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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】無線表示システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 52/02 20090101AFI20220112BHJP
   H04M 1/73 20060101ALI20220112BHJP
   H04W 48/16 20090101ALI20220112BHJP
【FI】
H04W52/02
H04M1/73
H04W48/16 135
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017051849
(22)【出願日】2017-03-16
(65)【公開番号】P2018157345
(43)【公開日】2018-10-04
【審査請求日】2020-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000147833
【氏名又は名称】株式会社イシダ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】安部 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 健
(72)【発明者】
【氏名】北川 弘樹
【審査官】桑江 晃
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-048829(JP,A)
【文献】特開2007-221393(JP,A)
【文献】特開2014-171106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
H04M 1/73
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-2
CT WG1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池駆動式の無線表示端末と、
前記無線表示端末と通信を行う複数のアクセスポイントと、
前記アクセスポイントに接続され、前記無線表示端末を管理する管理サーバと、
を備え、
前記無線表示端末のそれぞれは、複数の前記アクセスポイントの中の1つに所属し、所属している前記アクセスポイントが送信する信号を受信し、
前記無線表示端末のそれぞれは、それぞれが所属する前記アクセスポイントからのコマンドの受信を待つ待機モードと、前記コマンドが、少なくとも自己宛であるか否かを判断する、前記待機モードより電力消費の大きなアクティブモードと、を有し、
複数の前記アクセスポイントの中の一つのアクセスポイントに所属する前記無線表示端末の数の偏りが所定範囲を逸脱した場合に、前記一つのアクセスポイントは、所属する前記無線表示端末に分散コマンドを送信し
前記分散コマンドは、電波強度の閾値の情報を含み、
前記分散コマンドを受信した前記無線表示端末は、所属先の前記アクセスポイントから受信する電波の強度が前記閾値を下回る場合に偏り解消処理を実行する、
無線表示システム。
【請求項2】
記アクセスポイントは、前記分散コマンドを送信する際に、前記分散コマンドを含むビーコンを送信する、
請求項に記載の無線表示システム。
【請求項3】
前記偏り解消処理は、前記無線表示端末が通信可能な前記アクセスポイントをサーチし、通信可能な前記アクセスポイントを所属先として決定する処理である、
請求項1又は2に記載の無線表示システム。
【請求項4】
前記無線表示端末は、前記偏り解消処理として、前記アクセスポイントと通信可能であるかを、複数の前記アクセスポイントについて無作為の順番で判断し、最初に通信可能と判断された前記アクセスポイントを所属先に決定する処理を行う、
請求項に記載の無線表示システム。
【請求項5】
前記無線表示端末は、前記偏り解消処理として、これまで所属していた前記アクセスポイント以外の前記アクセスポイントを対象として、前記無線表示端末が通信可能な前記アクセスポイントをサーチし、通信可能な前記アクセスポイントを所属先として決定する処理を行う、
請求項に記載の無線表示システム。
【請求項6】
前記アクセスポイントは、定期的に、そのアクセスポイントに所属している前記無線表示端末の数に関する所属数関連情報を含むビーコンを送信し、
前記無線表示端末は、前記所属数関連情報に基づいて、前記偏り解消処理を実行する、
請求項1に記載の無線表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線表示システム、より具体的には、複数の電池駆動式の無線表示端末と、無線表示端末と通信を行う複数のアクセスポイントとを備えた無線表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1(特開2016-140368号公報)のように、複数の電池駆動式の無線表示端末と、無線表示端末と通信を行う複数のアクセスポイントと、無線表示端末を管理する管理サーバと、を備えた無線表示システムが知られている。
【0003】
特許文献1(特開2016-140368号公報)に記載されているような電池駆動式の無線表示端末には、一般に電池の消耗の抑制という課題がある。例えば、特許文献1(特開2016-140368号公報)には、周囲の明るさに応じて無線表示端末にコマンドが送信されてくる可能性の高低を判断し、可能性が低いと判断される場合に無線表示端末が低電力消費モードに移行し、電池の消耗を抑制することが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1(特開2016-140368号公報)に記載されているような無線表示端末は、その無線表示端末が所属する1のアクセスポイントからコマンドを受信するよう構成されている。また、無線表示端末は、コマンドの受信までは電力消費の大きな起床状態の時間の割合を抑えた運転を行い、コマンドの受信の際には、起床状態に移行して、受信したコマンドが自己宛のコマンドであるかを判断し、自己宛のコマンドである場合には、更にこのコマンドに含まれている情報をメモリに格納するというような処理を行う。
【0005】
このような無線表示端末を用いる無線表示システムでは、通常、アクセスポイントに所属する無線表示端末が増加するほど、無線表示端末が、自己宛ではないコマンドを受信し、受信コマンドが自己宛であるか否かを判断する処理を行う機会が増加する。言い換えれば、このような無線表示端末を用いる無線表示システムでは、アクセスポイントに所属する無線表示端末が増加するほど、そのアクセスポイントに所属する無線表示端末の電力消費が大きくなりやすい。そのため、複数のアクセスポイントのそれぞれに所属する無線表示端末の数に偏りが生じると、一部のアクセスポイントに所属している無線表示端末の電池の消耗が特に大きくなりやすいという問題がある。
【0006】
特許文献1(特開2016-140368号公報)の無線表示システムでは、コマンドが送信されてくる可能性が低いと判断される場合の無線表示端末の電力消費の抑制については改善が図られている。しかし、アクセスポイントに所属する無線表示端末の数の偏りに伴い、一部の無線表示端末の電池の消耗が大きくなるという問題に関しては改良の余地がある。
【0007】
本発明の課題は、複数のアクセスポイントを備えた無線表示システムであって、各アクセスポイントに所属する無線表示端末の数に偏りが生じにくく、一部のアクセスポイントに所属する無線表示端末の電池が過度に消耗されるという状態の発生を抑制可能な無線表示システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1観点に係る無線表示システムは、複数の電池駆動式の無線表示端末と、複数のアクセスポイントと、管理サーバと、を備える。アクセスポイントは、無線表示端末と通信を行う。管理サーバは、アクセスポイントに接続され、無線表示端末を管理する。無線表示端末のそれぞれは、複数のアクセスポイントの中の1つに所属し、所属しているアクセスポイントが送信する信号を受信する。無線表示端末のそれぞれは、待機モードと、待機モードより電力消費の大きなアクティブモードと、を運転モードとして有する。待機モードは、無線表示端末が所属するアクセスポイントからの、少なくとも1つの無線表示端末を宛先とするコマンドの受信を待つ運転モードである。アクティブモードは、無線表示端末が所属するアクセスポイントから受信したコマンドが、自己宛であるか否かを判断する処理を少なくとも実行する運転モードである。複数のアクセスポイントのそれぞれに所属する無線表示端末の数の偏りが所定範囲を逸脱した場合に、所定の無線表示端末が、偏り解消処理を実行する。
【0009】
なお、ここで、無線表示端末を宛先とするコマンドとは、宛先の無線表示端末に各種処理を実行させるための指令を意味する。また、ここで、複数のアクセスポイントのそれぞれに所属する無線表示端末の数の偏りが所定範囲を逸脱した場合とは、一部のアクセスポイントに所属する無線表示端末の数が過大であると判断される状態である。
【0010】
無線表示端末は、その無線表示端末が所属するアクセスポイントからコマンドを受信すると、少なくともコマンドが自己宛であるか否かを判断する処理を行うため、運転モードを待機モードから電力消費の比較的大きなアクティブモードに移行させる。そのため、全無線表示端末に対して同程度の頻度で、各無線表示端末を対象としたコマンドが送信されると仮定すると、あるアクセスポイントに所属する無線表示端末の数が増えるほど、そのアクセスポイントに所属する無線表示端末の運転モードが待機モードからアクティブモードに移行する機会が増え、これらの無線表示端末の電池の消耗が大きくなる。
【0011】
これに対し、第1観点に係る無線表示システムでは、複数のアクセスポイントのそれぞれに所属する無線表示端末の数の偏りが所定範囲を逸脱した場合に、所定の無線表示端末が偏り解消処理を実行する。そのため、一部の無線表示端末の電池が過度に消耗されるという状態の発生を抑制できる。
【0012】
本発明の第2観点に係る無線表示システムは、第1観点に係る無線表示システムであって、複数のアクセスポイントのそれぞれに所属する無線表示端末の数の偏りが所定範囲を逸脱した場合に、少なくとも所属する無線表示端末の数が最大のアクセスポイントが、そのアクセスポイントに所属する無線表示端末の少なくとも一部宛に、偏り解消処理の実行に関する分散コマンドを送信する。
【0013】
ここでは、アクセスポイントから送信される分散コマンドを利用して複数のアクセスポイントに所属する無線表示端末の数の偏りの解消を図ることができる。
【0014】
本発明の第3観点に係る無線表示システムは、第2観点に係る無線表示システムであって、アクセスポイントは、管理サーバの指示に応じて、そのアクセスポイントに所属する無線表示端末の少なくとも一部宛に、偏り解消処理の実行に関する分散コマンドを送信する。
【0015】
ここでは、管理サーバの指示で無線表示端末が偏り解消処理を実行するため、管理サーバは、無線表示端末で偏り解消処理が実行されているか否かを把握できる。そのため、管理サーバは、無線表示端末の偏り解消処理実行中に、その無線表示端末宛に別のコマンドを送信することを避けることができる。
【0016】
本発明の第4観点に係る無線表示システムは、第2観点又は第3観点に係る無線表示システムであって、分散コマンドは、分散コマンドを送信するアクセスポイントが、そのアクセスポイントに所属する全ての無線表示端末を宛先として送信するグローバルコマンドである。
【0017】
ここでは、偏り解消処理の実行に関する分散コマンドが送信元のアクセスポイントに所属する無線表示端末の全てを対象としたグローバルコマンドであるため、分散コマンドの送信を複数回行う必要がない。そのため、無線表示端末が、複数の無線表示端末のそれぞれに個別に分散コマンドを送信する場合とは異なり、無線表示端末が、他の無線表示端末宛の分散コマンドを含む信号を受信して、無用にアクティブモードに移行することを防止することができる。
【0018】
本発明の第5観点に係る無線表示システムは、第2観点から第4観点のいずれかに係る無線表示システムであって、分散コマンドは、電波強度の閾値の情報を含む。分散コマンドを受信した無線表示端末は、所属先のアクセスポイントから受信する電波の強度が閾値を下回る場合に偏り解消処理を実行する。
【0019】
アクセスポイントから受信する電波強度が比較的強い場合、無線表示端末においてアクセスポイントから送信される信号の受信エラーが比較的発生しにくい。そのため、受信エラーに伴うコマンドの再送信のために、アクセスポイントに所属する無線表示端末が、何度もアクティブモードで動作し、電池が消耗するという状態が発生しにくい。
【0020】
ここでは、アクセスポイントから受信する電波強度が比較的強い無線表示端末は偏り解消処理を実行せず、受信する電波強度が比較的弱い無線表示端末だけが偏り解消処理を実行する。そのため、システム全体として無線表示端末の電池が消耗されにくい状態が実現されやすい。
【0021】
本発明の第6観点に係る無線表示システムは、第2観点から第5観点のいずれかに係る無線表示システムであって、アクセスポイントは、定期的にビーコンを送信する。アクセスポイントは、分散コマンドを送信する際に、分散コマンドを含むビーコンを送信する。
【0022】
ここでは、定期的に送信されるビーコンを利用して分散コマンドを送信することができる。
【0023】
本発明の第7観点に係る無線表示システムは、第1観点から第6観点のいずれかに係る無線表示システムであって、偏り解消処理は、無線表示端末が通信可能なアクセスポイントをサーチし、通信可能なアクセスポイントを所属先として決定する処理である。
【0024】
ここでは、偏り解消処理として、無線表示端末が通信可能なアクセスポイントをサーチし、所属先を決定する処理が行われるため、アクセスポイントに所属する無線表示端末の数の偏りを解消することができる。
【0025】
本発明の第8観点に係る無線表示システムは、第7観点に係る無線表示システムであって、無線表示端末は、偏り解消処理として、アクセスポイントと通信可能であるかを、複数のアクセスポイントについて無作為の順番で判断し、最初に通信可能と判断されたアクセスポイントを所属先に決定する処理を行う。
【0026】
ここでは、所属先が分散されやすく、アクセスポイントに所属する無線表示端末の数の偏りが解消されやすい。
【0027】
本発明の第9観点に係る無線表示システムは、第7観点に係る無線表示システムであって、無線表示端末は、偏り解消処理として、これまで所属していたアクセスポイント以外のアクセスポイントを対象として、無線表示端末が通信可能なアクセスポイントをサーチし、通信可能なアクセスポイントを所属先として決定する処理を行う。
【0028】
ここでは、これまで所属していたアクセスポイントに所属する無線表示端末の数を削減することが容易である。
【0029】
本発明の第10観点に係る無線表示システムは、第1観点に係る無線表示システムであって、アクセスポイントは、定期的に、そのアクセスポイントに所属している無線表示端末の数に関する所属数関連情報を含むビーコンを送信する。無線表示端末は、所属数関連情報に基づいて、偏り解消処理を実行する。
【0030】
ここでは、定期的に送信されるビーコンを利用して偏り解消処理が実行されるため、複数のアクセスポイントに所属する無線表示端末の数に偏りが生じている状態が、短時間で解消されやすい。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る無線表示システムでは、複数のアクセスポイントのそれぞれに所属する無線表示端末の数の偏りが所定範囲を逸脱した場合に、所定の無線表示端末が偏り解消処理を実行する。そのため、一部の無線表示端末の電池が過度に消耗されるという状態の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態に係る無線表示システムの全体概略図である。
図2図1の無線表示システムの無線表示端末の配置例を描画した図である。
図3図1の無線表示システムの無線表示端末の外観を示す図である。
図4図3の無線表示端末の概略構成を示すブロック図である。
図5図4の無線表示端末の所属先のアクセスポイントの決定方法の一例(所属先のアクセスポイントのランダム選択)を説明するためのフローチャートである。
図6図4の無線表示端末の所属先のアクセスポイントの決定方法の他の例(アクセスポイントへの無線表示器の所属数に基づく、所属先のアクセスポイントの選択)を説明するためのフローチャートである。
図7図4の無線表示端末の分散コマンド受信時の動作について説明するためのフローチャートである。
図8図1の無線表示システムの管理サーバの概略構成を示すブロック図である。
図9図1の無線表示システムのアクセスポイントの分散コマンド送信処理について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明の無線表示システムの一実施形態に係る無線表示システム100ついて説明する。
【0034】
なお、以下の実施形態は、例示に過ぎず、本発明に係る無線表示システムの内容を限定するものではない。以下の実施形態の無線表示システムは、発明の趣旨と矛盾しない範囲で適宜変更可能である。
【0035】
(1)全体構成
無線表示システム100は、複数の無線表示端末30を備え、無線表示端末30を管理する管理サーバが、無線表示端末のそれぞれに各種情報を表示させるシステムである。
【0036】
無線表示システム100は、主に、複数の電池駆動式の無線表示端末30と、複数のアクセスポイント20と、管理サーバ10と、を備える(図1参照)。なお、無線表示端末30やアクセスポイント20の台数は、図1に描画されている台数に限定されるものではない。限定するものではないが、1つの無線表示システム100は、多数の、例えば数千台以上の無線表示端末30を有する場合がある。
【0037】
ここでは、無線表示システム100は、スーパーマーケットやコンビニエンスストアのような店舗において使用される。ただし、本発明に係る無線表示システムは、店舗以外で使用されてもよい。例えば、無線表示システムは、倉庫や、工場、病院等で利用されてもよい。
【0038】
無線表示端末30は、可搬性の装置である。無線表示端末30は、アクセスポイント20と電波により通信可能である。無線表示端末30は、アクセスポイント20と無線LANで接続可能である。なお、無線LANは、無線通信に使用される無線技術の一例であって、無線表示端末30とアクセスポイント20とは、他の無線技術により無線通信可能に構成されていてもよい。
【0039】
本無線表示システム100における無線表示端末30は、いわゆる電子棚札である。無線表示端末30は、店舗の売場等に、店舗で取り扱われる複数の商品Pのそれぞれに対応して配置される。例えば、無線表示端末30は、対応する商品Pの近傍に配置される(図2参照)。そして、無線表示端末30は、対応する商品Pに関する商品情報を表示する。商品Pに関する商品情報には、例えば、商品Pの名称や価格等の情報を含む(図3参照)。なお、無線表示端末30は、無線表示システム100を使用する施設内で移動する移動体(物品や人)に付されるものであってもよい。
【0040】
アクセスポイント20は、管理サーバ10と、例えばLANケーブル40により通信可能に接続されている。また、アクセスポイント20は、無線表示端末30と無線通信可能である。
【0041】
無線表示システム100では、無線表示端末30は、複数のアクセスポイント20の中の1つを所属先に決定し、所属しているアクセスポイント20との間で通信を行う。そして、無線表示端末30は、あるアクセスポイント20と所属している間は、そのアクセスポイント20が送信する信号を受信し、他のアクセスポイント20から送信される信号は受信しない。無線表示端末30は、所属先のアクセスポイント20を変更した場合には、所属変更後の所属先のアクセスポイント20との間で通信を行う。なお、管理サーバ10は、各無線表示端末30の所属先のアクセスポイント20を情報として記憶している。具体的には、管理サーバ10は、無線表示端末30識別するための装置IDと、その無線表示端末30が所属するアクセスポイント20の、アクセスポイント20を識別するためのアクセスポイントIDと、を関連付けて記憶している。そのため、管理サーバ10は、ある無線表示端末30を宛先としてコマンドを送信する際に、どのアクセスポイント20にそのコマンドを送信させればよいかを選択可能である。無線表示端末30のアクセスポイント20への所属先の決定や、所属先の変更に関しては後述する。
【0042】
アクセスポイント20の配置や台数は、アクセスポイント20の台数は抑制しつつ、店舗の売場等に設置される無線表示端末30が、いずれかのアクセスポイント20と無線通信可能となるように設計される。アクセスポイント20は、例えば店舗の天井等に間隔を空けて取り付けられる。
【0043】
なお、各アクセスポイント20は、それぞれ定められたチャネル(周波数帯)で通信を行う。アクセスポイント20は、複数のチャネル(例えば14種類のチャネル)を利用する。各アクセスポイント20には、そのアクセスポイント20の周囲に配置されるアクセスポイント20と電波干渉を起こさないようにチャネルが割り当てられる。
【0044】
アクセスポイント20は、管理サーバ10から送られてくる無線表示端末30宛のコマンドを、無線表示端末30に送信する。また、アクセスポイント20は、無線表示端末30が送信してくるACK信号を受信し、これを管理サーバ10へと送信する。
【0045】
また、アクセスポイント20は、無線表示端末30が所属先のアクセスポイント20をサーチする際に送信するプロープ要求を受信し、これに対する応答としてのプローブ応答を無線表示端末30に対して送信する。また、アクセスポイント20は、無線表示端末30がそのアクセスポイント20への所属を要求する際に送信する接続要求を受信し、これに対する応答としての接続応答を無線表示端末30に対して送信する。
【0046】
また、アクセスポイント20は、ビーコンと呼ばれる信号を所定間隔(例えば20秒間隔)で送信する。ビーコンは、ビーコンを送信するアクセスポイント20に所属する無線表示端末30が、所属先のアクセスポイント20と通信可能な状態に有るか否かを判断するために利用される。また、アクセスポイント20は、コマンドの送信を予告する情報を含むビーコンを送信する場合がある。無線表示端末30は、ビーコンにコマンドの送信を予告する情報が含まれているか否かで、ビーコンに引き続いてアクセスポイント20からコマンドが送信されてくるか否かを判断することができる。
【0047】
管理サーバ10は、無線表示端末30を管理する一般的なコンピュータである。管理サーバ10は、例えば店舗のバックヤードに配置される。管理サーバ10は、無線表示端末30に表示させるための商品情報を記憶している。管理サーバ10は、アクセスポイント20を介して、無線表示端末30に各種コマンドを送信する。
【0048】
なお、管理サーバ10が送信するコマンドには、個別コマンドと、グローバルコマンドとを含む。
【0049】
個別コマンドは、コマンドを実行する無線表示端末30が特定されているコマンドである。個別コマンドには、コマンドを実行する、言い換えればコマンドの送信先の無線表示端末30の装置IDが情報として付加される。管理サーバ10は、例えば、ある無線表示端末30の表示変更が必要になった場合に、その無線表示端末30に表示内容を変更させるためのコマンドを生成し、その無線表示端末30の装置IDを含めたコマンド(個別コマンド)を送信する。
【0050】
一方、グローバルコマンドは、そのコマンドを送信するアクセスポイント20に所属する全ての無線表示端末30を宛先としたコマンドである。アクセスポイント20が、そのアクセスポイント20の所属している無線表示端末30に一斉に指示を与えたい場合には、グローバルコマンドを利用することで、多数の無線表示端末30に対し効率よくコマンドを送信することができる。
【0051】
(2)詳細構成
無線表示システム100の無線表示端末30及び管理サーバ10について以下に詳細に説明する。
【0052】
(2-1)無線表示端末
無線表示端末30は、図4のように、主に表示部31と、通信部32と、記憶部33と、制御部34と、電池35を有する。
【0053】
(2-1-1)表示部
表示部31は、記憶部33に記憶されている情報(管理サーバ10から送信されてくる商品情報等)を表示させるための画面である(図3参照)。
【0054】
表示部31には、好ましくは、マイクロカプセル方式、電子粉流体方式、液晶方式、エレクトロウェッティング方式、電気泳動方式等の各種方式の電子ペーパが用いられる。つまり、表示部31は、例えば、マトリクス状に配列された複数の画素で構成されるドットマトリクス方式の不揮発性表示部である。表示部31に電子ペーパを用いることで、電力を消費せずに、あるいは、電力消費を抑えながら、表示部31の表示内容を保持することが可能である。
【0055】
なお、表示部31には、電子ペーパが用いられなくてもよく、例えば液晶ディスプレイが用いられてもよい。
【0056】
(2-1-2)通信部
通信部32は、アクセスポイント20との無線通信機能を担う機能部である。
【0057】
通信部32は、図示は省略するが、アクセスポイント20と無線通信を行うためのアンテナ、無線通信回路、及びベースバンドLSI等を主に有する。
【0058】
(2-1-3)記憶部
記憶部33は、RAM、ROM及びフラッシュメモリ等のメモリで構成される。記憶部33には、各種情報が記憶されている。
【0059】
例えば、記憶部33には、制御部34が使用するプログラムや、アクセスポイント20との通信に使用される通信プロトコル等が定義されたプログラム等が格納されている。
【0060】
また、記憶部33は、各種情報を記憶する複数の記憶領域を有する。複数の記憶領域には、装置ID記憶領域33aと、入力情報記憶領域33bと、を含む。
【0061】
装置ID記憶領域33aには、各無線表示端末30に固有の装置IDが記憶される。
【0062】
入力情報記憶領域33bには、通信部32が、管理サーバ10からアクセスポイント20を介して受信した情報が記憶される。例えば、入力情報記憶領域33bには、管理サーバ10から送信されてきた商品情報(特には商品情報の画像データ)が記憶される。
【0063】
(2-1-4)制御部
制御部34は、主にCPUを有する。制御部34は、表示部31、通信部32、記憶部33、および電池35と電気的に接続されている(図4参照)。
【0064】
制御部34は、記憶部33に記憶されたプログラムを実行することで、無線表示端末30の各構成の動作を制御する。制御部34は、例えば以下の様な制御を行う。
【0065】
(2-1-4-1)所属先のアクセスポイントの決定
無線表示システム100の運用開始時等、各無線表示端末30の所属先のアクセスポイント20が未決定の場合に、制御部34は、通信可能なアクセスポイント20をサーチし、通信可能なアクセスポイント20の1つを所属先として決定する。
【0066】
制御部34は、例えば、以下の(A)又は(B)の方法を用いて、所属先のアクセスポイント20を決定する。
【0067】
(A)所属先アクセスポイントのランダム選択
所属先のアクセスポイント20のランダム選択の方法を利用した所属先のアクセスポイント20の決定処理について、図5のフローチャートを参照しながら説明する。
【0068】
複数のアクセスポイント20は、上記のように複数のチャネル(例えば14種類のチャネル)を利用している。所属先のアクセスポイント20のランダム選択の方法を利用する場合、制御部34は、これらの複数のチャネルの中から、無作為に1つのチャネルを通信用のチャネルとして選択する(ステップS1)。
【0069】
次に、制御部34は、通信部32からプローブ要求を送信する(ステップS2)。プローブ要求は、通信部32から発信される電波の到達範囲内に、ステップS1で選択したチャネルを用いて通信を行うアクセスポイント20が存在するか否かを確認するための信号である。つまり、通信部32からプローブ要求を送信することで、通信可能なアクセスポイント20をサーチする。
【0070】
次に、制御部34は、所定時間内に、通信部32がプローブ応答を受信したか否かを判定する(ステップS3)。通信部32が所定時間内にプローブ応答を受信した場合、処理はステップS4に進む。一方、通信部32が所定時間内にプローブ応答を受信しない場合には、処理はステップS1に戻る。
【0071】
ステップS4では、制御部34は、プロープ要求に対して通信部32が受信した信号の電波強度と所定の閾値とを比較する。所定の閾値は、無線表示端末30とアクセスポイント20とが通信可能と判断できるような電波強度の値である。そして、電波強度が閾値以上の場合には処理はステップS5に進み、電波強度が閾値を下回る場合には処理はステップS1に戻る。
【0072】
ステップS5では、制御部34は、プローブ応答の送信元のアクセスポイント20(ステップS1で選択したチャネルを使用しているアクセスポイント20)を所属先に選択する。
【0073】
次に、ステップS6では、制御部34は、通信部32から装置IDを情報に含む接続要求を送信する。そして、通信部32が、接続要求に対する接続応答を受信する(ステップS7)。このようにして、無線表示端末30の所属先のアクセスポイント20の決定処理が完了する。
【0074】
なお、アクセスポイント20が受信した接続要求は、接続要求を受信したアクセスポイント20のアクセスポイントIDと共に、管理サーバ10にも送信される。この結果、管理サーバ10は、ある無線表示端末30(ある装置IDの無線表示端末30)がどのアクセスポイント20に所属しているかを把握できる。
【0075】
なお、図5のフローチャートにおいて、処理がステップS3又はステップS4からステップS1へと戻る場合には、処理の無駄を省くため、次回のステップS1において、既に選択された(既に接続が試みられた)以外のチャネルの中からランダムにチャネルが選択されることが好ましい。
【0076】
(B)アクセスポイントへの無線表示端末の所属数に基づく所属先アクセスポイントの選択
アクセスポイント20に既に所属している無線表示端末30の数(以降、単に所属数と呼ぶ場合がある)に基づく、所属先のアクセスポイント20の選択を利用した所属先のアクセスポイント20の決定処理について、図6のフローチャートを参照しながら説明する。
【0077】
ここでは、制御部34は、アクセスポイント20が使用している全てのチャネルを順に利用して、通信部32からプローブ要求を送信すると共に、これに対するプローブ応答の受信を試みる(通信可能なアクセスポイント20をサーチする)。また、制御部34は、プローブ要求に対して通信部32が受信した応答の電波強度を所定の閾値と比較する(ステップS11)。所定の閾値は、無線表示端末30とアクセスポイント20とが通信可能と判断できるような電波強度の値である。なお、ここでは、各アクセスポイント20は、プローブ応答を送信する際に、管理サーバ10から配信される、そのアクセスポイント20に所属している無線表示端末30の数(所属数)をプローブ応答と共に送信するものとする。
【0078】
次にステップS12では、制御部34は、ステップS11の処理の結果、電波強度が閾値以上であったチャネルを抽出する。なお、制御部34は、プロープ応答が受信できていないチャネルについては、これを抽出の対象から除外している。
【0079】
次にステップS13では、制御部34は、ステップS12で抽出したチャネルの中で、所属数の値が最小のチャネルを用いているアクセスポイント20を所属先に選択する。
【0080】
次に、制御部34は、通信部32から選択したアクセスポイント20に対し、選択したアクセスポイント20の利用するチャネルを用いて、装置IDを情報に含む接続要求を送信する(ステップS14)。そして、通信部32が、接続要求に対する接続応答を受信する(ステップS15)。このようにして、所属先のアクセスポイント20の決定処理が完了する。
【0081】
なお、アクセスポイント20が受信した接続要求は、接続要求を受信したアクセスポイント20のアクセスポイントIDと共に、管理サーバ10にも送信される。この結果、管理サーバ10は、ある無線表示端末30(ある装置IDの無線表示端末30)がどのアクセスポイント20に所属しているかを把握できる。
【0082】
例えば、上記のような(A)又は(B)の方法を用いて、無線表示端末30の所属先のアクセスポイント20を決定することで、アクセスポイント20に所属する無線表示端末30の数の偏りをある程度抑制できる。
【0083】
なお、上記の(B)の方法を用いた所属先のアクセスポイント20の決定処理は、全無線表示端末30が、全てのチャネルについてプローブ要求を送信し、プローブ応答の受信を試みる(全チャネルをサーチする)。そのため、電波強度が閾値以上のアクセスポイントを見つけた時点でそのアクセスポイントを所属先に決定する(A)の方法を用いた所属先のアクセスポイント20の決定処理に比べ、全無線表示端末30の所属先のアクセスポイント20が決定するまでの時間が長期化しやすい。つまり、上記の(B)の方法を用いる場合、無線表示システム100が安定するまでの時間が長期化しやすい。また、上記の(B)の方法を用いる場合、無線表示端末30の処理負荷が大きくなり、電力消費も大きくなりやすい。
【0084】
そのため、制御部34は、(A)の方法を用いて、無線表示端末30の所属先のアクセスポイント20を決定することが特に好ましい。
【0085】
上記のような方法を用いて所属先のアクセスポイント20が決定した無線表示端末30は、所属先のアクセスポイント20と通信ができない状態になるまで、又は、後述する偏り解消処理を実行するまで、所属先として決定したアクセスポイント20と通信を行う。そして、無線表示端末30のそれぞれは、所属しているアクセスポイントが送信する信号(ビーコンやコマンド)を受信する。
【0086】
なお、無線表示端末30が所属先のアクセスポイント20と通信ができない状態か否かは、例えば、アクセスポイント20が所定間隔で送信してくるビーコンを、通信部32が所定回数連続して受信できないか否かで判断される。この場合、通信部32がビーコンを所定回数連続して受信できない場合に、無線表示端末30が所属先のアクセスポイント20と通信ができない状態であると判断される。無線表示端末30は、所属先のアクセスポイント20と通信ができない状態にあると判断すると、上述の所属先のアクセスポイント20の決定の処理を再実行する。
【0087】
なお、ここでは、無線表示端末30がプローブ要求を送信して(いわゆるアクティブスキャンを行って)、通信可能なアクセスポイント20をサーチし、所属先のアクセスポイント20を決定する場合について説明した。しかし、所属先のアクセスポイント20のサーチの方法はアクティブスキャンに限定されるものではなく、いわゆるパッシブスキャン用いるサーチであってもよい。
【0088】
例えば、具体的には、無線表示端末30は、上記の(A)と同様に、通信に用いるチャネルを無作為に選択し、アクセスポイント20が定期間隔で送信するビーコンの受信を試みてもよい。そして、制御部34は、受信したビーコンの電波強度が所定の閾値以上のチャネルが見つかった時点で、そのチャネルを用いるアクセスポイント20を所属先に決定してもよい。
【0089】
(2-1-4-2)運転モードの切り換えおよび各運転モードにおける動作
所属先のアクセスポイント20が決定した無線表示端末30の制御部34は、主に待機モードとアクティブモードとの2つの運転モードで無線表示端末30を動作させる。
【0090】
アクティブモードは、待機モードに比べて電力消費量が大きな運転モードである。これは、待機モードでは無線表示端末30の状態が主にスリープ状態であるのに対し、アクティブモードでは無線表示端末30の状態が起床状態にあるためである。
【0091】
なお、スリープ状態とは、制御部34が図示しない半導体スイッチやリレーを制御することで、電池35から通信部32への電力供給を停止し、また電池35から制御部34への電力供給も最小限に抑制した状態である。スリープ状態の無線表示端末30は、アクセスポイント20から信号が送信されてきても信号を受信できない。
【0092】
一方、ウェイクアップ状態とは、制御部34が図示しない半導体スイッチやリレーを制御することで、電池35から通信部32に電力を供給し、電池35から制御部34への電力供給制限も解除した状態である。ウェイクアップ状態では、無線表示端末30は、アクセスポイント20から送信されてくる信号を受信可能である。
【0093】
待機モードは、無線表示端末30が所属するアクセスポイント20からの、少なくとも1つの無線表示端末を宛先とするコマンドの受信を待つ運転モードである。待機モードにある無線表示端末30の状態は、大半はスリープ状態にある。無線表示端末30の運転モードが待機モードである時、制御部34は、無線表示端末30の所属するアクセスポイント20の送信するビーコンのタイミングに合わせて、無線表示端末30を極めて短時間だけウェイクアップ状態に移行させる。例えば、制御部34は、20秒間のうち100ミリ秒だけ、無線表示端末30の状態をスリープ状態からウェイクアップ状態に移行させる。
【0094】
そして、制御部34は、待機モードでの運転中に無線表示端末30をウェイクアップ状態に移行させた時に受信したビーコンに、コマンドの送信を予告する情報が含まれていた場合には、無線表示端末30の運転モードをアクティブモードに変更する。無線表示端末30の運転モードがアクティブモードに変更されると、制御部34は無線表示端末30の状態をウェイクアップ状態で維持する。そして、制御部34は、コマンドの送信を予告する情報を含むビーコンに引き続いて所属先のアクセスポイント20から送信されてくるコマンドを受信する。
【0095】
さらに、制御部34は、受信したコマンドが、自己宛のコマンドであるか否かを判断する処理を実行する。具体的には、制御部34は、受信したコマンドがグローバルコマンドか、個別コマンドであるかを判断する。受信したコマンドがグローバルコマンドであれば、制御部34は、そのコマンドが自己宛であると判断する。一方、受信したコマンドが個別コマンドであれば、制御部34は、受信した個別コマンドに含まれている装置IDと、装置ID記憶領域33aに記憶されている装置IDとを比較する。そして、制御部34は、両装置IDが一致する場合には自己宛のコマンドであり、両装置IDが一致しない場合には自己宛ではないと判断する。
【0096】
制御部34は、コマンドが自己宛であると判断した場合には、更にそのコマンドに従った処理を実行する。
【0097】
例えば、制御部34は、受信したグローバルコマンドの一種である分散コマンドである場合には、偏り解消処理を実行する必要があるか否かを判断し、必要と判断された場合には偏り解消処理を実行する。受信したコマンドが分散コマンドである場合の制御部34の処理については後述する。
【0098】
また、例えば、制御部34は、受信したコマンドが、自己宛の表示部31の表示変更を処理する個別コマンドであった場合には、通信部32から所属先のアクセスポイント20に対しACK信号を送信する。また、制御部34は、受信したコマンドが、表示部31に表示する商品情報の変更を指示するコマンドであった場合には、コマンドに含まれている商品情報(商品情報の画像データ)を記憶部33の入力情報記憶領域33bに記憶すると共に、表示部31の表示内容を受信した商品情報に変更する。その後、制御部34は、無線表示端末30の動作モードを待機モードに移行させる。
【0099】
また、制御部34は、受信したコマンドが自己宛のコマンドでないと判断した場合には、無線表示端末30の動作モードを待機モードに移行させる。
【0100】
(2-1-4-3)分散コマンド受信時の動作
分散コマンド受信時の制御部34の処理(無線表示端末30の動作)について、図7のフローチャートを参照しながら説明する。
【0101】
まず、分散コマンドについて簡単に説明する。なお、分散コマンドがどのような場合にアクセスポイント20から送信されるかについては後述する。
【0102】
分散コマンドは、偏り解消処理の実行に関するコマンドである。分散コマンドは、分散コマンドを受信した無線表示端末30の少なくとも一部に対し、偏り解消処理を実行することを指示するコマンドである。分散コマンドは、好ましくは電波強度の閾値の情報を含む。電波強度の閾値は、固定値であってもよいし、分散コマンドの送信時に管理サーバ10により所定の基準に従って決定される値であってもよい。
【0103】
通信部32が分散コマンドを受信すると、制御部34は、その分散コマンドの受信電波強度(所属先のアクセスポイント20から受信する電波の強度)が、分散コマンドに含まれている電波強度の閾値を下回るか否かを判定する(ステップS21)。分散コマンドの受信電波強度が、分散コマンドに含まれている電波強度の閾値を下回る場合には、ステップS22に進む。一方、分散コマンドの受信電波強度が、分散コマンドに含まれている電波強度の閾値以上である場合には、制御部34は、無線表示端末30の動作モードを待機モードに移行させて、分散コマンド受信時の処理を終了する。
【0104】
ステップS22では、無線表示端末30は偏り解消処理を実行する。偏り解消処理は、無線表示端末30が通信可能なアクセスポイント20をサーチし、通信可能なアクセスポイント20を所属先に決定する処理である。つまり、偏り解消処理は、上記の(2-1-4-1)の所属先のアクセスポイントの決定と同様の処理である。
【0105】
例えば、ステップS22において、制御部34は、偏り解消処理として、上記の(A)所属先アクセスポイントのランダム選択の方法を用いて、所属先のアクセスポイント20を決定する。つまり、ステップS22において、制御部34は、アクセスポイント20と通信可能であるかを、複数のアクセスポイント20について無作為の順番で判断し、最初に通信可能と判断されたアクセスポイント20を所属先に決定する処理を行う。
【0106】
あるいは、ステップS22において、制御部34は、偏り解消処理として、これまで所属していたアクセスポイント20(つまり、分散コマンドを送信してきたアクセスポイント20)以外のアクセスポイント20を対象として、無線表示端末が通信可能なアクセスポイント20をサーチし、通信可能なアクセスポイントを所属先として決定する処理を行う。なお、制御部34は、偏り解消処理として、これまで所属していたアクセスポイント20以外のアクセスポイント20を対象として、アクセスポイント20と通信可能であるかを、複数のアクセスポイント20について無作為の順番で判断し、最初に通信可能と判断されたアクセスポイント20を所属先に決定する処理を行うことが特に好ましい。
【0107】
なお、本実施形態では、分散コマンドには電波強度の閾値の情報を含むが、これに限定されるものではない。分散コマンドは、所属先のアクセスポイント20から分散コマンドを受信した全ての無線表示端末30に対し、偏り解消処理の実行を指示するものであってもよい。
【0108】
(2-1-5)電池
電池35は、無線表示端末30の各部に電力を供給する。電池35は、例えばリチウム電池である。
【0109】
(2-2)管理サーバ
管理サーバ10は、無線表示端末30を管理するコンピュータである。管理サーバ10は、アクセスポイント20にLANケーブル40により接続され、無線表示端末30に各種コマンドを送信する。
【0110】
管理サーバ10は、サーバ通信部11と、サーバ出力部12と、サーバ入力部13と、サーバ記憶部14と、サーバ制御部15とを主に有する(図8参照)。
【0111】
(2-2-1)サーバ通信部
サーバ通信部11は、管理サーバ10とアクセスポイント20との通信を可能にする通信回路を主に含んでいる(図示省略)。サーバ通信部11は、LANケーブル40を介して、複数のアクセスポイント20と通信を行う。
【0112】
また、管理サーバ10は、サーバ通信部11を介して、無線表示システム100外の機器と通信可能に構成されていてもよい。例えば、管理サーバ10は、無線表示端末30に表示させる商品情報を取得するため、サーバ通信部11を介して、無線表示システム100と共に店舗に設置されるPOSシステムのサーバおよびストアコントローラと接続されていることが好ましい。
【0113】
(2-2-2)サーバ出力部
サーバ出力部12は、システム管理者に対して情報を表示するインターフェースとしての役割を果たす。サーバ出力部12は、例えば、液晶ディスプレイを含む。
【0114】
(2-2-3)サーバ入力部
サーバ入力部13は、入力部の一例である。サーバ入力部13は、システム管理者からの指示が入力されるインターフェースとしての役割を果たす。サーバ入力部13は、例えば、キーボード及びマウスを含む。
【0115】
(2-2-4)サーバ記憶部
サーバ記憶部14は、ROM、RAM、およびハードディスク等により構成される。
【0116】
サーバ記憶部14には、例えば、サーバ制御部15が実行するプログラムや、他の機器との通信に使用される通信プロトコル等が定義されたプログラム等が格納されている。
【0117】
また、サーバ記憶部14は、各種情報を記憶する複数の記憶領域を有する。サーバ記憶部14に記憶される情報には、商品マスタ記憶領域14aと、端末マスタ記憶領域14bを含む(図8参照)。
【0118】
(2-2-4-1)商品マスタ記憶領域
商品マスタ記憶領域14aは、無線表示システム100で取り扱う商品Pに関する情報である。商品Pに関する情報には、例えば、商品名、販売価格、販売単価、割引率等を含む。また、商品Pに関する情報には、売上数量や在庫数量等、主に店舗の従業者等が利用する情報を含んでもよい。商品マスタ記憶領域14aには、商品Pの商品ID(バーコード情報)別に、商品情報が記憶される。商品マスタ記憶領域14aの内容は、サーバ通信部11が外部機器(例えば、図示しないPOSシステム)から情報を受信することで、あるいは、サーバ入力部13が情報の入力を受け付けることで更新される。
【0119】
(2-2-4-2)端末マスタ記憶領域
端末マスタ記憶領域14bは、無線表示端末30を識別するための装置IDと、商品Pの商品IDとを関連付けた情報である。端末マスタ記憶領域14bにおいて、装置IDと商品IDとが関連付けて記憶されることで、無線表示端末30と無線表示端末30に対応する商品Pとがリンク付けされる。言い換えれば、端末マスタ記憶領域14bに装置IDと商品IDとが関連付けて記憶されることで、ある無線表示端末30に、どの商品Pの商品情報を表示すればよいかが特定される。なお、装置IDおよび商品IDとは、例えば、店舗の店員等の作業者が、図示しないハンディターミナルを用いてリンク作業を行うことで関連付けされる。
【0120】
また、端末マスタ記憶領域14bには、無線表示端末30の装置IDと、無線表示端末30の所属先のアクセスポイント20のアクセスポイントIDと、が関連付けて記憶されている。端末マスタ記憶領域14bに装置IDとアクセスポイントIDとが関連付けて記憶されることで、ある無線表示端末30にコマンドを送信する場合に、どのアクセスポイント20からコマンドを送信させればよいかが特定される。
【0121】
なお、管理サーバ10は、無線表示端末30がアクセスポイント20に対して送信する接続要求を、アクセスポイント20から、そのアクセスポイント20のアクセスポイントIDと共に受信することで、装置IDとアクセスポイントIDとを関連付けできる。
【0122】
(2-2-5)サーバ制御部
サーバ制御部15は、サーバ記憶部14に記憶されているプログラムを実行することで、管理サーバ10の動作を制御する。また、サーバ制御部15は、管理サーバ10の動作を制御することで、無線表示端末30の動作を制御する。
【0123】
例えば、サーバ制御部15は、サーバ通信部11が、図示しないハンディターミナルから送信される関連付けすべき電子棚札の装置IDと商品Pの商品IDとを受け付けると、それらの装置IDと商品IDとを関連付けして端末マスタ記憶領域14bに記憶する。
【0124】
また、例えば、サーバ制御部15は、ある無線表示端末30の表示変更が必要な時に、表示内容の画像データ及び表示変更が必要な無線表示端末30の装置IDを情報に含む、表示変更を指示するコマンドを生成する。そして、サーバ制御部15は、端末マスタ記憶領域14bを参照して、送信先の無線表示端末30の装置IDと関連付けられたアクセスポイントIDのアクセスポイント20を介して、生成したコマンドを無線表示端末30に送信する。なお、無線表示端末30の表示変更が必要な時とは、例えば、商品マスタ記憶領域14aの内容や、端末マスタ記憶領域14bに記憶された装置IDと商品IDと関連付けが更新された時等である。
【0125】
また、サーバ制御部15は、複数のアクセスポイント20のそれぞれに所属する無線表示端末30の数の偏りが所定範囲を逸脱しているか否かを判定する。そして、サーバ制御部15は、複数のアクセスポイント20のそれぞれに所属する無線表示端末30の数の偏りが所定範囲を逸脱した場合(以後、偏り発生時と呼ぶ場合がある)に、一部のアクセスポイント20から分散コマンドを送信させる。特にサーバ制御部15は、偏り発生時に、少なくとも所属する無線表示端末30の数が最大のアクセスポイント20から、そのアクセスポイント20に所属する無線表示端末30の少なくとも一部宛に、偏り解消処理の実行に関する分散コマンドをコマンドして送信させる。つまり、アクセスポイント20は、管理サーバ10の指示に応じて、そのアクセスポイント20に所属する無線表示端末30の少なくとも一部宛に偏り解消処理の実行に関する分散コマンドを送信する。
【0126】
なお、複数のアクセスポイント20のそれぞれに所属する無線表示端末30の数の偏りが所定範囲を逸脱している状態(偏り発生時)とは、例えば、あるアクセスポイント20に所属する無線表示端末30の数が所定値より大きい状態を意味する。
【0127】
また、偏り発生時とは、例えば、無線表示端末30の全数に対して、あるアクセスポイント20に所属する無線表示端末30の割合が、所定の割合より大きい状態を意味する。
【0128】
また、偏り発生時とは、例えば、アクセスポイント20のそれぞれに所属する無線表示端末30の数の標準偏差の値が所定値より大きい場合に、無線表示端末30の数の偏りが所定範囲を逸脱している状態と判定する。
【0129】
アクセスポイント20からの分散コマンドの送信処理について、図9のフローチャートを参照しながら説明する。
【0130】
偏り解消処理は、無線表示端末30による通信可能なアクセスポイント20のサーチが必要となるため、特に無線表示端末30の台数が多い場合には、無線表示システム100が安定するまで(全ての無線表示端末30の所属先のアクセスポイント20が決定するまで)、ある程度時間が必要になる。そのため、無線表示端末30の表示変更等が必要となる可能性の高いタイミングでは偏り解消処理は実行されないことが好ましい。そこで、管理サーバ10は、現在が所定タイミング(例えば、店舗での作業が行われない深夜3時等の所定の時刻)であるか否かが判定される(ステップS31)。ステップS31の処理は、所定タイミングであると判定されるまで繰り返し行われる。なお、ステップS31は、処理フローから省略することも可能である。
【0131】
ステップS31において所定のタイミングであると判定された場合には、サーバ制御部15は、端末マスタ記憶領域14bを参照することで、複数のアクセスポイント20のそれぞれに所属する無線表示端末30の数の偏りが所定範囲を逸脱しているか否かを判定する(ステップS32)。例えば、サーバ制御部15は、端末マスタ記憶領域14bを参照して、アクセスポイント20に所属する無線表示端末30の数を把握し、その数が所定値より大きいアクセスポイント20が存在するか否かを判定する。所属する無線表示端末30の数が所定値より大きいアクセスポイント20が存在する場合には、複数のアクセスポイント20のそれぞれに所属する無線表示端末30の数の偏りが所定範囲を逸脱していると判定してステップS33へと進む。一方、アクセスポイント20に所属する無線表示端末30の数がいずれも所定値以下である場合には、複数のアクセスポイント20のそれぞれに所属する無線表示端末30の数の偏りが所定範囲を逸脱していないと判定してステップS31へと戻る。なお、サーバ制御部15は、他の方法で、複数のアクセスポイント20のそれぞれに所属する無線表示端末30の数の偏りが所定範囲を逸脱しているか否かを判断してもよい。例えば、サーバ制御部15は、無線表示端末30の全数に対してあるアクセスポイント20に所属する無線表示端末30の数の割合が所定の割合より大きい場合や、アクセスポイント20のそれぞれに所属する無線表示端末30の数の標準偏差の値が所定値より大きい場合に、偏りが所定範囲を逸脱していると判定してもよい。
【0132】
ステップS33では、サーバ制御部15は、所属する無線表示端末30の数が過大であると判断される(例えば、所属する無線表示端末30の数が所定値を超える)アクセスポイント20に対し、分散コマンドを送信するよう指示する。その後、ステップS31に戻る。
【0133】
(3)特徴
(3-1)
上記実施形態に係る無線表示システム100は、複数の電池駆動式の無線表示端末30と、複数のアクセスポイント20と、管理サーバ10と、を備える。アクセスポイント20は、無線表示端末30と通信を行う。管理サーバ10は、アクセスポイント20に接続され、無線表示端末30を管理する。無線表示端末30のそれぞれは、複数のアクセスポイント20の中の1つに所属し、所属しているアクセスポイント20が送信する信号を受信する。無線表示端末30のそれぞれは、待機モードと、待機モードより電力消費の大きなアクティブモードと、を運転モードとして有する。待機モードは、無線表示端末30が所属するアクセスポイント20からの、少なくとも1つの無線表示端末30を宛先とするコマンドの受信を待つ運転モードである。アクティブモードは、無線表示端末30が所属するアクセスポイント20から受信したコマンドが、自己宛であるか否かを判断する処理を少なくとも実行する運転モードである。複数のアクセスポイント20のそれぞれに所属する無線表示端末30の数の偏りが所定範囲を逸脱した場合に、所定の無線表示端末30が、偏り解消処理を実行する。
【0134】
無線表示端末30は、その無線表示端末30が所属するアクセスポイント20からコマンドを受信すると、少なくともコマンドが自己宛であるか否かを判断する処理を行うため、運転モードを待機モードから電力消費の比較的大きなアクティブモードに移行させる。そのため、全無線表示端末30に対して同程度の頻度で、各無線表示端末30を対象としたコマンドが送信されると仮定すると、あるアクセスポイント20に所属する無線表示端末30の数が増えるほど、そのアクセスポイント20に所属する無線表示端末30の運転モードが待機モードからアクティブモードに移行する機会が増え、これらの無線表示端末30の電池35の消耗が大きくなる。
【0135】
これに対し、本無線表示システム100では、複数のアクセスポイント20のそれぞれに所属する無線表示端末30の数の偏りが所定範囲を逸脱した場合に、所定の無線表示端末30が偏り解消処理を実行する。そのため、一部の無線表示端末30の電池35が過度に消耗されるという状態の発生を抑制できる。
【0136】
(3-2)
上記実施形態に係る無線表示システム100では、複数のアクセスポイント20のそれぞれに所属する無線表示端末30の数の偏りが所定範囲を逸脱した場合に、少なくとも所属する無線表示端末30の数が最大のアクセスポイント20が、そのアクセスポイント20に所属する無線表示端末30の少なくとも一部宛に、偏り解消処理の実行に関する分散コマンドを送信する。
【0137】
ここでは、アクセスポイント20から送信される分散コマンドを利用して複数のアクセスポイント20に所属する無線表示端末30の数の偏りの解消を図ることができる。
【0138】
(3-3)
上記実施形態に係る無線表示システム100では、アクセスポイント20は、管理サーバ10の指示に応じて、そのアクセスポイント20に所属する無線表示端末30の少なくとも一部宛に、偏り解消処理の実行に関する分散コマンドを送信する。
【0139】
ここでは、管理サーバ10の指示で無線表示端末30が偏り解消処理を実行するため、管理サーバ10は、無線表示端末30で偏り解消処理が実行されているか否かを把握できる。そのため、管理サーバ10は、無線表示端末30の偏り解消処理実行中に、その無線表示端末30宛に別のコマンドを送信することを避けることができる。
【0140】
(3-4)
上記実施形態に係る無線表示システム100は、分散コマンドは、分散コマンドを送信するアクセスポイント20が、そのアクセスポイント20に所属する全ての無線表示端末30を宛先として送信するグローバルコマンドである。
【0141】
ここでは、偏り解消処理の実行に関する分散コマンドが送信元のアクセスポイント20に所属する無線表示端末30の全てを対象としたグローバルコマンドであるため、分散コマンドの送信を複数回行う必要がない。そのため、無線表示端末30が、複数の無線表示端末30のそれぞれに個別に分散コマンドを送信する場合とは異なり、無線表示端末30が、他の無線表示端末30宛の分散コマンドを含む信号を受信して、無用にアクティブモードに移行することを防止することができる。
【0142】
(3-5)
上記実施形態に係る無線表示システム100は、分散コマンドは、電波強度の閾値の情報を含む。分散コマンドを受信した無線表示端末30は、所属先のアクセスポイント20から受信する電波の強度が閾値を下回る場合に偏り解消処理を実行する。
【0143】
アクセスポイント20から受信する電波強度が比較的強い場合、無線表示端末30においてアクセスポイント20から送信される信号の受信エラーが比較的発生しにくい。そのため、受信エラーに伴うコマンドの再送信のために、アクセスポイント20に所属する無線表示端末30が、何度もアクティブモードで動作し、電池35が消耗するという状態が発生しにくい。
【0144】
ここでは、アクセスポイント20から受信する電波強度が比較的強い無線表示端末30は偏り解消処理を実行せず、受信する電波強度が比較的弱い無線表示端末30だけが偏り解消処理を実行する。そのため、システム全体として無線表示端末30の電池が消耗されにくい状態が実現されやすい。
【0145】
(3-6)
上記実施形態に係る無線表示システム100は、偏り解消処理は、無線表示端末30が通信可能なアクセスポイント20をサーチし、通信可能なアクセスポイント20を所属先として決定する処理である。
【0146】
ここでは、偏り解消処理として、無線表示端末30が通信可能なアクセスポイント20をサーチし、所属先を決定する処理が行われるため、アクセスポイント20に所属する無線表示端末30の数の偏りを解消することができる。
【0147】
(3-7)
上記実施形態に係る無線表示システム100は、無線表示端末30は、偏り解消処理として、アクセスポイント20と通信可能であるかを、複数のアクセスポイント20について無作為の順番で判断し、最初に通信可能と判断されたアクセスポイント20を所属先に決定する処理を行う。
【0148】
ここでは、所属先が分散されやすく、アクセスポイント20に所属する無線表示端末30の数の偏りが解消されやすい。
【0149】
(3-8)
上記実施形態に係る無線表示システム100は、無線表示端末30は、偏り解消処理として、これまで所属していたアクセスポイント20以外のアクセスポイント20を対象として、無線表示端末30が通信可能なアクセスポイント20をサーチし、通信可能なアクセスポイント20を所属先として決定する処理を行う。
【0150】
ここでは、これまで所属していたアクセスポイント20に所属する無線表示端末30の数を削減することが容易である。
【0151】
(4)変形例
以下に上記実施形態の変形例について説明する。なお、以下に示す変形例は、互いに矛盾しない範囲で適宜組み合わされてもよい。
【0152】
(4-1)変形例A
上記実施形態に係る無線表示システム100では、アクセスポイント20は、コマンドの送信を予告する情報を含めたビーコンを送信した後に、分散コマンドを送信するが、このような態様に限定されるものではない。例えば、アクセスポイント20は、分散コマンドを送信する際に、分散コマンドを含むビーコンを送信してもよい。
【0153】
(4-2)変形例B
上記実施形態に係る無線表示システム100では、複数のアクセスポイント20のそれぞれに所属する無線表示端末30の数の偏りが所定範囲を逸脱した場合に、一部のアクセスポイント20が無線表示端末30に対して分散コマンドを送信する。
【0154】
しかし、これに限定されるものではなく、アクセスポイント20は、分散コマンドの送信に代えて、又は、分散コマンドの送信に加えて、アクセスポイント20に所属している無線表示端末30の数に関する所属数関連情報を含むビーコンを送信してもよい。
【0155】
例えば、アクセスポイント20は、定期的に(毎日、店舗が営業されていない時刻(例えば深夜3時)に)、アクセスポイント20に所属している無線表示端末30の数に関する所属数関連情報を含むビーコンを送信する。アクセスポイント20は、例えば、管理サーバ10からの指示(指示には、そのアクセスポイント20に所属している無線表示端末30の数の情報を含む)に応じて、所属数関連情報を含むビーコンを送信する。なお、所属数関連情報は、所属数そのものであってもよいし、そのアクセスポイント20に所属している無線表示端末30の所属数が過大であるか否かの情報であってもよい。
【0156】
そして、所属数関連情報を含むビーコンを受信した無線表示端末30は、所属数関連情報に基づいて、偏り解消処理を実行すればよい。例えば、所属数関連情報が所属数の情報である場合、無線表示端末30は、所属数関連情報の値が所定値を超える場合に偏り解消処理を実行する。また、例えば、所属数関連情報がアクセスポイント20に所属している無線表示端末30の数が過大であるか否かの情報である場合、無線表示端末30は、アクセスポイント20に所属している無線表示端末30の数が過大である旨の情報の受信に応じて偏り解消処理を実行する。
【0157】
なお、あるアクセスポイント20に所属する無線表示端末30が一斉に偏り解消処理を実行すると、アクセスポイント20への無線表示端末30の所属台数の制御が難しくなる場合がある。そこで、例えば、所属数関連情報を受信した無線表示端末30の一部だけが偏り解消処理を実行するように構成されてもよい。例えば、無線表示端末30の記憶部33には予め所定の電波強度の閾値が記憶され、無線表示端末30は、所属先のアクセスポイント20から受信する電波の強度が、所定の電波強度の閾値を下回る場合にのみ偏り解消処理を実行するように構成されてもよい。
【0158】
(4-3)変形例C
上記実施形態では、アクセスポイント20は管理サーバ10からの指示に応じて分散コマンドを送信するが、これに限定されるものではない。例えば、アクセスポイント20は、自己に所属する無線表示端末30の数の偏りが過大であるか否かを自ら判断し、分散コマンドを送信するように構成されてもよい。
【0159】
(4-4)変形例D
上記実施形態では、分散コマンドは、アクセスポイント20に所属する無線表示端末30の全てを対象としたグローバルコマンドであるが、これに限定されるものではない。例えば、管理サーバ10は、偏り発生時に、端末マスタ記憶領域14bを参照して無線表示端末30の所属数が過大であると判断されるアクセスポイント20に所属する無線表示端末30を特定し、その一部を分散コマンド(個別コマンド)の送信対象と決定してもよい。そして、無線表示端末30の所属数が過大であると判断されるアクセスポイント20に、分散コマンドの送信対象に決定した無線表示端末30に対する分散コマンドの送信を指示してもよい。この場合、分散コマンドには、電波強度の閾値の情報を含めず、分散コマンドを受信した無線表示端末30は、全て偏り解消処理を実行するように構成されてもよい。
【0160】
なお、管理サーバ10は、あるアクセスポイント20に所属する一部の無線表示端末30に対して分散コマンドを送信した後に、引き続きそのアクセスポイント20に所属している無線表示端末30の数が未だ過大であると判断した場合には、以前に分散コマンドを送信した無線表示端末30以外を対象に更に分散コマンドを送信してもよい。そして、管理サーバ10は、そのアクセスポイント20に所属している無線表示端末30の数が過大でなくなるまで、このような処理を繰り返してもよい。
【0161】
なお、管理サーバ10は、このような処理を繰り返し、あるアクセスポイント20に所属する全ての無線表示端末30に対して1回ずつ分散コマンドを送信した後でも、そのアクセスポイント20に所属している無線表示端末30の数が未だ過大であると判断する場合には、それ以上の分散コマンドの送信を中止してもよい。また、あるいは、管理サーバ10は、アクセスポイント20に所属している無線表示端末30の数が過大ではなくなるまで、アクセスポイント20に所属している無線表示端末30の一部に対して分散コマンドを送信する処理を繰り返し行ってもよい。
【0162】
(4-5)変形例E
例えば、無線表示システムでは、以下の様な態様で、アクセスポイント20から無線表示端末30に分散コマンドを送信してもよい。
【0163】
変形例Eの無線表示システムでは、無線表示端末30は、初めに、例えば上記実施形態の(2-1-4-1)で説明した(B)アクセスポイントへの無線表示端末の所属数に基づく所属先アクセスポイントの選択の方法を用いて、所属先のアクセスポイント20を決定する。そして、変形例Eの無線表示システムは、無線表示端末30が、上記の(B)の方法を実行する際に、各チャネルの受信電波強度を測定し、測定結果をアクセスポイント20に(管理サーバ10に)送信するように構成される。管理サーバ10は、受信した各チャネルの受信電波強度の情報を無線表示端末30毎に記憶する。そして、管理サーバ10は、偏り状態発生時に、あるアクセスポイント20に所属する無線表示端末30の一部が偏り解消処理を実行すべきと判断される場合に、そのアクセスポイント20に所属する無線表示端末30について、予め受信していた各チャネルの受信電波強度の測定結果の情報を参照する。そして、管理サーバ10は、現在所属中のアクセスポイント20のチャネルの受信電波強度よりも、受信電波強度の強いチャネルが存在する無線表示端末30に対して、偏り解消処理の実行を指示する分散コマンドを送信する。ここでは、分散コマンドには、電波強度の閾値の情報は含まれなくてもよい。
【0164】
このように構成される場合、所属先のアクセスポイント20が変更になる可能性が高い無線表示端末30に分散コマンドが送信されるため、効率よくアクセスポイント20間の無線表示端末30の所属数の偏りを解消することができる。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明に係る無線表示システムは、アクセスポイントに所属する無線表示端末の数に偏りが生じにくく、一部のアクセスポイントに所属する無線表示端末の電池が過度に消耗される状態が生じにくい無線表示システムとして有用である。
【符号の説明】
【0166】
10 管理サーバ
20 アクセスポイント
30 無線表示端末
100 無線表示システム
【先行技術文献】
【特許文献】
【0167】
【文献】特開2016-140368号公報
図1
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