(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】車両管理システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/14 20060101AFI20220112BHJP
B60L 53/00 20190101ALI20220112BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20220112BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20220112BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20220112BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220112BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20220112BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20220112BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20220112BHJP
【FI】
G08G1/14
B60L53/00
G01C21/26 A
G08G1/00 X
G08G1/09 F
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H02J7/02 B
H02J50/12
H02J50/80
(21)【出願番号】P 2017225566
(22)【出願日】2017-11-24
【審査請求日】2020-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 裕治
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-228152(JP,A)
【文献】特開2007-202335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/14
H02J 50/12
H02J 50/80
H02J 7/00
H02J 7/02
G01C 21/26
G08G 1/00
G08G 1/09
B60L 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転機能及び非接触外部充電機能を備え
るとともに自動運転の状態を制御する自動運転制御装置を具備した車両を充電する充電施設の車両管理システムであって、
前記車両に定電流充電を実施する定電流充電装置が設置された定電流エリアと、前記車両に定電圧充電を実施する定電圧充電装置が設置された定電圧エリアとを有する駐車エリアと、
前記車両のバッテリーに残存する電気量の残量及び前記充電によって追加される電気量の目標値である目標充電量の情報を取得する情報取得部と、
前記残量及び前記目標充電量に基づき、前記駐車エリアに入場した前記車両
からネットワークを介して前記自動運転の実施条件に関する情報を取得し、前記ネットワークを介した指示により当該車両の前記自動運転制御装置に前記自動運転の状態を制御させることで当該車両を前記自動運転で移動させる
自動運転制御を実施するとともに
、当該車両に対して前記定電流エリアでの前記定電流充電または前記定電圧エリアでの前記定電圧充電を実施する施設管理部と、
を備えたことを特徴とする、車両管理システム。
【請求項2】
前記施設管理部が、前記駐車エリアに入場した前記車両について、前記残量があらかじめ設定された第一基準値以上の場合に前記定電圧エリアで前記定電圧充電を実施し、前記残量が前記第一基準値未満の場合に前記定電流エリアで前記定電流充電を実施する
ことを特徴とする、請求項1記載の車両管理システム。
【請求項3】
前記施設管理部が、前記定電流エリアで定電流充電が実施される前記車両について、充電前の前記残量に前記目標充電量を加算した値があらかじめ設定された第二基準値以上の場合に前記車両を前記定電圧エリアにも移動させ、前記目標充電量が前記第二基準値未満の場合に前記車両を前記定電流エリアのみで充電する
ことを特徴とする、請求項1または2記載の車両管理システム。
【請求項4】
前記定電流エリアに存在する前記車両の台数を検出する検出部を備え、
前記施設管理部が、前記検出部で検出された前記台数が多いほど前記第二基準値の値を低く設定する
ことを特徴とする、請求項3記載の車両管理システム。
【請求項5】
前記定電圧エリアの駐停車枠数が、前記定電流エリアの駐停車枠数よりも多い
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の車両管理システム。
【請求項6】
前記駐車エリア内の各エリアに存在する各車両の台数を検出する車両検出部を備え、
前記施設管理部が、前記各エリアの台数に基づき、前記車両を前記自動運転で移動させる
ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の車両管理システム。
【請求項7】
前記充電施設の近隣に存在する他の充電施設との通信により、前記
車両の台数の情報を共有する施設間通信部とを備え、
前記施設管理部が、前記目標充電量の情報の取得に際し、前記他の充電施設における前記
車両の台数の情報から推定される混雑状況を前記車両
の乗員に提示する
ことを特徴とする、請求項6記載の車両管理システム。
【請求項8】
前記駐車エリアが、前記定電流エリアまたは前記定電圧エリアでの充電後に前記車両が駐車する完了エリアを有し、
前記施設管理部が
、外部充電が完了した前記車両を前記完了エリアに
前記自動運転で移動させる
ことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の車両管理システム。
【請求項9】
前記定電流エリア及び前記定電圧エリアのそれぞれが、入口と出口とを並列に接続する複数の通路と、一つの前記通路に前端辺が接し他の前記通路に後端辺が接するように配置された複数の駐停車枠とを有する
ことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の車両管理システム。
【請求項10】
前記施設管理部が、前記自動運転の実施前にドアロックスイッチの施錠状態の情報,イグニッションスイッチの操作状態の情報,セレクトレバーの操作位置の情報を取得し、前記自動運転の実施中にステアリングの操舵情報,駆動力,制動力の情報を取得する
ことを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の車両管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転機能及び非接触外部充電機能を備えた車両を充電する充電施設の車両管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非接触式の外部充電装置(ワイヤレス充電装置)を搭載した車両に自動運転制御を適用することで、車載バッテリーの外部充電を効率よく実施する技術が検討されている。すなわち、車両の下面に取り付けられた受電コイルと路面に埋設された給電コイルとが近接するように車両位置を自動的に制御した上で、電磁誘導や磁気共鳴を利用して給電コイル側から受電コイル側へと送電する技術である。外部充電時の車両の動きを全自動化することで、路面側の給電コイルに対する、車両側の受電コイルの位置合わせ精度が向上し、充電効率が改善されうる。
【0003】
従来の具体的な運用手法としては、ワイヤレス充電装置の給電コイルが埋設された駐車領域に空きがなければ車両を一時的に別の場所で待機させておき、空きがあれば車両を自動的に駐車領域へ移動させて充電を開始する、という手法が挙げられる(特許文献1参照)。また、あらかじめ所定の駐車枠に車両を駐車させておき、ユーザーの希望が反映された充電スケジュールに従って車両を駐車位置から外部充電装置の位置へと移動させる、といった手法も提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-141161号公報
【文献】特開2015-050877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の運用手法は、一台の外部充電装置での充電を前提としており、大規模な駐車場に設置される外部充電システムの運用手法としては適さない可能性がある。例えば、数百台の車両を収容しうるサービスエリアやパーキングエリアなどでは、不特定多数の車両が同時並行的に外部充電を実施できるようなしくみが望まれる。また、サービスエリアやパーキングエリアは、目的地までの道のりで立ち寄る、通過点の一つに過ぎないことが多く、外部充電の行列待ちのために滞在時間がむやみに長くなってしまうような事態は避けたい。
【0006】
例えば、サービスエリアで外部充電する車両には、200km以上の長距離走行のためにバッテリーを満充電状態まで充電したい車両もあれば、20km程度の走行距離が確保される軽い充電で済む車両もある。一方、従来の運用手法では乗員が実際に必要としている電力量の大小に関わらずバッテリーが満充電状態になるまで充電されるものが多く、待ち時間が長くなりやすい。したがって、単純に全車両を満充電状態(充電率が100%の状態)まで充電するような画一的な運用手法ではなく、ユーザーの都合や各車両の走行計画に合わせて充電量を変更できるようにすることが望ましい。このような観点から、従来の外部充電システムには改善の余地がある。
【0007】
本件の目的の一つは、上記のような課題に鑑みて創案されたものであり、複数の車両を効率よく高回転率で外部充電できるようにした充電施設の車両管理システムを提供することである。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用効果であって、従来の技術では得られない作用効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)開示の車両管理システムは、自動運転機能及び非接触外部充電機能を備えるとともに自動運転の状態を制御する自動運転制御装置を具備した車両を充電する充電施設の車両管理システムである。本システムは、前記車両に定電流充電を実施する定電流充電装置が設置された定電流エリアと、前記車両に定電圧充電を実施する定電圧充電装置が設置された定電圧エリアとを有する駐車エリアを備える。また、前記車両のバッテリーに残存する電気量の残量及び前記充電によって追加される電気量の目標値である目標充電量の情報を取得する情報取得部を備える。さらに、前記残量及び前記目標充電量に基づき、前記駐車エリアに入場した前記車両からネットワークを介して前記自動運転の実施条件に関する情報を取得し、前記ネットワークを介した指示により当該車両の前記自動運転制御装置に前記自動運転の状態を制御させることで当該車両を前記自動運転で移動させる自動運転制御を実施するとともに、当該車両に対して前記定電流エリアでの前記定電流充電または前記定電圧エリアでの前記定電圧充電を実施する施設管理部を備える。
【0009】
(2)前記施設管理部が、前記駐車エリアに入場した前記車両について、前記残量があらかじめ設定された第一基準値以上の場合に前記定電圧エリアで前記定電圧充電を実施し、前記残量が前記第一基準値未満の場合に前記定電流エリアで前記定電流充電を実施することが好ましい。
(3)前記施設管理部が、前記定電流エリアで定電流充電が実施される前記車両について、充電前の前記残量に前記目標充電量を加算した値があらかじめ設定された第二基準値以上の場合に前記車両を前記定電圧エリアにも移動させ、前記目標充電量が前記第二基準値未満の場合に前記車両を前記定電流エリアのみで充電することが好ましい。
【0010】
(4)前記定電流エリアに存在する前記車両の台数を検出する検出部を備え、前記施設管理部が、前記検出部で検出された前記台数が多いほど前記第二基準値の値を低く設定することが好ましい。
(5)前記定電圧エリアの駐停車枠数が、前記定電流エリアの駐停車枠数よりも多いことが好ましい。
【0011】
(6)前記駐車エリア内の各エリアに存在する各車両の台数を検出する車両検出部を備え、前記施設管理部が、前記各エリアの台数に基づき、前記車両を前記自動運転で移動させることが好ましい。
(7)前記充電施設の近隣に存在する他の充電施設との通信により、前記車両の台数の情報を共有する施設間通信部とを備え、前記施設管理部が、前記目標充電量の情報の取得に際し、前記他の充電施設における前記車両の台数の情報から推定される混雑状況を前記車両の乗員に提示すことが好ましい。
【0012】
(8)前記駐車エリアが、前記定電流エリアまたは前記定電圧エリアでの充電後に前記車両が駐車する完了エリアを有し、前記施設管理部が、外部充電が完了した前記車両を前記完了エリアに前記自動運転で移動させることが好ましい。
(9)前記定電流エリア及び前記定電圧エリアのそれぞれが、入口と出口とを並列に接続する複数の通路と、一つの前記通路に前端辺が接し他の前記通路に後端辺が接するように配置された複数の駐停車枠とを有することが好ましい。
(10)前記施設管理部が、前記自動運転の実施前にドアロックスイッチの施錠状態の情報,イグニッションスイッチの操作状態の情報,セレクトレバーの操作位置の情報を取得し、前記自動運転の実施中にステアリングの操舵情報,駆動力,制動力の情報を取得することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
駐車エリアに定電流エリアと定電圧エリアとを設け、バッテリーの残量と目標充電量とに応じたエリアに車両を自動運転で移動させて充電を実施することで、充電装置の稼働率を高めて外部充電を効率的に実施することができ、不特定多数の車両を効率よく充電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態の車両管理システムの駐車エリアを示す平面図である。
【
図2】車両の動きと制御内容との関係を説明するための模式図である。
【
図3】充電時におけるバッテリーの電力量変化を説明するためのグラフである。
【
図5】充電施設に接近する車両,乗員に送信される確認画面例である。
【
図6】車両管理システムの動作説明のためのタイミングチャートである。
【
図8】自動運転の制御に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して実施形態としての充電施設の車両管理システムについて説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0016】
[1.施設の構成]
図1は、本実施形態の車両管理システムにおける駐車エリア10の平面図である。駐車エリア10を有する充電施設14は、例えば高速道路のパーキングエリア(PA),サービスエリア(SA),道の駅,ショッピングモール,商業施設,市役所などの駐車場内に設けられる。この駐車エリア10には充電用のエリアとして、定電流エリア11,定電圧エリア12,完了エリア13の三区画が設けられる。それぞれのエリア11~13には、複数の車両20が駐停車するのに十分な広さが与えられ、複数の駐停車枠(ロット)が設けられる。なお、
図1中に示すように、充電しない車両が駐停車するための一般駐車エリアを駐車エリア10内に設けてもよい。
【0017】
定電流エリア11は、充電前の車両20が待機する区画であり、定電流充電が実施されうる区画である。定電流エリア11には、駐車エリア10の入口が設けられる。したがって、駐車エリア10の外部から内部へ進入した車両20が最初に踏破するエリアが定電流エリア11となる。また、定電流エリア11には、車両20に定電流充電を実施する定電流充電装置40が設置される。定電流エリア11に設けられるすべての駐停車枠には、ワイヤレス定電流充電用の給電コイル44が埋設される。
【0018】
定電圧エリア12は、定電圧充電が実施される区画である。この定電圧エリア12には、車両20に定電圧充電を実施する定電圧充電装置45が設置される。定電圧エリア12に設けられるすべての駐停車枠には、ワイヤレス定電圧充電用の給電コイル49が埋設される。定電圧エリア12の駐車枠は、定電流エリア11の駐停車枠よりも数多く設定される。この理由は、定電流充電よりも定電圧充電の方が長く時間がかかるためである。定電圧充電の駐停車枠の数を増加させることで、単位時間あたりの定電圧充電台数が増加する。これにより、単位時間あたりの定電圧充電台数が単位時間あたりの定電流充電台数に近づき、充電施設14における外部充電の回転率が上昇する。
【0019】
完了エリア13は、充電後の車両20が滞在する区画である。完了エリア13には、駐車エリア10の出口が設けられる。なお、駐車エリア10に進入した車両20が充電をせずに退場することも考えられることから、定電流エリア11にも出口を設けておくことが好ましい。
以下、各エリア11~13内に存在する(駐停車している)車両20を互いに区別して説明する場合には、それぞれのエリア11~13の名称に合わせて、定電流車両51,定電圧車両52,完了車両53と呼ぶ。
【0020】
本実施形態の駐車エリア10内における車両20の動線レイアウトは、車両20が自動運転制御されることに鑑み、極力単純となるように、すべての駐停車枠が駐停車の際に後退動作を要しないレイアウトとされる。すなわち、車両20がバックせずに各駐停車枠を出入りできるようになっている。
図1のレイアウトでは、各エリア11~13内におけるすべての通路が一方通行である。定電流エリア11,定電圧エリア12,完了エリア13のそれぞれが、各エリアの入口と出口とを並列に接続する複数の通路を有する。すべての駐停車枠は、その前端辺が一つの通路に接し、後端辺が他の通路に接するように配置される。このようなレイアウトにより、各エリア11~13の始点と終点と任意の駐停車枠とを通過するための動線が一方通行となり、車両20を場内で後退させる必要がなくなり、車両20を効率よく移動,充電させることが可能となる。なお、ここでいう動線や通路は、路面上の描線(白線や矢印表示など)によって規定しておけばよく、物理的に通行を制限する必要はない。
【0021】
図2は、本実施系における車両20の動きと制御内容との関係を説明するための模式図である。本実施形態の車両管理システムは、充電施設14の駐車エリア10に設置された管理装置1と、定電流エリア11に設置された定電流充電装置40と、定電圧エリア12に設置された定電圧充電装置45とを有する。管理装置1は、車両20との無線通信を利用して、あるいは車両20の乗員(ユーザー)が所持しているスマートフォン30(通信端末)との無線通信を利用して、自動運転制御と非接触外部充電制御とを実施する。管理装置1は、一箇所の充電施設14に一つずつ設けられる。なお、スマートフォン30は、所定の認証手続き(アカウント認証)や接続手続き(ペアリング)を通して、そのスマートフォン30を所持している乗員の車両20にあらかじめ紐付けられているものとする。
【0022】
本実施形態の車両管理システムは、車両20の乗員の好みや希望に応じたワイヤレス外部充電を自動運転で実施する機能を持つ。本システムは、
図2中に示すように、定電流充電と定電圧充電とを組み合わせた充電が可能なだけでなく、定電流充電のみ、あるいは定電圧充電のみを実施することも可能である。どのような外部充電を実施するかは、車両20に搭載されたバッテリー25の電力量に応じて決定される。
【0023】
図3は、外部充電を開始してから終了するまでのバッテリー25の電力量の変化を例示するグラフである。ここで、電力量の大きさを二つのしきい値(第一基準値,第二基準値)で三つの領域(レンジ)に分類し、電力量が少ない方から順にLOWレンジ,MIDレンジ,HIGHレンジと呼ぶ。曲線AのようにLOWレンジからHIGHレンジまで充電する場合には、定電流充電と定電圧充電とを組み合わせた充電が実施される。一方、曲線BのようにLOWレンジからMIDレンジまでの充電で済ませる場合には、定電流充電のみが実施される。また、曲線Cのように充電を開始する時点である程度の電力量が残っており、MIDレンジからHIGHレンジまで充電する場合には、定電圧充電のみが実施される。
【0024】
駐車エリア10内における車両20の動き及び制御の流れを説明する。まず、車両20の乗員が定電流エリア11内の任意の駐停車枠に車両20を止め、スマートフォン30を用いて(あるいは車両20から)外部充電の実施を管理装置1に申請する。管理装置1は、充電対象となる車両20や充電量を確認し、乗員が希望する充電量や混雑状況などを考慮して、充電開始時刻や目標充電量を設定する。その後、乗員は降車して商業施設,トイレ,娯楽施設などに移動してもよいし、車内で休憩してもよい。これ以後、車両20の位置は管理装置1によって自動的に管理される。
【0025】
定電流充電を実施する場合、管理装置1は定電流充電装置40にワイヤレス充電を実施させる。定電流充電装置40は、給電コイル44を介して車両20の受電コイル26に給電することで、定電流充電を実施する。その後、定電圧充電を実施する場合には、車両20を定電圧エリア12に移動させて、定電圧充電装置45にワイヤレス充電を実施させる。定電圧充電装置45は、給電コイル49を介して車両20の受電コイル26に給電することで、定電圧充電を実施する。外部充電が完了した車両20は完了エリア13へと移送され、その旨の情報が乗員のスマートフォン30に送信される。これを受けて、乗員が完了エリア13に駐車している車両20に乗車し、駐車エリア10から退場する。
【0026】
なお、既存の急速充電施設(例えば50kW出力タイプの急速充電器)の多くは、乗員が充電時間を分単位で設定可能である。一方、充電に際して可能な限り充電率を高めておきたいと考える乗員が多く、単位時間あたりの充電量も比較的少ないことから、連続充電時間の上限(例えば30分)が実質的な充電時間となっている。しかし、充電施設14での車両20の回転率を高めるためには、一回の充電量を減少させて連続充電時間を短縮し、こまめに充電させる(充電頻度を増加させる)ことが望ましい。そこで、本実施形態の車両管理システムは、必要最小限の充電量で車両20を運用することを促進するためのしくみを提供する。
【0027】
[2.ハードウェア構成]
図4は、車両管理システムのブロック構成図である。このシステムには、管理装置1,車両20,スマートフォン30,定電流充電装置40,定電圧充電装置45が含まれる。
管理装置1は、駐車エリア10内に存在する車両20や定電流充電装置40及び定電圧充電装置45を管理する機能を持った電子計算機(コンピューター)である。管理装置1には、プロセッサ(中央処理装置),メモリ(メインメモリ),記憶装置(ストレージ),インタフェース装置などが内蔵され、内部バスを介して互いに接続される。また、管理装置1は、外部のネットワーク9を介して他の駐車エリア10を管理する他の管理装置1と通信する機能を併せ持つ。ネットワーク9は、例えば通信事業者の無線通信網(キャリア網)やインターネットを利用して形成された有線又は無線の通信網の総称である。
【0028】
車両20は、バッテリー25を動力源とする駆動用モータが搭載された電動車両(電気自動車,プラグインハイブリッド自動車など)であり、自動運転機能及び非接触外部充電機能を備える。バッテリー25は、リチウムイオン二次電池,ニッケル水素電池などの二次電池であり、定電流充電装置40や定電圧充電装置45による充電(外部充電)が可能とされる。車両20の下面側には、ワイヤレス充電用の受電コイル26が設けられる。受電コイル26による充電状態は、外部充電制御装置21(電子制御装置,コンピューター)によって制御される。なお、本実施形態のワイヤレス充電方式は、磁気共鳴型(磁界共振型,磁界結合型)とする。受電コイル26は、高周波電力(例えば30~300[kHz]程度のLF帯周波数の電力)を受電可能とされ、バッテリー25と受電コイル26との間には共振コンデンサ,整流器,変圧器などが介装される。変圧器を制御することでバッテリー25の充電電圧や充電電流を変更することができる。
【0029】
車両20の自動運転時の制御対象となる装置は、駆動源27,ブレーキ装置28,操舵装置29などであり、自動運転の状態は、自動運転制御装置22(電子制御装置,コンピュータ)によって制御される。また、この車両20には、測位装置23と通信装置24とが設けられる。測位装置23は、GNSS(Global Navigation Satellite System,全球測位衛星システム)や車速センサー,舵角センサー,ヨーレイトセンサーなどの検出情報に基づいて、車両20の位置を計測するための電子制御装置である。
【0030】
通信装置24は、ネットワーク9を介して管理装置1やスマートフォン30と通信を行うための電子制御装置である。外部充電制御装置21,自動運転制御装置22,測位装置23,通信装置24のそれぞれは、独立した電子制御装置として設けられてもよいし、一体の電子制御装置として設けられてもよい。なお、ここでいう電子制御装置には、例えばプロセッサ(中央処理装置),メモリ(メインメモリ),記憶装置(ストレージ),インタフェース装置などが内蔵され、内部バスを介して互いに接続される。
【0031】
スマートフォン30は、車両20の乗員が所持する携帯型の通信装置であり、電子計算機(コンピューター)としての機能を併せ持つ。周知の通り、スマートフォン30には、プロセッサ(中央処理装置),メモリ(メインメモリ),記憶装置(ストレージ),インタフェース装置などが内蔵され、内部バスを介して互いに接続される。また、このスマートフォン30には、入出力制御装置31,通信装置32,ディスプレイ33,タッチパネル34が内蔵される。ディスプレイ33に表示される情報やタッチパネル34への操作入力情報は、入出力制御装置31によって制御される。通信装置32は、ネットワーク9を介して管理装置1や車両20と通信を行うための電子制御装置である。
【0032】
本実施形態では、車両20の乗員が管理装置1に対して外部充電の予約を申請するために、あるいは車両20の充電状態や自動運転状態を確認するためにスマートフォン30が用いられる。スマートフォン30の通信対象には、少なくとも車両20が含まれていればよい。すなわち、スマートフォン30と管理装置1との間の情報交換は、車両20を介して実現してもよいし、ネットワーク9経由で直接的な接続を実現してもよい。なお、スマートフォン30の代わりに、携帯電話機,タブレット端末,ノートパソコン,音楽プレーヤー,携帯型ゲーム機などの電子機器類(ガジェット)を用いることも可能である。
【0033】
定電流充電装置40,定電圧充電装置45は、磁気共鳴型のワイヤレス充電を実施する装置であり、電子計算機(コンピューター)としての機能を併せ持つ。定電流充電装置40は、車両20のバッテリー25に供給される電力が定電流となるようにワイヤレス充電を実施する。一方、定電圧充電装置45は、車両20のバッテリー25に供給される電力が定電圧となるようにワイヤレス充電を実施する。定電流充電装置40には、給電制御装置41,通信装置42,高周波電源43,給電コイル44が設けられ、定電圧充電装置45には、給電制御装置46,通信装置47,高周波電源48,給電コイル49が設けられる。
【0034】
各充電装置40,45に含まれる給電制御装置41,46には、例えばプロセッサ(中央処理装置),メモリ(メインメモリ),記憶装置(ストレージ),インタフェース装置などが内蔵され、内部バスを介してこれらが互いに接続されている。高周波電源43,48,給電コイル44,49の作動状態は、給電制御装置41,46によって制御される。通信装置42,47は、ネットワーク9を介して管理装置1と通信を行うための電子制御装置である。これらの充電装置40,45は、少なくとも管理装置1との間で情報交換できるものであればよい。したがって、無線通信の代わりに有線(ケーブル)で管理装置1に接続される装置構成としてもよい。
【0035】
[3.ソフトウェア構成]
管理装置1の記憶装置には、車両20の自動運転制御と外部充電制御とを実施するためのソフトウェア(プログラム)がインストールされる。また、管理装置1には、車両検出部2,施設間通信部3,情報取得部4,施設管理部5,乗員連絡部6が設けられる。これらは、管理装置1の機能を便宜的に分類して示したものであり、個々の要素を独立したプログラムとして記述してもよいし、これらの機能を兼ね備えた複合プログラムとして記述してもよい。これらのプログラムは、メモリやストレージに記憶され、プロセッサによって実行される。あるいは、これらのプログラムが光学ディスクや半導体メモリなどの記録媒体(リムーバブルメディア)に記録され、記録媒体ドライブを介してメモリ上に読み込まれた上で実行される。
【0036】
車両検出部2(検出部)は、駐車エリア10内に存在する各車両20の台数及び位置の情報を検出するものである。ここでは、駐車エリア10の各エリア11~13に位置する各車両20の台数及び位置の情報が検出される。駐車エリア10が屋外である場合には、各車両20が自ら検出した位置情報(例えばGNSS測位情報)を各車両20から提示してもらうことができる。また、駐車エリア10内の各所に設置されたレーダー装置を用いて各車両20の位置の情報を検出してもよい。本実施形態の車両検出部2は、駐車エリア10に設置された監視カメラ16の画像に基づいて各車両20の位置を検出するとともに、エリア11~13毎の車両20の台数を検出する。
【0037】
施設間通信部3は、管理装置1が設置された充電施設14(自施設)の近隣に存在する他の充電施設14との通信により、駐車エリア10内の各エリア11~13に存在する車両20の台数の情報を共有するものである。ここでいう「近隣」とは、車両20が充電施設14に立ち寄らずに走行できる距離の範囲内であることを意味し、例えば半径数百km程度の円形範囲内とする。施設間通信部3には、近隣の充電施設14の名称情報,その充電施設14までの距離情報,その充電施設14での台数情報が「台数データベース」として保存される。また、車両20の台数情報は、ネットワーク9を介した通信によりリアルタイムに更新される。施設間通信部3の台数データベースに保存されるデータを以下に例示する。
【0038】
【0039】
情報取得部4は、車両20の外部充電に必要な情報を取得するものである。ここでは、バッテリー25の電池容量(充電量の最大値)やバッテリー25に残存する電力量(バッテリー残量),車両20の電費(単位電力量あたりの走行距離)などの情報が取得される。必要に応じて、車種固有番号,車種名,車体番号(車台番号),ナンバープレート情報,現在位置(車両20が自ら把握している自車位置)などの情報も取得される。
【0040】
また、情報取得部4は、近隣の充電施設14の混雑状況を乗員に提示するとともに、次回の充電予定場所をどこにするつもりなのかを乗員に問いかけ、スマートフォン30を用いて(あるいは車両20の通信装置24を用いて)応答を入力させる制御を実施し、充電スケジュールを設定する。ここで乗員に提示される混雑状況は、施設間通信部3の台数データベースに保存されている台数情報から推定することができる。例えば、定電圧エリア12の混雑率は、定電圧エリア12の駐停車枠の数(すなわち、駐停車可能な最大台数)に対する定電圧車両52の台数の百分率で表すことができる。また、定電流エリア11の混雑率が高いほど定電圧エリア12や完了エリア13の混雑率が上昇しやすく、完了エリア13の混雑率が高いほど定電流エリア11や定電圧エリア12の混雑率が低下しにくくなるものと予想される。このように、情報取得部4は各エリア11~13の台数情報に基づいて、現在の混雑度や今後の混雑度の推移を予想し、その予想結果を乗員に提示する。
【0041】
図5は、情報取得部4が乗員のスマートフォン30(あるいは車両20の車載ディスプレイ)に表示させる混雑状況の画面例である。この例では、自施設(岡崎SA)の近隣の充電施設14(他のSAやPA)までの距離とそれぞれの充電施設14における車両20の台数情報とがロードマップ上に表示され、充電施設14の混雑度に対応するアイコン(フェイスマーク)が表示される。乗員は、複数の充電施設14の混雑状況を台数情報やアイコンで確認しながら、今後の走行予定に適した次回の充電予定場所をタッチ操作で入力するものとする。
【0042】
このようなユーザーインターフェースにより、乗員が希望する次回の充電予定場所が容易に特定され、目標充電量が算出可能となる。例えば、その車両20の電費で次回の充電予定場所までの距離を除算することで、その充電予定場所までの走行に要する必要電力量が目標充電量として算出される。あるいは、その必要電力量に所定の予備電力量を加算したものを、目標充電量としてもよい。なお、目標充電量が算出,取得された時点で、この充電施設14で外部充電することが確定されるとともに、外部充電に要する時間を予測可能となり、外部充電の申請が正式に管理装置1に受諾される。
【0043】
充電スケジュールは、各エリア11~13の混雑状況や目標充電量に基づいて設定される。定電流エリア11や定電圧エリア12に空きがある場合、その時点で直ちに充電を開始できることから、充電開始時刻はその時点の時刻とされる。また、充電完了時刻は、目標充電量に対応する充電時間が経過した時刻とされる。一方、駐停車枠に空きがない場合には、空きができた後に外部充電が実施される。この場合、充電開始時刻までの待ち時間は、定電流エリア11及び定電圧エリア12に存在する車両20の台数や、各車両20の目標充電量に基づいて算出することができる。
【0044】
充電スケジュールの内容設定に際し、入場時のバッテリー残量が第一基準値未満である場合には、まず定電流充電がスケジューリングされる。また、その後に定電圧充電がスケジューリングされるのは、入場時のバッテリー残量に目標充電量を加算した値(すなわち、充電後のバッテリー電力量)が第二基準値以上である場合のみとする。つまり、充電後のバッテリー電力量が第二基準値未満である場合には、定電流充電のみがスケジューリングされる。一方、入場時のバッテリー残量が第一基準値以上である場合には、最初から定電圧充電のみがスケジューリングされる。なお、第二基準値は第一基準値よりも大きな値である。
【0045】
上記の第二基準値は、充電施設14の混雑状況に応じた可変値とされる。すなわち、充電施設14が混雑している状況では第二基準値が低く(小さい値に)設定され、空いている状況では第二基準値が高く(大きな値に)設定される。本実施形態では、定電流エリア11に存在する定電流車両51の台数が多いほど、第二基準値が低く設定されるものとする。このような設定により、場内が混んでるほど定電流充電が早めに終了する(制御が切り上げられる)ため、充電施設14における外部充電の回転率が上昇する。
【0046】
施設管理部5は、外部充電を予約した各車両20の自動運転,外部充電を管理するものである。ここでは、充電スケジュールに従って各車両20の自動運転と外部充電とが実施される。施設管理部5はまず、車両20の自動運転を開始する前に、自動運転の実施条件に関する情報を車両20から取得する。ここで取得される情報の具体例としては、ドアロックスイッチの施錠状態の情報,イグニッションスイッチ(メインスイッチ)の操作状態の情報,セレクトレバーの操作位置の情報などが挙げられる。自動運転制御の実施中には、これらの情報に加えて、ステアリングの操舵情報や駆動力,制動力の情報などが取得され、外部充電中にはその時点における充電量(現充電量)が取得される。
【0047】
また、施設管理部5は、各エリア11~13の台数に基づき、駐車エリア10内の各車両20を自動運転で移動させる制御を実施する。定電流充電と定電圧充電との両方を実施する場合、車両20は定電流エリア11,定電圧エリア12,完了エリア13の順に「流れ作業」の要領で移送される。定電流エリア11から定電圧エリア12への移動は、少なくとも定電圧エリア12の駐停車枠に空きがある場合に実施される。同様に、定電圧エリア12から完了エリア13への移動は、少なくとも完了エリア13の駐車場枠に空きがある場合に実施される。
【0048】
なお、すべての車両20が充電スケジュールに沿って充電される限り、充電開始時刻には定電圧エリア12の駐停車枠に空きが生じるはずである。しかし、完了車両53の退場の遅れによって定電圧車両52が完了エリア13に移動できなければ、充電開始時刻に定電圧エリア12が満車状態になりうる。このような事態が発生する可能性を踏まえると、駐車エリア10内の各車両20を自動運転で移動させる際には、その都度、駐車場枠の空きを確認することが好ましい。また、駐車場枠の空きがない場合には、充電開始や充電完了が遅れる可能性があることを乗員のスマートフォン30に連絡することが好ましい。
【0049】
また、施設管理部5は、定電流エリア11に位置する車両20について、定電流充電装置40に定電流充電(ワイヤレス充電)を実施させる。定電圧エリア12に位置する車両については、定電圧充電装置45に定電圧充電(ワイヤレス充電)を実施させる。これらの外部充電は、バッテリー25に充電された電力量(充電量)やバッテリー25に残存する電力量(バッテリー残量)などに基づいて実施される。定電流充電のみ、あるいは定電圧充電のみを実施する場合には、充電量が目標充電量に達するまで外部充電を継続する。また、定電流充電の後に定電圧充電を実施する場合には、バッテリー残量が第二基準値に達するまでは定電流充電を実施し、その後、車両20を移動させてから定電圧充電を実施する。
【0050】
乗員連絡部6は、外部充電や自動運転の実施状態に関する情報をその車両20の乗員に提供するものである。ここでは、自動運転の開始や終了,外部充電の開始,終了,外部充電中の充電量変化などの情報が、乗員のスマートフォン30に送信される。乗員は、車両20を離れて商業施設や娯楽施設で時間を過ごしながら、車両20の状態を逐一把握することができる。
【0051】
[4.タイムチャート]
図6は、車両20が充電施設14に入場してから退場するまでの制御の流れを説明するためのタイムチャートである。車両20が駐車エリア10内に入場すると、駐車エリア10に設置された監視カメラ16で車両20の動きが捕捉され、管理装置1に認識される。車両20の乗員は、定電流エリア11の好きな駐停車枠に車両20を駐車し、外部充電の実施をスマートフォン30で管理装置1に申請する。あるいは、駐停車枠に車両20を駐車させる前に申請をしてもよい。この申請時には、例えば車両20を駐車した場所の情報(駐停車枠の番号)や希望充電量などの情報が管理装置1に送信される。
【0052】
申請を受けた管理装置1は、乗員から送信された駐停車枠の番号や監視カメラの映像などから、そのスマートフォン30に紐付けられた車両20の存在を確認する。また、そのスマートフォン30に対し、自施設の近隣に存在する他の充電施設14の混雑状況の情報を送信し、次回の充電予定場所を入力させる。一方、車両20に対しては、各種情報の提示を要求し、車種固有番号,車種名,現在位置,バッテリー25の電池容量,現充電量(バッテリー残量),電費などの情報を取得する。
【0053】
乗員のスマートフォン30には、
図5に示すような混雑状況の画面が表示され、乗員がタッチ操作で次回の充電予定場所を選択可能となる。次回の充電予定場所が選択されるとその情報がスマートフォン30から管理装置1に伝達され、その場所までの距離と車両20の電費とに基づいて目標充電量が算出される。この時点で外部充電の申請が正式に管理装置1に受諾される。管理装置1の情報取得部4は、バッテリー残量と目標充電量とに基づいて充電スケジュールの内容を設定し、スマートフォン30を介して乗員に提示する。
【0054】
また、管理装置1は自動運転の実施条件が成立することを確認した上で、車両20の自動運転制御を開始する。これにより、車両20は定電流エリア11の駐停車枠へと移動する。なお、すでに車両20が定電流エリア11の駐停車枠に駐車している場合には、この移動は不要である。車両20が定電流エリア11の駐停車枠に到着すると、車両20が移動の完了を管理装置1に通知する。これを受けて管理装置1は、定電流充電装置40に定電流充電の開始を指示するとともに、外部充電が開始されたことをスマートフォン30に連絡する。ここで乗員は、車両20を離れて車外の商業施設,娯楽施設などで過ごしてもよい。
【0055】
定電流充電装置40は、車両20のバッテリー25の現充電量をモニタリングしながらワイヤレス充電を実施し、進捗状況を管理装置1に連絡する。この進捗状況の情報は、管理装置1からスマートフォン30にも連絡される。また、バッテリー25の現充電量が第二基準値に達すると、車両20の外部充電制御装置21がその旨の情報を定電流充電装置40に伝達する、これを受けて、定電流充電装置40が定電流充電を停止させ、定電流充電の完了を管理装置1に報告する。
【0056】
管理装置1は、車両20にドアロックスイッチの施錠状態やセレクトレバーの操作位置などに関する情報を請求する。車両20がこれらの情報を管理装置1に伝達すると、管理装置1は自動運転の実施条件が成立することを確認した上で、車両20の自動運転制御を開始する。これにより、車両20は定電流エリア11から定電圧エリア12の空いている駐停車枠へと移動する。また、管理装置1は、自動運転制御が開始されたことをスマートフォン30に連絡する。
【0057】
車両20が定電圧エリア12の駐停車枠に到着すると、車両20が移動の完了を管理装置1に通知する。これを受けて管理装置1は、定電圧充電装置45に目標充電量の情報を伝達し、ワイヤレス充電の開始を指示するとともに、外部充電が開始されたことをスマートフォン30に連絡する。定電圧充電装置45は、車両20のバッテリー25の現充電量をモニタリングしながらワイヤレス充電を実施し、進捗状況を管理装置1に連絡する。この進捗状況の情報は、管理装置1からスマートフォン30にも連絡される。
【0058】
充電された電力量が目標充電量に達すると、定電圧充電装置45が管理装置1に充電完了を連絡する。これを受けて管理装置1は完了エリア13の駐停車枠に空きがあることを条件として、車両20の自動運転制御を開始する。これにより、車両20は定電圧エリア12から完了エリア13の空いている駐停車枠へと移動する。このとき管理装置1は、自動運転制御が再び開始されたことや、まもなく車両20が発進可能な状態となることをスマートフォン30に連絡する。
【0059】
車両20が完了エリア13の駐停車枠に到着すると、車両20が移動の完了を管理装置1に通知する。これを受けて管理装置1は、外部充電が完了したことをスマートフォン30に連絡する。連絡を受けた乗員は、車両20に乗車して退場する。車両20が駐車エリア10から退場したことは、監視カメラ16の画像に基づいて管理装置1に認識される。これにより、車両20に対する管理装置1の管理業務が終了する。
【0060】
[5.フローチャート]
図7は、外部充電の申請手順を例示するフローチャートである。このフローの内容は、充電施設14に入場した車両20の乗員が外部充電を申請してから充電スケジュールが決定するまでの制御内容に対応する。まず、車両20の乗員から外部充電の申請を受信したか否かが管理装置1で判定され(ステップA1)、外部充電の申請を受信しなかった場合には、本フローは終了する。一方、外部充電の申請を受信した場合には施設間通信部3に保存されている台数データベースに基づき、情報取得部4が近隣の充電施設14の混雑状況を乗員のスマートフォン30に提示する(ステップA2)。これにより、乗員は近隣の充電施設14の混雑状況を参照しながら、次回の充電予定場所を選択することができる。
【0061】
情報取得部4は、車両20に各種情報(車種固有番号,車種名,現在位置,バッテリー25の電池容量,現充電量,電費など)の提示を要求し、それらの情報を取得する(ステップA3)。また、乗員からの応答として、次回の充電予定場所の情報を取得する(ステップA4)。さらに、自施設から次回の充電予定場所までの距離と車両20の電費とに基づき、目標充電量を算出する(ステップA5)。これにより、
図3に示すような充電開始時の電力量(入場時のバッテリー残量)と充電後のバッテリー電力量とが決まることになる。
【0062】
その後、情報取得部4は、入場時のバッテリー残量と充電後のバッテリー電力量とに基づいて充電スケジュールの内容を設定する。すなわち、バッテリー残量が第一基準値以上であるか否かを判定し(ステップA6)、この条件が成立する場合には定電圧充電のみをスケジューリングする(ステップA10)。一方、バッテリー残量が第一基準値未満である場合には、定電流エリア11に存在する定電流車両51の台数が参照され(ステップA7)、その台数に応じて第二基準値が設定される(ステップA8)。なお、第二基準値は、定電流車両51が多いほど低い値(小さい値)とされる。
【0063】
続いて、充電後のバッテリー電力量が第二基準値以上であるか否かを判定し(ステップA9)、この条件が成立する場合には定電流充電の後に定電圧充電が実施されるスケジュールを設定する(ステップA11)。一方、充電後のバッテリー電力量が第二基準値未満である場合には、定電流充電のみをスケジューリングする(ステップA12)。ここで設定された充電スケジュールは、乗員のスマートフォン30のディスプレイ33に表示される(ステップA13)。
【0064】
図8は、自動運転及び外部充電の手順を例示するフローチャートである。
まず、充電スケジュールに定電流充電が含まれているか否かが判定され(ステップB1)、定電流充電が含まれていない場合には制御をステップB6までスキップする。一方、定電流充電が含まれている場合には、管理装置1が定電流充電装置40に指示を送り(ステップB2)、定電流充電を実施する。定電流充電の実施中には、充電完了条件が成立するか否かが判定され(ステップB3)、この条件が成立するまで定電流充電が継続される。充電完了条件は、充電量が目標充電量に達すること、または、充電後のバッテリー電力量が第二基準値以上になることである。
【0065】
充電完了条件が成立すると、自動運転の実施条件が成立することが確認された後に(ステップB4)、充電スケジュールに定電圧充電が含まれているか否かが判定される(ステップB5)。ここで、充電スケジュールに定電圧充電が含まれていない場合には制御をステップB12までスキップする。一方、充電スケジュールに定電圧充電が含まれている場合には、定電圧エリア12の台数の情報が取得され(ステップB6)、定電圧エリア12の駐停車枠に空きがあるか否かが判定される(ステップB7)。ここで、定電圧エリア12の駐停車枠に空きがない場合には、充電完了が遅れる可能性があることを、乗員連絡部6が乗員のスマートフォン30に連絡し(ステップB9)、空きがでるまで車両20を定電流エリア11に待機させる。
【0066】
一方、定電圧エリア12の駐停車枠に空きがある場合には、施設管理部5が車両20を定電流エリア11から定電圧エリア12へ移動させる自動運転制御を実施し、自動運転制御が再び開始されたことを乗員のスマートフォン30に連絡する(ステップB8)。その後、車両20が定電圧エリア12の駐停車枠に到着すると、管理装置1が定電圧充電装置45に指示を送り(ステップB10)、定電圧充電を実施する。定電圧充電の実施中にも、充電完了条件が成立するか否かが判定され(ステップB11)、この条件が成立するまで定電圧充電が継続される。充電完了条件は、充電量が目標充電量に達することである。
【0067】
充電完了条件が成立すると、完了エリア13の台数の情報が取得され(ステップB12)、完了エリア13の駐停車枠に空きがあるか否かが判定される(ステップB13)。ここで、完了エリア13の駐停車枠に空きがない場合には、充電完了が遅れる可能性があることを、乗員連絡部6が乗員のスマートフォン30に連絡し(ステップB15)、空きがでるまで車両20を定電圧エリア12に待機させる。一方、完了エリア13の駐停車枠に空きがある場合には、施設管理部5が車両20を定電圧エリア12から完了エリア13へ移動させる自動運転制御を実施する(ステップB14)。その後、車両20が完了エリア13の駐停車枠に到着すると、すべての充電スケジュールを完遂したことを乗員連絡部6が乗員のスマートフォン30に連絡する。また、車両20が駐車エリア10を退場したことが確認されたときに制御を終了する。
【0068】
なお、ステップB12の制御に関して、乗員が車両20に搭乗した状態である場合や、乗員が車両20の近傍に待機している場合には、定電圧エリア12から完了エリア13への自動運転を省略し、乗員を定電圧エリア12で車両20に乗り込ませて退場させてもよい。この場合、乗員が自動運転モードを手動で解除し、自ら車両20を出口まで運転すればよい。また、ステップB12の制御を開始するための条件として、車両20の近傍に乗員が存在しないことを確認すればよい。この条件は、駐車エリア10内の監視カメラ画像を解析することで、あるいは車両20に搭載されているキーレスオペレーションシステムを利用して乗員と車両20との距離を推定することで、精度よく判定することができる。
【0069】
[6.作用,効果]
(1)上記の充電施設14の車両管理システムでは、駐車エリア10に定電流エリア11と定電圧エリア12とが設けられ、バッテリー25の残量と目標充電量とに応じて車両20の動きや充電状態が適正化される。例えば、軽い充電で済む車両20には定電流充電のみが実施される。また、バッテリー残量の高い車両20には定電圧充電のみが実施される。このような定電流充電と定電圧充電との使い分けを自動化することで、充電装置40,45の稼働率を高めて外部充電を効率的に実施することができ、不特定多数の車両20を効率よく高回転率で充電することができる。また、一台の充電装置で定電流充電と定電圧充電とを実現するような高価な充電装置が不要であることから、充電施設14の初期費用やメンテナンスにかかるコストを削減することができる。
【0070】
(2)上記の車両管理システムでは、バッテリー25の残量に応じて、最初に実施される外部充電が定電流充電と定電圧充電とから選択される。つまり、バッテリー25の残量が多ければ定電圧エリアで定電圧充電を実施することで、バッテリー25を過電圧から保護しながらゆっくりと充電することができる。一方、バッテリー25の残量が少なければ定電流エリアで定電流充電を実施することで、短時間で電気量を補充することができる。したがって、複数の車両を効率よく高回転率で充電することができる。
【0071】
(3)上記の車両管理システムでは、充電前のバッテリー25の残量に目標充電量を加算した値(すなわち、充電後のバッテリー電力量)に応じて、定電流充電の後に定電圧充電を実施するかしないかが選択される。例えば、たとえ車両20のバッテリー25が満充電状態にはならなくても、ある程度の電力量が確保されている場合には、時間のかかる定電圧充電を省略して定電流充電のみを実施している。このような制御により、既存の充電システムと比較して、一台あたりの平均充電時間を短縮することができ、不特定多数の車両20を効率よく高回転率で充電することができる。
【0072】
(4)上記の車両管理システムでは、定電流エリア11に存在する定電流車両51の台数に応じて第二基準値が変更される。例えば、定電流車両51の台数が多ければ、第二基準値が低く設定される。つまり、定電流エリア11が混雑している状況では、定電流充電が早めに終了し、定電圧充電に移行するか充電が終了する。このような制御により、充電施設14における外部充電の回転率を上昇させることができる。
【0073】
(5)上記の車両管理システムでは、
図1に示すように、定電圧エリア12の駐停車枠数が定電流エリア11の駐停車枠数よりも多く設けられる。これにより、単位時間あたりの定電圧充電台数を増加させることができる。また、単位時間あたりの定電圧充電台数を単位時間あたりの定電流充電台数に近づけることができ、外部充電の回転率をさらに上昇させることができる。
【0074】
(6)上記の充電施設14の車両管理システムでは、車両20の駐車エリア10が定電流エリア11,定電圧エリア12,完了エリア13の三つに区画され、各エリア11~13に位置する車両20の台数に基づいて各車両20が自動運転で移送される。このようなしくみにより、各車両20を「流れ作業」の要領で移動させながら外部充電を実施することができ、不特定多数の車両20を効率よく充電することができる。したがって、外部充電の効率及び回転率を改善することができる。
【0075】
(7)上記の車両管理システムでは、自施設の近隣に存在する他の充電施設14との通信により、各エリア11~13の台数の情報が共有される。また、複数の充電施設14で得られた台数情報は施設間通信部3の台数データベースとして各充電施設14に保存され、乗員が「次回の充電予定場所」を検討するための参考資料として提供される。このような制御により、乗員に適正な目標充電量を決定させることが容易となる。例えば、単純に満充電状態(充電率が100%の状態)まで充電するような画一的な運用手法ではなく、乗員の都合や車両の走行計画に見合った充電量を設定しやすくできる。つまり、必要な分だけこまめに充電するような外部充電の運用方法を普及させることができ、外部充電の効率及び回転率をさらに改善することができる。
【0076】
(8)上記の車両管理システムには、外部充電が実施される定電流エリア11及び定電圧エリア12だけでなく、充電完了後の車両20が待機,駐車するための完了エリア13が設けられる。また、外部充電が完了した車両20は自動運転で完了エリア13に移送される。このような制御により、充電が完了した車両20によって生じる渋滞(車詰まり)を解消することができ、外部充電の効率及び回転率をさらに改善することができる。また、乗員は後続の車両20(充電待ちの車両20)を過度に気にすることなく商業施設や娯楽施設で過ごすことができ、利便性を高めることができる。
【0077】
(9)上記の充電施設14に設けられた定電流エリア11,定電圧エリア12は、
図1に示すように、車両20がバックせずに各駐停車枠を出入りできるようになっている。すなわち、各エリア11~13の入口と出口とを平行に接続する複数の通路が設けられ、異なる通路の間に駐停車枠が配置されている。また、それぞれの駐停車枠の前端辺は複数の通路のうちの一つに接続され、後端辺は他の通路に接続されている。このような動線レイアウトにより、車両20を効率よく移動,充電させることが可能となり、外部充電の効率及び回転率を改善することができる。
【0078】
[7.変形例]
上述の実施形態では、高速道路のパーキングエリアやサービスエリアに設けられる充電施設14の車両管理システムについて詳述したが、充電施設14の設置場所はこれらに限定されず、道の駅,ショッピングモール,商業施設,市役所などの駐車場内に設けることが可能である。なお、一般道路に面した場所に充電施設14を設けた場合、近隣の充電施設14までの距離は経路によって変化し、一意に定まらない。しかし、公知のナビゲーション装置に内蔵された経路案内機能や距離予測機能を利用すれば、距離(参考値)を算出することができる。したがって、近隣の充電施設14まで行くための必要最小限の電力量を算出することが可能であり、上述の実施形態と同様の作用,効果を奏するシステムを構築することができる。
【0079】
また、上述の実施形態では、
図1に示すような駐車エリア10が設けられた充電施設14を例示したが、駐車エリア10のレイアウトはこれに限定されない。例えば、完了エリア13を省略し、外部充電が完了した場所から乗員が車両20に乗り込んで退場するようなしくみにしてもよい。この場合、定電流エリア11や定電圧エリア12の駐停車枠を増加させることができ、外部充電の効率及び回転率をさらに改善することができる。
【0080】
なお、上述の実施形態では、磁気共鳴型のワイヤレス充電方式で車両20のバッテリー25を充電するシステムを例示したが、ワイヤレス充電の具体的な方式はこれに限定されない。例えば、電磁誘導型のワイヤレス充電装置を用いてもよいし、マイクロ波やレーザー光などを利用した電磁波放射型のワイヤレス充電装置を用いてもよい。充電方式に関わらず、定電流エリア11と定電圧エリア12とが設けられた駐車エリア10を自動運転で移動させることで、上述の実施形態と同様の作用,効果を奏するシステムを構築することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 管理装置
2 車両検出部(検出部)
3 施設間通信部
4 情報取得部
5 施設管理部
6 乗員連絡部
10 駐車エリア
11 定電流エリア
12 定電圧エリア
13 完了エリア
14 充電施設
20 車両
30 スマートフォン
40 定電流充電装置
45 定電圧充電装置