(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】カバー構造体及び流体噴射装置
(51)【国際特許分類】
G21F 9/28 20060101AFI20220112BHJP
G21F 9/02 20060101ALI20220112BHJP
B08B 5/00 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
G21F9/28 501Z
G21F9/28 521Z
G21F9/02 Z
B08B5/00 A
(21)【出願番号】P 2018055180
(22)【出願日】2018-03-22
【審査請求日】2020-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】定木 啓
(72)【発明者】
【氏名】前野 潤
(72)【発明者】
【氏名】山崎 晶登
【審査官】関口 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-210210(JP,A)
【文献】特開2016-080579(JP,A)
【文献】国際公開第2015/159970(WO,A1)
【文献】特開平10-043700(JP,A)
【文献】特開2006-346415(JP,A)
【文献】特開平08-010189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B1/00-1/04
5/00-13/00
G21F9/00-9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物の表面に噴射される流体を噴射する噴射ユニットを囲うと共に前記噴射ユニットが挿通される挿通開口部を有する囲壁と、
前記噴射ユニットを前記囲壁の前記挿通開口部内で移動可能としかつ前記囲壁の前記挿通開口部を閉塞する閉塞部材と
を備え
、
前記噴射ユニットから噴射された前記流体が通過する前記囲壁の噴射側開口の縁部に設けられ、前記処理対象物の表面に吸着可能な吸盤部を備える
ことを特徴とするカバー構造体。
【請求項2】
前記囲壁は、外部から前記囲壁の内部に外気を吸入する吸気口と、前記噴射ユニットを挟んで前記吸気口と反対側に配置されると共に前記囲壁の内部から外部に気体を排気する排気口とを有することを特徴とする請求項
1記載のカバー構造体。
【請求項3】
前記噴射ユニットから噴射される前記流体の噴出経路を囲み、前記噴射ユニットに固定されて前記噴射ユニットと共に前記囲壁に対して移動可能とされた内側シュラウドを備えることを特徴とする請求項1
または2記載のカバー構造体。
【請求項4】
前記噴射ユニットを移動させる移動装置を備えることを特徴とする請求項1~
3いずれか一項に記載のカバー構造体。
【請求項5】
処理対象物の表面に噴射される流体を噴射する噴射ユニットを備える流体噴射装置であって、
請求項1~
4いずれか一項に記載のカバー構造体を備えることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項6】
前記囲壁の内部から外部に気体を排気する排気装置を備えることを特徴とする請求項
5記載の流体噴射装置。
【請求項7】
前記流体として液体窒素を前記噴射ユニットに供給する液体窒素供給部を備えることを特徴とする請求項
5または
6記載の流体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバー構造体及び流体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、構造体の表面に付着した放射性物質等の付着物を除去するために、水等の流体を処理対象物の表面に噴射する流体噴射装置が開示されている。また、近年においては、水に換えて液体窒素を噴射することによって、処理対象物の加工や洗浄を行う流体噴射装置も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-113593号公報
【文献】米国特許第7310955号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特に放射性物質の除去を行う場合等には、除去された物質が周囲に拡散することを防止するために、流体の噴射スポットを囲うようなシュラウドを設けることが好ましい。一方で、上述のような流体噴射装置によって処理対象物に流体を噴射した場合には、主に流体が直接噴射される局所的な領域にて流体による処理が行われる。このため、処理対象物の表面の広い範囲にて処理を行う場合には、流体の噴射スポットを処理対象物の表面に沿って移動させる必要がある。
【0005】
しかしながら、噴射スポットを移動させるために噴射ユニットを移動させると、噴射ユニットの移動に伴ってシュラウドも移動される。この結果、シュラウドと処理対象物との間に大きな隙間が発生し、シュラウド内の物質がシュラウドの外部に漏出することが考えられる。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、噴射ユニットから処理対象物に流体を噴射する場合に、広範囲に流体を噴射可能としかつ流体や処理対象物から除去された物質の外部への漏出を抑止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0008】
第1の発明は、カバー構造体であって、処理対象物の表面に噴射される流体を噴射する噴射ユニットを囲うと共に上記噴射ユニットが挿通される挿通開口部を有する囲壁と、上記噴射ユニットを上記囲壁の上記挿通開口部内で移動可能としかつ上記囲壁の上記挿通開口部を閉塞する閉塞部材とを備えるという構成を採用する。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記噴射ユニットから噴射された上記流体が通過する上記囲壁の噴射側開口の縁部に設けられ、上記処理対象物の表面に吸着可能な吸盤部を備えるという構成を採用する。
【0010】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記囲壁が、外部から上記囲壁の内部に外気を吸入する吸気口と、上記噴射ユニットを挟んで上記吸気口と反対側に配置されると共に上記囲壁の内部から外部に気体を排気する排気口とを有するという構成を採用する。
【0011】
第4の発明は、上記第1~第3いずれかの発明において、上記噴射ユニットから噴射される上記流体の噴出経路を囲み、上記噴射ユニットに固定されて上記噴射ユニットと共に上記囲壁に対して移動可能とされた内側シュラウドを備えるという構成を採用する。
【0012】
第5の発明は、上記第1~第4いずれかの発明において、上記噴射ユニットを移動させる移動装置を備えるという構成を採用する。
【0013】
第6の発明は、処理対象物の表面に噴射される流体を噴射する噴射ユニットを備える流体噴射装置であって、上記第1~第5いずれかの発明であるカバー構造体を備えるという構成を採用する。
【0014】
第7の発明は、上記第6の発明において、上記囲壁の内部から外部に気体を排気する排気装置を備えるという構成を採用する。
【0015】
第8の発明は、上記第6または第7の発明において、上記流体として液体窒素を上記噴射ユニットに供給する液体窒素供給部を備えるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、囲壁に噴射ユニットが挿通される挿通開口部が設けられ、この挿通開口部が、噴射ユニットを上記囲壁の挿通開口部内で移動可能とする閉塞部材によって閉塞されている。このため、本発明によれば、噴射ユニットを挿通開口部内で移動させることができ、広範囲に流体を噴射することができる。さらに、本発明によれば、囲壁と閉塞部材とで流体が噴射される領域が覆われるため、流体や処理対象物から除去された物質が外部に漏出することを抑止できる。したがって、本発明によれば、噴射ユニットから処理対象物に流体を噴射する場合に、広範囲に流体を噴射可能としかつ流体や処理対象物から除去された物質の外部への漏出を抑止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態におけるカバーユニットの模式的な断面図を含む除染装置の模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態におけるカバーユニットの外観斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態におけるカバーユニットの噴射ユニットが移動される様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係るカバー構造体及び流体噴射装置の一実施形態について説明する。
【0019】
図1は、本実施形態のカバーユニット3(カバー構造体)の模式的な断面図を含む除染装置1(液体窒素噴射装置)の模式図である。この図に示すように、除染装置1は、液体窒素噴射システム2と、カバーユニット3と、第1回収ユニット4と、第2回収ユニット5とを備えている。
【0020】
液体窒素噴射システム2は、噴射ユニット2aと、液体窒素供給部2bとを備えている。噴射ユニット2aは、略棒状の部位であり、液体窒素供給部2bから内部流路に供給された液体窒素を先端から噴射する。液体窒素を噴射する場合における噴射ユニット2aの姿勢は任意であるが、ここでは説明の便宜上、噴射ユニット2aの長手方向(延伸する方向)を鉛直方向と称し、この鉛直方向と直交する方向を水平方向と称する。このような噴射ユニット2aは、液体窒素を噴射する先端部が除染対象物X(処理対象物)の表面に対向配置された状態で、液体窒素供給部2bから供給された液体窒素を除染対象物Xの表面に向けて噴射する。また、噴射ユニット2aは、カバーユニット3の後述するステージ装置3dによって水平方向に移動可能とされ、カバーユニット3の後述する外側シュラウド3bに対して相対的に移動可能とさている。液体窒素供給部2bは、噴射ユニット2aの後端と接続されており、液体窒素を予め定められた圧力まで昇圧して噴射ユニット2aに供給する。
【0021】
カバーユニット3は、内側シュラウド3aと、外側シュラウド3b(囲壁)と、柔軟性閉塞部材3cと、ステージ装置3d(移動装置)と、吸盤部3eとを備えている。内側シュラウド3aは、噴射ユニット2aから噴射される液体窒素の噴射方向に向けて開口された容器状の部位であり、噴射ユニット2aの先端部に固定されている。この内側シュラウド3aは、噴射ユニット2aから噴射される液体窒素の噴出経路を囲んでいる。このような内側シュラウド3aは、液体窒素が噴射されることによって除染対象物Xから剥離した放射性物質が内側シュラウド3aの外側に拡散することを抑止する。また、本実施形態において内側シュラウド3aは、ステージ装置3dによって移動される噴射ユニット2aと共に外側シュラウド3bに対して移動可能とされている。
【0022】
図2は、カバーユニット3の外観斜視図である。この図に示すように、外側シュラウド3bは、鉛直方向から見て矩形状とされている。この外側シュラウド3bは、鉛直方向における両端が開放端とされた枠状形状とされている。
図1に示すように、これら両方の開放端のうち一方側は、噴射ユニット2aが挿通される挿通開口部3b1とされている。また、開放端の他方側は、噴射ユニット2aの先端から噴射された液体窒素が通過する噴射側開口部3b2とされている。このような外側シュラウド3bは、噴射ユニット2aを水平方向において外側から囲っており、ステージ装置3dを内包かつ支持している。上述の噴射ユニット2aは、ステージ装置3dによって、外側シュラウド3bの挿通開口部3b1内で移動可能とされている。つまり、外側シュラウド3bは、噴射ユニット2aの移動可能範囲を囲うように配置されている。
【0023】
また、外側シュラウド3bは、外部から外側シュラウド3bの内部に外気を吸入する吸気口3b3と、外側シュラウド3bの内部から外部に内部気体を排気する排気口3b4とを有している。排気口3b4には、第2回収ユニット5が接続されている。また、排気口3b4は、鉛直方向と沿った方向から見て噴射ユニット2aを挟んで吸気口3b3と反対側に設けられている。このように、排気口3b4を吸気口3b3と反対側に配置することによって、外側シュラウド3bの内部にて、噴射ユニット2aを通過して吸気口3b3から排気口3b4に向かう気流を形成することができる。
【0024】
このような外側シュラウド3bは、噴射ユニット2aの移動範囲すなわち内側シュラウド3aの移動範囲を囲うように配置されており、内側シュラウド3a内部から漏出した放射性物質を、柔軟性閉塞部材3cと共に外部空間に漏出することを防止する。
【0025】
柔軟性閉塞部材3cは、噴射ユニット2aを外側シュラウド3bの挿通開口部3b1内で移動可能としかつ外側シュラウド3bの挿通開口部3b1を閉塞する部材であり、噴射ユニット2aの移動に追従するように柔軟性のある部材によって形成されている。この柔軟性閉塞部材3cは、鉛直方向から見た中央部が外側シュラウド3bから遠ざかる方向に膨出すると共に当該中央部に噴射ユニット2aが通過する貫通孔3c1が設けられている。また、柔軟性閉塞部材3cの縁部は、外側シュラウド3bの挿通開口部3b1の縁部に固定されている。このような柔軟性閉塞部材3cは、
図2に示すように、外側シュラウド3bの内部が外部から見て露出しないように、外側シュラウド3bの内側の全体を被覆している。
【0026】
図3(a)及び
図3(b)は、噴射ユニット2aが移動される様子を示す模式図である。これらの図に示すように、噴射ユニット2aが移動されると、柔軟性閉塞部材3cは、外側シュラウド3bの挿通開口部3b1を閉塞したままで、噴射ユニット2aの移動に追従して変形する。
【0027】
ステージ装置3dは、噴射ユニット2aを移動させるための装置であり、例えば遠隔操作の指令に基づいて噴射ユニット2aを移動させる。本実施形態において、ステージ装置3dはいわゆるXYステージ装置であり、噴射ユニット2aを外側シュラウド3bに囲われた領域内で任意の位置に水平移動させる。
【0028】
吸盤部3eは、外側シュラウド3bの噴射された液体窒素が通過する噴射側開口部3b2の縁部の全域に設けられている。この吸盤部3eは、除染対象物Xの表面に鉛直方向から押し付けられることによって、除染対象物Xの表面に吸着可能とされている。このような吸盤部3eは、噴射ユニット2aから液体窒素を噴射する場合の反力や、ステージ装置3dによる噴射ユニット2aの移動によって、外側シュラウド3bが除染対象物Xに対して移動することを規制する。
【0029】
第1回収ユニット4は、吸引ホース4aと、回収部4bとを備えている。吸引ホース4aは、内側シュラウド3aに接続されており、内側シュラウド3aの内部と回収部4bとを連通させる柔軟性を有するホースである。この吸引ホース4aは、柔軟性閉塞部材3cの中央部に設けられた貫通孔を通過することによって柔軟性閉塞部材3cを貫通している。回収部4bは、吸引ホース4aを介して吸引する内側シュラウド3aの内部気体に含まれる粉塵を回収するものである。この回収部4bは、内側シュラウド3aの内部の気体を排気すると共に粉塵を捕捉する集塵機4b1(排気装置)等を備えている。
【0030】
第2回収ユニット5は、吸引ホース5aと、回収部5bとを備えている。吸引ホース5aは、外側シュラウド3bの排気口3b4と接続されており、外側シュラウド3bの内部と回収部5bとを連通させるホースである。回収部5bは、吸引ホース5aを介して吸引する外側シュラウド3bの内部気体に含まれる粉塵を回収するものである。この回収部5bは、外側シュラウド3bの内部の気体を排気すると共に粉塵を捕捉する集塵機5b1(排気装置)等を備えている。
【0031】
このような構成の除染装置1によって除染対象物Xの除染を行う場合には、まずカバーユニット3の吸盤部3eを除染対象物Xの表面に吸着させる。これによって、外側シュラウド3bが除染対象物Xに対して固定される。このように外側シュラウド3bが固定された状態でステージ装置3dによって噴射ユニット2aを水平方向に移動させながら、噴射ユニット2aの先端から液体窒素を除染対象物Xの表面に噴射する。
【0032】
液体窒素が除染対象物Xに噴射されると、液体窒素の気化膨張力によって除染対象物Xの表面に付着した放射性物質が除染対象物Xから剥離される。剥離された放射性物質は、気化した液体窒素と共に第1回収ユニット4によって内側シュラウド3aの内部から回収される。
【0033】
このような第1回収ユニット4の回収によって多くの放射性物質が回収されるが、一部の放射性物質が内側シュラウド3aの外側に漏出する場合がある。このように内側シュラウド3aの外側に漏出した放射性物質は、第2回収ユニット5によって外側シュラウド3bの内部から空気等と共に回収される。
【0034】
以上のような本実施形態の除染装置1及び除染装置1が備えるカバーユニット3によれば、外側シュラウド3bに噴射ユニット2aが挿通される挿通開口部3b1が設けられ、この挿通開口部3b1が、噴射ユニット2aを外側シュラウド3bの挿通開口部3b1内で移動可能とする柔軟性閉塞部材3cによって閉塞されている。このため、カバーユニット3によれば、噴射ユニット2aを挿通開口部3b1内で移動させることができ、広範囲に液体窒素を噴射することができる。さらに、カバーユニット3によれば、外側シュラウド3bと柔軟性閉塞部材3cとで液体窒素が噴射される領域が覆われるため、液体窒素や除染対象物Xから除去された物質が外部に漏出することを抑止できる。したがって、カバーユニット3によれば、噴射ユニット2aから除染対象物Xに液体窒素を噴射する場合に、広範囲に液体窒素を噴射可能としかつ液体窒素や除染対象物Xから除去された物質の外部への漏出を抑止することが可能となる。
【0035】
また、本実施形態においてカバーユニット3は、噴射ユニット2aから噴射された液体窒素が通過する外側シュラウド3bの噴射側開口部3b2の縁部に設けられ、除染対象物Xの表面に吸着可能な吸盤部3eを備えている。このため、噴射ユニット2aから液体窒素を噴射する場合の反力や、ステージ装置3dによる噴射ユニット2aの移動によって、外側シュラウド3bが除染対象物Xに対して移動することを規制することができる。したがって、外側シュラウド3bと除染対象物Xの表面との間に隙間が形成されることを防止し、外側シュラウド3bから放射性物質が漏出することをより確実に防止することが可能となる。
【0036】
また、本実施形態においてカバーユニット3は、外側シュラウド3bが、外部から外側シュラウド3bの内部に外気を吸入する吸気口3b3と、噴射ユニット2aを挟んで吸気口3b3と反対側に配置されると共に外側シュラウド3bの内部から外部に気体を排気する排気口3b4とを有している。このように、排気口3b4を吸気口3b3と反対側に配置することによって、外側シュラウド3bの内部にて、噴射ユニット2aを通過して吸気口3b3から排気口3b4に向かう気流を形成することができる。したがって、外側シュラウド3bの内部の物質をより確実に第2回収ユニット5に回収させることが可能となる。
【0037】
また、本実施形態においてカバーユニット3は、噴射ユニット2aから噴射される液体窒素の噴出経路を囲み、噴射ユニット2aに固定されて噴射ユニット2aと共に外側シュラウド3bに対して移動可能とされた内側シュラウド3aを備えている。このような内側シュラウド3aを備えることによって、除染対象物Xから剥離された放射性物質の多くを内側シュラウド3aで捉えることができ、より確実に放射性物質が漏出することを防止することが可能となる。
【0038】
また、本実施形態においてカバーユニット3は、噴射ユニット2aを移動させるステージ装置3dを備えている。このため、作業員が直接的に噴射ユニット2aを移動させなくても、遠隔操作にて噴射ユニット2aを移動させることが可能となる。
【0039】
また、本実施形態において除染装置1は、外側シュラウド3bの内部から外部に気体を排気する集塵機5b1を備えている。このため、気化した液体窒素や剥離された放射性物質が外側シュラウド3bの内部に滞留することを防止し、除染処理を長期に渡って連続的に行うことが可能となる。
【0040】
また、本実施形態において除染装置1は、液体窒素を噴射ユニット2aに供給する液体窒素供給部2bを備えている。このため、液体窒素を噴射することで除染することができる。このような液体窒素は、噴射後に気化するため、噴射ユニット2aから噴射した流体が除染装置1の周囲に残存することを防止することができる。
【0041】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0042】
例えば、上記実施形態においては、第2回収ユニット5の吸引ホース5aを外側シュラウド3bの側壁に接続する構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第2回収ユニット5の吸引ホース5aを柔軟性閉塞部材3cに設置するようにしても良い。このように柔軟性閉塞部材3cに吸引ホース5aを設置することによって、外側シュラウド3bの側方に吸引ホース5aが突出して接続されることを防ぐことができ、外側シュラウド3bから側方に突出する部位をなくすことができる。このため、外側シュラウド3bを障害物の近くまで近づけて配置することができ、狭い箇所にて除染処理を行うことが可能となる。
【0043】
また、上記実施形態においては、柔軟性閉塞部材3cによって外側シュラウド3bの挿通開口部3b1を閉塞する構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、噴射ユニット2aを移動可能に閉塞する閉塞部材を採用することが可能とである。例えば、両端の各々が巻き出し及び巻き取り可能なロールに接続された帯状部材に噴射ユニット2aを貫通させ、この帯状部材を閉塞部材として用いることも可能である。
【0044】
また、上記実施形態においては、内側シュラウド3aと外側シュラウド3bとの2つのシュラウドを備える構成について説明した。しかしながら、これら2つのシュラウドのうち、内側シュラウド3aを設けない構成を採用することも可能である。
【0045】
また、上記実施形態においては、液体窒素を噴射ユニット2aから噴射する構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、水等の液体、窒素ガス等の気体、研磨剤等の粉体を噴射ユニット2aから噴射する構成を採用することも可能である。つまり、噴射ユニット2aから噴射可能な流体には、液体の他、気体や粉体も含まれる。
【0046】
また、上記実施形態においては、流体を噴射することによって除染を行う構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明は、液体窒素を噴射してコンクリート構造物の表面をはつり加工等する構成を採用することも可能である。
【0047】
また、上記実施形態においては、ステージ装置3dによって噴射ユニット2aが移動可能な構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ロボットアーム等を用いて噴射ユニット2aを移動させる構成を採用することも可能である。さらに、ステージ装置3dやロボットアーム等の移動装置の他に、先端部を処理対象物に向けたまま噴射ユニット2aを鉛直方向と平行な軸心を中心として旋回させる機構を備えても良い。
【0048】
また、上記実施形態において、外側シュラウド3bの内部の気流の流れを調整するために、外側シュラウド3bの内部に補助ガスを供給する補助ガス供給部を備えるようにしても良い。例えば、補助ガス供給部によって、外側シュラウド3b内に旋回流を形成するようにしても良い。
【0049】
また、上記実施形態においては、外側シュラウド3bが吸気口3b3と排気口3b4とを1つずつ備える構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。外側シュラウド3bが吸気口3b3と排気口3b4を複数備える構成を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0050】
1……除染装置(液体噴射装置)
2……液体窒素噴射システム
2a……噴射ユニット
2b……液体窒素供給部
3……カバーユニット(カバー構造体)
3a……内側シュラウド
3b……外側シュラウド(囲壁)
3b1……挿通開口部
3b2……噴射側開口部
3b3……吸気口
3b4……排気口
3c……柔軟性閉塞部材(閉塞部材)
3c1……貫通孔
3d……ステージ装置(移動装置)
3e……吸盤部
4……第1回収ユニット
4a……吸引ホース
4b……回収部
4b1……集塵機
5……第2回収ユニット
5a……吸引ホース
5b……回収部
5b1……集塵機(排気装置)
X……除染対象物(処理対象物)