(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】通信用端末
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20220112BHJP
H04M 1/02 20060101ALI20220112BHJP
H01Q 1/22 20060101ALI20220112BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
G09F9/00 309A
H04M1/02 C
H01Q1/22 Z
G06F3/041 662
(21)【出願番号】P 2017169543
(22)【出願日】2017-09-04
【審査請求日】2020-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 功昌
(72)【発明者】
【氏名】大川 芳利
【審査官】中村 直行
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-028165(JP,A)
【文献】特開2013-195599(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0276744(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0229362(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00 - 9/46
H04M 1/02
H01Q 1/22
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース基板と、
このケース基板に配置され、発光状態で表示を行う表示パネルと、
この表示パネルの表示面側に配置される透明なカバーと、
このカバーの裏面側に、前記表示パネルの外周部を囲むように配置され
、配線基板と当該配線基板上に形成される配線パターンとで構成されるアンテナパターンと、
前記ケース基板に、前記
配線パターンと
平行に配置される
シート状の磁性部材とを備え、
前記磁性部材における前記表示パネルの外周方向寸法は、前記アンテナパターンにおける同外周方向寸法よりも長く設定されており、
前記カバーの裏面と前記表示パネルの表示面との間に空隙を設けている通信用端末。
【請求項2】
前記カバーの裏面側に、前記表示パネルと対向するように配置されるタッチパネルを備え、
前記磁性部材は、その内周部が前記タッチパネルの外周部に接することで、スペーサとして機能している請求項1記載の通信用端末。
【請求項3】
前記アンテナパターンと前記磁性部材との間にも空隙を設けている請求項1又は2記載の通信用端末。
【請求項4】
前記磁性部材は、前記ケース基板に接着されている請求項1から3の何れか一項に記載の通信用端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光状態で表示を行う表示パネルと、アンテナパターンとを備える通信用端末に関する。
【背景技術】
【0002】
図7に示すように、例えばセキュリティシステムに使用される通信用端末1は、建造物の壁面2に設置され、ユーザが所持しているICカードと通信を行うことでセキュリティシステムの設定,解除を行うために使用される。ケース3の内部には、情報を表示するLCD(Liquid Crystal Display)パネル4と、ICカードと通信を行うためのアンテナ5とを備えている。そして、このような端末は、薄型で且つ小型であることが要求されるため、一般にアンテナ5は、LCDパネル4の周辺に配置されている。通信用端末1の表面には、ガラスなどの透明なカバー6が配置されており、アンテナ5は、そのカバー6の裏面側に銅などの配線パターンを引き回すことで形成されている。
【0003】
このような構成においては、LCDパネル4にも配線パターン等の金属が使用されているため、アンテナ5がLCDパネル4に近接した状態で配置されると、アンテナ5が発生する磁界強度が低下するという問題がある。そのような問題を回避するため、例えば特許文献1に開示されているように、表示パネルとアンテナとの間にフェライト等の磁性部材を配置する対策がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した通信用端末1においては、LCDパネル4の表示面にカバー6が密着すると、ニュートンリングと称される縞状の模様が発生するという問題もあることから、そのための対策も別途必要となる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、アンテナ性能の低下を回避すると共にニュートンリングの発生も回避できる通信用端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の通信用端末によれば、発光状態で表示を行う表示パネルは、ケース基板に配置され、表示パネルの表示面側に透明なカバーが配置される。このカバーの裏面側には表示パネルの外周部を囲むように、配線基板とその基板上に形成される配線パターンとで構成されるアンテナパターンが配置され、ケース基板には配線パターンと平行にシート状の磁性部材が配置される。そして、磁性部材における表示パネルの外周方向寸法を、アンテナパターンにおける同寸法よりも長く設定し、カバーの裏面と表示パネルの表示面との間に空隙を設ける。
【0008】
このように構成すれば、透明なカバーと表示パネルとの間に磁性部材を配置することでアンテナ性能の低下を回避できる。また、カバーの裏面と表示パネルの表示面との間に空隙を設けることで、ニュートンリングの発生も回避できる。
【0009】
請求項2記載の通信用端末によれば、カバーの裏面側に、表示パネルと対向するように配置されるタッチパネルを備え、磁性部材の内周部がタッチパネルの外周部に接するように配置して、磁性部材をスペーサとしても利用する。つまり、通信用端末が、ユーザが入力操作を行うためのタッチパネルを備えている際には、磁性部材の一部がタッチパネルに接するように配置する。これにより、磁性部材がスペーサとなることで、カバーと表示パネルとの間に空隙を設けることができる。したがって、通信用端末を小型に構成できる。
【0010】
請求項3記載の通信用端末によれば、アンテナパターンと磁性部材との間にも空隙を設けるようにする。アンテナパターンは金属配線からなるため、その表面には凹凸がある。したがって、磁性部材がアンテナに接触すると、その接触状態によって両者間の距離が一定とならず、アンテナの性能にばらつきが生じる可能性が有る。そこで、アンテナパターンと磁性部材との間に予め空隙を設ければ、両者間の距離が一定となることでアンテナ性能を安定させることができる。
【0011】
請求項4記載の通信用端末によれば、磁性部材をケース基板に接着して固定する。このように構成すれば、組付け作業者の作業能力の影響によることなく、アンテナパターンと磁性部材との距離が一定となるように組付けることができる。また、ケース基板は発熱しないので、接着剤が熱の影響を受けることが無く、経年変化した場合に劣化の程度が低く抑えられる。したがって、アンテナパターンと磁性部材との距離が一定となる状態を、極力維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態であり、通信用端末の
図7におけるA-A’断面を示す図
【
図2】フェライトシートとアンテナパターンとの間に空隙を設ける意義を説明する図(その1)
【
図3】フェライトシートとアンテナパターンとの間に空隙を設ける意義を説明する図(その2)
【
図4】フェライトシートとアンテナパターンとの間に空隙を設ける意義を説明する図(その3)
【
図5】
図2~
図4の状態に対応するアンテナ性能の変化を示す図
【
図6】第2実施形態であり、通信用端末の
図7におけるA-A’断面を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について
図1から
図5を参照して説明する。尚、
図7と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
図1は、
図7に示すA-A’断面に相当する図である。本実施形態の通信用端末11は、例えば樹脂製のケース基板12にLCDパネル4が、その一部を埋め込むようにして配置されている。そして、LCDパネル4の外周側,図中左方には、磁性部材であるフェライトシート13が配置されている。フェライトシート13の厚さ寸法Dは、ケース基板12の表面よりLCDパネル4が突出している高さ寸法dよりも長くなっている。LCDパネル4は表示パネルに相当し、フェライトシート13は磁性部材に相当する。フェライトシート13は、ケース基板12に接着されて固定されている。
【0014】
カバー6の裏面,図中の下面には、タッチパネル14がLCDパネル4に対向するように配置されている。タッチパネル14の横方向,図中左右方向寸法Lは、LCDパネル4の横方向寸法lよりも長くなっている。タッチパネル14の外周側には、アンテナパターン5が配置されている。尚、
図1に示すアンテナパターン5は、左右方向寸法tを持つイメージで示しており、後述する
図2から
図4に示すような実際の配線パターンのイメージとは異なっている。
【0015】
そして、ケース基板12とカバー6とは、互いの外周部が両面テープ15により結着されている。この状態で、フェライトシート13の右端部は、タッチパネル14の左端部に当接している。これにより、LCDパネル4の表面と、タッチパネル14との間には、
D-d≧0.1mmとなる空隙が設けられている。また、タッチパネル14の厚さ寸法をP,アンテナパターン5の厚さ寸法をaとすると、フェライトシート13とアンテナパターン5との間には、(P-a)となる空隙が設けられている。
【0016】
次に、フェライトシート13とアンテナパターン5との間に空隙を設ける意義について
図2から
図5を参照して説明する。尚、これらの図では、アンテナパターン5のイメージを、配線基板5Bと、その配線基板5B上に形成されている配線パターン5Pとで示している。
図2に示すように、配線パターン5Pとフェライトシート13とが隙間なく接触する状態であれば、アンテナ性能は極めて良好となる。これに対して
図3に示すように、配線パターン5Pとフェライトシート13とが一部に隙間があるように接触する状態では、アンテナ性能が低下する。
【0017】
そして、配線パターン5Pとフェライトシート13とを接触させることを前提とすると、
図2に示す状態や
図3に示す状態,又はそれ以外の状態になり得る。したがって、
図5に示すように、アンテナ性能は、(1)~(2)の間で幅を有することになり、安定しない。
【0018】
一方、
図4に示すように、フェライトシート13とアンテナパターン5との間に予め一定の空隙を設けるようにすれば、アンテナ性能は
図5に(3)で示すように一定の水準で安定するようになる。
【0019】
以上のように構成される本実施形態によれば、発光状態で表示を行うLCDパネル4をケース基板12に配置し、LCDパネル4の表示面側に透明なカバー6を配置する。カバー6の裏面側に、LCDパネル4の外周部を囲むようにアンテナパターン5を配置し、ケース基板12には、アンテナパターン5と対向するようにフェライトシート13を配置する。そして、フェライトシート13におけるLCDパネル4の外周方向寸法Tを、アンテナパターン5における同寸法tよりも長く設定し、カバー6の裏面とLCDパネル4の表示面との間に空隙を設けた。このように構成すれば、アンテナ性能の低下を回避できると共に、ニュートンリングの発生も回避できる。
【0020】
また、カバー6の裏面側に、LCDパネル4と対向するようにタッチパネル14を配置し、フェライトシート13の内周部がタッチパネル14の外周部に接するように配置した。これにより、フェライトシート13がスペーサとなって、カバー6とLCDパネル4との間に一定の空隙を設けることができる。したがって、通信用端末11を小型に構成できる。そして、アンテナパターン5とフェライトシート13との間にも空隙を設けるようにしたので、両者間の距離が一定となることでアンテナ性能を安定させることができる。
【0021】
また、フェライトシート13を、ケース基板12に接着固定するので、組付け作業者の作業能力の影響によることなく、アンテナパターン5とフェライトシート13との距離が一定となるように組付けることができる。そして、ケース基板12は発熱しないので、接着剤が熱の影響を受けることが無く、経年変化した場合に劣化の程度が低く抑えられる。したがって、アンテナパターン5とフェライトシート13との距離が一定となる状態を、極力維持することができる。
【0022】
(第2実施形態)
図6に示す通信用端末21は、第1実施形態の通信用端末11よりタッチパネル14を取り除いたものである。この構成においては、両面テープ15がスペーサとして機能することで、LCDパネル4とカバー6との間に空隙を設けていると共に、アンテナパターン5とフェライトシート13との間にも空隙を設けている。したがって、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0023】
本発明は上記した、又は図面に記載した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のような変形又は拡張が可能である。
LCDパネル4の表面とタッチパネル14との間の空隙は、0.1mm以上に限らない。
表示パネルは、発光状態で表示行うものであれば良く、例えば誘起EL(Electro-Luminescence)パネルでも良い。
カバーは、樹脂製であっても良い。
接着には、両面テープを用いても良い。
通信用端末は、セキュリティシステムに使用されるものに限らない。
【符号の説明】
【0024】
図面中、4はLCDパネル、5はアンテナパターン、11は通信用端末、12はケース基板、13はフェライトシート、14はタッチパネル、21は通信用端末である。