(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】放射線撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20220112BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
A61B6/00 360B
A61B6/00 331E
A61B6/03 360G
A61B6/03 371
(21)【出願番号】P 2017203555
(22)【出願日】2017-10-20
【審査請求日】2020-02-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100102037
【氏名又は名称】江口 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100149962
【氏名又は名称】阿久津 好二
(74)【代理人】
【識別番号】100170988
【氏名又は名称】妹尾 明展
(74)【代理人】
【識別番号】100189566
【氏名又は名称】岸本 雅之
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 秀孝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祥太
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-115562(JP,A)
【文献】特開平03-286744(JP,A)
【文献】特開2000-217035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を載置する天板と、
前記被検体に向けて放射線を発生する放射線発生部と、
前記被検体を透過した放射線を検出して2次元画像を出力する放射線検出部と、
前記天板、放射線発生部および放射線検出部の少なくとも一つの位置を所定の座標系上で制御する制御手段と、
予め取得された前記被検体についての3次元画像と、前記載置された状態における前記被検体とが対応するように、前記座標系と前記3次元画像との第1の対応関係を決定する座標対応関係決定手段と、
ある時点における前記2次元画像および前記3次元画像に基づく画像に映り込んだ関心部位が対応するような第2の対応関係を決定する、関心領域対応関係決定手段と、
前記第1
および第2の対応関係に基づいて、前記天板、前記放射線発生部および放射線検出部の少なくとも一つの位置が変化するまでの時点における前記2次元画像と前記3次元画像に基づく画像とを重畳してロードマップ画像を生成するロードマップ画像生成手段と
を備え、
前記ロードマップ画像生成手段は、前記第2の対応関係が決定した後に、前記天板、放射線発生部および放射線検出部の少なくとも一つの位置が変化した場合に、
前記第1の対応関係および前記第2の対応関係のうち前記第1の対応関係のみに基づいてロードマップ画像を生成する、
放射線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線撮影装置において、
前記第2の対応関係を記憶する第2の対応関係記憶手段を備え、
前記第2の対応関係が決定した後に、前記天板、放射線発生部および放射線検出部の少なくとも一つの位置が変化した場合に、前記第2の対応関係記憶手段に記憶された前記第2の対応関係を棄却し、
前記関心領域対応関係決定手段は、前記天板、放射線発生部および放射線検出部の少なくとも一つの位置が変化した時点における前記2次元画像および前記3次元画像に基づく画像に映り込んだ関心部位が対応するような前記第2の対応関係を決定し、
決定された当該第2の対応関係を前記第2の対応関係記憶手段に記憶する、
放射線撮影装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の放射線撮影装置において、
前記2次元画像は、画素値の時間的な変化から抽出された最小値または最大値を有した画素から構成されたピークホールド画像である、
放射線撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関心部位が映り込んだ2次元画像を放射線撮影によって得る放射線撮影装置に係り、特に、任意の時点における2次元画像と、予め取得された被検体についての3次元画像に基づく画像とを重畳してロードマップを生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線として、X線を例に採って説明するとともに、関心部位として、血管を例に採って説明する。従来、Cアームを備えたX線血管撮影装置(Cアーム型X線血管撮影装置)から得られたX線透視画像(以下、「透視像」と略記する)に術前のCT(Computed Tomography)画像を重畳表示する(重ね合わせ表示する)、通称「3Dロードマップ」機能が存在する。具体的には、血管が映り込んだ透視像(2次元画像)上にCT装置から得られた血管画像(3次元画像)を重ね合わせ表示(重畳表示)する。そして、カテーテルやステントなどのデバイスを血管内に挿入しながら、治療手技を伴った診断を行う。
【0003】
なお、本明細書での「撮影」とは、強い線量でX線を照射してX線画像を取得する場合と、それよりも弱い線量でX線を連続的に照射してX線画像を逐次に表示することで動画表示する場合(透視)とを含むことに留意されたい。
【0004】
なお、術前のCT画像としては、例えば、X線CT装置あるいは核磁気共鳴 (MRI: Magnetic Resonance Imaging)装置から得られた画像であってもよいし、同じCアーム型X線血管撮影装置(「アンギオグラフィ(angiography)装置」とも呼ばれる)から得られた画像であってもよい。この種の3Dロードマップ機能を有した装置として、CT画像(3次元画像)を撮影時における撮影方向に投影したボリュームレンダリング画像(ロードマップ画像)と、当該撮影時での透視像(2次元画像)とを重畳表示する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
3Dロードマップ機能を使用する時には骨などに代表されるランドマークの位置を基準にして被検体(被治療者)の位置や体位(方向)を合わせる必要がある。そのために、Cアーム型X線血管撮影装置から得られた透視像(2次元画像)と、CT装置から得られたCT画像(3次元画像)との位置合わせを実施することにより、予め取得された被検体についてのCT画像(3次元画像)と、(被検体を載置する)天板に載置された状態における被検体とを対応付ける。CT装置として、上述したX線CT装置やMRI装置を用いる場合には、Cアーム型X線血管撮影装置とは別のモダリティ(modality)装置をCT装置として用いるので、Cアーム型X線血管撮影装置における座標系と別のモダリティ装置における座標系とが異なる。したがって、CT装置として別のモダリティ装置を用いる場合には位置合わせ(以下、この位置合わせを「レジストレーション」と呼ぶ)は必須である。
【0006】
また、CT装置として診断・治療時とは別(例えば他社製)のCアーム型X線血管撮影装置を用いる場合でも、別のモダリティ装置をCT装置として用いるときと同様に、各装置における座標系が異なるのでレジストレーションは必須である。なお、CT装置として診断・治療時と同じCアーム型X線血管撮影装置を用いる場合には、座標系は同じである。ただし、被検体が天板から一旦降りて、天板に再度に載った場合には体位(方向)や被検体の位置がどうしても変化してしまう。この場合には、座標系が同じであってもレジストレーションを実施する必要がある。
【0007】
CT装置から得られたCT画像である3次元画像と、Cアーム型X線血管撮影装置から得られた透視像である2次元平面像とを合わせることになるので、血管撮影装置は少なくとも2方向からのX線の照射による少なくとも2枚の透視像、または3次元画像を取得しなければならない。血管撮影装置では、血管の狭窄などの血管異常を診断・治療することが目的であるので、狭窄位置および体位の情報を使用して、CT画像の血管情報(CT血管情報)が血管撮影装置の透視像(2次元画像)上に重畳表示される。上述したレジストレーションを実施すると、Cアームを回転させた場合であっても、CT血管を、対応する角度(方向)に連動させて表示させることができ、任意の角度でのCT血管情報を透視像(2次元画像)上に重ね合わせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このようなレジストレーションを実施して位置および体位が確定しても、血管内にデバイスが挿入された場合など、
図7に示すように血管位置が局所的に変化してしまうという問題が起こり得る。なお、被検体が天板に載置された状態で位置および体位が変わらずに被検体が動く(体動する)場合にも同様の問題が起こり得る。位置および体位の情報が正しい状態であったとしても、血管情報が実際と異なる場合には正しい診断を行うことができず、治療手技を続行することもできない。
【0010】
具体的には、
図7に示すように,血管内にデバイスDが挿入されたことによって血管位置が局所的に変化して、透視像(2次元画像)に映り込まれた実際(リアルタイム)のデバイスDの血管位置P
1と、CT画像(3次元画像)に映り込まれた血管位置P
2との間にズレが生じる。この状態ではデバイスを血管内に進入させることができず、デバイスを血管内に無理に進入させようとすると血管が破損してしまう。したがって、位置合わせの再設定が必要である。
【0011】
ただし、この状態では、被検体(被治療者)の位置および体位情報に問題はなく、血管形状の変化のみが問題である。したがって、骨を基準にしたレジストレーションを再度実施しても有効でない。すなわち、血管位置が局所的に変化した状態でレジストレーションを再度実施しても位置ズレは解消されない。血管が映り込んだCT画像(CT血管像)と臨床(治療手技を伴った診断)中の血管とを合わせるには、造影剤を使用して血管を基準に2方向からのレジストレーションを実施する必要がある。しかし、それは、一時的に動いている血管を無理に合わせているのに過ぎず、逆に骨基準の位置や体位情報がずれてしまうことになる。
【0012】
仮に血管形状を使用してレジストレーションを行うには、血管が映り込んだ2方向の透視像である血管像を得るために2回の造影剤投与が必要になる。これは、被治療者の負担が大きい。また、術者(治療者)もCアームの回転を伴う手間のかかる動作を毎回実施する必要があった。また、全体的な検査時間の増加にもつながり、治療者・被治療者の両方の負担が増加していた。さらに、一時的な血管変形が解消された後で元の血管を改めて確認したい場合には、骨を基準にレジストレーションを再度実施する必要がある。この場合には、造影剤を使用しないものの、手間が大きく、少量ではあるが追加の被曝が生じることになる。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ロードマップ画像における重畳の対象たる両画像(2次元画像・3次元画像に基づく画像)間において関心部位の位置ズレが生じても位置合わせを正確に行うことができる放射線撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る放射線撮影装置は、被検体を載置する天板と、前記被検体に向けて放射線を発生する放射線発生部と、前記被検体を透過した放射線を検出して2次元画像を出力する放射線検出部と、前記天板、放射線発生部および放射線検出部の少なくとも一つの位置を所定の座標系上で制御する制御手段と、予め取得された前記被検体についての3次元画像と、前記載置された状態における前記被検体とが対応するように、前記座標系と前記3次元画像との第1の対応関係を決定する座標対応関係決定手段と、ある時点における前記2次元画像および前記3次元画像に基づく画像に映り込んだ関心部位が対応するような第2の対応関係を決定する、関心領域対応関係決定手段と、前記第1または第2の対応関係に基づいて、前記天板、前記放射線発生部および放射線検出部の少なくとも一つの位置が変化するまでの時点における前記2次元画像と前記3次元画像に基づく画像とを重畳してロードマップ画像を生成するロードマップ画像生成手段とを備え、前記ロードマップ画像生成手段は、前記第2の対応関係が決定した後に、前記天板、放射線発生部および放射線検出部の少なくとも一つの位置が変化した場合に、前記第1の対応関係に基づいてロードマップ画像を生成するものである。
【0015】
[作用・効果]本発明に係る放射線撮影装置によれば、下記のような2つの位置合わせを実施する。すなわち、予め取得された被検体についての3次元画像と、(被検体を載置する天板に)載置された状態における被検体とが対応するように、(放射線撮影装置における所定の)座標系と3次元画像との第1の対応関係を座標対応関係決定手段は決定する。この第1の対応関係は、上述したレジストレーションを実施することにより決定される。一方、ある時点における2次元画像および3次元画像に基づく画像に映り込んだ関心部位が対応するような第2の対応関係を関心領域対応関係決定手段は決定する。この第2の対応関係を決定するための位置合わせが本発明の特徴部分である。
【0016】
上述した第1または第2の対応関係に基づいて、任意の時点における2次元画像と3次元画像に基づく画像とを重畳してロードマップ画像をロードマップ画像生成手段は生成する。例えば、本発明に係る放射線撮影装置とは別の装置から得られた3次元画像をロードマップ画像の生成に用いる場合には、レジストレーションを実施することにより決定された第1の対応関係に基づいてロードマップ画像を生成する。
【0017】
本発明に係る放射線撮影装置と同じ装置から得られた3次元画像をロードマップ画像の生成に用いる場合には、被検体が天板に載置した状態ではレジストレーションは不要である。しかし、被検体が天板から一旦降りて、天板に再度に載った場合には体位(方向)や被検体の位置がどうしても変化するので、レジストレーションは必須である。したがって、本発明に係る放射線撮影装置と同じ装置から得られた3次元画像をロードマップ画像の生成に用いる場合で、かつ被検体が天板から一旦降りて、天板に再度に載った場合には、レジストレーションを実施することにより決定された第1の対応関係に基づいてロードマップ画像を生成する。一方、デバイスの挿入や被検体の体動により関心部位の位置ズレが生じた場合には、関心領域対応関係決定手段による位置合わせを実施することにより決定された第2の対応関係に基づいてロードマップ画像を生成する。
【0018】
そして、第2の対応関係が決定した後に、天板、放射線発生部および放射線検出部の少なくとも一つの位置が変化した場合に、第1の対応関係に基づいてロードマップ画像をロードマップ画像生成手段は生成する。つまり、天板、放射線発生部および放射線検出部の少なくとも一つの位置を変化させつつ放射線撮影する場合には、2次元画像を連続的に出力しながら各々の2次元画像と3次元画像に基づく画像とを重畳してロードマップ画像を連続的に生成しつつ、ロードマップ画像に映り込んだ関心部位(例えば血管の経路)をたどって診断・治療を行う。
【0019】
したがって、デバイスの挿入や被検体の体動によりロードマップ画像における重畳の対象たる両画像(2次元画像・3次元画像に基づく画像)間において関心部位の位置ズレが生じた場合でも、レジストレーションを再度実施して第1の対応関係を新たに求める必要はない。そして、ある時点における2次元画像および3次元画像に基づく画像に映り込んだ関心部位が対応するような第2の対応関係を決定する。その結果、ロードマップ画像における重畳の対象たる両画像(2次元画像・3次元画像に基づく画像)間において関心部位の位置ズレが生じても位置合わせを正確に行うことができる。
【0020】
また、ロードマップ画像における重畳の対象たる両画像(2次元画像・3次元画像に基づく画像)間において関心部位の位置ズレが生じたとしても、関心部位が映り込んだ2方向の透視像や3次元画像を新たに取得する必要がない。したがって、例えば関心部位が血管の場合には、2方向の透視像や3次元画像を新たに取得するための造影剤投与が不要になり、被検体(被治療者)の負担を低減させるという効果をも奏する。また、ロードマップ画像における重畳の対象たる両画像(2次元画像・3次元画像に基づく画像)間において関心部位の位置ズレが生じたとしても、放射線発生部および放射線検出部からなる撮影系を回転させるために撮影系(放射線発生部および放射線検出部)を保持する保持機構(例えばCアーム)を回転させて2方向の透視像や3次元画像を新たに取得する必要がない。したがって、2方向の透視像や3次元画像を新たに取得するための動作を術者(治療者)が実施する必要がなくなるという効果をも奏する。また、全体的な検査時間を低減させて、術者・被検体の両方の負担を低減させるという効果をも奏する。さらに、例えば関心部位が血管の場合において、一時的な血管変形が解消された後で元の血管を改めて確認したい場合においても、過去に取得された2次元画像を参照すればよい。したがって、再度の撮影が不要となり、追加の被曝が不要となるという効果をも奏する。
【0021】
なお、ロードマップ画像における重畳の対象たる両画像(2次元画像・3次元画像に基づく画像)間において関心部位の位置ズレが生じるケースは、「発明が解決しようとする課題」の欄で述べたような関心部位(例えば血管)内にデバイスを挿入したことによって関心部位(例えば血管)の位置が局所的に変化する場合以外にも、被検体が天板に載置された状態で位置および体位が変わらずに被検体が動く(体動する)場合にも起こり得る。したがって、体動した場合においても、ロードマップ画像における重畳の対象たる両画像(2次元画像・3次元画像に基づく画像)間において関心部位の位置ズレが生じるので、ある時点における2次元画像および3次元画像に基づく画像に映り込んだ関心部位が対応するような第2の対応関係を決定することにより、関心領域対応関係決定手段による位置合わせを実施することにより決定された第2の対応関係に基づいてロードマップ画像を生成すればよい。
【0022】
また、第2の対応関係を記憶する第2の対応関係記憶手段を備え、第2の対応関係が決定した後に、天板、放射線発生部および放射線検出部の少なくとも一つの位置が変化した場合に、第2の対応関係記憶手段に記憶された第2の対応関係を棄却し、関心領域対応関係決定手段は、天板、放射線発生部および放射線検出部の少なくとも一つの位置が変化した時点における2次元画像および3次元画像に基づく画像に映り込んだ関心部位が対応するような第2の対応関係を決定し、決定された当該第2の対応関係を第2の対応関係記憶手段に記憶するのが好ましい。
【0023】
すなわち、第2の対応関係が決定した後に、天板、放射線発生部および放射線検出部の少なくとも一つの位置が変化した場合には、第1の対応関係に基づいてロードマップ画像を生成し直す。したがって、天板、放射線発生部および放射線検出部の少なくとも一つの位置が変化した時点では、当該時点における2次元画像および3次元画像に基づく画像が新たに取得される。そこで、変化前に決定された第2の対応関係を棄却し、同様に当該時点における2次元画像および3次元画像に基づく画像に映り込んだ関心部位が対応するような第2の対応関係を決定し直し、決定された当該第2の対応関係を第2の対応関係記憶手段に記憶する。このように、天板、放射線発生部および放射線検出部の少なくとも一つの位置が変化する度に、第2の対応関係を更新すればよい。
【0024】
また、2次元画像は、画素値の時間的な変化から抽出された最小値または最大値を有した画素から構成されたピークホールド画像であってもよい。例えば関心部位が血管の場合には、2次元画像が、画素値の時間的な変化から抽出された最小値を有したピークホールド画像であるので、少量の造影剤で血管形状を抽出させることができる。なお、白黒反転する場合には、画素値の時間的な変化から抽出された最大値を有したピークホールド画像を用いる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る放射線撮影装置によれば、予め取得された被検体についての3次元画像と、(被検体を載置する天板に)載置された状態における被検体とが対応するように、(放射線撮影装置における所定の)座標系と3次元画像との第1の対応関係を座標対応関係決定手段は決定する。一方、ある時点における2次元画像および3次元画像に基づく画像に映り込んだ関心部位が対応するような第2の対応関係を関心領域対応関係決定手段は決定する。上述した第1または第2の対応関係に基づいて、任意の時点における2次元画像と3次元画像に基づく画像とを重畳してロードマップ画像をロードマップ画像生成手段は生成する。そして、第2の対応関係が決定した後に、天板、放射線発生部および放射線検出部の少なくとも一つの位置が変化した場合に、第1の対応関係に基づいてロードマップ画像をロードマップ画像生成手段は生成する。したがって、デバイスの挿入や被検体の体動によりロードマップ画像における重畳の対象たる両画像(2次元画像・3次元画像に基づく画像)間において関心部位の位置ズレが生じた場合でも、第1の対応関係を新たに求める必要はない。そして、ある時点における2次元画像および3次元画像に基づく画像に映り込んだ関心部位が対応するような第2の対応関係を決定する。その結果、ロードマップ画像における重畳の対象たる両画像(2次元画像・3次元画像に基づく画像)間において関心部位の位置ズレが生じても位置合わせを正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施例に係るX線撮影装置の概略構成を示した側面図である。
【
図2】実施例に係るX線撮影装置の画像処理系のブロック図である。
【
図3】(a)~(c)はレジストレーションを手動で行う際の表示態様の一例である。
【
図4】実施例に係る各位置合わせを伴った一連の撮影のフローチャートである。
【
図5】(a)および(b)は手技中の位置合わせの説明に供する模式図である。
【
図6】
図4との比較のための従来の位置合わせを伴った一連の撮影のフローチャートである。
【
図7】血管位置が局所的に変化する場合の説明に供する模式図である。
【実施例】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図1は、実施例に係るX線撮影装置の概略構成を示した側面図であり、
図2は、実施例に係るX線撮影装置の画像処理系のブロック図であり、
図3(a)~
図3(c)は、レジストレーションを手動で行う際の表示態様の一例である。本実施例では、放射線撮影装置として、X線撮影装置を例に採って説明するとともに、関心部位として、血管を例に採って説明する。
【0028】
本実施例に係るX線撮影装置は、
図1に示すように、被検体Mを載置し、本体1bに対して長手方向に移動可能な可動式天板1aを有した検診台1と、被検体Mの撮影を行うX線撮像部2とを備えるとともに、
図2に示すように、画像処理系4とコントローラ6を備えている。可動式天板1aは、本発明における天板に相当し、コントローラ6は、本発明における制御手段に相当する。
【0029】
先ず、検診台1の機構について
図1を参照して説明する。可動式天板1aを本体1bに沿って水平方向(例えば図中のx方向またはy方向)に平行にスライド移動させるように構成されている。本体1bは鉛直方向(図中のz方向)に伸縮自在に構成されており、これによって可動式天板1aを鉛直方向に昇降移動させる。
図1では図示していないが、可動式天板1aを傾斜させてもよく、水平姿勢・起立姿勢・傾斜姿勢のいずれかに可動式天板1aを起倒させてもよい。例えば、モータ(図示省略)と、図示を省略する回転軸を介してモータに取り付けられたギア(図示省略)と、このギアに噛合され可動式天板1aを支持したラック(図示省略)とを備えることで、これらの移動を実現する。
【0030】
次に、X線撮像部2について
図1を参照して説明する。X線撮像部2は、天井面(図中のxy平面)に設置された基台部21と、基台部21に支持されたCアーム支持部22と、Cアーム支持部22に支持されたCアーム23と、Cアーム23の一端に支持されたX線管24と、他端に支持されたフラットパネル型X線検出器(FPD: Flat Panel Detector)25とを備えている。基台部21,Cアーム支持部22およびCアーム23によって、X線管24およびFPD25が互いに対向配置されて保持されている。X線管24は、本発明における放射線発生部に相当し、フラットパネル型X線検出器(FPD)25は、本発明における放射線検出部に相当する。
【0031】
天井面にはx方向に延在した固定レール31が設置されており、この固定レール31に移動レール支持部32が取り付けられ、y方向(紙面の奥行き方向)に延在した移動レール33が移動レール支持部32により懸垂支持されている。移動レール支持部32を介して移動レール33は固定レール31に沿ってx方向に平行にスライド移動する。移動レール33にはキャリッジ34が嵌合し、キャリッジ34は移動レール33に沿ってy方向に平行にスライド移動する。モータ(図示省略)などにより移動レール33やキャリッジ34などを平行移動させる。
【0032】
また、キャリッジ34に対して基台部21を鉛直軸(図中のz軸)心周りに回転移動させる第1撮像駆動部35を備えている。第1撮像駆動部35は、モータやベルトやギアボックスやギア(ギアを除いて図示省略)などを備えている。第1撮像駆動部35によって基台部21が鉛直軸心周りに回転移動することで、基台部21に支持されたCアーム支持部22も鉛直軸心周りに回転移動し、Cアーム支持部22に支持されたCアーム23も鉛直軸心周りに回転移動し、Cアーム23に支持されたX線管24およびFPD25も鉛直軸心周りに回転移動する。以上のように、第1撮像駆動部35は、X線撮像部2を鉛直軸心周りに回転移動させる。
【0033】
また、基台部21に対してCアーム支持部22を被検体Mの体軸(図中のx軸)の軸心周りに回転駆動させる第2撮像駆動部36を備えている。第2撮像駆動部36は、モータやベルトやギアボックスやギア(ギアを除いて図示省略)などを備えている。第2撮像駆動部36によって基台部21に対してCアーム支持部22が体軸の軸心周りに回転移動する。また、Cアーム支持部22に支持されたCアーム23も体軸の軸心周りに回転移動し、Cアーム23に支持されたX線管24およびFPD25も体軸の軸心周りに回転移動する。以上のように、第2撮像駆動部36は、X線撮像部2を体軸の軸心周りに回転移動させる。
【0034】
また、Cアーム23を被検体Mの体軸(図中のx軸)に対して水平面で直交する軸(図中のy軸)心周りに回転駆動させるために、ベアリング37,ベルト38およびモータ39を備えている。Cアーム23はレール形状で形成されており、2つのベアリング37がCアーム23の溝部に嵌合し、ベルト38がCアーム23の外周面に沿って付設され、モータ39がベルト38の一部を巻き取るように配置されている。モータ39が回転駆動することで、ベルト38が周回し、それに伴ってベアリング37に対してCアーム23が摺動する。この摺動によりCアーム23が、体軸に対して水平面で直交する軸の軸心周りに回転移動する。また、Cアーム23に支持されたX線管24およびFPD25も体軸に対して水平面で直交する軸の軸心周りに回転移動する。以上のように、ベアリング37,ベルト38およびモータ39は、X線管24およびFPD25を体軸に対して水平面で直交する軸の軸心周りに回転駆動させる。
【0035】
なお、移動レール33が固定レール31に沿ってx方向に平行にスライド移動することで、移動レール33に嵌合したキャリッジ34もx方向に平行移動し、キャリッジ34に支持された基台部21もx方向に平行移動する。また、基台部21に支持されたCアーム支持部22もx方向に平行移動し、Cアーム支持部22に支持されたCアーム23もx方向に平行移動し、Cアーム23に支持されたX線管24およびFPD25もx方向に平行移動する。以上のように、移動レール33は、X線撮像部2をx方向に平行移動させる。
【0036】
また、キャリッジ34が移動レール33に沿ってy方向に平行にスライド移動することで、キャリッジ34に支持された基台部21もy方向に平行移動する。また、基台部21に支持されたCアーム支持部22もy方向に平行移動し、Cアーム支持部22に支持されたCアーム23もy方向に平行移動し、Cアーム23に支持されたX線管24およびFPD25もy方向に平行移動する。以上のように、キャリッジ34は、X線撮像部2をy方向に平行移動させる。
【0037】
この他に、Cアーム23がFPD25を支持する支持軸心周りに回転移動させるFPD移動部(図示省略)などを備えている。また、Cアーム支持部22またはCアーム23を鉛直軸に沿って昇降移動させることで、X線撮像部2を鉛直軸に沿って平行駆動させる撮像部昇降部(図示省略)を備えてもよい。
【0038】
なお、Cアーム23がFPD25を支持する支持軸方向に沿って、FPD25を平行移動させるFPD移動部(図示省略)を備えてもよい。この場合には、Cアーム23がFPD25を支持する支持軸が、X線管24からFPD25に下ろした垂線(すなわち照射中心軸)方向に平行であるので、FPD移動部が支持軸方向に沿ってFPD25を平行移動させることで、FPD25を垂線方向に沿って平行移動させることになる。すなわち、X線管24からFPD25に垂線を下ろした距離(すなわちSID: Source Image Distance)をFPD移動部が可変にして、FPD25を垂線方向に沿って平行移動させる。
【0039】
検診台1やX線撮像部2を上述のように移動させて、X線管24から照射されたX線をFPD25が検出して得られたX線検出信号を、後述する画像処理系4(
図2を参照)で処理することで被検体MのX線画像を得る。特に、本実施例では術前に得られたCT画像(血管が映り込んだ臨床用3次元画像)を透視像または血管ライブ画像の撮影時における撮影方向に投影した2D投影像(2次元投影画像)を、当該撮影時における3次元画像に基づく画像として生成し、X線検出信号に基づくFPD25の検出面に投影された透視像、または血管が映り込んだ血管ライブ画像をリアルタイムに取得し、透視像または血管ライブ画像と2D投影像(2次元投影画像)とを重畳してロードマップ画像を生成する。なお、造影剤を高頻度に投与すると被検体Mに負担がかかる。そこで、後述する2次元補正情報を算出するときのみ造影剤を投与して血管ライブ画像を取得し、それ以外は、直前に取得された血管ライブ画像を用いる。血管内にデバイスを挿入することによって、あるいは被検体Mが動く(体動する)ことによって、透視像・2D投影像間において2次元的な血管の位置ズレが生じる。このような血管の位置ズレが生じた場合に、後述する2次元補正情報を決定するための位置合わせ(手技中の位置合わせ)を実施し、当該位置合わせ後の透視像または血管ライブ画像と2D投影像(2次元投影画像)とを重畳してロードマップ画像を生成する。各々の画像やそれらに基づく画像処理については、詳しく後述する。
【0040】
コントローラ6(
図2を参照)は、X線撮影装置を構成する各部分を統括制御する。特に、本実施例では(被検体Mを載置する)可動式天板1a、(被検体Mに向けてX線を発生する)X線管24および(被検体Mを透過したX線を検出して2次元画像である透視像を出力する)FPD25の少なくとも一つの位置を所定の座標系上で制御する。
図1ではCアーム23がX線管24およびFPD25を支持し、Cアーム23の移動に伴ってX線管24およびFPD25が互いに対向配置を維持して一体となって移動するので、コントローラ6は可動式天板1aが所定の座標系上に位置するように制御するとともに、X線管24およびFPD25が当該座標系上に位置するように制御する。
【0041】
次に、画像処理系4について
図2を参照して説明する。画像処理系4は、キャリブレーションを実施するキャリブレーション部41と、CT画像である臨床用3次元画像を記憶するCT画像メモリ部42と、レジストレーションを実施するレジストレーション部43と、3次元補正情報を記憶する3次元補正情報メモリ部44と、臨床用3次元画像を透視像または血管ライブ画像の撮影時における撮影方向に投影した2D投影像(2次元投影画像)を、当該撮影時における3次元画像に基づく画像として生成する2D投影像生成部45と、X線検出信号に基づくFPD25の検出面に投影された透視像を一旦記憶する透視像メモリ部46と、造影剤投与後の透視像からピークホールド画像を求めるピークホールド処理部47と、ピークホールド画像と造影剤投与前の透視像とのデジタルサブトラクション血管造影(DSA: Digital Subtraction Angiography)画像を血管ライブ画像として求めるDSA処理部48と、手技中の位置合わせを実施する手技中位置合わせ部49と、2次元補正情報を記憶する2次元補正情報メモリ部50と、透視像または血管ライブ画像と2D投影像(2次元投影画像)とを重畳してロードマップ画像を生成するロードマップ画像生成部51とを備えている。3次元補正情報は、本発明における第1の対応関係に相当し、2次元補正情報は、本発明における第2の対応関係に相当する。
【0042】
その他に、画像処理系4は、各々の画像(例えば透視像または血管ライブ画像と2D投影像とを重畳したロードマップ画像)を表示するモニタ52と、モニタ52上の画面に表示されるポインタを操作する操作部53とを備えている。操作部53は、術者(治療者)が入力したデータや命令を入力するためであって、マウスやキーボードやジョイスティックやトラックボールやタッチパネルなどに代表されるポインティングデバイスで構成されている。なお、
図2では、図示の便宜上、各々の画像を処理する構成からモニタ52を結ぶ結線については、ロードマップ画像生成部51からモニタ52を結ぶ結線を除き図示を省略する。レジストレーションを手動で行う場合には、操作部53は、本発明における座標対応関係決定手段に相当する。
【0043】
キャリブレーション部41は、校正ファントムのみが映り込んだファントム像を用いて設定されたジオメトリ(例えばCアーム23(
図1も参照)の位置や可動式天板1a(
図1を参照)の位置)と実際のジオメトリとのズレを補正する。例えば、臨床中のCアーム23の角度が60°という情報がCアーム23から通知されても実際には59°であったりする。このようなズレによる誤差を修正するために、事前に校正ファントムを撮影してファントム像を取得する。そして、ファントム像を用いて補正情報を自動的に算出する処理を実施する。この処理は「キャリブレーション」と呼ばれる。
【0044】
なお、具体的なキャリブレーションの手法については公知であるので、その説明を省略する。キャリブレーション部41で得られた補正情報をレジストレーション部43に送り込む。Cアーム23や可動式天板1aが移動する度にキャリブレーション部41で得られた補正情報をレジストレーション部43に送り込む。言い換えれば、Cアーム23や可動式天板1aが移動しない場合には、キャリブレーション部41で得られた補正情報をレジストレーション部43に送り込む必要はない。
【0045】
ランドマーク(例えば骨やマーカ)および血管が映り込んだ臨床用3次元画像をCT画像としてCT画像メモリ部42に書き込んで記憶する。「背景技術」の欄でも述べたようにCT装置として、本実施例に係るX線撮影装置とは別の外部装置(例えばX線CT装置やMRI装置や診断・治療時とは別のX線撮影装置)から得られた臨床用3次元画像を用いて、レジストレーション部43によるレジストレーションに供する。ただし、被検体M(
図1を参照)が可動式天板1aから一旦降りて、可動式天板1aに再度に載った場合には体位(方向)や被検体Mの位置が変化するので、その場合には本実施例に係るX線撮影装置と同じ装置から得られた術前の臨床用3次元画像を用いて、レジストレーション部43によるレジストレーションに供する。したがって、本実施例に係るX線撮影装置と同じ装置から得られた術前の臨床用3次元画像をCT画像メモリ部42に書き込んで記憶することも可能である。CT画像メモリ部42に記憶された臨床用3次元画像を読み出してレジストレーション部43および2D投影像生成部45に送り込む。
【0046】
レジストレーション部43は、キャリブレーション部41で得られた(1)補正情報、(2)透視像および(3)臨床用3次元画像を用いて、臨床用3次元画像と透視像との位置合わせを、各画像に映り込んだランドマークを基準にして行う。すなわち、レジストレーションを実施する。レジストレーションを実施することにより、予め取得された被検体Mについての臨床用3次元画像と、(可動式天板1aに)載置された状態における被検体Mとが対応するように、(本実施例に係るX線撮影装置における)座標系と臨床用3次元画像とを対応付けた3次元補正情報(第1の対応関係)を算出する。レジストレーション部43は、本発明における座標対応関係決定手段に相当する。
【0047】
なお、具体的なレジストレーション部43によるレジストレーションについては
図4で後述する。レジストレーション部43で得られた3次元補正情報を3次元補正情報メモリ部44に送り込む。当該3次元補正情報を3次元補正情報メモリ部44に書き込んで記憶する。そして、2D投影像生成部45による2D投影像(2次元投影画像)の生成、またはロードマップ画像生成部51によるロードマップ画像の生成を行う際に、3次元補正情報メモリ部44に記憶された3次元補正情報を読み出して2D投影像生成部45およびロードマップ画像生成部51に送り込む。
【0048】
2D投影像生成部45は、3次元補正情報メモリ部44に記憶された3次元補正情報、および透視像または血管ライブ画像の撮影時における撮影情報を用いて、血管が映り込んだ臨床用3次元画像を透視像または血管ライブ画像の撮影時における撮影方向に投影した2D投影像(2次元投影画像)を、当該撮影時における3次元画像に基づく画像として生成する。具体的には、撮影情報としてCアーム23の位置および可動式天板1aの位置を本実施例では採用する。Cアーム23の位置によってCアーム23に支持されたX線管24(
図1も参照)の焦点位置(視点)が求まり、視点であるX線管24の位置、可動式天板1aの位置、およびCアーム23に支持されたFPD25(
図1も参照)の位置から投影方向が求まる。これらのCアーム23(Cアーム23に支持されたX線管24およびFPD25)の位置および可動式天板1aの位置に応じた撮影情報、さらに3次元補正情報を用いて、2D投影像を生成する。
【0049】
なお、具体的な2D投影像生成部45による2D投影像の生成については
図4で後述する。2D投影像生成部45で生成された2D投影像を手技中位置合わせ部49およびロードマップ画像生成部51に送り込む。
【0050】
被検体Mを可動式天板1aに載置して、透視像または血管ライブ画像の撮影時における箇所でX線管24からX線を被検体Mに照射してFPD25がX線を検出することにより、X線検出信号を取得する。当該X線検出信号に基づくFPD25の検出面に投影された被検体Mの透視像を透視像メモリ部46に書き込んで記憶する。
【0051】
なお、造影剤投与によって透視像には血管が映り込むが、血管以外の背景領域(骨や臓器等)も併せて映り込んでしまう。そこで、これらの背景領域を除外するために、先に造影剤投与前の透視像を取得して、その後に造影剤を投与した透視像を複数枚取得する。そして、造影剤投与前の透視像や造影剤投与後の透視像を透視像メモリ部46に書き込んで記憶し、造影剤投与前の透視像についてはDSA処理部48に送り込み、造影剤投与後の各々の透視像についてはピークホールド処理部47に送り込んでピークホールド画像を求めた後に、当該ピークホールド画像をDSA処理部48に送り込む。ピークホールド画像と造影剤投与前の透視像との差分であるデジタルサブトラクション血管造影画像を血管ライブ画像としてDSA処理部48が求めることで、背景領域を除外して血管のみが映り込んだ血管ライブ画像を取得する。
【0052】
なお、造影剤投与の開始については、装置に手動で通達してもよい。また、造影剤の流入を自動で検知して、造影剤の流入に伴う検知信号の入力に同期して後述する手技中の位置合わせを開始することで、リアルタイムな位置合わせを実施してもよい。
【0053】
ピークホールド処理部47は、造影剤投与後の各々の透視像において画素値の時間的な変化から抽出された最小値を有した画素から構成されたピークホールド画像を求める。すなわち、造影剤投与によって血管が黒っぽく映って血管の画素値が低くなるので、造影剤投与後の各々の透視像において画素値の最小値をホールドして、最小値を有した画素から構成されたピークホールド画像を求めることで、血管形状が抽出されたピークホールド画像を取得することができる。なお、白黒反転する場合には、白黒反転後における画素値の時間的な変化から抽出された最大値を有した画素から構成されたピークホールド画像を求める。
【0054】
このように、血管ライブ画像を取得するのに、ピークホールド処理部47およびDSA処理部48を経るが、ピークホールド処理部47およびDSA処理部48は複雑な演算を必要としない。したがって、血管ライブ画像は多少のタイムラグが生じるが、リアルタイムに得られる。血管ライブ画像を手技中位置合わせ部49およびロードマップ画像生成部51に送り込む。
【0055】
血管内にデバイスを挿入することによって、あるいは被検体Mが動く(体動する)ことによって、透視像・2D投影像間において2次元的な血管の位置ズレが生じる。そこで、手技中位置合わせ部49は、ピークホールド処理部47およびDSA処理部48を経て生成された血管ライブ画像、および2D投影像生成部45で生成された2D投影像を用いて、血管ライブ画像と2D投影像との位置合わせを、各画像に映り込んだ血管を基準にして行う。すなわち、手技中の位置合わせを実施する。手技中の位置合わせを実施することにより、ある時点における血管ライブ画像および2D投影像に映り込んだ血管が対応するような2次元補正情報(第2の対応関係)を算出する。手技中位置合わせ部49は、本発明における関心領域対応関係決定手段に相当する。
【0056】
なお、具体的な手技中位置合わせ部49による手技中の位置合わせについては
図4および
図5で後述する。手技中位置合わせ部49で得られた2次元補正情報を2次元補正情報メモリ部50に送り込む。当該2次元補正情報を2次元補正情報メモリ部50に書き込んで記憶する。そして、ロードマップ画像生成部51によるロードマップ画像の生成を行う際に、2次元補正情報メモリ部50に記憶された2次元補正情報を読み出してロードマップ画像生成部51に送り込む。2次元補正情報メモリ部50は、本発明における第2の対応関係記憶手段に相当する。
【0057】
撮影情報としてCアーム23の位置や可動式天板1aの位置が、透視像または血管ライブ画像の撮影中でのCアーム23や可動式天板1aの移動によって変わる場合がある。その場合には、2次元補正情報メモリ部50に記憶された2次元補正情報を棄却し、手技中位置合わせ部49による手技中の位置合わせを再度実施し、2次元補正情報を新たに算出する。Cアーム23の位置や可動式天板1aの位置が変わらない場合には、2次元補正情報を新たに算出する必要がなく、手技中位置合わせ部49で得られた2次元補正情報に基づいて、透視像または血管ライブ画像よりも後で得られた各々の透視像または血管ライブ画像と2D投影像とを重畳してロードマップ画像を生成する。これにより、手技中において位置合わせが実施された状態でロードマップ画像をモニタ52に逐次に表示することで、位置ズレが解消された状態でロードマップ画像を動画表示して透視を行うことができる。
【0058】
ロードマップ画像生成部51は、3次元補正情報または2次元補正情報に基づいて、透視像または血管ライブ画像と2D投影像とを重畳してロードマップ画像を生成する。上述したように造影剤を高頻度に投与すると被検体Mに負担がかかる。そこで、血管の位置ズレあるいはCアーム23や可動式天板1aが移動することによって、2次元補正情報を算出するときのみ造影剤を投与して血管ライブ画像を取得し、それ以外は、直前に取得された血管ライブ画像を用いる。そして、重畳してロードマップ画像を生成するときには、直前に取得された血管ライブ画像またはリアルタイムに取得された(造影剤投与前の)透視像と2D投影像とを重畳してロードマップ画像を生成すればよい。血管の位置ズレがない場合やCアーム23や可動式天板1aが移動しない場合には、レジストレーション部43や手技中位置合わせ部49によって位置合わせが既に実施されているので、直前に取得された血管ライブ画像またはリアルタイムに取得された透視像と2D投影像とを重畳してロードマップ画像を生成しても問題はない。ロードマップ画像生成部51で生成されたロードマップ画像をモニタ52に送り込む。ロードマップ画像生成部51は、本発明におけるロードマップ画像生成手段に相当する。
【0059】
なお、上述したレジストレーションを手動で行ってもよい。レジストレーションを手動で行う場合には、
図3に示すようにモニタ52上に透視像を表示するとともに、臨床用3次元画像を当該透視像の撮影方向に投影して表示する。当該透視像に映り込んだランドマーク(
図3では骨)と、臨床用3次元画像を当該透視像の撮影方向に投影して映り込んだランドマークとがモニタ52上の画面に一致するように操作部53によって操作する。
図3では、図示の便宜上、各画像に映り込んだ血管については図示を省略する。
【0060】
例えば、
図3(a)に示すように臨床用3次元画像と透視像との間に回転ズレがある場合には、モニタ52上の画面に表示されるポインタを操作部53のマウスによって回転操作する。
図3(b)に示すように回転ズレが解消された臨床用3次元画像と透視像との間に平行ズレがある場合には、モニタ52上の画面に表示されるポインタを操作部53のマウスによって平行に操作(ドラッグ)する。その他に、各ランドマークの大きさが互いに異なる場合には奥行き方向に平行移動してランドマークの大きさがモニタ52上の画面に一致するように操作部53のマウスによって操作する。これらの操作によって、
図3(c)に示すような回転ズレおよび平行ズレなどが解消された臨床用3次元画像と透視像とがモニタ52上の画面に表示される。なお、この位置合わせ(レジストレーション)では、2次元上でなく3次元的に位置ズレが解消されることに留意されたい。
【0061】
同様に、別の方向からのX線の照射により得られた透視像に対しても、モニタ52上に当該透視像を表示するとともに、臨床用3次元画像を当該透視像の撮影方向に投影して表示し、当該透視像に映り込んだランドマークと、臨床用3次元画像を当該透視像の撮影方向に投影して映り込んだランドマークとがモニタ52上の画面に一致するように操作部53によって操作する。そして、操作部53によるモニタ52上の画面に表示されるポインタの操作量に連動して3次元補正情報を算出して3次元補正情報メモリ部44に送り込む。このようにレジストレーションを手動で行う場合には、上述したように操作部53は、本発明における座標対応関係決定手段に相当する。
【0062】
コントローラ6は、中央演算処理装置(CPU)あるいはプログラムデータに応じて内部の使用するハードウェア回路(例えば論理回路)が変更可能なプログラマブルデバイス(例えばFPGA(Field Programmable Gate Array))などで構成されている。キャリブレーション部41やレジストレーション部43や2D投影像生成部45や手技中位置合わせ部49やロードマップ画像生成部51は、GPU(Graphics Processing Unit),CPUあるいはプログラマブルデバイスなどで構成されている。CT画像メモリ部42や3次元補正情報メモリ部44や透視像メモリ部46や2次元補正情報メモリ部50は、RAM(Random-Access Memory)などに代表される記憶媒体で構成されている。ピークホールド処理部47は専用のピークホールド回路で構成されていたり、あるいはCPUやGPUを用いて処理を実施する。DSA処理部48に関してもオペアンプや抵抗からなる減算器で構成されていたり、またはCPUやGPUを使用して処理を実施する。
【0063】
次に、各位置合わせを伴った一連の撮影について、
図1~
図3とともに、
図4および
図5を参照して説明する。
図4は、実施例に係る各位置合わせを伴った一連の撮影のフローチャートであり、
図5(a)および
図5(b)は、手技中の位置合わせの説明に供する模式図である。
【0064】
(ステップS1)キャリブレーション実施
キャリブレーション部41(
図2を参照)は、校正ファントムのみが映り込んだファントム像を用いて、ファントム像が映った2D画像から装置の歪みや位置ズレを補正し、これらのズレによる誤差を修正するための補正情報を自動的に算出する。つまり、キャリブレーションによって装置据え付け時のズレや装置の移動時のズレを補正するための情報(補正情報)を算出する。
【0065】
キャリブレーションを実施することによって補正情報を算出し、Cアーム23(
図1および
図2を参照)や可動式天板1a(
図1を参照)が移動する度に補正情報をレジストレーション部43(
図2を参照)に送り込む。レジストレーション部43による後述するステップS2,S3のレジストレーションを実施するためには、少なくとも2方向からのX線の照射により得られた少なくとも2枚の透視像が必要で、そのためにはCアーム23および可動式天板1aを移動させてX線管24(
図1および
図2を参照)から被検体Mに向けて照射してFPD25(
図1および
図2を参照)が検出しなければならない。
【0066】
(ステップS2)レジストレーション開始
レジストレーション部43は、キャリブレーション部41で得られた(1)補正情報、(2)透視像および(3)臨床用3次元画像を用いて、臨床用3次元画像と透視像との位置合わせを、各画像に映り込んだランドマークを基準にして行う。すなわち、レジストレーションを開始する。
【0067】
(ステップS3)レジストレーション実施
例えば、相互情報量などを用いた公知の手法によってレジストレーションを自動的に実施する。上述したようにレジストレーションを手動で行う場合には、モニタ52(
図2および
図3を参照)上に透視像を表示するとともに、臨床用3次元画像を当該透視像の撮影方向に投影して表示し、当該透視像に映り込んだランドマークと、臨床用3次元画像を当該透視像の撮影方向に投影して映り込んだランドマークとがモニタ52上の画面に一致するように操作部53(
図2を参照)によって操作する。そして、操作部53によるモニタ52上の画面に表示されるポインタの操作量に連動して3次元補正情報を算出する。レジストレーションによって算出した3次元補正情報を3次元補正情報メモリ部44(
図2を参照)に書き込んで記憶する。
【0068】
3次元補正情報を行列Mとすると、行列Mは、下記(1)式のような成分を並べて表される。
【0069】
【0070】
上記(1)式中の成分M11,M12,M13,M21,M22,M23,M31,M32,M33は回転成分である。上記(1)式中の成分Mxはx方向の平行移動成分,成分Myはy方向の平行移動成分,成分Mzはz方向の平行移動成分である。なお、3次元空間では奥行き方向への平行移動成分(Mx,My,Mz)が2次元上でのスケーリングとなる。
【0071】
上述したように被検体Mが可動式天板1aから一旦降りて、可動式天板1aに再度に載った場合には体位(方向)や被検体Mの位置がどうしても変化してしまう。この場合には、座標系が同じであってもレジストレーションを実施する必要がある。したがって、その場合には本実施例に係るX線撮影装置と同じ装置から得られた術前の臨床用3次元画像を用いて、レジストレーション部43によるレジストレーションを実施する。レジストレーションを実施しない場合には、3次元補正情報の替わりに初期位置補正情報(例えば単位行列など)を使用する。
【0072】
ここでは、本実施例に係るX線撮影装置から得られた少なくとも2枚の透視像と)臨床用3次元画像とを用いてレジストレーションを実施したが、本実施例に係るX線撮影装置から得られた3次元画像と臨床用3次元画像とを用いてレジストレーションを実施してもよい。
【0073】
(ステップS4)3Dロードマップ開始
ロードマップ画像生成部51(
図2を参照)は、ロードマップ画像を生成する「3Dロードマップ」を開始する。
【0074】
(ステップS5)2D投影像の生成
2D投影像生成部45(
図2を参照)は、臨床用3次元画像を透視像または血管ライブ画像の撮影時における撮影方向に投影した2D投影像(2次元投影画像)を、当該撮影時における3次元画像に基づく画像として生成する。また、撮影情報としてCアーム23の位置および可動式天板1aの位置を用いた場合、Cアーム23の位置から求まったX線管24の焦点位置(視点)、さらに視点であるX線管24の位置、可動式天板1aの位置およびFPD25の位置から求まった投影方向を用いて、投影像生成行列を求める。
【0075】
投影像生成行列をPとすると、投影像生成行列Pは投影空間への座標系変換および透視投影変換を行う行列となる。この行列をPとする。
【0076】
視点および可動式天板1aの位置に応じた投影像生成行列P,さらに3次元補正情報メモリ部44に記憶された3次元補正情報である行列Mを用いて、2D投影像を生成する。CT画像におけるボリュームデータのボクセル座標(頂点位置ベクトル)をVとする。頂点位置ベクトルVは列ベクトルであって、下記(2)式のように表される。
【0077】
【0078】
上記(2)式中のtは転置行列である。さらに、これらの行列P,Mを用いると頂点位置ベクトルVはV’に変換される。変換後の頂点位置ベクトルV’は、これらの行列P,Mや元の頂点位置ベクトルVを用いると下記(3)式のように表される。
【0079】
【0080】
上記(3)式によって変換された頂点位置ベクトルV’を2D投影像に変換する。具体的には、透視像または血管ライブ画像の撮影時における撮影方向に投影するレンダリング時(レイキャスト)にz座標は消失する。レンダリング後の2次元位置ベクトルをVprojとすると、頂点位置ベクトルVと同様にレンダリング後の2次元位置ベクトルVprojは列ベクトルであって、下記(4)式のように表される。
【0081】
【0082】
上記(4)式中のtは転置行列である。レンダリング後の2次元位置ベクトルV
projは2D投影像のピクセル座標(2次元位置ベクトル)であるので、レンダリング後の2次元位置ベクトルV
projから2D投影像を生成する。2D投影像を手技中位置合わせ部49(
図2を参照)およびロードマップ画像生成部51に送り込む。
【0083】
(ステップS6)簡易補正実行
後述する手技中の位置合わせを実施するための簡易補正を実行する。これにより、血管内にデバイスを挿入することによって、あるいは体動することによって、透視像・2D投影像間において2次元的な血管の位置ズレが生じる場合には、血管ライブ画像に対する2D投影像の位置合わせ、すなわち手技中の位置合わせを実施する。
【0084】
(ステップS7)2次元補正情報の算出および2D投影像の位置合わせ
手技中位置合わせ部49は、血管ライブ画像中の特定血管に位置ズレが生じた場合に、血管ライブ画像および2D投影像を用いて、各画像に映り込んだ血管を基準にした血管ライブ画像に対する2D投影像の位置合わせ(手技中の位置合わせ)を実施する。血管ライブ画像については、手技中におけるリアルタイムに得られる画像のみならず、過去(直前)に取得された画像であってもよい。
【0085】
レジストレーション部43や手技中位置合わせ部49によって位置合わせが既に実施され、3次元補正情報(本実施例では行列M)を用いて2D投影像を生成している。したがって、2D投影像と透視像または血管ライブ画像とは互いに対応付けられており、たとえ血管が密集していたとしても、一方の画像に映り込んだ特定血管を、他方の画像に映り込んだ隣接あるいは近接している血管と誤認識することはない。
【0086】
手技中の位置合わせでは、
図5に示すように、血管ライブ画像中の特定血管の周辺領域画像Tと、周辺領域画像Tに対応する2D投影像との位置合わせを行う。上述したように、一方の画像に映り込んだ特定血管を、他方の画像に映り込んだ隣接あるいは近接している血管と誤認識することがないので、血管ライブ画像中の特定血管の周辺領域画像Tと、周辺領域画像Tに対応する2D投影像との位置合わせを行うことにより、手技中の位置合わせを実施することができる。手技中の位置合わせでは、特定血管の周辺領域画像の数が多ければ多いほど、手技中の位置合わせをより正確に実施することができる。もちろん、特定血管の周辺領域画像の数は1つであってもよく、後述する2次元補正情報である2次元補正行列Aを他の周辺領域画像に適用することで、手技中の位置合わせを実施してもよい。
【0087】
図3に示すレジストレーションと同様に、
図5に示す周辺領域画像Tの特定血管に位置ズレが生じたことに伴い各周辺領域画像Tに位置ズレが生じた場合には、その位置ズレがなくなるような移動量を演算する。例えば、
図5(a)に示すように周辺領域画像Tの特定血管に平行ズレが生じたことに伴い各周辺領域画像Tに平行ズレが生じた場合には、その平行ズレがなくなるような平行移動量を演算する。その平行移動量を2D投影像に適用することで、
図5(b)に示すように2D投影像が平行移動して、血管ライブ画像に対する2D投影像の位置合わせが実施される。その他に、周辺領域画像の特定血管に回転ズレが生じたことに伴い各周辺領域画像に回転ズレが生じた場合には、その回転ズレがなくなるような回転移動量を演算する。その回転移動量を2D投影像に適用することで、2D投影像が回転移動して、血管ライブ画像に対する2D投影像の位置合わせが実施される。
【0088】
この血管ライブ画像に対する2D投影像の位置合わせ(手技中の位置合わせ)を実施することにより、ある時点における血管ライブ画像および2D投影像に映り込んだ血管が対応するような2次元補正情報(第2の対応関係)を算出する。これらの移動量を2次元補正情報とする。手技中の位置合わせによって算出した当該2次元補正情報を2次元補正情報メモリ部50(
図2を参照)に書き込んで記憶する。
【0089】
2次元補正情報を2次元補正行列Aとすると、2次元補正行列Aは、下記(5)式のような成分を並べて表される。
【0090】
【0091】
上記(5)式中の成分A11,A12,A21,A22は回転成分である。また、対角成分(A11,A22)は回転成分のみではなく、スケーリング係数でもある。上記(5)式中の成分Axはx方向の平行移動成分,成分Ayはy方向の平行移動成分である。
【0092】
なお、周辺領域画像の大きさについては特に限定されず、例えば画素単位であってもよい。したがって、画素単位毎に2次元補正行列Aを求めてもよい。つまり、画素単位毎に2次元補正行列Aを求める場合には、各画素位置(x、y)毎に2次元補正行列A中の成分は異なる。画素単位毎に2次元補正行列Aを求める場合には、画像中の全画素数が周辺領域画像の数となるので、画素単位毎に2次元補正行列Aを2D投影像にそれぞれ適用することで、手技中の位置合わせをより一層正確に実施することができる。
【0093】
上記(5)式で算出した2次元補正行列Aを用いて、血管ライブ画像に対する2D投影像の位置合わせ(手技中の位置合わせ)を実施する。具体的には、下記(6)式のように、2次元補正行列Aを、上記(4)式で算出したレンダリング後の2次元位置ベクトルVprojに乗算する。
【0094】
【0095】
上記(6)式中のV’’は、乗算して得られた位置合わせ後の2次元位置ベクトルである。レンダリング後の2次元位置ベクトルVprojと同様に位置合わせ後の2次元位置ベクトルV’’は2D投影像のピクセル座標(2次元位置ベクトル)であるので、位置合わせ後の2次元位置ベクトルV’’から、位置合わせした2D投影像を生成する。
【0096】
(ステップS8)位置合わせした2D投影像・透視像の重畳表示
ロードマップ画像生成部51は、ステップS7で位置合わせした2D投影像と透視像とを重畳してロードマップ画像を生成してモニタ52に表示する。つまり、ロードマップ画像生成部51は、2次元補正情報(第2の対応関係)に基づいて、任意の時点における透視像と2D投影像とを重畳してロードマップ画像を生成する。また、ステップS3でレジストレーションが実施された状態で3次元補正情報を用いて2D投影像を生成しているので、ロードマップ画像生成部51は、3次元補正情報(第1の対応関係)に基づいて、任意の時点における透視像と2D投影像とを重畳してロードマップ画像を生成していることにもなる。
【0097】
透視像の替わりに血管ライブ画像を用いて、ステップS7で位置合わせした2D投影像と血管ライブ画像とを重畳してロードマップ画像を生成してモニタ52に表示してもよい。ステップS7での手技中の位置合わせでは、血管が映り込んだ画像が必要であるので、血管ライブ画像が必要であるが、ロードマップ画像の生成時には、血管が映り込んでいない(造影剤投与前の)透視像と2D投影像とを重畳してもよいし、血管が映り込んだ血管ライブ画像と2D投影像とを重畳してもよい。
【0098】
(ステップS9)Cアームまたは天板移動
透視像または血管ライブ画像の撮影中にCアーム23や可動式天板1aが移動した場合には次のステップS10に移行する。透視像または血管ライブ画像の撮影中にCアーム23や可動式天板1aが移動せずにCアーム23の位置や可動式天板1aの位置が変わらない場合にはステップS6に戻り、ステップS7の位置合わせで用いた血管ライブ画像よりも後で得られた各々の血管ライブ画像に対する2D投影像の位置合わせ(手技中の位置合わせ)を繰り返し実施する。
【0099】
つまり、透視像または血管ライブ画像の撮影中にCアーム23や可動式天板1aが移動せずにCアーム23の位置や可動式天板1aの位置が変わらない場合で、かつ血管の位置ズレが新たに生じない場合には、2次元補正情報(本実施例では上記(5)式で算出した2次元補正行列A)を新たに算出せずに、既に算出された2次元補正情報を用いて手技中の位置合わせを繰り返し実施する。同様に、位置合わせした2D投影像と透視像または血管ライブ画像とを重畳したロードマップ画像を逐次に表示することで、位置ズレが解消された状態でロードマップ画像を動画表示して透視を行う。
【0100】
(ステップS10)2次元補正情報の破棄
透視像または血管ライブ画像の撮影中にCアーム23や可動式天板1aが移動した場合には2次元補正情報メモリ部50に記憶された2次元補正情報を棄却して、ステップS5に戻る。そして、その時のCアーム23の位置および可動式天板1aの位置を撮影情報として用いて、2D投影像を再度に生成する。
【0101】
ここで、
図4との比較のために従来の位置合わせを伴った一連の撮影について、
図6を参照して説明する。
図6は、
図4との比較のための従来の位置合わせを伴った一連の撮影のフローチャートである。
【0102】
図4のステップS1は
図6のステップS51に対応し、
図4のステップS2は
図6のステップS52に対応し、
図4のステップS3は
図6のステップS53に対応し、
図4のステップS4は
図6のステップS54に対応する。
図4のステップS5は
図6のステップS55に対応し、
図4のステップS8は
図6のステップS58に対応し、
図4のステップS9は
図6のステップS59に対応する。
【0103】
つまり、本実施例では、
図4のステップS6(簡易補正実行),ステップS7(2次元補正情報の算出および2D投影像の位置合わせ)およびステップS10(2次元補正情報の破棄)を新たに追加したのが本発明における特徴部分である。したがって、透視像・2D投影像間において2次元的な血管の位置ズレが生じると、従来では手技を中断して血管が映り込んだ2方向の透視像(血管像)を得るために、2回の造影剤投与を伴った撮影が必要であった。
【0104】
それに対して、本実施例では、
図4のステップS6(簡易補正実行),ステップS7(2次元補正情報の算出および2D投影像の位置合わせ)を追加したことにより、血管ライブ画像中の特定血管に位置ズレが生じた場合に、血管ライブ画像および2D投影像を用いて、各画像に映り込んだ血管を基準にした血管ライブ画像に対する2D投影像の位置合わせ(手技中の位置合わせ)を実施する。したがって、この血管ライブ画像に対する2D投影像の位置合わせ(手技中の位置合わせ)を実施することにより、ある時点における血管ライブ画像および2D投影像に映り込んだ血管が対応するような2次元補正情報(第2の対応関係)を算出し、ロードマップ画像における重畳の対象たる両画像(透視像・2D投影像)間において血管の位置ズレが生じても位置合わせを正確に行うことができる。
【0105】
なお、従来では本実施例における手技中の位置合わせを実施していないので、従来の
図6のステップS58では、単なる2D投影像・透視像の重畳表示を行う。
【0106】
また、従来の
図6のステップS59では、透視像または血管ライブ画像の撮影中にCアーム23や可動式天板1aが移動せずにCアーム23の位置や可動式天板1aの位置が変わらない場合にはステップS58に戻り、最初に重畳表示した透視像よりも後で得られた各々の透視像(必要に応じて血管ライブ画像)と2D投影像とを重畳したロードマップ画像を逐次に表示することで、ロードマップ画像を動画表示して透視を行う。
【0107】
また、従来では本実施例における手技中の位置合わせを実施していないので、手技中の位置合わせによって算出した2次元補正情報(本実施例では2次元補正行列A)を破棄する
図4のステップS10そのものが存在しない。したがって、従来の
図6のステップS59では、透視像または血管ライブ画像の撮影中にCアーム23や可動式天板1aが移動した場合には、ステップS55に戻る。そして、その時のCアーム23の位置および可動式天板1aの位置を撮影情報として用いて、2D投影像を再度に生成する。
【0108】
本実施例に係るX線撮影装置によれば、上述したような2つの位置合わせを実施する。すなわち、予め取得された被検体Mについての3次元画像(すなわち臨床用3次元画像)と、(被検体Mを載置する可動式天板1aに)載置された状態における被検体Mとが対応するように、(X線撮影装置における所定の)座標系と臨床用3次元画像との第1の対応関係を示した3次元補正情報(本実施例では行列M)を座標対応関係決定手段(本実施例では、レジストレーションを手動で行う場合には操作部53、レジストレーションを演算で行う場合にはレジストレーション部43)は決定する。この3次元補正情報(第1の対応関係)は、レジストレーションを実施することにより決定される。一方、ある時点における2次元画像(ここでは血管ライブ画像)および3次元画像に基づく画像(本実施例では臨床用3次元画像を透視像または血管ライブ画像の撮影時における撮影方向に投影した2D投影像(2次元投影画像))に映り込んだ関心部位(本実施例では血管)が対応するような第2の対応関係を示した2次元補正情報(本実施例では2次元補正行列A)を関心領域対応関係決定手段(本実施例では手技中位置合わせ部49)は決定する。この2次元補正情報(第2の対応関係)を決定するための位置合わせ(手技中の位置合わせ)が本発明の特徴部分である。
【0109】
上述した3次元補正情報または2次元補正情報(第1または第2の対応関係)に基づいて、任意の時点における2次元画像(透視像または血管ライブ画像)と3次元画像に基づく画像(2D投影像)とを重畳してロードマップ画像をロードマップ画像生成手段(本実施例ではロードマップ画像生成部51)は生成する。例えば、本実施例に係るX線撮影装置とは別の装置(例えばX線CT装置やMRI装置や診断・治療時とは別のX線撮影装置)から得られた臨床用3次元画像をロードマップ画像の生成に用いる場合には、レジストレーションを実施することにより決定された3次元補正情報(第1の対応関係)に基づいてロードマップ画像を生成する。
【0110】
本実施例に係るX線撮影装置と同じ装置から得られた臨床用3次元画像をロードマップ画像の生成に用いる場合には、被検体Mが天板(本実施例では可動式天板1a)に載置した状態ではレジストレーションは不要である。しかし、「課題を解決するための手段」の欄でも述べたように被検体Mが天板(可動式天板1a)から一旦降りて、天板(可動式天板1a)に再度に載った場合には体位(方向)や被検体Mの位置がどうしても変化するので、レジストレーションは必須である。したがって、本実施例に係るX線撮影装置と同じ装置から得られた臨床用3次元画像をロードマップ画像の生成に用いる場合で、かつ被検体Mが天板(可動式天板1a)から一旦降りて、天板(可動式天板1a)に再度に載った場合には、レジストレーションを実施することにより決定された3次元補正情報(第1の対応関係)に基づいてロードマップ画像を生成する。一方、デバイスの挿入や被検体Mの体動により関心部位(血管)の位置ズレが生じた場合には、関心領域対応関係決定手段(手技中位置合わせ部49)による位置合わせを実施することにより決定された2次元補正情報(第2の対応関係)に基づいてロードマップ画像を生成する。
【0111】
そして、第2の対応関係を示す2次元補正情報(2次元補正行列A)が決定した後に、天板(可動式天板1a)、放射線発生部(本実施例ではX線管24)および放射線検出部(本実施例ではフラットパネル型X線検出器(FPD)25)の少なくとも一つの位置(本実施例では(X線管24やFPD25を支持する)Cアーム23の位置または可動式天板1aの位置)が変化した場合に、第1の対応関係を示す3次元補正情報(行列M)に基づいてロードマップ画像をロードマップ画像生成手段(ロードマップ画像生成部51)は生成する。つまり、天板(可動式天板1a)、放射線発生部(X線管24)および放射線検出部(FPD25)の少なくとも一つの位置(Cアーム23の位置または可動式天板1aの位置)を変化させつつX線撮影する場合には、2次元画像(透視像または血管ライブ画像)を連続的に出力しながら各々の2次元画像(透視像または血管ライブ画像)と3次元画像に基づく画像(2D投影像)とを重畳してロードマップ画像を連続的に生成しつつ、ロードマップ画像に映り込んだ関心部位(本実施例では血管の経路)をたどって診断・治療を行う。
【0112】
したがって、デバイスの挿入や被検体Mの体動によりロードマップ画像における重畳の対象たる両画像(本実施例では透視像・2D投影像)間において関心部位(血管)の位置ズレが生じた場合でも、レジストレーションを再度実施して第1の対応関係を示す3次元補正情報(行列M)を新たに求める必要はない。そして、ある時点における2次元画像(ここでは血管ライブ画像)および3次元画像に基づく画像(2D投影像)に映り込んだ関心部位(血管)が対応するような第2の対応関係を示す2次元補正情報(2次元補正行列A)を決定する。その結果、ロードマップ画像における重畳の対象たる両画像(透視像・2D投影像)間において関心部位(血管)の位置ズレが生じても位置合わせを正確に行うことができる。
【0113】
また、ロードマップ画像における重畳の対象たる両画像(透視像・2D投影像)間において関心部位(血管)の位置ズレが生じたとしても、関心部位(血管)が映り込んだ2方向の透視像や3次元画像を新たに取得する必要がない。したがって、本実施例のように関心部位が血管の場合には、2方向の透視像や3次元画像を新たに取得するための造影剤投与が不要になり、被検体M(被治療者)の負担を低減させるという効果をも奏する。また、ロードマップ画像における重畳の対象たる両画像(透視像・2D投影像)間において関心部位(血管)の位置ズレが生じたとしても、放射線発生部(X線管24)および放射線検出部(FPD25)からなる撮影系を回転させるために撮影系(X線管24およびFPD25)を保持する保持機構(本実施例ではCアーム23)を回転させて2方向の透視像や3次元画像を新たに取得する必要がない。したがって、2方向の透視像や3次元画像を新たに取得するための動作を術者(治療者)が実施する必要がなくなるという効果をも奏する。また、全体的な検査時間を低減させて、術者・被検体Mの両方の負担を低減させるという効果をも奏する。さらに、本実施例のように関心部位が血管の場合において、一時的な血管変形が解消された後で元の血管を改めて確認したい場合においても、過去に取得された2次元画像(透視像)を参照すればよい。したがって、再度の撮影が不要となり、追加の被曝が不要となるという効果をも奏する。
【0114】
なお、ロードマップ画像における重畳の対象たる両画像(透視像・2D投影像)間において関心部位(血管)の位置ズレが生じるケースは、再三述べたような関心部位(血管)内にデバイスを挿入したことによって関心部位(血管)の位置が局所的に変化する場合以外にも、被検体Mが天板(可動式天板1a)に載置された状態で位置および体位が変わらずに被検体Mが動く(体動する)場合にも起こり得る。したがって、体動した場合においても、ロードマップ画像における重畳の対象たる両画像(透視像・2D投影像)間において関心部位(血管)の位置ズレが生じるので、ある時点における2次元画像(ここでは血管ライブ画像)および3次元画像に基づく画像(2D投影像)に映り込んだ関心部位(血管)が対応するような第2の対応関係を示す2次元補正情報(2次元補正行列A)を決定することにより、関心領域対応関係決定手段(手技中位置合わせ部49)による位置合わせを実施することにより決定された第2の対応関係を示す2次元補正情報(2次元補正行列A)に基づいてロードマップ画像を生成すればよい。
【0115】
また、第2の対応関係を示す2次元補正情報(2次元補正行列A)を記憶する第2の対応関係記憶手段(本実施例では2次元補正情報メモリ部50)を備えている。本実施例では2次元補正情報として2次元補正行列Aが上記(5)式で決定した後に、天板(可動式天板1a)、放射線発生部(X線管24)および放射線検出部(FPD25)の少なくとも一つの位置(Cアーム23の位置または可動式天板1aの位置)が変化した場合に、第2の対応関係記憶手段(2次元補正情報メモリ部50)に記憶された第2の対応関係を示す2次元補正情報(2次元補正行列A)を棄却する(
図4のステップS10を参照)。そして、関心領域対応関係決定手段(手技中位置合わせ部49)は、天板(可動式天板1a)、放射線発生部(X線管24)および放射線検出部(FPD25)の少なくとも一つの位置(Cアーム23の位置または可動式天板1aの位置)が変化した時点における2次元画像(ここでは血管ライブ画像)および3次元画像に基づく画像(2D投影像)に映り込んだ関心部位(血管)が対応するような第2の対応関係を示す2次元補正情報として2次元補正行列Aを上記(5)式で再度に決定し、再度に決定された当該2次元補正行列Aを第2の対応関係記憶手段(2次元補正情報メモリ部50)に記憶するのが好ましい。
【0116】
すなわち、2次元補正行列Aが上記(5)式で決定した後に、天板(可動式天板1a)、放射線発生部(X線管24)および放射線検出部(FPD25)の少なくとも一つの位置(Cアーム23の位置または可動式天板1aの位置)が変化した場合には、第1の対応関係を示す3次元補正情報(行列M)に基づいてロードマップ画像を生成し直す。したがって、天板(可動式天板1a)、放射線発生部(X線管24)および放射線検出部(FPD25)の少なくとも一つの位置(Cアーム23の位置または可動式天板1aの位置)が変化した時点では、当該時点における2次元画像(ここでは血管ライブ画像)および3次元画像に基づく画像(2D投影像)が新たに取得される(
図4のステップS5を参照)。そこで、変化前に決定された2次元補正行列Aを棄却し、同様に当該時点における2次元画像(ここでは血管ライブ画像)および3次元画像に基づく画像(2D投影像)に映り込んだ関心部位(血管)が対応するような第2の対応関係を示す2次元補正情報として2次元補正行列Aを上記(5)式で決定し直し、決定された当該2次元補正行列Aを第2の対応関係記憶手段(2次元補正情報メモリ部50)に記憶する。このように、天板(可動式天板1a)、放射線発生部(X線管24)および放射線検出部(FPD25)の少なくとも一つの位置(Cアーム23の位置または可動式天板1aの位置)が変化する度に、2次元補正行列Aを更新すればよい。
【0117】
本実施例では、2次元画像は、画素値の時間的な変化から抽出された最小値を有した画素から構成されたピークホールド画像である。本実施例のように関心部位が血管の場合には、2次元画像が、画素値の時間的な変化から抽出された最小値を有したピークホールド画像であるので、少量の造影剤で血管形状を抽出させることができる。上述したように白黒反転する場合には、画素値の時間的な変化から抽出された最大値を有したピークホールド画像を用いる。
【0118】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0119】
(1)上述した実施例では、放射線撮影装置として、X線撮影装置を例に採って説明したが、放射線についてはX線に限定されず、X線以外の放射線(α線、β線、γ線など)であってもよい。
【0120】
(2)上述した実施例では、関心部位として、血管を例に採って説明したが、金歯や銀歯、人口関節、骨、デバイス、ペースメーカなどに例示されるように、血管以外の関心部位であってもよい。血管以外の関心部位で手技中に位置ズレが生じる場合には、血管と同様に血管以外の関心部位を基準とした手技中の位置合わせが、血管以外の関心部位に対しても適用可能である。したがって、必ずしも造影剤投与を伴った撮影で得られた血管造影画像である必要はない。
【0121】
(3)上述した実施例では、放射線検出部はX線検出器であって、X線検出器として、フラットパネル型X線検出器(FPD)を例に採って説明したが、イメージインテンシファイア(I.I)などに例示されるように、通常において用いられるX線を検出するX線検出器であれば、特に限定されない。
【0122】
(4)上述した実施例では、天板は、検診台の本体に対して長手方向に移動可能な可動式天板1a(
図1を参照)であったが、検診台の本体に対して固定されていてもよい。
【0123】
(5)上述した実施例では、保持機構は、
図1および
図2に示すようにCアーム23であって、放射線撮影装置(実施例ではX線撮影装置)はCアーム23を備えたが、保持機構はCアームに限定されない。保持機構は、例えばコの字形状のアームであってもよい。また、2対の撮影系(バイプレーン)を備えた放射線撮影装置(X線撮影装置)であってもよい。
【0124】
(6)上述した実施例では、X線管24(
図1および
図2を参照)およびFPD25(
図1および
図2を参照)を支持するCアーム23(
図1および
図2を参照)が移動、あるいは可動式天板1a(
図1を参照)が移動することで、Cアーム23の位置または可動式天板1aの位置が変化したが、天板(実施例では可動式天板)、放射線発生部(実施例ではX線管)および放射線検出部(実施例ではFPD)の少なくとも一つの位置を所定の座標系上で制御するのであれば、位置制御の態様(移動態様)については特に限定されない。例えば、X線管およびFPDを支持するCアームの移動と同時に可動式天板が移動するように制御してもよいし、Cアームが固定している時に可動式天板が移動するように制御してもよいし、可動式天板が固定している時にCアームが移動するように制御してもよい。また、装置の構成に応じて天板(可動式天板)、放射線発生部(X線管)および放射線検出部(FPD)の少なくとも一つの位置を所定の座標系上で制御してもよい。例えば、Cアームを備えずに、X線管およびFPDが互いに独立して移動する構成の場合には、可動式天板、X線管およびFPDの全てが同時に移動するように制御してもよいし、可動式天板、X線管またはFPDのいずれか1つが固定している時に残りの2つが同時に移動するように制御してもよいし、可動式天板、X線管またはFPDのいずれか1つのみが移動するように制御してもよい。
【0125】
(7)上述した実施例では、天井から吊り掛けられた放射線撮影装置(実施例ではX線撮影装置)を例に採って説明したが、放射線撮影装置(X線撮影装置)であれば、例えば床面に据え付けられた装置であってもよい。
【0126】
(8)上述した実施例では、第1の対応関係を示す3次元補正情報や第2の対応関係を示す2次元補正情報は、行列Mや2次元補正行列Aなどの線形変換であったが、非線形変換などでもよく、これらの対応関係(補正情報)を算出する手法については特に限定されない。
【0127】
(9)上述した実施例では、血管が映り込んだ血管ライブ画像は、血管以外の背景領域(骨や臓器等)を除外して血管のみが映り込んだデジタルサブトラクション血管造影画像であったが、必ずしもデジタルサブトラクション血管造影画像である必要はない。血管とともに血管以外の背景領域も併せて映り込んだ画像であってもよい。
【0128】
(10)上述した実施例では、血管が映り込んだ血管ライブ画像はピークホールド画像であったが、必ずしもピークホールド画像でなくてもよい。ただし、少量の造影剤で血管形状を抽出させる場合にはピークホールド画像を血管ライブ画像とするのが好ましい。
【0129】
(11)上述した実施例では、血管が映り込んだ血管ライブ画像はピークホールド画像であったが、輪郭強調画像または二値化画像などに代表される特徴量や特徴点が明確な画像であってもよい。注目画素とその周辺画素との差分を求める一次微分(例えばSobelフィルタやPrewittフィルタ)、あるいは注目画素とその周辺画素との差分のさらなる差分を求める二次微分(例えばLaplacianフィルタ)によって輪郭強調画像を取得する。輪郭強調画像の場合には血管の輪郭が強調され、二値化画像の場合には血管情報が二値化される。したがって、血管ライブ画像が、輪郭強調画像,二値化画像のいずれの場合においても、ロードマップ画像との血管情報が比較しやすくなる。
【0130】
(12)また、ピークホールド画像と特徴量や特徴点が明確な画像とを組み合わせてもよい。例えば、ピークホールド画像と輪郭強調画像とを組み合わせる、あるいはピークホールド画像と二値化画像とを組み合わせてもよい。すなわち、ピークホールド画像に対して輪郭強調処理を行ってもよいし、ピークホールド画像に対して二値化処理を行ってもよい。
【符号の説明】
【0131】
1a … 可動式天板
24 … X線管
25 … フラットパネル型X線検出器(FPD)
43 … レジストレーション部
49 … 手技中位置合わせ部
50 … 2次元補正情報メモリ部
51 … ロードマップ画像生成部
53 … 操作部
6 … コントローラ
M … 被検体