(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】工作物交換装置及び工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 7/04 20060101AFI20220112BHJP
B23Q 11/08 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
B23Q7/04 C
B23Q11/08 Z
(21)【出願番号】P 2017218790
(22)【出願日】2017-11-14
【審査請求日】2020-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】今西 耕造
(72)【発明者】
【氏名】大塚 義夫
【審査官】中里 翔平
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-104391(JP,A)
【文献】特開2000-084773(JP,A)
【文献】特開2000-343372(JP,A)
【文献】特開平04-082603(JP,A)
【文献】実開昭52-098883(JP,U)
【文献】米国特許第05531004(US,A)
【文献】特表2014-533609(JP,A)
【文献】特開2012-148382(JP,A)
【文献】特開2002-283166(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第19736252(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/317884(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/72688(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 7/00 - 7/18
B23Q 11/00
B23Q 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工前の工作物を工作機械の機外から機内に搬入すると共に、前記工作機械による加工後の前記工作物を前記機内から前記機外に搬出する工作物交換装置であって、
前記工作機械の固定部に固定され、前記機外と前記機内とを区画し、開口が形成された固定カバーと、
前記開口を通過しながら前記機内と前記機外との間で前記工作物を搬送するアーム装置と、
前記アーム装置と一体的に設けられ、又は、前記アーム装置と連動可能に前記アーム装置に係合され、
前記固定カバーに旋回可能に設けられ、前記アーム装置が前記機外に配置された際に前記開口を閉塞する可動カバーと、
を備え
、
前記固定カバーは、
前記開口が形成された開口形成部材と、
前記開口形成部材の前記開口の縁に設けられ、前記開口形成部材から前記機外側へ張り出し、前記可動カバーの旋回中心に直交する断面形状が前記可動カバーの旋回中心を中心とする円弧状に形成された張出しカバーと、
を備え、
前記可動カバーは、
前記可動カバーが旋回する旋回領域の中央に位置し、前記可動カバーの旋回中心に直交する断面形状が前記可動カバーの旋回中心を中心とする円弧状に形成された曲面板と、
前記曲面板の周方向端部から径方向外方へ延びる延在板と、
を備え、
前記可動カバーの前記曲面板の外周面は、前記可動カバーが旋回する際に、前記開口形成部材の前記開口の縁に対向し、
前記可動カバーの前記延在板の端部は、前記可動カバーが旋回する際に、前記張出しカバーの内周面に対向する、工作物交換装置。
【請求項2】
前記固定カバーの前記張出しカバーの円弧状の角度範囲は、前記可動カバーの前記曲面板の円弧状の角度範囲より小さい、請求項1に記載の工作物交換装置。
【請求項3】
前記可動カバーの前記曲面板の前記外周面は、前記可動カバーが旋回する全角度範囲において、前記開口形成部材の前記開口の縁に対向し、
前記可動カバーの前記延在板の端部は、前記可動カバーが旋回する一部の角度範囲のみにおいて、前記張出しカバーの前記内周面に対向する、請求項2に記載の工作物交換装置。
【請求項4】
前記アーム装置は、
前記固定カバーに対して旋回可能に設けられるアーム基部と、
前記アーム基部に設けられ、加工前の前記工作物を搬送する第一アームと、
前記アーム基部に設けられ、加工後の前記工作物を搬送する第二アームと、
を備え、
前記工作物交換装置は、前記固定カバーに対する前記可動カバーの旋回駆動、及び、前記固定カバーに対する前記アーム基部の旋回駆動を兼用する旋回駆動装置を備える、請求項
1-3
の何れか1項に記載の工作物交換装置。
【請求項5】
前記アーム装置は、前記機外で前記第一アームが加工前の前記工作物を受け取る第一状態と、前記機外で前記第二アームが加工後の前記工作物を引き渡す第二状態とで、配置が異なるように設定され、
前記可動カバーの前記曲面板の前記外周面は、前記第一状態及び前記第二状態において、前記開口形成部材の前記開口の縁に対向し、
前記可動カバーの
前記延在板の端部は、前記第一状態
及び前記第二状態
において、前記張出しカバーの前記内周面に対向する、請求項4に記載の工作物交換装置。
【請求項6】
前記アーム装置は、
前記可動カバーと連動して移動可能なアーム本体と、
前記アーム本体に旋回可能に支持され、前記工作物を把持する把持部と、
を備える、請求項1-5の何れか一項に記載の工作物交換装置。
【請求項7】
請求項1-6の何れか一項に記載の工作物交換装置と、
前記固定カバーよりも前記機内側に設けられ、前記工作物の加工時に前記工作物を保持する工作物保持装置と、
前記固定カバーよりも前記機内側に設けられ、前記工作物に保持された前記工作物に対する加工に用いる加工用工具を保持する工具保持装置と、
前記工作物の加工時において前記工作物保持装置を前記工具保持装置に対して移動させると共に、前記工作物保持装置と前記アーム装置との間で前記工作物の受け渡しを行う際に前記工作物保持装置を前記アーム装置に対して移動させることを兼用する移送装置と、
を備える、工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作物交換装置及び工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、工作機械を囲むカバーの開口部を塞ぐドアを開閉する電動機を制御することにより、ワーク交換時におけるドアの開閉時間を短縮し、サイクルタイムの短縮を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1の技術では、電動機とワーク交換装置との同期制御が必要となるため、何らかのエラーが発生した場合に、ドアと工作物とが干渉する恐れがある。
【0005】
本発明は、工作物の交換に要する時間の短縮を図りつつ、可動カバーと工作物との干渉を防止できる工作物交換装置及び工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の工作物交換装置は、加工前の工作物を工作機械の機外から機内に搬入すると共に、前記工作機械による加工後の前記工作物を前記機内から前記機外に搬出する工作物交換装置であって、前記工作機械の固定部に固定され、前記機外と前記機内とを区画し、開口が形成された固定カバーと、前記開口を通過しながら前記機内と前記機外との間で前記工作物を搬送するアーム装置と、前記アーム装置と一体的に設けられ、又は、前記アーム装置と連動可能に前記アーム装置に係合され、前記固定カバーに旋回可能に設けられ、前記アーム装置が前記機外に配置された際に前記開口を閉塞する可動カバーと、を備える。
前記固定カバーは、前記開口が形成された開口形成部材と、前記開口形成部材の前記開口の縁に設けられ、前記開口形成部材から前記機外側へ張り出し、前記可動カバーの旋回中心に直交する断面形状が前記可動カバーの旋回中心を中心とする円弧状に形成された張出しカバーと、を備える。
前記可動カバーは、前記可動カバーが旋回する旋回領域の中央に位置し、前記可動カバーの旋回中心に直交する断面形状が前記可動カバーの旋回中心を中心とする円弧状に形成された曲面板と、前記曲面板の周方向端部から径方向外方へ延びる延在板と、を備える。
前記可動カバーの前記曲面板の外周面は、前記可動カバーが旋回する際に、前記開口形成部材の前記開口の縁に対向し、前記可動カバーの前記延在板の端部は、前記可動カバーが旋回する際に、前記張出しカバーの内周面に対向する。
【0007】
本発明の工作物交換装置によれば、可動カバーは、アーム装置と一体的に設けられ、又は、アーム装置と連動可能にアーム装置に係合されるので、可動カバーによる開口の開閉動作を、アーム装置による工作物の搬送と並行して行うことができる。よって、工作物交換装置は、可動カバーの開閉が終了してからアーム装置による工作物の搬送を開始する場合と比べて、工作物の交換に要する時間の短縮を図ることができる。
【0008】
またこの場合、可動カバーは、アーム装置と一体的に設けられ、又は、アーム装置と連動可能にアーム装置に係合されるので、アーム装置と可動カバーとの距離を一定に保つことができる。よって、工作物交換装置は、アーム装置により搬送される工作物と可動カバーとの干渉を防止できる。
【0009】
また、本発明の工作機械は、上記の工作物交換装置と、前記固定カバーよりも前記機内側に設けられ、前記工作物の加工時に前記工作物を保持する工作物保持装置と、前記固定カバーよりも前記機内側に設けられ、前記工作物に保持された前記工作物に対する加工に用いる加工用工具を保持する工具保持装置と、前記工作物の加工時において前記工作物保持装置を前記工具保持装置に対して移動させると共に、前記工作物保持装置と前記アーム装置との間で前記工作物の受け渡しを行う際に前記工作物保持装置を前記アーム装置に対して移動させることを兼用する移送装置と、を備える。
【0010】
この工作機械は、工作物保持装置とアーム装置との間で工作物の受け渡しを行う際に工作物保持装置をアーム装置に対して移動させるための駆動機構等を、工作物の加工に用いる移送装置とは別に設ける必要がないので、工作機械の構造を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第一実施形態における工作機械の平面図である。
【
図2】
図1に示すII方向から見た工作物交換装置の正面図である。
【
図3】
図1のIII-III線における工作機械の断面図である。
【
図4A】
図2のIVA方向から見たアーム装置の側面図であり、第一アーム及び第一把持部の図示を省略している。
【
図4B】
図4Aに示す状態から、把持爪が下方を向くように第二把持部を旋回させた際のアーム装置の側面図であり、第一アーム及び第一把持部の図示を省略している。
【
図5】開口が形成された部位を拡大した固定カバーの部分拡大正面図であり、
図2に示す図に対応する。
【
図6A】
図5のVIA-VIA線における固定カバーの断面図である。
【
図6B】
図5のVIB-VIB線における固定カバーの断面図である。
【
図6C】
図5のVIC-VIC線における固定カバーの断面図である。
【
図7B】
図7AのVIIB-VIIB線における可動カバーの断面図である。
【
図8A】
図2のVIIIA-VIIIA線における工作物交換装置の断面図である。
【
図8B】
図2のVIIIB-VIIIB線における工作物交換装置の断面図である。
【
図10A】機外第一状態で搬送装置から加工前の工作物を受け取る際の工作物交換装置の配置を示す図である。
【
図10B】
図10Aに示す状態から、把持部を旋回させた後の工作物交換装置の配置を示す図である。
【
図10C】機内第一状態で工作物交換装置から加工後の工作物を受け取る際の工作物交換措置の配置を示す図である。
【
図10D】機内第二状態で工作物交換装置に加工前の工作物を引き渡す際の工作物交換措置の配置を示す図である。
【
図10E】機外第二状態に移行した直後の工作物交換装置の配置を示す図である。
【
図10F】機外第二状態で搬送装置に加工後の工作物を引き渡す際の工作物交換措置の配置を示す図である。
【
図11】アーム装置制御部により実行されるアーム装置工作物交換処理を示すフローチャートである。
【
図12】加工装置制御部により実行される加工装置工作物交換処理を示すフローチャートである。
【
図13A】第二実施形態における工作機械の概略図であり、アーム装置が機外に配置された際の工作物交換装置の配置を示す。
【
図13B】
図13Aに示す状態から、アーム装置を機外から機内へ移動させた際の工作物交換装置の配置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る工作物交換装置及び工作機械を適用した各実施形態について、図面を参照しながら説明する。まず、
図1及び
図2を参照して、本発明の第一実施形態である工作機械1の概略を説明する。
【0013】
<1.第一実施形態>
(1-1.工作機械1の概略)
図1に示すように、工作機械1は、工作物Wに対する加工を行う加工装置100と、工作物Wの受け渡しを行うアーム装置201と、加工装置100を覆う箱状の筐体202とを含む。
【0014】
工作機械1の傍には、工作物Wを搬送する搬送装置2が設けられる。搬送装置2は、未加工(加工前)の工作物Wを工作機械1との受け渡し位置に搬入する。アーム装置201は、受け渡し位置に搬入された未加工の工作物を受け取って加工装置100に引き渡し、加工装置100は、受け取った未加工の工作物Wの加工を行う。
【0015】
加工装置100による加工が終了すると、アーム装置201は、加工済(加工後)の工作物Wを加工装置100から受け取り、受け取った加工済の工作物Wを受け渡し位置で搬送装置2に引き渡す。搬送装置2は、搬出された加工済の工作物Wを受け渡し位置から搬出すると共に、新たな未加工の工作物Wを受け渡し位置に搬入する。
【0016】
図2に示すように、筐体202は、加工装置100に固定される固定カバー221と、固定カバー221に対して移動可能な可動カバー222とを含む。工作機械1は、固定カバー221によって機内と機外とが区画され、固定カバー221は、加工装置100による加工時に発生する切粉等の飛散を防止する。
【0017】
また、固定カバー221には、工作機械1の機内と機外との間で工作物Wの搬入出を行う際にアーム装置201が通過する開口203が形成される。そして、可動カバー222は、加工装置100による加工時に開口203を閉塞する一方、アーム装置201による工作物Wの受け渡し時に開口203を開放する。なお、開口203の周囲には、安全を確保するための外側カバー(図視せず)が設けられている。
【0018】
そして、工作機械1は、可動カバー222がアーム装置201と連動可能に設けられ、工作物Wの受け渡しと開口203の開閉とを並行して行う。つまり、工作機械1は、アーム装置201が筐体202と一体的に設けられた工作物交換装置200を備えることにより、サイクルタイムの短縮を図ることができる。以下、工作機械1の各構成について説明する。
【0019】
(1-2.工作機械1の各構成)
次に、工作機械1の各構成を説明する。
図1に示すように、工作機械1は、加工装置100と、工作物交換装置200と、制御装置300と、を主に備える。
【0020】
(1-2-1.加工装置100の構成)
図1及び
図3に示すように、加工装置100は、相互に直交する3つの直進軸(X軸、Y軸及びZ軸)及び2つの回転軸(B軸及びC軸)を駆動軸として有するマシニングセンタである。加工装置100は、ベッド10と、工具保持装置(工具主軸装置)20と、工作物保持装置30と、移送装置40と、工作物旋回装置50と、を主に備える。
【0021】
ベッド10は、平面視略矩形状に形成される。ベッド10の上面には、X軸方向へ延びる一対のX軸ガイドレール11と、Z軸方向へ延びる一対のZ軸ガイドレール12とが設けられる。工具保持装置(工具主軸装置)20は、コラム21と、Z軸駆動装置22(
図9参照)と、サドル23と、Y軸駆動装置24(
図9参照)と、工具主軸25と、工具主軸モータ26(
図9参照)とを備える。なお、
図1及び
図3では、Z軸駆動装置22、Y軸駆動装置24、及び、工具主軸モータ26の図示が省略されている。
【0022】
コラム21は、一対のZ軸ガイドレール12に案内されながらZ軸方向へ移動可能に設けられる。Z軸駆動装置22は、ベッド10に対し、コラム21をZ軸方向へ送るねじ送り装置である。また、コラム21の側面には、Y軸方向に沿って延びる一対のY軸ガイドレール27が設けられ、サドル23は、コラム21に対し、一対のY軸ガイドレール27に案内されながらY軸方向へ移動可能に設けられる。Y軸駆動装置24は、サドル23をY軸方向へ送るねじ送り装置である。
【0023】
工具主軸25は、サドル23に対し、Z軸方向に平行な軸線まわりに回転可能に支持される。工具主軸25の先端には、工作物Wの加工に用いる歯切り工具60が着脱可能に装着され、歯切り工具60は、工具保持装置20に対してZ軸に平行な軸線まわりに回転可能に保持される。歯切り工具60は、コラム21の移動に伴ってZ軸方向へ移動し、サドル23の移動に伴ってY軸方向へ移動する。工具主軸モータ26は、工具主軸25を回転させるための駆動力を付与するモータであり、サドル23の内部に収容される。
【0024】
工作物保持装置30は、主軸台31と、工作物主軸32と、工作物主軸モータ33(
図9参照)と、を備える。主軸台31は、工作物主軸32をY軸方向に直交するC軸周りに回転可能に支持する。工作物主軸32は、工作物Wを着脱可能に保持する。工作物主軸モータ33は、工作物主軸32を回転させるための駆動力を付与するモータであり、主軸台31の内部に収容される。
【0025】
移送装置40は、移送台41と、X軸駆動装置42とを備える。移送台41は、一対のX軸ガイドレール11に案内されながらX軸方向へ移動可能に設けられる。X軸駆動装置42は、ベッド10に対し、移送台41をX軸方向へ送るねじ送り装置である。
【0026】
工作物旋回装置50は、回転テーブル51と、工作物旋回駆動装置52(
図9参照)とを備える。回転テーブル51は、移送台41に対し、Y軸に平行なB軸周りに回転可能に設けられる。回転テーブル51には、主軸台31が設置され、工作物保持装置30は、移送台41に対してB軸周りに回転可能に設置される。工作物旋回駆動装置52は、回転テーブル51を回転させるための駆動力を付与するモータであり、移送台41に収容されている。
【0027】
加工装置100は、歯車加工を行う際、工作物保持装置30をB軸周りに旋回させることにより、歯切り工具60の回転軸線に対して工作物Wの回転軸線を傾斜させた状態で工作物Wを配置する。そして、加工装置100は、歯切り工具60と工作物Wとを同期回転させつつ、工作物Wの回転軸線方向に歯切り工具60を送りながら切削加工を行う。
【0028】
ここで、ベッド10には、固定カバー221が固定され、工具保持装置20、工作物保持装置30、移送装置40及び工作物旋回装置50は、固定カバー221よりも工作機械1の機内側に設けられる。そして、加工装置100は、アーム装置201によって機外から機内へ搬入された加工前の工作物Wを受け取り、工作物Wの加工を行う。また、加工装置100は、加工後の工作物Wをアーム装置201に引き渡し、加工後の工作物Wを機内から機外へ搬出する
【0029】
この点に関し、移送装置40は、
図1に破線で示されるように、アーム装置201と工作物Wの受け渡しを行う際に、工作物保持装置30をアーム装置201に対向する受け渡し位置に配置する。そして、移送装置40は、アーム装置201から工作物Wを受け取った後、工具保持装置20と対向する加工位置に工作物保持装置30を配置する。即ち、工作物保持装置30は、工作物Wの受け渡しを行う際に、加工位置と受け渡し位置との間を往復する。
【0030】
また、工作物旋回装置50は、受け渡し位置で工作物Wの受け渡しを行う際、工作物保持装置30を旋回させることにより、工作物主軸32をアーム装置201に対向させる。これにより、加工装置100は、工作物主軸32に保持された工作物Wを、アーム装置201による工作物Wの受け取りが可能な位置に配置することができる。また、工作物旋回装置50は、アーム装置201から受け取った工作物Wを加工位置で加工する際、工作物保持装置30を旋回させることで、工作物主軸32を工具保持装置20に対向させる。これにより、加工装置100は、歯切り工具60による加工が可能な位置に工作物Wを配置することができる。
【0031】
このように、移送装置40及び工作物旋回装置50は、工作物Wの加工時に工作物保持装置30を工具保持装置20に対して相対移動させる機能と、工作物Wの受け渡し時に工作物保持装置30をアーム装置201に対して相対移動させる機能とを兼用する。換言すれば、工作機械1は、工作物保持装置30とアーム装置201との間で工作物Wの受け渡しを行う際に工作物保持装置30をアーム装置201に対して移動させるための駆動機構等を、工作物Wの加工に用いる移送装置40とは別に設ける必要がない。よって、工作機械1は、構造を簡素化できる。
【0032】
(1-2-2.アーム装置201の構成)
続いて、アーム装置201の構成を説明する。
図2に示すように、工作物交換装置200は、アーム装置201と、筐体202とを備える。そして、アーム装置201は、アーム本体211と、第一把持部212a及び第二把持部212bと、アーム旋回駆動装置213と、第一把持部旋回駆動装置214a及び第二把持部旋回駆動装置214b(
図9参照)とを備える。
【0033】
アーム本体211は、アーム基部215と、第一アーム216と、第二アーム217とを備える。アーム基部215は、筐体202の固定カバー221に対し、Y軸に平行な旋回軸線周りに旋回可能に設けられる。第一アーム216及び第二アーム217は、アーム基部215の旋回中心Pから径方向外方へ二股状に分かれて延びる部位である。なお、本実施形態では、アーム基部215の旋回中心Pから見た第一アーム216と第二アーム217とのなす角度が40度に設定されているが、35度に設定されていてもよい。即ち、アーム基部215の旋回中心Pから見た第一アーム216と第二アーム217とのなす角度は、工作物Wの寸法やアーム本体211が旋回する時間(目標とする工作物Wの交換時間)等に基づいて最適な角度に設定される。
【0034】
なお、工作機械1において、第一アーム216は、工作機械1の機外で搬送装置2から搬送された加工前の工作物Wを受け取り、受け取った加工前の工作物Wを工作機械1の機内で工作物保持装置30に引き渡す際に用いる。一方、第二アーム217は、機内で加工後の工作物Wを工作物保持装置30から受け取り、受け取った加工後の工作物Wを機外で搬送装置2に引き渡す際に用いる。
【0035】
図4Aに示すように、第二把持部212bは、把持部本体218と、3つの把持爪219とを備える。把持部本体218は、円柱状の部位である。把持部本体218は、第二アーム217に対し、アーム基部215の旋回中心Pを中心とする円の接線に平行な軸線周りに揺動可能に設けられる。3つの把持爪219は、把持部本体218から径方向外方に延びる部位であり、各々の把持爪219は、円環状の工作物Wを外周面側から把持可能に屈曲した形状を有する。なお、把持爪219は、工作物Wを内周面側から把持するものであってもよい。
【0036】
図4Bに示すように、アーム装置201は、第二把持部212bを揺動させることにより、把持部本体218に設けられた3つの把持爪219の向きを変えることができる。よって、第二把持部212bは、搬送装置2から工作物Wを受け取った後、工作物Wの向きを変えて工作物保持装置30に引き渡すことができる。なお、第一把持部212aは、第二把持部212bと同一部材であるため、その説明を省略する。
【0037】
アーム旋回駆動装置213は、アーム本体211を旋回させるための駆動力を付与する減速機付きモータであり、固定カバー221(
図2参照)に固定される。第一把持部旋回駆動装置214aは、第一把持部212aを揺動させるための駆動力を付与するモータであり、第二把持部旋回駆動装置214bは、第二把持部212bを揺動させるための駆動力を付与するモータである。
【0038】
(1-2-3.固定カバー221の構成)
図2に示すように、筐体202は、固定カバー221と可動カバー222とを備える。固定カバー221は、固定部としてのベッド10(
図3参照)に固定される箱状の部位である。固定カバー221は、加工装置100の全体を覆うことで工作機械1の機内と機外とを区画し、加工時に発生する切粉等が機外に飛散することを防止する。
【0039】
図5に示すように、固定カバー221は、固定カバー本体230と、窪みカバー240と、張出しカバー250と、底板260と、を備える。固定カバー本体230は、ベッド10の四方を囲む固定カバー221のうち、X軸方向を向く一側面に設けられた平板状の部位である。なお、本実施形態では、固定カバー本体230は、固定カバー221の一側面に一体形成されているが、固定カバー本体230が、固定カバー221とは別部材であって、固定カバー221に後付けで固定されるものであってもよい。
【0040】
固定カバー本体230には、固定カバー本体230により区画された工作機械1の機内と機外とに連通する主開口204が形成される。主開口204は、開口203に対応する開口であって、アーム本体211が旋回する際に通過する領域である。主開口204は、第一主開口205と、第二主開口206と、第三主開口207との3つの部位から構成される。
【0041】
第一主開口205は、正面から見た場合(
図5参照)に、主開口204の左下側を占める部位である。第二主開口206は、正面から見た場合に第一主開口205の上側を占める部位であって、第二主開口206のZ軸方向の長さ寸法が第一主開口205よりも小さくなる部位である。この第二主開口206は、正面から見た場合に、窪みカバー240によって固定的に閉塞される。第三主開口207は、正面から見た場合に、第一主開口205の右側部分を占める部位であって、正面から見た場合に張出しカバー250によって固定的に覆われる部位である。なお、
図5では、図面を見やすくするため、張出しカバー250を破線で表し、第三主開口207の形状が正面から見えるものとして図示している。
【0042】
図6A及び
図6Bに示すように、窪みカバー240は、固定カバー本体230から機内側(
図6A右側)へ窪むように形成される。窪みカバー240は、窪み側板部241と、窪み天板部242とを備える。窪み側板部241は、X軸方向において主開口204の一部と対向する板状の部位である。窪み天板部242は、外形形状の一部が窪み側板部241に対応する形状に形成された板状の部位であり、窪み側板部241と主開口204とにより包囲された領域を上方(
図6A上方)から覆う。
【0043】
また、窪み側板部241は、第一窪み側板243と、第二窪み側板244と、第三窪み側板245とを備える。第一窪み側板243は、曲面板状に形成された平面視円弧状の部位であって、アーム本体211(
図4A参照)の旋回中心Pを中心とする曲率に形成される。第二窪み側板244は、第一窪み側板243の周方向一端側(
図6B右側)の端部から径方向外方へ延在する平板状の部位であり、固定カバー本体230に接続される。第三窪み側板245は、第一窪み側板243の他端側(
図6B左側)の端部から延在し、固定カバー本体230に接続する屈曲板状の部位である。
【0044】
主開口204を正面から見た場合に、第二主開口206は、第一窪み側板243及び第三窪み側板245により覆われる。また、第一窪み側板243の一部及び第二窪み側板244は、第二主開口206よりも第三主開口207側まで延在する。そして、第三窪み側板245は、第二主開口206を越えて第一主開口205まで延在し、第三窪み側板245の下端は、底板260に接触している。即ち、第三窪み側板245は、第一主開口205の一部、具体的には、正面から見た第一主開口205の左端部分を覆う。
【0045】
図6B及び
図6Cに示すように、張出しカバー250は、固定カバー本体230から機外側(
図6B下側)へ張り出すように形成される。そして、張出しカバー250は、正面から見た主開口204の右縁部分、即ち、第三主開口207を機外側から覆うように配置される。張出しカバー250は、張出天板部251と、張出側板部252とを備える。
【0046】
張出天板部251は、固定カバー本体の230のうち、正面から見た第三主開口207の上縁部分に設けられる。張出天板部251の外周面には、第一張出部位253と、第二張出部位254と、第三張出部位255とが形成される。第一張出部位253は、正面から見た第三主開口207の右縁部分に設けられ、第一主開口205側へ向かって円弧状に張り出す部位である。
【0047】
第二張出部位254は、正面から見た第三主開口207の右縁部分(第一主開口205との境界部分)から張り出す部位であって、固定カバー本体230から垂直に延びる。第三張出部位255は、第一張出部位253と第二張出部位254とを接続する直線状の部位である。なお、第一張出部位253は、固定カバー本体230からの張出寸法が第二張出部位254よりも大きく、正面から見た第一張出部位253の張出方向先端部分は、第一張出部位より右側に位置する。また、第二張出部位254と第三張出部位255とのなす角度は、130度に設定される。
【0048】
張出側板部252は、第一張出部位253の外周端部から底板260に向かって下方(
図5下側)へ延びる曲面板状の部位であり、張出側板部252の下端部分は、底板260に接触する。
【0049】
第一張出部位253は、アーム基部215(
図4A参照)の旋回中心Pを円弧中心とする円弧状に形成される。なお、第一張出部位253の円周角は、40度に設定される。そして、張出側板部252の内周面の曲率半径は、アーム本体211の旋回中心P周りを旋回する第一把持部212a及び第二把持部212b(
図4A参照)の旋回半径よりも大きな寸法に設定される。より具体的に、張出側板部252の内周面の曲率半径は、第一把持部212a及び第二把持部212bに工作物Wが把持された状態でアーム本体211が旋回した際に、工作物Wと張出側板部252との干渉を回避可能な寸法に設定される。
【0050】
図6Aから
図6Cに示すように、底板260は、固定カバー本体230のうち、第一主開口205及び第三主開口207の下端部分に固定される板状の部位であり、工作機械1の機内と機外とに亘って設けられる。底板260の上面は、固定カバー本体230よりも機内側で窪みカバー240とY軸方向で対向する。
【0051】
また、底板260の上面には、第一窪み側板243に向けて突出する半円状の底板凸部261が形成される。この底板凸部261は、第一窪み側板243に対応する円弧形状に形成される。つまり、底板凸部261は、アーム本体211(
図4A参照)の旋回中心Pを中心とする曲率であって、底板凸部261の外周面は、第一窪み側板243の外周面と同等の曲率半径に設定される。そして、底板凸部261と第一窪み側板243の下端との間に形成される隙間S11は、開口203の一部を形成すると共に、アーム本体211が通過可能な寸法に形成される。
【0052】
これに加え、第一窪み側板243のうち底板凸部261と対向していない部位の下端、及び、第二窪み側板244の下端は、底板260の上面との間に隙間S12を形成し、この隙間S12も同様に、開口203の一部を形成する。
【0053】
一方、底板260は、固定カバー本体230よりも機外側で張出天板部251とY軸方向で対向する。張出しカバー250と底板260とにより包囲される領域は、第三主開口207に連通する領域であって、アーム本体211が通過可能寸法に形成される。そして、張出天板部251の第二張出部位254及び第三張出部位255と、張出側板部252の張出方向先端側の端面と、底板260とにより包囲されることで形成される張出開口部208は、開口203の一部を形成する。
【0054】
このように、開口203は、窪みカバー240及び張出しカバー250と底板260との間に形成される隙間により形成される。そして、可動カバー222は、開口203を閉塞可能な形状に形成される。
【0055】
(1-2-4.可動カバー222の構成)
図7Aから
図8Aに示すように、可動カバー222は、支持板270と、曲面板280と、延在板290とを備える。
【0056】
支持板270は、アーム基部215の下端面に固定される板状の部位である。つまり、可動カバー222は、アーム本体211に支持板270が固定される。また、アーム本体211は、アーム旋回駆動装置213に連結され、そのアーム旋回駆動装置213は、窪み天板部242に固定される。これにより、アーム本体211及び可動カバー222は、固定カバー221に対して旋回可能に支持される。
【0057】
このように、工作物交換装置200は、可動カバー222とアーム本体211と一体的に設けられ、可動カバー222は、アーム本体211の旋回に連動しながらアーム本体211の旋回中心P周りを旋回する。また、支持板270は、可動カバー222の旋回中心Pから径方向に延在する平面視略扇形状に形成され、Y軸方向で底板260に対向する。
【0058】
曲面板280は、支持板270の外周側端部からY軸方向へ延びる部位である。曲面板280は、可動カバー222の旋回中心P(アーム基部215の旋回中心P)を中心とする曲率に形成された平面視略円弧状に形成され、可動カバー222の旋回中心P周りに配置される。なお、Y軸方向から見た曲面板280の円周角は、220度である。
【0059】
また、曲面板280には、外周面から幅方向(Y軸方向)両側へ延びる曲面凸部281が形成される。この曲面凸部281は、底板260の底板凸部261、及び、底板凸部261に対向する窪みカバー240の窪み天板部242のうち底板凸部261に対向する部位の円弧形状に対応する円弧形状に形成される。つまり、曲面凸部281は、可動カバー222の旋回中心Pを中心とする曲率に形成されると共に、曲面凸部281の内周面は、底板凸部261及び窪み天板部242の円弧形状部分との外周面の曲率半径と同等、又は、底板凸部261及び窪み天板部242の円弧形状部分との外周面の曲率半径よりも僅かに大きな寸法に形成される。
【0060】
これに加え、曲面板280の内周面の幅寸法S21は、底板凸部261と第一窪み側板243の下端との隙間S11よりも小さな寸法に設定される。そして、一対の曲面凸部281を含めた曲面板280の外周面の幅寸法S22は、底板凸部261と第一窪み側板243の下端との隙間S11よりも大きく、且つ、第二窪み側板244の下端と底板260の上面との隙間S12よりも小さな寸法に設定される。
【0061】
よって、可動カバー222は、曲面板280を隙間S11に配置することができる。そして、可動カバー222は、隙間S11に曲面板280を配置することにより、隙間S11、即ち、開口203を閉塞することができる。そして、曲面板280が隙間S11に配置された状態において、底板凸部261と曲面凸部281とは、径方向(Y軸に直交する方向)において一部分が重なりあう。よって、可動カバー222は、工作機械1の機内で発生した切粉等が隙間S11から飛散することを抑制できる。
【0062】
延在板290は、第一延在板291と、第二延在板292とを備える。第一延在板291は、曲面板280の周方向一端側の端部から可動カバー222の旋回中心Pから見た径方向へ延在する平板状の部位である。第二延在板292は、第一延在板291の延在方向先端側の端部から延在する平板状の部位であり、第一延在板291の延在方向とは異なる方向へ向けて延在する。
【0063】
ここで、曲面板280と第一延在板291との接続部位の屈曲形状は、窪みカバー240の第一窪み側板243と第二窪み側板244との接続部位の屈曲形状に対応する。そして、第一延在板291と第二延在板292とのなす角度は、140度であり、第一延在板291が、Y軸方向において第二窪み側板244の下端と重なる位置に配置されると、第二延在板292は、Y軸方向において第三主開口207と重なる位置に配置される(
図10A参照)。
【0064】
また、
図8Bに示すように、第一延在板291と第二延在板292との屈曲形状は、張出しカバー250の第二張出部位254と第三張出部位255との屈曲形状に対応する。従って、第一延在板291及び第二延在板292が、Y軸方向において第二張出部位254及び第三張出部位255と重なる位置に配置されると、張出開口部208は、延在板290により閉塞され、開口203は、可動カバー222により閉塞される。
【0065】
そして、アーム本体211と可動カバー222との位置関係に関して、工作物交換装置200は、延在板290が第三主開口207と張出開口部208との間に配置された場合に、第一アーム216及び第二アーム217が、固定カバー本体230よりも機外側に配置される。
【0066】
(1-2-5:制御装置300)
次に、
図9を参照して、制御装置300を説明する。
図9に示すように、制御装置300は、加工装置100に関する制御を行う加工装置制御部310と、アーム装置201に関する制御を行うアーム装置制御部320とを備える。
【0067】
加工装置制御部310は、工具回転制御部311、工作物回転制御部312と、工作物旋回制御部313と、位置制御部314と、を備える。
【0068】
工具回転制御部311は、工具主軸モータ26の駆動制御を行い、工具主軸25に装着された歯切り工具60を回転させる。工作物回転制御部312は、工作物主軸モータ33の駆動制御を行い、工作物主軸32に装着された工作物Wを回転させる。そして、制御装置300は、工作物Wと歯切り工具60とを同期回転させる。
【0069】
工作物旋回制御部313は、工作物旋回駆動装置52の駆動制御を行い、回転テーブル51をB軸周りに回転させる。これにより、制御装置300は、工作物Wの加工時に、工作物Wの回転軸線が歯切り工具60の回転軸線に対して傾斜させた状態で配置されるように、工作物主軸32の向きを変える。また、制御装置300は、アーム装置201との間で工作物Wの受け渡しを行う際に、工作物Wを受け渡し可能な方向へ工作物主軸32を向ける。
【0070】
位置制御部314は、X軸駆動装置42の駆動制御を行い、移送台41をX軸方向へ移動させる。これにより、制御装置300は、工作物Wの加工時に、移送台41に設置された工作物保持装置30を工具保持装置20に対して移動させ、工作物Wを加工位置に配置する。また、制御装置300は、アーム装置201との間で工作物Wの受け渡しを行う際に、工作物保持装置30をアーム装置201に対して移動させ、工作物Wを受け渡し位置に配置する。
【0071】
アーム装置制御部320は、アーム旋回制御部321と、把持部旋回制御部322とを備える。アーム旋回制御部321は、アーム旋回駆動装置213の駆動制御を行い、アーム本体211及び可動カバー222を旋回させる。これにより、アーム装置201は、工作機械1の機内と機外との間で工作物Wの受け渡しを行いながら、可動カバー222を旋回させて開口203の開閉を同時並行的に行う。
【0072】
把持部旋回制御部322は、第一把持部旋回駆動装置214a及び第二把持部旋回駆動装置214bの駆動制御を行い、第一把持部212a又は第二把持部212bを第一アーム216又は第二アーム217に対して旋回させる。これにより、制御装置300は、第一把持部212a及び第二把持部212bに把持された工作物Wが、工作物保持装置30又は搬送装置2との間で工作物Wの受け渡しを行うのに適した姿勢となるように、工作物Wの向きを変える。
【0073】
(1-3.工作物交換装置200の動作)
次に、
図10Aから
図10Fを参照しながら、加工前の工作物Wを加工装置100に搬入してから加工後の工作物Wを加工装置100から搬出するまでの工作物交換装置200の一連の動作を説明する。
【0074】
図10Aに示すように、搬送装置2は、アーム装置201が工作物Wを受け取り可能な受け渡し位置に、加工前(未加工)の工作物W1を搬送する。このとき、アーム装置201は、受け渡し位置に搬送された工作物W1を第一把持部212aにより把持可能な機外第一状態で待機する。つまり、工作物W1は、回転軸線をY軸方向へ向けた状態で受け渡し位置に搬送されるのに対し、アーム装置201は、把持爪219が下方を向くように第一把持部212aを旋回させた状態で待機する。そして、加工前の工作物Wが受け渡し位置に搬送されると、アーム装置201は、搬送された工作物W1を第一把持部212aで把持する。
【0075】
またこのとき、第一アーム216及び第二アーム217は、工作機械1の機外に配置される。そして、開口203は、可動カバー222により閉塞される。よって、機外第一状態において、工作機械1は、機内で加工装置100による工作物Wの加工を行う際に発生する切粉等が機外に飛散することを抑制できる。即ち、工作機械1は、加工前の工作物Wが受け渡し位置に搬送されるのを待機している間、加工装置100による工作物Wの加工を行うことができる。
【0076】
図10Bに示すように、第一把持部212aが工作物W1を受け取ると、アーム装置201は、第一把持部212aを旋回させて工作物Wの向きを変える。これにより、第一把持部212aに把持された工作物W1は、工作物Wの回転軸線をY軸方向へ向けた状態からX軸方向へ向けた状態となる。
【0077】
加工装置100による工作物Wの加工終了後、アーム装置201は、アーム本体211を
図10Bに示す反時計回り方向へ旋回させることにより、開口203を通過しながら第一把持部212aに把持された工作物W1を工作機械1の機外から機内へ搬入する。このとき、可動カバー222は、アーム本体211と連動しながら旋回し、開口203を開放する。よって、工作物交換装置200は、アーム本体211及び把持された工作物W1が可動カバー222と干渉することを回避できる。その結果、アーム本体211は、開口203の開放完了を待たずに工作物W1の搬入動作を開始することができる。
【0078】
図10Cに示すように、アーム装置201は、
図10Bに示す機内第一状態から、工作物保持装置30に保持された加工後の工作物W2を第二把持部212bにより把持可能な機内第一状態に移行する。これと同時に、工作物保持装置30は、加工位置から受け渡し位置へ移動すると共に、加工後の工作物Wをアーム装置201に引き渡し可能な位置に配置する。その後、工作物保持装置30は、加工後の工作物Wを第二把持部212bに引き渡す。
【0079】
続いて、
図10Dに示すように、アーム装置201は、機内第一状態からアーム本体211を
図10Cに示す時計回り方向へ旋回させることにより、第一把持部212aに把持された加工前の工作物Wを引き渡し可能な機内第二状態に移行する。そして、機内第二状態への移行が完了すると、工作物保持装置30は、加工前の工作物Wを第一把持部212aから受け取る。
【0080】
その後、アーム装置201は、アーム本体211を
図10Dに示す時計回り方向へ旋回させることにより、開口203を通過しながら第二把持部212bに把持された工作物W2を工作機械1の機内から機外へ搬出する。そして、工作物保持装置30は、受け渡し位置から加工位置へ移動し、開口203が可動カバー222により閉塞された後、工作物保持装置30に保持された工作物Wの加工を開始する。
【0081】
この点に関し、可動カバー222は、アーム本体211と連動しながら旋回するので、工作物交換装置200は、アーム装置201と可動カバー222との距離を一定に保つことができる。よって、工作物交換装置200は、アーム装置201により搬送される工作物Wと可動カバー222との干渉を防止できる。その結果、工作物交換装置200は、工作物W2の搬出動作と可動カバー222による開口203の閉塞動作とを並行して行うことができる。また、工作機械1は、工作物W2の搬出動作を開始してから可動カバー222による開口203の閉塞動作が完了するまでに要する時間を短縮できるので、加工装置100による工作物Wの加工開始待ち時間の短縮を図ることができる。
【0082】
図10Eに示すように、アーム装置201は、
図10Dに示す機外第二状態から、第二把持部212bに把持された加工後の工作物W2を搬送装置2に引き渡し可能な受け渡し位置に配置する機外第二状態へ移行する。そして、
図10Fに示すように、機外第二状態への移行が完了すると、アーム装置201は、把持爪219が下方を向くように第二把持部212bを旋回させて工作物Wの向きを変える。これにより、第二把持部212bに把持された工作物W2の姿勢は、工作物W2の回転軸線をX軸方向へ向けた状態からY軸方向へ向けた状態に変わる。そして、搬送装置2は、第二把持部212bに把持された加工後の工作物W2を受け取り、搬送を行う。
【0083】
なお、機外第二状態において、可動カバー222の延在板290は、第三主開口207を越えて固定カバー本体230よりも機外側に配置される。これに対し、固定カバー221には、固定カバー本体230から機外側へ張り出す張出しカバー250が設けられ、張出開口部208は、延在板290に倣った形状に形成される。よって、可動カバー222は、第三主開口207と張出開口部208との間に延在板290が配置された状態において、開口203を閉塞することができる。よって、工作物交換装置200は、機外第二状態において、機内で加工装置100による工作物Wの加工を行う際に発生する切粉等が機外に飛散することを抑制できる。即ち、工作機械1は、搬送装置2に対する加工後の工作物Wの引き渡しを行う間、加工装置100による工作物Wの加工を行うことができる。
【0084】
その後、アーム装置201は、
図10Aに示す待機状態に復帰する。即ち、アーム装置201は、第二把持部212bを旋回させて元の向き(工作物保持装置30から工作物Wを受け取る際の向き)に戻し、機外第二状態から機外第一状態へ移行する。そして、アーム装置201は、搬送装置2により加工前の工作物Wが受け渡し位置に搬送されるまで待機する。
【0085】
このように、工作物交換装置200は、可動カバー222がアーム本体211に一体的に設けられるので、可動カバー222は、アーム本体211に連動して旋回する。これにより、工作物交換装置200は、可動カバー222による開口203の開閉動作を、アーム本体211による工作物Wの搬入出動作と並行して行うことができるので、サイクルタイムの短縮を図ることができる。また、工作物交換装置200において、固定カバー221に対するアーム本体211の旋回駆動を行うアーム旋回駆動装置213は、固定カバー221に対する可動カバー222の旋回駆動を兼用する。よって、工作物交換装置200は、部品点数を少なくすることができ、工作物交換装置200の小型化を図ることができる。
【0086】
また、第一把持部212a及び第二把持部212bは、アーム本体211に旋回可能に支持されるので、工作物Wの受け取り時と引き渡し時とで工作物Wの向きを変えることができる。これにより、工作機械1は、工作物交換装置200に工作物Wを供給する搬送装置による搬送方法に自由度を持たせることができるので、汎用性を高めることができる。
【0087】
さらに、可動カバー222は、固定カバー221に対して旋回可能に設けられるので、例えば、可動カバー222がスライド可能に設けられる場合と比べて、可動カバー222の可動領域を小さくすることができる。その結果、工作機械1は、可動カバー222と工作機械1に設けられる他の部材との干渉を回避しやすくすることができるので、工作機械1の設計自由度を高めることができると共に、工作機械1の大型化を抑制できる。
【0088】
また、アーム本体211は、加工前の工作物W1の搬入出を行う第一アーム216と、加工後の工作物W2の搬入出を行う第二アーム217とを備える。これにより、工作物交換装置200は、工作機械1の機内と機外とを一往復する間に、加工前の工作物Wの搬入と加工後の工作物Wの搬出とを並行して行うことができる。よって、工作物交換装置200は、加工前の工作物Wと加工後の工作物Wとの交換に要する時間の短縮を図ることができる。
【0089】
これに加え、アーム装置201は、機外第一状態と機外第二状態とで配置が異なるように設定され、機外第二状態では、延在板290が第三主開口207を越えて固定カバー本体230よりも機外側に配置される。これに対し、固定カバー221には、固定カバー本体230から機外側へ張り出す張出しカバー250が設けられ、延在板290が固定カバー本体230よりも機外側に配置された場合に、張出しカバー250は、第三主開口207と延在板290との間を閉塞する。
【0090】
よって、工作物交換装置200は、機外第一状態及び機外第二状態において、開口203を可動カバー222によって閉塞することができる。これにより、工作機械1は、可動カバー222により開口203が閉塞される時間、即ち、機内で加工装置100による工作物Wを加工できる時間を長く確保できる。その結果、加工装置100は、機内での加工装置100による工作物Wの加工と、機外でのアーム装置201と搬送装置2との工作物Wの受け渡しとを並行して行うことが可能な時間を長くすることができる。つまり、工作機械1は、工作物Wの交換又は工作物Wの加工を開始するまでの待ち時間を少なくすることができるので、サイクルタイムを短縮できる。
【0091】
工作物交換装置200は、開口203が閉塞され、機内で加工装置100による加工が可能な機外第一状態及び機外第二状態において、曲面板280は、固定カバー本体230よりも機内側に配置される。この点に関し、可動カバー222は、曲面板280が可動カバー222の旋回中心Pを中心とする平面視円弧状に形成されるのに対し、延在板290は、曲面板280の周方向端部から径方向に延在する。これにより、可動カバー222の旋回に伴う曲面板280の旋回領域は、延在板290の可動領域の内側に形成される。つまり、工作物交換装置200は、加工装置100による加工を行う際に、固定カバー221及び可動カバー222が固定カバー本体230から機内側へ張り出す張出量を小さくすることができる。
【0092】
また、工作物交換装置200において、アーム本体211が工作機械1の機外と機内との間を移動する際に、第一アーム216及び第二アーム217は、正面から見て旋回中心Pの右側のみを移動する。そして、アーム本体211の旋回中心Pは、正面から見て主開口204の左側に寄った位置に配置される。よって、工作物交換装置200は、正面から見た旋回中心Pの左右両側を第一アーム216及び第二アーム217が通過する場合と比べて、主開口204を小さくすることができる。その結果、工作物交換装置200は、可動カバー222の小型化を図ることができる。
【0093】
これに加えて、可動カバー222は、正面から見て旋回中心Pの右側部分を、旋回領域の小さい曲面板280と旋回領域の大きい延在板290とにより閉塞しつつ、旋回中心Pの左側部分を、曲面板280により閉塞することができる。よって、工作物交換装置200は、可動カバー222に旋回領域の小さい曲面板280を備える場合であっても、開口203を確実に閉塞することができる。
【0094】
このように、可動カバー222は、機外第一状態及び機外第二状態において、可動カバー222によって開口203を閉塞可能としつつ、曲面板280の曲率半径を、第一アーム216及び第二アーム217の先端(第一把持部212a及び第二把持部212b)の旋回半径よりも小さくすることができる。よって、工作物交換装置200は、可動カバー222の全体が、第一アーム216及び第二アーム217の先端の旋回半径よりも大きな旋回半径を有する円弧形状に形成される場合と比べて、可動カバー222及び固定カバー221の小型化を図ることができる。その結果、工作機械1は、工作物交換装置200の配置に必要なスペースを小さくすることができるので、工作機械1の設計自由度を高めることができる。
【0095】
次に、
図11に示すフローチャートを参照して、アーム装置制御部320により実行されるアーム装置工作物交換処理について説明する。アーム装置工作物交換処理は、アーム装置201が加工前の工作物W1を機外から機内へ搬入すると共に、加工後の工作物W2を機外から機内へ搬出する際に実行される処理である。
【0096】
図11に示すように、アーム装置工作物交換処理は、最初に、機外第一処理へ移行し(S101)、搬送装置2によって加工前の工作物W1が受け渡し位置に搬送されたか否かを判定する(S102)。そして、工作物W1が搬入されていなければ(S102:No)、アーム装置工作物交換処理は、S102の処理を再度実行する。一方、工作物W1が搬入されると(S102:Yes)、アーム装置工作物交換処理は、第一把持部212aを用いて、加工前の工作物W1を搬送装置2から受け取る(S103、
図10A参照)。その後、アーム装置工作物交換処理は、第一把持部212aを旋回させて工作物W1の向きを変える(S104、
図10B参照)。
【0097】
S104の処理後、アーム装置工作物交換処理は、機内で加工装置100による加工中であるか否かを判定する(S105)。そして、加工装置100による加工中であれば(S105:Yes)、開口203を閉塞したままにしておく必要があるので、アーム装置工作物交換処理は、加工装置100による加工が終了するまで、S104の処理を繰り返し実行する。一方、加工装置100による加工中でない場合、或いは、加工が終了した場合に(S105:No)、アーム装置工作物交換処理は、アーム本体211及び可動カバー222を旋回させながら工作物W1を機外から機内へ搬入し、機内第一状態へ移行する(S106:
図10C参照)。
【0098】
S106の処理後、アーム装置工作物交換処理は、加工後の工作物W2があるか、即ち、工作物保持装置30に加工後の工作物W2が保持されているか否かを判定する(S107)。そして、工作物W2がなければ(S107:No)、アーム装置工作物交換処理は、S108の処理をスキップしてS109の処理へ移行する。これに対し、工作物W2があれば(S107:Yes)、アーム装置工作物交換処理は、第二把持部212bを用いて、工作物保持装置30から加工後の工作物W2を受け取り(S108)、S109の処理へ移行する。
【0099】
次に、アーム装置工作物交換処理は、機外第二状態へ移行する(S109、
図10D参照)。その後、アーム装置工作物交換処理は、第一把持部212aに把持された加工前の工作物W1を工作物保持装置30に引き渡す(S110)。S110の処理後、アーム装置工作物交換処理は、アーム本体211及び可動カバー222を旋回させながら工作物W2を機内から機外へ搬入し、機外第二状態へ移行する(S111、
図10E参照)。
【0100】
S111の処理後、アーム装置工作物交換処理は、第二把持部212bを旋回させて工作物W1の向きを変える(S112、
図10F参照)。そして、アーム装置工作物交換処理は、第二把持部212bに把持された加工後の工作物W2を搬送装置2に引き渡し(S113)、本処理を終了する。
【0101】
次に、
図12に示すフローチャートを参照して、加工装置制御部310により実行される加工装置工作物交換処理について説明する。加工装置工作物交換処理は、工作物保持装置30が、アーム装置201との間で工作物Wの受け渡しを行う際に実行される処理である。
【0102】
図12に示すように、加工装置工作物交換処理は、まず、加工装置100による工作物Wの加工が終了したか否かの判定を行う(S201)。そして、加工が終了していなければ(S201:No)、加工装置工作物交換処理は、S201の処理を再度実行する。一方、加工が終了すると(S201:Yes)、加工装置工作物交換処理は、X軸駆動装置42を制御し、工作物保持装置30を加工位置からアーム装置201との受け渡し位置に移動させる(S202)。
【0103】
S202の処理後、加工装置工作物交換処理は、加工後の工作物Wをアーム装置201に引き渡す(S203)。続いて、加工装置工作物交換処理は、アーム装置201によって加工前の工作物W1が搬入されたか否かを判定する(S204)。そして、工作物W1が搬入されていなければ(S204:No)、加工装置工作物交換処理は、S204の処理を再度行う。一方、加工装置工作物交換処理は、工作物W1が搬入されると(S204:Yes)、アーム装置201から加工前の工作物W1を受け取る(S205)。そして、加工装置工作物交換処理は、X軸駆動装置42を制御し、工作物保持装置30をアーム装置201との受け渡し位置から加工位置に移動させる(S206)。
【0104】
S206の処理後、加工装置工作物交換処理は、可動カバー222によって開口203が閉塞されたか否かを判定する(S207)。そして、開口203が閉塞されていなければ(S207:No)、加工装置工作物交換処理は、S207の処理を再度実行する。一方、加工装置工作物交換処理は、開口203が閉塞されると(S207:Yes)、工作物Wの加工を開始し(S208)、本処理を終了する。これにより、工作機械1は、加工時に発生する切粉等が開口203から機外へ飛散することを確実に防止できる。
【0105】
このように、工作機械1は、アーム装置201と工作物保持装置30との間で工作物Wの受け渡しを行うにあたり、工作物保持装置30がX軸方向へ移動し、アーム装置201との間で工作物Wの受け渡しを行う受け渡し位置に移動する。この場合、工作機械1は、アーム装置201に対し、第一把持部212a及び第二把持部212bをX軸方向へ移動させるための駆動機構を持たせることを不要とすることができる。
【0106】
これに加え、工作機械1は、加工装置100による工作物Wの加工で利用する移送装置40を利用して、工作物保持装置30を加工位置から受け渡し位置に移動させる。即ち、移送装置40は、工作物Wの加工時において工作物保持装置30を工具保持装置20に対して移動させることと、工作物保持装置30とアーム装置201との受け渡し時において工作物保持装置30をアーム装置201に対して移動させることを兼用する。この場合、工作機械1は、工作物保持装置30とアーム装置201との受け渡しを行う際に用いる駆動機構を追加で設ける必要がないので、工作機械1の構造を簡素化できる。
【0107】
<2.第二実施形態>
次に、第二実施形態について説明する。第一実施形態の工作物交換装置200は、固定カバー221に対し、可動カバー222がアーム装置201に連動して旋回するのに対し、第二実施形態の工作物交換装置500は、固定カバー221に対し、可動カバー522がアーム装置501に連動してスライドする。なお、上記した第一実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0108】
(2-1.工作物交換装置500について)
図13Aに示すように、第二実施形態における工作物交換装置500は、アーム装置501と、筐体502とを備える。筐体502は、固定カバー221と、可動カバー522と、テレスコカバー523とを備える。テレスコカバー523は、複数のカバー片524からなる伸縮部525と、伸縮駆動装置526とを備える。
【0109】
テレスコカバー523は、工作機械401の機内に設置される。伸縮部525は、Z軸方向へ伸縮可能に設けられ、伸縮駆動装置526は、複数のカバー片524のうち一のカバー片524aをZ軸方向へ伸縮させるための駆動力を付与するアクチュエータである。伸縮部525をZ軸方向へ伸長させると、一のカバー片524aは、開口203を越えて機外に張り出す。そして、アーム装置501及び可動カバー522は、一のカバー片524aに設けられる。
【0110】
アーム装置501は、アーム本体511と、第一把持部212a及び第二把持部212bと、アーム旋回駆動装置513と、第一把持部旋回駆動装置214a及び第二把持部旋回駆動装置214bとを備える。アーム本体511は、アーム基部515と、第一アーム516と、第二アーム517と、アーム支持部510とを備える。
【0111】
アーム支持部510は、一のカバー片524から下方へ延びる部位であり、一のカバー片524に対してアーム基部515を回転可能に支持する。そして、アーム旋回駆動装置513は、アーム支持部510に対してアーム基部515を回転させるための駆動力を付与する。アーム装置501は、アーム基部515を回転させることにより、第一アーム516及び第二アーム517を旋回させることができる。可動カバー522は、アーム支持部510よりも工作機械401の機内側で、一のカバー片524から延びる板状に形成され、開口203を閉塞可能に形成される。
【0112】
従って、工作物交換装置500は、Z軸方向において可動カバー522が開口203と重なる位置に配置されるように、テレスコカバー523の伸縮部525を伸縮させることにより、開口203を閉塞することができる。このとき、アーム本体211は、工作機械401の機外に配置されるので、工作機械401は、工作物交換装置500による搬送装置2との工作物Wの受け渡しを、加工装置100による工作物Wの加工と並行して行うことができる。よって、工作機械401は、サイクルタイムの短縮を図ることができる。
【0113】
(2-2.工作物交換装置500の動作)
続いて、工作物交換装置500の動作について説明する。工作物交換装置500は、アーム支持部510及び可動カバー522が、双方が一のカバー片524に対して一体的に設けられる。よって、アーム支持部510及び可動カバー522は、伸縮部525の伸縮に連動してZ軸方向へスライドする。
【0114】
従って、工作物交換装置500は、アーム装置501によって工作物Wを機外から機内へ搬入する際、伸縮部525を機内側へ縮めることにより、アーム装置501を機内に移動させることができる。そしてこのとき、可動カバー522は、アーム本体511に連動して機内へ向けて移動する。同様に、工作物交換装置500は、アーム装置501によって工作物Wを機内から機外へ搬出する際、伸縮部525を機外側へ伸ばすことで、アーム装置501が機外に移動し、可動カバー522は、アーム本体511に連動して開口203へ向けて移動する。
【0115】
よって、工作物交換装置500は、可動カバー522による開口203の開閉動作を、アーム装置501による工作物Wの搬入出動作と並行して行うことができる。よって、工作物交換装置500は、可動カバー522による開口203の開閉動作が完了した後に、アーム装置501による工作物Wの搬入出を開始する場合と比べて、工作物Wの交換に要する時間を短縮できる。その結果、工作機械401は、サイクルタイムを短縮できる。
【0116】
また、工作物交換装置500は、アーム本体511と可動カバー522とが連動してZ軸方向へ移動するので、アーム装置501と可動カバー522との距離を一定に保つことができる。よって、工作物交換装置500は、アーム装置により搬送される工作物と可動カバーとの干渉を確実に防止できる。
【0117】
<3.その他>
以上、上記各実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。また、上記各実施形態で挙げた数値や形状は、一例であり、他の数値や形状を適用することも可能である。例えば、曲面板280の円周角等の角度は、工作物Wや第一把持部281及び第二把持部282の寸法、アーム本体211の旋回領域の近くに配置される他の部材及びその寸法、目標とする工作物Wの交換時間や加工時間等に基づき、最適な角度に設定される。
【0118】
上記各実施形態では、可動カバー222,522がアーム本体211,511と一体的に設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、アーム本体211,511が旋回可能な旋回領域の中の一部の領域をアーム本体211,511が旋回する際に、可動カバー222,522がアーム本体211,511と連動可能となるように、可動カバー222,522がアーム本体211,511に係合される態様であってもよい。
【0119】
上記各実施形態において、加工装置100がY軸方向に平行なB軸周りに工作物Wを旋回させ工作物旋回装置50を備える場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、加工装置100が、工作物旋回装置50の代わりに、C軸に直交する軸線周りに揺動するチルト装置を備え、そのチルト装置に工作物主軸32を設けてもよい。この場合、アーム装置201,501は、工作物主軸32との間で工作物Wの受け渡しを行う際、必要に応じて、第一把持部212a又は第二把持部212bを旋回させることにより工作物Wの姿勢を変えることができる。よって、工作物交換装置200,500は、多種の加工装置との間で工作物Wの受け渡しを行うことができるので、汎用性を高めることができる。
【0120】
上記各実施形態において、アーム本体211が2本のアーム(第一アーム216,516及び第二アーム217,517)を備える場合について説明したが、本発明は、アーム本体に設けられるアームが一つであるアーム装置に適用することも可能である。この場合においても、工作物交換装置は、可動カバー222,522の開閉動作をアーム装置の動作と連動させることにより、工作物Wの交換に要する時間の短縮を図ることができる。
【符号の説明】
【0121】
1:工作機械、 10:ベッド(固定部)、 20:工具保持装置、 30:工作物保持装置、 40:移送装置、 200,500:工作物交換装置、 201,501:アーム装置、 203:開口、 204:主開口、 211,511:アーム本体、 212a:第一把持部(把持部)、 212b:第二把持部(把持部)、 213:アーム旋回駆動装置(旋回駆動装置)、 215,515:アーム基部, 216,516:第一アーム, 217,517:第二アーム, 221:固定カバー, 222,522:可動カバー, 230:固定カバー本体, 250:張出しカバー、 280:曲面板、 290:延在板、 300:制御装置、 P:旋回中心、 W,W1,W2:工作物