(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】農作業機
(51)【国際特許分類】
A01B 33/10 20060101AFI20220112BHJP
A01B 33/02 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
A01B33/10 A
A01B33/02 B
(21)【出願番号】P 2017142612
(22)【出願日】2017-07-24
【審査請求日】2020-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390010836
【氏名又は名称】小橋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】海田 健児
(72)【発明者】
【氏名】滝口 貴智
(72)【発明者】
【氏名】中谷 公紀
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04492273(US,A)
【文献】実開昭62-099902(JP,U)
【文献】実開昭48-036002(JP,U)
【文献】特開昭63-012201(JP,A)
【文献】国際公開第2017/056591(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 33/00-33/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1耕耘爪が設けられ、土壌が前記第1耕耘爪に作用することで回転動力を生じる第1ロータ
と、前記第1耕耘爪とは形状が異なる複数の第2耕耘爪が設けられ、前記第1ロータで生じた回転動力によって回動する第2ロータと、を有する農作業機であって、
前記第1耕耘爪は、
貫通孔を介して前記第1ロータの回転軸に固定される取り付け部と、
前記第1耕耘爪の先端が最も下に降りた状態において、前方を向いた第1面及び前記第1ロータの回転軸方向を向いた第2面と、を備え、
前記第1耕耘爪の先端が最も下に降りた状態で前方から見た場合に、前記回転軸方向において、前記第1面は前記
貫通孔が設けられた面が延長された仮想平面と重ならない位置に設けられて
おり、
前記第2耕耘爪は、刃先に近づくほど板厚が薄くなる刃部を備え、
前記刃部は、前記第2耕耘爪の回転方向とは逆の方向に湾曲し、
前記刃部における前記第2耕耘爪の板厚は、前記第2耕耘爪の回転方向に向かって薄くなり、
前記第1耕耘爪が最も下に降りた状態における前記第1耕耘爪の前方への投影面の面積は、前記第2耕耘爪が最も下に降りた状態における前記第2耕耘爪の前方への投影面の面積より大きい農作業機。
【請求項2】
前記第1面は、前記第1面の前記回転軸方向の幅が前記第1ロータの回転軸から離れるほど大きくなる部分を有し、
前記第2面は、前記第2面の前記前方方向の幅が前記第1ロータの回転軸から離れるほど小さくなる部分を有する、請求項1に記載の農作業機。
【請求項3】
前記第1面は、前記第2面に直交する位置関係にある、請求項2に記載の農作業機。
【請求項4】
複数の第1耕耘爪が設けられ、土壌が前記第1耕耘爪に作用することで回転動力を生じる第1ロータ
と、前記第1耕耘爪とは形状が異なる複数の第2耕耘爪が設けられ、前記第1ロータで生じた回転動力によって回動する第2ロータと、を有する農作業機であって、
前記第1耕耘爪は、第1部、第2部、及び取り付け部を備え、
前記取り付け部は、
貫通孔を介して前記第1ロータの回転軸に固定され、
前記第2部は、前記取り付け部から前記回転軸から遠ざかる方向に延び、
前記第1耕耘爪の先端が最も下に降りた状態で前方から見た場合に、前記回転軸方向において、前記第1部は前記
貫通孔が設けられた面が延長された仮想平面と重ならない位置に設けられて
おり、
前記第2耕耘爪は、刃先に近づくほど板厚が薄くなる刃部を備え、
前記刃部は、前記第2耕耘爪の回転方向とは逆の方向に湾曲し、
前記刃部における前記第2耕耘爪の板厚は、前記第2耕耘爪の回転方向に向かって薄くなり、
前記第1耕耘爪が最も下に降りた状態における前記第1耕耘爪の前方への投影面の面積は、前記第2耕耘爪が最も下に降りた状態における前記第2耕耘爪の前方への投影面の面積より大きい農作業機。
【請求項5】
前記第1耕耘爪の先端が最も下に降りた状態において、前記第2部は前記第1部から前方に突出する、請求項4に記載の農作業機。
【請求項6】
前記第2部は、前記第1部から前記前方に突出する長さが前記第1ロータの回転軸から離れるほど小さくなる部分を有し、
前記第1部は、前記第2部から前記回転軸方向に突出する長さが前記第1ロータの回転軸から離れるほど大きくなる部分を有する、請求項5に記載の農作業機。
【請求項7】
前記第1部が突出する方向は、前記第2部が突出する方向に直交する、請求項6に記載の農作業機。
【請求項8】
複数の第1耕耘爪が設けられ、土壌が前記第1耕耘爪に作用することで回転動力を生じる第1ロータ
と、前記第1耕耘爪とは形状が異なる複数の第2耕耘爪が設けられ、前記第1ロータで生じた回転動力によって回動する第2ロータと、を有する農作業機であって、
前記第1耕耘爪は、
貫通孔を介して前記第1ロータの回転軸に固定される取り付け部と、
板状の第1部と、
板状の第2部と、
前記第1部の端辺及び前記第2部の端辺を接続する屈曲部と、を備え、
前記屈曲部は、前記第1部と前記第2部との間に線状に設けられており、
前記第1耕耘爪の先端が最も下に降りた状態で前方から見た場合に、前記回転軸方向において、前記第1部は前記
貫通孔が設けられた面が延長された仮想平面と重ならない位置に設けられて
おり、
前記第2耕耘爪は、刃先に近づくほど板厚が薄くなる刃部を備え、
前記刃部は、前記第2耕耘爪の回転方向とは逆の方向に湾曲し、
前記刃部における前記第2耕耘爪の板厚は、前記第2耕耘爪の回転方向に向かって薄くなり、
前記第1耕耘爪が最も下に降りた状態における前記第1耕耘爪の前方への投影面の面積は、前記第2耕耘爪が最も下に降りた状態における前記第2耕耘爪の前方への投影面の面積より大きい農作業機。
【請求項9】
前記屈曲部は、直線状に延びており、
前記第1耕耘爪の先端が最も下に降りた状態において、直線状の前記屈曲部は、水平成分よりも垂直成分の方が大きい、請求項8に記載の農作業機。
【請求項10】
前記第1部の主面は、前記第2部の主面に直交する、請求項9に記載の農作業機。
【請求項11】
側面視において、前記第1ロータの回転軌跡と前記第2ロータの回転軌跡とは重畳している、請求項1乃至10のいずれか一に記載の農作業機。
【請求項12】
前記第1ロータの回転軌跡は、前記第2ロータの回転軌跡より大きい、請求項
11に記載の農作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は農作業機に関する。特に、土壌との作用によって回転動力を発生する作業ロータを備えた農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタの後部にヒッチ機構を介して装着され、トラクタに牽引されることにより駆動力を得る農作業機が知られている。例えば、特許文献1に記載された農作業機は、トラクタの後部に装着され、牽引されることによりフロント側の作業ロータが回転して動力が発生し、その動力がチェーン機構を介してリア側の作業ロータに伝達される構造となっている。このような構造の農作業機は、トラクタの走行に伴いフロント側及びリア側の作業ロータが回転することにより、それぞれの作業ロータに設けられた耕耘爪が圃場を耕耘する。
【0003】
特許文献1に記載された農作業機は、ギア比を調整することにより、フロント側の作業ロータに対してリア側の作業ロータが2倍から4倍の速度で回転するように構成されている。この構成によってリア側の作業ロータの回転数がフロント側の作業ロータの回転数よりも大きくなり、リア側の作業ロータの仕事効率が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示すような農作業機では、動力を発生させる作業ロータに設けられた耕耘爪として、板状の部材の側方(耕耘爪の長手方向を垂直方向とした場合の水平方向)の両端をそれぞれ上下方向に捻じった形状の耕耘爪が用いられている。特許文献1の耕耘爪を用いた農作業機では、土壌が耕耘爪に作用する際に、耕耘爪に押し付けられた土は耕耘爪の側方に逃げてしまうため、土壌と耕耘爪との作用によって発生する回転動力にロスが生じてしまっていた。
【0006】
本発明は、そのような課題に鑑みてなされたものであり、牽引によって動力を得る農作業機において、十分な作業ロータの回転動力を得ることができる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態による農作業機は、複数の第1耕耘爪が設けられ、土壌が前記第1耕耘爪に作用することで回転動力を生じる第1ロータを有する農作業機であって、前記第1耕耘爪は、前記第1耕耘爪の先端が最も下に降りた状態において、前方を向いた第1面及び前記第1ロータの回転軸方向を向いた第2面を備え、前記回転軸方向において、前記第2面は前記第1面の端部に位置する。
【0008】
前記第1面は、前記第1面の前記回転軸方向の幅が前記第1ロータの回転軸から離れるほど大きくなる部分を有し、前記第2面は、前記第2面の前記前方方向の幅が前記第1ロータの回転軸から離れるほど小さくなる部分を有してもよい。
【0009】
前記第1面は、前記第2面に直交する位置関係にあってもよい。
【0010】
本発明の一実施形態による農作業機は、複数の第1耕耘爪が設けられ、土壌が前記第1耕耘爪に作用することで回転動力を生じる第1ロータを有する農作業機であって、前記第1耕耘爪は、第1部、第2部、及び取り付け部を備え、前記取り付け部は、前記第1ロータの回転軸に固定され、前記第2部は、前記取り付け部から前記回転軸から遠ざかる方向に延び、前記第1部は、前記第2部から前記第1ロータの回転軸方向のうち一方に突出する。
【0011】
前記第1耕耘爪の先端が最も下に降りた状態において、前記第2部は前記第1部から前方に突出してもよい。
【0012】
前記第2部は、前記第1部から前記前方に突出する長さが前記第1ロータの回転軸から離れるほど小さくなる部分を有し、前記第1部は、前記第2部から前記回転軸方向に突出する長さが前記第1ロータの回転軸から離れるほど大きくなる部分を有してもよい。
【0013】
前記第1部が突出する方向は、前記第2部が突出する方向に直交してもよい。
【0014】
本発明の一実施形態による農作業機は、複数の第1耕耘爪が設けられ、土壌が前記第1耕耘爪に作用することで回転動力を生じる第1ロータを有する農作業機であって、前記第1耕耘爪は、板状の第1部と、板状の第2部と、前記第1部の端辺及び前記第2部の端辺を接続する屈曲部と、を備え、前記屈曲部は、前記第1部と前記第2部との間に線状に設けられている。
【0015】
前記屈曲部は、直線状に延びており、前記第1耕耘爪の先端が最も下に降りた状態において、直線状の前記屈曲部は、水平成分よりも垂直成分の方が大きくてもよい。
【0016】
前記第1部の主面は、前記第2部の主面に直交してもよい。
【0017】
複数の第2耕耘爪が設けられ、前記第1ロータで生じた回転動力によって回動する第2ロータをさらに有し、側面視において、前記第1ロータの回転軌跡と前記第2ロータの回転軌跡とは重畳していてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る農作業機によれば、牽引によって動力を得る農作業機において、十分な作業ロータの回転動力を得ることができる農作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る農作業機の全体構成を後方側の左斜めから見た概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る農作業機の全体構成を上方から見た概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る農作業機の全体構成を前方側の斜め上方から見た概略図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る農作業機のフロント耕耘爪を示す斜視図(A)、上面図(B)、側面図(C)、及び正面図(D)である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る農作業機の全体構成を側方から見た図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る農作業機の全体構成を前方側の左斜めから見た拡大斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る農作業機のサブソイラ及びフロント作業ロータを前方から見た拡大図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る農作業機の第1作業ロータ及び第2作業ロータの位置関係を示す側面図(A)並びに側面視において第1作業ロータの回転軌跡と第2作業ロータの回転軌跡とが重畳する領域を示す図(B)である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る農作業機の第1作業ロータ及び第2作業ロータの位置関係を示す上面図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る農作業機の第1耕耘爪及び第2耕耘爪が最も下に降りた状態における前方の投影面への第1耕耘爪及び第2耕耘爪の写像を示す図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る農作業機のフロント耕耘爪を示す正面図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る農作業機のフロント耕耘爪を示す上面図(A)、及び正面図(B)である。
【
図13】本発明の一実施形態に係る農作業機のフロント耕耘爪を示す上面図(A)、及び正面図(B)である。
【
図14】本発明の一実施形態に係る農作業機のフロント耕耘爪を示す上面図(A)、及び正面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の農作業機の実施形態について説明する。但し、本発明の農作業機は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0021】
また、説明の便宜上、上方、下方、前方、後方、右方、左方といった方向を示す語句を用いるが、重力の働く方向が下方であり、その逆が上方である。また、走行機体の進行する方向が前方であり、その逆が後方である。さらに、前方に向かって、右側が右方であり、左側が左方である。
【0022】
本明細書では、農作業機の一例として、作業ロータを備えた耕耘作業機について説明するが、本発明は、少なくとも土壌と耕耘爪との作用によって回転動力を生じる作業ロータを備える農作業機全般に適用することができる。
【0023】
〈第1実施形態〉
[農作業機100の構成]
本実施形態の農作業機100の構成について説明する。本実施形態では、農作業機100として、トラクタ等の走行機体の後部に装着され、走行機体に牽引されて圃場を耕耘する耕耘作業機を例示する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る農作業機の全体構成を後方側の左斜めから見た概略図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る農作業機の全体構成を上方から見た概略図である。
図3は、本発明の一実施形態に係る農作業機の全体構成を前方側の斜め上方から見た概略図である。なお、
図1~
図3は、本実施形態の農作業機100の概略の構成を示すものであり、説明の便宜上、一部の部品の図示を省略している。
【0025】
本実施形態の農作業機100は、大別して、装着部10、耕耘作業部20、鎮圧作業部30を含む。以下、各部について詳細に説明する。
【0026】
装着部10は、トップマスト11、一対のロワーリンク12a及び12b、一対の支持部材13a及び13b、並びに一対の連結部材14a及び14bを有する。
【0027】
支持部材13a及び13bは、耕耘作業部20の第1支持フレーム21及び第2支持フレーム22に固定され、トップマスト11を支持する。ロワーリンク12a及び12bは、第1支持フレーム21に直接固定される。連結部材14a及び14bは、トップマスト11とロワーリンク12a及び12bとを連結する。
【0028】
トップマスト11とロワーリンク12a及び12bは、トラクタ等の走行機体の後部に設けられた三点リンク機構(図示せず)に対して連結される。三点リンク機構の構造は公知であるため、ここでの説明は省略する。装着部10が走行機体の三点リンク機構に連結されることにより、本実施形態の農作業機100は、走行機体の後部に装着される。
【0029】
耕耘作業部20は、第1支持フレーム21、第2支持フレーム22、一対のサイドプレート23a及び23b、シールドカバー24、第1作業ロータ25、第2作業ロータ26、複数のサブソイラ27、一対の規制部材29a及び29b、並びに増速機構40を有する。
【0030】
第1支持フレーム21及び第2支持フレーム22は、サイドプレート23a及び23bに対して連結され、サイドプレート23a及び23bを支持する。また、前述のとおり、第1支持フレーム21及び第2支持フレーム22は、支持部材13a及び13bを介してトップマスト11を支持する。第1支持フレーム21は、さらにロワーリンク12a及び12bを支持する。
【0031】
さらに、第1支持フレーム21は、複数のサブソイラ27を支持する。複数のサブソイラ27は、それぞれ固定部材28を介して第1支持フレーム21に対して着脱可能に固定される。サブソイラ27は、後述する複数の第1耕耘爪回転体25dの間に設けられる。サブソイラ27は、走行機体の走行に伴って心土(下層土とも呼ばれる)を破砕し、膨軟にする部品であり、第1支持フレーム21に複数固定される。なお、固定部材28は、第1支持フレーム21の任意の位置に取り付けることが可能となっている。
【0032】
サイドプレート23a及び23bの間には、第1作業ロータ25及び第2作業ロータ26が架設される。シールドカバー24は、サイドプレート23a及び23bの間に架設され、第1作業ロータ25及び第2作業ロータ26の上方を覆う。なお、第1支持フレーム21、第2支持フレーム22、サイドプレート23a及び23bを併せて単にフレームと呼ぶ場合がある。この場合、第1作業ロータ25、第2作業ロータ26、及びサブソイラ27はフレームに取り付けられている、ということもできる。シールドカバー24は、第1作業ロータ25及び第2作業ロータ26の耕耘作業時に、上方への土塊の飛散を防ぐ役割を担う。
【0033】
また、サイドプレート23a及び23bには、それぞれ規制部材29a及び29bが取り付けられている。これら規制部材29a及び29bは、後述する第1カゴローラ31を支持する一対の第1支持アーム33a及び33bの上下方向の動きを規制する手段として機能する。
【0034】
第1作業ロータ25は、第1爪軸25a及び複数の第1耕耘爪25bを含む。第1耕耘爪25bは、第1爪軸25aの所定の装着位置において軸周りに複数配置される。詳細は後述するが、第1爪軸25aには複数の爪フランジ25cが固定されており、複数の爪フランジ25cの各々に複数の第1耕耘爪25bが固定されている。1つの爪フランジ25cに複数の第1耕耘爪25bが固定された構造体を第1耕耘爪回転体25dという。本実施形態では、6本の第1耕耘爪25bが1つの爪フランジ25cに装着される。また、第1耕耘爪25bの装着位置は、第1爪軸25aの長手方向において所定の間隔で離間して複数設けられる。農作業機100が走行すると、土壌が第1耕耘爪25bに作用し、第1作業ロータ25に回転動力が生じる。
【0035】
第2作業ロータ26は、第2爪軸26a及び複数の第2耕耘爪26bを含む。第1作業ロータ25と同様に、第2耕耘爪26bも、第2爪軸26aの所定の装着位置において軸周りに複数配置される。詳細は後述するが、第2爪軸26aには複数の爪フランジ26cが固定されており、複数の爪フランジ26cの各々に複数の第2耕耘爪26bが固定されている。1つの爪フランジ26cに複数の第2耕耘爪26bが固定された構造体を第2耕耘爪回転体26dという。本実施形態では、6本の第2耕耘爪26bが1つの爪フランジ26cに装着される。また、第2耕耘爪26bの装着位置は、第2爪軸26aの長手方向において所定の間隔で離間して複数設けられる。第2作業ロータ26は、第1作業ロータ25で生じた回転動力によって回動する。
【0036】
本実施形態において、第1耕耘爪25bは、隣接する装着位置の間で位相をずらして第1爪軸25aに対して装着されている。つまり、第1作業ロータ25を第1爪軸25aに沿った方向(左右方向)から見た場合、各装着位置において隣接する複数の第1耕耘爪25bは、第1爪軸25aの一方側から他方側に向かって螺旋状に配置されている。第2耕耘爪26bについても同様の構成で第2爪軸26aに装着されている。これにより、第1作業ロータ25及び第2作業ロータ26の耕耘時の抵抗を小さくすることができると共に、凹凸の少ない均一な圃場表面を得ることができる。
【0037】
また、第1爪軸25a及び第2爪軸26aは、それぞれサイドプレート23a及び23bに対し、軸受等を介して回転可能に取り付けられている。さらに、第1爪軸25a及び第2爪軸26aは、増速機構40を介して互いに連動可能となっている。本実施形態において、増速機構40は、サイドプレート23aに設けられ、周囲をカバー部材40aで保護されている。
【0038】
増速機構40は、第2作業ロータ26の回転速度を、第1作業ロータ25の回転速度よりも増加させる機能を担う。例えば、本実施形態では、増速機構40により、第2作業ロータ26が、第1作業ロータ25の約3倍の速度で回転する。なお、本実施形態において、増速機構40は、大きさの異なる複数のスプロケットと、これら複数のスプロケットに架設されたローラーチェーンとを組み合わせて構成される。ただし、これに限らず、歯数の異なる複数の平歯車を組み合わせて増速機構40を構成することも可能である。
【0039】
鎮圧作業部30は、第1カゴローラ31、第2カゴローラ32、一対の第1支持アーム33a及び33b、並びに一対の第2支持アーム34a及び34bを有する。
【0040】
第1カゴローラ31は、リング状の複数の支持部材31aに対して複数のフラットバー31bが架設された構造となっている。同様に、第2カゴローラ32も、リング状の複数の支持部材32aに対して複数のフラットバー32bが架設された構造となっている。なお、本実施形態では図示を省略しているが、支持部材31a及び支持部材32aは、共に中心付近に設けられた開口部の内側に回転軸を有する。つまり、第1カゴローラ31及び第2カゴローラ32は、図示しない回転軸を中心として回転する。
【0041】
本実施形態の農作業機100では、走行機体の走行に伴って前方に進行すると、第1カゴローラ31及び第2カゴローラ32が耕耘作業部20の通過した後を回転しながら進行する。その際、複数のフラットバー31b及び32bが、耕耘作業部20によって耕耘された圃場の土塊を砕土及び鎮圧する構成となっている。
【0042】
第1カゴローラ31は、第1支持アーム33a及び33bにより回動可能に支持される。第1支持アーム33a及び33bの一端は、サイドプレート23a及び23bに回動可能に連結され、他端は、第1カゴローラ31の回転軸(図示せず)に連結される。前述のとおり、第1支持アーム33a及び33bの上下方向の動きは、耕耘作業部20に設けられた規制部材29a及び29bによって規制することができる。
【0043】
第2カゴローラ32は、一対の第2支持アーム34a及び34bにより回動可能に支持される。これら第2支持アーム34a及び34bの一端は、第1支持アーム33a及び33bに回動可能に連結され、他端は、第2カゴローラ32の回転軸(図示せず)に連結される。本実施形態では、第2支持アーム34a及び34bの一端が、第1支持アーム33a及び33bに回動可能に連結されているため、第1カゴローラ31及び第2カゴローラ32それぞれの上下方向の動きに自由度がある。
【0044】
また、例えば第2支持フレーム22(又は第1支持フレーム21)と第2支持アーム34a及び34bとの間に電動シリンダ等を架設し、第2カゴローラ32を任意の位置にリフトアップすることができる構成としてもよい。この場合、第1カゴローラ31のみで圃場の砕土及び鎮圧を行うことが可能である。また、このような構造とした場合は、第2カゴローラ32の荷重が第1カゴローラ31に掛かるため、第1カゴローラ31の鎮圧性能を上げることが可能である。
【0045】
以上のように、本実施形態の農作業機100は、走行機体の走行に伴って牽引され、第1作業ロータ25及び第2作業ロータ26の作用により圃場表面を耕耘する。そして、第1作業ロータ25及び第2作業ロータ26によって耕耘された圃場の土塊を第1カゴローラ31及び第2カゴローラ32の作用により砕土及び鎮圧する。
【0046】
[第1耕耘爪25bの構成]
図4を用いて、第1耕耘爪25bの詳細な構成について説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る農作業機のフロント耕耘爪を示す斜視図(A)、上面図(B)、側面図(C)、及び正面図(D)である。
図4において、上面図(B)は斜視図(A)をBの方向から見た図である。側面図(C)は斜視図(A)をCの方向から見た図である。正面図(D)は斜視図(A)をDの方向から見た図である。
図4の(B)の第1方向D1は、第1作業ロータ25の回転軸(第1爪軸25a)が延びる方向である。つまり、第1方向D1は、第1爪軸25aの長手方向である。第2方向D2は、
図5で説明する通り、第1耕耘爪25bの先端が最も下に降りた状態における前方(農作業機100の進行方向)である。第3方向D3は、第1作業ロータ25の回転軸(第1爪軸25a)から第1作業ロータ25の回転軌跡250の半径方向(回転軸から円の外周に向かう方向)である。
【0047】
図4の(A)及び(D)に示すように、第1耕耘爪25bは、長方形の板状部材が屈曲部251で折り曲げられている。つまり、第1耕耘爪25bの先端部252(第1部)、根本部253(第2部)、及び取り付け部254はそれぞれ板状である。第1耕耘爪25bには、第1耕耘爪25bの板厚方向を貫通し、爪フランジ25cに取り付けるための貫通孔259が設けられている。貫通孔259を介してねじ等で締め付けることで、第1耕耘爪25bが爪フランジ25cに取り付けられる。貫通孔259及びその周辺の板状部材を併せて取り付け部254という。上記の構成を換言すると、取り付け部254は第1作業ロータ25の回転軸に固定される。屈曲部251に対して取り付け部254の反対側の先端には刃部255が設けられている。
図4の(C)に示すように、刃部255の形状は先端に近づくほど板厚が薄くなる鋭利な形状である。
【0048】
図4の(B)及び(D)に示すように、第1耕耘爪25bの形状は、板状の先端部252が板状の根本部253から屈曲部251を介して第1方向D1に突出した形状である。先端部252の第1面2521は第2方向D2を向いている。根本部253の第2面2531は第1方向D1を向いている。第1方向D1において、根本部253の第2面2531は先端部252の第1面2521の端部に位置している。
【0049】
根本部253は、取り付け部254から第3方向D3に延びる。先端部252は根本部253から屈曲部251を介して第1方向D1に突出している。つまり、先端部252は、根本部253から、第1作業ロータ25の回転軸(第1爪軸25a)が延びる方向のうち一方に突出している。先端部252を根本部253に対して第1方向D1に突出する突出部という場合がある。上記の構成を換言すると、根本部253は、先端部252から第2方向D2に突出する。なお、先端部252は根本部253から第1方向D1の反対側に突出していてもよい。
【0050】
屈曲部251は先端部252の端辺2523(
図4の(B)参照)及び根本部253の端辺2533(
図4の(C)参照)を接続する。
図4の第1耕耘爪25bは、長方形の板状部材が屈曲部251で第1方向D1に折り曲げられた形状なので、屈曲部251の形状は1本の線状である。本実施形態では、屈曲部251の形状は1本の直線形状である。後述する
図5にも示すように、第1耕耘爪25bの先端が最も下に降りた状態において、直線状の屈曲部251は、水平成分よりも垂直成分の方が大きい。一方、従来の耕耘爪の形状は、板状部材の側方の両端がそれぞれ上下方向に捻じられた形状なので、線状の屈曲部は存在しない。また、従来の耕耘爪は、側方の一端が上方に曲がり、側方の他端が下方に曲がるため、仮に線状の屈曲部が存在したとしても、2本以上の屈曲部が存在する。
【0051】
図4の(B)に示すように、先端部252は、先端部252の第1方向D1の幅(先端部252が根本部253から第1方向D1に突出する長さ)が、取り付け部254(つまり、第1作業ロータ25の回転軸)から離れるほど大きくなる部分を有する。上記の関係が成り立っている領域では、先端部252の第1方向D1の幅は、第1作業ロータ25の回転軸から離れるにしたがって単調増加する。
図4の(C)に示すように、根本部253は、根本部253の第2方向D2の幅(根本部253が先端部252から第2方向D2に突出する長さ)が、取り付け部254(つまり、第1作業ロータ25の回転軸)から離れるほど小さくなる。上記の関係が成り立っている領域では、根本部253の第2方向D2の幅は、第1作業ロータ25の回転軸から離れるにしたがって単調減少する。
【0052】
図4に示す例では、先端部252と根本部253とは直交する位置関係にある。先端部252と根本部253との間には屈曲部251があるため、両者は直接交差することはないが、両者が延長されると互いに直交する。この状態を両者が直交する位置関係にあるという。上記の構成を換言すると、先端部252の第1面2521は根本部253の第2面2531に直交する位置関係にある。換言すると、板状の先端部252の主面は板状の根本部253の主面に直交する位置関係にある。さらに換言すると、先端部252が突出する方向(第1方向D1)は、根本部253が突出する方向(第2方向D2)に直交する。
【0053】
図4の(B)に示すように、根本部253の第2面2531とは反対の第3面2535は、貫通孔259が設けられた領域から屈曲部251の刃部255に最も近い領域まで直線状である。つまり、根本部253は、貫通孔259が設けられた領域の第3面2535よりも第1方向D1の反対方向に突出しない。
【0054】
図4では、先端部252及び根本部253の両方が板状部材である構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、上記の関係を有する第1面2521及び第2面2531が備えられていれば、先端部252及び根本部253は板状でなくてもよい。また、先端部252及び根本部253のそれぞれに対する突出方向が上記の関係であれば、先端部252及び根本部253は板状でなくてもよく、第1面2521及び第2面2531を備えていなくてもよい。
【0055】
[サブソイラ27及び第1作業ロータ25の構成]
図5~
図7を用いて、サブソイラ27及び第1作業ロータ25の詳細な構成について説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係る農作業機の全体構成を側方から見た図である。
図6は、本発明の一実施形態に係る農作業機の全体構成を前方側の左斜めから見た拡大斜視図である。
図7は、本発明の一実施形態に係る農作業機のサブソイラ及びフロント作業ロータを前方から見た拡大図である。
図5に示す農作業機100は、牽引されて第2方向D2に進行する。つまり、第2方向D2が前方である。
【0056】
図5及び
図6に示すように、第1支持フレーム21に固定部材28が固定されている。固定部材28はねじ等の締結具によって固定されている。締結具を緩めることで、固定部材28を第1支持フレーム21の長手方向にスライドさせることができる。このスライドによってサブソイラ27と第1作業ロータ25との位置関係を調整することができる。
図6に示すように、固定部材28には固定部材28の板厚方向を貫通する貫通孔281及び283が設けられている。これらの貫通孔281及び283は、それぞれサブソイラ27の高さ位置を固定するために用いられる。
【0057】
サブソイラ27は、固定部材28の中空部に挿入されて固定される。
図6に示すように、サブソイラ27は、第1アーム部271、第2アーム部273、チゼル275、及びハンドル277を有する。
図5では、第1作業ロータ25が回転する際の、第1耕耘爪25bの先端、つまり、第1耕耘爪25bの第1爪軸25aから最も遠い箇所の軌跡を回転軌跡250として示されている。
図5に示すように、側面視において、サブソイラ27の第1アーム部271及び第2アーム部273は第1作業ロータ25の回転軌跡250内に存在している。
【0058】
第1アーム部271は、直線状の板状部材である。第1アーム部271の主面は、農作業機100の進行方向及び上下方向に広がる面である。換言すると、第1アーム部271の主面は第1作業ロータ25の回転軸(第1爪軸25a)が延びる第1方向D1を向いている。
図5に示すように、第1アーム部271には、第1アーム部271の板厚方向を貫通する複数の貫通孔279が設けられている。第1アーム部271が固定部材28の中空部に挿入され、貫通孔281又は283と貫通孔279とが位置合わせされる。この状態で、これらの貫通孔にピンなどの固定具が挿入されることで、固定部材28に対するサブソイラ27の高さ位置が決定される。なお、下の貫通孔283(固定部材28に複数の貫通孔が設けられている場合は、最も下の貫通孔)と複数の貫通孔279のうち最も上の貫通孔279-1とが位置合わせされた状態は、サブソイラ27が最も下方に下げられた状態である。上の貫通孔281(固定部材28に複数の貫通孔が設けられている場合は、最も上の貫通孔)と複数の貫通孔279のうち最も下の貫通孔279-5とが位置合わせされた状態は、サブソイラ27が最も上方に上げられた状態である。第1アーム部271は、側面視において、固定部材28によって固定された箇所から第1作業ロータ25の回転軌跡250の内側に向かって直線状に延びている。
【0059】
本実施形態では、第1アーム部271が直線状の板状部材である構成を例示したが、第1アーム部271は固定部材28によって固定された箇所から回転軌跡250に向かって延びていればよく、例えば、第1アーム部271は湾曲しながら回転軌跡250に向かって延びていてもよい。また、第1アーム部271は板状に限定されず、柱状であってもよい。
【0060】
第2アーム部273は、湾曲した板状部材である。第2アーム部273は、下方及び前方に向かって延びるように湾曲する。第2アーム部273の主面は、農作業機100の進行方向及び上下方向に広がる面である。換言すると、第2アーム部273の主面は第1作業ロータ25の回転軸(第1爪軸25a)が延びる第1方向D1を向いている。第2アーム部273は、接続部272において第1アーム部271に接続される。側面視において、接続部272は回転軌跡250の内側にある。第2アーム部273は接続部272から下方及び前方に向かって、側面視において回転軌跡250の外まで延びている。換言すると、サブソイラ27は第1作業ロータ25の回転軌跡250の内側から外側に突出している。
【0061】
チゼル275は、接続部274において第2アーム部273に接続される。具体的には、チゼル275はサブソイラ27の第1支持フレーム21から離れた側の端部に設けられている。チゼル275は、チゼル275の前方が下方に傾斜した傾斜面を有している。チゼル275の傾斜面は、第2アーム部273から離れるほど傾斜面の第1方向D1の幅が小さくなる。なお、側面視において、チゼル275は回転軌跡250の外にある。
【0062】
ハンドル277は、第1アーム部271の上端に設けられている。ハンドル277の形状は、作業者がハンドル277を把持しやすい形状である。本実施形態の例では、ハンドル277はU字型の円柱形状である。ただし、ハンドル277の形状はU字型の円柱形状に限定されず、多様な形状をとり得る。
【0063】
図7は、本発明の一実施形態に係る農作業機のサブソイラ及びフロント作業ロータを前方から見た拡大図である。
図7では、説明の便宜上、第1作業ロータ25(第1耕耘爪回転体25d)、サブソイラ27、固定部材28、及び第1支持フレーム21のみが示されている。
図7を用いて、サブソイラ27とサブソイラ27の第1方向D1に隣接する第1耕耘爪回転体25dの構成について説明する。
【0064】
第1耕耘爪回転体25dの第1耕耘爪25bにおいて、根本部253の第2面2531及び第3面2535のうち、第3面2535はサブソイラ27に近い側の面である。
図6及び
図7を参照すると、根本部253の第2面2531及び第3面2535は、サブソイラ27の第1アーム部271及び第2アーム部273と同様に、農作業機100の進行方向及び上下方向に広がる面である。換言すると、第2面2531及び第3面2535は第1方向D1を向いている。さらに換言すると、第2面2531及び第3面2535は第1アーム部271の主面及び第2アーム部273の主面と平行である。したがって、第3面2535は第1アーム部271の主面及び第2アーム部273の主面と対向する。
【0065】
なお、
図6及び
図7に示すように、第1耕耘爪25bの第2面2531が第3面2535よりも爪フランジ25cに近い状態で第1耕耘爪25bが爪フランジ25cに取り付けられている。つまり、第2面2531が爪フランジ25cと対向している。第1耕耘爪25bの先端部252は根本部253から第1方向D1に突出しているため、上記のように取り付けることで、根本部253をサブソイラ27の第1アーム部271及び第2アーム部273に近づけることができる。
【0066】
農作業機100が走行し、第1耕耘爪25bが土壌からの作用を受けるとき、第1方向D1の反対方向に逃げようとする土は根本部253によって塞き止められる。つまり、第1耕耘爪25bが土壌からの作用を受ける際に、土が先端部252から逃げてしまうことを抑制できる。その結果、第1耕耘爪25bが土壌から受けた作用の力を効率よく第1耕耘爪回転体25dの回転動力に変換することができる。
【0067】
耕耘作業中において、第1耕耘爪25bのうち土壌に深く入り込んでいる領域では、土は第1方向D1に逃げ難いが、第1耕耘爪25bのうち第1爪軸25aに近い領域ほど土が第1方向D1に逃げ易くなる。したがって、第1耕耘爪25bのうち第1爪軸25aに近い領域ほど根本部253の幅(又は突出する長さ)が大きいことで、土が先端部252から逃げてしまうことを抑制する効果が大きくなる。さらに、土が第1方向D1に逃げ難い第1耕耘爪25bの先端領域(第1耕耘爪25bのうち第1爪軸25aから遠い領域)ほど先端部252の幅(又は突出する長さ)が大きいことで、土壌との作用による回転動力を大きくすることができる。
【0068】
図7では、第1方向D1において、チゼル275と第1耕耘爪25bとの間にオフセット部OSが設けられているが、この構成に限定されない。
図5に示すように、チゼル275が回転軌跡250の外にあれば、
図7の前方視において第1耕耘爪25bとチゼル275とが重畳していてもよい。
【0069】
[第1作業ロータ25及び第2作業ロータ26の構成]
図8及び
図9を用いて、第1作業ロータ25及び第2作業ロータ26の位置関係について、詳細に説明する。
図8は、本発明の一実施形態に係る農作業機の第1作業ロータ及び第2作業ロータの位置関係を示す側面図(A)並びに側面視において第1作業ロータの回転軌跡と第2作業ロータの回転軌跡とが重畳する領域を示す図(B)である。
図9は、本発明の一実施形態に係る農作業機の第1作業ロータ及び第2作業ロータの位置関係を示す上面図である。
図8及び
図9では、説明の便宜上、第1作業ロータ25及び第2作業ロータ26に関連する部材のみを示した。
【0070】
図8の(A)に示すように、第1作業ロータ25が回転する際の、第1耕耘爪25bの先端、つまり、第1耕耘爪25bの第1爪軸25aから最も遠い箇所の軌跡が回転軌跡250として示されている。同様に、第2作業ロータ26が回転する際の、第2耕耘爪26bの先端、つまり、第2耕耘爪26bの第2爪軸26aから最も遠い箇所の軌跡が回転軌跡260として示されている。
図8の(B)に示すように、側面視において、回転軌跡250と回転軌跡260とが重畳する重畳領域300が斜線で示されている。
【0071】
図8に示すように、第1作業ロータ25の回転軌跡250は、側面視において第2作業ロータ26の爪フランジ26cと重畳する。一方、第2作業ロータ26の回転軌跡260は、側面視において第1作業ロータ25の爪フランジ25cとは重畳しない。なお、回転軌跡250の下端と回転軌跡260の下端とが水平位置になるように、第1爪軸25a及び第2爪軸26aの位置が調整されている。
【0072】
図9に示す上面図は、第1耕耘爪25bが最も第2爪軸26aに近づいた状態及び離れた状態、かつ、第2耕耘爪26bが最も第1爪軸25aに近づいた状態及び離れた状態を示す上面図である。
図9に示す状態において、第1耕耘爪25bと第2爪軸26aとの距離L1は、第2耕耘爪26bと第1爪軸25aとの距離L2に比べて短い。
【0073】
図9に示すように、第2耕耘爪26bは直線状部261及び湾曲部263を有する。第1耕耘爪25bの刃部255の先端は、第2方向D2において湾曲部263を越して直線状部261まで延びている。つまり、第2方向D2において刃部255は直線状部261と重畳している。なお、第2方向D2は第1方向D1と直交する方向である。第2方向D2において、第1耕耘爪25bが直線状部261と重畳する距離L3は、
図9の状態における第1耕耘爪25bと第2爪軸26aとの距離L1よりも長い。距離L3は距離L1の2倍以上であることが好ましい。より好ましくは、距離L3は距離L1の4倍以上であるとよい。なお、本実施形態では、距離L1は約20mmであり、距離L3は約80mmである。ただし、距離L1は距離L3と同じであってもよく、距離L1が距離L3よりも長くてもよい。
【0074】
上記のように、第2作業ロータ26の回転速度は、第1作業ロータ25の回転速度よりも早い。さらに、第2耕耘爪26bは耕耘に適した形状である。したがって、第2作業ロータ26の作業によって土壌の土が跳ね上げられ、第2爪軸26aには多くの土が付着する。上記のように、第1耕耘爪25bの刃部255の先端が第2爪軸26aに近づくことで、第2爪軸26aに付着した土を除去することができる。ただし、第1耕耘爪25bと第2爪軸26aとが接触しないように、距離L1を設計する必要がある。距離L1は第2爪軸26aの撓み量によって決まる。
【0075】
図9に示すように、第1方向D1において、第1耕耘爪25bの幅W1は第2耕耘爪26bの幅W2よりも小さい。第1耕耘爪25bと第2耕耘爪26bとの干渉を避けるために、第1方向D1において、第1耕耘爪25bの第2耕耘爪26b側の端部258と、第2耕耘爪26bの第1耕耘爪25b側の端部268との間にオフセット部OSを設ける必要がある。第2耕耘爪26bの耕耘能力は第1耕耘爪25bの耕耘能力よりも高い(1回の作用で多くの土壌を耕耘する)。したがって、農作業機100の耕耘能力を高めるためには、第1方向D1において、第2耕耘爪26bをできる限り密に配置することが好ましい。第1耕耘爪25bの幅W1を第2耕耘爪26bの幅W2より小さくすることで、第1方向D1における第2耕耘爪26bの配置を密にすることができる。
【0076】
[第1耕耘爪25b及び第2耕耘爪26bの前方の投影面への写像]
第1耕耘爪25bの機能と第2耕耘爪26bの機能との差異を明確化するために、それぞれの耕耘爪が最も下に降りた状態における前方の投影面へのそれぞれの耕耘爪の写像について
図10を用いて説明する。
図10は、本発明の一実施形態に係る農作業機の第1耕耘爪及び第2耕耘爪が最も下に降りた状態における前方の投影面への第1耕耘爪及び第2耕耘爪の写像を示す図である。
図10に示すように、第1耕耘爪25bが最も下に降りた状態における前方の投影面への第1耕耘爪25bの写像の第1面積25eは、第2耕耘爪26bが最も下に降りた状態における前方の投影面への第2耕耘爪26bの写像の第2面積26eより大きい。
【0077】
第1面積25eが第2面積26eよりも大きいことで、第1耕耘爪25bは第2耕耘爪26bよりも土壌から作用を受ける力が大きい。このため、第1耕耘爪25bは土壌から効率よく回転動力を得ることができる。一方、第2耕耘爪26bは第1耕耘爪25bよりも土壌から受ける作用の力が小さいため、第1耕耘爪25bが得た回転動力の低下を抑制しつつ、第2耕耘爪26bが効率よく土壌を耕耘することができる。
【0078】
〈第2実施形態〉
第2実施形態に係る農作業機100Aについて、
図11を用いて説明する。本実施形態の農作業機100Aは、第1実施形態に係る農作業機100に類似しているが、第1耕耘爪25bAの形状が農作業機100の第1耕耘爪25bの形状とは異なる形状である点において農作業機100と相違する。農作業機100Aのその他の構成は農作業機100の構成と同じなので、説明を省略し、以下では第1耕耘爪25bAの形状について説明する。
【0079】
[第1耕耘爪25bAの形状]
図11は、本発明の一実施形態に係る農作業機のフロント耕耘爪を示す正面図である。
図11に示すように、第2実施形態に係る第1耕耘爪25bAでは、先端部252Aの第1面2521Aと根本部253Aの第2面2531Aとのなす角が鋭角である。
【0080】
以上のように、第2実施形態に係る農作業機100Aによると、第1面2521Aと第2面2531Aとが上記の関係を有することで、農作業機100Aが第2方向D2に進行したときに、第1耕耘爪25bAに作用した土は第1面2521Aによって第2面2531Aの方向に移動する。つまり、土が先端部252Aから逃げてしまうことを抑制する効果が大きくなる。
【0081】
〈第3実施形態〉
第3実施形態に係る農作業機100Bについて、
図12を用いて説明する。本実施形態の農作業機100Bは、第1実施形態に係る農作業機100に類似しているが、第1耕耘爪25bBの形状が農作業機100の第1耕耘爪25bの形状とは異なる形状である点において農作業機100と相違する。農作業機100Bのその他の構成は農作業機100の構成と同じなので、説明を省略し、以下では第1耕耘爪25bBの形状について説明する。
【0082】
[第1耕耘爪25bBの形状]
図12は、本発明の一実施形態に係る農作業機のフロント耕耘爪を示す上面図(A)、及び正面図(B)である。
図12に示すように、第3実施形態に係る第1耕耘爪25bBでは、先端部252Bの第1方向D1側に突出部400Bが設けられている。突出部400Bは、根本部253Bと同様に先端部252Bから第2方向D2に突出している。
図12の(B)に示すように、第1方向D1において、突出部400Bは先端部252Bの根本部253B側とは反対側の端部に位置している。なお、この例では、第1耕耘爪25bBの形状は、長方形の板状部材が屈曲部251B及び257Bで折り曲げられている。つまり、先端部252Bと突出部400Bとは屈曲部257Bによって接続されている。ただし、突出部400Bは板状部材の一部が折り曲げられたものに限定されない。例えば、
図4に示す第1耕耘爪25bに対して突出部400Bを溶着又は接着などによって固定してもよい。
【0083】
〈第4実施形態〉
第4実施形態に係る農作業機100Cについて、
図13を用いて説明する。本実施形態の農作業機100Cは、第1実施形態に係る農作業機100に類似しているが、第1耕耘爪25bCの形状が農作業機100の第1耕耘爪25bの形状とは異なる形状である点において農作業機100と相違する。農作業機100Cのその他の構成は農作業機100の構成と同じなので、説明を省略し、以下では第1耕耘爪25bCの形状について説明する。
【0084】
[第1耕耘爪25bCの形状]
図13は、本発明の一実施形態に係る農作業機のフロント耕耘爪を示す上面図(A)、及び正面図(B)である。
図13に示すように、第4実施形態に係る第1耕耘爪25bCでは、先端部252Cの第1方向D1側に突出部410Cが設けられている。突出部410Cは、根本部253Cと同様に先端部252Cから第2方向D2に突出している。
図13の(B)に示すように、第1方向D1において、突出部410Cは先端部252Cの根本部253C側とは反対側の端部に位置している。突出部410Cは先端部252Cの第1面2521Cに固定されている。なお、この例では、突出部410Cの形状はドーム状であるが、この形状に限定されない。例えば、突出部410Cの形状は例えば四角柱などの多角柱形状であってもよく、多角錐形状であってもよい。
【0085】
〈第5実施形態〉
第5実施形態に係る農作業機100Dについて、
図14を用いて説明する。本実施形態の農作業機100Dは、第1実施形態に係る農作業機100に類似しているが、第1耕耘爪25bDの形状が農作業機100の第1耕耘爪25bの形状とは異なる形状である点において農作業機100と相違する。農作業機100Dのその他の構成は農作業機100の構成と同じなので、説明を省略し、以下では第1耕耘爪25bDの形状について説明する。
【0086】
[第1耕耘爪25bDの形状]
図14は、本発明の一実施形態に係る農作業機のフロント耕耘爪を示す上面図(A)、及び正面図(B)である。
図14に示すように、第5実施形態に係る第1耕耘爪25bDでは、先端部252Dの第1方向D1側に突出部420Dが設けられている。突出部420Dは、根本部253Dと同様に先端部252Dから第2方向D2に突出している。
図14の(A)に示すように、突出部420Dは、取り付け部254Dから離れるほど先端部252Dの第1方向D1の幅が大きくなる領域に設けられている。突出部420Dは先端部252Dの第1面2521Dに固定されている。
【0087】
以上のように、第3実施形態~第5実施形態に係る農作業機100B~100Dによると、農作業機100B~100Dが走行し、第1耕耘爪25bB~25bDが土壌からの作用を受けるとき、第1方向D1及びその反対方向に逃げようとする土は突出部400B、410C、420Dによって塞き止められる。つまり、第1耕耘爪25bB~25bDが土壌からの作用を受ける際に、土が先端部252B~252Dから逃げてしまうことを抑制できる。その結果、第1耕耘爪25bB~25bDが土壌から受けた作用の力を効率よく第1耕耘爪回転体25dB~25dDの回転動力に変換することができる。
【0088】
なお、本発明は上記の実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0089】
10:装着部、 11:トップマスト、 12a、12b:ロワーリンク、 13a、13b:支持部材、 14a、14b:連結部材、 20:耕耘作業部、 21:第1支持フレーム、 22:第2支持フレーム、 23a、23b:サイドプレート、 24:シールドカバー、 25:第1作業ロータ、 25a:第1爪軸、 25b:第1耕耘爪、 25c:爪フランジ、 25d:第1耕耘爪回転体、 25e:第1面積、 26:第2作業ロータ、 26a:第2爪軸、 26b:第2耕耘爪、 26c:爪フランジ、 26d:第2耕耘爪回転体、 26e:第2面積、 27:サブソイラ、 28:固定部材、 29a、29b:規制部材、 30:鎮圧作業部、 31:第1カゴローラ、 31a、32a:支持部材、 31b、32b:フラットバー、 32:第2カゴローラ、 33a、33b:第1支持アーム、 34a、34b:第2支持アーム、 40:増速機構、 40a:カバー部材、 100:農作業機、 250:回転軌跡、 251:屈曲部、 252:先端部、 253:根本部、 254:取り付け部、 255:刃部、 257B:屈曲部、 258:端部、 259:貫通孔、 260:回転軌跡、 261:直線状部、 263:湾曲部、 268:端部、 271:第1アーム部、 272、274:接続部、 273:第2アーム部、 275:チゼル、 277:ハンドル、 279、281、283:貫通孔、 2521:第1面、 2523、2533:端辺、 2531:第2面、 2535:第3面、 300:重畳領域、 400B、410C、420D:突出部