IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TDK株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電池パック 図1
  • 特許-電池パック 図2
  • 特許-電池パック 図3
  • 特許-電池パック 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/572 20210101AFI20220112BHJP
   H01M 50/574 20210101ALI20220112BHJP
   H01M 50/583 20210101ALI20220112BHJP
   H01M 50/202 20210101ALI20220112BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20220112BHJP
   H01M 50/284 20210101ALI20220112BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20220112BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20220112BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
H01M50/572
H01M50/574
H01M50/583
H01M50/202
H01M50/204
H01M50/284
H01M10/44 P
H01M10/48 Z
H02J7/00 Y
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017246927
(22)【出願日】2017-12-22
(65)【公開番号】P2019114415
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100169694
【弁理士】
【氏名又は名称】荻野 彰広
(72)【発明者】
【氏名】山嶋 雅之
(72)【発明者】
【氏名】中川 浩次
(72)【発明者】
【氏名】志尾▲崎▼ 涼
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-087723(JP,A)
【文献】特開2010-038839(JP,A)
【文献】特開平04-188573(JP,A)
【文献】特開2013-130532(JP,A)
【文献】特開2017-163808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
H01M 50/20-50/298
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池セルと、鉛直方向の加速度を検知可能な重力センサと、前記重力センサの出力信号を用いて落下状態を検知する検知回路と、前記検知回路の出力信号に基づいて前記二次電池セルの充放電電流を制御する制御回路と、を備えた電池パックであって、
前記検知回路は、前記電池パックが落下状態にある落下時間を計測する機能を含み、
前記検知回路は、前記重力センサで検知した鉛直方向の加速度が予め定めた閾値に達したときに、落下状態であると判断し、
前記制御回路は、前記落下時間が規定時間以上続いたときに、衝突前に、衝撃許容範囲を超えた衝撃が加わる可能性がある規定外落下があったと判断することを特徴とする電池パック。
【請求項2】
前記電池パックは、外部表示機能をさらに具備し、
前記制御回路は、前記規定外落下があったと判断すると、前記外部表示機能を用いて警告表示を行うことを特徴とする請求項1記載の電池パック。
【請求項3】
前記電池パックは、外部通信機能をさらに具備し、
前記制御回路は、前記規定外落下があったと判断すると、この判断結果を前記外部通信機能を用いて、前記電池パックが接続されている機器に通知することを特徴とする請求項1または2記載の電池パック。
【請求項4】
前記電池パックは、不揮発性メモリをさらに具備し、
前記制御回路は、前記規定外落下の発生履歴を前記不揮発性メモリに記録することを特徴とする請求項1ないしいずれか一項記載の電池パック。
【請求項5】
前記制御回路は、前記規定外落下があったと判断すると、前記電池パックに対する充電を停止させ、かつ、前記電池パックからの放電を許容することを特徴とする請求項1ないしいずれか一項記載の電池パック。
【請求項6】
前記制御回路は、前記規定外落下があったと判断すると、前記電池パックに対する充電および放電を停止させることを特徴とする請求項1ないしいずれか一項記載の電池パック。
【請求項7】
前記電池パックは、異常検出手段をさらに具備し、
前記制御回路は、前記規定外落下があったと判断した後、一定時間以内に前記異常検出手段が二次電池セルの状態異常を検知すると、前記電池パックに対する充電および放電を停止させることを特徴とする請求項ないしいずれか一項記載の電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池セルを内蔵した電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解液二次電池の一例として、リチウムイオン二次電池が知られている。リチウムイオン二次電池は、軽量、高容量であり、携帯電子機器用の電源として広く用いられている。非水電解液二次電池は、制御回路と接続され、電池パックを構成する。電池パックは、非水電解液二次電池からなる1つ以上の電池セルと制御回路とを備えている。
【0003】
電池セルは、外装体により被覆される。電池セルが物理的な衝撃を受けた場合、外装体に亀裂等が生じ、電池セルから非水電解液が漏液する場合がある。非水電解液が漏液すると、電池の充放電を適切に行うことができなくなる。
【0004】
電池セルが物理的な衝撃を受ける原因の多くは、電池パックの落下によるものである。例えば、電池パックをスマートホンやノートパソコンに接続して携帯電源として用いる場合などにおいて、机上から硬質の床面等に電池パックを落下させると、電池パックの仕様として規定された衝撃許容範囲を超えた大きな衝撃が加わることがある。このため、予め規定された衝撃許容範囲を超えた衝撃が加わる虞のある、規定外落下を検出する機能を電池パックに持たせることが好ましい。さらに、規定外落下を検出した際には、電池パックに生じる障害に対応する動作をさせることが望まれる。
【0005】
従来、機器等の落下を検出可能なものとして、例えば、特許文献1には、車両用蓄電池に加わる衝撃に対応して電流を遮断する、遮断器を備えた蓄電池が開示されている。また、特許文献2には、電気自動車に搭載される電池を想定し、電気自動車が衝突するなどによって加わった衝撃に対応して電流を遮断する、衝撃感応遮断装置を内蔵した電池が開示されている。また、特許文献3には、加速度センサによって衝撃を検出して、衝撃の加わった回数をカウントしたり、衝撃を検出すると電流を遮断したりするリチウム電池システムが開示されている。更に、特許文献4には、振動によって発生する電池のたわみを検出し、たわみが規定以上になると電池に繋がる回路を遮断する電池異常検出システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭49-067127号公報
【文献】特開平04-188573号公報
【文献】特開平11-040205号公報
【文献】特開2012-146447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1~3の発明では、衝撃を検出することは記載されているものの、機器の規定外の落下を判定する構成は開示されておらず、また規定外の落下に対応して行う保護動作なども開示されていない。また、特許文献4の発明は、電池のたわみは検出できるものの、規定外の落下に対応する構成などは開示されていない。
【0008】
本発明は、前述した状況に鑑みてなされたものであって、予め規定された衝撃許容範囲を超えた衝撃が加わる可能性がある規定外落下を検出し、規定外落下を検出した際に所定の処理を行うことが可能な電池パックを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の電池パックは、二次電池セルと、鉛直方向の加速度を検知可能な重力センサと、前記重力センサの出力信号を用いて落下状態を検知する検知回路と、前記検知回路の出力信号に基づいて前記二次電池セルの充放電電流を制御する制御回路と、を備えた電池パックであって、前記検知回路は、前記電池パックが落下状態にある落下時間を計測する機能を含み、前記検知回路は、前記重力センサで検知した鉛直方向の加速度が予め定めた閾値に達したときに、落下状態であると判断し、前記制御回路は、前記落下時間が規定時間以上続いたときに、衝突前に、衝撃許容範囲を超えた衝撃が加わる可能性がある規定外落下があったと判断することを特徴とする。
【0011】
また、本発明では、前記電池パックは、外部表示機能をさらに具備し、前記制御回路は、前記規定外落下があったと判断すると、前記外部表示機能を用いて警告表示を行うことが好ましい。
【0012】
また、本発明では、前記電池パックは、外部通信機能をさらに具備し、前記制御回路は、前記規定外落下があったと判断すると、この判断結果を前記外部通信機能を用いて、前記電池パックが接続されている機器に通知することが好ましい。
【0013】
また、本発明では、前記電池パックは、不揮発性メモリをさらに具備し、前記制御回路は、前記規定外落下の発生履歴を前記不揮発性メモリに記録することが好ましい。
【0014】
また、本発明では、前記制御回路は、前記規定外落下があったと判断すると、前記電池パックに対する充電を停止させ、かつ、前記電池パックからの放電を許容することが好ましい。
【0015】
また、本発明では、前記制御回路は、前記規定外落下があったと判断すると、前記電池パックに対する充電および放電を停止させることが好ましい。
【0016】
また、本発明では、前記電池パックは、異常検出手段をさらに具備し、前記制御回路は、前記規定外落下があったと判断した後、一定時間以内に前記異常検出手段が二次電池セルの状態異常を検知すると、前記電池パックに対する充電および放電を停止させることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、予め規定された衝撃許容範囲を超えた衝撃が加わる可能性がある規定外落下を検出し、規定外落下を検出した際に所定の処理を行うことが可能な電池パックを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態にかかる電池パックの斜視模式図である。
図2】本実施形態にかかる電池パックの斜視模式図である。
図3】本実施形態にかかる電池パックの回路部とその周辺の構造を模式的に示した模式図である。
図4】本発明の電池パックの規定外落下時の動作を段階的に示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の電池パックについて説明する。なお、以下に示す各実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0020】
なお、以下の説明において、規定外落下(規定外の落下)とは、例えば、製品としての電池パックの仕様に規定された耐衝撃性能(衝撃許容範囲)を超える衝撃が電池パックに加わる可能性のある電池パックの落下現象を示す。こうした規定外落下の条件は、落下高さ、衝突した部位、落下衝突面の材質などによって異なる。
【0021】
図1は、本実施形態にかかる電池パックの斜視模式図である。また、図2は、本実施形態にかかる電池パックの断面模式図である。
図1図2に示すように、本実施形態にかかる電池パック100は、電池セル10,10…、回路部20、重力センサ30、およびこれらを収容する筐体40を備える。図1では、内部構造を図示するため、筐体40を点線で図示している。
【0022】
(電池セル)
電池セル10は、非水電解液二次電池からなる。非水電解液二次電池は、リチウムイオンをキャリアとするリチウムイオン二次電池であることが好ましい。電池セル10は、正極と負極とセパレータと外装体とを備える。正極と負極とは、セパレータを挟んで対向配置される。外装体は、正極に接続される正極端子11及び負極に接続される負極端子12を除いて、正極、負極及びセパレータを被覆する。
【0023】
正極は、板状(膜状)の正極集電体に正極活物質層が設けられたものである。負極は、板状(膜状)の負極集電体に負極活物質層が設けられたものである。正極活物質層及び負極活物質層には、電解液が含浸されている。この電解液を介して、正極と負極とはイオンの授受を行う。
【0024】
電解液は、非水系の電解液(以下、非水電解液という)である。非水電解液は、非水溶媒に電解質が溶解されている。非水溶媒としては、有機カーボネート溶媒が好ましい。有機カーボネート溶媒は、環状カーボネートと鎖状カーボネートの少なくとも一方を用いることが好ましい。環状カーボネートと鎖状カーボネートの割合は体積にして1:9~1:1にすることが好ましい。
【0025】
環状カーボネートとしては、電解質を溶媒和することができるものを用いることができる。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びブチレンカーボネートなどを用いることができる。
【0026】
鎖状カーボネートは、環状カーボネートの粘性を低下させることができる。例えば、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートが挙げられる。
その他、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタンなどを混合して使用してもよい。
【0027】
電解質は、リチウム塩、マグネシウム塩等の金属塩を用いることができる。電解質は、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)等のフッ素原子を含む金属塩であることが、特に好ましい。
【0028】
本実施形態では、電池セル10が3つ直列に接続されている。これにより1つの電池セル10の起電力の3倍の電位差(電圧)の電流が出力される。筐体40には、回路部20を介して電池セル10から電力を取り出したり、また、電池セル10に対して充電を行ったりする入出力コンセント50が形成されている。
【0029】
(重力センサ)
重力センサ30は、例えば、筐体40の内面に固定され、後述する検知回路22に電気的に接続される。重力センサ30は、加速度センサであり、振動方式、光学方式、半導体方式などが挙げられる。本実施形態では、調整や補修などのメンテナンスの手間の掛からない半導体方式の加速度センサを重力センサ30として用いている。
【0030】
半導体方式の加速度センサの加速度検出方式としては、例えば、静電容量検出方式、ピエゾ抵抗方式、熱検知方式などが挙げられる。静電容量検出方式は、梁構造で支えられた微小な可動部が、例えば落下などの重力変化によって僅かに湾曲し、静電容量の変化として検出されるものである。
【0031】
ピエゾ抵抗方式は、シリコン半導体の製造技術によって、円環状の薄いダイヤフラムを形成し、錘をこのダイヤフラムで支持することで加速度、例えば重力変化による変位をピエゾ抵抗素子によって検出するものである。
熱検知方式は、ヒーター等によってケース内に熱対流を発生させ、加速度によってこの熱対流が変化したことを熱抵抗で検出するものである。
【0032】
このような重力センサ30は、電池パック100に加わる鉛直方向の加速度を示す重力センサ30の出力信号V1を、後述する検知回路22(図3参照)に向けて出力する。
【0033】
(筐体)
筐体40は、電池セル10,10…や回路部20を収容する。図1に示す筐体40は、3つ積層された電池セル10,10…を格納している。筐体40内に格納される電池セル10,10…の数は、この場合に限られず、1つでも、2つ又は4つ以上でもよい。
【0034】
筐体40を構成する材料は特に問わないが、絶縁性を有することが好ましい。筐体40を介した電流の流れを避けることができる。
【0035】
(回路部)
図3は、本実施形態にかかる電池パックの回路部とその周辺の構造を模式的に示した模式図である。
回路部20は、制御回路21と、この制御回路21に接続される検知回路22、充放電回路23、外部通信回路24、外部表示回路25、および不揮発性メモリ26とを備えている。
【0036】
検知回路22は、例えば集積回路チップなどから構成され、電池パック100が落下状態にある落下時間を計測し、この落下時間を検知回路22の出力信号V2として制御回路21に向けて出力する。具体的には、検知回路22は、重力センサ30で検知した重力が予め定めた閾値に達したときに、落下状態であると判断する。
【0037】
例えば、重力センサ30の出力信号V1のうち、鉛直方向における加速度が重力加速度(9.8m/s)以上、即ち重力がほぼ0である状態が、予め閾値として検知回路22に記憶されている。検知回路22は、重力センサ30の出力信号V1が、この閾値以上である場合、電池パック100が落下状態にあると判断する。そして、検知回路22は、電池パック100が落下状態にあると判断した時に、落下状態の継続時間を測定し、この測定値を電池パック100の落下時間とする。検知回路22は、この落下時間を検知回路22の出力信号V2として制御回路21に向けて出力する。
【0038】
制御回路21は、例えばCPUやメモリチップなどから構成され、電池パック100の落下時間が規定時間以上続いたときに規定外落下があったと判断し、電池パック100に対する安全処理(後述)を行う。
【0039】
具体的には、制御回路21は、予め不揮発性メモリ26に記録されている落下に係る規定時間(閾値)を参照する。制御回路21は、検知回路22の出力信号V2が入力されると、この出力信号V2の値、即ち、電池パック100の落下時間と、落下に係る規定時間とを比較する。そして、制御回路21は、落下時間が規定時間以上になると、規定外落下があったと判断する。
【0040】
電池パック100の鉛直方向の加速度が0の状態から自由落下状態である重力加速度(9.8m/s)に変化すると、電池パック100は、例えば机上から床面に向かって自由落下した状態を示している。この時の落下時間から、落下高さを算出し、電池パック100に加わる大よその衝撃を知ることができる。前述した、予め不揮発性メモリ26に記録される規定時間は、例えば、電池パック100の仕様のうち、耐衝撃性の範囲よりも大きな衝撃を電池パック100に対してもたらす落下高さの下限値に相当する落下時間とすればよい。
【0041】
不揮発性メモリ26は、例えば、フラッシュメモリなどから構成され、規定外落下の発生履歴を記録(記憶)する。具体的には、制御回路21は、規定外落下があったと判断すると、不揮発性メモリ26に対して、例えば、落下した時間の情報(あるいはこれを落下高さに換算した値)、落下が発生した日時の情報、さらに、その後に制御回路21が行った安全処理(後述)の情報などの落下情報を記録させる。また、不揮発性メモリ26は、前述した落下に係る規定時間(閾値)を記憶していることが好ましい。こうした不揮発性メモリ26に記録された落下情報は、例えば、外部通信回路(外部通信機能)24を介して外部から参照することができる。
【0042】
充放電回路23は、例えば、集積回路チップやスイッチング素子なとから構成され、電池セル10,10…と入出力コンセント50との間に電気的に接続される。充放電回路23は、入出力コンセント50から入力される電力によって電池セル10,10…に対して充電を行う制御や、電池セル10,10…から入出力コンセント50を介して外部機器Mに電力を供給する(放電)制御を行う。
【0043】
また、充放電回路23は、制御回路21から出力される放電遮断信号や充電遮断信号に基づいて、充電回路や放電回路をそれぞれ独立して開閉(オン―オフ)させることができる。具体的には、制御回路21は、規定外落下があったと判断すると、安全処理の1つとして、充放電回路23を構成する充電回路のスイッチを開いて、電池セル10,10…に対する充電を停止させる。また、制御回路21は、規定外落下があったと判断すると、安全処理の1つとして、充放電回路23を構成する放電回路のスイッチを開いて、電池セル10,10…の放電を停止させる。
【0044】
外部通信回路(外部通信機能)24は、例えば、有線LANチップや無線LANチップなどから構成され、電池パック100によって電力が供給される外部機器M(例えばノートパソコン等)に対して制御回路21から通知を行う。具体的には、制御回路21は、電池パック100の規定外落下があったと判断すると、安全処理の1つとして、電池パック100に接続された外部機器Mに対して、充放電回路23を介した放電を遮断したことを通知する。
【0045】
こうした通知を受け取った外部機器M、例えばノートパソコンは、電池パック100の規定外落下により電力供給が停止されたことを把握できるので、実行中のプログラムのデータ保存を自動的に行うなどの動作をさせることができる。また、外部機器Mが表示モニタを備える場合、外部通信回路24から、放電を遮断したことが通知されると、表示モニタに給電遮断を表示させるようにすることもできる。なお、外部通信回路(外部通信機能)24は、有線LANや無線LAN以外にも、例えば、Bluetooth(登録商標)など、他の通信方式を用いるものであっても良く、通信方式が限定されるものでは無い。
【0046】
また、外部通信回路(外部通信機能)24に例えばパソコンなどを接続すれば、制御回路21を介して不揮発性メモリ26に記録された落下情報を参照することもできる。
【0047】
外部表示回路(外部表示機能)25は、例えば、モニタ出力チップやモニタ接続ポートなどから構成され、表示モニタDを接続することができる。制御回路21は、電池パック100の規定外落下があったと判断し、充放電回路23に対して放電遮断や充電遮断を行うと、安全処理の1つとして、外部表示回路25を介して接続された表示モニタDに対して、放電遮断実行や充電遮断実行などの警告表示を行わせる。
【0048】
なお、小型のLEDパネルを電池パック100の筐体40の外面に設けて、このLEDパネルに警告表示を行わせることで、電池パック100自体に警告表示機能を持たせる構成も好ましい。
【0049】
また、電池パック100は、外部通信回路24、外部表示回路25、および不揮発性メモリ26を全て備えている必要は無く、これらの構成を1つないし2つ備えていても良く、特にこれらの構成を備えなくても良い。
【0050】
以上の様な構成の本発明の電池パックの規定外落下時の動作を、図1~4を参照して説明する。
図4は、本発明の電池パックの規定外落下時の動作を段階的に示したフローチャートである。
なお、以下の説明では、例えば、ノートパソコン(外部機器)と、このノートパソコンに電力を供給する本発明の電池パックとを机上に載置して使用し、使用中に誤って電池パックを床面に落下させた場合を想定する。
【0051】
電池パック100は、充放電回路23から入出力コンセント50を介してノートパソコン(外部機器)に電力を供給している。また、電池パック100は、検知回路22によって、常に鉛直方向の加速度が監視されている(S0)。
【0052】
例えば、ノートパソコン(外部機器)に対して給電中の電池パック100が一定の高さ位置から落下すると、電池パック100の筐体40の内側に固定された重力センサ30は、例えば、鉛直方向の加速度を検出し、検知回路22に向けて、鉛直方向の加速度の値である出力信号V1を出力する(S1)。
【0053】
検知回路22は、重力センサ30の出力信号V1が入力されると、出力信号V1の値と予め定めた閾値とを比較する(S2)。閾値は、例えば重力加速度(9.8m/s)に設定されている。そして、重力センサ30の出力信号V1、即ち、鉛直方向の加速度の値が閾値である重力加速度(9.8m/s)以上になると、検知回路22は、電池パック100が落下状態であると判断する。
【0054】
検知回路22は、出力信号V1が閾値を超えている時間、つまり電池パック100の落下時間を計測する(S3)。そして、検知回路22は、制御回路21に向けて、電池パック100の落下時間の値を示す出力信号V2を出力する(S4)。
【0055】
制御回路21は、検知回路22から出力信号V2が入力されると、不揮発性メモリ26に記録されている落下に係る規定時間(閾値)を参照する。そして、出力信号V2の値、即ち、電池パック100の落下時間と、落下に係る規定時間とを比較する(S5)。そして、制御回路21は、落下時間が規定時間以上になると、規定外落下があったと判断する。
【0056】
制御回路21は、電池パック100の規定外落下があったと判断すると、充放電回路23に向けて、放電遮断信号や充電遮断信号を出力する(S6)。充放電回路23は、制御回路21から放電遮断信号や充電遮断信号が入力されると、充電回路や放電回路をオフにする。これにより、電池パック100からノートパソコン(外部機器)への電力供給が停止される(S7)。
【0057】
また、制御回路21は、電池パック100の規定外落下があったと判断すると、不揮発性メモリ26に対して落下情報を記録(記憶)させる(S8)。
【0058】
また、制御回路21は、電池パック100の規定外落下があったと判断すると、外部通信回路(外部通信機能)24からノートパソコンに対して放電遮断や充電遮断の通知を行う(S9)。こうした外部通信回路24から通知を受け取ったノートパソコンは、電池パック100の規定外落下により電力供給が停止されたことを把握できるので、例えば、実行中のプログラムのデータ保存を自動的に行うなどの動作を行い、安全にノートパソコンの動作を終了させることができる。
【0059】
また、制御回路21は、電池パック100の規定外落下があったと判断すると、外部表示回路(外部表示機能)25に接続された表示モニタDに放電遮断実行や充電遮断実行などの警告表示を行わせる(S10)。
【0060】
以上のように、本発明によれば、電池パック100の鉛直方向の加速度を重力センサ30で測定して、制御回路21で落下状態を検出し、制御回路21によって落下状態にある時間を測定することで、予め規定された衝撃許容範囲を超えた衝撃が加わる可能性がある規定外落下を検出することが可能になる。
【0061】
そして、電池パック100が規定外落下をすると、制御回路21は電池セル10の放電や充電を遮断させるので、規定外落下の衝撃によって例えば電池パック100が破損した状態で放電や充電が継続される懸念がなく、電池パック100の安全性をより一層高めることができる。
【0062】
また、電池パック100が規定外落下をすると、外部通信回路(外部通信機能)24を介して、電池パック100に接続された外部機器に対して通知を行うことで、外部機器を安全に停止させることが可能になる。
【0063】
次に、上述した電池パックの規定外落下時の動作について、他の動作例を説明する。
図4に示す動作例では、制御回路21は、電池パック100の規定外落下があったと判断すると、充放電回路23を介して電池セル10の放電および充電をそれぞれ遮断している構成としているが、別な構成例として、制御回路21は、電池パック100の規定外落下があったと判断すると、充放電回路23を介して電池セル10の充電だけを遮断し、放電は許容する構成にしても良い。
【0064】
こうした構成は、例えば、電池パック100を接続する外部機器として、例えば、移動体や、人が装着する各種機器など、電池パック100が規定外落下した際に、電力供給を予期せずに遮断することが好ましくない機器を対象にした電池パックの構成として好ましく適用することができる。
【0065】
次に、本発明の電池パックの他の実施形態を説明する。
本発明の電池パックの他の実施形態として、上述した図1図3に示す電池パック100の構成に加えて、異常検出手段をさらに具備することができる。異常検出手段としては、例えば、電池セル10の電流、電圧を検出するセンサで検出された電流値または電圧値が、所定の閾値を超えていると制御回路21が判断した時(異常電圧、異常電流)に、充放電回路23を介して電池セル10の放電および充電をそれぞれ遮断する構成が挙げられる。
【0066】
また、異常検出手段としては、例えば、電池パック100の筐体40に漏液センサを設け、電池セル10から漏液が検出された際には、充放電回路23を介して電池セル10の放電および充電をそれぞれ遮断する構成が挙げられる。
【0067】
また、異常検出手段としては、例えば、電池セル10に膨張検出センサを設け、電池セル10の膨張が検出された際には、充放電回路23を介して電池セル10の放電および充電をそれぞれ遮断する構成が挙げられる。
【0068】
また、異常検出手段としては、例えば、電池セル10に温度センサを設け、この温度センサで検出された温度が、所定の閾値を超えていると制御回路21が判断した時(温度異常)に、充放電回路23を介して電池セル10の放電および充電をそれぞれ遮断する構成が挙げられる。
【0069】
上述した異常検出手段は、制御回路21が電池パック100の規定外落下があったと判断した後、一定時間以内にこれら異常検出手段が電池セル10状態異常を検知した時に、電池セル10の放電および充電をそれぞれ遮断する。これにより、電池パック100の規定外落下が原因で生じた電流異常、電圧異常、電池セルの漏液、電池セルの膨張、電池セルの異常昇温によっても、電池セル10の放電および充電をそれぞれ遮断することができ、より一層、電池パック100の安全性を高めることができる。
【0070】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0071】
例えば、大気中での落下運動は厳密には空気抵抗を受けることから、空気抵抗は落下する物体の密度に反比例すること、下部表面積や速度に比例すること、形状や回転、落下時の気流によっても異なることを考慮し、鉛直方向の加速度の値の閾値を重力加速度(9.8m/s)から微調整をしても構わない。
【符号の説明】
【0072】
10…電池セル
20…回路部
21…制御回路
22…検知回路
23…充放電回路
24…外部通信回路
25…外部表示回路
26…不揮発性メモリ
30…重力センサ
40…筐体
100…電池パック
図1
図2
図3
図4