル中の同じ抗体を用いて検出されたROR1レベルと一致するのが望ましい。本発明の抗体を用いてROR1レベルを決定する方法は、イムノ-(ウエスタン)ブロッティング、酵素連結イムノソルベントアッセイ(ELISA)、免疫組織化学(IHC)及びフローサイトメトリー、例えば、蛍光活性化セルソーティング(FACS)分析などの任意の免疫アッセイを含み得る。
【0099】
検出方法を用いて、ROR1増大に関連する障害の存在をスクリーニングすることができる。本方法は、スクリーニングを必要とする試験被験者、例えば、ROR1増大に関連する障害を有する、有することが疑われる、又はそうした障害を発生するリスクがある被験者から、サンプルを取得するステップを含む。本発明の抗体、抗体ベースの結合タンパク質、その抗体フラグメントを用いて、サンプル中のROR1のレベル(例えば、量又は濃度)を測定し、サンプル中のレベルをROR1のコントロールレベルと比較する。コントロールレベルは、例えば、ROR1増大に関連する障害のない1又は好ましくは複数のコントロールグループ被験者からのサンプル中の平均レベル(例えば、量又は濃度)を表す。あるいは、コントロールレベルは、試験被験者が、ROR1増大に関連する状態がなかった、又はそれを呈示していなかったときなど、以前の1又は複数の時点に、試験被験者から採取された1つ又は複数のサンプル中のROR1のレベル若しくは平均レベルと一致してもよい。コントロールレベルに比べて、生体サンプル中の有意に高いROR1のレベルは、被験者におけるROR1増大に関連する障害を示している。細胞表面ROR1発現が主に胚形成に限定されるヒトなどの被験者の場合、ROR1のコントロールレベルは、ゼロ又は無であってよい。このように、本発明が提供する検出方法の一部の実施形態では、生体サンプル中のROR1のどんな有意且つ検出可能な量も、被験者におけるROR1増大に関連する障害を示す可能性がある。
【0100】
さらに、検出方法を用いて、ROR1増大に関連する障害の進行をモニターすることができる。本方法は、スクリーニングを必要とする被験者、例えば、ROR1増大に関連する障害を有すると診断されたか、又は有することが疑われる被験者からサンプルを取得するステップを含む。本発明の抗体、抗体ベースの結合タンパク質、その抗体フラグメントを用いて、サンプル中のROR1のレベルを測定し、サンプル中のレベルを、以前の1又は複数の時点で試験被験者から採取された1つ又は複数のサンプル中のROR1のレベル若しくは平均レベルに一致するコントロールレベルと比較する。コントロールに比べて、有意に増大又は低下したROR1のレベルは、被験者の障害が、それぞれ、悪化又は改善していることを示している。前述の検出方法を用いて、例えば、CLL、ALL、マントル細胞リンパ腫、神経芽細胞腫、肉腫、腎細胞癌、乳癌、肺癌、結腸癌、頭部及び頚部癌、黒色腫、及びその他の癌を含む障害の存在をスクリーニングする、又はその進行をモニターすることができる。
【0101】
一部の実施形態では、本発明は、変化したレベルのROR1について被験者をスクリーニングする方法を提供する。一般に、本方法は、標識(例えば、造影剤)と結合した本発明の抗体、抗体ベースの結合タンパク質、その抗体フラグメントを被験者に投与するステップ、標識を検出するのに好適な様式で被験者をイメージングするステップ、及び被験者における1領域が、近傍の組織中の標識のバックグラウンドレベルと比較して、変化した密度若しくは濃度の標識を有するか否かを決定するステップを含む。あるいは、本方法は、被験者の同じ領域中で以前検出された標識の密度若しくは濃度と比較して、領域中の標識の密度若しくは濃度に変化があるか否を決定するステップを含む。被験者をイメージングする方法としては、抗体に結合した標識を検出する上で適した、X線イメージング、X線コンピュータ断層イメージング(例えば、CT血管造影(CTA)イメージング)、磁気共鳴(MR)イメージング、磁気共鳴血管造影(MRA)、核医学、超音波(US)イメージング、最適イメージング、エラストグラフィ、赤外線イメージング、マイクロ波イメージングなどが挙げられる。好ましい実施形態では、被験者は、例えば、CLL、ALL、マントル細胞リンパ腫、神経芽細胞腫、肉腫、腎細胞癌、乳癌、肺癌、結腸癌、頭部及び頚部癌、黒色腫、及びその他の癌などのROR1発現腫瘍を有する、有することが疑われる、又はそれを発生するリスクがあり、本方法を用いて、腫瘍の存在をスクリーニング又は検出する。別の実施形態では、本方法を用いて、時間経過による、例えば、治療期間中のROR1発現腫瘍サイズ又は密度をモニターすることができる。
【0102】
VI.医薬組成物及び併用
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の抗体、抗体フラグメント、抗体ベースの結合タンパク質、又はADCと、薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、本明細書に記載の抗体のいずれかから調製することができる。例示的な組成物として、配列番号14(軽鎖)及び/又は配列番号1(重鎖)を有するキメラ抗体、配列番号18(軽鎖)及び/又は配列番号5(重鎖)を有するキメラ抗体、配列番号25(軽鎖)及び/又は配列番号12(重鎖)を有するキメラ抗体、並びに配列番号26(軽鎖)及び/又は配列番号13(重鎖)を有するキメラ抗体が挙げられる。本発明の医薬組成物に好適な他の抗体、抗体フラグメント、抗体ベースの結合タンパク質、又はADCとしては、配列番号14~26若しくは136~141に示される軽鎖配列及び/又は配列番号1~13若しくは130~135に示される重鎖配列を有するものが挙げられる。本発明の他の例示的な組成物は、配列番号130~141に例示されるものと同様に、配列番号27~104からなる群から選択される1、2、3、4、5、若しくは6つのCDRを有するヒト化抗体を含有することができる。一部の実施形態では、抗体は、図1に示される例示軽鎖又は重鎖の3つのCDR配列を含む。これらは、以下:(1)配列番号27~29と配列番号66~68(抗体XBR1-402)、(2)配列番号30~32と配列番号69~71(抗体ERR1-301)、(3)配列番号33~35と配列番号72~74(抗体ERR1-306)、(4)配列番号36~38と配列番号75~77(抗体ERR1-316)、(5)配列番号39~41と配列番号78~80(抗体ERR1-324)、(6)配列番号42~44と配列番号81~83(抗体ERR1-403)、(7)配列番号45~47と配列番号84~86(抗体ERR1-409)、(8)配列番号48~50と配列番号87~89(抗体ERR1-TOP4)、(9)配列番号51~53と配列番号90~92(抗体ERR1-TOP15)、(10)配列番号54~56と配列番号93~95(抗体ERR1-TOP22)、(11)配列番号57~59と配列番号96~98(抗体ERR1-TOP40)、(12)配列番号60~62と配列番号99~101(抗体ERR1-TOP43)、又は(13)配列番号63~65と配列番号102~104(抗体ERR1-TOP54)にそれぞれ示される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列と、軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列とを含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、図1に例示される同じ抗体の6つのCDR配列、例えば、(a)配列番号66~68と配列番号27~29(抗体XBR1-402);(b)配列番号78~80と配列番号39~41(抗体ERR1-324);(c)配列番号99~101と配列番号60~62(抗体ERR1-TOP43)、又は(d)配列番号102~104と配列番号63~65(抗体ERR1-TOP54)を有する抗体を含む。また別の例示的な医薬組成物は、dsFvフラグメントを含み、これは、必要に応じて、また当業者には理解されるように、アミノ酸配列に1つ又は複数の修飾を含んでもよい。
【0103】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、抗体、抗体フラグメント、抗体ベースの結合タンパク質又はADCのための担体、望ましくは薬学的に許容される担体を含む。薬学的に許容される担体は、任意の好適な薬学的に許容される担体であってよい。これは、ヒト若しくは動物患者への投与に適した1種又は複数種の適合性固体若しくは液体充填材、希釈剤、他の賦形剤、又は封入物質(例えば、生理学的に許容される担体又は薬理学的に許容される担体)であってよい。用語「担体」は、活性成分の使用、例えば、被験者への活性成分の投与を容易にするために活性成分と併用される有機若しくは無機成分(天然若しくは合成)を意味する。薬学的に許容される担体は、所望の薬効を実質的に損なわないように、1種若しくは複数種の活性成分、例えば、ハイブリッド分子と混合することができ、また、組成物中に2種以上の薬学的に許容される担体が存在する場合には、互いに混合することができる。薬学的に許容される材料は、典型的に、吐気、めまい、発疹、若しくは急性胃蠕動などの有意な望ましくない生理学的作用を生じることなく、被験者、例えば、患者への投与を可能にする。例えば、治療目的のためにヒト患者に投与される場合、薬学的に許容される担体を含む組成物は免疫原性ではないことが望ましい。
【0104】
本発明の医薬組成物は、さらに、例えば、塩の形態の酢酸、塩の形態のクエン酸、塩の形態のホウ酸、及び塩の形態のリン酸などの好適な緩衝剤を含有することができる。組成物は、さらに、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベン、及びチメロサールなどの好適な防腐剤を任意選択的に含有することもできる。本発明の医薬組成物は、単位剤形で提供することができ、また、いずれか好適な方法で調製することができ、その多くは、製剤分野で公知である。こうした方法は、本発明の抗体を、1若しくは複数の補助成分を構成する担体と会合させるステップを含む。一般に、組成物は、活性剤を液体担体、微粉化した固体担体、又はその両方と均一且つ入念に会合させた後、必要であれば、生成物を造形することにより調製される。
【0105】
非経口投与に好適な組成物は、本発明の組成物の滅菌水性調製物を含むのが好都合であり、これは、好ましくはレシピエントの血液と等張性である。この水性調製物は、好適な分散又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて、公知の方法に従い製剤化することができる。滅菌注射調製物はまた、非毒性の非経口的に許容される希釈剤若しくは溶媒中の滅菌注射液若しくは懸濁液、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液であってよい。使用することができる許容されるビヒクル及び溶媒として、水、リンガー溶液、及び等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、溶媒又は懸濁媒として、滅菌、不揮発性油が一般に使用される。この目的のために、いずれの無刺激の不揮発性油を使用してもよく、例えば、合成モノ-若しくはジ-グリセリドがある。加えて、オレイン酸などの脂肪酸を注射液の調製に使用することもできる。経口、皮下、静脈内、筋肉内などの投与に好適な担体製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PAに見いだすことができる。
【0106】
本発明の医薬組成物の調製及びそれらの様々な投与経路は、当技術分野で公知の方法に従って実施することができる。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Mack Publishing Co.,20th ed.,2000;及びSustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc., New York,1978を参照されたい。本発明に関して有用な送達系は、本発明の組成物の送達が、治療しようとする部位の感作を引き起こす前に、並びにそれを引き起こすのに十分な時間で、実施されるように、定時放出、遅延放出、及び持続的放出を含む。本発明の組成物は、他の治療薬又は療法と一緒に使用することができる。このような系は、本発明の組成物の反復投与を回避して、被験者及び医師に対する便宜を高めることができ、しかも、本発明の組成物にとって特に好適となり得る。
【0107】
多くのタイプの放出送達系が入手可能であり、当業者には周知である。好適な送達系としては、ポリ(ラクチド-グリコシド)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸、及びポリ無水物が挙げられる。薬物を含有する前述のポリマーのマイクロカプセルは、例えば、米国特許第5,075,109号明細書に記載されている。送達系はまた、コレステロール、コレステロールエステルなどのステロール、脂肪酸又はモノ-ジ-及びトリグリセリドなどの中性脂肪を含む脂質である非ポリマー系;ハイドロゲル放出系;シラスティック系;ペプチドベース系;ワックスコーティング;通常の結合剤及び賦形剤を用いた圧縮錠剤;部分的に融合したインプラントなどを含んでもよい。具体的な例として、限定されないが、以下のものが挙げられる:(a)活性組成物が、米国特許第4,452,775号明細書、同第4,667,014号明細書、同第4,748,034号明細書、及び同第5,239,660号明細書に記載されるものなどのマトリックス内の形態で含有されるエロージョン系、並びに(b)米国特許第3,832,253号明細書及び同第3,854,480号明細書に記載されているようなポリマーから制御された速度で活性成分が透過する分散系。さらに、ポンプを用いたハードウエア送達系を使用することができ、そのいくつかは、移植のために改変されている。
【0108】
本発明はまた、本発明の方法を実施する上で好適なキットも提供する。典型的には、キットは、本発明の治療及び診断方法を実施するために必要な2種以上の構成要素を含む。キット構成要素としては、限定されないが、本発明の1種又は複数種の抗体、抗体ベースの結合タンパク質、その抗体フラグメント、若しくはADC、適切な試薬、及び/又は装置が挙げられる。一部の実施形態では、キットは、本発明の抗体、抗体ベースの結合タンパク質、その抗体フラグメント、及びROR1を検出する上で好適な免疫アッセイバッファー(例えば、ELISA、フローサイトメトリー、磁気選別、又はFACSによる)を含み得る。キットは、さらに、1若しくは複数のマイクロタイタープレート、標準、アッセイ希釈剤、洗浄バッファー、接着プレートカバー、磁気ビーズ、磁石、及び/又はキットを使用する本発明の方法を実施するための指示書を含んでもよい。キットスキャンは、基質(例えば、マルチウェルプレート若しくはチップ)に結合した本発明の抗体、抗体ベースの結合タンパク質、その抗体フラグメントを含み、これは、好適にパッケージングされ、ROR1を検出する上で有用である。一部の実施形態では、キットは、蛍光標識、生体活性酵素標識、発光性標識、若しくは発色団標識などの標識に結合した本発明の抗体、抗体ベースの結合タンパク質、その抗体フラグメントを含む。キットは、さらに、結合した抗体、抗体ベースの結合タンパク質、その抗体フラグメント、例えば、酵素の基質を視覚化するための試薬も含み得る。一部の実施形態では、キットは、造影剤に結合した本発明の抗体、抗体ベースの結合タンパク質、その抗体フラグメント、並びに任意選択で、被験者における抗体をイメージングする上で有用な1種若しくは複数種の試薬又は装置の構成要素を含む。
【0109】
一般に、キット内の本発明の抗体、抗体ベースの結合タンパク質、その抗体フラグメントは、例えば、バイアル、ポーチ、アンプル、及び/又は治療若しくは検出方法に適した任意の容器内に好適にパッケージされる。キット構成要素は、濃縮物(凍結乾燥組成物を含む)として提供することができ、これは、使用前に希釈してもよいし、又は使用濃度で提供することができる。インビボでの本発明の抗体の使用のために、所望の量及び濃度の構成要素を有する滅菌容器内に単一用量を供給してもよい。
【実施例
【0110】
本発明をさらに説明するために以下に実施例を記載するが、本発明の範囲を制限することは意図しない。本発明の他の変形は、当業者には容易に理解され、それらは、添付の特許請求の範囲に含まれる。
【0111】
実施例1.細胞株
細胞株:MDA-MB-231,MDA-MB-469,697,Kasumi-2、T47D、HS578T、63-12及び63-12/hROR1及び63-12/hROR2トランスフェクタント、K562及びK562/hROR1トランスフェクタント、EMT-6及びEMT-6/ROR1トランスフェクタントを、10%(v/v)熱不活性化FBS(Thermo Scientific;Logan,UT)、100U/mLペニシリン、及び100mg/mLストレプトマイシン(Invitrogen)で補充したDMEM(Invitrogen;Carlsbad,CA)中で培養した。HEK 293F細胞は、Invitrogenから購入し、接着培養を支持するために1%(v/v)熱不活性化FBS(Thermo Scientific)で補充したFreeStyle Medium中に維持するか、又は懸濁培養の場合には、FBSなしで、100U/mLペニシリン、及び100mg/mLストレプトマイシン(Invitrogen)で補充したFreeStyle Medium中に維持した。
【0112】
完全長hROR1及びhROR1哺乳動物発現ベクターのクローニング:合成した、又は配列確認した市販のベクターから得られたフランキング制限部位を有するモジュラー部分から転移可能なベクターバックボーン(pPB-Puro)をアセンブルしたが、これらについては、国際公開第2014013026A1号パンフレットに詳しく記載されている。これらの元の転移可能なベクターバックボーンは、元のベクター中のプロマイシン耐性遺伝子のIRES駆動発現を個別のホスホグリセリン酸キナーゼプロモータ(PGK)駆動発現と交換することによって修飾した。これは、IRES配列を、多回クローニング部位の3’側に位置するSV40-pA配列で置換した後、プロマイシン耐性遺伝子の5’側にPGKプロモータ配列を導入することによって実施した。フランキング制限部位(5’NotI/3’BstBI)を用いた全遺伝子合成(Genscript,Piscataway)によって完全長ROR1/2オープンリーディングフレームを合成し、次に、これらを、それぞれの制限酵素を用いて転移可能なベクターの多回クローニング部位にクローニングした。
【0113】
63-12マウスA-MuLV-形質転換前駆B細胞株におけるhROR1又はhROR2の異所性発現のための細胞株の操作:マウスエーベルマン(Abelson)マウス前駆B細胞株63-12(Shinkai et al.(1992)Cell 68:855-67)を、2%(v/v)FCS、100IU/mLのPen/Strep/Fungizone(Amimed,4-02F00-H)、200mMのL-グルタミン(Amimed,5-10K00-H)及び50μMの2-メルカプトエタノール(Amresco,0482)で補充した培地(17.7g/LのGibco(登録商標)IMDM(Life Technologies,42200-030)、3.024g/LのNaHCO3(Sigma-Aldrich,p.a.,>99.7%)、10mL/Lの100×非必須アミノ酸(Life Technologies,11140035)、5mLg/Lのインスリン(Sigma-Aldrich,I-5500)、H2O中3mL/Lの10%プリマトンRL/UF(Sheffield Bioscience)、及びH2O中1mL/Lの50mM 2-メルカプトエタノール(Sigma-Aldrich,M-3148))において、37℃及び7.5%CO2で培養した。細胞は、下記の通り、転位によってhROR1及びhROR2を過剰発現するように操作した:細胞を遠心分離(6分、1200rpm、4℃)し、RPMI-1640培地中に再懸濁させた(5×106細胞/mL)。次に、10μgの転移性ベクターpPB-PGK-Puro-ROR1(完全長ROR1(NP_005003.2)及びプロマイシン耐性遺伝子の同時発現を指令する)、又は10μgの転移性ベクターpPB-PGK-Puro-ROR2(完全長ROR2(NP_004551.2)及びプロマイシン耐性遺伝子の同時発現を指令する)を含有する400μLのRPMIに、400μLの細胞懸濁物を、10μgのトランスポザーゼ含有ベクターpCDNA3.1_hy_mPBと一緒に添加した。DNA/63-12細胞混合物をエレクトロポレーションキュベット(0.4cm-ギャップ、165-2088,BioRad,Cressier,Switzerland)に移し、300V及び950μFのキャパシタンスエクステンダー(capacitance extender)を備えたBiorad Gene Pulser IIを用いて、エレクトロポレーションした。次に、細胞を室温で5~10分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を1200rpmで6分間(4℃)遠心分離し、1回洗浄した後、2%(v/v)FCS、100IU/mLのPen/Strep/Fungizone(Amimed,4-02F00-H)、200mMのL-グルタミン(Amimed,5-10K00-H)及び50μMの2-メルカプトエタノール(Amresco,0482)で補充した水性培地(17.7g/LのGibco(登録商標)IMDM(Life Technologies,42200-030)、3.024g/LのNaHCO3(Sigma-Aldrich,p.a.,>99.7%)、10mL/Lの100×非必須アミノ酸(Life Technologies,11140035)、5mLg/Lのインスリン(Sigma-Aldrich,I-5500)、H2O中3mL/Lの10%プリマトンRL/UF(Sheffield Bioscience)、及びH2O中1mL/Lの50mM 2-メルカプトエタノール(Sigma-Aldrich,M-3148)H2O中)中に再懸濁させた。5%CO2雰囲気下、加湿したインキュベータ内の37℃で2日のインキュベーション後、2μg/mLプロマイシン(Sigma-Aldrich,P8833)を添加することによって、hROR1又はhROR2を安定して発現する細胞プールを選択した。
【0114】
4~5日後、操作細胞上でのhROR1又はhROR2発現をフローサイトメトリーにより確認した。手短には、トリプシン処理後、106個の細胞をFACSチューブ内で遠心分離し;得られたペレットをバッファー(2%(v/v)FCSを含むPBS)中に再懸濁させた。hROR1操作細胞の場合、続いて、細胞を2A2(ROR1をターゲティングするmAb066抗体、最終濃度2μg/mL)と一緒に30分間、4℃でインキュベートした後、遠心分離及び洗浄した。細胞を前述のように再懸濁させ、1:100希釈率で、抗ヒトIgG抗体(Fcγ特異的)PE(eBioscience,Vienna,Austria,12-4998-82)と一緒に暗所で(30分、4℃)インキュベートし、バッファーで1回洗浄してから、FACSソーティングまで氷上で維持した。hROR2操作63-12細胞の場合、同じプロトコルを実施するが、一次抗体としてEPR3779(ROR2をターゲティングするAbcam抗体;1:100希釈)及び二次抗体としてアロフィコシアニンと結合したAffiniPure F(ab’)2ヤギ抗ウサギIgG(H+L)(Jackson Immunoresearch,111-136-144)を使用した。
【0115】
hROR1操作63-12細胞の場合、FACS Aria IIを用いて、ウェル当たり200μLの補充培地を含有する96ウェル平底プレート中に細胞をシングルセルソーティングした。プレートを37℃でインキュベートし、分析前にクローンを6ウェルプレートに拡大した。FACSCalibur計器(BD Biosciences)及びFlowJo分析ソフトウエア(Tree Star,Ashland,OR)を用いたフローサイトメトリーにより、標的発現を確認した。
【0116】
EMT-6マウス乳癌細胞株におけるhROR1の異所性発現のための細胞株操作:マウスEMT-6乳癌細胞(バーゼル大学病院(University Hospital of Basel,Switzerland)、Prof.Dr.med.Alfred Zippeliusからの親切な寄贈品)を、完全DMEM(10%(v/v)ウシ胎児血清(FCS)を含むL-グルタミン、100IU/mLのPen-Strep-Fungizone及び2mMのL-グルタミン(全て、Bioconcept,Allschwil,Switzerland)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)High Glucose(4.5g/l))において、37℃及び5%CO2で培養した。細胞は、下記の通り、転位によってROR1を過剰発現するように操作した:細胞を遠心分離(6分、1200rpm、4℃)し、RPMI-1640培地中に再懸濁させた(5×106細胞/mL)。次に、13.3μgの転移性ベクターpPB-PGK-Puro-ROR1(完全長ROR1(NP_005003.2)及びプロマイシン耐性遺伝子の同時発現を指令する)と、6.6μgのトランスポザーゼ含有ベクターpCDNA3.1_hy_mPBを含有する400μLのRPMIに、400μLの上記細胞懸濁物を添加した。DNA/EMT-6細胞混合物をエレクトロポレーションキュベット(0.4cm-ギャップ,165-2088,BioRad,Cressier,Switzerland)に移し、300V及び950μFのキャパシタンスエクステンダーを備えたBiorad Gene Pulser IIを用いて、エレクトロポレーションした。次に、細胞を室温で5~10分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を1200rpmで6分間遠心分離し、1回洗浄してから、続いて完全DMEM中に再懸濁させた後、5%CO2雰囲気下、37℃にて、加湿したインキュベータ内でのインキュベーションに付した。エレクトロポレーションから1日後、3μg/mLのプロマイシン(Sigma-Aldrich,P8833)を添加することによって、ヒトROR1を安定に発現する細胞プールを選択した。
【0117】
選択したEMT-6-ROR1細胞上でのROR1発現をフローサイトメトリーにより確認した。手短には、トリプシン処理後、106個の細胞をFACSチューブ内で遠心分離し;得られたペレットをバッファー(2%(v/v)FCSを含むPBS)中に再懸濁させた。次に、細胞を2A2(mAb066);30分、4℃、最終濃度2μg/mL)と一緒にインキュベートした後、遠心分離及び洗浄した。続いて、細胞を前述のように再懸濁させ、1:250希釈率で、抗ヒトIgG抗体(Fcγ特異的)PE(eBioscience,Vienna,Austria,12-4998-82)と一緒に暗所で(30分、4℃)インキュベートし、バッファーで1回洗浄してから、FACSソーティングまで氷上で維持した。
【0118】
FACS Aria IIを用いて、ウェル当たり200μLの完全DMEMを含有する96ウェル平底プレート中に細胞をシングルセルソーティングした。このプレートを37℃でインキュベートし、クローンを6ウェルプレートに拡大した後、FACSCalibur計器(BD Biosciences)及びFlowJo分析ソフトウエア(Tree Star,Ashland,OR)を用いて、上に概説したフローサイトメトリーによるROR1発現の分析を行った。
【0119】
図16Cは、抗ROR1抗体2A2(mAb066)を用いて検出された、クローン14(高ROR1発現)及びWT(ROR1陰性)EMT-6のFACS分析データを示す。
【0120】
実施例2.高複雑度ウサギFabライブラリーの作製及びスクリーニング用の試薬
組換えヒトROR1タンパク質の構築、発現、及び精製:ヒトROR1又はマウスROR1の様々なドメインを含有するhFc融合タンパク質の構築、発現、精製及びビオチン化が記載されている(Yang et al.,PloS One 6:e21018,2011)。hROR1-AVI-6XHIS融合タンパク質の場合、ヒトROR1(24-403)の細胞外ドメインを、プライマーpCEP4-hROR1-F及びpCEP4-hROR1-Aviタグ-R(AVIタグは、プライマーpCEP4-hROR1-Aviタグ-Rにより、ROR1のC末端に導入されたことに留意されたい)を用いてPCR増幅した後、プライマーpCEP4-シグナル-F-KpnI及びpCEP4-6HIS-R-XhoIを用いた伸長PCRにより、N及びC末端にシグナルペプチド及び6XHISタグを個別に付加した後、KpnI/XhoIを介したpCEP4へのクローニングを実施した。次に、293フェクチン(Invitrogen)を用いて、この構築物をHEK293F細胞(Invitrogen)に一過性にトランスフェクトし、Kwong and Rader,Curr Protoc Protein Sci Chapter 6:Unit 6 10,2009に記載されているように、1-mL HisTrapカラム(GE Healthcare)を用いたImmobilized Metal Ion Affinity Chromatographyによりタンパク質を精製した。精製したhROR1-AVI-6XHISの品質及び量をSDS-PAGE及びA280吸光度によりそれぞれ分析した。これに続いて、プロトコルに従ってAvidity(Aurora,Colorado)製のBirA酵素キットにより融合タンパク質をビオチン化した。手短には、10mM Tris-HCl(pH8)中40μMで2mgのROR1-AVI-6XHISを、37℃で30分のインキュベーション後、10μgのBirAを用いてビオチンの存在下、ビオチン化し、続いて、前述のように1mL HisTrapカラム(GE Healthcare)を用いて再度精製した。pCEP4-hROR1-F:5’-atcctgtttctcgtagctgctgcaactggagcacactccgcccggggcgccgccgcccag-3’(配列番号105);pCEP4-hROR1-Avi-tag-R:5’-ccactcgatcttctgggcctcgaagatgtcgttcaggccctccatcttgttcttctcctt-3’(配列番号106);pCEP4-シグナル-F-KpnI:5’gctgggtaccggcgcgccaccatggactggacttggagaatcctgtttctcgtagctgct-3’(配列番号107);pCEP4-6HIS-R-XhoI:5’-gccggcctcgagtcagtgatggtgatggtggtgctcgtgccactcgatcttctgggcctc-3’(配列番号108)。
【0121】
組換えヒトROR1(hROR1-His)及びヒトROR2(hROR2-His)タンパク質の構築、発現、及び精製:テンプレートとしてpCEP4-hFc-hROR1(Yang et al.,PloS One 6:e21018,2011)を用いて、プライマーSP-hROR1_F(5’ gctgggtaccggcgcgccaccatggactggacttggagaatcctgtttctcgtagctgctgcaactggagcacactccgcccggggcgccgccgcccag 3’)(配列番号109)及びhROR1-His_R(5’cggcctcgagtcagtgatggtgatggtggtgctccatcttgttcttctcctt 3’)(配列番号110)でhROR1-HisをPCR増幅し、またテンプレートとしてpCEP4-hFc-hROR2を用いて、プライマーSP-hROR2_F(gctgggtaccggcgcgccaccatggactggacttggagaatcctgtttctcgtagctgctgcaactggagcacactccgaagtggaggttctggatccg)(配列番号111)及びhROR2-His_R(cggcctcgagtcagtgatggtgatggtggtgccccatcttgctgctgtctcg)(配列番号112)でPCR増幅した。次に、これらを、KpnI/XhoIを介して個別にpCEP4(Invitrogen)にクローニングした。続いて、これらの構築物を、293フェクチン(Invitrogen)を用いてHEK293F細胞(Invitrogen)に個別且つ一過性にトランスフェクトし、Kwong and Rader,Curr Protoc Protein Sci Chapter 6:Unit 6 10,2009に記載されているように、1-mL HisTrapカラム(GE Healthcare)を用いたImmobilized Metal Ion Affinity Chromatographyにより、対応するタンパク質を精製した。精製したhROR1-His及びhROR2-Hisの品質及び量をSDS-PAGE及びA280吸光度によりそれぞれ分析した。
【0122】
ナイーブキメラウサギ/ヒトFabライブラリーの作製及び選択:ウサギの取り扱いは全て、Pocono Rabbit Farm & Laboratory(Canadensis,PA)又はR&R Research(Stanwood,WA)の家畜担当職員により実施された。計9匹のウサギ(月齢3~4ヵ月)を使用した。これらのウサギの5匹は、ニュージーランドホワイト(New Zealand White)(NZW)系統であり、そのうち3匹は、Pocono Rabbit Farm & Laboratory(Canadensis,PA)から取得し、2匹は、R&R Research(Stanwood,WA)から取得した。4匹のb9野生型ウサギは、米国立アレルギー・感染症研究所(National Institute of Allergy and Infectious Diseases)(NIAID)(McCartney-Francis et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U S A 81:1794-1798,1984;及びPopkov et al.,J.Mol.Biol.325:325-335,2003で開発され、特性決定された純種を起源とする個別のR&R Researchから得られた。各ウサギからの脾臓及び骨髄を収集し、確立されたプロトコル(Rader,Methods Mol Biol 525:101-128,xiv, 2009を用いて、全RNA作製並びにウサギVκ、Vλ、及びVHコード配列のRT-PCR増幅のために処理した。ウサギ(rb)Vκ/ヒト(hu)Cκ/rbVH及びrbVλ/huCλ/rbVHセグメントは、それぞれ、3フラグメントオーバーラップ発現PCRに基づく1融合ステップでアセンブルした。b9ウサギに由来するVLも、NZWウサギ由来のVHを用いてアセンブルしたことに留意されたい。FabコードフラグメントをSfiIで消化し、SfiI処理ファージディスプレイベクターpC3C(Hofer et al.,J Immunol Meth 318:75-87,2007)と16℃で24時間連結した。続いて、30回の個別のエレクトロポレーション(各々、50μlのエレクトロコンピテントセル中0.5μgのDNAを用いる)により、15μgの精製pC3C-rbVκ/hCκ/rbVH連結産物を大腸菌(E.coli)株SR320(トロント大学(University of Toronto, Toronto,Ontario,Canada)Dr.Sachdev S.Sidhuからの親切な寄贈品)に形質転換し、ライブラリーκについて7.5×109個の独立した形質転換体を取得した。ライブラリーλの場合、同じ手順を用いて、4.8×109個の独立した形質転換体が得られた。VCSM13ヘルパーファージ(Stratagene;La Jolla,CA)を用いて、ファージミドライブラリーをファージライブラリーに変換し、-80℃で保存した。XL1-Blue(Stratagene)又はER2738(Lucigen)を用いて、ファージライブラリーκ及びライブラリーλを再度増幅し、同様に混合した後、ビオチン化hFc-hROR1又はhROR1-AVI-6HISに対する4ラウンドのパニングに付した。パニングの間、5μg/mLの抗原をストレプトアビジンコート磁気ビーズ(Dynabeads MyOne Streptavidin C1;Invitrogen)と一緒に37℃で30分間プレインキュベートした後、hFc-ROR1を用いた場合、1mg/mLの非特異的ポリクローナルヒトIgG(Thermo Scientific)の存在下で、ファージライブラリーからの結合物質を捕捉した。第3ラウンドのパニングから、空のビーズを用いたインキュベーションにより、インプットファージをネガティブディプリーションした後、抗原負荷ビーズに対する選択に付した。選択の後、IPTG誘導細菌クローンの上清をELISA及びフローサイトメトリーにより分析した。AluIを用いたDNA指紋法により反復クローンを同定し、ユニークなクローンのVL及びVH配列をDNAシーケンシングにより決定した(図1)。
【0123】
実施例3.キメラウサギ/ヒトFab及び完全長IgG1抗体の発現及び精製
キメラウサギ/ヒトFab及びIgG1の構築、発現及び精製:キメラウサギ/ヒトFabフォーマットのMAb XBR1-402は、大腸菌(E.coli)発現プラスミドpC3C-Hisにクローニングして、発現さ、Kwong and Rader,Curr Protoc Protein Sci Chapter 6:Unit 6 10,2009に記載されているように精製した。キメラウサギ/ヒトIgG1フォーマットのmAb XBR1-402の発現のために、以前記載されているベクターPIGG-R11を使用した(Yang et al.,PloS One 6:e21018,2011)。Fab XBR1-402のVHコード配列を、プライマー4-2_VH_F及び4-2_VH_Rを用いてPCR増幅し、ApaI/SacIを介してPIGG-R11にクローニングした。次に、XBR1-402の軽鎖コード配列を、プライマー4-2_λ_F及びLEAD-Bを用いてPCR増幅し、HindIII/XbaIを介して、対応する重鎖コード配列を有するPIGG-R11にクローニングした。Fab XBR1-402のVHコード配列のFR4の内部ApaI部位は、プライマー4-2_VH_Rにおけるサイレント突然変異によって除去されたことに留意されたい。さらに、大腸菌(E.coli)株XL1-Blueにおける選択の間に抑制されていたTAG停止コドンは、プライマー4-2_VH_Fを用いて、ネイティブVHの第1アミノ酸をコードするCAG(グルタミン)に変更した(図1)。得られたPIGG-XBR1-402プラスミドは、293フェクチン(Invitrogen)を用いて、HEK293F細胞(Invitrogen)に一過性トランスフェクトし、記載されているように(Yang et al.,PloS One 6:e21018,2011;及びYang and Rader,Methods Mol Biol 901:209-232,2012)、1mL組換えProtein A HiTrapカラム(GE Healthcare,Piscataway,NJ)を用いて、タンパク質を精製した。精製したIgG1の品質及び量をSDS-PAGE及びA280吸光度によりそれぞれ分析した。
【0124】
キメラウサギ/ヒトFabフォーマット中の他の全てのmAbを大腸菌(E.coli)発現プラスミドpET11aにクローニングして、発現させ、記載されているように(Yang et al.,PloS One 6:e21018,2011)精製した。キメラウサギ/ヒトIgG1フォーマットのmAb ERR1-324,ERR1-TOP43及びERR1-TOP54の発現のために、pCEP4(Invitrogen)を用いて、重鎖及び軽鎖を個別にクローニングした。重鎖の場合、重鎖シグナルペプチドコード配列、ERR2-302(hROR2に対するmAb)のVH及びヒトIgG1のCH1(1~49)をIDT(San Jose,CA)により合成し、プライマーKpnI/AscI-シグナル及びCH1-内部/オーバーラップ-Rを用いて増幅して、プライマーCH1-内部/オーバーラップ-F及びHC-CH3-R-XhoIを用いてPIGGから増幅されたCH1(50~88)-CH2-CH3と、プライマーKpnI/AscI-シグナル及びHC-CH3-R-XhoIを用いたオーバーラップ伸長PCRにより融合した後、AscI/XhoIによりpCEP4にクローニングした。gBlockを合成したとき、EheI部位は、同義突然変異によってAla12のCH1に導入されたことに留意されたい。その結果、この構築物は、AscI/EheIを用いてVHを置換することにより、他のmAbの重鎖をクローニングするためのベクターとして役立ち:ERR1-324、ERR1-TOP43及びERR1-TOP54のVHを、フォワードプライマーERR1-324 HC-F、ERR1-TOP43 HC-F及びERR1-TOP54 HC-F並びにリバースプライマーVH-CH1-R-EheIで個別に増幅した後、伸長PCRにより、プライマーKpnI/AscI-シグナル及びVH-CH1-R-EheIを含むシグナルペプチドを付加した。次に、AscI/EheIにより、各VHをベクターに挿入した。軽鎖のクローニングのために、ERR1-TOP43及びERR1-TOP54のλ軽鎖は、LC-R-Xholと個別に組み合わせたプライマーERR1-TOP43 LC-F及びERR1-TOP54 LC-Fで増幅し、ERR1-324のκ軽鎖は、プライマーERR1-324 KC-F及びKC-R-XhoIで増幅した。次に、フォワードプライマーKpnI/AscI-シグナル及びリバースプライマーLC-R-XhoI又はKC-R-XhoIを用いた伸長PCRにより、シグナルペプチドコード配列を付加した。続いて、各軽鎖PCR産物をAscI/XhoIによりpCEP4にクローニングした。各IgGについて重鎖又は軽鎖を含む、得られた構築物は、293フェクチン(Invitrogen)を用いてHEK293F細胞(Invitrogen)に一過性同時トランスフェクトし、記載されているように(Yang et al.,PloS One 6:e21018,2011;及びYang and Rader,Methods Mol Biol 901:209-232,2012)、1mL組換えProtein A HiTrapカラム(GE Healthcare,Piscataway,NJ)を用いて、対応するタンパク質を精製した。精製したIgG1の品質及び量をSDS-PAGE及びA280吸光度によりそれぞれ分析した。
【0125】
【表1】
【0126】
実施例4.抗体結合活性の試験
ELISA:ELISA(図2)のために、96ウェルCostar3690プレート(Corning,Corning,NY)を25μLのコーティングバッファー(0.1 M Na2CO3、0.1M NaHCO3、pH9.6)中100ngの抗ヒトIgG1 Fcで、37℃にて1時間コーティングした。150μLの3%(w/v)BSA/TBSで、37℃にて1時間遮断してから、100ng/50μLで、37℃にて1時間のインキュベーションの後、hFc-hROR1又はhFc-mROR1を捕捉した。次に、100ng/50μLのFabを37℃の各ウェル内に塗布した。2時間後、1%(w/v)BSA/TBS中のセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)(R&D Systems,Minneapolis,MN)に結合させたマウス抗体HisタグmAbの1:1000希釈物50μLを用いて、Fabを検出した。エピトープ(図4)を決定するために、hROR1の様々なドメインを含有するhFc融合タンパク質を直接コーティングし、続いて、Fabと一緒にインキュベートした後、HRPに結合したマウス抗HisタグmAbによる検出を行った。PBSによる洗浄を繰り返してから、基質として2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンズチアゾリン)-6-スルホン酸(Roche)を用いて、製造者の指示に従い、比色検出を実施した。SpectraMax M5マイクロプレートリーダ(Molecular Devices;Sunnyvale,CA)及びSoftMax Proソフトウエア(Molecular Devices)を用いて、吸光度を405nmで測定した。
【0127】
フローサイトメトリー:標準的なフローサイトメトリー方法を用いて、細胞を染色した。手短には、精製済の抗ROR1 Fab(図3)の場合、0.1~1×106個の細胞を氷上の1000ng/100μLのFabで1時間かけて染色した。氷冷フローサイトメトリーバッファー(1%(v/v)BSA、0.1%アジ化ナトリウム及び1mM EDTAを含有するPBS)で2回洗浄した後、氷上の100μLフローサイトメトリーバッファー中のAlexa Fluor 488(Qiagen)と結合したマウス抗HisタグmAbの1:1000希釈物と一緒に、細胞を30分間インキュベートした。精製済の抗ROR1 IgG1(図8)の場合、0.1~1×106個の細胞を4%ヤギ血清により室温で15分間遮断した後、100ng/100μLのIgGと一緒に氷上で1時間インキュベートした。氷冷フローサイトメトリーバッファーで2回洗浄した後、氷上の100μLフローサイトメトリーバッファー中のAPC(Jackson ImmunoResearch)と結合したヤギ抗ヒトIgG、FcγAbの1:500希釈物で、30分かけて細胞を染色した。市販のヤギ抗ヒトROR1ポリクローナル抗体(図8)の場合、0.1~1×106個の細胞を氷上の200ng/100μLのAbで1時間かけて染色した。氷冷フローサイトメトリーバッファー(1%(v/v)BSA、0.1%アジ化ナトリウム及び1mM EDTAを含有するPBS)で2回洗浄した後、氷上の100μLフローサイトメトリーバッファー中のAlexa Fluor 647と結合したAffiniPure F(ab’)2ロバ抗ヤギIgG(H+L)の1:1000希釈物と一緒に、細胞を30分間インキュベートした。最後に、分析から死滅細胞を排除するために、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)を最終濃度100ng/mLまで添加した。FACSCalibur計器(BD Biosciences)及びFlowJo分析ソフトウエア(Tree Star,Ashland,OR)を用いて、細胞を分析した。
【0128】
表面プラズモン共鳴:hFc-hROR1に対する全Fabの親和性の測定及びエピトープマッピング試験のために表面プラズモン共鳴を、Biacore試薬及びソフトウエアを用いたBiacore X100計器(GE Healthcare,Piscataway,NJ)で実施した。Human Antibody Capture Kit(GE Healthcare,Piscataway,NJ)の指示に従い、抗ヒトIgG(Fc)抗体をCM5センサーチップ上に固定化した。次に、hFc-hROR1融合タンパク質を特定の密度(図5及び図6に示す)で捕捉した。センサーチップは、即座のバックグラウンド除去のために空のフローセルを含んだ。全結合アッセイは、1×HBS-EP+泳動バッファー(10mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTA(pH7.4)、及び0.05%(v/v)Surfactant P20)及び流量30mL/分を用いた。親和性測定のために、全てのFabを5つの異なる濃度(希釈係数は2)で注射し、最も低い濃度は2回反復して試験した(各Fabの最も高い濃度は図6Bに示す)。センサーチップは、結合能力を一切喪失することなく、Human Antibody Capture Kitから3MgCl2を用いて再生した。会合(kon)及び解離(koff)速度定数の計算は、1:1ラングミュア(Langmuir)結合モデルに基づいて行った。平衡解離定数(Kd)をkoff/konから算出した。エピトープマッピング試験のために、図5に示す順で、各Fabを1×HBS-EP+泳動バッファー中500nMの単独で調製し、次に注射した。
【0129】
ウエスタンブロッティング:1×サンプルバッファー(1%β-メルカプトエタノールを含有)により、細胞又はタンパク質を溶解させ、NuPAGE Novex 4-12% Bis-Trisゲル(Invitrogen)上での泳動の前に煮沸した。膜転写及び5%ミルクによる遮断の後、XBR1-402若しくはERR1-TOP43の2μg/mLのキメラウサギ/ヒトIgG1を塗布して、変性タンパク質を検出し、続いて、HRPに結合した1/1000抗ヒトFcγとのインキュベーションの後、ECL Prime Western Blotting Detection Reagent(GE Healthcare)を用いて展開させた(図9)。
【0130】
実施例5.精製、組換えストレップタグ付き(strep-tagged)ヒトROR1及びヒトツインストレップタグ付き(strep-tagged)ヒトROR2の発現
ストレップIIタグ付きヒトROR1-細胞外ドメインを次のように生成した:ヒトROR1(NP_005003.2)をコードするヌクレオチド配列を、シグナル配列(MNFGLRLIFLVLTLKGVQC)とN末端に融合させ、ストレップIIタグ(GWSHPQFEK)をコードする配列とC末端に融合させた。全遺伝子合成(GenScript,Piscataway,USA)により、フランキングする5’NotI及び3’HindIII部位を有する全ヌクレオチド配列を生成し、Evitria AG(Schlieren,Switzerland)により、独自の哺乳動物発現ベクターpEvi5中にアセンブルして、DNAシーケンシングにより確認した。
【0131】
タンパク質の発現は、Evitria AG(Schlieren,Switzerland)により、懸濁液改変CHO K1細胞において実施した。トランスフェクトしたCHO K1細胞のプールからの上清を遠心分離により回収し、滅菌濾過(0.2μm)した後、StrepTactinカラム(IBA GmbH,Goettingen,Germany)を用いたFPLC-ベースのアフィニティ精製に付した。
【0132】
組換えヒトツインストレップタグ付きROR2(NP_004551.2)を下記のプロトコルに従って発現させ、実験室内で精製した:TwinStepタグでC末端がタグ付けされた、EBNA発現ベクターpCB14b-ROR2-ECD-TwinStrep(ROR2細胞外ドメイン(ECD)の発現を指令する)を、PLUS(商標)Reagentと共にLipofectamine(登録商標)LTX(Thermo Fisher Scientific,15388100)を用いて、HEK293Tにトランスフェクトした。1日のインキュベーション(37℃、5%CO2、増殖培地:10%(v/v)ウシ胎児血清(FCS)を含むL-グルタミン、100IU/mLのPen-Strep-Fungizone及び2mM L-グルタミン(全て、Bioconcept)を含有するダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)(DMEM)High Glucose(4.5g/l))の後、細胞を選択条件(2μg/mLのプロマイシン(Sigma-Aldrich、2mg/mLのP8833-25mgストック))下で拡大した。細胞を分割して、さらに拡大し(37℃、5%CO2);一旦密集に達したら、組織培養皿を20μg/mLのポリ-L-リシン(Sigma-Aldrich、P1524)で、37℃にて2時間コーティングし、PBSで2回洗浄した。次に、細胞をトリプシン処理し、PBSで洗浄した後、ポリ-L-リシンコーティングプレート上に1:3に分割した。再度、密集に達した後、細胞をPBSで洗浄してから、1μg/mLのプロマイシン(Sigma-Aldrich、P8833)、100IU/mLのPen-Strep-Fungizone(Bioconcept、4-02F00-H)、161μg/mLのN-アセチル-L-システイン(Sigma-Aldrich、A8199)及び10μg/mLのL-グルタチオン還元型(Sigma-Aldrich、G6529)で補充した生成培地(DMEM/F-12,Gibco/Thermo Fisher Scientific,31330-03)を用いて培地の取替えを行った。上清を隔週で回収し、濾過する(0.22μm)ことにより細胞を除去して、精製まで4℃で保存した。精製のために、濾過した上清をStreptactin(登録商標)Superflow(登録商標)高容量カートリッジ(IBA,Goettingen,Germany,2-1238-001)カラムにロードし;AEKTA pure(GE Healthcare)で、製造者のプロトコルに従い、精製及び溶離を実施した。SDS-PAGEにより、タンパク質純度及び完全性について画分を分析した。タンパク質含有画分を混合し、Amicon濾過ユニット(Millipore,Schaffhausen,Switzerland)を用いて、PBS中≧1:100の希釈率に達するまでバッファー交換に付した後、ローリテンションフィルタ(0.20μm,Carl Roth,Karlsruhe,Germany,PA49.1)を用いて滅菌濾過した。
【0133】
実施例6.精製、組換えヒト化抗ヒトROR1及びアイソタイプコントロール抗体の発現
発現ベクター:リーダ配列としてMNFGLRLIFLVLTLKGVQCを用いた全遺伝子合成(GenScript)によって抗体可変領域コード領域を生成し、発現ベクターpCB14において、ヒトIgH-γ1及びIgL-κ又は、適用できる場合には、IgL-λ定常領域とアセンブルした。このベクター、エピソーム哺乳動物発現ベクターpCEP4(Invitrogen)の誘導体は、EBV複製起点を担持し、染色体外複製を可能にするためにEBV核抗原(EBNA-1)をコードし、元のヒグロマイシンB耐性遺伝子の代わりにプロマイシン選択マーカを含有する。
【0134】
実験室内発現及び精製:PLUS(商標)Reagent(Thermo Fisher Scientific,Reinach,Switzerland,15388100)と共にLipofectamine(登録商標)LTX Reagentを用いて、pCB14ベースの発現ベクターをHEK293T細胞にトランスフェクトした。1日のインキュベーション(37℃、5%CO2、増殖培地:10%(v/v)ウシ胎児血清(FCS)を含むL-グルタミン、100IU/mLのPen-Strep-Fungizone及び2mM L-グルタミン(全て、Bioconcept,Allschwil,Switzerland)を含有するダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)(DMEM)High Glucose(4.5g/l))の後、細胞を選択条件(2μg/mLのプロマイシン(Sigma-Aldrich,Buchs SG,Switzerland、2mg/mLのP8833-25mgストック))下で拡大した。細胞を分割し、さらに拡大した(37℃、5%CO2);一旦密集に達したら、組織培養皿を20μg/mLのポリ-L-リシン(Sigma-Aldrich、P1524)で、37℃にて2時間コーティングし、PBSで2回洗浄した。次に、細胞をトリプシン処理し、ポリ-L-リシンでコーティングしたプレート上に1:3に分割した。再度、密集に達した後、細胞をPBSで洗浄してから、1μg/mLのプロマイシン(Sigma、P8833)、100IU/mLのPen-Strep-Fungizone(Bioconcept)、161μg/mLのN-アセチル-L-システイン(Sigma-Aldrich、A8199)及び10μg/mLのL-グルタチオン還元型(Sigma-Aldrich、G6529)で補充した生成培地(DMEM/F-12,Gibco/Thermo Fisher Scientific,31330-03)への培地の取替えを行った。上清を隔週で回収し、濾過する(0.22μm)ことにより細胞を除去して、精製まで4℃で保存した。
【0135】
精製のために、濾過した上清をPBS平衡Protein A HiTrapカラム(GE Healthcare,Frankfurt am Main,Germany,17-0405-01)又はJSR Amsphere(商標)Protein Aカラム(JSR Life Sciences,Leuven,Belgium,JWT203CE)にロードし、PBSで洗浄し;AEKTA pure(GE Healthcare)で、0.1Mグリシン(pH2.5)を用いて、溶離を実施した。1M Tris-HClバッファー(pH8.0)で画分を直ちに中和してから、SDS-PAGEにより、タンパク質純度及び完全性について分析した。タンパク質含有画分を混合し、Amicon濾過ユニット(Millipore,Schaffhausen,Switzerland,UFC901008)を用いて、表2に列記するバッファー中で1:100の希釈率に達するまでバッファー交換に付した後、ローリテンションフィルタ(0.20μm,Carl Roth,Karlsruhe,Germany,PA49.1)を用いて滅菌濾過した。
【0136】
当技術分野で公知の方法により、抗体をCHO細胞において一過性発現させ、当技術分野で公知の通り、CHO細胞上清から標準的プロテインA精製により組換え抗体を精製した。組換え抗体の純度及び完全性をSDS-PAGEにより分析した。
【0137】
表2は、最終濃度及びバッファーと共に、後の実施例で使用した抗体を列記する。
【0138】
【表2】
【0139】
Ms961は、国際公開第2014/031174号パンフレットの配列番号1の重鎖と配列番号3の軽鎖とを有する抗ROR1抗体に相当する。2A2は、国際公開第2010/124188号パンフレットに記載の抗ROR1抗体を指し、hu2A2は、未公開PCT/欧州特許第2016/076244号明細書に記載のヒト化2A2を指す。R11及びR12は、国際公開第2012/075158号パンフレットに記載の抗ROR1抗体である。アイソタイプコントロール抗体トラスツズマブ及びAc10は、HER-2及びCD30をそれぞれターゲティングする。ヒトCD30標的に特異的なモノクローナル抗体ブレンツキシマブ(クローン cAc10)の重鎖及び軽鎖可変領域配列は、米国特許第2008213289A1号明細書から取得し、市販の抗体Herceptin(トラスツズマブ)に含まれるヒトHER-2特異的トラスツズマブ抗体の重鎖及び軽鎖可変領域配列、又はそれに由来するADC Kadcyla(登録商標)は、オンラインIMGTデータベースから取得した(VH:http://www.imgt.org/3Dstructure-DB/cgi/details.cgi?pdbcode=7637&Part=Chain&Chain=7637H及びVL:http://www.imgt.org/3Dstructure-DB/cgi/details.cgi?pdbcode=7637&Part=Chain&Chain=7637L)。
【0140】
実施例7.mAb ROR1及びROR2結合-ELISAによる特性決定
96ウェルプレートの各ウェルを、0.1M重炭酸塩コーティングバッファー(pH9.6)中2μg/mLのストレップタグ付きヒトROR1(実施例5から)100μLでコーティングした後、4℃で12時間インキュベートした。第2の96ウェルプレートも、ツイン-ストレップタグ付きヒトROR2(実施例5から)を用いて同様に調製した。
【0141】
37℃にて、150μLの3%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA)/TBSで1時間遮断してから、下記の抗体を0.5μg/mLの濃度で各プレートのウェルに添加し、1%(w/v)BSA/TBSで連続的に希釈(希釈率4)した後、37℃で1時間のインキュベーションに付した:ERR1-301(mAb027)、XBR1-402(mAb031)、ERR1-306(mAb033)、ERR1-324(mAb034)、ERR1-403(mAb035)及びERR1-Top43(mAb036)。次に、HRPに結合したF(ab’)2抗ヒトFC-γ(Jackson Immunoresearch,109-036-008)を1:20’000の希釈率で、ウェル当たり100μl添加し、37℃で1時間インキュベートした後、Spark 10Mプレートリーダ(Tecan)を用いた検出に付した。図10に示すように、抗ヒトROR1抗体は、ヒトROR1に結合し(パネルA)、ヒトROR2とは交差反応性ではない(パネルB)。
【0142】
実施例8.抗hROR1特異的抗体XBR1-402のヒト化
ヒト化可変領域配列(7つのhu4-2VH変異体及び4つのhu4-2VL変異体)を融合抗体(Fusion Antibodies)(Belfast,Ireland)により設計した。手短には、ウサギ可変領域内のフレームワークをヒトフレームワーク領域と交換する(独自のアルゴリズムに基づくインシリコ支援(in-silico assisted)CDR-グラフトアプローチに従って)ことによって、28の考えられる重鎖/軽鎖対を形成した。
【0143】
全28の考えられる重鎖/軽鎖対を呈示する抗体の発現は、pCB14ベースの発現構築物をHEK 293T細胞に一過性トランスフェクトして、細胞上清を回収することにより達成した。
【0144】
一過性抗体発現のために、Avanti Transfection Reagent I(Avanti Polar Lipids,Alabaster,USA)を用いて、細胞を24ウェルプレート内でトランスフェクトした。ウェル当たり0.5μgの全DNAをトランスフェクトし、新鮮な増殖培地を翌日添加して、4日間順化させた。上清を滅菌濾過し、分析まで-20℃で保存した。
【0145】
次に、親和性スクリーニングを実施して、最良の結合物質を選択した。Biacore T200計器(GE Healthcare,Buckinghamshire,UK)を用いて親和性を決定し、Biacore Evaluation T200 V2.0ソフトウエアを用いてデータを評価した。mAbを捕捉するために、ヤギα-ヒトFc-γ-特異的IgG(Jackson ImmunoResearch,♯109-005-098)をCM5チップ(GE Healthcare,♯BR-1005-30)上に共有結合によって固定化した。
【0146】
手短には、HEK293T上清を捕捉するために、希釈されていない上清を30μl/分の流量で120秒間捕捉した。ROR1-ストレップを泳動バッファー(HBS-EP+pH7.4(10mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTA、0.05%Tween20)で、20nMまで希釈した。30μl/分の流量で120秒にわたり会合を測定した後、30μl/分の流量で200秒にわたり解離を測定した。捕捉レベルは、31.8RU~59.4RUの範囲であった。
【0147】
選択した抗体を発現させ、実施例6により、以下の表3の条件に従って精製した。
【0148】
【表3】
【0149】
実施例9.hROR1発現のための細胞のFACS染色
ウェル当たり5×105個の各細胞型を96ウェルプレートに添加した。バッファー(2%(v/v)のFCSを添加したPBS)中の再懸濁物と一緒に、プレートを遠心分離(3分、1300rpm)した。2μg/mLの濃度に達するまで、2A2(mAb066)を各ウェルに添加した。次に、プレートを氷上で30分間インキュベートし、200μLのバッファーで洗浄してから、1:250の希釈率で抗ヒトIgG抗体(Fcγ特異的)PE(eBioscience 12-4998-82)で補充した200μLのバッファー中に再懸濁させた。氷上で30分のインキュベーション及び1回の洗浄後、FACSCalibur計器(BD Biosciences)を用いて細胞を分析し、FlowJo分析ソフトウエア(Tree Star,Ashland,OR)を用いてデータを分析した。
【0150】
図7は、ROR1陽性ヒトALL細胞株697及びKasumi-2、ヒトトリプルネガティブ乳癌細胞株MDA-MB-231、MDA-MB-468及びHS-578T、並びにネガティブコントロールとしてのROR1陰性ヒト乳癌細胞株T47DのFACS分析データを示す。
【0151】
実施例10.SMAC技術を用いた部位特異的結合ADCの作製
ソルターゼA酵素。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)由来の組換え及びアフィニティ精製ソルターゼA酵素は、国際公開第2014140317A1号パンフレットに開示されているように、大腸菌(E.coli)から生成した。
【0152】
グリシン修飾毒素の作製。ペンタグリシン修飾PNU-159682誘導体を含むSMAC-technology(商標)結合ADCを作製するために、国際公開第2016102697号パンフレットに開示されているように、Gly5-EDA-PNU(図11B)を製造した。質量分析法及びHPLCによって、ペンタグリシン修飾PNU毒素のアイデンティティ及び純度を確認した。Gly5-修飾毒素は、HPLCクロマトグラムにおける単一ピークによって決定される通り、>95%の純度を示した。
【0153】
ソルターゼ媒介性抗体結合。列記した結合バッファー中のグリシン修飾毒素[200μM]及び3μMソルターゼAと一緒に、LPETGタグ付きmAb[10μM]を25℃で3.5時間インキュベートすることによって、前述の毒素を表3に従い抗ROR1抗体に結合させた。これを、rProtein A GraviTrapカラム(BioRad)に通過させることによって、反応を停止した。5カラム体積の溶出バッファー(0.1MグリシンpH2.5、50nM NaCl)で、結合したコンジュゲートを溶離し、1カラム体積画分を、酸を中和するために25%v/v 1M HEPES pH8を含有するチューブに収集した。タンパク質含有画分をプールし、ZebaSpin脱塩カラムを用いて表7の製剤化バッファー中で製剤化した。
【0154】
ADC解析学。Polymer Labs PLRP 2.1mm×5cm、0.05~0.1%のTFA/H2Oと0.04~0.1%のTFA/CH3CNとの間の25分の線形勾配を用いた1mL/分/80℃の5μmカラムランで実施した逆相クロマトグラフィーにより、DARを評価した。まず、pH8.0のDTTとの37℃、15分間のインキュベーションによりサンプルを還元した。逆相クロマトグラフィーにより決定されるDARを以下の表4にまとめる。
【0155】
【表4】
【0156】
これらの分析から、SMAC-technology(商標)結合が、高い効率で進行し、それによって、IgG-フォーマット抗ROR1抗体-毒素の組み合わせについて約3.5~4.0の範囲の総平均DARが得られた。
【0157】
実施例11.ROR1ターゲティングADC XBR1-402-G5-PNUのインビトロ血清安定性
XBR1-402-G5-PNUのインビトロ血清安定性を、ELISAによる血清安定性アッセイで評価した。手短には、NOD SCIDマウス(バーゼル大学病院(University Hospital of Basel,Switzerland)、Prof.Dr.med.Alfred Zippeliusからの親切な寄贈品)及びヒト血清(SRK blood donation center,Basel,Switzerlandから;男性:女性血液の50:50混合物を2000gで15分間遠心分離して、血清を取得)中100μg/mLの濃度までADCを希釈し、37℃でインキュベートした。サンプルを0、3、7及び14日目に液体窒素で瞬間凍結し、ELISA分析まで-80℃で保存した。マウス血清の場合には、ADCと結合させるために、2μg/mlの実験室内作製マウス抗PNU mAb(ヒトIgG-PNUコンジュゲートでマウスを免疫し、BSA-PNUコンジュゲートを用いてスクリーニングすることにより作製)で、又は全IgGと結合させるために、ヤギ抗ヒトFc F(ab’)2(Jackson Immunoresearch,109-006-098)でコーティングしたELISAプレート上で、ADC血清サンプルの希釈系列(希釈係数3.5、5~0.0008μg/ml)を捕捉し、HRP結合ロバ抗ヒトIgGの1:2500希釈物(Jackson Immunoresearch,709-035-149)で検出した。ヒト血清の場合には、2μg/mlの組換えヒトROR1(ストレップタグ付き、実施例5)をELISAプレートにコーティングした後、HRP結合ロバ抗ヒトIgGの1:2500希釈物(Jackson Immunoresearch,709-035-149)又は2μg/mlのマウス抗PNU IgG(実験室内で作製)、続いて、1:5000希釈したHRP結合ヤギ抗マウスFcγ F(ab’)2(Jackson Immunoresearch,115-036-071)を、全IgG及びADCの検出のためにそれぞれ使用した。ADC及び全IgGの血清濃度は、既知濃度の同じADCのサンプルとの比較により、サンプル力価測定の最大半数値から算出した。図19に示すように、XBR1-402-G5-PNUは、いずれの血清中においても実質的に安定性を維持する。
【0158】
実施例12.野生型EMT-6及びROR1過剰発現EMT-6乳癌細胞に対する抗ROR1抗体ベースのADCのインビトロ細胞傷害性アッセイ
抗ROR1 ADC XBR1-402-G5-PNU(adc262)の細胞傷害性を、野生型(WT)EMT-6及びヒトROR1を過剰発現するように操作されたEMT-6細胞(実施例2から)を用いて調べた。アイソタイプコントロールとして、Tras-G5-PNU(adc286)を含んだ。
【0159】
このために、ウェル当たり1×103個のWT EMT-6及びhROR1過剰発現EMT-6細胞を、10体積%のFCS、100IU/mLのPen-Strep-Fungizone及び2mM L-グルタミンで補充した75μLのDMEMを含む96ウェルプレート上に平板培養し(水を含有するエッジウェルを除く)、37℃、7.5%CO2雰囲気下の加湿したインキュベータ内で増殖させた。1日のインキュベーションの後、増殖培地中3.5倍連続希釈物を25μLの量で含むそれぞれのウェルに、各ADCを添加した(これにより、20μg/mL~0.88ng/mlの最終ADC濃度が得られた)。さらに4日後、プレートをインキュベータから取り出し、室温に平衡させた。約30分後、各ウェルから50μLを取り出し、次に50μLのCellTiter-Glo(登録商標)2.0 Luminescent Solution(Promega,G9243)を各ウェルに添加した。450rpmで5分間のプレートの振盪に続いて、振盪なしで10分のインキュベーションの後、ウェル当たり250msの積分時間を用いたTecan Spark 10Mプレートリーダで発光を測定した。Graphpad Prism Softwareを用いて、ADC濃度(ng/mL)に対する発光の曲線を当てはめた。Prism Softwareの組み込み「ログ(阻害剤)対応答-可変傾き(4つのパラメータ)」IC50決定関数を用いて決定したIC50値を表5に報告する。
【0160】
【表5】
【0161】
図16は、表5のADCを用いたWT及びhROR1過剰発現EMT6細胞に対するインビトロ細胞殺傷アッセイの用量-応答曲線を示す。上の表及び図16によれば、XBR1-402-G5-PNUは、ROR1発現状態に依存的な特異的殺傷を達成する。
【0162】
実施例13.ROR1過剰発現EMT-6細胞に対する新規及び既知抗ROR1抗体ベースのADCのインビトロ細胞傷害性アッセイ
抗ROR1 ADC XBR1-402-G5-PNU(adc409)の細胞傷害性を、ヒトROR1を過剰発現するように操作されたヒトEMT-6細胞(実施例2から)を用いて調べ、抗体Ms961ベースの抗ROR1 ADC(adc396)と比較した。アイソタイプコントロールとして、Tras-G5-PNU(adc394)を含んだ。
【0163】
このために、ウェル当たり1×103個のhROR1過剰発現EMT-6細胞を、10体積%のFCS、100IU/mLのPen-Strep-Fungizone及び2mM L-グルタミンで補充した75μLのDMEMを含む96ウェルプレート上に平板培養し(水を含有するエッジウェルを除く)、37℃、7.5%CO2雰囲気下の加湿したインキュベータ内で増殖させた。1日のインキュベーションの後、増殖培地中3.5倍連続希釈物を25μLの量で含むそれぞれのウェルに、各ADCを添加した(これにより、20μg/mL~0.88ng/mlの最終ADC濃度が得られた)。さらに4日後、プレートをインキュベータから取り出し、室温に平衡させた。約30分後、各ウェルから50μLを取り出し、次に50μLのCellTiter-Glo(登録商標)2.0 Luminescent Solution(Promega,G9243)を各ウェルに添加した。450rpmで5分間のプレートの振盪に続いて、振盪なしで10分のインキュベーションの後、ウェル当たり250msの積分時間を用い、Tecan Spark 10Mプレートリーダで発光を測定した。Graphpad Prism Softwareを用いて、ADC濃度(ng/mL)に対する発光の曲線を当てはめた。Prism Softwareの組み込み「ログ(阻害剤)対応答-可変傾き(4つのパラメータ)」IC50決定関数を用いて決定したIC50値を表6に報告する。
【0164】
【表6】
【0165】
図17は、表6のADCを用いたhROR1過剰発現EMT6細胞に対するインビトロ細胞殺傷アッセイの用量-応答曲線を示す。上の表及び図17によれば、XBR1-402-G5-PNUは、抗体Ms961をベースとする同等のADCよりも強力な殺傷を達成する。
【0166】
実施例14.ヒト697及びKasumi-2ALL細胞に対する新規及び既知抗ROR1抗体ベースのADCのインビトロ細胞傷害性アッセイ
抗ROR1 ADC XBR1-402-G5-PNU(adc262)の細胞傷害性を、ヒト細胞株697を用いて調べ、既知抗体2A2、R11及びR12ベースの抗ROR1 ADCと比較する(図13)か、又は2A2及びR12に対する697及びKasumi-2ALL細胞を再度用いた個別の実験により調べた。
【0167】
このために、ウェル当たり2.5×103個の697又はKasumi-2細胞を、10体積%のFCS、100IU/mLのPen-Strep-Fungizone及び2mM L-グルタミンで補充した75μLのRPMIを含む96ウェルプレート上に平板培養し(水を含有するエッジウェルを除く)、37℃、7.5%CO2雰囲気下の加湿したインキュベータ内で増殖させた。1日のインキュベーションの後、増殖培地中3.5倍連続希釈物を25μLの量で含むそれぞれのウェルに、各ADCを添加した(これにより、20μg/mL~0.88ng/mlの最終ADC濃度が得られた)。さらに4日後、プレートをインキュベータから取り出し、室温に平衡させた。約30分後、各ウェルから50μLを取り出し、次に50μLのCellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Solution(Promega,G7570)を各ウェルに添加した。750rpmで5分間のプレートの振盪に続いて、振盪なしで20分のインキュベーションの後、ウェル当たり1秒の積分時間を用いて、Tecan Infinity F200プレートリーダで発光を測定した。Graphpad Prism Softwareを用いて、ADC濃度(ng/mL)に対する発光の曲線を当てはめた。Prism Softwareの組み込み「ログ(阻害剤)対応答-可変傾き(4つのパラメータ)」IC50決定関数を用いて決定されたIC50値を表7に報告する。
【0168】
【表7】
【0169】
図13は、表7のADCを用いた697細胞に対するインビトロ細胞殺傷アッセイの用量-応答曲線を示す。上の表及び図13によれば、本発明のADCは、既知の抗ROR1抗体ベースのADCよりも優れた、ヒト697前駆B細胞白血病細胞の殺傷を達成する。
【0170】
実施例15.乳癌MDA-MB-468及びHS578T細胞に対する抗ROR1抗体ベースのADCのインビトロ細胞傷害性アッセイ
ヒト細胞株:MDA-MB-468、HS578Tを用いて、抗ROR1 ADC 2A2-G5-PNU(adc165)、XBR1-402-G5-PNU(adc135)、R12-G5-PNU(adc292)、ERR1-Top43-G5-PNU(adc204)、並びにERR1-324-G5-PNU(adc202)と2A2-G5-PNU(adc165)、ERR1-324-G5-PNU(adc202)とXBR1-402-G5-PNU(adc135)、ERR1-324-G5-PNU(adc202)とR12-G5-PNU(adc292)、及びERR1-324-G5-PNU(adc202)とERR1-Top43-G5-PNU(adc204)の50:50重量比混合物の細胞傷害性を調べた。アイソタイプコントロールとして、Ac10-G5-PNU(adc159)を含んだ。
【0171】
このために、ウェル毎に下記の細胞を96ウェルプレート上に平板培養し(水を含有するエッジウェルを除く)、37℃、7.5%CO2雰囲気下の加湿したインキュベータ内の増殖培地(10体積%のFCS、100IU/mLのPen-Strep-Fungizone及び2mM L-グルタミンで補充したDMEM)中で増殖させた。
【0172】
【表8】
【0173】
1日のインキュベーションの後、増殖培地中3.5倍連続希釈物を25μLの量で含むそれぞれのウェルに、各ADCを添加した(これにより、20μg/mL~0.88ng/mlの最終ADC濃度が得られた)。さらに4日後、プレートをインキュベータから取り出し、室温に平衡させた。約30分後、各ウェルから50μLを取り出し、50μLのCellTiter-Glo(登録商標)2.0 Luminescent Solution(Promega,G9243)を各ウェルに添加した。750rpmで5分間のプレートの振盪に続いて、振盪なしで20分のインキュベーションの後、ウェル当たり1秒の積分時間を用い、Tecan Infinity F200プレートリーダで発光を測定した。Graphpad Prism Softwareを用いて、ADC濃度(ng/mL)に対する発光の曲線を当てはめた。Prism Softwareの組み込み「ログ(阻害剤)対応答-可変傾き(4つのパラメータ)」IC50決定関数を用いて決定されたIC50値を表9に報告する。
【0174】
【表9】
【0175】
図12は、表9のADCを用いたMDA-MB-468及びHS578T細胞に対するインビトロ細胞殺傷アッセイの用量-応答曲線を示す。上の表及び図12によれば、本発明のADCは、既知の抗ROR1抗体2A2及びR12よりも優れた、特定のヒト癌細胞の殺傷を達成する。
【0176】
実施例16.679細胞に対するヒト化抗ROR1抗体ベースのADCのインビトロ細胞傷害性アッセイ
ヒト697細胞を用いて、ヒト化抗ROR1 ADC:huXBR1-402-3-G5-PNU(adc456)、huXBR1-402-8-G5-PNU(adc457)、huXBR1-402-15-G5-PNU(adc458)、huXBR1-402-17-G5-PNU(adc459)、huXBR1-402-19-G5-PNU(adc460)及びhuXBR1-402-26-G5-PNU(adc461)の細胞傷害性を調べた。アイソタイプコントロールとして、Tras-G5-PNU(adc286)を含んだ。
【0177】
このために、ウェル当たり5×104個の697細胞を、10体積%のFCS、100IU/mLのPen-Strep-Fungizone及び2mM L-グルタミンで補充した75μLのRPMIを含む96ウェルプレート上に平板培養し(水を含有するエッジウェルを除く)、37℃、7.5%CO2雰囲気下の加湿したインキュベータ内で増殖させた。1日のインキュベーションの後、増殖培地中3.5倍連続希釈物を25μLの量で含むそれぞれのウェルに、各ADCを添加した(これにより、20μg/mL~0.88ng/mlの最終ADC濃度が得られた)。さらに4日後、プレートをインキュベータから取り出し、室温に平衡させた。約30分後、各ウェルから50μLを取り出し、次に50μLのCellTiter-Glo(登録商標)2.0 Luminescent Solution(Promega,G9243)を各ウェルに添加した。450rpmで5分間のプレートの振盪に続いて、振盪なしで10分のインキュベーションの後、ウェル当たり250msの積分時間を用いて、Tecan Spark 10Mプレートリーダで発光を測定した。Graphpad Prism Softwareを用いて、ADC濃度(ng/mL)に対する発光の曲線を当てはめた。Prism Softwareの組み込み「ログ(阻害剤)対応答-可変傾き(4つのパラメータ)」IC50決定関数を用いて決定されたIC50値を表10に報告する。
【0178】
【表10】
【0179】
図25は、表10のヒト化ADCを用いた697細胞に対するインビトロ細胞殺傷アッセイの用量-応答曲線を示す。上の表及び図25によれば、ヒト化ADCは、親、非ヒト化mAbを用いて製造されたADCと比較して、強力である。
【0180】
実施例17.CD-1野生型マウス株における抗ROR1 XBR1-402-抗体及びXBR1-402-G5-PNU ADCのインビトロ薬物動態試験
下記の試験をABPRO(Burlington,MA,USA)で実施した。ケージ当たり最大5匹の動物からなるグループ毎に収容された雌CD-1マウス(試験開始時に少なくとも6週齢、Taconic Biosciences,Germantown,NY,USAから)を体重別に各々9匹ずつの2グループにランダムに分けた。1グループは、静脈内投与により、単一用量の1mg/kgのXBR1-402(mAb202)を受け、第2グループは、単一用量の1mg/kgのXBR1-402-G5-PNU(adc409)を受けた。投与後の血液サンプルを表11のプロトコルに従って各々3匹から成るサブグループから採取した。採血は、顎下静脈のランセット穿刺により実施した(約200μLを採取)が、但し、21日目の採血は例外で、心臓穿刺により実施した(約600μLを採取)。サブグループからのサンプルを各時点についてプールした。1’500gで10分間の血液遠心分離により血漿を単離し、ELISAによる実験室内分析まで滅菌クライオバイアル内に-80℃で保存した。
【0181】
【表11】
【0182】
1500gで10分間の遠心分離により血液から血漿を単離し、滅菌クライオバイアルに移し、ELISAによる分析まで-80℃で保存した。mAb XBR1-402及びADC XBR1-402-G5-PNUのインビボ安定性をELISAアッセイにより評価した。ADCと結合させるために、2μg/mlのマウス抗PNU mAb(ヒトIgG-PNUコンジュゲートでマウスを免疫し、BSA-PNUコンジュゲートを用いてスクリーニングすることにより実験室内で作製)で、又は全IgGと結合させるために、抗ヒトFc F(ab’)2(Jackson Immunoresearch)でコーティングしたELISAプレート上で、ADC血清サンプルの希釈系列を捕捉し、HRP結合抗ヒトIgG F(ab’)2(Jackson Immunoresearch)の1:2500希釈物で検出した。ADC及び全IgGの血清濃度は、既知濃度の同じADCのサンプルとの比較により、サンプル力価測定の最大半数値から算出した。
【0183】
図20のデータは、本発明のADCの高い安定性を示している。
【0184】
実施例18.NOD-SCIDマウスにおけるヒト急性リンパ球性白血病(ALL)細胞株697の播種性異種移植モデルでのADCのインビボ効力の評価
以下の試験をPipeline Biotech(Trige,Denmark)で実施した。XBR1-402-G5-PNU(adc288)及びヒト化hu2A2-G5-PNU(adc287;未公開PCT/欧州特許第2016/076244号明細書に基づく)の効力を、hROR1陽性697ALL細胞を注射した雌NOD-SCIDマウスにおける播種性異種移植モデルにおいて比較した。HER-2特異的抗体トラスツズマブ、Tras-G5-PNU(adc286)ベースのADCは、負のアイソタイプ適合コントロールADCとして使用した。
【0185】
各々体重が少なくとも20gの9週齢マウスに、試験0日目で、697腫瘍細胞(200μL PBS中5×106細胞/匹)を接種した。PBS中に製剤化した各ADCを、7日目、14日目及び21日目に1.0mg/kgで6匹のマウスのグループに投与(静脈内)したが、各ADCの投与の20時間前に、マウスIgG(Jackson ImmunoResearch,015-000-003)、30mg/kg)の投与を行った。実験動物に関する欧州及びデンマークの法律に従い、中等度の痛み、中等度の苦痛の臨床的徴候、あらゆる等度の苦しみ、又は人道的エンドポイントの限界を超える試験に特有のあらゆる臨床的徴候を示した動物は全て、安楽死させた。12及び19日目に、血液(EDTAバイアル内に90μL)を各動物の尾静脈から採取した。標準的手順に従う血液遠心分離により、血漿を単離した。処置グループからのサンプルを各時点についてプールした。
【0186】
ADCと結合させるために、2μg/mlのマウス抗PNU mAb(ヒトIgG-PNUコンジュゲートでマウスを免疫し、BSA-PNUコンジュゲートを用いてスクリーニングすることにより実験室内で作製)で、又は全IgGと結合させるために、抗ヒトFc F(ab’)2(Jackson Immunoresearch、109-006-098)でコーティングしたELISAプレート上で、ADC血漿サンプルの希釈系列を捕捉し、HRP結合抗ヒトIgG F(ab’)2(Jackson Immunoresearch、709-035-149)の1:2500希釈物で検出した。ADC及び全IgGの血清濃度は、既知濃度の同じADCのサンプルとの比較により、サンプル力価測定の最大半数値から算出した。
【0187】
ソフトウエアPRISMを用いて、データ分析を実施した。本発明のXBR1-402-G5-PNU ADCで処置したマウスは、同等のROR1ターゲティングhu2A2-G5-PNU ADC、又はアイソタイプコントロールADCで処置したものと比較して、長期の生存を示した(図15、パネルA)。さらに、XBR1-402-G5-PNU ADCの濃度は、既知又はアイソタイプコントロールADCよりも血漿中で高いままである(図15、パネルB)。
【0188】
実施例19.hROR1過剰発現EMT-6細胞で樹立された同所性乳癌モデルにおける抗ROR1 ADCのインビボ効果の評価
表13の試験プロトコルに従い、下記のマウスモデルにおいて、新規の抗ROR1抗体XBR1-402-G5-PNUベースのADC(adc262)をR12-G5-PNU(adc327)、及び既知抗体R12ベースのADC及びアイソタイプコントロールTras-G5-PNU(adc286)ADCと比較した。
【0189】
【表12】
【0190】
【表13】
【0191】
図18は、6匹の個別のマウス各々において、試験の間に変化する腫瘍体積を示す。高度のhROR1発現を有する乳癌細胞で樹立された同所性乳癌モデルは、ROR1陰性WT EMT-6モデルの無応答とは反対に、本発明のADCによる処置に有意に応答する。さらに、本発明のADCの顕著な応答は、既知R12 ROR1ターゲティング抗体ベースの同等ADCに対する有意な改善を立証している。
【0192】
実施例20.ウエスタンブロットによるヒト患者由来腫瘍溶解物におけるhROR1発現の分析
ヒト患者由来異種移植(PDX)モデル(Charles River,Freiburg,Germany)の腫瘍溶解物及びコントロールとしての高度にROR1陽性の不死化細胞株(Kasumi-2)の溶解物、並びに不死化A549癌細胞からの溶解物をウエスタンブロットによるhROR1タンパク質発現についてプローブした。このために、溶解物を5×SDS-PAGEロードバッファー(250mM Tris-HCl pH6.8、10%SDS、30%グリセロール、5%μ-メルカプトエタノール)と混合し、99℃で5分間加熱することによって、溶解物を変性させた。SDS-PAGEによる分離の後、eblot transfer System(Genscript)を用いて、タンパク質をPVDF膜に転写した。次に、10%ウマ血清(Amimed,Bioconcept,Switzerland)を含有するTBST(20mM Tris-HCl、150mM NaCl、pH7.6、0.1%Tween-20)中に1:200希釈した市販のポリクローナルウサギ抗ROR1抗体4102(Cell Signaling Technology,Danvers,USA)と一緒に、膜を4℃で一晩インキュベートした。TBSTで2回洗浄した後、HRP結合抗ウサギ二次抗体(WesternSure HRP goat-anti-rabbit IgG,LiCor,Lincoln,USA)と一緒に、膜を室温で1時間インキュベートした。発光基質(SuperSignal West Femto(34094,Thermo Fisher)中で膜をインキュベートし、cDigit Western blot reader(LiCor,Lincoln,USA)を用いたイメージングにより、シグナルを明らかにした。ハウスキーピング遺伝子GAPDHの検出は、ローディングコントロールとして使用した。
【0193】
【表14】
【0194】
図21は、ヒト腫瘍溶解物、並びに不死化癌細胞からの溶解物のウエスタンブロット分析を示す。
【0195】
実施例21.患者由来の腫瘍異種移植モデルにおけるADC XBR1-402-G5-PNUのインビボ効果の分析
下記の試験をCharles River(Oncotest GmbH,Freiburg,Germany)において実施した。
【0196】
【表15】
【0197】
エンドトキシンを含有しないことが以前確認されたXBR1-402-G5-PNU(adc409)ADCを下記の試験プロトコルに従い、各モデルにおいて調べた。
【0198】
【表16】
【0199】
PDX材料(いずれか片側(PXF111、RXF486、CX533)又は両側(SXFS1407、PXF541)をマウスに皮下移植した。腫瘍が100cm3のサイズに達したらマウスをランダム化し、1mg/kgのADC又はビヒクルで計3回処置した。腫瘍体積をカリパス測定により決定し、体重を週2回記録した。2000mm3(片側)若しくは1700mm3(両側)の腫瘍負荷に達するか、又は有意な体重減少(全体で30%超、又は2日で20%超)の場合には、マウスを安楽死させた。
【0200】
図22は、試験の間の腫瘍体積の変化を示す。高度のhROR1発現を有する患者由来の腫瘍材料で樹立した腫瘍異種移植は、本発明のADCによる処置に有意に応答する。
【0201】
実施例22.XBR1-402 CAR-Tのインビトロ活性
ROR1ターゲティングmAb R11及びR12について以前記載されている方法(Hudecek,M.,Lupo-Stanghellini,M.T.,Kosasih,P.L.,Sommermeyer,D.,Jensen,M.C.,Rader,C.,and Riddell,S.R.(2013)Receptor affinity and extracellular domain modifications affect tumor recognition by ROR1-specific chimeric antigen receptor T cells.Clin.Cancer Res.19,3153-3164)を用いて、XBR1-402ベースのCAR-T細胞を作製した。エクスビボ拡大一次ヒトCD8+CD62L+T細胞に、レンチウイルスにより、CD3ζ及び4-1BBシグナル伝達ドメインと短いスペーサとを含むXBR1-402又はR12由来のCARを形質導入した。形質導入したT細胞をFACSによりtEGFRを介して精製し、機能性アッセイの前日にその表現型を評価した。CD8+純度は、97%~99%の間で変動し、tEGFR発現は、95%~99%の間で変動した。ROR1陽性又はROR1陰性ヒト乳癌細胞との72時間の同時培養後、CFSE染色CD8+CD62L+細胞をフローサイトメトリーにより分析したところ、XBR1-402及びR12 CAR-Tの標的依存性増殖が判明した(図26;上方左側パネル)。24時間の同時培養後に採取した上清中のIFNγ及びIL2濃度をELISAにより測定した(図26;上方右側パネル)。ROR1陽性及びROR1陰性細胞との11時間の同時培養後、ルシフェラーゼベースの細胞傷害性アッセイを用いて、選択性障害性を測定した(図26;下方パネル)。
【0202】
同じ実験を反復して、短いスペーサを有するXBR1-402 CAR-Tと、長いスペーサを有するXBR1-402 CAR-Tを比較した。ROR1陽性又はROR1陰性ヒト乳癌細胞との72時間の同時培養後、CFSE染色CD8+CD62L+細胞をフローサイトメトリーにより分析したところ、短いスペーサを有するXBR1-402 CAR-Tのより強い増殖が判明した(図27;上方パネル)。ROR1陽性及びROR1陰性細胞との11時間の同時培養後のルシフェラーゼベースの細胞傷害性アッセイによる選択性障害性から、短いスペーサ及び長いスペーサを有するXBR1-402 CAR-Tの両方について選択性障害性が判明した(図27;下方パネル)。
【0203】
実施例23.XBR1-402の特異性分析
図28は、Retrogenix Cell Microarray Platformの外観を示す。一次スクリーン:精製済キメラウサギ/ヒトIgG1 XBR1-402及び精製済キメラウサギ/ヒトIgG1 XBR1-401を各々2μg/mLの濃度までプールした。4,336のヒト血漿膜タンパク質を個別に発現する固定HEK293細胞/スライドに対する結合について、プールをスクリーニングした(13スライドセット;n=2スライド/スライドセット)。トランスフェクション効率は全て、最小閾値を超えた。AlexaFluor647抗ヒトIgG Fc検出抗体を使用した。ImageQuantで蛍光(AlexaFluor647及びZsGreen1)を分析することによって、一次ヒット(重複スポット)を同定した。全ヒットをコードするベクターをシーケンシングすることにより、それらの正しいアイデンティティを確認した。確認スクリーン:全ヒットをコードするベクター、並びにコントロールベクターを新しいスライドに重複してスポットし、これらを用いて、以前と同様に、ヒトHEK293細胞をリバーストランスフェクトした。トランスフェクション効率は全て、最小閾値を超えた。同一の固定スライドを2つの試験抗体(XBR1-402及びXBR2-401)の各々で個別に処理し、さらにポジティブ及びネガティブコントロール(n=2スライド/処理)でも処理した。スライドを前述と同様に分析した(図29)。
【0204】
以上において本発明を明瞭な理解のために例示及び実施例によってある程度詳しく説明してきたが、当業者には、本発明の教示に照らして、添付の請求項の精神又は範囲を逸脱することなく、本発明にいくつかの変更及び修正が加えられ得ることは容易に理解されよう。
【0205】
本明細書で引用した刊行物、データベース、GenBank配列、特許、及び特許出願の全ては、その各々が、あたかも明示的且つ個別に、参照により組み込まれていると示されているのと同様に、参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
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図28
図29
【配列表】
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