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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】蓄電素子及び蓄電素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/02 20060101AFI20220112BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20220112BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20220112BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20220112BHJP
   H01G 11/22 20130101ALI20220112BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20220112BHJP
【FI】
H01M4/02 Z
H01M4/04 A
H01M4/13
H01M4/139
H01G11/22
H01G11/86
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017566989
(86)(22)【出願日】2017-02-08
(86)【国際出願番号】 JP2017004646
(87)【国際公開番号】W WO2017138584
(87)【国際公開日】2017-08-17
【審査請求日】2020-01-14
(31)【優先権主張番号】P 2016024175
(32)【優先日】2016-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】團野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓
(72)【発明者】
【氏名】浜川 恵太
(72)【発明者】
【氏名】山根 久幸
(72)【発明者】
【氏名】植木 健一郎
【審査官】加藤 幹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/176161(WO,A1)
【文献】特開2015-76196(JP,A)
【文献】特開2006-147392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/
H01G 11/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板及び負極板を有する電極体を備える蓄電素子であって、
前記正極板または前記負極板は、
導電性の基材層と、
前記基材層上に形成された合材層と、
少なくとも一部が、前記合材層の端縁を含む部分である端縁部と前記基材層との境界上を含む範囲において、前記端縁部上から前記基材層上にわたって連続して形成されている絶縁層と、を有し、
前記絶縁層における、前記合材層の前記端縁部の上方には凹凸部が形成されており、
前記凹凸部は、前記絶縁層の上面において連続して配置された複数の凹部または凸部によって形成されておりかつ、前記合材層の前記端縁部における凹凸形状に沿って形成されている
蓄電素子。
【請求項2】
前記合材層は、複数の活物質粒子及びバインダを含有し、
前記絶縁層は、複数の粒子及びバインダを含有し、
前記複数の粒子の平均粒子径は、前記複数の活物質粒子の平均粒子径よりも小さい
請求項記載の蓄電素子。
【請求項3】
前記絶縁層に含有される前記粒子と前記バインダとの重量の比率は、80:20から95:5までのいずれかである
請求項記載の蓄電素子。
【請求項4】
請求項1記載の蓄電素子の製造方法であって、
前記絶縁層に、前記絶縁層の厚み方向と交差する方向から光を照射する光照射工程と、
前記光照射工程において照射される光によって前記凹凸部に生じる影の位置を用いて、前記合材層の前記端縁の位置を特定する特定工程とを含む
蓄電素子の製造方法。
【請求項5】
正極板及び負極板を有する電極体を備える蓄電素子であって、
前記正極板または前記負極板は、
導電性の基材層と、
前記基材層上に形成された合材層と、
少なくとも一部が、前記合材層の端縁を含む部分である端縁部上及び前記基材層上に連続して形成されている絶縁層と、を有し、
前記絶縁層における、前記合材層の前記端縁部の上方には凹凸部が形成されており、
前記絶縁層の前記凹凸部は、前記合材層の前記端縁部における凹凸形状に沿って形成されている
蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極板及び負極板を有する電極体を備える蓄電素子、並びに、蓄電素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン二次電池などの蓄電素子は、例えば、正極板、負極板、並びに、正極板及び負極板の間に配置されたセパレータが積層された電極体を有する。このような、正極板、負極板、及びセパレータが積層された構成を有する電極体に関し、従来、正極板と負極板との短絡防止に関する技術が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、正極板及び負極板中の少なくとも一つの電極活物質層の両端部に形成される突出部の少なくとも一つを覆いかぶせるように形成される絶縁層を含むリチウムイオン二次電池が開示されている。このリチウムイオン二次電池において,上記絶縁層は所定の形状の貫通ホールを含む。この構成により、絶縁層が形成された領域でも正極活物質層が反応に参加できることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-40878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば正極板の、合材層が形成されていない端部(活物質未塗工部)に絶縁層を形成する場合、絶縁層と合材層との間に隙間をつくらないことが、正極板及び負極板の間での短絡を防止する観点から重要である。そこで、合材層の端縁に沿って、精度よく絶縁層を形成することが望まれるが、正極板の長手方向の全域において、隙間なく絶縁層と合材層の端縁とを隣り合わせることは現実的には困難である。
【0006】
本発明は、上記従来の課題を考慮し、正極板及び負極板を有する電極体を備える蓄電素子であって、品質の高い蓄電素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る蓄電素子は、正極板及び負極板を有する電極体を備える蓄電素子であって、前記正極板または前記負極板は、導電性の基材層と、前記基材層上に形成された合材層と、少なくとも一部が、前記合材層の端縁を含む部分である端縁部上及び前記基材層上に連続して形成されている絶縁層と、を有し、前記絶縁層における、前記合材層の前記端縁部の上方には凹凸部が形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、正極板及び負極板を有する電極体を備える蓄電素子であって、品質の高い蓄電素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態に係る蓄電素子の外観を示す斜視図である。
図2図2は、実施の形態に係る蓄電素子の容器内に配置されている構成要素を示す斜視図である。
図3図3は、実施の形態に係る電極体の構成概要を示す斜視図である。
図4図4は、実施の形態に係る電極体の構成概要を示す断面図である。
図5図5は、実施の形態に係る正極合材層及び絶縁層の断面形状例を示す図である。
図6図6は、実施の形態に係る正極合材層及び絶縁層の構成例を示す図である。
図7図7は、実施の形態に係る蓄電素子の製造方法の一部を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願発明者らは、合材層の端縁にオーバーラップするように絶縁層を形成することで絶縁層と合材層との間の隙間をなくすことを検討した。しかしこの場合、例えば、絶縁層の透明度が低いことに起因して、合材層の端縁の位置の確認が困難となる場合がある。電極体が有する極板において、合材層が設計通りの位置及び範囲に形成されているか否かは、電極体の性能に大きく影響する。そのため、絶縁層の形成等の工程を経た後に、合材層の端縁の位置を確認することは、例えば電極体(電極体を備える蓄電素子)の品質管理の観点から重要である。
【0011】
本発明は、上記従来の課題を考慮し、正極板及び負極板を有する電極体を備える蓄電素子であって、品質の高い蓄電素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る蓄電素子は、正極板及び負極板を有する電極体を備える蓄電素子であって、前記正極板または前記負極板は、導電性の基材層と、前記基材層上に形成された合材層と、少なくとも一部が、前記合材層の端縁を含む部分である端縁部上及び前記基材層上に連続して形成されている絶縁層と、を有し、前記絶縁層における、前記合材層の前記端縁部の上方には凹凸部が形成されている。
【0013】
この構成によれば、極板(正極板または負極板、以下同じ)において、基材層上に形成される絶縁層の一部は合材層の端縁部を覆うように配置される。つまり、絶縁層の一部は合材層の端縁部にオーバーラップしている。そのため、比較的に容易な工程で、絶縁層と合材層との間の隙間をつくらずに絶縁層の形成を行うことができる。これにより、正極板と負極板との短絡の防止がより確実化される。
【0014】
さらに、絶縁層の、合材層の端縁部にオーバーラップしている部分には凹凸部が形成されている。そのため、例えば、絶縁層の厚み方向に交差する方向から絶縁層に光を照射した場合、当該オーバーラップしている部分に凹凸部による陰影が生じる。その結果、絶縁層が透明度の低い材料で形成されている場合であっても、絶縁層の端縁の確認が容易となる。例えば、絶縁層の収縮または剥離を防止するために、絶縁層の材料におけるバインダの割合を減らすことで絶縁層の透明度が低下した場合であっても、絶縁層の端縁の位置を確認することができる。
【0015】
このように、本態様に係る蓄電素子は、正極板及び負極板を有する電極体を備える蓄電素子であって、品質の高い蓄電素子である。
【0016】
また、本発明の一態様に係る蓄電素子において、前記絶縁層の前記凹凸部は、前記合材層の前記端縁部における凹凸形状に沿って形成されているとしてもよい。
【0017】
この構成によれば、例えば、樹脂を含む材料を合材層の端縁部に塗布することで、絶縁層の凹凸部が形成される。そのため、凹凸部の位置と端縁部の位置との一致度が高い。また、絶縁層を構成する材料が合材層の端縁部の凹凸に入り込んで硬化することで絶縁層が形成されるため、絶縁層と合材層の端縁部との剥離の抑制効果も奏される。
【0018】
また、本発明の一態様に係る蓄電素子において、前記合材層は、複数の活物質粒子及びバインダを含有し、前記絶縁層は、複数の粒子及びバインダを含有し、前記複数の粒子の平均粒子径は、前記複数の活物質粒子の平均粒子径よりも小さいとしてもよい。
【0019】
この構成によれば、合材層に含有される活物質粒子の径が比較的に大きいため、基材層に合材層を形成する工程を経るだけで、合材層の表面に比較的に大きな凹凸が形成される。その結果、合材層の上方に形成された凹凸部における凸の高さまたは凹の深さは、例えば視認可能な陰影を生じさせる程度の大きさとなる。
【0020】
また、本発明の一態様に係る蓄電素子において、前記絶縁層に含有される前記粒子と前記バインダとの重量の比率は、80:20から95:5までのいずれかであるとしてもよい。
【0021】
この構成によれば、例えば、絶縁層の剥がれ落ち等の、不具合の発生の可能性が低減される。
【0022】
また、本発明の一態様に係る蓄電素子の製造方法は、上記いずれかの態様に係る蓄電素子の製造方法であって、前記絶縁層に、前記絶縁層の厚み方向と交差する方向から光を照射する光照射工程と、前記光照射工程において照射される光によって前記凹凸部に生じる影の位置を用いて、前記合材層の前記端縁の位置を特定する特定工程とを含む。
【0023】
この方法によれば、絶縁層に、平行にまたは斜めから光を当てることで、絶縁層の下に存在する、合材層の端縁の位置が特定できる。つまり、絶縁層の一部が合材層の端縁部にオーバーラップするように絶縁層を形成することで、絶縁層と合材層との隙間における基材層の露出が防止された極板について、絶縁層が不透明な場合であっても、絶縁層に覆われた合材層の端縁の位置を効率よく特定することができる。従って、例えば電極体の製造工程において、合材層の形成が精度よく行われているか否か等を確認することができる。すなわち、本態様に係る蓄電素子の製造方法によれば、品質の高い蓄電素子を提供することができる。
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る蓄電素子について説明する。なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示したものではない。
【0025】
また、以下で説明する実施の形態は、本発明の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程の順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0026】
まず、図1及び図2を用いて、実施の形態に係る蓄電素子10の全般的な説明を行う。
【0027】
図1は、実施の形態に係る蓄電素子10の外観を示す斜視図である。図2は、実施の形態に係る蓄電素子10の容器内に配置されている構成要素を示す斜視図である。具体的には、図2は、蓄電素子10を、容器100の蓋体110と本体111とを分離して示す斜視図である。
【0028】
蓄電素子10は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池である。例えば、蓄電素子10は、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、またはプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)に適用される。なお、蓄電素子10は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。蓄電素子10は、使用者が充電をしなくても蓄えられている電気を使用できる一次電池であってもよい。また、蓄電素子10の形状に関しては、角型に限定されることなく、例えば円筒型などの他の形状であってもよい。
【0029】
図1に示すように、蓄電素子10は、容器100と、正極端子200と、負極端子300とを備えている。また、図2に示すように、容器100の内部には、正極集電体120と、負極集電体130と、電極体400とが収容されている。
【0030】
なお、蓄電素子10は、上記の構成要素の他、正極集電体120及び負極集電体130の側方に配置されるスペーサ、容器100内の圧力が上昇したときに当該圧力を開放するためのガス排出弁、または、電極体400等を包み込む絶縁フィルムなどを備えてもよい。また、蓄電素子10の容器100の内部には電解液(非水電解質)などの液体が封入されているが、当該液体の図示は省略する。なお、容器100に封入される電解液としては、蓄電素子10の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく、様々なものを選択することができる。
【0031】
容器100は、矩形筒状で底を備える本体111と、本体111の開口を閉塞する板状部材である蓋体110とで構成されている。また、容器100は、電極体400等を内部に収容後、蓋体110と本体111とが溶接等されることにより、内部を密封する構造を有している。なお、蓋体110及び本体111の材質は、特に限定されないが、例えばステンレス鋼、アルミニウム、またはアルミニウム合金など溶接可能な金属であるのが好ましい。
【0032】
電極体400は、正極板と負極板とセパレータとを備え、電気を蓄えることができる部材である。電極体400の詳細な構成については、図3等を用いて後述する。
【0033】
正極端子200は、正極集電体120を介して電極体400の正極と電気的に接続された電極端子である。負極端子300は、負極集電体130を介して電極体400の負極と電気的に接続された電極端子である。つまり、正極端子200及び負極端子300は、電極体400に蓄えられている電気を蓄電素子10の外部空間に導出し、また、電極体400に電気を蓄えるために蓄電素子10の内部空間に電気を導入するための金属製の電極端子である。また、正極端子200及び負極端子300は、電極体400の上方に配置された蓋体110に、絶縁性を有するガスケット(図示せず)を介して取り付けられている。
【0034】
正極集電体120は、電極体400の正極と容器100の本体111の壁面との間に配置され、正極端子200と電極体400の正極とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。
【0035】
負極集電体130は、電極体400の負極と容器100の本体111の壁面との間に配置され、負極端子300と電極体400の負極とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。
【0036】
具体的には、正極集電体120及び負極集電体130は、蓋体110に固定されている。また、正極集電体120は、電極体400の正極側端部に接合され、負極集電体130は、電極体400の負極側端部に接合されている。電極体400は、容器100の内部において、正極集電体120及び負極集電体130により、蓋体110から吊り下げられた状態で保持される。
【0037】
次に、以上のように構成された蓄電素子10が備える電極体400の構成について、図3を用いて説明する。
【0038】
図3は、実施の形態に係る電極体400の構成概要を示す斜視図である。なお、図3では、積層されて巻回された極板等の要素を一部展開して図示している。また、図3において符号Wが付された一点鎖線は、電極体400の巻回軸を表している。巻回軸Wは、極板等を巻回する際の中心軸となる仮想的な軸であり、本実施の形態では、電極体400の中心を通るX軸に平行な直線である。
【0039】
電極体400は、正極板410及び負極板420を有する電極体の一例である。本実施の形態では、図3に示すように、電極体400は、セパレータ450と、負極板420と、セパレータ430と、正極板410とがこの順に積層され、かつ、巻回されることで形成されている。また、図3に示すように、電極体400は、巻回軸Wと直交する方向(本実施の形態ではZ軸方向)に扁平な形状である。つまり、電極体400は、巻回軸Wの方向から見た場合に、全体として長円形状であり、長円形状の直線部分が平坦な形状となり、長円形状の曲線部分が湾曲した形状となる。このため、電極体400は、対向する一対の扁平部(巻回軸Wを挟んでZ軸方向で対向する部分)と、対向する一対の湾曲部(巻回軸Wを挟んでY軸方向で対向する部分)とを有している。
【0040】
本実施の形態において、正極板410は、アルミニウムからなる長尺帯状の金属箔(正極基材層411)の表面に、正極活物質を含む正極合材層414が形成されたものである。負極板420は、銅からなる長尺帯状の金属箔(負極基材層421)の表面に、負極活物質を含む負極合材層424が形成されたものである。正極活物質及び負極活物質の例については後述する。
【0041】
また、本実施の形態では、セパレータ430及び450は、樹脂からなる微多孔性のシートを基材として有している。
【0042】
このように構成された電極体400において、より具体的には、正極板410と負極板420とは、セパレータ430または450を介し、巻回軸Wの方向に互いにずらして巻回されている。そして、正極板410及び負極板420は、それぞれのずらされた方向の端部に、基材層の、活物質が塗工されていない部分である活物質未塗工部を有する。
【0043】
具体的には、正極板410は、巻回軸Wの方向の一端(図3ではX軸方向プラス側の端部)に、正極活物質が塗工されていない活物質未塗工部411aを有している。また、負極板420は、巻回軸Wの方向の他端(図3ではX軸方向マイナス側の端部)に、負極活物質が塗工されていない活物質未塗工部421aを有している。
【0044】
つまり、正極板410の露出した金属箔(活物質未塗工部411a)の層によって正極側端部が形成され、負極板420の露出した金属箔(活物質未塗工部421a)の層によって負極側端部が形成されている。正極側端部は正極集電体120と接合され、負極側端部は負極集電体130と接合される。本実施の形態では、これら接合の手法として、超音波接合が採用されている。なお、電極体400と正極集電体120及び負極集電体130との接合の手法として、超音波接合以外に、抵抗溶接またはクリンチ接合等の手法が採用されてもよい。また、蓄電素子10が備える電極体400の数は1には限定されず、2以上でもよい。
【0045】
以上のように構成された電極体400において、正極板410には、正極合材層414と活物質未塗工部411aとの境界を含む領域に絶縁層415が形成されている。絶縁層415は、バインダと無機粒子等の粒子とを含有する。つまり、正極板410は、正極基材層411及び正極合材層414に跨るように配置された絶縁層415を有しており、これにより、正極板410と負極板420との短絡防止の確実性が向上されている。以下、図4図6を用いて絶縁層415及びその周辺の構造についての説明を行う。
【0046】
図4は、実施の形態に係る電極体400の構成概要を示す断面図である。具体的には、図4では、図3のIV-IV断面における電極体400の正極側の一部が図示されている。図5は、正極合材層414及び絶縁層415の断面形状例を示す図であり、図6は、正極合材層414及び絶縁層415の構成例を示す図である。
【0047】
図4及び図5に示すように、本実施の形態に係る蓄電素子10は、正極板410及び負極板420を有する電極体400を備える。正極板410は、導電性の正極基材層411と、正極基材層411上に形成された正極合材層414と、少なくとも一部が、正極合材層414の端縁を含む部分である端縁部414a上、及び、正極基材層411上に連続して形成されている絶縁層415とを有する。
【0048】
このように、本実施の形態では、正極基材層411の正極合材層414から突出した部分(活物質未塗工部411a)の一部と正極合材層414の端縁部414aとを連続して覆うように、絶縁層415が形成されている。これにより、図4に示すように厚み方向(Z軸方向)で互いに重なる部分を有する活物質未塗工部411aと負極板420との電気的な接触の可能性が低減される。つまり、正極板410と負極板420との短絡がより確実に防止される。
【0049】
また、絶縁層415の一部が、正極合材層414の端縁にオーバーラップするように絶縁層415が形成されるため、絶縁層415を、正極合材層414との間の隙間を開けずに隣り合わせるような、高い精度が要求される工程は不要である。
【0050】
ここで、本実施の形態では、例えば図5に示すように、正極合材層414の端縁部414aは、絶縁層415によって覆われるため、端縁部414aに含まれる端縁(図5における正極合材層414の左端)の位置を確認することは困難となる。
【0051】
もちろん、絶縁層415が含有するバインダ(例えば透明度の高い樹脂)の割合を上げることで、絶縁層415に覆われた正極合材層414の端縁を視認可能とすることは可能である。しかしながらこの場合、バインダの含有割合が高いことに起因して絶縁層415が収縮し、その結果、正極板410の変形、または、絶縁層415の剥離等の不具合が生じやすくなる。
【0052】
従って、上記不具合の発生の可能性を抑制するためには、絶縁層415に含有されるバインダの割合を低くすることが好ましい。つまり、絶縁層415に含有される無機粒子等の粒子の割合を増加させることが好ましい。例えば、絶縁層415におけるアルミナまたはシリカの粒子の含有割合が大きい場合、絶縁層415は全体的に白濁した状態となり、絶縁層415の外部から、正極合材層414の端縁の位置を確認することは実質的には困難である。
【0053】
しかしながら、本実施の形態では、例えば図5に示すように、絶縁層415における、正極合材層414の端縁部414aの上方には凹凸部415aが形成されている。凹凸部415aは、並んで配置された複数の凹または凸によって形成された部分であり、斜めまたは側方から光が照射されることで複数の凹または凸による陰影が現れる。そのため、凹凸部415aにより生じる陰影を利用して、絶縁層415に覆われた正極合材層414の端縁の位置を確認することができる。従って、変形または剥離等の不具合が生じ難い絶縁層415を有し、かつ、所期の設計通りに正極合材層414が形成された電極体400を得ることができる。なお、正極合材層414の端縁の位置の確認手法については図7を用いて後述する。
【0054】
また、絶縁層415の凹凸部415aは、例えば、微小な金属片等の異物が引っ掛かりやすい形状である。そのため、絶縁層415は、電極体400の内方への異物の移動を抑制する部材としても機能することができる。
【0055】
さらに、絶縁層415は、凹凸部415aを有することで表面積が増加するため、電解液がしみ込みやすい。これにより、例えば、絶縁層415が存在することによる電解液の電極体400へのしみ込み量の低下が抑制される。
【0056】
また、本実施の形態では、絶縁層415の凹凸部415aは、正極合材層414の端縁部414aにおける凹凸形状に沿って形成されている。つまり、図5に示すように、正極合材層414の端縁部414aの表面は凹凸形状であり、この上から、バインダを含む材料が塗布または貼付等されることで、端縁部414aの表面の凹凸形状に沿った凹凸部415aを有する絶縁層415が形成される。
【0057】
従って、凹凸部415aの端縁部414aに対する位置精度が高い。例えば、図5における凹凸部415aの左端の位置と、正極合材層414の端縁(端縁部414aの左端)の位置との、X軸方向における一致度が高い。そのため、正極合材層414の端縁の位置を精度よく確認することができる。また、絶縁層415の材料が正極合材層414の端縁部414aの凹凸に入り込んだ状態で、絶縁層415が端縁部414aに固定されるため、例えば、絶縁層415の剥離の抑制効果も奏される。
【0058】
ここで、本実施の形態に係る正極合材層414及び絶縁層415のそれぞれは、バインダと粒子とを含有する。具体的には、図6に模式的に示されるように、正極合材層414は、複数の活物質粒子414c及びバインダ414bを含有し、絶縁層415は、複数の粒子415c及びバインダ415bを含有する。また、複数の粒子415cの平均粒子径は、複数の活物質粒子414cの平均粒子径よりも小さい。
【0059】
すなわち、活物質粒子414cの径が比較的に大きいことにより、例えば、正極基材層411上に、複数の活物質粒子414c及びバインダ414bを含有する材料を塗布する工程を経るだけで、表面に複数の凹凸を有する正極合材層414が形成される。また、絶縁層415が含有する粒子415cの径は比較的に小さいため、正極合材層414の端縁部414aの上に絶縁層415が形成された場合に、絶縁層415の、正極合材層414の端縁部414aの上方に位置する部分の形状については、正極合材層414の活物質粒子414cの径の大きさによる影響が支配的となる。その結果、例えば、凹凸部415aにおける凸の高さまたは凹の深さは、視認可能な陰影を生じさせる程度の大きさとなる。
【0060】
正極合材層414に含有される活物質粒子414cの平均粒子径は、例えば十数ミクロンメートル(μm)程度であり、絶縁層415に含有される粒子415cの平均粒子径は、例えば1μm以下である。つまり、簡単にいうと、正極合材層414に含有される活物質粒子414cは、絶縁層415に含有される粒子415cよりも十倍以上大きい。
【0061】
なお、絶縁層415が含有する粒子415c及びバインダ415bの種類及びサイズの具体例は以下の通りである。絶縁層415に含有される粒子415cとしては、平均粒子径(メジアン径(D50))が0.7±0.16μmであり、比表面積が4.5±0.5m2/gであるAl2O3が例示される。また、バインダ415bとしては、数平均分子量約50万のポリフッ化ビニリデン(PVDF)が例示される。
【0062】
ここで、絶縁層415が含有する粒子415cとバインダ415bとの重量の比率については所定の範囲内であることが好ましい。具体的には、バインダ415bの割合が20%より多くなると、例えば、絶縁層415が捲れて剥がれ落ちやすくなる。また、バインダ415bの割合が5%より小さいと、例えば、絶縁層415が粉々になりやすい。そのため、絶縁層415に含有される粒子415cとバインダ415bとの比率は、80:20から95:5までのいずれかであることが好ましい。本実施の形態では、絶縁層415に含有される粒子415cとバインダ415bとの重量の比率は、約90:10である。
【0063】
また、正極合材層414に活物質粒子414cとして含有される正極活物質としては、例えば、LiMO(Mは少なくとも一種の遷移金属を表す)で表される複合酸化物(LiCoO、LiNiO、LiMn、LiMnO、LiNiCo(1-y)、LiNiMnCo(1-y-z)、LiNiMn(2-y)など)、あるいは、LiMe(XO(Meは少なくとも一種の遷移金属を表し、Xは例えばP、Si、B、V)で表されるポリアニオン化合物(LiFePO、LiMnPO、LiNiPO、LiCoPO、Li(PO、LiMnSiO、LiCoPOFなど)から選択することができる。また、これらの化合物中の元素またはポリアニオンは一部他の元素またはアニオン種で置換されていてもよく、表面にZrO、MgO、Alなどの金属酸化物や炭素を被覆されていてもよい。さらに、ジスルフィド、ポリピロール、ポリアニリン、ポリパラスチレン、ポリアセチレン、ポリアセン系材料などの導電性高分子化合物、擬グラファイト構造炭素質材料などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの化合物は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0064】
また、絶縁層415が含有する粒子415cは例えば無機粒子である。この無機粒子としては、例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄、バリウムチタン酸化物、アルミナ-シリカ複合酸化物等の酸化物、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の窒化物、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウム等の難溶性イオン結晶、シリコン、ダイヤモンド等の共有結合性結晶、シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリンクレイ、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ベーマイト、アパタイト、ムライト、スピネル、オリビン等、または、これらを含む化合物等が挙げられる。また、上記の無機物は、SnO、スズ-インジウム酸化物(ITO)等の酸化物、カーボンブラック、グラファイト等の炭素質材料等の導電性粒子の表面を、電気絶縁性を有する材料(例えば、上記の電気絶縁性の無機粒子を構成する材料)で表面処理することで、電気絶縁性を持たせた粒子であってもよい。なお、絶縁層415が含有する粒子415cは、有機系の粒子であってもよい。
【0065】
また、絶縁層415が含有するバインダは、水系または非水系のバインダであり、正極合材層414が含有するバインダは、例えば絶縁層415が含有するバインダと同じ極性のバインダである。例えば、絶縁層415が水系のバインダを含有する場合、正極合材層414も水系のバインダを含有する。また、絶縁層415が非水系のバインダを含有する場合、正極合材層414も非水系のバインダを含有する。
【0066】
ここで、水系バインダは、水に分散又は溶解するバインダである。水系バインダとしては、20℃において、水100質量部に対して1質量部以上溶解する水溶性バインダ(水に溶解する水系バインダ)が好ましい。例えば、水系バインダとしては、ポリエチレンオキサイド(ポリエチレングリコール)、ポリプロピレンオキサイド(ポリプロピレングリコール)、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリオレフィン、ニトリル-ブタジエンゴム、セルロースからなる群より選択された少なくとも1種が好ましく、ポリエチレンオキサイド(ポリエチレングリコール)、ポリプロピレンオキサイド(ポリプロピレングリコール)、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸からなる群より選択された少なくとも1種の水溶性バインダがより好ましい。
【0067】
また、非水系バインダは、水系バインダよりも水溶性が低いバインダ(溶剤系バインダ)である。非水系バインダとしては、20℃において、水100質量部に対して1質量部未満溶解するものが好ましい。例えば、非水系バインダとしては、PVDF、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、エチレンとビニルアルコールとの共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、セルロースとキトサンピロリドンカルボン酸塩との架橋重合体、キチン又はキトサンの誘導体などが挙げられる。キトサンの誘導体としては、キトサンをグリセリル化した高分子化合物、キトサンの架橋体などが挙げられる。
【0068】
また、正極合材層414が非水系バインダを含有する場合には、当該非水系バインダとしては、結着性に優れるという点、又は、電気抵抗が低いという点で、ポリフッ化ビニリデン、エチレンとビニルアルコールとの共重合体、ポリメタクリル酸メチルからなる群より選択された少なくとも1種が好ましい。
【0069】
なお、本実施の形態では、絶縁層415は、正極板410に備えられているが、正極板410に加えて、または正極板410に換えて、負極板420に絶縁層415が備えられてもよい。
【0070】
負極板420において負極基材層421上に形成された負極合材層424は、活物質粒子とバインダとを含有する。負極合材層424に活物質粒子として含有される負極活物質は、例えば、リチウム金属、リチウム合金(リチウム-アルミニウム、リチウム-鉛、リチウム-錫、リチウム-アルミニウム-錫、リチウム-ガリウム、及びウッド合金などのリチウム金属含有合金)の他、リチウムを吸蔵・放出可能な合金、炭素材料(例えば黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温焼成炭素、非晶質カーボンなど)、金属酸化物、リチウム金属酸化物(LiTi12など)、ポリリン酸化合物などが挙げられる。この中でも、特に黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素が好ましい。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0071】
また、負極合材層424が含有するバインダとしては、正極合材層414に用いられるバインダと同じものを採用することができる。
【0072】
次に、上記構成を有する電極体400の製造工程において、合材層(本実施の形態では正極合材層414)の端縁の位置を確認するための方法について、図7を用いて説明する。
【0073】
図7は、実施の形態に係る蓄電素子10の製造方法の一部を説明するための図である。具体的には、図7では、蓄電素子10に備えられる電極体400を製造する際に、正極合材層414の端縁の位置を確認するための方法が模式的に図示されている。
【0074】
本実施の形態に係る蓄電素子10の製造方法は、絶縁層415に、絶縁層415の厚み方向と交差する方向から光を照射する光照射工程と、光照射工程において照射される光によって凹凸部415aに生じる影の位置を用いて、正極合材層414の端縁の位置を特定する特定工程とを含む。
【0075】
例えば図7の(a)に示すように、正極板410の長手方向(Y軸方向)に沿って絶縁層415に光500を照射する。その結果、図7の(b)に示すように、絶縁層415を平面視した場合、絶縁層415は、陰影領域520と非陰影領域510とに明確に区別して認識される。なお、陰影領域520は、凹凸部415aにおける複数の凹または凸による陰影が観察される領域である。また、非陰影領域510は、ほぼ平坦であることでほぼ陰影が生じない領域である。
【0076】
従って、陰影領域520と非陰影領域510との境界の位置の特定(例えば、正極基材層411の左端から当該位置までの距離の計測)が容易である。また、当該位置は、絶縁層415に覆われた、正極合材層414の端縁の位置に一致(略一致も含む)する。そのため、正極合材層414の端縁の位置の特定(基準位置からの距離の測定など)が容易に行える。
【0077】
これにより、絶縁層415を、その一部を正極合材層414とオーバーラップさせて形成することが可能であり、かつ、正極合材層414が精度よく形成されているか否かの確認が容易に行える。また、絶縁層415の材料として、バインダの含有割合が比較的に小さな材料(透明度が低い材料)を選択することができ、これにより、正極板410の変形または絶縁層415の剥離等が抑制される。従って、本実施の形態に係る蓄電素子10の製造方法によれば、品質の高い蓄電素子10を得ることができる。
【0078】
なお、上記光照射工程及び特定工程は、例えば、正極基材層411上に、正極合材層414及び絶縁層415の形成を行った後であって、正極板410等の要素を巻回する前に行われる。また、上記光照射工程及び特定工程は、正極板410の長手方向の全域について行われてもよく、所定の長さごとに行われてもよい。
【0079】
また、絶縁層415が白濁していることは必須ではないが、絶縁層415が、シリカ等の粒子を含有することで白濁している場合、凹凸部415aにおいて生じる陰影の明瞭性という観点から有利である。
【0080】
また、光500の照射方向は、正極板410の長手方向(Y軸方向)に平行である必要はない。しかし、光500の照射が、正極合材層414の活物質未塗工部411a側の端縁の特定を目的とすることを考慮すると、光500の照射方向は、X軸方向に直交し、かつ、厚み方向(Z軸方向)と交差する方向であることが好ましい。
【0081】
また、正極合材層414の、絶縁層415がオーバーラップしていない領域(図7の(b)における合材露出領域530)にも、表面に凹凸があることにより陰影が生じる。しかし、正極合材層414が黒っぽい色であるため、合材露出領域530は全体として黒っぽく、コントラストが乏しい領域として視認される。そのため、絶縁層415に光500を照射することで、正極合材層414の端縁の位置を特定するとともに、絶縁層415の、活物質未塗工部411aとは反対側(X軸方向マイナス側)の端縁の特定も行うこともできる。これにより、例えば、絶縁層415の短手方向の幅(X軸方向の幅)が設計通りの値であるか等を確認することができる。
【0082】
また、絶縁層415に光500を照射することによる、正極合材層414の端縁の位置の特定(上記の特定工程)は、人が視認することで行ってもよく、また、カメラ等の光学装置を用いることで、自動的に行われてもよい。
【0083】
(他の実施の形態)
以上、本発明に係る蓄電素子及びその製造方法について、実施の形態に基づいて説明した。しかしながら、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を上記実施の形態に施したものも、あるいは、上記説明された複数の構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0084】
例えば、上記実施の形態では、図4等に示すように、絶縁層415は、正極合材層414については、活物質未塗工部411a側の端縁部414aのみを覆っているが、絶縁層415は、正極合材層414の全域(略全域を含む)を覆ってもよい。これにより、正極合材層414の全域において、負極板420との短絡防止の確実性がより向上する。
【0085】
つまり、絶縁層415は、少なくとも一部が、正極(または負極)合材層の端縁を含む部分である端縁部上、及び、正極(または負極)基材層上に連続して形成されていればよい。
【0086】
また、正極基材層411の、正極合材が塗布される面に、アンダーコート層等の、正極基材層411と正極合材層414との接着性を向上させる層を設けてもよい。負極板420についても同様に、負極基材層421の、負極合材が塗布される面に、アンダーコート層等の、負極基材層421と負極合材層424との接着性を向上させる層を設けてもよい。
【0087】
また、上記実施の形態では、正極合材層414は、絶縁層415と同じ極性のバインダを含有するとしたが、正極合材層414は、絶縁層415とは異なる極性のバインダを含有してもよい。
【0088】
また、蓄電素子10が備える電極体は巻回型である必要はない。蓄電素子10は、例えば平板状極板を積層した積層型の電極体を備えてもよい。また、蓄電素子10は、例えば、長尺帯状の極板を山折りと谷折りとの繰り返しによって蛇腹状に積層した構造を有する電極体を備えてもよい。いずれの場合であっても、正極板及び負極板がセパレータを介して積層された構造を有するため、正極板または負極板が、活物質未塗工部と合材層の端縁部とを覆う絶縁層を備えることで、正極板と負極板との短絡防止の確実性が向上される。また、絶縁層の、合材層の端縁部の上方に凹凸部が形成されていることで、上述のように、合材層の端縁の位置の確認を容易に行うことができる。
【0089】
また、上記実施の形態に記載された構成を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0090】
また、本発明は、上記説明された蓄電素子として実現することができるだけでなく、当該蓄電素子が備える電極体400としても実現することができる。また、本発明は、当該蓄電素子を複数備える蓄電装置としても実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの蓄電素子等に適用できる。
【符号の説明】
【0092】
10 蓄電素子
100 容器
110 蓋体
111 本体
120 正極集電体
130 負極集電体
200 正極端子
300 負極端子
400 電極体
410 正極板
411 正極基材層
411a、421a 活物質未塗工部
414 正極合材層
414a 端縁部
414b、415b バインダ
414c 活物質粒子
415 絶縁層
415a 凹凸部
415c 粒子
420 負極板
421 負極基材層
424 負極合材層
430、450 セパレータ
500 光
510 非陰影領域
520 陰影領域
530 合材露出領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7