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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】水流発電システム
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/10 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
F03B13/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018096276
(22)【出願日】2018-05-18
(65)【公開番号】P2019199861
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-01-12
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度から平成29年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「海洋エネルギー技術研究開発/海洋エネルギー発電システム実証研究/水中浮遊式海流発電」共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】清水 真之
(72)【発明者】
【氏名】半田 典久
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-169696(JP,A)
【文献】実開昭62-150587(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/00-13/26
F03B 17/00-17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンと、
前記タービンに取り付けられたタービンシャフトと、
前記タービンシャフトによる回転駆動力を受けて発電する発電機を含む発電ポッドと、
前記発電ポッドに対する前記タービンシャフトの位置を前記タービンの径方向に移動可能なシャフト移動機構と、を備え、
前記シャフト移動機構は、前記タービンシャフトを回転可能に支持する軸受と、前記タービンの径方向に延在し前記軸受を支持する支持部材と、前記支持部材を前記タービンの径方向に移動させる駆動部と、を含む、
水流発電システム。
【請求項2】
前記発電機の回転軸と、前記タービンシャフトとを連結する自在継手を備え、
前記タービンシャフトは、前記回転軸に対して移動可能である、
請求項1に記載の水流発電システム。
【請求項3】
水平方向に対する前記発電ポッドの傾きを検出する姿勢検出部と、
前記発電ポッドの傾きに基づいて、前記タービンシャフトの位置を制御する制御部と、
を更に備える請求項1又は2に記載の水流発電システム。
【請求項4】
タービンと、
前記タービンに取り付けられたタービンシャフトと、
前記タービンシャフトによる回転駆動力を受けて発電する発電機を含む発電ポッドと、
前記発電ポッドに対する前記タービンシャフトの位置を前記タービンの径方向に移動可能なシャフト移動機構と、
水平方向に対する前記発電ポッドの傾きを検出する姿勢検出部と、
前記発電ポッドの傾きに基づいて、前記タービンシャフトの位置を制御する制御部と、
を備える水流発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水流発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、水底のシンカーに対して係留され、水中を浮遊しながら発電する水流発電装置がある(例えば特許文献1参照)。水流発電装置は、水流を受けて回転するタービンと、タービンの回転駆動力を受けて発電する発電機と、発電機を収容し水中を浮遊する発電ポッドと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-13721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の水流発電装置では、タービンの回転中心となるタービンシャフトは、発電ポッドに対して、同じ位置で回転する。本開示は、発電ポッドに対するタービンシャフトの位置を変更可能な水流発電システムを説明する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る水流発電システムは、タービンと、タービンに取り付けられたタービンシャフトと、タービンシャフトによる回転駆動力を受けて発電する発電機を含む発電ポッドと、発電ポッドに対するタービンシャフトの位置をタービンの径方向に移動可能なシャフト移動機構と、を備え、シャフト移動機構は、タービンシャフトを回転可能に支持する軸受と、タービンの径方向に延在し軸受を支持する支持部材と、支持部材をタービンの径方向に移動させる駆動部と、を含む。
【0006】
水流発電システムのタービンは、水中に配置されて水流を受けて回転する。タービンは、タービンシャフトを回転中心として回転する。タービンの回転は、タービンシャフトを介して発電機に伝達される。この発電システムは、シャフト移動機構を備えるので、発電ポッドに対するタービンシャフトの位置を、タービンの径方向に移動させることができる。
【0007】
また、本開示の一態様に係る水流発電システムにおいて、シャフト移動機構は、タービンシャフトを回転可能に支持する軸受と、タービンの径方向に延在し、軸受を支持する支持部材と、支持部材をタービンの径方向に移動させる駆動部と、を含んでいる。これにより、軸受を支持する支持部材を移動させて、タービンシャフトの位置を変えることができる。
【0008】
いくつかの態様において、水流発電システムは、発電機の回転軸と、タービンシャフトとを連結する自在継手を備え、タービンシャフトは、回転軸に対して移動可能である構成でもよい。これにより、発電機の回転軸に対して、タービンシャフトの位置を変えることができる。発電機の位置を変えずに、タービンシャフトの位置を変えることができる。
【0009】
本開示の一態様に係る水流発電システムは、タービンと、タービンに取り付けられたタービンシャフトと、タービンシャフトによる回転駆動力を受けて発電する発電機を含む発電ポッドと、発電ポッドに対するタービンシャフトの位置をタービンの径方向に移動可能なシャフト移動機構と、水平方向に対する発電ポッドの傾きを検出する姿勢検出部と、発電ポッドの傾きに基づいて、タービンシャフトの位置を制御する制御部と、を備えている。この水流発電システムは、タービンシャフトの位置を変更して、タービンの位置を変化させて、発電ポッドに作用するモーメントを変化させることができる。その結果、発電ポッドの傾きを変化させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示の発電システムによれば、発電ポッドに対するタービンシャフトの位置を変更して、タービンの回転中心を移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一実施形態に係る水中浮遊式発電システムを示す概略図である。
図2図1中の発電ポッドを示す断面図である。
図3図3(a)は、傾斜した状態の発電ポッドを示す概略図である。図3(b)は、タービンシャフト移動後の発電ポッドを示す概略図である。図3(c)は、発電ポッドに作用するモーメントを示す概略図である。図3(d)は、姿勢が修正された後の発電ポッドを示す概略図である。
図4】水中浮遊式発電システムの制御ユニットを示すブロック構成図である。
図5】タービンシャフトの移動制御の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1に示される水中浮遊式発電システム(水流発電システム)1は、例えば海水中に設置され、海流FWを利用して発電を行う。以下、水中浮遊式発電システム1を「発電システム1」と記す。また、海流FWの上流側を前側、海流FWの下流側を後側として説明する。なお、図1図3において、交差する3方向(X方向、Y方向、Z方向)を矢印で図示している。X方向は、水平方向であって、海流FWに沿う方向である。Y方向は、水平方向であって、X方向と交差する方向である。Z方向は、鉛直方向である。
【0014】
発電システム1は、水流発電装置2を含む。以下、水流発電装置2を「発電装置2」と記す。発電装置2は、例えば左右に離間して配置された一対の発電ポッド3を備える。発電ポッド3は、水中を浮遊可能な浮体である。発電装置2は、一対の発電ポッド3間に配置された中央ポッドを備える構成でもよい。一対の発電ポッド3は、例えばクロスビーム(強度部材)によって連結されている。発電装置2は、一対の発電ポッド3を備えるものに限定されず、1つの発電ポッド3を備えるものでもよく、3つ以上の複数の発電ポッド3を備えるものでもよい。
【0015】
発電ポッド3の前部3aは海流FWの上流側に配置され、後部3bは海流FWの下流側に配置されている。発電ポッド3の後部3bには、タービン4が設けられている。発電ポッド3は、例えば円筒状を成す容器を含み、タービン4を回転可能に支持している。タービン4として、いわゆるダウンウィンド型のタービンが採用されている。なお、タービン4は、アップウィンド型のタービンであってもよい。図2に示されるように、発電ポッド3は、タービン4の回転駆動力によって発電する発電機5を収容する。
【0016】
発電ポッド3は、図1に示されるように、海底Bに配置されたシンカー(又はアンカー)6に対して、係留索7を介して接続されている。シンカー6は例えば摩擦式のシンカーでもよく、その他のシンカーでもよい。アンカーは、パイル式のアンカーでもよく、サクション式のアンカーでもよく、その他のアンカーでもよい。
【0017】
係留索7の下端はシンカー6に接続され、係留索7の上端は発電ポッド3に接続されている。係留索7の上端は、例えば一対の発電ポッド3に対してそれぞれ接続されている。係留索7は、発電ポッド3に代えて、中央ポッドに接続されていてもよく、クロスビームに接続されていてもよい。発電ポッド3に対しては、例えば長さを調整することで発電ポッド3の深度を変えることが可能な深度調整用のロープ等は接続されていない。
【0018】
発電ポッド3には送電ケーブル8が接続されている。送電ケーブル8は、係留索7に沿って配置されていてもよい。送電ケーブル8の一端は、発電ポッド3内の発電機5に接続されている。送電ケーブル8の他端は、例えばシンカー6において、海底送電ケーブル9に接続されている。送電ケーブル8は、シンカー6に設けられた中継器(例えば変圧器を含む)を介して、海底送電ケーブル9に接続されている。海底送電ケーブル9は、海底Bに敷設されて、例えば地上の電力系統(外部電源等)に接続されている。発電機5によって発電された電力は、送電ケーブル8及び海底送電ケーブル9を通じて、電力系統に送電される。同様に、電力系統から発電ポッド3に給電することもできる。
【0019】
図2に示されるように、タービン4は、ハブ10と、ハブ10に設けられた複数枚(例えば2枚)のブレード11と、を含んでいる。ダウンウィンド型のタービンを採用した発電システム1においては、海流FWの向きを基準として、発電ポッド3の下流側にブレード11が配置されている。
【0020】
ハブ10には、回転中心となるタービンシャフト12が連結されている。タービンシャフト12は、ハブ10及びブレード11と一体となって回転する。タービンシャフト12は、後述するジョイントユニット21を介して、発電機5の回転軸13と連結されている。回転軸13は、タービンシャフト12が延在する方向に沿って配置されている。タービン4の回転軸線L4は、発電機5の回転軸13の回転軸線L5と平行に配置されている。図2に示す状態において、回転軸線L4,L5は、X方向に延在している。回転軸13は、発電ポッド3の中心軸線に沿って配置されている。ブレード11の回転による駆動力は、タービンシャフト12を介して、発電機5の回転軸13に伝達される。例えば、発電ポッド3には、回転軸13の回転数を計測する回転数センサが設けられている。回転数センサには、レゾルバ又はエンコーダ等が搭載されている。検出した回転数に関する情報は、後述する制御ユニット31(図4参照)に送信される。
【0021】
発電システム1において、ブレード11のピッチ角度は可変になっている。発電システム1は、ブレード11のピッチ角度を調整可能なピッチ角度調整装置を備える。ピッチ角度調整装置は、例えば油圧式の駆動装置と、ブレード軸とを備える。より詳細には、各ブレード11の基端部には、ブレード軸が設けられている。このブレード軸に、駆動装置が連結されている。駆動装置は、例えばハブ10内に搭載される。駆動装置は、例えば、歯車機構を含んでいる。駆動装置としては、公知の機構を用いることができる。駆動装置は、ブレード軸を回転させて、ブレード11のピッチ角度を任意の角度に調整可能である。駆動方法は、油圧でなくとも良く、電動モータ等を用いる電動式の駆動方法でもよい。
【0022】
また、駆動装置には、ブレード11のピッチ角度を検出するピッチ角度センサが設けられている。ブレード11のピッチ角度とは、ブレード軸の軸回りの回転角度である。ピッチ角度センサには、例えばレゾルバ又はエンコーダ等を搭載されている。発電システム1では、ピッチ角度を変えることで、発電ポッド3に作用するタービンスラスト力の大きさを変化させることができる。
【0023】
発電システム1は、浮力調整機構38を備える(図4参照)。浮力調整機構38は、発電ポッド3に搭載されている。浮力調整機構38は、発電ポッド3との間で例えば海水を注排水して発電ポッド3を含む浮体全体の重量を変化させる。浮力調整機構38は、発電ポッド3内に設けられたタンクと、タンクと発電ポッド3の外部とを接続する注排水管と、注排水管に設けられたポンプとを含む。タンクは、所定の容量を有する貯水タンクである。ポンプは、タンクに水(例えば、海水)を注排水する。ポンプは、例えば発電機5で発電された電力によって駆動される。ポンプは、例えば送電ケーブル8を用いて供給された電力によって駆動されるものでもよい。また、ポンプは、発電ポッド3に搭載されたバッテリから供給された電力によって駆動されてもよい。浮力調整機構38は、発電ポッド3に設けられているものに限定されず、発電ポッド3に連結された他のポッドに設けられていてもよい。
【0024】
ここで、発電システム1は、発電ポッド3に対するタービンシャフト12の位置をタービン4の径方向に移動可能なシャフト移動機構14を備えている。図2示される状態において、タービンシャフト12は例えばZ方向に移動可能となっている。
【0025】
発電ポッド3のタービン4側の壁体15には、板厚方向に貫通する開口部16が設けられている。壁体15は、発電ポッド3の円筒部の一方の開口を覆うように配置されている。開口部16は、X方向から見て、壁体15の中央に配置されている。タービンシャフト12は、開口部16を貫通し、発電ポッド3の内部から外部まで延びている。開口部16の内径は、タービンシャフト12の外径よりも大きい。開口部16の大きさは、タービンシャフト12の移動範囲に対応している。開口部16は、例えば、長穴形状でもよく、円形でもよく、その他の形状でもよい。
【0026】
発電ポッド3の壁体15の外面には、ベローズ17が設けられている。ベローズ17は、開口部16の周囲に設けられた蛇腹部である。ベローズ17は、タービンシャフト12が延在する方向に伸縮可能な筒状部を含む。ベローズ17の一方の端部は、壁体15の外面に密着している。ベローズ17の他方の端部には、シール部(水密構造)が設けられている。これにより、発電ポッド3内への海水の浸入が防止されている。なお、その他の水密構造によって、発電ポッド3内への海水の浸入を防止してもよい。
【0027】
発電ポッド3には、タービンシャフト12を回転可能に支持する軸受18が設けられている。シャフト移動機構14は、軸受18と、軸受18を支持する支持ロッド(支持部材)19と、支持ロッド19を移動させる駆動部20とを含む。タービンシャフト12及び回転軸13は、ジョイントユニット21を介して接続されている。ジョイントユニット21は、発電ポッド3の内部で、タービンシャフト12と回転軸13とを接続する。
【0028】
ジョイントユニット21は、タービンシャフト12の端部に連結された第1自在継手22と、回転軸13の端部に連結された第2自在継手23と、これらの第1自在継手22及び第2自在継手23を連結する連結棒24とを含む。タービンシャフト12は、第1自在継手22によって、連結棒24に対する角度が自由に変化する。連結棒24は、第2自在継手23によって、回転軸13に対する角度が自由に変化する。
【0029】
軸受18は、支持ロッド19を介して、発電ポッド3に対して支持されている。支持ロッド19は、棒状の部材であり、タービン4の径方向に延在している。支持ロッド19の長手方向は、タービンシャフト12の移動方向に沿って配置されている。図2に示す状態において、支持ロッド9はZ方向に延在している。支持ロッド9は、その他の方向に沿って配置されていてもよい。支持ロッド19の一端は、軸受18に連結されている。軸受18は、支持ロッド19と一体となって移動する。支持ロッド19の他端は、駆動部20に連結されている。
【0030】
駆動部20は、例えば電動モータを含む。駆動部20は、発電ポッド3の側壁25に対して固定されている。側壁25は、発電ポッド3の円筒部を構成する壁体である。駆動部20は、電動モータの出力を支持ロッド19に伝達する動力伝達機構を含む。動力伝達機構は、例えば、電動モータの回転軸に設けられた歯車(ピニオン)と、支持ロッド19に設けられた歯(ラック)とを含む。これにより、電動モータの出力が、支持ロッド19に伝達される。支持ロッド19は、その長手方向に移動して、軸受18を移動させる。駆動部20は、例えば油圧シリンダを含んでもよい。駆動部20は、油圧シリンダによって、支持ロッド19をその長手方向に移動させてもよい。シャフト移動機構14は、支持ロッド19の移動方向を案内するガイド機構を備えていてもよい。
【0031】
また、発電機5は、支持台26によって支持されて、発電ポッド3の側壁25に対して固定されている。支持台26及び駆動部20は、タービンシャフト12の周方向において、例えば同じ位置に配置されていてもよい。支持台26及び駆動部20は、例えば、鉛直方向の下方から支持されて、発電ポッド3に対して固定されている。支持台26及び駆動部20は、タービンシャフト12の周方向において、異なる位置に配置されていてもよい。また、駆動部20及び支持ロッド19は、タービンシャフト12が延在する方向において、変位するものでもよい。
【0032】
シャフト移動機構14は、駆動部20によって支持ロッド19を移動させて、軸受18及びタービンシャフト12を移動させる。軸受18及びタービンシャフト12は、支持ロッド19の長手方向に移動する。これにより、発電ポッド3に対して、タービンシャフト12及びタービン4を移動させることができる。
【0033】
次に図3を参照して、発電ポッド3の姿勢の修正について説明する。発電装置2の重心Gは、発電ポッド3の長手方向において、発電ポッド3の中央よりも前部3a側に配置されている。また、発電装置2の重心Gは、図3(d)に示されるように、軸線L5がX方向に延在している状態において、軸線L5よりも下方に配置されている。発電装置2の重心Gはその他の位置でもよい。例えば軸線L5は、発電ポッド3の中心軸線に沿って延在している。
【0034】
図3(a)では、軸線L5がX方向に対して傾斜している状態を示している。例えば、軸線L5上において、発電ポッド3の後部3bは、発電ポッド3の前部3aよりも高い位置に配置されている。この状態において、タービン4のハブ10は、発電ポッド3の前部3aよりも高い位置に配置されている。
【0035】
図3(a)に示される状態では、タービンシャフト12が延在する方向を示す軸線L4は、例えば軸線L5と一致している。この状態から図3(b)に示されるように、タービンシャフト12を移動させる。具体的には、軸線L5と交差する方向において、重心Gから離れる方向にタービンシャフト12を移動させる。タービンシャフト12は、位置P1(図2参照)に配置される。
【0036】
タービンシャフト12を移動させると、図3(c)に示されるように、タービンスラスト力P4が作用する位置が変化する。タービンスラスト力P4は、タービン4が回転することで発電ポッド3に対して生じる力であり、タービンシャフト12の軸線方向に沿う力である。軸線L5と交差する方向において、タービンスラスト力P4が作用する位置が、重心Gから離れることで、発電ポッド3に作用するモーメントMが変化する。このモーメントMによって、発電ポッド3の後部3bには、Y方向に延在する軸線周りに、下向きの力が大きくなる。これにより、発電ポッド3の後部3bは下向きに変位し、発電ポッド3の前部3aは上向きに変位する。そして、図3(d)に示されるように、発電ポッド3の軸線L5がX方向と沿うように、発電ポッド3の姿勢が修正される。例えば、海流FWの向きと、発電ポッド3の軸線L5と平行となるように、発電ポッド3及びタービン4の姿勢を修正してもよい。
【0037】
次に図4を参照して、タービンシャフトの移動を制御するシャフト移動制御システムについて説明する。シャフト移動制御システムは、制御ユニット31を含む。制御ユニット31は、発電ポッド3に収容されている。制御ユニット31は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)等のハードウェアと、ROMに記憶されたプログラム等のソフトウェアとから構成されたコンピュータである。
【0038】
制御ユニット31には各種センサが接続されている。各種センサとしては、例えば深度センサ36、姿勢検出部37等がある。その他の各種センサとして、上記の回転数センサ、ピッチ角度センサ等が挙げられる。また、各種センサとして、タービンシャフト12の位置を検出する位置検出部(ポジションメータ)が接続されていてもよい。
【0039】
深度センサ36は、発電ポッド3の深度を検出する。深度センサ36は、発電ポッド3に搭載されている。深度センサ36としては、例えば、水圧を検知する圧力センサ等を用いることができる。深度センサ36により検出される発電ポッド3の深度に関する情報は、制御ユニット31に入力される。姿勢検出部37は、発電ポッド3の姿勢を検出するセンサである。姿勢検出部37としては、例えば、発電ポッド3のピッチ角度(傾き)を検出するジャイロセンサを用いることができる。姿勢検出部37により検出される発電ポッド3のピッチ角度の情報は、制御ユニット31に出力される。発電ポッド3のピッチ角度は、例えばY方向に延在する軸線周りの発電ポッド3の軸線L5の角度である。
【0040】
制御ユニット31は、入力部32、判定部33、制御部34及び記憶部35を備える。制御ユニット31には、浮力調整機構38及びシャフト移動機構14が電気的に接続されている。
【0041】
入力部32は、各種センサから出力された情報を入力する。入力部32は、深度センサ36から発電ポッド3の深度に関する情報を入力する。入力部32は、姿勢検出部37から発電ポッド3の姿勢に関する情報を入力する。
【0042】
判定部33は、入力部32で取得した情報に基づいて、タービンシャフト12の位置を変更させるか否かを判定する。判定部33は、例えば、発電ポッド3の姿勢に基づいて、タービンシャフト12の位置を変更させるか否かを判定する。判定部33は、発電ポッド3のピッチ角度が判定閾値よりも大きい場合に、タービンシャフト12の位置を変更すると判定することができる。判定部33は、発電ポッド3の深度に基づいて、タービンシャフト12の位置を変更させるか否かを判定してもよい。例えば、発電ポッド3が水面近傍で浮遊している状態において、ブレード11が水面から突出している場合に、タービンシャフト12の位置を変更すると判定してもよい。これにより、タービンシャフト12の位置を下げることで、ブレード11が水面から突出しないようにすることができる。
【0043】
制御部34は、タービンシャフト12の位置を変更する際に、シャフト移動機構14に指令信号を送信して、タービンシャフト12を移動させる。制御部34は、例えば、タービンシャフト12の移動方向及び移動量について演算する。制御部34は、タービンシャフト12に対して、タービンシャフト12の移動方向及び移動量に関する指令信号を送信する。また、制御部34は、浮力調整機構38に指令信号を送信して、タービンシャフト12の移動に連動して、発電ポッド3の深度を変更してもよい。また、制御部34は、タービンシャフト12の移動に連動して、タービン4の回転数を変更してもよい。例えば、タービン4の回転数を変更して、発電ポッド3に作用するタービンスラスト力P4を変更してもよい。
【0044】
記憶部35は、入力部32に入力した情報を記憶する。また、記憶部35は、判定部33で使用される判定閾値に関する情報を記憶する。記憶部35は、タービンシャフト12の移動方向及び移動量を演算するために必要な情報を記憶する。必要な情報としては、例えば、発電装置2の重心Gの位置に関する情報、タービンスラスト力に関する情報などが挙げられる。
【0045】
次に、図5に示されるフローチャートを参照して、制御ユニット31で実行されるタービンシャフトの移動制御の手順について説明する。ここでは、タービンシャフト12を移動させて、発電ポッド3の姿勢を変更する場合について説明する。
【0046】
まず、姿勢検出部37は、発電ポッド3の姿勢に関する情報として、発電ポッド3のピッチ角度を検出する(ステップS1)。制御ユニット31の入力部32は、姿勢検出部37で検出した発電ポッド3の姿勢に関する情報を入力する。
【0047】
制御ユニット31の判定部33は、タービンシャフト12の位置を変更するか否かを判定する(ステップS2)。判定部33は、例えば発電ポッド3のピッチ角度が判定閾値を超える場合に、タービンシャフト12の位置を変更すると判定する(ステップS2;YES)。判定部33は、発電ポッド3のピッチ角度が判定閾値以下の場合に、タービンシャフトの位置を変更しないと判定する(ステップS2;NO)。タービンシャフト12の位置を変更する場合には、ステップS3に進み、タービンシャフト12の位置を変更しない場合には、ここでの処理を終了する。
【0048】
ステップS3では、制御ユニット31の制御部34は、シャフト移動機構14に指令信号を送信して、シャフト移動機構14を制御して、タービンシャフト12の位置を変更する。例えば、図3(a)に示されるように発電ポッド3の前部3aが下向きの姿勢となっている場合には、タービンシャフト12の位置を上方の位置P1(図2参照)に移動させる。発電ポッド3の前部3aが上向きの姿勢となっている場合には、タービンシャフト12の位置を下方の位置P2に移動させる。
【0049】
このような発電システム1では、シャフト移動機構14を備えるので、発電ポッド3に対するタービンシャフト12の位置を、タービン4の径方向に移動させることができる。
【0050】
シャフト移動機構14は、駆動部20によって、支持ロッド19を移動させて、軸受18及びタービンシャフト12を変位させる。これにより、ハブ10及び11をタービン4の径方向に移動させることができ、発電ポッド3に対するタービン4の回転中心を移動させることができる。
【0051】
発電システム1は、ジョイントユニット21を備え、発電機5の回転軸13と、タービンシャフト12とが、第1自在継手22及び第2自在継手23を介して接続されている。これにより、回転軸13に対して、タービンシャフト12を変位させた状態で、タービンシャフト12の回転を回転軸13に伝達して、回転軸13をその軸線周りに回転させることができる。発電システム1では、タービンシャフト12及び回転軸13を回転させながら、回転軸13に対するタービンシャフト12の相対的な位置を変えることができる。
【0052】
発電システム1は、X方向に対する発電ポッド3の姿勢を検出する姿勢検出部37と、発電ポッド3の姿勢に基づいて、タービンシャフト12の位置を制御する制御部34と、を備える。発電システム1は、タービンシャフト12の位置を変更して、タービン4の位置を変化させて、発電ポッド3に作用するモーメントMを変化させることができる。これにより、発電ポッド3に作用するモーメントMを変化させて、発電ポッド3の傾きを修正することができる。
【0053】
本開示は、前述した実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で下記のような種々の変形が可能である。
【0054】
上記の実施形態では、タービンシャフト12をタービン4の径方向のうち、上下方向(Z方向)に移動させる場合について説明しているが、タービンシャフト12の移動方向は、上下方向に限定されない。シャフト移動機構は、タービンシャフト12をY方向に移動させてもよく、Z方向及びY方向に対して傾斜する方向にタービンシャフト12を移動させてもよい。シャフト移動機構は、異なる方向に延在する複数の支持ロッド19を備える構成でもよい。シャフト移動機構は、例えば発電ポッド3に対して、駆動部20を移動させてもよい。シャフト移動機構は、複数の支持ロッド19に対して、それぞれ駆動部20を備える構成でもよい。
【0055】
上記の実施形態では、発電機5の回転軸13に対して、タービンシャフト12を移動させているが、発電システムはその他の構成でもよい。発電システムは、発電ポッド3に対する発電機5の位置をタービン4の径方向に移動させる発電機移動機構を備える構成でもよい。これにより、発電機5と共に、タービンシャフト12を移動させることができる。発電機移動機構は、例えば駆動部(電動モータ、油圧シリンダ)及びガイド部(ガイド溝、ガイドレール)を備えていてもよい。
【0056】
上記の実施形態では、自在継手を介して、タービンシャフト12の回転を、回転軸13に伝達しているが、タービンシャフト12の回転力を回転軸13に伝達する動力伝達機構は、その他の構成でもよい。この動力伝達機構は、例えば、複数の歯車、動力伝達ベルト、動力伝達軸等を含んでもよい。
【0057】
上記の実施形態では、水中浮遊式発電システム1について説明しているが、水流発電システムは、例えば潮流発電システムでもよく、その他の水流を利用した発電システムでもよい。また、水流発電システムは、海中に設置されるものに限定されず、河川、湖等に設置されるものでもよく、その他の場所に設置されるものでもよい。また、発電システムは、例えば船舶等の移動体に接続されて移動しながら発電するものでもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 発電システム(水中浮遊式発電システム、水流発電システム)
2 発電装置(水流発電装置)
3 発電ポッド
4 タービン
5 発電機
12 タービンシャフト
13 回転軸(発電機の回転軸)
14 シャフト移動機構
18 軸受
19 支持ロッド(支持部材)
20 駆動部
22 第1自在継手
23 第2自在継手
34 制御部
37 姿勢検出部
図1
図2
図3
図4
図5