(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】変化点検知サーバ、変化点検知装置、変化点検知システム及び変化点検知プログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
G05B23/02 302W
G05B23/02 301X
(21)【出願番号】P 2017178680
(22)【出願日】2017-09-19
【審査請求日】2020-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 将士
(72)【発明者】
【氏名】藤原 伸行
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-104835(JP,A)
【文献】特開2017-120489(JP,A)
【文献】特開平05-072026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00-23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の状態の変化点を検知する変化点検知サーバであって、
携帯電話網を介して受信した対象物の
初期及び最新の状態を示す高速フーリエ変換により得られた
初期グラフ画像データ及び最新グラフ画像データから当該
初期及び最新の状態の特徴を示す
初期スペクトル画像データ及び最新スペクトル画像データを抽出する画像処理部と、
前記最新スペクトル画像データと
前記初期スペクトル画像データとの比較に基づき前記対象物の変化点を検知する画像判定部
と、
前記最新スペクトル画像データと前記初期スペクトル画像データとを重畳表示させる画像表示部と
を備え、
前記画像処理部は、
前記最新グラフ画像データの画像解析により当該最新グラフ画像データのグラフラインを抜き出して前記最新スペクトル画像データとして抽出し、
前記初期グラフ画像データの画像解析により当該初期グラフ画像データのグラフラインを抜き出して前記初期スペクトル画像データとして抽出し、
前記最新スペクトル画像データと前記初期スペクトル画像データとの合成処理により当該最新スペクトル画像データと当該初期スペクトル画像データとを重畳表示させた合成スペクトル画像データを作成し、
前記最新スペクトル画像データと前記初期スペクトル画像データの比較に基づく警報の閾値ラインを示す画像データからなる比較グラフベース画像データと前記合成スペクトル画像データとの合成処理により、当該比較グラフベース画像データと当該合成スペクトル画像データとを重畳表示させたグラフ比較画像データを作成すること
を特徴とする変化点検知サーバ。
【請求項2】
前記画像表示部は、前記変化点に基づく警報を前記重畳表示の画像に表示させることを特徴とする請求項
1に記載の変化点検知サーバ。
【請求項3】
前記画像表示部は、前記警報が表示された前記重畳表示の画像をウェブページに添付することを特徴とする請求項
2に記載の変化点検知サーバ。
【請求項4】
前記画像表示部は、前記警報に基づくメッセージ情報を出力することを特徴とする請求項
2または
3に記載の変化点検知サーバ。
【請求項5】
前記最新グラフ画像データを保存する保存部をさらに備えたことを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項に記載の変化点検知サーバ。
【請求項6】
コンピュータを請求項1から
5のいずれか1項に記載の変化点検知サーバとして機能させることを特徴とする変化点検知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は設備の変化点をオンラインで検知するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
オンラインでの設備の変化点を検知するシステムとしては例えば以下の診断システムが知られている。
【0003】
特許文献1の診断システムは、ローカルネットワーク内で、診断用端末と試験結果閲覧用端末とデータ解析端末とデータベースとを接続して工場設備の診断記録の共有を図っている。
【0004】
特許文献2の診断システムは、設備診断に使用する波形等の情報量の多いデータをサーバ等に送信せずに診断を行うための技術である。すなわち、ローカルネットワーク内に設置された端末で波形データの収集や診断を行い、診断結果からさらに詳細な診断が必要であると判断した場合、インターネット経由でサーバに問合せ、診断に必要なプログラムをサーバからダウンロードしながら診断を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-341625号公報
【文献】特開2010-27076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の診断システムは、ローカルネットワーク内に設備診断に使用するデータを保存する構成となっているので、データを閲覧するためにローカルネットワークに接続する必要がある。そのため、本システムは、外部からインターネット経由で診断データを閲覧することができないため、異常発生時の対応が遅れる。
【0007】
特許文献2の診断システムは、インターネットを介して設備監視用の端末とサーバが相互に通信を行いながら診断を行っているが、診断結果は設備監視用の端末が一括で保存している。そのため、外部から診断結果を閲覧することができないため、特許文献1のシステムと同様に異常発生時の対応が遅れる。
【0008】
また、一般に振動や音響の波形データに基づき診断を行う場合、波形データに対して高速フーリエ変換(以下、FFT)を行い、正常時のFFT波形と診断実行時のFFT波形を比較して差異を確認し、正常時では発生していなかった周波数の波形が発生していれば異常と判定する。異常発生時に即座に診断結果の確認を行えるようにするため、診断結果はインターネットで接続可能なサーバ等に保存しておくことが望ましい。
【0009】
しかしながら、サーバでFFTと診断を行う場合、波形データが必要となるが、波形データはデータサイズが大きいため、インターネットを介して波形データを送受信すると通信量が多くなる。また、既設の計測対象において設備診断システムが導入された際、新規に有線ネットワークを配線することが設置環境によっては困難な場合があるので、携帯電話網を使用した無線通信システムを使用することが望ましい。この場合、容量の大きい波形データをネットワークで送信する場合、通信速度が遅いため通信時間が長くなる。また、通信時間の短縮を図ると、回線使用料の高額化を招く。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑み、対象物の変化点の検知をオンラインのもとで低廉に行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明の一態様は、対象物の状態の変化点を検知する変化点検知サーバであって、携帯電話網を介して受信した対象物の最新の状態を示す高速フーリエ変換により得られた最新グラフ画像データから当該最新の状態の特徴を示す最新スペクトル画像データを抽出する画像処理部と、前記最新スペクトル画像データと前記対象物の初期状態の特徴を示す初期スペクトル画像データとの比較に基づき前記対象物の変化点を検知する画像判定部とを備える。
【0012】
本発明の一態様は、前記変化点検知サーバにおいて、前記最新スペクトル画像データと前記初期スペクトル画像データとを重畳表示させる画像表示部をさらに備える。
【0013】
本発明の一態様は、前記変化点検知サーバにおいて、前記画像表示部は、前記変化点に基づく警報を前記重畳表示の画像に表示させる。
【0014】
本発明の一態様は、前記変化点検知サーバにおいて、前記画像表示部は、前記警報が表示された前記重畳表示の画像をウェブページに添付する。
【0015】
本発明の一態様は、前記変化点検知サーバにおいて、前記画像表示部は、前記警報に基づくメッセージ情報を出力する。
【0016】
本発明の一態様は、前記変化点検知サーバにおいて、前記最新グラフ画像データを保存する保存部をさらに備える。
【0017】
本発明の一態様は、対象物の状態の変化点を検知する変化点検知装置であって、対象物の状態を示すアナログ信号のデータをデジタル信号のデータに変換する変換部と、前記デジタル信号のデータを高速フーリエ変換して当該対象物の最新の状態を示す最新グラフ画像データを作成する画像生成部と、前記最新グラフ画像データを携帯電話網により前記対象物の変化点を検知するサーバに送信する通信部とを備える。
【0018】
本発明の一態様は、対象物の状態の変化点を検知する変化点検知システムであって、上記の変化点検知装置と上記の変化点検知サーバとを有する。
【0019】
本発明は、コンピュータを上記の変化点検知サーバとして機能させる変化点検知プログラム、または、コンピュータを上記の変換部と画像生成部とを備えた変化点検知装置として機能させる変化点検知プログラムの態様とすることもできる。
【発明の効果】
【0020】
以上の本発明によれば、対象物の変化点の検知をオンラインのもとで低廉に行える。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態における変化点検知システムのブロック構成図。
【
図2】上記実施形態における画像作成の一例とその手順の説明図。
【
図3】上記実施形態における警告表示の一例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0023】
[本実施形態の装置及びシステムの構成例]
図1に例示された本実施形態の変化点検知システム1は、対象物である測対象機器10の状態の変化点を検知するための検知システムであって、変化点検知装置2と変化点検知サーバ3とを有する。
【0024】
変化点検知装置2は、測対象機器10の状態の変化点を検知するための変化点検知装置であって、センサ部20、AD変換部21、画像生成部22及び無線通信部23を備える。
【0025】
センサ部20は、測対象機器10の状態を検出して当該状態を示す波形信号を出力する。センサ部20としては、加速度センサ、音響センサ等の高速な波形データをアナログ信号のデータで出力できる周知のセンサが適用される。
【0026】
AD変換部21は、測対象機器10の状態を示すアナログ信号のデータをAD変換によりデジタル信号のデータに変換する。
【0027】
画像生成部22は、前記デジタル信号のデータを高速フーリエ変換して測対象機器10の最新の状態を示す最新グラフ画像データ302を作成する。
【0028】
無線通信部23は、最新グラフ画像データ302を携帯電話網5により変化点検知サーバ3に送信する。
【0029】
変化点検知サーバ3は、測対象機器10の状態の変化点を検知する。変化点検知サーバ3は、コンピュータのハードウェア資源とソフトウェア資源との協働により、画像ファイル保存部30,画像処理部31,画像判定部32,画像表示部33を実装する。
【0030】
画像処理部31は、携帯電話網5を介して受信した測対象機器10の最新の状態を示す高速フーリエ変換により得られた最新グラフ画像データ302の画像解析により当該最新の状態の特徴を示す最新スペクトル画像データ304を抽出する(
図2のS2)。同様に、初期グラフ画像データ301の画像解析により初期スペクトル画像データ303を抽出する。
【0031】
また、画像処理部31は、最新スペクトル画像データ304と初期スペクトル画像データ303を重畳表示させた合成スペクトル画像データ305を作成する(同図のS3)。さらに、比較グラフベース画像データ300と合成スペクトル画像データ305を重畳表示させたグラフ比較画像データ306を作成する(同図のS5)。
【0032】
画像判定部32は、最新スペクトル画像データ304と測対象機器10の初期状態の特徴を示す初期スペクトル画像データ303との比較に基づき測対象機器10の変化点を検知する。初期スペクトル画像データ303は、予め、測対象機器10の正常な状態のアナログ信号のデータを高速フーリエ変換して得られた測対象機器10の正常な状態を示す初期グラフ画像データ301から抽出されたものである。
【0033】
画像表示部33は、最新スペクトル画像データ304と初期スペクトル画像データ303とを重畳表示させる。また、前記変化点に基づく警報を前記重畳表示の画像に表示させる。さらに、前記警報が表示された前記重畳表示の画像をウェブページに添付する。また、前記警報に基づくメッセージ情報を出力する。
【0034】
画像ファイル保存部30は、初期グラフ画像データ301、最新グラフ画像データ302を保存する。
【0035】
[本実施形態の画像処理の手順]
図1,2を参照しながら本実施形態の画像処理の手順S1~S5について説明する。
【0036】
S1:AD変換部21はセンサ部20から入力された測対象機器10の最新の状態を示すアナログ信号のデータをデジタル信号のデータに変換する。
次いで、画像生成部22は、前記デジタル信号のデータを高速フーリエ変換して測対象機器10の最新の状態を示す最新グラフ画像データ302を作成する。最新グラフ画像データ302は、データサイズを極力少なくするために例えばJPEGまたはPDFのファイル形式で作成される。初期グラフ画像データ301も同様のファイル形式で作成される。最新グラフ画像データ302は無線通信部23により携帯電話網5を介して変化点検知サーバ3に送信される。変化点検知サーバ3に供された最新グラフ画像データ302は画像ファイル保存部30に保存される。
【0037】
S2:画像処理部31は、画像ファイル保存部30から引き出した最新グラフ画像データ302の画像解析により最新グラフ画像データ302のグラフラインを抜き出して最新スペクトル画像データ304として抽出する。
【0038】
同様に、画像ファイル保存部30から引き出された初期グラフ画像データ301が画像処理部31による画像解析により初期グラフ画像データ301のグラフラインが抜き出されて初期スペクトル画像データ303として抽出される。
【0039】
S3:画像処理部31は、最新スペクトル画像データ304と初期スペクトル画像データ303との合成処理により最新スペクトル画像データ304と初期スペクトル画像データ303を重畳表示させた合成スペクトル画像データ305を作成する。
【0040】
S4:画像処理部31は、画像ファイル保存部30から比較グラフベース画像データ300を引き出す。比較グラフベース画像データ300は、最新スペクトル画像データ304と初期スペクトル画像データ303の比較に基づく警報の閾値ラインを示す画像データであり、予め作成されて画像ファイル保存部30に保存されたものである。
【0041】
S5:画像処理部31は、比較グラフベース画像データ300と合成スペクトル画像データ305との合成処理により、比較グラフベース画像データ300と合成スペクトル画像データ305を重畳表示させたグラフ比較画像データ306を作成する。
【0042】
[本実施形態の画像判定例及び判定結果表示例]
画像判定部32は、最新スペクトル画像データ304と初期スペクトル画像データ303との比較に基づき測対象機器10の変化点を検知する。さらに、画像処理部31から供されたグラフ比較画像データ306に基づき当該変化点に基づく警報を出力する。具体的には、最新スペクトル画像データ304と初期スペクトル画像データ303との比較を行い、初期スペクトル画像データ303に現れなかったグラフラインがグラフ比較画像データ306の閾値ラインを越える場合、「変化点検知」の警報を出力する。例えば、「閾値を越えた周波数帯が存在する」旨の警報を出力する。
【0043】
そして、画像表示部33は、
図3に例示したように、グラフ比較画像データ306に前記変化点に基づく警報「閾値を超過した周波数があります」を添付して成る画像307を出力表示させる。画像307は、その閲覧部4の一態様として利用者の端末(パーソナルコンピュータや携帯情報端末等)の表示部に出力表示される前記利用者がアクセスするWebブラウザのウェブページに添付された状態で表示される。
【0044】
また、前記警報はそのメッセージ情報の一態様として
図3に例示された電子メール308が前記利用者の端末に送信される。電子メール308はグラフ比較画像データ306が添付ファイルとして添付された内容となっている。
【0045】
[本実施形態の効果]
以上の変化点検知システム1によれば、測対象機器10の状態を示すアナログ信号のデータがデジタル信号のデータに変換され、さらに、このデジタル信号のデータが高速フーリエ変換され、さらに、グラフ画像データに変換することで、当該状態を示すデータが大幅に小容量化される。したがって、従来のような大容量の数値データではなく、小容量の画像データが変化点検知サーバ3に無線送信されることにより低速且つ安価な回線でも状態監視の対象物である測対象機器10の状態の変化点の検知が行える。よって、対象物の変化点の検知をオンラインのもとで低廉に行える。
【0046】
特に、本実施形態において、利用者はインターネット等のネットワークを介して対象物の状態の診断結果を閲覧でき、また、電子メールにより当該状態に基づく警報を受信して当該診断結果を閲覧できるので、対象物の異常に即座に対応できる。また、本実施形態の診断結果として出力される比較グラフベース画像データ300においては最新スペクトル画像データ304と初期スペクトル画像データ303とが対比された状態で表示されるので対象物である測対象機器10の状態の変化点の特定が可能となる。
【0047】
また、データ処理量の大きい高速フーリエ変換が対象物側の末端の変化点検知装置2にて実行されることにより、複数の変化点検知装置2が使用される際に演算負荷を分散できるので、変化点検知サーバ3の演算負担を軽減できる。
【0048】
[本発明の他の態様]
本発明の他の態様としては、変化点検知装置2、変化点検知サーバ3のいずれかとしてコンピュータを機能させる変化点検知プログラムが挙げられる。この変化点検知プログラムはコンピュータが読み取り可能な周知の記録媒体またはインターネット等のネットワークを介して提供できる。
【0049】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲内で様々な態様で実施が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1…変化点検知システム
10…測対象機器(対象物)
2…変化点検知装置、21…AD変換部(変換部)、22…画像生成部、23…無線通信部(通信部)
3…変化点検知サーバ、30…画像ファイル保存部(保存部)、31…画像処理部、32…画像判定部、33…画像表示部
4…閲覧部