(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】椅子型マッサージ機
(51)【国際特許分類】
A61H 7/00 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
A61H7/00 322E
(21)【出願番号】P 2017190737
(22)【出願日】2017-09-29
【審査請求日】2020-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】592009214
【氏名又は名称】大東電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】青木 幹享
(72)【発明者】
【氏名】曽根 也寸志
(72)【発明者】
【氏名】清水 新策
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/013870(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1669858(KR,B1)
【文献】特開2006-187478(JP,A)
【文献】特開2008-043448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 7/00
A61H 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部と、当該座部の後側に設けられた背もたれ部と、前記座部の左右方向の両側に前後方向に伸びるように設けられる一対の肘掛け部と、当該肘掛け部に設けられ、手と前腕の全てを覆って保持すると共にマッサージを可能とする腕マッサージ部とを有する椅子型マッサージ機において、
前記腕マッサージ部の後側には、前記手と前記前腕を挿入可能な開口部を有していて、
前記腕マッサージ部は、上面部と、当該上面部に接続されて外側に垂れ下がる外側面部からなる逆L字状とされている保持部材と、当該保持部材の内側に形成される空間部分を覆うカバー体とを有し、
前記保持部材の上面部の幅方向内縁乃至は前記内縁を幅方向内側に延長した部位と前記カバー体の上縁とにより、前後方向に延び且つ略上方を向く切り欠き部が形成され、前記切り欠き部を介して、前記腕マッサージ部内に挿入された前記手と前記前腕とが外部へ離脱可能とされ、
前記切り欠き部が、腕を抜き取るときのみ開口するスリット様に構成されている
ことを特徴とする椅子型マッサージ機。
【請求項2】
前記腕マッサージ部は、前記保持部材と前記カバー体とにより、前記手と前記前腕の全てを覆う筒状の部材とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項3】
前記カバー体は、可撓性を有している部材で形成されていて、下縁が前記保持部材の外側面部の下縁側に接合されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項4】
前記腕マッサージ部において、前記保持部材の上面部と外側面部及び前記カバー体の少なくとも一つ以上に、膨張・収縮可能なエアバッグが備えられていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の椅子型マッサージ機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肘掛け部に腕マッサージ部を備えた椅子型マッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、椅子型マッサージ機の技術分野においては、使用者の腕をマッサージ可能な腕マッサージ部を備えたものが既に開発されている(例えば、特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1は、座部の両側に夫々配設され、被施療者の腕部を部分的に覆って保持する一対の保持部を備えている。
この保持部は、その幅方向に切断して見た断面において被施療者の腕を挿入する開口が形成されていると共に、その内面に互いに対向する部分を有している。すなわち、保持部は、略C字状(コ字状)の断面形状を有し、腕部の外側を覆う略半円筒状に形成されたものである。
【0005】
一対の保持部は、各々のコ字状の開口が横(真横)を向き、且つ開口同士が互いに対向するように配設されている。
しかしながら、特許文献1には、腕部に対して、マッサージを施術する上で、以下に述べる難点がある。
同文献の
図1,2などを参照してもわかるように、保持部は、略半円筒状とされているので、腕部(前腕)の外側をマッサージすることが可能であるが、対向する内側(座部側)は開放状とされているので、腕部の内側をマッサージすることできない。
【0006】
つまり、特許文献1は、腕部(前腕)を全体に亘って、効果的な押圧マッサージを施術できるものとはなっていない。
さらに、このような略半円筒状の保持部において、腕部のマッサージを実施した場合、保持部の内側は、開放状となっているので、エアバッグにより腕部が押されたとき、中途半端なホールド感しか得られず、またエアバッグの押し付け力により、開放側より腕部が完全に脱落してしまう虞があるなど、様々な不都合が生じる。
【0007】
特許文献1は、上記したように、腕部のマッサージを実施する際において、難点を多々有するものであるので、良好なマッサージを付与することは全くできないと考えられる。
そこで、本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、手と前腕のマッサージ終了時において、腕マッサージ部内にされた手と前腕を、外部へスムーズ、且つ容易に離脱させることが可能な椅子型マッサージ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明では以下の技術的手段を講じている。
本発明にかかる椅子型マッサージ機は、座部と、当該座部の後側に設けられた背もたれ部と、前記座部の左右方向の両側に前後方向に伸びるように設けられる一対の肘掛け部と、当該肘掛け部に設けられ、手と前腕の全てを覆って保持すると共にマッサージを可能とする腕マッサージ部とを有する椅子型マッサージ機において、前記腕マッサージ部の後側には、前記手と前記前腕を挿入可能な開口部を有していて、前記腕マッサージ部は、上面部と、当該上面部に接続されて外側に垂れ下がる外側面部からなる逆L字状とされている保持部材と、当該保持部材の内側に形成される空間部分を覆うカバー体とを有し、前記保持部材の上面部の幅方向内縁乃至は前記内縁を幅方向内側に延長した部位と前記カバー体の上縁とにより、前後方向に延び且つ略上方を向く切り欠き部が形成され、前記切り欠き部を介して、前記腕マッサージ部内に挿入された前記手と前記前腕とが外部へ離脱可能とされ、前記切り欠き部が、腕を抜き取るときのみ開口するスリット様に構成されていることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記腕マッサージ部は、前記保持部材と前記カバー体とにより、前記手と前記前腕の全てを覆う筒状の部材とされているとよい。
好ましくは、前記カバー体は、可撓性を有している部材で形成されていて、下縁が前記保持部材の外側面部の下縁側に接合されているとよい。
好ましくは、前記腕マッサージ部において、前記保持部材の上面部と外側面部及び前記カバー体の少なくとも一つ以上に、膨張・収縮可能なエアバッグが備えられているとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る椅子型マッサージ機によれば、手と前腕のマッサージ終了時において、腕マッサージ部内にされた手と前腕を、外部へスムーズ、且つ容易に離脱させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)は、本発明の椅子型マッサージ機の腕マッサージ部が格納位置にある場合を示す斜視図であり、(b)は、本発明の椅子型マッサージ機の腕マッサージ部がマッサージ位置にある場合を示す斜視図である。
【
図2】本発明の椅子型マッサージ機の腕マッサージ部に設けられていて、手と前腕を挿し込む開口部の概略を示す後方視の図である。
【
図3】(a)は、腕マッサージ部に手と前腕を挿し込む前の状態を示す図であり、(b)は、腕マッサージ部に手と前腕を挿し込んだ状態を示す図であり、(c)は、腕マッサージ部から手と前腕を離脱させた状態を示す図である。
【
図5】腕マッサージ部を斜め後方(背もたれ部)から見た図である。
【
図6】腕マッサージ部を斜め前方から見た図である。
【
図7】保持部材の形状を示す内部斜視図である(カバー体省略)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明にかかる椅子型マッサージ機1を図に基づいて説明する。
図1に示すように、椅子型マッサージ機1は、座部2と、座部2の左右方向の両側に前後方向に伸びるように設けられる肘掛け部3と、座部2の後側に設けられた背もたれ部4とを備えている。また、肘掛け部3には、腕のマッサージを可能とする腕マッサージ部5が設けられている。この腕マッサージ部5は、肘掛け部3に対して上下方向に移動自在とされている。
【0013】
以下、
図1(a)に示す如く、椅子型マッサージ機1に座った使用者(被マッサージ者)から見た前後方向を椅子型マッサージ機1を説明する際の前後方向と呼び、使用者から見た左右方向を椅子型マッサージ機1を説明する際の左右方向(幅方向)と呼ぶ。また、椅子型マッサージ機1に座った使用者から見た上下方向を椅子型マッサージ機1を説明する際の上下方向と呼ぶ。なお、使用者の施療部位に関しては、「腕」と呼ばれる部分のうち、手首から肘までを「前腕V」と呼び、手首から先の部分を「手W」と呼ぶ。
【0014】
座部2は、使用者が着座可能なように平面視で矩形状に形成された部材である。座部2は、床面から上方に距離をあけて水平に座面が向くように取り付けられている。座部2の内部には、使用者の体重を支持できるように図示しないフレーム部材が設けられている。
また、座部2の上面側には、クッション部材が配備されていて使用者に良好な座り心地を提供できるようになっている。座部2の左側と右側には、肘掛け部3がそれぞれ設けられている。また、座部2の下側には、フットマッサージ部(図示せず)などを収容可能な空間が形成されている。
【0015】
肘掛け部3は、床面に対して垂直に起立した板状の部材であって、座部2の左側と右側とに互いに距離を空けて且つ、座部2に隣接するように配備されている。肘掛け部3は、座部2の左側に配備される左肘掛け部3Lと、座部2の右側に配備される右肘掛け部3Rとで構成されている。
これらの左肘掛け部3L及び右肘掛け部3Rは、いずれも前後方向に伸びるように設けられている。また、左肘掛け部3L及び右肘掛け部3Rそれぞれの上面は、前腕V及び手Wを載せて支障なく伸ばすことができるような幅を有すると共に、前後方向になだらかに形成されている。
【0016】
肘掛け部3の内部には、上下方向に向かって起立した支持フレーム6が設けられている。この支持フレーム6は、座部2のフレーム部材と直交状に連結固定されており、座部2に加わる使用者の体重を座部2のフレーム部材を介して支持できるようになっている。
背もたれ部4は、使用者がもたれ掛かれるように、座部2の後側に設けられている。背もたれ部4は、座部2の後側の支持フレーム6に対して左右方向を向く水平軸周りに揺動自在に枢支されている。背もたれ部4は、上下方向に沿って起立した起立姿勢と、後方に向かってほぼ水平に倒れ込んだリクライニング姿勢との間で、自由に傾斜できるようになっている。
【0017】
図1~
図7に示すように、本発明の椅子型マッサージ機1には、使用者の手W及び前腕Vを確実にマッサージできる腕マッサージ部5(上肢マッサージ部)を備えられている。この腕マッサージ部5は、肘掛け部3内に格納(内蔵)されるようになっている。この腕マッサージ部5は、肘掛け部3の上面に前腕V及び手Wを載置する際に、邪魔になることがないようになっている。
【0018】
腕マッサージ部5は、前後方向に沿って長尺状に形成された部材であって、左肘掛け部3Lの上部に配備される左腕マッサージ部5Lと、右肘掛け部3Rの上部に配備される右腕マッサージ部5Rとで構成されている。
腕マッサージ部5R,5Lの後端面には、肘掛け部3R,3Lの後方に向かって開口され、且つ手W及び前腕Vを前方に向かって挿し込むことができる開口部7が形成されている。
【0019】
腕マッサージ部5R,5Lの内部には、開口部7から挿し込まれた手W及び前腕Vを収容可能な収容部8が設けられている。収容部8は、開口部7が設けられた後面以外(上面、前面、幅方向の内外側面)の壁面に囲まれている。
この収容部8には、エアバッグ(マッサージ用空気袋)が少なくとも一つ以上配備されており、収容部8内に挿し込まれた使用者の手W(手首から指先まで)や前腕Vを押圧マッサージできるようになっている。
【0020】
このような構成を有する腕マッサージ部5R,5Lは、肘掛け部3R,3L内に収容された「格納位置」(
図1(a)参照)と、肘掛け部3R,3Lから上方に突出して、開口部7からの手Wと前腕Vの挿し込みが可能とされると共に腕のマッサージが可能となる「マッサージ位置」(
図1(b)参照)との間で上下方向に移動自在とされている。
そして、これらの開口部7は、腕マッサージ部5R,5Lがマッサージ位置に移動したときに開口してマッサージが可能となる構成となっている。
【0021】
具体的には、腕マッサージ部5R,5Lは、当該腕マッサージ部5R,5Lの先端部が肘掛け部3R,3Lに回動自在に枢支されていて、この肘掛け部3R,3Lに枢支された枢支軸9(幅方向を向く枢支軸9)の軸心回りに腕マッサージ部5R,5Lが前方回動自在で上下方向に移動可能とされている。
言い換えると、腕マッサージ部5R,5Lは、肘掛け部3R,3Lに枢支された先端部に対して後部側が上下方向に揺動する機構となっている。そして、腕マッサージ部5R,5Lは、先端部に対する後部側の上下揺動を利用して、格納位置とマッサージ位置との間で腕マッサージ部5R,5Lの移動を可能とする構成とされている。
【0022】
以下の説明では、右腕マッサージ部5Rに着目して構造を説明する。
なお、左腕マッサージ部5Lは、右腕マッサージ部5Rを左右反転した配置で配備されていて、内部構造は略同様であるので、詳細な説明は省略する。
本発明は、右腕マッサージ部5Rの構成に、従来にはない特徴を備えている。
つまり、本発明の右腕マッサージ部5Rは、内部に挿入されている手Wと前腕Vに対して、マッサージが実施されているときには、その手Wと前腕Vの全体をしっかりと覆って保持し、マッサージが終了して手Wと前腕Vを離脱させるときには、素早く且つ容易に行うことができるものである。
【0023】
右腕マッサージ部5Rの具体的な構成について説明する。
図2~
図7などに示すように、右腕マッサージ部5Rは、上面部11と、当該上面部11に接続されて外側に垂れ下がる外側面部12からなる逆L字状とされている保持部材10と、当該保持部材10の逆L字状の内側に形成される空間部分を覆うカバー体14とを有している。
【0024】
保持部材10は、前後方向に沿って長尺状に形成された略板状の上面部11と、当該上面部11と同じ長さを有し、その外縁側に接続されて鉛直方向に庇状に形成されている外側面部12とを有している。言い換えれば、保持部材10は、上面部11に上下方向で対向する下面部を有さないものとなっている(
図7参照)。
上面部11は、長さが手Wの先から前腕Vの中途部までを覆う程度とされていて、幅が前腕Vの幅よりやや広いものとされている。外側面部12は、手W及び前腕Vを十分に覆うことのできる大きさの面積を有している。
【0025】
上面部11と外側面部12が合わさった先端、すなわち保持部材10の先端は、手Wの先から甲側全体を覆うため、内側に回り込んで形成されている。この上面部11と外側面部12の内側に形成される空間は、手Wと前腕Vを収容する収容部8とされている。
つまり、保持部材10は、手Wの甲側と前腕Vの上側と外側を覆うものである(
図3(b)参照)。
【0026】
言い換えれば、保持部材10は、幅(左右)方向断面視において、コ字状の一方側(下側)の片を完全に切り取って、下縁側に空間が形成された逆L字状とされている。この保持部材10(上面部11と外側面部12)は、一体成形されていて、内部(収容部8)に手Wと前腕Vが挿入されるため、クッション材など柔らかい布材を備えられている。
なお、保持部材10(上面部11と外側面部12)の材質については、プラスチックなどの硬質な部材を用いていると好ましい。
【0027】
なお、本実施形態においては、上面部11の下側壁面に、可撓性を有する上部覆い体13を備えている。
上部覆い体13は、上面部11の長手方向中途部から少なくとも後端、好ましくはそれ以上の長さで且つ、上面部11の幅より超える広さを有する部材である。つまり、上部覆い体13は、肘までの前腕Vを覆う面積を有しているものである。
【0028】
上部覆い体13は、例えば、クッション材など柔らかい布材で形成されている。上部覆い体13の内側(内縁18側)は、後述するカバー体14の上縁19が接するようになっている。
つまり、本実施形態の保持部材10は、上面部11と外側面部12からなる外枠体14と、上部覆い体13を有するものとしている。
【0029】
なお、上部覆い体13は、内縁18を幅方向内側に延長した部位と考えることができ、この上部覆い体13は、上面部11のみならず、外側面部12に回り込むように形成されていてもよい。すなわち、上部覆い体13は、肘までの前腕Vの上側及び外側を覆うようにしてもよい。
カバー体14は、保持部材10の内側に形成される空間を閉塞するものであって、保持部材10の先端から少なくとも後端、好ましくはそれ以上の長さを有している。
【0030】
このカバー体14は、手Wのひらと前腕Vの下側及び内側を覆うものである(
図3(b)参照)。
カバー体14は、可撓性を有している部材で形成されていて、下縁が保持部材10の外側面部12の下縁側に接合されている。カバー体14は、例えば、クッション材など柔らかい布材で形成されているとよい。
【0031】
すなわち、カバー体14は、下縁が外側面部12の下縁の先端から後端まで接合され、保持部材10の下縁を回り込んで上方に跳ね上がり、上縁19が上部覆い体13(上面部11)の内縁18側に接するように設けられている。
本実施形態においては、カバー体14の上縁19の先端~長手方向中途部にかけては、上面部11に接合されていて、長手方向中途部~後端にかけては、上部覆い体13(上面部11)の内縁18側に非接合状態で接している。
【0032】
この非接合部分は、後ほど詳細に説明する切り欠き部15である。なお、接合部分及び非接合部分の長さについては、任意に設定可能であるが、後方から1/3程度の長さが好ましい。
このカバー体14は、下が尖った三角形状となるように、上縁19が上部覆い体13(上面部11)の内縁18側に非接合状態とされ、下縁が外側面部12の下縁に接合されて取り付けられている(
図2参照)。
【0033】
すなわち、右腕マッサージ部5Rは、保持部材10とカバー体14とにより、手Wと前腕Vの全てを覆う収容部8を備えた筒状の部材とされている。
次に、本発明の特徴である右腕マッサージ部5Rに形成された切り欠き部15ついて、図面を基に説明する。
切り欠き部15は、保持部材10の上面部11の内縁18とカバー体14の上縁19とにより、前後方向に延び、且つ、略上方を向いて形成されていて、挿し込まれたときの前腕Vに対応する部分が切り込まれている。
【0034】
切り欠き部15は、カバー体14の上縁19の長手方向中途部~後端にかけて、上部覆い体13(上面部11)の内縁18側に非接合で接しているにおいて、ほぼ直線状に形成されており、挿し込まれた手Wと前腕Vを座部2方向へ離脱するときにだけ幅方向に開口する(上部覆い体13(上面部11)の内縁18とカバー体14の上縁19が離れて一定の空間ができる)ようになっている(
図3(c)参照)。
【0035】
すなわち、手Wと前腕Vを右腕マッサージ部5R内に挿入してマッサージを実施しているときには、切り欠き部15は開口しないようになっている。言い換えれば、切り欠き部15は、元の位置(上部覆い体13(上面部11)の内縁18とカバー体14の上縁19が接する状態)に戻る(
図3(a)、(b)など参照)。
つまり、保持部材10の上面部11の内縁18(乃至は上部覆い体13)とカバー体14の上縁19とにより、前後方向に延び且つ略上方を向く切り欠き部15が形成されていて、その切り欠き部15を介して、右腕マッサージ部5R内に挿入された手Wと前腕Vとが外部へ離脱可能とされている。
【0036】
この切り欠き部15については、例えば、挿し込まれた手W及び前腕Vを座部2方向へ離脱させるときにかかる力にのみ開くようにすればよい。また、挿し込まれた手W及び前腕Vを座部2方向へ離脱した後、切り欠き部15は、自然に閉じるようになっていてもよい。
すなわち、切り欠き部15は、挿し込まれた手W及び前腕Vを座部2方向へ離脱する過程において、柔軟に開閉するようになっている。
【0037】
なお、本実施形態の切り欠き部15は、右腕マッサージ部5Rの上部(保持部材10の上面部11)に形成されている。すなわち、切り欠き部15は上方を向くように形成されており、幅方向において対向するものとはなっていない。
さて、使用者によっては、手Wの大きさや前腕Vの長さが異なってくる。手Wが大きい又は前腕Vが長い場合、右腕マッサージ部5R内に挿入すると、手先を曲げるなど窮屈になる。
【0038】
そこで、本実施形態においては、切り欠き部15の前方、すなわちカバー体14の先端側に、手先逃がし部16を設けている。
手先逃がし部16は、上下方向にほぼ直線状に切り込まれたスリットであって、右腕マッサージ部5Rに挿し込まれたときに手先に相当する部分に形成されている。
手Wが大きい又は指が長い又は前腕Vが長い場合、手先逃がし部16を介して手先を外部へ逃がすことができるので、右腕マッサージ部5Rの内部での窮屈さを解消することができる。
【0039】
なお、上でも述べたが、左腕マッサージ部5Lの形成された切り欠き部15及び手先逃がし部16については、右腕マッサージ部5Rと同様であるので、説明は省略する。
さて、腕マッサージ部5においては、保持部材10の上面部11と外側面部12、及び、カバー体14の少なくとも一つ以上に、膨張・収縮可能なエアバッグ17が備えられている。
【0040】
例えば、保持部材10の上面部11(上部覆い体13)にエアバッグ17を一つ備え、カバー体14にエアバッグ17を一つ備えていてもよい。つまり、エアバッグ17の配置については、任意に選択可能である。
このエアバッグ17により、手Wと前腕Vに対してマッサージ動作が付与される。
以下に、本発明の作動態様について、述べる。
【0041】
図3(a)は、右腕マッサージ部5Rに手Wと前腕Vを挿し込む前の状態を示す図であり、
図3(b)は、右腕マッサージ部5Rに手Wと前腕Vを挿し込んだ状態を示す図であり、
図3(c)は、右腕マッサージ部5Rから手Wと前腕Vを切り欠き部15を介して離脱させた状態を示す図である。
図3(a)に示すように、逆L字状の保持部材10とその保持部材10の内側を覆うカバー体14に囲まれる収容部8は、切り欠き部15が閉じた状態であるので、開口部7のみが外部との連通状態となっている。
【0042】
図3(b)に示すように、開口部7から収容部8に手W及び前腕Vが挿し込まれると、手W及び前腕Vの全ては、逆L字状の保持部材10とその保持部材10の内側を覆うカバー体14に覆われて保持されることとなる。つまり、マッサージ実施中には、切り欠き部15は開口しない。なお、手先は、切り欠き部15を介して、外部へ逃がされている。
図3(c)に示すように、右腕マッサージ部5Rに挿し込んだ手W及び前腕Vを座部2方向(斜め上方向)へ離脱させようとすると、そのときにかかる力で切り欠き部15が手W及び前腕Vが通過できるだけ開くようになり、離脱させることができる。
【0043】
このように、右腕マッサージ部5R内に挿入された手Wと前腕Vとが、切り欠き部15を介して、外部へ離脱可能となる。
なお、手Wと前腕Vの離脱が終わると、上部覆い体13(上面部11)の内縁18とカバー体14の上縁19が接する状態、
図3(a)の状態に、自動的に戻る。つまり、切り欠き部15は、開いても一定時間が経つと、閉まるようになっている。
【0044】
以上述べたように、本発明の椅子型マッサージ機1によれば、切り欠き部15を設けていることにより、手Wと前腕Vのマッサージ終了時において、腕マッサージ部5内にされた手Wと前腕Vを、外部へスムーズ、且つ容易に離脱させることができる。
また、手Wと前腕Vのマッサージ時には、逆L字状の保持部材10(上部覆い体13も含む)とカバー体14とに覆われ且つ、切り欠き部15が閉じるようになっているので、腕マッサージ部5内において、手Wと前腕V全体に、良好なホールド感を与えることができる。
【0045】
さらに、カバー体14(腕マッサージ部5)に手先逃がし部16を設けていることにより、使用者の手先を外部へ逃がすことができるので、腕マッサージ部5の内部での窮屈さを解消することができる。
また、保持部材10は、下面部を有さない故に、上面部11に設けられたエアバッグ17と下面部との間で、前腕が過剰に挟み込まれることを回避することが可能となっている。
【0046】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【符号の説明】
【0047】
1 椅子型マッサージ機
2 座部
3 肘掛け部
3L 左肘掛け部
3R 右肘掛け部
4 背もたれ部
5 腕マッサージ部
5L 左腕マッサージ部
5R 右腕マッサージ部
6 支持フレーム
7 開口部
8 収容部
9 枢支軸
10 保持部材
11 上面部
12 外側面部
13 上部覆い体(内縁を幅方向内側に延長した部位)
14 カバー体
15 切り欠き部
16 手先逃がし部
17 エアバッグ
18 内縁
19 上縁
V 前腕
W 手