(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】静電容量検出装置
(51)【国際特許分類】
G01R 27/26 20060101AFI20220112BHJP
E05B 81/76 20140101ALI20220112BHJP
G01B 7/00 20060101ALI20220112BHJP
G01V 3/08 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
G01R27/26 C
E05B81/76
G01B7/00 101C
G01V3/08 D
(21)【出願番号】P 2017237818
(22)【出願日】2017-12-12
【審査請求日】2020-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】木佐貫 豊
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昭
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-207269(JP,A)
【文献】特開2012-227680(JP,A)
【文献】特開2005-106665(JP,A)
【文献】特表2008-542765(JP,A)
【文献】特開2017-83402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/26
G01B 7/00
E05B 81/76
G01V 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量の検出対象となる被検出容量に直列接続された基準コンデンサと、前記基準コンデンサを放電させる放電スイッチと、を備える静電容量検出装置において、
Nを3以上の自然数としたとき、前記放電スイッチが並列接続されたN個のスイッチング素子により構成されており、
前記スイッチング素子のうちのオンとなっている素子の数をオン素子数としたとき、前記基準コンデンサの放電に際して、前記オン素子数が0からNへと1ずつ増加するように時間差をつけて前記N個のスイッチング素子をオンとする放電制御部であって、前記オン素子数の増加から次の増加までの時間を、同オン素子数が多くなるほど短い時間とする放電制御部を備えている静電容量検出装置。
【請求項2】
当該静電容量検出装置は、検出電極と同検出電極に近接した導体との間に形成される静電容量を前記被検出容量とし、前記検出電極への前記導体の近接による前記被検出容量の変化を検出する
請求項1に記載の静電容量検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のドアの開閉を制御するシステム等において、人体等の物体の近接を静電容量の変化から検知するものがある。従来、こうしたシステムにおいて静電容量の変化を検出する静電容量検出装置として、特許文献1に記載の装置が知られている。同文献に記載の静電容量検出装置は、静電容量(変化)の検出対象となる被検出容量に直列接続された基準コンデンサと、同基準コンデンサを放電させる放電スイッチと、を備えている。こうした静電容量検出装置では、基準コンデンサの充放電により、基準コンデンサと被検出容量との間の電位(以下、中間電位と記載する)を初期電位とした後、被検出容量の充電、放電を繰り返す。そして、中間電位が初期電位から設定電位に低下するまでの充放電の繰り返しの回数を、被検出容量の静電容量の指標値として取得している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記静電容量検出装置において基準コンデンサが放電した電流が流れる箇所に設置される部品には、放電中のピーク電流よりも許容最大電流の大きい部品を採用する必要がある。よって、基準コンデンサの放電中のピーク電流を抑えることで、許容最大電流の小さい、安価な部品の採用が可能となる。
【0005】
基準コンデンサの放電中のピーク電流は、放電スイッチのオン時の抵抗(以下、オン抵抗と記載する)が大きいほど小さくなる。しかしながら、放電スイッチとしてオン抵抗の大きいスイッチング素子を採用すれば、基準コンデンサの放電収束時間が長くなってしまう。このように、基準コンデンサの放電収束時間と放電中のピーク電流とは相反する関係にあり、基準コンデンサの放電中のピーク電流の抑制を図れば、放電収束時間が増加してその分、検出の応答性が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その解決しようとする課題は、基準コンデンサの放電中のピーク電流の低減に伴う検出の応答性の低下を抑えられる静電容量検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する静電容量検出装置は、静電容量の検出対象となる被検出容量に直列接続された基準コンデンサと、同基準コンデンサを放電させる放電スイッチと、を備える。同静電容量検出装置では、上記放電スイッチを、並列接続されたN個のスイッチング素子により構成している(Nは3以上の自然数)。ここで、上記N個のスイッチング素子のうちのオンとなっている素子の数をオン素子数とする。このとき、上記静電容量検出装置は、上記基準コンデンサの放電に際して、オン素子数が0からNへと1ずつ増加するように時間差をつけて上記N個のスイッチング素子をオンとする放電制御部であって、オン素子数の増加から次の増加までの時間を、同オン素子数が多くなるほど短い時間とする放電制御部を備えている。
【0008】
上記のような並列接続されたN個のスイッチング素子により構成された放電スイッチのオン抵抗は、オン素子数の増加に応じて小さくなる。よって、上記静電容量検出装置における放電スイッチのオン抵抗は、基準コンデンサの放電開始からの経過時間に応じて段階的に小さくなる。放電スイッチのオン抵抗が小さくなれば、基準コンデンサの放電が加速されるものの、放電電流は増加する。ただし、放電開始からの経過時間に応じて基準コンデンサの端子間電圧は低下するため、上記のように時間差をつけてオン素子数を順次増加させていけば、オン抵抗の減少に伴う放電電流の増加を抑えることが可能となる。
【0009】
なお、放電中のピーク電流を十分に抑えるには、オン素子数の増加から次の増加までの時間をある程度よりも長くする必要がある。一方、オン素子数が1増加したときの放電スイッチのオン抵抗の低下幅は、オン素子数の増加に応じて小さくなる。さらに、基準コンデンサの放電は、オン素子数の増加による放電スイッチのオン抵抗の減少に応じて加速される。そのため、オン素子数の増加から次の増加までの時間をオン素子数が多くなるほど短い時間としても、ピーク電流を一定の値以下に抑えることが可能となる。
【0010】
ちなみに、上記静電容量検出装置は、例えば、検出電極と同検出電極に近接した導体との間に形成される静電容量を上記被検出容量とし、上記検出電極への導体の近接による上記被検出容量の変化を検出するものとして具体化することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の静電容量検出装置によれば、基準コンデンサの放電中のピーク電流の低減に伴う検出の応答性の低下を抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】静電容量検出装置の一実施形態の模式的な回路構成図。
【
図2】同実施形態の静電容量検出装置に設けられた放電スイッチ及び放電制御回路の模式的な回路構成図。
【
図3】上記放電制御回路に設けられたシフトレジスタの動作を示すタイムチャート。
【
図4】大きいスイッチ抵抗を有した単一のスイッチング素子により放電スイッチを構成した場合の基準コンデンサ放電時の中間電位及び放電電流の推移を示すタイムチャート。
【
図5】小さいスイッチ抵抗を有した単一のスイッチング素子により放電スイッチを構成した場合の基準コンデンサ放電時の中間電位及び放電電流の推移を示すタイムチャート。
【
図6】上記実施形態の静電容量検出装置における基準コンデンサ放電時の中間電位及び放電電流の推移を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、静電容量検出装置の一実施の形態を、
図1~
図6を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態の静電容量検出装置は、車両のドアロックの開閉システムに組み込まれ、ドアハンドルへの人の手の近接を静電容量の変化から検出する装置として構成されている。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の静電容量検出装置は、ドアハンドルに内蔵された検出電極10を備えている。検出電極10は、人の手などの導体が近傍に位置する場合、その導体との間に静電容量を形成する。本実施形態の静電容量検出装置は、こうした検出電極10と近傍の導体との間に形成される静電容量を検出対象とする被検出容量Cxとし、同被検出容量Cxの変化を検出する装置として構成されている。
【0015】
さらに、本実施形態の静電容量検出装置は、既定の静電容量(以下、基準容量Csと記載する)を有した基準コンデンサ11を備えている。さらに、本実施形態の静電容量検出装置は、静電容量の検出にかかる電子回路が形成された基板であるスイッチモジュール12と、静電容量検出装置を制御する汎用ロジック集積回路である電子制御部13とを備えている。これら基準コンデンサ11、スイッチモジュール12、及び電子制御部13は、検出電極10と共にドアハンドルに内蔵されている。
【0016】
基準コンデンサ11の一端は、電位が既定の基準電位Vccとなった電源ライン14に接続され、他端はスイッチモジュール12を介して検出電極10に接続されている。すなわち、基準コンデンサ11は、被検出容量Cxに直列接続された状態となっている。
【0017】
スイッチモジュール12には、第1スイッチ15、第2スイッチ16、第3スイッチ17の3つのスイッチが設けられている。第1スイッチ15は、基準コンデンサ11を放電させるための放電スイッチであり、同基準コンデンサ11と並列接続されている。第2スイッチ16は、これら並列接続された第1スイッチ15及び基準コンデンサ11と、検出電極10との間に設けられている。さらに、第3スイッチ17は、第2スイッチ16と検出電極10との間に一端が接続され、他端が接地(GND)された状態で設置されている。すなわち、第3スイッチ17は、被検出容量Cxに並列接続された状態となっている。
【0018】
また、スイッチモジュール12には、第1スイッチ15を開閉駆動するための放電制御回路18と、第2スイッチ16及び第3スイッチ17を開閉駆動するための組合/順序回路19と、が設けられている。放電制御回路18は、電子制御部13から入力した放電信号SW1、及び遅延信号DLYに応じて第1スイッチ15を開閉し、組合/順序回路19は、電子制御部13から入力した検出実施信号SW23に応じて第2スイッチ16及び第3スイッチ17を開閉する。放電制御回路18は、基本的には、放電信号SW1がオン出力となったときからオフ出力となるまでの期間、第1スイッチ15をオン(閉状態)として、基準コンデンサ11を放電させるように構成されている。一方、組合/順序回路19は、検出実施信号SW23がオン出力となってからオフ出力となるまでの期間、一定の周期毎に、第2スイッチ16及び第3スイッチ17を交互にオンとすることを繰り返すように構成されている。
【0019】
さらに、スイッチモジュール12には、コンパレータ20が設けられている。コンパレータ20は、第1スイッチ15及び基準コンデンサ11と、検出電極10との間の部分の電位(以下、中間電位Vinと記載する)と、既定の設定電位Vrefとを比較する。そして、コンパレータ20は、中間電位Vinが設定電位Vrefよりも高いときにはオフ出力となり、中間電位Vinが設定電位Vref以下のときにはオン出力となる比較信号COMPを電子制御部13に出力する。ちなみに、設定電位Vrefは、電源ライン14と接地側(GND)との間に直列接続された状態で配設された2つの抵抗21、22の間の部分から取り出されている。
【0020】
本実施形態の静電容量検出装置は、下記の測定周期の繰り返しを通じて、ドアハンドルへの乗員の手の接触による被検出容量Cxの変化を検出する。電子制御部13は、測定周期の開始に当たり、放電制御回路18に出力する放電信号SW1をオン出力とする。これにより、放電制御回路18は、第1スイッチ15を閉状態として、基準コンデンサ11を放電させることで、中間電位Vinを基準電位Vccと等しい電位とする。その後、電子制御部13は、放電信号SW1をオフ出力として、第1スイッチ15をオフ(開状態)とする。さらに、電子制御部13は、検出実施信号SW23をオン出力とする。
【0021】
検出実施信号SW23がオン出力となると、組合/順序回路19は、第2スイッチ16及び第3スイッチ17を交互にオンとする。すなわち、第3スイッチ17をオフとしたまま、第2スイッチ16をオンとする状態と、第2スイッチ16をオフとしたまま、第3スイッチ17をオンとする状態と、を周期的に切り替える。これにより、被検出容量Cxの充放電が繰り返され、その充放電毎に中間電位Vinが次第に低下するようになる。
【0022】
電子制御部13は、比較信号COMPがオフ信号からオン信号に切り替わるまで、検出実施信号SW23をオン出力に保持している。そして、電子制御部13は、比較信号COMPがオフ信号からオン信号に切り替わった時点で、検出実施信号SW23をオフ出力に切り替える。すなわち、中間電位Vinが基準電位Vccから設定電位Vrefに低下するまでの期間、被検出容量Cxの充放電が繰り返される。充放電一回当たりの中間電位Vinの低下量は、被検出容量Cxが大きいほど大きくなる。よって、このときの被検出容量Cxの充放電の繰り返し回数は、被検出容量Cxの大きさに負の相関を有した値となる。電子制御部13は、このときの充放電の繰り返し回数をカウントして、その値を測定結果として記憶することで、今回の測定周期を終了する。電子制御部13は、こうした測定周期を繰り返し、上記充放電の繰り返し回数の変化から、乗員の手のドアハンドルへの接触や近接による被検出容量Cxの変化を検出している。
【0023】
続いて、こうした本実施形態の静電容量検出装置において、基準コンデンサ11を放電するための第1スイッチ15及び放電制御回路18の詳細を説明する。
図2に示すように、本実施形態の静電容量検出装置において、基準コンデンサ11を放電する放電スイッチである第1スイッチ15は、並列接続された4つスイッチング素子23~26により構成されている。本実施形態では、これらのスイッチング素子23~26として、ゲートにオフ信号が入力されているときにオン(閉状態)となり、同ゲートにオン信号が入力されているときにオフ(開状態)となる常閉式の電界効果トランジスタ(FET)を採用している。
【0024】
放電制御回路18は、基準コンデンサ11の放電に際して、上記4つのスイッチング素子23~26を、時間差をつけて順次オンとするように構成されている。以下、こうした放電制御回路18の詳細を説明する。
【0025】
4つのスイッチング素子のうちの一つ(スイッチング素子23)のゲートには、放電制御回路18に設けられたインバータ27によってオン/オフが反転された放電信号SW1が入力されている。すなわち、放電信号SW1がオン出力であるときには、ゲートにオフ出力が入力されてスイッチング素子23はオン(閉状態)となり、放電信号SW1がオフ出力であるときには、ゲートにオン信号が入力されてスイッチング素子23はオフ(開状態)となる。
【0026】
一方、放電制御回路18には、シフトレジスタ28が設けられている。シフトレジスタ28は、電子制御部13が出力した放電信号SW1をデータ信号として、遅延信号DLYをクロック信号として、それぞれ入力する。そして、シフトレジスタ28は、放電信号SW1のオン出力を入力後、遅延信号DLYのオン出力を入力する毎に、出力端子から順次、オン出力を出力するように構成されている。なお、以下では、3つの出力端子の出力信号を、オン出力となる順番の早いものから順に、出力信号OUT1、出力信号OUT2、出力信号OUT3と記載する。
【0027】
さらに、放電制御回路18には、3つの論理積回路29~31が設けられている。論理積回路29は、放電信号SW1と、シフトレジスタ28の出力信号OUT1とを入力し、それら2信号が共にオン出力となったときにオフ出力からオン出力となり、同2信号の少なくともいずれか一つがオフとなったときにオン出力からオフ出力となる出力信号SW1bを出力する。また、論理積回路30は、放電信号SW1と、シフトレジスタ28の出力信号OUT2とを入力し、それら2信号が共にオンとなったときにオフ出力からオン出力となり、同2信号の少なくともいずれか一つがオフとなったときにオン出力からオフ出力となる出力信号SW1cを出力する。さらに、論理積回路31は、放電信号SW1と、シフトレジスタ28の出力信号OUT3とを入力し、それら2信号が共にオンとなったときにオフ出力からオン出力となり、同2信号の少なくともいずれか一つがオフとなったときにオン出力からオフ出力となる出力信号SW1dを出力する。そして、スイッチング素子24~26のゲートには、放電制御回路18に設けられたインバータ32~34によりオン/オフ反転された出力信号SW1b、SW1c、SW1dがそれぞれ入力されている。
【0028】
図3に示すように、電子制御部13は、基準コンデンサ11の放電を開始する時刻t1から、予め設定された既定の時間Taが経過した時刻t5までの期間、放電信号SW1をオン出力に保持している。時間Taの長さは、基準コンデンサ11の放電が確実に完了可能なように設定されている。なお、遅延信号DLYは、時刻t1の時点では、オフ出力に保持されている。
【0029】
一方、電子制御部13は、放電信号SW1をオフ信号からオン信号に切り替えてから既定の時間Tb(<Ta)が経過した時刻t2に、遅延信号DLYを一時的にオン出力としている。さらに、電子制御部13は、時刻t2から上記時間Tbの2分の1の時間(Tb/2)が経過した時刻t3、及びさらにその時刻t3から上記時間Tbの4分の1の時間(Tb/4)が経過した時刻t4にも、遅延信号DLYを一時的にオン出力としている。これに対して出力信号SW1bは時刻t2から、出力信号SW1cは時刻t3から、出力信号SW1dは時刻t4から、それぞれオフ出力からオン出力に切り替わる。これら出力信号SW1b、SW1c、SW1dは、放電信号SW1がオン出力からオフ出力となった時刻t5までオン出力に保持された後、同時刻t5にオフ出力となる。
【0030】
上記のように、第1スイッチ15のスイッチング素子23は放電信号SW1に、スイッチング素子24は出力信号SW1bに、スイッチング素子25は出力信号SW1cに、スイッチング素子26は出力信号SW1dに、それぞれ従って開閉する。ここで、スイッチング素子23~26のうちのオンとなっている素子の数をオン素子数nとする。放電を開始する時刻t1から時刻t2までの期間のオン素子数nは1となっている。また、オン素子数nは、時刻t2から時刻t3までの期間は2となり、時刻t3から時刻t4までの期間は3となり、時刻t4から放電を完了する時刻t5までの期間は4となっている。
【0031】
上記のように本実施形態では、基準コンデンサ11の放電に際して、それら4個のスイッチング素子23~26を、オン素子数nが0から4へと1ずつ増加するように時間差をつけてオンとしている。また、オン素子数nの増加から次の増加までの時間を、同オン素子数nが多くなるほど短い時間としている。なお、本実施形態では、上記態様で放電中のスイッチング素子23~26の開閉動作を制御する放電制御部が、放電制御回路18及び電子制御部13により構成されている。
【0032】
(作用効果)
上記のように、本実施形態の静電容量検出装置では、基準コンデンサ11を放電するための放電スイッチである第1スイッチ15を、並列接続された4個のスイッチング素子23~26により構成している。そして、基準コンデンサ11の放電に際して、時間差をつけてそれら4個のスイッチング素子23~26をオンとするようにしている。なお、並列接続した4個のスイッチング素子23~26からなる第1スイッチ15全体のオン抵抗は、オン素子数nに反比例することになる。そのため、本実施形態では、放電中の第1スイッチ15全体のオン抵抗が、オン素子数nの増加に応じて順次低下するようになる。
【0033】
ここで、上記のような放電スイッチを単一のスイッチング素子で構成することを考える。この場合、放電スイッチのオン時の抵抗(オン抵抗)は、放電の終始に亘って一定に保たれる。
【0034】
図4に、単一のスイッチング素子により構成した放電スイッチにより、基準コンデンサ11を放電したときの中間電位Vin及び放電電流の推移の一例を示す。なお、同図では、本実施形態において第1スイッチ15に4個設けられたスイッチング素子23~26の一つを上記単一のスイッチング素子として採用した場合を示している。同図に示すように、放電開始後、中間電位Vinは、概ね一次遅れの曲線を描いて基準電位Vccに収束していく。なお、同図では、このときの放電中の基準コンデンサ11のピーク電流を「Ia」、放電飽和時間を「t」としている。
【0035】
図5は、放電スイッチを構成する単一のスイッチング素子として、オン抵抗が
図4の場合の2分の1の素子を採用した場合の放電中の中間電位Vin及び放電電流の推移を示す。この場合には、放電スイッチのオン抵抗が低い分、基準コンデンサ11はより急速に放電する。ただし、この場合には、放電スイッチのオン抵抗が低い分、放電中のピーク電流は大きくなる。例えば、基準コンデンサ11の放電電流(I)及び端子間電圧(V)と放電スイッチのオン抵抗(R)との関係が単純にオームの法則(I=V/R)に従うとした場合、放電飽和時間は
図4の場合の2分の1となり、ピーク電流は
図4の場合の2倍となる。
【0036】
図6に、本実施形態における基準コンデンサ11の放電中の中間電位Vin及び放電電流の推移を示す。並列接続された4個のスイッチング素子23~26により構成された第1スイッチ15のオン抵抗は、オン素子数nの増加に応じて小さくなる。そして、本実施形態では、基準コンデンサ11の放電に際し、オン素子数nが0から4へと1ずつ増加するように時間差をつけてそれら4個のスイッチング素子23~26をオンとしている。そのため、放電中の第1スイッチ15全体のオン抵抗は、放電開始からの経過時間に応じて段階的に小さくなる。第1スイッチのオン抵抗が小さくなれば、基準コンデンサ11の放電が加速されるものの、放電電流は増加する。ただし、放電開始からの経過時間に応じて基準コンデンサ11の端子間電圧は低下するため、上記のように時間差をつけてオン素子数nを順次増加させていけば、オン抵抗の減少に伴う放電電流の増加を抑えることが可能となる。
【0037】
同図の場合、放電初期の第1スイッチ15全体のオン抵抗は、
図4の場合と同じである。そのため、放電中のピーク電流は
図4の場合と同程度となる。一方、放電開始後に第1スイッチ15のオン抵抗は段階的に低下するため、基準コンデンサ11の放電飽和時間は、
図5の場合よりは長いものの、
図4の場合よりは短い時間となる。
【0038】
なお、放電中のピーク電流を十分に抑えるには、オン素子数nの増加から次の増加までの時間をある程度よりも長くする必要がある。一方、オン素子数nが1増加したときの第1スイッチ15全体のオン抵抗の低下幅は、オン素子数nの増加に応じて小さくなる。さらに、基準コンデンサ11の放電は、オン素子数nの増加による第1スイッチ15全体のオン抵抗の減少に応じて加速される。そのため、オン素子数nの増加から次の増加までの時間をオン素子数nが多くなるほど短い時間としても、ピーク電流を一定の値以下に抑えることが可能となる。そのため、本実施形態では、放電中のピーク電流が同じであれば、オン素子数nの増加から次の増加までの時間を一定とした場合よりも短い時間で基準コンデンサ11の放電を完了できる。
【0039】
以上説明した本実施形態によれば、次の効果を奏することができる。
(1)基準コンデンサ11の放電中のピーク電流を低減できるため、放電電流が流れる部分の許容最大電流を小さくすることができ、製造コストを抑えられる。
【0040】
(2)基準コンデンサ11の放電飽和時間の増加を抑えつつ、放電中のピーク電流の低減が可能なため、ピーク電流の低減を図りつつも、静電容量変化の検出の応答性を確保することが可能となる。
【0041】
(3)複数のスイッチング素子を電子制御部13が直接開閉する場合、スイッチング素子の数だけ出力端子及び信号線が必要となる。これに対して本実施形態では、電子制御部13は、第1スイッチ15をオンとする期間を指示する放電信号SW1とオン素子数nを増加するタイミングを指示する遅延信号DLYとを出力している。そして、放電制御回路18に設けられたシフトレジスタ28や論理積回路29~31により、時間差をつけてオンとなるように各スイッチング素子23~26の駆動信号をそれぞれ生成するようにしていた。そのため、電子制御部13を構成する汎用ロジック集積回路として出力端子の少ない集積回路を採用した場合にも、第1スイッチ15を構成する多数のスイッチング素子を、時間差をつけて開閉することが可能となる。
【0042】
なお、上記実施の形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・電子制御部13が、オン、オフのタイミングを指示する制御信号を各スイッチング素子23~26に対して個別に出力して、基準コンデンサ11の放電に際して時間差をつけて各スイッチング素子23~26をオンとするようにしてもよい。その場合には、放電制御回路18を、シフトレジスタ28や論理積回路29~31を省略した簡易な構成とすることができる。
【0043】
・第1スイッチ15を構成する各スイッチング素子23~26として、常閉式の電界効果トランジスタを採用していたが、例えばバイポーラトランジスタやサイリスタのような電界効果トランジスタ以外のスイッチング素子を採用してもよい。また、ゲートにオン信号が入力されているときにオン(閉状態)となり、同ゲートにオフ信号が入力されているときにオフ(開状態)となる常開式のスイッチング素子を採用してもよい。なお、常開式のスイッチング素子を採用する場合、放電制御回路18におけるインバータ27,32~34の設置は不要となる。
【0044】
・上記実施形態では、第1スイッチ15を並列接続された4個のスイッチング素子23~26により構成していたが、並列接続された3個、或いは5個以上のスイッチング素子により第1スイッチ15を構成するようにしてもよい。
【0045】
・上記実施形態の静電容量検出装置は、車両のドアハンドルに設けられた検出電極10と同検出電極10に近接した導体(人の手など)との間に形成される静電容量を被検出容量Cxとし、検出電極10への導体の近接による被検出容量Cxの変化を検出するように構成されていた。車両のドアハンドル以外の部分に設けられた静電容量型の近接センサにおける静電容量(変化)を検出する装置として、上記実施形態の装置を採用してもよい。また、近接センサ以外の用途での静電容量検出装置においても、被検出容量に直列接続された基準コンデンサ、及びその基準コンデンサを放電させる放電スイッチを備えるものであれば、上記実施形態における放電スイッチ及びその放電制御部を適用することができる。そうした場合にも、その適用により、基準コンデンサの放電中のピーク電流の低減に伴う検出の応答性の低下を抑えられる。
【符号の説明】
【0046】
10…検出電極、11…基準コンデンサ、12…スイッチモジュール、13…電子制御部、14…電源ライン、15…第1スイッチ(放電スイッチ)、16…第2スイッチ、17…第3スイッチ、18…放電制御回路、19…組合/順序回路、20…コンパレータ、21,22…抵抗、23~26…スイッチング素子、27,32~34…インバータ、28…シフトレジスタ、29~31…論理積回路、Cs…基準容量、Cx…被検出容量、Vcc…基準電位、Vin…中間電位、Vref…設定電位。