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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】端末装置および通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04J 3/00 20060101AFI20220112BHJP
   H04M 1/00 20060101ALI20220112BHJP
   H04M 11/00 20060101ALI20220112BHJP
   H04W 4/10 20090101ALI20220112BHJP
   H04W 72/02 20090101ALI20220112BHJP
   H04W 72/04 20090101ALI20220112BHJP
   H04W 92/18 20090101ALI20220112BHJP
【FI】
H04J3/00 H
H04M1/00 R
H04M11/00 302
H04W4/10
H04W72/02
H04W72/04 131
H04W92/18
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017166615
(22)【出願日】2017-08-31
(65)【公開番号】P2019047240
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2020-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】小池 浩史
【審査官】原田 聖子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0157958(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 3/00
H04W 4/10
H04W 92/18
H04W 72/02
H04W 72/04
H04M 1/00
H04M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信チャンネルの複数のタイムスロットのいずれかを用いて通信を行う通信部と、
ユーザの送信操作を受け付ける操作部と、
前記通信部が自端末装置宛ではない受信信号を受信しているときに前記操作部が送信操作を受け付けた場合に、当該受信信号のタイムスロットが初期設定された送信用のタイムスロットと同じであるか判定する判定部と、
前記判定部により前記自端末装置宛ではない受信信号のタイムスロットが前記初期設定された送信用のタイムスロットと同じであると判定され、且つ、前記判定の後所定時間内に前記操作部が再び送信操作を受け付けた場合に、送信用のタイムスロットを切り替えて前記通信部に送信を実行させる切り替え部と、
を備えることを特徴とする端末装置。
【請求項2】
前記判定部により前記自端末装置宛ではない受信信号のタイムスロットが前記初期設定された送信用のタイムスロットと同じであると判定された場合に、送信が非実行であることをユーザに通知する通知部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の端末装置。
【請求項3】
前記切り替え部は、前記通信部による送信が終了したときの送信用のタイムスロットが前記初期設定された送信用のタイムスロットと異なる場合に、送信用のタイムスロットを前記初期設定された送信用のタイムスロットに切り替えることを特徴とする請求項1または2に記載の端末装置。
【請求項4】
通信チャンネルの複数のタイムスロットのいずれかを用いて通信を行う端末装置での通信方法であって、
ユーザの送信操作を受け付けるステップと、
自端末装置宛ではない受信信号を受信しているときに送信操作を受け付けた場合に、当該受信信号のタイムスロットが初期設定された送信用のタイムスロットと同じであるか判定するステップと、
前記自端末装置宛ではない受信信号のタイムスロットが前記初期設定された送信用のタイムスロットと同じであると判定され、且つ、前記判定の後所定時間内に再び送信操作を受け付けた場合に、送信用のタイムスロットを切り替えて送信を実行するステップと、
を備えることを特徴とする通信方法。
【請求項5】
前記自端末装置宛ではない受信信号のタイムスロットが前記初期設定された送信用のタイムスロットと同じであると判定された場合に、送信が非実行であることをユーザに通知するステップをさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の通信方法。
【請求項6】
送信が終了したときの送信用のタイムスロットが前記初期設定された送信用のタイムスロットと異なる場合に、送信用のタイムスロットを前記初期設定された送信用のタイムスロットに切り替えるステップをさらに備えることを特徴とする請求項4または5に記載の通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信技術に関し、特に業務用無線による通信を実行可能な端末装置および通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
TDMA(Time Division Multiple Access)技術を用いて、複数のタイムスロットのいずれかを用いて通信を行う無線通信装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この無線通信装置は、デフォルトタイムスロットが利用できない場合、利用可能なタイムスロットを検索し、利用可能なタイムスロットを一時的に選択して、通信を開始する。デフォルトタイムスロットが利用可能となった場合に、無線通信装置は、デフォルトタイムスロットを再選択する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2010/0157958号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記技術では、デフォルトタイムスロットが利用できない場合に利用可能なタイムスロットを検索するので、複雑な判定や処理が必要である。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡素な処理で送信用のタイムスロットを切り替えて送信を実行できる端末装置および通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の端末装置は、通信チャンネルの複数のタイムスロットのいずれかを用いて通信を行う通信部と、ユーザの送信操作を受け付ける操作部と、通信部が自端末装置宛ではない受信信号を受信しているときに操作部が送信操作を受け付けた場合に、当該受信信号のタイムスロットが初期設定された送信用のタイムスロットと同じであるか判定する判定部と、判定部により自端末装置宛ではない受信信号のタイムスロットが初期設定された送信用のタイムスロットと同じであると判定され、且つ、判定の後所定時間内に操作部が再び送信操作を受け付けた場合に、送信用のタイムスロットを切り替えて通信部に送信を実行させる切り替え部と、を備える。
【0007】
本発明の別の態様は、通信方法である。この方法は、通信チャンネルの複数のタイムスロットのいずれかを用いて通信を行う端末装置での通信方法であって、ユーザの送信操作を受け付けるステップと、自端末装置宛ではない受信信号を受信しているときに送信操作を受け付けた場合に、当該受信信号のタイムスロットが初期設定された送信用のタイムスロットと同じであるか判定するステップと、自端末装置宛ではない受信信号のタイムスロットが初期設定された送信用のタイムスロットと同じであると判定され、且つ、判定の後所定時間内に再び送信操作を受け付けた場合に、送信用のタイムスロットを切り替えて送信を実行するステップと、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡素な処理で送信用のタイムスロットを切り替えて送信を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る通信システムの構成を示すブロック図である。
図2図1の端末装置の構成を示すブロック図である。
図3図1の端末装置の処理を示すフローチャートである。
図4図1の端末装置の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。実施の形態は、業務用無線による通信を実行可能な端末装置に関する。業務用無線は、音声通信を実行する。音声通信の一例がPTT(Push to Talk)である。PTTでは、ユーザが、通話開始時にPTTボタンを押し、通話終了時にPTTボタンを解放する。また、業務用無線では、複数の端末装置によってグループを形成することも可能である。
【0013】
業務用無線の通信方式の規格として、DMR(Digital Mobile Radio)が知られている。DMRは、1つの通信チャンネルに2つのタイムスロットが割り当てられたTDMAの規格である。複数の端末装置は、1つの通信チャンネルの2つのタイムスロットのいずれかを用いて通信を行う。2つのグループにそれぞれ異なるタイムスロットを割り当てることで、1つの通信チャンネルを共用して2つのグループがそれぞれ個別に通信を実行可能である。既述のように、簡素な処理で送信用のタイムスロットを切り替えることが望まれる。
【0014】
そこで本実施の形態に係る端末装置では、自端末装置宛ではない受信信号を受信しているときにPTTボタンによる送信操作を受け付けた場合に、当該受信信号のタイムスロットが初期設定された送信用のタイムスロットと同じであるか判定する。そして、自端末装置宛ではない受信信号のタイムスロットが初期設定された送信用のタイムスロットと同じであると判定され、且つ、再びPTTボタンによる送信操作を受け付けた場合に、送信用のタイムスロットを切り替えて通信部に送信を実行させる。
【0015】
図1は、実施の形態に係る通信システム100の構成を示すブロック図である。通信システム100は、端末装置10と総称される第1端末装置10a、第2端末装置10b、第3端末装置10c、第4端末装置10dを備える。端末装置10の数は、「4」に限定されない。
【0016】
端末装置10は、他の端末装置10と業務用無線による通信を実行可能な無線端末である。ここでは、通信として通話がなされるものとする。なお、データ通信がなされてもよい。業務用無線については公知のDMR技術が使用されればよいので、ここでは詳細な説明を省略する。例えば、第1端末装置10aと第2端末装置10bが第1グループ12を形成し、第3端末装置10cと第4端末装置10dが第2グループ14を形成する。このように、複数の端末装置10が含まれたグループが複数形成されている。1つのグループに含まれる端末装置10の数は、「2」に限定されない。グループ毎に、グループに含まれたひとつの端末装置10から、当該グループに含まれた残りの端末装置10への通信がなされる。前述のように、DMR技術では、1つの通信チャンネルが2つのタイムスロットを有するため、1つの通信チャンネル、すなわち1つの周波数で2回線の半二重の通信を行うことが可能である。そのため、第1グループ12の複数の端末装置10が通信に用いる通信チャンネルは、第2グループ14の複数の端末装置10が通信に用いる通信チャンネルと同じ場合がある。以下、2つのタイムスロットを、タイムスロット1、タイムスロット2と呼ぶ。
【0017】
なお、複数の端末装置10は、図示しない基地局装置に接続してもよい。この場合、複数の端末装置10は、基地局装置を介して互いに通信可能である。基地局装置は、グループに対して、上りチャネルと下りチャネルを割り当てる。このような状況下において、グループ中の1つの端末装置10が、上りチャネルにて信号を送信し、グループ中の他の端末装置10が、下りチャネルにて信号を受信する。上りチャネルと下りチャネルは、それぞれ、タイムスロット1、タイムスロット2を有する。
【0018】
図2は、端末装置10の構成を示すブロック図である。端末装置10は、通信部20、受信処理部22、送信処理部24、スピーカ26、マイク28、操作部30を含む。送信処理部24は、送話部40、切り替え部42、判定部44、通知部46を含む。
【0019】
通信部20は、DMRに対応し、通信チャンネルの2つのタイムスロットのいずれかを用いて、自グループの他の端末装置10と通信を行う。通信部20は、他の端末装置10から信号を受信するとともに、他の端末装置10に信号を送信する。
【0020】
受信処理部22は、通信部20で受信された受信信号を検出する。通信部20で受信された受信信号は、自グループの送信側の他の端末装置10から送信される場合もあれば、自グループの通信チャンネルを共用している他グループの他の端末装置10から送信される場合もある。受信処理部22は、受信信号に含まれている識別子に基づいて、受信信号が自端末装置10宛であるか否か判定する。識別子は、端末装置IDを含む。端末装置IDは、端末装置10を一意に識別する番号である。受信処理部22は、受信信号に含まれている端末装置IDが自端末装置10の端末装置IDに一致する場合、受信信号が自端末装置10宛であると判定し、受信信号に含まれている端末装置IDが自端末装置10の端末装置IDに不一致の場合、受信信号が他の端末装置10宛であると判定する。識別子は、予め定められた番号であるカラーコードなどをさらに含んでもよい。また、受信処理部22は、受信信号に含まれているタイムスロットの情報をもとに、受信信号のタイムスロットがタイムスロット1とタイムスロット2のいずれであるか判定する。
【0021】
受信処理部22は、端末装置10の電源がオンされた場合、音声信号のミュートを行う。受信処理部22は、受信信号が自端末装置10宛でない場合、音声信号のミュートを継続する。音声信号のミュートにより、スピーカ26は音声を出力しない。一方、受信処理部22は、受信信号が自端末装置10宛である場合、音声信号のミュートを解除して、受信信号に基づいて復調し音声信号を再生する。この処理は、受信信号のタイムスロットがタイムスロット1であってもタイムスロット2であっても実行される。具体的には、受信処理部22は、この場合、通信部20に受信信号の増幅、周波数変換、復調、復号等を実行させる。通信部20は、処理の結果(以下、これもまた「音声信号」という)を受信処理部22に出力する。受信処理部22は、音声信号を再生する。受信処理部22は、音声信号をスピーカ26に出力する。スピーカ26は、受信処理部22からの音声信号を受けつけ、音声信号を音声として出力する。スピーカ26は、報知音等も出力する。
【0022】
受信処理部22は、受信信号を検出したか否かの情報、受信信号が自端末装置10宛であるか否かの情報、受信信号のタイムスロットがタイムスロット1とタイムスロット2のいずれであるかの情報を、送信処理部24に出力する。
【0023】
マイク28は、通話の際に、ユーザからの音声を受け付け、音声を音声信号に変換する。マイク28は、音声信号を送信処理部24へ出力する。操作部30は、ユーザの送信操作を受け付ける。操作部30は、PTTボタンに相当し、PTTによって音声を送信する場合に、ユーザによって押し下げられる。また、音声を送信している間にわたって、PTTボタンは押し下げ続けられる。PTTボタンが押し下げられることは、音声信号を送信するための送信操作を受けつけることに相当する。PTTボタンは、押し下げられている間にわたって、指示を送信処理部24に出力し続ける。
【0024】
送話部40は、操作部30からの指示を受けつけている場合に、マイク28からの音声信号を入力する。送話部40は、音声信号をアナログ信号からデジタル信号に変換し、デジタル信号に変換した音声信号(以下、これもまた「音声信号」という)を通信部20に出力する。一方、送話部40は、操作部30からの指示を受けつけていない場合に、このような処理を実行しない。通信部20は、送話部40からの音声信号を入力し、タイムスロット1またはタイムスロット2を用いて、音声信号を受信側の他の端末装置10に送信する。音声信号の送信のために、通信部20は、符号化、変調、周波数変換、増幅等を実行する。
【0025】
通信部20による音声信号の送信、および、送信用のタイムスロットとしてどちらのタイムスロットを用いるかは、受信信号に応じて、切り替え部42により以下のように制御される。ここでは、説明を明瞭にするために、(1)受信信号を未検出の場合、(2)検出された受信信号が自端末装置10宛の場合、(3)検出された受信信号が自端末装置10宛ではない場合の順に説明する。
【0026】
(1)受信信号を未検出の場合
送信処理部24は、初期設定された送信用のタイムスロットを記憶している。以下、初期設定された送信用のタイムスロットは、タイムスロット1である一例について説明するが、タイムスロット2であってもよい。切り替え部42は、受信処理部22が受信信号を未検出であり、且つ、操作部30が送信操作を受け付けた場合に、初期設定された送信用のタイムスロットであるタイムスロット1で通信部20に送信を実行させる。
【0027】
(2)検出された受信信号が自端末装置10宛の場合
受信信号を検出した場合に、受信処理部22は、通信部20に対し復号化を指示し、復号化した信号によりタイムスロットの判定を行う。切り替え部42は、受信信号が自端末装置10宛であり、受信信号の受信終了から所定時間内に操作部30が送信操作を受け付け、且つ、当該受信信号のタイムスロットが初期設定された送信用のタイムスロットと異なる場合に、送信用のタイムスロットを直前に受信していたタイムスロットに切り替えて通信部20に送信を実行させる。例えば、切り替え部42は、受信信号のタイムスロットがタイムスロット2である場合に、送信用のタイムスロットをタイムスロット2に切り替える。所定時間は、直前に受信していた受信信号と同じタイムスロットでの応答を可能とする時間であり、実験などによって予め設定される。自端末装置10宛の受信信号に対する応答で送信する場合は、受信信号の受信終了後に短時間のうちに送信を行うため所定の時間は受信したタイムスロットによる送信をできるようにしておく必要がある。また、自端末装置10宛の受信信号の受信終了後、ある程度時間が経過してしまったら、後述する図3のフローチャートのスタートに戻り、初期設定されたタイムスロットの設定となることで処理を単純にすることができる。なお、受信終了とは、受信信号が継続していないことに相当する。
【0028】
一方、切り替え部42は、受信信号が自端末装置10宛であり、受信終了から所定時間内に操作部30が送信操作を受け付け、且つ、当該受信信号のタイムスロットが初期設定された送信用のタイムスロットと同じ場合に、送信用のタイムスロットを維持して通信部20に送信を実行させる。すなわち、切り替え部42は、受信信号のタイムスロットがタイムスロット1である場合に、送信用のタイムスロットを初期設定されたタイムスロット1に維持する。
【0029】
このように、通信部20が自端末装置10宛の受信信号を受信し、受信終了から所定時間内に操作部30が送信操作を受け付けた場合、通信部20は、その受信信号のタイムスロットを用いて送信を実行する。
【0030】
切り替え部42は、通信部20による送信が終了したときの送信用のタイムスロットが初期設定された送信用のタイムスロットと異なる場合に、送信用のタイムスロットを初期設定された送信用のタイムスロットに切り替える。なお、送信の終了とは、自端末装置10の操作部30によるユーザの送信操作の受け付けが終了し、自端末装置10における音声信号の送信が終了したことに相当する。
【0031】
また、切り替え部42は、受信信号が自端末装置10宛であり、受信終了から所定時間内に操作部30が送信操作を受け付けない場合、受信したタイムスロットがいずれであっても、初期設定された送信用のタイムスロットを維持する。
【0032】
送信処理部24は、通信部20が自端末装置10宛の受信信号を受信し、受信終了前に操作部30が送信操作を受け付けた場合であっても、受信したタイムスロットでの送信を可としてもよい。
【0033】
また、送信処理部24は、通信部20が受信信号を検出している場合に、送信操作を了承するか拒絶するかの設定を備えてもよく、さらには、受信信号が自端末装置10宛の場合で受信信号が継続中の場合に、送信操作を拒絶する設定としてもよい。これにより、自端末装置宛の信号を受信しているにも係わらず、その受信信号に被せて送信を行ってしまうといったことを防ぐことができる。また、自端末装置10宛ではない受信信号を受信している場合には、送信操作を承諾する設定とすればよい。なお、本発明において、「送信操作を受け付けた」、「送信操作を受け付けない」とする場合の意味は、「送信操作が検出された」、「送信操作が検出されていない」という意味であり、つまり端末装置10を操作するユーザが送信操作を行ったか否か、の判定を意味する。一方、「送信操作を拒絶」の意味は、送信操作が検出されても送信状態とはしないことの意味であり、つまり端末装置10を操作するユーザが送信操作を行っても送信状態とはならないことを意味する。
【0034】
(3)検出された受信信号が自端末装置10宛ではない場合
判定部44は、通信部20が自端末装置10宛ではない受信信号を受信しているときに操作部30が送信操作を受け付けた場合に、当該受信信号のタイムスロットが初期設定された送信用のタイムスロットと同じであるか判定する。
【0035】
切り替え部42は、判定部44により自端末装置10宛ではない受信信号のタイムスロットが初期設定された送信用のタイムスロットと異なると判定された場合に、初期設定された送信用のタイムスロットで通信部20に送信を実行させる。すなわち、切り替え部42は、受信信号のタイムスロットがタイムスロット2である場合に、送信用のタイムスロットを初期設定されたタイムスロット1に維持する。このとき、切り替え部42は、初期設定された送信用のタイムスロットが空いているか否かにかかわらず通信部20に送信を実行させる。
【0036】
一方、切り替え部42は、判定部44により自端末装置10宛ではない受信信号のタイムスロットが初期設定された送信用のタイムスロットと同じであると判定された場合に、通信部20に送信を非実行とさせる。すなわち、切り替え部42は、初期設定された送信用のタイムスロットであるタイムスロット1が他のグループの他の端末装置10によって使用中である場合に、通信部20に送信を非実行とさせる。
【0037】
通知部46は、判定部44により自端末装置10宛ではない受信信号のタイムスロットが初期設定された送信用のタイムスロットと同じであると判定された場合に、スピーカ26に報知音を出力させ、送信が非実行であることをユーザに通知してもよい。通知部46は、報知音に加えて、端末装置10の図示しない表示部に送信が非実行であることを表示させてもよい。送信できなかったことを認識したユーザは、送信操作を中止し、PTTボタンから指を離す。ユーザは、送話を行いたい場合、再び送信操作を行う。
【0038】
切り替え部42は、判定部44により自端末装置10宛ではない受信信号のタイムスロットが初期設定された送信用のタイムスロットと同じであると判定され、且つ、操作部30が再び送信操作を受け付けた場合に、送信用のタイムスロットを切り替えて通信部20に送信を実行させる。具体的には、切り替え部42は、自端末装置10宛ではない受信信号のタイムスロットが初期設定された送信用のタイムスロットと同じであると判定されてから、所定時間内に操作部30が再び送信操作を受け付けた場合に、送信用のタイムスロットを切り替えて通信部20に送信を実行させる処理を行う。所定時間は、実験などによって予め設定される。すなわち、切り替え部42は、受信信号のタイムスロットがタイムスロット1である場合に、送信用のタイムスロットをタイムスロット2に切り替える。このとき、切り替え部42は、切り替え先のタイムスロットが空いているか確認せずに送信用のタイムスロットを切り替えて、通信部20に送信を実行させる。
【0039】
切り替え部42は、通信部20による送信が終了したときの送信用のタイムスロットが初期設定された送信用のタイムスロットと異なる場合に、送信用のタイムスロットを初期設定された送信用のタイムスロットに切り替える。
【0040】
また、最初の送信操作で送信できなかった場合、ユーザは、送話を中止する場合もありうる。切り替え部42は、自端末装置10宛ではない受信信号のタイムスロットが初期設定された送信用のタイムスロットと同じであると判定されてから、操作部30が再び送信操作を受け付ける前に所定時間が経過した場合に、送信用のタイムスロットを維持する。また、通知部46は、送信が非実行であることをユーザに通知する報知音や表示を停止してもよい。
【0041】
切り替え部42は、受信信号が自端末装置10宛であるか否か判定できない場合は、初期設定された送信用のタイムスロットを維持する。例えば、受信信号が微弱であったり、通信とは無関係のノイズであったり妨害波であったりといった信号で、受信処理部22が復号化された信号からタイムスロットの判定ができない場合は、切換え条件は満たさないとして初期設定された送信用タイムスロットを維持する。
【0042】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0043】
以上の構成による端末装置10の動作を説明する。図3図4は、端末装置10の処理を示すフローチャートである。この処理は、繰り返し行われる。受信処理部22が受信信号を未検出であり(S10のN)、操作部30が送信操作を受け付けなければ(S12のN)、処理を終了する。操作部30が送信操作を受け付ければ(S12のY)、通信部20は、初期設定された送信用のタイムスロットで送信を行う(S14)。送信が終了していなければ(S16のN)、送信を維持する。送信が終了していれば(S16のY)、処理を終了する。
【0044】
ステップ10で受信処理部22が受信信号を検出し(S10のY)、受信信号が自端末装置10宛であれば(S18のY)、図4に移り、受信処理部22は、ミュートを解除し、通信部20に復調を行わせる(S20)。操作部30が送信操作を受け付けず(S21のN)、受信信号が継続中であれば(S22のY)、ステップ21に戻る。操作部30が送信操作を受け付けた場合(S21のY)、通信部20は、受信しているタイムスロットで送信を行う(S23)。受信信号が終了し(S22のN)、受信終了から所定時間が経過し(S24のY)、操作部30が送信操作を受け付けなかった場合(S25のN)、処理を終了する。操作部30が送信操作を受け付けた場合(S25のY)、通信部20は、初期設定のタイムスロットで送信を行う(S26)。受信終了から所定時間が経過しておらず(S24のN)、操作部30が送信操作を受け付けなければ(S27のN)、ステップ24に戻る。操作部30が送信操作を受け付ければ(S27のY)、通信部20は、直前に受信していたタイムスロットで送信を行う(S28)。
【0045】
送信を行った場合(S23、S26、S28)において、送信が終了していなければ(S30のN)、送信を維持する。送信が終了し(S30のY)、送信に用いられたタイムスロットが初期設定された送信用のタイムスロットであれば(S32のY)、処理を終了する。送信に用いられたタイムスロットが初期設定された送信用のタイムスロットでなければ(S32のN)、図3に戻り、送信用のタイムスロットを初期設定されたタイムスロットに戻し(S50)、処理を終了する。
【0046】
ステップ18で受信信号が自端末装置10宛でなければ(S18のN)、受信処理部22は、ミュートを継続する(S34)。操作部30が送信操作を受け付けず(S36のN)、かつ、受信信号を継続して受信した場合は(S37のY)、ステップ18に戻る。操作部30が送信操作を受け付けず(S36のN)、かつ、受信信号が無くなった場合は(S37のN)、処理を終了する。操作部30が送信操作を受け付け(S36のY)、受信信号のタイムスロットが初期設定された送信用のタイムスロットと同じでなければ(S38のN)、ステップ14に移る。受信信号のタイムスロットが初期設定された送信用のタイムスロットと同じであれば(S38のY)、通信部20は、受け付けた送信操作をキャンセルし、送信を非実行とする(S40)。送信のキャンセルから所定時間が経過すれば(S42のY)、処理を終了する。送信のキャンセルから所定時間が経過しておらず(S42のN)、操作部30が送信操作を受け付けなければ(S44のN)、ステップ42に戻る。
【0047】
操作部30が送信操作を受け付ければ(S44のY)、通信部20は、初期設定された送信用のタイムスロットとは異なる送信用のタイムスロットで送信を行う(S46)。送信が終了していなければ(S48のN)、送信を維持する。送信が終了すれば(S48のY)、送信用のタイムスロットを初期設定されたタイムスロットに戻し(S50)、処理を終了する。
【0048】
なお、受信信号が自端末装置10宛の場合で受信信号が継続中の場合に、送信操作を拒絶する設定とした場合は、ステップ21は常にNoとすればよい。
【0049】
このように本実施の形態によれば、送信操作を受け付けたときに自端末装置10宛ではない受信信号のタイムスロットが初期設定された送信用のタイムスロットと同じであると判定され、且つ、再び送信操作を受け付けた場合に、送信用のタイムスロットを切り替えて通信部20に送信を実行させる。そのため、他のタイムスロットが空いているか判定せずに、再度の送信操作に応じて送信用のタイムスロットを切り替えることができる。したがって、簡素な処理で送信用のタイムスロットを切り替えて送信を実行できる。
【0050】
また、自端末装置10宛ではない受信信号のタイムスロットが初期設定された送信用のタイムスロットと同じである場合に、送信が非実行であることをユーザに通知するので、送信が非実行であることをユーザに容易に認識させることができる。また、自端末装置10宛ではない受信信号のタイムスロットが初期設定された送信用のタイムスロットと同じであると判定されてから、再度の送信操作を受け付ける前に所定時間が経過した場合に、送信用のタイムスロットを維持するので、容易に送話を中止できる。
【0051】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0052】
例えば、1つの通信チャンネルに2つのタイムスロットが割り当てられている場合に限らず、1つの通信チャンネルに3つ以上のタイムスロットが割り当てられていてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10…端末装置、20…通信部、22…受信処理部、24…送信処理部、26…スピーカ、28…マイク、30…操作部、40…送話部、42…切り替え部、44…判定部、46…通知部。
図1
図2
図3
図4