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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】練歯磨剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20220112BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20220112BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20220112BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20220112BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220112BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20220112BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20220112BHJP
   A61K 8/362 20060101ALI20220112BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/25
A61K8/44
A61K8/46
A61K8/34
A61K8/86
A61Q11/00
A61K8/362
A61K8/365
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017235060
(22)【出願日】2017-12-07
(65)【公開番号】P2019099532
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成松 三四郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雅人
(72)【発明者】
【氏名】今崎 麻里
(72)【発明者】
【氏名】曽我 晶子
【審査官】山中 隆幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-231621(JP,A)
【文献】特開平01-168611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水溶性銅化合物 0.05~1質量%、
(B)無水ケイ酸 5~20質量%、
(C)アシルタウリン塩及びアシルグルタミン酸塩から選ばれる1種又は2種以上のアニオン性界面活性剤 0.5~2質量%、
(D)グリセリン、プロピレングリコール及び平均分子量630以下のポリエチレングリコールから選ばれる1種又は2種以上の湿潤剤 24~55質量%
及び
(E)ジカルボン酸、トリカルボン酸及びこれらのアルカリ金属塩から選ばれる1種又は2種以上
を含有し、(E)/(A)が質量比として0.4~10であり、かつ組成物中にソルビットを10質量%以下含有するか又はソルビットを含有しないことを特徴とする練歯磨剤組成物。
【請求項2】
(A)水溶性銅化合物が、グルコン酸銅、クエン酸銅及び硫酸銅から選ばれる1種又は2種以上である請求項1記載の練歯磨剤組成物。
【請求項3】
(B)無水ケイ酸が、研磨性シリカ及び増粘性シリカから選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2記載の練歯磨剤組成物。
【請求項4】
(C)成分が、アシル基の炭素数が8~18であるアシルタウリン塩及びアシルグルタミン酸から選ばれる1種又は2種以上のアニオン性界面活性剤である請求項1~3のいずれか1項記載の練歯磨剤組成物。
【請求項5】
(E)成分が、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸及びこれらのナトリウム塩から選ばれる1種又は2種以上である請求項1~4のいずれか1項記載の練歯磨剤組成物。
【請求項6】
(E)成分の含有量が0.02~3質量%である請求項1~5のいずれか1項記載の練歯磨剤組成物。
【請求項7】
更に、アルキル硫酸塩を0.5質量%以下含有するか、又はアルキル硫酸塩を含有しない請求項1~6のいずれか1項記載の練歯磨剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性銅化合物及び無水ケイ酸を含有し、消臭効果が優れると共に保存後も維持され、かつ外観安定性が優れる、口臭抑制用として好適な練歯磨剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、グルコン酸銅等の水溶性銅化合物には消臭作用、抗菌作用があることは知られており、水溶性銅化合物によって口臭等の歯周病を予防する水溶性銅化合物配合の口腔用組成物が提案されている(特許文献1~3;特許第2569639号公報、特許第2540892号公報、特許第2540895号公報)。
【0003】
更に、水溶性銅化合物を配合した口腔用組成物では、水溶性銅化合物の安定性低下や、銅による金属味や変色の発生などの問題が生じることがあるため、これらの解決策として、メントール誘導体による金属味抑制技術(特許文献4;特開2003-137755号公報)や、多塩基酸を併用することによる銅化合物の安定化、それによる口臭除去効果の向上技術(特許文献5;特許第2580657号公報)、色素とパラオキシ安息香酸アルキルエステルとの併用による変色抑制技術(特許文献6:特開平8-310928号公報)等が提案されている。
【0004】
一方、口腔用組成物、特に練歯磨等の歯磨剤には、清掃力の付与や適度な粘性を目的に研磨性シリカ、増粘性シリカといった無水ケイ酸が汎用されているが、口腔内の状態によって、例えば歯牙や歯肉が弱っているような状態では不快な刺激を与えることがある。近年、増加する高齢者の口腔環境を考慮すると、加齢により脆弱化した歯牙や歯肉組織への影響を低減しつつ、つまり影響を与えるおそれがある無水ケイ酸の配合量を比較的少なく抑えても、水溶性銅化合物による消臭作用等を効果的に発現させて口臭等を予防することが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第2569639号公報
【文献】特許第2540892号公報、
【文献】特許第2540895号公報
【文献】特開2003-137755号公報
【文献】特許第2580657号公報
【文献】特開平8-310928号公報
【文献】特許第2580656号公報
【文献】特開平4-159211号公報
【文献】特許第3922329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、水溶性銅化合物及び無水ケイ酸を含有し、消臭効果が優れると共に保存後も維持され、かつ外観安定性が優れる練歯磨剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、(A)水溶性銅化合物を特定量配合し、かつ(B)無水ケイ酸を特定量以下で配合した練歯磨剤組成物に、(C)特定のアニオン性界面活性剤と、(D)特定の多価アルコールから選ばれる湿潤剤とをそれぞれ特定量で配合し、かつ(E)特定のカルボン酸又はその塩を、(E)/(A)の質量比が特定範囲内となるように配合し、組成物中のソルビットの含有量が特定量以下であると、特に口臭に対する消臭効果が優れると共に保存後も維持され、かつ外観安定性が優れ味も良い練歯磨剤組成物が得られ、これにより、無水ケイ酸の配合量が比較的少なくても効果的に口臭を抑制又は予防できることを知見し、本発明をなすに至った。
【0008】
本発明では、(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)成分を組み合わせることで、(E)/(A)の質量比が特定範囲内において、消臭効果の向上と製剤外観の安定化とが両立し、格別な作用効果を与える。更に詳述すると、本発明者らが、練歯磨剤組成物での水溶性銅化合物と無水ケイ酸との併用に関して検討したところ、特に保存時における消臭効果の低下、液分離、変色、更には銅特有の金属味の発現といった様々な課題があるだけではなく、無水ケイ酸を減量すると、保存時に褐色の析出物が発生するという新たな課題が生じ、特に保存時における褐色の析出物に関しては、無水ケイ酸の配合量が一定値以下において(A)成分によって特有に発生する現象であることが判明した。これに対して、本発明では、(A)及び(B)成分と共に(C)及び(D)成分をそれぞれ特定量で組み合わせて配合し、かつ(E)成分を配合し、ソルビット量が特定値以下であると、(E)/(A)の質量比が特定範囲内において、上述した保存時の褐色の析出物の発生を抑制して全ての課題を解消し、格別な作用効果を付与できた。従って、本発明の練歯磨剤組成物は、後述の実施例にも示すように、消臭力(調製直後)、保存時における消臭力の維持効果、析出物抑制効果(析出物のなさ)、液分離のなさ及び変色のなさが優れ、金属味のなさも優れる。
なお、特許文献4~6には、上述した無水ケイ酸の配合量が特定値以下の系での褐色析出物の発生に関して何ら言及がない。また、特許文献7~9(特許第2580656号公報、特開平4-159211号公報、特許第3922329号公報)は、水溶性銅化合物及び無水ケイ酸配合の練歯磨剤組成物を開示するが、褐色析出物に関する言及がない。特許文献1~9から、(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)成分の組み合わせによる、褐色の析出物の抑制、本発明の格別顕著な作用効果は予測できない。
【0009】
従って、本発明は、下記の練歯磨剤組成物を提供する。
〔1〕
(A)水溶性銅化合物 0.05~1質量%、
(B)無水ケイ酸 5~20質量%、
(C)アシルタウリン、アシルアミノ酸及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上のアニオン性界面活性剤 0.5~2質量%、
(D)グリセリン、プロピレングリコール及び平均分子量630以下のポリエチレングリコールから選ばれる1種又は2種以上の湿潤剤 24~55質量%
及び
(E)ジカルボン酸、トリカルボン酸及びこれらのアルカリ金属塩から選ばれる1種又は2種以上
を含有し、(E)/(A)が質量比として0.4~10であり、かつ組成物中にソルビットを10質量%以下含有するか又はソルビットを含有しないことを特徴とする練歯磨剤組成物。
〔2〕
(A)水溶性銅化合物が、グルコン酸銅、クエン酸銅及び硫酸銅から選ばれる1種又は2種以上である〔1〕に記載の練歯磨剤組成物。
〔3〕
(B)無水ケイ酸が、研磨性シリカ及び増粘性シリカから選ばれる1種又は2種以上である〔1〕又は〔2〕に記載の練歯磨剤組成物。
〔4〕
(C)成分が、アシル基の炭素数が8~18であるアシルタウリン塩、アシルグルタミン酸塩及びアシルアラニン塩から選ばれる1種又は2種以上のアニオン性界面活性剤である〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の練歯磨剤組成物。
〔5〕
(E)成分が、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸及びこれらのナトリウム塩から選ばれる1種又は2種以上である〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の練歯磨剤組成物。
〔6〕
(E)成分の含有量が0.02~3質量%である〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の練歯磨剤組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、消臭効果が優れると共に保存後も維持され、かつ外観安定性が優れる、水溶性銅化合物及び無水ケイ酸含有の練歯磨剤組成物を提供することができる。この練歯磨剤組成物は、無水ケイ酸量を比較的少なく抑えて脆弱化した歯牙や歯肉組織に対しても悪影響を及ぼすことなく、口臭を効果的に抑制又は予防可能であり、口臭抑制用として有効である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明につき更に詳述すると、本発明の練歯磨剤組成物は、(A)水溶性銅化合物、(B)無水ケイ酸、(C)特定のアニオン性界面活性剤、(D)特定の湿潤剤、及び(E)特定のカルボン酸又はその塩を含有する。
【0012】
(A)水溶性銅化合物は、消臭力の付与剤であり、グルコン酸銅、クエン酸銅、硫酸銅等の水溶性の銅塩が好ましい。これらは、1種単独でも2種以上を併用してもよい。
(A)水溶性銅化合物の配合量は、組成物全体の0.05~1%(質量%、以下同様)であり、好ましくは0.1~0.5%である。0.05%未満では、消臭力が劣る。1%を超えると、マスキングが困難なほどに金属味が増強し、また、抑制が困難なほどに保存時の液分離や製剤変色が生じることがある。
【0013】
(B)無水ケイ酸としては、清掃力の付与や製剤の保型性を目的に配合される研磨性シリカ及び増粘性シリカを使用でき、研磨性シリカ又は増粘性シリカでもよい。
【0014】
研磨性シリカとしては、例えば沈降性シリカ、火成性シリカ等の無水ケイ酸、アルミノシリケート、ジルコノシリケート、チタン結合性シリカ等のケイ酸塩を主成分とする化合物などが挙げられる。これらは、1種単独でも2種以上を併用してもよい。
研磨性シリカは、好ましくは体積平均を用いたメジアン径(d50)が5~40μm、特に10~30μmのものを使用し得る。
なお、上記シリカのメジアン径は、粒度分布測定装置(日機装(株)製、マイクロトラック粒度分布計、分散媒;水)を用いて測定した値である(以下同様)。
【0015】
増粘性シリカは、好ましくは吸液量が2~3ml/gの範囲である沈降性シリカ、火成性シリカなど、公知の製法で得られたシリカを1種単独で又は2種以上用いることができる。増粘性シリカは、上記のような吸液量を有し、一方で研磨性シリカの吸液量は通常、2ml/g未満である。
上記の吸液量の測定方法は、下記の通りである(以下同様)。
試料1.0gを清浄なガラス板上に量りとり、ミクロビュレットを用いて、42.5%グリセリンを少量ずつ滴下しながらステンレス製のへらで、均一になるように試料を混合する。試料が一つの塊となり、へらでガラス板よりきれいに剥がれるようになるまでに要した液量(ml)を吸液量とする。
【0016】
(B)無水ケイ酸の配合量は、組成物全体の5~20%であり、好ましくは7~18%、より好ましくは10~15%である。5%未満であると、清掃力や保型性が十分に得られない。20%を超えると、消臭力が低下する。なお、20%を超えると、褐色の析出物の発生は認められない。
なお、上記(B)成分の配合量の範囲内において、研磨性シリカを含有する場合、その含有量は好ましくは組成物全体の5~19.9%、特に5~15%、とりわけ5~12%であり、また、増粘性シリカを含有する場合、その含有量は好ましくは0.1~15%、特に0.1~10%、とりわけ1~8%である。
【0017】
(C)成分は、アシルタウリン、アシルアミノ酸及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上のアニオン性界面活性剤である。
(C)成分は、好ましくはアシル基の炭素数が8~18、特に12~16であり、前記アシル基を有するアシルタウリン塩、アシルグルタミン酸塩及びアシルアラニン塩から選ばれ、中でも、アシルタウリン塩、アシルグルタミン酸塩、とりわけアシルタウリン塩が好ましい。また、これらの塩は、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、有機アミン塩などであり、特に好ましくはナトリウム塩である。
【0018】
アシルタウリン塩としては、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ミリストイルメチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム等が挙げられる。
アシルグルタミン酸塩としては、例えばラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ミリストイルグルタミン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸カリウム等が挙げられる。
アシルアラニン塩としては、ラウロイルメチルアラニンナトリウム等が挙げられる。
これらは市販品を使用でき、具体的には、NIKKOL LMT(ラウロイルメチルタウリンナトリウム、日光ケミカルズ(株))、NIKKOL MMT(ミリストイルメチルタウリンナトリウム、日光ケミカルズ(株))、アミノサーファクトALMS-P1(N-ラウロイル-L-グルタミン酸ナトリウム、旭化成ケミカルズ(株))、アミソフトLS-11(N-ラウロイル-L-グルタミン酸ナトリウム、味の素ヘルシーサプライ(株))、アミノサーファクトAMMS-P1(N-ミリストイル-L-グルタミン酸ナトリウム、旭化成ケミカルズ(株))、アミソフトMS-11(N-ミリストイル-L-グルタミン酸ナトリウム、味の素ヘルシーサプライ(株))、NIKKOL アラニネートLN-30(ラウロイルメチル-β-アラニンナトリウム、日光ケミカルズ(株))などを使用できる。
【0019】
(C)成分の配合量は、組成物全体の0.5~2%であり、好ましくは0.6~1.5%、より好ましくは0.8~1.5%である。配合量が0.5%未満では、保存時の析出物抑制効果及び金属味の低減効果が劣る。また、起泡性に劣る場合がある。2%を超えると、マスキング困難なほどに(C)成分による苦味が強くなり使用感が低下するおそれがある。
【0020】
なお、本発明では、上記(C)成分以外のアニオン性界面活性剤は、本発明の効果を妨げない範囲であれば配合してもよいが、特にラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩は配合しない(配合量0%)ほうがよく、配合する場合はその配合量が組成物全体の0.5%以下、特に0.2%以下、とりわけ0.1%以下がよい。
【0021】
(D)成分は、グリセリン、プロピレングリコール及び平均分子量630以下のポリエチレングリコールから選ばれる1種又は2種以上の湿潤剤であり、特にグリセリンが好適である。2種以上を使用する場合は、グリセリンとプロピレングリコール又は上記ポリエチレングリコールとを組み合わせることが好ましい。
【0022】
ポリエチレングリコールは、平均分子量(医薬部外品原料規格2006記載の平均分子量、以下同様)が630以下、好ましくは600以下であり、より好ましくは200~600、更に好ましくは300~600である。
上記ポリエチレングリコールとしては、ポリエチレングリコール200(平均分子量190~210)、ポリエチレングリコール300(平均分子量280~320)、ポリエチレングリコール400(平均分子量380~420)、ポリエチレングリコール600(平均分子量570~630)が挙げられ、市販品を使用し得る。
【0023】
(D)成分の配合量は、液分離抑制の点から、組成物全体の24~55%であり、好ましくは28~50%、より好ましくは32~45%である。配合量が24%未満であると、液分離抑制効果が劣る。55%を超えると、保存時の製剤変色が悪化する。また、口腔内での製剤の分散性が悪化し使用性が低下する場合がある。
なお、上記(D)成分の配合量の範囲内において、グリセリンを配合する場合、その配合量は純分として21%以上、特に25%以上が好ましい。
【0024】
本発明では、更に、上記(D)成分以外の湿潤剤としてソルビット、キシリット等の糖アルコールを配合することができ、糖アルコールの配合量は、(D)成分との合計量が、上記(D)成分の配合量の範囲内であることが好ましい。
なお、本発明の練歯磨剤組成物において、糖アルコールのうちでソルビットの配合量は、組成物全体の10%以下であり、好ましくは8%以下、特に4%以下であり、配合せず0%であることがとりわけ好ましい。10%を超えて配合すると、保存時の消臭力の維持効果が低下し、保存時の製剤変色も悪化する。
【0025】
(E)成分は、ジカルボン酸、トリカルボン酸及びこれらのアルカリ金属塩から選ばれる1種又は2種以上のカルボン酸又はその塩である。これらはキレート剤として知られているが、本発明では、保存時の消臭力の維持効果及び保存時の析出物抑制効果に寄与する。
(E)成分としては、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸やこれらのアルカリ金属塩が好ましく、より好ましくはクエン酸又はそのアルカリ金属塩である。
【0026】
(E)成分の配合量は、下記に示す(E)/(A)の質量比により主に決定され、(E)/(A)の質量比を満たすように設定できるが、好ましくは組成物全体の0.02~3%、特に0.05~2%である。0.02%以上であると、保存時の消臭力の維持効果及び保存時の析出物抑制効果が十分に得られる。3%以下であると、特に調製直後の消臭力の低下を十分に防止でき、また、(E)成分由来の異味の発現を十分に防止できる。
【0027】
本発明では、(A)成分に対する(E)成分の配合割合を示す(E)/(A)が、質量比として0.4~10であり、好ましくは0.5~6、より好ましくは0.6~5、更に好ましくは0.7~5である。この範囲内であると、消臭力及び消臭力の維持効果が優れ、かつ保存時の析出物抑制効果が優れる。(E)/(A)の質量比が0.4未満であると、保存時の消臭力の維持効果及び析出物抑制効果が劣る。10を超えると、調製直後の消臭力が低下する。
【0028】
本発明の練歯磨剤組成物には、上記成分に加えて、その他の公知成分を本発明の効果を妨げない範囲で必要に応じて配合できる。具体的には、無水ケイ酸以外の研磨剤、無水ケイ酸以外の粘結剤、アニオン性界面活性剤以外の界面活性剤、更に必要により甘味剤、着色剤、防腐剤、香料、水溶性銅化合物以外の有効成分等を配合できる。
【0029】
研磨剤としては、第2リン酸カルシウム・2水和物又は無水和物、第1リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム等のリン酸カルシウム系化合物、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、合成樹脂系研磨剤が挙げられる。これら研磨剤を配合する場合、その配合量は1~15%が好ましく、また、配合せず0%であってもよい。
【0030】
粘結剤としては、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸誘導体、キサンタンガム等のガム類、カラギーナン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウムなどの有機粘結剤が挙げられる。粘結剤の配合量は通常、0.1~5%である。
【0031】
界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤を配合できる。具体的にノニオン性界面活性剤は、ショ糖脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル、糖アルコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ラウリン酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミドが挙げられる。カチオン性界面活性剤は、塩化ジステアリルメチルアンモニウム等のアルキルアンモニウム型、アルキルベンジルアンモニウム塩が挙げられる。両性界面活性剤は、アルキルベタインや、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン等の酢酸ベタイン型、アルキルイミダゾリニウムベタイン等のベタイン型、イミダゾリン型が挙げられる。これら界面活性剤の配合量は通常、0~10%、特に0.01~5%である。
【0032】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム等が挙げられ、着色剤としては、青色1号、黄色4号、二酸化チタン等が挙げられる。防腐剤としては、パラオキシ安息香酸メチル等のパラオキシ安息香酸エステル、安息香酸又はその塩などが挙げられる。
【0033】
香料としては、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、グレープフルーツ油、スウィーティー油、柚油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料や、これら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N-置換-パラメンタン-3-カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、口腔用組成物に用いられる公知の香料素材を組み合わせて使用することができる。
上記の香料素材は、組成物全体に対して0.000001~1%使用することが好ましく、上記香料素材を使用した賦香用香料は、組成物全体に対して0.1~2%使用することが好ましい。
【0034】
有効成分としては、イソプロピルメチルフェノール等の非イオン性殺菌剤、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム等のカチオン性殺菌剤、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、アラントイン等の抗炎症剤、デキストラナーゼ等の酵素、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ素含有化合物、アスコルビン酸、トコフェロール酢酸エステル等のビタミン類、グリチルリチン酸ジカリウム、硝酸カリウム、乳酸アルミニウム、塩化ナトリウム、タイム等の植物抽出物などが挙げられる。上記有効成分は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量配合できる。
【実施例
【0035】
以下、実施例及び比較例、処方例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。
【0036】
[実施例、比較例]
表1~3に示す組成の歯磨剤組成物(練歯磨)を常法によって調製し、下記方法で評価した。結果を表に併記した。
【0037】
(1)消臭力(調製直後)の評価方法
<実験方法>
容量20mLの試験管に、歯磨剤組成物の3,000倍希釈液1mLと人口唾液1.5mLを入れて混合し、37℃で保温し、100ng/mLのメチルメルカプタン水溶液を0.5mL加えてシリコン栓で密封した後、撹拌して37℃の水浴中で振とうしながら6分間反応させた。その後、ガスクロマトグラフ(GC)に注入するガスクロマトグラフィー用シリンジにて5mLの空気を前記試験管内に注入した。30秒間激しく撹拌した後、同じくガスクロマトグラフィー用シリンジでヘッドスペースから気体を5mL採取して直ちにGCに注入し、メチルメルカプタンのピーク面積値を測定した。得られたピーク面積値から、下記式に基づき消臭率(%)を求めた。
【0038】
【数1】
【0039】
ガスクロマトグラフィー条件は以下の通りである。
機器:GC-2014((株)島津製作所製)
検出器:FPD
分離カラム:テフロン(登録商標)、充填剤Chromosorb W
60/80 AW-DM、CS処理(信和化工(株)製)
注入口温度:130℃
カラム温度:80℃
検出器温度:150℃
キャリアガス:N2
キャリアガス流量:50mL/min
【0040】
求めた消臭率から、下記の判定基準に基づき消臭力(調製直後)を評価した。
判定基準
◎:90%以上100%以下
○:70%以上90%未満
△:50%以上70%未満
×:50%未満
【0041】
(2)保存時における消臭力の維持効果の評価方法
歯磨剤組成物を口径8mmのラミネートチューブに50g充填し、50℃又は-5℃で3ヶ月間保存し、50℃保存品と-5℃保存品のそれぞれについて、上記消臭力の評価方法と同様にして、同様の試験条件でGCを用いてメチルメルカプタン消臭力を測定した。-5℃保存品の消臭力を100%とし、これに比較した50℃保存品の消臭力の割合(%)を算出し、下記の判定基準に基づき、消臭力の維持効果を評価した。
判定基準
◎:-5℃保存品に対して90%以上100%以下
○:-5℃保存品に対して70%以上90%未満
△:-5℃保存品に対して50%以上70%未満
×:-5℃保存品に対して50%未満
【0042】
(3)保存時における析出物抑制効果の評価方法
歯磨剤組成物を口径8mmのラミネートチューブに50g充填し、60℃で1ヶ月間保存後、ラミネートチューブから歯磨剤組成物を紙面上に約3cm押し出し、紙面上で押し広げた際の外観に認められる析出物(褐色の析出物)を目視で観察した。下記の判定基準に基づき、析出物抑制効果(析出物のなさ)を評価した。
判定基準
○:褐色粒状の析出物は認められない
×:褐色粒状の析出物が認められる
【0043】
(4)金属味のなさの評価方法
10名の専門パネラーが、歯磨剤組成物を歯ブラシに1g載せ、通常の方法で歯磨きした際に感じた金属味について、下記の評点基準により評価した。10人の評価点の平均値を求め、下記の判定基準に基づき、金属味のなさについて評価した。
評点基準
4点:口腔内で金属味を感じない
3点:口腔内でやや金属味を感じるが問題ないレベル
2点:口腔内で金属味があり不快に感じる
1点:口腔内で金属味が強くあり非常に不快に感じる
判定基準
◎:平均点3.5点以上4.0点以下
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点2.0点未満
【0044】
(5)保存時における液分離のなさの評価方法
歯磨剤組成物を口径8mmのラミネートチューブに50g充填し、これを40℃で6ヶ月間保存した後、ラミネートチューブから押し出した際の液の分離状態を目視で観察した。下記の判定基準に基づき、液分離のなさについて評価した。
判定基準
◎:液分離が認められない
○:液分離がごくわずかに認められる(表面に分離の兆候である艶が認められる)が
品質上問題ないレベルである
△:液分離が認められる
×:非常に大きな液分離が認められる
【0045】
(6)保存時における変色のなさの評価方法
歯磨剤組成物を口径8mmのラミネートチューブに50g充填し、60℃又は-5℃で1ヶ月間保存し、-5℃保存品と60℃保存品のそれぞれについて、ラミネートチューブから押し出した際の変色状態(局所的ではなく歯磨剤全体の色が変わった状態)を目視で観察した。下記の判定基準に基づき、変色のなさについて評価した。
判定基準
◎:-5℃保存品と比較して変色が認められない
○:-5℃保存品と比較して変色がわずかに認められるが問題ないレベルである
△:-5℃保存品と比較して変色が認められる
×:-5℃保存品と比較して変色が非常に認められる
【0046】
使用原料の詳細を下記に示す。
(A)グルコン酸銅;和光純薬工業(株)製
(A)クエン酸銅;関東化学(株)製
(A)硫酸銅;関東化学(株)製
(B)研磨性シリカ;多木化学(株)製、研磨性シリカ
メジアン径(d50)5~40μmの範囲内
(B)増粘性シリカ;DSLジャパン(株)製、商品名「カープレックス」
吸液量2.0~3.0ml/gの範囲内
(C)ラウロイルメチルタウリンナトリウム;日光ケミカルズ(株)製
(C)ミリストイルグルタミン酸ナトリウム;旭化成ケミカルズ(株)製
(C)ラウロイルグルタミン酸ナトリウム;旭化成ケミカルズ(株)製
(D)グリセリン(85%品);ライオンケミカル(株)製
(D)プロピレングリコール;ADEKA社製
(D)ポリエチレングリコール300;三洋化成工業(株)製、平均分子量300
(D)ポリエチレングリコール400;三洋化成工業(株)製、平均分子量400
(D)ポリエチレングリコール600;三洋化成工業(株)製、平均分子量600
ソルビット液(70%);ロケット社製
(E)クエン酸ナトリウム;小松屋(株)製
(E)クエン酸;扶桑化学工業(株)製
(E)酒石酸ナトリウム;和光純薬工業(株)製
(E)コハク酸ナトリウム;関東化学(株)製
(E)リンゴ酸ナトリウム;純正化学(株)製
ラウリル硫酸ナトリウム;BASF社製
【0047】
【表1】
*;純分の合計量(以下同様)。
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
以下に処方例を示す。使用原料の詳細は上記と同様である。
処方例の練歯磨は、消臭力(調製直後)、保存時における消臭力の維持効果、析出物抑制効果、液分離のなさ及び変色のなさ、金属味のなさが、いずれも良好であった。
【0051】
[処方例1]練歯磨
(A)グルコン酸銅 0.3%
(B)研磨性シリカ 15
(B)増粘性シリカ 5
(B)成分合計量 20
(C)ラウロイルメチルタウリンナトリウム 1
(D)グリセリン(85%) 40
(D)プロピレングリコール 3
(D)成分合計量* 37
(E)クエン酸ナトリウム 0.3
(E)クエン酸 0.15
(E)/(A)の質量比 1.5
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.7
イソプロピルメチルフェノール 0.1
ε-アミノカプロン酸 0.1
ラウロイルサルコシンナトリウム 0.5
ヒドロキシエチルセルロース 1
アルギン酸ナトリウム 0.3
ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油 1.5
サッカリンナトリウム 0.1
酸化チタン 0.5
香料 1
精製水 残
合計 100%
【0052】
[処方例2]練歯磨
(A)グルコン酸銅 0.3%
(B)研磨性シリカ 12
(B)増粘性シリカ 3
(B)成分合計量 15
(C)ラウロイルメチルタウリンナトリウム 1.5
(D)グリセリン(85%) 40
(D)プロピレングリコール 3
(D)成分合計量* 37
(E)クエン酸ナトリウム 0.3
(E)/(A)の質量比 1
モノフルオロリン酸ナトリウム 1.1
イソプロピルメチルフェノール 0.1
トコフェロール酢酸エステル 0.2
トラネキサム酸 0.1
ラウロイルサルコシンナトリウム 0.1
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.5
キサンタンガム 0.8
アルギン酸ナトリウム 0.3
ポリオキシエチレン(5)ステアリルエーテル 1
ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油 1
サッカリンナトリウム 0.1
酸化チタン 0.5
香料 1
精製水 残
合計 100%
【0053】
[処方例3]練歯磨
(A)グルコン酸銅 0.5%
(B)研磨性シリカ 10
(B)増粘性シリカ 5
(B)成分合計量 15
(C)ラウロイルグルタミン酸ナトリウム 1
ラウリル硫酸ナトリウム 0.5
(D)グリセリン(85%) 45
(D)ポリエチレングリコール400 3
(D)成分合計量* 41.3
(E)リンゴ酸ナトリウム 0.5
(E)リンゴ酸 0.2
(E)/(A)の質量比 1.4
モノフルオロリン酸ナトリウム 1.1
トコフェロール酢酸エステル 0.1
β-グリチルレチン酸 0.1
塩化セチルピリジニウム 0.05
カラギーナン 0.6
アルギン酸ナトリウム 1
ポリオキシエチレン(5)ステアリルエーテル 1.5
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 0.5
サッカリンナトリウム 0.1
酸化チタン 0.5
香料 1
緑色3号 0.0005
精製水 残
合計 100%
【0054】
[処方例4]練歯磨
(A)グルコン酸銅 0.1%
(B)研磨性シリカ 18
(B)増粘性シリカ 2
(B)成分合計量 20
(C)ミリストイルグルタミン酸ナトリウム 1
(D)グリセリン(85%) 35
(D)プロピレングリコール 3
(D)成分合計量* 32.8
ソルビット液(70%) 5
(E)クエン酸ナトリウム 0.2
(E)/(A)の質量比 2.0
フッ化ナトリウム 0.3
イソプロピルメチルフェノール 0.1
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
塩化セチルピリジニウム 0.05
塩化ナトリウム 5
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.5
キサンタンガム 0.5
グリセリン脂肪酸エステル 1.5
サッカリンナトリウム 0.1
ゼオライト 5
香料 1
精製水 残
合計 100%