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特許7001166走査型プローブ顕微鏡、および走査型プローブ顕微鏡を用いた物性量測定方法
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  • 特許-走査型プローブ顕微鏡、および走査型プローブ顕微鏡を用いた物性量測定方法 図1
  • 特許-走査型プローブ顕微鏡、および走査型プローブ顕微鏡を用いた物性量測定方法 図2
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  • 特許-走査型プローブ顕微鏡、および走査型プローブ顕微鏡を用いた物性量測定方法 図11
  • 特許-走査型プローブ顕微鏡、および走査型プローブ顕微鏡を用いた物性量測定方法 図12
  • 特許-走査型プローブ顕微鏡、および走査型プローブ顕微鏡を用いた物性量測定方法 図13
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】走査型プローブ顕微鏡、および走査型プローブ顕微鏡を用いた物性量測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01Q 60/24 20100101AFI20220112BHJP
   G01N 3/40 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
G01Q60/24
G01N3/40 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020535425
(86)(22)【出願日】2018-08-09
(86)【国際出願番号】 JP2018029917
(87)【国際公開番号】W WO2020031329
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 賢治
(72)【発明者】
【氏名】小暮 亮雅
【審査官】萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/044164(WO,A2)
【文献】特開平06-307850(JP,A)
【文献】特開平09-072925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01Q 10/00 - 90/00
G01N 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
探針と、
前記探針を指示する指示部材と、
試料を載置する載置部と、
前記試料と前記探針との間の距離を変化させる駆動部と、
前記指示部材の変位を測定する変位測定部と、
前記試料が前記探針に近づくときの前記探針と前記試料との間の距離と前記指示部材の変位を表わす量との関係を表わす第1のカーブと、前記試料が前記探針から遠ざかるときの前記探針と前記試料との間の距離と前記指示部材の変位を表わす量との関係を表わす第2のカーブとを作成するカーブ作成部と、
前記第1のカーブの傾きの大きさが閾値以上となる前記指示部材と前記試料との間の距離の範囲、前記第2のカーブの傾きの大きさが閾値以上となる前記指示部材と前記試料との間の距離の範囲、および前記指示部材と前記試料との間の距離が指定された範囲のいずれかの範囲において、前記第1のカーブと前記第2のカーブとの間の面積を表わす量を前記試料の物性量として求める物性量算出部とを備える、走査型プローブ顕微鏡。
【請求項2】
前記試料の物性量は、前記試料の固さを表わす量である、請求項1記載の走査型プローブ顕微鏡。
【請求項3】
前記カーブ作成部は、前記指示部材の変位を表わす量として、前記変位に基づく前記指示部材が受ける力を用いる、請求項2記載の走査型プローブ顕微鏡。
【請求項4】
前記駆動部は、前記試料または前記探針を水平方向に走査し、
前記変位測定部は、前記水平方向の各位置での前記指示部材の変位を測定し、
前記カーブ作成部は、前記水平方向の各位置での前記第1のカーブおよび前記第2のカーブを作成し、
前記物性量算出部は、前記水平方向の各位置での前記物性量を求め、
前記水平方向の各位置に対する前記物性量を画素値とした画像を生成する画像生成部を備える、請求項2記載の走査型プローブ顕微鏡。
【請求項5】
前記変位測定部は、前記探針と前記試料との間の距離の複数のポイントで変位を測定し、
前記物性量算出部は、前記複数のポイントの各々おける前記第1のカーブ上の変位を表わす量と前記第2のカーブ上の変位を表わす量との差分値を算出し、前記差分値の総和を前記試料の物性量として求める、請求項1記載の走査型プローブ顕微鏡。
【請求項6】
探針と、
前記探針を指示する指示部材と、
試料を載置する載置部と、
前記試料と前記探針との間の距離を変化させる駆動部と、
前記指示部材の変位を測定する変位測定部と、
前記試料が前記探針に近づくときの前記探針と前記試料との間の距離と、前記指示部材の変位を表わす量との関係を表わす第1のカーブと、前記試料が前記探針から遠ざかるときの前記探針と前記試料との間の距離と、前記指示部材の変位を表わす量との関係を表わす第2のカーブとを作成するカーブ作成部と、
前記第1のカーブ上または前記第2のカーブ上の指定された変位を表わす量に対応する前記指示部材と前記試料との間の距離を前記試料の表面形状を表わす形状値として求める形状値算出部とを備え、
前記駆動部は、前記試料または前記探針を水平方向に走査し、
前記変位測定部は、前記水平方向の各位置での前記指示部材の変位を測定し、
前記カーブ作成部は、前記水平方向の各位置での前記第1のカーブおよび前記第2のカーブを作成し、
前記形状値算出部は、前記水平方向の各位置での前記形状値を求め、
前記水平方向の各位置に対する前記形状値を画素値とした画像を生成する画像生成部を備え、
前記形状値算出部は、複数の前記指定された変位に対して、それぞれ前記形状値を求め、
前記画像生成部は、前記指定された変位が異なる複数の前記画像を生成する、走査型プローブ顕微鏡。
【請求項7】
前記指示部材は、カンチレバーである、請求項1または6記載の走査型プローブ顕微鏡。
【請求項8】
探針と、前記探針を指示する指示部材と、試料を載置する載置部と、駆動部と、変位測定部と備えた走査型プローブ顕微鏡を用いた物性量測定方法であって、
前記駆動部が、前記試料と前記探針との間の距離を変化させるステップと、
前記変位測定部が、前記指示部材の変位を測定するステップと、
前記試料が前記探針に近づくときの前記探針と前記試料との間の距離と、前記指示部材の変位を表わす量との関係を表わす第1のカーブと、前記試料が前記探針から遠ざかるときの前記探針と前記試料との間の距離と、前記指示部材の変位を表わす量との関係を表わす第2のカーブとを作成するステップと、
前記第1のカーブの傾きの大きさが閾値以上となる前記指示部材と前記試料との間の距離の範囲、前記第2のカーブの傾きの大きさが閾値以上となる前記指示部材と前記試料との間の距離の範囲、および前記指示部材と前記試料との間の距離が指定された範囲のいずれかの範囲において、前記第1のカーブと前記第2のカーブとの間の面積を表わす量を前記試料の物性量として求めるステップとを備える、走査型プローブ顕微鏡を用いた物性量測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型プローブ顕微鏡、および走査型プローブ顕微鏡を用いた物性量測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、走査型プローブ顕微鏡を用いて試料の特性を観察する方法が知られている(たとえば、特許文献1を参照)。走査型プローブ顕微鏡では、探針と試料表面に働く力の距離依存性を表わすフォースカーブを測定することによって、試料の形状、引力、吸着力、試料の硬さ等の物性を測定することができる。また、探針をXY方向に移動しながら物性を測定して画像化することによって、試料の表面状態の観察および解析を行うことができる。ユーザーは解析画像から凹凸状態、および物性などの試料についての知見を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-346782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、測定する試料によって探針と試料表面に働く力の距離依存性は変化する。たとえば、試料が柔らかい場合には、フォースカーブから吸着量を測定することができない。
【0005】
それゆえに、本発明の目的は、試料の固さに係らず、試料の物性を表わす物理量を測定することができる走査型プローブ顕微鏡および走査型プローブ顕微鏡を用いた物性量測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の走査型プローブ顕微鏡は、探針と、探針を指示する指示部材と、試料を載置する載置部と、試料と探針との間の距離を変化させる駆動部と、指示部材の変位を測定する変位測定部と、試料が探針に近づくときの探針と試料との間の距離と指示部材の変位を表わす量との関係を表わす第1のカーブと、試料が探針から遠ざかるときの探針と試料との間の距離と指示部材の変位を表わす量との関係を表わす第2のカーブとを作成するカーブ作成部と、第1のカーブと第2のカーブとの間の面積を表わす量を試料の物性量として求める物性量算出部とを備える。
【0007】
好ましくは、試料の物性量は、試料の固さを表わす量である。
好ましくは、カーブ作成部は、指示部材の変位を表わす量として、変位に基づく指示部材が受ける力を用いる。
【0008】
好ましくは、駆動部は、試料または探針を水平方向に走査する。変位測定部は、水平方向の各位置での指示部材の変位を測定する。カーブ作成部は、水平方向の各位置での第1のカーブおよび第2のカーブを作成する。物性量算出部は、水平方向の各位置での物性量を求める。走査型プローブ顕微鏡は、水平方向の各位置に対する物性量を画素値とした画像を生成する画像生成部を備える。
【0009】
好ましくは、物性量算出部は、第1のカーブの傾きの大きさが閾値以上となる指示部材と試料との間の距離の範囲において、第1のカーブと第2のカーブとの間の面積を表わす量を試料の物性量として求める。
【0010】
好ましくは、物性量算出部は、第2のカーブの傾きの大きさが閾値以上となる指示部材と試料との間の距離の範囲において、第1のカーブと第2のカーブとの間の面積を表わす量を試料の物性量として求める。
【0011】
好ましくは、物性量算出部は、第1のカーブの傾きの大きさが第1の閾値以上であり、かつ第2のカーブの傾きの大きさが第2の閾値以上となる指示部材と試料との間の距離の範囲において、第1のカーブと第2のカーブとの間の面積を表わす量を試料の物性量として求める。
【0012】
好ましくは、物性量算出部は、指示部材と試料との間の距離が指定された範囲において、第1のカーブと第2のカーブとの間の面積を表わす量を試料の物性量として求める。
【0013】
好ましくは、物性量算出部は、複数の指定された範囲に対して、それぞれ物性量を求める。画像生成部は、指定された範囲が異なる複数の画像を生成する。
【0014】
好ましくは、変位測定部は、探針と試料との間の距離の複数のポイントで変位を測定する。物性量算出部は、複数のポイントの各々おける第1のカーブ上の変位を表わす量と第2のカーブ上の変位を表わす量との差分値を算出し、差分値の総和を試料の物性量として求める。
【0015】
本発明の走査型プローブ顕微鏡は、探針と、探針を指示する指示部材と、試料を載置する載置部と、試料と探針との間の距離を変化させる駆動部と、指示部材の変位を測定する変位測定部と、試料が探針に近づくときの探針と試料との間の距離と、指示部材の変位を表わす量との関係を表わす第1のカーブと、試料が探針から遠ざかるときの探針と試料との間の距離と、指示部材の変位を表わす量との関係を表わす第2のカーブとを作成するカーブ作成部と、第1のカーブ上または第2のカーブ上の指定された変位を表わす量に対応する指示部材と試料との間の距離を試料の表面形状を表わす形状値として求める形状値算出部とを備える。駆動部は、試料または探針を水平方向に走査する。変位測定部は、水平方向の各位置での指示部材の変位を測定する。カーブ作成部は、水平方向の各位置での第1のカーブおよび第2のカーブを作成する。形状値算出部は、水平方向の各位置での形状値を求める。走査型プローブ顕微鏡は、水平方向の各位置に対する形状値を画素値とした画像を生成する画像生成部を備える。形状値算出部は、複数の指定された変位に対して、それぞれ形状値を求める。画像生成部は、指定された変位が異なる複数の画像を生成する。
【0016】
好ましくは、指示部材は、カンチレバーである。
本発明は、探針と、探針を指示する指示部材と、試料を載置する載置部と、駆動部と、変位測定部と備えた走査型プローブ顕微鏡を用いた物性量測定方法である。物性量測定方法は、駆動部が、試料と探針との間の距離を変化させるステップと、変位測定部が、指示部材の変位を測定するステップと、試料が探針に近づくときの探針と試料との間の距離と、指示部材の変位を表わす量との関係を表わす第1のカーブと、試料が探針から遠ざかるときの探針と試料との間の距離と、指示部材の変位を表わす量との関係を表わす第2のカーブとを作成するステップと、第1のカーブと第2のカーブとの間の面積を表わす量を試料の物性量として求めるステップとを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、試料の固さに係らず、試料の物性を表わす物理量を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施形態の走査型プローブ顕微鏡50の構成を表わす図である。
図2】試料Sがカンチレバー2に垂直方向にアプローチするときと、試料Sがカンチレバー2から垂直方向にリリースするときのカンチレバー2の変位を表わす図である。
図3図2のようにカンチレバー2が変位した場合のフォースカーブの例を表わす図である。
図4】フォーカスカーブの別の例を表わす図である。
図5】弾性回復量の算出例を表わす図である。
図6】第1の実施形態の表面形状像の生成手順を表わすフローチャートである。
図7】第1の実施形態の弾性回復像の生成手順を表わすフローチャートである。
図8】試料SがHeLa細胞のときの表面形状像の例を表わす図である。
図9】試料SがHeLa細胞のときの弾性回復像の例を表わす図である。
図10】第2の実施形態の弾性回復像の生成手順を表わすフローチャートである。
図11】フォースカーブのZ位置の範囲の指定の例を表わす図である。
図12】第3の実施形態の表面形状像の生成手順を表わすフローチャートである。
図13】フォースカーブのフォースFAの指定の例を表わす図である。
図14】試料SがHeLa細胞のときの第1のフォースFA1に対する表面形状像の例を表わす図である。
図15】試料SがHeLa細胞のときの第2のフォースFA2に対する表面形状像の例を表わす図である。
図16】第4の実施形態の走査型プローブ顕微鏡550の構成を表わす図である。
図17】変位カーブの例を表わす図である。
図18】測定部のハードウエア構成の例を表わす図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態の走査型プローブ顕微鏡50の構成を表わす図である。
【0020】
図1に示すように、走査型プローブ顕微鏡50は、スキャナ43と、探針20と、カンチレバー2と、変位測定部3と、A/D変換器35と、測定部1と、駆動部4と、表示装置51とを備える。
【0021】
スキャナ43は、試料Sを載置し、駆動部4によって3次元方向に駆動される。
カンチレバー2は、探針20を支持する。探針20と試料Sとの間の原子間力(引力または斥力)によって、カンチレバー2が変位する。
【0022】
変位測定部3は、カンチレバー2のたわみを検出する。変位測定部3は、光源31と、ミラー32,33と、光検出器34とを備える。光源31は、レーザ光を発射するレーザ発振器などによって構成される。ミラー32および33は、光学系を構成する。光検出器34は、入射されるレーザ光を検出するフォトダイオードなどによって構成される。光源31から発射されたレーザ光は、ミラー32で反射されて、カンチレバー2に入射される。レーザ光は、カンチレバー2で反射され、さらにミラー33に反射されて、光検出器34に入射される。光検出器34がレーザ光を検出することによって、カンチレバー2の変位を測定することができる。
【0023】
A/D変換器35は、光検出器34によって検出された変位信号をデジタル信号に変換する。
【0024】
測定部1は、フォースカーブ作成部11と、形状値算出部52と、表面形状像生成部12と、物性量算出部53と、物性量画像生成部13とを備える。
【0025】
フォースカーブ作成部11は、カンチレバー2の変位の時間変化から作用力(フォース)の時間変化を表わすフォースカーブを作成する。
【0026】
具体的には、フォースカーブ作成部11は、カンチレバー2の変位D[V]に、バネ定数K[N/m]と感度S[m/V]とを乗算することによって、フォース[N]を算出する。バネ定数Kは、探針20に接続されるバネのバネ定数である。感度は、変形のない固い試料でフォースカーブを作成したときのフォースカーブの傾きの逆数である。
【0027】
形状値算出部52は、フォースカーブから試料Sの形状値を算出する。
表面形状像生成部12は、スキャナ43によって試料SをXY平面(水平方向)で走査することによって得られる各場所での形状値を画素値とした表面形状像を生成する。
【0028】
物性量算出部53は、フォースカーブから弾性回復量を試料Sの物性量として算出する。弾性回復量は、探針20を試料Sに押し込んで試料Sを凹ませ、その後探針20を試料Sから離したときに試料Sの凹みがどれだけ早く元に戻るかを表わす量である。試料Sが柔らかいほど、弾性回復量が大きくなる。したがって、弾性回復量は、試料Sの固さを表わす量でもある。
【0029】
物性量画像生成部13は、スキャナ43によって試料SをXY平面(水平方向)で走査することによって得られる各場所での弾性回復量を画素値とした弾性回復像を生成する。
【0030】
測定部1は、駆動部4に対して制御信号を出力する。
駆動部4は、D/A変換器41と、スキャナドライバ42とを備える。D/A変換器41は、測定部1からのデジタルの制御信号をアナログ信号に変換して、スキャナドライバ42に送る。
【0031】
スキャナドライバ42は、制御信号を受けて、スキャナ43をX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向に駆動することによって、試料Sを走査することができる。図1において、Z軸方向は、鉛直方向であり、XY平面が水平面である。画像を生成するために、駆動部4は、試料SをX方向、Y方向にそれぞれ数10μm~数10nmの範囲を移動させる。
【0032】
図2は、試料Sが探針20に垂直方向にアプローチするときと、試料Sが探針20から垂直方向にリリースするときのカンチレバー2の変位を表わす図である。
【0033】
(1)~(4)に示すように、試料Sが探針20にアプローチし、(4)~(6)に示すように、試料Sが探針20からリリースする。図3は、図2のようにカンチレバー2が変位した場合のフォースカーブの例を表わす図である。図3において、横軸は、探針20の位置を原点とした試料Sの垂直方向の位置Zを表わす。垂直方向の位置Zは、探針20と試料Sの垂直方向の距離を表わす。図2の縦軸は、フォース、すなわちカンチレバー2が受ける力を表わす。
【0034】
(1)では、カンチレバー2の先端の探針20と試料Sとが完全に離れている。(2)では、カンチレバー2が試料Sからわずかな引力を受け、下側に反る。これをジャンプインという。(3)では、カンチレバー2が斥力を受け、上側に反る。(4)では、探針20と試料Sとが最も近く接触し、斥力が最大となる。(5)では、カンチレバー2の受ける力が斥力から引力に変わる。(6)では、カンチレバー2と試料Sとの間に吸着力が働き、引力が最大となる。(6)の直後に探針20が試料Sから離れて、(1)の状態に戻る。これをジャンプアウトという。
【0035】
図3のフォースカーブは、アプローチ時のアプローチカーブと、リリース時のリリースカーブとから構成される。表面形状像は、アプローチカーブ上のある一定のフォースF0に対するZ位置の値Z0を画素値とする画像である。また、ジャンプアウト時のフォースFの始点(最小値)と終点(最大値)との差分から吸着量を測定することができる。
【0036】
図4は、フォーカスカーブの別の例を表わす図である。
たとえば試料Sが柔らかい場合には、図4に示すように、フォースカーブにジャンプインおよびジャンプアウトが発生しない。試料Sが柔らかい場合には、ジャンプアウトが発生しないので、吸着力を測定することができない。
【0037】
本実施の形態では、物性量算出部53は、フォースカーブから弾性回復量を試料Sの物性量として算出する。アプローチカーブとリリースカーブとの間の面積を表わす量を試料Sの弾性回復量として求める。物性量算出部53は、アプローチカーブの傾きの大きさが閾値TH1以上となる探針20と試料Sとの間の距離の範囲において、アプローチカーブとリリースカーブとの間の面積を表わす量を求めてもよい。
【0038】
アプローチカーブおよびリリースカーブは、複数のサンプルポイントから構成されているので、物性量算出部53は、アプローチカーブの傾きの大きさが閾値TH1以上となる探針20と試料Sとの間の距離の範囲において、探針20と試料Sとの間の距離の各サンプルポイントおけるアプローチカーブ上のフォースF1とリリースカーブ上のフォースF2との差分値ΔFを求め、差分値ΔFの総和を弾性回復量として求めることとしてもよい。
【0039】
図5は、弾性回復量の算出例を表わす図である。
図5に示すように、ZA~ZBの範囲において、アプローチカーブとリリースカーブとの間の面積が弾性回復量として求めることができる。ZA~ZBの範囲は、アプローチカーブの傾きの大きさが閾値TH1以上となる範囲である。
【0040】
図6は、第1の実施形態の表面形状像の生成手順を表わすフローチャートである。表面形状像の大きさをX_MAX×Y_MAXとする。
【0041】
ステップS101において、表面形状像生成部12は、表面形状像の画素の位置(X,Y)を(0,0)に設定する。
【0042】
ステップS102において、駆動部4は、試料Sの水平方向の位置を(X,Y)に対応する位置に移動させる。
【0043】
ステップS103において、フォースカーブ作成部11は、(X,Y)についてのフォースカーブを生成する。
【0044】
ステップS104において、形状値算出部52は、(X,Y)についてのフォースカーブを構成するアプローチカーブ上の一定のフォースF0に対するZ位置Z0(X,Y)を形状値として求める。
【0045】
ステップS105において、表面形状像生成部12は、表面形状像の画素の位置(X,Y)の画素値を形状値Z0(X,Y)とする。
【0046】
ステップS106において、X=MAX_X-1の場合には、処理がステップS108に進み、X=MAX_X-1でない場合には、処理がステップS107に進む。
【0047】
ステップS107において、表面形状像生成部12は、Xをインクリメントする。その後、処理がステップS102に戻る。
【0048】
ステップS108において、Y=MAX_Y-1の場合には、処理がステップS110に進み、Y=MAX_Y-1でない場合には、処理がステップS109に進む。
【0049】
ステップS109において、表面形状像生成部12は、X=0とするとともに、Yをインクリメントする。その後、処理がステップS102に戻る。
【0050】
ステップS110において、表面形状像生成部12は、表面形状像を表示装置51に表示する。
【0051】
図7は、第1の実施形態の弾性回復像の生成手順を表わすフローチャートである。弾性回復像の大きさをX_MAX×Y_MAXとする。
【0052】
ステップS201において、物性量画像生成部13は、弾性回復像の画素の位置(X,Y)を(0,0)に設定する。
【0053】
ステップS202において、駆動部4は、試料Sの水平方向の位置を(X,Y)に対応する位置に移動させる。
【0054】
ステップS203において、フォースカーブ作成部11は、(X,Y)についてのフォースカーブを生成する。
【0055】
ステップS204において、物性量算出部53は、(X,Y)についてのフォースカーブのZ位置の最小値「0」を始点ZAに設定する。
【0056】
ステップS205において、物性量算出部53は、(X,Y)についてのフォースカーブを構成するアプローチカーブの傾きの大きさが閾値TH1以上となるZ位置の最大値を終点ZBとして求める。始点ZA~終点ZBの範囲において、アプローチカーブの傾きの大きさが閾値TH1以上となる。
【0057】
ステップS206において、物性量算出部53は、Z位置がZAとZBの間の区間におけるアプローチカーブとリリースカーブとの間の面積を弾性回復量ER(X,Y)として求める。
【0058】
ステップS207において、物性量画像生成部13は、弾性回復像の画素の位置(X,Y)の画素値を弾性回復量ER(X,Y)とする。
【0059】
ステップS208において、X=MAX_X-1の場合には、処理がステップS210に進み、X=MAX_X-1でない場合には、処理がステップS209に進む。
【0060】
ステップS209において、物性量画像生成部13は、Xをインクリメントする。その後、処理がステップS202に戻る。
【0061】
ステップS210において、Y=MAX_Y-1の場合には、処理がステップS212に進み、Y=MAX_Y-1でない場合には、処理がステップS211に進む。
【0062】
ステップS211において、物性量画像生成部13は、X=0とするとともに、Yをインクリメントする。その後、処理がステップS202に戻る。
【0063】
ステップS212において、物性量画像生成部13は、弾性回復像を表示装置51に表示する。
【0064】
図8は、試料SがHeLa細胞のときの表面形状像の例を表わす図である。
図8に示すように、表面形状像によって、HeLa細胞の形状を知ることができる。
【0065】
図9は、試料SがHeLa細胞のときの弾性回復像の例を表わす図である。
図9に示すように、弾性回復像によって、HeLa細胞の内部の弾性回復量(すなわち、探針20でHeaLa細胞を凹ませた後、探針20をHeLa細胞から離したときに、HeLa細胞の凹みがどれだけ早く元に戻るかを表わす量)を知ることができる。
【0066】
正常な細胞と異常な細胞の弾性回復像を比較する事で、細胞間接着の硬さの違いなどの知見を得ることができ、がんやパーキンソン病など疾患の発生前後に細胞内で起こる事象の解析を行うことができる。
【0067】
[第2の実施形態]
第2の実施形態では、フォースカーブのZ位置の指定された範囲で弾性回復量を求める。
【0068】
図10は、第2の実施形態の弾性回復像の生成手順を表わすフローチャートである。弾性回復像の大きさをX_MAX×Y_MAXとする。
【0069】
ステップS301において、物性量画像生成部13は、弾性回復像の画素の位置(X,Y)を(0,0)に設定する。
【0070】
ステップS302において、駆動部4は、試料Sの水平方向の位置を(X,Y)に対応する位置に移動させる。
【0071】
ステップS303において、フォースカーブ作成部11は、(X,Y)についてのフォースカーブを生成する。
【0072】
ステップS304において、X=MAX_X-1の場合には、処理がステップS306に進み、X=MAX_X-1でない場合には、処理がステップS305に進む。
【0073】
ステップS305において、物性量画像生成部13は、Xをインクリメントする。その後、処理がステップS302に戻る。
【0074】
ステップS306において、Y=MAX_Y-1の場合には、処理がステップS308に進み、Y=MAX_Y-1でない場合には、処理がステップS307に進む。
【0075】
ステップS307において、物性量画像生成部13は、X=0とするとともに、Yをインクリメントする。その後、処理がステップS302に戻る。
【0076】
ステップS308において、フォースカーブのZ位置の範囲(始点ZAおよび終点ZB)を指定した弾性回復像の生成要求があった場合に、処理がステップS309に進む。弾性回復像の生成要求がない場合には、処理を終了する。
【0077】
ステップS309において、物性量画像生成部13は、弾性回復像の画素の位置(X,Y)を(0,0)に設定する。
【0078】
ステップS310において、物性量算出部53は、(X,Y)についてのフォースカーブのZ位置がZAとZBとの間の区間におけるアプローチカーブとリリースカーブの間の面積を弾性回復量ER(X,Y)として求める。
【0079】
ステップS311において、物性量画像生成部13は、弾性回復像の画素の位置(X,Y)の画素値を弾性回復量ER(X,Y)とする。
【0080】
ステップS312において、X=MAX_X-1の場合には、処理がステップS314に進み、X=MAX_X-1でない場合には、処理がステップS312に進む。
【0081】
ステップS312において、物性量画像生成部13は、Xをインクリメントする。その後、処理がステップS310に戻る。
【0082】
ステップS314において、Y=MAX_Y-1の場合には、処理がステップS316に進み、Y=MAX_Y-1でない場合には、処理がステップS315に進む。
【0083】
ステップS315において、物性量画像生成部13は、X=0とするとともに、Yをインクリメントする。その後、処理がステップS310に戻る。
【0084】
ステップS316において、物性量画像生成部13は、弾性回復像を表示装置51に表示する。その後、処理がステップS308に戻る。
【0085】
図11は、フォースカーブのZ位置の範囲の指定の例を表わす図である。
第1の範囲は、始点をZA(1)、終点をZB(1)とする範囲である。第2の範囲は、始点をZA(2)、終点をZB(2)とする範囲である。
【0086】
ステップS308において、フォースカーブのZ位置の範囲(始点ZAおよび終点ZB)の指定が異なる複数の弾性回復像の生成要求があった場合には、物性量算出部53は、複数の指定された範囲に対して、それぞれ弾性回復量(X,Y)を求める。物性量画像生成部13は、指定された範囲が異なる複数の弾性回復像を生成する。図11に示すように、第1の範囲と第2の範囲の指定があった場合には、指定範囲が異なる2つの弾性回復像が得られる。
【0087】
[第3の実施形態]
第3の実施形態では、フォースカーブの指定されたフォースでの形状値を求める。
【0088】
図12は、第3の実施形態の表面形状像の生成手順を表わすフローチャートである。表面形状像の大きさをX_MAX×Y_MAXとする。
【0089】
ステップS401において、表面形状像生成部12は、表面形状像の画素の位置(X,Y)を(0,0)に設定する。
【0090】
ステップS402において、駆動部4は、試料Sの水平方向の位置を(X,Y)に対応する位置に移動させる。
【0091】
ステップS403において、フォースカーブ作成部11は、(X,Y)についてのフォースカーブを生成する。
【0092】
ステップS404において、X=MAX_X-1の場合には、処理がステップS406に進み、X=MAX_X-1でない場合には、処理がステップS405に進む。
【0093】
ステップS405において、表面形状像生成部12は、Xをインクリメントする。その後、処理がステップS402に戻る。
【0094】
ステップS406において、Y=MAX_Y-1の場合には、処理がステップS408に進み、Y=MAX_Y-1でない場合には、処理がステップS407に進む。
【0095】
ステップS407において、表面形状像生成部12は、X=0とするとともに、Yをインクリメントする。その後、処理がステップS402に戻る。
【0096】
ステップS408において、フォースカーブのフォースFAを指定した表面形状像の生成要求があった場合に、処理がステップS409に進む。表面形状像の生成要求がない場合には、処理を終了する。
【0097】
ステップS409において、表面形状像生成部12は、表面形状像の画素の位置(X,Y)を(0,0)に設定する。
【0098】
ステップS410において、形状値算出部52は、(X,Y)についてのフォースカーブのアプローチカーブ上のフォースFAに対するZ位置ZA(X,Y)を形状値として求める。
【0099】
ステップS411において、表面形状像生成部12は、表面形状像の画素の位置(X,Y)の画素値を形状値ZA(X,Y)とする。
【0100】
ステップS412において、X=MAX_X-1の場合には、処理がステップS414に進み、X=MAX_X-1でない場合には、処理がステップS413に進む。
【0101】
ステップS413において、表面形状像生成部12は、Xをインクリメントする。その後、処理がステップS410に戻る。
【0102】
ステップS414において、Y=MAX_Y-1の場合には、処理がステップS416に進み、Y=MAX_Y-1でない場合には、処理がステップS415に進む。
【0103】
ステップS415において、表面形状像生成部12は、X=0とするとともに、Yをインクリメントする。その後、処理がステップS410に戻る。
【0104】
ステップS416において、表面形状像生成部12は、表面形状像を表示装置51に表示する。その後、処理がステップS408に戻る。
【0105】
図13は、フォースカーブのフォースFAの指定の例を表わす図である。
図13では、第1のフォースFA1と第2のフォースFA2が指定されている。
【0106】
ステップS408において、フォースカーブのフォースFAの指定が異なる複数の表面形状像の生成要求があった場合には、形状値算出部52は、複数の指定されたフォースに対して、それぞれ形状値ZA(X,Y)を求める。表面形状像生成部12は、指定されたフォースが異なる複数の表面形状像を生成する。図13に示すように、第1のフォースと第2のフォースの指定があった場合には、フォースが異なる2つの表面形状像が得られる。
【0107】
図14は、試料SがHeLa細胞のときの第1のフォースFA1に対する表面形状像の例を表わす図である。図15は、試料SがHeLa細胞のときの第2のフォースFA2に対する表面形状像の例を表わす図である。
【0108】
フォースの相違、つまり、HeLa細胞を押し込む力の相違によって、得られる表面形状像が相違する。押し込む力であるフォースFAを徐々に変化させて、複数個の表面形状像を作成して、これらの複数の表面形状像を動画のように連続して表示させることによって、細胞が変形していく様子を示すこともできる。
【0109】
[第4の実施形態]
図16は、第4の実施形態の走査型プローブ顕微鏡550の構成を表わす図である。
【0110】
第4の実施形態の走査型プローブ顕微鏡550は、フォースカーブ作成部11に代えて、変位カーブ作成部91を備える。
【0111】
第1の実施形態では、フォースカーブ作成部11は、カンチレバー2の変位D[V]に、バネ定数K[N/m]と感度S[m/V]とを乗算してフォースを算出することによって、フォースカーブを作成した。
【0112】
本実施の形態では、変位カーブ作成部91は、カンチレバー2の変位の時間変化を表わす変位カーブを作成する。
【0113】
図17は、変位カーブの例を表わす図である。
図17において、横軸は、探針20を原点とした試料Sの垂直方向の位置Zを表わす。垂直方向の位置Zは、探針20と試料Sの垂直方向の距離を表わす。図16の縦軸は、カンチレバー2の変位を表わす。
【0114】
バネ定数K[N/m]と感度S[m/V]は、定数なので、本実施の形態の変位カーブは、フォースカーブと同じ形状となる。よって、第1~第3の実施形態で説明した形状値および弾性回復量は、変位カーブでも求めることができる。
【0115】
したがって、本実施の形態では、形状値算出部52は、フォースカーブを用いて形状値を算出したのと同じ方法で、変位カーブを用いて形状値を算出する。同様に、物性量算出部53は、フォースカーブを用いて弾性回復量を算出したのと同じ方法で、変位カーブを用いて弾性回復量を算出する。
【0116】
(変形例)
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、たとえば、以下のような変形例も含む。
【0117】
(1)形状値
上記の実施形態では、アプローチカーブ上のあるフォースFに対するZ位置を形状値としたが、これに限定されるものではない。たとえば、リリースカーブ上のあるフォースFに対するZ位置を形状値としてもよい。あるいは、アプローチカーブ上のあるフォースFに対するZ位置と、リリースカーブ上のあるフォースFに対するZ位置を形状値としてもよい。
【0118】
(2)面積の計算
第1の実施形態では、物性量算出部53は、フォースカーブを構成するアプローチカーブの傾きの大きさが閾値TH1以上となるZ位置の最大値を面積計算のための終点ZBとして求めたが、これに限定されるものではない。物性量算出部53は、フォースカーブを構成するリリースカーブの傾きの大きさが閾値TH2以上となるZ位置の最大値を面積計算のための終点ZBとして求めてもよい。あるいは、物性量算出部53は、フォースカーブを構成するアプローチカーブの傾きの大きさが閾値TH1以上、かつ、フォースカーブを構成するリリースカーブの傾きの大きさが閾値TH2以上となるZ位置の最大値を面積計算のための終点ZBとして求めてもよい。上記において、閾値TH1と閾値TH2は、同一であってもよい。
【0119】
(3)駆動部
上記の実施形態では、駆動部が、試料Sを3次元方向に移動させたが、これに限定するものではない。駆動部が、探針20を3次元方向に移動させるものとしてもよい。
【0120】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0121】
(4) 測定部1
図18は、測定部のハードウエア構成の例を表わす図である。
【0122】
図1の測定部1を構成するフォースカーブ作成部11、形状値算出部52、表面形状像生成部12、物性量算出部53、および物性量画像生成部13ハードウエアは、プロセッサ1100と、プロセッサ1100とバス1300で接続されたメモリ1200とを備える。制御部40は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ1110がメモリ1200に記憶されたプログラムを実行することにより、実現される。また、複数のプロセッサおよび複数のメモリが連携して上記構成要素の機能を実行するものとしてもよい。図9の測定部81を構成する変位カーブ作成部91、形状値算出部52、表面形状像生成部12、物性量算出部53、および物性量画像生成部13も同様である。
【0123】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0124】
1,81 測定部、2 カンチレバー、3 変位測定部、4 駆動部、11 フォースカーブ作成部、12 表面形状像生成部、13 物性量画像生成部、20 探針、31 光源、32,33 ミラー、34 光検出器、35 A/D変換器、41 D/A変換器、42 スキャナドライバ、43 スキャナ、50,550 走査型プローブ顕微鏡、52 形状値算出部、53 物性量算出部、91 変位カーブ作成部、S 試料。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18