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特許7000917移動式クレーン及びその玉掛け具長さ推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】移動式クレーン及びその玉掛け具長さ推定方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/22 20060101AFI20220112BHJP
   G01B 21/02 20060101ALI20220112BHJP
   B66C 13/46 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
B66C13/22 W
G01B21/02 S
B66C13/46 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018035203
(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公開番号】P2019147682
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2020-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】特許業務法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神田 真輔
(72)【発明者】
【氏名】郷東 末和
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-051486(JP,A)
【文献】特開平10-129334(JP,A)
【文献】特開平04-201993(JP,A)
【文献】特許第3297008(JP,B2)
【文献】特開2004-244151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/22
G01B 21/02
B66C 13/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台と、
ブームと、
前記ブームの先端部から巻上げ巻下げ自在に吊り下げられるワイヤロープと、
前記ワイヤロープの下端に吊り下げられ、荷物に掛ける玉掛け具を吊るための吊具と、を備える移動式クレーンにおいて、
前記荷台に載置された前記荷物の地切りであると判定された場合に、
前記荷物の地切り時における前記ブームの先端部と前記吊具との距離と、前記吊具の鉛直方向の長さと、を足し合わせることにより前記ブームの先端部から前記吊具までの長さを取得し、
前記ブームの先端部の地上高から、前記荷台の地上高と前記ブームの先端部から前記吊具までの長さとを差し引いた値を前記玉掛け具の鉛直方向長さと推定し、
前記ブームの先端部の位置を検出する位置検出手段と、
前記吊具による吊上荷重を検出する吊上荷重検出手段と、をさらに備え、
前記位置検出手段により前記ブームの先端部の位置が平面視において前記荷台と重複する範囲内にあると検出されるとともに前記吊上荷重検出手段により吊上荷重が所定値よりも増加し、かつ一定値になったと検出される場合に、
前記荷台に載置された前記荷物の地切りであると判定する移動式クレーン。
【請求項2】
荷台と、
ブームと、
前記ブームの先端部から巻上げ巻下げ自在に吊り下げられるワイヤロープと、
前記ワイヤロープの下端に吊り下げられ、荷物に掛ける玉掛け具を吊るための吊具と、を備える移動式クレーンにおいて、
前記荷台に載置された前記荷物の地切りであると判定された場合に、
前記荷物の地切り時における前記ブームの先端部と前記吊具との距離と、前記吊具の鉛直方向の長さと、を足し合わせることにより前記ブームの先端部から前記吊具までの長さを取得し、
前記ブームの先端部の地上高から、前記荷台の地上高と前記ブームの先端部から前記吊具までの長さとを差し引いた値を前記玉掛け具の鉛直方向長さと推定し、
前記吊具による吊上荷重を検出する吊上荷重検出手段と、
前記荷台にかかる荷重を検出する荷台荷重検出手段と、をさらに備え、
前記吊上荷重検出手段により吊上荷重が所定値よりも増加し、かつ一定値になったと検出されるとともに前記荷台荷重検出手段により前記荷台の荷重が減少し、かつ一定値になったと検出される場合に、
前記荷台に載置された前記荷物の地切りであると判定する移動式クレーン。
【請求項3】
荷台と、
ブームと、
前記ブームの先端部から巻上げ巻下げ自在に吊り下げられるワイヤロープと、
前記ワイヤロープの下端に吊り下げられ、荷物に掛ける玉掛け具を吊るための吊具と、
前記ブームの先端部の位置を検出する位置検出手段と、
前記吊具による吊上荷重を検出する吊上荷重検出手段と、を備える移動式クレーンの玉掛け具長さ推定方法において、
前記位置検出手段により前記ブームの先端部の位置が平面視において前記荷台と重複する範囲内にあると検出されるとともに前記吊上荷重検出手段により吊上荷重が所定値よりも増加し、かつ一定値になったと検出される場合に、前記荷台に載置された前記荷物の地切りであると判定する地切り判定工程と、
前記地切り判定工程において前記荷物の地切りであると判定された場合に、前記ブームの先端部の地上高と前記荷台の地上高とを取得するとともに、前記荷物の地切り時における前記ブームの先端部と前記吊具との距離と、前記吊具の鉛直方向の長さと、を足し合わせることにより、前記ブームの先端部から前記吊具まで長さを取得する取得工程と、
前記ブームの先端部の地上高から、前記荷台の地上高と前記ブームの先端部から前記吊具まで長さとを差し引いた値を前記玉掛け具の鉛直方向長さと推定する推定工程と、を有する移動式クレーンの玉掛け具長さ推定方法。
【請求項4】
荷台と、
ブームと、
前記ブームの先端部から巻上げ巻下げ自在に吊り下げられるワイヤロープと、
前記ワイヤロープの下端に吊り下げられ、荷物に掛ける玉掛け具を吊るための吊具と、
前記吊具による吊上荷重を検出する吊上荷重検出手段と、
前記荷台にかかる荷重を検出する荷台荷重検出手段と、を備える移動式クレーンの玉掛け具長さ推定方法において、
前記吊上荷重検出手段により吊上荷重が所定値よりも増加し、かつ一定値になったと検出されるとともに前記荷台荷重検出手段により前記荷台の荷重が減少し、かつ一定値になったと検出される場合に、前記荷台に載置された前記荷物の地切りであると判定する地切り判定工程と、
前記地切り判定工程において前記荷物の地切りであると判定された場合に、前記ブームの先端部の地上高と前記荷台の地上高とを取得するとともに、前記荷物の地切り時における前記ブームの先端部と前記吊具との距離と、前記吊具の鉛直方向の長さと、を足し合わせることにより、前記ブームの先端部から前記吊具まで長さを取得する取得工程と、
前記ブームの先端部の地上高から、前記荷台の地上高と前記ブームの先端部から前記吊具まで長さとを差し引いた値を前記玉掛け具の鉛直方向長さと推定する推定工程と、を有する移動式クレーンの玉掛け具長さ推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式クレーン及びその玉掛け具長さ推定方法に関する。詳しくは、荷台を備えた移動式クレーンによる荷台から荷物を吊り上げる際の玉掛け具長さを推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クレーンによる荷物の地切り時における地面からフックブロックまでの高さ、及び吊り上げ時における地面から荷物までの高さなどを求める技術としては、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載のクレーンは、ブームの先端部に距離計測手段を備える。この距離計測手段は、地切り時のブーム先端から吊荷(荷物)周辺の地面までの距離及びフックブロックまでの距離と、吊り上げ時のブーム先端から吊荷周辺の地面までの距離及びフックブロックまでの距離とを計測する。このような構成の場合、地切り時のフックから地面までの距離は、(地切り時のブーム先端から吊荷が載置された地面までの距離)から(地切り時のブーム先端からフックまでの距離)を差し引くことで算出することができる。
【0004】
しかしながら、例えば、荷物の荷振れを防止する荷振れ防止制御を行う際に荷物の荷振れ周期(具体的には、荷物の揺れの共振周波数)を算出することなる。荷物の吊り下げ長さから荷物の荷振れ周期を算出するためには、ブームの先端部から玉掛け具の吊具(例えばフック)までの長さと玉掛け具自体の長さが必要となるが、地切り時における玉掛け具の鉛直方向長さを推定する場合、地面の高低などの影響でワイヤ等からなる玉掛け具が緩んで緊張状態とならず、玉掛け具の鉛直方向長さを正しく推定できない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-120176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、荷台から荷物を吊上げる際に、荷物の地切り時における玉掛け具長さを推定することができる移動式クレーン及びその玉掛け具推定方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、本発明の移動式クレーンは、荷台と、ブームと、前記ブームの先端部から巻上げ巻下げ自在に吊り下げられるワイヤロープと、前記ワイヤロープの下端に吊り下げられ、荷物に掛ける玉掛け具を吊るための吊具と、を備える移動式クレーンにおいて、前記荷台に載置された前記荷物の地切りであると判定された場合に、前記荷物の地切り時における前記ブームの先端部と前記吊具との距離と、前記吊具の鉛直方向の長さと、を足し合わせることにより前記ブームの先端部から前記吊具までの長さを取得し、前記ブームの先端部の地上高から、前記荷台の地上高と前記ブームの先端部から前記吊具までの長さとを差し引いた値を前記玉掛け具の鉛直方向長さと推定し、前記ブームの先端部の位置を検出する位置検出手段と、前記吊具による吊上荷重を検出する吊上荷重検出手段と、をさらに備え、前記位置検出手段により前記ブームの先端部の位置が平面視において前記荷台と重複する範囲内にあると検出されるとともに前記吊上荷重検出手段により吊上荷重が所定値よりも増加し、かつ一定値になったと検出される場合に、前記荷台に載置された前記荷物の地切りであると判定するものである。
【0009】
また、本発明の移動式クレーンは、荷台と、ブームと、前記ブームの先端部から巻上げ巻下げ自在に吊り下げられるワイヤロープと、前記ワイヤロープの下端に吊り下げられ、荷物に掛ける玉掛け具を吊るための吊具と、を備える移動式クレーンにおいて、前記荷台に載置された前記荷物の地切りであると判定された場合に、前記荷物の地切り時における前記ブームの先端部と前記吊具との距離と、前記吊具の鉛直方向の長さと、を足し合わせることにより前記ブームの先端部から前記吊具までの長さを取得し、前記ブームの先端部の地上高から、前記荷台の地上高と前記ブームの先端部から前記吊具までの長さとを差し引いた値を前記玉掛け具の鉛直方向長さと推定し、前記吊具による吊上荷重を検出する吊上荷重検出手段と、前記荷台にかかる荷重を検出する荷台荷重検出手段と、をさらに備え、前記吊上荷重検出手段により吊上荷重が所定値よりも増加し、かつ一定値になったと検出されるとともに前記荷台荷重検出手段により前記荷台の荷重が減少し、かつ一定値になったと検出される場合に、前記荷台に載置された前記荷物の地切りであると判定するものである。
【0010】
本発明の移動式クレーンの玉掛け具長さ推定方法は、荷台と、ブームと、前記ブームの先端部から巻上げ巻下げ自在に吊り下げられるワイヤロープと、前記ワイヤロープの下端に吊り下げられ、荷物に掛ける玉掛け具を吊るための吊具と、前記ブームの先端部の位置を検出する位置検出手段と、前記吊具による吊上荷重を検出する吊上荷重検出手段と、を備える移動式クレーンの玉掛け具長さ推定方法において、前記位置検出手段により前記ブームの先端部の位置が平面視において前記荷台と重複する範囲内にあると検出されるとともに前記吊上荷重検出手段により吊上荷重が所定値よりも増加し、かつ一定値になったと検出される場合に、前記荷台に載置された前記荷物の地切りであると判定する地切り判定工程と、前記地切り判定工程において前記荷物の地切りであると判定された場合に、前記ブームの先端部の地上高と前記荷台の地上高とを取得するとともに、前記荷物の地切り時における前記ブームの先端部と前記吊具との距離と、前記吊具の鉛直方向の長さと、を足し合わせることにより、前記ブームの先端部から前記吊具まで長さを取得する取得工程と、前記ブームの先端部の地上高から、前記荷台の地上高と前記ブームの先端部から前記吊具まで長さとを差し引いた値を前記玉掛け具の鉛直方向長さと推定する推定工程と、を有するものである。
【0011】
また、本発明の移動式クレーンの玉掛け具長さ推定方法は、荷台と、ブームと、前記ブームの先端部から巻上げ巻下げ自在に吊り下げられるワイヤロープと、前記ワイヤロープの下端に吊り下げられ、荷物に掛ける玉掛け具を吊るための吊具と、前記吊具による吊上荷重を検出する吊上荷重検出手段と、前記荷台にかかる荷重を検出する荷台荷重検出手段と、を備える移動式クレーンの玉掛け具長さ推定方法において、前記吊上荷重検出手段により吊上荷重が所定値よりも増加し、かつ一定値になったと検出されるとともに前記荷台荷重検出手段により前記荷台の荷重が減少し、かつ一定値になったと検出される場合に、前記荷台に載置された前記荷物の地切りであると判定する地切り判定工程と、前記地切り判定工程において前記荷物の地切りであると判定された場合に、前記ブームの先端部の地上高と前記荷台の地上高とを取得するとともに、前記荷物の地切り時における前記ブームの先端部と前記吊具との距離と、前記吊具の鉛直方向の長さと、を足し合わせることにより、前記ブームの先端部から前記吊具まで長さを取得する取得工程と、前記ブームの先端部の地上高から、前記荷台の地上高と前記ブームの先端部から前記吊具まで長さとを差し引いた値を前記玉掛け具の鉛直方向長さと推定する推定工程と、を有するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
本発明の移動式クレーンにおいては、荷台に載置された荷物の地切りであると判定された場合に、前記ブームの先端部の地上高から、前記荷台の地上高と前記ブームの先端部から前記吊具までの長さとを差し引いた値を前記玉掛け具の鉛直方向長さと推定する。これにより、玉掛け具の鉛直方向長さを推定することができる。ひいては、この推定された玉掛け具の鉛直方向長さを用いて、荷物の吊り下げ長さを求めることができるため、荷物の荷振れ周期(吊り周期)を精度よく算出することができる。
【0014】
また、本発明の移動式クレーンにおいては、位置検出手段により前記ブームの先端部の位置が平面視において前記荷台と重複する範囲内にあると検出されるとともに吊上荷重検出手段により吊上荷重が所定値よりも増加し、かつ一定値になったと検出される場合に、荷台に載置された荷物の地切りであると判定する。これにより、荷台上における荷物の地切りを簡易かつ確実に捉えて、玉掛け具の鉛直方向長さを推定することができる。
【0015】
また、本発明の移動式クレーンにおいては、吊上荷重検出手段により吊上荷重が所定値よりも増加し、かつ一定値になったと検出されるとともに荷台荷重検出手段により荷台の荷重が減少し、かつ一定値になったと検出される場合に、荷台に載置された荷物の地切りであると判定する。これにより、荷台上における荷物の地切りを確実に捉えて、玉掛け具の鉛直方向長さを推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る移動式クレーンの全体構成を示す側面図。
図2】本発明の一実施形態に係る移動式クレーンの制御装置の構成を示す図。
図3】玉掛け具長さの推定方法を説明するための説明図。
図4図3における移動式クレーンを示す平面図。
図5】玉掛け具長さ推定方法の第1実施形態を表すフローチャートを示す図。
図6】玉掛け具長さ推定方法の第1実施形態に係るフックにかかる負荷とウインチ巻き上げ量との関係を示す図。
図7】玉掛け具長さ推定方法の第2実施形態を表すフローチャートを示す図。
図8】玉掛け具長さ推定方法の第2実施形態に係るフックにかかる負荷とウインチ巻き上げ量と荷台荷重との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図1及び図2を用いて、本発明の一実施形態に係る移動式クレーン1の全体構成について説明する。
【0018】
図1に示すように、移動式クレーン1は、キャビン3と荷台4と車両フレーム5を有するトラック等の車両2と、車両2のキャビン3と荷台4との間の車両フレーム5に搭載されている小型クレーン6と、を備えている。車両2は、前輪と後輪との左右にタイヤ13が設けられている。
【0019】
小型クレーン6は、車両フレーム5の上に固定されたベース7と、ベース7に対して旋回モータにより旋回可能に設けられたポスト8と、ポスト8の上端部に起伏可能及び伸縮可能に設けられたブーム9と、ベース7の左右両側に設けられた一対のアウトリガ10と、制御装置20を備えている。ポスト8にはウインチが内蔵されている。ウインチからワイヤロープ17がブーム9の先端部9aに導かれ、ブーム9の先端部9aの滑車を介してフック11に掛け回されている。吊具であるフック11は、荷物Wに掛ける玉掛け具の一例である玉掛け用ワイヤWRを吊るためのものであり、ワイヤロープ17の下端に吊り下げられている。ワイヤロープ17及びフック11は、ウインチの駆動によりブーム9の先端部9aから巻上げ巻下げ自在に吊り下げられている。小型クレーン6及びアウトリガ10等の作業機器は、油圧回路により油圧駆動される。小型クレーン6には、作業機器を操作するためのレバー群12がベース7の左右両側に設けられている。また、油圧回路を電気的に制御する制御装置20がベース7の側部に設けられている。制御装置20は、作業者のレバー群12の操作に応じて油圧回路を制御して小型クレーン6を動作させる。
【0020】
図2に示すように、小型クレーン6には、ブーム9の姿勢を検出する各種の姿勢検出器が設けられている。姿勢検出器としては、ブーム9の伸縮長さを検出する伸縮用センサ31、ブーム9の起伏角度θを検出する起伏用センサ32、フック11を吊り下げ、ウインチに巻回されたワイヤロープ17の繰り出し長さを検出する巻回用センサ33、ブーム9の旋回角度を検出する旋回用センサ34が挙げられる。
【0021】
伸縮用センサ31の構成は特に限定されないが、例えばブーム9の先端部9aにコードの端部が固定されたコードリールの回転角度をポテンショメータで読み取る構成が挙げられる。起伏用センサ32の構成は特に限定されないが、例えばポテンショメータに振り子を取り付けた振子式の角度測定器が挙げられる。巻回用センサ33の構成は特に限定されないが、例えばウインチの回転数を検出するポテンショメータと、ワイヤロープ17の巻層を補正する機構とからなる構成が挙げられる。旋回用センサ34の構成は特に限定されないが、例えばポテンショメータやロータリエンコーダが挙げられる。
【0022】
また、小型クレーン6は、フック11による吊上荷重を検出する吊上荷重検出手段40を備えている。この吊上荷重検出手段40は、ブーム9に作用するブーム倒伏方向モーメントおよびブーム9の作業半径Rを介して吊上荷重を検出するもので構成されている。この場合、吊上荷重検出手段40は、ブーム9の起伏シリンダに作用する軸力を検出する起伏シリンダ軸力検出手段と、ブーム9の作業半径Rを検出する後述する作業半径検出手段と、これら検出手段の検出値を用いて吊上荷重を演算算出する図示せぬ演算部とで構成し、演算部において、ブーム9の起伏支点まわりに生じるブーム倒伏方向モーメントの吊上荷重成分を求めこれを作業半径Rで除算して吊上荷重を求めるようにしたもので構成する。
吊上荷重検出手段40は、上記以外の例として、例えばブーム9の先端部9aからフック9を巻き上げ巻き下げ自在に吊下するワイヤロープ17の張力を介して吊上荷重を検出するもので構成してもよい。この場合、吊上荷重検出手段40は、例えば、ワイヤロープ17の索端のブーム9の先端部9aへの止着部に介装したロードセルで構成される。
【0023】
また、荷台4には、荷台4にかかる荷重(荷台4に載置された荷物Wなどの積載物の荷重)を検出する荷台荷重検出手段50が設けられている。荷台荷重検出手段50は、例えば、ロードセルにより構成され、その検出信号は制御装置20に送られる。
なお、荷台荷重検出手段50は、例えば荷台4かかる圧力を検出する圧力センサであってもよい。
【0024】
アウトリガ10は、ブーム9による荷物Wの吊上作業時等に張り出して地面に接地し車両を安定させるものである。アウトリガ10は、ベース7に設けられたスライドビーム14と、スライドビーム14の先端部に固定されたジャッキ装置であるジャッキ15とから構成される。移動式クレーン1は、作業開始時にスライドビーム14を張出させ、ジャッキ15を伸長させて下端のフロート16を接地させ、荷物Wの吊り上げによる荷重をアウトリガ10で支えることにより、車両2を安定させる。
【0025】
次に、図2を用いて小型クレーン6が具備する制御装置20について説明する。
【0026】
制御装置20は、小型クレーン6を制御する機能と、小型クレーン6の各種情報を取得して演算する機能を有する。具体的には、制御装置20は、車両2の荷台4に載置された荷物Wを吊り上げる際の地切りの判定を行うとともに、地切り時の玉掛け具長さh3を推定するものである。制御装置20は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。制御装置20の記憶部には、小型クレーン6の動作を制御するために種々のプログラムや玉掛け具長さを推定する際の演算に用いるデータ(荷台4の地上高h2、フック11の長さ等)が格納されている。制御装置20は、小型クレーン6に設けられている。
【0027】
また、製造装置20は、CPU等の処理部で実行される演算・指令処理手段である、ブーム9の先端部9aもしくはフック11の平面座標上における位置を検出する位置検出部60を備えている。吊上荷重検出手段40は、制御装置20に内蔵され、吊上荷重が所定値よりも増加したかどうかを判定する吊上荷重判定部41に接続されている。荷台荷重検出手段50は、制御装置20に内蔵され、荷台荷重が所定条件よりも増加したか減少したかを判定する荷台荷重判定部51に接続されている。
【0028】
位置検出部60は、例えば、伸縮用センサ31からのブーム長さLの入力と、起伏用センサ32からのブーム9の起伏角度θの入力と、旋回用センサ34からのブーム9の旋回角度の入力とによって、平面座標上における現在のブーム9の先端部9aの位置を検出する。これにより、位置検出部60は、ブーム9の先端部9aの位置が荷台4の平面視において荷台4と重複する範囲内(図4の網掛け部分参照)にあるかどうかを検出することができる。すなわち、位置検出部60は、ブーム9の先端部9aの位置が荷台4上(図3の網掛け部分参照)にあるかどうかを検出することができる。位置検出部60は、ブーム9の先端部9aの平面座標上の位置が、例えば、予め制御装置20の記憶部に記憶された荷台4の平面座標上の領域の範囲内にあるかどうかを判定する。
なお、平面座標上から見た現在のフック11の位置を検出する場合は、上記の各値の入力に加えて、巻回用センサ33からのワイヤ繰り出し長さmが入力されて、フック11の位置が検出可能となる。
【0029】
姿勢検出器(伸縮用センサ31、起伏用センサ32、巻回用センサ33、旋回用センサ34)が制御装置20の位置検出部60に接続されている。姿勢検出器(伸縮用センサ31、起伏用センサ32、巻回用センサ33、旋回用センサ34)で検出された各検出値は位置検出部60に入力される。制御装置20は、位置検出部60により伸縮用センサ31、起伏用センサ32、巻回用センサ33、旋回用センサ34で検出されたブームの姿勢(ブーム長さL、ブーム9の起伏角度θ、ワイヤ繰り出し長さm、ブーム9の旋回角度)を取得することができる。また、吊上荷重検出手段40及び荷台荷重検出手段50は制御装置20の吊上荷重判定部41及び荷台荷重判定部51のそれぞれに接続されている。吊上荷重検出手段40で検出されたフック11の吊上荷重及び荷台荷重検出手段50で検出された荷台荷重は制御装置20の吊上荷重判定部41及び荷台荷重判定部51のそれぞれに入力される。
【0030】
伸縮用センサ31によりブーム長さLを検出でき、起伏用センサ32によりブーム9の起伏角度θを検出できる。また、制御装置20は、ブーム長さLと起伏角度θとから作業半径Rを求めることができる(R=Lcosθ)。すなわち、制御装置20、伸縮用センサ31及び起伏用センサ32により、作業半径Rを検出する作業半径検出手段が構成される。作業半径Rとは、ブーム9の旋回中心とブーム9の先端部9aとの水平距離を意味する。
【0031】
また、制御装置20は、ブーム長さLと起伏角度θとブーム9の起伏中心の地上高h1とからブーム先端部高さH1を求めることができる(H1=Lsinθ+h1)。ブーム先端部高さH1とは、ブーム9の先端部9aの地上高を意味する。ここで、車両2の荷台4の地上高(荷台4における荷物Wの載置面高さ)をh2とする。
なお、ブーム9の先端部9aに配置されるトップシーブ(図示せず)を考慮した場合は、トップシーブの根本支点からの高さをa、根本支点と旋回中心の距離をbとすると、上記Rは、R=Lcosθ+a×sinθ-b、上記H1は、H1=Lsinθ-a×cosθ+h1となる。
【0032】
なお、荷台4の地上高h2は、荷物Wの吊上げ時の条件によって異なる。例えば、荷物Wの吊上げの際には、図3に示すように、アウトリガ10を使用するが、その場合には、アウトリガ10によりスライドビーム14を張出させ、ジャッキ15を所定長伸長させて小型クレーン6を支持するため、通常の荷台4の地上高ではなく、ジャッキ15を所定長伸長させた時の地上高となる。このジャッキ15を所定長伸長させた時の地上高は、予め後述する制御装置20の記憶部に記憶されている地上高、もしくは、地上高を検出するセンサによる検出値が適用される。
【0033】
さらに、制御装置20は、巻回用センサ33で検出されたワイヤロープ17の繰り出し長さとブーム先端部高さH1と荷台4の地上高h2とフック11の長さfhから地切り時における玉掛け用ワイヤWRの鉛直方向長さh3(以下、単に玉掛け具長さh3ともいう)を推定することができる。玉掛け具長さh3とは、地切り時に玉掛け具(本実施形態では玉掛け用ワイヤWR)が最も伸びた際の鉛直方向の距離(荷台4からの高さ)を意味する。例えば、数式h3=H1-h2-(m+fh)により玉掛け具長さh3を求めることができる。なお、当該数式におけるmは、ブーム9の先端部9aとフック11との距離であり、ワイヤロープ17の繰り出し長さとワイヤロープ17のフック11への巻き掛け数から算出される。
なお、玉掛け具は、本実施形態の玉掛け用ワイヤWRの形状に限定するものではない。
【0034】
なお、「ブームの姿勢」とは、ブーム長さL、ブーム9の起伏角度θ、ブーム11の旋回角度に加えて、作業半径R、ブーム先端部高さH1、フック11の長さfhを含む概念である。「姿勢検出器」とは、これらブーム9の姿勢を直接的または間接的に検出する検出器である。
【0035】
以上のように構成された移動式クレーン1は、左右両側のアウトリガ10をジャッキアップして小型クレーン6を安定して支持した状態で、ブーム9の先端部9aに吊下げたフック11に玉掛け用ワイヤWRを掛けて荷物Wを吊上げ可能とし、旋回モータを駆動してポスト8を旋回駆動するとともに、ブーム9を起伏駆動、並びに伸縮駆動することでブーム9の先端部9aを任意な位置に移動させ、ウインチの駆動によりフック11を巻上げ巻下げ駆動することで荷物Wを昇降させてクレーン作業を行うことができる。
【0036】
[(第1実施形態)地切り時における玉掛け具長さの推定]
次に、図5図6を用いて、制御装置20で実行される荷物Wの地切り時における玉掛け具長さh3を推定するための推定方法の第1実施形態について具体的に説明する。
なお、以下のステップは、玉掛け作業者が荷物W上に位置しているフック11に、玉掛け具の一例である玉掛け用ワイヤWRを用いて荷物Wを掛けた後に実行されるものである。
【0037】
まず、ステップS10において、制御装置20は、位置検出手段60によりブーム9の先端部9aの位置が平面視において荷台4と重複する範囲内(図4参照)にあるかどうかを検出して、ブーム9の先端部9aが荷台4の上空(図3参照)に位置しているかどうかを判定する。具体的には、制御装置20は、位置算出手段60によりブーム9の先端部9aの平面座標上の位置が荷台4の平面座標上の領域の範囲内にあるかどうかを検出することで、ブーム9の先端部9aが荷台4の上空に位置しているかどうかを判定する。
その結果、ブーム9の先端部9aが荷台4の上空に位置していると判定された場合、制御装置20はステップをステップS20に移行させる。
一方、ブーム9の先端部9aが荷台4上空に位置していないと判定された場合、制御装置20はステップをステップS10に移行させる。
なお、ステップS10においては、位置算出手段60によりブーム9の先端部9aの平面座標上の位置を検出する構成としているが、例えば、フック11の平面座標上の位置を検出する検出手段をフック11に設けて、当該フック11の平面座標上の位置を検出することでブーム9の先端部9aの平面座標上の位置を検出する構成としてもよい。
【0038】
まず、オペレータは、レバー群12等を操作してウインチを駆動し、ワイヤロープ17の巻き上げを開始する(ステップS20)。
【0039】
ここで、図6に示すように、ウインチを巻き上げて荷物Wを吊り上げていくと、フック11にかかる負荷は、最初は(フック11+玉掛け用ワイヤWR)の重量のみであり、玉掛け用ワイヤWRに張力が発生するとフック11を吊上げるにつれて徐々に負荷が増し、完全に地切りした後は負荷が一定となる。これに伴い、吊上荷重検出手段40の出力も、ウインチ巻き上げ時の最初は一定(フック11+玉掛け用ワイヤWR)の荷重であり、徐々に増加した後に、再び一定(フック11+玉掛け用ワイヤWR+荷物W)の荷重となる。(フック11+玉掛け用ワイヤWR)の重量よりも荷重が増加した場合は、玉掛け用ワイヤWRが緩みなく張られた状態(図3で示す玉掛け用ワイヤWRの状態)となる。
【0040】
ステップS30において、制御装置20は、吊上荷重検出手段40により吊上荷重が所定値((フック11+玉掛け用ワイヤWR)の重量)よりも増加し、かつ一定値((フック11+玉掛け用ワイヤWR+荷物W)の重量)になったかどうかを判定する。
その結果、吊上荷重が(フック11+玉掛け用ワイヤWR)の重量よりも荷重が増加し、かつ(フック11+玉掛け用ワイヤWR+荷物W)の重量になったと判定された場合は荷台4上に載置された荷物Wの地切りであると判定され、制御装置20はステップをステップS40に移行させる。
一方、吊上荷重が(フック11+玉掛け用ワイヤWR)の重量よりも荷重が増加し、かつ(フック11+玉掛け用ワイヤWR+荷物W)の重量になっていないと判定された場合、制御装置20はステップをステップS30に移行させる。
このように、ステップS30は、荷台4に載置された荷物Wの地切りであるかどうかを判定する地切り判定工程を構成している。
【0041】
ステップS40において、制御装置20は、ブーム9の先端部9aの地上高H1と荷台4の地上高h2とブーム9の先端部9aからフック11まで長さとなる(m+fh)とを取得する。
【0042】
ステップS50において、制御装置20は、上述した数式h3=H1-h2-(m+fh)により玉掛け用ワイヤWRの玉掛け具長さh3を推定する。
【0043】
[(第2実施形態)地切り時における玉掛け具長さの推定]
次に、図7図8を用いて、制御装置20で実行される荷物Wの地切り時における玉掛け具長さh3を推定するための推定方法の第2実施形態について具体的に説明する。
なお、以下のステップは、玉掛け作業者が荷物W上に位置しているフック11に、玉掛け具の一例である玉掛け用ワイヤWRを用いて荷物Wを掛けた後に実行されるものである。
【0044】
ここで、図8に示すように、ウインチを巻き上げて荷物Wを吊り上げていくと、フック11にかかる負荷は、最初は(フック11+玉掛け用ワイヤWR)の重量のみであり、玉掛け用ワイヤWRに張力が発生するとフック11を吊上げるにつれて徐々に負荷が増し、完全に地切りした後は負荷が一定となる。これに伴い、吊上荷重検出手段40の出力も、ウインチ巻き上げ時の最初は一定(フック11+玉掛け用ワイヤWR)の荷重であり、徐々に増加した後に、再び一定(フック11+玉掛け用ワイヤWR+荷物W)の荷重となる。(フック11+玉掛け用ワイヤWR)の重量よりも荷重が増加した場合は、玉掛け用ワイヤWRが緩みなく張られた状態(図3で示す玉掛け用ワイヤWRの状態)となる。これに対して、荷台荷重はウインチを巻き上げて荷物Wを吊り上げていくと、最初一定値であるが、玉掛け用ワイヤWRに張力が発生するとフック11を吊上げるにつれて徐々に荷台荷重が減少し、完全に地切りした後は荷台荷重が一定となる。
【0045】
まず、オペレータは、レバー群12等を操作してウインチを駆動し、ワイヤロープ17の巻き上げを開始する(ステップS100)。
【0046】
ステップS200において、上述した第1実施形態のステップS30と同様に、制御装置20は、吊上荷重検出手段40により吊上荷重を検出して所定値((フック11+玉掛け用ワイヤWR)の重量)よりも増加し、かつ一定値((フック11+玉掛け用ワイヤWR+荷物W)の重量)になったかどうかを判定する。
その結果、吊上荷重が(フック11+玉掛け用ワイヤWR)の重量よりも荷重が増加し、かつ(フック11+玉掛け用ワイヤWR+荷物W)の重量になったと判定された場合は、制御装置20はステップをステップS300に移行させる。
一方、吊上荷重が(フック11+玉掛け用ワイヤWR)の重量よりも荷重が増加し、かつ(フック11+玉掛け用ワイヤWR+荷物W)の重量になっていないと判定された場合、制御装置20はステップをステップS200に移行させる。
【0047】
ステップS300において、制御装置20は、荷台荷重検出手段50により荷台荷重を検出して荷台荷重が減少し、かつ一定値になったかどうかを判定する。
その結果、荷台荷重が減少し、かつ一定値になったと判定された場合は荷台4上に載置された荷物Wの地切りであると判定され、制御装置20はステップをステップS400に移行させる。
一方、荷台荷重が減少し、かつ一定値になっていないと判定された場合は荷台4上に載置された荷物Wの地切りではないと判定され、制御装置20はステップをステップS300に移行させる。
【0048】
ステップS400において、制御装置20は、ブーム9の先端部9aの地上高H1と荷台4の地上高h2とブーム9の先端部9aからフック11まで長さとなる(m+fh)とを取得する。
【0049】
ステップS500において、制御装置20は、上述した数式h3=H1-h2-(m+fh)により玉掛け用ワイヤWRの玉掛け具長さh3を推定する。
【0050】
上記の如く、第1実施形態及び第2実施形態に係る推定方法で推定された地切り時における玉掛け具長さh3は、ブーム9の先端部9aからの荷物Wの吊り下げ長さから荷物Wの荷振れ周期(吊り周期)を公知の方法に基づいて算出する際に、使用することができる。このように本実施形態の制御装置20は、車両2の荷台4の範囲内における荷物Wの地切りの際に、荷台4の地上高h2を地切りの基準高さとして、玉掛け具である玉掛け用ワイヤWRの長さの推定をすることを特徴としている。
【0051】
このように構成される移動式クレーン1においては、荷台4に載置された荷物Wの地切りであると判定された場合に、ブーム9の先端部9aの地上高H1から、荷台4の地上高h2とブーム9の先端部9aからフック11までの長さ(m+fh)とを差し引いた値を玉掛け用ワイヤWRの鉛直方向長さh3と推定する。これにより、玉掛け用ワイヤWRの鉛直方向長さh3を推定することができる。ひいては、この推定された玉掛け用ワイヤWRの鉛直方向長さh3を用いて、荷物Wの吊り下げ長さを求めることができるため、荷物Wの荷振れ周期(吊り周期)を精度よく算出することができる。
【0052】
また、移動式クレーン1においては、位置検出手段60によりブーム9の先端部9aの位置が平面視において荷台4と重複する範囲内にあると検出されるとともに吊上荷重検出手段40により吊上荷重が所定値よりも増加したと検出される場合に、荷台4に載置された荷物Wの地切りであると判定する。具体的には、位置検出手段60によりブーム9の先端部9aの平面座標上の位置が荷台4の平面座標上の領域の範囲内にあると検出されるとともに吊上荷重検出手段40により荷物Wの荷重が増加し、かつ一定値になったと検出された場合に、荷台4に載置された荷物Wの地切りであると判定する。これにより、荷台4上における荷物Wの地切りを簡易かつ確実に捉えて、玉掛け用ワイヤWRの鉛直方向長さh3を推定することができる。
【0053】
また、移動式クレーン1においては、吊上荷重検出手段40により吊上荷重が所定値よりも増加し、かつ一定値になったと検出されるとともに荷台荷重検出手段50により荷台4の荷重が減少し、かつ一定値になったと検出される場合に、荷台4に載置された荷物Wの地切りであると判定する。これにより、荷台4上における荷物Wの地切りをより確実に捉えて、玉掛け用ワイヤWRの鉛直方向長さh3を推定することができる。
【0054】
また、移動式クレーン1においては、上述したように既知の寸法である荷台4上の範囲内で荷物Wの地切り判定をするものであり、例えば、地面の高低などの影響を受けずに玉掛け用ワイヤWRの鉛直方向長さh3を推定することができる。
【0055】
また、上述した従来技術(特許文献1)は、カメラの撮像画像から荷物の吊り下げ長さを推定するものであるが、障害物などで荷物の接地部の映像が取得できない場合には荷物の吊り下げ長さの推定が行えない。また、カメラをブームの先端部に設けた構成となる。一方、本実施形態に係る移動式クレーン1においては、クレーン作業の際に必要となる予め搭載された各種検出手段(伸縮用センサ31、起伏用センサ32、巻回用センサ33、旋回用センサ34等)を用いて玉掛け用ワイヤWRの鉛直方向長さh3を推定することができるため、カメラ等の追加の装置を設ける必要がなく、製造コストを抑えることができる。
【0056】
本発明は、推定された玉掛け具の鉛直方向長さを用いて、荷物の吊り下げ長さを求めることができるため、玉掛け具によって生じる荷振れ周期の誤差を低減して、荷物の荷振れ周期を精度よく算出することができる。ひいては、荷振れ周期に基づいて荷振れ防止制御を行うクレーン等に本発明を適用することで、より高い荷振れ防止の効果を得ることができる。
【0057】
なお、本実施形態では、玉掛け用ワイヤWRの鉛直方向長さh3を推定する際に、基準高さとして荷台4の地上高h2を用いる構成としているが、例えば、基準高さとして荷台4の地上高h2の代わりに、小型クレーン6の取り付け面(車両フレーム5の上面)の高さを設定して構成してもよい。このような構成の場合、ジャッキ15の伸長量(突き上げ量)を考慮する必要が無くなり、より正確に玉掛け用ワイヤWRの鉛直方向長さh3を推定することができる。
【0058】
上述の実施形態は、代表的な形態を示したに過ぎず、一実施形態の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、及び範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0059】
1 移動式クレーン
4 荷台
9 ブーム
9a 先端部
11 フック(吊具)
17 ワイヤロープ
20 制御装置
W 荷物
WR 玉掛け用ワイヤ(玉掛け具)
fh フックの長さ
H1 ブーム先端部の地上高
h2 荷台の地上高
h3 玉掛け具の鉛直方向長さ
m ワイヤ繰り出し長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8