(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】長残光放出を利用してセキュリティマークを認証する方法及び1つ以上の残光化合物を含むセキュリティマーク
(51)【国際特許分類】
G07D 7/1205 20160101AFI20220112BHJP
G07D 7/121 20160101ALI20220112BHJP
【FI】
G07D7/1205
G07D7/121
(21)【出願番号】P 2018565403
(86)(22)【出願日】2017-07-05
(86)【国際出願番号】 EP2017066772
(87)【国際公開番号】W WO2018007444
(87)【国際公開日】2018-01-11
【審査請求日】2020-06-05
(32)【優先日】2016-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】311007051
【氏名又は名称】シクパ ホルディング ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】SICPA HOLDING SA
【住所又は居所原語表記】Avenue de Florissant 41,CH-1008 Prilly, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ミロス―スコウウィンク, ミア
(72)【発明者】
【氏名】ドクー, エリック
【審査官】永安 真
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-507084(JP,A)
【文献】特表2015-507669(JP,A)
【文献】特開2014-30921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 7/00 - 7/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長残光効果を与えるように設計され、少なくとも1つの長残光リン光性顔料を含み、第1の波長領域の長残光発光を放出可能であるセキュリティマークを認証する方法であって、前記セキュリティマークの第1のゾーンから放出された前記長残光発光を前記第1の波長領域において検出することを含む、セキュリティマークを認証する方法において、
a)初期時点の前記第1の波長領域の第1のスペクトル成分に関する前記第1のゾーンからの前記検出された発光強度の値を決定するステップと、
b)ステップa)において検出された前記第1の波長領域の前記第1のスペクトル成分に関する前記第1のゾーンからの前記発光強度の第1の長残光パラメータの値を決定するステップであり、前記第1の長残光パラメータの前記値が、前記初期時点から経過した第1の残光時間に対応し、前記第1の残光時間が、前記第1のスペクトル成分に関する前記検出された発光の前記強度値がステップa)において決定した前記第1の波長領域の前記第1のスペクトル成分に関する前記第1のゾーンからの前記検出された発光強度の前記値の所定割合である第1の閾値を下回るまでの時間である、ステップと、
c)ステップa)及びb)の完了後、前記セキュリティマークの前記第1のゾーンにおける前記少なくとも1つの長残光リン光性顔料の基準濃度値を表す対応する第1の基準値に対して、前記初期時点の前記第1のスペクトル成分に関する前記発光強度の前記決定した値、前記第1の長残光パラメータの前記決定した値を比較することと、前記決定した値が前記対応する第1の基準値前後の第1の範囲内である場合に、前記セキュリティマークが本物であると判定することと、を含む認証動作を実行するステップと
を含むことを特徴とする、セキュリティマークを認証する方法。
【請求項2】
前記セキュリティマークがさらに、第2の波長領域の長残光発光を放出可能であり、
当該方法が、前記セキュリティマークの第2のゾーンから放出された前記長残光発光を前記第2の波長領域において検出することを含み、
ステップa)が、初期時点の前記第2の波長領域の第2のスペクトル成分に関する前記第2のゾーンからの前記検出された発光強度の値を決定することをさらに含み、
ステップb)が、ステップa)において検出された前記第2の波長領域の前記第2のスペクトル成分に関する前記第2のゾーンからの前記発光強度の第2の長残光パラメータの値を決定することをさらに含み、前記第2の長残光パラメータの前記値が、前記初期時点から経過した第2の残光時間に対応し、前記第2の残光時間が、前記第2のスペクトル成分に関する前記検出された発光の前記強度値がステップa)において決定した前記第2の波長領域の前記第2のスペクトル成分に関する前記第2のゾーンからの前記検出された発光強度の前記値の所定割合である第2の閾値を下回るまでの時間であり、
ステップc)が、前記セキュリティマークの前記第2のゾーンにおける前記少なくとも1つの長残光リン光性顔料の基準濃度値を表す対応する第2の基準値に対して、前記初期時点の前記第2のスペクトル成分に関する前記発光強度の前記決定した値、前記第2の長残光パラメータの前記決定した値をさらに比較することと、前記さらに決定した値が前記対応する第2の基準値前後の第2の範囲内である場合に、前記セキュリティマークが本物であると判定することとによって、前記認証動作を実行することを含む、請求項1に記載のセキュリティマークを認証する方法。
【請求項3】
前記セキュリティマークがさらに、第3の波長領域の長残光発光を放出可能であり、当該方法が、前記セキュリティマークの第3のゾーンから放出された前記長残光発光を前記第3の波長領域において検出することを含み、
ステップa)が、初期時点の前記第3の波長領域の第3のスペクトル成分に関する前記第3のゾーンからの前記検出された発光強度の値を決定することをさらに含み、
ステップb)が、ステップa)において検出された前記第3の波長領域の前記第3のスペクトル成分に関する前記第3のゾーンからの前記発光強度の第3の長残光パラメータの値を決定することをさらに含み、前記第3の長残光パラメータの前記値が、前記初期時点から経過した第3の残光時間に対応し、前記第
3の残光時間が、前記第3のスペクトル成分に関する前記検出された発光の前記強度値がステップa)において決定した前記第3の波長領域の前記第3のスペクトル成分に関する前記第3のゾーンからの前記検出された発光強度の前記値の所定割合である第3の閾値を下回るまでの時間であり、
ステップc)が、前記セキュリティマークの前記第3のゾーンにおける前記少なくとも1つの長残光リン光性顔料の基準濃度値を表す対応する第3の基準値に対して、前記初期時点の前記第3のスペクトル成分に関する前記発光強度の前記決定した値、前記第3の長残光パラメータの前記決定した値をさらに比較することと、前記さらに決定した値が前記対応する第3の基準値前後の第3の範囲内である場合に、前記セキュリティマークが本物であると判定することとによって、前記認証動作を実行することを含む、請求項2に記載のセキュリティマークを認証する方法。
【請求項4】
当該方法が、前記セキュリティマークにより放出された前記長残光発光を検出可能なカメラが設けられたリーダにおいて実装され、前記リーダのメモリにはソフトウェアが、前記セキュリティマークの前記少なくとも1つの長残光リン光性顔料の基準濃度値を表す基準値とともに格納され、前記ソフトウェアが、前記リーダのCPUユニット上で動作する場合に、当該方法の前記各ステップを実行するように動作可能である、請求項1~3のいずれか一項に記載のセキュリティマークを認証する方法。
【請求項5】
当該方法のステップa)及びb)が、サーバCPUユニット
と前記少なくとも1つの長残光リン光性顔料の基準濃度値を表す前記基準値を格納するデータベースとを有するサーバに通信リンクを介してデータを送信するように動作可能
であり通信手段
を備えたリーダにおいて実装され、
前記リーダが、前記セキュリティマークにより放出された前記長残光発光を検出可能なカメラと、該リーダのメモリに格納され、該リーダのCPUユニット上で動作する場合に、当該方法の前記ステップa)及びb)を実行するように動作可能なソフトウェアとを備えており、
当該方法のステップa)及びb)の完了により、前記リーダが、前記サーバに前記通信リンクを介して、検出された発光強度の前記決定した値及び長残光パラメータの前記決定した値を送信し、
前記サーバCPUユニットが、当該方法のステップc)に従って、前記データベースに格納された前記少なくとも1つの長残光リン光性顔料の基準濃度値を表す対応基準値に対して、前記リーダから受信した前記決定した値の比較を実行し、前記比較の結果に基づいて、前記セキュリティマークが本物であると判定する、請求項1~3のいずれか一項に記載のセキュリティマークを認証する方法。
【請求項6】
前記リーダが、励起光を配光して、前記セキュリティマークの前記少なくとも1つの長残光リン光性顔料に前記長残光発光を放出させ得る光
源を備え、
当該方法が、前記リーダの前記CPUユニット上で動作する場合に、前記光源による励起光で前記セキュリティマークを照射する予備ステップを含む、請求項4又は5に記載のセキュリティマークを認証する方法。
【請求項7】
前記セキュリティマークにより放出された前記長残光発光の前記波長領域が、少なくとも部分的に可視範囲にあり、前記カメラが、RGBダイオードを備え、前記光源が、白色LEDであり、前記第1の波長領域の前記長残光発光が、前記カメラのR、G、及びBから選択される第1のチャンネル上で検出される、請求項6に記載のセキュリティマークを認証する方法。
【請求項8】
第2の波長領域の長残光発光が、前記第1のチャンネルと異なる前記カメラのR、G、及びBから選択される第2のチャンネル上で検出される、請求項7に記載のセキュリティマークを認証する方法。
【請求項9】
第3の波長領域の長残光発光が、前記第1のチャンネル及び前記第2のチャンネルと異なる前記カメラのR、G、及びBから選択される第3のチャンネル上で検出される、請求項8に記載のセキュリティマークを認証する方法。
【請求項10】
前記第1のゾーン、任意選択として第2のゾーン、さらに任意選択として第3のゾーンが、同一であり又は相違する、請求項1~9のいずれか一項に記載のセキュリティマークを認証する方法。
【請求項11】
長残光効果を与えるように設計され、少なくとも1つの長残光リン光性顔料を含み、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法により認証されるように構成された、セキュリティマーク。
【請求項12】
CPUユニット及びメモリを有し、請求項4に記載の方法を実行するソフトウェアを備え、前記セキュリティマークにより放出された前記長残光発光を検出可能なカメラを備えたリーダであって、前記メモリに格納された前記ソフトウェアが、前記CPUユニット上で動作する場合に、前記方法の各ステップを実行するように動作可能であり、当該リーダが
、電気通信装置又はタブレットから選択される携帯用コンピュータ装
置である、リーダ。
【請求項13】
当該リーダが
、励起光を配光して、前記セキュリティマークの前記少なくとも1つの長残光リン光性顔料に前記長残光発光を放出させ得る光
源を備えた携帯電話であり、前記光源による励起光で前記セキュリティマークを照射するように動作可能であり、前記ソフトウェアが、当該リーダの前記CPUユニット上で動作する場合に、前記光源による励起光で前記セキュリティマークを照射する予備ステップを実行可能である、請求項12に記載のリーダ。
【請求項14】
CPUユニット及びメモリを有し、前記メモリに格納され、前記CPUユニット上で動作する場合に、請求項5に記載の方法のステップa)及びb)を実行するように動作可能なソフトウェアを備え、前記セキュリティマークにより放出された前記長残光発光を検出可能なカメラを備え、サーバに通信リンクを介してデータを送信するように動作可能な通信手段を備え、前記方法のステップa)及びb)の完了時に、前記サーバに前記通信リンクを介して、検出された発光強度の前記決定した値及び長残光パラメータの前記決定した値を送信するように動作可能であり
、電気通信装置又はタブレットから選択される携帯用コンピュータ装
置である、リーダ。
【請求項15】
当該リーダが
、励起光を配光して、前記セキュリティマークの前記少なくとも1つの長残光リン光性顔料に前記長残光発光を放出させ得る光
源を備えた携帯電話であり、前記光源による励起光で前記セキュリティマークを照射するように動作可能であり、前記ソフトウェアが、当該リーダの前記CPUユニット上で動作する場合に、前記光源による励起光で前記セキュリティマークを照射する予備ステップを実行可能である、請求項14に記載のリーダ。
【請求項16】
前記波長領域が少なくとも部分的に可視範囲にあるセキュリティマークからの長残光発光を検出し、前記カメラが、RGBダイオードを備え、前記光源が、白色LEDであり、前記カメラが、R、G、及びBから選択される第1のチャンネル上で前記第1の波長領域の前記長残光発光を検出可能である、請求項15に記載のリーダ。
【請求項17】
前記カメラが、前記第1のチャンネルと異なるR、G、及びBから選択される第2のチャンネル上で第2の波長領域の長残光発光を検出可能である、請求項16に記載のリーダ。
【請求項18】
前記カメラが、前記第1のチャンネル及び前記第2のチャンネルと異なるR、G、及びBから選択される第3のチャンネル上で第3の波長領域の長残光発光を検出可能である、請求項17に記載のリーダ。
【請求項19】
長残光効果を与えるように設計され、少なくとも1つの長残光リン光性顔料を含み、長残光発光を放出可能なセキュリティマークを認証するシステムであり、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法の各ステップを実行するように動作可能な、システムであって、
サーバCPUユニットと、前記少なくとも1つの長残光リン光性顔料の基準濃度値を表す前記基準値を格納するデータベースとを有するサーバと、
CPUユニットと、メモリと、前記セキュリティマークにより放出された前記長残光発光を検出可能なカメラと、前記メモリに格納され、前記CPUユニット上で動作する場合に、前記方法のステップa)及びb)を実行するように動作可能なソフトウェアとを備え、前記サーバに通信リンクを介して、前記方法のステップa)及びb)の完了により得られる検出された発光強度の前記決定した値及び長残光パラメータの前記決定した値を送信するように動作可能な通信手段を備えたリーダと
を備え、
前記サーバCPUユニットが、前記方法のステップc)に従って、前記データベースに格納された前記少なくとも1つの長残光リン光性顔料の基準濃度値を表す対応基準値に対して、前記リーダから受信した前記決定した値の比較を実行し、前記比較の結果に基づいて、前記セキュリティマークが本物であると判定可能である、システム。
【請求項20】
前記リーダが、励起光を配光して、前記セキュリティマークの前記少なくとも1つの長残光リン光性顔料に前記長残光発光を放出させ得る光
源を備え、前記ソフトウェアが、前記リーダの前記CPUユニット上で動作する場合に、前記リーダの前記光源による励起光で前記セキュリティマークを照射する予備ステップを実行可能である、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記セキュリティマークにより放出された前記長残光発光の前記波長領域が、少なくとも部分的に可視範囲にあり、前記カメラが、RGBダイオードを備え、前記光源が、白色LEDであり、前記カメラが、R、G、及びBから選択される第1のチャンネル上で前記第1の波長領域の前記長残光発光を検出可能である、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記カメラが、前記第1のチャンネルと異なるR、G、及びBから選択される第2のチャンネル上で第2の波長領域の長残光発光を検出可能である、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記カメラが、前記第1のチャンネル及び前記第2のチャンネルと異なるR、G、及びBから選択される第3のチャンネル上で第3の波長領域の長残光発光を検出可能である、請求項22に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商業的価値のある物品、セキュリティカード、紙幣、チケット等、様々な物品の真贋の確認に用いられる発光性セキュリティマークの分野及びその認証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商業的価値のある多くの製品は、偽造、偽作、及び複製に対する保護の必要がある。この目的のため、香水又は時計等の高価な製品のほか、紙幣、納税印紙、クレジットカード、メンバーカード、チケット等の価値ある文書には通常、セキュリティマークが設けられている。セキュリティのレベルを向上させるとともにマークの偽造をより困難にするため、通常のセキュリティマークは、例えばUV放射による励起によって発光性の色素若しくは顔料が可視スペクトルで発光する特定のマークであるホログラム、透かし、又は容易に利用可能ではない特定種類の顔料を用いたグラフィック要素及び/若しくは市販の機器では実現が難しい光学的印象を顔料の特定の配向によって与えるグラフィック要素を含む。
【0003】
セキュリティマークは、発光性材料を採用することが多く、観測発光が認証手段として用いられる。本明細書においては、発光として、蛍光又はリン光という2つの異なる種類が可能である。蛍光が励起による放射の迅速な放出である一方、リン光は、放射の時間遅延放出であり、励起の停止後に観測可能である。リン光は、時間の関数としての発光強度の特定の減衰を特徴とし、材料固有の対応する存続期間は、ナノ秒から数時間までの時間尺度の範囲が可能である。どちらの種類の発光も、例えば写真式複写機に採用されているような従来のブラック又はカラートナーを用いて得られないため、上記のような発光性マークは単に複製不可能である。
【0004】
ただし、上記のようなセキュリティマークには、比較的容易に再現し得るという欠点及び/又は機械可読とはなり得ないという欠点が依然としてある。さらに、管理場所(例えば、販売、チケット、又は進入管理の場所)においては、例えば裸眼で観測される発光性マークの光学的印象を認証手段として使用可能ではあるものの、多くの発光性色素が市販されているため、偽造者は、裸眼で観測される光学的外見を模倣可能となり得る。発光性セキュリティマークのスペクトル放出特性のより高度な解析によって、本物のマークと同一又は同様の裸眼に対する光学的外見を一見して与えるマークが実際には偽作又は贋作であることが明らかになり得るものの、このように高度な解析には通常、一般的には管理場所で利用できない複雑且つ高価で嵩張る機器が必要となる。
【0005】
解析側でセキュリティマークのセキュリティレベルを向上させる一選択肢として、発光性(特に、リン光性)のマークの減衰特性を利用・評価することが知られている。例えば、欧州特許出願公開第1158459A1号は、発光性検査マークを認証する方法であって、少なくとも1つの励起パルスで発光性検査マークを励起するステップと、前記少なくとも1つの励起パルスに応答して、前記発光性検査マークの放出放射(E)からの放出強度(I)の検査強度値をある時間間隔で測定するステップと、前記検査強度値の検査強度対時間放出関数を構成するステップと、マークの真性を示す少なくとも1つの基準強度対時間放出関数に対して、前記検査強度対時間放出関数を比較するステップであり、前記検査強度対時間放出関数及び前記基準強度対時間放出関数が比較前に正規化される、ステップと、を含む、方法を記載している。
【0006】
この方法の欠点として、パルス励起機器が容易には利用できず、嵩張る場合もある。さらに、所与の時間後の観測強度は、検出装置の励起の有無及び/又は検出装置への進入の有無の可能性がある周囲光の影響を受ける場合がある。さらに、減衰時間が比較的短い(すなわち、例えば減衰時間が10ms以下の蛍光又はリン光)場合は、強度対時間放出関数の観測に高度な機器が必要となる場合もある。
【0007】
減衰時間が異なる発光性材料の混合物の減衰特性を利用しようとする試みが米国特許第3412245号に記載されている。この文献には、励起によって、同一又は酷似の波長で発光する2つの発光性材料を混合することが記載されている。一方の材料は、他方よりも大幅に長い減衰時間を有する。そして、様々な(定常状態又はDCパルス/交流すなわちAC)照射条件が採用され、DC及びAC照射条件下で観測される信号の比が計算され、各発光性成分の有無の指標として利用される。
【0008】
したがって、上記方法では、少なくとも2つの異なる照射条件が必要となる。さらに、放出強度及び放出プロファイルの解析には、複雑な機器が必要となる場合もあり、例えば自然光を排した隔離環境で実行されない場合は撹乱を招きやすい。
【0009】
認証特性として発光性材料の減衰時間に依拠する別の手法が国際公開第2005/095296A2号に記載されている。また、国際公開第2005/041180A1号は、光輝性マークについて述べており、所与の時間後の放出強度を基準値と比較している。
【0010】
米国特許出願公開第2013/0020504A1号は、2つの発光性材料を含むセキュリティマークまで上記原理を拡張している。これらは、異なる波長で発光して、時間的な強度曲線がそれぞれ決まる。これらは、共通時間における放出光成分の初期強度の計算に利用され、ここから、放出光成分それぞれの強度パラメータ及び減衰パラメータ値が決まる。そして、これらの強度パラメータ及び減衰パラメータ値が識別に利用される。
【0011】
この文献では、例えば500μsの短い光パルスを使用するため、適当な励起光源が必要となる。測定は繰り返すことができ、例えば256回もの測定によって、精度が向上する。また、非常に精密な強度-時間関係を確立する必要があるため、検出には、やや高度な機器が必要となる。
【0012】
さらに、この文献の段落[0079]及び[0080]では、減衰定数が最大強度の値から独立しているため、上記のような測定パラメータによって、2つの異なる種類の発光性材料の有無が確認されたか否かを判定可能であることから、減衰定数を認証に利用可能であることを強調している。逆に、このような強度は、それぞれの大きさが材料のみならず、励起光源の持続時間、強度、及び(1つ又は複数の)波長のほか、光輝性材料の濃度にも依存することから、認証の手段としては利用できない。したがって、この文献では、セキュリティマークで用いられる純粋な放出種の挙動の解析に焦点を当て、発光性材料の識別を目的としている。そして、この識別が真贋の基準として用いられる。
【0013】
先行技術の方法の欠点として、所望の照射励起条件の付与及び/又は材料の減衰時間の正確な測定には、複雑且つ高価で嵩張る機器が通常は必要になることが挙げられる。さらに、先行技術の方法は、例えば10ms以下の比較的短い減衰時間を有する蛍光性又はリン光性材料に限られる。減衰時間が長くなると、正しい減衰時間定数の決定がより難しくなること及び/又は認証のための測定が長くなることが理由である。
【0014】
先行技術の方法の別の欠点として、測定が測定条件の影響を受けやすく、例えば自然光又は照射光源、セキュリティマーク、及び検出器等の間の距離変動が原因と考えられる照射強度の変動による撹乱を回避するには、隔離された特定の装置又は環境での測定が通常は求められる点が挙げられる。
【0015】
さらに、先行技術は通常、個々のマーカ構成要素の発光特性(すなわち、発光性材料の同一性)に依拠するため、偽造者は、各構成要素自体のみを模倣すればよい。これにより、不正(すなわち、上手く偽作された)セキュリティマークと比較して、裸眼に対する光学的外見が修正後のセキュリティマークに対して維持されるように、不正マークを修正するのが困難となるため、別の材料(すなわち、別の発光性構成要素)の採用が通常は必要となる。逆に、マーカの減衰特性が変わらないため、不正マークの1つ又は複数の発光性構成要素の相対量の比較的小さな変化では不十分となる。
【0016】
したがって、先行技術の方法では通常、裸眼に対する全体外見を維持するようには不正セキュリティマークを修正できない一方、機器支援解析においては異なる結果がもたらされる。さらに、2つ以上の発光性材料から成る所与のシステムの場合、先行技術のセキュリティマーク及びその認証方法では一般的に、明確に識別可能なマークの取得及び/又は真贋の判定ができない。これらの方法は、発光性材料の組成(相対量)の影響を受けにくいか、又は、放出強度の絶対値による相対量にしか依存しないため、励起条件の厳密な管理及び光センサの入念な校正又は観測された放出減衰曲線の複数の減衰時間定数を抽出する複雑な多指数減衰適合動作が必要となる。したがって、2つの発光性材料から成るシステムにより実現可能な異なる認証マーカの数は通常、極めて限られる(例えば、1)。
【0017】
また、関連する一態様において、先行技術の方法では、例えば観測色に関して裸眼に対する全体外見が実質的に同じセキュリティマークと、シリアル番号群又は範囲、特定の製品種目、製造場所、指定の販売場所等、さらに別の品目固有、製品固有、又は群固有の識別項目とを結び付けることができない。異なる群、製品種目等について、異なるセキュリティマークには異なる発光性マーカを採用することが必要となるため、一般的には、裸眼に対する外見も異なるためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
最も広い概念での態様において、本発明は、認証方法及びセキュリティマークに関する当業者の選定を補完するとともに、先行技術の上述の問題の一部又は全てを解決する新規のセキュリティマーク認証方法及び新規のセキュリティマークを提供することを目的とする。
【0019】
一態様において、本発明は、複雑な機器の必要なく、管理又は販売の場所で実現可能なセキュリティマークの残光特性を利用してセキュリティマークを認証する新規の方法を提供することを目的とする。本態様及び関連する一態様において、本発明はさらに、上記目的を達成する方法で使用可能なセキュリティマークを提供することを目的とする。
【0020】
上記態様及び関連する一態様において、本発明は、スマートフォンのための付加的な機器の併用の要否に関わらず、既存のスマートフォンにおいて実装可能なセキュリティマークの残光特性を利用してセキュリティマークを認証する方法を提供することを目的とする。
【0021】
本発明はさらに、より堅牢で、機器の種類と、自然光の有無又は他の照明条件等の外的条件との変動の影響を受けにくいセキュリティマークの残光特性を利用してセキュリティマークを認証する方法を提供することを目的とする。したがって、本態様及び関連する一態様において、本発明は、高い堅牢性及び/又は偽陰性結果の低い招来性を有するセキュリティマーク認証方法及びそれに有用なセキュリティマークを提供することを目的とする。
【0022】
別の態様において、本発明は、不正によって認証方法の異なる結果を与える場合に、裸眼に対する不正マークの光学的外見を維持しつつ容易に修正可能なセキュリティマークを提供することを目的とする。
【0023】
さらに別の態様において、本発明は、裸眼に対して本質的に同じ光学的外見を有するものの、認証方法の異なる結果を生じるセキュリティマークを提供することにより、肉眼に対するセキュリティマークの明らかな差異なく、製品若しくは群固有の特性又は識別マークに対して異なる結果を結び付けられるようにすることを目的とする。
【0024】
さらに別の態様において、本発明は、セキュリティマークの真贋判定が、セキュリティマークに存在する発光性材料の化学的同一性に特定も限定もされず、セキュリティマークに存在する1つ又は複数の発光性材料(混合材料であってもよい)の(1つ又は複数の)相対量にも依拠するセキュリティマーク及びその認証方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
実際のところ、本発明に係る認証方法によれば、セキュリティマークに存在する各長残光発光性材料の科学的同一性及び量の両者を識別することができる。特に、本発明によれば、化合物の相対量に基づいて、所与数の化学型の長残光発光性化合物を含むセキュリティ材料を区別することができるため、特定のセキュリティマーク材料を識別する「キー」に対応する上記化合物の量(又は、濃度)の所与の値集合であって、上記発光性化合物に関する組成が当該値集合又はキーに対応する上記相対量を変更することにより、セキュリティマークのファミリを作成可能である。
【0026】
本発明は、以下の項目1~23に開示のセキュリティマーク認証方法、セキュリティマーク、リーダ、及びセキュリティマーク認証システムによって、上記問題の一部又は全部を解決する。
【0027】
1.長残光効果を与えるように設計され、少なくとも1つの長残光化合物を含み、第1の波長領域の長残光発光を放出可能なセキュリティマークを認証する方法であり、セキュリティマークの第1のゾーンから放出された上記長残光発光を上記第1の波長領域において検出することを含む、セキュリティマークを認証する方法であって、
a)初期時点の第1の波長領域の第1のスペクトル成分に関する上記第1のゾーンからの検出された発光強度の値を決定するステップと、
b)ステップa)において検出された第1の波長領域の第1のスペクトル成分に関する第1のゾーンからの発光強度の第1の長残光パラメータの値を決定するステップであり、第1の長残光パラメータの上記値が、初期時点から経過した第1の残光時間に対応し、上記第1の残光時間が、第1のスペクトル成分に関する検出された発光の強度値がステップa)において決定した第1の波長領域の第1のスペクトル成分に関する第1のゾーンからの検出された発光強度の値の所定割合である第1の閾値を下回るまでの時間である、ステップと、
c)ステップa)及びb)の完了後、セキュリティマークの上記第1のゾーンにおける上記少なくとも1つの長残光化合物の基準濃度値を表す対応する第1の基準値に対して、初期時点の第1のスペクトル成分に関する発光強度の上記決定した値、第1の長残光パラメータの上記決定した値を比較することと、上記決定した値が対応する第1の基準値前後の第1の範囲内である場合に、セキュリティマークが本物であると判定することと、を含む認証動作を実行するステップと、
を含む、セキュリティマークを認証する方法。
【0028】
2.セキュリティマークがさらに、第2の波長領域の長残光発光を放出可能であり、当該方法が、セキュリティマークの第2のゾーンから放出された上記長残光発光を上記第2の波長領域において検出することを含み、
ステップa)が、初期時点の第2の波長領域の第2のスペクトル成分に関する上記第2のゾーンからの検出された発光強度の値を決定することをさらに含み、
ステップb)が、ステップa)において検出された第2の波長領域の第2のスペクトル成分に関する第2のゾーンからの発光強度の第2の長残光パラメータの値を決定することをさらに含み、第2の長残光パラメータの上記値が、初期時点から経過した第2の残光時間に対応し、上記第2の残光時間が、第2のスペクトル成分に関する検出された発光の強度値がステップa)において決定した第2の波長領域の第2のスペクトル成分に関する上記第2のゾーンからの検出された発光強度の値の所定割合である第2の閾値を下回るまでの時間であり、
ステップc)が、セキュリティマークの上記第2のゾーンにおける上記少なくとも1つの長残光化合物の基準濃度値を表す対応する第2の基準値に対して、初期時点の第2のスペクトル成分に関する発光強度の上記決定した値、第2の長残光パラメータの上記決定した値をさらに比較することと、上記さらに決定した値が上記対応する第2の基準値前後の第2の範囲内である場合に、セキュリティマークが本物であると判定することとによって、上記認証動作を実行することを含む、項目1に記載のセキュリティマークを認証する方法。
【0029】
3.セキュリティマークがさらに、第3の波長領域の長残光発光を放出可能であり、当該方法が、セキュリティマークの第3のゾーンから放出された上記長残光発光を上記第3の波長領域において検出することを含み、
ステップa)が、初期時点の第3の波長領域の第3のスペクトル成分に関する上記第3のゾーンからの検出された発光強度の値を決定することをさらに含み、
ステップb)が、ステップa)において検出された第3の波長領域の第3のスペクトル成分に関する第3のゾーンからの発光強度の第3の長残光パラメータの値を決定することをさらに含み、第3の長残光パラメータの上記値が、初期時点から経過した第3の残光時間に対応し、上記第2の残光時間が、第3のスペクトル成分に関する検出された発光の強度値がステップa)において決定した第3の波長領域の第3のスペクトル成分に関する上記第3のゾーンからの検出された発光強度の値の所定割合である第3の閾値を下回るまでの時間であり、
ステップc)が、セキュリティマークの上記第3のゾーンにおける上記少なくとも1つの長残光化合物の基準濃度値を表す対応する第3の基準値に対して、初期時点の第3のスペクトル成分に関する発光強度の上記決定した値、第3の長残光パラメータの上記決定した値をさらに比較することと、上記さらに決定した値が上記対応する第3の基準値前後の第3の範囲内である場合に、セキュリティマークが本物であると判定することとによって、上記認証動作を実行することを含む、項目2に記載のセキュリティマークを認証する方法。
【0030】
4.当該方法が、セキュリティマークにより放出された長残光発光を検出可能なカメラが設けられたリーダにおいて実装され、前記リーダのメモリにはソフトウェアが、セキュリティマークの少なくとも1つの長残光化合物の基準濃度値を表す基準値とともに格納され、ソフトウェアが、リーダのCPUユニット上で動作する場合に、当該方法の前記各ステップを実行するように動作可能である、項目1~3のいずれか一項に記載のセキュリティマークを認証する方法。
【0031】
5.当該方法のステップa)及びb)が、サーバCPUユニットと上記少なくとも1つの長残光化合物の基準濃度値を表す上記基準値を格納するデータベースとを有するサーバに通信リンクを介してデータを送信するように動作可能であり通信手段を備えたリーダであり、セキュリティマークにより放出された上記長残光発光を検出可能なカメラと、リーダのメモリに格納され、リーダのCPUユニット上で動作する場合に、当該方法の上記ステップa)及びb)を実行するように動作可能なソフトウェアとを備えた、リーダにおいて実装され、
当該方法のステップa)及びb)の完了により、リーダが、サーバに通信リンクを介して、検出された発光強度の上記決定した値及び長残光パラメータの上記決定した値を送信し、
サーバCPUユニットが、当該方法のステップc)に従って、データベースに格納された上記少なくとも1つの長残光化合物の基準濃度値を表す対応基準値に対して、リーダから受信した決定した値の比較を実行し、比較の結果に基づいて、セキュリティマークが本物であると判定する、項目1~3のいずれか一項に記載のセキュリティマークを認証する方法。
【0032】
6.リーダが、励起光を配光して、セキュリティマークの上記少なくとも1つの長残光化合物に上記長残光発光を放出させ得る光源、好ましくはLEDを備え、当該方法が、リーダのCPUユニット上で動作する場合に、光源による励起光でセキュリティマークを照射する予備ステップを含む、項目4又は5に記載のセキュリティマークを認証する方法。
【0033】
7.セキュリティマークにより放出された長残光発光の上記波長領域が、少なくとも部分的に可視範囲にあり、上記カメラが、RGBダイオードを備え、上記光源が、白色LEDであり、第1の波長領域の長残光発光が、カメラのR、G、及びBから選択される第1のチャンネル上で検出される、項目6に記載のセキュリティマークを認証する方法。
【0034】
8.第2の波長領域の長残光発光が、第1のチャンネルと異なるカメラのR、G、及びBから選択される第2のチャンネル上で検出される、項目7に記載のセキュリティマークを認証する方法。
【0035】
9.第3の波長領域の長残光発光が、第1及び第2のチャンネルと異なるカメラのR、G、及びBから選択される第3のチャンネル上で検出される、項目8に記載のセキュリティマークを認証する方法。
【0036】
10.第1のゾーン、任意選択として第2のゾーン、さらに任意選択として第3のゾーンが、同一であり又は相違する、項目1~9のいずれか一項に記載のセキュリティマークを認証する方法。
【0037】
11.長残光効果を与えるように設計され、少なくとも1つの長残光化合物を含み、項目1~10のいずれか一項に記載の方法により認証されるように構成された、セキュリティマーク、又はセキュリティマークが設けられた物品。
【0038】
12.CPUユニット及びメモリを有し、項目4に記載の方法を実行するソフトウェアを備え、セキュリティマークにより放出された上記長残光発光を検出可能なカメラを備えたリーダであって、メモリに格納された上記ソフトウェアが、CPUユニット上で動作する場合に、上記方法の各ステップを実行するように動作可能であり、当該リーダが、好ましくは携帯用コンピュータ装置、より好ましくは電気通信装置又はタブレットである、リーダ。
【0039】
13.当該リーダが、好ましくは励起光を配光して、セキュリティマークの上記少なくとも1つの長残光化合物に上記長残光発光を放出させ得る光源、好ましくはLEDを備えた携帯電話であり、光源による励起光でセキュリティマークを照射するように動作可能であり、上記ソフトウェアが、当該リーダのCPUユニット上で動作する場合に、光源による励起光でセキュリティマークを照射する予備ステップを実行可能である、項目12に記載のリーダ。
【0040】
14.CPUユニット及びメモリを有し、メモリに格納され、CPUユニット上で動作する場合に、項目1~3のいずれか一項に記載の方法のステップa)及びb)を実行するように動作可能なソフトウェアを備え、セキュリティマークにより放出された上記長残光発光を検出可能なカメラを備え、サーバに通信リンクを介してデータを送信するように動作可能な通信手段を備え、上記方法のステップa)及びb)の完了時に、サーバに通信リンクを介して、検出された発光強度の上記決定した値及び長残光パラメータの上記決定した値を送信するように動作可能であり、好ましくは携帯用コンピュータ装置、より好ましくは電気通信装置又はタブレットである、リーダ。
【0041】
15.当該リーダが、好ましくは励起光を配光して、セキュリティマークの上記少なくとも1つの長残光化合物に上記長残光発光を放出させ得る光源、好ましくはLEDを備えた携帯電話であり、光源による励起光でセキュリティマークを照射するように動作可能であり、上記ソフトウェアが、当該リーダのCPUユニット上で動作する場合に、光源による励起光でセキュリティマークを照射する予備ステップを実行可能である、項目14に記載のリーダ。
【0042】
16.上記波長領域が少なくとも部分的に可視範囲にあるセキュリティマークからの長残光発光を検出し、上記カメラが、RGBダイオードを備え、上記光源が、白色LEDであり、上記カメラが、R、G、及びBから選択される第1のチャンネル上で第1の波長領域の長残光発光を検出可能である、項目15に記載のリーダ。
【0043】
17.カメラが、第1のチャンネルと異なるR、G、及びBから選択される第2のチャンネル上で第2の波長領域の長残光発光を検出可能である、項目16に記載のリーダ。
【0044】
18.カメラが、第1及び第2のチャンネルと異なるR、G、及びBから選択される第3のチャンネル上で第3の波長領域の長残光発光を検出可能である、項目17に記載のリーダ。
【0045】
19.長残光効果を与えるように設計され、少なくとも1つの長残光化合物を含み、長残光発光を放出可能なセキュリティマークを認証するシステムであり、項目1~3のいずれか一項に記載の方法の各ステップを実行するように動作可能な、システムであって、
サーバCPUユニットと、上記少なくとも1つの長残光化合物の基準濃度値を表す上記基準値を格納するデータベースとを有するサーバと、
CPUユニットと、メモリと、セキュリティマークにより放出された上記長残光発光を検出可能なカメラと、メモリに格納され、CPUユニット上で動作する場合に、上記方法のステップa)及びb)を実行するように動作可能なソフトウェアとを備え、サーバに通信リンクを介して、上記方法のステップa)及びb)の完了により得られる検出された発光強度の上記決定した値及び長残光パラメータの上記決定した値を送信するように動作可能な通信手段を備えたリーダと、
を備え、
サーバCPUユニットが、当該方法のステップc)に従って、データベースに格納された上記少なくとも1つの長残光化合物の基準濃度値を表す対応基準値に対して、リーダから受信した決定した値の比較を実行し、比較の結果に基づいて、セキュリティマークが本物であると判定可能である、システム。
【0046】
20.リーダが、励起光を配光して、セキュリティマークの上記少なくとも1つの長残光化合物に上記長残光発光を放出させ得る光源、好ましくはLEDを備え、ソフトウェアが、リーダのCPUユニット上で動作する場合に、リーダの光源による励起光でセキュリティマークを照射する予備ステップを実行可能である、項目19に記載のシステム。
【0047】
21.セキュリティマークにより放出された長残光発光の上記波長領域が、少なくとも部分的に可視範囲にあり、上記カメラが、RGBダイオードを備え、上記光源が、白色LEDであり、カメラが、R、G、及びBから選択される第1のチャンネル上で第1の波長領域の長残光発光を検出可能である、項目20に記載のシステム。
【0048】
22.カメラが、第1のチャンネルと異なるR、G、及びBから選択される第2のチャンネル上で第2の波長領域の長残光発光を検出可能である、項目21に記載のシステム。
【0049】
23.カメラが、第1及び第2のチャンネルと異なるR、G、及びBから選択される第3のチャンネル上で第3の波長領域の長残光発光を検出可能である、項目22に記載のシステム。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】セキュリティマークが製品ラベル中に存在するスマートフォンにおいて実装された本発明の認証方法の一実施形態を示した模式表現であり、左から右に向かって、スマートフォンがセキュリティマークに近づくステップと、LEDをオンした後、カメラで観測しつつセキュリティマークを照射するステップと、照射によって、長残光放出を開始又は強化する励起エネルギーを与えるステップと、LEDをオフし、スマートフォンのカメラが、R、G、及びB(すなわち、カメラの光強度センサの赤色、緑色、及び青色の各チャンネル)から選択されるカメラの少なくとも2つのチャンネル上で長残光放出を観測するステップと、認証動作の実行後、スマートフォンが、認証動作の結果を示す可聴及び/又は可視信号(この場合は「OK」)を与えるステップと、を示した図である。
【
図2】本発明の認証方法に有用なセキュリティマークの一実施形態において、スマートフォン照射LED(すなわち、「発光ダイオード」(上下部で同一))の発光強度と2つの長残光顔料(上:赤色発光顔料、下:緑色発光顔料)の励起・放出スペクトルとの間の重なりを示した図である。
【
図3】2つの長残光化合物をそれぞれ含む3つの異なるセキュリティマークの放出強度(実線)及び放出化合物とカメラの3つの各波長領域又はRGBチャンネルとの間の重なり(点線)を示した図である。
【
図4】スマートフォンカメラのR及びG各チャンネルで測定された光強度対時間の3つの例であって、長残光化合物の濃度の3つの異なる比を示すとともに、2つの長残光顔料のみで異なるキーを作成することすなわち2つの長残光顔料のみで異なるシグネチャを作成することの広範な可能性であり、シグネチャ又はキーがセキュリティマークの第1の顔料及び第2の顔料の特定の濃度を表す、広範な可能性を示しており、3つの異なるキーの3つの例を含み、下表に示す長残光化合物の組成に従ってキーが求められ(残光時間は、緑色及び赤色の初期放出強度値の35%で決まる)、
【表1】
図4では、放出曲線に対して、
1a:キー1のRチャンネル上の正規化観測放出、
1b:キー1のGチャンネル上の正規化観測放出、
1c:キー1のBチャンネル上の正規化観測放出、
2a:キー2のRチャンネル上の正規化観測放出、
2b:キー2のGチャンネル上の正規化観測放出、
2c:キー2のBチャンネル上の正規化観測放出、
3a:キー3のRチャンネル上の正規化観測放出、
3b:キー3のGチャンネル上の正規化観測放出、
3c:キー3のBチャンネル上の正規化観測放出、
という参照記号を使用しており、各グラフにおいて、I
N
Rで示されるように、RGBの各強度が赤色(R)強度の初期値I
0
Rに対して正規化され、すなわち、放出曲線(I
R/I
0
R)が曲線1a、2a、3aを与え、放出曲線(I
G/I
0
R)が曲線1b、2b、3bを与え、放出曲線(I
B/I
0
R)が曲線1c、2c、3cを与える図である。
【
図5】カメラフード(左)及びこのようなカメラフードを備えたスマートフォン(右)の説明に役立つ一例を示した図である。
【
図6】単一の長残光化合物すなわちLuming Technology Group Co., LTDの赤色発光顔料RR-7を異なる濃度で含む2つのセキュリティマーク材料が基板上に印刷されたキーの概念であって、赤色顔料の対応する濃度が下表の通りであり、
【表2】
この顔料の励起が波長400~550nmであることから、これらのマークの励起には白色LEDが最適であり、一方、長残光放出が600~700nmであることから、長残光放出の収集がカメラのRチャンネル上で行われ、発光強度曲線を測定するために、(白色励起LEDを備えない代わりにUVダイオードを有する)従来のリン光測定器を使用する代わりに、カメラMicroeye UI5240SEと、サンプル(すなわち、印刷されたセキュリティマーク)から47mmに配置された対物レンズF1.4-16C12mm(Edmund optics 56-787)及び白色LEDとを備えた専用装置を使用し、カメラの設定が以下の通りであって、
画像利得 2.50×50+利得増大、
カメラフレームレート 4(250ms)、
露出時間 249.91ms、
白色LEDによる励起持続時間 2s、
前述の装置により、スマートフォンに見られるのと同じ白色LED励起を利用して、この測定結果をスマートフォンで得られる結果に近づけることも可能であり、印刷されたセキュリティマーク材料の前述の同じ長残光化合物(赤色顔料)の2つの異なる(相対)濃度にそれぞれ対応する長残光強度減衰曲線1及び2として、30%の濃度に対応する曲線1及び15%の濃度に対応する曲線2を示しており、比較の容易化のため、両放出強度曲線I(t)が曲線1の初期強度値I
0
R1に対して正規化され、両曲線が明らかに、非単一指数型の異なる形状を有するとともに、(例えば、初期放出強度の35%で測定した)各残光時間が明白に異なっているため、残光時間が濃度(又は、局所量)に依存しない従来の発光性化合物(すなわち、持続的な発光効果を持たない)との対比により、セキュリティマークの材料認証キーとして、当該セキュリティマークの材料の長残光化合物の異なる濃度を実際に使用可能であり、本発明に係るセキュリティマークの認証方法において、長残光化合物の当該特性を正確に利用することにより、確実な真贋確認のために考慮すべき関連パラメータが与えられることを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
[定義]
本発明を対象として、用語「少なくとも1つ(at least one)」は、1つ以上、好ましくは1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つ、より好ましくは1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つ、さらに好ましくは1つ、2つ、又は3つ、最も好ましくは1つ又は2つを意味する。同じことが用語「1つ又は複数(one or more)」にも当てはまる。さらに、用語「2つ以上(two or more)」又は「少なくとも2つ(at least two)」は、列挙した構成要素のうちの最低2つが存在することを示すが、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つ、より好ましくは2つ、3つ、4つ、又は5つ、さらに好ましくは2つ又は3つ、最も好ましくは2つの、同じ構成要素の他の種類も存在可能である。
【0052】
本明細書において、本発明の一実施形態、特徴、態様、又は形態を好ましいものとして記述している場合は、明らかな不適合がなければ、本発明の他の好適な実施形態、特徴、態様、又は形態と組み合わせるのが好ましいことが了解されるものとする。好適な実施形態、特徴、態様、又は形態の結果としての組み合わせは、本明細書の開示内容の一部である。
【0053】
用語「備える、含む(comprising)」は、オープンエンドで使用する。したがって、例えば特定の成分を「含む」組成は、他の成分を追加で含んでいてもよい。ただし、この用語は、技術的に可能な限り、「~から成る(consisting of)」及び「~から本質的に成る(consisting essentially of)」の意味も含む。
【0054】
用語「インク」は、印刷、押印、又は噴霧プロセスにおいて使用可能な液状又は粘性の任意の材料を示すものとする。本発明において使用するインクは、スクリーン印刷インク、グラビア印刷インク、凹版印刷インク、バーコーターインク、オフセット印刷インク、押印インク、接着剤、噴霧インク、ワニス、及び当業者に既知の他のインク種から適当に選択可能である。
【0055】
「可視範囲」は400~700nm、「UV範囲」は40~400nm未満、「IR範囲」は700nm超~2400nmを意味する。
【0056】
「蛍光」は、
【数1】
に従う指数関数的減衰の観点で、存続期間(又は、減衰定数)τが10
-5秒以下である励起状態の材料からの電磁放射の放出を示す。ここで、tは時間(秒)、Iは蛍光放出強度を示す。
【0057】
「リン光」は、
【数2】
に従う指数関数的減衰の観点で、存続期間(又は、減衰定数)τが10
-5秒以上1秒以下である励起状態の材料からの電磁放射の放出を示す。ここで、tは時間(秒)、Iはリン光放出強度を示す。
【0058】
「長残光」又は「持続的発光」は、存続期間が1秒を超え、長残光強度減衰曲線が単一指数型ではない(発光性イオンが材料に埋め込まれた)発光性化合物からの発光を示す。後述の通り、この非単一指数型挙動は、(各発光性イオンの最も近い材料の熱励起によって)上記励起状態を(再度)もたらす中間エネルギーレベルを含む何らかのポンピング機構による化合物の価電子帯と伝導帯との間の励起状態の脱励起に起因する。結果として、長残光パラメータは、発光性イオンが埋め込まれた(その発光特性を摂動する)上記最も近い材料の局所量によって決まる。
【0059】
本発明において、すべての特性は、別段の記述がない限り、20℃且つ標準気圧(105Pa)での特性に関する。
【0060】
範囲が終端値a及びbにより規定されている場合、これらは、単語「間(between)」、「~から(from)」、及び「~まで(to)」、又は記号「-」のいずれか1つが用いられている場合に含まれる。一例として、範囲「5から10まで」、「5~10」、及び「5-10」は、値5及び10の両者のほか、5より大きく10より小さな値も含む。したがって、これらの用語は、「a以上b以下」を表現するための短縮形として用いられる。
【0061】
本発明において、用語「およそ(about)」は、例えば本質的に同じ効果が実現される範囲内で特定の値からの変動が許可されることを示すものとする。一般的に、「およそ」は、±10%、好ましくは±5%の変動が許可されることを意味する。用語「本質的に(essentially)」及び「実質的に(substantially)」は、同じ意味を有する。
【0062】
[認証方法]
本発明は、長残光効果を与えるように設計され、少なくとも1つの長残光化合物を含み、第1の波長領域の長残光発光を放出可能なセキュリティマークを認証する方法であり、セキュリティマークの第1のゾーンから放出された上記長残光発光を上記第1の波長領域において検出することを含む、セキュリティマークを認証する方法であって、
a)初期時点の第1の波長領域の第1のスペクトル成分に関する上記第1のゾーンからの検出された発光強度の値を決定するステップと、
b)ステップa)において検出された第1の波長領域の第1のスペクトル成分に関する第1のゾーンからの発光強度の第1の長残光パラメータの値を決定するステップであり、第1の長残光パラメータの上記値が、初期時点から経過した第1の残光時間に対応し、上記第1の残光時間が、第1のスペクトル成分に関する検出された発光の強度値がステップa)において決定した第1の波長領域の第1のスペクトル成分に関する第1のゾーンからの検出された発光強度の値の所定割合である第1の閾値を下回るまでの時間である、ステップと、
c)ステップa)及びb)の完了後、セキュリティマークの上記第1のゾーンにおける上記少なくとも1つの長残光化合物の基準濃度値を表す対応する第1の基準値に対して、初期時点の第1のスペクトル成分に関する発光強度の上記決定した値、第1の長残光パラメータの上記決定した値を比較することと、上記決定した値が対応する第1の基準値前後の第1の範囲内である場合に、セキュリティマークが本物であると判定することと、を含む認証動作を実行するステップと、
を含む、方法に関する。
【0063】
長残光放出を測定するセキュリティマークの第1のゾーンとしては、セキュリティマーク全体に広がった単一要素としての構成も可能であるし、複数要素での構成も可能であり、各要素は、少なくとも1つの長残光化合物の異なる濃度を有し得る(このため、マークの複雑な認証シグネチャが可能となり、偽造がより困難となる)。
【0064】
本発明によれば、複数の波長領域の長残光発光を検出可能であり、セキュリティマークの認証がより確実となる。
【0065】
また、本発明によれば、セキュリティマークは、複数の異なる長残光化合物を含むことができ、場合によりその一部が混合され、発光を放出可能なマークのいくつかのゾーンに配設されている。各ゾーンにおいて、長残光化合物は、1つの均一層を構成することも可能であるし、複数の積層上に分布することも可能である。また、長残光化合物としては、何らかのパターン(例えば、2Dバーコード)の一部も可能である。
【0066】
前述の項目1(すなわち、1つの波長領域又はチャンネルの放出発光強度の1つのスペクトル成分の検出を伴う)、項目2(すなわち、2つの波長領域又はチャンネルの放出発光強度の2つのスペクトル成分の検出を伴う)、又は項目3(すなわち、3つの波長領域又はチャンネルの放出発光強度の3つのスペクトル成分の検出を伴う)に対応する実施形態において、本発明に係る方法は、1つ、2つ、又は3つのスペクトル成分についての発光の測定を含むが、発光の付加的なスペクトル成分及び検出の付加的なチャンネルを考慮することも可能である。
【0067】
上記概説した方法及び当該方法の各ステップの規定に用いられる用語及び材料については、以下でより詳しく説明する。
【0068】
「認証方法」は、マークの真贋の確認を意図した任意の方法に関する。この点、「本物」は、マークが設けられた製品又は品目の起源及び/又は正当性をマークが示すことを意味する。このため、例えば紙幣は、その発行を許可された機関(例えば、中央銀行)により発行された場合に、この意味において「本物」であり、偽物の紙幣は、偽作又は偽造されたものである。例えば、イベントチケット又は旅行チケットについても同じことが言える。同様に、「本物」は、ラベル上の企業若しくは個人又は許可された下請製造業者により製品が実際に製造されたことを意味し得る。
【0069】
「セキュリティマーク」は、「本物」とマーキングすべき品目上に存在する要素を示す。この要素は、通常の日光又は白熱灯下で裸眼により視認可能であってもよいし、視認可能でなくてもよい。一実施形態において、「セキュリティマーク」は、紙、ボール紙、又はプラスチック等の適当な基板上のプリントの形態である。本実施形態及び他の実施形態において、セキュリティマークは、ロゴ、記号、文字、証印、コード、シリアル番号、又はグラフィック要素を含むか、又はその一部である。
【0070】
本発明の意味での「長残光効果」は、長残光効果の発生に起因する好ましくは可視範囲の電界発光放射の放出を意味する。長残光効果は、以下に規定の「初期時点」及び「残光時間」での発光強度の適当な検出を可能にするため、十分な強度で十分な時間にわたって継続する必要がある。
【0071】
蛍光及びリン光は、発光体種内の電子遷移が原因と考えられる。ここでは、エネルギー吸収によって電子がより高いエネルギーレベルへと励起された後、より低いエネルギーレベルへの放射減衰が観測される。このプロセスに必要な時間は、種自体のみに依存し、減衰がスピン許容(蛍光)であるかスピン禁制(リン光)であるかによって異なる。
【0072】
逆に、長残光放出を示す物質の減衰曲線の長時間部分は、放出イオンとその最も近い材料環境、特に空孔との相互作用の結果としての空間エネルギーレベルの存在に起因すると考えられる(例えば、Koen Van den Eeckhout et al.,Persistent Luminescence in Non-Eu2+-Doped Compounds,A Review Materials 2013,6,2789-2818又はA.R.Mirhabibi et al.,Pigment & Resin Technology,Volume 33,Number 4,2004,220-225参照)。
【0073】
このような材料においては、上記最も近い材料の熱励起によって上記励起状態を(再度)もたらす中間エネルギーレベルを含む何らかのポンピング機構による価電子帯と伝導帯との間の励起状態の脱励起によって、発光を維持可能と考えられる。この付加的な経時的励起は、エネルギー捕捉及び対応するエネルギー伝達に起因して、近い材料から起こる。結果として、(長い)残光時間(すなわち、発光強度が(例えば、「初期時点」に観測される光強度の30%の割合に対応する)特定の閾値を下回るまでの時間)は、発光体種のみならず、他の因子、特に(近い)材料の局所量にも依存する。材料の熱励起によって、長残光放出を維持する(ひいては、残光時間を変更する)ポンピング機構を提供可能であることから、材料からの長残光強度の測定が材料の所与の温度で実行されるとともに、材料に関する基準データについても、実質的に同じ温度で測定される。
【0074】
したがって、セキュリティマーク中に長残光化合物が均一に分布している場合、観測残光時間は、材料のみならず、その濃度にも依存する。セキュリティマークが複数の層を含み、(例えば)各層の長残光化合物の分布が所与の濃度で均一な場合、長残光放出をもたらすマーク上の各局所エリアについて、上記放出に関与する材料の局所量は、「見掛け」の濃度によって特性化される(すなわち、各層の厚さ全体で局所的に平均化される)。一般的に、長残光化合物の分布が不均一なセキュリティマークの場合、セキュリティマーク上の局所エリアからの長残光放出に関する観測残光時間は、上記局所エリア下のマークの厚さ内で放出に関与する長残光化合物の局所量によって決まるため、見掛けの濃度(すなわち、厚さ全体での局所平均濃度)によっても特性化可能である。以下、濃度という用語は、「見掛け」の濃度に対して使用する。これにより、様々な「キー」すなわち材料の選定のみならずそれぞれの量にも依存する認証基準の作成が可能となる。したがって、残光時間は、発光体種の性質以外のマークの複数の特性(例えば、その局所量)を反映する一種の代用物である。このため、長残光パラメータは、使用する材料を表すのみならず、セキュリティマークの放出部の正確な組成及び構造を象徴するため、マークを特性化する特定の「キー」を構成する。長残光パラメータは、セキュリティマーク中の長残光化合物の濃度の変動に応じて変動する。この効果は、従来の発光化合物(蛍光又はリン光)では観測されず、長残光化合物の場合にのみ観測される。このような長残光化合物の局所量への依存性は、マークの各(発光)放出イオンの近い材料との特定の相互作用を反映した前述のエネルギー捕捉及びエネルギー伝達機構に起因する。長残光減衰曲線1及び2が2つの異なる濃度に対応する1つの長残光化合物の一例については、
図6を参照できる。また、濃度が異なる2つの異なる長残光化合物の混合物の異なる局所量に由来する異なる「キー」の一例については、
図4を参照できる(ここで、各長残光化合物の各残光時間に対して、2つの長残光パラメータが存在する)。
【0075】
「初期時点」の観測放出強度及び「長残光パラメータの値」に影響する因子としては、セキュリティマークの性質及び濃度に関して、(i)セキュリティマーク中の(1つ又は複数の)残光化合物(リン光性化合物)の濃度、(ii)検出するスペクトル成分の検出発光を放出可能な励起状態の密度(飽和)、(iii)長残光化合物の減衰特性、及び(iv)特に光検出器に達し得るようにセキュリティマークからの放出がセキュリティマークを離れる量が全量であるか相当量であるかに関して、長残光化合物をセキュリティマークに組み込む方法が挙げられる。
【0076】
これらの因子はすべて、常識に基づく当業者の影響を受ける可能性がある。エリア濃度(i)は、セキュリティマークの提供に用いられるインク中の長残光化合物の濃度及び/又は所与のエリアに適用されるインクの量の増減によって調整可能である。検出するスペクトル成分の検出発光を放出可能な励起状態の密度(ii)は通常、励起放射の照射によって増大可能であるが、場合によっては、例えば加熱等の他の形態の可能な限り適当なエネルギーを与えることによっても増大可能である。まれに、密度の低減が望ましい場合は、十分な時間にわたってセキュリティマークを暗中に格納することにより実現可能である。長残光化合物の減衰特性(iii)は、(所与の温度において)材料固有であるが、当業者であれば、異なる減衰特性を有する異なる材料を選定可能である。組み込み方法(iv)は、例えばセキュリティマークに付加的な層を設けること(又は、設けないこと)、背景の色等によって調整可能である。
【0077】
本願の意味での「長残光化合物」は、非単一指数型の減衰放出の寄与により、持続的な発光効果によって、好ましくは可視スペクトルの電磁放射を放出可能な化合物を意味する。この電磁放射の放出は、「長残光発光」又は「長残光効果」とも称する。
【0078】
実際上、長残光効果は、携帯電話カメラ等の比較的単純な機器により検出可能となるように、十分長い時間にわたって、ある波長領域のスペクトル成分に対して起こる必要があるため、当該波長領域のスペクトル成分に関して検出可能な発光は、励起の停止後、検出不可能となるまで、少なくとも100ms以上、好ましくは250ms以上、より好ましくは500ms以上、さらに好ましくは1s以上にわたって継続する必要がある。さらに、長残光パラメータを決定できるように、「初期時点」及び「初期時点から経過した残光時間」がともに、これらの範囲内である必要がある。これは、放出存続期間τが100ms以上、好ましくは250ms以上、より好ましくは500ms以上等、上記波長領域のスペクトル成分を構成する放出の減衰をかなり長くすべきことを意味する。
【0079】
長残光化合物は、当技術分野においてよく知られており、当業者が必要に応じて選定可能である。長残光化合物の例は、アルカリ土類アルミン酸塩及びケイ酸塩、Ca:Eu、Tm、Zns:Eu、ドーピングCaS等の1つ又は複数の希土類金属をドープした無機ホスト構造を有するリン光性顔料である。このような化合物は、例えばLuming Technology Co., Ltd.のPLO-6B(緑色顔料)及びRR-7(赤色顔料)等、市販されている。
【0080】
さらに、認証動作においては、ある波長領域のスペクトル成分に関して、検出発光強度の任意(すなわち、第1、第2、第3・・・)の長残光パラメータが利用される。ここで、セキュリティマークの所与のゾーンについて、初期時点のスペクトル成分に関する各発光強度の上記決定した値、対応する基準値を有する長残光パラメータの上記決定した値が状況に組み入れられ互いに関連付けられるため、セキュリティマークが本物であるか否か、すなわち、基準値の測定に用いられる(基準)本物のセキュリティマークに対応する上記ゾーン中の少なくとも1つの長残光化合物の濃度値を有するか否かが判定される。これは一般的に、上記決定した値又はそれらに由来する1つ若しくは複数のパラメータが対応する基準値に十分近づく場合等、本物の材料を表すと考えられる期待値の範囲内となる場合に当てはまる。一実施形態において、数学的には、これを以下のように表すことも可能である。例えば、マークを認証する測定基準(すなわち、関係値D)は、(考慮する各チャンネルすなわち各波長領域に関する)初期時点の測定強度I0と残光時間τとの間の関係Relに基づいていてもよく、これらは、対応する基準値又はその範囲と関連していてもよい。これにより、例えば真贋を推定するスカラー基準を求めるための複数の測定基準Dを規定可能である。一例として、発光強度の測定に用いられるRGBダイオードの2つのチャンネルR及びGの単純なユークリッド測定基準に認証が限定される場合は、第1及び第2のスペクトル成分並びに対応する第1及び第2の長残光パラメータについて、以下のようにDを規定するようにしてもよい。すなわち、4次元空間(I0
R,I0
G,τR,τG)において、D=[(I0
R-I0
R ref)2+(I0
G-I0
G ref)2+(τR-τR ref)2+(τG-τG ref)2]1/2である。ここで、I0
R及びI0
R refはそれぞれ、初期時点のチャンネルRに対応する周波数領域のスペクトル成分に関する(セキュリティマークの所与のゾーンからの)検出された長残光発光強度の決定した値及び基準値であり、I0
G及びI0
G refはそれぞれ、初期時点のチャンネルGに対応する周波数領域のスペクトル成分に関する(セキュリティマークの所与のゾーンからの)検出された長残光発光強度の決定した値及び基準値であり、τR及びτR refはそれぞれ、チャンネルRにおいて放出された長残光発光のスペクトル成分に関する決定した残光時間及び基準残光時間であり(従来の発光減衰時間定数と混同しないものとする)、τG及びτG refはそれぞれ、チャンネルGにおいて放出された長残光発光のスペクトル成分に関する決定した残光時間及び基準残光時間である。
【0081】
或いは、(縮減)2次元空間において、Dは、D=[(I0
R/I0
G-I0
R ref/I0
G ref)2+(τR/τG-τR ref/τG ref)2]1/2のように規定されてもよい。
【0082】
本物と偽物のマークを識別する能力の意味においては、考慮すべきパラメータの数を増やすことによって、この方法の感度を増大可能である。選定するパラメータが少なすぎると、例えばD=(τR/τG)又はD=[(τR-τR ref)2+(τG-τG ref)2]1/2を選択するに過ぎず、区別が不十分となる可能性がある。
【0083】
したがって、認証動作においては、考慮する各スペクトル成分の初期放出強度及び長残光パラメータ並びに対応する基準値といったパラメータを伴うのが好ましい。また、本発明によれば、例えばセキュリティマークの測定パラメータ間の距離値及び本物のセキュリティマークの対応する基準値に対応する成分を、考慮する波長領域(又は、スペクトル成分)ごとに有するベクトル等、真贋を推定する非スカラー測定基準も使用可能である。さらに、上記ベクトルは、考慮するセキュリティマークの領域ごとに成分が分割されることで、(対応するセキュリティマークの偽造がより困難となるため)認証の信頼性をさらに向上可能である。
【0084】
例えば、2つのチャンネルR及びGの場合、関係Relは、マークを確実に認証するパラメータ{I0
R,I0
R ref,I0
G,I0
G ref,τR,τR ref,τG,τG ref}を伴う。その結果、関係値Dは、(2つのチャンネルの場合の)これら8つのパラメータも含むものとする。3つのチャンネルR、G、及びBの場合、Dは、4つのパラメータI0
B、I0
B ref、τB、及びτB refをさらに含むものとする。ただし、Dは、対応する4つのパラメータをそれぞれ含む3つの成分へのチャンネルごとの分割及び/又はセキュリティマーク上の放射領域による分割が可能である。
【0085】
一般的に、マークを本物と考えるためには、座標がパラメータの基準値である「基準点」に対して、座標としてパラメータの値を有するパラメータ空間(上記例において、この空間の次元は4である)における「測定点」が近くにある必要がある。例えば、これら2つの点間の距離を考える場合、「測定点」は、上記「基準点」周りの所与の半径εの区域内に存在する必要がある(これは、各基準値の周りに許容値の何らかの範囲を規定することと明らかに同等である)。
【0086】
特に、認証パラメータの空間における距離D(すなわち、場合によってはゾーンによる放出発光の各スペクトル成分の初期値及び対応する各長残光パラメータの値)を使用する場合は、パラメータを正規化して再スケーリング及び無次元化するのが好ましい。例えば、パラメータ空間の各次元について、以下を考慮する。
スペクトル成分強度:最低強度レベルを0に設定し(スペクトル成分に関する強度軸上のシフト)、最高強度レベルと最低強度レベルとの差を1に設定する(再スケーリング)ため、このスペクトル成分に関する測定正規化強度は、0~1の値しか取り得ない。
長残光パラメータ:(考慮するスペクトル成分に関する)最低値を0に設定し、考え得る最高値と最低値との差を1に設定するため、長残光パラメータの観測値は、0~1の範囲である。
【0087】
そして、典型的な認証基準としては、D≦εの場合にのみマークが本物である。例えば、ε=0.5であり、ε=0.1が好ましい。
【0088】
そして、D≦ε(ただし、ε>0)の場合すなわち測定値(I0
R、I0
G、τR、τG)が対応する基準値(I0
R ref、I0
G ref、τR ref、τG ref)に十分近い場合は、セキュリティマークを本物と考えることになる。別の(同等な)可能性として、セキュリティマークを本物と考えるためには、対応する決定値が含まれる必要がある各基準値前後の値の範囲を規定する。
【0089】
その結果、例えば(説明に役立つ例として)2つのチャンネル上で長残光放出を検出する場合は、残光時間にそれぞれ対応する第1及び第2の残光パラメータの決定した値から、値又はパラメータ(例えば、比、距離等)を計算することができ、その後、認証動作において利用されるようになっていてもよい。実際上、残光時間の決定の誤差を最小限に抑えるため、第1及び第2の各閾値に対応する初期値の割合値を下回る場合に強度を測定する場合は、検出された光強度の第1及び第2の長残光パラメータ間に、明確に検出可能な変動が生じているものとする。これは、本発明の方法のすべてのステップをかなり高速(合計10s以下、好ましくは5s以下、より好ましくは2s以下等)で実行可能とするため、残光時間が15s以下、より好ましくは10s以下等、第1の波長領域の第1のスペクトル成分を構成する放出の減衰及び第2の波長領域の第2のスペクトル成分を構成する放出の減衰がともに、上記割合値に対してかなり急速であることを意味する。結果、長残光放出強度の検出を可能にするほど十分な所与の励起照射条件の場合、第1及び第2の閾値は、(少なくとも20%、好ましくは30%以上の割合を選定することにより)このような放出残光時間を可能にすべく設定する必要がある。
【0090】
本発明の意味での「波長領域」は一般的に、通常30~300nm、好ましくは50~250nm、より好ましくは75~200nm、最も好ましくは100~180nmに及ぶ電磁放射波長の帯域幅である。本発明の波長領域としては、全体を可視範囲とすることも可能であるし、全体を不可視(IR又はUV)範囲とすることも可能であるし、一部を可視範囲、一部を不可視範囲とすることも可能である。第1及び第2の波長領域並びに本発明において任意選択的に採用するその他任意の波長領域はすべて、全体が400~700nmの可視範囲であるのが好ましい。例えば、130nmの帯域幅に及ぶ波長領域は、470~600nmであってもよい。
【0091】
第1及び第2の波長領域並び任意選択として採用されるその他任意の波長領域は、部分的に重なっていてもよいし、完全に離れていてもよい。帯域幅がそれぞれ150nmの2つの部分的に重なる第1及び第2の波長領域の一例は、470~620nmの波長に及ぶ第1の波長領域及び550~700nmの第2の波長領域である。そして、第3の波長領域が400~550nmであってもよい。波長領域が部分的に重なる場合は、波長領域が別の波長領域の一部を構成する割合が高々70%、より好ましくは高々50%、さらに好ましくは高々25%の程度となるように、任意の波長領域が重なるのが好ましい。
【0092】
本発明の方法の波長領域は、検出器により長残光放出が検出される波長領域であり、携帯電話カメラのRGBチャンネル等、カメラのチャンネルに対応するのが好ましい(同じく
図3参照)。したがって、「第1の波長領域」は、波長がA)およそ400~およそ550nm、B)およそ460~およそ600nm、又はC)およそ560~700nmの電磁放射を網羅するのが好ましく、「第2の波長領域」は、「第1の波長領域」と比較して、A)~C)のうちの別の範囲を網羅するのが好ましい。「第3の波長領域」を採用する場合は、「第1」、「第2」、及び「第3」の波長領域がそれぞれ、範囲A)、B)、及びC)に対応するのが好ましい。
【0093】
「波長領域のスペクトル成分」は一般的に、波長領域内に全体が含まれるものの、波長領域の全帯域幅にわたっては拡がらない電磁放射を表す。スペクトル成分自体は、波長領域内に含まれる小さな波長領域すなわち例えば10又は20nmの帯域幅の波長領域の部分集合であってもよいし、単一の波長であってもよい。単一の波長は、長残光化合物による放出のピーク波長であってもよいし、ピーク波長でなくてもよい。検出されたスペクトル成分の強度は、すべての電磁放射に関連していてもよいし、偏光等、電磁放射の部分集合にのみ関連していてもよい。
【0094】
好適な一実施形態において、「1つの波長領域のスペクトル成分」は、別の波長領域の一部でもない当該波長領域の部分内にのみ含まれる。別のスペクトル成分及び対応するその他1つの波長領域についてもそれぞれ、これと同じであるのが好ましい。これにより、波長領域の測定/検出が適正に区別されるとともに、観測放出が正しい波長領域へと適正に帰する。
【0095】
本発明において、「検出された発光強度の値」は、検出された(長残光)発光放出強度と直接相関する任意の値として規定される。例えば、上記のような光強度(例えば、cd又はlux単位で測定)も可能であるし、例えばmJ、クーロン、mA、又はmVで測定された検出器の電気信号又はその変換信号も可能であるし、セキュリティマークの所与の表面上の放出のエネルギー密度(例えば、mJ/cm2単位)も可能である。発光強度を参照することにより明らかとなるのは、セキュリティマークに存在する残光化合物の発光以外の光源からの電磁放射が解析に含まれないか、又は、例えば基準値減算によって適正に考慮されるとともに、検出器上又は検出器周りに設けられたフード、カバー、又はフィルタ等の適当な装置によってこのような電磁放射が除外されるのが好ましいことである。
【0096】
本発明の方法の最初のステップ(ステップa))において、例えば前述の項目2に対応する一実施形態によれば(ここでは簡素化のため、第1及び第2のゾーンが同一であると考える)、第1の波長領域の第1のスペクトル成分に関する検出された発光強度の値及び第2の波長領域の第2のスペクトル成分に関する検出された発光強度の値は、「初期時点」と決定される。この初期時点は一般的に、セキュリティマークに存在する(1つ又は複数の)長残光化合物が(例えば、後述の光源又は環境から)十分な励起放射を受けて、第1の波長領域の第1のスペクトル成分及び第2の波長領域の第2のスペクトル成分の長残光放出を誘発した後、ステップb)において、第1及び第2のスペクトル成分に関する検出された発光の強度値がそれぞれ第1及び第2の閾値を下回るまでの任意の時間点である。ステップc)においては、初期時点の第1及び第2のスペクトル成分に関する発光強度の上記決定した値及び第1及び第2の長残光パラメータの上記決定した値と対応する第1及び第2の基準値(すなわち、第1及び第2のスペクトル成分の基準初期強度及び第1及び第2の基準長残光パラメータ)との比較が行われる。セキュリティマークに存在する長残光化合物それぞれについて、基準値は、上記長残光化合物の基準濃度値を表す。すなわち、これらの基準値は、セキュリティマーク(ここでは、重なる第1及び第2のゾーン)における上記長残光化合物の量を特性化する。さらにステップc)においては、第1及び第2のスペクトル成分に関する上記決定した値がそれぞれ、上記対応する第1及び第2の基準値前後の第1及び第2の範囲内である場合に、セキュリティマークが本物であると判定される。したがって、この場合、セキュリティマークに存在する長残光化合物それぞれについて、測定された2つの初期強度値が2つの基準初期強度値と比較され、測定された2つの長残光パラメータ値が2つの基準長残光パラメータ値と比較される。この比較動作は、多くの異なる方法で実行可能であり、対応する測定値及び基準値ごとに差又は比を別個に計算可能であるとともに、計算した値ごとに、認証の許容値の所与の範囲内に含まれるかが確認される。この場合、認証判定には、4つの測定値、4つの基準値、及び4つの許容値範囲を伴う。同等に、4つの範囲を考える代わりとして、マークの真性の判定には、より簡単な基準を使用可能である。例えば、測定された2つの初期強度に対しては、2つの範囲をそれぞれ使用可能であり、長残光パラメータ及びそれぞれの基準値の両者に対しては、例えば距離のようなスカラー値を単に使用可能であり、この距離は、真性に関する所与の正数未満である。判定に関する同等の基準の別の例として、4つの所与の範囲の代わりに、4つの測定値及び4つの基準値すべてを含む距離のような一意のスカラー値を使用可能である(上記R及びGチャンネルのユークリッド距離参照)。実際、本発明によれば、測定された初期強度及び対応する長残光パラメータがそれぞれの基準値に「十分近い」ことだけが必要であり、このような近さは当然のことながら、上記基準値前後の許容変動(好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、さらに好ましくは5%未満)に対応する。
【0097】
ところで、「初期時点」は、長残光放出の検出に用いられる(1つ又は複数の)センサが飽和していない時間点である。これは、残光時間を正しく評価して、放出強度が所定の閾値を下回るまでの時間を正しく測定する能力に影響を及ぼすことになる。
【0098】
「初期時点」は、励起放射を伴う放射時の時間点であってもよく、好適な実施形態においては通常、励起放射を伴う放射が終わった後又は
図5に示すようなフィルタ又はフードによって励起放射が遮断された後の時間点である。本実施形態において、「初期時点」は、励起放射が終わった後又は遮断された後の100ms~10sの時間点であるのが好ましく、200ms~5sがより好ましく、300ms~3sがさらに好ましい。本発明によれば、この方法にステップc)において、認証の判定に関しては、初期時点の代わりとなる初期以降(且つ、対応する残光時間の前)の所与の時間における各スペクトル成分の強度を考えることと同等であり、当然のことながら、対応する基準値についてもこれと同じである(ただし、この変形例では、より多くの強度値を格納する必要がある)。
【0099】
所与の波長領域のスペクトル成分に関して、検出された発光強度の長残光パラメータの値が決定される。ここで、長残光パラメータの値は、スペクトル成分に関する検出された発光の強度の初期値が、波長領域のスペクトル成分に関する(セキュリティマークの関連ゾーンから得られた)検出発光強度の値の所定割合である第1の閾値を下回る初期時点から経過した残光時間に対応する。
【0100】
残光時間は、考慮するスペクトル成分に関する検出された発光の強度値が、上記スペクトル成分に関する上記検出された発光強度の初期強度値の所定の割合値に対応する所定の閾値を下回るまでの時間である。例えば、(携帯電話カメラの緑色チャンネルに対応する)(それぞれ第1の)波長領域の(例えば、第1の)スペクトル成分の測定された初期発光強度の値が検出器により受信可能な最大強度の80%であった場合、残光時間としては、最大強度の50%、40%、30%、又は20%となるように予め決定され、例えば800ms、1500ms、又は2000msが考えられる第1の閾値まで測定光強度が低下するまでの時間も可能である。この時間は、(1つ又は複数の)残光化合物の減衰特性のほか、選定された閾値(実際には、割合値)及びステップa)において決定された検出発光強度の値によって決まる。当然のことながら、ステップa)で検出された光強度の他の値に対して、他の閾値を設定可能であり、当業者であれば、任意所与の残光化合物又は複数の残光化合物の組み合わせに対して、適当な閾値及び/又は時間を適当に選択可能である。
【0101】
残光時間に関して、特定の閾値(例えば、検出器の最大光強度の20%)に達するまでの時間は、例えば長残光化合物の放射-放出電子状態の飽和、セキュリティマークの解析エリア(ゾーン)中の長残光化合物の濃度、又は閾値を確実に測定できない場合(すなわち、ノイズ領域内)のステップa)における初期時点に測定されたスペクトル成分に関する検出発光強度の値等の因子によって決まる。閾値は、残光時間が好ましくは50ms以上、より好ましくは100ms以上、さらに好ましくは250ms以上となるように選定又は調整するものとする。これは、上記説明の通り閾値を調整すること及び/又は例えば十分な長残光放出を与えるように残光化合物を励起可能な電磁放射でセキュリティマークを照射することにより残光化合物の最小励起を保証することによって実現可能である。
【0102】
逆に、閾値及び初期時点の検出発光強度の値は、特にマークの真贋の高速判定が必要なイベントチケット等の販売又は管理場所での方法の実行が意図される場合に、残光時間が非常に長くなるようには選定も調整もされないものとする。このため、閾値(又は、対応する割合値)及び初期時点の検出発光強度の値は、残光時間が好ましくは5s以下、より好ましくは3s以下、さらに好ましくは2s以下となるように調整又は設定され、或いは1s以下であってもよい。
【0103】
また、先述の通り、閾値は、ステップa)において検出された発光強度の値に従って設定することも可能である。これは、かなり高速ながら長残光パラメータの値の確実な決定を依然として可能にする適当な残光時間の両要件を考慮するように、すなわち、ステップa)において検出された発光強度の値に応じて、残光時間が200~1500msの範囲となるように閾値(割合値)調整することにより、所定の閾値を設定又は調整可能であることを意味する。例えば、検出された発光強度の値が高い場合(例えば、最大検出器信号の90%)、閾値は、最大検出器信号の60%又は50%に設定されるようになっていてもよい。逆に、ステップa)において検出された発光強度の値が比較的低い場合(例えば、最大検出器信号の30%)、閾値は、例えば15%等のより低いレベルに設定されるようになっていてもよい。
【0104】
ステップa)において検出された発光強度の決定値の変動性は、残光化合物の異なる飽和レベル、ステップa)に先立つ照射励起光(採用の場合)の強度及び持続時間に関するユーザ間の差、周囲光(迷光)の遮断又は除外に関する異なる条件、試験機器の異なる感度(例えば、感度又はスペクトル分解能が異なるカメラを備えた携帯電話)等、様々な因子が原因と考えられる。機器の感度及び初期時点にステップa)において検出された発光強度の低い値に応じて、これが残光時間(ひいては長残光パラメータ)の確実な決定の問題に至る場合、本発明の方法を実装する装置は、エラー警告の発行及び/又はより長時間のセキュリティマークの照射によって残光化合物の励起残光放出状態の数を増大させる旨のユーザへの通知等、初期時点にステップa)において検出された発光強度の絶対値の増大に適した措置を講じるようユーザに通知するメッセージの提示を行うようにしてもよい。
【0105】
先述の通り、長残光パラメータの値は、残光時間に対応する。これは、長残光パラメータの値として残光時間がこのように可能ではあるものの、既知の数学的演算により残光時間と直接且つ明確に相関する値も可能であることを意味する。例えば、残光時間がx秒の場合、残光パラメータは、xであってもよいし、100xであってもよいし、1/xであってもよい。残光パラメータが1/xで残光時間が2sの場合、長残光パラメータの値は、0.5s-1である。
【0106】
ステップc)においては、初期時点の(1つ又は複数の)スペクトル成分に関するそれぞれの発光強度の(1つ又は複数の)上記決定した値、(1つ又は複数の)長残光パラメータの上記決定した値を対応する基準値比較することと、(1つ又は複数の)上記決定した値が対応する基準値に十分近い場合すなわち(1つ又は複数の)上記決定した値が対応する基準値前後の範囲内である場合に、セキュリティマークが本物であると判定することと、を含む認証動作が行われる。この認証動作により、セキュリティマークが本物であるか否かに関する結果が得られる。
【0107】
一例として、例えば10%の誤差範囲内で、上記値が予想される所定基準値に十分近い場合は、結果「本物」が得られる。多次元(すなわち、n次元)動作が実行される場合、これは、本物のマークに対して予想される結果/値の範囲を規定するn次元空間とも考えられる。
【0108】
例えば異なる検出器(カメラ)、ユーザによる異なる取り扱い、及び場合によりセキュリティマーク中の残光化合物の設計及び分布の変動等により、ステップa)及びb)で決定した値に至る光強度の測定結果が一定の変動を受ける場合は、確実に本物のセキュリティマークについて確立済みの予想基準値への何らかの変動を許可する必要がある。予想値からの変動としては、±10%又は±5%の範囲が可能である。条件が不十分で単純な機器又は認証場所については、許容される変動が大きく、管理された条件下又はスペクトル及び/若しくは時間分解能特性に優れ、より確実な認証結果を与えられる機器については、許容される変動が小さくなり得る。
【0109】
上記を考慮して、セキュリティマークは、対応する波長領域の任意の使用スペクトル成分の長残光発光を放出可能である必要があり、マークが本物であるかの判定には、(1つ又は複数の)各スペクトルについて得られた(1つ又は複数の)長残光パラメータの(1つ又は複数の)値が用いられることが明らかである。
【0110】
上記概説の通り、本発明の方法はとりわけ、(1つ又は複数の)長残光パラメータの値と、単純な説明に役立つ場合として、(携帯電話又はタブレット)カメラの異なるチャンネル(R、G、B)において観測される発光強度値等、(1つ又は複数の)波長領域の(1つ又は複数の)スペクトル成分に関して観測される対応する初期光強度とに依拠する。この点、第1の波長領域(チャンネルのうちの1つ)の第1のスペクトル成分、第2の波長領域(別のチャンネル)の第2のスペクトル成分、及び第3の波長領域(すなわち、残りのチャンネル)の第3のスペクトル成分をすべて構成する長残光発光を放出可能なマーク中の残光化合物を1つだけ使用することができる。
【0111】
ただし、好適な一態様において、セキュリティマークは、2つ以上の長残光化合物を含み、これら2つ以上の長残光化合物のうちの1つは、第1の波長領域(例えば、カメラのR、G、Bのうちの1つのチャンネル)の第1のスペクトル成分を構成する長残光発光を放出可能であり、第2の長残光化合物は、第2の波長領域(例えば、カメラのR、G、Bチャンネルのうちの別の1つ)の第2のスペクトル成分を構成する残光発光を放出可能である。この場合、セキュリティマークは、その同じエリア(ゾーン)に混合物を構成する2つ以上の残光化合物を含んでいてもよい。一方、例えばロゴ(の一部)、コード(バーコード又はQRコード(登録商標)等)、証印、文字、又は他のグラフィック要素を構成するため、ランダム又は特定のパターンで様々なゾーンに配置された2つ以上の長残光化合物を含んでいてもよい。発光検出器が異なる波長領域(異なるチャンネル)の両放出を同時に検出可能である限り、本発明の方法は、セキュリティマークの同じ空間エリア(ゾーン)の2つ以上の残光化合物の混合物又はセキュリティマークの異なる空間エリア(ゾーン)に存在する2つ以上の長残光化合物のいずれにも利用可能である。
【0112】
[具体的且つ好適な実施形態の説明]
一実施形態において、セキュリティマークは、第1の波長領域及び第2の波長領域と異なる第3の波長領域の長残光発光を放出可能である(項目3に記載の上記方法参照)。
【0113】
本実施形態において、第3のスペクトル成分は、第1及び第2の波長領域それぞれと異なる第3の波長領域に存在するのが好ましく、最長波長まで延びる波長領域は、その他2つの波長領域と重ならないか、又は、一方としか重ならず、最短波長まで延びる波長領域は、その他2つの波長領域と重ならないか、又は、一方としか重ならない。さらに、この追加又は代替として、3つの波長領域はすべて、可視範囲内であるのが好ましく、第1、第2、及び第3の波長領域がカメラの異なるチャンネル(例えば、R、G、及びB)を表すのがさらに好ましい。
【0114】
第1及び第2の波長領域の残光パラメータの値のうちの1つ又は複数に加えて、第3の波長領域の長残光放出に基づく長残光パラメータの値を利用する本実施形態においては、上記方法の信頼性及び堅牢性を向上可能となる。また、潜在的な偽造者は、2つのスペクトル成分のみならず、3つのスペクトル成分について、残光挙動及び残光パラメータの値を模倣する必要がある。これは実現がより困難であるため、本実施形態は、付加的な保護レベルを与える。言い換えると、本発明の方法において3つの長残光化合物を利用することにより、変動性が低下するとともに、偽造者にとっての複雑性が大幅に高くなる。
【0115】
本実施形態において、セキュリティマークは、(A)第1、第2、又は第3の波長領域すべてで発光する1つの残光化合物を含んでいてもよいし、(B)一方が第1、第2、及び第3の波長領域のうちの2つで発光し、もう一方が他方の発光していない別の波長領域で発光する2つの残光化合物を含んでいてもよいし、(C)第1の波長領域でのみ残光発光を放出する残光化合物と、第2の波長領域でのみ残光発光を放出する残光化合物と、第3の波長領域でのみ残光発光を放出する残光化合物とを含んでいてもよい。ケース(B)及び(C)が好ましく、ケース(C)がより好ましい。
【0116】
本発明又は上記実施形態に係るセキュリティマークを認証する方法は、第1の波長領域の第1のスペクトル成分を構成する1つのピーク、第2の波長領域の第2のスペクトル成分を構成する1つのピーク、及び第3の波長領域の第3のスペクトル成分を構成する1つのピーク(採用の場合)で残光発光を放出可能なマークを認証するように採用可能であるのが好ましい。本明細書において、第1及び第2のスペクトル成分の各ピークは、波長に関して分離された100nm以上であり、第1のスペクトル成分の第1の最大ピークは、a)400~550nm、b)460~600nm、又はc)560~700nmから選択される第1の波長領域内に含まれるのが好ましく、第2の波長領域の第2の最大ピークは、領域a)、b)、及びc)から選択される別の波長領域に含まれる。第3のスペクトル成分が用いられる場合は、第1、第2、及び第3のスペクトル成分のうちの第1のものが波長領域a)に含まれ、第1、第2、及び第3のスペクトル成分のうちの第2のものが波長領域b)に含まれ、第1、第2、及び第3のスペクトル成分のうちの第3のものが波長領域c)に含まれるのが好ましい。このような構成において、第1、第2、及び第3のスペクトル成分を構成するピークは、カメラのR、G、Bチャンネルを構成する異なる波長領域に該当し、これにより、適正な検出及び残光パラメータの各値の確実な決定が可能となる。
【0117】
特定の好適な一実施形態において、上記方法は、好ましくは電気通信装置又はタブレットであるカメラを備えた携帯用コンピュータ装置において実装される。その例は、iPhone(登録商標) 5若しくはSamsung Galaxy(登録商標) S5等のスマートフォン又はiPad(登録商標) 2若しくはSamsung Galaxy(登録商標) Tab等のタブレットである。このような装置においては、請求項1及び2に記載のステップを自動的に実行するコンピュータプログラム(「アプリ」)がインストールされていてもよい。また、アプリは、コンピュータ装置のLEDを起動して、少なくとも1つの残光化合物を励起して残光発光を放出するのに用いられる電磁放射の放出を可能にするようにしてもよい。この起動は、0.2~5秒の範囲等、特定の時間に設定することにより、残光化合物の残光放出状態の最小飽和をもたらして、例えば本発明の方法の各ステップが実行される最大5秒の所望の時間フレーム内で残光パラメータの値の決定の信頼性を向上させるようにしてもよい。また、アプリは、特定の所定基準値が格納されていてもよいし、所定基準値を与えるデータベースへの(例えば、インターネットを介した)リモートアクセスにより得られるようになっていてもよい。さらに、アプリは、例えば肯定認証のチェックボックスを含む緑色画面及び否定認証(偽物のセキュリティマーク)の斜線を含む赤色画面等、認証動作の結果に関する可視及び/又は可聴信号を与えるようにしてもよい。この代替又は追加として、対応する音声信号が認証動作の結果に基づいてもたらされるようになっていてもよい。
【0118】
上記方法は、別の如何なる機器も使うことなく、携帯用コンピュータ装置において実装されていてもよい。或いは、周囲光による撹乱を回避するため、フード又はカバーの採用により、携帯用装置のカメラに周囲光が入るのを抑制又は防止するようにしてもよい。これにより、当該方法の信頼性がさらに高くなる。
【0119】
第1、第2、及び任意選択として第3の残光パラメータの第1、第2、及び任意選択として第3の値は、セキュリティマークの同じエリアについて決定されるか、又は、2つ以上の残光化合物が用いられる場合は、場合によりセキュリティマークの異なるエリアについて決定される。これは、残光化合物の残光放出を検出器(カメラ)により検出可能である限り、残光化合物が同じエリアに存在していなくてもよいことを意味する。場合によっては、簡素化のため、1つのエリアだけを解析するのが好ましいと考えられるが、セキュリティマークの異なるエリアに2つ以上の残光化合物を設けることによって、異なる色付けの文字を含む文字コード等、ユーザに魅力的な興味深いデザインが得られる。また、例えばロゴの異なる要素に異なる残光化合物を設けることにより、価値及び排他性の印象を製品に付与可能である。したがって、本発明に採用のセキュリティマークには、例えばバーコード又はQRコード(登録商標)に対して有利となる審美的な印象を与えられるという利点もある。
【0120】
また、本発明の方法は、QRコード(登録商標)等の基準点に対するセキュリティマークの特定の部分のみを解析することにより実装されていてもよい。例えば、QRコード(登録商標)又は他のロゴ若しくは記号の一部にのみ1つ又は複数の残光化合物が設けられていてもよく、他の部分を別の色に保つこと又は肉眼に対して同様の外見及び残光効果を与える化合物を他の部分に設けることも可能である。ただし、認証ステップにおいて、予想基準値に十分近いものではない容易に識別可能である。このような構成により、如何なる偽造者にも別の課題がもたらされる。残光効果の模倣が必要であるのみならず、この効果の観測が必要なエリアの空間的構成の模倣も必要となるためである。したがって、残光効果を与えるセキュリティマークのエリアの空間的構成に関する要件の使用により、別の真贋基準を設けることによってセキュリティレベルを向上可能であるとともに、例えば携帯用コンピュータ装置にインストールされたアプリにおいて、真贋基準の一部として実装されていてもよい。このため、残光パラメータ値を決定可能なエリアの少なくとも一部の間の空間的関係は、認証動作における真贋基準として実装される。
【0121】
上記概説の通り、本発明の方法は、ステップa)の前又は同時にセキュリティマークを励起光で照射するステップをさらに含んでいてもよく、またさらに、(i)第1及び第2の波長領域の励起光の検出を除外又は抑制するフィルタが用いられ、並びに/又は、(ii)第1及び第2の波長領域に含まれる波長の光を励起光が実質的に含まない。これにより、1つ又は複数の残光化合物の放出電子状態の適当な数が保証され、さらに、励起光による検出の如何なる撹乱も回避可能である。
【0122】
以下、添付の図面を参照して、本発明の具体的な実施形態を説明する。ただし、本発明は、これらの具体的な実施形態に限定されない。
【0123】
一実施形態において、認証方法は、携帯電話又はタブレット等の携帯用コンピュータ装置の白色LEDでマークを励起することと、励起を停止することと、残光時間を検出することとを含む。これにより、長残光パラメータの値を決定可能である。
【0124】
励起中、コンピュータ装置は、カメラのプレビューを解析することができる。セキュリティマークの関心領域が強度閾値に達した場合は、アプリが白色LED(励起)をオフする。続く初期時点においては、(第1、第2、及び任意選択として第3の波長領域に対応する)R、G、及びBチャンネルのうちの少なくとも2つ又は全3つにおける各スペクトル成分の検出発光強度の強度値を決定するとともに、検出発光強度間の関連する強度値を計算する(例えば、[Rチャンネル上の強度値]/[Gチャンネル上の強度])。そして、放出をモニタリングし、各波長領域のスペクトル成分に関する観測強度値が所定の閾値を下回るタイミングを決定することによって、例えばこの残光時間から残光パラメータ値を決定する。その後、認証ステップにおいて、残光パラメータ値を所定の予想基準値と比較する。得られる値が所定の予想基準値と同一又は十分に近いことを前提として、コンピュータ装置は、「OK」等の肯定結果或いは「偽物」等の否定結果を与える(
図1参照)。
【0125】
別の実施形態において、認証方法は、白色LEDがオンされた状態でセキュリティマークと接触する携帯用コンピュータ装置を用意することと、コンピュータ装置を点Aから点Bまで移動させることとを含む。Aは、コンピュータ装置がセキュリティマークと接触した際にカメラが存在する点に対応し、Bは、白色LEDがマークを十分に励起した点である。特定の一実施形態においては、コンピュータ装置の加速度計の関与によって、平行移動が開始となった場合に白色LEDのオフ等を行うようにしてもよい。
【0126】
別の実施形態において、認証方法は、カメラフードをセキュリティマーク上に配置することと、コンピュータ装置のカメラをカメラフード上に配置することとを含む。そして、請求項1のステップa)~c)を実行する。
【0127】
任意選択としてのカラーフィルタを使用する場合は、励起前、励起中、及び励起後の発光/放射を測定可能である。フードは、コンピュータ装置と、例えば平坦面の場合のたばこパッケージ上のラベル又は曲面の場合のボトルネック上のラベル等、特定の製品形状に載置されたセキュリティマークとの封止を保証するために用いられていてもよい。
【0128】
別の実施形態において、セキュリティマークは、2つの長残光化合物を含むインクの提供により準秘密的であってもよく、一方の長残光化合物が他方よりもかなり多く存在する(例えば、10:1~5:1の比)。観測者の裸眼は、過剰に存在する残光化合物の残光(すなわち、1つの波長領域)を中心又は唯一として認識する。一方、カメラは、例えばその2つのチャンネル上で、2つの波長領域の両残光化合物の発光残光放出を解析することになる。このような構成は、過剰に存在する残光化合物による支配的な放出が緑色波長領域のスペクトル成分であり、少ない割合で存在する残光化合物による放出が赤色波長領域のスペクトル成分である場合に、特に効率的ではあるものの、逆の構成も考えられる。ただし、赤色が支配的な色である場合は、緑色を「マスク」するため、赤色の質を緑色よりもはるかに高くする必要があることが確認されている。この準秘密的な特徴は、一方のマーカが他方をマスクするものと考えられ、マスキングは裸眼には得られるものと、RGBカメラには得られない。
【0129】
ただし、周囲光(環境因子)が結果に影響を及ぼす可能性がある。したがって、周囲光を抑えて再現可能な残光時間を測定するのが好ましい。
【0130】
周囲光の影響を除去又は抑制するため、1)カメラをマークと接触して配置する、2)
図5に示すように、サンプルの励起又はRGBカメラによる検出の可能性がある周囲光をカメラフードで遮断する、という2つの方法が考えられる。
【0131】
図4に示すような緑色及び赤色の残光化合物を用いた上記例においては、理想として、緑色顔料の濃度が質量の15%を超えず、赤色顔料の濃度が30%を超えないのが好ましい。赤色顔料の濃度が15%を超えず、緑色顔料の濃度が65%を超えていない場合は、RGBカメラの緑色チャンネル上で緑色顔料の長残光放出強度のみが測定され、赤色チャンネル上で赤色顔料の長残光放出強度のみが測定されることが観測されている。例えば、緑色顔料の濃度がおよそ10%の場合は、赤色チャンネル上でも、この緑色顔料による残光の寄与を検出可能である。赤色顔料の濃度がおよそ30%の場合は、緑色チャンネル上でも、この赤色顔料による残光の寄与を検出可能である。
【0132】
本発明の方法に採用のマークは、以下の基準を満たすのが好ましい。
1)マークは、可視範囲外の如何なる波長も本質的に含まない白色光(例えば、携帯電話の白色LED)で励起可能である。これは、白色光励起(例えば、白色LEDの放出)が少なくとも1つの残光化合物の励起波長と重なる必要があることを暗示している(
図2参照)。
2)マークは、可視範囲(400~700nm)の残光発光を放出する。
3)マークは、白色光励起に際して、少なくとも0.5秒、最大5秒の残光時間を示す。
【0133】
さらに、2つ以上の残光化合物を異なる相対量で組み合わせることにより、各相対量について、例えば携帯電話カメラのR、G、及びBチャンネル上に各波長領域の特定の放射時間プロファイルがもたらされる。
【0134】
例えば、一実施形態において、カメラの青色チャンネルにより検出される放出の残光時間が比較的短い特定の相対量の残光化合物とRチャンネルにより検出される放出の残光時間が比較的長い特定の相対量の残光化合物との混合により、残光時間パラメータ値の特定の組又は関係が得られる。これは、残光時間が、放射の強度値が特定の強度閾値を下回るまでの時間であるという事実に起因し、残光化合物の相対量の影響を受ける(過剰に存在する化合物は、少ない割合で存在する化合物よりも高い強度で発光することになる)。このため、セキュリティマークに2つ以上の残光化合物が存在して本発明の方法に利用される場合、それらの関係は、残光化合物の化学的性質のみならず、それぞれの相対量にも依存する。これにより、解析複製することが非常に困難な認証目的の特定の放出プロファイルが作成可能となって、付加的なセキュリティレベルが与えられる。
【0135】
これは
図4にも示すが、この図は、同じ成分の異なる相対量ごとに異なる残光曲線を示している。結果、同じ2つの残光化合物により、複数の異なるキーを作成可能である(
図4)。残光化合物の複数の異なる組み合わせを用いることにより、広い範囲の異なる「キー」を生成可能である。特定化合物の各組み合わせにより、後で認証動作において利用できる非常に特異的な値の集合が得られる。
【0136】
さらに、スペクトル成分間、残光発光が観測される各波長領域間、並びにR、G、及びBチャンネルそれぞれのスペクトル感度間の一致又は重畳は、異なるチャンネル上で決定された残光時間と直接関係する。このパラメータも、複数のキーの作成に重要である。
図3においては、異なるチャンネル(R/G、G/B、R/B、又はR/(G/B))に対応する波長領域の異なる残光発光を与える2つの異なる残光化合物を含むマークの例を提示している。例えば、再現が難しい複雑な信号を有するように、マークは、カメラの異なるチャンネルに対応する異なる波長領域の残光放射を伴う少なくとも2つのマーカを含むのが好ましい。例えば、1つの残光化合物は、およそ530nmを中心とする緑色の広帯域放出を有し、第2のマーカは、およそ650nmを中心とする赤色の広帯域放出を有する(
図3の右上)。2つ以上の残光化合物が異なる減衰特性を示すのが好ましい。
【0137】
上記実施形態において、2つ以上の長残光化合物のスペクトル成分は、カメラの異なるチャンネルに対応する波長領域に存在するため、本発明の方法を携帯用コンピュータ装置において容易に実装可能である。別の実施形態においては、重なる波長領域で発光する2つの化合物の使用も考えられる。一例として、同じ波長領域(例えば、緑色)で発光する異なる減衰特性の2つの残光化合物の組み合わせが挙げられる。これは、基本的に2つの放出の合計である残光パラメータの値となるが、一方で、2つの化合物の相対量及び減衰特性によって決まる。このような挙動は、単一の化合物では模倣できず、認証方法において2つ以上の残光化合物の放出が分解も別個の検出もなされない場合であっても、解析して模倣するには、採用している化合物に関する正確な知識及びそれぞれの正確な比が必要となる。
【0138】
好適な一実施形態において、本発明の方法は、例えば最新の携帯電話(「スマートフォン」)又はタブレット等の携帯用コンピュータ装置において実装されるが、これは、本発明の方法を実装するソフトウェア(「アプリ」)を備えている。実際、コンピュータ装置は、データを収集して解析し、得られた値の所定基準値との比較を含む認証動作を実行する。基準値は、コンピュータ装置のメモリに格納されていてもよく、アプリ自体の一部であってもよいし、リモート(すなわち、インターネット経由)で取得することも可能である。試験マークが基準値に十分近い値を与える場合、アプリケーションは、マークが本物である旨のメッセージを返し、比が対象範囲外の場合、アプリケーションは、マークが偽物である旨のメッセージを返す(
図5も参照)。
【0139】
したがって、本実施形態の場合、前述の項目1~3のいずれか一項に記載のセキュリティマークを認証する方法は、セキュリティマークにより放出された上記長残光発光を検出可能なカメラと、上記セキュリティマークの上記少なくとも1つの長残光化合物の基準濃度値を表す基準値とともにリーダのメモリに格納され、リーダのCPUユニット上で動作する場合に、当該方法の各ステップを実行するように動作可能なソフトウェアとを備えたリーダにおいて実装される。
【0140】
以上から、本発明は、CPUユニット及びメモリを有し、(項目4に記載の)上記方法を実行するソフトウェアを備え、セキュリティマークにより放出された上記長残光発光を検出可能なカメラを備えたリーダであって、メモリに格納された上記ソフトウェアが、CPUユニット上で動作する場合に、上記方法の各ステップを実行するように動作可能であり、当該リーダが、好ましくは携帯用コンピュータ装置、より好ましくは電気通信装置又はタブレットである、リーダにも関係する。このリーダは、好ましくは励起光を配光して、セキュリティマークの上記少なくとも1つの長残光化合物に上記長残光発光を放出させ得る光源、好ましくはLEDを備えた携帯電話であり、光源による励起光でセキュリティマークを照射するように動作可能であり、上記ソフトウェアが、当該リーダのCPUユニット上で動作する場合に、光源による励起光でセキュリティマークを照射する予備ステップを実行可能である。
【0141】
一実施形態において、スマートフォンは、データを収集してサーバに送信する。任意選択としては、サーバからの応答が認証方法において実行されるようになっていてもよい。
【0142】
また、この認証には、他のセキュリティ機能又は製品固有の特性との照合を含んでいてもよい。例えば、認証対象のマークを有する製品は、シリアル番号、バーコード、又はQRコード(登録商標)等、製品又は品目固有のコードを備えていてもよい。これにより、より高レベルのセキュリティが得られる。本発明の方法で得られた値は、この製品又は品目固有のコードと後で別途照合可能なためである。例えば、本発明の対応する2つ以上の異なるQRコード(登録商標)及び対応する2つ以上のセキュリティマークによって、2群以上の製品が識別されるようになっていてもよい。そして、セキュリティマークは、肉眼に対して同一又は同様の光学的外見を与えるものの、例えば残光パラメータの異なる値を生じるように設計されていてもよい。所与のマークから得られた値は、所定の基準値と比較されるのみならず、正しいQRコード(登録商標)の有無と関連付けられるようになっていてもよい。これにより、製品又は群固有の認証システムを実現可能である。
【0143】
当然のことながら、このような製品又は品目固有の認証は、セキュリティマークにも同様に存在していてもよい。すなわち、セキュリティマークは、エリアプリント、記号、グラフィック要素、ロゴ、又は文字の形態を取り得る一方、バーコード又はQRコード(登録商標)等、コード又は製品情報の形態であってもよい。当然のことながら、マークは、このようなコードの全体を構成していてもよいし、その一部のみを構成していてもよい。
【0144】
一実施形態において、マークは、残光効果を与えるように設計された1つ又は複数のエリアのほか、黒色及び白色の領域を含む。そして、黒色及び白色の領域を使用して、検出された発光強度の値を正規化又は校正することにより、残光発光ではない放射を考慮又は除去するようにしてもよい。
【0145】
本発明の方法は、少なくとも1つ、好ましくは2つ以上の残光化合物を含むセキュリティマークの使用により実現可能である。また、いくつかの実施形態において、マークは、別の発光又は非発光染料を含むことができ、いくつかの実施形態においては、有機色素等の蛍光化合物の採用により、白色LED励起中の放射プロファイルを修正すると同時に、裸眼により確認可能な公然のセキュリティ機能を提供するのが好ましいと考えられる。
【0146】
したがって、本発明の一実施形態によれば、項目1~3のいずれか一項に記載のセキュリティマークを認証する方法は、当該方法のステップa)及びb)が、サーバCPUユニットと上記少なくとも1つの長残光化合物の基準濃度値を表す上記基準値を格納するデータベースとを有するサーバに通信リンクを介してデータを送信するように動作可能であり通信手段を備えたリーダであり、セキュリティマークにより放出された上記長残光発光を検出可能なカメラと、リーダのメモリに格納され、リーダのCPUユニット上で動作する場合に、当該方法の上記ステップa)及びb)を実行するように動作可能なソフトウェアとを備えた、リーダにおいて実装され、
当該方法のステップa)及びb)の完了により、リーダが、サーバに通信リンクを介して、検出された発光強度の上記決定した値及び長残光パラメータの上記決定した値を送信し、
サーバCPUユニットが、当該方法のステップc)に従って、データベースに格納された上記少なくとも1つの長残光化合物の基準濃度値を表す対応基準値に対して、リーダから受信した決定した値の比較を実行し、比較の結果に基づいて、セキュリティマークが本物であると判定する方法である。
【0147】
一変形例において、項目4又は5に記載のセキュリティマークを認証する方法は、励起光を配光して、セキュリティマークの上記少なくとも1つの長残光化合物に上記長残光発光を放出させ得る光源、好ましくはLEDを備えたリーダを使用し、リーダのCPUユニット上で動作する場合に、光源による励起光でセキュリティマークを照射する予備ステップを含む。セキュリティマークにより放出された長残光発光の上記波長領域は、少なくとも部分的に可視範囲に存在可能であり、上記カメラが、RGBダイオードを備え、上記光源が、白色LEDであり、第1の波長領域の長残光発光が、カメラのR、G、及びBから選択される第1のチャンネル上で検出される。本実施形態の一変形例において、第2の波長領域の長残光発光は、第1のチャンネルと異なるカメラのR、G、及びBから選択される第2のチャンネル上で検出される。別の変形例において、第3の波長領域の長残光発光は、第1及び第2のチャンネルと異なるカメラのR、G、及びBから選択される第3のチャンネル上で検出される。
【0148】
以上から、本発明は、CPUユニット及びメモリを有し、メモリに格納され、CPUユニット上で動作する場合に、項目1~3のいずれか一項に記載の方法のステップa)及びb)を実行するように動作可能なソフトウェアを備え、セキュリティマークにより放出された上記長残光発光を検出可能なカメラを備え、サーバに通信リンクを介してデータを送信するように動作可能な通信手段を備え、上記方法のステップa)及びb)の完了時に、サーバに通信リンクを介して、検出された発光強度の上記決定した値及び長残光パラメータの上記決定した値を送信するように動作可能であり、好ましくは携帯用コンピュータ装置、より好ましくは電気通信装置又はタブレットである、リーダにも関する。一変形例において、請求項14に記載のリーダは、好ましくは励起光を配光して、セキュリティマークの上記少なくとも1つの長残光化合物に上記長残光発光を放出させ得る光源、好ましくはLEDを備えた携帯電話であり、光源による励起光でセキュリティマークを照射するように動作可能であり、上記ソフトウェアが、当該リーダのCPUユニット上で動作する場合に、光源による励起光でセキュリティマークを照射する予備ステップを実行可能である。
【0149】
一変形例において、リーダは、上記波長領域が少なくとも部分的に可視範囲にあるセキュリティマークからの長残光発光を検出可能であり、上記カメラが、RGBダイオードを備え、上記光源が、白色LEDであり、R、G、及びBから選択される第1のチャンネル上で第1の波長領域の長残光発光を検出可能である。任意選択として、カメラは、第1のチャンネルと異なるR、G、及びBから選択される第2のチャンネル上で第2の波長領域の長残光発光を検出可能である。カメラは、第1及び第2のチャンネルと異なるR、G、及びBから選択される第3のチャンネル上で第3の波長領域の長残光発光をさらに検出可能である。
【0150】
以上では、携帯用コンピュータ装置における実装を説明したが、本発明の方法は、(例えば、管理環境/光学実験室においてユーザ非依存性の白色LED励起及び高解像度カメラ検出を用いることにより)例えばより高感度の検出ツール又はより高いフレームレートを含むことによって、環境条件が測定結果の変動性に及ぼす影響を抑えるより高度な機器によっても実現可能であることに留意されたい。これにより、高速及び低速の発光不活性化寄与(
図5及び
図6に示す二重指数関数)を含む特定の挙動を有する検出された放射プロファイル-時間発展(持続的なリン光強度時間発展)をより詳細に解析可能となる。
【0151】
また、本発明は、長残光効果を与えるように設計され、少なくとも1つの長残光化合物を含み、長残光発光を放出可能なセキュリティマークを認証するシステムであり、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法の各ステップを実行するように動作可能な、システムであって、
サーバCPUユニットと、上記少なくとも1つの長残光化合物の基準濃度値を表す上記基準値を格納するデータベースとを有するサーバと、
CPUユニットと、メモリと、セキュリティマークにより放出された上記長残光発光を検出可能なカメラと、メモリに格納され、CPUユニット上で動作する場合に、上記方法のステップa)及びb)を実行するように動作可能なソフトウェアとを備え、サーバに通信リンクを介して、上記方法のステップa)及びb)の完了により得られる検出された発光強度の上記決定した値及び長残光パラメータの上記決定した値を送信するように動作可能な通信手段を備えたリーダと、
を備え、
サーバCPUユニットが、当該方法のステップc)に従って、データベースに格納された上記少なくとも1つの長残光化合物の基準濃度値を表す対応基準値に対して、リーダから受信した決定した値の比較を実行し、比較の結果に基づいて、セキュリティマークが本物であると判定可能であるシステムを含む。このシステムは、励起光を配光して、セキュリティマークの上記少なくとも1つの長残光化合物に上記長残光発光を放出させ得る光源、好ましくはLEDを備えたリーダを有するのが好ましく、ソフトウェアは、リーダのCPUユニット上で動作する場合に、リーダの光源による励起光でセキュリティマークを照射する予備ステップを実行可能である。
【0152】
一変形例において、セキュリティマークにより放出された長残光発光の上記波長領域は、少なくとも部分的に可視範囲にあり、上記カメラが、RGBダイオードを備え、上記光源が、白色LEDであり、カメラが、R、G、及びBから選択される第1のチャンネル上で第1の波長領域の長残光発光を検出可能である。カメラは、第1のチャンネルと異なるR、G、及びBから選択される第2のチャンネル上で第2の波長領域の長残光発光を検出可能である。任意選択として、カメラは、第1及び第2のチャンネルと異なるR、G、及びBから選択される第3のチャンネル上で第3の波長領域の長残光発光を検出可能である。