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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20220112BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
H02M3/00 W
H02M7/12 W
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017217874
(22)【出願日】2017-11-13
(65)【公開番号】P2019092244
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】竹上 栄治
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 友一
【審査官】土井 悠生
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-086883(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094402(WO,A1)
【文献】特開2014-099995(JP,A)
【文献】特開2016-131458(JP,A)
【文献】特開平11-296237(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0211745(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧をスイッチング素子でスイッチングして変換して、負荷が接続される出力端子に出力電圧および出力電流を供給する電力変換部と、
前記出力電流または当該出力電流に応じて変化する電流を検出して当該出力電流の変化に応じて電圧値が変化する電流検出信号を出力する電流検出部と、
前記電流検出信号を入力すると共に当該電流検出信号に対する補正を実行して、前記出力電流の電流値に対応した電圧値の電流補正検出信号を生成して出力する信号補正部と、
前記電流補正検出信号を入力してバランス端子に出力する突き合わせ回路部と、
前記電流補正検出信号と前記バランス端子に発生するバランス電圧信号とを入力すると共に、当該電流補正検出信号と当該バランス電圧信号の各電圧値の差分を減少させるように前記スイッチング素子のスイッチング動作を制御する制御部とを備え
前記信号補正部は、
前記電流検出信号を入力すると共に、前記電流検出部において当該電流検出信号に生じる検出誤差分を補正した電流検出基準信号を出力する基準信号出力部と、
前記電流補正検出信号を入力すると共に増幅して増幅検出信号を出力する増幅部と、
前記電流検出基準信号および前記増幅検出信号を入力すると共に、当該電流検出基準信号と当該増幅検出信号との差分に基づいて前記電流補正検出信号の前記電圧値を制御して、当該増幅検出信号を当該電流検出基準信号に一致させる電圧制御部とを備えている電源装置。
【請求項2】
前記基準信号出力部は、前記電流検出信号の前記電圧値を示す第1電圧情報に当該電流検出信号を変換するA/D変換部と、予め規定された補正情報に基づいて前記第1電圧情報を補正して前記電流検出基準信号の電圧値を示す基準信号情報を算出する基準信号演算部とを備え、
前記増幅部は、前記電流補正検出信号の電圧値を示す第2電圧情報に当該電流補正検出信号を変換するA/D変換部と、当該第2電圧情報および予め規定された増幅情報に基づいて前記増幅検出信号の電圧値を示す増幅信号情報を算出する増幅信号演算部とを備え、
前記電圧制御部は、前記基準信号情報および前記増幅信号情報を入力して、当該基準信号情報と当該増幅信号情報との差分を算出する差分演算部と、当該算出した差分に応じてデューティ比が変化する制御パルス電圧および当該算出した差分に応じて電圧値が変化する制御電圧のうちのいずれか一方の電圧を発生させる制御電圧発生部とを備えると共に、当該一方の電圧に基づいて前記電流補正検出信号の前記電圧値を制御する請求項記載の電源装置。
【請求項3】
前記基準信号出力部、前記増幅部および前記制御電圧発生部は、マイコンおよびデジタルシグナルプロセッサのうちのいずれか一方で構成されている請求項記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷に対して複数個を並列に接続して同時運転を可能に構成された電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電源装置として、下記の特許文献1に開示された電源装置が広く知られている。この開示された複数の電源装置は、同一の負荷に並列に接続されると共に入力された直流電圧をこの負荷で必要な電圧(出力電圧)に変換して出力するパワー回路、共通のライン(配線)によって相互に接続される端子(電流バランス端子)、負荷に出力される出力電流を検出すると共に出力電流に比例した電圧を出力する出力電流検出回路、および並列運転回路を備えている。この場合、出力電流検出回路は、その実現方法として、例えば、シャント抵抗の両端の電圧を検出する方法やホール素子による検出方法などがある。また、並列運転回路は、これらの出力電流と平均電流とを比較して(具体的には、出力電流検出回路から出力される電圧と電流バランス端子に生じる電圧(各電源装置から出力される出力電流の平均値(平均電流)に比例した電圧)とを比較して)、平均電流よりも自らの出力電流が少ない場合にはパワー回路に対して出力電圧を上昇させる制御を実行して出力電流を増加させ、また平均電流よりも自らの出力電流が多い場合にはパワー回路に対して出力電圧を低下させる制御を実行して出力電流を減少させる制御を実行する。
【0003】
以上の構成により、この電源装置では、同一の負荷に複数台並列に接続された状態(並列運転状態)において、それぞれの出力電流が同一に制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-221880号公報(第5-7頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記の電源装置には、以下のような解決すべき課題が存在している。すなわち、この電源装置では、並列運転回路は、出力電流検出回路から出力される電圧を自らの出力電流を示すものとして用いているが、出力電流検出回路を構成するシャント抵抗の抵抗値や、シャント抵抗で検出された電圧を増幅する増幅器の増幅率や、ホール素子の検出感度は、各製品仕様において規定された許容範囲内でばらつく(つまり、出力電流検出回路には検出誤差が存在している)ことから、出力電流検出回路から出力される電圧が同一であっても、出力電流が同一とは限らない。したがって、この電源装置には、出力電流検出回路での検出誤差に起因して、並列運転状態でのそれぞれの出力電流を正確に同一に制御するのが難しいという解決すべき課題が存在している。
【0006】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、並列運転状態での出力電流をより正確に同じに揃え得る電源装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明に係る電源装置は、入力電圧をスイッチング素子でスイッチングして変換して、負荷が接続される出力端子に出力電圧および出力電流を供給する電力変換部と、前記出力電流または当該出力電流に応じて変化する電流を検出して当該出力電流の変化に応じて電圧値が変化する電流検出信号を出力する電流検出部と、前記電流検出信号を入力すると共に当該電流検出信号に対する補正を実行して、前記出力電流の電流値に対応した電圧値の電流補正検出信号を生成して出力する信号補正部と、前記電流補正検出信号を入力してバランス端子に出力する突き合わせ回路部と、前記電流補正検出信号と前記バランス端子に発生するバランス電圧信号とを入力すると共に、当該電流補正検出信号と当該バランス電圧信号の各電圧値の差分を減少させるように前記スイッチング素子のスイッチング動作を制御する制御部とを備えている。この場合、前記信号補正部は、前記電流検出信号を入力すると共に、前記電流検出部において当該電流検出信号に生じる検出誤差分を補正した電流検出基準信号を出力する基準信号出力部と、前記電流補正検出信号を入力すると共に増幅して増幅検出信号を出力する増幅部と、前記電流検出基準信号および前記増幅検出信号を入力すると共に、当該電流検出基準信号と当該増幅検出信号との差分に基づいて前記電流補正検出信号の前記電圧値を制御して、当該増幅検出信号を当該電流検出基準信号に一致させる電圧制御部とを備えている。
【0008】
これにより、この電源装置によれば、共通の負荷に対して複数個を並列に接続すると共に、各電源装置のバランス端子を共通のラインで接続した際に、電流検出部において生じる検出誤差の影響のない(つまり、出力電流の電流値に正確に電圧値が対応する)電流補正検出信号がそれぞれのバランス端子に出力されるため、各電源装置の電流検出部において個別に生じる検出誤差の影響を受けることなく、各電源装置から負荷に出力される出力電流の電流値を正確に揃えること(同一にすること)ができる。
【0009】
また、本発明に係る電源装置は、前記基準信号出力部は、前記電流検出信号の前記電圧値を示す第1電圧情報に当該電流検出信号を変換するA/D変換部と、予め規定された補正情報に基づいて前記第1電圧情報を補正して前記電流検出基準信号の電圧値を示す基準信号情報を算出する基準信号演算部とを備え、前記増幅部は、前記電流補正検出信号の電圧値を示す第2電圧情報に当該電流補正検出信号を変換するA/D変換部と、当該第2電圧情報および予め規定された増幅情報に基づいて前記増幅検出信号の電圧値を示す増幅信号情報を算出する増幅信号演算部とを備え、前記電圧制御部は、前記基準信号情報および前記増幅信号情報を入力して、当該基準信号情報と当該増幅信号情報との差分を算出する差分演算部と、当該算出した差分に応じてデューティ比が変化する制御パルス電圧および当該算出した差分に応じて電圧値が変化する制御電圧のうちのいずれか一方の電圧を発生させる制御電圧発生部とを備えると共に、当該一方の電圧に基づいて前記電流補正検出信号の前記電圧値を制御する。
【0010】
これにより、この電源装置によれば、デジタル処理により、基準信号情報を算出し、増幅信号情報を算出し、かつこれらの情報に基づいて制御パルス電圧または制御電圧を生成して電流補正検出信号の電圧値を制御することができる。このため、この電源装置によれば、電流検出部において生じる検出誤差をデジタル処理でより正確に電流検出信号から除去して基準信号情報を算出することができ、これにより、出力電流の電流値により正確に対応する電流補正検出信号をバランス端子に出力することができることから、各電源装置から負荷に出力される出力電流の電流値を一層正確に揃えること(同一にすること)ができる。
【0011】
また、本発明に係る電源装置は、前記基準信号出力部、前記増幅部および前記制御電圧発生部は、マイコンおよびデジタルシグナルプロセッサのうちのいずれか一方で構成されている。これにより、この電源装置によれば、基準信号出力部、増幅部および制御電圧発生部を構成する回路の集約化を図ることができることから、信号補正部の小型化を実現することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電流検出部において生じる検出誤差の影響のない電流補正検出信号をバランス端子に出力できるため、複数個を並列に接続した状態において各電源装置から出力される出力電流の電流値を正確に同一に揃えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】電源装置1の構成、およびこの電源装置1を3個並列に接続して同時運転させるときの構成を示す構成図である。
図2図1の信号補正部8の一例としての信号補正部8Aの構成を示す構成図である。
図3図1の信号補正部8の他の例としての信号補正部8Bの構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、電源装置の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
最初に、電源装置の一例としての電源装置1の構成について図1を参照して説明する。この電源装置1(図1中では、3個の電源装置1を区別するために、電源装置1,1,1と表記している)は、一例として、一対の入力端子2a,2b(以下、特に区別しないときには「入力端子2」ともいう)、一対の出力端子3a,3b(以下、特に区別しないときには「出力端子3」ともいう)、バランス端子4、電力変換部5、電圧検出部6、電流検出部7、信号補正部8、突き合わせ回路部9、比較部10、基準電圧出力部11、電圧合成部12、誤差検出部13、およびスイッチング制御部14を備え、入力端子2間に入力された入力電圧Vinを電力変換部5(具体的には、電力変換部5の後述するスイッチング素子5a)でスイッチングして変換して、負荷LDが接続された出力端子3間に出力電圧(直流出力電圧)Voおよび出力電流(直流出力電流)Ioを供給可能に構成されている。なお、図1中では、3個の電源装置1,1,1に対応させて、出力電圧Vo,Vo,Voと表記し、また出力電流Io,Io,Ioと表記している。
【0016】
電力変換部5は、少なくとも1つのスイッチング素子5aを備えて、入力端子2を介して入力される入力電圧Vinをこのスイッチング素子5aでスイッチングして出力電圧Voに変換すると共に、この出力電圧Voを出力端子3間に出力する。また、電力変換部5は、負荷LDに供給される出力電流Ioについても、出力端子3に出力する。電力変換部5は、入力電圧Vinが交流電圧のときにはAC-DCコンバータとして構成されて出力電圧Voを出力し、また入力電圧Vinが直流電圧のときにはDC-DCコンバータとして構成されて出力電圧Voを出力する。この場合、スイッチング素子5aは、スイッチング制御部14から出力される後述の駆動信号Sdにより、スイッチング動作する(オン・オフ動作する)。
【0017】
電圧検出部6は、出力電圧Voを検出すると共に、この出力電圧Voの電圧値を示す電圧検出信号としての検出電圧Vv(出力電圧Voの電圧値に応じて電圧値が変化する検出電圧Vv(電源装置1の内部グランドGの電位を基準とする電圧))を出力する。
【0018】
電流検出部7は、出力電流Ioを検出すると共に、この出力電流Ioの電流値を示す電流検出信号としての検出電圧Vi(出力電流Ioの電流値に応じて電圧値が変化する検出電圧Vi)に変換して出力する。電流検出部7は、図示はしないが、例えば、出力電流Ioの電流経路内に配設された電流検出抵抗と、この電流検出抵抗の両端間に発生する電圧を増幅して出力する増幅器とを備えて構成されている。なお、電流検出部7は、出力電流Ioを直接検出する上記の構成に限定されるものではない。例えば、電流検出部7は、出力電流Ioの電流値に応じて電流値が変化する他の電流(一例として入力電流Ii)を検出して、検出電圧Viを出力する構成を採用することもできる。図1中では、3個の電源装置1,1,1に対応させて、入力電流Ii,Ii,Iiと入力電流Iiを表記している。
【0019】
信号補正部8は、検出電圧Viを入力すると共に、この検出電圧Viに対する補正を実行して、出力電流Ioの電流値に対応した電圧値の電流補正検出信号Vop(図1中では、3個の電源装置1,1,1に対応させて、電流補正検出信号Vop,Vop,Vopと表記している)を生成して出力する。ここで、電流補正検出信号Vopの電圧値が出力電流Ioの電流値に対応するとは、電流補正検出信号Vopの電圧値が、出力電流Ioの電流値の変化に伴って、この電流値に予め対応付けられた規定の電圧値(電源装置1,1,1において共通の電圧値)に変化することをいうものとする。したがって、電源装置1,1,1の出力電流Ioの電流値が同じときには、電源装置1,1,1での電流補正検出信号Vop,Vop,Vopの電圧値も同じ値になる。
【0020】
信号補正部8は、例えば、図2に示す信号補正部8A、および図3に示す信号補正部8Bのうちのいずれかで構成されている。
【0021】
信号補正部8Aは、図2に示すように、基準信号出力部21、増幅部22、電圧制御部23Aおよびバッファ部24を備えている。
【0022】
基準信号出力部21は、検出電圧Viを入力すると共に、この検出電圧Viに電流検出部7において生じる検出誤差分(例えば、電流検出抵抗の公差内での抵抗値のばらつきに起因する検出誤差分や、増幅器の公差内での増幅率のばらつきに起因する検出誤差分など)を補正した電流検出基準信号Si1を出力する。言い換えれば、基準信号出力部21は、電流検出部7において生じる上記の検出誤差分を含んでいる検出電圧Viからこの検出誤差分を補正で除去して、電流検出基準信号Si1を出力する。これにより、電流検出基準信号Si1は、出力電流Ioの電流値の変化に伴って、この電流値に予め対応付けられた規定の値(電源装置1,1,1の各電流検出部7で生じる個別の検出誤差分が除去されることで、電源装置1,1,1の出力電流Ioの電流値が同じときには同一となる値)に変化する信号となっている。
【0023】
この場合、基準信号出力部21が電流検出基準信号Si1をアナログ信号である電圧信号として生成して出力するときには、電流検出基準信号Si1は、その電圧値が出力電流Ioの電流値に予め対応付けられた規定の値(電圧値)に変化する信号となる。また、基準信号出力部21が電流検出基準信号Si1をデジタル信号として生成して出力するときには、電流検出基準信号Si1は、その値が出力電流Ioの電流値に予め対応付けられた規定の値に変化する基準信号情報となる。
【0024】
一例として、基準信号出力部21は、A/D変換部31と、基準信号演算部32とを備えて、電流検出基準信号Si1(基準信号情報)をデジタル処理によって生成して出力する。この場合、A/D変換部31は、検出電圧Viの電圧値を示す第1電圧情報としての波形データDi1にこの検出電圧Viを変換する。具体的には、A/D変換部31は、検出電圧Viを所定のサンプリング周期(例えば、スイッチング素子5aのスイッチング周期よりも十分に短い周期)でサンプリングして、検出電圧Viについての波形データDi1に変換する。基準信号演算部32は、例えば、デジタルシグナルプロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)で構成されて、予め規定された補正情報に基づいて波形データDi1を補正して、上記した電流検出基準信号Si1(基準信号情報)を算出(出力)する。本例では、電圧制御部23Aがデジタル処理する構成のため、基準信号演算部32は、算出した電流検出基準信号Si1(基準信号情報)をそのまま出力する構成を採用しているが、電圧制御部23Aがアナログ処理する構成のときには、基準信号演算部32は、算出した基準信号情報をD/A変換して、その電圧値が出力電流Ioの電流値に予め対応付けられた規定の電圧値に変化するアナログ信号である電流検出基準信号Si1として出力する構成を採用する。
【0025】
この補正情報は、出力電流Ioの電流値を規定の電流値Ioaから規定の電流値Iob(≠Ioa)に変化させたときに、電流検出基準信号Si1の値を規定の基準値Vsraから規定の基準値Vsrb(≠Vsra)に変化させ得るように、例えば、電源装置1の調整工程において電源装置1毎に求められて、各電源装置1の基準信号演算部32に、演算式または変換テーブルとして記憶されている。この場合、電流検出部7において生じる検出誤差分は、電源装置1毎に、電流検出部7を構成する電流検出抵抗の公差内での抵抗値のばらつきや、電流検出部7を構成する増幅器の公差内での増幅率のばらつきに起因して相違している。このため、上記の補正情報は、一般的に電源装置1毎に相違したものとなっている。また、出力電流Ioの電流値を電流値Ioaから電流値Iobに変化させたときに、電流検出基準信号Si1の値を基準値Vsraから基準値Vsrbに変化させる態様としては、例えば、一次関数的に変化させる態様が一般的であるが、これに限定されるものではない。
【0026】
増幅部22は、電圧制御部23Aから後述するようにして出力される電流補正検出信号Vopを入力すると共に、この電流補正検出信号Vopを増幅して増幅検出信号Si2を出力する。
【0027】
一例として、増幅部22は、A/D変換部41と、増幅信号演算部42とを備えて、増幅検出信号Si2(増幅信号情報)をデジタル処理によって生成して出力する。この場合、A/D変換部41は、電流補正検出信号Vopの電圧値を示す第2電圧情報としての波形データDi2にこの電流補正検出信号Vopを変換する。具体的には、A/D変換部41は、電流補正検出信号Vopを所定のサンプリング周期(A/D変換部31のサンプリング周期と同じ周期)でサンプリングして、電流補正検出信号Vopについての波形データDi2に変換する。増幅信号演算部42は、例えば、DSPで構成されて、波形データDi2および予め規定された増幅情報に基づいて(例えば、波形データDi2に増幅情報で示される規定の定数(増幅率)を乗算して)、上記した増幅検出信号Si2(増幅信号情報)を算出(出力)する。本例では、電圧制御部23Aがデジタル処理する構成のため、増幅信号演算部42は、算出した増幅検出信号Si2(増幅信号情報)をそのまま出力する構成を採用しているが、電圧制御部23Aがアナログ処理する構成のときには、増幅信号演算部42は、算出した増幅信号情報をD/A変換して、その電圧値が電流補正検出信号Vopの電圧値に対応して変化するアナログ信号である増幅検出信号Si2として出力する構成を採用する。
【0028】
電流補正検出信号Vopは、電圧制御部23Aを構成する後述の電圧合成部53Aによって後述の制御パルス電圧Vcopの平均電圧と検出電圧Viとが合成されて生成される電圧である。この場合、電圧合成部53Aを構成する後述の抵抗61(検出電圧Viが印加される抵抗)の抵抗値に対して、電圧合成部53Aを構成する後述の抵抗63(制御パルス電圧Vcopの平均電圧が印加される抵抗)の抵抗値が十分に大きな値(例えば十数倍から数十倍程度の大きさの値)に規定されている。したがって、電流補正検出信号Vopは、電圧合成部53Aを構成する後述の分圧抵抗(抵抗61,62)によって分圧された検出電圧Viの影響を主として受けて変化する電圧となっている。このため、増幅情報として、例えば、分圧抵抗(抵抗61,62)の分圧比(=抵抗61の公称抵抗値/(抵抗61,62の各公称抵抗値の合計値)の逆数が上記の増幅情報として予め記憶されている。また、各電源装置1の信号補正部8の構成は同一のため、各電源装置1の増幅信号演算部42に記憶されている増幅情報は同じものとなっている。
【0029】
電圧制御部23Aは、電流検出基準信号Si1および増幅検出信号Si2を入力すると共に、電流検出基準信号Si1と増幅検出信号Si2との差分に基づいて電流補正検出信号Vopの電圧値を制御して、増幅検出信号Si2の電圧値を電流検出基準信号Si1の電圧値に一致させる(つまり、増幅検出信号を電流検出基準信号に一致させる)。
【0030】
一例として、電圧制御部23Aは、差分演算部51および制御電圧発生部52Aを備えている。また、電圧制御部23Aは、検出電圧Viに基づいて電流補正検出信号Vopを生成すると共に、制御電圧発生部52Aから出力される後述の制御パルス電圧Vcopに基づいて、この電流補正検出信号Vopの電圧値を制御する電圧合成部53Aを備えている。電圧制御部23Aは、本例ではDSPで構成されている。
【0031】
差分演算部51は、電流検出基準信号Si1および増幅検出信号Si2を入力すると共に、電流検出基準信号Si1と増幅検出信号Si2との差分(各電圧値の差分)をデジタル処理によって算出して、差分信号eiとして出力する。一例として、差分演算部51は、電流検出基準信号Si1の値に対する増幅検出信号Si2の値の過不足分を、この過不足分の絶対値に比例して値が変化し、かつ過分のときには極性が負となると共に不足のときには極性が正となる差分信号eiとして出力する。なお、差分演算部51が、例えば、オペアンプなどのアナログ回路で構成されて、差分信号eiをアナログ処理によって出力する構成のときには、電流検出基準信号Si1の電圧値に対する増幅検出信号Si2の電圧値の過不足分を検出して、アナログ信号としての差分信号eiを出力する。
【0032】
制御電圧発生部52Aは、差分演算部51で算出された上記の差分に応じて(つまり、差分信号eiに応じて)デューティ比が変化する制御パルス電圧Vcopをデジタル処理によって生成して出力する。一例として、制御パルス電圧Vcopは、内部グランドGの電位を基準とするパルス電圧であって、その振幅は検出電圧Viの最大値(出力電流Ioの最大値が電流検出抵抗に流れたときの電圧値)に分圧抵抗(抵抗61,62)の分圧比を乗算して得られる電圧値よりも若干高い電圧値に規定されている。また、制御電圧発生部52Aは、差分信号eiの極性が負のときには、差分信号eiの値(または電圧値)の絶対値に応じて制御パルス電圧Vcopのデューティ比を減少させ(制御パルス電圧Vcopの平均電圧を低下させ)、一方、差分信号eiの極性が正のときには、差分信号eiの値(または電圧値)の絶対値に応じて制御パルス電圧Vcopのデューティ比を増加させる(制御パルス電圧Vcopの平均電圧を上昇させる)。
【0033】
なお、図示はしないが、差分演算部51および制御電圧発生部52Aについては、上記の構成に代えて、差分演算部51が、電流検出基準信号Si1の値(または電圧値)に対する増幅検出信号Si2の値(または電圧値)の過不足分を、この過不足分の絶対値に比例して値(または電圧値)が変化し、かつ過分のときには極性が正となると共に不足のときには極性が負となる差分信号eiとして出力し、また制御電圧発生部52Aが、差分信号eiの極性が正のときには、差分信号eiの値(または電圧値)の絶対値に応じて制御パルス電圧Vcopのデューティ比を減少させ(制御パルス電圧Vcopの平均電圧を低下させ)、一方、差分信号eiの極性が負のときには、差分信号eiの値(または電圧値)の絶対値に応じて制御パルス電圧Vcopのデューティ比を増加させる(制御パルス電圧Vcopの平均電圧を上昇させる)構成を採用することもできる。
【0034】
電圧合成部53Aは、一例として、抵抗61,62,63およびコンデンサ64を備えて構成されている。この場合、抵抗61は、一端に検出電圧Viが印加され、かつ他端が抵抗62の一端に接続されている。抵抗62は、一端が抵抗61の他端に接続され、かつ他端が電源装置1の内部グランドGに接続されている。このようにして、直列接続された抵抗61,62は、検出電圧Viを分圧する分圧抵抗として機能する。抵抗63は、一端が制御電圧発生部52Aの出力端子に接続されることにより、制御パルス電圧Vcopが印加され、他端は抵抗61,62の接続点に接続されている。以上の構成により、抵抗61,62の接続点には、抵抗61の一端に印加される検出電圧Viと、抵抗63の一端に印加される制御パルス電圧Vcopの平均電圧とが合成された電圧が電流補正検出信号Vopとして発生する。
【0035】
この場合、抵抗63の抵抗値は、抵抗61の抵抗値に対して十分に大きな値(例えば十数倍から数十倍程度の大きさの値)に規定されている。このため、電流補正検出信号Vopは、分圧抵抗(抵抗61,62)によって分圧された検出電圧Viの影響を主として受けて電圧値が変化し、かつ制御パルス電圧Vcopの平均電圧によってその電圧値が微調整され得る電圧となっている。コンデンサ64は、抵抗62に並列に接続されて、この電流補正検出信号Vopを平滑する。
【0036】
バッファ部24は、例えば、オペアンプを用いて構成されたボルテージフォロワ回路で構成されて、電流補正検出信号Vopを入力すると共に低インピーダンスでそのまま出力する。
【0037】
信号補正部8Bは、図3に示すように、基準信号出力部21、増幅部22、電圧制御部23Bおよびバッファ部24を備えている。同じ符号を付した構成については、信号補正部8Aと同じであるため、説明を省略して、相違する構成について説明する。
【0038】
電圧制御部23Bは、電圧制御部23Aと同様にして、電流検出基準信号Si1および増幅検出信号Si2を入力すると共に、電流検出基準信号Si1と増幅検出信号Si2の各値(または電圧値)の差分に基づいて電流補正検出信号Vopの電圧値を制御して、増幅検出信号Si2を電流検出基準信号Si1に一致させる。
【0039】
一例として、電圧制御部23Bは、差分演算部51および制御電圧発生部52Bを備えると共に、制御電圧発生部52Bから出力される後述の制御電圧Vcoに基づいて、出力する電流補正検出信号Vopの電圧値を制御するための電圧合成部53Bを備えている。この場合、差分演算部51は、上記した電圧制御部23Aと同一であるため、説明を省略し、制御電圧発生部52Bおよび電圧合成部53Bについて説明する。
【0040】
制御電圧発生部52Bは、例えばD/A変換器を備えて構成されて、差分演算部51で算出された上記の差分に応じて電圧値が変化する制御電圧Vcoを出力する。一例として、制御電圧Vcoは、内部グランドGの電位を基準とする電圧であって、内部グランドGの電位と、検出電圧Viの最大値(出力電流Ioの最大値が電流検出抵抗に流れたときの電圧値)に分圧抵抗(抵抗61,62)の分圧比を乗算して得られる電圧値よりも若干高い電圧値との間で電圧値が変化する電圧である。また、制御電圧発生部52Bは、差分信号eiの極性が負のときには、制御電圧Vcoを低下させ、一方、差分信号eiの極性が正のときには、制御電圧Vcoを上昇させる。
【0041】
なお、図示はしないが、差分演算部51および制御電圧発生部52Bについては、上記の構成に代えて、差分演算部51が、電流検出基準信号Si1の値(または電圧値)に対する増幅検出信号Si2の値(または電圧値)の過不足分を、この過不足分の絶対値に比例して値(または電圧値)が変化し、かつ過分のときには極性が正となると共に不足のときには極性が負となる差分信号eiとして出力し、また制御電圧発生部52Bが、差分信号eiの極性が正のときには、制御電圧Vcoを低下させ、一方、差分信号eiの極性が負のときには、制御電圧Vcoを上昇させる構成を採用することもできる。
【0042】
電圧合成部53Bは、一例として、コンデンサ64が省かれた以外は、電圧合成部53Aと同一に構成されて、抵抗61の一端に印加される検出電圧Viと、抵抗63の一端に印加される制御電圧Vcoとを合成して、電流補正検出信号Vopとして抵抗61,62の接続点に発生させる。
【0043】
突き合わせ回路部9は、例えば、図1に示すように、抵抗(規定の抵抗値の抵抗)で構成されている。このため、本例では、以下において、抵抗9ともいう。この抵抗9は、一端が信号補正部8に接続されることで、この一端に電流補正検出信号Vopが印加される。また、抵抗9は、他端がバランス端子4に接続されている。つまり、抵抗9は、信号補正部8から出力される電流補正検出信号Vopをバランス端子4に出力する。バランス端子4は、複数の電源装置1が並列に接続されて同時運転される際には、図1に示すように、他の電源装置1のバランス端子4と共通のラインLN(バランス線)で接続される。この場合、他端がこのラインLNによって互いに接続された各電源装置1の抵抗(同一抵抗値の抵抗)9は、公知のアナログ電圧の平均回路を構成する。したがって、各電源装置1の抵抗9の一端に各電源装置1の信号補正部8から印加されている電流補正検出信号Vopは、この抵抗9で構成される平均回路によって平均され、この平均された電圧がバランス電圧信号としてのバランス電圧Vblとして各バランス端子4に発生する。
【0044】
比較部10は、例えばオペアンプを用いて構成されて、図1に示すように、電流補正検出信号Vopとバランス電圧Vblとを比較して、両電圧Vop,Vblの差分に応じて変化する差分電圧信号としての差分電圧Vdf(この差分に応じて電圧値が変化する電圧)を出力する。また、比較部10は、基準電圧出力部11、電圧合成部12、誤差検出部13およびスイッチング制御部14と共に、スイッチング素子5aのスイッチング動作を制御する制御部CNTを構成する。例えば、比較部10は、電流補正検出信号Vopがバランス電圧Vblよりも低いときには、極性が正であって、両電圧Vop,Vblの差分の絶対値に比例した電圧値で差分電圧Vdfを出力し、一方、電流補正検出信号Vopがバランス電圧Vblよりも高いときには、極性が負であって、両電圧Vop,Vblの差分の絶対値に比例した電圧値で差分電圧Vdfを出力する。また、比較部10は、両電圧Vop,Vblの差分を減少させるための信号としてこの差分電圧Vdfを出力する。
【0045】
基準電圧出力部11は、この電源装置1での出力電圧Voについての初期目標電圧値に対応する第1基準電圧値を示す第1基準電圧信号としての第1基準電圧Vrf(図1中では、3個の電源装置1,1,1に対応させて、第1基準電圧Vrf,Vrf,Vrfと表記している)を出力する。例えば、複数の電源装置1が負荷LDに対して並列に接続されて同時運転される場合、各電源装置1と負荷LDとを接続する配線の長さは、同一になることは希であり、通常は互いに相違する。このため、この配線で生じる電圧降下が電源装置1毎に相違することから、電源装置1毎の電圧降下を考慮して、第1基準電圧Vrfの第1基準電圧値が個別に調整される。
【0046】
電圧合成部12は、図1に示すように、第1基準電圧信号と差分電圧信号(本例では、第1基準電圧Vrfと差分電圧Vdf)とを合成(加算)して第2基準電圧信号としての第2基準電圧Vrsを出力する。この場合、差分電圧Vdfは、電流補正検出信号Vopとバランス電圧Vblとに基づいて上記のように極性および電圧値が変化する。このため、第2基準電圧Vrsは、電流補正検出信号Vopとバランス電圧Vblとが一致しているときには、差分電圧Vdfがゼロボルトになることから、第1基準電圧Vrfと同じ電圧値となる。また、第2基準電圧Vrsは、電流補正検出信号Vopがバランス電圧Vblよりも低いときには、差分電圧Vdfが極性が正で、かつ両電圧Vop,Vblの差分の絶対値に比例した電圧値となることから、第1基準電圧Vrfよりも差分電圧Vdfの絶対値だけ高い電圧値となる。また、第2基準電圧Vrsは、電流補正検出信号Vopがバランス電圧Vblよりも高いときには、差分電圧Vdfが極性が負で、かつ両電圧Vop,Vblの差分の絶対値に比例した電圧値となることから、第1基準電圧Vrfよりも差分電圧Vdfの絶対値だけ低い電圧値となる。
【0047】
誤差検出部13は、例えばオペアンプを用いて構成されて、図1に示すように、検出電圧信号と第2基準電圧信号(本例では、検出電圧Vvと第2基準電圧Vrs)とを比較して両電圧Vv,Vrsの差分に応じて変化する誤差電圧信号としての誤差電圧Ver(この差分に応じて電圧値が変化する電圧)を出力する。例えば、誤差検出部13は、検出電圧Vvが第2基準電圧Vrsよりも低いときには、極性が正であって、両電圧Vv,Vrsの差分の絶対値に比例した電圧値で誤差電圧Verを出力し、一方、検出電圧Vvが第2基準電圧Vrsよりも高いときには、極性が負であって、両電圧Vv,Vrsの差分の絶対値に比例した電圧値で誤差電圧Verを出力する。また、誤差検出部13は、両電圧Vv,Vrsの差分を減少させるための信号としてこの誤差電圧Verを出力する。なお、本例の誤差検出部13は、上記したように、両電圧Vv,Vrsの差分の絶対値に比例した電圧値で誤差電圧Verを出力する構成(P制御の構成)を採用しているが、この構成に代えて、PI制御の構成(先の誤差電圧Verを出力した後の次の誤差電圧Verの出力に際して、現在の両電圧Vv,Vrsの差分に相当する分(ΔVer)を先の誤差電圧Verに加算したもの(Ver+ΔVer)を出力する構成)を採用することもできる。
【0048】
スイッチング制御部14は、図1に示すように、誤差検出部13から出力される誤差電圧信号(本例では、誤差電圧Ver)に基づいて駆動信号Sdを生成して、電力変換部5のスイッチング素子5aに出力することにより、電流補正検出信号Vopとバランス電圧Vblの差分を減少させ、かつ検出電圧信号と第2基準電圧信号(本例では、検出電圧Vvと第2基準電圧Vrs)の差分を減少させるようにスイッチング素子5aのスイッチング動作を制御する。具体的には、電力変換部5がPWM(パルス幅変調)制御によって出力電圧Voを制御する構成であるときには、スイッチング制御部14は、駆動信号Sdのデューティ比を制御することで、両電圧Vop,Vblの差分が減少し、かつ両電圧Vv,Vrsの差分が減少するようにスイッチング素子5aのスイッチング動作を制御する。一方、電力変換部5がPFM(パルス周波数変調)制御によって出力電圧Voを制御する構成であるときには、スイッチング制御部14は、駆動信号Sdの周波数を制御することで、両電圧Vop,Vblの差分が減少し、かつ両電圧Vv,Vrsの差分が減少するようにスイッチング素子5aのスイッチング動作を制御する。
【0049】
次に、電源装置1の動作について、共通の負荷LDに電源装置1を複数個並列接続(本例では一例として、図1に示すように3個を並列に接続)して同時運転させる電源システムPSYSを例に挙げて説明する。
【0050】
なお、本例では一例として、電源装置1,1,1の各入力端子2には、共通の入力電圧Vinが入力されるものとするが、これに限らず、電源装置1,1,1の各入力端子2に個別の入力電圧Vinが入力される構成であってもよい。
【0051】
また、電源装置1,1,1は負荷LDにそれぞれ接続されてはいるが、それぞれのバランス端子4が共通のラインLNで接続される前の状態において、同じ電流値の出力電流Ioを出力しているときの負荷LDの両端間の電圧VLが揃うように、それぞれの第1基準電圧Vrfが第1基準電圧Vrf,Vrf,Vrfに個別に調整されているものとする。この場合、例えば、負荷LDとの間の配線の抵抗値が電源装置1,1,1の順に大きい(高い)ときには、同じ電流値の出力電流Ioが流れたときの配線での電圧降下もこの順に大きくなる。このことから、電源装置1,1,1の各出力電圧Vo,Vo,Voについてはこの順に高くする必要があるため、第1基準電圧Vrf,Vrf,Vrfはこの順に高くなるように調整されているものとする。
【0052】
図1に示す電源システムPSYSにおいて同時に運転させられている各電源装置1,1,1では、電圧検出部6が出力電圧Voを検出して検出電圧Vvを出力し、また電流検出部7が出力電流Ioを検出すると共に電圧信号としての検出電圧Viに変換して出力している。また、信号補正部8が、検出電圧Viに基づいて、出力電流Io,Io,Ioに対応して電圧値が変化する電流補正検出信号Vop,Vop,Vopを出力する。
【0053】
この場合、信号補正部8では、基準信号出力部21が、検出電圧Viを入力すると共に、この検出電圧Viに電流検出部7において生じる検出誤差分を補正した電流検出基準信号Si1を出力する(電流検出部7において生じるこれらの検出誤差を含んでいる検出電圧Viからこの検出誤差分を補正で除去して、電流検出基準信号Si1として出力する)。また、増幅部22が、電圧合成部53A(または53B)から出力される電流補正検出信号Vopを入力すると共に、この電流補正検出信号Vopを増幅して増幅検出信号Si2を出力する。また、電圧制御部23A(または23B)が、基準信号出力部21から出力される電流検出基準信号Si1と増幅部22から出力される増幅検出信号Si2とを入力すると共に、電流検出基準信号Si1と増幅検出信号Si2の各値(または電圧値)の差分に基づいて電流補正検出信号Vopの電圧値を制御して、増幅検出信号Si2の電圧値を電流検出基準信号Si1の電圧値に一致させる。このようにして、電流補正検出信号Vopに基づいて生成される増幅検出信号Si2が、電流検出基準信号Si1(電流検出部7において生じる検出誤差が検出電圧Viから除去された信号)と一致させられることから、電流補正検出信号Vopは、電流検出部7において生じる検出誤差分が検出電圧Viから除去された信号(電流検出基準信号Si1)に正確に対応する信号となっている。
【0054】
また、各電源装置1,1,1の信号補正部8から出力される各電流補正検出信号Vop,Vop,Vopは、他端がバランス端子4およびラインLNを経由して互いに接続されて平均回路を構成するそれぞれの抵抗9の一端に印加される。このため、バランス端子4には、電流補正検出信号Vop,Vop,Vopの平均電圧であるバランス電圧Vbl(=(Vop+Vop+Vop)/3)が発生する。
【0055】
また、各電源装置1,1,1では、比較部10が、それぞれの装置1,1,1での電流補正検出信号Vop,Vop,Vopと共通のバランス電圧Vblとを個別に比較して、電流補正検出信号Vop,Vop,Vopのそれぞれとバランス電圧Vblとの差分に応じて変化する差分電圧Vdfを出力する。この場合、比較部10は、上記したように、電流補正検出信号Vopがバランス電圧Vblよりも低いとき、つまり、この電流補正検出信号Vopを出力している信号補正部8が設けられた電源装置1での出力電流Ioが、バランス電圧Vblで示される各電源装置1,1,1での出力電流Ioの平均よりも低いときには、両電圧Vop,Vblの差分の絶対値に比例した電圧値であって極性が正の差分電圧Vdfを出力する。一方、比較部10は、上記したように、電流補正検出信号Vopがバランス電圧Vblよりも高いとき、つまり、この電流補正検出信号Vopを出力している信号補正部8が設けられた電源装置1での出力電流Ioが、バランス電圧Vblで示される各電源装置1,1,1での出力電流Ioの平均よりも高いときには、両電圧Vop,Vblの差分の絶対値に比例した電圧値であって極性が負の差分電圧Vdfを出力する。
【0056】
また、各電源装置1,1,1では、電圧合成部12が第1基準電圧Vrfとこの差分電圧Vdfとを合成(加算)して第2基準電圧Vrsを出力する。これにより、バランス電圧Vblで示される各電源装置1,1,1での出力電流Ioの平均よりも出力電流Ioが小さい電源装置1では、第1基準電圧Vrfに正の差分電圧Vdfが合成(加算)されることから、第2基準電圧Vrsは第1基準電圧Vrfよりも高い電圧値となる。一方、バランス電圧Vblで示される各電源装置1,1,1での出力電流Ioの平均よりも出力電流Ioが大きい電源装置1では、第1基準電圧Vrfに負の差分電圧Vdfが合成(加算)されることから、第2基準電圧Vrsは第1基準電圧Vrfよりも低い電圧値となる。
【0057】
また、各電源装置1,1,1では、誤差検出部13が、検出電圧Vvと第2基準電圧Vrsの差分に応じて変化する誤差電圧Verを出力し、スイッチング制御部14が、この誤差電圧Verに基づいて駆動信号Sdを生成して、電力変換部5のスイッチング素子5aに出力することにより、両電圧Vop,Vblの差分が減少し、かつ両電圧Vv,Vrsの差分が減少するようにスイッチング素子5aのスイッチング動作を制御する。
【0058】
これにより、バランス電圧Vblで示される各電源装置1,1,1での出力電流Ioの平均よりも出力電流Ioが小さい電源装置1では、上記したように第2基準電圧Vrsが第1基準電圧Vrfよりも高い電圧値となり、これに伴い、スイッチング制御部14が、誤差電圧Verに基づいて両電圧Vv,Vrsの差分が減少するように、電力変換部5のスイッチング素子5aを制御して、出力電圧Voを上昇させる。したがって、各電源装置1,1,1での出力電流Ioの平均よりも出力電流Ioが小さい電源装置1では、出力電流Ioが増加させられる。
【0059】
一方、バランス電圧Vblで示される各電源装置1,1,1での出力電流Ioの平均よりも出力電流Ioが大きい電源装置1では、上記したように第2基準電圧Vrsが第1基準電圧Vrfよりも低い電圧値となり、これに伴い、スイッチング制御部14が、誤差電圧Verに基づいて両電圧Vv,Vrsの差分が減少するように、電力変換部5のスイッチング素子5aを制御して、出力電圧Voを低下させる。したがって、各電源装置1,1,1での出力電流Ioの平均よりも出力電流Ioが大きい電源装置1では、出力電流Ioが減少させられる。
【0060】
この結果、各電源装置1,1,1では、電流補正検出信号Vop,Vop,Vopで示されるそれぞれでの出力電流Io,Io,Ioが、バランス電圧Vblで示される各電源装置1,1,1での出力電流Io,Io,Ioの平均と一致するように、つまり、電流補正検出信号Vop,Vop,Vopで示されるそれぞれの出力電流Io,Io,Ioが一致するように、各出力電圧Vo,Vo,Voが制御される。
【0061】
このように、この電源装置1では、信号補正部8が、検出電圧Viに対する補正を実行して、電流検出部7において生じる検出誤差が検出電圧Viから除去された電流検出基準信号Si1の値(つまり、出力電流Ioの電流値)に電圧値が正確に対応する信号である電流補正検出信号Vopを出力し、この電流補正検出信号Vopを抵抗9を介してバランス端子4に出力する。
【0062】
具体的には、信号補正部8は、検出電圧Viを入力すると共に、電流検出部7において検出電圧Viに生じる検出誤差分を補正した電流検出基準信号Si1を出力する基準信号出力部21と、電流補正検出信号Vopを入力すると共に増幅して増幅検出信号Si2を出力する増幅部22と、電流検出基準信号Si1および増幅検出信号Si2を入力すると共に、電流検出基準信号Si1と増幅検出信号Si2の各値(または電圧値)の差分に基づいて電流補正検出信号Vopの電圧値を制御して、増幅検出信号Si2の値(または電圧値)を電流検出基準信号Si1の値(または電圧値)に一致させる電圧制御部23A(23B)とを備えて構成されている。
【0063】
したがって、この電源装置1によれば、共通の負荷LDに対して複数個を並列に接続すると共に、各電源装置1のバランス端子4を共通のラインLNで接続した際に、電流検出部7において生じる検出誤差の影響のない(つまり、出力電流Ioの電流値に正確に電圧値が対応する)電流補正検出信号Vopがそれぞれのバランス端子4に出力されるため、各電源装置1の電流検出部7において個別に生じる検出誤差の影響を受けることなく、各電源装置1から負荷LDに出力される出力電流Io,Io,Ioの電流値を正確に揃えること(同一にすること)ができる。
【0064】
また、この電源装置1では、基準信号出力部21は、検出電圧Viの電圧値を示す第1電圧情報としての波形データDi1に検出電圧Viを変換するA/D変換部31と、予め規定された補正情報に基づいて波形データDi1を補正して、検出誤差分を補正した電流検出基準信号Si1(基準信号情報)を算出して出力する基準信号演算部32とを備えて構成され、増幅部22は、電流補正検出信号Vopの電圧値を示す第2電圧情報としての波形データDi2に電流補正検出信号Vopを変換するA/D変換部41と、波形データDi2および予め規定された増幅情報に基づいて増幅検出信号Si2(増幅信号情報)を算出して出力する増幅信号演算部42とを備えて構成され、電圧制御部23Aは、電流検出基準信号Si1(基準信号情報)および増幅検出信号Si2(増幅信号情報)を入力して、各信号Si1,Si2の差分を算出する差分演算部51と、この算出した差分に応じてデューティ比が変化する制御パルス電圧Vcopを発生させる制御電圧発生部52Aとを備えると共に、制御パルス電圧Vcopに基づいて電流補正検出信号Vopの電圧値を制御する。また、この電源装置1では、電圧制御部23Aに代えて、差分演算部51と、算出した各信号Si1,Si2の差分に応じて電圧値が変化する制御電圧Vcoを発生される制御電圧発生部52Bとを備えると共に、制御電圧Vcoに基づいて電流補正検出信号Vopの電圧値を制御する電圧制御部23Bを備える構成を採用することもできる。
【0065】
したがって、この電源装置1によれば、デジタル処理により、電流検出基準信号Si1(基準信号情報)を算出し、増幅検出信号Si2(増幅信号情報)を算出し、かつ各信号Si1,Si2に基づいて制御パルス電圧Vcopまたは制御電圧Vcoを生成して電流補正検出信号Vopの電圧値を制御することができる。このため、この電源装置1によれば、電流検出部7において生じる検出誤差をデジタル処理でより正確に検出電圧Viから除去して電流検出基準信号Si1(基準信号情報)を算出することができ、これにより、出力電流Ioの電流値により正確に対応する電流補正検出信号Vopをバランス端子4に出力することができることから、各電源装置1から負荷LDに出力される出力電流Io,Io,Ioの電流値を一層正確に揃えること(同一にすること)ができる。
【0066】
また、上記したように、基準信号出力部21、増幅部22および制御電圧発生部52A(または52B)をデジタル処理する構成とするときには、基準信号出力部21、増幅部22および制御電圧発生部52A(または52B)をマイコンおよびデジタルシグナルプロセッサのうちのいずれか一方で構成するのが好ましい。この構成を採用することにより、信号補正部8を構成する回路の集約化を図ることができることから、信号補正部8の小型化を実現することができる。また、差分演算部51についてもデジタル処理する構成として、マイコンおよびデジタルシグナルプロセッサのうちのいずれか一方で構成してもよい。この構成により、信号補正部8を構成する回路のさらなる集約化を図ることができる。
【符号の説明】
【0067】
1 電源装置
3a,3b 出力端子
4 バランス端子
5 電力変換部
5a スイッチング素子
7 電流検出部
8 信号補正部
9 抵抗(突き合わせ回路部)
14 スイッチング制御部
CNT 制御部
Io 出力電流
LD 負荷
Vi 検出電圧
Vin 入力電圧
Vo 出力電圧
Vop 電流補正検出信号
図1
図2
図3