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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】杭支持構造物の補強構造及び補強方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/12 20060101AFI20220112BHJP
   E02D 27/32 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
E02D27/12 Z
E02D27/32 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017242338
(22)【出願日】2017-12-19
(65)【公開番号】P2019108729
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(74)【代理人】
【識別番号】100089886
【氏名又は名称】田中 雅雄
(72)【発明者】
【氏名】池野 勝哉
(72)【発明者】
【氏名】宇野 州彦
【審査官】三笠 雄司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-255329(JP,A)
【文献】特開昭64-039413(JP,A)
【文献】特開2016-148236(JP,A)
【文献】特開2008-297815(JP,A)
【文献】特開2002-146704(JP,A)
【文献】特開2004-183324(JP,A)
【文献】特開平09-053223(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0255242(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00-27/52
E01D 1/00-24/00
E02B 3/04- 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭頭部に上部工を構成するコンクリートに埋設される内部鉄筋が溶接プレートを介して連結され、前記杭頭部と前記上部工とが接合されてなる杭支持構造物の補強構造において、
前記上部工より下の位置で杭の外周に固定される杭固定体と、前記上部工下面に固定される上部工固定部と、該上部工固定部と前記杭固定体とに跨った支持補強部とを有する補強部材を備え、
該補強部材は、筒状の杭固定体を複数に縦割りした形状であって、前記杭の外周に巻き付けて固定される複数の縦割り補強部材によって構成され、該各縦割り補強部材の外周に前記上部工固定部が前記支持補強部を介して支持され、
前記上部工が前記補強部材を介して前記杭に支持されるようにしたことを特徴とする杭支持構造物の補強構造。
【請求項2】
前記上部工固定部は、前記杭固定体の上端より高い位置に配置され、前記支持補強部を介して前記杭固定体に支持されている請求項1に記載の杭支持構造物の補強構造。
【請求項3】
前記杭と前記補強部材との間に充填される充填材を備え、該充填材を介して前記杭と前記補強部材とが一体化されてなる請求項1又は2に記載の杭支持構造物の補強構造。
【請求項4】
杭頭部に上部工を構成するコンクリートに埋設される内部鉄筋が溶接プレートを介して連結され、前記杭頭部と前記上部工とが接合されてなる杭支持構造物の補強方法において、
前記上部工より下の位置で杭の外周に固定される杭固定体と、前記上部工下面に固定される上部工固定部と、該上部工固定部と前記杭固定体とに跨った支持補強部とを有し、筒状の杭固定体を複数に縦割りした形状の複数の縦割り補強部材の外周に前記上部工固定部が前記支持補強部を介して支持されてなる補強部材を、前記縦割り補強部材を前記杭の外周に巻き付けて固定するとともに、前記上部工固定部を前記上部工下面に固定して既設の杭に取り付け、
前記補強部材を介して前記上部工を前記既設の杭に支持させることを特徴とする杭支持構造物の補強方法。
【請求項5】
前記杭固定体を前記上部工下面より一定の距離をおいて固定する請求項4に記載の杭支持構造物の補強方法。
【請求項6】
前記上部工の劣化部分を補修した後、該補修部分に前記上部工固定部を固定する請求項4又は5に記載の杭支持構造物の補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩害等によって劣化した桟橋等の杭支持構造物を補強する杭支持構造物の補強構造及び補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、桟橋は、水底に立設された複数の鋼管杭の杭頭部がコンクリート梁(上部工)に剛結合され、当該鋼管杭とコンクリート梁とによってラーメン構造を成している。
【0003】
このコンクリート梁に連結される鋼管杭の杭頭部は、スプラッシュゾーンと呼ばれる飛沫帯になっており、常に水面上において飛沫に晒され、繰り返し押し寄せる波浪の飛沫によって塩化物イオン等の塩害因子が杭頭部及びその付近のコンクリート部分に付着する。
【0004】
この付着した塩害因子は、鋼管杭の杭頭部付近の腐食を生じさせるとともに、上部工を構成するコンクリート内に浸入し、鉄筋や支柱等の鋼製部材を腐食させ、上部工体を劣化させる被害、即ち、塩害の原因となっていた。
【0005】
そこで、従来、このような飛沫帯にある杭頭部には、モルタル被膜あるいは重防食(エポキシ樹脂,ウレタン樹脂)と呼ばれる防食処理を施し、塩害の進行を防止している(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
しかしながら、このような防食被膜は、長年の経年劣化や付着した海洋生物の落下に伴って損傷するため、その効果は恒久的に継続せず、鋼管杭の杭頭部及びその付近のコンクリート部分に腐食が生じていた。
【0007】
そこで、このような杭頭付近の腐食に対しては,被りコンクリートの劣化部をはつり取り、その部分をモルタル等の補修材で補修するとともに、既存鉄筋の断面が大きく減少している場合には、あらたに鉄筋を添えて補強していた。
【0008】
また、鋼管杭に関しては,劣化した被膜や錆をそぎ落とし、耐力上必要な肉厚に満たない場合には鋼板やコンクリートを巻きたてるなどの補強を行った上で新たに被膜防食を設けていた(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2000-157929号公報
【文献】特開2000-336813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
飛沫帯における腐食劣化は、鋼管杭及びその付近のコンクリート部分とで同時に進行している場合が多く、また、設計における杭頭部の剛結条件は、鋼管杭とコンクリート梁の両者が相互に関係していることから、鋼管杭の杭頭部とその付近のコンクリート部分とを一体的に補強することが望ましい。
【0011】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、鋼管杭頭部又はその付近のコンクリート部分の腐食が発生した部分毎に補修しているに過ぎなかった。
【0012】
また、鋼管杭の腐食に関しては、防食効果がないと、例えば,直径600mm厚み6mmの鋼管杭で0.02mm/年の鋼材腐食が進行すると、50年で1.0mmもの腐食が生じることになり、断面性能(具体的には断面係数)として83%に減少するおそれがある。
【0013】
一方、杭頭部の腐食により提灯状に座屈する場合には、座屈部分が外側に膨出するため補強鋼材の取付け等を阻害するおそれがあった。
【0014】
また、一般に上部工を構成するコンクリート内に埋設された鉄筋と鋼管杭頭部とが溶接プレートを介して溶接で接続されているため、鋼管杭にコンクリートを巻きたてる補修方法では、巻き立てコンクリートに埋設される鉄筋を上部工と一体化させようとすると、当該鉄筋が溶接プレートに干渉するため、施工性が著しく悪いという問題があった。
【0015】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、杭頭部とその付近のコンクリート部分とを互いに一体的に補強することができ、施工性に優れた杭支持構造物の補強構造及び補強方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、杭頭部に上部工を構成するコンクリートに埋設される内部鉄筋が溶接プレートを介して連結され、前記杭頭部と前記上部工とが接合されてなる杭支持構造物の補強構造において、前記上部工より下の位置で杭の外周に固定される杭固定体と、前記上部工下面に固定される上部工固定部と、該上部工固定部と前記杭固定体とに跨った支持補強部とを有する補強部材を備え、該補強部材は、筒状の杭固定体を複数に縦割りした形状であって、前記杭の外周に巻き付けて固定される複数の縦割り補強部材によって構成され、該各縦割り補強部材の外周に前記上部工固定部が前記支持補強部を介して支持され、前記上部工が前記補強部材を介して前記杭に支持されるようにしたことにある。
【0017】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記上部工固定部は、前記杭固定体の上端より高い位置に配置され、前記支持補強部を介して前記杭固定体に支持されていることにある。
【0018】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記杭と前記補強部材との間に充填される充填材を備え、該充填材を介して前記杭と前記補強部材とが一体化されてなることにある。
【0019】
請求項4に記載の発明の特徴は、杭頭部に上部工を構成するコンクリートに埋設される内部鉄筋が溶接プレートを介して連結され、前記杭頭部と前記上部工とが接合されてなる杭支持構造物の補強方法において、前記上部工より下の位置で杭の外周に固定される杭固定体と、前記上部工下面に固定される上部工固定部と、該上部工固定部と前記杭固定体とに跨った支持補強部とを有し、筒状の杭固定体を複数に縦割りした形状の複数の縦割り補強部材の外周に前記上部工固定部が前記支持補強部を介して支持されてなる補強部材を、前記縦割り補強部材を前記杭の外周に巻き付けて固定するとともに、前記上部工固定部を前記上部工下面に固定して既設の杭に取り付け、前記補強部材を介して前記上部工を前記既設の杭に支持させることにある。
【0020】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項4の構成に加え、前記杭固定体を前記上部工下面より一定の距離をおいて固定することにある。
【0021】
請求項6に記載の発明の特徴は、請求項4又は5の構成に加え、前記上部工の劣化部分を補修した後、該補修部分に前記上部工固定部を固定することにある。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る杭支持構造物の補強構造は、請求項1に記載の構成を具備することによって、施工性に優れた簡便な構造によって鋼管杭等の杭とその付近の上部工構成部分とを一体的に補強することができる。また、既設の杭支持構造物にも適用することができる。
【0023】
また、本発明において、請求項2に記載の構成を具備することによって、鋼管杭の劣化した部分を介さずに補強部材を介して上部工を杭に支持させ、剛結合状態を維持することができる。
【0024】
さらに、本発明において、請求項3に記載の構成を具備することによって、
腐食により薄肉化した鋼管杭の補強とともに、補強部材を杭に堅固に固定することができる。
【0025】
本発明に係る杭支持構造物の補強方法は、請求項4に記載の構成を具備することによって、施工性に優れた簡便な構造によって鋼管杭等の杭とその付近の上部工構成部分とを一体的に補強することができる。
【0026】
また、本発明において、請求項5に記載の構成を具備することによって、既設の杭が劣化により座屈したような場合であっても、当該劣化部分を経ずに上部工を既設杭に支持させることができる。
【0027】
さらに、本発明において、請求項6に記載の構成を具備することによって、鋼管杭とその付近の上部工を構成するコンクリート部分とが同時進行的に劣化した場合であっても、その双方を補強できるとともに一体的に補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係る杭支持構造物の補強構造の実施例を示す正面図である。
図2図1中の補強部材による補強状態を示す拡大図である。
図3】同上のA-A線矢視図である。
図4】杭支持構造物の補強方法の各工程を示す図であって、補強前の既設杭支持構造物の状態を示す部分拡大断面図である。
図5】同上の上部工の補修作業の状態を示す部分拡大断面図である。
図6】同上の縦割り補強部材の設置作業を示す部分拡大正面図である。
図7】同上の補強部材を取り付けた状態を示す部分拡大断面図である。
図8】同上の鋼管杭の補強の状態を示す部分拡大断面図である。
図9】本発明に係る杭支持構造物の他の実施例を示す部分拡大断面図である。
図10】同上のさらに他の実施例を示す部分拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明に係る杭支持構造物の補強構造の実施態様を図1図3に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号1は桟橋等の杭支持構造物、符号2は水面である。
【0030】
杭支持構造物1は、図1に示すように、杭支持水底地盤3に打設された複数の鋼管杭4,4…と、鋼管杭4,4…に支持されたコンクリート製梁部5とを備え、コンクリート製梁部5上に床版部6が形成され、コンクリート製梁部5と床版部6とで桟橋の上部工7を成している。
【0031】
この杭支持構造物1は、上部工7が補強部材8を介して各鋼管杭4,4…に支持されてなる補強構造により、当該補強構造によって杭頭部及びその付近の上部工7を構成するコンクリート部分が一体的に補強されている。
【0032】
補強部材8は、上部工7より下の位置で鋼管杭4の外周に固定される杭固定体10と、上部工7下面に固定される上部工固定部11,11…と、上部工固定部11,11…と杭固定体10とに跨った支持補強部12,12とを備え、上部工7が補強部材8を介して鋼管杭4,4…に支持されるようになっている。
【0033】
また、この補強部材8は、筒状の杭固定体10を複数に縦割りした形状(本実施例では二分割)の複数の縦割り補強部材8a,8aにより構成され、両縦割り補強部材8a,8aを組み付けることにより杭固定体10、上部工固定部11,11…及び支持補強部12,12とが一体となった一つの補強部材8が形成されるようになっている。
【0034】
尚、この補強部材8、即ち、各縦割り補強部材8a,8aの外側は、特に図示しないが、エポキシ樹脂系塗料等の防食塗料によって被覆され、重防食処理が施されている。
【0035】
杭固定体10は、半割筒状に形成された半割体10a,10aによって構成され、半割体10a,10aの両側縁に形成された締結用のフランジ13,13を重ね合わせボルト締めすることにより、鋼管杭4,4…の外周に巻き付けられるようになっている。尚、符号14はボルトである。
【0036】
また、半割体10aの内側には、必要に応じてシアキー等の突起28,28が溶接等によって固定されていてもよい。
【0037】
この杭固定体10は、鋼管杭4,4…の状態によって取り付け位置が異なり、例えば、鋼管杭4,4…の一部に座屈が生じている場合には、上部工7下面より一定の距離をおき、当該座屈部分15の下側に固定される。
【0038】
また、鋼管杭4を構成する鋼材の肉厚が腐食によって減少している場合には、杭固定体10と鋼管杭4との間にセメントやモルタル等の充填材16が充填され、充填材16を介して鋼管杭4と杭固定体10とを一体化させることにより、腐食部分を補強するようになっている。
【0039】
尚、この場合には、半割体10aの内側にシアキー等の突起28,28を設けておくことが望ましく、必要に応じて鋼管杭4側にシアキー等の突起29,29を設けておいてもよい。
【0040】
各上部工固定部11,11…は、所定の位置にボルト挿通孔17,17が開口した平板状に形成され、支持補強部12,12を介して各縦割り補強部材8a,8aの外周に支持されている。
【0041】
各上部工固定部11,11…は、上部工7下面に重ね合わされる配置に支持され、ボルト挿通孔17,17に通したボルト18を上部工7下面部に埋設されたアンカーナット19に締め付けることによって、上部工7下面に強固に固定されるようになっている。
【0042】
支持補強部12,12は、例えば、三角リブや台形リブ等のリブ状に形成され、その斜
辺を挟む一方の辺が杭固定体10の外周に溶接等によって固定され、他方の辺が上部工固定部11,11…の表面に溶接等によって固定されている。
【0043】
このように構成された杭支持構造物1の補強構造は、上部工7が補強部材8を介して鋼管杭4,4…に支持されることにより鋼管杭4,4…と上部工7とが一体的に補強され、杭頭部の状態の如何を問わず、杭と上部工7との剛結合状態が維持できるようになっている。
【0044】
次に、この補強構造を使用した既設杭支持構造物1の補強方法について図4図8に基づいて説明する。尚、上述の実施例と同様の構成には同一符号を付して説明し、符号1は桟橋等の既設杭支持構造物とする。
【0045】
この既設杭支持構造物1は、図4に示すように、飛沫帯において繰り返し押し寄せる波浪に晒され、飛沫帯部分の鋼管杭4,4…の一部が腐食し、鋼管杭4,4…を構成する鋼板の板厚が減少するとともに、接合部付近で座屈した状態(座屈部分15)になっているものとする。
【0046】
また、この既設杭支持構造物1は、上部工7を構成する杭頭部付近のコンクリート7aが腐食した状態となっているものとする。
【0047】
このような既設杭支持構造物1を補強するには、先ず、上部工7の腐食したコンクリート部分7aを斫り取って除去し、内部鉄筋20の状態を確認する。
【0048】
次に、内部鉄筋20の状態に応じて、当該鉄筋20を研磨或いは補強筋21を継ぎ足した上で防錆処理を施す。また、必要に応じてアンカーナット19を溶接等によって鉄筋20に固定する。また、必要に応じて上部工7の所定個所にアンカーナット19を設置する。
【0049】
そして、コンクリート7aを斫り取った部分に補修用のコンクリート又はモルタル等の補修材22を打設し、図5に示すように、上部工7下面部を補修する。
【0050】
次に、杭固定体10を鋼管杭4,4…に取り付けるとともに、上部工固定部11,11…を上部工(コンクリート梁部5)の下面に固定し、補強部材8を設置する。
【0051】
先ず、図6図7に示すように縦割り補強部材8a,8aをウインチやチェーンブロック等(特に図示せず)によって杭頭部まで引き上げ、上部工固定部11,11…を上部工7下面の所定の位置に重ね合わせた状態で杭固定体10を鋼管杭4,4…の外周に固定する。
【0052】
その際、杭固定体10は、上部工7下面より一定の距離をおいた位置に固定し、杭固定体10で鋼管杭4,4…の腐食によって薄肉化した部分24を覆うとともに、杭固定体10が鋼管杭4,4…の座屈部分15と干渉しないようにする。
【0053】
また、上部工固定部11,11…のボルト挿通孔17,17にボルト18を通し、当該ボルト18をアンカーナット19に締め付け、上部工固定部11,11…を上部工7下面部に強固に固定する。
【0054】
次に、上部工固定部11の固定が完了した後、鋼管杭4,4…の外周に鍔状の漏れ防止型枠25を溶接等によって固定し、杭固定体10の下面を閉鎖する。
【0055】
そして、図8に示すように、杭固定体10の上面側より充填材16用の注入ホース26を挿し込み、注入ホース26からモルタル等の充填材16を注入し、鋼管杭4と杭固定体10との間に充填材16を充填し、充填材16を養生固化させて鋼管杭4と杭固定体10とを充填材16を介して一体化させる。
【0056】
更に、図4図8に示す各工程を各鋼管杭4,4…毎に繰り返し、既設支持構造物1全体が補強される。
【0057】
このように補強された既設杭支持構造物1は、鋼管杭4,4…の腐食により薄肉化した部分24に杭固定体10を巻き付け、鋼管杭4と杭固定体10との間に充填材16が充填されることによって杭自体が補強される。
【0058】
一方、上部工7は、劣化した部分が補修材22によって補強されるとともに、座屈部分15を経ずに鋼管杭4,4…に支持されるので、簡便な構造で上部工7と鋼管杭4,4…とが一体的に補強される。その際、下部工固定部11は、内部鉄筋20と鋼管杭20とを連結する鍔状の溶接プレート27,27の位置に影響されずに固定することができる。
【0059】
尚、上述の実施例では、杭固定体10を上部工7の下面より一定距離おいて杭の外周に固定した例について説明したが、鋼管杭4が座屈していない場合等には、図9に示すように、上部工7下面の直下に固定してもよい。尚、上述の実施例と同様の構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0060】
また、補強部材8の態様は、上述の実施例に限定されず、例えば、支持補強部12が弧状(曲線状)に形成されたものであってもよく、また、図10に示すように、上部工固定部30と支持補強部31とを有するブラケット32を備え、各ブラケット32,32が杭固定体10に支持されたものであってもよい。尚、上述の実施例と同様の構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0061】
この場合、ブラケット32の態様は、図10に示す実施例に限定されるものではなく、例えば、支持補強部31が弧状(曲線状)に形成されたものでもよい。
【0062】
尚、上述の実施例では杭として鋼管杭を用いた場合について説明したが、本発明は、コンクリート杭等の鋼管杭以外の杭にも適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 杭支持構造物(桟橋)
2 水面
3 水底地盤
4 鋼管杭
5 コンクリート製梁部
6 床版部
7 上部工
8 補強部材
10 杭固定体
11 上部工固定部
12 支持補強部
13 フランジ
14 ボルト
15 座屈部分
16 充填材
17 ボルト挿通孔
18 ボルト
19 アンカーナット
20 鉄筋
21 補強筋
22 補修材
24 薄肉化部分
25 漏れ防止型枠
26 注入ホース
27 溶接プレート
28 突起(シアキー)
29 突起(シアキー)
30 下部工固定部
31 支持固定部
32 ブラケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10