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特許7000998分析用閾値生成装置及び分析用閾値生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】分析用閾値生成装置及び分析用閾値生成方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/41 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
G01N21/41 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018108514
(22)【出願日】2018-06-06
(65)【公開番号】P2019211366
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2020-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 敦
(72)【発明者】
【氏名】糸長 誠
(72)【発明者】
【氏名】小野 雅之
(72)【発明者】
【氏名】岩間 茂彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅弘
【審査官】大河原 綾乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-070782(JP,A)
【文献】特開平08-062274(JP,A)
【文献】特開2010-109195(JP,A)
【文献】特開2015-194405(JP,A)
【文献】特開2015-194403(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02871762(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0074776(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N33/543 - G01N33/556
G01N21/00 - G01N21/01
G01N21/17 - G01N21/61
G01N15/00 - G01N15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象物質と前記検出対象物質に結合する粒子とが表面に固定された分析用基板に照射光を照射し、前記照射光による前記分析用基板からの反射光を受光して受光レベル信号を生成する光ピックアップと、
前記受光レベル信号に含まれるパルスのパルス幅について一対の閾値、または前記パルスのパルス振幅について一対の閾値を生成する閾値演算部と、
前記パルス幅がパルス幅についての一対の閾値の範囲内に存在するかを判定するか、または前記パルス振幅がパルス振幅についての一対の閾値の範囲内に存在するかを判定するパルス判定部と、
前記パルス判定部が前記生成された一対の閾値の範囲内に存在すると判定したパルスを計数し、前記計数したパルスの計数値を出力するパルス計数部と、
前記閾値演算部が生成した一対の閾値と、前記パルス計数部が出力した計数値と、に基づいて、分析に用いる一対の閾値を生成する閾値補正部と、
を備え、
前記閾値演算部は、前記パルス計数部がパルスを計数するごとに、前記一対の閾値のうちの少なくとも一方の閾値を変化させた新たな一対の閾値を、所定の値に至るまで繰り返し生成し、
前記閾値補正部は、前記生成された各一対の閾値を階級とし、前記パルス計数部が出力した前記計数値を度数とした度数分布に基づいて、前記分析に用いる一対の閾値を生成することを特徴とする分析用閾値生成装置。
【請求項2】
前記閾値補正部は、前記度数分布が最頻値をとる階級の値に基づいて、前記分析に用いる一対の閾値を生成する請求項に記載の分析用閾値生成装置。
【請求項3】
前記度数分布はヒストグラムであり、前記閾値補正部は前記ヒストグラムの積分値に基づいて前記分析に用いる一対の閾値を生成する請求項に記載の分析用閾値生成装置。
【請求項4】
前記閾値補正部は分析条件と関連付けて前記分析に用いる一対の閾値を記憶部に記憶させる請求項1~3のいずれか1項に記載の分析用閾値生成装置。
【請求項5】
検出対象物質と前記検出対象物質に結合する粒子とが表面に固定された分析用基板に照射光を照射する照射ステップと、
前記照射光による前記分析用基板からの反射光を受光して受光レベル信号を生成する信号生成ステップと、
前記受光レベル信号に含まれるパルスが、パルス幅について設定された一対の閾値、または前記パルスがパルス振幅について設定された一対の閾値の範囲内に存在するかを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて、前記設定された一対の閾値の範囲内に存在すると判定されたパルスを計数し、前記計数したパルスの計数値を出力する計数値出力ステップと、
前記計数値出力ステップにおいてパルスを計数するごとに、前記一対の閾値のうちの少なくとも一方の閾値を変化させた新たな一対の閾値を、所定の値に至るまで繰り返し生成する第一閾値生成ステップと、
生成された各一対の閾値と前記計数値出力ステップで出力された計数値とに基づいて、分析に用いる一対の閾値を生成する第二閾値生成ステップと、
を含み、
前記第二閾値生成ステップにおいて、前記生成された各一対の閾値を階級とし、前記計数値出力ステップで出力された前記計数値を度数とした度数分布に基づいて、前記分析に用いる一対の閾値を生成する分析用閾値生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析用閾値生成装置及び分析用閾値生成方法に関する。詳細には、本発明は、抗原、抗体等の生体物質を分析するための分析用閾値生成装置及び分析用閾値生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
疾病に関連付けられた特定の抗原又は抗体をバイオマーカーとして検出することで、疾病の発見及び治療の効果等を定量的に分析する免疫検定法(immunoassay)が知られている。酵素により標識された抗原又は抗体を検出するELISA法(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)は免疫検定法の一つであり、コスト等のメリットから広く普及している。
【0003】
しかしながら、ELISA法は、前処理、抗原抗体反応、B/F(bond/free)分離、酵素反応等を合計した時間が数時間から1日程度であり、分析に長時間を要する。そこで、光ディスクに固定された抗体と試料中の抗原を結合させ、抗原に抗体が設けられた粒子をさらに結合させ、光ヘッドで走査することにより、光ディスク上に捕捉された粒子を短時間に計数する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、光ディスクのトラッキング構造が形成される面に生体試料及び粒子を付着させ、光ピックアップで信号の変化を検出する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-5741号公報
【文献】特表2002-530786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ディスクからの反射信号に含まれるパルスを利用することにより、光ディスクに付着した粒子を計数することが可能である。この際、パルスにはノイズに起因するパルスも含まれるため、パルス振幅及びパルス幅などに所定の条件を設けることで、粒子に起因するパルスを選択的に計数し、粒子に結合した検出対象物質を計数することを行っている。
【0006】
しかしながら、粒子に起因するパルスであると判定するための、パルス振幅及びパルス幅に関する条件が固定されたままだと、同じサンプルを分析してもばらつきが発生するために計数結果が変化してしまい、分析精度が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、粒子を計数する際の条件によらず検出対象物質を計数することが可能な分析用閾値生成装置及び分析用閾値生成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の態様に係る分析用閾値生成装置は、分析用基板に照射光を照射し、照射光による分析用基板からの反射光を受光して受光レベル信号を生成する光ピックアップを備える。分析用基板には、検出対象物質と検出対象物質に結合する粒子とが表面に固定されている。分析用閾値生成装置は、受光レベル信号に含まれるパルスのパルス幅について一対の閾値、またはパルスのパルス振幅について一対の閾値を生成する閾値演算部を備える。分析用閾値生成装置は、パルス幅がパルス幅についての一対の閾値の範囲内に存在するかを判定するか、またはパルス振幅がパルス振幅についての一対の閾値の範囲内に存在するかを判定するパルス判定部を備える。分析用閾値生成装置は、パルス判定部が生成された一対の閾値の範囲内に存在すると判定したパルスを計数し、計数したパルスの計数値を出力するパルス計数部を備える。分析用閾値生成装置は、閾値演算部が生成した一対の閾値と、パルス計数部が出力した計数値と、に基づいて、分析に用いる一対の閾値を生成する閾値補正部を備える。閾値演算部は、パルス計数部がパルスを計数するごとに、一対の閾値のうちの少なくとも一方の閾値を変化させた新たな一対の閾値を、所定の値に至るまで繰り返し生成する。
【0009】
本発明の態様に係る分析用閾値生成方法は、検出対象物質と検出対象物質に結合する粒子とが表面に固定された分析用基板に照射光を照射する照射ステップを含む。分析用閾値生成方法は、照射光による分析用基板からの反射光を受光して受光レベル信号を生成する信号生成ステップを含む。分析用閾値生成方法は、受光レベル信号に含まれるパルスが、パルス幅について設定された一対の閾値、またはパルスがパルス振幅について設定された一対の閾値の範囲内に存在するかを判定する判定ステップを含む。分析用閾値生成方法は、判定ステップにおいて、設定された一対の閾値の範囲内に存在すると判定されたパルスを計数し、計数したパルスの計数値を出力する計数値出力ステップを含む。分析用閾値生成方法は、計数値出力ステップにおいてパルスを計数するごとに、一対の閾値のうちの少なくとも一方の閾値を変化させた新たな一対の閾値を、所定の値に至るまで繰り返し生成する第一閾値生成ステップを含む。分析用閾値生成方法は、生成された各一対の閾値と計数値出力ステップで出力された計数値とに基づいて、分析に用いる一対の閾値を生成する第二閾値生成ステップを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、粒子を計数する際の条件によらず検出対象物質を計数することが可能な分析用閾値生成装置及び分析用閾値生成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る分析用閾値生成装置を含む分析装置の構成を示すブロック図である。
図2】反応領域を有する分析用基板の一例を示す上面図である。
図3】反応領域のトラック領域に粒子が捕獲されている状態を拡大して示した上面図である。
図4】検出対象物質が抗体と粒子とによってトラック領域の凹部にサンドイッチ捕獲されている状態を示す模式的な断面図である。
図5】本実施形態に係るディスクドライブの一例を示す概略図である。
図6】第1実施形態に係る分析用閾値生成方法の一例を示すフローチャートである。
図7】本実施形態に係る計数テーブルの一例を示す図である。
図8】ヒストグラムの最頻値に基づいて一対の閾値を演算する方法を説明する図である。
図9】ヒストグラムの積分値に基づいて一対の閾値を演算する方法を説明する図である。
図10】第2実施形態に係る分析用閾値生成装置の構成を示すブロック図である。
図11】第2実施形態に係る分析用閾値生成方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施形態に係る分析用閾値生成装置及び分析用閾値生成方法について説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0013】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態に係る分析用閾値生成装置及び分析用閾値生成方法について詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る分析用閾値生成装置100は、パルス検出回路30と、システム制御部40と、を備える。この実施形態では、分析用閾値生成装置100と、ディスクドライブ20とを備えた分析装置200を例として説明する。
【0015】
ディスクドライブ20では、分析用基板10が再生される。分析用基板10は、例えば、ブルーレイディスク(BD)、DVD、コンパクトディスク(CD)等の光ディスクと同等の円板形状を有する。分析用基板10は、例えば、一般的に光ディスクに用いられるポリカーボネート樹脂又はシクロオレフィンポリマー等の樹脂材料で形成されている。なお、分析用基板10は、上記の光ディスクに限定されるものではなく、他の形態又は所定の規格に準拠した光ディスクを用いることもできる。
【0016】
図2に示すように、分析用基板10は、反応領域11を有する。反応領域11は、検出対象物質13、粒子14及び抗体15などが固定された分析対象となる領域である(図4参照)。本実施形態では、分析用基板10の中心部に位置決め孔12が形成されており、分析用基板10の中心Caに対して同一円周Cb上に中心部がそれぞれ位置するように、8つの反応領域11が等間隔に形成されている。ただし、反応領域11の数又は形成位置はこれに限定されるものではない。
【0017】
図3に示すように、分析用基板10の表面には、凸部10aと凹部10bとが半径方向に交互に配置されたトラック領域10cが形成されている。凸部10a及び凹部10bは、分析用基板10の内周部から外周部に向かってスパイラル状に形成されている。凸部10aは光ディスクのランドに相当する。凹部10bは光ディスクのグルーブに相当する。凹部10bの半径方向のピッチに相当するトラックピッチは例えば320nmである。
【0018】
図3及び図4に示すように、分析用基板10の表面には、検出対象物質13と検出対象物質13に結合する粒子14とが固定されている。分析用基板10の表面には、検出対象物質13と特異的に結合する抗体15が固定されている。抗体15は検出対象物質13を認識して結合し、検出対象物質13が分析用基板10の表面に捕捉される。一方、粒子14には検出対象物質13を認識する抗体16が複数設けられており、粒子14は抗体16を介して検出対象物質13と結合し、サンドイッチ構造を形成している。
【0019】
検出対象物質13は、例えば疾病に関連付けられた特定のタンパク質などの抗原である。このような抗原を検出対象物質13として用いることにより、疾病の発見などに役立てることができる。例えばエクソソームなどの検出対象物質13は、モニタリング対象の疾患状態に応じ、体液内の濃度が変化するため、バイオマーカーとしての役割を果たすことができる。検出対象物質13であるエクソソームの大きさは100nm程度である。
【0020】
粒子14は、検出対象物質13の標識となる。粒子14としては、特に限定されないが、例えばポリマー粒子、金属粒子、シリカ粒子などの標識用ビーズなどが挙げられる。粒子14は、内部にフェライト等の磁性材料を含む磁気ビーズなどであってもよい。粒子14の大きさは200nm程度である。
【0021】
図5に示すように、ディスクドライブ20は、ターンテーブル21と、クランパ22と、ターンテーブル駆動部23と、ガイド軸24と、光ピックアップ25と、を備える分析用基板駆動装置である。ディスクドライブ20は、周知の情報再生用ディスクドライブを用いることができる。
【0022】
ターンテーブル21上には、反応領域11が形成された面が下向きになるように分析用基板10が載置される。
【0023】
クランパ22は、ターンテーブル21に対して離隔する方向及び接近する方向、すなわち、図5の上方向及び下方向に駆動される。分析用基板10は、クランパ22が下方向に駆動されると、クランパ22とターンテーブル21とによって、ターンテーブル21上に保持される。具体的には、分析用基板10の中心Caがターンテーブル21の回転軸C1上に位置するように保持される。
【0024】
ターンテーブル駆動部23は、ターンテーブル21を分析用基板10及びクランパ22と共に、回転軸C1回りに回転駆動させる。ターンテーブル駆動部23としてスピンドルモータを用いてもよい。ターンテーブル駆動部23は、ドライブ制御部44のターンテーブル駆動回路44aによって制御される。
【0025】
ガイド軸24は、分析用基板10と平行に、かつ、分析用基板10の半径方向に沿って配置されている。すなわち、ガイド軸24は、ターンテーブル21の回転軸C1に直交する方向に沿って配置されている。
【0026】
光ピックアップ25はガイド軸24に支持されている。光ピックアップ25は、ガイド軸24に沿って、ターンテーブル21の回転軸C1に直交する方向であり、分析用基板10の半径方向に、かつ、分析用基板10と並行に駆動される。光ピックアップ25は、ドライブ制御部44の光ピックアップ駆動回路44bによって制御される。
【0027】
光ピックアップ25は対物レンズ25aを備えている。光ピックアップ25は分析用基板10に照射光25bを照射する。照射光25bは例えばレーザ光である。照射光25bは対物レンズ25aによって分析用基板10の表面に集光される。分析用基板10を回転させた状態で光ピックアップ25が分析用基板10の半径方向に駆動されることにより、照射光25bは凹部10bに沿って走査される。
【0028】
光ピックアップ25は照射光25bによる分析用基板10からの反射光を受光して受光レベル信号JSを生成する。図1に示すように、光ピックアップ25は、受光レベル信号JSをパルス検出回路30のパルス情報抽出部31へ出力する。
【0029】
図1に示すように、パルス検出回路30は、パルス情報抽出部31と、パラメータ記憶部32と、パルス判定部33と、パルス計数部34と、を備える。
【0030】
パルス検出回路30は、ディスクドライブ20から出力された受光レベル信号JSを取得し、粒子14に起因するパルス信号の解析を行うことで検出対象物質13の計数情報を取得する。パルス検出回路30は、例えば専用回路基板などのハードウェアである。
【0031】
パルス情報抽出部31は、受光レベル信号JSに含まれるパルスからパルス情報を抽出する。パルス情報には、例えば、パルス幅及びパルス振幅などが含まれる。パルス情報抽出部31は、パラメータ記憶部32に記憶されている抽出パラメータの設定値を読み出し、抽出パラメータの設定値に基づいて受光レベル信号JSに含まれるパルス情報を抽出してもよい。例えば、パルス情報としてパルス幅を抽出する場合、パルス幅を抽出するための抽出電圧Vthを抽出パラメータとし、抽出電圧Vthにおけるパルス幅をパルス情報として抽出してもよい。また、パルス情報としてパルス振幅を抽出する場合、パルスのピーク値などをパルス情報として抽出してもよい。抽出されたパルス情報は、パルス判定部33に出力される。
【0032】
パラメータ記憶部32は、抽出パラメータと判定パラメータとを含むパルス関連パラメータの設定値を記憶する。判定パラメータは受光レベル信号JSに含まれるパルスが粒子14に起因するパルスか否かを判定するために用いられる。本実施形態において、判定パラメータの設定値は閾値である。判定パラメータとしては、例えば、パルス振幅の上限側の閾値電圧である振幅上限電圧V、パルス振幅の下限側の閾値電圧である振幅下限電圧V、パルス幅の上限側の閾値時間であるパルス幅上限時間T、パルス幅の下限側の閾値時間であるパルス幅下限時間Tなどが挙げられる。
【0033】
パルス判定部33は、受光レベル信号JSに含まれるパルスが、パルス幅の方向またはパルス振幅の方向に設定された上限値及び下限値からなる一対の閾値の範囲内に存在するか否かを判定する。具体的には、パルス判定部33は、パルス幅がパルス幅についての一対の閾値の範囲内に存在するかを判定するか、またはパルス振幅がパルス振幅についての一対の閾値の範囲内に存在するかを判定する。パルス判定部33はパラメータ記憶部32から判定パラメータの設定値を読み出し、パルス情報抽出部31で抽出されたパルス情報が設定値の範囲内であった場合に、パルス判定部33は粒子14に起因したパルスと判定する。
【0034】
判定に用いる一対の閾値は、パルス幅及びパルス振幅の少なくともいずれか一方であってもよい。例えば、パルス判定部33は、抽出電圧Vthにおけるパルス幅がパルス幅下限時間T~パルス幅上限時間Tの範囲内である場合に、粒子14に起因したパルスと判定する。また、パルス判定部33は、パルス振幅が振幅下限電圧V~振幅上限電圧Vの範囲内である場合に、粒子14に起因したパルスと判定する。パルス判定部33は、受光レベル信号JSに含まれるパルスが粒子14に起因するパルスと判定した場合に、計数値がインクリメントされるようパルス計数部34に検出信号を出力する。
【0035】
パルス計数部34は一対の閾値の範囲内に存在するパルスを計数して計数値を出力する。具体的には、パルス計数部34は、検出信号をリアルタイムで取得し、粒子14に起因するパルスを計数する。計数値はパルス計数部34からシステム制御部40の閾値演算部41に出力されるが、ユーザが計数値を確認できるように計数値を表示部45に出力してもよい。なお、後述するように、閾値演算部41は、一対の閾値のうちの少なくとも一方の閾値を設定された変化分を単位として繰り返し変化させて、新たな一対の閾値を生成する。そして、パルス判定部33がその生成された一対の閾値の範囲内に存在すると判定したパルスを計数し、変化分ごとのパルスの計数値を出力する。
【0036】
図1に示すように、システム制御部40は、閾値演算部41と、パラメータ設定部42と、測定制御部43と、ドライブ制御部44と、表示部45と、閾値補正部46と、を備える。
【0037】
システム制御部40は、ディスクドライブ20及びパルス検出回路30を制御し、計数値、判定パラメータに関する演算処理及び設定を実施する。システム制御部40は、ソフトウェアプログラムがインストールされたコンピュータであってもよい。
【0038】
閾値演算部41は、後述する図6のフローチャートに示されるような補正測定及び本測定に関する処理を実行する。補正測定では、照射光25bの強度及び分析用基板10の反射特性の状態などに応じて一対の閾値を補正するための測定が実施される。本測定では、補正測定によって補正された一対の閾値で検出対象物質13が実際に分析される。
【0039】
閾値演算部41は、ドライブ制御部44に対し、光ピックアップ25の移動及び分析用基板10の回転などの補正測定に関する制御命令を出力する。
【0040】
閾値演算部41は、一対の閾値のうちの少なくとも一方の閾値を設定された変化分を単位として繰り返し変化させて、新たな一対の閾値を生成する。具体的には、閾値演算部41は、受光レベル信号JSに含まれるパルスのパルス幅について一対の閾値、またはパルスのパルス振幅について一対の閾値を生成する。そして、閾値演算部41は、パルス計数部34がパルスを計数するごとに、一対の閾値のうちの少なくとも一方の閾値を変化させた新たな一対の閾値を、所定の値に至るまで繰り返し生成する。閾値演算部41は、例えば上限又は下限の閾値のみを設定された変化分を単位として繰り返し変化させて、新たな一対の閾値を生成してもよい。また、閾値演算部41は、上限及び下限の閾値を設定された変化分を単位として繰り返し変化させて、新たな一対の閾値を生成してもよい。上限及び下限の閾値を変化させる場合は、上限と下限の間隔を一定に保ったまま両方の閾値を変化させてもよい。さらに、上限及び下限の閾値を変化させる変化量は必ずしも一定でなくてもよく、例えば所定の範囲においてその範囲外よりも変化量を小さく、または大きく設定してもよい。上述したように、パルス計数部34は、閾値演算部41が一対の閾値を生成するごとに、パルス判定部33が一対の閾値の範囲内に存在すると判定したパルスを計数し、変化分ごとのパルスの計数値を出力する。
【0041】
閾値補正部46は、閾値演算部41が生成した一対の閾値と、パルス計数部34が出力した計数値と、に基づいて、分析に用いる一対の閾値を生成する。
【0042】
後述するように、閾値補正部46は、生成された各一対の閾値を階級とし、パルス計数部34が出力した計数値を度数とした度数分布を生成してもよい。そして、閾値補正部46は度数分布に基づいて、分析に用いる一対の閾値を生成してもよい。また、閾値補正部46は度数分布が最頻値をとる階級の値に基づいて、分析に用いる一対の閾値を生成してもよい。度数分布はヒストグラムであってもよい。閾値補正部46はヒストグラムの積分値に基づいて、分析に用いる一対の閾値を生成してもよい。
【0043】
パラメータ設定部42は、閾値補正部46からの出力を受けて、設定すべきパラメータの値をパラメータ記憶部32に記憶させる。
【0044】
測定制御部43は、補正測定及び本測定の実施を管理する。測定制御部43は、ユーザによって補正測定又は本測定の実施の選択が可能な入力部を備えていてもよい。また、測定制御部43は、入力部で選択された情報に基づいて、ドライブ制御部44に計数の開始、中断及び終了などを命令したり、閾値演算部41及び閾値補正部46に演算処理を命令したりしてもよい。
【0045】
ドライブ制御部44は、測定制御部43からの入力を受け、ディスクドライブ20を制御する。ドライブ制御部44は、例えば、ディスクドライブ20において、分析用基板10の測定開始位置及び測定終了位置のような測定位置などを制御することができる。ドライブ制御部44は、例えば、ターンテーブル駆動回路44a、光ピックアップ駆動回路44bなどを備えていてもよい。
【0046】
ターンテーブル駆動回路44aはターンテーブル駆動部23を制御する。例えば、ターンテーブル駆動回路44aは、ターンテーブル21が分析用基板10及びクランパ22と共に一定の線速度で回転するようにターンテーブル駆動部23を制御する。
【0047】
光ピックアップ駆動回路44bは光ピックアップ25の駆動を制御する。例えば光ピックアップ駆動回路44bは、光ピックアップ25をガイド軸24に沿って移動させたり、光ピックアップ25の対物レンズ25aを上下方向に移動させたりする。
【0048】
ドライブ制御部44は、補正測定時において、閾値演算部41によって一対の閾値の少なくとも一方が変更されるごとに同じ位置を繰り返して測定するようディスクドライブ20を制御する。例えば、ドライブ制御部44は、光ピックアップ25が測定開始位置及び測定終了位置などに移動するよう光ピックアップ25を制御する。補正測定の時間を短くするため、補正測定の範囲は、本測定の範囲よりも狭いことが好ましい。具体的には、閾値演算部41で変化させて得られた新たな一対の閾値の範囲内に存在するパルスを計数する領域は、分析に用いる一対の閾値で計数する領域よりも狭いことが好ましい。
【0049】
測定開始位置及び測定終了位置は予め設定されていてもよく、補正測定時において所定の計数値が得られるように測定開始位置及び測定終了位置を決定してもよい。測定開始位置及び測定終了位置が予め設定されている場合、一対の閾値の少なくとも一方の閾値を変更しながら計数を繰り返すだけでよく、校正を簡略化することができるため好ましい。補正測定時において所定の計数値が得られるように測定開始位置及び測定終了位置を決定する場合、所定量以上の計数値で補正することができ、安定した補正を行うことができるため好ましい。この場合、閾値演算部41を介してディスクドライブ20の測定開始位置及び測定終了位置が制御される。ただし、本測定で測定される全測定対象領域を補正測定の対象とすると時間がかかるため、本測定の測定領域の中央付近であって、全測定対象領域よりも狭い範囲とすることが好ましい。
【0050】
表示部45は、補正測定又は本測定に関する情報をユーザに提示することができる。補正測定に関する情報としては、ユーザが次の処理を選択できるような補正測定の補正精度等の付加情報などが挙げられる。本測定に関する情報としては、本測定における計数値などが挙げられる。表示部45としては、ユーザに補正測定又は本測定に関する情報を提示することができれば特に限定されないが、例えばディスプレイ等が挙げられる。
【0051】
次に、図6に示すフローチャートを用いて本実施形態に係る分析用閾値生成方法における各工程を説明する。なお、本実施形態では、横軸を走査時間(走査位置)、縦軸を電圧とするグラフにおいて、粒子14が存在する場合は下に凸のパルスが発生する系について説明する。具体的には、本実施形態では、便宜上、振幅下限電圧V,振幅上限電圧V及び抽出電圧Vthが電圧に比例する0~+100の範囲の整数である場合について説明する。本実施形態では、反射光を何も検出しない場合の信号レベルを100、分析用基板10上に粒子14及び異物などが存在しない場合の信号レベルを基準電圧Vbaseとし、粒子14が存在する場合は基準電圧Vbaseより小さい値をとる系について説明する。なお、基準電圧Vbaseの値は、分析用基板10の状態及び照射光25bの強度などに依存する。
【0052】
ただし、本実施形態はこのような態様に限定されない。例えば、受光レベル信号の信号強度(電圧値)をそのまま用いてもよく、振幅下限電圧V,振幅上限電圧V及び抽出電圧Vthは小数であってもよい。また、基準電圧Vbaseを0としてもよく、パルスの極性を反転させて粒子14が存在する場合に上に凸のパルスが発生する系であってもよい。
【0053】
ステップS1では、補正測定を実施するか否かが選択される。閾値演算部41は、補正測定を実施する場合(YES)にはステップS2に処理を進め、補正測定を実施しない場合(NO)にはステップS10に処理を進める。光ピックアップ25のレーザの経年変化などの長期的な変動のみを考慮する場合は、補正測定を毎回する必要はないため、本測定のみを実施するためにステップS10に処理を進めてもよい。補正測定を実施するか否かは、ユーザがグラフィカルユーザインタフェース(GUI)などを介して選択してもよいし、使用期間又は使用回数などの情報に基づいて閾値演算部41が判定してもよい。
【0054】
ステップS2では、閾値演算部41は、振幅下限電圧Vの値を0に設定するようパラメータ設定部42を制御する。また、閾値演算部41は、振幅上限電圧Vの値を、予め設定された値である初期値VH0より十分大きな値であるVmaxに設定するようパラメータ設定部42を制御する。なお、振幅下限電圧V及び振幅上限電圧Vに代えてパルス幅上限時間T及びパルス幅下限時間Tを用いる場合は、閾値演算部41は、抽出電圧Vthの値を、予め設定された値である初期値Vth0に設定するようパラメータ設定部42を制御すればよい。そして、閾値演算部41は、ステップS3に処理を進める。
【0055】
ステップS3では、閾値演算部41は、粒子14を計数するようドライブ制御部44を制御する。具体的には、閾値演算部41は、光ピックアップ25を補正測定用の測定開始位置から測定終了位置まで分析用基板10の半径方向に移動させたり、分析用基板10を一定の速度で回転させたりするようドライブ制御部44を制御する。
【0056】
粒子14の計数は、パルス検出回路30で実施される。光ピックアップ25は、検出対象物質13と検出対象物質13に結合する粒子14とが表面に固定された分析用基板10に照射光25bを照射する(照射ステップ)。そして、光ピックアップ25は、照射光25bによる分析用基板10からの反射光を受光して受光レベル信号JSを生成する(信号生成ステップ)。生成された受光レベル信号JSに含まれるパルスのパルス情報はパルス情報抽出部31によって取得される。パルス判定部33は、受光レベル信号JSに含まれるパルスが、パルス幅について設定された一対の閾値、または受光レベル信号JSに含まれるパルスがパルス振幅について設定された一対の閾値の範囲内に存在するか否かを判定する(判定ステップ)。パルス判定部33は、受光レベル信号JSに含まれるパルスが一対の閾値の範囲内に存在すると判定した場合に、計数値がインクリメントされるようパルス計数部34に検出信号を出力する。パルス計数部34は、一対の閾値の範囲内に存在するパルスを計数して計数値を閾値演算部41へ出力する。すなわち、パルス計数部34は、判定ステップにおいて、設定された一対の閾値の範囲内に存在すると判定されたパルスを計数し、計数したパルスの計数値を出力する(計数値出力ステップ)。そして、ステップS4へ処理を進める。
【0057】
ステップS4では、閾値演算部41は、ステップS3の補正測定により得られた粒子14の計数値を、設定された振幅下限電圧Vの値と関連付けて計数テーブルに記憶する。そして、ステップS5へ処理を進める。
【0058】
ステップS5では、閾値演算部41は、パラメータ記憶部32に記憶された振幅下限電圧Vをインクリメントした値で再設定するようパラメータ設定部42を制御する。例えば、閾値演算部41は、設定された振幅下限電圧Vの値がVLnの場合、VLnをインクリメントしてパラメータ記憶部32の振幅下限電圧VをVLn+1=VLn+1(nは0以上Vmax未満の整数)とするようパラメータ設定部42に通知する。なお、本実施形態では、閾値演算部41は、元々の振幅下限電圧Vに1を加えているが、加える数値は1でなくてもよい。そして、閾値演算部41は、ステップS6へ処理を進める。
【0059】
ステップS6では、閾値演算部41は、振幅下限電圧Vの設定値がVmax以上となったか否かを判定する。閾値演算部41は、振幅下限電圧Vの設定値がVmax未満の場合(NO)にはステップS3へ処理を進め、振幅下限電圧Vの設定値がVmax以上の場合(YES)にはステップS7へ処理を進める。
【0060】
ステップS3~ステップS6により、閾値演算部41は、計数値出力ステップにおいて、パルス計数部34がパルスを計数するごとに、一対の閾値のうちの少なくとも一方の閾値を変化させた新たな一対の閾値を、所定の値に至るまで繰り返し生成している(第一閾値生成ステップ)。具体的には、閾値演算部41は、振幅下限電圧Vに1ずつ繰り返し加えて異なる一連の値、すなわち新たな一対の閾値に変化させ、複数の値の振幅下限電圧Vを得ている。ここで、振幅下限電圧Vの設定値が0~Vmaxまで計数された場合、例えば図7に示すような計数テーブルが完成する。
【0061】
図7の計数テーブルには、複数の値の閾値が左欄に記憶され、変化させて得られた一対の閾値ごとに計数された計数値が右欄に記憶されている。具体的には、計数テーブルには、振幅下限電圧Vの設定値Vにそれぞれ関連づけられた計数値Count(vn)が記憶されている。V=0からV=Vmaxで設定された場合のそれぞれの計数値は、Count(0)からCount(vmax)として計数テーブルに記憶されている。なお、計数値Count(vn)は、振幅下限電圧Vの設定値がVである場合の計数値を示している(ここでは、nは0~Vmaxの整数)。
【0062】
ステップS7では、パルス計数部34は、パルス判定部33が複数対の閾値における各一対の閾値の範囲内に存在すると判定したパルスを計数し、変化分ごとのパルスの計数値を出力している。本実施形態では、変化分ごとのパルスの計数値は、以下の数式(1)に示すように、dCount(vn)で表される。
【0063】
dCount(vn)=Count(vn)-Count(vn+1) (1)
【0064】
閾値補正部46は、各一対の閾値を階級とし、パルス計数部34が出力した計数値を度数とした度数分布を生成している。本実施形態では、度数分布をヒストグラムとし、振幅下限電圧Vを階級及びdCount(vn)を度数とし、V=0からV=Vmaxまでグラフ化することにより、図8に示すようなヒストグラムが得られる。そして、閾値補正部46は、ステップS8へ処理を進める。
【0065】
ステップS8では、閾値補正部46は、第一閾値生成ステップで生成された各一対の閾値と、計数値出力ステップで出力された計数値とに基づいて、分析に用いる一対の閾値を生成する(第二閾値生成ステップ)。閾値補正部46は、度数分布に基づいて、分析に用いる一対の閾値を生成してもよい。本実施形態では、閾値補正部46は、ヒストグラムに基づいて適切な振幅下限電圧V及び振幅上限電圧Vを生成する。
【0066】
閾値補正部46は度数分布が最頻値をとる階級の値に基づいて、分析に用いる一対の閾値を生成してもよい。図8では、度数分布がヒストグラムである例について説明している。ヒストグラムが最頻値をとる度数の値をdCount(vlc)とした場合の階級の値を電圧VLcとすると、電圧VLcは粒子14に起因したパルス信号の振幅の代表値であると考えられる。すなわち、電圧VLcは、分析用基板10に照射される光の強度並びに分析用基板10及び粒子14の反射特性などが考慮された信号の強度に略比例するパラメータと考えることができる。したがって、振幅下限電圧V及び振幅上限電圧Vは、得られた電圧VLcに基づいて補正することができる。同様に、抽出電圧Vthも、得られた電圧VLcに基づいて補正することができる。具体的には、出荷時における初期値から、以下の数式(2),数式(3)及び数式(4)に従って各パラメータの補正値を演算することができる。
【0067】
La=VLi(VLcp/VLci) (2)
Ha=VHi(VLcp/VLci) (3)
tha=Vthi(VLcp/VLci) (4)
【0068】
なお、数式(2)、数式(3)及び数式(4)中、VLi,VHi,Vthi及びVLciは、それぞれ、出荷時における振幅下限電圧V,振幅上限電圧V,抽出電圧Vth及び電圧VLcの初期値である。数式(2)、数式(3)及び数式(4)中、VLcpはヒストグラムから導き出された電圧VLcの値である。数式(2)、数式(3)及び数式(4)中、VLa,VHa及びVthaは、それぞれ、補正測定によって演算された振幅下限電圧V,振幅上限電圧V及び抽出電圧Vthの補正値である。
【0069】
なお、例えば、照射光25bを分析用基板10への照射用の光と光強度測定用の光に分岐させ、光強度の測定値に応じてパルス判定条件を補正する方法も考えられる。しかしながら、この方法では、分析用基板10や粒子14の光学特性のばらつきを考慮することはできない。また、分析用基板10に照射光25bを照射する前に光強度を測定するための光学システム及び測定システムを構築する必要がある。そのため、ディスクドライブ20に対するハードウェアの追加が必要となるため、構成の複雑化や高コスト化、及びディスクドライブ20自体の選定自由度の低下につながるおそれもある。一方、本実施形態に係る分析用閾値生成装置100及び分析用閾値生成方法によれば、分析用基板10に照射される光の強度並びに分析用基板10及び粒子14の反射特性などを考慮した一対の閾値が生成され得る。
【0070】
一方、図9に示すように、閾値補正部46はヒストグラムの積分値に基づいて、分析に用いる一対の閾値を生成してもよい。具体的には、得られたヒストグラムにおいて、図9の網掛け部で示すように、全積分値(全面積)に対する上限側及び下限側の積分値(面積)がそれぞれ所定の割合以下となる度数をそれぞれ振幅下限電圧VLa及び振幅上限電圧VHaと決定してもよい。この場合、ヒストグラムが正規分布でなく、電圧VLcがヒストグラムの中心からずれている場合であっても、上記のように所定の割合に基づいて一対の閾値を補正することができるため、安定した本測定が可能となる。所定の割合は適宜定めることができるが、例えば5%~10%としてもよい。
【0071】
なお、抽出電圧Vthをパルス振幅の半値とする場合は、以下の数式(5)に従って各パラメータの補正値を演算してもよい。
【0072】
th=(Vbase-VLcp)/2 (5)
【0073】
上記数式(5)中、VLcpはヒストグラムにより得られた電圧VLcの値であり、Vbaseは上述した基準電圧の値である。
【0074】
次に、ステップS9では、閾値補正部46は、計数テーブルに基づいて生成した振幅上限電圧V及び振幅下限電圧Vを、分析に用いる一対の閾値として再設定するようパラメータ設定部42を制御する。そして、閾値補正部46は、ステップS10へ処理を進める。
【0075】
ステップS10では、閾値補正部46は、分析に用いる一対の閾値で本測定による粒子14を計数するようドライブ制御部44を制御する。具体的には、閾値補正部46は、本測定用の測定開始位置から測定終了位置まで、光ピックアップ25を分析用基板10の半径方向に移動させたり、分析用基板10を一定の速度で回転させたりするようドライブ制御部44を制御する。
【0076】
ドライブ制御部44はディスクドライブ20を制御し、本測定用に設定された測定開始位置から測定終了位置まで分析用基板10を本測定し、パルス検出回路30において粒子14に起因するパルスを計数する。粒子14の計数は、分析に用いる一対の閾値で計数することを除き、ステップS3と同様に、パルス検出回路30で実施される。そして、閾値補正部46は、ステップS11へ処理を進める。
【0077】
ステップS11では、本測定での計数値が表示部45に表示され、本測定が終了する。
【0078】
上記実施形態では、一対の閾値のうちの一方の閾値を設定された変化分を単位として繰り返し変化させているが、一対の閾値のうちの両方の閾値を設定された変化分を単位として繰り返し変化させてもよい。例えば、ステップS2において、振幅下限電圧Vを0,振幅上限電圧Vを1とし、ステップS5でインクリメントしてVをVLn+1=VLn+1,VをVLn+1+1=VLn+2とすることで、dCount(vn)に相当する分布を直接求めてもよい。この場合、ステップS6における補正測定終了の条件は、Vの設定値がVmaxになった時などにしてもよい。
【0079】
本実施形態では、振幅下限電圧V又は振幅上限電圧Vを変化させながら計数し、振幅下限電圧V及び振幅上限電圧Vを補正する方法を説明した。しかしながら、パルス波形を正規分布として考えれば、パルス振幅とパルス幅は比例する。そのため、振幅下限電圧Vをパルス幅下限時間Tに、振幅上限電圧Vをパルス幅上限時間Tに置き換えて、同様の測定をしても、同等の効果が得られる。
【0080】
以上の通り、本実施形態に係る分析用閾値生成装置100は、分析用基板10に照射光25bを照射し、照射光25bによる分析用基板10からの反射光を受光して受光レベル信号JSを生成する光ピックアップ25を備える。分析用基板10には、検出対象物質13と検出対象物質13に結合する粒子14とが表面に固定されている。分析用閾値生成装置100は、受光レベル信号JSに含まれるパルスのパルス幅について一対の閾値、またはパルスのパルス振幅について一対の閾値を生成する閾値演算部41を備える。分析用閾値生成装置100は、パルス幅がパルス幅についての一対の閾値の範囲内に存在するかを判定するか、またはパルス振幅がパルス振幅についての一対の閾値の範囲内に存在するかを判定するパルス判定部33を備える。分析用閾値生成装置100は、パルス判定部33が生成された一対の閾値の範囲内に存在すると判定したパルスを計数し、計数したパルスの計数値を出力するパルス計数部34を備える。分析用閾値生成装置100は、閾値演算部41が生成した一対の閾値と、パルス計数部34が出力した計数値と、に基づいて、分析に用いる一対の閾値を生成する閾値補正部46を備える。閾値演算部41は、パルス計数部34がパルスを計数するごとに、一対の閾値のうちの少なくとも一方の閾値を変化させた新たな一対の閾値を、所定の値に至るまで繰り返し生成する。
【0081】
また、本実施形態に係る分析用閾値生成方法は、検出対象物質13と検出対象物質13に結合する粒子14とが表面に固定された分析用基板10に照射光25bを照射する照射ステップを含む。分析用閾値生成方法は、照射光25bによる分析用基板10からの反射光を受光して受光レベル信号JSを生成する信号生成ステップを含む。分析用閾値生成方法は、受光レベル信号JSに含まれるパルスが、パルス幅について設定された一対の閾値、またはパルスがパルス振幅について設定された一対の閾値の範囲内に存在するかを判定する判定ステップを含む。分析用閾値生成方法は、判定ステップにおいて、設定された一対の閾値の範囲内に存在すると判定されたパルスを計数し、計数したパルスの計数値を出力する計数値出力ステップを含む。分析用閾値生成方法は、計数値出力ステップにおいてパルスを計数するごとに、一対の閾値のうちの少なくとも一方の閾値を変化させた新たな一対の閾値を、所定の値に至るまで繰り返し生成する第一閾値生成ステップを含む。分析用閾値生成方法は、生成された各一対の閾値と計数値出力ステップで出力された計数値とに基づいて、分析に用いる一対の閾値を生成する第二閾値生成ステップを含む。
【0082】
そのため、分析用閾値生成装置100及び分析用閾値生成方法によれば、光ピックアップ25から分析用基板10への照射強度、並びに分析用基板10及び粒子14の反射特性が変動した場合であっても、判定パラメータを補正してパルスの検出を行うことができる。したがって、本実施形態に係る分析用閾値生成装置100及び分析用閾値生成方法によれば、粒子を計数する際の条件によらず検出対象物質13を計数することができる。
【0083】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る分析用閾値生成装置100及び分析用閾値生成方法について詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一の構成には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0084】
図10に示すように、本実施形態に係る分析用閾値生成装置100では、パラメータ選択部47をさらに備えている。
【0085】
パラメータ選択部47は、閾値補正部46で生成された、分析に用いる一対の閾値を分析条件と関連付けて記憶する記憶部である。すなわち、閾値補正部46は分析条件と関連付けて、分析に用いる一対の閾値を記憶部に記憶させている。また、分析に用いる一対の閾値は、補正された閾値とも言える。分析条件と関連づけて記憶された補正された一対の閾値は、例えばユーザが分析条件に応じて測定制御部43などを介して選択することができる。パラメータ選択部47は、測定制御部43からの指示に基づいて、分析条件と対応した補正された一対の閾値をパラメータ設定部42に出力し、パラメータ設定部42を介してパラメータ記憶部32に記憶させる。分析条件が同じ場合であれば、概ねヒストグラムの形状が同じであることを前提とすると、分析条件に応じてパルス関連パラメータを選択することにより、補正測定を本測定ごとに実施する必要がなくなる。
【0086】
分析条件は、例えば、分析用基板10及びディスクドライブ20などに起因して変化する。分析用基板10に起因する場合としては、例えば分析用基板10の種類及び表面状態、分析用基板10に粒子14を固定する方法、粒子14を固定するために用いた試薬、粒子14の種類並びに粒子の製造ロットを変更した場合などが挙げられる。ディスクドライブ20に起因する場合としては、例えばディスクドライブ20の機種、ディスクドライブ20の読み込み速度及びレーザーパワーの制御方法を変更した場合などが挙げられる。分析条件は、例えばディスクアッセイプロトコル1及びディスクアッセイプロトコル2などの名称で記憶されていてもよい。
【0087】
次に、図11に示すフローチャートを用いて本実施形態に係る分析用閾値生成方法における各工程を説明する。ステップS1~ステップS11は、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0088】
ステップS12では、例えばユーザが、パラメータ選択部47に記憶された補正された一対の閾値を選択するか否かを判定する。過去に同様の条件で補正測定されて補正された一対の閾値が記憶されている場合は、再度補正測定をせずに、例えばユーザなどがパラメータ選択部47に記憶されている補正された一対の閾値を選択し(YES)、ステップS10に処理を進める。一方、ユーザが新規の条件及び補正測定のやり直しを希望する場合などは、補正された一対の閾値を選択せず(NO)、ステップS2~ステップS8と同様の処理が実施され、ステップS13に処理を進める。
【0089】
ステップS13では、ステップS2~ステップS8による補正測定で生成された補正された一対の閾値が、分析条件と関連づけてパラメータ選択部47に記憶される。パラメータ選択部47に補正された一対の閾値を記憶しておくことにより、同様の条件で測定する時に、記憶された補正された一対の閾値を選択するだけで、補正測定を実施しなくても、補正測定を実施したのと大凡同様の精度で、本測定を実施することができる。
【0090】
そのため、本実施形態に係る分析用閾値生成装置100及び分析用閾値生成方法によれば、分析条件が異なっていても、それぞれの分析条件に適した補正された一対の閾値を選択することができる。したがって、本実施形態に係る分析用閾値生成装置100及び分析用閾値生成方法によれば、粒子を計数する際の条件によらず検出対象物質13を計数することができる。
【0091】
以上、実施例に沿って本実施形態の内容を説明したが、本実施形態はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【符号の説明】
【0092】
10 分析用基板、
13 検出対象物質、
14 粒子、
25 光ピックアップ、
25b 照射光、
33 パルス判定部、
34 パルス計数部、
41 閾値演算部、
46 閾値補正部、
100 分析用閾値生成装置、
JS 受光レベル信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11