(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】留置針
(51)【国際特許分類】
A61M 25/06 20060101AFI20220112BHJP
A61M 39/06 20060101ALI20220112BHJP
A61M 5/158 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
A61M25/06 500
A61M39/06 122
A61M5/158 500H
(21)【出願番号】P 2017220366
(22)【出願日】2017-11-15
【審査請求日】2020-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390029676
【氏名又は名称】株式会社トップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河内 一成
(72)【発明者】
【氏名】中川 大輔
【審査官】上田 真誠
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0083162(US,A1)
【文献】国際公開第2015/133279(WO,A1)
【文献】特表2009-511193(JP,A)
【文献】国際公開第2012/133428(WO,A1)
【文献】特開2010-099457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/06
A61M 39/06
A61M 5/158
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内針が挿通可能な外針と、
前記外針の基端に設けられた筒状の外針基と、
前記内針が挿通可能であり、且つ前記内針が抜かれた後に血液が前記外針基から漏れることを防止する止血弁と、
を備える留置針であって、
前記外針基内に基端位置から先端位置へと前進可能な内筒部材と、
前記止血弁は、前記内筒部材の内部に挿入され、前記内筒部材とともに基端位置から先端位置へと前進可能であって、
前記内筒部材の外周面と前記外針基の内周面との間に位置させて、前記外針基内の空気を通過させ、前記外針基内の血液の通過を抑制又は阻止する環状の通気フィルタと、が配置され、
前記内筒部材の外周面には、
前記内筒部材の基端から先端に向かって切り欠かれた切欠部または前記内筒部材の内周面と外周面とを連通させるように切り欠かれた切欠部によって流路が形成され、
前記外針基内において、前記通気フィルタの先端よりも前記外針基の先端側の領域を先端領域として、
前記流路は、前記外針基の基端側から供給される液体が流れ込み、且つ前記基端位置では、前記流路の先端が前記通気フィルタの先端と一致またはこれより基端側に配置されることで前記通気フィルタによって前記先端領域との接続が阻止され、前記先端位置では、前記流路の先端が前記通気フィルタの先端より先端側に配置されることで前記先端領域と接続されることを特徴とする留置針。
【請求項2】
請求項1に記載の留置針であって、
前記外針基の内周面には、前記通気フィルタの位置決めのために径方向内方へ突出した突出部が設けられ、
前記通気フィルタの先端縁は、前記円筒部材が少なくとも前記先端位置に位置するときに、前記突出部に係止されることを特徴とする留置針。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆止弁を備える留置針に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内針を挿通可能な外針と、外針の基端に設けられた外針基と、切込部を有する弾性部材からなる止血弁と、止血弁と外針基の内周面との間に形成され外針基の内周面と止血弁とで画成される領域内の空気を外針基の外へ逃すための通気路と、を備える留置針が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この留置針は、内針を止血弁の切込部を通し外針の中に挿通させた状態で、患者の血管に刺すと、外針及び外針基内に流れ込む血液(フラッシュバック)によって外針及び外針基内の空気が通気路から排出される。そして、外針基内に血液が流れ込むことにより外針が血管に刺し込まれたことを確認した後、内針を抜く。そして、輸液バッグに接続された輸液ラインのコネクタを外針基に接続して止血弁を開弁させて輸液や薬液などの液体を患者に供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の留置針では、患者に供給される液体は止血弁の切込部を開弁させて供給されるため、外針基の内周面(特に止血弁側)にフラッシュバックの血液が残ってしまう虞があり、血液の滞留による血栓の発生、又は雑菌の繁殖、血液が残っている外針基を視認した患者などに不快感を与えるなどの問題が生じる虞がある。
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、外針基にフラッシュバックの血液が残り難い留置針を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]上記目的を達成するため、本発明は、
内針が挿通可能な外針(例えば、実施形態の外針2。以下同一。)と、
前記外針の基端に設けられた筒状の外針基(例えば、実施形態の外針基3。以下同一。)と、
前記内針が挿通可能であり、且つ前記内針が抜かれた後に血液が前記外針基から漏れることを防止する止血弁(例えば、実施形態の止血弁4。以下同一。)と、
を備える留置針であって、
前記外針基内に基端位置から先端位置へと前進可能な内筒部材(例えば、実施形態の内筒部材6。以下同一。)と、
前記内筒部材の外周面と前記外針基の内周面との間に位置させて、前記外針基内の空気を通過させ、前記外針基内の血液の通過を抑制又は阻止する環状の通気フィルタ(例えば、実施形態の通気フィルタ14。以下同一。)と、が配置され、
前記止血弁は前記内筒部材に設けられ、
前記外針基内において、前記通気フィルタの先端よりも前記外針基の先端側の領域を先端領域(例えば、実施形態の先端領域16。以下同一。)として、
前記内筒部材の外周面には、前記外針基の基端側から供給される液体が流れ込み、且つ前記基端位置では前記通気フィルタによって前記先端領域との接続が阻止され、前記先端位置では前記先端領域と接続される流路(例えば、実施形態の切欠部9。以下同一。)が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、内筒部材が基端位置に位置するときには、内筒部材の外周面に設けられた流路は先端領域と接続されておらず、止血弁によって血液が外針基からこぼれることを防止することができる。そして、輸液や薬液などの液体を患者に供給するときには、内筒部材を先端位置へ移動させることにより、流路の先端が通気フィルタよりも先端側に位置して、内筒部材の外周面に設けられた流路と先端領域とが接続され、液体が流路及び先端領域を介して止血弁の周りから外針を通過して患者に供給される。
【0009】
したがって、従来の留置針のように弁体の切込部から液体が供給されず、止血弁の周りから液体が供給されることにより、外針基の内周面(特に止血弁側)に残り易いフラッシュバックの血液を患者に供給される液体とともに患者に戻すことができ、外針基にフラッシュバックの血液が残ることを抑制して、患者などへ不快感を与えることを抑制することができる。
【0010】
[2]また、本発明においては、前記外針基の内周面には、前記通気フィルタの位置決めのために径方向内方へ突出した突出部(例えば、実施形態の突出部15。以下同一。)が設けられ、前記通気フィルタの先端縁は、前記内筒部材が少なくとも前記先端位置に位置するときに、前記突出部に係止されることが好ましい。かかる構成によれば、通気フィルタを外針基内に配置するときに、内筒部材が先端位置のときの流路よりも先方へ誤って配置することを防止でき、位置決めを容易に行うことができる。
【0011】
[3]また本発明においては、前記流路は、前記内筒部材の基端から先端に向かって切り欠かれた切欠部(例えば、実施形態の切欠部9。以下同一。)で構成することができる。かかる構成によれば、内筒部材を先端位置へ移動させて切欠部を大径部と接続させることによって、外針基にフラッシュバックの血液が残ることを抑制することができる。
【0012】
[4]また、本発明においては、前記切欠部は、前記内筒部材の内周面と外周面とを連通させるように切り欠かくこともできる。かかる構成によれば、外針基の基端から供給される輸液や薬液などの液体を、内針を挿通可能な内筒部材の内側を利用して患者に供給することができ、液体供給時の抵抗を軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】本実施形態の留置針の内筒部材が基端位置に位置した状態を示す断面図。
【
図4】本実施形態の留置針の内筒部材が先端位置に位置した状態を示す斜視図。
【
図5】本実施形態の留置針の内筒部材が先端位置に位置した状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態の留置針を
図1から
図4を参照して説明する。
【0015】
図1の斜視図及び
図2の分解図に示すように、本実施形態の留置針1は、内針(図示省略)が挿通可能な外針2と、外針2の基端に設けられた筒状の外針基3と、内針が挿通可能であり、且つ内針が抜かれた後にフラッシュバックの血液が外針基3から漏れることを防止する止血弁4と、外針基3内の空気を外針基3の基端側から外針基3の外へ通過させ外針基3内のフラッシュバックの血液の通過を抑制又は阻止する環状の通気フィルタ14と、を備える。通気フィルタ14は、フラッシュバックの血液の通過を抑制し、空気の通過は許容できるように多孔質体(例えば、ポリエチレンの焼結体またはポリウレタン等)などで形成されている。また、通気フィルタ14は、内筒部材6の外周面と外針基3の内周面との間に配置されている。
【0016】
外針基3内には、円筒状の内筒部材6が配置されている。内筒部材6は、外針基3内で外針基3の先端方向へ移動可能であり、実施形態の説明においては、先端方向へ移動する前の初期の位置を基端位置、先端方向への前進移動が完了した位置を先端位置、として定義する。
【0017】
止血弁4は、円柱状の弾性部材で形成されており、中央部に先端から基端まで切り込まれた切込部4aが設けられている。図示省略した内針はこの切込部4aを通過して外針2に挿通される。また、止血弁4は、内筒部材6内に挿入されている。
【0018】
外針基3の内周面には、通気フィルタ14の位置決めのために径方向内方へ突出する突出部15が設けられている。突出部15には、内筒部材6が少なくとも先端位置に位置するときに、通気フィルタ14の先端縁が係止される。このとき、内筒部材6が先端位置に位置していない状態においては、通気フィルタ14は、切欠部9と後述する先端領域16との接続を阻止するように位置させる必要がある。
【0019】
このように通気フィルタ14を突出部15に係止させることにより、内筒部材6が先端位置のときの切欠部9よりも先方へ通気フィルタ14を誤って配置することを防止でき、位置決めを容易に行うことができる。
【0020】
突出部15の内径は、内筒部材6の外径よりも大きく設定されており、通気フィルタ14から外針基3内の空気が抜けることを突出部15によって阻止されないように構成されている。なお、突出部15は、環状でなくてもよく、周方向に所定の間隔を存して設けられていてもよい。
【0021】
内筒部材6には、基端から先端に向かって切り欠かれた切欠部9が一対形成されている。切欠部9は、内筒部材6の内周面と外周面とを連通させるように切り欠かれている。なお、切欠部9は輸液や薬液などが外針基3の基端側から供給されるように内筒部材6の外周面に形成されていればよく、必ずしも切欠部9が内周面まで達している必要はない。止血弁4は切欠部9よりも先端側に位置している。また、内筒部材6の内周面には、リブ6aが設けられている。リブ6aにより、切欠部9を形成したことによる強度低下を補っている。
【0022】
ここで、外針基3内において、通気フィルタ14の先端よりも外針基3の先端側の領域を先端領域16とする。
【0023】
図3に示すように、内筒部材6が外針基3内で基端位置に位置している場合には、通気フィルタ14によって切欠部9と先端領域16との接続が阻止される。逆に、
図4の斜視図及び
図5の断面図に示すように、内筒部材6が外針基3内で先端位置に位置している場合には、切欠部9と先端領域16とが接続される。
図5の点線矢印は液体の流れを示している。
【0024】
第1実施形態の留置針1によれば、内筒部材6が基端位置に位置するときには、内筒部材6の外周面に設けられた切欠部9が先端領域16との接続が通気フィルタ14によって阻止され、止血弁4によってフラッシュバックの血液が外針基3からこぼれることを防止することができる。そして、輸液や薬液などの液体を患者に供給するときには、外針基3に接続する雄コネクタ11などを利用して内筒部材6を押圧して先端位置へ移動させることにより、内筒部材6の外周面に設けられた切欠部9と先端領域16とが接続され、液体が切欠部9及び先端領域16を介して止血弁4の周りから外針2を通過して患者に供給される。
【0025】
したがって、従来の留置針のように止血弁4の切込部から液体が供給されることなく、止血弁4の周りから液体が供給されることにより、外針基3の内周面(特に止血弁4側)に残り易いフラッシュバックの血液を患者に供給される液体と共に患者に戻すことができ、外針基3にフラッシュバックの血液が残ることを抑制して、血液の滞留による血栓の発生または雑菌の繁殖、患者などへ不快感を与えることを抑制することができる。本実施形態では、切欠部9が本発明の流路に該当する。
【0026】
また、切欠部9が内筒部材6の内周面と外周面とを連通させるように切り欠かれていることにより、外針基3の基端から供給される輸液や薬液などの液体を、内針を挿通可能な内筒部材6の内側の空間も利用して患者に供給することができ、液体供給時の抵抗を軽減させることができる。
【0027】
なお、本実施形態においては、内筒部材6内に止血弁4を設けたものを説明したが、本発明の止血弁はこれに限らず、例えば、内筒部材6の先端縁に先方へ突出する突出部を形成し、この突出部の先端外周面に径方向外方へ膨らむように張り出した膨出部を形成して、この膨出部および内筒部材6の先端開口を通常時は閉塞するように覆う断面C字状の止血弁を内筒部材6の先端に設けてもよい。
【0028】
また、本実施形態においては、通気フィルタ14を突出部15で位置決めするものを説明した。しかしながら、本発明の留置針の構成はこれに限らず、例えば、突出部を設けることなく通気フィルタ14を圧入などによって外針基3の内周面に固定させるだけであってもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 留置針
2 外針
3 外針基
4 止血弁
4a 切込部
6 内筒部材
6a リブ
9 切欠部(流路)
11 雄コネクタ
14 通気フィルタ
15 突出部
16 先端領域