(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】インバータ装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20220112BHJP
H02P 27/08 20060101ALI20220112BHJP
H02P 21/22 20160101ALI20220112BHJP
【FI】
H02M7/48 F
H02P27/08
H02P21/22
(21)【出願番号】P 2018214691
(22)【出願日】2018-11-15
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山根 和貴
(72)【発明者】
【氏名】名和 政道
【審査官】土井 悠生
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-301656(JP,A)
【文献】特開2009-232546(JP,A)
【文献】特開2014-23350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42-7/98
H02P 21/00-25/03
H02P 25/04
H02P 25/10-27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正負の母線間においてu,v,wの相毎の上下のアームを構成するスイッチング素子を有し、前記スイッチング素子のスイッチング動作に伴い直流電圧を交流電圧に変換してモータに供給するインバータ回路と、
角度情報とd,q軸電圧指令値に基づいてu,v,w相の電圧指令値に対応する波形の信号を生成する信号生成部と、
変調率または線間電圧実効値またはトルク指令値に基づいて、スイッチングタイミングを規定する第1定数を制御周期毎に生成する第1定数生成部と、
変調率または線間電圧実効値またはトルク指令値に基づいて、前記第1定数とは異なるスイッチングタイミングを規定する第2定数を制御周期毎に生成する第2定数生成部と、
前記信号生成部において生成したu,v,w相の電圧指令値に対応する波形の信号と前記第1定数生成部において生成した第1定数及び前記第2定数生成部において生成した第2定数とを比較して前記インバータ回路における上アーム用スイッチング素子のパルスパターン及び下アーム用スイッチング素子のパルスパターンを出力するコンパレータと、
を備えたことを特徴とするインバータ装置。
【請求項2】
前記第1定数生成部は、変調率または線間電圧実効値またはトルク指令値に更に回転速度情報に基づいて前記第1定数を制御周期毎に生成し、
前記第2定数生成部は、変調率または線間電圧実効値またはトルク指令値に更に回転速度情報に基づいて前記第2定数を制御周期毎に生成することを特徴とする請求項1に記載のインバータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インバータ装置においてPWM制御として、一般的に、電圧指令値と三角波を比較することによりスイッチング素子のパルスパターン(スイッチングパルス)を生成する三角波比較方式が用いられている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、
図9に示すように、スイッチング素子のパルスパターンの周波数は三角波(キャリア)周波数に依存する。また、パルスパターンのデューティは正弦波状の電圧指令値に依存する。その結果、任意のタイミングやデューティでオン/オフさせるパルスパターンの生成は困難である。
【0005】
本発明の目的は、任意のタイミングやデューティでオン/オフさせることができるパルスパターンを生成することができるインバータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するインバータ装置は、正負の母線間においてu,v,wの相毎の上下のアームを構成するスイッチング素子を有し、前記スイッチング素子のスイッチング動作に伴い直流電圧を交流電圧に変換してモータに供給するインバータ回路と、角度情報とd,q軸電圧指令値に基づいてu,v,w相の電圧指令値に対応する波形の信号を生成する信号生成部と、変調率または線間電圧実効値またはトルク指令値に基づいて、スイッチングタイミングを規定する第1定数を制御周期毎に生成する第1定数生成部と、変調率または線間電圧実効値またはトルク指令値に基づいて、前記第1定数とは異なるスイッチングタイミングを規定する第2定数を制御周期毎に生成する第2定数生成部と、前記信号生成部において生成したu,v,w相の電圧指令値に対応する波形の信号と前記第1定数生成部において生成した第1定数及び前記第2定数生成部において生成した第2定数とを比較して前記インバータ回路における上アーム用スイッチング素子のパルスパターン及び下アーム用スイッチング素子のパルスパターンを出力するコンパレータと、を備えたことを要旨とする。
【0007】
これによれば、第1定数生成部において、変調率または線間電圧実効値またはトルク指令値に基づいて、スイッチングタイミングを規定する第1定数が制御周期毎に生成される。第2定数生成部において、変調率または線間電圧実効値またはトルク指令値に基づいて、第1定数とは異なるスイッチングタイミングを規定する第2定数が制御周期毎に生成される。そして、コンパレータにおいて、信号生成部において生成したu,v,w相の電圧指令値に対応する波形の信号と第1定数生成部において生成した第1定数及び第2定数生成部において生成した第2定数とが比較されてインバータ回路における上アーム用スイッチング素子のパルスパターン及び下アーム用スイッチング素子のパルスパターンが出力される。よって、各定数を調整することにより任意のタイミングやデューティでオン/オフさせることができるパルスパターンを生成することができる。
【0008】
また、インバータ装置において、前記第1定数生成部は、変調率または線間電圧実効値またはトルク指令値に更に回転速度情報に基づいて前記第1定数を制御周期毎に生成し、前記第2定数生成部は、変調率または線間電圧実効値またはトルク指令値に更に回転速度情報に基づいて前記第2定数を制御周期毎に生成するとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、任意のタイミングやデューティでオン/オフさせることができるパルスパターンを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態におけるインバータ装置の構成を示すブロック図。
【
図2】第1の実施形態におけるd,q/u,v,w変換回路の構成を示すブロック図。
【
図3】(a),(b)は変調率及び回転速度と定数の関係を示す図。
【
図4】(a)はコンパレータでの比較処理を示す図、(b)は上アーム用スイッチング素子のパルスパターンを示す図、(c)は下アーム用スイッチング素子のパルスパターンを示す図。
【
図5】第2の実施形態におけるd,q/u,v,w変換回路の構成を示すブロック図。
【
図6】(a)は第2の実施形態におけるコンパレータでの比較処理を示す図、(b)は上アーム用スイッチング素子のパルスパターンを示す図、(c)は下アーム用スイッチング素子のパルスパターンを示す図。
【
図7】第3の実施形態におけるd,q/u,v,w変換回路の構成を示すブロック図。
【
図8】(a)は別例のコンパレータでの比較処理を示す図、(b)は上アーム用スイッチング素子のパルスパターンを示す図、(c)は下アーム用スイッチング素子のパルスパターンを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、インバータ装置10は、インバータ回路20とインバータ制御装置30を備えている。インバータ制御装置30は、ドライブ回路31と制御部32とを備えている。
【0012】
インバータ回路20は、6つのスイッチング素子Q1~Q6と6つのダイオードD1~D6を有する。スイッチング素子Q1~Q6としてIGBTを用いている。正極母線Lpと負極母線Lnとの間に、u相上アームを構成するスイッチング素子Q1と、u相下アームを構成するスイッチング素子Q2が直列接続されている。正極母線Lpと負極母線Lnとの間に、v相上アームを構成するスイッチング素子Q3と、v相下アームを構成するスイッチング素子Q4が直列接続されている。正極母線Lpと負極母線Lnとの間に、w相上アームを構成するスイッチング素子Q5と、w相下アームを構成するスイッチング素子Q6が直列接続されている。スイッチング素子Q1~Q6にはダイオードD1~D6が逆並列接続されている。正極母線Lp、負極母線Lnには平滑コンデンサCを介して直流電源としてのバッテリBが接続されている。
【0013】
スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2の間がモータ60のu相端子に接続されている。スイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4の間がモータ60のv相端子に接続されている。スイッチング素子Q5とスイッチング素子Q6の間がモータ60のw相端子に接続されている。上下のアームを構成するスイッチング素子Q1~Q6を有するインバータ回路20は、スイッチング素子Q1~Q6のスイッチング動作に伴いバッテリBの電圧である直流電圧を交流電圧に変換してモータ60に供給することができるようになっている。モータ60は車両駆動用モータである。
【0014】
各スイッチング素子Q1~Q6のゲート端子にはドライブ回路31が接続されている。ドライブ回路31は、制御信号であるパルスパターンに基づいてインバータ回路20のスイッチング素子Q1~Q6をスイッチング動作させる。
【0015】
モータ60に位置検出部61が設けられ、位置検出部61によりモータ60の回転位置としての電気角θが検出される。電流センサ62によりモータ60のu相電流Iuが検出される。また、電流センサ63によりモータ60のv相電流Ivが検出される。
【0016】
制御部32はマイクロコンピュータにより構成され、制御部32は、減算部33と、トルク制御部34、トルク/電流指令値変換部35と、減算部36,37と、電流制御部38と、d,q/u,v,w変換回路39と、座標変換部40と、速度演算部41を備えている。
【0017】
速度演算部41は、位置検出部61により検出される電気角θから速度(回転速度)ωを演算する。減算部33は、指令速度(指令回転速度)ω*と速度演算部41により演算された速度(回転速度)ωとの差分Δωを算出する。トルク制御部34は、回転速度ωの差分Δωからトルク指令値T*を演算する。
【0018】
トルク/電流指令値変換部35は、トルク指令値T*を、d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*に変換する。例えば、トルク/電流指令値変換部35は、記憶部(図示略)に予め記憶される目標トルクとd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*とが対応付けられたテーブルを用いてトルク/電流指令値変換を行う。
【0019】
座標変換部40は、電流センサ62,63によるu相電流Iu及びv相電流Ivからモータ60のw相電流Iwを求め、位置検出部61により検出される電気角θに基づいて、u相電流Iu、v相電流Iv及びw相電流Iwをd軸電流Id及びq軸電流Iqに変換する。なお、d軸電流Idはモータ60に流れる電流において、界磁を発生させるための電流ベクトル成分であり、q軸電流Iqはモータ60に流れる電流において、トルクを発生させるための電流ベクトル成分である。
【0020】
減算部36は、d軸電流指令値Id*とd軸電流Idとの差分ΔIdを算出する。減算部37は、q軸電流指令値Iq*とq軸電流Iqとの差分ΔIqを算出する。電流制御部38は、差分ΔId及び差分ΔIqに基づいてd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を算出する。
【0021】
電圧センサ42によりバッテリBの電圧(直流電圧)Vdcが検出される。この検出結果がd,q/u,v,w変換回路39に送られる。
d,q/u,v,w変換回路39は、角度情報である電気角θと回転速度ωとd軸電圧指令値Vd*とq軸電圧指令値Vq*と直流電圧Vdcを入力して各相の上下アーム用のスイッチング素子Q1~Q6のパルスパターンをドライブ回路31に出力する。つまり、位置検出部61により検出される電気角θと回転速度ωと直流電圧Vdcに基づいて、d軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*からインバータ回路20の各スイッチング素子Q1~Q6をオン、オフさせるためのパルスパターンを出力する。即ち、d,q/u,v,w変換回路39は、モータ60に流れるu,v,wの各相の電流Iu,Iv,Iwに基づいてモータ60におけるd軸電流とq軸電流が目標値となるようにモータ60の電流経路に設けられたスイッチング素子Q1~Q6を制御する。
【0022】
d,q/u,v,w変換回路39は、
図2に示す構成となっている。
図2において、d,q/u,v,w変換回路39は、三角波生成部50と、コンパレータ51と、変調率計算部52と、第1定数生成部53と、第2定数生成部54と、を備える。三角波生成部50は、角度情報としての電気角θとd,q軸電圧指令値Vd*,Vq*からu,v,w相の三角波を生成する。三角波の周波数は回転数(電気角θの時間的変化割合)に応じて変化し、電流1周期に対して三角波1周期である。三角波の振幅は1とする。三角波はコンパレータ51に入力される。
【0023】
変調率計算部52は、d,q軸電圧指令値Vd*,Vq*を、変調率Mに換算する。詳しくは、次の式(1)により変調率Mを算出する。Vdcは直流電圧である。
【0024】
【数1】
・・・(1)
第1定数生成部53は、
図3(a)に示すマップを用いて変調率M及び回転速度ωを参照して事前に算出したデータをもとに、第1定数K1を生成する。第1定数K1は、スイッチングタイミング(
図4(a)でのt1)を規定する。
図3(a)において、横軸に変調率M及び回転速度ωをとり、縦軸に第1定数K1をとっている。特性線L100は、事前に算出されたデータであり、このデータはマップデータである。第1定数生成部53での処理は、記憶部(図示略)に予め記憶される変調率M及び回転速度ωと第1定数K1とが対応付けられたテーブルを用いて行われる。この第1定数K1がパルス幅を決定する要素となる。
図4(a)に示すように、第1定数K1はプラスの値とマイナスの値の両方がコンパレータ51に入力される。
【0025】
第2定数生成部54は、
図3(b)に示すマップを用いて変調率M及び回転速度ωを参照して事前に算出したデータをもとに、第2定数K2を生成する。第2定数K2は、第1定数K1とは異なるスイッチングタイミング(
図4(a)でのt2)を規定する。
図3(b)において、横軸に変調率M及び回転速度ωをとり、縦軸に第2定数K2をとっている。特性線L101は、事前に算出されたデータであり、このデータはマップデータである。第2定数生成部54での処理は、記憶部(図示略)に予め記憶される変調率M及び回転速度ωと第2定数K2とが対応付けられたテーブルを用いて行われる。この第2定数K2がパルス幅を決定する要素となる。
図4(a)に示すように、第2定数K2はプラスの値とマイナスの値の両方がコンパレータ51に入力される。
【0026】
図3(a)での特性線L100及び
図3(b)での特性線L101は、高周波を少なくすべくシミュレーションで決められたものであり、モータ60に依ってもモータ・インバータを組み込んだ製品に依っても特性線L100´、特性線L101´のように異なる。
【0027】
コンパレータ51は
図4(a)に示すように、入力された三角波と±K1及び±K2の値を比較する。そして、コンパレータ51は、
図4(b)に示すようにu相の上アーム用のスイッチング素子Q1のパルスパターン、及び、
図4(c)に示すようにu相の下アーム用のスイッチング素子Q2のパルスパターンを算出する。なお、
図4(a),(b),(c)においてパルスパターンは、ゼロクロスでも反転する。
【0028】
同様に、コンパレータ51は、入力された三角波と±K1,±K2の値を比較して、v相の上アーム用のスイッチング素子Q3のパルスパターン及びv相の下アーム用のスイッチング素子Q4のパルスパターンを算出する。また、コンパレータ51は、入力された三角波と±K1,±K2の値を比較して、w相の上アーム用のスイッチング素子Q5のパルスパターン及びw相の下アーム用のスイッチング素子Q6のパルスパターンを算出する。このように、v,w相については三角波の位相がu相三角波位相と比べて±2/3π遅れているので各相三角波と±K1,±K2との比較を行う。
【0029】
次に、インバータ装置10の作用について説明する。
図2において、パルス生成アルゴリズムとして、入力は電気角θ、回転速度ω、d,q軸電圧指令値Vd*,Vq*、直流電圧Vdcであり、出力は各相上下アーム用スイッチング素子のパルスパターンである。
【0030】
図2において電気角θとd,q軸電圧指令値Vd*,Vq*からu,v,w相の三角波が生成される。
一方、変調率計算部52において、d,q軸電圧指令値Vd*,Vq*が直流電圧Vdcを用いて変調率Mに換算される。
【0031】
第1定数生成部53において変調率M及び回転速度ωから事前に算出したデータをもとに第1定数K1が生成される。また、第2定数生成部54において変調率M及び回転速度ωから事前に算出したデータをもとに第2定数K2が生成される。
【0032】
コンパレータ51は、入力されたu相の三角波と±K1及び±K2の値を比較する。上アーム用のスイッチング素子のパルスパターンは三角波と±K1,±K2との値の比較で算出される。下アーム用のスイッチング素子のパルスパターンは三角波と±K1,±K2との値の比較で算出される。
【0033】
v,w相についてはu相の電圧指令値から±2/3πズレた指令値をそれぞれ持つのでその三角波と±K1及び±K2との比較を行う。
このようにして、電気角と同期した三角波と複数の定数K1,K2を用いることで、自由なスイッチングが可能となる。つまり、電気角と同期した三角波と、異なるスイッチングタイミングを規定する定数K1,K2と比較することによりパルスパターンを得る方式は三角波比較方式と同様の出力が可能となる。
【0034】
以上のごとく、任意のタイミングやデューティのパルスパターン(スイッチングパルス)を出力できる。例えば低損失な最適スイッチングを事前に求めておき、そのパルスパターンを実現できる。
【0035】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)インバータ装置10の構成として、正負の母線Lp,Ln間においてu,v,wの相毎の上下のアームを構成するスイッチング素子Q1~Q6を有し、スイッチング素子Q1~Q6のスイッチング動作に伴い直流電圧を交流電圧に変換してモータ60に供給するインバータ回路20を備える。信号生成部としての三角波生成部50を備え、三角波生成部50は、角度情報とd,q軸電圧指令値に基づいてu,v,w相の電圧指令値に対応する波形(三角波)の信号を生成する。第1定数生成部53を備え、第1定数生成部53は、変調率Mに基づいて、スイッチングタイミングを規定する第1定数K1を制御周期毎に生成する。第2定数生成部54を備え、第2定数生成部54は、変調率Mに基づいて、第1定数K1とは異なるスイッチングタイミングを規定する第2定数K2を制御周期毎に生成する。コンパレータ51を備え、コンパレータ51は、三角波生成部50において生成したu,v,w相の電圧指令値に対応する波形の信号と第1定数生成部53において生成した第1定数K1及び第2定数生成部54において生成した第2定数K2とを比較してインバータ回路20における上アーム用スイッチング素子のパルスパターン及び下アーム用スイッチング素子のパルスパターンを出力する。よって、各定数K1,K2を調整することにより任意のタイミングやデューティでオン/オフさせることができるパルスパターン(スイッチングパルス)を生成することができる。例えば、低損失な最適なスイッチングを求めておけば低損失なスイッチングを実現することができる。
【0036】
(2)第1定数生成部53は、変調率Mに更に回転速度情報(ω)に基づいて第1定数K1を制御周期毎に生成し、第2定数生成部54は、変調率Mに更に回転速度情報(ω)に基づいて第2定数K2を制御周期毎に生成する。よって、より高精度に、任意のタイミングやデューティでオン/オフさせることができるパルスパターンを生成することができる。
【0037】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
図2に代わり本実施形態では
図5に示す構成としている。
【0038】
図5において、d,q/u,v,w変換回路39は、d,q/u,v,w変換部70と、スケーリング部71と、コンパレータ72と、線間電圧実効値計算部73と、相ピーク値変換部74と、第1定数生成部75と、第2定数生成部76と、を有する。
【0039】
d,q/u,v,w変換部70は、角度情報(ロータの位置)である電気角θに基づいてd,q軸電圧指令値Vd*,Vq*を、u,v,w相の電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*に座標変換する。
【0040】
線間電圧実効値計算部73は、d,q軸電圧指令値Vd*,Vq*を、モータの線間電圧実効値Vline-rmsに変換する。詳しくは、Vline-rms=√(Vd*2+Vq*2)にて算出する。
【0041】
相ピーク値変換部74は、線間電圧実効値Vline-rmsのu,v,w相のピーク値Vphase-peakを算出する。詳しくは、Vphase-peak=Vline-rms×√2/√3にて算出する。
【0042】
スケーリング部71は、u,v,w相の電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*を、線間電圧実効値Vline-rmsのu,v,w相のピーク値Vphase-peakで-1~+1にスケーリングする。スケーリングされたu,v,w相の電圧指令値Vu**,Vv**,Vw**はコンパレータ51に入力される。
【0043】
このように、信号生成部としてのd,q/u,v,w変換部70及びスケーリング部71により、電気角θとd,q軸電圧指令値Vd*,Vq*に基づいてu,v,w相の電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*に対応する波形(正弦波)の信号が生成される。
【0044】
第1定数生成部75は、マップを用いて線間電圧実効値計算部73で変換した線間電圧実効値Vline-rmsを、スイッチングタイミング(
図6(a)のt11)を規定する第1定数K1に変換する。この第1定数K1がパルスパターンのパルス幅を決定する要素となる。第1定数K1はプラスの値とマイナスの値の両方がコンパレータ72に入力される。つまり、第1定数生成部75は、±の0~1の第1定数K1を生成する。
【0045】
第2定数生成部76は、マップを用いて線間電圧実効値計算部73で変換した線間電圧実効値Vline-rmsを、第1定数K1とは異なるスイッチングタイミング(
図6(a)のt12)を規定する第2定数K2に変換する。この第2定数K2がパルスパターンのパルス幅を決定する要素となる。第2定数K2はプラスの値とマイナスの値の両方がコンパレータ72に入力される。つまり、第2定数生成部76は、±の0~1の第2定数K2を生成する。
【0046】
コンパレータ72は、
図6(a)に示すように、d,q/u,v,w変換部70において生成したu,v,w相の電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*に対応する波形(正弦波)の信号と、第1定数生成部75及び第2定数生成部76において生成した第1定数K1及び第2定数K2とを比較する。そして、コンパレータ72は、
図6(b)及び
図6(c)に示すように、インバータ回路20における上アーム用スイッチング素子Q1,Q3,Q5のパルスパターン及び下アーム用スイッチング素子Q2,Q4,Q6のパルスパターンを出力する。
【0047】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(3)インバータ装置10の構成として、信号生成部としてのd,q/u,v,w変換部70、スケーリング部71を備え、信号生成部(d,q/u,v,w変換部70、スケーリング部71)は、角度情報としての電気角θとd,q軸電圧指令値Vd*,Vq*に基づいてu,v,w相の電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*に対応する波形(正弦波)の信号を生成する。第1定数生成部75を備え、第1定数生成部75は、線間電圧実効値Vline-rmsに基づいて、スイッチングタイミングを規定する第1定数K1を制御周期毎に生成する。第2定数生成部76を備え、第2定数生成部76は、線間電圧実効値Vline-rmsに基づいて、第1定数K1とは異なるスイッチングタイミングを規定する第2定数K2を制御周期毎に生成する。コンパレータ72を備え、コンパレータ51は、信号生成部(d,q/u,v,w変換部70、スケーリング部71)において生成したu,v,w相の電圧指令値に対応する波形の信号と第1定数生成部75において生成した第1定数K1及び第2定数生成部76において生成した第2定数K2とを比較してインバータ回路20における上アーム用スイッチング素子のパルスパターン及び下アーム用スイッチング素子のパルスパターンを出力する。よって、各定数K1,K2を調整することにより任意のタイミングやデューティでオン/オフさせることができるパルスパターンを生成することができる。
【0048】
第1定数生成部75は、線間電圧実効値Vline-rmsに更に回転速度情報(ω)に基づいて第1定数K1を制御周期毎に生成し、第2定数生成部76は、線間電圧実効値Vline-rmsに更に回転速度情報(ω)に基づいて第2定数K2を制御周期毎に生成するようにしてもよい。
【0049】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態を、第2の実施形態との相違点を中心に説明する。
図5に代わり本実施形態では
図7に示す構成としており、
図5ではu,v,w相の電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*で正弦波を生成したが、
図7の本実施形態においてはd,q軸電圧指令値Vd*,Vq*で正弦波を生成する。
【0050】
図7においても、入力はd,q軸電圧指令値Vd*,Vq*及び角度情報(ロータの位置)としての電気角θであり、出力は各相上下アーム用のスイッチング素子Q1~Q6のパルスパターンである。
【0051】
本実施形態のd,q/u,v,w変換回路39は、正弦波生成部80と、コンパレータ81と、線間電圧実効値計算部82と、第1定数生成部83と、第2定数生成部84と、を備える。正弦波生成部80は、角度情報としての電気角θとd,q軸電圧指令値Vd*,Vq*からu,v,w相の正弦波を生成する。正弦波の位相、即ち、電気角θとの位相差は電気角位相(θ)と電圧位相δ(Vd*,Vq*から計算される)から計算する。正弦波の振幅は1とする。正弦波の周波数は回転数(電気角θの時間的変化割合)に応じて変化する。電流1周期に対して正弦波1周期である。正弦波はコンパレータ81に入力される。
【0052】
線間電圧実効値計算部82は、d,q軸電圧指令値Vd*,Vq*を、モータの線間電圧実効値Vline-rmsに換算する。詳しくは、Vline-rms=√(Vd*2+Vq*2)にて算出する。
【0053】
第1定数生成部83は、マップを用いて線間電圧実効値Vline-rmsを事前に算出したデータをもとに、スイッチングタイミングを規定する第1定数K1に変換する。この第1定数K1がパルス幅を決定する要素となる。第1定数K1はプラスの値とマイナスの値の両方がコンパレータ81に入力される。
【0054】
第2定数生成部84は、マップを用いて線間電圧実効値Vline-rmsを事前に算出したデータをもとに、第1定数K1とは異なるスイッチングタイミングを規定する第2定数K2に変換する。この第2定数K2がパルス幅を決定する要素となる。第2定数K2はプラスの値とマイナスの値の両方がコンパレータ81に入力される。
【0055】
コンパレータ81は、入力された正弦波と±K1及び±K2の値を比較する。そして、コンパレータ81は、インバータ回路20における上アーム用スイッチング素子Q1,Q3,Q5のパルスパターン及び下アーム用スイッチング素子Q2,Q4,Q6のパルスパターンを出力する。
【0056】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(4)インバータ装置10の構成として、信号生成部としての正弦波生成部80を備え、正弦波生成部80は、角度情報とd,q軸電圧指令値に基づいてu,v,w相の電圧指令値に対応する波形(正弦波)の信号を生成する。第1定数生成部83を備え、第1定数生成部83は、線間電圧実効値Vline-rmsに基づいて、スイッチングタイミングを規定する第1定数K1を制御周期毎に生成する。第2定数生成部84を備え、第2定数生成部84は、線間電圧実効値Vline-rmsに基づいて、第1定数K1とは異なるスイッチングタイミングを規定する第2定数K2を制御周期毎に生成する。コンパレータ81を備え、コンパレータ81は、正弦波生成部80において生成したu,v,w相の電圧指令値に対応する波形の信号と第1定数生成部83において生成した第1定数K1及び第2定数生成部84において生成した第2定数K2とを比較してインバータ回路20における上アーム用スイッチング素子のパルスパターン及び下アーム用スイッチング素子のパルスパターンを出力する。よって、各定数K1,K2を調整することにより任意のタイミングやデューティでオン/オフさせることができるパルスパターンを生成することができる。
【0057】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○
図4、
図6では第1定数K1と第2定数K2を生成してコンパレータ51,72においてu,v,w相の電圧指令値に対応する波形の信号と第1定数K1及び第2定数K2とを比較してスイッチング素子のパルスパターンを出力した。これに代わり、3つ以上の定数を生成してコンパレータにおいてu,v,w相の電圧指令値に対応する波形の信号と3つ以上の定数を比較してスイッチング素子のパルスパターンを出力してもよい。具体的には、例えば、
図8(a)に示すように、4つの定数K1,K2,K3,K4を生成してコンパレータにおいて、u,v,w相の電圧指令値に対応する波形の信号と比較する。そして、
図8(b)及び
図8(c)に示すように、上アーム用スイッチング素子のパルスパターン及び下アーム用スイッチング素子のパルスパターンを得る。このように、スイッチング回数を増やしたい場合には、定数Kの個数を増やすことにより実現することができる。
【0058】
○
図1において2点鎖線で示すようにd,q/u,v,w変換回路39はトルク指令値T*を取り込んで、第1定数生成部は、トルク指令値T*に基づいて、スイッチングタイミングを規定する第1定数K1を制御周期毎に生成するとともに、第2定数生成部は、トルク指令値T*に基づいて、第1定数K1とは異なるスイッチングタイミングを規定する第2定数K2を制御周期毎に生成するようにしてもよい。また、第1定数生成部は、トルク指令値T*に更に回転速度情報(ω)に基づいて第1定数K1を制御周期毎に生成し、第2定数生成部は、トルク指令値T*に更に回転速度情報(ω)に基づいて第2定数K2を制御周期毎に生成するようにしてもよい。
【0059】
○ 定数算出のためにマップを用いたが、これに代わりリアルタイムで演算した結果を用いてもよい。つまり、定数K(スイッチング角度情報)は事前に算出した値をマップに格納して演算周期ごとに参照しても良いし演算周期ごとに低損失を実現するスイッチング角度を算出してその値を使用しても良い。
【符号の説明】
【0060】
10…インバータ装置、20…インバータ回路、50…三角波生成部、51…コンパレータ、52…変調率計算部、53…第1定数生成部、54…第2定数生成部、70…d,q/u,v,w変換部、71…スケーリング部、72…コンバータ、73…線間電圧実効値計算部、74…相ピーク値変換部、75…第1定数生成部、76…第2定数生成部、80…正弦波生成部、81…コンパレータ、82…線間電圧実効値計算部、83…第1定数生成部、84…第2定数生成部、K1…第1定数、K2…第2定数、Ln…負極母線、Lp…正極母線、M…変調率、Q1…u相上アーム用スイッチング素子、Q2…u相下アーム用スイッチング素子、Q3…v相上アーム用スイッチング素子、Q4…v相下アーム用スイッチング素子、Q5…w相上アーム用スイッチング素子、Q6…w相下アーム用スイッチング素子、Vd*…d軸電圧指令値、Vq*…q軸電圧指令値、θ…電気角。