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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】ボイラシステム
(51)【国際特許分類】
   F22B 35/00 20060101AFI20220112BHJP
   F22B 37/42 20060101ALI20220112BHJP
   F22B 37/38 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
F22B35/00 E
F22B37/42 Z
F22B37/38 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018008768
(22)【出願日】2018-01-23
(65)【公開番号】P2019128067
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】中島 正隆
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-195020(JP,A)
【文献】特開2003-130304(JP,A)
【文献】特開2002-013701(JP,A)
【文献】特開平7-12304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 35/00
F22B 37/42
F22B 37/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のボイラを含むボイラ群と、
前記ボイラ群において生成される蒸気を集合させる蒸気ヘッダと、
前記ボイラ群に含まれるボイラを制御する台数制御装置と、
を備えるボイラシステムであって、
前記台数制御装置は、
前記蒸気ヘッダの内部の蒸気圧であるヘッダ圧力値に基づいて、前記ボイラ群に含まれるボイラの燃焼状態を制御する燃焼制御部と、
前記ボイラシステムが軟水装置を備える場合、前記軟水装置の異常の有無に係るシステム状態、前記ボイラシステムが湿度センサを備える場合、前記湿度センサにより計測される湿度に係るシステム状態、及び前記ボイラシステムの全体負荷の状態の少なくとも1つを含む前記ボイラシステムに係る状態情報であるシステム状態情報を監視する状態情報監視部と、
前記状態情報監視部により監視される前記システム状態情報を前記ボイラに配信する配信部と、を備え、
前記ボイラは、
ローカル制御部を備え、
前記ローカル制御部は、
前記燃焼制御部からの燃焼指示に基づいて前記ボイラの燃焼状態を制御するローカル燃焼制御部と、
前記配信部から前記システム状態情報を受信する状態情報受信部と、
前記状態情報受信部により受信した前記システム状態情報に基づいて、前記ローカル燃焼制御部による燃焼制御を除く、蒸気の質・安定性を高めるための準備を可能とする前記ボイラ自身による制御変更を含む所定の制御を行うボイラ固有制御部と、
を備える、
ボイラシステム。
【請求項2】
軟水装置を備え、
前記状態情報監視部は、前記軟水装置の異常の有無に係るシステム状態情報を監視し、
前記配信部は、前記状態情報監視部により前記軟水装置の異常が検出された場合、前記軟水装置の異常を示すシステム状態情報を前記ボイラに配信し、
前記ボイラ固有制御部は、前記状態情報受信部により受信した前記軟水装置の異常を示すシステム状態情報に基づいて、濃縮ブロー量を増やすための濃縮ブロー弁の制御を行う、請求項1に記載のボイラシステム。
【請求項3】
前記軟水装置の異常の有無に係るシステム状態情報は、
前記軟水装置からの硬度漏れ信号出力の有無に係るシステム状態情報を含む、請求項2に記載のボイラシステム。
【請求項4】
湿度センサを備え、
前記状態情報監視部は、前記湿度センサにより計測される湿度に係るシステム状態情報を監視し、
前記配信部は、前記状態情報監視部により検出される湿度に係るシステム状態情報を前記ボイラに配信し、
前記ボイラ固有制御部は、前記状態情報受信部により受信した前記湿度に係るシステム状態情報に基づいて熱管理計算を行う、請求項1に記載のボイラシステム。
【請求項5】
前記状態情報監視部は、前記ボイラ群の燃焼状態が低負荷であるか又は高負荷であるかを示す負荷に係るシステム状態情報を監視し、
前記配信部は、前記状態情報監視部により検出される負荷に係るシステム状態情報を前記ボイラに配信し、
前記ボイラ固有制御部は、
前記ボイラが前記燃焼制御部からの燃焼停止指示に基づき燃焼停止した後、予め設定される所定時間連続パイロットを実行させているときに、前記負荷に係るシステム状態情報を前記状態情報受信部により受信した場合、前記負荷に係るシステム状態情報に基づいて、前記ボイラで行う連続パイロットの実行に係る制御を行う、請求項1に記載のボイラシステム。
【請求項6】
複数のボイラを含むボイラ群を備え、
前記ボイラ固有制御部は、
前記燃焼停止した後に所定時間連続パイロットを実行させているときに、前記状態情報受信部により受信した前記負荷に係るシステム状態情報が予め設定される所定の負荷になるか又は所定の負荷を下回る場合であって、かつ前記ボイラの燃焼順位が予め設定される所定の順位以下又は所定の順位を下回るとき、前記連続パイロットを停止させる、請求項5に記載のボイラシステム。
【請求項7】
前記ボイラ固有制御部は、
前記燃焼停止した後に所定時間連続パイロットを実行させているときに、前記状態情報受信部により受信した前記負荷に係るシステム状態情報が予め設定される所定の負荷になるか又は所定の負荷を上回る場合、前記ボイラで行う連続パイロットを延長させる、請求項5又は請求項6に記載のボイラシステム。
【請求項8】
前記ボイラはローカル薬注部を備え、
前記ボイラ固有制御部は、
前記ローカル燃焼制御部が前記燃焼制御部に対してブロー実行後の優先燃焼要求を出力しているときに、前記状態情報受信部により受信した前記負荷に係るシステム状態情報が予め設定される所定の負荷になるか又は所定の負荷を下回る場合であって、優先燃焼要求を燃焼制御部に対して出力しているボイラの蒸気量合計が予め設定される所定の蒸気量になるか又は所定の蒸気量を上回る場合、前記ローカル薬注部から薬注供給量を増やすことで腐食抑制を強化する制御を行う、請求項5に記載のボイラシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上のボイラを含むボイラ群を備えるボイラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボイラシステムにおいては、台数制御装置が、ボイラ群において生成される蒸気を集合させる蒸気ヘッダの内部の蒸気圧であるヘッダ圧力値に基づいて、ボイラ群に含まれる各ボイラの燃焼状態を制御している(特許文献1等参照)。より具体的には、各ボイラは、それぞれローカル制御部を備え、ローカル制御部は、台数制御装置の備える燃焼制御部からの燃焼指示を受信して、当該燃焼指示に基づいて当該ボイラの燃焼状態を制御している。他方、台数制御装置は、各ボイラ(ローカル制御部)から、当該ボイラの設定情報及び状態情報を受信することで、各ボイラの燃焼状態を管理している。
このように、従来、台数制御装置から各ボイラに対して、当該ボイラの燃焼動作に係る指示を送信しており、台数制御装置から各ボイラに対して、ボイラシステムの状態に係る情報を送信することはなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-034667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、台数制御装置がボイラシステムの状態に係る情報を各ボイラに送信し、各ボイラ側で蒸気の質・安定性を高めるための準備をさせることが効果的な局面がある。
例えば、従来、ボイラには軟水装置監視入力があり、軟水装置に係る状態を示す信号を直接取り込むことができることから、水質検査装置から各ボイラに対してそれぞれ配線をすることで、ボイラ台数分の信号を出力した。そうすることで、各ボイラは、水質検査装置からの信号を取り込むことができ、軟水装置の異常の場合には「硬度漏れ」の判定を行うことで、例えば濃縮ブロー量を増やすための濃縮ブロー弁の制御を実行することができる。しかしながら、複数のボイラを備える場合、当該水質検査装置からボイラ台数分の出力を用意して各ボイラに配線する必要があり、コスト的に課題があった。
【0005】
また、従来、ボイラは熱管理計算部を備え、当該ボイラの熱効率を計算して、当該ボイラの熱効率を例えば記憶部に記録している。特に、ボイラがエコノマイザを備え、エコノマイザの熱交換部において排ガスと給水との間で熱交換を行う場合、排ガスの潜熱の回収(すなわち、排ガスに含まれる水蒸気を結露させることによる熱の回収)が行われている。しかしながら、湿度によって結露する水分量が異なるため、ボイラの熱管理計算では、当該ボイラの設置環境における湿度を1つのパラメータとして入力する必要がある。この点、従来は、湿度の値として、例えば月別の絶対湿度が予め設定されたテーブルを参照して、各月の湿度を入力していたことから、算出される熱効率は湿度の変動による誤差を含んでいた。
【0006】
また、従来、台数制御装置からの燃焼停止指示に応じて燃焼停止した燃焼停止直後のボイラは、一律に、所定時間、連続パイロット燃焼を実行するように制御される。ここで、連続パイロット燃焼とは、燃料としてガスを用い、燃焼部としてパイロットバーナ及びメインバーナを有して構成されるガス焚きボイラにおいて、燃焼停止後にパイロットバーナを燃焼させることで、ボイラ11の内部における未燃ガスの滞留を防ぎ、燃焼指示を受けた場合に速やかにメインバーナを着火可能とされた状態を意味する。従来、このようなガス焚きボイラにおいては、台数制御装置から燃焼停止指示を受信した場合、燃焼停止後の所定期間(例えば5分間)、連続パイロット燃焼状態(すなわち、パイロットバーナを燃焼させた状態)を維持するように構成されている。
このため、全体負荷が予め設定される所定の低負荷であるか又は所定の低負荷を下回る場合であって、かつ当該燃焼停止ボイラの燃焼順位が予め設定される所定の順位であるか又は所定の順位を下回る場合であっても、所定時間、連続パイロットを実行することから、無駄な燃焼が発生している。逆に、全体負荷が予め設定される所定の高負荷であるか又は所定の高負荷を上回る場合であっても、前記ボイラで所定時間連続パイロットを実行させた後には、連続パイロットを停止させるため、仮に、連続パイロット停止後に燃焼指示を受信した場合、追従性に課題があった。
【0007】
また、従来、ボイラシステムにおける各ボイラは、缶体底部に沈殿したスケール等を除去するため、例えば燃焼時間の累積が所定の時間を越える等の所定条件が満たされると、ボイラを燃焼停止して、(全ブロー又は半ブロー等の)缶底ブロー操作が行われる。各ボイラに、缶底ブロー操作が行われると、缶底ブロー操作後のボイラ11内へ給水されたときの缶水は濃縮度が所定範囲以下に低下した状態となる。
他方、ボイラシステムにおける台数制御方法では、各ボイラに運転の優先順位が設定されている。このため、優先順位の低いボイラについては、優先順位の低いままでは、燃焼停止後に缶底ブロー(全ブロー又は半ブロー等)を行った場合、その後もしばらく燃焼停止状態が続くと、缶水のpH値も所定範囲よりも低い状態にあり、缶体の腐食の危険性が高くなる。
この点、従来、缶底ブロー操作を行ったボイラ(以下「ブロー後ボイラ」ともいう)は、ブロー後優先燃焼要求を台数制御装置に対して送信する方式が採用されている。こうすることで、ブロー後優先燃焼要求を受信した台数制御装置は、当該ボイラの運転の優先順位を上げることで、当該ボイラを優先的に燃焼運転できるようにする方式が採用されている。
より具体的には、ブロー後ボイラは、ブロー後優先燃焼要求を送信してから、台数制御装置により当該ボイラの優先順位が上げられ、その後台数制御装置から燃焼要求指示を受信してボイラの燃焼を開始して缶水の濃縮度が所定範囲内に復帰するまでの間、台数制御装置に対してブロー後優先燃焼要求を送信するように構成される。そして、缶水の濃縮度が所定範囲内に復帰すると、ブロー後ボイラは、ブロー後優先燃焼要求の送信を停止することで、台数制御装置は、当該ボイラの運転の優先順位を元の設定優先順位に戻すことがなされている。ここで、全ブロー後のボイラは、高燃焼換算で例えば1時間程度燃焼させる必要がある。
しかしながら、ボイラシステムの全体負荷が低負荷状態にあり、さらに、優先燃焼要求ボイラ数が多い等の理由により、これらすべての優先燃焼要求ボイラの濃縮に必要な生成蒸気量の合計(以下「優先燃焼要求生成蒸気量」ともいう)が、所定の値を超える場合には、燃焼開始するまでの相当の時間を要する可能性があり、缶体の腐食の危険性が高くなる可能性があった。
【0008】
以上のような課題に鑑み、本発明は、台数制御装置から、ボイラシステムに係る状態情報であるシステム状態情報を各ボイラに配信することで、台数制御装置からシステム状態情報を受信した各ボイラは、ボイラ自身で制御変更を行うことで、蒸気の質・安定性を高めるための準備を行うことを可能とするボイラシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、1つ以上のボイラを含むボイラ群と、前記ボイラ群において生成される蒸気を集合させる蒸気ヘッダと、前記ボイラ群に含まれるボイラを制御する台数制御装置と、を備えるボイラシステムであって、前記台数制御装置は、前記蒸気ヘッダの内部の蒸気圧であるヘッダ圧力値に基づいて、前記ボイラ群に含まれるボイラの燃焼状態を制御する燃焼制御部と、前記ボイラシステムに係る状態情報であるシステム状態情報を監視する状態情報監視部と、前記状態情報監視部により監視される前記システム状態情報を前記ボイラに配信する配信部と、を備え、前記ボイラは、ローカル制御部を備え、前記ローカル制御部は、前記燃焼制御部からの燃焼指示に基づいて前記ボイラの燃焼状態を制御するローカル燃焼制御部と、前記配信部から前記システム状態情報を受信する状態情報受信部と、前記状態情報受信部により受信した前記システム状態情報に基づいて、前記ローカル燃焼制御部による燃焼制御を除く、前記ボイラの所定の制御を行うボイラ固有制御部と、を備える、ボイラシステムに関する。
【0010】
前記ボイラシステムは、軟水装置を備え、前記状態情報監視部は、前記軟水装置の異常の有無に係るシステム状態情報を監視し、前記配信部は、前記状態情報監視部により前記軟水装置の異常が検出された場合、前記軟水装置の異常を示すシステム状態情報を前記ボイラに配信し、前記ボイラ固有制御部は、前記状態情報受信部により受信した前記軟水装置の異常を示すシステム状態情報に基づいて、濃縮ブロー量を増やすための濃縮ブロー弁の制御を行うことが好ましい。
【0011】
前記軟水装置の異常の有無に係るシステム状態情報は、前記軟水装置からの硬度漏れ信号出力の有無に係るシステム状態情報を含むことが好ましい。
【0012】
前記ボイラシステムは、湿度センサを備え、前記状態情報監視部は、前記湿度センサにより計測される湿度に係るシステム状態情報を監視し、前記配信部は、前記状態情報監視部により検出される湿度に係るシステム状態情報を前記ボイラに配信し、前記ボイラ固有制御部は、前記状態情報受信部により受信した前記湿度に係るシステム状態情報に基づいて熱管理計算を行うことが好ましい。
【0013】
前記状態情報監視部は、前記ボイラ群の燃焼状態が低負荷であるか又は高負荷であるかを示す負荷に係るシステム状態情報を監視し、前記配信部は、前記状態情報監視部により検出される負荷に係るシステム状態情報を前記ボイラに配信し、前記ボイラ固有制御部は、前記ボイラが前記燃焼制御部からの燃焼停止指示に基づき燃焼停止した後、予め設定される所定時間連続パイロットを実行させているときに、前記負荷に係るシステム状態情報を前記状態情報受信部により受信した場合、前記負荷に係るシステム状態情報に基づいて、前記ボイラで行う連続パイロットの実行に係る制御を行うことが好ましい。
【0014】
前記ボイラ固有制御部は、前記燃焼停止した後に所定時間連続パイロットを実行させているときに、前記状態情報受信部により受信した前記負荷に係るシステム状態情報が予め設定される所定の負荷になるか又は所定の負荷を下回る場合であって、かつ前記ボイラの燃焼順位が予め設定される所定の順位であるか又は所定の順位を下回るとき、前記連続パイロットを停止させることが好ましい。
【0015】
前記ボイラ固有制御部は、前記燃焼停止した後に所定時間連続パイロットを実行させているときに、前記状態情報受信部により受信した前記負荷に係るシステム状態情報が予め設定される所定の負荷になるか又は所定の負荷を上回る場合、前記ボイラで行う連続パイロットを延長させることが好ましい。
【0016】
前記ボイラはローカル薬注部を備え、前記ボイラ固有制御部は、前記ローカル燃焼制御部が前記燃焼制御部に対してブロー実行後の優先燃焼要求を出力しているときに、前記状態情報受信部により受信した前記負荷に係るシステム状態情報が予め設定される所定の負荷になるか又は所定の負荷を下回る場合であって、優先燃焼要求を燃焼制御部に対して出力しているボイラの蒸気量合計が予め設定される所定の蒸気量になるか又は所定の蒸気量を上回る場合、前記ローカル薬注部から薬注供給量を増やすことで腐食抑制を強化する制御を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、台数制御装置からシステム状態情報を受信した各ボイラが、ボイラ自身で制御変更を行うことで、蒸気の質・安定性を高めるための準備を行うことを可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のボイラシステムの基本構成の概要を示す図である。
図2】本発明の台数制御装置の制御部及びボイラ11のローカル制御部の機能を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[基本形態]
以下、本発明のボイラシステムの好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。まず、本発明のボイラシステムの基本構成について説明する。その後、実施例を説明する。図1にボイラシステムの基本構成の概要を示す。
ボイラシステム1は、図1に示すように、ボイラ装置10と、給水タンク30と、負荷機器40と、台数制御装置としての制御部50と、を主に備えている。また、ボイラシステム1は、これらの機器を接続し、蒸気又は水が流通する複数のラインを備える。具体的には、ボイラシステム1は、ラインとして、蒸気供給ラインL1と、ドレン回収ラインL2と、給水ラインL6と、注水ラインL7と、ブローラインL8と、を主に備えている。
また、ボイラシステム1には、例えば台数制御装置としての制御部50又はその近傍に湿度センサ91が配置されている。なお、湿度センサ91の設置位置は、台数制御装置としての制御部50又はその近傍に限られない。例えば、燃焼空気の湿度が必要なことから、ボイラの燃焼空気取り込み口(又は送風機)近傍にある事が望ましい。
【0020】
ボイラ装置10は、図1に示すように、複数の貫流ボイラ11と、これらの貫流ボイラ11で生成された蒸気が集合される蒸気ヘッダ12と、貫流ボイラ11と蒸気ヘッダ12とを連結する連結管13と、を備える。
【0021】
貫流ボイラ11は、内部に供給された給水を燃焼ガスにより加熱して蒸気を生成する。本実施形態では、貫流ボイラ11(複数の水管)には、給水タンク30に貯留された補給水が給水として供給される。本実施形態では、ボイラ装置10は、4台の貫流ボイラ11を備える。なお、ボイラ装置10が備える貫流ボイラ11の台数は4台に限られない。1台以上任意の台数でもよい。
また、貫流ボイラ11は、ローカル制御部15を備える。ローカル制御部の詳細については、後述する。
【0022】
図1に示すように、貫流ボイラ11で生成された蒸気は、連結管13を通って蒸気ヘッダ12に供給される。蒸気ヘッダ12は、貫流ボイラ11で生成された蒸気を貯留し、負荷機器40に供給する。蒸気ヘッダ12には、蒸気ヘッダ12の内部の蒸気圧であるヘッダ圧力値を測定するための圧力センサ(図示せず)が配置される。圧力センサにより測定されるヘッダ圧力値に基づいて、ボイラ群に含まれる各貫流ボイラ11の燃焼状態が制御される。
負荷機器40は、貫流ボイラ11で生成された蒸気を熱源として利用し、加熱対象物との間で熱交換を行う。
【0023】
給水タンク30には、給水ラインL6を介して直接、貫流ボイラ11に供給される補給水を貯留する。給水タンク30には、例えば注水ラインL7から軟水化処理、純水処理等を行い、硬度が取り除かれた補給水が導入されるとともに、貫流ボイラ11により生成された蒸気が負荷機器40で利用されることで凝縮して生じた凝縮水(ドレン)がドレン回収ラインL2を介して回収される。
ドレン回収ラインL2には、スチームトラップ21、及び逆止弁22が配置される。スチームトラップ21は、ドレン回収ラインL2における負荷機器40の下流側に配置され、負荷機器40において発生した凝縮水(ドレン)を排出し、かつ、蒸気の排出を防ぐ。逆止弁22は、スチームトラップ21の下流側に配置され、ドレン回収ラインL2において凝縮水(ドレン)が負荷機器40側に逆流することを防ぐ。
【0024】
蒸気供給ラインL1は、蒸気ヘッダ12と負荷機器40とを接続し、ボイラ装置10(貫流ボイラ11)で生成された蒸気を負荷機器40に供給する。
【0025】
給水ラインL6は、給水タンク30と複数の貫流ボイラ11とを接続する。給水ラインL6は、貫流ボイラ11に対して、給水タンク30に貯留された補給水を直接供給する。
給水ラインL6の上流側の端部は、給水タンク30の下部に接続される。また、給水ラインL6の下流側は、複数の貫流ボイラ11のそれぞれに接続されるように分岐している。給水ラインL6には、各貫流ボイラ11に対応して、給水ポンプ61、及び給水ポンプ方向の流れを阻止する逆止弁62が配置される。給水タンク30内に貯留された給水を対応する各貫流ボイラ11に送り出すための給水ポンプ61は、給水ラインL6における分岐部分よりも下流側に配置され、複数の貫流ボイラ11に対応して複数設けられる。
より具体的には、貫流ボイラ11には、内部の水位を検知するための水位検出器(図示せず)が個別に配置されている。この水位検出器は、対応する給水ポンプ61に対して水位情報を伝達可能に設定されており、各給水ポンプ61は、当該水位情報に基づいて、対応する貫流ボイラ11内の水位が一定の範囲内に維持されるよう、オン-オフ制御されるように構成される。
なお、給水ラインL6の給水ポンプ61よりも上流側(貫流ボイラ側)に、各貫流ボイラ11に対して個別にローカル薬注部としての薬注部63を設けてもよい。薬注部63は、例えば防食を強化する(すなわち腐食抑制を強化する)ため、ローカル制御部15により制御され、給水に注入される例えば防食剤等の薬剤(腐食抑制剤)の薬注量を調節することができる。
【0026】
注水ラインL7には、軟水装置71、軟水装置監視部73、及び脱酸素装置72がこの順に配置される。注水ラインL7は、水道水や地下水などの原水を補給水として給水タンク30に供給する。軟水装置71は、例えばナトリウム型強酸性陽イオン交換樹脂により処理し、原水中に含まれる硬度分をナトリウムイオンに置換して軟水に変換するためのものである。また、脱酸素装置72は、軟水装置71で得られた軟水中に含まれる溶存酸素を機械的に除去するためのものである。
軟水装置監視部73は軟水装置71の異常の有無又は硬度漏れ等を監視し、制御部50に通信可能に接続され、軟水装置71の異常の有無又は硬度漏れ等に係る情報を提供する。
【0027】
ブローラインL8には、濃縮ブロー弁81が設けられている。ボイラ11は、ボイラ11の燃焼時間の累積時間が予め設定された所定時間に達する毎に、濃縮ブロー弁81を開状態として、給水量に対して所定の濃縮ブロー率分(例えば10%)の缶水を排出する濃縮ブローを行う。なお、ボイラ11は、後述するように、軟水装置71の異常により軟水の供給ができなくなったとき又は硬度漏れが発生したとき、各ボイラ11自身で濃縮ブローを増やすための変更制御を行うように構成される。
【0028】
台数制御装置としての制御部50は、図2に示すように、燃焼制御部501と、状態情報監視部502と、配信部503と、を備える。
【0029】
燃焼制御部501は、ヘッダ圧力値に基づいてボイラ群に含まれる各ボイラ11の燃焼状態を制御する。なお、ヘッダ圧力値に基づいてボイラ群に含まれる各ボイラ11の燃焼状態を制御する構成については、当業者にとって公知であり、詳細な説明は省略する。
【0030】
状態情報監視部502は、ボイラシステムに係る状態であるシステム状態を監視する。より具体的には、状態情報監視部502は、例えば、軟水装置71の異常の有無に係るシステム状態、台数制御装置としての制御部50又はボイラの燃焼空気取り込み口(又は送風機)等の燃焼空気の湿度を測定可能に取り付けられる湿度センサにより計測される湿度に係るシステム状態、及びボイラ群の燃焼状態が低負荷であるか又は高負荷であるかを示す負荷に係るシステム状態の少なくとも1つを含む監視を行う。システム状態の監視の詳細については、後述の各実施例において説明する。
なお、監視対象とするシステム状態はこれらに限定されない。必要に応じて、適宜、監視対象とするシステム状態を追加してもよい。
【0031】
配信部503は、状態情報監視部502により監視されるシステム状態に係る情報(以下「システム状態情報」という)をボイラ11に配信する。台数制御装置としての制御部50とローカル制御部15とは、ネットワークを介して通信可能に接続することができる。ネットワーク構成は有線、無線を問わない。また、制御部50とローカル制御部15とは、接続インタフェースを直接接続する構成としてもよい。
【0032】
貫流ボイラ11は、図1に示すようにローカル制御部15を備える。
ローカル制御部15は、図2に示すように、ローカル燃焼制御部151と、状態情報受信部152と、ボイラ固有制御部153と、を備える。
ローカル燃焼制御部151は、制御部50(具体的には燃焼制御部501)からの燃焼指示に基づいて当該ボイラの燃焼状態を制御する。
状態情報受信部152は、制御部50(具体的には配信部503)からシステム状態情報を受信する。
ボイラ固有制御部153は、状態情報受信部152により受信したボイラシステム1に係るシステム状態情報に基づいて、ローカル燃焼制御部151による燃焼制御を除く、当該ボイラの所定の制御を行う。ここで、所定の制御としては、以下に説明する各制御(濃縮ブロー制御、熱管理計算、連続パイロット制御、薬注供給量制御等)が挙げられる。なお、制御部50からの指示があった場合には、制御部50からの指示が優先される。ボイラ固有制御部153による制御は、制御部50から指示されていない範囲内においてなされる。
【0033】
[濃縮ブロー制御]
軟水装置71の異常を示すシステム状態情報を制御部50から受信した場合、ボイラ固有制御部153は、濃縮ブロー量を増やすための濃縮ブロー弁81の制御を行うことができる。ここで、軟水装置71の異常を示すシステム状態情報は、軟水装置71からの硬度漏れ信号出力の有無に係るシステム状態情報を含んでもよい。これにより、軟水装置71の異常等により、軟水の供給が不可となった場合に、ボイラ自身で当該ボイラの濃縮ブロー率を増加させるように制御変更を行うことで、缶水の濃縮を抑制し、スケールの付着を防止することが可能となる。
【0034】
[熱管理計算]
湿度に係るシステム状態情報を制御部50から受信した場合、ボイラ固有制御部153は、当該湿度に基づいて熱管理計算を行うことができる。これにより、従来は、例えば、予め設定された月別絶対湿度テーブルに基づいて熱管理計算を行っていたが、より正確に熱管理計算を行うことが可能となる。
【0035】
[連続パイロット制御]
ボイラ11が制御部50(燃焼制御部501)からの燃焼停止指示に基づき燃焼停止した後、予め設定される所定時間連続パイロットを実行させているときに、負荷に係るシステム状態情報を受信した場合、ボイラ固有制御部153は、当該システム状態情報に基づいて、ボイラ11で行う連続パイロットの実行に係る制御を行うことができる。
より具体的には、ボイラ11が燃焼停止した後に所定時間連続パイロットを実行させているときに、負荷に係るシステム状態情報が予め設定される所定の負荷になるか又は所定の負荷を下回る場合であって、かつ当該ボイラ11の燃焼順位が予め設定される所定の順位になるか又は所定の順位を下回るとき、ボイラ固有制御部153は、連続パイロットを停止させる制御を行うことができる。逆に、ボイラ11が燃焼停止した後に所定時間連続パイロットを実行させているときに、負荷に係るシステム状態情報が予め設定される所定の負荷になるか又は所定の負荷を上回るとき、ボイラ固有制御部153は、連続パイロットを延長させる制御を行うことができる。
これにより、全体負荷が低負荷状態の場合、燃焼停止した後に所定時間連続パイロットを実行している燃焼停止ボイラが連続パイロットを停止することで、損失を低減することが可能となる。逆に、全体負荷が高負荷状態のとき、燃焼停止した後に所定時間連続パイロットを実行している燃焼停止ボイラは連続パイロットを延長することで、追従性を向上させることが可能となる。
【0036】
[薬注供給量制御]
ボイラ11(ローカル燃焼制御部151)が制御部50(燃焼制御部501)に対してブロー実行後の優先燃焼要求を出力しているときに、負荷に係るシステム状態情報が、予め設定される所定の負荷になるか又は所定の負荷を下回ることを示すとともに、優先燃焼要求を制御部50(燃焼制御部501)に対して出力しているボイラ11の蒸気量合計が予め設定される所定の蒸気量になるか又は所定の蒸気量を上回る場合、ボイラ固有制御部153は、薬注部63から、例えば防食剤等の薬剤(腐食抑制剤)の薬注供給量を増やすことで腐食抑制を強化する制御を行うことができる。
これにより、当該ボイラ11の腐食抑制を強化するとともに、優先燃焼時間を短くすることができ、それにより、優先燃焼要求を出力しているボイラの燃焼を早くローテーションすることが可能となる。
以上、本発明のボイラシステムの基本構成について説明した。
次に、具体例として挙げた各システム状態情報及び当該システム状態情報を受信した際の、ボイラ固有制御部153の具体的な制御内容について説明する。
【0037】
[実施形態1]
軟水装置71の異常の有無に係るシステム状態情報又は硬度漏れを示すシステム状態情報を受信した場合のボイラ固有制御部153の動作について説明する。
図1に示すように、軟水装置監視部73は、台数制御装置としての制御部50と通信可能に接続される。こうすることにより、制御部50(状態情報監視部502)が、軟水装置監視部73から軟水装置71の異常の有無に係るシステム状態情報又は硬度漏れを示すシステム状態情報を取得し、制御部50(配信部503)から各ボイラ11に対して当該システム状態情報を配信することができる。これにより、例えば水質検査装置としての軟水装置監視部73からボイラ台数分の出力を用意して各ボイラ11に配線する必要がなく、設備的にもコスト的にも効果的である。
軟水装置71の異常の有無に係るシステム状態情報又は硬度漏れを示すシステム状態情報を受信した際の、ボイラ固有制御部153の具体的な制御内容について説明する前に、軟水処理及び濃縮ブローについて簡単に説明する。
【0038】
[軟水処理]
一般に、原水中には硬度成分が含まれており、原水をそのままボイラに使用するとスケールの堆積による水管の伝熱阻害や焼損等のトラブルを引き起こすために、予め軟化処理を行う必要がある。具体的には、硬度成分がごく少量でも残留していれば、缶水が濃縮されて硬度成分の濃度が溶解度を超えて過飽和になると、スケールとして水管に付着することになる(すなわち、スケールになる硫酸カルシウムや炭酸カルシウムは温度上昇と共に溶解度が減少するので、過飽和になりスケールとして付着しやすくなる)。このため、ボイラ給水は、軟水化処理を行い、硬度を取り除く処理を行った水を使用している。これにより、ボイラ給水中には、カルシウム,マグネシウム等の硬度成分が存在しないようにすることができる。
【0039】
[濃縮ブロー]
ボイラでは運転を続けると、給水に含まれる不純物(硬度成分、有機物等)が濃縮され、やがてキャリーオーバー及び高濃度の塩化物イオンによる腐食、スケール付着などの障害の原因となる。このため、予め、給水量に対する濃縮ブロー率([濃縮ブロー量]/[給水量])を設定しておき、給水量に対して濃縮ブロー率分の缶水を排出する濃縮ブローを行うことで、濃縮度が過度に高くなることを防止している。また、濃縮ブロー後はボイラの運転により、缶水を所定の濃縮度以上に濃縮させることによって、缶水のpH値等を所定範囲に維持し、腐食を防止するようにしている。
ここで、濃縮ブロー率は、ボイラの運転により、缶水の水質を水質管理の目標範囲に維持するように、給水の成分等、ボイラ装置10の設置環境に応じて設定される値であり、ボイラ装置10の設置にあたって一旦設定されれば、大きな環境変動が無い限り、そのまま運用される。一例として、濃縮ブロー率のデフォルト値を10%と設定することができる。
【0040】
軟水装置71は、たとえば、障害や使用者が再生剤を補給し忘れるなどして再生が不十分となり、硬度分がボイラ給水中へ漏洩する状態,いわゆる硬度漏れを起こすこともありうる。この場合、缶水の硬度が過度に高くなって硬度分が析出し、水管へのスケール付着が起きるおそれがある。このため、硬度漏れが起きても、缶水の硬度が過度に高くなることを防止し、硬度分の析出に起因するボイラ缶体へのスケール付着を防止するために、ボイラ固有制御部153は、当該ボイラ11の濃縮ブロー率を増加させるように制御することで、缶水の濃縮を抑制し、スケールの付着を防止する。
【0041】
より、具体的には、ボイラ固有制御部153は、例えばボイラ給水の硬度に対して、濃縮ブロー率および濃縮ブロー弁81の開弁時間を対応させたテーブルを備え、硬度漏れを示すシステム状態情報の示す硬度検出値から当該テーブルに基づいて、缶水中の硬度分が析出せず、なおかつ無駄な缶水を排出することがないような濃縮ブロー率および濃縮ブロー弁81の開弁時間を算出し、濃縮ブロー弁81の開弁時間を調節することにより、濃縮ブロー量を増やすように調節するようにしてもよい。
以上により、例えば、軟水装置71の異常により軟水の供給ができなくなったとき又は硬度漏れが発生したとき、台数制御装置としての制御部50は、軟水装置の異常の有無に係るシステム状態情報又は硬度漏れを示すシステム状態情報を各ボイラ11に配信する。これにより、ボイラ11自身で当該ボイラの濃縮ブロー率を増加させるように制御変更を行うことで、缶水の濃縮を抑制し、スケールの付着を防止することが可能となる。
【0042】
[実施形態2]
次に、湿度センサ91により測定される湿度情報であるシステム状態情報を受信した場合のボイラ固有制御部153の動作について説明する。
図1に示すように、湿度センサ91は台数制御装置としての制御部50又はその近傍(ボイラ装置10又はその近傍でもよい)に配置され、制御部50(状態情報監視部502)が湿度センサ91により計測される湿度を1つのシステム状態情報として取得し、制御部50(配信部503)が各ボイラ11に対して当該システム状態情報を配信するように構成される。
これにより、各ボイラ11は、当該ボイラ11の設置環境における測定湿度に基づいて、より正確に当該ボイラの熱効率を計算して、当該ボイラの熱効率を記録することが可能となる。
【0043】
[実施形態3]
燃焼停止したボイラ11が連続パイロット燃焼実行中に、負荷に係るシステム状態情報を受信した場合のボイラ固有制御部153の動作について説明する。
ボイラ固有制御部153の動作を説明する前に、負荷に係るシステム状態情報について簡単に説明する。
【0044】
[負荷に係るシステム状態情報]
台数制御装置としての制御部50がボイラ11に対して送信する負荷に係るシステム状態情報は、例えば、以下の情報A及び情報Bを含む。
情報A:制御部50から燃焼要求指示を出しているボイラ11の蒸気量の合計(以下「現在生成蒸気量」ともいう)、及び情報B:制御部50が制御対象とする全てのボイラの生成可能な最大蒸気量の合計(以下「最大生成蒸気量」ともいう)。
ボイラ固有制御部153は、制御部50から情報A及び情報Bを受信した場合、次のようにボイラシステム1が低負荷状態であるか、又は高負荷状態であるかを判断することができる。
【0045】
ボイラ固有制御部153は、A/B(すなわち、現在生成蒸気量の最大生成蒸気量に対する割合)を計算することで、A/Bが予め設定された第1の閾値であるか又は第1の閾値未満である場合に、ボイラシステム1が低負荷であり、A/Bが予め設定された第2の閾値であるか又は第2の閾値を超えている場合に、ボイラシステム1が高負荷であると判断してもよい。
ここで、0%<第1の閾値<第2の閾値<100%とする。例えば、第1の閾値として10%、第2の閾値として90%を設定してもよい。なお、これに限定されない。例えば、第1の閾値として20%以下の数値、第2の閾値として60%以上の数値を設定してもよい。
なお、制御部50は、情報A(現在生成蒸気量)及び情報B(最大生成蒸気量)をボイラ11に対して送信する替わりに、制御部50において、例えば(現在生成蒸気量の最大生成蒸気量に対する割合)に基づいて判断した結果である、ボイラシステム1の低負荷又は高負荷情報Cを送信してもよい。また、現在生成蒸気量の最大生成蒸気量に対する割合そのものを情報Cとしてもよい。
【0046】
また、上記A-Cとは別に、制御部50は、ボイラ11(特に、燃焼停止ボイラ)に対して燃焼要求を指示する順番(以下「燃焼順位」ともいう)及び/又は燃焼要求を指示する際の条件となる生成蒸気量の閾値(以下「生成蒸気量閾値」ともいう)を含む情報Dをシステム状態情報として送信する。すなわち、燃焼順位とは、ボイラシステム1の負荷が上昇したときに制御部50が新たに燃焼要求指示を出す燃焼停止ボイラ11を選択する際の燃焼要求順番を示す。また、ボイラシステム1の生成蒸気量が生成蒸気量閾値になるか又は生成蒸気量閾値を上回る場合に、制御部50が新たに燃焼停止ボイラを選択して燃焼要求指示を行うことを意味する。
例えば、燃焼停止状態の制御対象ボイラa、ボイラb、ボイラcがあった場合、負荷が上昇した場合に、ボイラシステム1の生成蒸気量がs1を超えると、ボイラaに対して燃焼要求指示を出し、その後ボイラシステム1の生成蒸気量がs2を超えると、ボイラbに対して燃焼要求指示を出し、さらにボイラシステム1の生成蒸気量がs3を超えると、ボイラcに対して燃焼要求指示を出す場合、制御部50は、ボイラaに対しては燃焼順位1及び/又は生成蒸気量閾値s1を含むシステム状態情報を、ボイラbに対しては燃焼順位2及び/又は生成蒸気量閾値s2を含むシステム状態情報を、ボイラcに対しては燃焼順位3及び/又は生成蒸気量閾値s3を含むシステム状態情報を、それぞれ送信する。
なお、情報Dに含まれるボイラシステム1の生成蒸気量閾値として、生成蒸気量の最大生成蒸気量に対する割合を採用してもよい。
【0047】
次に、燃焼停止したボイラ11が連続パイロット燃焼実行中に、負荷に係るシステム状態情報を受信した場合のボイラ固有制御部153の動作について説明する。
前述したように、従来、ガス焚きボイラにおいては、台数制御装置としての制御部50から燃焼停止指示を受信した場合、燃焼停止後の所定期間(例えば5分間)、連続パイロット燃焼状態(すなわち、パイロットバーナを燃焼させた状態)を維持するように構成されている。
しかしながら、全体負荷が低負荷状態であるか又は高負荷状態であるかに関わらず、また燃焼停止された当該ボイラの「燃焼順位」の如何に関わらず、一律に所定期間連続パイロット燃焼状態を維持することは、必ずしも効率的ではない。
【0048】
このため、ボイラ固有制御部153は、ボイラ11が燃焼停止した後に所定時間連続パイロットを実行させているときに、状態情報受信部152により受信した負荷に係るシステム状態情報が予め設定される所定の負荷になるか又は所定の負荷を下回る場合(すなわち、低負荷の場合)であって、かつボイラ11の燃焼順位が予め設定される所定の順位以下又は所定の順位を下回るとき(すなわち、燃焼順位が低い場合)、当該ボイラ11の連続パイロットを停止させるように構成される。なお、「ボイラ11の燃焼順位が予め設定される所定の順位以下又は所定の順位を下回る」ことを判定する替わりに、当該ボイラ1が、制御部50により新たに燃焼開始ボイラとして選択され燃焼要求指示を受けるための条件である「ボイラシステム1の生成蒸気量が生成蒸気量閾値になるか又は生成蒸気量閾値を上回る」こと、又は「ボイラシステム1の生成蒸気量の最大生成蒸気量に対する割合が所定の閾値になるか又は所定の閾値を上回る」ことを判定するようにしてもよい。
【0049】
例えば、前述した例で、ボイラ11が燃焼停止した後に所定時間(5分間)連続パイロットを実行させているときに、状態情報受信部152により受信した負荷に係るシステム状態情報が低負荷状態(現在生成蒸気量の最大生成蒸気量に対する割合が10%以下)を示す場合であって、当該ボイラ11は、現在生成蒸気量の最大生成蒸気量に対する割合が50%を超えるときに、燃焼要求指示が出されるものである場合、ボイラ固有制御部153は、自発的に連続パイロットを停止させる。
【0050】
また、例えば、ボイラ11が燃焼停止した後に所定時間(5分間)連続パイロットを実行させているときに、状態情報受信部152により受信した負荷に係るシステム状態情報が低負荷状態(現在生成蒸気量の最大生成蒸気量に対する割合が10%以下)を示す場合であって、当該ボイラ11の燃焼順位が2番目以降である場合、ボイラ固有制御部153は、自発的に連続パイロットを停止させるようにしてもよい。
このように、ボイラシステム1の全体負荷が低負荷状態のとき、連続パイロット燃焼状態にあるボイラ11であって燃焼順位が所定の順位以下又は所定の順位を下回るボイラ11は、自発的に連続パイロットを停止させることで、損失を低減することができる。
【0051】
逆に、ボイラ固有制御部153は、ボイラ11が燃焼停止した後に所定時間連続パイロットを実行させているときに、状態情報受信部152により受信した負荷に係るシステム状態情報が予め設定される所定の負荷になるか又は所定の負荷を上回る場合(すなわち、高負荷の場合)、ボイラ11で行う連続パイロットを延長させるように構成される。
例えば、前述した例で、ボイラ11が燃焼停止した後に所定時間(5分間)連続パイロットを実行させているときに、状態情報受信部152により受信した負荷に係るシステム状態情報が高負荷状態(現在生成蒸気量の最大生成蒸気量に対する割合が90%以上)を示す場合、ボイラ固有制御部153は、自発的に連続パイロットを5分から例えば10分に延長させる。
このように、ボイラシステム1の全体負荷が高負荷状態のとき、連続パイロット燃焼状態にあるボイラ11は、自発的に連続パイロットを延長させることで、ボイラシステム1の負荷が増加した場合の追従性を向上させることができる。
【0052】
なお、ボイラ固有制御部153は、例えば5分から10分に延長させた後、依然として負荷に係るシステム状態情報が高負荷状態(生成蒸気量の最大生成蒸気量に対する割合が90%以上)を示す場合、ボイラ固有制御部153は、自発的に連続パイロットをさらに延長(例えば10分から15分に)させるように構成してもよい。
【0053】
[実施形態4]
缶底ブロー後の優先燃焼要求ボイラが存在するときに、低負荷に係るシステム状態情報を受信した場合のボイラ固有制御部153の動作について説明する。
前述したように、ボイラシステム1の全体負荷が低負荷状態にあり、さらに、優先燃焼要求ボイラ数が多い等の理由により、これらすべての優先燃焼要求ボイラの濃縮に必要な生成蒸気量の合計(優先燃焼要求生成蒸気量)が、所定の値を超える場合には、燃焼開始するまでの相当の時間を要する可能性があり、缶体の腐食の危険性が高くなる可能性がある。
このため、ボイラシステム1の全体負荷が低負荷状態にあり、優先燃焼要求生成蒸気量が所定の値を超えている場合、ボイラ固有制御部は、当該ボイラ11に対して個別に設置された薬注部63から、例えば防食剤等の薬剤(腐食抑制剤)の薬注供給量を増やすことで、防食を強化する(すなわち腐食抑制を強化する)制御を行う。そうすることで、各ブロー後ボイラの優先燃焼時間を短くすることができ、ブロー後ボイラの燃焼をより早くローテーションすることが可能となり、缶体の腐食の危険性が高くなる可能性を防止することができる。例えば、ブロー後ボイラが3台とした場合、濃縮時間を早めるための薬注を供給することにより、例えば1時間燃焼させる必要のあった優先燃焼時間を例えば40分と短縮することが可能となり、2台目以降の優先燃焼を早める等、ブロー後ボイラの優先燃焼を早くローテーションすることが可能となる。
【0054】
より具体的には、台数制御装置としての制御部50は、ボイラ11に対して送信する負荷に係るシステム状態情報として、前述した情報A及び情報B(又は情報C)に加えて、情報E:すべての優先燃焼要求ボイラの優先燃焼に必要な生成蒸気量の合計(優先燃焼要求生成蒸気量)を含むように構成される。なお、優先燃焼要求生成蒸気量の替わりに、優先燃焼要求生成蒸気量の最大生成蒸気量に対する割合を採用してもよい。
【0055】
ボイラ固有制御部153は、ボイラ11がブロー実行後の優先燃焼要求を制御部50に対して出力しているときに、状態情報受信部152により受信した負荷に係るシステム状態情報が予め設定される所定の負荷になるか又は所定の負荷を下回る場合(すなわち、低負荷の場合)であって、優先燃焼要求を制御部50に対して出力しているボイラの優先燃焼に必要な生成蒸気量の合計(優先燃焼要求生成蒸気量)が予め設定される所定の蒸気量になるか又は所定の蒸気量を上回る場合、当該ボイラ11に対して個別に設置された薬注部63を介して、防食を強化する(すなわち腐食抑制を強化する)制御を行う。なお、「優先燃焼要求生成蒸気量が予め設定される所定の蒸気量になるか又は所定の蒸気量を上回る」ことを判定する替わりに、当該ボイラ1が、制御部50により新たに燃焼開始ボイラとして選択され燃焼要求指示を受けるための条件である「優先燃焼要求生成蒸気量の最大生成蒸気量に対する割合が所定の閾値になるか又は所定の閾値を上回る」ことを判定するようにしてもよい。
【0056】
例えば、前述した例で、ボイラ11がブロー実行後の優先燃焼要求を制御部50に対して出力しているときに、状態情報受信部152により受信した負荷に係るシステム状態情報が低負荷状態(現在生成蒸気量の最大生成蒸気量に対する割合が10%以下)を示す場合であって、優先燃焼要求生成蒸気量の最大生成蒸気量に対する割合が例えば20%を超えている場合、ボイラ固有制御部153は、自発的に当該ボイラ11に対して個別に設置された薬注部63から例えば防食剤等の薬剤(腐食抑制剤)の薬注供給量を増やすことで濃縮時間を早める制御を行う。
【0057】
このようにして、ブロー後ボイラに係る防食を強化する(すなわち腐食抑制を強化する)ことで、各ブロー後ボイラの優先燃焼時間が短い場合でも腐食を抑制することができ、ブロー後ボイラの燃焼をより早くローテーションすることが可能となる。例えば、ブロー後ボイラが3台とした場合、濃縮時間を早めるための薬注により、例えば1時間燃焼させる必要にあった優先燃焼時間を例えば40分とすることで、2台目以降の優先燃焼を早める等、ブロー後ボイラの優先燃焼を早くローテーションすることが可能となる。
以上、本発明の主要な実施形態について説明した。
【0058】
なお、本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0059】
本実施形態では、ボイラ装置10は、4台の貫流ボイラ11を備える場合について説明したが、ボイラ装置10が備える貫流ボイラ11の台数は4台に限られない。1台以上任意の台数の貫流ボイラ11を含む場合も本発明を同様に実施することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 ボイラシステム
10 ボイラ装置
11 貫流ボイラ
12 蒸気ヘッダ
13 連結管
15 ローカル制御部
151 ローカル燃焼制御部
152 状態情報受信部
153 ボイラ固有制御部
30 給水タンク
40 負荷機器
50 台数制御装置(制御部)
501 燃焼制御部
502 状態情報監視部
503 配信部
L1 蒸気供給ライン
L2 ドレン回収ライン
21 スチームトラップ
22 逆止弁
L6 給水ライン
61 給水ポンプ
62 逆止弁
63 薬注部
L7 注水ライン
71 軟水装置
72 脱酸素装置
73 軟水装置監視部
L8 ブローライン
81 ブロー弁
91 湿度センサ
図1
図2